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新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』製作発表記者会見が5日に都内で行われ、尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉が登場した。同作は名だたる刀剣が戦士へと姿を変えた「刀剣男士」を収集し、歴史の改変を企む敵に対抗すべく、 様々な時代の合戦場を攻略していく刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞 ONLINE』の歌舞伎作品。今回は十三代将軍足利義輝が討たれた“永禄の変”を、歌舞伎ならではの発想で大胆に脚色する。足利義輝/小狐丸を務める右近は同作の上演について「2.5次元でされてきた中でも、僕も他の舞台でご一緒した高橋健介くん、spiさん、有澤樟太郎くんだとか、いわゆる刀剣男士の先輩たちも歌舞伎化を喜んでくれてまして。『歌舞伎らしさを頭に置きながら自分たちもやってきたところはある。今回歌舞伎役者たちががっつり歌舞伎をやるなら、『それをやられたら俺たち困っちゃうよ』という舞台を作ってほしいとに期待してくれている」と明かす。「変に寄ってくわけでなく、自分たちが知ってる歌舞伎らしさ、歌舞伎の手法、様式を正々堂々と貫き、しっかり噛み合った上で盛り上がっていけるんではないか」と意気込んだ。すでにビジュアルが発表され大きな反響を呼んでいるが、右近は「僕自身も自然な歌舞伎風の扮装ができたなと撮影の時に思って、ビジュアル解禁してからSNSの反応も色々見させてもらって、とても皆さん喜んでいただいてよかったなと。ただ一つ気になったのは、ちょっと顔が長いという……顔が割と面長だなあという評判の方がありまして」と苦笑する。さらに右近は「それはなるべく気にしないでもらいたいなと思ってる中で、1人の方が『右近さんは顔が長いけれども、踊りも芝居も達者で確かな歌舞伎の腕がある俳優さんなので、お芝居を見ていれば気にならないと思います』というコメントがあったので、これだからエゴサーチはやめられないなと思いました」と語り、会場は爆笑。「面長気にならないで、みなさん! 見にきてください」とアピールする。松也が「僕はそんなに面長だとは思わないですけどね」とフォローすると、右近は「いや、嘘つけ!」とツッコミ。松也は「長年一緒にいますからね、わかんなくなっちゃってるのかもしれませんけど」と応えていた。
2023年06月05日●女形に楽しさ「舞台中、普段の性格も柔らかく」俳優・香川照之(市川中車)の長男で歌舞伎俳優の市川團子が、明治座創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』(東京・明治座、5月3日~28日)の夜の部「三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繋馬』(ごひいきつなぎうま)」に百足のお百役で出演する。2012年に8歳で初舞台を踏んでから約11年。大学生活を送りながら歌舞伎俳優として着実に成長を遂げている團子に、同舞台への意気込みや歌舞伎への情熱、そして、目標とする祖父・市川猿翁と親戚でもある猿之助への思いを聞いた。『御贔屓繋馬』は、四世鶴屋南北の原作を三代目市川猿之助(現・市川猿翁)と奈河彰輔が筆を執り、1984年4月に明治座で初演し、大評判を呼んだ作品。今回は物語を洗い直し凝縮した形で届ける。大喜利所作事『蜘蛛の絲宿直噺』では猿之助が女童、小姓、番頭新造、太鼓持、傾城、土蜘蛛の精の6役を早替わりで踊り分け、“奮闘公演”に相応しい変化舞踊を披露する。――明治座創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』への出演が決まったときの心境からお聞かせください。『新・三国志』や『弥次喜多』に出させていただく機会が多く、それも本当にありがたいのですが、古典を学びたいと思っていたので、古典の作品に出演させていただけるというのはうれしかったです。――古典で学びたいと思った理由は?新作やスーパー歌舞伎『新・三国志』はセリフが現代調だったりして、先輩方は古典が身についていらっしゃるので現代調で言っても歌舞伎になるのですが、自分はまだ全然できていないので基礎である古典をしっかり学びたいと思いました。――明治座に抱いているイメージを教えてください。小学5年生のときに『四天王楓江戸隈』という作品に鬼童丸という役で出演させていただき、そのときに立ち回りが本当に楽しかったというのを覚えています。今回が2回目となりますが、また明治座さんに出させていただくのは本当にうれしいです。――『御贔屓繋馬』の魅力をどのように感じていますか?明治座さんでおじいさま(猿翁)がされた初演の映像も見させていただいたのですが、とにかく面白いという印象です。(主人公の)良門が復活するときに衣装から火や煙が出たり、視覚的にも楽しいですし、セットもすごくきれいです。そして、僕が演じる百足のお百はスパイで、村娘に扮して敵方に潜入するという役なのですが、僕だけでなく物語のほぼすべての人が“実は”という役で、スパイ合戦が繰り広げられます。この人はこうだったのだとひも解かれていくのも面白いですし、立ち回りも面白くパワフルな舞台だと思います。――今回の公演で特に楽しみにしていることを教えてください。女形を務めさせていただきますが、去年初めて女形をさせていただいたので、とにかく頑張って食らいつきたいと思っています。そして、“実は”という役を演じるのは初めてなので、その“実は”という要素をしっかり演じられるように、頑張ります。――女形はいかがですか? やりがいなどお聞かせください。楽しいです! 初めて女性に扮し、不思議な感覚になりました。――女形を演じて新たな気づきや変化などありましたか?すごく不思議なのですが、舞台中、普段の性格も柔らかくなっていたようで、家族や周りの人に言われてびっくりしました。言葉は変わりませんが、ちょっとした仕草が女性らしく柔らかくなっていたみたいです。――もしかしたらまた今回も?なるかもしれません(笑)●大切にしている猿之助の言葉「高1のときに…」――これまでも何度も共演されていますが、猿之助さんは團子さんにとってどんな存在ですか?“憧れ”と“かっこいい”が大きいです。『三国志』ではお父様の役(関羽)を演じられていて、後ろをついて歩く場面があったのですが、背中がとにかくかっこよかったです。――自分もこうなりたい! というように憧れている部分を教えてください。すごすぎてまだ何もわかりません(笑)。じいじと猿之助さんの2人が僕の中で一番の憧れなので、そんな役者になれるように必死に食らいついていきたいと思っています。――猿之助さんに言われたことや教えてもらったことで大事にしていることはありますか?高校1年生のときに猿之助さんと出演させていただいた『連獅子』で、「1日2個のことを直せば、25回公演があるから50個のことを直せる」とおっしゃってくださって、それは大事にしています。また、この前出演した作品の立ち回りのときに、僕は立ち回りは型だと思っていたのですが、猿之助さんは「そうではなく感覚でやるものだ。型も大事だけど、戦っているんだからもっと切羽詰まっているわけだし、それに縛られすぎたらよくない」とおっしゃっていて、とても勉強になりました。――今回の共演でもまた学びがありそうですね。長い時間共演するシーンが多いので、同じ場面で猿之助さんを見られるということが一番の楽しみです。猿之助さんの座頭を見るのも初めてで、目が見えない方をどう演じるのか、いろんなことを学ばせていただきたいです。――2012年に初舞台を踏まれていてから11年。ここまで活動されてきて歌舞伎俳優という職業に対して今どのような思いかお聞かせください。ずっと“好き”“楽しい”という感情です。――一番楽しいと感じる瞬間は?全部です! お稽古も本番も楽しいです。もちろん大変だなとか難しいという感情もありますが、常に楽しいという感情があります。――その楽しさは、経験を重ねるごとに増しているのでしょうか?楽しさはずっと一緒ですね。ずっと変わらず歌舞伎が好きなのだと思います。――團子さんが感じている歌舞伎の魅力とは?魅力は無数にあって未熟者なので到底語れませんが、音楽が楽しい、踊りも楽しい、そしてパワフルなところが大好きです。――若い團子さんを見て歌舞伎に興味を持つ若い方もいると思いますが、ご自身の活動によって歌舞伎界がこうなっていったらいいなという思いはありますか?全世代の方に見てみようかなと思っていただける役者に、いつかなりたいです。●祖父・猿翁の映像が活力源待ち受けも「じいじ」――歌舞伎のことがずっと好きだということですが、この11年で特にご自身にとって大きな経験になった転機を教えてください。おじいさまが『三国志』をやられた20年前のビデオとの出会いは転機になりました。おじいさまも言われていますが、主人公の関羽とおじいさまの人生は共通する部分があり、関羽が未来を語る場面は、おじいさまの夢を語っている場面でもあって、キラキラした目で語る姿がすごく好きで感動しました。子供のときも「かっこいい」と思って見ていましたが、2年前に僕も『新・三国志』に出演させていただくことになってよりそのシーンを見て感動し、その語りのシーンが活力源になっています。――けっこうな頻度で映像を見ているのでしょうか。見ます。いつも見ると「頑張らなきゃ!」と。心を燃やしてくださる活力源です。――今、映像を見せていただいた際に、スマホの待ち受け画面が歌舞伎の写真になっているのがちらっと見えましたが、ご自身ですか?これはじいじです。この写真は今年になってからですが、待ち受けはいつも、かっこいいなと思ったじいじの写真にしていて、本当に憧れです。――おじいさまの言葉で大切にしているものはありますか?「勇なるかな勇なるかな、勇にあらずして何をもって行わんや」という言葉をおじいさまが好きで、その言葉を書いた色紙を3、4年前にくださったのですが、これは何を行うにしてもまず勇気が必要であるという意味で、「僕も勇気を持ってやろう」と力をもらっています。――たくさんのパワーの源がありますね。そうですね!――大学ではどのようなことを学んでいるのでしょうか。芸術を学ぶ学科で、東洋のことだけでなく西洋の音楽や美術、演劇なども学んでいて、どれも面白いのですが、いろんなことを学んでいる中で僕はやはり歌舞伎が一番好きだと再確認しました。――本当に歌舞伎を愛していらっしゃるのですね。11年続けてこられて、別の道を考えてことはないですか?ないです。――今後、歌舞伎俳優としてどのようになっていきたいと思い描いていますか?じいじと猿之助さんが僕の理想なので、その背中を見てなんとか追いかけて、頑張り抜きたいという気持ちです。――最後にファンの方にメッセージをお願いします。『御贔屓繋馬』は、お話の内容がわかりやすく、早替わり、宙乗り、立廻りもありパワフルで楽しいお舞台です! 初めて歌舞伎を見る方や若い世代の方にも楽しんでいただける作品になっています。是非ご覧ください!■市川團子(いちかわ・だんこ)2004年1月16日生まれ、東京都出身。香川照之(市川中車)の長男。屋号 澤瀉屋。2012年、6・7月新橋演舞場『ヤマトタケル』で五代目市川團子を名乗り初舞台。2013年、国立劇場10月歌舞伎公演『春興鏡獅子』胡蝶にて、国立劇場賞特別賞を受賞。学業と芸道を両立させながら、さまざまな舞台に挑戦している。
2023年05月03日東京・新橋演舞場にて1月5日(木)、「新春歌舞伎公演 市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』」の公開舞台稽古が行われ、十三代目市川團十郎白猿と共演のSnow Man・宮舘涼太が参加した。『SANEMORI』は、古典歌舞伎の名作『源平布引滝』より『実盛物語』を主軸に創り上げられた歌舞伎作品。源平争乱の折、斎藤実盛が、平家に仕える身でありながら、恩義のある源氏に忠義を尽くそうとする生き様や、混乱の世を強く生きる人々の姿を現代の感覚を取り入れた演出で描く。2019年、“伝統の継承”と“新時代の歌舞伎の創造” を目標に開始した團十郎(当時海老蔵)の自主公演「ABKAI」で上演され大きな話題を呼んだ。当時ジャニーズJr.だった宮舘は、同グループの阿部亮平とともに出演した。約3年ぶりの上演にあたり、脚本や演出もブラッシュアップ。前回源義朝の霊、義朝の弟・義賢、そして実盛の3役を勤めた團十郎は今回主役の実盛に徹する。一方、宮舘は前回勤めた源義仲、そしてその父・義賢の父子2役を担い、「戸板倒し」や「仏倒れ」、梯子を用いた立ち廻りも披露。開幕に際し、團十郎は改めて「團十郎の名跡を継ぐことは同時に、古典を継承し発展させていく責務を背負うことでもあると感じております」と責任感を滲ませ、「歌舞伎を観るのが初めてのお客様にも存分に楽しんでいただける作品ができたと信じております。本作を通して『源平布引滝』の魅力を再発見していただけたら幸甚です」とコメント。宮舘は「お話をいただいてから初日を迎えるにあたり、沢山の方々から愛の溢れるご指導をいただきました」と真摯な言葉。「生き様、幸せ、歌舞伎の魅力、表現できる喜びを感じながら演じていきたいと思います」と意気込む。上演は1月6日(金)から1月27日(金)まで。<公演情報>初春歌舞伎公演 市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』2023年1月6日(金)~1月27日(金)昼の部:12時~夜の部:16時30分~【休演】13日(金)、20日(金)会場:東京・新橋演舞場
