第2回 [ 小川菜摘の子育て相談 ]「子育ては完璧じゃなくていい。毎日ご飯を作る余裕なんてないから、お惣菜や出前の日もある。でも、それでいいと思うんです。子どもたちが思っているほど親は立派じゃないということを見せることも大事。私はいつも “そのままの私” で体当たりしてきました」と語る小川菜摘さん。2人の息子さんもそれぞれ成人し、ようやく子育て一段落。改めて、駆け抜けた日々を振り返り子育てのお悩みに答えます。【読者からのお悩み】空気が読めないママ友との関係に困っています。《 お悩みその1》こんにちは、小川さん。私の悩みを聞いてください。相談にのってほしいのは“ママ友”についてです。知り合いに話が長いママ友がいて困っています。彼女的には悪気はなさそうなので途中で話を止めにくい。でも正直、彼女の話ばかりでつまらないし、時間がもったいないんです。子どもの世話や家事など時間はいくらあっても足りず、彼女の話にずっと付き合っていられるほど私も暇ではないので……。この状況、小川さんならどうしますか?《 お悩みその2》子どものお友達ファミリーから毎週のように遊びや食事に誘われます。そのお誘いを断ると、今度は次の週末ならどう?とまた誘われます。以前、4週続けて断ったことがあるのですが、そのときも5週目にまた誘われました。彼女が苦手、ということではなく、パパ同士、ママ同士は平日には会ったりします。ただ、平日ならいいのですが週末までは少し困ります。子供同士は会えば遊ぶけど……くらいの仲なので。私としては、家族全員がゆっくり過ごせるのは週末ぐらいなので、貴重な土日は家族時間がほしいんです。こんなことを考えるのはダメなのでしょうか?主人は「せっかく誘ってくれてるから」と言いますが。(※投稿内容を一部、読みやすいように編集させていただきました。)【 小川さんからのアドバイス 】あえて「ママ友は広く浅く」話が長いママ友、いますね!しかも、話し始めて30秒くらいでオチがわかるんですよね(笑)。たびたびそういうことがあったから、私は先にオチを言っちゃっていました。「それ、こういう話でしょ!?」って。相手も笑えるような感じでね。ママ友とのお付き合いって難しいですよね。もちろん助かることもあるんですよ。仕事のとき、子どもを預かってくれたり。その一方で、陰口を言われていたというトラブルに遭ったことも。幼稚園、小学校低学年のうちは、親も一緒に行動する機会が多いから「うまくやっていきたい」とどうしても思ってしまいますよね。でも、あえて私は「ママ友は広く浅く」と考えていました。この関係はずっとは続かない。だから言うべきことは言ったほうがいいと思うんです。お誘いをお断りすると「カドが立つかしら」と心配になると思うけど、子どものことを考えれば、親は笑って楽しくしているのがイチバン。だから、ママ友、パパ友付き合いも楽しいことが基本。「子どものために我慢したほうがいいかな」というのは、結局は子どものためにならないんじゃないかな。「いつもお誘いありがたいけれど、主人も私も週末しか休みが合わないからごめんね」とやんわり断れば、相手も嫌な気持ちになることはないはず。毎週行きたくなければ、毎週お誘いがあって「ごめんね、今週も予定が入っちゃってるの」と断っちゃって構わない。それで「感じ悪いわね」と言うような人なら、むしろ離れたほうがいい。私の場合、今もお付き合いが続いているママ友は、たった一人だけ。次男が4歳のときに知り合って20年。今では親友です。そんな友人と出会えたことは幸運でした。広くたくさんお付き合いしたなかのたった一人ですから。長い目で見れば、それくらいのもの。今の狭い世界のなかだけで「うまくお付き合いしなきゃ」なんて考えなくていいと思いますよ。最近の小川さんスタイリストさわちゃん、その娘ちゃんと三人で温泉旅行してきました。プリクラって本当に盛り盛りだね(笑)PROFILE26歳で結婚、28歳で第1子、31歳で第2子を出産。小川菜摘Natsumi Ogawa東京都出身。1978年『ゆうひが丘の総理大臣』でデビュー後、文学座演劇研究所入団。数々のテレビドラマや映画に出演。2012年舞台に復帰。2018年7月20日~22日、六本木スペース ビリオン(東京都)にて『リーディング ファム・ファタール! 運命の女 小川菜摘×青木さやか』出演。Photo:Reiko TohyamaText:Yukiko AnrakuComposition:Shiho Kodamaあなたのお悩み募集中!2人の男の子を育て、家事に、仕事にと奮闘した経験を持つ大先輩である小川菜摘さんに「親にも話せない悩みをこっそり相談したい」「自分では解決できない悶々とした感情を諌めることができない」などなど、心に引っかかっていることについて小川さんと一緒に考えてみませんか?※子どもの性別、年齢は問いません。※子どもが生まれてからの夫婦間のお悩みや、親との関係性など。※お母さんだけでなくお父さんからのお悩みも募集中です。お問い合わせありがとうございます。
2018年08月13日何の接点もない男女3人が、窓もなく扉も開かない密室に集められた……。そんな設定から始まる舞台『出口なし』に、大竹しのぶ、段田安則とともに、多部未華子が出演する。屈指の実力派を相手にしながら、このスリリングな状況にどう立ち向かっていくのか。【チケット情報はこちら】『出口なし』の作者は、“実存主義”で知られる哲学者ジャン=ポール・サルトル。劇作家・小説家の顔も持つ彼の代表作がこの作品である。だが、哲学者が書いたという先入観は無用。多部もその中身の印象を、「難しいことが書かれているのかなと思って読み始めたのですが、想像していたほどでもなく(笑)、会話劇だったので、どのように会話を交わしていけるんだろうと演じるのが楽しみになりました」と語る。しかも、その会話を交わすのが3人だけという世界。「ちょうど少人数でやる濃密な作品を演じてみたいと思っていたところでもあった」そうだ。ただ、そこで繰り広げられる会話の内容は、ちょっとコワイ。初対面の人間同士が自分の素性や過去を語り出すなかで、やがて、互いに挑発したり傷つけたりする言葉をぶつけ合うようになっていくのだ。「“この人たちには別にどう思われてもいい”と思うから言えるような、普段は口にできない言葉が並んでいるんです。でも、だからこそそれを言えるのは楽しいでしょうし(笑)。舞台では、映像では求められないような役をさせていただけることがうれしいんです」。まだまだほかにも楽しみにしていることがある。まずは大竹&段田との共演。大竹とは2度目の共演になるが、「この稽古場ではどのように過ごされるのか、どのように演出家さんとコミュニケーションを取って、どうお芝居を作っていかれるのか。もう、全部が楽しみで仕方ありません」。そして、演出を手がけるのが初めてのタッグとなる小川絵梨子であることも、多部がこの舞台に大いに惹かれたところ。「“小川さんとやってみたら面白いよ”と言われることが多かったので、気になっていた方だったんです。それに、女性の演出家さんとやってみたいという興味もずっとあったので、どのような演出をされるのか、何より楽しみなんです」。多部からあふれるワクワク感。それがどんな形になって届けられるのか、心待ちにしたい。公演は8月25日(土)から9月24日(月・祝)の新国立劇場 小劇場での東京公演のあと、27日(木)から30日(日)にサンケイホールブリーゼにて大阪公演を上演する。チケットは発売中。取材・文:大内弓子
2018年07月27日6月より上演されている松坂桃李の主演舞台『マクガワン・トリロジー』。同作の稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】今日の稽古は1部「狂気のダンス」。地下の酒場を訪れたIRA(アイルランド共和軍)の内務保安部長ヴィクター(松坂)は同胞アハーン(小柳心)に情報漏洩の疑いを持ち、司令官ペンダー(谷田歩)とバーテンダー(浜中文一)を巻き込みながら尋問する…。イギリスのポップスが流れて、ヴィクターが馬鹿にした様子で踊る。振付のアドバイザー・本間憲一が「ノリでいいんじゃない?」と言うが、演出の小川絵梨子が「ちょっとした振りが欲しい」と要望。そこで本間が、縄跳びみたいな連続ジャンプや、細かいステップを提案した。意外なことに、そのステップに松坂が苦戦。「あー、苦手だったんだ!」「意外!」と稽古場は笑いに包まれ、本人も苦笑い。本間が「じゃあボックスステップにしよう」とシンプルにすると良い塩梅に。稽古場後方で趣里が一緒に踊っているのが可愛い。他にも銃を取りに行く動作ひとつにスライドを入れるなど、音楽と台詞、動き、感情がシンクロする様は、このシーンの肝と言えそう。革ジャンを着た松坂は汗だくになって取り組んだ。ひととおり振りが決まると、休憩を挟んで、各シーンの返し稽古に。休憩の間も浜中はカウンターから離れず、ボトルやスナックを並べていた。その自然な様子は長いことここで働いているかのよう。ヴィクターがおどおどするバーテンダーにいちゃもんをつけるシーンでは、松坂は歌い、叫び、時には嘲笑するように恫喝。小川は松坂に「本当は(テーブル席に座っている)アハーンに向かいたいのに、なぜお前とやりとりしなきゃいけない?と苛立っている」、小柳に「ヴィクターが何かやりそうだと気になっている」と、役の心情を説明した。小川の演出は、常に誰に対してどのように意識が向かっているのかが明快だ。ヴィクターがドラム缶を叩きエキサイトする様子に、小川は「アハーンはヴィクターの話に乗らない。あまり聞いていなくていい。空気を感じて」と、指示した。ペンダーが来て、3人の激しいやりとりが始まる。小川は「ペンダーとアハーンはハグしてから出て来てください。今日こそふたりでヴィクターに勝ちましょう!」と喝を入れた。丁々発止のやりとりが迫力を増し、見る者は手に汗握ってしまう。が、小川は台詞ひとつひとつを考査し、各自の沸点がどこで上がるのかを組み立ててゆく。迫力に流されない、その緻密さが芝居を膨らませる。演劇の醍醐味が詰まった今作、必見だ。舞台『マクガワン・トリロジー』は7月8日(日)まで、兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、13日(金) から29日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて上演。取材・文:三浦真紀
