意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「世界の難民情勢」です。想像を絶する数の難民が急増。世界安定の危機に。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)本部が6月に発表した年間報告書によると、2022年末の時点で、紛争や迫害などにより、故郷を追われて強制移動をさせられた人が1億840万人になりました。1年間で1910万人増え、これはこれまでで最大の増加になります。国境を越えて逃れた人を「難民」、国内で移動を強いられた人を「国内避難民」と呼びますが、1億840万人のうち6250万人は国内避難民で、全体の60%を占めます。国内で逃げているのなら、難民よりも安心のように感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。国外に逃げられるのは、それだけ経済力や人脈があったり、その距離を移動する余力のある人たち。それすらない人が住まいを追われて、命からがら別の地域に逃げています。その原因が紛争だった場合、激しい紛争地域は国連の支援チームも退避せざるを得ず、食糧や医療の支援を受けられないまま国内に留め置かれている膨大な数の人たちがいるのです。難民の数が急増した理由は、ウクライナ侵攻、スーダンの紛争、その他中東やアフリカ各地、ミャンマーなど、世界中で分断が深まっているためです。また、気候変動による干ばつや水害で移動せざるを得なくなった人もいます。難民の最大の受け入れ国はトルコで360万人。ドイツも210万人を受け入れています。徒歩で隣国に逃れるケースも多く、全難民の20%は貧困国に移動しています。つまり、逃げた先でも、十分な生活も支援も得づらい状況が生まれているんですね。移動先できちんとした職を得られず、生活基盤を築けない場合、武装勢力で働くほかに道がないという最悪の事態も発生しています。スーダンでは、紛争が落ち着いていた時期に教育支援を受けていた子どもたちが、戦闘が激しくなると、新たな戦闘員を確保するために武装勢力にリクルートされるという悲劇が起きています。それは世界的に戦争や紛争の可能性が高まるということで、先進国にとっても無関係な話ではありません。持続可能な世界のために、この難民問題には真正面から取り組む必要があると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月30日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「改正入管法」です。難民認定率の低い日本。審査方法を再構築するべき。「出入国管理及び難民認定法」、通称「改正入管法」が6月に成立しました。この改正案は2年前に国会に提出されましたが、長期間入管で留め置かれたスリランカ人女性が、十分な治療を受けられずに亡くなったことを機に、日本の難民認定の制度が問題視され、廃案になりました。ところが、今国会でほぼ同じ内容の法案が再提出され、可決されたのです。改正入管法では、難民認定3回目以降の申請は「相当の理由」がなければ、本国への送還が可能になります。長期に留め置くのが問題なのであれば、帰っていただこうというスタンス。しかし、内戦や迫害など、本国にいては身に危険が及ぶため日本に逃げてきたかもしれない人に対して、強制送還することは正しい判断なのでしょうか?最も問題なのは、難民申請者が本当に難民なのか、不法入国者なのか、適切に判断できているのか不透明だということです。入管の難民認定審査(一次審査)で不認定となり、不服を申し立てた人を二次審査するのが難民審査参与員。法律や国際情勢に関する学識経験を有する人が任命されます。現在110名いますが、1人あたりの審査件数に大きな偏りがあることがわかりました。ほとんどの参与員が年間数件~40数件だったのに対し、NPO法人名誉会長だった柳瀬房子さんだけが’22年だけで1231件審査を行っており、「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど確認できません」と発言。これに対し、ほかの参与員から異論が集中しました。難民審査は総合的な国際状況をもとに判断しなければなりませんし、申請者は自分を証明するものを何も持たずに逃げてきている場合もあり、本人を特定するのには時間もかかります。年間1000件以上の申請を的確に審査できるのでしょうか?難民申請中は働くこともできませんが、審査が長引けば家族を養うために違法でも働かなければ生きていけない矛盾も抱えています。日本は国連の難民条約に加入しており、難民を受け入れる立場です。今回、準難民というグレーゾーンを設けたことは評価できますが、その前に難民を審査する仕組みを立て直す必要があると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「孤独・孤立対策推進法」です。社会全体の課題。官民連携により急ピッチで進む。今年の通常国会で「孤独・孤立対策推進法」が成立しました。孤独や孤立は、「個人の努力が足りない」ものでも、「仕方のない問題」でもありません。社会全体の課題で、社会で解決しなければいけないと、本腰を入れることになりました。この法律は、国主導でできたものではありません。長年孤独・孤立対策や貧困対策などを進めている「自立生活サポートセンター・もやい」や、24時間365日無料・匿名チャット相談を行っている「あなたのいばしょ」など、現場の窮状を知るNPO法人の方々が、前政権時代から「官民で連携してほしい」「国が司令塔となってほしい」「自治体が積極的に対処できるよう目標を定めてほしい」と働きかけていました。これにより、一昨年、孤独・孤立対策担当大臣が生まれ、本法律が成立に至ったのです。基本理念には、「孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要」と書かれています。基本的施策には、国民の理解増進や相談支援の推進、地方公共団体と支援関係者の連携・協働の促進などが盛り込まれました。地方公共団体には孤独・孤立対策地域協議会を設置する努力義務を課し、それを作らない地方公共団体には注意ができるようになります。自殺者数はコロナ禍を機に一気に増えました。令和4年の自殺者数は2万1881人で、前年よりも4.2%増。女性は3年連続で増え続けています。最近では、奨学金の返済苦を理由に自殺をしたと考えられる人が、昨年10人いたという嘆かわしいニュースもありました。女性や子供、若者が孤立しやすい状況のなかで自殺者数が高止まりしており、対策は急務だと、スピーディに法案が可決されました。イギリスや韓国でも自殺者数は増えており、孤独や孤立対策の必要性が謳われるようになりました。日本が世界に先駆けて、この問題に取り組むことにより、そのノウハウを世界に提供できる可能性も出てきます。いま世界の分断は進んでいますが、同じ問題を抱える国同士、国際協調が進み、課題解決がなされることを願います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月9日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「異次元の少子化対策」です。子育て支援だけでなく、これから産む人の支援も!岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、6月に「こども未来戦略方針」を発表。2030年までを少子化傾向にストップかけるためのラストチャンスだとして、2024年度からの3年間に年間3.5兆円の予算を投入すると宣言しました。こども家庭庁もスタートし、少子化対策に特化して、大規模に財政的な手当をすると打ち出したのはとても評価できます。ただ、支援策の中身が、児童手当を所得制限なしにし、対象を高校生まで引き上げる。第3子以降は3万円を支給。親が働いているか否かを問わず、保育施設の利用を可能にする制度の導入を目指す。育児休業の給付金を増額するなど、「子育て支援」の政策が目立ちます。すでに子供のいる家庭で第2子、第3子を産むための対策にはなっても、ゼロから子供を産み育てようという人たちに対しての支援は足りないのではないかと懸念されます。これまでも子育て支援策を立ち上げてきましたが、少子化に歯止めはかかりませんでした。たとえば不妊治療費用の保険適用が限定的だったり、人工授精が法律上の夫婦間に限られていたり。「異次元」というからには、フランスのように婚外子の社会的偏見をなくすなど、社会で子供を育てるような意識で策を講じないと、状況を改善するのは難しいのではないかと思います。子供を産もうとしない背景には、雇用が不安定で、若年層に貯蓄の余裕がない、経済的不安が理由で結婚にも踏み切れないという現実もあると思います。ヨーロッパのように、働き方の支援や結婚制度そのものにも柔軟性を持たせることも考えたいです。参考になる一例として、兵庫県明石市は泉元市長の提言で、「こどもを核としたまちづくり」に舵を切り、子育て世帯が多く移り住む街に変貌を遂げました。子育てのために予算を投入することには反対意見もあり、効果が出るまでに6~7年かかったそうです。