2023年01月06日12月26日(月) に歌舞伎座で行われる『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十二月大歌舞伎」』千穐楽より、十三代目市川團十郎が出演する『助六由縁江戸桜』の模様が生配信されることが決定した。2カ月続いた歌舞伎座での襲名披露公演のフィナーレを飾る『助六由縁江戸桜』は、成田屋の家の芸のひとつで、十一世、十二世團十郎の襲名興行の際にも上演された所縁のある演目。今回の公演では、粋でいなせな江戸の美男子・助六を新團十郎が演じる。視聴チケットは、本日12月16日(金) 10時より販売がスタートする。<配信情報>市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十二月大歌舞伎」夜の部『助六由縁江戸桜』千穐楽 生配信配信日時:12月26日(月) 17:40頃~(約120分)アーカイブ配信:12月27日(火) 17:00~2023年1月4日(水) 23:59まで※一度ご購入頂きますと、アーカイブ配信期間中は何度でも視聴可能です。【出演者】市川海老蔵改め市川團十郎中村七之助、市川猿之助、中村梅枝、坂東巳之助、市川猿弥、片岡市蔵、市川齊入、市村萬次郎、大谷友右衛門、中村勘九郎、坂東彌十郎、松本幸四郎、市川左團次、坂東玉三郎チケット料金:3,600円(税込)販売期間:12月16日(金) 10:00~2023年1月4日(水) 20:00※「イベント割」対象のため、通常の2割引の価格でお求めいただけます。(通常価格:4,500円(税込))【配信リンク】■歌舞伎オンデマンド※ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料) / ログインが必要です。■Huluストア「十二月大歌舞伎」の詳細はこちら:
2022年12月16日『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十二月大歌舞伎」』が、12月5日(月) に東京・歌舞伎座で開幕。その初日レポートが到着した。歌舞伎座での2カ月にわたる『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台』公演。12月公演は、歌舞伎の様式美を堪能できる華やかな演目『鞘當(さやあて)』で幕を開けた。舞台は桜が満開の吉原仲之町。尾上松緑演じる不破伴左衛門と松本幸四郎演じる名古屋山三がやってくると、すれ違う際に刀の鞘が当たったことから斬り合いとなり……。争うふたりを止めに入るのは市川猿之助演じる留女(偶数日は市川中車演じる留男)。荒事味のある伴左衛門と和事味漂う山三の渡り台詞や、留女の貫禄ある啖呵が心地よく響く。伊達を尽くした豪華な衣裳も目に美しく、廓風情漂う舞台に会場は華やかな空気に包まれた。続いては、十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』。今回は鐘供養から、市川團十郎家の家の芸「歌舞伎十八番」の一つで華やかかつ壮大な荒事の魅力を存分に堪能できる『押戻し』までを上演。春爛漫の道成寺に現れるふたりの白拍子花子を尾上菊之助と中村勘九郎、大館左馬五郎を市川團十郎白猿が演じる。ふたりの花子が、実は恋の恨みから蛇体となって道成寺の鐘を焼いた清姫の怨霊であったことが分かり、その本性を現すと、花道より勇猛な大館左馬五郎が登場し、怨霊の前に立ちはだかる。前半の華やかな踊りから一転、後半は新團十郎演じる左馬五郎が花道から本舞台へと怨霊を力強く押戻していく様子を観客も息を呑んで見守る。「竹馬の友の和康と兄貴と慕うた中村屋の面差し漂う雅行によく似た化物奴……」と清姫の怨霊を演じる菊之助と勘九郎に絡めた遊び心溢れる左馬五郎の台詞に観客は大盛り上がり。公演に向けたインタビューで「父(十二世團十郎)のようなおおらかな左馬五郎を目指します。」と語った團十郎は、典型的な荒事の扮装を身にまとい、存在感溢れる左馬五郎で観客を魅了した。新團十郎、菊之助、勘九郎と同世代の俳優が揃い、襲名を寿ぐ華やかな一幕となった。昼の部を締めくくるのは、八代目市川新之助初舞台狂言『毛抜(けぬき)』。11月公演で『外郎売』の外郎売実は曽我五郎を凛々しく勤めあげた八代目市川新之助が、今月は史上最年少となる9歳で『毛抜』の粂寺弾正を勤めるとあって、開幕前から注目が集まる演目の一つだ。舞台は中村梅玉演じる小野春道の屋敷。原因不明の病に伏せる姫君錦の前の様子をうかがいに、姫君の許婚である文屋豊秀の家臣粂寺弾正がやって来る。機智に富んだ弾正は姫君の奇病の仕掛けや悪人たちの策略を見事に解き明かしていき……。父・十三代目團十郎が演じた『毛抜』の舞台を観てから粂寺弾正が憧れの役だったと話す新之助は、持ち前の明るさとおおらかさを存分に活かし、愛嬌あふれる弾正を見事に演じ切った。本作の見せ場である様々な見得が決まるごとに、観客からは大きな拍手と劇場指定の関係者による小気味良い大向うの声が会場に響き渡った。歌舞伎十八番の中でも特におおらかな雰囲気が溢れ、古風な味わいたっぷりの一幕。新之助が今回使用している髷は曽祖父にあたる十一世團十郎が粂寺弾正を勤めた際に使用していたもの。「新之助としていろんな役をいっぱい演じていきたい」と熱く語り、歴代の想いを受け継ぐ八代目新之助が大きな一歩を踏み出した歴史的瞬間に立ち会った観客からは、あたたかな拍手が絶えることなく送られた。市川ぼたんが愛らしく繊細に心情を訴えかける『團十郎娘』夜の部は、襲名披露『口上(こうじょう)』から始まり、幕が開くと舞台上には十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助はじめ、市川團十郎家の色である「柿色」の裃を揃って身にまとって俳優がずらりと並ぶ。初日は松本白鸚が体調不良で休演のため市川左團次による紹介で始まった。続けて、河原崎権十郎、市川右團次、市川高麗蔵、松本幸四郎、市川猿之助、市川門之助、市川男女蔵、市川齊入が次々と華やかにお祝いの挨拶を述べていく。團十郎は「市川宗家の覚悟」を感じさせる真摯な眼差しで、続く新之助は若々しいエネルギーに溢れ、溌溂と挨拶。最後は11月に引き続き、團十郎が無病息災を願い成田屋の家の芸である「にらみ」を力強く披露し、熱い拍手に包まれた。続いては、市川團十郎家所縁の舞踊『團十郎娘(だんじゅうろうむすめ)』。『團十郎娘』は文化10(1813)年に七世團十郎によって初演された所作事。美しく、力自慢で評判の娘・お兼を市川ぼたんが勤める。歌舞伎座において歌舞伎の本興行で女性が出し物をするのは実に60年ぶり。昭和37(1962)年5月に歌舞伎座で行われた十一代目市川團十郎襲名披露興行の際に三代目市川翠扇が同じく『團十郎娘』を勤めて以来となる。舞台は近江八景の一つの琵琶湖のほとり。花道より馬をひいてやってきたお兼は乙女の恋心を近江八景によせて見せていき、ぼたんは長唄に合わせて愛らしく繊細に心情を訴えかける。やがてお兼の大力の噂の真偽を確かめようと、隠れていた市川右團次、市川男女蔵ら演じる漁師たちが打ちかかるが、お兼は軽やかにそれをあしらう。大きな見せ場である白い晒を用いた“布晒し”では、白く長い晒を華麗に翻し、その軽快な様子に場内からは万雷の拍手が送られた。最後の演目は、11月に続けての上演となる歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』。裃姿の松本幸四郎の口上に始まり、聞こえてくるのはさっぱりと軽やかな河東節の粋な演奏。坂東玉三郎演じる三浦屋揚巻が花道より登場すると、場内は一気に華やぎ、一瞬にして吉原の街に。傾城たちの口から語られる江戸一の伊達男・花川戸助六とは一体どんなに良い男なのかと、客席の期待も最高潮に達したところで登場するのが、市川團十郎勤める花川戸助六。花道にあらわれた途端、無駄のない流麗な立ち振る舞いに多くの観客が視線を奪われた。高まった期待をさらに上回る新團十郎の洗練された美しさに圧倒されるうちに物語は進行。助六が探す重宝・友切丸の詮議のため、坂東彌十郎演じる髭の意休に悪態をついたかと思えば、印象的な登場人物たちが次々登場し華やかな舞台を背景に楽しい場面が続く。中村勘九郎演じる白酒売新兵衛がやってくるとその和事味ある佇まいと、弟の助六との対比が面白く、喧嘩を売った相手に自らの股の下をくぐらせる件は、思わずくすりと笑いがこぼれる。廓風情を漂わせる市川猿之助演じる通人里暁の存在も印象的で、新團十郎の若い頃のエピソードを繰り出し、笑いを誘う。師走の忙しなさを忘れる、襲名披露興行に相応しい華やかなひと時となった。「十二月大歌舞伎」は12月26日(月) まで歌舞伎座で上演される。「十二月大歌舞伎」の詳細はこちら:チケット購入リンク:写真提供:松竹(株)
2022年12月06日「まだまだ未熟者で先祖の足元にも及びませぬが、一生懸命努力をして、精進したいと思っております。市川宗家としての覚悟でございます」11月7日、市川海老蔵改め市川團十郎白猿(44)の十三代目襲名披露公演が、歌舞伎座にて華やかに開幕した。「口上」に続き、厄落としになるといわれる市川家伝来の「にらみ」も披露。さらに家の芸である『勧進帳』『助六』では、團十郎が見えを切るたびに、「成田屋!」「十三代目!」という「大向こう」(客席からの掛け声)が、満員御礼の劇場に響きわたった。この日、息子の勸玄君(9・かんげん)も、祖母の堀越希実子さんや姉の麗禾さん(11・れいか・市川ぼたんを19年に襲名)が見守るなか、八代目市川新之助を襲名した。これに先立ち、10月31日から2日間行われた襲名披露の特別公演を観た古典芸能解説者で、かつてNHKで多くの歌舞伎中継も担当した葛西聖司さん(71)は、「スペシャル感いっぱいの公演でした。共演の片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さんという大先輩の胸を借りて、立派に晴れの新團十郎を披露してくれました。また『勧進帳』では、團十郎さんの弁慶を、成田屋のお手本どおりにきちっとやってくれたのでうれしくてね。先代の十二代目團十郎のお父さんをほうふつとさせる場面もあり、ふと胸が熱くなりました」一連の襲名披露の催し自体、コロナ禍で2年半もの延期を余儀なくされていた。この興行が、葛西さんの言うとおり、「ずっと苦しんできた歌舞伎界全体のカンフル剤になる」との期待も大きい。なかでも「市川團十郎」は、歌舞伎界において絶大なる影響力を持つ大名跡。また市川宗家は、英雄的な主人公が悪を成敗する「荒事」を創始した初代から十三代目まで、実に約350年もの伝統を有する歌舞伎界随一の名門である。しかし長い歳月の間には、実子が途絶え他家から養子を迎えたり、また幾人もが早死にや謎の自殺を遂げるなど、「團十郎の業」ともいうべき苦難の出来事も多かった。その波乱の人生のエピソードにおいても、團十郎家は他家を圧倒するのだ。■初代は刺殺、八代目は自殺ーー。初代團十郎が生まれたのは、1660年(万治3年)で、江戸初期のこと。前出のとおり、荒事を生み出した、江戸歌舞伎の創始者だ。しかし、45歳で共演していた生島半六という役者に舞台上で刺し殺される。嫉妬や恨みともされるが、真相は定かでない。二代目は、初代の急死を受けて17歳であとを継ぎ、荒事を完成させるだけでなく、「和事」(やわらか味のある美男子)も見事にこなし、最初の「千両役者」となる。屋号の成田屋もこのころに始まる。十三代目の團十郎本人も、こう語っていた。〈市川團十郎家は二代続けて「初代運」を持った人間が生まれた。だからこそ、今の團十郎家がある〉(『文藝春秋』13年6月号)続く三代目は病いで22歳の若さで死去し、その後12年間、四代目が襲名するまで團十郎は空位となった。さらに五代目を経て、14歳で襲名した六代目だったが、風邪がもとで、くしくも三代目と同じく22歳の若さで亡くなる。そして、七代目の登場。新團十郎が、〈人間はかく生きたいという原形をお持ちの方です……なんだか自分が似てるような〉(前出『文藝春秋』)と話していた、敬愛するご先祖である。今も高い人気演目の『勧進帳』や『暫』『助六』など「歌舞伎十八番」を制定するだけでなく、市川家の伝統にとらわれずに『東海道四谷怪談』の悪役など新しい役柄にも果敢にチャレンジした。「しかし、才能も人気もあっただけに、その贅沢ぶりなどを徳川幕府に目をつけられて、天保の改革時に江戸を追放になりますね。その後、10歳の若さで團十郎を譲られたのが、八代目。絶世の美男子で、その吐いた痰をファンがすくい取ったという“お痰さま”の逸話で知られますが、この人も32歳という若さで自殺します」語るのは、エッセイストで『海老蔵そして團十郎』(文藝春秋)の著書もある関容子さん(87)。そして、明治天皇の前で天覧歌舞伎を演じた九代目となる。「『劇聖』といわれ、近代歌舞伎の文化度を向上させた九代目が亡くなったあとは、大正、昭和の戦前まで團十郎は50年以上にわたって不在となります」(葛西さん)十一代目團十郎が生まれたのが1909年。