知的障害者向けの療育手帳、発達障害の私は取得できないの?出典 : 現在、発達障害者のためだけの独自の手帳制度はありません。発達障害者のための法律は、2005年にやっと「発達障害者支援法」が施行されました。ですが手帳制度は定められていません。そのため、知的障害者に発行される療育手帳か、精神障害者保健福祉手帳がその代わりになっているというのが実情です。少し、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の制度について調べてみました。療育手帳は、1960年に施行された「知的障害者福祉法」には記述がなかったのです。1973年9月に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した人に発行するようになりました。それ以前にも独自に療育手帳を発行していた自治体もあったそうですが、1973年までは国の法律に基づいた制度ではなかったのですね。精神障害者保健福祉手帳は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が発行しています。私は、「発達障害で、実際にかなり生活や仕事で困難を感じているのになぜ療育手帳を取ることができないのか?」という疑問を抱いていました。療育手帳では受けられても、精神障害者保健福祉手帳では受けられないサービスもありますし(特に交通関係のサービスは療育手帳の方が手厚いです)。そして「それなら実際に取得のチャレンジをしてみよう」と決心したのです。大人になってから療育手帳を取るには、どんな手続きが必要?出典 : 大人になってから療育手帳を取るためには、まず市役所等の障害福祉課に申し込む必要があります。申し込んでからしばらくして日時を指定されて、市役所の職員から成育歴や現在の生活の状況などの聞き取りが 約1時間ありました。そして、「取れてB2(一番軽度)ですね。また都道府県の指定機関で検査を受けてもらうので、日時が決まったら連絡します」と言われました。役所での聞き取りから約1カ月後、都道府県の指定機関から連絡がありました。そのときに「子どもの頃のことを聞かせてほしいのでご両親に同行してもらってください」と言われました。父はもう亡くなっているので母にお願いしました。けっこうな歳なので申し訳なかったですが。しかも「そんな昔のこと覚えてない」って言われますし。けっこう不安な気持ちになりました。ちなみに親が高齢で足を運べない場合は、電話での聞き取りになるそうです。親がいない場合はどうなるんでしょうね…?検査を受けた結果は、手帳の取得は…出典 : 検査の流れは、午前中に2時間かけて私はWAIS-Ⅲを受け、その間に母は別の部屋でチェックシートに回答し、それを心理士さんが見ながら追加で質問をいろいろと受けるというものでした。WAIS-Ⅲは途中で休憩をはさみながらも2時間少々で終わりました。心理士さんはとても手慣れていて、検査のベテランという印象でしたね。お昼過ぎに母と合流し、20分間待って母と私を担当した心理士さんたちによる結果の見通しと所見の説明がありました。結果から言うと、「療育手帳の支給はできません」でした。理由はわたしのIQが100を超えていたこと、成育歴に特に問題もなく、大学に進学したことがトドメになったようです。療育手帳の審査ではふたつのことを見るそうです。1.検査でIQを計る2.成育歴で、18歳までに知的障害の状態であったかどうかどちらでもダメだったわけですね。心理士さんにズバリと聞いてみました。「私みたいな知的に問題のない発達障害の人が検査に来ることってよくあるんですか?」すると「はい、けっこう多いケースです。やはり手帳を取っていただくことはできませんが」と答えてくれました。この日も何組もの親子が検査を受けに来ていました。検査を受けに来る人はとても多く、忙しい状態が続いているそうです。WAIS-Ⅲの所見も簡単ではありましたが、説明してくれました。もう少し詳しい所見がきけるのかと思っていましたが、分析する時間もほとんどなかったでしょうし仕方がないのかなと感じました。最後に、精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスについての案内がありました。発達障害に関する啓発パンフレットも、親子に1セットずつくれました。WAIS-Ⅲの結果レポートは、頼めば切手代だけで自宅まで郵送してもらえました。私は医師に提出するためにお願いしました。判定基準は都道府県によって異なります出典 : 療育手帳の判定基準は都道府県によってかなり異なります。甥が発達障がいのため、療育手帳の交付申請をしたが、知能指数が基準の75より1高い76であるという理由で却下された。社会生活に適応できないのに、手帳が交付されないことに納得できない。知能指数が高い発達障がい者も療育手帳の交付を受けられるようにしてほしい。私が住む県では、知能指数が高い自閉症などの発達障がい者には、交付基準に該当しないとして交付されないが、他の県や政令市では交付されている例があると聞いた。療育手帳の交付に当たっては、全国の発達障がい者が平等に手帳の交付が受けられるよう、交付基準を統一してほしい。どこに住んでいるのかによって、判定基準が大きく異なるというのは制度として大きな問題があると思いました。必要な人が手帳を取れる世の中に出典 : 今回の経験で感じたのは、「発達障害の生きづらさはIQで測れるものではないのに、どうして『実生活でどれだけ困難を感じているか』ということを考慮してくれないのだろう」というむなしさでした。そして、療育手帳の基準の地域差が公的文書で問題になっているのに、事務的に振り分けられることの理不尽さを感じました。大人の発達障害は今までほとんど理解されることはありませんでした。少しずつ社会も変わろうとはしていますが、現実としては「努力してもできない」「なまけているのではない」ということも理解されず、SOSを出したくてもうまく福祉につながれない人が多いと思うのです。発達障害が社会的に認知されるためにも、そして発達障害のために生きづらい人が顔をあげてイキイキと生きていくためにも、手帳を必要とする人には公正にスムーズに手帳が手に入る世の中になってほしいと思います。そして、発達障害者のための手帳ができることを心より願っています。
2017年02月24日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日こんにちは、親子でADHD(注意欠陥・多動性障害)をやっています、ママライターの木村華子です。息子の発達障害を疑ったのは、小学校へ入学してすぐのこと。夏休み前に行われた担任と保護者の二者面談で、私は息子の発達障害を疑っていること、 そして受けることのできる支援や相談窓口があれば教えてほしい旨を伝えました。ところが担任の口から発せられたのは、「発達障害だなんて!お母さん、そんなに思いつめなくても大丈夫ですよ」という慰め(?)の言葉。結局その後一年間、何のアプローチもないまま息子の不得意は放置 されてしまいました。当時の私は、「どんな支援があるのか分からない」「どこに相談すれば良いのか分からない」「そういう機関を利用する際には、学校を介さなければいけない気がする」などの疑問や思い込みから、「担任が気付いてくれなければ何もできない……」と動き出せずにいたのです。今考えると、その時点で親としてしてあげられることがあったのだと分かります。今回は、早期療育の大切さと、発達障害の相談窓口についてをお話しします。「うちの子もしかして……」と思い始めたパパ・ママへ、いち早くお子様へのアクションを起こすヒントにお役立てください。●早期療育の大切さ〜放置は二次障害の原因に!〜2年生になったばかりのころ、新しい担任から療育センターへ行くことを勧められ、ようやく息子への支援が行われるようになりました。発達障害を受け入れ支援に踏み切ることは、多くの親にとって勇気のいる決断ですが、息子の凹凸を考慮したアドバイスや指導により、私たち親子がこれまでの育児で乗り越えられなかった課題や問題が日々改善されていく様子 には、「もっと早く相談すれば良かった!」と思わせるだけのメリットがありました。と同時に、カウンセリング・検査・相談等の過程で相談員の方や支援学級の先生から何度も聞かされた「早期療育が大切」という言葉に、親としての反省と後悔も感じています。発達障害を放置し、適切な対応をせず過ごしていると、・できないことを友人になじられたり・先生や両親から怒られたり・いくら頑張っても成功しなかったり……という失敗経験を重ねて自己評価が低くなり、高い確率で別の障害(不安障害やうつ病、統合失調症など)を引き起こす原因になってしまう のだそうです。これを“二次障害”と言い、思春期の引きこもりや不登校、家庭内暴力、犯罪行為などにもつながると言われています。