今、国の少子化対策のための財源は明確にされていません。今後3年間だけでなく長期的展望が必要となる政策。政権交代するごとに制度や支援がストップするようなことにならないよう、気をつけていただきたいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月2日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年07月28日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。 今回のテーマは「マイナトラブル」です。いったん立ち止まり、根本的に見直す勇気を持って。マイナンバーカードにまつわるトラブルが相次いで起きました。給付金などを受け取る公金受取口座に別人のものが登録されていた。住民票の写しを請求したら別人の証明書が発行された。マイナ保険証で他人の保険記録が見られるようになっていたなど、これらは登録時に人の手で行っているために起きたミスで、デジタル以前の問題です。発注の仕組みやオペレーション、誰がどこまで責任を負うのかというガバナンスのあり方が、日本のデジタル化を阻んでいるということを実感します。僕自身、自分の納税者番号と他人の銀行口座が紐付けられていたというトラブルに遭いました。確定申告の還付金がいつまでも入らず、税務署に問い合わせて問題が発覚。申告しなければ、登録ミスにも気づかれないというのも大きな問題です。2007年に起きた「消えた年金」問題のころから、同様の問題が繰り返し起きています。年金に関しては、その後「日本年金機構」を作り、管理を徹底しました。各役所も実際問題、現状の窓口業務だけで手一杯です。民間から人材を導入するなど抜本的な対処をしなければ、改善は難しいのではないかと思います。マイナンバーカードのシステムを使い、デジタルを活用し、さまざまな作業コストを下げ効率よく行うことには大賛成です。しかし、それを実現するには現場が追いついていないということを直視すべきでしょう。マイナンバー制度では、税金、保険証、免許証など幅広い国民情報を紐付けようとしています。諸外国での国民IDの紐付けに関する野村総研の調査によると、IDの利用範囲が広いのはアメリカやシンガポール、デンマークなど。しかし、以前アメリカでは詐欺により年間5兆円ほどの国民資産が奪われ、シンガポールでは2018年に150万人分の医療情報が盗まれました。一方フランスやドイツ、カナダはリスクを考え、IDの利用は限定的にしています。日本はサイバー攻撃の標的にもなっているので、安全保障の意味からもマイナンバーの運用には慎重になるべきです。システムを強固にするために1年かけて再点検するというような英断も必要ではないでしょうか。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年7月26日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年07月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「グローバルサウス」です。世界勢力の変化に応じ微妙に違いが。現在の肝はインド。最近、ニュースでよく耳にする「グローバルサウス」という言葉ですが、使い方によって、示す地域や意味合いが変化するようになってきました。これまでは、先進国の集中する「グローバルノース(north/北)」に対してのサウス(south/南)。主にアフリカなど、植民地政策にも遭い、貧困や飢餓などさまざまな課題を抱える開発途上国。先進国はこれらの地域へ投資を強めていくことが必要だという文脈で、よく使われてきました。また、北半球に民主主義の大国が多いことから、それらの国々に対して、地理的には南半球ではなくても独自外交で権威主義的な国々を「グローバルサウス」と呼ぶこともあります。その場合は、インドやタイ、カンボジアなど東南アジアや中南米が含まれます。西側の自由主義国とは違うという意味合いです。もう一つには、ロシアや中国、旧東側でもなく、アメリカや欧州の西側陣営でもない第三の陣営という枠組みで「グローバルサウス」が使われることもあります。今、グローバルサウスで注目される代表的な存在は、インドです。今年5月、G7広島サミットが開かれましたが、G7は西側のアライアンス。同月、インドでは「上海協力機構(SCO)」外相会議が開かれました。これは、ロシア、中国、インド、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンの8か国で作る国家連合で、2001年に発足。西側とは真逆の視点で、「安全保障を脅かしているのは西欧諸国で、我々の国土を蝕んでいる。平和と安定と秩序を取り戻すため、G20に働きかけよう」と話されています。インドのモディ首相は広島サミットにも特別に招かれましたが、9月にはプーチン大統領がウクライナ戦争後初めてインドを訪ね、首脳会議を行う予定。インドは両陣営の綱引きの真ん中にいる形なのです。グローバルサウスは、言葉自体が先進国目線すぎるから使わないようにしようという動きも一方であります。西側中心に世界を見ていると、現実を見誤ることも多々あります。常に世界を俯瞰することが重要でしょう。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年7月19日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年07月16日松本潤さんのインスタグラムをチェーーック!ジャニーズ事務所、「嵐」のメンバー松本潤さん(39)はNHK大河ドラマ『どうする家康』に徳川家康役で主演を務めています。番組放送後にはTwitterでトレンド入りするなどお茶の間から注目を集めています。先日、自身のインスタグラムに妻役を務める有村架純さんの写真を投稿し反響を呼んでいるようです。どんな投稿なのか早速チェックしてみましょう!妻役有村架純さんの写真を公開「瀬名役を架純ちゃんが演じてくれて本当に良かった」 この投稿をInstagramで見る Jun Matsumoto/松本潤(@jun.matsumoto_ieyasu)がシェアした投稿 「演じるのは有村架純さん。様々な心情を縦横無尽に演じ分け、現場でも常に支えてくれます。四度目の共演となりますが、毎度新しい表情を魅せる素敵な方です!!瀬名役を架純ちゃんが演じてくれて本当に良かった!!!」と妻役を演じた有村架純さんの写真数枚を投稿。投稿した翌日にドラマ放送があり、瀬名が責任を負い自害するという悲しい別れのシーンでした。放送を見てから松本さんの投稿を見るとさらに感極まった方も多かったのでは。コメント欄には「かすみちゃんと松本潤さんのツーショット写真が見たいです♡」「涙が止まらず...。なんとも気持ちが伝わる演技でした」「瀬名(涙)もう泣きそうです(泣)」「最後の殿の叫びがずっと耳に残って哀しいし胸が痛い。一週間引きずります(泣)」と多くの反響が寄せられておりました。最愛の妻、瀬名を亡くした家康は今後どうなっていくのか。豪華新キャストも続々解禁されています。この先の展開も楽しみですね!
2023年07月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「台湾ガブ・ゼロ」です。市民主導の課題解決。見習うべき点が多々ありそう。「ガブ・ゼロ(g0v)」とは、オンラインで運営されている、台湾のシビックハッカーのコミュニティ(市民政府組織)です。2か月に一度、ハッカソンを開催しています。ハッカソンとは、「ハッカー」と「マラソン」を組み合わせた造語で、あるテーマに対して、プログラマーやグラフィックデザイナー、エンジニアなどが集まり、アプリケーションやシステムを開発するイベントのことです。ガブ・ゼロが世界に広く知られるようになったのは、コロナ禍になってすぐです。マスクの入手が困難になっていた当時、在庫がどこにあるかがすぐにわかるシステムを開発し、それを見た台湾のデジタル担当相、オードリー・タンさんが、その仕組みを政府で採用することを決めて、「マスク配布システム」が実現しました。ガブ・ゼロは、さまざまなシステム開発を行っていますが、LINEを使った「Cofacts」というプロジェクトが注目されています。世の中に飛び交う情報が、正しいのかフェイクなのか?情報元はどこなのかなどを瞬時に教えてくれるサービスです。これは、中国からの認知戦の防衛のために作られました。いま中国と台湾は熾烈な緊張関係にさらされており、中国は台湾の政権転覆を狙っているといわれています。圧倒的な量のフェイクニュースを流し、台湾人民の意識をコントロールしようとしているのです。日本にも「Code for Japan」という市民団体がありますが、残念ながら台湾のガブ・ゼロのように政府との連携はできていません。ガブ・ゼロのウェブサイトは多言語対応しており、日本語でも読めます。世界に対して、活動を報告しています。なぜなら、フェイクニュースは、他国の国民を洗脳するためにも流されているからです。「蔡英文政権はダメだ」という流説を世界に広められたら、世の中はそういう空気に包まれてしまいます。