しかし、彼は團十郎家の生まれではなかった。九代目のあと、息子のいない市川家を支えたのが、銀行員だった娘婿(死後に十代目を追贈)。彼は役者に転身しながら後継者探しにも尽力し、松本幸四郎家から養子を迎え入れる。「これが、のちの十一代目團十郎となります。つまり初代や二代目、七代目と、十三代目團十郎さんは血はつながっていないんですね。十一代目は、やがて『花の海老さま』となり、そこから十二代目、十三代目とつながりますが、そうした数奇な市川團十郎家の歴史をふり返ると、あの時代に幸四郎家から才能ある養子を得た巡り合わせは、歌舞伎の神様のはからいとしか思えません」(関さん)■十二代目は66歳で逝去。十三代目は茨の道を突き進んだ「十一代目の舞台を初めて観たとき、私はまだ幼い少女でしたから、もう80年近くも團十郎さんのお芝居を観続けております。戦後、女性人気を一身に集め、『海老さま』と呼ばれた十一代目はとびきりの美男子で、女の人はみんなドキドキしたもの」そう語る関さんが『源氏物語』で思い出すのが、その孫にあたる、新團十郎のデビュー時のこと。「まだ本名の堀越孝俊で『源氏物語』で初お目見えしたとき、歌舞伎座の案内嬢たちが彼の出てくる場面になると仕事を忘れて(笑)、劇場のうしろから入ってきて『かわいい!』『きれい!』って、うっとりするという現象がありました。それくらいセンセーショナルなデビューだったんです。その姿が、十一代目にそっくりで、『隔世遺伝』なんて言われましたね」十一代目が、團十郎を襲名したのは53歳。かなりの高齢だが、養子であることに遠慮した結果であったとされる。葛西さんは、「その前が50年以上、團十郎が不在でしたから、この間のいつ復活するのかという重みが、十一代目にのしかかっていたんですね。これは相当な重圧で、だから十一代目は團十郎を継いで、わずか3年で亡くなってしまうんです」まだ19歳の長男(のちの十二代目團十郎)を残し、胃がんにより逝去したときは56歳だった。その十二代目の襲名が行われたのが85年。この名優と、関さんは取材だけでなく、プライベートでも会食などする間柄だった。「大らかな、太陽のような存在。あの方がいることで、楽屋の諍いなどもなんとなく収まるような、まさに穏やかな大統領でした。一方、その息子の十三代目團十郎さんは内省的といいますか、誰にでも心を開くというタイプではないようにお見受けします。ただ、あのカミソリのような鋭い感性は、『若き日の信長』などで完璧を目指す信長役を演じるにはぴったりで、そこも祖父の十一代目と似ているといわれるゆえん。十三代目さんは、おじいさんの得意だったシャープな演目と、お父さまの『毛抜』などの大らかなものとの両方ができる。お二人のよいところを受け継いでいるんですね」葛西さんもまた、十二代目團十郎とは襲名披露を含め幾度もその素顔に接してきた。さらに取材を重ねるなかで、宗家ならではのストレスや重圧について知らされる場面があったという。「十三代目が新之助時代に『勧進帳』を初めて演じたときのことです。当時、まだ21歳だった新之助さんにも初日を迎えた気持ちなどをインタビューして、取材は普通に終わっていました。その事実を知ったのは、かなりあとになってからです。お父さまが、あの『勧進帳』のとき、『実は倅が家出した』と打ち明けたんです。つまり、市川家伝来の演目を演じるというのは、それほどのプレッシャーなのだと。『僕は、もう倅に継がせなくていいと思った』ということまでおっしゃいました。『息子はまじめで考えすぎるほどに考える』とも」当時の心境を、十三代目團十郎本人も、新之助時代に出版した写真集『新生CREATING NEW FORM』(スイッチ・パブリッシング)のインタビューでこう話していた。〈もう地獄。素っ裸で冷たい風に打たれて、右へ左へ、涙がこぼれてきた〉この「地獄」を乗り越え、新之助はやがて海老蔵となり、己れの道を突き進んでいく。〈坊ちゃんとかそういうものを捨てて、周りが何と言おうと俺は俺でもう生き始めた〉しかし、その眼前に待っていたのは、さらなる茨の道。父親の白血病が発覚したのが、04年の自身の海老蔵襲名披露公演中のこと。その後、10年秋には暴行事件に巻き込まれ、3年後には父が66歳で逝去する。そこから9年間、十三代目を襲名するまで、また團十郎不在の時間が過ぎていったーー。【後編】天国の小林麻央さんと子どもたちとの強い絆海老蔵が十三代目團十郎にへ続く
2022年11月27日11月28日(月) に歌舞伎座で行われる『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十一月吉例顔見世大歌舞伎」』千穐楽より、八代目市川新之助が出演する『外郎売』の模様が生配信されることが決定した。『外郎売』とは、七世市川團十郎が制定した市川家の芸「歌舞伎十八番」の演目のひとつ。今回は、八代目市川新之助初舞台狂言として、新之助が外郎売実は曽我五郎を勤める。新之助は、初日より本作の眼目である外郎売が薬の効能を語るういろうの言い立てや立廻り、勇ましい荒事の芸を見事に披露し、その凛々しくたくましい姿で多くの観客を魅了している。なお11月29日(火) 13時から12月4日(日) 23時59分までアーカイブ配信も予定されている。<配信情報>市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台『十一月吉例顔見世大歌舞伎』昼の部『外郎売』千穐楽配信日時:11月28日(月) 12:10頃~(約35分)アーカイブ配信:11月29日(火) 13:00~12月4日(日) 23:59まで※一度ご購入頂きますと、アーカイブ配信期間中は何度でも視聴可能です。出演者:八代目市川新之助、中村魁春、中村雀右衛門、片岡孝太郎、中村児太郎、大谷廣松、中村鷹之資、片岡市蔵、市村家橘、市川左團次、尾上菊五郎チケット料金:2,800円(税込)販売期間:11月18日(金) 10:00~12月4日(日) 22:00※「イベント割」対象のため、通常の2割引の価格でお求めいただけます。(通常価格:3,500円(税込))【配信リンク】■歌舞伎オンデマンド※ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料) / ログインが必要です。■Huluストア※こちらの視聴ページは本日11月18日(金) 10:00よりご覧いただけます。「十一月吉例顔見世大歌舞伎」の詳細はこちら:
2022年11月18日『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十一月吉例顔見世大歌舞伎」』が、11月7日に東京・歌舞伎座で開幕。その初日レポートが到着した。歌舞伎座で2カ月にわたる襲名披露興行の幕開きを飾るのは、『祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)』。襲名などの特別な公演では、多くの俳優たちが揃って祝祭気分に溢れる「芝居前」と呼ばれる演目を上演することがあり、本作もその趣向で、鳶頭に中村梅玉、中村鴈治郎、中村錦之助ら、芸者に中村時蔵、片岡孝太郎ら、芝居茶屋亭主に坂東楽善、芝居茶屋女房に中村福助と、豪華な顔合わせでこの度の成田屋の襲名披露を寿ぐ。梅玉勤める鳶頭の掛け声で出演者一同と観客が手締めをすると、これから始まる襲名披露興行への期待に満ちあふれ、おめでたい雰囲気に包まれた。続いては、八代目市川新之助の初舞台となる狂言『外郎売(ういろううり)』。令和元(2019)年7月、貴甘坊役で早口の言立てを披露した市川新之助(当時 堀越勸玄)が、この度は新之助初舞台として外郎売実は曽我五郎を勤める。幕が開くと、舞台は富士山を望む大磯の廓。小林朝比奈(市川左團次)や、大磯の虎(中村魁春)ら大勢の傾城が招かれた酒宴で、工藤祐経(尾上菊五郎)が盃を重ねており、菊五郎の祐経が放つ敵役の色気と大きさが客席を一気に作品の世界へと引き込む。そこへやって来たのは、外郎売に身をやつした曽我五郎(市川新之助)。花道からその姿を現すと、凛々しい佇まいに観客の視線は釘付けに。「劇中口上」では、尾上菊五郎が「『外郎売』は、十二代目團十郎さんが昭和55年5月歌舞伎座におきまして、古風に則り演じられた復活狂言にて、市川家の家の芸にございます。この度八代目新之助くんの初舞台を迎え、父十三代目の教えのもと、この大役を相勤めますれば、何卒鷹揚のご見物のほどをひとえにお願い申し上げ奉ります。」と紹介すると、市川新之助が「祖父十二代目市川團十郎が作り上げました『外郎売』を父十三代目が受け継ぎ、その思いを私が継承させていただきます」と挨拶を述べた。そして、新之助は外郎売として本作最大の聞きどころである早口の言立てを堂々と披露。八代目市川新之助としての第一歩となる大役をしっかりと勤め上げ、割れんばかりの拍手が送られた。昼の部は、十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言『勧進帳(かんじんちょう)』で打ち出しに。智勇を兼ね備えた武蔵坊弁慶を市川團十郎白猿、気品と憂いを漂わせる源義経を市川猿之助、颯爽とした風姿で弁慶と対峙する富樫左衛門を松本幸四郎と、同世代の俳優が揃い歌舞伎十八番屈指の人気作を勤める。幕が開くと、安宅の関所。厳重な警固をしている富樫(幸四郎)が名乗りを終え、花道からは都を落ち延びてきた義経(猿之助)と四天王の亀井六郎(坂東巳之助)、片岡八郎(市川染五郎)、駿河次郎(尾上左近)、常陸坊海尊(片岡市蔵)が登場。続いて、花道に弁慶(團十郎)が姿を現すと、満席となった場内はみなぎる熱気と心地よい緊張感に包まれる。ここから新團十郎の弁慶による白紙の勧進帳の読み上げ、富樫が弁慶を追求する「山伏問答」など息もつかせぬ展開が次々と繰り広げられ、観客を魅了。襲名前の会見で團十郎は、弁慶を父である十二世市川團十郎に教わったと話し、「弁慶を演じる上で一番大切なのは、義経を守る気持ち」と語っていた。その言葉通り、鋭い目力、全身から溢れ出る気迫、躍動感ある一挙手一投足で、義経を何としても守り抜く覚悟を表現。幕切れの花道の引っ込みでは盛り上がりも最高潮に達し、4階の大向うエリアから「成田屋!」「十三代目!」との声がかかる中、飛び六方で豪快に引っ込むと万雷の拍手が鳴り響いた。まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような『助六由縁江戸桜』夜の部は、歌舞伎十八番の一つで、荒事の魅力溢れる『矢の根(やのね)』で華やかに幕を開けた。紅梅白梅が咲き誇る正月。勇ましい筋隈をとった典型的な荒事の扮装の曽我五郎(松本幸四郎)が、父の敵・工藤祐経を討つために大きな矢の根を研いでいる。そこへ、お年玉に宝船の絵を持参した大薩摩文太夫(大谷友右衛門)が挨拶に訪れ、その絵を枕の下に敷いて初夢に良い夢でもみようとうたた寝を始めた五郎だが……。五郎が「やっとことっちゃあ、うんとこな」と荒事特有の掛け声をかけたり、夢の中で兄の曽我十郎(坂東巳之助)の危難を告げられて勇みだったりと、全体を通して豪快さと明るさが漂い、祝祭気分に包まれる舞台となっている。続いては、襲名披露『口上(こうじょう)』。舞台上には、十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助はじめ、尾上菊五郎、松本白鸚、片岡仁左衛門、中村梅玉、市川左團次と、襲名披露口上ならではの歌舞伎界を代表する豪華顔合わせが居並び挨拶を述べた。(22日以降は坂東玉三郎も出演)。團十郎は、先輩たちの挨拶に感謝を伝えながら「初代より十二代、團十郎を大切にしてきた先祖を思い、その先祖の足元にも及びませんが、一生懸命努力をし、精進したいという覚悟でございます」と述べ、新之助は「そののちはひとかどの歌舞伎役者となれるよう一生懸命相勤めますれば、どうぞよろしくお願い申し上げ奉ります」と凛々しく挨拶。最後は白鸚の紹介により、團十郎がご来場のお客様の無病息災を願って成田屋の家の芸である「にらみ」を披露し、熱い拍手に包まれた。夜の部の切は、歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』。まずは、裃姿の松本幸四郎の口上により襲名についての挨拶と作品の由来が紹介され、河東節の粋な演奏が始まると、心躍る賑やかな雰囲気に包まれる。三浦屋揚巻(尾上菊之助)の花道の出では、吉原の風情が場内いっぱいに広がり、市川團十郎勤める江戸一の伊達男・花川戸助六が花道に登場。この助六の花道の出は、「出端(では)」と呼ばれ、流麗な所作と形で魅せる本作の見どころだ。助六が探す重宝・友切丸の詮議のため、尾上松緑演じる髭の意休に悪態をつく様子や、廓の女性に相手にされずへそを曲げる片岡仁左衛門演じるくわんぺら門兵衛が、通りすがりの市川新之助演じる福山かつぎに言いがかりをつけるやり取りなど、華やかな舞台を背景に楽しい場面が続いていく。助六と白酒売新兵衛(中村梅玉)の兄弟二人が喧嘩を吹っかける場面も明るい雰囲気に包まれ、通人里暁(中村鴈治郎)が、「成田屋!」「十三代目!」と大向こうで盛り上げ、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような見どころ満載の120分となった。團十郎襲名披露狂言に相応しい助六の伊達男ぶり、多彩な登場人物の個性に自然と笑顔がこぼれる豪華な一幕で、大盛況のまま初日の幕を閉じた。「十一月吉例顔見世大歌舞伎」は11月28日まで歌舞伎座で上演される。「十一月吉例顔見世大歌舞伎」の詳細はこちら:
2022年11月08日11月7日(月) より歌舞伎座にて開幕する『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十一月吉例顔見世大歌舞伎」』の初日夜の部『襲名披露 口上』が、松竹公式動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」で生配信されることが決定した。『口上』とは、観客へ向けて述べる挨拶のこと。歌舞伎では、古くから襲名や初舞台などの俳優の慶事に舞台上で裃姿の歌舞伎俳優が居並ぶ『口上』が行われてきた。今回が初の試みとなる生配信は、市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助はもちろんのこと、襲名披露公演ならではの歌舞伎界を代表する豪華俳優陣が揃う、貴重な『襲名披露 口上』となる。襲名披露は、11月、12月の2カ月にわたる歌舞伎座での公演を皮切りに2024年10月まで南座や大阪松竹座ほか全国各地で行われ、市川團十郎家所縁の演目や新團十郎、初舞台を踏む新之助の誕生を祝う華やかな舞台の数々が披露される。<配信情報>『市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十一月吉例顔見世大歌舞伎」』夜の部 『襲名披露 口上』 生配信配信日時:2022年11月7日(月) 16:50~(約15分)※公演の状況によって開始時間が前後する場合がございます。配信場所:歌舞伎オンデマンド※ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料)/ ログインが必要です。■チケット価格:500円(税込)10月30日(日)10:00より発売※有料配信チケットは11月13日(日) 22:00まで発売。※アーカイブ配信は11月7日(月) 21:00より発売。配信開始後、配信終了後に購入の方も11月13日(日) 23:59までご視聴できます。■出演者市川海老蔵改め十三代目市川團十郎 / 八代目市川新之助 / 松本白鸚尾上菊五郎 / 片岡仁左衛門 / 中村梅玉 / 市川左團次
2022年10月30日先祖と亡くなった人の冥福を祈る、お墓参り。遺骨が中に入ったお墓は、残された家族が故人をしのぶ大切なものといえます。2022年10月23日に、歌舞伎役者の市川海老蔵さんがブログを更新。先祖と、2017年にがんで亡くなった、妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんのお墓参りに訪れたことを明かしました。我が子とともにお墓参りに行った海老蔵さんは、ブログを通してあるお願いを呼びかけています。それは、祖父と先祖の墓を削ることをやめてほしいというものです。そしてかなしいです。祖父の墓石と九代目の墓石、また削られています。やめてください。お願いします。市川海老蔵オフィシャルブログーより引用写真のように、墓石のいたるところが削られていたのです。「また削られています」と海老蔵さんがいうように、墓石への被害は一度に限ったことではないと分かります。大切な故人の墓石が削られていることを明かした海老蔵さんのブログに、さまざまなコメントが上がりました。・亡くなった人の墓石を削るとは、なんて罰当たりなことを…。・自分がされたら嫌なはずなのに、どうしてこんなことをできるのでしょうか。・心ないことをする人がいるなんて、とても残念です。墓石は、故人と残された家族を結ぶ大切なもの。このように削られる被害は、海老蔵さんだけでなく先祖も悲しんでいるはず。墓石を削った人が、自身の間違いに気付き、少しでも被害がなくなることを願うばかりです。[文・構成/grape編集部]
2022年10月26日歌舞伎俳優の市川海老蔵が15日、東京スカイツリータウンで実施されたイベント「スカイツリー点燈式と『三番叟』(さんばそう) 披露」に、長女の市川ぼたん、長男の堀越勸玄とともに出席。十三代目・市川團十郎襲名を間近に控え、ぼたんと勸玄から激励を受けた。歌舞伎座では11月、12月の2カ月にわたって「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」を開催する。同公演に先がけて今回、東京スカイツリーに十三代目市川團十郎白猿襲名・八代目市川新之助初舞台の記念企画として、成田屋をイメージした柿色の特別ライティングや特別演奏を実施。海老蔵が「三番叟」を披露した。海老蔵は「2020年に予定されていた襲名披露興行ですが、皆様もご承知のとおり、コロナ禍で延期という発表がございました。それがようやく本年2022年11月から襲名披露公演ができるのは、やっとの思い。大変うれしく、緊張感をもって過ごしております」と心境をコメント。本イベントの開催に触れて「(襲名の日が)刻々と近づいてきていると、ひしひしと感じています」と述べた。ぼたんは12月に「團十郎娘」で踊り、勸玄は11月、12月に「外郎売(ういろううり)」「毛抜(けぬき)」などに挑む。歌舞伎界の未来を背負う我が子たちの成長に海老蔵は「彼らもどんどん機運が高まっている。私もその気合いに負けないように過ごしていきたい」と目を細めた。さらに、ぼたんと勸玄が、團十郎を継ぐ父へのメッセージを求められると、海老蔵は「私に?」と目を丸く。ぼたんは「團十郎という名跡は、とても大きな名跡で、本当にすごいなと思います。これから大変なことがあると思いますが、頑張って乗り越えてください」と激励。勸玄も「團十郎という名跡はとても大きなもので、尊敬しています。お父さんに頑張ってほしいと思っていますし、ケガなく、安全に、楽しく過ごしてもらいたいです」とエール。海老蔵は頭を下げて感謝した。
2022年10月15日11月、12月の2カ月にわたり歌舞伎座にて行われる「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」の特別CMが公開された。本CMは「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」に向けた15秒の特別CM。撮影場所は襲名披露公演の舞台でもある“歌舞伎座”で、9月中旬、格式高い松羽目を背景にした舞台上に海老蔵と勸玄が並び、厳かな雰囲気と緊張感漂う中、撮影は行われた。なお、第五期歌舞伎座でのCM撮影は初めてとなる。監督は数々のCMを手掛けた原田陽介が務め、撮影は写真家の操上和美が担当した。操上は、襲名のビジュアルとなっている『勧進帳』武蔵坊弁慶の宣材写真を撮影しており、また新之助時代から海老蔵を撮影している。映像では、紋付姿の海老蔵と勸玄が挨拶をするまでの瞬間をツケ打ちの音とともに印象深く演出。真っ直ぐな眼差しで前を見つめるふたりがアップになり、「歴史の継承」そして「未来」という海老蔵のナレーションが入るなど、襲名披露公演への期待が高まるCMとなっている。特別CMは、12月上旬まで松竹チャンネル(YouTube)、日本テレビ、テレビ朝日で放送される。■市川海老蔵 コメント襲名を目前に控え、勸玄と共に、第五期歌舞伎座では初となるCM撮影を行わせていただきました。改めて身の引き締まる思いです。多くのお客様にお楽しみいただけるよう一所懸命勤める所存です。ぜひ歌舞伎座へお越しください。■堀越勸玄 コメント歌舞伎座の舞台での撮影でしたが、舞台を勤めるときとは違い緊張をしました。頑張りましたので、このCMを見てたくさんの皆さまに歌舞伎座に来ていただきたいです。「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」特別CM
2022年10月15日歌舞伎俳優によるオンライントークショー『歌舞伎家話』第17回に、市川染五郎と市川團子が出演することが決定した。今回の配信は、「弥次喜多」シリーズの最新作として歌舞伎座で上演された新作歌舞伎『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離ー譚(やじきたりたーんず)』が歌舞伎オンデマンドで配信されることを記念した特別編。主役の弥次郎兵衛・喜多八を演じた松本幸四郎、市川猿之助の活躍はさることながら、「陰の主役」である伊月梵太郎と五代政之助をそれぞれ12才(染五郎)・13才(團子)から足掛け7年をかけて演じた染五郎、團子の活躍・成長ぶりは目覚ましく、同シリーズは彼ら二人の役者としての成長絵巻とも言える。今回の『弥次喜多流離譚』では、御家が没落して不良になってしまった伊月梵太郎を染五郎が、梵太郎の幼馴染であり家臣の五代政之助を團子が演じた。また、今回は二人とも女方にも挑戦し、見事な早替りと劇中で繰り広げられた「ダンスバトル」で観客を魅了。今回のトークでは、舞台の感想はもちろん、7年間同役を演じ続けてきた二人だからこその舞台への想いが語られる。■市川染五郎 コメント弥次喜多シリーズ初演から伊月梵太郎を勤めさせていただいています。純真無垢な若殿様が、暴走族の総長になるとは6年前を思うと想像もしていませんでしたが、次回はどうなるのか、はたまた次回があるのかどうかさえ想像できない所もこのシリーズの好きなところです。その弥次喜多シリーズのお話を中心にお話しできればと思いますので、限られたお時間ですが、ぜひお楽しみください。■市川團子 コメント皆さま、こんにちは。市川團子でございます。今回、戸部さんと染五郎さんと歌舞伎家話にてお話できる機会をいただけたこと、本当に嬉しく思っています。今回は久しぶりの舞台での弥次喜多の公演ということや、初の本格的な女形への挑戦ということもあり、色々な思い出のある一カ月となりました。舞台でのお話はもちろん、舞台裏のことについても楽しくお話させていただければなと思っておりますので、ご覧いただけたら嬉しいです。<配信情報>『歌舞伎家話』出演者:市川染五郎 / 市川團子聞き手:戸部和久(松竹演劇部 /『東海道中膝栗毛 弥次喜多離流譚』脚本)配信日時:2022年9月8日(木) 20:00~(約70分)※生配信詳細はこちら:『歌舞伎オンデマンド』2022年9月9日(金) 12:00~9月29日(木)※3週間限定配信(購入時より7日間視聴可能)■視聴料金『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚』本編:3,300円(税込)※『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚』本編&イヤホンガイド『Web講座』セット販売も同時配信詳細はこちら:※ご購入・ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料)/ ログインが必要です。
2022年09月05日歌舞伎俳優・市川海老蔵の長女・市川ぼたんが9日、大阪・京セラドーム大阪で開催されたオリックス・バファローズ対東北楽天ゴールデンイーグルス戦の始球式に登板した。突然スーパーパワーを手に入れた可愛いペットたちの大冒険を描く映画『DC がんばれ!スーパーペット』(8月26日公開)で声優に初挑戦し、空飛ぶ犬のクリプトや“スーパーペット”たちの前に立ちはだかる最強の敵、あざとかわいい子猫のウィスカーズを演じたぼたん。父・海老蔵と毎日キャッチボールの練習をして初始球式の当日を迎えたぼたんは、「(父から)たくさんアドバイスをもらいましたが、野球ボールの握り方を詳しく教えてくれました!」と明かし、始球式に向けて「緊張しますが、精一杯投げたいと思います!」と緊張した面持ちながら意気込みを語った。そして迎えた本番、観客でにぎわう球場内で名前がコールされると、オリックス・バファローズのユニフォームに自身が演じた子猫・ウィスカーズのイメージを加えたオリジナルのユニフォームで登場。会場から大きな拍手が沸き起こった。始球式前の投球練習でも父・海老蔵と練習をしていた成果もあり、一発勝負の投球はマウンドから見事なピッチングでホームへ真っすぐ届き大成功。会場からは大きな拍手が贈られた。始球式終了後、「緊張したけど楽しかったです!またチャレンジしてみたいです」と笑顔でコメント。始球式と同様、自身の中で初挑戦となった『DC がんばれ!スーパーペット』の吹替版声優に関しては「励ましと勇気をくれる映画です」と述べ、球場にいるプロ野球ファンたちに「ぜひ、映画館でご家族やお友達と観てほしいです!」と呼びかけた。(C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & (C) DC