カウンセリングで「“もう手遅れ”ということはないけれど、療育をはじめるのは早いに越したことはありませんよ」というアドバイスを受け、私は子どもが1年生の段階で気が付いていたのに……と少し後悔しました。きっと、担任の動きを待つあいだにできることがあったはずです。発達障害の特性でつらい思いをするのは本人。二次障害を予防するためにも、ぜひ「うちの子もしかして……」と気が付いた段階で適切なアクションを起こしてあげたいものですね。●「うちの子もしかして……」と感じたときに相談できる窓口4つ「発達障害の支援を受けるには学校との連携が不可欠なのだから、相談も学校を介さなければいけない気がする……」と、特に行動をしないまま息子の1年生を過ごしてしまった私。しかし後になって、ダイレクトに相談できる機関がいくつも存在していることを知りました。もちろん、普段の様子を知っている学校や幼稚園、保育園の担任に相談することも大切です。しかし、私のように不安がうまく伝わらなかった場合や、「どこに相談すべきか……」とお悩みであれば、ぜひ以下の窓口で支援や相談の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。●(1)発達障害者支援センター発達障害を持つ大人や子どもへの支援を総合的に行う専門機関。“発達障害”と名が付いていますが、「まだ診断されたわけじゃないんだけど……」という方でも相談や支援を受けることができます。●(2)児童相談所虐待児保護の印象が強い児童相談所ですが、業務には“児童に関するさまざまな問題について、家庭や学校などからの相談に応じる”という項目があり、0〜17歳の児童 を対象に発達障害の心身障害相談も行われています。●(3)市町村保険センター地域の母子保健・老人保健の拠点を担う施設。未就学児や小学生だけでなく、高校生や大人の発達障害にまつわる相談 も行われています。相談は予約制となるケースが多いので、利用の際は前もって問い合わせを。●(4)子育支援センター乳幼児(0歳〜就学前)のいる親子の交流や育児相談、情報提供などを行う子育支援センターでは、教育不安などの相談・指導を受けることもできます。発達障害児のサークル活動が行われているケースも。●早期発見で、二次障害を食い止めて!お子様の様子を誰よりも見ているパパ・ママが感じる「もしかして……」には、わが子からのSOSが隠れているのかもしれません。もしそうなら、一刻も早く最適な対応を施してあげたいものですよね。お子様を取り巻く環境をより良いものにするためには、周囲の大人が動きだすこと が必須です。ぜひ早期発見・早期養育をして、二次障害の予防につなげてあげてください。【参考リンク】・相談窓口の情報 | 発達障害情報・支援センター()・平成28年度全国児童相談所一覧 | 厚生労働省()●ライター/木村華子(ママライター)
2017年02月22日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日発達障害のある娘は会話がとても苦手。3歳のころは、話しかけられても返事の仕方が分からず…広汎性発達障害がある娘は、会話がとても苦手です。3歳ごろになると、簡単な内容なら、相手の言っていることを少しずつ聞き取ることや理解することが出来るようにはなりました。ですが、相手が言ってきたことに対して、まだどういう返事をしたらいいのかが分からないようでした。Upload By SAKURA会話に合った返事や言葉は、繰り返し教えていくことで、少しずつ覚えてくれました。しかしそのせいか、決まりきった返事しかできなくなってしまい、娘との会話はほとんど定型文のように…Upload By SAKURA5歳になって、自分で返事を考えられるように!すると娘との会話にユーモアがあふれだした「いつになったら、娘とたくさん会話が出来るんだろう…」そう心配していた私でしたが、娘は5歳を過ぎたころから、自分で考えた返事ができるようになりました。すると娘との会話は、以前では考えられないようなユーモアなものになったのです!Upload By SAKURAUpload By SAKURA他の子に比べればゆっくりだけど…確実に成長していた少しずつしゃべるようになった3歳ごろから、5歳ごろまでは決まりきった会話の引き出ししか持っていなかった娘。でも今、もうすぐ6歳になる娘と、私は会話を楽しめています!他の子に比べればゆっくりだったけど、娘は少しずつ成長してくれました。改めて『療育は、焦らずゆっくり』だな…、と実感しています。Upload By SAKURA
2017年02月15日発達障害とはUpload By 発達障害のキホン発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、学習面や行動面などで年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルの獲得が難しいことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。発達障害の定義は日本では平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。自閉症やADHDなどの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。発達障害の原因は?出典 : 発達障害にはさまざまな障害が含まれますが、身体障害などとは違い、周囲の人にとって発達障害自体がわかりにくいことから、発達障害の特性から本人ができないことやとトラブルがあった時などに親のしつけ不足や愛情が足りていないせいだ、育て方が悪いからだと思われがちです。しかし、決してしつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないことがわかっています。現在、発達障害の医学的な原因ははっきりと解明されているわけではありませんが、多くの研究から発達障害は先天的な脳の機能障害によるものとされています。脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されています。何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。たとえば自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。ただし、かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。現在、その他の発達障害についても関連する遺伝子や環境要因に関して、それぞれ研究が進められていますが特定には至っていません。またその遺伝子も一つではなく、複数の要因や組み合わせが存在すると考えられます。それらがさまざまな道筋をたどって発達障害の特性となって現れると言われているのです。そのため全ての発達障害のある人にあてはまる唯一の原因はないとも言えるのです。発達障害は親から子へと遺伝するの?出典 : 親から子へと遺伝する遺伝的要因はあるのでしょうか?発達障害に関しては双生児研究や家族間での一致率に関する研究が活発に行われ、遺伝子が近いほど一致率が高くなる傾向があるといわれ、これらのことから家族性があるとは言われています。「家族性」とは、その障害のある人がいる家系の場合、ない家系より発現しやすい傾向があるということですが、これもまだ研究段階ではっきりと確率が出ているわけではありません。家族間では遺伝による体質と、生育環境が似ているため、このような傾向が出るのではないかと考えられていますが、体質や環境要因が相互に、複雑に影響して発現するのではないかと言われています。これまでの研究で発達障害は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子の変化が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることも推測されています。つまり、親の遺伝子が単純に子どもに遺伝して発達障害が起こるわけではないということです。発達障害の遺伝要因は原因の一部にすぎず、発達障害のある親から発達障害ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合でも発達障害のある子どもが生まれることもあるのです。この親から子へと遺伝する確率については、現在のところ不明です。親が発達障害だった場合で子どもも発達障害である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。きょうだいで発達障害になる確率は?出典 : きょうだいや、双子の場合の発達障害児の確率についてもさまざまな研究が行われています。