2018年07月05日映画『スリー・ビルボード』の脚本・監督としても注目される、マーティン・マクドナーの最新舞台『ハングマン』がついに日本上陸。『ウィー・トーマス』(2003、2006年)など過去4度マクドナー作品を手がけてきた長塚圭史が演出を、小川絵梨子が翻訳を手がける。5月12日・13日の埼玉公演を経て、5月16日、東京・世田谷パブリックシアターにて東京公演が開幕した。【チケット情報はこちら】物語は1963年のイングランドにある刑務所から始まる。殺人犯のヘネシーのもとへとやって来た、“ハングマン=絞首刑執行人”であるハリー。しかし冤罪を主張するヘネシーに、「せめてピアポイントを呼べ!」とライバル視しているハングマンの名前を挙げられたハリーは、逆上し強引に刑を執行してしまう。そして死刑制度が廃止となった2年後。ハリーが営むパブに、ムーニーというどこか怪しげな男がやって来て…。マクドナーらしい、乾いた笑いと驚くほどの残酷さが同居した本作。物語の主な舞台となるハリーのパブは、そんな空気に満ち満ちている。ハリーはハングマン時代のプライドを大いに引きずり、常連客は常に酒に溺れ、その中には警部の姿まで。そんな彼らにとっての怠惰な日常は、ムーニーという男の出現により崩れ去る。しかもそれが暴力的な恐怖ではなく、ただじんわりと、しかしはっきりと不気味であるということが、とにかく恐ろしい。この舞台のカギを握るムーニー役だが、今回演じた大東駿介は、これまでのベストアクトと言える出来栄え。一見するとただの好青年だが、ちょっとした言葉のトーン、目線、流暢な話しぶりなどに、裏の顔が見え隠れする。また田中哲司演じる傲慢で不器用なハリー、初舞台の富田望生演じる内気な“周囲いわく暗い”ハリーの娘、シャーリーも強い印象を残す。ほかにもキャスト陣には演劇界の個性派がこれでもかとズラリ。一分の隙もない劇空間を生み出している。開幕直前にはマスコミ向けの囲み取材が行われ、田中、秋山菜津子、大東、富田、羽場裕一、長塚が登場。長塚は作品について、「マクドナーの戯曲の中でも一番激しい、毒々しい作品」と表現。見どころを聞かれた田中は、「あるんですよ、すごいのが…」と言葉を濁す。「予測不能な、すさまじい展開をしていくので、見どころを言っちゃうともったいない」と続ける長塚の顔には、はっきりとした自信が伺えた。長塚の言葉通り、まさに“すさまじい展開”を見せていく本作。観る者のモラルが試される2時間45分だ。東京公演は5月27日(日)まで。その後、愛知、京都、福岡を周る。取材・文:野上瑠美子
2018年05月17日今年のアカデミー賞で大きな話題をさらった映画『スリー・ビルボード』。滑稽で残酷な物語を、ヒリヒリするほどの生々しさとユーモアで描き出したこの作品で監督・脚本を手がけたのは、劇作家として世界的な評価を受けるマーティン・マクドナー。その最新作『ハングマン』が、長塚圭史さん演出で日本初上陸。「マクドナーの戯曲を読むと、すべての登場人物の造形が本当に素晴らしく、おかしみを感じさせると同時に、辛辣な皮肉が込められているんですよね。しかも、その人間模様が織りなす様を面白がりながらも、結末まで辿り着くと僕らの心にアイロニカルなものを残していくんです」日本でマクドナーの名前が広く知られたのは、’03年の舞台『ウィー・トーマス』。自身も過激で凄惨な場面を喜劇的に描いてきた長塚さんの演出は、その戯曲と親和性が高く大評判に。以降’07年までの間に3作の演出を手がけたが、なんと今回、約10年ぶりの邂逅。「マクドナーが5年ぶりに書いた新作戯曲で再会させてもらえたのはありがたい」と話す。「僕自身、しばらく別の方向性の作品に夢中になっていたので、こういうタイプの芝居を作るのが久しぶり。稽古が始まって、いま、非常に鮮度高くやれています(笑)」舞台は、イングランドで死刑制度廃止が施行された1965年前後。絞首刑執行人(ハングマン)のハリーを巡り、物語が展開されていく。「初演されたイギリスでは、死刑制度はすでに博物館的な遺物なんですよ。ただ、歴史的には死刑を進んでおこなってきた国なわけです。倫理的にどっちにつくのか…僕には、マクドナーが、芝居を観て笑っている観客のことも皮肉っているように思えるんです。さらにブラックなのは、この作品が、死刑制度が存続する日本で上演されることですけど(笑)」毒々しさと笑いとをブレンドし、巧妙に構築された「非常に頭のいい戯曲」ではあるけれど、「あまり理知的に作りたくない」と話す。「戯曲を正確にやると、英国的なスマートな芝居になりすぎちゃう気がしているんですよね。僕はもっと大真面目に馬鹿やってる作品にしたいんですよ。もっと過剰にいろんなものを盛り込んで、グチャグチャになればいいなと思うんです」ながつか・けいし1975年生まれ。劇作家、演出家。旗揚げ以来、ユニットとして活動してきた阿佐ヶ谷スパイダースを昨年、劇団化。新作公演『MAKOTO』は8月9~20日に上演。絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、冤罪を訴える容疑者の刑を執行した。2年後、死刑制度は廃止されたが、かつての事件の真犯人らしき男がハリーの前に現れて…。5月16日(水)~27日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作/マーティン・マクドナー翻訳/小川絵梨子演出・出演/長塚圭史出演/田中哲司、秋山菜津子、大東駿介ほか全席指定8500円(税込み)ほかパルコステージTEL:03・3477・58585月12日~13日に埼玉公演が、6月には豊橋、京都、北九州公演あり。※『anan』2018年5月16日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2018年05月14日メジャーリーガーのロッカールームで繰り広げられるドラマを描いた「Take Me Out 2018」が現在、東京・DDD青山クロスシアターにて上演中。本作は2003年のトニー賞で演劇作品賞など2部門受賞した作品で、日本では2016年12月に初演され、今回はその再演となる。前作に引き続き翻訳は小川絵梨子、演出は藤田俊太郎が手掛けるほか、キャストは栗原類、味方良介、小柳心、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘が続投。さらに今作から玉置玲央、浜中文一、陳内将が参加する。【チケット情報はこちら】物語は、メジャーリーグの黒人プレイヤー・ダレン(章平)がメディアを通して「自分はゲイである」と告白することから始まる。ダレンの告白に理解をみせる者、差別する者、拒絶する者、さまざまな人間が現れるが、スタープレイヤーのダレンは「自分のアイデンティティに苦しんでいる子供の励みになれば」と意に介す様子はなかった。しかし、二軍から上がってきた抑えの投手・シェーン(栗原)がインタビューで語った言葉がある事態を巻き起こす――。メジャーリーグチームのロッカールームという野球だけが共通項の人間が集まる閉鎖的な空間で、人種、LGBT、宗教、教育、家柄…などさまざまな要素が絡み合い、登場人物たちの正義や価値観、考え方、性質が浮き彫りになっていく作品。客席が舞台と地続きで両側から覗き見るような構造は、登場人物の感情の揺れが「今ここで起きていること」として生々しく感じられ、客席までロッカールームが広がってくるような感覚にも陥る。再演ということもあり、深みを増した芝居も魅力。新キャスト続投キャスト関係なく、キャスト一人ひとりの芝居がより繊細に、そしてより明確にこの世界をつくりあげており、伝えることへの強い意思を感じた。ダレンの会計士・メイソン役の玉置は、作品の中では唯一野球の外側にいる人間であるメイソンがダレンにもたらすものをくっきりと鮮やかに見せ、それがダレンの心の動きをも際立たせる。また、ダレンのチームメイト・キッピー(味方)のくせものぶりも見事。キッピーが上手に隠すさまざまな“意図”を、小劇場ならではの繊細な芝居によって初演以上にしっかりと伝えていた。また今回は作品の舞台が2003年であること――2001年にNY同時多発テロが起き、イラク戦争が開戦したという時代背景を意識すると、台詞の端々に込められたものもより深く理解できるはず。公演は5月1日(火)まで。チケットは発売中。取材・文:中川實穂
2018年04月03日あるメジャーリーグチームのロッカールームを舞台に巻き起こるさまざまな出来事を描いた「Take Me Out 2018」が3月30日(金)に開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】本作は2003年のトニー賞で演劇作品賞など2部門受賞した作品で、日本では2016年12月に初演され、今回はその再演。前作に引き続き、翻訳は小川絵梨子、演出は藤田俊太郎が手掛けるほか、栗原類、味方良介、小柳心、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘が出演。さらに今作から玉置玲央、浜中文一、陳内将が参加する。立ち稽古が始まって2日目というこの日の稽古は、オープニングからスタート。今回も舞台は中央に設置され、両側に客席があるというつくり。ロッカールームをイメージした可動式のセットも健在で、パズルのように動かすことでさまざまな表現に活用される。“再演”と銘打たれてはいるが、芝居や音楽も一変していた。稽古中、例えば陳内の動きを見て藤田が「今のいいね!」とすぐに取り入れるなど、キャストと演出家の間で積極的にアイデアをやり取りしながら、シーンがどんどんブラッシュアップされていく。そうやって全員で新しい「Take Me Out 2018」をつくりあげようとしていることが伝わってくる。この日は稽古の最初に藤田から「“言葉の演劇”にしたい」という話があり、稽古中も、台詞の奥にあるものや台詞の表現の意味を丁寧に確認し合う姿、台詞をきちんと伝えるために動きを工夫する姿などが見られた。アメリカのメジャーリーグという日本とはどこか違う環境の物語だからこそ、そこがくっきり伝わると印象や理解度は大きく変わってくる。また、両側にある客席から選手のロッカールームを覗き見しているような感覚になる構造は、この作品の魅力のひとつ。ただ、そのロッカールームでキャスト達は着替えなども行うため、舞台上でさまざまなことが同時に起きることになり、そこは本作の面白さでもあるのだが、ともすれば中心で起きている出来事を見逃しかねない。しかし藤田が、ストーリーを進める俳優以外に“今求める動き”を丁寧に解説し、俳優たちもそれに高い能力で応えるため、シーンを重ねる度に出来事がよりクリアに浮かび上がってくる印象を受けた。稽古中、藤田の口から何度か「お客さんを当事者にしたい」という言葉が俳優たちにも伝えられ、そのための演出もつけられていた。思想や宗教、見た目も違うさまざまな人種が、野球をするために集まっているロッカールーム。スター選手のある告白を機に巻き起こる出来事は遠い世界のはずだったのに、覗き見しているうちにいつの間にか自分自身がそこにいた…そんな感覚をぜひ劇場で体感してほしい。公演は、3月30日(金)から5月1日(火)まで、東京・DDD青山クロスシアターにて。取材・文:中川實穂
2018年03月20日レズビアンの主人公とゲイの父親の別れと再生を描き、ブロードウェイで絶賛を浴びたミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』が、2月7日(水)に日本初演を迎える。ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』チケット情報本作は2013年にオフ・ブロードウェイで初演され、2015年にブロードウェイに進出、同年のトニー賞では5部門を受賞(作品賞、脚本賞、作曲賞、主演男優賞、演出賞)した傑作ミュージカル。今作が日本初演となり、小川絵梨子が初めてミュージカルの演出を手掛ける。主人公・アリソンは現在を瀬奈じゅん、大学時代を大原櫻子、幼少期を笠井日向・龍杏美(Wキャスト)の3人で演じ、父ブルースを吉原光夫、母ヘレンを紺野まひる、ベビーシッター兼庭師のロイを上口耕平、アリソンの大学の友人で恋人のジョーンを横田美紀、弟クリスチャンを楢原嵩琉・若林大空、弟ジョンを阿部稜平・大河原爽介(それぞれWキャスト)が演じる。その稽古場に潜入した。最初に登場するのは、漫画家となった現在のアリソン。父が亡くなった年齢(43歳)に差し掛かった彼女は、自ら命を絶った父と自分、そして家族のことを描き始める。そこに現れる、子供時代のしあわせな家族の姿。“調和が取れていてとてもおだやか”な光景に、現代のアリソンはジッと目を凝らす。時の経過によって変色した記憶の断片を見つめなおすために――。幼少期~学生時代の記憶を、現代のアリソンと共に追体験していく本作。けれどただ再現シーンをつなげていくのではなく、そこには案内人(現代のアリソン)がいて、例えば思わず微笑む家族の団欒シーンも、ふと現代のアリソンに目を向けると観客とは違う顔で見つめている。その表情は別の予感を漂わせ、観客の心をざわつかせ、後の衝撃につながっていくのだ。記憶が明らかになるほど「よくある」とは言い難くなっていく物語にグッと引き込んでくれるのは、瀬奈や吉原、大原、紺野、上口、横田と実力派揃いの俳優陣。ひとつの楽曲の中でもグラグラ上下する想いを繊細に表現する歌唱に加え、歌も台詞もない芝居に心を震わされる瞬間も度々あった。また、子供時代のアリソンをはじめ子役たちののびのびとした演技も魅力。稽古前に大人のキャスト達と楽しそうに遊ぶ姿を見かけたが、その関係性が芝居から伝わってくるようだ。作家アリソン・ベクダルによる自伝的グラフィックノベルをもとにした本作。セクシャルマイノリティの父と娘の物語であるが、“理想的な父親”が最後にみせる姿に、誰かを“思い遣る”ということについて、強く問いかけられたように感じた。舞台は2月7日(水)から26日(月)まで東京・日比谷のシアタークリエにて上演。その後、兵庫、愛知を巡演。稽古場映像は左記リンクからご覧いただけます。取材・文:中川實穂