2022年08月09日歌舞伎俳優・市川海老蔵の長女・市川ぼたんが31日、都内で行われた映画『DC がんばれ!スーパーペット』(8月26日公開)の夏休みファミリー試写会&吹替キャスト登壇イベントに、女優の松岡茉優、お笑いコンビ・チョコレートプラネットの松尾駿とともに出席した。本作は、突然スーパーパワーを手に入れた可愛いペットたちの大冒険を描く物語。声優初挑戦のぼたんは、空飛ぶ犬のクリプトや“スーパーペット”たちの前に立ちはだかる最強の敵、あざとかわいい子猫のウィスカーズを演じた。ぼたんは「皆様こんにちは、市川ぼたんでございます」と緊張しながらもしっかり挨拶。「『DC がんばれ!スーパーペット』は、少しおっちょこちょいな、かわいらしいスーパーペットたちが助け合いながら頑張っている姿に、ユーモアや感動、勇気などをもらえる、とてもいい作品だと思いますので、皆さんぜひ見に来てください」とアピールした。あざとかわいい子猫のウィスカーズ役について、「あざとかわいいけど強いというところが、どういう風に演じようかなと思って本当に難しかったんですけど、あざとくてかわいいというところを特に意識して演じてみました」とコメント。「声の出演が初めてだったので、それ自体が緊張したんですけど、特にあざとくてかわいくて強いっていうのが『えー!』って思ってしまって。本当に難しかったです」とアフレコを振り返った。今回が映画イベント初参加となったぼたん。「とても緊張しましたが、松尾さんや松岡さんにもお会いできて、皆様の前でこのような経験ができたこと、本当にうれしいです。今日はありがとうございました!」と挨拶していた。
2022年07月31日歌舞伎俳優の市川海老蔵が7月7日、東京・歌舞伎座で行われた「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」の演目発表会見に、長男の堀越勸玄とともに出席した。海老蔵が「十三代目市川團十郎白猿」、勸玄が「八代目市川新之助」をそれぞれ襲名しての初舞台。2022年11月、12月に歌舞伎座で上演し、その後各地で襲名興行が行われる。十一月吉例顔見世大歌舞伎(11月7日~28日)の昼の部では『外郎売』と『勧進帳』、夜の部では口上と『助六由縁江戸桜』を上演し、團十郎を襲名する海老蔵が武蔵坊弁慶(『勧進帳』)、花川戸助六実は曽我五郎(『助六由縁江戸桜』)を、新之助を襲名する勸玄が外郎売実は曽我五郎(『外郎売』)、福山かつぎ(『助六由縁江戸桜』)を勤める。続く十二月大歌舞伎(12月5日~26日)の昼の部では『押戻し』と『毛抜』、夜の部では口上と『助六由縁江戸桜』が演目に決定した。当初2020年5月に予定されていた襲名から、約2年6カ月の延期を経て開催される運びとなった「十三代目市川團十郎白猿襲名披露八代目市川新之助初舞台」。会見に臨んだ海老蔵は、「ご承知の通り、コロナ禍ということで、襲名披露興行が延期という形となっておりましたが、皆様のご指導のもと、11月、12月の歌舞伎座を皮切りに、地方各都市を回らせていただく興行ができることと相成りました」と神妙な面持ち。市川海老蔵「まだコロナ禍は続いておりますが、このような襲名披露興行が執り行えることで、何か新しい光になれれば。関係者の皆様の願いもございますし、この2年間は、それに応えるための、ある意味で準備期間をいただいたのだと思う」と話していた。襲名披露興行は2024年10月の松竹座まで行われる予定で「私自身も、心身ともに十分に配慮しながら、皆様のご期待に応えられるような團十郎に、また、歌舞伎がより一層の発展となりますように賢明に努力いたします」と決意を新たに。「襲名によって、私の中身がいきなり、魔法のように変わるわけではございません」と気持ちを引き締めた。堀越勸玄海老蔵の父である十二代目團十郎が2013年2月に亡くなって以来、大名跡が復活を果たすのは、9年9カ月ぶりとなり「父の襲名披露興行も、そこで苦労していた背中も見てまいりました。自分自身も苦しみあがきながら、しかし、歌舞伎に向き合う。そんな自分に期待しながら勤めてまいりたい」と思いを馳せ、「父から教わった市川家由縁の芸である歌舞伎十八番の助六や弁慶を勤められるよう励みたい」と精進を誓った。勸玄は十二月大歌舞伎の『毛抜』で、成田屋の歴史において最年少で粂寺弾正を勤めることになり、「賢明に勤めさせていただきます」と凛々しく挨拶。本人の希望で『毛抜』の上演が決まったといい、「お父さんみたいなすごい役者になりたいと思って」と理由を語ると、海老蔵は「9歳では大変難しいお役」としつつ、「2020年で『毛抜』に挑戦することは、おそらくなかったはず。(延期を)プラスに変える努力をすべき」とエールを送った。取材・文・撮影=内田涼<公演概要>「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」十一月吉例顔見世大歌舞伎<昼の部>歌舞伎十八番の内『外郎売(ういろううり)』八代目市川新之助初舞台相勤め申し候外郎売実は曽我五郎:新之助歌舞伎十八番の内『勧進帳(かんじんちょう)』武蔵坊弁慶:團十郎<夜の部>十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助襲名披露 口上(こうじょう)團十郎、新之助歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』花川戸助六実は曽我五郎:團十郎福山かつぎ:新之助十二月大歌舞伎<昼の部>道成寺歌舞伎十八番の内『押戻し(おしもどし)』大館左馬五郎:團十郎歌舞伎十八番の内『毛抜(けぬき)』八代目市川新之助初舞台相勤め申し候粂寺弾正:新之助<夜の部>十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助襲名披露 口上(こうじょう)團十郎、新之助歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』花川戸助六実は曽我五郎:團十郎
2022年07月07日市川海老蔵が6月23日、都内で行われた歌舞伎座「七月大歌舞伎」第二部『夏祭浪花鑑』『雪月花三景』の取材会に出席した。『雪月花三景』では市川ぼたん、堀越勸玄と親子3人で共演することになり、「麗禾(ぼたん)とも一緒に1ヶ月の本興行ができるというのは、我が家としては初めてのことなので、うれしいですね。初物尽くしですし、私も(襲名を控え)海老蔵として舞台に立つ回数はどんどん減っていくので、一生懸命に集中して勤めていきたい」と喜びとともに抱負を語った。義太夫狂言の傑作『夏祭浪花鑑』では、海老蔵が8年ぶりに団七九郎兵衛を勤め、男伊達の義理人情と、歌舞伎ならではの様式美あふれる「殺し場」を錦絵のように繰り広げる。九郎兵衛の伜市松は、海老蔵の長男・勸玄が演じる。勸玄の様子について「襲名が延期になり、落胆もしておりましたが、この数ヶ月“やる気スイッチ”が入ってきた」と目を細め、「歌舞伎の家として当然ですが、次に渡していく作業があるので、麗禾と勸玄に対する責任も増してきている」と表情を引き締めた。続く『雪月花三景』は、成田屋ゆかりの新歌舞伎十八番のひとつで華やかな舞踊劇。貴人の悲恋を支える帝の忠臣・仲国(海老蔵)が胡蝶の精らとともに、五穀豊穣と天下泰平を祈念する旅に出かける物語で、女蝶の精を長女・ぼたん、男蝶の精を勸玄がそれぞれ勤めることになった。ぼたんが本興行で歌舞伎座公演に初出演。本興行としては、初めて親子3人での共演が実現する。ふたりによる可憐な舞踊も見せ場になっており、海老蔵は「親が言うのはヘンなんですが、舞踊に対する彼女の熱量はとても真面目。それが見ている人間に通用するところまで磨き上げている。そんな向き合う姿勢を、お客様に観ていただく機会を増やすことが、歌舞伎、舞踊、文化としても価値のあるもの」とぼたんの今後に期待のコメント。改めて、親子3人での共演について「夢のよう」と語り、「これが続けられるように、模索していきたい」と話していた。コロナ禍の影響で延期になっていた「十三代目市川團十郎白猿襲名披露八代目市川新之助初舞台」の公演が、令和4(2022)年11月、12月の2ヶ月間にわたり歌舞伎座にて開催する予定だ。「海老蔵という広く知られるようになった名前をやめて、團十郎という新しい世界に入ることは、大変勇気がいる行動。私にとっても愛着がある名前ですが、團十郎という大きなお名前を襲名するのは、自分のことだけではなく、歌舞伎という伝統文化の中で生きていく部分が、より大きなものになる」と決意を新たにしていた。会見後の取材に応じた勸玄は、「堀越勸玄として、舞台をするのは7月が最後なので、皆さま観に来てください。精いっぱい頑張ろうと思います」と強い意気込み。ぼたんは「歌舞伎座に出させていただきます。蝶の精を一生懸命、躍らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」と挨拶した。取材・文・写真=内田涼<公演情報>「七月大歌舞伎」2022年7月4日(月)~29日(金)第一部午前11時~第二部午後2時40分~第三部午後6時30分~※開場は開演の40分前を予定【休演】11日(月)、20日(水)【貸切】第三部:15日(金)、21日(木)会場:歌舞伎座
2022年06月24日歌舞伎俳優・市川海老蔵の長女・市川ぼたんが、映画『DC がんばれ!スーパーペット』(8月26日公開)で声優に初挑戦することが21日、発表された。本作は、突然スーパーパワーを手に入れた可愛いペットたちの大冒険を描く物語。急にはパワーを操れないちょっとドジなペットの犬、ブタ、カメ、リスたち。世界征服を狙うあざと可愛い子猫とモルモットたちにさらわれたご主人様を救い出すため、最強の敵に立ち向かう。日本語吹替キャストには、楠大典、高木渉、魏涼子、松岡茉優、松尾駿(チョコレートプラネット)、梶裕貴ら豪華キャストが既に発表され、個性的で愛らしいスーパーペットたちの活躍に、期待の声が寄せられている。今回、新たに市川ぼたんが日本語吹替版の声優として参加することが決定した。2019年に8歳で日本舞踊の名跡・四代目市川ぼたんを襲名し、昨年は連続ドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室―』にも出演した市川ぼたん。声優初挑戦となる本作で演じるのは、空飛ぶ犬のクリプトや“スーパーペット”たちの前に立ちはだかる最強の敵・子猫ウィスカーズ。あざと可愛い見た目に反して、しっぽマシンガン、ひげミサイル、毛玉ボムボムなど全身が武器。スーパーパワーを手にしたペットたちに容赦ない攻撃を繰り広げ「こんばんニャ♪」「ニャめんなよ~」と可愛い猫語を披露している。今回が声優初挑戦となるが、吹き替えならではの演技に「声の出し方をあまり知らなかったので、色々頑張りました」と新たな挑戦への奮闘を明かした。一方で、「初めての体験だったので、とても楽しかったです」と話した。自身が演じたウィスカーズについては、「可愛い!」「惚れちゃう!」と無邪気に話し、ワクワクしながら向き合ったという。自宅で飼っている2匹の犬の話を振られると、「撫でると癒されるので、ずっと撫でています」「私が泣いていたら涙をなめてくれたり、ガッカリしていたら『大丈夫だよ』みたいな、感情を読んでくれるところが自慢です!」とコメント。もし、ウィスカーズのようにスーパーパワーを手に入れられたとしたら、「透明になって色々な所に行って、悪い人がいたら倒したいです(笑)」と話し、最後に映画の見所を「おっちょこちょいな“スーパーパワー”を持った動物たちの活躍を、私と同じぐらいの(年齢の)方にもたくさん観ていただきたいです」とアピールした。さらに、“人間とペット”や“仲間”との絆が感じられる日本版本予告&本ポスターも公開された。エモーショナルなBGMと共に、画面に現れる子犬のクリプト。「あなたを決して裏切らない最高の友達、それはペット」というナレーションに続いて、クリプトと赤ちゃんのスーパーマンが楽し気にじゃれ合う。が、画面は一転! 成長し、空飛ぶスーパードックとなったクリプトは、ヒーロースーツを身にまとったスーパーマンにリードを掴ませて、空を散歩する。二人は手を取り合って街の平和を守る最強のコンビになっていた。しかし、スーパーマンの前に、世界征服を企むモルモットが現れ、捕らえられてしまう。クリプトは大好きな“親友”スーパーマンを助けるため、突然スーパーパワーを手に入れた動物たちに協力を求める。カラダの大きさが変幻自在のブタさんのPB、超高速カメのマートン、電撃必殺リスのチップ、無敵バリアドッグのエース。ちょいドジな“スーパーペット”たちは仲間クリプトの大切な親友スーパーマンを救出するため、最強の敵・子猫のウィスカーズ、モルモット軍団に立ち向かう。エースに「僕は彼(スーパーマン)にとっていいペットじゃなかった」と打ち明けるクリプト。弱気になっているクリプトに、エース、PB、マートンは、それぞれ“仲間”として励ましの言葉をかける。そして、クリプトは再び“親友”を救うべく、果敢に敵に向かっていく。なお本予告でも、特報と同じくリスのチップの声優を担当する梶裕貴がナレーションを務めている。本ポスターには、魅力あふれるスーパーパワーをもったペット達に囲まれるように、クリプトと赤ちゃんのスーパーマン、そして「ぼくの親友は、ぼくが守る」という言葉が添えられている。こちらも、ペットたちが巻き起こす「笑いと絆のアドベンチャー」に期待膨らむポスターとなっている。(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2022年06月21日歌舞伎俳優の尾上松也、尾上右近が出演する、日本中央競馬会「第89回 東京優駿(日本ダービー)」の期間限定コンテンツ「歌舞伎ダービー」が12日より、特設サイトにて公開される。今年、第89回を迎え、数ある競馬レースの中でも頂点に立つと言われる日本ダービー。今回、伝統と格式あるこの一大レースを盛り上げるべく、日本が世界に誇る伝統芸能「歌舞伎」とのコラボが実現した。