これまで公表していませんでしたが、ガブ・ゼロを立ち上げたメンバーは2014年に起きた「ひまわり学生運動」に参加していました。ITを使い、市民が民主主義を自分たちで守る新しい形がここにあると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年7月12日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年07月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「チャットGPT」です。産業革命以来の大きな変化の兆し。使い方に要注意。チャットGPTとは、オープンAI社の生成系対話型AIで、昨年11月に公開されてから、わずか2か月でユーザー数が1億人に達し、ものすごい勢いで急成長しています。多言語に対応し、テキストの作成や翻訳、その要約も一瞬でできます。日本でも話題になり、「情報が間違っている」などと問題視されていますが、あくまでチャットなので、検索を目的においていません。2021年9月の情報を元にAIが回答をしているので、GoogleやYahoo!のように日々情報が更新される検索ツールとは異なります。使い方としては、対話や相談の相手として、自分の考えをまとめたり、整理をしたりするツールとしてはとても有効です。使う側には、AIにどれだけ的確な問いを投げかけられるか、指示ができるかが問われます。チャットGPTはオープンソース化されたことで、様々なサービスに組み込まれ活用され始めています。エクセルに組み込んで、1か月の財務諸表を一瞬で仕上げたり、ゲームのプログラミングをしたり。安全保障の分野や、経済取引や投資対象など、これまでは人類が考えて選択してきたことの判断をAIに預けるということが、当たり前になっていくでしょう。ただ、チャットGPTの回答が、どこから導き出した情報なのか、経緯の検証はしにくくなっています。ですから、フェイクニュース対策は非常に厄介です。現在、出典元を明記するようにしようという声が上がっていますが、国際標準化されていませんし、スタンダードなルールにするのも難しいと思います。そもそもその出典元さえ、正確な情報とは限りません。AIの判断のエラーに気づけなくなったり、誰かの意図によって間違った方向に誘導されたりという可能性もゼロではありません。ある研究者は「人は究極の判断を迫られたときに、心理的に機械のほうを信じてしまう。それがリスクとなるかもしれない」と話していました。高度なAI技術を使える企業はこれからますます強くなり、そうでないところは後れをとり、格差は広がります。いずれにせよ、産業革命以来の大きな発明であることは間違いありません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年7月5日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年06月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「タイ『前進党』の躍進」です。王政に懐疑的な若者らの主張に注目しよう。5月14日、タイの下院総選挙で、野党の「前進党」が大躍進し第1党になりました。前進党の党首は42歳のピタ氏。王政に懐疑的な姿勢の革新的な野党で、多くの若者たちが支持しました。開票前の、勢いはあってもメインストリームに躍り出ることはないだろうという予想が大きく覆されました。タイではこれまでにもクーデターが頻繁に起きています。民主政治を目指しながらも、軍事クーデターでひっくり返るということが繰り返されていました。王政に懐疑的な声が広がっていくきっかけとなったのは、前国王・ラーマ9世(プミポン国王)の死でした。タイは国王を元首とする立憲君主制の国です。国土は王のものであり、王の土地を借りて農作物を作り、ビジネスをしています。前プミポン国王は、亡くなる2016年まで70年間在位し、大変な人格者で人気を博していました。様々な争いごとも最終的に国王が出てきて収めていました。ところが現国王のラーマ10世(ワチラロンコン国王)は王太子時代から問題を起こし、即位後もコロナ禍で国民が大変なときに20名の女性とドイツで豪遊していました。軍はそんな国王を利用し、国王の好きにさせる代わりに、国王に対して不満を唱える分子を「不敬罪」で次々取り締まっていきました。当然、経済は弱くなりますし、独裁的な権力に富が集中します。自由が奪われ、公正さもなく、モラル的にも問題だと若者たちが王様に対してNOの声を上げ始めた。これは大きな変化です。タイの与党「タイ団結国家建設党」は軍事クーデター後に樹立された政党で、大企業の経営者などが支持しています。これまでの最大野党は、クーデター前のタクシン元首相の派閥の「タイ貢献党」で、低所得者や農村部の人々が支持してきました。5月下旬、前進党やタイ貢献党を含む8党が連立政権樹立に向けて合意。ただ、タイの国会は上院と下院に分かれており、上院は軍により選ばれた、基本的に与党議員です。下院で野党の数が増えても、上院が承認しないかぎり政権交代はありません。勢力を伸ばした野党を、国家反逆で取り締まるようなことが起きないことを祈るばかりです。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年6月28日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年06月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日韓関係改善」です。雪解けの日韓関係。政治とともに民間の動きに注目。3~5月の間に岸田首相は3回にわたり、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と日韓首相会談を行いました。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は、北朝鮮と融和的で南北首脳会談を行い、日本に対しては距離を置いていたのに対し、尹政権は日本やアメリカと連携を強める方向に大きく舵を切っています。日韓で抱える歴史認識や戦時賠償の問題に関しても、いったん解決ということで手を打つことを提案。国内世論を抑え、よく決断したなと感じますが、東アジアの安全保障環境が刻々と変化しているため、やむを得ないということを韓国国民も理解しているのだろうと思います。この動きは歓迎しますし、目の前の有事に対処するために日米韓の連携はとても大切なのですが、その先のビジョンも必要でしょう。今後、北朝鮮や中国、ロシアとどういう関係を築くのか、分断を生まないための対策も考えなければいけません。一方、日韓関係では民間でも前向きな動きがありました。寄付文化の浸透に貢献しているNPO「日本ファンドレイジング協会」が、韓国の大財閥・SKグループの財団と組み、「アウトカムファンド for IMM」を立ち上げました。近年、社会的な問題がどれだけ解決されたかを裏付ける指数を「アウトカム」と呼んでいます。たとえば、いじめや自殺件数が減少したなど、課題解決がなされたものをわかりやすい指数で示し、データ化して広く公開。解決を推し進めた団体や企業に財団から資金を入れていき、投資の対象になるようにしていくプロジェクトです。年間で最大約1000万円を3年間投じる試みを始めました。自殺率が高い、SNSによるいじめが深刻、教育にかける国家予算が低いなど、日本と韓国では同じような社会課題を抱えています。その改善方法を2国間で共有し、解決への糸口を見つけようとしているのです。この交渉が始まったのは前政権時ですが、政治の上でも日韓に柔らかいムードが生まれれば、理解も広まり、プロジェクトの後押しになります。もしかしたら、このような民間発の国同士の交流が、対中国、対ロシアなどとの関係改善の突破口になっていくのかもしれません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年6月21日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年06月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米国のTikTok利用禁止」です。広がる使用禁止。データ管理と認知戦の問題が。アメリカ連邦議会下院は3月1日に、中国発の動画投稿アプリ「TikTok」の国内での使用を大統領権限で全面的に禁止できるとする法案を可決しました。アメリカは、トランプ政権時から、TikTokやファーウェイなど、中国製のものにはバックドアがあり、重要なデータが抜き取られる可能性があるので、市場から締め出すべきだというスタンスをとっていました。連邦議会下院は、3月23日にTikTokの運営会社「バイトダンス」CEOの公聴会を開きました。CEOは、バイトダンスは中国政府のユーザーデータへの無許可アクセスを許さないグローバル企業だと主張。また、約15億ドルを投じて、アメリカの利用者のデータはアメリカに本社を置く企業にホストサーバーを置き、「TikTok USデータセキュリティ」に管理させるなどの提案をしました。