遺伝子が完全に一致する一卵性双生児の場合、ふたりとも発達障害をもつ割合は75~85%といわれています。もし、遺伝子のみで発達障害が出現するのであれば、100%の確率になるはずです。遺伝子が異なる二卵性双生児の場合は、5~10%と低くなります。中山 和彦・小野 和哉 (著)『図解よくわかる大人の発達障害』(ナツメ社,2010年)より引用これらの数値は報告されている様々な研究の一例ですが、このような研究から発達障害は兄弟・姉妹で発現する確率がないとは言い切れないということが分かります。また、同じ遺伝子を共有した生まれてきた一卵性双生児でも片方が発達障害であっても、100%の確率で発現するわけではないこともわかりました。きょうだいは遺伝的な要因となりうるリスク遺伝子を体質として共通してもっている可能性や同じ養育環境で成長していくことから影響を受ける「家族性」があるため、遺伝子が近い家族であるほど一致率が高くなる傾向があると推測されています。しかし、環境要因などの偶然性に左右される可能性も大きいため、例え同じ遺伝子を持っている一卵性双生児であっても、きょうだいに発達障害のある人がいるからと言って、同じく発達障害を100%発症するとも言えないのです。発達障害は男女で発現率が違うの?出典 : 医学的には、実際には発達障害の発現率は、男性の方が多いと言われていますが、割合に関しては諸説あります。またこの理由に関しても諸説あるとされています。近年、女性の発達障害についてはあらわれる症状や特性に男性とは違いがあり、発達障害の状態像にも性差があるからではないかとする説もあり、研究も進められています。以下が、自閉症、ADHD、学習障害それぞれの男女の発現率に関して現段階でわかっていることです。■自閉症男女比は3~4:1で男子に多いと考えられてきましたが、近年の調査では男女比の差は少なくなりつつあるとも言われています。理由としては、男性と女性では症状にも少し違いがあり、男性は「コミュニケーションの困難」「言語の発育不足」などの症状がより見られやすいからだといわれています。女性の場合は男性と比べて症状が表に出にくい傾向があり、自閉症であるとわかりくく、気づかないまま暮らしている人もいると推測されます。そのため、自閉症の女性は統計に十分反映されていないのでは、という可能性も指摘されており、実際のところ4:1よりは男女差は少ないとする研究者もいます。出典:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』中山書店、2013年/刊■学習障害(LD)学習障害は男女どちらにも発現する可能性のある障害ですが、男性に発現する確率の方が高いことが分かっています。発表されているデータの数値は調査によってまちまちですが、その発現率は女性の約4倍であるというデータも発表されているのです。男性はその中でも読字障害になる確率が一番高いとされていて、その確率は女性の数倍とも言われています。ですが、男性に学習障害が多い理由ははっきりと分かっていません。出典:上野一彦/著 『LD(学習障害)のすべてがわかる本』 講談社,2007年/刊■ADHDADHDも男女によって発現率の違いがみられます。男女による違いは男:女の比率は4:1とされています。この比率の差は脳の働きや仕組みが男女によって異なるからではないかと推測されています。また、性別によって症状にも違いがあります。男の子は多動の症状が多く見られており、女の子は不注意の症状が多く見られています。この症状の差から女の子の場合、ADHDの症状が分かりづらいため、見逃されてしまうことも少なくありません。そのため、この4:1という男女の比率の差は実際はもう少し小さいのではないかとも言われています。ADHDであることが診断される年齢が男の子は8歳前後、女の子が12歳前後と差があります。この診断年齢の差も、女の子の場合は発達障害であることに気づくことが遅れやすいことに関係があるとされています。出典:月刊 「みんなのねがい」LD・ADHDの基礎知識独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究」 2012年発達障害を診断する方法出典 : 現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で発達障害が判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査ではわかりません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいに何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いです。医療機関では、多くの場合は、精神医学的な診断基準にに基づき、保護者や本人に問診に問診をしたり直接行動観察をしたりして、症状から判定します。アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)など、国際的な診断基準の定義を用いて診断が行われます。また、必ずしも1つの障害しか持っていないということではなく、複数の障害を併発している可能性もあります。それぞれの障害の診断基準に沿って診断を下すことが基本ですが、基準の解釈には医師によってばらつきが生じることもあります。ばらつきの原因として、診察室で見ることのできる子どもの姿がその子どものすべてではないので、乳幼児期の診断はとても難しい場合があります。正確な診断のためには日常生活の様子などをくわしく医師に伝えることも大切です。まとめ出典 : 発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果は少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことも多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。そんななか、遺伝的要因が関係していると聞くと、不安を感じるかもしれません。また、遺伝するかどうかというのは本人や家族にとって大きな関心事でしょう。しかし、現段階でわかっている範囲でも「親の育て方のせい」というのも医学的に否定されていますし、発達障害の発現は様々な要因が複雑に影響しあい、いわば偶然性が大きいため、その人に発達障害があるかどうかは予測できないといえるのです。また得手不得手や特性のようなものは人間だれしもが持っています。少なくとも「遺伝のせいで発達障害が発現した」というのは正確ではありませんし、単純に親から子へと遺伝するのではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとが減らせるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。本人の成功体験を積み重ねながら、今のよりよい環境を大切にすることが重要です。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。
2017年01月30日タレントのGENKINGが25日、自身のインスタグラムを更新し、性同一性障害の診断書を公開した。「性自認は女性であり、終生変わらないと考えられる」と記された診断書の写真をアップし、「あたしのオカマは病気です!!」と告白。「同じ悩みの方は病気とか言われて嫌な気分にしてしまったらごめんなさい。けど今のあたしは病気って言われた方が気持ちが楽なのね。載せるか悩んだけど、こゆ勇気を出す事で変わる気がする」とつづった。そして、「正直今でも自分の性が嫌だなって何度も思う」と打ち明け、「何度も言いたい事は、なりたくてなったんじゃないって事本来は女の子に生まれてくるべきだったって事生まれつき障害がある子と比べてはダメだと思うけど、あたしは同じだと思ってる」と主張。「好きな人が出来ても、殆は叶わない辛い恋をする気持ちが分かる!?」などと具体的なエピソードを挙げて訴えた。また、「TVに出てからも同じで、ユニセックス系ですとか言ってまた本来の自分隠してみたり僕って言ってみたりそんな自分らしく生きれない毎日が嫌だってなったから去年の夏くらいから徐々に本来のあたしを出しはじめたの」と説明。「今まではコンプレックスや嫌な部分を隠して格好つけてたけど、この投稿みたいに出したくない部分をあえて出すと、今日からまた変われるんじゃないかな?って思える」と自身の変化にも期待した。さらに、「死ぬまでこの悩みが無くなる事はきっとないけど、まあこんな人生も良かったなって思える日が増えたらいいな」とGENKING。「こんな風に勇気を出す気分にしてくれたのは、さっきのみんなからのコメントを読んだから」と感謝の思いも伝え、「あっ決して病んでませんからね笑ただ、みんなのコメントにある女の子らしくなったとかの本質の気持ちを伝えたくなっただけそして、どんな時も同じ悩みにぶつかって未だに苦しく悲しくなるだけ結末はいつだって悲しかったから」とつづった。