レースゲームなどを楽しめる「東京優駿善悪鑑(とうきょうゆうしゅんぜんあくかがみ)」では、日本ダービーのためだけに歌舞伎を取り入れたオリジナルストーリーを展開。障害物レースや、日本ダービーに関するトリビアクイズが楽しめる。また、日本ダービーの魅力を伝える歌舞伎を取り入れたオリジナルムービー「競馬祭典花姿絵(歌舞伎ダービースペシャル動画)」では、江戸時代を舞台に松也と右近が兄弟役として登場。自宅にいながら二人が競馬で運試しをする様子を描いた「おうち競馬で候!」編や、インタビュー形式で休日の過ごし方を語る「ぱぱっと即PAT!」編など、エンタメチックに競馬の楽しさや魅力を描いている。○■尾上松也、尾上右近インタビュー―― 「日本ダービー」と「歌舞伎」がコラボすると聞いた時はいかがでしたか?松也:本当にうれしかったです。歌舞伎というエンタテインメントを選んでいただいたこともうれしかったですし、僕自身も競馬は子どものころから好きで、とても馬が好きでしたので、日本ダービーに関わらせていただけるなんて、こんなにうれしいことはございませんでした。右近:日本を代表するエンタテインメント同士で歴史もありますし、そういった意味でも精通する部分もあり、お祭りという意味で皆さんが楽しみにして思いのあるイベントに自分も関われるということで、うれしくお受けしました。―― 「東京優駿善悪鑑」では3つのミッションにクリアして邪悪苦次郎の悪の手からレースを守れるかというゲームですが、普段の生活で守っているルーティンはありますか?松也:家庭用の焚火を購入しましたので、毎日焚火をしています。火を見るのが好きで、夜のルーティーンとして照明は一切つけずに、火だけで過ごすというのが、夜の私の過ごし方です。リラックスできます。右近:最近はジョギングです。どんな日も雨が降ろうが、槍が降ろうが30分は走るようにしてます。何か一つ、どんなことがあってもやっているものがあると気持ちが安定する。あと、食べるのが好きで、特にカレーが好き。食べることを諦めたくないので、その分動こうと思っている。――日本ダービーでは様々な馬が走りますが、自分の馬に名前を付けるならどんな名前にしますか?松也:「マツヤニ」。日本ダービーは、ネーミングが短めの馬が最近勝っている印象があります。印象に残っているのは「ウオッカ」などです。「マツヤニ」は自分の名前が入っていますし、4文字でしたら活躍しそうだなという……。儲けたい欲が出てこうなりました(笑)。右近:私の馬の名前は、「ケンノユメ」です! 僕の本名がけんすけといいます、自主公演の名前も研究の「研」なんです。研究って、「研ぐ」、「磨く」という意味があるので、「研の會」という名前で自主公演やっているため、「研」という名前を付けたい。あとは、やっぱり夢があるっていうことが言葉として好きなので、自分の夢を託して「ケンノユメ!」。――今回、兄貴的存在の松也さんとの共演ですが、右近さんから質問や伺いたいことはありますか?右近:(日本ダービー前日、5月28日は右近の誕生日ということで)以前は高価なプレゼントをいただいたのですが、今年は何をプレゼントしてくれるのでしょうか? 馬ですか? 馬だったら良いな。それぐらい期待しております。松也:馬ですか。まぁ良いですよ。馬にしましょうか。僕、夢だったんですけどね。馬主になるの。買うだけ買って、人に譲るとは思いませんでした……って買えるわけない(笑)。馬買ってどうするんだ。移動手段で使ってくれるなら買いますよ。馬のフィギュアでもあげますよ。
2022年05月12日歌舞伎俳優の市川海老蔵と長女の市川ぼたん、長男の堀越勸玄が23日、東京・大本山 増上寺で「わたしの街の未来の桜」プロジェクトの記念植樹を行なった。47都道府県で桜の植樹・保全を行う同プロジェクトは、2019年3月に「お~いお茶」発売30周年を迎えたことを記念し、日本さくらの会と協働して始動。日本の春の象徴として古来より愛されてきた桜を“未来につなぎ、咲かせ続けたい”という願いを込めて取り組んできた。今回、CMキャラクターを務める海老蔵とぼたん、勸玄が記念植樹のイベントに登場。1,000本目となる桜を親子3人で協力しながら、真剣な眼差しで植えた。また、それぞれの名前が入った記念碑を3人で見る場面も。植樹を終えた海老蔵は「日本だけではなく、世界中でお茶を販売している伊藤園らしく、世界にも広げて欲しい活動だ」と同プロジェクトへの思いを語った。コメントは以下の通り。■市川海老蔵娘 ぼたん、息子 勸玄をお招きいただきありがとうございます。伊藤園様が植樹の活動をずっと続けており、その中で1,000本目を植えるという大役をさせていただき光栄でございます。一粒万倍日ということもございまして、1,000本目の桜でありますが、それがさらに万倍となって、一千万本の桜が植樹できるような活動になっていったら、世の中がより明るくなっていくのではないかと思います。まさか自分もよく来ている増上寺の桜に、娘のぼたん桜、息子の勸玄桜、というような名前で桜を植えられるとは夢にも思っておりませんでした。本当に幸せでございます。
2022年01月27日眠狂四郎の市川雷蔵、座頭市の勝新太郎、日本映画のレジェンド中のレジェンドふたりを描いた評伝『市川雷蔵と勝新太郎』がこのほど、KADOKAWAから出版された。著者は『江戸川乱歩と横溝正史』『萩尾望都と竹宮惠子』など、文芸、エンタメの歴史に新しい光を当てる執筆スタイルで人気の作家、中川右介さん。37歳の若さでこの世を去った市川雷蔵は、没後50年のいまでも毎年のように回顧上映が行われていて、若い新しいファンも誕生している。勝新太郎も、その個性的な演技と破天荒な生き方に根強い人気がある。雷蔵は関西歌舞伎の若手有望株、勝は長唄三味線奏者、というそれぞれの出自や、歌舞伎の世界と映画との関わりについても詳述されるが、この本が特別なのは、ふたりを対比して論じる俳優論ではなく、この二枚看板を中心に次々と娯楽作を連打した、今はなき大映という映画会社の興亡を時代を追って深く掘りさげているところである。ふたりの誕生は同じ1931年。映画デビューも同じ1954年。映画は右肩あがりの急成長にあり、そこから、58年には観客数(映画人口)が11億人へと頂点に達していく。当時は、東宝、松竹、東映、日活、そして大映の大手五社が独自の配給網、映画館チェーンを持ち、2週間に2本の新作を送り出していた。上映も2本立てだ。東宝はサラリーマン喜劇や若大将、東映は時代劇や任侠ものなど、各社独自のカラーがあった。大映は、この「カツライス」と呼ばれた超人気俳優ふたりの作品がまさに、屋台骨を支えていたのだ。「両雄並び立つ」という章では、その絶頂期が書かれている。1963年はふたりの主演作2本立ての正月興行で始まる。この年、勝は11本の作品に出演し、その10本が主演作。雷蔵は10本に出演、うち主演は9本だった。この本数は、この年だけではなく、ほぼ毎年、雷蔵が亡くなるまで同じペースで続いたのだ。雷蔵には眠狂四郎、若親分、忍びの者、陸軍中野学校のシリーズがあり、勝新は座頭市、悪名、兵隊やくざがあり、これら語り継がれる名作は、いま、回顧上映やDVD・配信などで、ひとつの作品として観られ、絶賛されている。が、実は量産された、いわゆるプログラム・ピクチャー2本立ての1本だったのだ。あの映画はこんなふうにして世にでたのか、という驚きの連続である。テレビの出現で1960年代には映画業界に陰りが見え始める。映画人口は3億人をきり、各社不況のなか、大映は雷蔵が没した2年後の71年に倒産する。その大映映画の権利を現在は、本書の版元であるKADOKAWAが保有している。巻頭フルカラーで24ページ、ずらりと並んだふたりの貴重な全出演作ポスター集ひとつとっても、この版元だからできたこと。丁寧に作られた映画書である。『市川雷蔵と勝新太郎』中川右介著 / KADOKAWA / 2,860円(税込)ぴあアプリ「水先案内人」中川右介さんのおすすめ映画はコチラ
2021年10月05日市川海老蔵が9月30日、都内で「市川海老蔵特別公演 アース&ヒューマン」の製作発表会見を行った。美しい自然や文化を未来の子どもたちへ引き継いでいくため、人間の暮らしの基盤となる持続可能な地球環境の実現に寄与することを目的とした本公演。「無意識であることがすごく怖いなと。意識化ですね。自然に着目し、“気持ちの種”をまいていきたい」と意気込みを語った。素踊り『三番叟』では五穀豊穣、素踊り『延年之舞』では無病息災・家内安全を祈る他、能の大鼓または小鼓と謡で演奏する演目や、環境問題スペシャルトークも実施し、さまざまな角度から伝統芸能の世界を披露する。海老蔵は「お客様に歌舞伎というエンターテインメントを楽しんでいただくのと、今回はプラスアルファ、『この人はなんでこの公演をしているんだろう』と考えてもらえれば。自然環境に対してアプローチしているんだという、そういう見方が出てくることが大事なんじゃないかと思います」と本公演の意義をアピールした。子どもたちと環境問題について話す機会も増えているといい、「今はペットボトルで水を飲むけど、パパが子どもの頃は水道で飲んだんだよ。最近は急に雨が降ったり、雷も多いけど、昔はそうじゃなかったとか。そういう話ですね。子どもたちが大人になるとき、必ずまた変化が起こるから、ちゃんとアンテナを張っていてほしい」と話していた。9都道府県に対する緊急事態宣言が全面解除される一方、コロナ禍の収束が見えない状況だが、「何もしないという方が、我々演劇人は罪深いのかなと。以前のように気軽に劇場に足を運んで、エンターテインメントを楽しむことが難しいのは重々承知ですが、感染症対策はしっかり黙々とやっていますし、ポジティブに前に進む人間がいてもいいと思う」と前向きな姿勢を示していた。【市川海老蔵コメント】美しい地球や日本の四季を守り、そして未来の子どもたちへ何が自分はできるのか、常日頃から考えておりました。長野県志賀高原での植樹活動「ABMORI(エビモリ)」で少しでも多くの方とともに地球環境問題の解決に向け取り組んでいけたらと活動して参りましたが、新型コロナウイルスにより世の中が一変してしまいました。このコロナ禍で生き抜いていくため、本公演では五穀豊穣・無病息災・家内安全を祈り、伝統芸能を通して自然環境について皆様と一緒に探求していきたい所存でございます。取材・写真・文:内田涼【公演スケジュール】演目:素踊り『三番叟』、スペシャルトーク、素踊り『延年之舞』、能楽(能楽の演目は公演毎に異なる)10月28日(木)高知・弁天座能楽一調『屋島』/能楽一調『勧進帳』11月9日(火)静岡・富士市文化会館ロゼシアター能楽連吟『安宅』/能楽一調『船弁慶』11月12日(金)福井・敦賀市民文化センター能楽一調『橋弁慶』/能楽一調『勧進帳』11月14日(日)埼玉・飯能市市民会館能楽一調『屋島』/能楽一調『勧進帳』11月17日(水)千葉・森のホール21(松戸市文化会館)能楽一調『屋島』/能楽一調『勧進帳』11月19日(金)神奈川・相模女子大学グリーンホール能楽一調『屋島』/能楽一調『勧進帳』11月23日(火・祝)東京・よみうり大手町ホール能楽連吟『高砂』/能楽仕舞『船弁慶』11月24日(水)東京・たましんRISURUホール(立川市市民会館)能楽一調『屋島』/能楽一調『勧進帳』チケット情報
2021年10月04日歌舞伎を全国の多くの人々に伝えたい、楽しんでもらいたいという思いから、2020年にスタートしたのが「伝統芸能華の舞」公演。昨年に引き続き今年も、市川右團次、市川右近親子共演による開催が決定した。演目は、楠木正成二題として能楽から『楠露』、素踊り『楠公』、そして歌舞伎十八番の内『鳴神』だ。「今年は、これぞザ・歌舞伎といえる歌舞伎十八番の『鳴神』と、そしてもう一つは楠木正成に縁ある舞踊の演目から選びました。私が子供のころ、父(日本舞踊飛鳥流宗家・飛鳥峯王)と踊った『楠公』を素踊りでご披露します。楠木正成を私、息子の正行を右近、そして市川海老蔵さんの一門の方々のお力をお借りして皆様にお目にかけたい。勇壮な湊川の合戦、桜井の別れという有名な物語もあり、ドラマチックな一幕になると思います。また素顔と紋付袴で踊るという、歌舞伎の本公演ではなかなか上演されない素踊りの面白さもお楽しみいただけたらと」。この『楠公』には特別な思い入れがあるという。「正成の息子正行は、自分も合戦に行きたい、でも父に、お前は河内へ戻り、必ずやいつか朝敵を倒してくれと諭されて親子は別れます。僕が父とこの踊りを踊ったのは、ちょうど僕自身が東京へ単身上京したころでした。父と別れる時の正行の気持ちが僕にはとてもよくわかった。彼(右近)は私とは状況は違いますが、逆に彼にしかできない表現を持っていると感じています。厳しい稽古にも弱音吐かず、自分の感情を内へとためながら、自然と表に情感がにじみ出てくるような、そういう演技をする。彼の方が芯の強い正行ができるかもしれません。彼が持っているものを引き出して上げられればと思います。今回は藤間勘十郎さんの振付で踊ります」。もう一幕は歌舞伎十八番『鳴神』だ。「鳴神上人は高僧ですから品格や気位が大事です。ですが同時にチャーミングなところもあるんです。蜘蛛の絶間姫の色仕掛けにかかってしまったり、それを知って猛り狂ってしまったり。生きる雷となって姫を追いかけていくその変わり目など、一人の中にいろいろな面が見え隠れする。それが描ければと思います」市川笑三郎の蜘蛛の絶間姫など、澤瀉(ワ冠)屋の俳優たちとの共演は久しぶりだ。「今回はそれも楽しみなんです。海老蔵さんから、どなたと演りたいですかと尋ねられ、今回に限らず、三代目市川猿之助の下で40年、一つ釜の飯を食べて修行してきた澤瀉(ワ冠)屋の皆さんと芝居できることがかなうならと。海老蔵さんも『そうですよね』ということで、ご一緒できることになりました。息子は澤瀉(ワ冠)屋ですから親子で屋号は違いますが、澤瀉(ワ冠)屋さんと決して仲が悪いわけじゃないですよ(笑)」。右近も今回の巡業に際して、「今までは衣裳を着けて化粧もしていたけれど、素踊りではお化粧しないので、大変だなと思います。緊張しています。『鳴神』では鳴神上人は六方の引っ込みとかカッコよくて僕もやってみたいです」と語った。昨年は3月に行われるはずがコロナ禍のため10月に再スタートを切るというイレギュラーな巡業となった。「今年も感染対策を万全にしてお客様にご迷惑をかけないようにと、とにかく覚悟の巡業です。そして各地でお客様に勇気と元気をいただき、こちらからも皆様に勇気と元気を送り、気のキャッチボールをしながら、その時だけの感動の空間を共有できればと思います」と右團次。10月14日の佐世保市での公演を皮切りに、全国16会場で22公演が行われる。取材・文:五十川晶子『伝統芸能 華の舞』チケット情報