2018年01月30日矢崎広、柳下大、小川ゲン、佐野岳という今注目の若手俳優による4人芝居『Shakespeare’s R&J~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』が1月19日(金)に開幕する。出演者4人に話を聞いた。舞台「Shakespeare’S r&J」チケット情報本作は、アメリカの劇作家ジョー・カラルコが不朽の名作『ロミオとジュリエット』を斬新な発想で脚色し、世界的に話題を集めた戯曲。厳格なカソリックの男子高校生4人が寄宿舎を抜け出し、禁断の書に定められた『ロミオとジュリエット』のページを開く――というストーリーで、演出は新国立劇場演劇研修所のコーチを務め、自身のユニットでも作品を発表している田中麻衣子。「シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をやるわけではないことは、観に来る方に知っておいてもらいたいです」と柳下。4人の役名は<学生1><学生2><学生3><学生4>。名もなき彼らが夜中にこっそりと起き出し、はちきれんばかりの好奇心で『ロミオとジュリエット』を演じ始める。しかし、「やっぱりシェイクスピアの言葉は強い。引っ張られちゃいます」(佐野)と、油断すると『ロミオとジュリエット』をそのまま演じてしまう苦労を語る4人。彼らがみせたいのはそこではないのだ。「寄宿舎の同じ部屋で暮らしている男子学生4人が、この本を手にすることで、しまっていた感情や想いがどんどん溢れていく。それをお客様に覗き見していただくような作品です」(矢崎)。「かなりしっかり掘って、その下でみんなでつながっていかないとうまく見せられないのかなと思っています。だから稽古場ではその性格や関係性を掘り下げる作業をしています」(佐野)。取材は稽古が始まって2週間というタイミングであったが「なかなかカタチにならないというか。けっこうたくさんこねてるんですけど、ひとつ作っては壊し、ひとつ作っては壊し、みたいな。本当にいろんな解釈、方向性、見せ方があるので」(矢崎)、「これからは、すごく細かい作業、例えば声のボリュームだったり、誰を見る見ないだったり、物を取る仕草、座る姿勢…そういう部分を詰めていくことになると思います。本当にちょっとしたことの積み重ねです」(柳下)と繊細に、けれど頑丈に稽古を重ねていた。“学生”の“芝居”という二重構造だが「さらにもう一個層があるというか。『ロミオとジュリエット』を演じている学生たちを僕たちが演じてるっていう。やっぱり身体も精神も変えられないから、完全に学生を演じようとしても滲み出るものは必ずあるので。だからこそ、その俳優がやる意味がある。そういうところも面白いんじゃないかなと思います」(小川)。公演は1月19日(金)から 2月4日(日)まで東京・シアタートラムにて。1月23日(火)・30日(火)アフタートークあり。取材・文:中川實穗
2018年01月16日1月11日、新国立劇場2018/2019シーズンのラインアップ説明会が行われ、舞踊芸術監督の大原永子、次期演劇芸術監督の小川絵梨子が、それぞれ新シーズンの方針を語った。4期目を迎える舞踊芸術監督の大原は英国ロイヤル・バレエで初演され、演出の斬新さや多様性ある振付で注目を集めた『不思議の国のアリス』をオーストラリア・バレエと共同制作のもと、日本のバレエ団として初めて上演することを発表。『くるみ割り人形』『シンデレラ』など新国立劇場を代表するような演目も並ぶ。また、新国立劇場バレエ団所属のダンサーたちの成長にも触れ、「彼らの踊りをみてほしい」と語る。さらに海外で実力をつけたダンサーたちのなかにも、この劇場に立ちたいと熱望している人々がいることを明かし、「20年の歴史は海外のナショナルバレエ団に比べると浅いけれども、一生懸命走って追いつこうとしている」と話した。30代にして演劇芸術監督に就任した小川は「幅広い観客層に演劇を届ける」「演劇システムの実験と開拓」国内外の作り手との交流による「横の繋がり」を方針に掲げ、全キャストをオーディションで選ぶ鈴木裕美演出の「かもめ」、1年間をかけて作品を育てていく「こつこつプロジェクト」など特徴ある試みを発表。かねてよりファンだったという少年王者舘の新作公演や、同世代で信頼をおいている上村聡史演出によるギリシャ悲劇「オレステイア」の日本初演など、魅力的な演目が並ぶ。また、小川自らの芸術監督就任後初演出作品としては登場人物が3人のみのデイヴィッド・ヘアの「スカイライト」を蒼井優主演で上演することも発表された。オペラ部門の芸術監督に就任する大野和士は「オペラ、バレエ、演劇の部門を横断し、ひとつの作品をそれぞれで上演するようなこともできたら」と新たなコラボレーションが生まれる可能性を示唆。新シーズンを迎える新国立劇場に期待が募る。説明会後の演劇記者懇親会に参加した小川は「自分の任期だけでなく、50年後を見据えて長い目で取り組みたい」と表明。上演の有無さえ決めず、じっくりと時間をかけて作品と向き合う「こつこつプロジェクト」について問われると「自分も参加したいほど。私自身、千秋楽の日に“ここから稽古を始めたい”と思うことがあるんです!」と熱弁。さらに「たくさんの観客を呼べる公演と、練り上げることを第一とした公演、両極端のものをやりたい。それは決して相反するものではないとも思う」と意欲を見せた。2018/2019シーズンは10月からスタートする。取材・文/釣木文恵
2018年01月12日グループとして、ソロとして、芸能界のトップで輝き続けた嵐。そんなメンバーに、今年の思い出、お気に入り、お正月の過ごし方からプライベートまでを聞きました!ホンネで答えてくれた30問30答の中から、10問10答を抜粋し紹介! ■松本潤(34) ――’17年、いちばん感動したことは? 「伊達公子さんに会ったことかなあ、引退されたばかりのころにテレビ番組で初対面がかなって。とても素敵な方でした」 ――’17年、キツかったことは? 「夏の暑さかなあ。ドラマの撮影でずっとスーツを着なきゃいけなかったのは大変でしたね」 ――最近ハマっているのは? 「舞台鑑賞。この間、(生田)斗真と菅田将暉くんの舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を見たんです。小川絵梨子さんの演出でめちゃめちゃ面白かった」 ――1カ月のオフがあったら? 「海外に行きます」 ――忘れられない人は? 「蜷川幸雄さんや中村勘三郎さんの顔がすぐに浮かぶかなあ。今もなお忘れられない“表現者”ですね」 ――’17年、印象に残った人は? 「宇崎竜童さん。めちゃめちゃ素敵でした。物腰はやわらかくて、でもこだわりは感じられて」 ――今だから話せる紅白の裏話は? 「TOKIO兄さんたちと楽屋が隣になったときにひとつのテレビをみんなで見て。そういう時間も楽しかった」 ――1月1日の朝、何をする? 「ドラマの準備。年明け早々、がっつり撮影が入るので」 ――’17年の嵐を振り返って 「グループとしても、個人としても、たくさんいろんなことをやらせてもらったなあ。毎年アルバムを出して、ライブツアーをやらせていただいてと、それ自体、本当はすごいこと。充実した1年を過ごせたことを改めて感謝します」 ――ファンへのメッセージを 「これからもいい音楽を作って、いいライブをやって、いい作品と出合いたいと思います。素敵な思い出をひとつずつ蓄積していこうね!」
2017年12月27日絵になるなあ……!生田斗真の出ている作品を観るたび、やや日本人離れした立体的な顔立ちに感嘆する。だが、この場合の“絵になる”は、その顔立ちによってひとりだけ際立っているということよりも、作品世界にものすごく馴染んで溶け込んでいるということだ。例えば、心地よさそうな部屋のなかで編み物をする『彼らが本気で編むときは、』(17年)、殺風景な部屋で精神鑑定を受けている『脳男』(13年)、大正末期から昭和初期くらいの日本の風景にたたずむ『人間失格』(10年)等々……彼の出ている映画やドラマのどこを切り取っても、フェルメールやレンブラントの写実画のような、一枚の絵画として成立しそうだ。○自意識を出さずに存在できる生田斗真広瀬すず演じる女子高生・響と、生田斗真演じる高校教師・伊藤の恋を描いた『先生! 、、、好きになってもいいですか?』における生田も、高校の体育館、教員室、屋上……とどこでも露出オーバー気味な画面のなかに、ともすればその光に溶けてしまいそうなほど正しい地味さで収まっていた。地味は褒め言葉である。伊藤先生は、決してイケメン先生ではなく、生徒から変わり者と目され、わりと敬遠されている設定だからだ。にもかかわらず、響は彼に恋してしまう。立場上、最初は距離をとっていた先生だったが、響の一途さに次第にほだされていく。先生は、あくまでもヒロインの想いの丈を受け止める役割であって、彼からことさら何かを発する必要性がなく、よけいな自意識をいっさい出さずにそこに存在することは、何かするよりも技巧的。それこそが、スターやアイドルではなく俳優の仕事である。アイドル事務所というイメージが強いジャニーズだが、アイドル活動をしている者たち以外に俳優活動を主としている者たちもいて、生田斗真はジャニーズ俳優部の代表格である。俳優部というとほかに、風間俊介、男闘呼組というバンド活動から俳優にシフトした岡本健一などがいる。ジャニーズ事務所に入った男子は、まずジャニーズJr.を経たのち、アイドルグループを組んでデビューしていくことがスタンダードななか、生田はグループに所属したこともあるものの、すぐにひとりになって俳優業をやるようになる異端児だった。俳優デビューは、朝ドラ『あぐり』(97年)で、注目されるようになったのは、その10年後の『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』(07年)。意外と時間がかかったがそれ以降は順調に映画や舞台などで活躍し、2019年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(脚本:宮藤官九郎)に、日本初のオリンピック選手として選ばれたひとり三島弥彦役で出演が決定している。○幅の広さが光る前述したような、文学的な作品や少女漫画原作の作品などに多く出る一方で、宮藤官九郎が脚本を手がける少年ギャグ漫画的な作品や、劇団☆新感線の派手な音楽劇などでも力を発揮する幅の広さをもっている生田。