歌手だけでなく、詩人としても活躍されている柴田聡子さん。ニューアルバム『Your Favorite Things』は、サウンドプロデューサーに岡田拓郎さんを迎え、独創的でありながらも共感を生む歌詞と、バンドサウンドが見事に調和した快作。生きている中で感じた複雑な感情をできるだけ、そのまま描きたい。「今作はどうにもならないことや、考えても仕方がないような後ろ向きな歌詞が多いですが、逆にサウンドはすごく開けていて。両端の個性が共存したアルバムになりました」「どうにもならないこと」というのが強く表れているのは、表題曲の「Your Favorite Things」だ。「疎遠になってしまった、大好きな友人がいまして。二人が中高生の頃に好きだったアーティストのライブを、大人になった私が一人で観ていたときのことが曲の元になっています。その子とまた遊びたいけど、そんな機会はこの先ないだろうなって。でも、その子と私の目がトンネルみたいに繋がっていたら、あっち側にも同じ光景が映るかもしれない。そんなことを想像して〈瞳と瞳のあいだにトンネルがありますように〉と書きました」他者との繋がりを求める楽曲がある一方、「Movie Light」は、映画館を舞台に自分と他人の間に生まれる価値観の違いを描く。「昔から、共感とか連帯について疑問に思うことが多くて。各々の考えを簡単にまとめることはできないと思うんです。それは曲作りも。人の心を揺さぶるために、記号やダイナミクスを使うのも技ですけど、それでいいのか?ってずっと思っている。『ここは分かるけど、ここは分からないな』とか、そういうのが一曲に何個あっても全然いい。というか、それが本当の状態だろうって感じがします。“物事の複雑さ”は、できるだけそのまま残したいんです」一つの事象に対して簡単に白黒をつけない考えは、柴田さんの根底にあるテーマなのかもしれない。「多数の意見に対して納得ができない人が劣っているとか、この時代にそぐわないとは、どうしても思えない。私も『世の中でこれが善とされているけど、本当にそうなの?』と感じることがいっぱいあって。分かった気になっていると、どこかで尻拭いをしなきゃいけない瞬間が来て、自分も相手も苦しくなることになりかねない。年を取るにつれて、そういう場面って増えてくるので、今改めて自分が何を分かっていて、何が分からないのかを丁寧に考えなきゃいけないな、と思います」7thアルバム『Your Favorite Things』。先行配信曲「Synergy」「白い椅子」「素直」「Side Step」をはじめ、最新曲「Movie Light」「Your Favorite Things」を含む全10曲収録。【通常盤(CD)】¥3,300(AWDR/LR2)しばた・さとこ1986年生まれ、北海道出身。2012年に1stアルバム『しばたさとこ島』でデビュー。’16年には詩集『さばーく』で第5回エルスール財団新人賞現代詩部門を受賞。東名阪ツアーを開催中。※『anan』2024年3月13日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・真貝 聡(by anan編集部)
2024年03月12日嵐山高雄パークウエイ内にてサウナバス&アウトドア イベント京都バス株式会社(本社:京都市右京区代表取締役社長:吉本直樹)は、2023年12月23日(土)に、EVバス(電気バス)導入を記念し、嵐山高雄パークウエイ(西山ドライブウエイ株式会社)を走行する実証運行を実施いたします。「Well-being」をテーマとした地域活性化、周遊促進を目的として、環境に配慮したEVバス『e-アラシヤマ号』を導入し、実証運行としてお客様にご乗車いただきながら運行いたします。当車両は、嵐山営業所に所属し、2023年12月から主に京都市内から右京区方面を運行する予定です。環境に配慮するとともに、持続可能な社会へ向けた取り組みとして運用してまいります。また、特別装飾として、バスラッピングのデザインを切り絵作家望月めぐみ氏に依頼し、嵐山地域の名勝や源氏物語をイメージしたデザインとなっており、その魅力をお伝えするものとなっています。実証運行は、阪急嵐山駅前から嵐山・高雄パークウエイを走行し、菖蒲谷池大駐車場(菖蒲谷池停留所)までの運行を行います。現地会場では、昨今話題の移動型サウナバス「サバス」(株式会社リバース)の入浴体験や、焚火イベント(株式会社スノーピーク)などアウトドア体験もしていただけます。この機会にぜひ、嵐山から高雄を結ぶ風光明媚な「嵐山・高雄パークウエイ」をお楽しみいただき、安全・安心な観光を前提とした「Well-being」な体験ができる市内随一のエリアとして、地域のブランドイメージ向上や滞在拠点の魅力発信等に取り組みます。詳細は別紙をご覧ください。[参考:Well-beingツーリズム]Well-beingは“持続的な幸福感”とも表現され、世界中で注目を浴びている「健康」と「観光」を組み合わせた観光スタイル(ウェルネスツーリズムと呼ばれることもある)。安心・安全な観光を前提として、地域の資源に触れ、心と体の健康が促進されることを目的としており、自然資源や文化資源との相性がよく、観光資源活用の観点からも注目度が高まっている。EVバス『e-アラシヤマ号』イメージ共催: 西山ドライブウエイ株式会社、株式会社スノーピーク、株式会社リバース後援: 京都市、公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)協力:株式会社実業広告社(別紙)この事業は、国土交通省「交通・観光連携型事業(地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化)」採択事業の一環として実施しています。〇EVバス『e-アラシヤマ号』実証運行①日時:2023年12月23日(土)14:30~20:10②運行区間:阪急嵐山駅前~菖蒲谷池(嵐山・高雄パークウエイ走行)※直行便にて運行③運賃(片道):大人運賃640円、小人運賃320円阪急嵐山駅前菖蒲谷池14:30発15:00着16:15発16:45着17:45発18:15着19:00発19:30着菖蒲谷池阪急嵐山駅前15:40発16:10着17:00発17:30着18:30発19:00着19:40発20:10着〇高雄アウトドアイベント①日時:2023年12月23日(土)15:40~19:00(15:00開場~19:30閉場)②会場:嵐山・高雄パークウエイ内 菖蒲谷池大駐車場③内容:◆株式会社スノーピークによる焚火キャンプ体験(参加費無料)キャンプ用品メーカー「スノーピーク」ご協力のもと、嵐山・高雄パークウエイにてキャンプ体験ができます。大自然の中でキャンプの醍醐味である焚火に癒されるひとときを是非ともお楽しみください。※焚火でマシュマロ体験コンテンツのご用意もございます。◆株式会社リバースによる移動型サウナバス「サバス」入浴体験(参加費無料)。サバスは引退した路線バスの車両をサウナに改造し、どこでも本格的な薪サウナが体験できる今話題の移動型サウナバスです。路線バスの名残を生かした空間の中でサウナをお楽しみいただけます。・15:40~19:00の間、「サバス」の入浴体験(80名様限定・各10分)。・15:00より先着順で菖蒲谷池大駐車場「サバス」受付にて整理券を配布します。※EVバスにご乗車いただいても、整理券配布が終了していた場合はご入浴いただけません。※着替え、タオル、サンダル等の販売・貸出はありません。各自ご持参願います。※現地物販については、参加者実費となります。※体調の優れない方のご利用はご遠慮ください。※自家用車で来場のお客様はパークウエイ通行料が各自ご負担となります。パークウエイは、高雄ゲートより入出場願います。※EVバス利用者は別途運賃が掛かります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年11月24日CHAIが約2年ぶりとなるニューアルバム『CHAI』を全世界同時リリースした。去年の海外ツアー中に楽曲制作とレコーディングを行った今作は、音楽のジャンルを一言で言い表せないほど、実に多彩な楽曲が並んでいる。「まさに今作はジャンルレスがテーマ。CHAIを始めた時からポップスを目指してきて、ついに理想の形になったの。しかも、ただのポップスじゃない。ちゃんとオリジナリティのあるポップスができて、これは“CHAIポップ”だと思った。集大成ではなくて、これが“CHAIの正解”と言える一枚」(マナ・Vo/Key)正解というのは、具体的に楽曲のどんなところを指しているのか?「CHAI結成前からニューウェーブが好きで、ESG、トーキング・ヘッズ、トム・トム・クラブ、ディーヴォとかに影響を受けてきた。でもニューウェーブの曲を作ろうと思えば思うほど、ポップスにはならなくて。逆にポップスを意識するとニューウェーブから離れていって、求めていた形にできなかったの。だけど『GAME』を作った時に、ニューウェーブの中のポップスができたんだよね」(マナ)「『Driving22』を作りながら、マナと『これ、チャーリー・プースじゃない?』って盛り上がったの。『この雰囲気の音を、いま日本人の女性で出している人はいないよね』と言い合ったぐらい、とにかく自信がある。あとは『PARA PARA』のように、どこかキラッとして、ポップで分かりやすくて、ニューウェーブっぽくて、ファンクでR&Bで…みたいなのってダサくなりがちなんだけど、これはダサさのかけらもない。マナが言うように、ニューウェーブをポップに変えられたんだ」(カナ・Vo/Gt)「4曲はドラムを叩いているけど、残りはトラックメイカーさんによる打ち込み。こんなミュージシャンは見たことないと思うぐらい、フレキシブルにいろんな見せ方をしているし、それがCHAIの良さでもある。自分が叩いた曲でいえば『PARA PARA』が大好き。あの年代感の音を現代風にアップデートして、洋楽の要素と日本人のアイデンティティをうまくミックスしてる。打ち込み系の曲なら『KARAOKE』もめっちゃ好き。ラテン風の音にマナとカナが日本ぽいメロディを乗せてくれて、これは私たちにしかできない、それこそ“CHAIポップ”だと思った」(ユナ・Dr/Cho)「これまで“セルフラブ”(自分を愛すること)を軸に、いろんな角度から歌詞を書いてきた。今回は曲調も雰囲気もすべて違うけど、どれもCHAIの歌詞になるように意識したのと、もっと多くの人を巻き込みたいと思った。個人の気持ちをただ言うんじゃなくて『こうしたら人生は楽しいと思う』という提案とか、大勢を意識した言葉に変換できた。ジャケットも、初めてセルフラブを意識したビジュアルにできたの。