アメリカでは、公的機関に従事する職員が、公的な端末でTikTokを使用することを禁じる州が増えていますが、カナダのトルドー首相も同様の禁止措置を発表。4月には、アメリカのモンタナ州議会で、一般ユーザーの使用も禁じる法案が可決されました。TikTokには、公的な場面で大事な機密情報が中国に流出するかもしれないという安全保障面での危惧もありますが、「認知戦」の脅威もあります。認知戦とは、ある動画や言葉を多く目に触れさせることで、考えや認識を恣意的にコントロールすることです。実は、NGOの「国境なき記者団」もTikTokには警鐘を鳴らし続けていました。ロシアによるウクライナ侵攻が始まったころ、エンターテインメントコンテンツに紛れて、ロシアのフェイクニュースが表示されるようになっていたからです(その後、ロシアのライブ配信は一時的に禁止されました)。TikTokユーザーの3分の2は10代~20代半ばの若者といわれています。楽しみで動画を見ているつもりでも、誤情報により極端な価値観を植え付けられる危険があります。自分のスマートフォンは世界中に繋がっていて、そのデータを誰がどんなふうに活用しようとしているか分からないということは、意識しておかないといけません。ほり・じゅんジャーナリスト。8bitNews代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYOMX)が放送中。スーダン取材の2つの写真展を6/11まで、両国『ピクトリコ』と恵比寿『弘重ギャラリー』で同時開催中。※『anan』2023年6月14日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年06月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国際アビリンピック」です。障害者が技術の高さを競う大会。ぜひ、注目を!「アビリンピック」とは、障害のある方の職業にまつわる技術を競うことで、職業能力の向上と、企業の雇用を促すことを目的にした大会です。その国際大会が、3月にフランスのメッス市で開催されました。26の国と地域、440名の選手が参加し、44種目の競技が行われました。日本選手団は30名、17種目に参加しました。今年で10回目になりますが、実は第1回は、1981年の国際障害者年に日本で開催されました。パラリンピックも日本生まれですし、ダイバーシティ化が遅れていると言われますが、障害者のみなさんの活躍の場は、日本がリードして作ってきたのです。今回は歯科技工で金賞、家具(基礎)、ネイリスト、電子機器組立、英文ワープロで銀賞を、家具(応用)、ネイリスト、クリーニングサービスの部門で銅賞を獲りました。僕は現地に行って取材したのですが、さすがフランス、メッスの子供たちが先生に引率されて、見学したり、アクティビティに参加したり、選手のみなさんと交流をしていました。フランスやスイスなどヨーロッパの国々でアビリンピックが開催されるときは、必ず見学に行くことが学校のプログラムに組み込まれているのだそうです。ネイリスト部門で銀賞を獲得した山下加代さんは、北海道出身。2019年のアビリンピック全国大会で金賞を受賞。JALサンライトという、障害者と健常者が共に働く会社から声をかけられ、’20年の全国大会後、同社に就職しました。そして今回、国際大会に出場したんですね。応援に来ていた同社の社長は「彼女たちの頑張りが、健常者の社員に学びと刺激を与えてくれている」とおっしゃっていました。会場ではインドの選手団が日本選手団に駆け寄り、「あなたの国がアビリンピックを始めてくれたおかげで自分たちがいます」と感謝の意を告げる場面も。しかし、残念なことに日本ではアビリンピックはほとんど認知されていません。さまざまな分野において、高い技術を世界に伝える大会でもあります。本当の意味でのダイバーシティ促進のためにも、もっと多くの方に興味を持っていただきたいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。8bitNews代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX)が放送中。スーダン取材の2つの写真展を6/6~11に、両国『ピクトリコ』と恵比寿『弘重ギャラリー』で同時開催。※『anan』2023年6月7日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年06月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イギリスTPP加盟」です。ようやく合意。この後は中国と台湾の問題が。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加する11か国は、3月末にイギリスの加盟に合意しました。TPPは、太平洋を囲む国同士でモノの関税をなくし、さらにサービスや投資などの自由化を目指す経済連携協定です。元々は2016年にアメリカ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、日本の12か国で署名したのですが、トランプ政権になりアメリカが離脱。 ’18年に11か国で発効しました。イギリスがTPPへの加盟を申請したのは’21年2月。前年にEUを離脱したため、独自の経済圏を拡大する必要がありました。イギリスが加わることで、TPP加盟国の世界に占めるGDPは、12%から15%に拡大します。TPPは経済的な効果以上に、安全保障分野で“対中国包囲網”を作ることに大きな意味がありました。ところが、アメリカが抜けたことによりその意味合いは大きく後退しました(のちに’16年に掲げられた自由で開かれたインド太平洋戦略に置き変わります)。そんななか’21年9月に中国と台湾がTPP加盟を申請し、ねじれが生じます。中国の加盟を許せば、対中国包囲網という安全保障の目的が根本から崩されることになります。しかし、拒否すれば、中国としては「環太平洋地域の国とは貿易はしない。中国と貿易したいのならば、中国のアライアンスに入ってください」というメッセージになり、中南米やアフリカ、太平洋の島々の国々は、パワーのある中国の経済圏になびいていくでしょう。また、中国の加盟を認めれば、台湾は絶対に入れなくなります。また、貿易も投資などのルールを作るときにも、中国は情報の不透明さがぬぐえず、対等な契約を結ぶにはリスクがあります。加盟の承認は、全加盟国の合意が必要。イギリスは発効以来初めて加盟が認められた国。合意には2年かかりました。他にもエクアドルやコスタリカ、ウルグアイが加盟を申請していますが、中国と台湾の問題をクリアしないことには結論を出せません。ジレンマを抱えたまま、日本はひたすらアメリカに戻ってきてほしいと願っています。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年5月31日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年05月27日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「フランス年金改革反対デモ」です。日本と似て非なる年金問題と最低賃金状況。1月より、フランスで年金改革に反対するストライキや抗議デモが続いています。この抗議運動は、年金支給開始の年齢を62歳から64歳に引き上げる改革法案が出されてから広がり、3月20日に強行採択された直後には、フランス全土で約110万人がデモに参加しました。日本では、警察官との衝突やパリ市内にあふれる大量のゴミなどの様子が報道されましたが、僕が現地で実際に見たのは、ほとんどが平和的な抗議運動でした。フランスも日本と同様に、高齢化により社会保障費が増大しています。2006年以降、貿易収支は赤字が続いており、稼ぐ力が弱まっています。財政が赤字に転じてしまうのを避けるための対策として、マクロン政権はここ数年、年金改革案を掲げていました。賃金が上がらず生活が苦しいというと、日本と同じ状況に見えますが、全く異なるのは、フランスでは物価変動に合わせて賃金を引き上げる制度があることです。ただ、同じ比率で上がっても、苦しい状態は続きます。さらなる賃上げを政府が決めることができる仕組みがあるので、その権限を使って賃金を上げてほしいと訴えています。それでも、フランスは昨年だけでも最低賃金を3回引き上げており、今年の1月にも引き上げて現在の最低賃金は時給で約1660円。1か月間フルタイムで働けば1709.28ユーロ(約25万円)です。フランスの労働組合(フランス労働総同盟CGT)は、1か月2000ユーロ(約29万円)への引き上げを要求しています。こうしてみると日本がいかに安く働かされているかがよくわかります。日本は社会保障費が上がり、年金受給開始は65歳。物価が高騰しても賃金は変わらず、実質下がり続けています。フランスでは年金受給年齢引き上げについて、お金だけの問題ではなく、豊かに過ごす第二の人生を奪わないでほしいと訴えていました。