現在は、トニー賞(『コースト・オブ・ユートピア』)やアカデミー賞最優秀脚本賞(『恋におちたシェイクスピア』)などを受賞しているトム・ストッパードの『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(小川絵梨子演出 以下ロズギル)に出演中だ(11月26日まで)。これまた、シェイクスピアの『ハムレット』やベケットの『ゴドーを待ちながら』などを下敷きにした文学的な演劇で、生田の役は、ハムレットの友人のひとりローゼンクランツ。相方がいて、つねに二人組として行動し、名前と見た目を混同されてしまう影の薄いキャラだ。相方ギルデンスターンは菅田将暉が演じている。『ハムレット』では彼らの出番はほんのすこしだが、『ロズギル』は彼らが主役。とはいえ、決して活躍することのないまま死んでしまうことになる不条理な作品だ。様子のおかしいハムレット王子のことを探るという大仕事を任されるのだが、彼らはただ状況に巻き込まれているだけ……。実力と人気を兼ね備えた俳優として、引く手あまたの生田と菅田。ふたりとも、シェイクスピア劇で主役を演じたこともある(生田は『ヴェローナの二紳士』、菅田は『ロミオとジュリエット』)ふたりが、地味な脇役役というのが、この舞台のおもしろさのひとつでもある。意外とこの作品に彼らが合っているんじゃないかと思うのは、生田も菅田も、作品に溶け込み、その人物にしか見えないくらいになるタイプだから。以前マイナビニュースで、“漫画と実写の誤差を見極める正確な物差しを持っている”と、菅田将暉の優れた描写力について書いたことがあるが、描写力では生田も負けてない。トランスジェンダーを演じた『彼らが本気で編むときは、』や、女性役を演じた舞台『ミシマダブル「サド侯爵夫人」』での女性の仕草などもかなり完ぺきだった。数値で正確に製図するような菅田に対して、生田は、例えるなら、お手本を見ながらろくろを回しながら器を作っていくと、かなり同じものができていた! みたいな印象がある。今回の役も、どっちがロズでどっちがギルか、間違えられがちなロズとギルだが、それなりに個性はあって、いろいろ考えるほうがギルで、ロズは深く考えないほう。これは菅田と生田の個性に合っているような気がしないでもない。顔立ちは鋭利なのに、なんだか柔らかそうな身振り、手つきで、役にアプローチする生田斗真。そして、また、一服の絵画が生まれる。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年11月13日シェイクスピア悲劇「ハムレット」での端役コンビで、しかも最後は登場さえもさせてもらえず、“ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ…”の一行だけで片付けられてしまった哀しいふたり組“ロズとギル”。この戯曲の一番の魅力は、どうあがいても日の目を見ることのない影の薄い凡庸で憐れなふたり組を描き不条理劇として成立させたこと。舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」チケット情報斬新な発想で新たな劇世界を生み出した劇作家トム・ストッパードの金字塔的な作品を気鋭の小川絵梨子が演出。そしてあまたのコンビのなかでも今回は最強とも言える生田斗真=ロズと菅田将暉=ギルの初共演で10月30日(月)開幕した。上演にあたり、小川は「ロズとギルふたりの旅路は、人が生まれて死んでいくまでの人生そのものです。ふたりの哀しみと可笑しみは、人間の存在そのものなのだと思います。なぜふたりは死ななければならなかったのか……ふたりの哀しい運命と世界の不条理さが、決して重苦しくなく、むしろブラックコメディとして描かれているのが、この戯曲の凄さです。今回、このふたり組を、真っ直ぐなエネルギーをもつ生田さん、菅田さんに演じていただけるのが本当に嬉しいです」生田「哲学的な要素や言葉遊びが多い戯曲で、何重にも入れ子構造になっているので、丁寧に台本を読み解いていく小川さんの稽古が、とても有難かったです。実質は死に向かう殺伐とした物語なのに、ロズがボケてギルが突っ込むテンポ良い掛け合いの面白さが楽しめるのもこの戯曲の魅力です。関西出身の菅田君は、何をやっても絶妙の間合いで突っ込んでくれるのが頼もしい!なんだか普段の会話もロズとギルみたいになっています(笑)」菅田「“稽古場に行けば、小川さんと斗真くんがいる、できないことがあっても、皆と一緒なら何かが進む”そんな毎日でとにかく通うのが楽しい稽古場でした。斗真くんがあの顔立ちで“ボケ”る可愛げもたまらない(笑)。今回、ギルの台詞量は膨大で難しい言葉も多いし、最初は“新たな挑戦”のような気持ちでいたんです。でも、稽古に入ってから、どこか“新入生”のような、俳優としての原点に立ち返ったような感覚になっています。とても有難い現場です」とそれぞれに意気込みを語った。公演は10月30日(月)から11月26日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。
2017年10月31日俳優の生田斗真と菅田将暉が30日、舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』の最終通し稽古を終え、開幕直前コメントを寄せた。同作はイギリスの巨匠トム・ストッパードの代表作で、1966年より全世界の演劇ファンに『ロズ・ギル』の愛称で呼ばれて親しまれている名作。シェイクスピア『ハムレット』の最後の最後で「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ……」と一言だけで片付けられてしまった2人組を主人公にした、いわば「ハムレットのスピンオフ戯曲」となる。翻訳・演出は、歴代最年少の30代で次期新国立劇場演劇部門の芸術監督に任命された、小川絵梨子が務めることでも話題に。他、林遣都、半海一晃、安西慎太郎、松澤一之、立石涼子、小野武彦が出演する。小川は「ロズとギル2人の旅路は、人が生まれて死んでいくまでの人生そのものです。2人の哀しみと可笑しみは、人間の 存在そのものなのだと思います」と語る。2人の運命がブラックコメディとして描かれていることが「凄さ」と表し、「この2人組を、真っ直ぐなエネルギーをもつ生田さん、菅田さんに演じていただけるのが本当に嬉しいです」と感謝した。公演は10月30日~11月26日、東京・世田谷パブリックシアターにて行われる。○生田斗真(ローゼンクランツ役) コメント哲学的な要素や言葉遊びが多い戯曲で、何重にも入れ子構造になっているので、丁寧に台本を読み解いていく小川さんの稽古が、とても有難かったです。実質は死に向かう殺伐とした物語なのに、ロズがボケてギルが突っ込むテンポ良い掛け合いの面白さが楽しめるのもこの戯曲の魅力です。関西出身の菅田君は、何をやっても絶妙の間合いで突っ込んでくれるのが頼もしい! なんだか普段の会話もロズとギルみたいになっています(笑)。○菅田将暉(ギルデンスターン役) コメント「稽古場に行けば、小川さんと斗真くんがいる、できないことがあっても、皆と一緒なら何かが進む」そんな毎日で、 とにかく通うのが楽しい稽古場でした。斗真くんがあの顔立ちで“ボケ”る可愛げもたまらない(笑)。今回、ギルの台詞量は膨大で難しい言葉も多いし、最初は「新たな挑戦」のような気持ちでいたんです。でも、稽古に入ってから、どこか「新入生」のような、俳優としての原点に立ち返ったような感覚になっています。とても有難い現場です。
2017年10月30日七輪で焼くレトロな雰囲気が魅力のホルモンバル大阪の天満にある「肉問屋・ワイン・ダーツ ホルモン小川商店」は、焼肉屋さんとは思えないかわいらしい外観が特徴です。オレンジ色の電球が光るレトロな店名の看板が目印。店内は昭和モダンな雰囲気で、タイル張りのカウンターやテーブル席には七輪が用意され、肩肘張らずに一人でも入りやすいお店です。お店の奥にはダーツがあり、食事を済ませるとダーツで遊ぶことができるユニークなお店です。食べごたえのある看板メニュー「メガ丸腸」「メガ丸腸」(972円)は、全長がおよそ30センチもある食べごたえのある一品。プリプリでジューシーなレア部位が丸ごと味わえます。七輪で焼いた新鮮なホルモンは、おいしさがギュッと閉じ込められ、さばきたてのホルモンの臭みのない味わいがクセになります。焼いている途中で切ると旨味が逃げてしまうので、焼きあがるまで我慢して食べるのがおすすめ。他のホルモンメニューも豊富なので、色々な味わいを少しずつ楽しめます。特性ダレに絡めていただく「炙りシャブリブロース」リブロースのとろける旨味が味わえる「炙りシャブリブロース」(1,058円)は、自家製のこだわり玉子ダレにくぐらせていただくのがおすすめ。焼き色が付き始めるくらいにサッと焼いてタレに絡めて食べると、肉の甘みが口いっぱいに広がります。きれいにサシが入った特大のリブロースは薄切りで、柔らかく口どけも滑らか。肉問屋の看板を掲げるお店の上質なお肉が楽しめます。こだわり素材の「蘭王玉子を使ったフレンチトースト」人気のデザートメニューのひとつが、「蘭王玉子を使ったフレンチトースト」(486円)。甘さ控えめなあつあつのフレンチトーストに冷たいバニラアイスがよく合います。コクがあり濃厚な「蘭王玉子」をたっぷり使ったソースに、バケットをしっかりと浸しふっくらと焼き上げました。お肉だけでなくデザートまで、こだわり素材を使ったおいしい味わいが堪能できます。お肉もワインもダーツも一度に楽しめるお店こちらのお店では厳選されたお肉とおいしい純正ホルモンが味わえます。七輪で焼き上げる絶品ホルモンのとりこになり、リピーター続出中のお店ですが、焼肉なしでも、ワインバーやバルとしても利用できます。店内奥のダーツで400点以上ゲットすれば、生ビールやソフトドリンクなどのサービスもあり、いつもとはひと味違った楽しみ方ができるお店です。「肉問屋・ワイン・ダーツ ホルモン小川商店」は、阪急千里線・大阪市営地下鉄堺筋線・谷町線「天神橋筋六丁目駅」12番出口から徒歩6分、JR大阪環状線「天満駅」から徒歩5分と、アクセスの良い場所にあります。おいしいお肉や七輪焼きのホルモンはもちろん、ワインやダーツも楽しめるお店へぜひ足を運んでみてください。スポット情報スポット名:肉問屋・ワイン・ダーツホルモン小川商店住所:大阪府大阪市北区池田町7-11電話番号:06-6352-2941
2017年10月08日アンソロジー(ANTHOLOGIE)デザイナーの小川圭司がセレクトしたアイテムを取り揃えるセレクトショップ「ART(アート)」が、2017年8月26日(土)に渋谷にオープンする。ファッションアイテムを中心に、強いこだわりを持って表現された作品を小川圭司が厳選し、「作る人、着る人の感性を表現する場」として発信。渋谷2丁目にファッションの新たな空気感を生み出すセレクトショップとして営業する。biscuithead、UNSLACKSなど、独自の世界観を表現するブランドをセレクトして取り扱う。小川圭司がコム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)での経験を経て設立したブランドであるアンソロジーも販売。アンソロジーは取扱店舗を絞り、「ART」が都内唯一の展開店舗となる。店舗にはアーティストの木村浩一郎によるアート作品を内装に取り入れ、ショップ空間そのものが表現を発信する場になるように演出されている。オープンに際して、特別商品や一点ものの販売を行う。また、シーズンに捉われず、不定期で新しいブランドやアート作品を展開していく。【詳細】セレクトショップ「ART」オープン日:2017年8月26日(土)住所:渋谷区渋谷2-8-2 2F営業時間:12:00-20:00