テーマは“自分たちが自分たちの未来を見て応援してる”。大きなステージでCHAIが演奏する姿を見てる私たちが『CHAIかわいい!大好き~!』と叫んでるイメージ。ビジュアルからメッセージまでCHAIの全部を出せたアルバムだね」(ユウキ・Ba/Cho)アルバムツアー「We The CHAI Tour!」が開始され、現在北米&メキシコを周遊中、11月からは4年ぶりとなるヨーロッパ・UKツアーが控えている。「生きてきた環境も文化も違うから、国によって感じ方も違うけど“かわいい”だけは世界共通なの。みんなが持っている感覚だからこそ、より私たちが歌うべきだと思った。生まれた瞬間からかわいくない人って、この世には存在しない。それを信じてやってきたし、各国で“かわいい”を叫べば叫ぶほど、今度は私たちが言う前にみんなが叫んでくれる。ツアーを通して『みんな、“かわいい”って叫ぶ準備できてるよね?』って世界中で言いたいね!」(マナ)4thフルアルバム『CHAI』。「We The Female!」、最新シングル「NEO KAWAII, K?」を含む全10曲収録。【完全生産限定盤(紙ジャケットCD+フラッグ)】¥3,300【通常盤(ジュエルケースCD)】¥2,750(Sony Music Labels)チャイ左下から反時計回りに、マナ(Vo/Key)、カナ(Vo/Gt)、ユウキ(Ba/Cho)、ユナ(Dr/Cho)。“NEOかわいい”をコンセプトに活動。「We The CHAI Tour!」で北米・メキシコツアーを開催中、11月からヨーロッパ・UKツアーを開催予定。※『anan』2023年10月4日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・真貝 聡(by anan編集部)
2023年10月03日最新アルバム『ジェニークラシック』は「超最悪」「PEAKY」「モンスター feat. yama」など、CMやドラマで起用されたタイアップ曲、コラボ曲が多数収録された豪華な内容。これまでのジェニーハイらしさを残しつつ、音楽性を拡張した渾身の一枚となっている。イロモノではなく、音楽性に優れたバンドに進化した。「どのタイアップ曲も、わりと曲調の縛りが多かったんです。ドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』の主題歌を作る際は、『パンク調にしてください』というオーダーがあって『超最悪』が生まれました。こういう曲をジェニーハイで書くつもりはなかったけど、それが功を奏して、いい意味で新しいジャンルの楽曲が揃いました。そこに不思議な構成の『クラシックハイ』など実験的な新曲を加えた結果、1stアルバムのようなテンション感の作品に仕上がって。僕らの新しい原点という意味もありますし、新垣(隆)さんはクラシック出身なので、このアルバムタイトルがピッタリだと思いました」(川谷絵音/Gt)「今までと同じ流れを汲んでいるようで、実は全然ちゃうかったりするので、何度も聴いていただけるアルバムやなと思います」(小籔千豊/Dr)「今作は(中嶋)イッキュウさんの魅力がすごい出ていて。ダメなことなんですけど……恋心的なものも芽生えたといいますか。イッキュウさんのために頑張ろうって初めて思いました(笑)」(くっきー!/Ba)バラエティに富んだ12曲の中で、3人にお気に入りの曲を教えてもらうと、意外な裏話も聞けた。「『モンスター』はyamaさんというエグい方が参加してくれて、フェスでご一緒したのも楽しかったですし、MV撮影の時もいっぱいお話できて。曲の完成度と思い出も込みでお気に入りです」(小籔)「僕は『声雫』ですね。聴いていて綺麗な風景が見えるんです。あと、ベースラインがずっと美しいんですよ。演奏中も情景を思い浮かべながら弾けるという、不思議な魅力を持った楽曲ですね」(くっきー!)「それこそ、『声雫』は映画『ハケンアニメ!』の主題歌として書いた曲だったんです。ただ『曲調的に速い曲がいい』ということで『エクレール』が採用されたんですけど、『声雫』の歌詞をよく読むと完全に『ハケンアニメ!』のことを歌っていて。配信などで映画をご覧になる方は、エンディングで音を切って『声雫』を流したら、また違う見方ができると思います」(川谷)彼らは今年デビュー5周年を迎えた。楽曲制作やライブを通して、どんな進化を遂げてきたのだろう?「以前は演奏面で未完成なところが多かったため、構成をシンプルにせざるを得なかった。その分、キーボードとギターで音の隙間を埋めて、歌メロを複雑にすることで楽曲に華を持たせてきました。今はベースもドラムも、やりたい演奏ができるレベルに達してきて。それによってファースト・アルバムからキーボードのレベルは変わっていないのに、昔と比べて落ち着いて聞こえるのは、リズム隊が目立つようになった証し。バンドとしてアンサンブルに変化が起きたことで、独自のグルーヴが生まれた。もうイロモノバンドではなくて、他とも引けを取らない純粋に優れたバンドですね」(川谷)3rdフルアルバム『ジェニークラシック』全12曲は、デジタル配信中。パッケージ商品は、7月12日(水)に発売予定。【完全生産限定盤(CD+限定Tシャツ)】¥6,050【初回生産限定盤(CD+BD)】¥4,950【初回生産限定盤(CD+DVD)】¥4,400(ワーナーミュージック・ジャパン)ジェニーハイ川谷絵音(Gt)がプロデュースを務め、中嶋イッキュウ(Vo、Gt)、小籔千豊(Dr)、くっきー!(Ba)、新垣隆(Key)がメンバーとして名を連ねる異色バンド。7月から自身最大規模&本数の全国ツアー「ジェニーハイ TOUR 2023『クラシックファイブ』」を開催。写真右から、小籔さん・ブルゾン¥275,000(ユーゲン/イデアス TEL:03・6869・4279)シャツ¥56,100パンツ¥74,800(共にNaNo Art)川谷さん・ジャケット¥61,600パンツ¥56,100(共にNaNo Art)シャツ¥52,800(エイク/エイクショップinfo@eyck-tokyo.jp)その他はスタイリスト私物くっきー!さん・ジャケット 参考商品(ジャケット/ブランデット東京miyamoto@miyamotospice.com)キャスケット¥13,200(アース/オーバーライド 神宮前 TEL:03・6433・5535)その他はスタイリスト私物※『anan』2023年7月5日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・市野沢祐大(TEN10)インタビュー、文・真貝 聡(by anan編集部)
2023年07月03日約3年5か月ぶりの木村カエラさんのフルアルバム『MAGNETIC』が12月14日にリリースされる。タイトルは直訳すれば「磁気」。そのほかにも「人を惹きつける」という意味もある。「コロナ禍を経て、この3年ちょっとで人の意識ってすごく変わったなと思うんです。ニューノーマルじゃないですけど、『今までと違う視点で考え直さないと』と思うことがたくさんあって。みんな必要なものとそうじゃないもの、これは無駄だったよねとかやっぱりこれはいるよねって改めて考えたはずで。私自身もその取捨があって、たくさん引き離したり、逆に引き寄せたものがあった。なんかそれがすごく反発したりくっつき合ったりする磁石みたいだなって思ったんです」その中でカエラさんがもっとも“引き寄せたい”と願った感情が“楽しむという気持ち”だったそう。「だって全然ポジティブなニュースがなかったじゃないですか。だからこのアルバムでちゃんと励ましたいし、楽しい気持ちを届けたいと思ったんです。で、これはひとりではなかなかできないぞと思ってまず頭に浮かんだのがAIちゃん。AIちゃんと歌えば最強だ、と思いました」タイトル曲の「MAGNETIC」はAIのラップがフックになったアフリカンビートとはじけるハンドクラップに踊りだしたくなるまさにマグネティックな一曲。「二人でやることに意味があると説明して。そしたら“おチビに言われたらやるしかない!”ってAIちゃんがラップパートの歌詞を考えてくれて。私とAIちゃん、そんなに身長差ないんですけど、なぜか私おチビって呼ばれているんです(笑)」カエラさんの“引き寄せパワー”はこの曲だけにとどまらない。ほかにも多様多彩なアーティストとの共作が目を引く。「公園でいろんな人と遊んでいるみたいなアルバムにしたくて。近くにいる子や気になる子に“遊びに行こうよ”と声をかけた感じです」以前から交流があったマヒトゥ・ザ・ピーポーやビルボード・ライブ・ツアーでサポートバンドを務めたSANABAGUN.のほか初タッグとなるiri、笹川真生(ささがわ・まお)、MONO NO AWAREの玉置周啓(たまおき・しゅうけい)など気鋭アーティストが参加する。オープンリール式テープレコーダーを「磁気民族楽器」と呼ぶOpen Reel Ensembleとの“磁気”つながりコラボも実現させた。「それぞれいい引き寄せがあってできた曲ばかり。意識したわけではないけれどラップをやっている方が多くて。これまでの自分のスタイルとは違う歌い方や言葉選びがすごく勉強になりましたね。こういうのもありか!と思うことも多かった」友達が変われば、遊び方も変わる。曲ごとに違う表情の変化を見せるカエラさんの歌声が新鮮で面白い。一方でアルバムの真ん中には、コラボではない自作曲がそっと2曲置かれているのも印象に残る。「制作時期を考えると、やっぱり悲しみのあるところから生まれているから、ただただポジティブってことではないんですよね。それがちゃんと心の真ん中にあるのが大事かなって。アルバムの真ん中に置いたのもそういう意識があるからかもしれない。人生にはいいことも悪いこともあるもの。洗濯物を干したら雨が降ってきちゃうことだって全然ある。でも、今幸せなら洗濯物が濡れちゃっても、まあいいじゃんって。そういう日常の実感も共感してもらえたらうれしいです」12月14日リリースの11thアルバム『MAGNETIC』。tvk開局50周年ソング「Color Me feat.マヒトゥ・ザ・ピーポー」ほか全10曲収録。【初回限定盤(CD+Blu‐ray+ハグレティックマグネット)】¥5,390【通常盤(CD)】¥3,300(ビクターエンタテインメント)きむら・かえら2004年、シングル『Level 42』でメジャーデビュー。以降、ポップアイコンとして多くの注目を集める。’22年は、有観客でのライブ活動も本格復帰。自身初となるビルボード・ライブ・ツアーを行ったほか、大阪・名古屋・横浜の3都市を回るZeppワンマンツアーも9月に成功させたばかり。