フランスの労働組合の結成率は日本よりも低く、CGTが中心になり、組合員以外の若者や高齢者、抗議に賛同する人たちが大勢デモに参加していました。「私の権利のために闘っているんです」という言葉がとても印象に残りました。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年5月24日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年05月20日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「改憲の国民投票CM規制」です。自分の意見を持つために憲法を多角的に知ろう。衆院憲法審査会で議論されているのが、国民投票のCM規制です。選挙に関しては、公平を期するために公職選挙法で厳しく運用を定められていますが、国民投票に対しては規制がかけられていません。憲法改正国民投票法では、最大180日間の運動期間のうち、投票の14日前からテレビやラジオの有料広告を流すことを禁じています。しかし、それまでは回数も広告費も制限がないので、お金を持っている政党であれば、大量のCMをうち、自分たちに有利な意見に誘導できるのではないかと問題になっています。またインターネット広告に関しては規制の対象外です。自民党や公明党はこの件には消極的。また、民放連も広告収入に大きく関わることですから、規制には後ろ向きです。法規制の必要性を強く主張しているのは立憲民主党で、与野党の溝はなかなか埋まりません。世界では、国民投票のCM規制に関しては、各政党が主張を発信する「均等配分」の制度を設けている国が多いです。イタリアはテレビと新聞に、フランスとスペインではテレビとラジオ、イギリス、デンマークはテレビに対して均等配分を課しています。憲法改正は、第2次世界大戦後にドイツでは67回、フランスは27回など、頻繁に行われている国がある一方で、日本は一度も改憲していません。そもそもの憲法のあり方が少し違うんですね。東京大学のケネス・盛・マッケルウェイン教授は世界の憲法を比較研究しており、英訳した憲法の文字数を見ると、日本は極端に文字数が少ないそうです。改憲回数の多い国は文字数も多く、具体的な項目がたくさんある。たとえば文言の8年を10年に変えるだけでも改憲になるのです。その点、日本の憲法は、抽象的な言葉で大きな理念を共有しており、具体的なことは法律で定めています。ただ、これは時の政府により解釈を変えられてしまう危険もあります。具体的な文言でしっかり縛った憲法がいいのか、理念を語るものがいいのか。国民投票の前に日本国憲法がどういうものなのか、各メディアで多角的な意見を取り上げることが必須なのではないかなと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年5月17日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年05月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日銀新総裁」です。金融政策の舵取り。学者ならではの判断に期待。4月9日、日銀新総裁に植田和男氏が就任しました。日銀総裁の交代は10年ぶり。日本の金融政策を決める大事な存在で、内閣が任命し、国会にはかり衆参両院の同意を得て決まります。日銀は中央政府から独立した立場ですが、安倍政権下では政府と一体となり政策を打ってきました。2013年にスタートした黒田東彦前体制では、アベノミクスの一環として、「デフレからの脱却」を目標に、量的・質的金融緩和を行い、市中にお金を大量に流しました。賃金上昇を含む、2%の物価上昇を目指し、お金を借りやすい状況を作ったのです。しかし、賃金は思うように上がらず、「2%上昇」の目標には達しませんでした。日本は「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」という独自の政策を’16年より導入しています。マイナス金利を適用して短期金利を操作しながら、長期国債の利回りが0%程度で推移するように、日銀が国債を買い入れるというものです。ただ、長期金利の操作は、大型船を操縦するようなもので、ほんの少し向きを変えただけでも軌道が大きく変わります。植田新総裁は、基本的には黒田前総裁の路線を踏襲しながらも、長期金利の操作に対しては慎重な立場。G7の財務相・中央銀行総裁会議では「物価安定目標の持続的で安定的な実現を目指し、金融緩和を継続する」と述べました。日銀総裁は、財務省出身者と日銀出身者が交互に務めることが続いていましたが、バブル崩壊後は3代続けて日銀OBが就いていました。しかし、今回は異色の人事で、植田新総裁は経済学者。東京大学で長らくマクロ経済を教えており、日銀職員のなかには教え子も多く、強い結束力が期待できそうです。世界的には、学者が中央銀行の総裁を務めることは珍しくありません。最新の経済や世界動向を俯瞰視できることは大きな力になります。ただ、現場は理論通りにはいきませんから、マクロな視点を持ちながら、ミクロな私たちの暮らしにどの程度敏感でいられるのか、植田総裁のバランス感覚が問われます。経済成長しておらず、国際情勢は不安定で、インフレが進む今、新総裁の差配に注目しましょう。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年5月3日‐10日合併号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年05月01日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「放送法の解釈問題」です。視聴者も監視して自由な報道を守っていこう。2015年に行われた、放送法第4条の「政治的公平」の解釈変更。その背景に政府の介入があったのではないかということが明らかになる総務省の行政文書が、3月、国会で立憲民主党の小西洋之議員により提示されました。放送法では、放送事業者が番組を放送、編集するにあたり「公安及び善良な風俗を害しない」「政治的に公平である」「報道は事実をまげないでする」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ことが定められています。「政治的公平」に関しては、放送事業者の放送する番組全体で判断するということでしたが、’15年の参院総務委員会で当時の高市早苗総務相が、「一つの番組でも判断できる」という新解釈を示し、’16年には、公平さに欠けると判断された場合には電波停止もありうると表明しました。当時の安倍政権は勢いがあり、安保法制や特定秘密保護法、森友問題、憲法の解釈変更など、強権的に物事を進めており、反対勢力に攻撃していくような空気感がありました。今回、国会で公開された総務省の文書には、放送法の運用に関して政権側から解釈の変更を求めており、その仲介を促すような、当時の礒崎陽輔首相補佐官と高市総務相とのやりとりが残されていました。私たちのあずかり知らないところで、政権側が放送事業者に対して圧力を加えたのではないか、それを放送局も呑んでしまったのではないかというのが大きな問題になっています。それが本当ならば徹底的に抗議をすべきです。放送局側もたとえ圧力があったとしても、それに屈して番組をやめたり、論調を変える必要はそもそもないのではないでしょうか。ただ、制作者側からいうと、一つの番組で出演者全員が同意見というのは不健全だと思います。賛成も反対も多角的な意見を交わさなければ議論は深まりません。異なるそれぞれの立場から検証することが、メディアの役割なのではないかと思います。視聴者の皆さんには、メディアをしっかり監視し、誠実に報道している番組は応援していただけたら、メディアも頑張れると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年4月26日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年04月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「トルコ・シリア地震」です。今後も支援が必要。独裁政治による問題も明らかに。2月6日に発生したトルコ・シリア地震から2か月が経ちました。発生1か月後の数字でトルコで4万5968人、シリアで5914人、合わせて約5万2000人が犠牲になったと発表されました。トルコに比べてシリアの犠牲者が極端に少ないのは、シリアの情報がほとんど入ってこないからです。シリアで大きな被害に遭ったのは、イドリブ県やアレッポ県。シリア北部にあたり、反体制派の拠点となっているエリアで、アサド政権の激しい攻撃に抵抗を続けてきました。アサド政権は地震発生2時間後にもこの地域を空爆し、地域の立ち入りを制限しており、国際人道支援や救助、正しい情報発信が大変遅れています。イドリブ出身のフォトジャーナリストにシリアから映像を送ってもらったところ、一部では川が決壊、洪水が発生して街が水に浸かっている場所もありました。衛生状態が非常に悪く、生き残った人たちも困難にさらされています。