2017年08月28日小川絵梨子演出「CRIMES OF THE HEART -心の罪-」が9月2日(土)に開幕する。舞台「CRIMES OF THE HEART -心の罪-」チケット情報本作は、1981年にピュリツァー賞・ニューヨーク劇評家サークル賞を受賞したべス・ヘンリーの戯曲で、小川演出版の今作には、安田成美、那須佐代子、伊勢佳世、渚あき、斉藤直樹、岡本健一が出演する。開幕を約2週間後に控えた稽古場に潜入した。物語は、三人姉妹の末っ子・ベイブが上院議員の夫を銃で撃ち、朝刊の一面を飾ることから始まる。しかし実は、描かれるのは“事件”ではない。40歳の長女・レニー(那須)、37歳の次女・メグ(安田)、34歳の三女・ベイブ(伊勢)の、可笑しくて愛おしい三姉妹の“絆”だ。この日、稽古が行われたのは三姉妹のシーン。親代わりの祖父が危篤状態になったことを明かす場面だが、最初は病状について真剣に語り合っていたはずが、気付けば徹夜明けのテンションで笑いが止まらなくなったり、靴のかかとの修理を始めたり、姉の恋を応援したり…。いくつもの笑えない状況を抱えたまま気ままに過ごす3人の姿から、不思議なほどに互いへのいたわりや、深い諦めが感じられ、姉妹が歩いて来た険しい道のりを思わずにはいられないシーンとなっていた。暗い雰囲気になってもおかしくない物語だが、自然と笑いが存在し、テンポもよく、観やすいのは、俳優そして演出の成せる技。責任感が強い長女、奔放な次女、無邪気だが爆弾を抱える末っ子…その一見よくある三姉妹の、実はハードな生い立ちや孤独が滲む芝居は見事で、さらに渚や斉藤、岡本が、姉妹それぞれの内に秘めた感情を鮮やかに浮き立たせていた。稽古後、小川に話を聞くと、「稽古は楽しいです。メンバーがみんな素敵な方なのでありがたい」と笑顔。本作は、7月6日に急逝した中嶋しゅうの企画ということで「しゅうさんのおかげでつくらせてもらっている、という感じで。それが一番です。今回のメンバーはみんなしゅうさんと親しい方ばかりですし、しゅうさんの企画なので。そういう意味では本当にしゅうさんと一緒にっていう気持ちで。そしてこのメンバーで楽しくやらせていただけるのは、しゅうさんのプレゼントだなと思います」。「タイトルの印象で重い感じかなと思われるかもしれないですけど、基本的にはコメディなので。気軽に観に来ていただけると嬉しいです!」と小川も言うとおり、姉妹のタフでしなやかな姿に、笑わされ、励まされ、やさしく心を揺さぶられる本作。公演は9月2日(土)から19日(火)まで東京・シアタートラム、9月22日(金)に神奈川・やまと芸術文化ホール メインホールにて。取材・文:中川實穗
2017年08月28日2016年にストッパード作品「アルカディア」日本初演を手がけたシス・カンパニーによる「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の今秋上演が決定。全世界の演劇ファンに、「ロズ・ギル」の愛称で呼ばれ、愛され親しまれてきた戯曲。あまたのコンビのなかでも今回は最強とも言えるロズギルコンビが誕生。卓越した表現力で益々輝きを増す生田斗真と、破竹の勢いで音楽活動にも進出した菅田将暉の初タッグに、歴代最年少の30代で、次期新国立劇場演劇部門の芸術監督に任命された気鋭の演出家:小川絵梨子を翻訳・演出に迎え、躍動感あふれる「ロズ・ギル」が始動。舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」チケット情報シェイクスピア悲劇「ハムレット」の最後の最後で、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ…」の一行だけで片付けられてしまった、凡庸で憐れなふたり組「ロズとギル」。本家ハムレットでは、どうあがいても日の目を見ることのない影の薄いふたりを、堂々の主人公に引っ張り出し、「ゴドーを待ちながら」のような不条理劇として成立させた演劇性。その一方で爆笑にあふれたエンターテインメント性で観客を引き込む魅力作。コインの裏表をかけながら、森の中を行く、ごくごく普通のふたり組。彼らの名はローゼンクランツとギルデンスターン。デンマークの王子・ハムレットがどうやら正気を失ったらしい、と義父となった国王・クローディアスが、その真偽を調べるために、ハムレットの学友だったふたりを呼び寄せたのだ。自分たちの旅の目的は分かるけれども、その目的をどう果たせばよいのか分からないふたり。物語は粛々を進み、そして自分たちも物語のひとつとして、なす術もなく、どんどん死が待つ終末に向かって運ばれていく「誰でもない彼ら」。 かくて運命に流されたふたりは、この短い台詞によって存在を完全にかき消されてしまうのだろうか…。出演にあたり、生田「今回は「かもめ」以来の翻訳劇です。翻訳劇はどうしても、「難しそう…」というイメージがあるかもしれませんが、そのハードルの高さを少しでも取っ払って、「演劇って面白い!」、「舞台ってこんなに夢がある!」、そう皆さんにお伝えする事が、自分たちの使命だと思っています。 肩の力を抜いてご覧頂けるような楽しい舞台にしたいと思っています」菅田「今回は「ロミオとジュリエット」以来の舞台ですが、久々のライブでの芝居や演出の小川絵梨子さんから得る新たな刺激を楽しみにしています。小川さんの演出を受けたことがある役者仲間は皆、「大変だった…」と口では言うんです。でも、皆、とてもいい顔つきになっているんですよね。だから、僕も、小川さんには鍛えていただきたい、と思っています」とそれぞれに意気込みを語った。公演は10月30日(月)から11月26日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。
2017年06月16日俳優の生田斗真と菅田将暉が、舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』に出演することが16日、わかった。同作はイギリスの巨匠トム・ストッパードの代表作で、1966年より全世界の演劇ファンに『ロズ・ギル』の愛称で呼ばれて親しまれている名作。シェイクスピア『ハムレット』の最後の最後で「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ……」と一言だけで片付けられてしまった2人組を主人公にした、いわば「ハムレットのスピンオフ戯曲」となる。翻訳・演出は、歴代最年少の30代で次期新国立劇場演劇部門の芸術監督に任命された、小川絵梨子が務める。物語は『ハムレット』の裏側で展開する。正気を失ったデンマークの王子・ハムレットについて調べるため、ハムレットの義父である国王・クローディアスに呼び寄せられたハムレットの学友・ローゼンクランツ(生田斗真)とギルデンスターン(菅田将暉)が呼び寄せられた。ただオタオタする二人は、旅の目的を果たす方法がわからないまま、死が待つ終末に向かって運ばれていく。同作ではハムレット役に林遣都、クローディアスに小野武彦を迎える。他、半海一晃(座長役)、安西慎太郎(オフィーリア/ホレーシオ役)、田川隼嗣(アルフレッド役)、松澤一之(ポローニアス役)、立石涼子(ガートルード役)、林田航平、本多遼、章平、長友郁真が出演する。上演は世田谷パブリックシアターにて10月30日~11月26日。9月16日より一般前売開始。○生田斗真コメントチェーホフ「かもめ」以来、久々の翻訳劇です。翻訳劇って、最初はどうしても、「難しそう……」 というイメージがあるかもしれませんが、そのハードルの高さを少しでも取っ払って、「演劇って面白い!」「舞台ってこんなに夢がある!」、そう皆さんにお伝えする事が、自分たちの使命だと思っています。これまで多くの素敵な先輩たちが取り組んでこられた面白い作品です。肩の力を抜いてご覧頂けるような楽しい舞台にしたいと思っています。菅田くんとの共演は初めてです。役柄上、2人で一緒にいる時間が圧倒的に多いのですが、一緒にやれると決まったときから、「気持ちよくやれそう!」という予感があり、ずっと楽しみにしてきました。菅田くんと一緒に、まずは自分たちも楽しく演じることを大事にしたいと思います。演出の小川絵梨子さんとも初めてご一緒します。とにかく小川さんが手がける舞台は、十発十中、面白い! 僕らで、その期待にも沿えるよう頑張ります!○菅田将暉コメント舞台は、毎回とても高い経験値がもらえます。今回は、蜷川幸雄さん演出の『ロミオとジュリエット』以来3年ぶりの舞台ですが、久々のライブでの芝居や演出の小川絵梨子さんから得る新たな刺激を楽しみにしています。小川さんの演出を受けたことがある役者仲間は皆、「大変だった……」と口では言うんです。でも、皆、とてもいい顔つきになっているんですよね。だから、僕も、小川さんには 鍛えていただきたい、と思っています。生田斗真さんの舞台は、もちろん何度も拝見していますが、ステージからの圧倒的な迫力が強烈に記憶に残っています。あの迫力に負けないように頑張らないと……ですね。そして、生田さんとは、演技中もずっと2人一緒に動いているのですが、実は、芝居以外で楽しみにしていることがあります。僕、鼻フェチというか……(笑)、生田さんの鼻スジや横顔って本当にキレイですよね。一緒に芝居をして、一番間近でキレイな横顔を見られて、しかも独り占め! それが楽しみです。
2017年06月16日新国立劇場が30代の演出家たちを迎えて送る「かさなる視点―日本の戯曲の力―」。若手の演出家が昭和30年代の近代戯曲に取り組むシリーズのフィナーレを飾るのは、次期新国立劇場演劇芸術監督に就任が決定している小川絵梨子による田中千禾夫の長編戯曲『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』。4月中旬、その稽古場を訪ねた。舞台『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』チケット情報作品の舞台は終戦後、原爆によって被爆した長崎。無惨に破壊された浦上天主堂の側で暮らす人々を、三人の女性を主軸に描く。昼は看護婦、夜は娼婦として働く鹿(鈴木杏)。とある恨みを胸に秘めながら原爆症の夫の世話をしている忍(伊勢佳世)。鹿と忍とともに病院に勤める静(峯村リエ)。浦上天主堂マリア像の残骸を保存しようと行動する女たちと、それを取り巻く男たちの、か弱くも力強く生きようとする姿を描いた、昭和34年初演の名作である。稽古場の扉を開けると、まず大掛かりな舞台美術が組まれているのが目に飛び込んできて、作品のスケールの大きさを予感させる。続いて、壁一面に貼られた長崎の浦上天主堂にまつわる資料。昨年の秋に、小川が長崎を訪れて撮った写真も貼られている。現存する被爆のマリアの写真もあった。長崎の方言の表や、当時のキリスト教者の習慣を書いた紙など、稽古場を挙げて全員が歴史や宗教の勉強に取り組みながら作品づくりをしていることがわかる。演技の方向付けを俳優とともに探りながら、戯曲の解釈についての俳優からの質問に丁寧に答える小川。「今この場で起こってることを重視してほしい。想像と体感の両方に演技の軸を置くことが大事」と忍役の伊勢にかけていた言葉が印象的だった。小川は自らも舞台上にあがり、近い距離感で俳優に動きの指示を与える。舞台に寝転がってみせたり、表情ゆたかにくるくると立ち回る様子を見て俳優陣からは時に笑いもこぼれる。鹿の台詞がキッカケで、舞台美術が回り、転換する場面があるのだが、これまで数々の舞台で磨かれてきた鈴木の声は深く重く響き、本作を支える大きな柱としての存在感を感じた。筆者が訪れた稽古時間には、三人の女性のひとり、峯村リエの出番はなかったが、献身的で寡黙な中にも深い情熱を持つ役どころを彼女がどう演じるのか、他の出演者を見ながら想像と期待が膨らんだ。小川に、本作のテーマのひとつである「母性」にどうアプローチしていくか質問すると「母性もそれを突き放した冷たさも表れている。その葛藤を丁寧に描きたい」と答えてくれた。公演は5月10日(水)から28日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。取材・文:落 雅季子