ジャケット¥59,400スカート¥37,400(共にヴィヴィアン・ウエストウッド/ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーションcontact@viviennewestwood-tokyo.net)ブーツ¥62,700(ファビオ ルスコーニ/ファビオ ルスコーニ ルミネ有楽町店 TEL:03・6268・0538)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年12月14日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・伊藤信子ヘア&メイク・フジワラミホコ(LUCK HAIR)取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年12月11日でんぱ組.incのニューアルバム『DEMPARK!!!』は、色とりどりの14曲がはじけるテーマパークのような一枚だ。そして、前作から2年という時間を駆け抜けたアイドルの成長記録でもある。結成初期から活動を続けるリーダーの相沢梨紗さんと、藤咲彩音さんに話を聞いた。激動の時を越え、テーマパークで“夢”を叶える。「でんぱ組には過去いろんな時期があったけど、特にこの1~2年は激動だった気がします。2020年に10人体制になって、みりんちゃん(古川未鈴)の産休や、ねもちゃん(根本凪)の卒業があって……。新規加入組と1年くらい活動してきて、今このタイミングでアルバムが出せることが嬉しいです」(相沢梨紗)アルバムを通じて描かれているのが“夢”の存在だ。「みんな曲と真剣に向き合うので、『夢を口にしたら叶えないといけない。怖いし、責任をともなうから簡単には言えない』って怖がってたところもあって。でもツアーで歌ううち、徐々に乗り越えられた。言霊ってあるんだなと思いました」(相沢)「私は何周か回って“でんぱ組らしさ”がわからなくなってしまって。ワチャワチャして賑やかでカラフルな感じかなあって思ってたけど、そうじゃない。大事なのは“自分と戦うこと”。常に前に進んで、熱い心を届けるのがでんぱ組だよねって。それを再確認できた」(藤咲彩音)時に悩み、時に戸惑うメンバーを支えたのが参加クリエイター陣だ。長年でんぱ組の楽曲を制作している前山田健一さんを筆頭に、新たなアーティストも多数参加している。「『プロタゴニスト』を作詞・作曲してくれた眉村ちあきさんは前から大好きで。対バンイベントをやった時から、眉村さんとでんぱ組の世界観が交わったら最高にハピネスになる!って確信してました」(藤咲)「ゆっきゅんは学生時代、私たちの『W.W.D』という曲を文化祭でひとりで歌って踊って、その動画をYouTubeにあげてたんです。巡り巡ってアーティストになって、『好感Daybook』という愛の溢れる曲を作ってもらえた奇跡。玉屋2060%さんの『衝動的S/K/S/D』はエンジンが一瞬で全開になる曲。玉屋さんの『でんぱ組にはカッコよく、強くあってほしい』みたいな愛情が感じられてキュンとします」(相沢)おすすめの一曲を選ぶなら?「全部好きですけど、強いて挙げるなら『ドキ+ワク=パレード!』。私は小さい頃、お父さんのネクタイを回して『たかのりさんしゅきー』って叫んでたくらい西川貴教さんが人生の核なんです。その西川さんの楽曲プロデュースをしている浅倉大介さまに作曲していただける、そんな世界線があったなんて!」(藤咲)「私は『DNA』の“話をしたり笑ったり怒ったりそんなことがしあわせなんてひとりぼっちじゃきっと知らないままだった”という歌詞を見て、レコーディング中に泣きそうになっちゃって。昔は自分が嫌いで『死ぬ時に自分のことを大好きになる』が人生の目標だったのに、10年後の私は『みんなを幸せにしたい』と思ってる。ファンの方の愛情で、変えてもらった。そのことに気づけた大事な曲です」(相沢)新体制初のフルアルバム『DEMPARK!!!』。前山田健一作「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」など全14曲を収録。【初回限定盤(2CD+DVD)】¥5,300 【通常盤(CD)】¥3,300(トイズファクトリー)でんぱぐみインク2009年に秋葉原ディアステージを拠点に結成したアイドルグループ。現在は9人体制で活動中。メンバーは全員オタクで、相沢梨紗さんは「2.5次元」、藤咲彩音さんは「コスプレ」が得意分野。※『anan』2022年7月27日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)ヘア&メイク・小林依里香インタビュー、文・飯田ネオ(by anan編集部)
2022年07月24日アフリカンなジオメトリック柄のターバンと揃いの派手なスーツ、そしてメガネ。この謎ルックスが印象に残らないわけがない男、マハラージャン。シンガーソングライターである。2021年に配信限定EP「セーラムン太郎」でメジャーデビュー。そのタイトルはじめ楽曲につけられた突飛なワードセンスに気を取られるも、いざ鳴らす音を聴けば軽妙洒脱なサウンドとスパイシーで痺れる歌声。その確かな音楽センスに唸らされる。これは謎が解けないぞ、マハラージャン。「活動を始めた当初、僕はまだ会社員をしていたのでスーツ、あとはインスピレーションでこのスタイルにたどり着きました。所属事務所の名前が“油田”なのでそれにちなんでマハラージャン。言葉の響きも気に入っています」ひと筋縄ではいかない捻りをアーティストとしての成り立ちから仕込んでいる彼。最新アルバムにもこだわりがふんだんに薫る。「好きなもの、やりたいことを詰め込みました。ホーンを入れてビッグバンドジャズなアレンジをしたり、ゴリッとしたロックやポップな楽曲も。フェスでいろんなアーティストを楽しむように聴いてほしいです」リード曲である「君の歯ブラシ」は別れたカップルの悲哀を家に残された彼女の歯ブラシをモチーフに衝撃フレーズで歌い上げる必聴の一曲。「いいアレンジやメロディができるとああこれはちゃんとしなきゃって思うんです。そのまま“かっこいい”だけでアウトプットするのは僕の中で何か気が利いてない感じがしてしまう。そこに僕の感情とか気持ちの体重が乗ってない気がして。他の人には出せない自分の言葉にすることで“ちゃんとできた”ってやっと思える。『君の歯ブラシ』もサビのフレーズは使いたいと決めていたんです。それに合わせてかっこいいベースラインとメロディが完成したときにキター!と嬉しかったです」恋の始まりの歯がゆい感情を「鼻の奥に米がいる状態」と歌ったかと思えば、テレビから飛び出して会いに行きたいほどの感情を「貞子」に委ねるなど、マハラージャンの編み出す言葉は新鮮な驚きがありつつも、実感があるからこそ誰しも共感できる普遍性を持つ。だから繰り返し聴いてクセになるのだ。「でも正直、もうちょっとありきたりのほうが売れたかもしれませんが(笑)。とはいえ、自分を信じてこの方向で進んでいきたいと思います」『正気じゃいられない』。「その気にさせないで」「君の歯ブラシ」など全10曲。CDパッケージのみボーナストラックで山下達郎のカバー「BOMBER」も収録。【完全生産限定盤(CD)】¥3,960(Sony Music Labels)東京都出身。大学院卒業後、CM制作会社に就職。並行し音楽活動も行う。2019年「いいことがしたい」をデジタルリリースし話題を集める。7/22に東京、8/5には大阪で初のワンマンライブも開催。※『anan』2022年7月20日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年07月19日“個性や自由ではみ出していく”。グループのコンセプト自体がボーダレスな新しい学校のリーダーズ。だが、最初から思うようにはみ出せていたわけではなかったという。海外から逆輸入の超個性派ユニット“新しい学校のリーダーズ”MIZYU:結成2年目ぐらいまでは、取材で「リーダーズとは?」とか「はみ出していくとは?」って聞かれてもはっきりと答えられなかった。それで自分たちのことをわかってないんだなって思って4人で話し合うことがめっちゃ増えた。そこで進むべき道が見つかった感じがするよね。KANON:コンセプトに縛られていたところから、個性や自由っていうものを本質的に噛み砕けるようになった。そこから本当の自分たちになれていった気がする。RIN:メジャーデビューのタイミングからH ZETT Mさんに楽曲を作っていただいて。生バンドのサウンドになって、そこで背伸びしながら、自分たちが表現できることと向き合ったのも今に繋がってるよね。MIZYU:そこからすごく変わったと思う。生バンドの音って、いわゆるダンス&ボーカルグループ的な振り付けをしても全然合わなくて。そこで試されて、自分たちなりの振り付けの表現ができるようになっていったと思います。SUZUKA:全力でやることがはみ出していくことじゃないって気づいたんですよね。そこから冷静に、この曲の振り付けはこれぐらいやらないとインパクトないな、っていう感覚が身についていった。――昨年、アジアのカルチャーを世界に発信するレーベル「88ライジング」から全世界デビューを果たした。楽曲制作のためロスに2か月半滞在。そこでまた大きな変化があったという。KANON:世界デビューって日本で売れてからするイメージだったので、「先に世界に行くの?」っていう不思議な感覚でした。RIN:プロデューサーの(マニー・)マークとの制作では、英語が喋れないので、その辺にあったものを叩いて音を出して「これ使えるね?」「Good!」みたいな感じでやりとりしてました。良い音が生まれたらみんなと波長が合ってる感じがしたり、みんなでビートを感じて踊ったり、音楽には国境がないってこういうことなんだ、って思った。KANON:パフォーマンスを見て「面白い!」って言ってくれた人もいっぱいいたし、言葉がなくてもこんなに伝わるものなんだ?って思ったよね。MIZYU:何にも代えられない時間をロスで過ごしてこの4人に対する愛がすっごい深まりました。その後のライブ映像を見たら4人の顔が全然違った。それまでは「私たちが作ったものを見て!」って感じだったけど、「私たち楽しいよね?」って4人がお互いに言ってる感じ。すごくハッピーなマインドになりました。SUZUKA:気持ちも変わったし、楽曲も88ライジングから出すことを意識し始めた。わしらの可能性は無限大で、わしらが楽しめば何でも正解。だからヒップホップもハードテクノも何でもできる。MIZYU:私たちと掛け算したら何でも面白いって感じだよね。KANON:いろんなことに挑戦したいなと思うようになったし、全部に対するスピード感がすごく速くなった。