重機の数が足りず、行方不明になった人たちの捜索もままなりません。一方トルコは、倒壊被害が20万棟にのぼり、人口の16%にあたる1400万人が住まいを失いました。移り住む先がなく、テントで避難生活を送る人も150万人近くいます。支援の必要な先が広範囲にわたっており、食料や水も足りず、電気や水道がない状況、氷点下の日々も続きました。トルコの建物の倒壊がひどいのは、違法建築が横行していたせいです。エルドアン政権は、地震直後に違法建築に関わった疑いのある人を200人以上逮捕しました。国連開発計画の発表では、トルコの震災瓦礫が1億~2億t発生していて、これをどう処理するかが問題になっています。発生から2か月経ち、報道も少なくなりましたが、これからも息の長い支援が必要です。しかし、その国のトップの采配如何により、国際支援や物資が届いても、被害に遭った地域に届かない、助けを求めている人たちを助けられないという問題が起こります。強権的な独裁を許すと、天災も人災になる。被害が広がるということを改めて思い知らされます。世界で監視の目を強めていかなければなりません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年4月19日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年04月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「統一地方選挙」です。自分の暮らしに直結する選挙。ぜひ見極めて。統一地方選挙とは、全国的に期日を統一して行われる選挙で、4年に一度行われます。あちこちでバラバラに好きなタイミングで行われると、コストもかさみますし、報道も追いつきません。総務省の管轄のもと、選挙事務や費用の節減を目的に法律で定められ、昭和22年4月に第1回の全地方公共団体で一斉に行われました。投票日は前後半に分かれており、今年の第20回統一地方選挙は、道府県や政令指定都市の議会の議員および首長の選挙が4月9日。それ以外の市と東京23区、町や村の議会の議員や首長の選挙は4月23日になります。国政選挙は、あと2年はない予定なので、岸田政権に対して国民が意思を伝える機会がなかなかありません。そんななか、注文をつけるとしたら、この統一地方選挙は非常に大きな要になります。もちろん、国政と違い統一地方選挙で与党が大敗したとしても、自民党内の権力争いに変化が起きる程度で、政権交代になるなど国の政治設計そのものが変わるわけではありません。しかし、物価高や少子化、社会保障費の増大、省エネ対策や教育のあり方など、暮らしの中で改善していかなければいけない問題はたくさんあります。統一地方選挙は、それらの問題に対処し、自分たちの暮らしを直接変えていく選挙です。ですから、積極的に関心を持っていただきたいと思います。いま、僕は統一地方選挙の候補者を取材していますが、「県内に母親の難病を治療できる病院がなく、隣県まで通っていた体験をもとに、自治体間で医療情報の連携が取れる仕組みを作りたい」と、県政にチャレンジする人や、「デジタル化の遅れを取り戻し、住みやすい町作りをしたい」と、市長選に立候補する人など様々です。自分の住む地域だけでなく、ほかの地域の困りごとを知ると、その知恵を生かし、問題解決を望めるかもしれません。危機感を持って、「これをやりたい」「ここを変えたい」と主張する候補者を選ぶといいと思います。逆に具体的な政策のない候補者は、前例踏襲型で現在と変わらない暮らしを続けることになりますから、不満を感じている人は見極めて投票してほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年4月12日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年04月07日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ロシアのウクライナ侵攻から1年」です。誰が主導権を握り終結に向けて働きかけるのか。2月末で、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年が経過しましたが、先行きは全く見通せない状況です。習近平国家主席は2月末に中国の立場を表明、和平案を示しました。中国は戦後の復興に関して建設的な役割を果たす用意があると提言。バイデン大統領はロシア寄りと非難しましたが、ゼレンスキー大統領は、和平に関心を持っていることを歓迎しつつも「ロシアのウクライナ領からの完全撤退を条件に盛り込まないと意味がない」「提案とは考えていない」と反応しました。ウクライナ情勢をめぐっては、今後、主導権がどこに移っていくのかが注目されています。国連総会の決議では、ロシアへの抗議に賛同する国が、1年前とあまり変わらず141か国。その他の国は基本的には親ロシアです。世界全体で見ると、西側のアライアンスは一部にすぎません。これまでも、ロシアと中国に拒否権を発動されて、ロシアへの制裁の足並みは揃わず。これからますます中国主導の国連になっていくことは想像に難くないでしょう。日本は世界のどのアライアンスに入るかが問われますが、中国は日本にとって最大の貿易相手国。一定の経済的結びつきを保ちながら、安保3文書で示したような反撃能力を保持し、伍していくことになりそうです。2月20日、バイデン大統領は絶妙なタイミングでキーウを電撃訪問。「ウクライナを攻撃するということは、アメリカを攻撃することなのだ」というメッセージを強く打ち出しました。翻って日本はロシアに対してもウクライナに対しても、目立った働きかけをしていません。唯一の被爆国として、核兵器の使用は絶対に避けるべきと声を大きくして、世界をリードしているわけでもありません。停戦に向け、人道支援国家としてもっと打ち出せることがあるのではないかと思います。昨年に比べ、ロシア・ウクライナに関するニュースは減少しています。日本にもウクライナから避難してきた方が2000人以上いらっしゃいます。長期滞在により、子供たちの教育の問題も起きています。人々の関心が薄まれば、報道はさらに減ります。ぜひ、関心を持ち続けてほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年4月5日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年03月31日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「マイナ保険証」です。健康情報を一括管理。安心安全なデータ管理を求む。2024年秋に現在の健康保険証は原則、廃止されることになります(廃止後1年間は使用可)。昨年10月より、マイナンバーカードの健康保険証利用が始まりました。今後は「マイナ保険証」へ移行されることになります。マイナンバーカードを取得するかどうかは今までは任意でした。申し込みをした人は、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書を簡単に入手することができます。役所に足を運ばなくても、カードを使って私たち自身でデータを簡単に引き出すことができる。そうやって行政コストを抑えることが、政府がマイナンバーカードの普及を目指している大きな理由のひとつでした。今後、マイナンバーカードが保険証と紐付けられれば、病院のカルテや薬の情報などを同期し、患者の情報を一括管理できるようになります。病院のほうでも、本人確認が自動化され、事務作業の時間もコストも軽減できます。また、高額な医療費は患者がいったん支払い、申請により返金される方式だったのが、一時払いが不要になります。その他、マイナポータルにアクセスすることで、自分の受けた特定健診や処方された薬の情報を閲覧できるようになります。確定申告の医療費控除もe‐Taxに連携され、簡単に。デジタル庁への取材で聞いた話になりますが、政府は今、国民のデータが一部の民間企業に吸い取られていることに危機感を抱いています。なぜなら、それらは海外の企業だったり、中国や韓国の資本が入った企業だったりするからです。日本国で一元的に、しっかりと安全に国民のデータを管理する仕組みがないといけない。その基盤にしたいのがマイナンバーシステムなんです。また、将来的にはマイナンバーカードはモバイル(アプリ)化し、完全なカードレスになることを目指しているようです。結果的に税金の無駄遣いをなくし、給付金なども素早い支給が可能に。経済が苦しい今こそ、デジタル化を進めることは必須だと思います。ただ、私たちのデータを本当に安全に管理してくれるのか?という課題は残ります。国に対しては、きちんとした指揮命令系統の整った運営と、情報の透明性を求めたいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年3月29日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年03月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「賃上げと地方創生」です。