2017年04月27日シアターコクーンにふたつの特設小劇場が出現。気鋭の演出家:小川絵梨子初めてのシアターコクーンへのアプローチとなる本公演では、シアターコクーン内にそれぞれ通例の舞台仕様とは異なったふたつの小劇場を特設し、近代演劇の先駆者ストリンドベリの二大傑作を連日交互に上演する。1日に2作の稽古を行うタフで情熱的な演出ぶりにキャスト・スタッフも一丸となりその熱意に応えようと、2か月近い稽古期間を駆け抜けいよいよ本番開幕となった。「令嬢ジュリー」/「死の舞踏」チケット情報「今回、シアターコクーンにふたつの小劇場を設けて2作品を交互に上演します。それぞれ男女3人の芝居ですが、「令嬢ジュリー」が若い世代の物語だとすれば、「死の舞踏」は死を意識する成熟世代の物語。直接的なつながりはありませんが、それぞれの男女観の捉え方など、それぞれ異なる舞台空間と共に、その対比を意識しながら両作品を楽しんでいただけたら幸いです」(小川絵梨子コメント)『令嬢ジュリー』に登場するキャスト陣は、小野ゆり子、城田優、伊勢佳世のフレッシュな顔ぶれ。数々のドラマ、舞台で、多くの演出家からその実力を認められてきた小野ゆり子が、高慢な奔放さとガラス細工のような繊細さを併せ持つジュリーを演じる。また、日本のミュージカル界を牽引する存在であり、2016年度読売演劇大賞優秀男優賞にも輝く城田優が、本格的なストレートプレイに真正面から取り組む。階級制度に甘んじながらも屈折した野心を内に秘めた男ジャン役に。ジュリーの対極にあり、この時代の倫理感を投影した料理女クリスティン役を、長年活躍してきた「イキウメ」退団後、最近ではドラマやCMでも活躍中の伊勢佳世が演ずる。一方、『死の舞踏』では、池田成志、神野三鈴のベテランふたりが、「小さな孤島」を舞台に、まるで地獄絵図のような罵り合いを繰り広げながらも別れない夫婦エドガーとアリスとして登場。そこに、久々にアメリカから戻ってきた、夫婦との因縁も深いアリスの従兄弟クルト役として、大人気の演劇ユニット TEAM NACSから音尾琢真が参戦。会話劇とはいえ、まるでボクシングのリングが現れたのかと見紛うほど、騒然とした闘いを繰り広げる。錚々たる演出家たちを唸らせ、演劇界を縦横無尽に駆け抜けてきた池田成志、聖母のような微笑に強靭でしなやかな精神を宿す神野三鈴、 そして、昨今、硬軟さまざまな役柄を演じ注目の音尾琢真が創り出す、どこかダークな笑いにも彩られた不可思議な世界は必見。若い男女の官能的な愛と欲望がもたらすスリリングな心理劇『令嬢ジュリー』と、熟年男女の激しい愛憎の応酬をシニカルなタッチで描いた『死の舞踏』。 全く異なる空間で展開する全く別の作品でありながら、「愛欲と愛憎」それぞれの残像や波動が、不思議なシンクロニシティを生み出す。公演は3月10日(金)から4月1日(土)まで。
2017年03月10日人気ジャニーズグループ『嵐』の櫻井翔さん(35)と、テレビ朝日の小川彩佳アナウンサー(32)が真剣交際していると、『スポニチアネックス』が報じました。櫻井さんと小川アナの親密交際の様子は、2月27日発売の『週刊ポスト』に掲載されるということです。なお、スポニチによると、小川アナはテレビ朝日側へ、『櫻井さんと真剣にお付き合いさせていただいています』と報告済だといいます。また、関係者の話として、二人はそれぞれの親とも会っているそうで、結婚も視野に入れているのではないかということです。櫻井さんの父親は元総務省事務次官。小川アナの父親は慶大の医学部教授で大学病院部長なのだそう。二人に共通する“エリート一家育ち”という華麗な経歴にも注目が集まっています。櫻井さんと小川アナの交際報道にファンはショックを受けているかと思いきや、同じ『嵐』メンバーの二宮和也さんと伊藤綾子アナウンサーの熱愛報道や、松本潤さんとセクシー女優の葵つかささんの交際報道が出たときとは打って変わり、祝福の声があふれていました。●ネット上では櫻井さんと小川アナの交際に祝福の声が多数!『お互いにとって申し分ないパートナー』『さすが櫻井くん。自分の立場をわきまえた上での相手だと思う』『ニノや松潤とは違う。相手に好感が持てる』『素敵なカップルだと思います。ファンだけど幸せになってほしいです』『お似合いです!結婚してほしいな』『この二人なら結婚してほしい!にしても伊藤綾子との差がすごい…』『小川アナならしっかりしたイメージだし、匂わせとかしなそうだし、いいと思います!』『小川アナなら許せる。このまま結婚してほしいな』『伊藤アナとは好感度が全然違う。この二人なら納得』『好感持てるカップル!寂しいけど、小川アナなら文句のつけようがない』など、ネット上には二人の交際を祝福するファンの声が多数あがっていました。●一方、二宮和也さん、松本潤さんの交際報道時にはファンが大激怒&軽蔑!二宮和也さんと伊藤綾子アナウンサーの熱愛が2016年7月7日に発売された『女性セブン』で報じられたときには、『結婚したらファンやめます』『ファンにとっては相手が誰でも認めたくないけど、伊藤だけは許さない』『彼女アピールのやり口が姑息。ニノ、もっといい人選んで!』などとファンは大激怒。伊藤アナとの交際を認めないと宣言する声がネット上で多数あがりました。また、女優の井上真央さんとの交際が報じられていた松本潤さんが、セクシー女優の葵つかささんとの二股交際を2016年12月28日発売の『週刊文春』で報じられたときには、『これはヒドい!もうアイドルやっていけないでしょ?』『プロ意識なさすぎ。井上真央がかわいそう。見損なった』『よりによってアイドルがセクシー女優と浮気www軽蔑するわー』『彼女を裏切って二股なんて…。松潤は一途なイメージだったんだけどな…』など、ファンからも軽蔑の声があがるほどでした。----------櫻井さんと小川アナの交際報道は、“人気アイドルと女子アナの交際報道”という点で、二宮さんと伊藤アナの場合と同じですが、ファンからの受け入れられ方や反応は大きく異なるようです。人気者になればなるほど、相手はよく選ばないといけないようですね……。●文/ぶるーす(芸能ライター)
2017年02月27日2018年で開場20周年を迎える新国立劇場の2017/2018シーズンのラインアップ発表会見が1月12日に行われ、演劇芸術監督の宮田慶子、舞踊芸術監督の大原永子らが出席した。演劇では、次期芸術監督の小川絵梨子演出による『1984』をはじめ、3本の日本初演作、シェイクスピアの『ヘンリー五世』、蓬莱竜太による新作と充実のラインアップ。バレエ&ダンスでは『くるみ割り人形』が“新国立劇場バレエ団版”として新たに制作されることなどが発表された。演劇では、2期にわたって芸術監督を務めてきた宮田が来季で退任となり、昨秋より芸術参与に就任した小川絵梨子にバトンを渡すことになる。宮田は2期8年にわたった任期を感慨深げに振り返りつつ、来シーズンのテーマとして「世界を映し出す」を掲げた。その言葉通り、8本中の3本が日本初演、1本が新訳上演。まず10月は岩切正一郎の新訳による『トロイ戦争は起こらない』で幕を開ける。1935年に初演されたジロドゥの名作で、いまなお、やむことのない“戦争”を炙り出す。鈴木亮平、一路真輝、鈴木杏らを迎え、演出を栗山民也が務める。日本初演の3本の1本目は、11月に上演される『プライムたちの夜』。近未来を舞台に85歳の老女と30代の男性の思い出話から家族の姿を描き出す。2018年3月には、鄭義信の『赤道の下のマクベス』がお目見え。新国立劇場では『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』『たとえば野に咲く花のように』の戦後3部作が大反響を呼んだが、さらに時代を遡り、1947年のシンガポールの刑務所を舞台に物語が展開する。こちらは韓国語で書かれたオリジナル版を全面改訂し日本語での上演となる。2018年4月~5月にはジョージ・オーウェルの小説を基にした『1984』が小川絵梨子の演出、井上芳雄主演で上演される。古典では、昨年の『ヘンリー四世』二部作に続くシェイクスピアの『ヘンリー五世』を前回に続き浦井健治、岡本健一らを迎えて贈る。また、子どもと大人が一緒に楽しめる企画として好評を得た長塚圭史作・演出で、長塚、首藤康之、近藤良平、松たか子出演の『かがみのかなたはたなかのなかに』の再演が決まった。2018年6月は井上ひさしの『夢の裂け目』の再演、7月は蓬莱竜太の新作戯曲でシーズンの幕を下ろす。バレエではシーズン幕開けの10月~11月に新制作の『くるみ割り人形』を上演する。2014年の『眠れる森の美女』の改訂上演で高い評価を得たウエイン・イーグリングが振付を担当し、前田文子が衣裳デザインを務める。新制作はこの1本だが、2018年4月~5月には『白鳥の湖』6月には『眠れる森の美女』とチャイコフスキーの3大バレエがラインアップされている。また、「こどものためのバレエ劇場」と銘打ち7月には『しらゆき姫』の上演を実施。そして、ダンスでは「舞踏の今」シリーズとして山海塾と大駱駝艦の公演が行われるほか、森山開次、高谷史郎(ダムタイプ)といった世界的な活躍を見せるアーティストが新国立劇場に登場する。取材・文・撮影:黒豆直樹