2017年01月25日言葉の理解が遅い娘とのコミュニケーション、そこにはちょっとした苦労があって…Upload By SAKURA広汎性発達障害がある5歳の娘は、言葉能力が他の子よりも大幅に遅れています。他の子が一度で理解できるようなことも、娘に言葉だけで伝えるのは至難の業。同じことを言葉を変えて何度も繰り返したり、絵を描いたりしてやっと伝わります。娘も一生懸命聞こうとしているのは、わかっているんだけど…娘は決してやる気がないわけでも、わざとやっているわけでもなく、本当にわからないのです。一生懸命に聞いているのですが、理解できない。それが十分分かっている私ですが、どうしても自分に余裕がないときはイライラしてしまいます。Upload By SAKURA何度説明してもわからなかったり、途中で諦めてしまう娘を見て、「も~!なんでわからないの!?」と酷い言葉を言ってしまうことも…。そんなことを言ってしまった日の夜は、罪悪感がこみ上げてきて、娘に申し訳なくなります。そんなときは、素直に謝るUpload By SAKURAそんな時は夜寝かしつけるときに、娘に正直な気持ちを伝えて謝るようにしています。私の言うことが100%理解できない娘なので、言ってる意味がわからないかもしれない…。それでも娘は「だいじょーぶ!きにしないで。」と言ってくれます。その度に、「あ~私の子どもがこの子で良かった…」と、改めて娘の良さを実感しています。完璧な親なんていない。親だって人間。イライラもするし、感情的に怒ったりもします。私は「いい親になろう」とは思いませんが、娘に素直に謝ることが出来る親でいたいな…と思っています。Upload By SAKURA
2017年01月25日発達障害の娘(5歳)は、とにかく虫が大キライ!Upload By SAKURA広汎性発達障害がある5歳の娘は、とにかく虫が大嫌いです。どんなに小さな虫でも、発見すると毎回大騒ぎ!この日も、とーっても小さなクモを見つけて叫んでいました。こんな小さい虫で、毎回大騒ぎされては困る…。そこで、危険ではない虫を覚えてもらおうと思いました。「この虫は悪いことしないよ!」そう教えた途端に…Upload By SAKURA「このクモさんは大丈夫だよ。悪いことはしないからね~」そう説明をすると、大丈夫と分かった途端、娘はクモにあいさつ(笑)!それから・・・それから娘は、虫を見つけると騒ぐ前に「だいじょーぶの?だいじょーぶじゃないの?」と聞くようになりました。そして、大丈夫と分かると、あいさつ。虫にあいさつをするようになってから、気づけばどこからか娘のあいさつが聞こえてくる日々です(笑)。Upload By SAKURAUpload By SAKURA
2017年01月18日発達障害の娘(5歳)がおねだり。でもお菓子は1個だけの約束で…広汎性発達障害がある5歳の娘。ある日の買い物中、お菓子をねだってきました。しかし、この日はすでにお菓子を1個買ってあげていました。「お菓子は1個だけ」と約束していたので、娘に考えさせてみることにしました。Upload By SAKURAお菓子を見つめながら、何やら考え始めた様子の娘。さぁ、どうする…?娘が考えに考えて出した結果は…?Upload By SAKURA娘が考え抜いて出した結論は、「お菓子を戻してくる」ということではなく…「ママを褒めて、お菓子を買ってもらおう!」という「見え透いたお世辞作戦」でした(笑)。ちなみに、どんなに褒められてもお菓子は買いませんでしたよ!!
2017年01月11日発達障害の娘とお買いものに行ったある日のこと…広汎性発達障害の娘(5歳)と買い物に行った日のことです。エレベーターに乗って帰ろうとすると…Upload By SAKURA「駐車場が3階だから」と伝え3階のボタンを押してもらったのですが、その途端、娘がソワソワし始め、その場から動かなくなってしまいました。Upload By SAKURA3階に到着しても、エレベーターから降りようとしない娘。そして、「風邪じゃない!」と必死に訴えてきました。一体どーゆーこと??…あっ、もしかして!!Upload By SAKURA娘は、「駐車」と「注射」を勘違いしていました。それで、「風邪ではない」と必死に訴えてきていたのです。娘の可愛いすぎる勘違いに、笑いが止まりませんでした(笑)。
2017年01月04日眠いのに眠れないという皆さん、入眠障害という言葉を知っていますか?日本人の約3割は入眠障害だと言われています。入眠障害を抱えている方は他の睡眠障害を併発している場合が多く、病院へ行くときにはかなり入眠障害が酷くなってしまう場合が多いのが特徴です。入眠障害について、原因と対処方法、試してみてほしい方法などを紹介します。目次■ 入眠障害とは■ 入眠障害の症状■ 入眠障害の原因■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断前)■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断後)■入眠障害とは悩みや考え事などないのに自然な眠りに入れない状態(消灯から2時間以上)が週に3回以上あり、それが3か月以上連続で続いている場合を入眠障害といいます。入眠障害は中々自分自身で自覚するのが難しいこともあり多くの人が人知れず悩んでいる状況です。病院で治療が必要なのは、寝入りが悪いために以下のような事が続く場合です。睡眠不足が連続で2週間以上続く睡眠が足りていないため、仕事や生活に支障をきたす昼間の生活に睡眠不足が支障をきたす他の人から見て昼間の生活が支障をきたしていると指摘される入眠障害など睡眠に関する悩みで多いのが、「自分は本当に入眠障害なのだろうか?このくらいで病院に行ったらおかしいと思われるのではないか」ということです。■入眠障害の症状入眠障害の症状は外の睡眠障害の症状と違うのが特徴的です。しかし、入眠障害+他の睡眠障害という方もいらっしゃいますので、以下の症状に少しでも当てはまる方は最寄りの内科か精神科・心療内科へ行くことをおすすめします。消灯から2時間経っても寝付けない(注意:ただし、通常は既に1時間以上経てば入眠が困難であると不快感を感じ始めます。)ある時期から寝入りがかなり悪くなった悩みなどを消灯まで引きずっていないコーヒーや飲酒などの刺激物などを取っていないのに眠れない体は疲れているのに眠れそうで眠れない何かで寝入り際に起きてしまうとまた眠るのが難しくなってくる仕事やスポーツなど体を動かしたり頭を使うようなことがあり疲れていても眠りに入れないちなみに私はこれらの症状すべてが当てはまります。また、些細な隣の部屋からの話し声や外を走っている車のエンジン音なども寝入り際に気になると次に寝入るのが難しくなってしまいます。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド■入眠障害の原因では一体、入眠障害の原因は何なのでしょうか?大きな原因は次の8つが考えられます。1.頭が興奮しすぎている私たちの体は自律神経(交感神経・副交感神経)と呼ばれる2つの神経のグループが交互にリーダーになり、私たちの行動がコントロールされています。◎交感神経:活発に活動したり興奮状態の時はこの神経のグループがリーダーとなり私たちを動かしてくれます。(例:興奮する、目が覚める、やる気の状態)◎副交感神経:睡眠や消化活動などに体が落ち着いた場合にリーダーになるグループです。(例:トイレに行きたくなる、お腹が空く、眠くなる、やる気がなくなる、落ち着く)入眠障害の原因は、「体が疲れているのに頭が興奮しているため眠りを呼び起こさない」というのが第一の原因だと言われています。2.性格や遺伝気質交感神経の働きとも関係が出てきますが、性格的に交感神経がリーダーになりやすい人や、遺伝気質的に(親戚にそのような人が多い)興奮しやすい気質などを持っている場合は、他の人よりも興奮が収まりにくく中々眠りにはいれません。3.寝入る前の体温が高すぎる/低すぎる寝入る直前は体温が少し下がっています。しかし熱帯夜などを思い浮かべてくださると分かりやすいと思いますが、体温が眠る前にも関わらず高いと眠りに入りにくい傾向があります。ちなみに以下のような状態の時に起こりやすくなります。高温のお風呂が好き寝る部屋が暑い体を寝る直前に温めすぎる(*注意:適度に温めるのは寝入るために良いことですが、やりすぎて温めすぎるのは却って入眠を困難にしてしまいます。)厚着や布団などを多くかけすぎる反対に寒すぎるこのように極端な環境だと寝入りに入るタイミングを逃してしまう場合が多いです。