事態の改善には小さな地域社会がキーポイントに?1月の消費者物価指数は前年同月比で4.2%上昇。この上昇率は、41年4か月ぶりです。エネルギーや食料品などで物価が上昇するなか、賃上げされるのかどうか。ユニクロは最大40%の賃上げを発表。大手の経団連系の企業や一部の新興企業は、賃金を上げて人材を確保しようという動きが出ていますが、中小企業の6~7割は「賃上げする体力はない」と答えています。日本はデジタル分野では世界に遅れており、農業は依然として生産効率が上がっておらず、サービス業は飽和状態で賃金は下がる一方。インバウンドに期待していましたが、コロナ禍で多くの事業者が潰れました。既存の事業では利益が上がらないということに気づくべきなのだと思います。この状況は一朝一夕では対処できません。求められているのは産業の転換と安定したエネルギーの確保、限られた労働人口の効率的な再配置。教育に投資し、新産業を生み出せる人材を作ることです。そんななか岡山県の西粟倉村に突破口のヒントとなるものを見つけました。西粟倉村は人口約1400人。平成の大合併のときに合併を選ばなかったので、当時は村は衰退するだろうと思われていました。あるのは森のみで、村に産業がなかったからです。ところがこの10年ほどで、課税所得が16.7%上昇、納税者数が7%増加、課税所得平均は9%増となりました。人口が減っても納税者数が増えた理由は、新たな産業を作り新しい雇用を生み出したからです。村では「百年の森林(もり)構想」を策定し、デジタルによって森を管理し、木材の状態ごとにランクづけすることで、効率よく売れるようになりました。また、森で捕獲した鹿やイノシシの肉をジビエに。加工作業は、村の人々が本業の隙間時間に働ける仕組みを作りました。他にも、他県の養殖場から成長の遅かった鰻を仕入れて丁寧に育て直し、「森のうなぎ」としてブランド化。これらはふるさと納税の返礼品にしています。小さな村だからこそ、一人一人の特性も活かし、小回りの利くイノベーションが起こせました。大きくなりすぎた町を分解し再配置することで、個々の所得を増やす道を見出すことができるかもしれません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年3月22日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年03月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大川小学校の教訓」です。東日本大震災から12年が経ちます。宮城県石巻市立大川小学校では、74人の児童と10人の教職員が津波の被害に遭い亡くなりました。12年前の3月11日に地震が起き、津波が来るからと授業は中断され、児童は校庭に集められました。子供たちは、いつも遊んでいる裏山に逃げようと先生に提案しましたが、指示が遅れておよそ50分間校庭にとどまり、あろうことか川のある方向に逃げてしまったために多くの児童が犠牲になってしまいました。なぜ指示が遅れたのか。裏山に逃げなかったのか。現場に行きご遺族のお話を伺い、実際に登らせていただいたのですが、学校のすぐ裏にあり、危険な場所でもないので、全速力で走ればすぐに逃げられたはずと思うと無念でなりません。学校ではその理由に関して回答しませんでした。犠牲になった児童のうち23人の保護者は、責任の所在や原因を明らかにし、二度と子供たちの命が失われることがないよう対策を取ってもらうために、市と県に対して2014年に訴訟を起こしました。裁判は長く続き、’19年10月に、市と県に約14億3600万円の支払いを命じる仙台高裁の控訴審判決が確定しました。学校を運営する行政の、防災に対する事前の不備を指摘し、原告の訴えが全面的に認められた形です。学校の教員には、住民よりもはるかに高いレベルの防災知識や経験が求められるということです。公開中のドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』では、真相を究明しようとした遺族の姿が見られます。小学校の近くには川が流れており、津波が川を遡ってきます。そして堤防が決壊して、被害が広がりました。のちに文科省の調査で、津波の浸水が予測されていた地域に位置する約4割の学校が、津波に対する避難訓練を実施していなかったことがわかりました。東日本大震災を機に、災害時に子供たちをどのようにして保護者に引き渡すかの防災マニュアルが作られました。大川小学校の亡くなった児童の親御さんや生き残った子供たちは、自らが語り部となり、事故の教訓を伝えようという取り組みが続けられています。この悲劇を忘れてはならないと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年3月15日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年03月11日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新型コロナ、5類に移行」です。課題は山積。感染対策は、今後も緊張感を持って。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類相当から5類に変わることになりました。季節性インフルエンザと同じ扱いになります。ただ、課題はたくさんあります。新型コロナ感染者数は周期的に増加しますし、後遺症の問題もあります。感染者数が増えると医療機関が逼迫して、救急搬送を受け入れられない病院も出てきます。岸田総理は1月の記者会見で、5類への見直しに向けて、「原則として、5類感染症とする方向で専門家に議論していただきたいと考えている」と発言しました。本来、専門家の役割は政治判断と離れたところで科学的な知見に基づいて提言すること。専門家と政治判断は緊張関係にあってほしいと思います。その点、東京都では国と歩調を合わせず、東京iCDCという、CDC(アメリカ疾病対策予防センター)にならった専門家チームを作り、独自の提案をしています。5類への移行で大きな論点になるのは、どこまでを公費で負担するかです。2類相当の現在は入院や外来の費用は公費でまかない、無料のPCR検査も行ってきました。これが自己負担になると当然、受診控えが出てくるでしょう。また、医療現場での体制も、5類になることで、新型コロナの疑いがある患者とほかの外来患者を区分けしなくなるので、病院でクラスターが発生することも予想されます。流行の把握や新たな変異株の検出も、状況に合わせて速やかな体制を作っていかなければいけないと思います。政府は3月13日よりマスクの着用のあり方を、屋内外を問わず、個人の判断に委ねる方針を打ち出しました。ただ、国の基準が変わろうと、マスクのルールが緩和しようと、ウイルスの威力は変わりません。コロナ禍がおさまったかのように思われるかもしれませんが、感染対策は変わらず続けていかなければなりません。インフルエンザのタミフルなどのように、新型コロナ治療薬の開発も進んできています。私たちが不安な症状を訴えたときに、近くの医療機関で安心して投薬を受けられる、そういう体制を政府はまず迅速に広げていってほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年3月8日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年03月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日米『2+2』」です。いまいちど日本の防衛軍事について考える岐路に。日米「2+2」とは、日米安全保障協議委員会のこと。日米の外交、防衛担当閣僚や官僚のトップクラスも参加し、外交と防衛の両方の面から話し合います。交渉しながら圧力もかけていくような政策について、緊密な連携をとろうと作られた枠組みです。今年1月半ばにワシントンで開催され、世界の紛争やテロ、ウクライナ戦争、ロシア、中国、北朝鮮への対応、アフリカ・アジア各国の政変などの問題に対して、どう軍事的に対処していくかという日米防衛協力のためのガイドラインを確認しました。今回はサイバー戦や宇宙戦についても言及されました。安保3文書に示されたように、日本の安全保障は大きな転換点を迎えています。これまで保有してこなかった反撃能力に関しては難しい判断に迫られています。たとえば、相手国がこちらを攻撃しようとしていることを突き止め、どの施設からミサイルを発射しようとしているかを事前に特定し反撃を行う。そんな高度な能力はアメリカの協力がなければ持つことはできません。トマホークのような長距離ミサイルも必要になります。ただ、反撃能力を持つことが抑止につながるのか?アメリカが売りたい武器を買わされるだけではないかという意見も出ています。アメリカにとっては、日本と強固な協力体制を持つことは、インド太平洋地域に安定をもたらし、影響力を持ち続けられるメリットがあります。日本は基地費用の肩代わりもするし、兵器を買ってくれる相手でもある。今後は米軍の武器の部品の生産を日本国内で始めることも閣議決定しました。