SUZUKA:アメリカってスピードが遅いとみんなすぐに他に行っちゃう。だから作ったらすぐにアウトプットして、「もう作ったから見て!」みたいな。RIN:最初はそのスピードについていかないと!って感じだったけど、今は追い抜かして「こっちに来い!」っていう感じになったよね。――7月には再び渡米する予定の彼女たち。今のビジョンとは?SUZUKA:いろんな国に行きたいです。日本のカルチャーがあるように、国それぞれのカルチャーがある。私たちは良い意味でどこでもアウェイ。でもどこにでもぶっ刺せるって思ってます。KANON:他の国のカルチャーとリーダーズを掛け合わせたらいろんな可能性が生まれると思うから、それをどんどん見つけていきたい。MIZYU:国によって刺さるポイントも違うだろうしね。――では、新しい学校のリーダーズが思う“ボーダレス”とは?SUZUKA:セーラー服を着てるけど女の子らしくかわいくっていう方向性じゃなく、当たり前のようにボーダーを吹っ切って、むしろ男よりかっこよくパフォーマンスしてる。MIZYU:“女子力”っていう言葉を絆創膏とか持ってる力じゃなく、馬鹿力がある女子の力みたいに思ってるよね。RIN:4人でセーラー服着てるっていうだけで、性別の壁も年齢の壁もなくて、「今の私たちを見て!」っていう気持ち。SUZUKA:ファンの方もいろんな年齢層がいらっしゃって。青春って学生だけのものじゃなくて、夢中になるものがあればいつも青春。私たちのライブでは、いろんな邪念を取り除いてピュアに夢中にさせる。一種の解放が味わえると思うので、「ライブにおいで!」っていう感じです。KANON:私はリーダーズの活動してない時はそれこそ「女子!」って感じだけど、リーダーズでは頭振りまくってるし(笑)。別の自分を解放できるのもこのグループのすごさだと思う。SUZUKA:お客さんにもリーダーズのライブでめっちゃ首振って解放してほしいよな(笑)。KANON:ボーダレスって解放かもね。見た目やいろんな枠に囚われない。新しい姿を見つけるっていう。MIZYU:「楽しいな」って思ってやってたら、いつの間にかいろんなものがぶち壊れてた(笑)。SUZUKA:でもルールは破らないよな。越えちゃいけない一線は絶対に守るよな。MIZYU:スカートの丈も守った上で自分を解放する…!KANON:そこは絶対的なお互いの信頼関係があるからね。あたらしいがっこうのりーだーず右から、RIN、MIZYU、KANON、SUZUKA。「歌い踊るセーラー服、青春日本代表」と称し、2015年7月から全国各地でライブ活動をスタート。’21年1月、NYを拠点にするレーベル「88ライジング」から「NAINAINAI」で世界デビュー。新しい学校のリーダーズ OFFICIAL WEBSITEYouTubeATARASHII GAKKO! – 新しい学校のリーダーズTwitter ATARASHII GAKKO! – 新しい学校のリーダーズInstagram japan_leaders※『anan』2022年6月22日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)ヘア&メイク・youca取材、文・小松香里(by anan編集部)
2022年06月17日2022年2月4日。「東京国際フォーラムホールA」で自身にとって最大のキャパシティのライブ「うたのげんざいち」を開催した中村佳穂さん。「あなたの帰り道にうたがありますように」。そう告げ、どこまでも伸びていく歌声としなやかさと躍動感を併せ持つピアノ演奏で想いを届ける。それは「歌」でも「唄」でもなく、ひらがなの「うた」。音と言葉の魔法で大人も子どもも共に楽しめる色とりどりの自由な世界に誘われる感覚がある。約3年半ぶりの3rdアルバム『NIA』もまた、イマジネーションの豊かさにハッとする楽曲が優しい光を放っている。「私」と「あなた」にある距離をポジティブに捉えたい。「今作はアルバムを通してカラッとした明るい曲を作りたいと思いました。自分自身、日々生活をする中でそうしたムードの曲に救われることが多かったんです。例えるなら、空間の中に明るく心地よいリズムが鳴り続けていて、気持ちよく掃除ができるような軽快なムードというか」たとえシャイな日本人でも、自然と体が反応して思わず小躍りしたくなるリズム感。どことなく、ローカルの盆踊りにも似た気軽さと温かいムードを感じる楽曲もある。「『祝辞』という曲はチャンカチャンカチャンって、お祭りのリズムから作ってみたりしました。明るい曲を作りたかったけど、あなたも参加してね!と過度なパワーを込めた感じにはしたくなくて。来たい人は参加してくれていいし、そうじゃないときは自由に、という考えは歌詞やリズムにも出ていると思います。それはきっと、人と人とは最後は分かり合えない部分があると思っているから。『私』と『あなた』の間に存在する距離をネガティブに捉えられることが多いけれど、私はそのことをポジティブに捉えたいなと。住む地域によっても文化や考え方が異なるものだし、いろんなところに行って対話することが好き。それが創作の根底、ひいては私の人生の糧になっていると思います」だからなのか。彼女が書く歌詞には、自分とは違った個性を持つ一人一人の他者へ向ける視線が優しく、そこに「対話」が存在するのは。本作にも収録されている先行配信シングル「さよならクレール」は人と人の距離感や揺れ動く心の機微を繊細に捉えた作品。他者を想うときに胸に去来するどうしようもない“切なさ”に心を寄せている。「本当は分かり合いたいと互いが想っているはずなのだけど、どう頑張ってもこれは厳しい、という状況がありますよね。そんな中で自分はSOSを出しているけれど、相手には気づいてもらえなくて。けど、相手ももしかしたらSOSを出しているんじゃないか、と。相手に理解してほしいと合図を出すことって、モールス信号やホタルの光と似ているなと思って。そこからこのタイトルをつけました。『クレール』ってフランス語で『光』という意味があるんです」君島大空さんと西田修大さんがギタリストとして参加した「Hank」では、息の合ったガットギターの静寂な音色と一編の詩のような幻想的なイメージが優しく溶け合う。心の渇きも癒す美しい楽曲である。「西田くんから『いいコードがあるから佳穂ちゃんがメロディを乗せてほしい』と言ってもらって。離れた場所に暮らしているので何度かオンラインでやり取りしながら曲ができた感じです。ギターのコードを聴いてうたが導かれたようなところがありますね。だからどこか日本の詩のような、温かな手ざわりがあるのかもしれません」“閃きという原石”をひとりで、そして仲間と磨き上げていく――。そうした営みの楽しさは「何気ない日常にも転がっている」。そんな希望を彼女が差し出してくれた気がした。3rdアルバム『NIA』発売中。初回限定盤には「東京国際フォーラム ホールA」でのライブの模様を一部収録。【初回限定盤(CD+BD)】¥6,600【通常盤(CD)】¥3,300(SPACE SHOWER MUSIC)なかむら・かほ京都府出身。京都精華大学入学後、本格的に音楽活動を開始。ソロ、デュオ、バンドなど様々な形態で、自由に音楽性を拡張させ続けている。気鋭のクリエイターとのコラボレーションにも注目を。※『anan』2022年4月6日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・矢島聖佳(by anan編集部)
2022年04月04日歌とラップ、英語と日本語を自在に操る歌唱を武器に、ギターを軸にしたボーダーレスなサウンドを奏でる竹内アンナさん。2ndフルアルバム『TICKETS』には「聴き手をいろんな場所や時間に連れていく素敵な旅路のチケットになりますように」という想いが込められている。「ラジオの企画で“真夜中の夢旅行”っていうテーマのプレイリストを作ったんです。旅行はしづらくなってしまったけど、せめて夢の中で好きな場所に行きたい。そのプレイリストを聴いていて、例えばビートルズの『ゲット・バック』を聴くと行ったことのないイギリスの街並みが浮かぶし、くるりの曲を聴くとたちまち地元の京都に戻った気分になって。どんな場所にいてもどんな時間であっても曲によっていろんな場所に行けるんだということに気づき、アルバムのイメージを固めていきました」コロナ禍において、聴き手を鼓舞する力強い音楽に意識が向かった。「2年前にリリースした1stアルバムの『MATOUSIC』は、生活の延長線上に自分の音楽があればいいなと思って寄り添うような作品をイメージしたんですが、その直後コロナで人と会いづらい状況になってしまった。それでみんなの気持ちを外に引っ張り出すくらいのものを作りたいって思ったんです」その想いが、よりキャッチーになったサウンドとポジティブでストレートな歌詞を生んだ。特に印象に残るのは、「GOOD FOR ME」や「ICE CREAM.」といった恋のときめき全開の楽曲。「『ICE CREAM.』は新しいことがしたくて初めてご一緒する制作チームと作ったので、今までにないサウンドになりました。あとこれまで“竹内アンナっぽい歌詞”っていうのが頭にあったんですけど、それが天井になっちゃっていた。せっかく新しいアプローチのサウンドなので、一度その枠を取っ払ったんです。こんなにストレートにハッピーな歌詞を歌ったことがなかったのでやりすぎたかなって思ったんですけど、サウンドに乗せて歌ってみたら意外といけるなって」飛躍の作品を完成させた今、思うこととは。「ソロだからこそ自由に何でもできるんだなって改めて思いました。私はギターも弾くし、いろんな機材を使って曲を作る。フレキシブルにいろんなことにトライしていきたい。動きが制限されたこの2年ぐらいはもどかしさも感じましたが、成長できたことがたくさんありましたね」2ndフルアルバム『TICKETS』。「手のひら重ねれば」や昨年のデビュー日にリリースした「ICE CREAM.」等全13曲収録。【初回限定盤(CD+DVD)】¥5,500【通常盤(CD)】¥3,300(テイチクエンタテインメント)たけうち・あんな1998年4月25日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ、京都府出身。2018年、テキサス州オースティンで行われた大型フェス「SXSW 2018」に出演。同年EP『at ONE』でメジャーデビュー。トップス¥11,000(MANON/エムケースクエア TEL:06・6534・1177)イヤリング¥7,100左手のリング¥3,000(共にsomnium TEL:03・3614・1102)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年3月9日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・岡村春輝ヘア&メイク・福島加奈子取材、文・小松香里(by anan編集部)