2021年09月17日日本が誇る伝統芸能、歌舞伎をより多くの人々に届けようと昨年誕生、コロナウイルス禍による延期を経ながらも全国9か所を巡った公演「伝統芸能華の舞」が、今年も10月14日に開幕する。市川右團次、市川右近親子が「伝統芸能 華の舞」の魅力について語った。まずは昨年のツアーについて、「ほとんどの公演が春から秋に順延となってしまいましたが、無事に各地をまわることが出来ました。息子と共演した『連獅子』は一昨年のラグビーワールドカップ2019開幕式でも踊りましたので、親子で1年以上『連獅子』に関わり、息子にとっても成長の糧となったと思います」と、手応えを語る右團次。歌舞伎舞踊の様々な色を見せた昨年から一転、今年は“ザ・歌舞伎”と言うべき荒事の代表作『鳴神(なるかみ)』を中心に据え、右團次は鳴神上人を演じる。「役の品位を大切にしつつ、高僧ならではのチャーミングさ、雲の絶間姫に騙されて猛り狂う、その変わり目を大切に演じられたら」。かつて澤瀉屋一門で“同じ釜の飯を食べた”笑三郎さんが雲の絶間姫を演じることになり、久々の共演が楽しみだという。『鳴神』の前には、“楠木正成二題”と称して能楽『楠露(くすのつゆ)』と素踊り『楠公(なんこう)』を上演する。右團次のほか右近、大谷廣松、市川弘太郎らが出演。後者は右團次にとって思い出の演目だ。「子供の頃、舞踊家の父と一緒に何度か『楠公』を踊ったのです。その頃僕は(三代目市川)猿之助(現・猿翁)の部屋子になって上京しており、父とは離れて住んでいましたので、父・楠木正成と別れる正行の気持ちが分かる部分もありました。今回は立場を変え、僕の正成、息子の正行で踊らせていただきます。彼と僕とでは持ち味が違うので、彼の光るものを(稽古で)引き出していけたらと思っています」今回は役の扮装をしない“素踊り”というスタイルでの上演。それまで神妙な面持ちで父の話を聞いていた右近は、本作への抱負を聞かれ、「今までは衣裳を着て、お化粧をして踊っていましたが、今度はそれ無しで踊るので、大変だろうと思います」とコメント。右團次は「(衣裳などが無いと)分かりにくいのでは、と心配されるかもしれませんが、勇壮な合戦の場面もあればドラマティックな親子の別れの場面もあり、とても分かり易いと思います」と自信を覗かせた。緊急事態宣言下ということもあり、この夏は家で一緒に過ごすことが多かったという右團次親子。最近、家の中で卓球をするようになり、ついつい熱くなっているそう。「普通の(親子)関係だとは思いますが、稽古に入ると、やはり力が入ります。息子は厳しい稽古でも弱音を吐かない子で、感情を自分の中で貯めながら、それが表に滲み出てくるような演技をしていると思います。今回もそういう彼らしさが出てくるといいなと思っています」と右團次が息子への期待を語れば、右近からは父について「立ち回りとかがかっこいい役者だと思います」とリスペクトの言葉が。「(父の指導は)優しいです」と言いつつも、右團次から「(率直に)言っていいんだよ」と言われると「怒ると怖いです」と付け加え、場が和む一幕も。質疑応答の中では、コロナ禍の中での全国巡業についての思いも問われ、右團次は「覚悟の巡業です。万全の対策で、各地のお客様にご迷惑をかけないよう努めます」と表情を引き締めつつ、「舞台を勤める僕らと、拍手をくださるお客様たちの間で勇気、元気のキャッチボールを行い、一回きりしかない感動の空間を共有できれば」と公演の意義をアピール。最後に、「(今回は)歌舞伎のいろいろな部分を御覧いただける内容です。巡業ということで僕らのほうから皆様のお側に参りますので、歌舞伎がお好きな方にも、初めての方にもいらしていただけましたら嬉しいです。歌舞伎の上演劇場での公演より入場料も手ごろですし、時間的にも多少短く、見やすくなっています。この機会に歌舞伎に親しんでいただければと思っています」と右團次が熱く語れば、右近も「よろしくお願いします」と力強い挨拶で会見を締めくくった。公演は10月14日から全国各地にて。各会場によりチケットの発売日が異なるため、最新情報は公式サイト( )にて。【公演概要】伝統芸能華の舞演目一、楠木正成二題・能楽 独調『楠露(くすのつゆ)』・素踊り 『楠公(なんこう)』市川右團次市川右近市川弘太郎大谷廣松他二、歌舞伎十八番の内『鳴神(なるかみ)』鳴上上人市川右團次所化白雲坊大谷廣松所化黒雲坊市川弘太郎雲の絶間姫市川笑三郎日程:10/14(木) 長崎アルカスSASEBO大ホール16:00開演特等席:8,000円一等席:6,800円二等席:5,000円三等席:4,000円チケット発売中問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)10/15(金) 鹿児島鹿屋市文化会館19:00開演全席指定:6,000円チケット発売中問い合わせ:鹿屋市文化会館TEL:0994-44-5115(9時~17時30分)10/23(土) 東京北とぴあさくらホール①13:30開演/②18:00開演S席:6,500円A席:5,000円B席:3,000円チケット発売中問い合わせ:北区文化振興財団TEL:03-5390-1221(平日9時~17時)10/26(火) 広島JMSアステールプラザ13:30開演全席指定:6,500円チケット発売中問い合わせ:グッドラック・プロモーション(株)TEL:086-214-3777(平日10時~17時)10/27(水) 香川レクザムホール(香川県県民ホール)小ホール13:30開演全席指定:6,500円チケット発売中問い合わせ:グッドラック・プロモーション(株)TEL:086-214-3777(平日10時~17時)Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)10/29(金) 京都南座14:00開演10/30(土) ①11:00/②15:00開演一等席:9,500円二等席:7,000円チケット発売中問い合わせ:キョードーインフォメーションTEL:0570-200-888(11時~16時 ※日祝休業)Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)10/31(日) 兵庫兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール①13:30/②17:00開演全席指定:7,800円チケット発売中問い合わせ:キョードーインフォメーションTEL:0570-200-888(11時~16時 ※日祝休業)11/1(月) 石川北國新聞赤羽ホール14:00開演S席:6,000円A席(バルコニー席):5,500円チケット発売中問い合わせ:2021ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭実行委員会(石川県芸術文化協会内)TEL:076-263-6080(平日10時~18時 土日祝休み)11/6(土) 岐阜バロー文化ホール(多治見市文化会館)①12:00/②15:30開演※2回公演に変更になりました ※1回目の公演時間が変更になりました一等席:8,000円二等席:6,500円チケット発売中問い合わせ:CBCテレビ事業部TEL:052-241-8118(平日10時~18時)Zen-A(ゼンエイ) TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)11/9(火) 埼玉和光市民文化センターサンアゼリア13:30開演特等席:8,000円一等席:6,800円二等席:5,000円一般発売日:9/18(土)問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)11/12(金) 東京府中の森芸術劇場どりーむホール13:30開演特等席:8,000円一等席:6,800円二等席:5,000円一般発売日:9/18(土)問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)11/14(日) 愛知岡崎市民会館あおいホール14:00開演一等席:8,000円二等席:6,500円一般発売日:9/18(土)問い合わせ:岡崎市民会館TEL:0564-21-912111/18(木) 千葉君津市民文化ホール13:30開演特等席:8,000円一等席:6,800円二等席:5,000円一般発売日:9/18(土)問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)11/20(土) 静岡三島市民文化会館13:30開演全席指定:6,500円チケット発売中問い合わせ:三島市民文化会館TEL:055-976-445511/21(日) 神奈川クアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市文化会館)13:30開演特等席:8,000円一等席:6,800円二等席:5,000円チケット発売中問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11時~19時)11/23(火・祝) 大阪南海浪切ホール①13:30/②17:00開演特等席:7,000円一等席:5,500円二等席:4,000円三等席:2,500円チケット発売中問い合わせ:浪切チケットカウンターTEL:072-439-4915(平日10時~20時 休館日:毎月第3月曜日とその翌日、敬老の日の前3日間)※ロビー開場60分前、本開場30分前制作:株式会社3Top制作協力:全栄企画株式会社/株式会社ちあふる協力:松竹株式会社公式サイト: 総合お問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11:00〜19:00) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年09月16日歌舞伎俳優の市川海老蔵が8月20日、都内で取材に応じ、9月4日から全国16会場で上演する「市川海老蔵 古典への誘(いざな)い」に向けた意気込みを語った。演目は『通し狂言命懸歌舞伎ノ道筋三升先代萩(みますせんだいはぎ)』で、仙台藩伊達家のお家騒動を題材にした「伽羅先代萩」がモチーフになっている。「伝統芸能を分かりやすく、多角的に味わっていただきたい」と海老蔵が企画した本公演で、2012年の開始から10年目に突入。「もともと七代目市川團十郎がやろうとしていたこと。市川團十郎の思想を組み込み、新しい形での『先代萩』をお見せできれば。本興行ですけど、かなり条件が厳しいなかでの自分としての挑戦、そして実験。そのような形での公演になるかなと思います」と決意を新たにした。我が子を犠牲にして忠義を尽くす乳人政岡をはじめ、歌舞伎の様式美と荒事で魅せる荒獅子男之助、妖術使いの大悪人仁木弾正など、善人悪人を織り交ぜた主要な七役を早替りで勤めることに。海老蔵は「早替わりもですけど、僕の中で一番の見どころは女形。乳人(めのと=乳母)政岡は大変重要なお役ですし、立役専門なので、女形のハードルが高くなっている。そういう面は演出も含めて、見てもらいたいなと思います」とアピールした。一方、感染症対策として「宙乗りはできませんし、廻り舞台もない」といい、「あくまで歌舞伎的な二次元、平面的な演出の中でどこまでやれるかもひとつの見どころ」。延期になっている襲名についても触れ「本来は市川團十郎白猿になっていたはずなので、『古典への誘い』も一区切りでやめていた可能性も。それが10年目を迎えて、公演ができるのは意義あること」と語っていた。また、先月23日に開催され、自身も「暫(しばらく)」を披露した東京オリンピック開会式が話題にあがると、「大変光栄なことだと思います」と感慨ひとしお。「世界中がパンデミックで戦っている中、いろんな反対意見、やらなきゃいけないという意識の人もいるので、そこに参加したのは複雑ではありますね。もろ手を挙げて喜べることではないですが、歌舞伎俳優、日本の伝統文化に携わるひとりとしては、大変役目の大きな仕事だったと思います」と振り返っていた。取材・撮影・文:内田涼公演情報『市川海老蔵 古典への誘(いざな)い』出演:市川海老蔵、市川右團次、片岡市蔵、市川九團次、大谷廣松、市川右近ら演目:通し狂言命懸歌舞伎ノ道筋(いのちがけかぶきのみちすじ)三升先代萩(みますせんだいはぎ)市川海老蔵七役早替り相勤め申し候【北海道】2021年9/4(土)・9/5(日)会場:札幌文化芸術劇場hitaru【宮城】2021年9/7(火)会場:東京エレクトロンホール宮城【岩手】2021年9/8(水)会場:盛岡市民文化ホール【秋田】2021年9/9(木)会場:秋田市文化会館【新潟】2021年9/11(土)会場:長岡市立劇場【群馬】2021年9/12(日)会場:高崎芸術劇場【愛媛】2021年9/14(火)会場:愛媛県県民文化会館【高知】2021年9/15(水)会場:高知県立県民文化ホール【愛知】2021年9/17(金)会場:愛知県芸術劇場大ホール【兵庫】2021年9/18(土)会場:神戸文化ホール【大阪】2021年9/19(日)会場:フェスティバルホール【広島】2021年9/22(水)会場:ふくやま芸術文化ホール【岡山】2021年9/23(木・祝)会場:倉敷市民会館【鳥取】2021年9/25(土)会場:とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)【島根】2021年9/26(日)会場:島根県民会館【熊本】2021年9/27(月)会場:市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)チケット情報