ただ、アメリカや同志国とばかり仲良くしていることで、日本に平穏が訪れるといえるのでしょうか?中国やロシア、北朝鮮といった周辺国と真正面から向き合い、どう外交を築いていくのかも重要でしょう。これまで日本の防衛は、アメリカに任せてきました。防衛や軍事について普段の会話で語られることはほとんどなかったと思います。けれど、政治や憲法、安全保障や軍事についても自分の意見を持たなければいけないところにきています。ぜひ本国会を見て、海外情勢にも注視していただきたいです。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年3月1日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年02月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「安保3文書」です。全文からわかる日本の方向転換。しっかりと議論を。昨年12月、政府は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書を臨時閣議で決定しました。全文を読むと、日本国の姿勢が根本から変わるような計画が書かれていることがわかります。日本は憲法9条で戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めており、武器の輸出はしない、軍隊は持たないと宣言してきました。しかし、安保3文書では反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記しており、これは自衛の範囲内であり、専守防衛の維持は変わらず合憲であると宣言しています。文書によると、日本はこれから防衛産業を持つ国になります。有事に備え、レアアースや次世代半導体を自国で生産できる態勢を整備。また、米軍のために武器の部品を作ることも始めようとしています。今後は防衛産業を、皆が参入したくなるような、魅力的な分野にして、イノベーションを起こそうとしているのです。3文書の中では中国、北朝鮮、ロシアを緊張相手国と名指しした上で、同盟国や同志国との関係強化を目指しています。ODA(政府開発援助)は安全保障戦略の一環と位置付け、たとえば、中国と対抗するためにカンボジアを、ロシアと対抗するために中央アジアの国々を支援するというようなことが始まりそうです。これらの背景には、周辺の安全保障環境の変化がありました。北朝鮮は核を持ち、連続してミサイルを発射するなどの挑発行為がやまず、中国は国力を上げて軍事力を増し、海洋進出への意欲を高めており、ロシアは核兵器の使用さえ疑われるほど不安定な状態になってしまいました。喫緊の課題として、早急に安全保障を強化しないといけないというロジックなんですね。敗戦後の日本は平和国家、人道支援国家を目指し、日米の強固な関係を持ちながらも周辺諸国とも渡り合ってきました。これからは調和ではなく分断が深まっていくでしょう。安保3文書の発表後、北朝鮮は早速、徹底的に対抗すると表明しました。異例なほど早急に閣議決定したことにも驚きました。通常国会ではしっかりとした議論と説明を求めたいです。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年2月15日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年02月10日2023年2月9日朝、任天堂株式会社が定期的に新情報を公開している動画『Nintendo Direct(ニンテンドーダイレクト)』が配信。さまざまな新情報が解禁される中で、根強い人気を誇る『レイトンシリーズ』の新作が発表されました。PVとともに発表されたのは、ゲーム機『Nintendo Switch』向けソフトとして発売予定の『レイトン教授と蒸気の新世界』 。発売日は明かされていませんが、レイトン教授を主人公とした完全新作とのことです。2007年にゲーム機『ニンテンドーDS』用ソフトとして発売されて以来、魅力的なキャラクターや謎解きゲームが高い認識を博す、『レイトンシリーズ』。突然の新作発表に多くの人から喜ぶ声が上がる中、ある点に対し、心配する声が続出しています。それは、レイトン教授の相棒であるルークの声。これまでは俳優の堀北真希さんが演じていましたが、堀北さんは2017年をもって芸能界を引退しました。同シリーズを開発する株式会社レベルファイブは、新作について「レイトンとルークの新たな冒険が始まる」と述べています。新作を発表を受け、ファンからは堀北さんの復帰を望む声や、声優の交代の不安視する声が上がりました。・堀北さんの演じるルークは本当に素晴らしかった。引退が惜しまれる…。・完全に堀北さんの声のイメージが定着しているから、声優が交代するのは悲しいなあ。・どうやってルークを登場させるんだろう?大人に成長した姿なら、声が変わっても違和感がないかも。なお、主人公のレイトン教授は、俳優の大泉洋さんが声を演じています。『レイトンシリーズ』がこんなにも多くのファンに愛されるようになったのは、ゲームの出来がいいのはもちろんのこと、大泉さんと堀北さんの力でもあることでしょう。[文・構成/grape編集部]
2023年02月09日《堀北真希続投でお願いします!!》《ルークの声は堀北真希しかありえんのよ》《堀北真希の声好きだからまた聞きたいんだよな》2月9日の午前中、ツイッターで「堀北真希」がトレンド入り。人気ゲームであるレイトン教授シリーズの完全新作が発売されることが発表されたのだが、過去作品では、主要キャラクター・ルークの声優を堀北真希さん(34)が担当。堀北さんは’17年2月で芸能界を引退していることから、「ルークの声優はどうなるのか」というゲームファンの声が相次いだのだ。トレンド入りを受けて、“堀北真希復帰待望論”がゲームファン以外にも波及。次のような投稿も見られた。《堀北真希復帰してほしい》《声だけなら復帰してもよさそうなもんなのにな堀北真希》《堀北真希さんこのために芸能界復帰してくれ》《真希ちゃん絶対復帰しないと分かっていていながらもつい夢見てしまう……》堀北さんが引退してからもうすぐ満6年になるが、これまでもたびたび復帰を期待する声が上がってきた。「堀北さんの妹でモデルのNANAMIさんが注目を集めた際には姉妹共演を期待する声が上がりました。また、堀北さんがヒロインを演じた『野ブタ。をプロデュース』(’05年・日本テレビ系)が’20年に再放送された際にも“復帰してほしい”という声が多く上がっていましたね」(芸能関係者)’15年に電撃結婚した山本耕史(46)を妻として支えながら、現在は子育て中の堀北さん。復帰の可能性は低そうだが、果たして――。
2023年02月09日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イラン“ヒジャブ”抗議デモ」です。ヒジャブを発端に広がる反政府運動。深刻な人権問題。昨年9月イランにて、ヒジャブ(スカーフ)のかぶり方が不適切と、22歳のクルド人女性マフサ・アミニさんが風紀警察に拘束され、3日後に死亡しました。これに対する抗議デモが拡大し、世界中のセレブリティが女性の自由と人権をSNSで訴えました。イランでは、9歳以上の女性は、国籍や宗教を問わず公共の場では、髪の毛を覆うヒジャブと体の線を隠す服の着用が法律で義務付けられています。事件のあと、イランの抗議デモは国内各地で膨れ上がり、当局はデモ参加者のうち、治安部隊に危害を与えた2人の男性を死刑に処し、2人目は公開処刑を行いました。昨年12月半ばの段階で約1万8000人が拘束され、治安部隊との衝突などにより約490人が亡くなっています。カタールで開かれたサッカーW杯では、イランの選手やサポーターがデモへの連帯を示し、国歌を歌いませんでした。国内でも、プロサッカー選手のアミル・ナスル・アザダニさんがデモに参加したことで拘束され、長期の懲役刑にあたる罪に問われています。イランの国民的俳優のタラネ・アリドゥスティさんは、抗議活動に加わった人を死刑にすることに異を唱え、反革命と暴動を支援する虚偽の情報を拡散した罪で、12月半ばに警察に逮捕されました(※1月4日に釈放)。10月にイスラムの女性に取材したところ、イスラム教の経典コーランでは、女性が男性を誘惑するようなきっかけを作ることが禁じられていますが、ヒジャブのかぶり方まで制約されているわけではないと話していました。つまりこれはとても政治的な意味合いの強い問題です。独裁的な政治家たちが国の統治を強めるために、ヒジャブに言いがかりをつけているのであり、イスラムの教えによるものではありません。民主的な運動で国家体制が崩れることを警戒する統治者が、締め付けを図っているのです。イスラム教そのものに対して、世界で誤解や偏見を生みかねないことを、その方は懸念されていました。イランの男性中心の政治の権力構造が、ヒジャブ着用の問題に表れているということに目を向けてほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年2月8日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年02月04日