2017年01月13日藤田俊太郎の演出、小川絵梨子の翻訳で上演するトニー賞作品『Take me out』が、12月9日(金)に開幕。その前日に公開舞台稽古が行われた。【チケット情報はこちら】2002年にロンドンで初演され、2003年度のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品の日本初演。演出をニナガワ・スタジオ出身の藤田、翻訳を新国立劇場の次期芸術監督・小川が手掛ける。白人の父親、黒人の母親を持つメジャーリーグのスター選手・ダレン(章平)が、自分はゲイだと告白したことを発端に起こるさまざまな混乱を描く本作。選手役を栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、ダレンのビジネスマネージャー役を良知真次、監督役を田中茂弘が演じる。本作の特徴のひとつは舞台の構造。対面構造に加え、最下段の客席と舞台は地続きとなっており、まるでそこにあるロッカールームやシャワールームを、観客が取り囲んで観ているような造りなのだ。さらに舞台と客席の距離も近く、キャッチボールやバッティング練習のシーンは、ボールが向かってくるので思わず目を閉じてしまうほど。どこに座るかで観える人の表情、景色が変わり、何度も観たくなる構造だ。また、キャスト陣があまり捌けずに芝居が進んでいくのも特徴のひとつ。舞台上で着替えたりシャワーを浴びたり、ときには客席付近にキャストが座っていたり。真ん中で起きている出来事の間にも、それぞれの時間が流れていることを感じさせられる。そんな濃密な空間の中で、メジャーリーグのロッカールーム、シャワールーム、グラウンドを舞台に、人種、信仰、格差、同性愛、差別などを生々しく描く本作。日本では人種や信仰の問題に直面する機会も少ないが、それでもどこか彼らが発する感情に思い当たる節があり、自らの“正義”や“信念”がグラグラと揺さぶられるような感覚に襲われる。それぞれが持つ偏見、理解、正義、善意、悪意…どれも単純なものではない。さまざまな要因が何重にも重なった結果であることが物語の中でわかるため、感想も大きく分かれるだろう。観劇後は、誰かと感想を語り合いたくなったり、次は逆サイドの席で観劇したくなったりするような作品。ぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。公演は12月21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23(金・祝)、24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月12日新国立劇場にて来春「かさなる視点-日本戯曲の力-」と銘打ち、近代演劇の礎となった昭和30年代に発表された3本の戯曲を、30代の3人の演出家の手で上演することが決定した。三島由紀夫の『白蟻の巣』を演出する谷賢一、安部公房の『城塞』を上演する上村聡史、田中千禾夫の『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』の演出を務める小川絵梨子、同劇場の芸術監督を務める宮田慶子が出席しての取材会が行われた。【チケット情報はこちら】宮田は“国立”の劇場として「日本の戯曲を大切にしたいとずっと思っていた」と語る。2010年の芸術監督就任から「JAPAN MEETS…-現代劇の系譜をひもとく-」シリーズでは近現代の海外戯曲の新訳などを上演してきたが、満を持しての国内の名作の上演。「脂の乗った30代の演出家たちが、あの時代の日本の戯曲にどう向き合うか見てほしい」と期待を寄せた。3作品は、いずれも昭和30年代に発表されており、宮田はこの時代を「戦後10年以上が経って、焦土から復興を遂げ、そろそろ高度経済成長が始まる頃であるけど、戦争の跡と新しい時代の狭間で軋んでいた時代」と語る。『白蟻の巣』は三島の初長編戯曲。ブラジルの農園を舞台にした人間ドラマで、戦後の空虚感が色濃く描き出される。谷は「当時の現実にベッタリとへばりつく必要はない。34歳の僕がいま読んでピンと来た、現代と重なる部分を立てるような形で演出していきたい」と意気込みを口にした。『城塞』は、ある一家の姿を通して安部公房が戦争責任を問うた作品だが、上村は「“戦後”をテーマに掲げて上演したい」と語る。「いま、グローバルな価値観と、民族性や国民性といったドメスティックに根付いている日本人のローカルな価値観が軋み始めている印象があり、不穏な音を立てている気がしています。演劇でそのこととどう対峙できるか? 敗戦後の再生の陰で変わらなかった日本人の精神、戦争責任の所在に目を向けることで、その軋みをひも解く糸口になるのではないか? いま、上演されて真価が発揮される作品だと思います」と自信をのぞかせた。小川は宮田から、被爆地・長崎を舞台にした『マリアの首』を勧められ、目を通して「直感で、やってみたいと思った」と明かす。これまで翻訳劇が多かったこともあり「挑戦であり、プレッシャーや不安もあるし、難しい作品だと思います」とも。本作に挑む上でとっかかりとして挙げたのが「当時、大人とは言えないまでも、既に息づいていた」75歳の自身の父親の存在。「市井の人々の話であり、生活臭をちゃんと描くことが大事だと思っています。そこにあった“ニオイ”を私も体感したい」と語った。同世代の演出家が、同じ時期に発表された名作を演出するということで「比べられる(苦笑)」(小川)、「一生懸命、ケンカしたい(笑)」(谷)など、互いを意識する発言も。「次の時代を拓き、日本の演劇界を引っ張っていく三人」(宮田)がどのように“戦後”に挑むのか?楽しみに待ちたい。公演は3月から5月まで順次上演。いずれも新国立劇場小劇場にて。取材・文・撮影:黒豆直樹
2016年12月05日メジャーリーグスター選手のある告白から巻き起こる混乱を描いたコメディ『Take me out』が、12月9日(金)に開幕する。舞台『Take me out』チケット情報本作は、2002年にロンドンで初演され、その後ブロードウェイで上演。2003年のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品。日本初演となる今作は、翻訳を新国立劇場次期芸術監督の小川絵梨子、演出をニナガワスタジオでキャリアを積み第22回読売演劇大賞で杉村春子賞、優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎が手掛ける。出演は、良知真次、栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太と注目の若手揃い。そして田中茂弘が脇を固める。今回、その稽古場に潜入した。稽古前に行われていたのはキャッチボール。野球経験者の章平が栗原に球の持ち方や投げ方を教えると投球がみるみる変化し、「ナイスピッチング!」と盛り上がる。そのまま和やかに稽古にうつっていった。この日、取材したのは2幕の終わりからラストまでの後半部分。人種や同性愛への差別という問題がギュッと詰まった部分で、有色人種で同性愛者であるスター選手を演じる章平が、Spiや栗原、味方とそれぞれの理由で対峙する緊張感のあるシーンが続く。中でも栗原演じる白人至上主義の選手がある想いを吐露するシーンでは、栗原が激しく全身で叫ぶような熱演を披露。楽しいコメディで終わらない本作の一面を感じさせた。しかし、そんな中でも良知が演じるゲイの会計士が登場すると空気は一変。愛らしい言動でニコニコ笑顔を振りまく姿は、性別問わずに「かわいい!」と感じさせるもの。そのかわいさのままキャッキャとはしゃぎ章平にやさしく微笑む場面では、藤田が章平に「(良知の)かわいさをもっとキャッチして!」と演出をつけており、本番は更に甘いシーンに仕上がりそう。狭い舞台、少ない人数で表現するメジャーリーグの試合も見どころのひとつ。演出の藤田をはじめ、キャストや音響スタッフがアイデアを出し合い、台詞のタイミング、音響、動作のスピードなど全員で息を合わせていく。そうすると突然、広い球場、ボールの軌跡まで見えるような瞬間がおとずれ、驚いた。舞台上には8人分のロッカールームがあり、キャスト達はその場で着替えなども行う。さらにロッカーは可動式で、パズルのように移動させてさまざまな場所を表現するのが面白い。本作は、劇場の中央に舞台が設けられ、客席は両サイドとなる。どちらに座るかでもまた違う景色が観られそうだ。上演は、12月9日(金)から21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23日(金・祝)・24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月02日10月29日(土)放送の「チョイ住み」は、「チョイ住み in リスボン」と題し、プロレスラー・小川直也と、俳優・竹内涼真が出演する。NHK・BSプレミアムにて放送中の「チョイ住み」は、その街にまるで引っ越したような、全く新しい旅番組。ガイドブック片手に、忙しい旅をしがちな現代の日本人に、新しい旅のスタイルを提案していく。コンセプトは「その国にちょっとだけ住んでみる」。アパートを借りて、近所の市場に出かけ、食事を作っては、その日ふと思い立った場所で気ままに過ごす。現地の人と同じ目線に立つことで、ガイドブックには載っていないその国の素顔を浮き彫りにするのだ。今回「チョイ住み」するのは、バルセロナオリンピック柔道銀メダリスト、プロの格闘家に転向後は「暴走王」の異名で人気を博す小川さんと、土屋太鳳と共演した『青空エール』や、7月期放送のドラマ「時をかける少女」の出演が記憶に新しい、いま旬の若手俳優竹内さん。第8弾を迎える今回の旅先は、ユーラシア大陸の西の果て、大航海時代の歴史と文化を残すレトロで不思議な街「ポルトガル」。テージョ川の河口に開けた首都リスボンを舞台に、初対面の2人がハプニング続出!おかしなチョイ住みを繰り広げるようだ。迷路のような路地、郷愁を駆り立てる音楽“ファド”がこぼれる下町で、2人が見い出した楽しみとは?どんな旅になるのかお楽しみに。「チョイ住み in リスボン」は10月29日(土)19時30分~BSプレミアムにて放送。(cinemacafe.net)
2016年10月20日どんな作品であっても、この方々の名前が連なっていれば、「面白くなりそう」との予感が高まる。硬軟自在。時に少女や老婆だって変幻自在の芸域の広さで、作品に厚みをもたらす段田安則さんと浅野和之さん。共に夢の遊眠社に所属し、’80年代小劇場ブームを牽引した演劇界の至宝たちが、宮沢りえさんというこれまた凄い女優を間に挟んで舌戦を繰り広げる。これは観なくては!おふたりにお話しを伺いました。段田:昔から浅野さんの舞台を観ていて、いい俳優さんだなって思っていたんです。だから、浅野さんが遊眠社に入って一緒に芝居ができるようになって、こんな楽しいというか、うれしいことはなかったですよ。浅野:そう言うけど、この人はねぇ…最初は亀のようにしてるけど、後でしっかり抜いていくんだよ。調子に乗らせるわけじゃないけど、うまい人だし外さないんで、彼の進み方を見てて勉強になることも多くて。段田:僕も相手が浅野さんで助かった、と思うこと何度もありますよ。でも、まさかここまでずっと縁が続くなんて、ありがたいことです。浅野:ね。昨年の舞台『草枕』でも、お互いにやることが多くて大変だったのに、僕らふたりの場面の時は非常に楽しめたりして。段田:他にもうまい役者さんはいっぱいいるんだけど、浅野さんとやってると、自分がうまくやれているかどうかより、純粋にやり取りを楽しんでいる自分に気がつくんです。浅野:ただ、今回の戯曲は、なかなか手強い。最初に台本を読んだ時は、まったく頭に入ってこなかったから。セリフに物理学用語が多いし、時間も交錯していくものだから…。段田:でも、題材は面白いんですよ。日本に原爆が落とされる前の、核開発の中枢にいた実在の研究者たちの話なんですよね。浅野さんと僕は、先生と弟子みたいな関係で、そのやり取りのなかから、もしかしたら歴史が変わっていたかもしれないっていう、史実の知られざる裏側が見える…って、ダメだ。このままじゃ難しそうな芝居だって思われちゃう。浅野:大丈夫。難しいのは演る側だけだから、観る側にとっては難しくないよ。物理学用語は多いけれど、観る方にとってはそれがわからなくても問題がないから。段田:じゃあよかった!海外でもヒットしたんですもんね。浅野:そうだよ。先生と弟子の人間ドラマとして観ても面白いんだよ。段田:しかも、すでに起きた過去の事実が、それぞれの視点で改めて語られることでまったく別のものに見えてくる面白い設定なんですよね。浅野:たぶん、観終わった後に気付くことも多いんじゃないかな。うまい作家だなぁって思うよ。段田:その面白さが伝わるように、僕らが頑張らないと、ですよね。◇ナチス政権下で核開発に関わる物理学者・ハイゼンベルク(段田)は、かつて師と仰いだユダヤ系デンマーク人のボーア(浅野)とその妻(宮沢)を訪ねる。一体その真意とは?6月4日(土)~7月3日(日)三軒茶屋・シアタートラム作/マイケル・フレイン演出/小川絵梨子出演/段田安則、宮沢りえ、浅野和之全席指定7800円(税込み)当日券ありシス・カンパニーTEL:03・5423・5906www.siscompany.com/copen/◇だんた・やすのり(左)’81年より夢の遊眠社で活躍。在団中より映像での活躍も多く、最近では大河ドラマ『真田丸』に出演。8月に主演舞台『遊侠 沓掛時次郎』を控える。あさの・かずゆき安部公房スタジオ等を経て、夢の遊眠社に入団。以降、舞台や映像で活躍。8月には北村想新作舞台『遊侠 沓掛時次郎』で段田安則と連続共演。※『anan』2016年6月8日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・藤原羊二(EFFECTOR)インタビュー、文・望月リサ