2022年03月07日宣伝ポスターはキュートなヒグチユウコさんのイラスト。松尾スズキさんの次なる舞台『パ・ラパパンパン』はファンタジー!?藤本有紀作ミステリー・コメディ。緻密な演出に挑戦中。「ホンがあがったときに、19世紀のイギリスが舞台になっていて、僕にはなじみがなくて少し戸惑いました。日本でいえば江戸時代。当時の風俗などをいま調べたりしています」新作『パ・ラパパンパン』は、ドラマ『花より男子』や連続テレビ小説『ちりとてちん』などを手がけた藤本有紀さんが脚本を担当。松尾さんとは5年前にNHKの時代劇『ちかえもん』で主演と脚本家という形でタッグを組んだ。甘えた声でスランプを嘆く中年作家・近松門左衛門を“劇作家・松尾スズキ”が演じる妙味が評判を呼んだ。「藤本さんはすごくいいセリフを書かれるし、コメディセンスもある。『ちかえもん』のあとにも『みをつくし料理帖』で僕がこれまでやったことのない役を書いてくれたりして、藤本さんのホンだったらやってみたいと舞台の脚本をお願いしました」『パ・ラパパンパン』も作家が主人公。流れで不慣れなミステリーに手を出してしまったティーン向けの小説家が、編集者と共に「クリスマス・キャロル」を舞台にした殺人事件を書く。やがて現実と物語が交差していくというファンタジックなミステリー・コメディ。松尾さんは、これまでも野田秀樹作の『農業少女』やミュージカル『キャバレー』など、他の作家の戯曲を演出してきたが、新作を演出するのは初めて。「一から構築する大変さを感じています。現実と物語の世界が不思議に絡み合っていく複雑なお話なんですよね。そこをうまく表現できたら面白いと思うんですが…。自分が書くときは、俳優の立ち位置や着替えの時間などを考慮しながら書き進めますけど、そういうこと一切おまかせになってるから(笑)、挑戦を受けているんだと思って頑張ってます」藤本さんには「ミステリーであり、コメディ。ゴージャス感のあるエンターテインメントを」とオーダーしたのだそうだ。「いつもの大人計画のように、細かいふざけを入れていったら、犯人の動機もわからなくなってしまうので、きちんとセリフを置いていかないといけないんです。テレビドラマのイメージで、藤本さんだからもう少し整理されたお話を書いてくださるのかと思ったら、思い切りはっちゃけていて、最後のほうはカオス。だいぶ僕の演出に寄せてきた感じ(笑)」主人公の作家を演じるのは松たか子さん。松尾さんの監督作品『ジヌよさらば~かむろば村へ~』に出演しているが、初めて舞台で松尾演出を受ける。「松さんは表現が的確。本読みのあとに稽古場に立った、その瞬間から完成されています。大胆でいて、やりすぎず品がいい。一流の女優というのはこういう人のことを言うんだろうと毎度思います。松さんにはぜひ歌っていただきたいねと、藤本さんと早い段階から話していました」松さん演じる小説家にはどんな編集者がいいだろう?と白羽の矢が立ったのが神木隆之介さん。松尾さん作・演出の『キレイ-神様と待ち合わせした女-』で2年前に初舞台を踏んだばかりだ。「『キレイ』ではずっとボケ続けている役だったので、今回はガラリと変えて知的な役をやっていただいて、松さんに延々突っ込み続ける(笑)。神木くんも松さん同様、特別な俳優だと思います。人前に立つことが特別じゃない人たちの居方でいるというか、構えがない。歌もうまい!」確かな演技、笑いのできる俳優を集めて本物のエンターテインメントを作りたいと松尾さんは考えている。「ベタを恐れないというか、きちんと感動させたいし、きちんと笑わせたい。小ざかしくふざけることにもう興味がなくなってきたんですよね。やればやるほど、エンターテインメントを作る難しさがわかってきました。でも、難しいことにチャレンジしていきたくなるんです。やんちゃな子なのでね(笑)」COCOON PRODUCTION 2021+大人計画『パ・ラパパンパン』勢いでミステリーを書くことになったティーン向けの小説家。19世紀イギリスを舞台にミステリーを書き上げるが、真犯人が違うことに気づいてしまう。現実と物語が交差するなか、作家は真相究明に走る。11月3日(水)~28日(日)渋谷・Bunkamura シアターコクーン演出/松尾スズキ作/藤本有紀出演/松たか子、神木隆之介、大東駿介、皆川猿時、早見あかり、小松和重、菅原永二、村杉蝉之介、宍戸美和公、少路勇介、川嶋由莉、片岡正二郎、オクイシュージ、筒井真理子、坂井真紀、小日向文世S席1万1000円A席9000円コクーンシート5500円Bunkamura TEL:03・3477・3244(10:00~18:00)大阪公演あり。最新刊『人生の謎について』で新境地に。深淵なるものが詰め込まれた渾身エッセイ。「書くことの興味の対象が移り変わってきたんですよね」と松尾さん。以前は文章で笑わせることを核としていたが、最新エッセイは肚にずしりとくる内容。夢破れた青春時代から劇団創世記、家族に対する複雑な思い、コロナ禍の閉塞感など、ヘビーな事象も物語のような、独特の抒情を醸し出している。「自分の見た目が津川雅彦みたいになっちゃったので、ふざけた文章が似合わないと思ったんです」。人生の味わい深さが沁みる一冊。『人生の謎について』重厚感ある自身のポートレートがカバーの、哲学書のような装丁。縦長でペーパーバックのような軽さもある。坂本千明さんの挿画が利いている。小社刊1760円まつお・すずき1962年12月15日生まれ、福岡県出身。’88年に「大人計画」を旗揚げ、多数の作・演出を務める。2019年『命、ギガ長ス』で読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞。’20年よりBunkamura シアターコクーン芸術監督に。スーツ¥95,700(ビームスエフ)ネクタイ¥17,600(フランコバッシ)シャツ¥41,800(ルイジボレッリ)チーフ¥8,800(ロワドゥラック) 以上ビームス 六本木ヒルズ TEL:03・5775・1623※『anan』2021年11月10日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・安野ともこヘア&メイク・鹿島結花(APREA)インタビュー、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年11月08日嵐山‐高雄パークウエイに、新しいアクティビティとして、『水辺のジップライン』が9月13日(月)に誕生しました。“ジップライン”は、スタート地点とゴール地点の間に張ったワイヤーロープを滑車を使って空中を滑り降りる、自然を楽しむアトラクションで、近年、大人から子どもまで幅広い年代で人気となっています。今回新設した『水辺のジップライン』は、同パークウエイ内にある菖蒲谷池の上空を高さ最大約10m、長さ約150mにわたって最大約40km/hのスピードで、爽快に駆け抜ける本格的なジップラインです。春は桜、秋は紅葉となる季節の景色を空中から眺めることができる、スリル満点のアクティビティをお楽しみください。『水辺のジップライン』の概要は次のとおりです。■『水辺のジップライン』について・概要…ジップライン1本(全長約150m 高さ最大約10m)※お一人様ずつの参加となります。所要時間約15分(受付、ご案内、ハーネス取り付け含む)最大速度約40km/h※速度はご利用される方の体重に影響されます。・営業時間…10時~16時(最終受付15時30分)※年中無休(嵐山‐高雄パークウエイが通行不可の場合はお休みとなります。)※強風、雷、強雨、台風などの悪天候や機械整備などにより、予告なく営業を中止する場合があります。・料金…1,200円(税込)/1名(お得な3回ご利用券(3,300円)、4回ご利用券(4,000円)もあります。)※当日に受付場所にて券売機でのお支払いとなります。(現金のみ)※『水辺のジップライン』は嵐山‐高雄パークウエイ内のため、別途通行料金がかかります。・受付場所…菖蒲谷池遊園地(ボート乗り場・BBQ受付前)・ご利用条件…身長111cm以上、体重30kg以上90kg未満、ハーネスがフィットする方で、動きやすく、汚れても構わないような服装でご参加ください。※腰・首に痛みがある方、妊娠されている方、体調不良の方、飲酒されている方などは、ご参加いただけません。※小学生2年生以下だけの方はご参加いただけません。※同意書にご署名いただけない方はご参加いただけません。※ジップラインは体重が動力源のため、体重が軽すぎる方の場合はゴールに到着できず、宙づりになってしまう場合があります。※スカート、サンダル、ハイヒール、マフラー、コート、過度な装飾品を付けたままでのご利用は出来ません。(シューズや靴下、ズボンなどのレンタルもございます。)■感染拡大防止対策・マスクの着用とアルコール消毒へのご協力をお願いします。・一定間隔をあけて、整列いただきますようお願いします。・チケットは自動券売機での販売となります。・自動券売機やハーネスの機器など、使用ごとにアルコール消毒を行います。■嵐山-高雄パ-クウエイ営業概要・営業時間4月~10月 8:00~19:00(入場は18:00まで)11月 8:00~20:00(入場は19:00まで)12月~3月 9:00~18:00(入場は17:00まで)・定休日年中無休・通行料金2輪車(125cc以下と土日祝通行不可) 850円軽・普通自動車 1,200円 マイクロバス 3,000円大型バス 4,880円西山ドライブウェイ株式会社 リリース 発行元:阪急阪神ホールディングス大阪市北区芝田1-16-1 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年10月01日俳優やダンサー、ミュージシャンに、能楽師や書道家、美術家といったジャンルレスなアーティストと、アイヌ古式舞踊や琉球舞踊といった日本各地の土地に根付いた伝統の芸能をミックス。東京都の文化イベントとして、2015年の東京・駒沢からスタートし、さまざまな土地で開催されてきた「東京キャラバン」。この企画の発案者であり、総監修の立場から演出を手がけるのが野田秀樹さん。「もともとは、東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本各地から盛り上げていくことを目的として、文化の観点から何か立ち上げられないかという発想から始まっているプロジェクトです。