4.寝入るのに適切な環境でないお子さんが小さい場合や、眠る時間帯が違う人が一緒に暮らしていると起こりやすい原因です。また、いびきや歯ぎしり、寝言なども気になってしまう人には原因になりやすいです。その他にも、以下のようなことがあると眠りにくいです。眠っている時にPCやベッドサイドのライトが目に入ってくる夜中に帰ってくる人が近所にいる大学生など人が多く集まる場所が近くにある5.昼間あまり活発に動いていない/動きすぎている昼間一人で家に居る人や、事務の仕事の人などは体を動かさずにPCのモニターなどだけを見ている作業が多くなります。そうすると、体があまり疲れずに夜になっても寝入りが難しくなります。反対に、一日中走り回ったり立ち仕事で絶えず体を動かす人も体が疲れすぎて眠りにすんなり入れないことがあります。6.昼間の刺激物(カフェイン飲料やカカオなど)の過剰摂取昼間にカフェインが多く含まれたコーヒーやお茶などを飲むと中々交感神経と副交感神経が交代してくれず、眠りに入れなくなります。また、チョコレートや辛い香辛料などが好きな人も夜までそれらで興奮された脳の状態が残ってしまい、寝入りが難しくなってしまいます。7.ショックな映像やショックな出来事が身近に起こったショックを受けることを聞いたり、人から直接批判されたりすると精神面で軽く落ち込み(へこむ状態)それが寝入りを悪くさせている可能性もあります。自分では気にしていないようでも、無意識に心の奥底で傷ついている場合があります。また、身近でなくてもショッキングな出来事や映像などを見てしまうと、代理トラウマといって自分が直に受けていないのにそのショックを受けた状態(トラウマ状態)になってしまいます。8.持病の薬やサプリメント以下の薬やサプリメントは交感神経に働きかけるため入眠困難になる場合もあります。(個人差あり)気分を高揚させるような薬(抗うつ剤、抗パーキンソン病の薬)カフェイン栄養ドリンク高血圧の薬気管支拡張剤など呼吸器系の薬ステロイド抗生物質咳止めの薬など★可能性のある病気上記の8つ以外の原因に、病気によって入眠困難になる場合も考えられます。そのような場合には、必ず以下のポイントに注視してみてください。例1.心臓や肺が悪い場合入眠困難+息苦しい、咳が出る、むくみがでるなど例2.鬱などの精神的な場合入眠困難+外に出る気がしない、気分が落ち込む、やる気が出ないなど(ベッドから出れない)例3.腎臓病や肝臓病の場合入眠困難+肌の色(指で押すと黄色くなる)や肌の痒み・赤み、尿の色の変化(茶色や黒色など)、急にお腹だけ膨れてきた、生活できないほどの疲労感や倦怠感などこの他にも、糖尿病や慢性的な病気、または自己免疫性症候群やアトピー性皮膚炎などの持病がある人は入眠困難になりやすいです。■入眠障害の対策とアドバイス(診断前)重要なのは以下の3つのことです。1.内科か心療内科・精神科の専門機関にかかる一番重要なことは、まずは内科や心療内科など専門機関にかかり、適切な診断を受けることだと思います。もし、入眠困難だけでしたら入眠困難を治すように努力すればいいですし、他の病気が原因で2次的に入眠困難が起こっているようでしたら、その元になっている病気を先に治すという風に、早めに診断されれば早めに対処でき短時間で解決する場合も多いからです。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド2.持病を治す持病があればそれをしっかりと治してみて、それでも入眠困難があるかどうか確かめてください。3.自己判断をしない自己判断で安易に市販の睡眠薬などを飲むのは根本的な解決になっていません。■入眠障害の対策とアドバイス(診断後)入眠困難などの睡眠障害と診断されたら、まずは医師の治療内容に従ってみましょう。医師は治療マニュアルに沿って治療を行います。日本睡眠学会が定める治療マニュアルは、日本人の体質に一番適した治療法です。何ができるのか分からない時は、まずは身近な物から目を向けてみて下さい。例えば、以下のようなものもおすすめです。寝る前には少し頭を冷やして足元を温める:副交感神経に変わり安いです消灯の1時間前には全てのITツールを遮断する(PC,スマホ、タブレットなど):脳を興奮させないようにしますストレッチなどで体をほぐす:血行が良くなり筋肉がほぐれるので寝入りが楽になりますノンカフェインの暖かいお茶を飲む:体温が上がり血糖値も少し上がるので(正常の範囲内です)空腹感がまぎれます呼吸を少し意識して遅くする:副交感神経に変わりやすくなります肌に触れる素材はコットンなど柔らかい素材にかえる寝る前の儀式(羊を数えたり、白湯を飲んだり)など習慣をつける参考文献URL:日本睡眠学会治療マニュアル <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日軽度知的障害とは?出典 : 軽度知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数(IQ)50~69の水準にとどまり、適応能力は正常またはやや遅れがある状態を指します。ことばや抽象的な内容の理解に遅れがみられることがありますが、身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。よって幼少期には気づかれにくく、小学校高学年~中学生までの間に軽度知的障害と分かる場合もあります。またストレスなどによる二次障害や自閉症スペクトラム障害などの合併症を伴っていることもあり、二次障害や合併症の方が目立って表出しているケースもあります。なお発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能の低下が発症しても、知的障害および軽度知的障害とは言いません。現在の精神医学書で使われている知的障害の定義は、アメリカ精神遅滞協会が提唱した定義を参考にしていることが多くなっています。以下はアメリカ精神遅滞協会が定めた定義です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な定期追うスキルで表される)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる (AAMR,2002)知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文知能指数とは人の知能の基準を数値化したものです。ここでいう知能(IQ)とは、いわゆる学力ではなく、目的に沿って合理的に考え、効率的に環境を処理する総合的な能力のことをいいます。IQ90~109が平均の知能指数であり、そこからどのくらい高いか・低いかと考えます。軽度知的障害のある人は、概ね知能指数(IQ)が50~69にとどまると考えられています。適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。能力の測定は、自分の強み・弱みを理解するために行います。出典:主な心理・発達検査の種類と特徴・WISC-Ⅲの概要出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文Upload By 発達障害のキホンこの図は知的障害の程度・区分を示した図です。横軸に「日常生活能力水準」、縦軸に「知能指数(IQ)」の程度を表しています。日常生活能力水準がaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができることを表します。同様にⅠに近づくほどIQが低く、IVに近づくほどIQが高くなります。知的機能が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、ひとつ軽度の程度で判断されることがあります。IQ36~50の方でも生活能力が高ければ軽度知的障害に含まれます。一方で、IQ51~70の方でも日常生活への適応能力が低い場合は、中度知的障害に含まれる場合もあるということです。このように、知的障害は知的機能検査だけで判断されるわけではなく、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。またこの程度を分類する方式は、療育手帳を取得する際にも用いられています。療育手帳については8章で詳しく説明していきます。軽度知的障害の原因って?出典 : 知的障害の原因は一つではなく、原因不明の知的障害の人も多いとされています。原因解明の研究が進んでいますが、現段階では内的原因と外的原因に分類することができるといわれています。内的原因とは遺伝子や染色体の異常など、子どもが先天的にもつ原因のことをいいます。病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることを病理的要因と呼びます。