2016年06月03日映画やドラマ化された『食堂かたつむり』や『つるかめ助産院』などで知られる、小説家の小川糸さん。<前篇>では、シンプルな暮らしに目覚めたきっかけや、ものを手放すコツについて伺いました。今回は、もの、人との付き合い方や環境づくりについてです。小川さんが考える、もの、人との付き合い方小説の中でも「食」へのこだわりが垣間見られる小川さんが、食との「付き合い」で心がけていることは?「作り手がちゃんと見えて、その人が真っ当な仕事をしていることが大事。例えば醤油を買うということは、その人の生活を支えることでもあるので、1対1の関係で付き合っていきたいと思うし、これと決めたものに関しては浮気をしないで、責任を持って付き合う。私が買っているところは一人で作っていたり、小規模のところが多く、続けていってほしいから、責任を持って買い続けることも大切かなと思います」「食に関わらず、私は気に入ったものをずっと着たり、履いたり、食べたりする方が安心できて好きです。不注意で壊してしまった器も金継ぎで直して使っていますが、愛着が湧いて唯一無二のものになってくるんです。だから直して使えるような、いいものを使い続けたい。1年で手放すより、いいものを長く使ったほうが最終的に経済的だと思うし、使い続けると味が出て、それは時間が作ってくれたものだから貴重だと思います」ものを減らした結果、身軽になっただけでなく、心にもゆとりができたのだそう。40歳からは引き算 必要かどうかを吟味していく「あまり抱え込みすぎると動けなくなってしまいますよね。物理的なものも、荷物も、目に見えない人間関係も。ひとつずつ必要なのかどうかを吟味して、これはなくても生きていけると思ったら手放していく。人間関係も『狭く、深く』。ストレスを溜めるのは自分にとっても、相手にとってもよくないことだと思うので、見晴らしよく、無駄なことはしないでいいかなと思うようになりました」「もっとものを減らして、最後はものも人も、本当に大好きなものだけに囲まれて人生を終わりたい(笑)。台所も、最後は鍋一個だけあるのが理想です。自分が人生を終えたときに、なるべく周りの人が迷惑をしないで済むように、いいものがあればまた次に使ってくれる人も見つかってゴミにならずに済むと思うので、そういうことはもう考える時期かなと思います。40歳になるまでは足し算で、欲しいものを手に入れていたと思うんですけど、人生の折り返し地点を過ぎ、ここからは引き算でどんどん手放して、その分余白をいっぱい作りたいなって思うようになりましたね」自分の “五感” を大切にする強い意志を持って、規則正しい生活も心がけているという小川さん。なかなか同じようにするのは難しいかもしれませんが、最後に、もう少しシンプルに生活するためのアドバイスをいただきました。「週末はインターネットを見ない、夜中は返事を出さない、など自分の中で決めては? 自分でルールを作っても、そんなに大きな迷惑はかからないと思うんですよね。もしかしたら、誰か少しは返事を待つかもしれないけど、体調を崩す方がもっと大きな迷惑をかけるし、起き上がれなくなってしまうことの方が損失です。だから、メリハリは大事だと思いますね。ものも情報も溢れているので、自分でガードしないと溺れてしまいます。それから、自分が「これが好き、嫌い」という、すごく野生的な感情を大事にすること。頭だけで考えると、どうしてもいろいろなことを考えてしまいますが、五感だけで判断してもいいくらい。心地いい、この肌触りが好き、これに包まれていると安心する、という感性を大事にしていくと、少し楽になると思います。みんなそれぞれ感覚が違うので、人がいいと言っているからではなく、自分が感じることを大事にすると、ちょっとシンプルになるのかなと思いますね」 ▼五作家・小川糸さんに聞く、シンプルな暮らしをするヒント <前編> 小川糸(おがわ・いと) プロフィール2008年に発表した小説『食堂かたつむり』(ポプラ文庫)が映画化され、ベストセラーに。同書は、2011年イタリアのバンカレッラ賞、2013年フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞をそれぞれ受賞。そのほかおもな著書に、『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』(以上、ポプラ文庫)、『にじいろガーデン』(集英社)、ドラマ化された『つるかめ助産院』(集英社文庫)などがあり、最新の長編小説では、『サーカスの夜に』(新潮社)がある。新刊は『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヶ条』(講談社)。
2016年01月01日映画やドラマ化された『食堂かたつむり』や『つるかめ助産院』などで知られる、小説家の小川糸さん。最新刊のエッセイ『これだけで、幸せ』(講談社)では、自身の驚くほどシンプルな暮らしと、それを実践するための29のルールを紹介し、そのライフスタイルも注目されています。そんな小川さんに、ものを手放すコツやシンプルに暮らすための方法について伺いました。シンプルな暮らしに目覚めた、モンゴルとドイツへの旅小川さんが現在のような暮らしを始めるようになったのは、6年ほど前に旅したモンゴルで、移動式の住居(ゲル)に滞在したことが大きかったのだといいます。「同じ時代なのに、全然違う生き方をしている人たちがいることは、本当に衝撃的でした。夏になると必要な荷物だけ持って移動するので、モンゴルの人たちはものを増やさないという意識が高く、鍋ひとつでお湯を沸かして、炒め物や煮物、何でも作るんです。そのやり方がシンプルで賢くて、それで十分という気がすごくしたんですよね」「自分がこれまで、いかに『お湯はやかんで沸かすもの、ごはんは炊飯器で炊くもの』という、決められた価値観に縛られていたかに気づきました。いつでも行きたいところに行けて、いろんなことができる、ものを持たない暮らしの方が本当は自由なんだって。気持ちの上では遊牧民のように、ものを持たずに身軽に生きていくというのが、自分の中のテーマになりました。もし災害にあったとき、生き残っていけるのはモンゴルの人たちの方だなと思うんです。何でも自分で直せたり、空模様で明日の天気がわかったり、ナビなしで地形を見て行きたい方向に行けたりと、知恵が豊富なんですよね。そういう人間力みたいなものを身につけたいと思いました」勇気を出して減らす。いいものは、長く使う。モンゴルの人たちは、“ものが持てないからではなく、自分の意思で持っていない”ことに気付かされ、ものを増やさないためには、自分で意識をしていかなくてはいけないと思ったのだそう。「“いらないものはいらない”と意識しないと増えてきてしまうんです。だから、断るのにはエネルギーはいりますが、自分が使わないと思ったらその時点で「結構です」とできるだけ言うように努力しています」同じように小川さんが大きな影響を受けたのが、毎年夏に過ごすようになったドイツ・ベルリン。そこでは、「いいものを長く使う」ことを学んだのだとか。「日本では、ものを安く買って壊れたら買い換える、といのうが主流。でもドイツでは最初にいいものを買って長く使い、壊れたら修理に出してまた使うというのが定着しています。いいものはそれなりにいいお値段がするので、買うときに考えるのですが、それもいいことだなと思います。自分のところに来たものに関しては、責任を持って大事に使うのがいいと思います」迷ったら保留箱へ。ものを手放すヒントそうしてものを厳選し、携帯電話すら持たなくなったという小川さん。ものを手放す秘訣は?「使わないで持っていることが、そのものにとっても、それを作った人にとっても一番悲しいことだし、失礼な気がします。やっぱり使われてこそだと思うんですね。私は相手が喜んでくれることが好き。だから値段などは考えないようにして、自分よりもっと上手く使ってくれる人がいるなら渡して、そのものがより気持ち良く使ってもらえたら幸せです。もちろん、すごく気に入って手に入れたけど使っていないもの、手放すことはできないものも結構あります。そういうものは保留にしておいて、時間をかけて別の使い方を探していくのも楽しいんです」「見立て」を待つ保留中の箱には、ここまで入れたらもう入れないというラインを決め、常にいっぱいにはせず、余白を設けるようにしているそう。そうして、小川さんが日々使う道具や生活用品は、「一生付き合いたい」ものばかりになりました。「一生付き合いたい」ものだけで、暮らすヒント「ものを選ぶときに、ゴールを決めることは必要だと思います。これでもういい、と思ったら、とことん繰り返し使うのが好き。たどり着いたものに関しては、あまり浮気はしないですね。引越をしたことも、いかに自分が無駄なものを溜め込んでいたかがわかる、いい機会でした」「来客が多く、以前は同じティーセットを6客欲しいと考えていましたが、ベルリンのカフェに行くと、ティーセットだけでなく、椅子や家具も古くてバラバラ。でもお店の人のセンスでバランスが取れていて。6人のお客さまに同じもので出さなくてもいいんだなって。年に数回のためだけに、スペースを取ることがすごく無駄だと気付くと、逆に同じもので揃えていることの方が変な感じがするようになりました」収納スペースの半分は空けるようにして、たっぷり隙間を作るという小川さん。1年に1回は見直し、全然使っていないものは場所を取るだけ、と考えて手放すのだといいます。「毎年夏は、ベルリンで普通の家を借りるのですが、すごくスッキリしているんですね。もちろん住環境がいいというのもありますが、それにしても必要なものしか置いていなくて。自分の家も、誰にでも貸せるような空間にしたいなと思います。それにはわかりやすくしておかなきゃいけないし、そうできたら理想ですね」モンゴルとドイツで目覚めた小川糸さんのシンプルな暮らし。<後編>は、もの、人との付き合い方、五感が喜ぶ環境づくりについて伺います。 ▼五感を大切に、必要なものを選ぶ作家・小川糸さんに聞く、シンプルな暮らしをするヒント<後編> 小川糸(おがわ・いと) プロフィール2008年に発表した小説『食堂かたつむり』(ポプラ文庫)が映画化され、ベストセラーに。同書は、2011年イタリアのバンカレッラ賞、2013年フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞をそれぞれ受賞。そのほかおもな著書に、『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』(以上、ポプラ文庫)、『にじいろガーデン』(集英社)、ドラマ化された『つるかめ助産院』(集英社文庫)などがあり、最新の長編小説では、『サーカスの夜に』(新潮社)がある。新刊は『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヶ条』(講談社)。
2016年01月01日