僕は東京都が運営している東京芸術劇場の芸術監督という立場で会議に参加していたんだけれど、じゃあ一体何をやるのかという具体的なアイデアが一向に出てこない。それで僕が、例えとして出したのが“文化サーカス”というもの。日本にあるいろんな文化がクロスする場を用意すればいいんじゃないかと思ったんですよね。もともと文化ってそういうものだからって。そしたら、じゃあ野田さんがやってくださいと言われてしまったという、ね(笑)」文化サーカスとしてイメージしたのは、ロンドンに住んでいた時に年に一度家の前でおこなわれていた移動遊園地。「毎年6月に来るんだけれど、設営の準備で2~3日前から賑わいだす。そろそろだなって思うと、何だかすごくワクワクしたりして。そういう、街角に神出鬼没に現れて、何が始まるんだろうなって周りの興味を惹きながら本番を迎えて、終わったら跡形もなく去っていく。あの感じがいいなと思ったんです」容易に混ざるけれど完全に混ざらないのが面白いなと。とはいえ引き受けた当初は、漠然とイメージはあったものの、新しい“試み”すぎて、すべてが手探り状態で、困惑のほうが大きかった。それでも、「関わるうちに、だんだん自分のなかで前向きに変わっていった」そう。「何より、集まってくれたパフォーマーたちのクオリティの高さですよね。事前にいろんな場所に行って土地に残る伝統芸能をたくさん見せてもらったんですが、当たり前の話なんだけど、長く残ってきている芸能ってとてつもないパワーに満ち溢れていると改めて思い知ったことも大きいです。秋田の竿燈(かんとう)なんかは、あまりの迫力に演出家であることを忘れ、ただのおっさんとして感動したし。そういう、通常交わらないもの同士が交わった時、普段なら絶対に観られないようなパフォーマンスが生まれてくるんです。回を重ねていくうちに、この企画で一番得をしているのは、じつは俺かもしれないと思うようになりました」パフォーマーとして参加した人のなかには、松たか子さんや、谷中敦さんの所属する東京スカパラダイスオーケストラのほか、宮沢りえさん、木村カエラさん、EGO‐WRAPPIN’の中納良恵さんら、一線で活躍するアーティストたちが多く名を連ねる。「’18年の秋田でのキャラバンでは、ニューヨークで活躍しているタップダンサーの熊谷和徳さんと民謡の人たちとがコラボレーションしたんです。最初はやっぱりお互いに慣れないものだから、戸惑いもあって。でも、やっていくうちにお互いに『こんなふうにやってみたらどうか』とアイデアを出し合い歩み寄って、みるみる良くなっていくわけです。キャラバンをスタートさせたばかりの頃は、この“混ぜる”っていうことをおっかなびっくりやっていたんだけれど、回を重ねるうちに、それぞれが持っているリズムを掴んでしまえば容易に混ざるんだっていうことがわかってきた。それでもやっぱり完全には混ざらない部分があって、そこもまた面白いんですよ。終わった後に、パフォーマーのなかに『いままで経験したことがなかったけれど、こういうことをもっとやってみたくなった』って言ってくれる方がたくさんいて、また『全然違うからこそ面白かった』って言われたり、そういう言葉を聞くたびに自分の力になっているし、喜びを感じています」誰もがお祭りや遊園地と同じ感覚で気軽に立ち寄って体験できるのが東京キャラバンの魅力だ。「演劇やダンスのようなカルチャーとか、パフォーマンスに興味のなかった人が、ちょっと覗いて、こういう面白いものがあるんだって気づいてくれるかもしれない。その人が興味を持って、観る側もしくはやる側に回ってくれるかはわからないけどね。普段クラシック音楽を聴かない人が、バイオリンって生で聴くとこんなにいいものなんだって、まずは知ってもらうことが大事だと思っています。日が暮れて夕景のなかで見ると、さして興味のなかったものが素敵に見えたりもするっていう効果もあるだろうし」もうひとつ、野田さんがここで目指していることがある。それは東京と地方との文化をつなげていくということ。「東京芸術劇場の芸術監督に就任した時から、自分のなかで柱にしてきたことがいくつかあるんです。若い演劇人の育成、海外の優れた舞台芸術の招聘…もうひとつあるのが、東京と地方とのラインを作りたいということ。僕は演劇しか知らないけれど、作品も観客もやはり東京に集中しがちです。地方は面白いものもあるけれど、あまり注目されないために、自分たちのやっていることへの誇りを失いかけている人もいる。キャラバンを通じて多くの人に観てもらう機会を増やすことで、少しでも地方の文化に活力がみなぎればと思っています」’17年、京都・亀岡で2日間にわたっておこなわれたワークショップ。撮影:井上嘉和のだ・ひでき1955年生まれ、長崎県出身。劇団夢の遊眠社を結成。’80年代に日本の小劇場ブームを巻き起こす。NODA・MAPを率い、国内外で演劇を創作する。さらに東京芸術劇場の芸術監督も務め、精力的に演劇界を牽引している。東京キャラバンは、東京オリンピック・パラリンピック開催により世界からの注目が日本に集まるタイミングで、東京を文化の面から盛り上げるために立ち上げられた。発案者である劇作家・演出家・役者で東京芸術劇場の芸術監督を務める野田秀樹さんが提唱するのは、多種多様なアーティストが東京キャラバンの旗印のもとに集い、ジャンルを超えて交わることで、新たな可能性を見出す場を作ること。’15年の東京・駒沢を皮切りに、これまでにリオデジャネイロや、東北、京都、九州、四国、岡山、富山、北海道など各地を旅しながら、様々なアーティストが集い、全16か所で開催。出演するのは、俳優、ダンサー、ミュージシャンなどのほか、地方に根付いた伝統芸能の担い手やパフォーマーたち。あらゆる表現が入り乱れたパフォーマンスは、各地で観客を熱狂させている。今年5月に予定していた公演は延期となったが、今後の開催が注目されている。※『anan』2020年5月27日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)ヘア&メイク・赤松絵利(esper.)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年05月21日暴力や犯罪、流血は当たり前。『凶悪』などで知られる白石和彌さんの映画は、正直めちゃくちゃ怖いです。でも監督の描く“闇と本質”に、俳優も観客もなぜか惹かれてしまう。その吸引力の秘密に迫ります。「殺したい奴はいないのか?」そう若松監督に聞かれた夜は、今でも心に強烈に残っています。今、日本で一番注目されている映画監督といっても過言ではない、白石和彌さん。アウトローな世界を描いた映画で注目され、今やたくさんの俳優が出演したいと願う監督の筆頭的存在です。でも実は30歳の頃は、「1作だけ撮って、映画の世界から足を洗おうと思っていた」そうで…。――11月8日に公開される『ひとよ』は、監督にとって今年3本目の公開作です。昨年も3本公開されていて、とても多作ですよね。白石:そうなんですよね。最近は、もちろん途中で止まっちゃうものもありますが、7~8本くらいの映画が並行して進んでいて。あと、本を書きたいなぁ~と思っているものも頭の中にあるので…。――頭の中で混乱しませんか?白石:昔は切り替えられなかったんですが、徐々に慣れてきました。最初の頃は「俺、これ無理だわ」って思ってたんですけれど、でもこの流れを逃したら、暗黒時代に戻ることになるし、それだけは嫌だと思って、必死にくらいついてきたというか。――小さい頃から映画がお好きだったんですか?白石:最初のきっかけは、“エロいもん見たいなぁ”って(笑)。――エロいもん(笑)。白石:中学生くらいですから、そこは責められないですよね(笑)。僕らの世代だと、ちょうどその頃にビデオが普及し始めて、近所にレンタルビデオ屋が急に増えて。そこに借りに行って、ロマンポルノとか観てました。そのあと『仁義なき戦い』などにハマっていき、そこで映画には“作り手”がたくさんいることを学び、いつか映画のスタッフになれたら、と思ったのが最初ですかね。で、東京に出てきて若松孝二監督の事務所に入り、流れで映画の助監督になっちゃったんですけれど、正直、監督になれるとはまったく思ってなくて。監督になってごはんを食べていけて、それで一生いられるとか、絶対無理だろうなって。でも単純に、助監督というフィールドワークは、すごく面白かったんです。――どんなご経験を?白石:当時はコンプライアンスなんてなかった時代で、今だったらアウトなことばっかりだからあんまり言えないですが、例えば国道を封鎖して撮影したり(笑)。僕がついていた映画監督って、若松さんとか行定(勲)さんとか、おかしい人たちばっかりだったんです。若松さんに初めてゴールデン街に連れていってもらった夜、「お前、殺したい奴とかいないのか?」って聞かれて、「いません」、「お前駄目だなぁ~!」っていうやりとりをしたんですよ。おかしいですよね?「殺したい奴はいない」に対して「駄目だなぁ~!」って(笑)。そもそもそんなこと普通の人は聞かないし、そういうことを聞くのが映画監督なんだったら、俺はマジで無理だわって思いました。でもその夜は、映画人としての第一歩だったなと、今でもよく覚えてます。映画『止められるか、俺たちを』の脚本にも、そのやりとりは入れたんです。とにかくそんなちょっとおかしい監督たちが考えることを実現するために、動いたり走り回ったりすることが本当に楽しくて、“これが映画だよね!”とか、“俺ら今、超かっけぇ!”とか思ってやってましたね。――青春ですね。白石:まさにそう。血糊つけて家に帰って、道中職質されたりもしましたよ。でも10年くらいやってるといろんな監督と組むわけで、「あれ、俺、この監督より面白いもの撮れるんじゃない?」と思うこともちょっとずつ増えてきた。同時に、助監督も一生続けられる仕事じゃないし、今さら映画の別部署に行くのも違うし、いつか、転職とか田舎に帰るっていう踏ん切りをつけるタイミングが来るとも思ってた。そこで、じゃあ1本だけ撮って、それでやめようって思ったんです。それが、30歳くらいのときかな。――1作目『ロストパラダイス・イン・トーキョー』は、34歳のときの作品ですね。4年のブランクがありますが…。白石:そう、そこからがさっきちらっと言った暗黒時代です。助監督やめて収入がほぼなくなり、でも子供が生まれたり。嫁に「稼いできてくれ」って怒られたり(笑)。――でも、1本撮ってもやめなかったから、『凶悪』が生まれたわけですよね。続けたのはなぜ?白石:1本目を観て、「白石さんと映画を撮りたい」と言ってくれた人がいたんですよ。それが『凶悪』のプロデューサーなんですけれど。あとは、やっぱり観客の皆さんですね。何度も観に行ったと言ってくれた人や、この映画を観て、映画のスタッフになった人もいた。あんな小さい映画でも、誰かの人生を変える力があるんだということが実感できて、それが大きな勇気になりました。――白石さんの、助監督時代を経ての今って、『情熱大陸』とかで描かれそうな感じもありますが…。白石:いや、それはちょっと…(苦笑)。どっちかっていうと僕は、ああいう成功者をキレイに描くドキュメンタリーよりも、“日曜2時の『ザ・ノンフィクション』”のほうが好きな部類の人間なので(笑)。監督にとって、今年3本目の公開作の映画『ひとよ』。自分の子供たち3兄妹を守るべく夫を殺した母・こはる(田中裕子)が、15年ぶりに家に帰ってくる。事件以来、人生が大きく変わってしまった次男の雄二(佐藤健)、長男の大樹(鈴木亮平)、長女の園子(松岡茉優)と、母親の再会。バラバラになった家族はどこへ向かうのか。11/8より全国ロードショー。しらいし・かずや1974年12月17日生まれ、北海道出身。映像技術系専門学校卒業後、中村幻児監督主宰の映像塾に参加。その後、故・若松孝二監督に師事し、2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編デビュー。’13年『凶悪』で各映画賞を総なめにし、注目される。代表作に『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』『凪待ち』など。※『anan』2019年10月9日号より。写真・岩澤高雄(by anan編集部)