2021年08月23日FC市川GUNNERSでは、夏休み期間中にFC市川GUNNERSのコーチによる、短期集中サッカーキャンプを開催します。コロナ対策として今年は全てのキャンプは泊まりではなく日帰りで設定しています。ドリブル、シュートなど基礎的なテクニックの向上から、シュートブロック、チャレンジ&カバーやクロスの攻防など実践的なトレーニングまで学べるキャンプです。ストライカーキャンプGKキャンプ小学1年生から中学3年生までの男女を対象とした各種キャンプがありますので、下記より詳細をご覧いただき、お申し込みください。開催スケジュールチャイルドキャンプ日時:8月10日(火)~11日(水) 通い2日間対象:小学1年生~2年生(男女)定員:30名参加費:1セッション3,000円(税別)、4セッション10,000円(税別)ジュニアキャンプ日時:8月10日(火)~11日(水) 通い2日間対象:小学3年生~4年生(男女)定員:30名参加費:1セッション3,000円(税別)、4セッション10,000円(税別)GKキャンプ日時:8月2日(月)~3日(火)通い2日間対象:小学4年生~6年生(男女)、中学1年生~3年生(男女)定員各10名参加費: 7,000円(税別)、1日のみ4,000円(税別)ストライカーキャンプ日時:8月2日(月)~3日(火)通い2日間対象:小学4年生~6年生(男女)、中学1年生~3年生(男女)定員:各10名参加費:7,000円(税別)、1日のみ4,000円(税別)開催場所:北市川フットボールフィールド(千葉県市川市柏井町4-294-5)TEL:047-712-0070各キャンプの詳細は「ニュース&イベント情報」にて詳しい内容&申し込み先はこちら>>
2021年07月15日2021年7月9日、歌舞伎役者の市川海老蔵さんがYouTubeチャンネルを更新。動画の内容は、海老蔵さんが視聴者からのコメントに答えるというもの。コメントに対する返答が反響を呼んでいます。市川海老蔵、アンチコメントにズバリ同年6月9日に公開した動画で、妻である故・小林麻央さんと過ごした家を、子供たちのために稽古場へ改装中だと報告した海老蔵さん。小林麻央さんについての記事はこちら小林さんの部屋はそのまま残すことにしたといいます。家族を想う海老蔵さんの姿に、視聴者からは「麻央さんへの想いが伝わってくる」「葛藤もあっただろうな」などの声が上がりました。動画内で「再婚しなさそう」というコメントが来たのに対し、海老蔵さんは「再婚ね…子供たちが絶対許してくれないでしょ」と楽しげに話します。終始和やかな雰囲気で動画は進みますが、後半一部のアンチコメントに対し表情を曇らせる場面が。それは「相変わらず亡くなった奥さんと、子供を使って小銭稼ぎですか」というコメントを読み上げた時のことです。海老蔵さんは「これ、許せない」とひと言。続けてこう話し始めました。こういうの書くやつ許せないね。「お前の心を洗浄しろよ」と思う。どうしてなんだろう。そう思っちゃう人はいるよね。まず自分たちの心をまずなんとかしなよ、という気もするが…。EBIZO TV 市川團十郎 白猿ーより引用海老蔵さんは心ない言葉に対し、「お前の心を洗浄しろよ」と吐露。芸能人に対してどんな感情を持つのかは自由ですが、相手が傷つく言葉を投げかけていいということではありません。大人な対応を見せた海老蔵さんに対し、ネット上ではこのような声が上がっています。・海老蔵さんの言葉に、スカッとした。いっていいことと悪いことがあると思います。・本当にその通り。心ない言葉をいう人は気にせず!・私も死別を経験し、海老蔵さん家族の姿に励まされました。ずっと応援しています。大切な人を失った気持ちを、他人が想像することはできないでしょう。たとえ相手が芸能人であっても、自分の投げかけた言葉で相手がどう思うのか想像する姿勢は、忘れずにいたいですね。[文・構成/grape編集部]
2021年07月09日歌舞伎界の若きプリンス中村壱太郎と尾上右近がコロナ禍において制作し、好評を博したオンライン公演「ART歌舞伎」を、映画化した『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』がポレポレ東中野での上映の反響を受け、6月4日(金)よりシネ・リーブル池袋にて上映されることが決定した。その後、全国順次公開予定となっている。これまでロシアやスペインなどでイベント上映され海外でも評価を受けてきた本作。この度、ファンタジア国際映画祭への参加も決定し、各界著名人からのコメントおよびコメント付き予告映像が公開された。ファンタジア国際映画祭は、カナダ・モントリオールで1996年から開催されているジャンル映画を対象とした映画祭。今年は8月の開催を予定しており、今回で25回目の開催となる。「北米最大のジャンル映画祭」を謳っており、クエンティン・タランティーノやギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ガンなど、多くの映画監督から支持されている。■『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』コメント付き予告<コメント>■紺野美沙子(女優)アート歌舞伎は小宇宙のよう。静けさの中に浮かびあがる濃密で甘美な世界。今だから、誘われたい。■阿部純子(女優)これこそART歌舞伎!お二人の攻めの姿勢に魅了され続けました。壱太郎監督、右近さん、贅沢な時間をありがとうございます!■九龍ジョー(ライター/編集者)繰り返しもたらされる高揚感に、芸能の未来と原初の光景を幻視した。闇夜に注ぐ雨音まで美しい。■上妻宏光(三味線奏者)懐かしさと最先端が融合された芸術世界。各分野のエキスパートだからこそ表現できた世界を堪能して欲しい。■松崎健夫(映画評論家)雨音が伴う陰影の中で舞う姿は、行雲流水な悠久の歴史と人の営みとを対比させる。奇しくもそれは、コロナ禍の不条理とも重なるのだ。■マーク・シリング(映画評論家)「ART歌舞伎」と聞き、単に歌舞伎の舞台を撮影した映像を想像している方々は、驚くべき新しい発見に出会える作品だ。若き歌舞伎俳優、中村壱太郎とコラボレーター達が創造したのは、伝統的な歌舞伎の技と美を素晴らしく斬新な装いで見せるエンターテイメント。実験的でありながら理解し易く、折衷的でありながら一貫性があり、日本の伝統舞台芸術家たちの集合体でありながらその意外な組み合わせは心に残る。「ART歌舞伎」が放つエネルギーとイマジネーションが、古いものと見慣れたものを新鮮な視点で楽しませてくれる。■ニコラ・アーシャンボウ(ファンタジア国際映画祭ディレクター)『心の癒しに「ART歌舞伎」を一服』コロナ禍で劇場が閉館している間に、若き歌舞伎俳優、中村壱太郎は俳優仲間とユニークなアーチストを集めて「ART歌舞伎」の制作を決めた。”舞と美と命”を題にしたパフォーマンスの映像は、見るものの心を捉える。美しい映像、エネルギッシュな音楽、目を見張るコスチュームで、中村壱太郎はこの困難な状況に希望と楽しみを与えてくれた。「ART歌舞伎」は何百年も続く伝統芸術を新たな視点で捉え、まるで日本庭園でロックコンサートを見ている気分にしてくれる。『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』6月4日(金)よりシネ・リーブル池袋にて公開
2021年06月04日新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2021年4月25日に三度目となる緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県の4都府県で発令されました。大型連休であるゴールデンウイーク終了後の5月11日までを対象としており、政府は飲食店や娯楽施設を中心に休業要請。また、劇場や遊園地、競技場などで行われるイベントに対しては、事実上の休業要請といえる無観客での営業を要請しました。市川猿之助、劇場への休業要請に苦言歌舞伎役者の市川猿之助さんが、同月23日にInstagramのストーリーズ機能で投稿。今回の緊急事態宣言について、劇場で働く1人の役者として疑問を投げかけました。日々、感染症や、亡くなった方の人数が発表されても、生活が行き詰って自ら命を経つ人の数は発表されない。このままでは、わが国では、感染で亡くなる人の数を上回るのではないか。それがいちばん危惧されます。ennosuke_ichikawa4ーより引用(原文ママ)どうしたら東京五輪が開催できるか、という視点から対策を講じるから、おかしなことになるわけで。どうしたら日本という国がこの難局を乗り切れるか、という視点から対策を講じるべきではないのか?と、思うのですが、、、ennosuke_ichikawa4ーより引用歌舞伎座は、座席制限が解除されても、収入度外視、安全安心第一で、座席数50%以下でやってきました。オリンピックも大切です。しかし、オリンピックありきの対策には疑問しか感じません。休業要請は、死の宣告と同じです。皆が救われる道はないものですか?ennosuke_ichikawa4ーより引用猿之助さんのメッセージはネットで拡散され、多くの人から「気持ちを代弁してくれてありがとう」「悔しさや怒りが伝わってくる」といった声が上がっています。東京都中央区にある歌舞伎座で『四月大歌舞伎』に出演していた猿之助さん。緊急事態宣言の発令によって公演は中止となり、急きょ同月24日に千秋楽を迎えることになってしまいました。猿之助さんは「これまでの役者人生の中で、一番めでたくない千秋楽となりました」とつづり、悔しい気持ちをあらわにしています。 この投稿をInstagramで見る 市川猿之助 ENNOSUKE ICHIKAWA Ⅳ(@ennosuke_ichikawa4)がシェアした投稿 政府は無観客の要請について「社会生活の維持に必要なものを除く」と線引きをしていますが、娯楽は多くの人の心を支えているといえるでしょう。また、出演者や劇場のスタッフなど、多くの人が娯楽によって生計を立てています。「文化を軽視しているのではないか」「なぜ五輪は許されて、演劇は許されないのか」といった疑問の声が相次いでいる、今回の休業要請。長年守り続けてきた文化の灯が消えないよう、多くの人が強く願っています。[文・構成/grape編集部]
2021年04月25日歌舞伎俳優の市川猿之助と尾上右近が出演するキリン「本麒麟」のWEBムービー「本麒麟 × 伝統と革新を語る」と、オフショットを収めたメイキング映像が23日、公開された。市川が「乾杯したいあの人」として尾上を指名し、今回の対談が実現。2人は一緒にラスベガスへの旅行やお伊勢参りをするなどプライベートでも仲が良く、尾上が市川を「お兄さん」と呼んで慕うほどの関係だ。同ムービーは、尾上が手土産にフランス産のサラミと下鴨茶房の「きんぴらまぐろ」を持参し、和やかな雰囲気で始まった。歌舞伎についての話題では、市川が未来を担う若手役者として尾上に期待することや、これから起こしていきたい「革新」 について語り、最後には「愛がなければ何事も続かない」「歌舞伎役者って本当に真の深い愛情を持った人じゃないとできない」といった、歌舞伎愛あふれる濃密なトークに発展していく。市川は「右近君は初めて『本麒麟』を飲んだのですが、すっかり好きになってくれたみたいで、お招きした甲斐がありました。飲んだ後のリアクションに注目してください」と呼びかけ、尾上は今回の撮影で学んだ「三度注ぎ」について「お兄さんから教えていただいたので、家飲みの際には『三度注ぎ』で飲みたいと思います」と宣言した。
2021年04月23日