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。軽度知的障害および知的障害の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。・ダウン症・多因子性疾患・てんかん・脳性まひなどまた、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。外的原因とは出生前後に起こった事故や養育環境などによる外的な要因が、原因となることをいいます。具体的には出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールなどの大量摂取などにより、子どもに影響を及ぼす場合があります。中には軽度知的障害だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、交通事故などによって意識を失うほどの頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。・感染症・出産時、出産後に起こった頭部の外傷・出産時のトラブルなど出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の特徴の現れ方出典 : 軽度知的障害は知的機能と適応能力にやや遅れがあるものの、身の回りのこと(食事・洗面・着衣・排泄など)は自分で行うことができます。空間・時間・数量の認識に特徴はありますが、自ら学び取る力もあり、経験を重ねることで得られる知識や学びは広がります。軽度知的障害の方は空間・時間・数量の認識にどのような特徴があるのでしょうか。順番に説明していきます。◆空間の認識:「今いる場所」「何度か行った場所」「行ったことがない場所」と、自分と空間の関係を分類した場合、軽度知的障害の方は、自分が行ったことのない場所でも、その場所が存在していることを理解することできます。知的障害があると、目に見えないものや、抽象的な概念を理解することは苦手と言われていますが、軽度知的障害の場合はある程度はその概念を理解することもできるといえるでしょう。◆時間の認識:時計を見て「ご飯を食べる時間」「寝る時間」「学校へ行く時間」などと、時間帯とやるべきことを関連づけて理解できます。また過去や未来という概念も理解できます。一方で、時間の長さを計ったり、何時間後は何時になるという計算などになると、とまどうことがあります。しかし、トレーニングを積むことである程度は解消できるようになります。◆数量の認識:「100円玉2枚で飲み物を買うことができる」というように、自分の経験と結びつけて理解することができます。おつりがいくらになるかなど、細かい計算を瞬時に行うことは難しいですが、足し算や引き算などのトレーニングを積むことによってある程度のスピードでできるようになります。軽度知的障害がある子どもは、自分が経験してきたことを元に物事を理解していきます。認識できる世界を広げていくためには、さまざまな経験をすることが重要です。知的障害がある子どもは言葉の遅れ、物事を記憶することが苦手といわれています。言葉の遅れに関しては、「言葉」という概念を認識するまでに時間がかかるために生じます。言葉を認識するためには、経験の一つ一つを「言葉」として理解できるように工夫するとよいといわれています。例えば料理を一緒にしていたら「料理をする」「キャベツをとる」「野菜を切る」「煮込む」など、実際に経験しながら、具体的な物や行動の名前を覚えていきます。また物事を記憶しておくことも苦手です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」が存在しますが、短気記憶を繰り返し思い出すことにより、長期記憶として蓄えられていくと言われています。軽度知的障害があっても、身のまわりのことは年齢を追うごとに問題なく発達します。しかし、上に述べたような空間や時間の認識に特徴があるため、周りからは学習面やコミュニケーション面で遅れがあると感じられるようになります。よって経験の範囲を超えた知的な要求が増える小学校高学年~中学生の頃に障害があることに気づくことが多い傾向があります。出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の診断基準と検査方法出典 : 軽度知的障害の確定診断は臨床診断と各種検査の結果によって総合的に診断されます。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、生育歴と行動観察について聞き取りを行います。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。知能検査では主に田中ビネー知能検査とウェクスラー式知能検査によってIQを計測します。また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は新版K式発達検査などの発達検査を受けることもあります。適応能力の検査ではvineland-II(ヴァインランド)がよく使われています。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・学生児(5歳から16歳11ヶ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。■新版K式発達検査年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■vineland-II(全年齢)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)軽度知的障害の疑いを感じたら?出典 : 自分の子どもには軽度知的障害があるかもしれない、と疑問を持った場合、いきなり専門医を自分で探すのは難しいですよね。まずはお住まいの地域にある身近な相談機関や窓口に行ってみましょう。子どもか大人かによって、相談先が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業生活支援センター・相談支援事業所など先に挙げたような知能検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、相談機関では、知的障害のことだけでなく子どもの発達全般について相談することも可能です。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることがあります。軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などの悩みって?出典 : ここでは、軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などについて考えていきます。軽度知的障害は幼少期に気づかれにくく、概ね小学校高学年~中学生の時期に気づかれることが多いとされています。また障害の症状が基となって様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害や合併症を起こすことがあります。■軽度知的障害を受け入れることへの本人・保護者の戸惑い思春期に発覚することが多い障害であるがゆえに、本人や保護者が障害を受け入れることに戸惑いを感じることがあります。勉強についていけなかったり、対人関係が上手くいかなかったりなど、本人が「どうしてだろう?」と悩み、場合によっては相談もできずに自尊感情が低下することがあります。また、保護者も子どもに対しての接し方や周囲の理解や環境のつくり方、また子どもの将来のことなどの不安要素によって戸惑いを感じることがあります。息子の経歴を簡単に記載します。小学校、中学校、高校ではただただ勉強が出来ない程度の子供と思っていましたが高校卒業時に就職活動、卒業試験、普通免許の取得等の活動をしていましたが思うようにいかずに精神的におかしくなり、引きこもるようになりました。また、持病にてんかんをもっており、発作の回数が増えて主治医に相談したところ、専門の病院を紹介され、診察を受けたところ、18才で初めて知的障害であることがわかりました。■周囲への理解をどうやって得ていく?思春期に障害が明らかになるケースでは、以前から症状がありながらも診断を受けていなかったケースと、はじめて症状が明らかになってきたケースがあります。前者の場合は、症状がある程度みられていたため家族・親戚や学校なども、それぞれで既に本人に合わせた対応をしていることもあります。改めて話し合い、接し方や合理的配慮を考えていく必要があります。