2019年10月08日ちゃんみなが20歳になって最初に出したセカンド・フルアルバム『Never Grow Up』について、お話を聞きました。20歳の汚れなきハートを、世界基準の音に乗せて。セカンド・フルアルバム『Never Grow Up』を完成させた、ちゃんみな。今作にも収録されている「Doctor」は海外からも注目を集め、「I’m a Pop」では日・英・韓の3か国語で歌唱するなど、音楽的に攻め続けている。「やっぱり攻めた音楽性の曲を出すと批判的な声も大きくて。でも、その声が大きければ大きいほど、後から絶賛されるっていうルーティンがだんだんわかってきた。インスタに『Doctor』のダンス動画を上げている子がいたり、少女時代のメンバーの子がTikTokで曲を使ってくれたりして海外からSNSのフォロワーが一日に何千人単位で増えていって。筋肉と一緒で、一回壊さないと大きくならないんだなというのは、この1年で痛感しました」そんなちゃんみなは、20歳になって最初に出すアルバムのタイトルを『Never Grow Up』にすると、以前から決めていた。「17~18歳の私がこのタイトルを掲げるには若すぎるし、未熟すぎるなと。なので20歳になった時に『大人になりたくない』と言えるほど経験を積んでおこうと決めたんです。これは昔から大好きなピーターパンの言葉でもあるんですけど、まだ汚れてないこのハートをこの先も持ち続けて、良い意味で子供心を忘れずにいたいという気持ちなんです」10代の頃はコンプレックスやトラウマを赤裸々に歌詞に綴ってきた。20代に突入し第二章の幕開けとなる今作では愛する人と向き合って書いた歌詞が多い。特に「CAFE」や「Can U Love Me」など切ない恋愛ソングが胸を打つ。「私はラップとかしてるから好きな人にも強気でいけそうなイメージがあるじゃないですか(笑)、でも実際は曲でしか言えないんです。恋をすると弱気な自分が顔を出してくる。今作ではそんな自分も出したし、いろんな意味で裸になった感じです」ヌーディかつレインボーカラーをイメージしたジャケット写真が象徴するように、内面を様々な曲調で魅せた。ヒップホップ/R&Bのみならず初めてバンドと制作した「SAD SONG」などロックな曲も入り、バラエティ豊かな仕上がりに。20歳になっても自分らしい道を進む、ちゃんみなのスタンスと覚悟が伝わってくる一枚だ。「音楽を通じて誰かの気持ちを代弁しようとか、共感してほしいとか、一度も思ったことがないです。私はただ自分の経験を曲に焼き付けているだけなので、それを聴いてくれた人がそれぞれに感じてくれたら。でも<ちゃんみなの音楽に救われました>って言われたら嬉しいですよ、その声が私を救っているので。これからも自分が信じた道を直感で進んでいけたらいいなと思っています」2nd Full Album『Never Grow Up』【初回限定盤CD+DVD】¥4,200【通常盤CD】¥3,000進化を遂げたサウンドにピュアな内面を封じ込めた、今のちゃんみなならではの旬な作品。(Warner Music Japan)ちゃんみな2017年2月に「FXXKER」でメジャーデビュー。日本語、韓国語、英語を巧みに操るラッパー/シンガー。幼少期に始めたピアノやバレエで培ったセルフ・プロデュース力とパフォーマンスで多方面から注目を集める。※『anan』2019年8月7日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・馳尾潤子ヘア&メイク・野崎裕子取材、文・上野三樹(by anan編集部)
2019年08月04日シンガーソングライターのSIRUP。エモーショナルなボーカルを武器に、昨年リリースした2nd EP『SIRUP EP2』はiTunes R&B/Soulチャートで首位を獲得。ブラックミュージックをルーツにしながら世界標準の“今”を感じる音楽を届けてくれる貴重なアーティストだ。その彼が待望の1stフルアルバム『FEEL GOOD』をリリース。「集大成のアルバムといえばそうなんですけど、基本的に僕はその時にやりたいサウンドや想いをそのままパッケージする。今回のアルバムも同じで、一緒にやりたい人と、やってみたいことにトライしただけ。特別なことって意外とないんです」リリックやメロディは自身で手がけながらアレンジは様々なトラックメイカーとコラボレーションするのがSIRUP流。今回も親交の深いアーティストたちと共同で作業した。「全部を全部自分でやるという選択肢もあるけど、僕には誰かとやることで得られる広がりが大事で。思いもよらない自分の引き出しがみつかるとか、次のステップに気づくとか。それが合ってるし、好きなんです」そのために大切にしているのは密なコミュニケーションだと言う。「だから、まず、しゃべる。電話でもいいから話したい(笑)。どういう音楽が好きとか、今どんなトラックを面白いと思っているかとかそんなところから、自分たちにしかない感覚は何だって共有できる。そうして築いた信頼関係って揺るがない」同世代のトラックメイカーたちと共鳴しながらこれからも先へと進む。今年、YouTubeが選ぶブレイクが期待されるアーティスト10組「Artists to Watch」にも名前が挙がったばかり。「注目の、と言われるのはもちろんうれしいんですけど、僕は飛び級をしたくない。自然の流れの中で着実に広がればそれでいい。海外も視野に入れていますけど、それも無理して背伸びはしたくない。今の仲間たちと同じ感覚で、海外のアーティストたちとも肩を並べて仕事できるようになれたら最高ですよね」シラップ2017年シングル『Synapse』でデビュー。名前はSing&Rapを掛け合わせた造語。6月から全国ツアーがスタート。夏にはSUMMER SONIC 2019、大阪・東京の両日程にも参加決定。MVも話題の「LOOP」や、Honda VEZEL TOURINGのCM曲「Do Well」など新曲7曲を含む全12曲。ラッパーのBIMやマルチプレイヤーのTENDREも参加。『FEEL GOOD』¥2,800(A.S.A.B/Suppage Records)※『anan』2019年6月5日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2019年06月03日秋までフェス出演目白押しの注目バンド・Yogee New Waves。’80年代のシティポップに親しんで育った彼らは、アナログとデジタルを自由に行き来しながら音楽を楽しんでいる。竹村郁哉(G)、角舘健悟(V&G)、上野恒星(B)、粕谷哲司(D)の4人に話を聞きました。角舘:曲を掘りたい時や、情報交換をする時にストリーミングサービスは便利だよね。俺はスケボーしながら音楽を聴くことが多いんだけど、環境にマッチする音楽を選べるのも、膨大な音楽が聴き放題のストリーミングならでは。上野:俺はストリーミングを試聴感覚で使って、気に入ったらアナログで買う。学生の頃は迷いに迷って買ったCDがハズレた、という失敗もあったけど、今はそんな苦い思いをしなくてすむ(笑)。粕谷:今もCDやレコードを買う理由って、ジャケットからその音楽の背景にあるカルチャーが感じられたりするからだよね。竹村:デジタルでは表現しきれない世界観ってある。俺が音楽を始めた原体験は、母親のレコードを拝借して聴いてたとこにあるのかなって思ってるんだけど、ジャケを見るのも楽しかった。上野:俺は「こうやってジーンズはくとかっこいいんだ!」ってファッション誌代わりに眺めてたよ。粕谷:僕らのCDも、所有したくなるような付加価値をつけていきたい。デジタル全盛だからこそ、過去に回帰したくもなるしね。角舘:回帰といえば、今ってアゲる音楽ばかりに人が集まるけど、’90年代って“寂しいのもいいよね”っていうグレーな感情を纏った音楽が、結構メジャーだった。今はそこに注目していて。グレーな感情ってすごい素直じゃん。自分たちも、聴く人たちが素直になれる音楽を作りたいんです。私的リピアーティストは?竹村:TONO奇才音楽家、アート・リンゼイがプロデュースするブラジルの気鋭バンド。「南米の空気感がありながら、女性ボーカルの声に寂しさが漂っていて。曲によってテンションが結構違うけど、どれもビートがユニークで、ギターが秀逸」角舘:Stereolabロンドンで’92年に結成されたオルタナティブ・ミュージックバンド。ポップで実験的な音楽性で人気を博す。「ダークで夜に合う、僕の思う’90年代の音楽。CDのジャケットも、まさに“アートワーク”と言える凝り方で面白い」上野:Father John Misty今年のフジロックにも出演した男性シンガーソングライター。「音はノスタルジックなんですがリリックが風刺的で、現代社会の闇をアイロニックに語っていて面白い。MVやファッションもかっこよくて、注目しています」粕谷:Tommy Guerreroミュージシャンであり、スケートカルチャーのカリスマ。「リラックスしていて、自然な環境が似合う音楽。リズム感も独特で、夏の空気にしっくりくる。この前メンバーで沖縄行った時も移動中に流して、みんなハマってました」今ハマっていることは?竹村:サウナ&水風呂の多幸感がたまらない。名古屋のサウナで、主に健悟から指南を受けて僕も無事「サウナー」になりました。水風呂の酩酊感にやみつきです。角舘:とにかくスケボーが好き。毎日スケボー人生です。スケボーに乗ってると、全てを忘れられる。目の前の石を蹴ってみたり、曲を聴いてれば西海岸にもぶっ飛べる。上野:聴くのも演奏するのも、音楽が僕のハマりごと。音楽以外ない!尊敬する細野晴臣さんが「まだやれることもなりたいモノもある。だから続けてる」と言っていた。粕谷:カレーです!行きたい店がありすぎる。最近のヒットは『シバカリーワラ』。メンバー4人で行って感動した。次に行きたいのは、京橋の『ダバ インディア』。ヨギーニューウェーブス左から、竹村郁哉(G)、角舘健悟(V&G)、上野恒星(B)、粕谷哲司(D)。今年5月に新作『WAVES』を発表。「SAYONARAMATA」が11月公開の映画の主題歌に。※『anan』2017年8月9日号より。写真・岩澤高雄文・保手濱奈美間宮寧子(by anan編集部)
2017年08月13日プロからも熱烈な支持を受けている、美声の歌姫Aimerさんに独占インタビュー。その名前は、フランス語で“愛する”という意味。少しハスキーで優しいその声には、多くの人を魅了する力がある。幼い頃、ミュージカル映画の『アニー』を観てその声に憧れ、歌うことが好きになったエメさん。少し陰がある独特な彼女の声は、ラッドウィンプスの野田洋次郎さん、ワンオクロックのTakaさんなど、有名アーティストをも惹きつけ、楽曲提供を受けている。「弾き語りみたいな形で歌い始めたのは中学生の時。たまに友達に聞いてもらっていたんですが、その中に私の声を聞いて、“あ、なんか涙出てきちゃった”と言う子がいて。それがとても嬉しかったんです。その頃から、ミュージシャンになりたいな、と思うようになった気がします」包み込むような優しい歌、一方で強くエモーショナルな曲もある。その両極端の間を行ったり来たりしながら歌うのが、今は楽しい。「有限と無限、2つの価値観を肯定する。そんな世界観が好きで、自分もそういう曲にたくさん励まされてきました。何かに“受け入れてほしい、許してほしい”と思うことってありますよね。そういう時、私にとって音楽は逃げ場だったので、私の音楽も、みんなにとってそういう存在になれたら嬉しい。日々戦う人に、そっと寄り添って、一緒に歩いていく。自分の音楽のあり方として、最も理想的なのはそれですね」基本的にはインアクティブで、読書や映画を観るのが大好き。でも一方で、意外と行動派の一面も。「早朝に目が覚めて、まだ夜が明けていなくても、出かけたいなあ~と思ったらひょいっと家を出ちゃう(笑)。海に行ったり、この間は伊勢まで行きました。そういう自分の直感は信じたいし、常に研ぎ澄ませておきたいです」私的リピアーティストは?スピッツ美しい日本語と、日本語で歌う素晴らしさを教えてくれたのはスピッツ。「特に好きなのが、2ndアルバムの『名前をつけてやる』にある『魔女旅に出る』という曲。明るい曲調と悲しみを帯びた歌詞。そのバランスが素晴らしい」ReN若い男性ミュージシャンのReNは、中性的な声が魅力的。「2ndアルバムの『Life Saver』、良いですよ。激しくなくて、心地よくて。ちょっと、エド・シーランぽい…?夜の、少し気だるい時に一人で聴きたいです」Bjork「Hyperballad」という曲をカバーしたことも。「自然の中で森林浴をすると、細胞が活性化される感じがありますが、ビョークの曲にも同じエネルギーがあるような気が…(笑)。好きなものを追求している生き方も憧れます」今ハマっていることは?超インドア派でしたが、屋外って意外といい。屋外で歌うことにハマりつつあります。木や風などざわめくものを感じながら歌うことってこんなに気持ちいいのかと開眼中。エメ’11年にシングル『六等星の夜』でデビュー。今年5月に発売されたベストアルバム『blanc』『noir』(共にSME Records)が発売中。8/29には武道館でライブも。※『anan』2017年8月9日号より。写真・岩澤高雄文・保手濱奈美河野友紀間宮寧子(by anan編集部)
2017年08月12日今の東京の音楽シーンを語るのに欠かせないスリーピースバンド、D.A.N.。全員’93年生まれのデジタルネイティブ世代。音楽をネット経由で楽しむ時代になったのも、彼らにとっては自然なこと。メンバーの川上輝(D)、櫻木大悟(V&G&S)、市川仁也(B)に話を聞きました!櫻木:ストリーミングサービスの登場に特に抵抗はなかったし、当たり前の流れで出てきたものだなって思っています。僕の使い方は、図鑑みたいな感じ。気になる曲があった時、調べるツールみたいな。川上:僕はストリーミングって、現代版のラジオのようなものなのかなって思う。気軽に聴けて、世界を広げてくれる。もちろん、ラジオよりずっと能動的に使うものではあるんだけど。市川:音楽って、雑誌で紹介されていたりジャケットを見たりで視覚的には知っていても、実際耳にするまで時間がかかったりする。聴くまでに至らないこともあるし。とりあえずサクッと聴けるシステムができたのは、音楽を作る側としてもメリット。より早く、より多くの人に聴いてもらえるから。櫻木:「とりあえずサクッと」が、実はすごいハマる可能性がある。僕はNetflixでそれを日々感じています(笑)。市川:「意外にいいんだな」ってものに出合えるの、嬉しいよね。川上:あとは、国外にもタイムラグなく音楽を届けられるのも今の時代のいいところ。海外でもライブしたいなと思っているので、その点でもメリットかと思います。櫻木:もちろん曲ありきだから、僕らがやるべきことはいい音楽を作るってことに尽きるんですが。音楽の楽しみ方は変わっても、作る側のやることは変わらないのかもしれないですね。私的リピアーティストは?川上:Frank Ocean今一番欧米の若者の気持ちを代弁しているといわれるR&Bシンガー。「現在のヒップホップとかR&Bのジャンルの中でも突出した存在です。曲もいいし、世の中に対峙する姿勢もかっこいい。メンバーみんなで注目してます」櫻木:Floating Pointsプロデューサー、作曲家、DJとして活躍するロンドン育ちのアーティスト。ダンスミュージック界のキーパーソン。「本当に音楽が好きで、いろんなジャンルを取り入れているんだろうなと伝わってくる。音楽愛に溢れているんです」市川:Nils Frahmポストクラシカルシーンを代表するピアニストの一人。作曲も手掛ける。「メロディも、コードも、全部好き。自分の好きなものが全て詰まっているんです。心地よくてやさしい音は、生活のあらゆるシーンで聴きたくなる」今ハマっていることは?川上:家のテレビでひたすらスポーツ観戦。日頃、家でサッカー観戦ばかり。同世代の選手の熱い姿を見るのが好き。自分では疲れるんで、できないですけど(笑)。櫻木:ナイキの靴を探してネットサーフィン。「欲しいなー」と探す時間が楽しい。スパイクとか見ると「懐かし~!」と興奮。でも実際は3足しか持ってません。市川:ひと昔前に流行ったお笑い番組に夢中です。『ダウンタウンのごっつええ感じ』とか『笑う犬の生活』を観ています。世代じゃないのに、後からハマりました。ダン左から、川上輝(D)、櫻木大悟(V&G&S)、市川仁也(B)。2016年、アルバム『D.A.N.』で次世代の代表バンドとして評価を得る。今年4月ミニアルバム『TEMPEST』を発売。※『anan』2017年8月9日号より。写真・岩澤高雄文・保手濱奈美河野友紀間宮寧子(by anan編集部)
2017年08月06日ネット発のアーティストの代表格とも言えるのは、感性のままに、スマートに、自在に音を操るトラックメイカーtofubeats。学生時代からインターネットで音楽活動をしていたtofubeats。顔を知らない者同士が意見を交わすネットという場が、音楽スキルを伸ばしてくれたと話す。「ネットって匿名だから悪口も生まれやすいけれど、僕は自作の音楽をアップして、率直な意見を言ってもらえるのが嬉しかった。改善点を教えてくれたり、“こりゃ明らかにプロだな”と思われる発言もあったりして。顔の見えない師匠たちに鍛えられました」tofubeatsといえば、独特な世界観のMVも話題。編集から納品まで、全て自分で手掛けることも。「今年リリースしたアルバムの収録曲『WHAT YOU GOT』のMVは、1本8000円の映像素材を3本買って、それを編集して作りました。同じことを映像のプロがやったら、きっとそんなに面白くないんですよ。本職ではない人間が作るから、ネタ的にもインパクトがある。ということを最初から想定して作っているので、ちょっとずるいんです(笑)」ネットの寵児だと評されることもあるが、本人はいたって冷静。「ネットって、インフラですから。新幹線と一緒。ネット発というのももはや当たり前なんです。でもだからこそ、質実剛健にならないといけないなって思う。ネットがあろうとなかろうと、聴いてもらえる音楽を目指して作りたい。あとは自分がかつてネット上で匿名の師匠にアドバイスをもらっていたと先ほど話しましたが、それと同じようなことを僕も次の世代にしていきたいなと思っていて。tofubeatsの活動とは別に、こっそり始めているんです」私的リピアーティストは?ゆるふわギャングラッパーのRyugo IshidaとSophiee、ビートメイカーAutomaticからなるヒップホップユニット。2016年9月の本格活動開始以降、急速にファンを獲得。「ポップでいて、毒がある。日本のミュージシャンで、今一番注目しています」Alex Gフィラデルフィアの大学生でありながら、すでに7枚ものアルバムを音楽直販サイト「bandcamp」で発表。「デビュー当初からずっといいと思わせてくれるまれな人。フォークあり、サイケありの多彩なシンガーソングライター」Mac DeMarcotofubeatsと同い年、1990年生まれのシンガーソングライター。「曲がロマンティックで、ギターのサウンドもいい。すごいおしゃれなんだけど、“ナーバスに見られるのが嫌”らしくライブは全裸(笑)。そのギャップも好きです」今ハマっていることは?バイクシェアアプリでどこでも自転車移動!「docomo bike share」は本当に便利。住んでいる神戸も仕事で来る東京も坂が多いので、自転車シェアは重宝してます。トーフビーツ2013年秋に『Don’t Stop The Music』でメジャーデビュー。さまざまなアーティストのリミックスや楽曲提供なども行う。最新アルバム『FANTASY CLUB』が発売中。※『anan』2017年8月9日号より。写真・岩澤高雄文・保手濱奈美河野友紀間宮寧子(by anan編集部)
2017年08月05日