一方で後者のケースの場合は、一から周囲への理解を仰がなければならないため、「何からどうすればいいのか分からない」など、戸惑うことがあります。■二次障害や合併症が原因で問題行動が起きているとき軽度知的障害は、その特性が基となって周囲とのコミュニケーションが上手くいかないことや、不適合な環境やストレスなどが原因となって問題行動を起こしたり、行動障害や反抗挑戦性障害などの二次障害が引き起こされる可能性があります。問題行動とは周りの人を困惑させる行為のことをいいます。例えば自傷行為、徘徊、他人への攻撃、喧嘩を仕掛ける、あるいは不登校やひきこもりなどがあります。場合によっては軽度知的障害の症状よりも二次障害の症状が目立って表出する場合もあるため、問題行動の根幹原因を見極め、調整や変更などを行うことが求められます。軽度知的障害との向き合い方・学校等での配慮のポイント出典 : ■軽度知的障害との向き合い方保護者をはじめ本人にとっても、軽度知的障害を受け入れるには時間が必要です。無理に急いで受け入れようと焦っても心理的な負担になりかねません。一般的にゆっくり段階を追って障害を受容していくと言われています。最初のうちはショックや葛藤が生じることがありますが、本人や周囲の人が、それぞれのペースで身体的・社会的・心理的に障害を受け入れていくまで、焦らず時間をかけて関わり合うことが大切です。困った時は発達障害者支援センターや専門医など、専門家に頼りながら落ち着いた対応を心がけましょう。■合理的配慮という観点合理的配慮とは障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。2016年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、行政機関や事業者には、障害のある人に対する合理的配慮を可能な限り提供することが求められるようになりました。本人を取り巻く周辺の人が合理的配慮を考える上での重要なポイントは、「その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか」「その困りごとを解消するための適切な配慮は何か」の2点です。これらを踏まえながら学校や職場などの合理的配慮を検討・実施することが大切です。合理的配慮に関しては次のリンクを参考にしてみてください。■問題行動の背後にある原因の探り、解決を目指していく問題行動をとる子どもを「困った子だ」といって疎んじたり叱ったりするのではなく、その子ども自身が何に「困っている子」なのか、その子が問題行動をとらざるを得ない原因は何なのかを理解しようとすることが大切です。問題行動をとる子ども自身、その行動がよくない行動だということ理解している場合も少なくありません。それでもなお、数少ない自己主張の方法のひとつとしてその行動をとっていたり、心理的・身体的なストレスからその行動に移ってしまう場合があるのです。カウンセリングを通して子どもをケアしたり、学校・家庭の環境をもう一度見直すことなど、解決に向けた方法を探っていきましょう。軽度知的障害でも療育手帳は取得できるの?申請方法もご紹介します出典 : 療育手帳とは知的障害者に発行される障害者手帳で、知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。・おおむね18歳以前に知的機能障害が発症し、それが持続している。・標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下。(70以下に規定している自治体もある)・日常生活に支障が生じているため、医療、福祉、教育、職業面で特別の援助を必要とする。上記の目安に従い、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に対して交付されます。療育手帳制度の概要(厚生労働省)障害の程度などによって、交付される療育手帳の区分がわかれ、受けられるサービスの適用範囲が違ってきます。各自治体が判定基準に基づいて、知能検査による知能指数(IQ)と日常生活能力などから、知的障害の程度を総合的に判断し、療育手帳の区分を決定しています。軽度・中度・重度・最重度といったように知的障害でも4つの程度に分けられます。その分け方に関しては1章で図を用いながら紹介しました。療育手帳の区分は基本的に重度「A」と重度以外の中・軽度「B」の2つの区分にわけられますが、自治体によって区分の分け方もより細かく区分している場合などがあり、さまざまです。より細かい区分は自治体によって、また本人の年齢によって変わりますが、おおよそ以下の基準を目安に判定されています。ただし、これらは判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には自治体の独自の基準によって区分が決められます。■重度(A)・最重度・重度■軽度(B)・中度・軽度(B/B2/4度など)療育手帳の区分について(自治体別一覧)/東京大学大学院経済学研究科READ療育手帳を申請に関する細かい点はお住まいの自治体によって異なりますので、申請される際には福祉担当窓口にお問い合わせください。■申請に必要な書類・療育手帳交付申請書:自治体の福祉事務所・福祉担当窓口、またはPDFのダウンロードや郵送での取り寄せができる場合もあります。・写真:サイズなど規定が決まっている場合があるので確認しましょう。その場で撮影してくれる自治体もあるようです。・印鑑・その他添付書類:通知表、成績証明書、医師による診断書などが必要な自治体もあります。詳しい申請の流れは以下の記事をご参照ください。まとめ出典 : 軽度知的障害がある方は日常生活を送る上では支障はなく、学校での授業など知的能力を問われる場合にならないと分からないことがあります。ですので、多くの方は小学校高学年~中学生の時に症状が明らかになります。学校の勉強に追いつけない、友達とのコミュニケーションが上手くいかない、友達関係も上手くいかないなど、年齢を追うごとに自然と困難な場面に出会うことが多くなるのも一種の特徴です。学校で受けた、そういったストレスが家庭で爆発してしまうケースもあります。また、その逆のケースもありえることです。軽度知的障害があっても、本人の認知特性に合った学習機会をつくれば、言葉や計算の力を伸ばしていくことができます。具体的な経験を積める機会を増やしたり、時間や空間などの概念は本人の経験に結びつけて説明をするなど、自信を持って理解や行動ができるような支援を行なっていきましょう。
2016年12月15日発達障害で働いている人はどのくらいいる?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能障害によって、発達に何らかの遅れや偏りなどの症状が、通常低年齢において発現する障害です。日本における発達障害の定義は平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。そもそも発達障害のある大人が日本にどのくらいいるか、はっきりした統計的なデータはありません。文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%、つまり約15人に1人の割合でという結果になりました。これは、診断を受けている人の数ではありませんが、障害の傾向のある人まで含めると、社会の中にもかなりの数の発達障害のある人がいることを示唆しています。発達障害がある人の中には成人して特性を生かした職業に就いたり、能力にあう職業を選び、雇用されている人もたくさんいます。2011年の障害者職業総合センターの調査によると、- 障害者を積極的に雇用している特例子会社105社のを対象にしたアンケートで、特例子会社で働く療育手帳(知的障害のある方が取得する手帳)所有者が1798人、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が198人いて、両者の中で発達障害があると把握されている人は203人という報告があります。ですが、発達障害のある人の中には療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していない人や、障害を開示しないで働いている発達障害の人が多いと考えられます。そのため、実際にはより多くの発達障害のある方が、様々な仕事に携わり、様々な職場で働いていると言えるでしょう。出典:「 発達障害者の企業における就労・定着支援の現状と課題に関する調査研究」(2011年)|障害者職業総合センターHP大人の発達障害、いつ診断された?きっかけは?Upload By 発達障害のキホン発達障害は発達期(~18歳)に発症するとされていますが、障害に気づくタイミングはそれぞれです。子どものころから診断結果が出ている人や、大人になってから何かをきっかけに診察を受け、気づいたという人もいます。母は私が小さい時から「おかしい」と思っていました。小学1年生の時、担任に「学習障害」を相談しましたが「違う」と言われ、中学でも担任に相談しましたが違うと言われました。私自身も、小学生の時点で自分の「変さ」には気づいていました。辛かったです。でも、「発達障害」という言葉自体なく診断されませんでした。近年、発達障害が広く知られるようになってきましたが、かつてはあまり理解を得られず、見過ごされていた人も多いようです。大人になって発達障害に気づくきっかけになるのは、例えば仕事上のミスや、社会人として生活する上で人間関係がうまく築けないなどの悩みなどです。これらのストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科などを受診して発達障害に気づく人も少なくありません。ですが、大人になってからでも専門家の支援を受けることで自分の特性に気づけたり、対処法を学ぶことは十分にできます。もちろん、日常で問題や障害を感じずに社会に適応している発達障害の人もいますし、現在発達障害の根本的な治療法もないため、必ずしも診断を受けなければいけないわけではありません。私は13年前にうつ病と診断され、6年後に双極性障害と再診断されました。現在は双極性障害2型とパーソナリティー障害が病名になっています。解離性障害で入院していた時期もあり、過去10人以上の医師に診てもらいましたが誰1人私の「発達障害の可能性」を指摘しませんでした。今までのどの診断名も自分にしっくり合わず間にあわせ的な違和感を感じていた私が自ら調べた結果、「根底にあるのは発達障害で双極性障害その他はその二次障害である」という結論にたどり着き、医師にそれを相談したところ診断に「発達障害疑いあり」が加わりました。このように大人になってから新たに発達障害だと医師から診断されることもあります。大人になってからでも、なんらかの困りごとに直面したり、疑いを持った場合はまず専門機関に相談しましょう。発達障害者支援センター・一覧検診で子供の発達障害の疑いを指摘されたことをきっかけに、自分もWISC検査と診察を受け、自閉症スペクトラムグレーゾーンと診断されました。お子さんの発達障害をきっかけに、自分の障害に気付いた方もいるようです。大人の発達障害、特性に合った仕事・難しい仕事は?出典 : 注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人の特徴は、集中力が長時間保てなかったり、落ち着きがない、物忘れをしがちといった行動が目立つため、周囲からやる気がないというような誤解を受けがちです。仕事上では、不注意から同じミスを何度もしてしまうこともあります。また「臨機応変に対応を」と言われ、本人は工夫したつもりが、やりすぎてしまい相手の意図とそぐわないことをしてしまうこともあるかもしれません。しかし、一方ではアイデア力、行動力や独特の感性を発揮し、営業職や企画・開発などで評価され活躍している人もいます。ADHDの人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的にミスが絶対に許されないような作業などは不向きともいえます。一方で、ADHDのある人は以下のような強みがある人も多いのです。・興味のあることに対して情熱を持ち、高い集中力を発揮する・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどどちらかというと、芸術家・音楽家やデザイナー、CGアニメーター、ゲームソフトやコンピューターソフトの製作者、研究・開発者などクリエイティブな仕事が向いています。また行動力を活かしセールスマン・営業職や起業家・企業家として活躍する人もいます。自分の特性に合った職業に就くことができれば、注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人も強みを活かして活躍しやすくなります。時間や仕事のリズムにも自由度が高く、うっかりミスも取り返しがつくような、新しいアイデアや変化を問う仕事が向いています。自閉症やアスペルガー症候群などを含む、広汎性発達障害(PDD)・自閉症スペクトラム(ASD)の人は、相手の気持ちや場の空気を読んだり、コミニュケーションをとるのが苦手ということが多いです。また、イレギュラーなことやはじめての経験にスムーズに対応するのが難しいこともあります。これらはあくまで傾向にしかすぎず、全ての広汎性発達障害の人がこの特徴に当てはまるわけではありません。併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、対人関係が苦手な人は接客業はストレスが多いでしょう。現場で臨機応変な対応が求められる職業は向いていないかもしれません。広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受ける人も多いのです。また、自分にしかわからないような強いこだわりを持っているので、研究や創作などでは群を抜いた能力を発揮することも多いのです。具体的にはデザイン関係の仕事やプログラマー、コンピュータ関連の仕事で力が発揮できると思われます。集中力があり、普通の人では集中力をきらしてしまうような細かい仕事もコツコツと続けることができ、物事を深く追求したりルールに基づいて整理・分析したりするエンジニアや研究者といった仕事、校正者や職人などの特殊技能を必要とする仕事などに向いています。学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)のある人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害のある人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害のある人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。人のストーリー|発達ナビ大人の発達障害、仕事の探し方は?Upload By 発達障害のキホン発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応体制を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。まず、最寄りのハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の発達障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事をする上で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても医師の診断書や意見書など、支援の必要性を示す情報があれば利用することができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークでは、発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。発達障害者支援センターでも「就労支援」を行っています。本人や家族からのあらゆる相談ができ、必要に応じた施設や医療機関の紹介もしてくれます。就労に関しては特性や障害の状況に適正な就労先を紹介してくれたり、雇用後にも個人の必要に応じて支援を行ってくれます。発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム発達障害者支援センター・一覧参考:障害者就業・生活支援センター療育手帳や精神障害者福祉手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからといって必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。障害者雇用対策|厚生労働省障害者雇用対策|厚生労働省大人の発達障害、会社や同僚へ開示・報告はした方がいいの?自身に発達障害があることを職場に伝えた方が良いかどうか、迷う方が多いのではないでしょうか?会社へ障害があるということを報告するかどうかは、一人ひとりの状況によるので一概には決められません。診断のみでは雇用上「障害」としては認められない現状があることも考慮したほうがよいでしょう。そのため診断とともに障害者手帳を取得しているかどうかでその意味合いが変わってくる場合もあります。一般就労をしている場合、会社に報告するか否かは、障害に理解のある会社であるかどうか、報告することで仕事をしやすくなるかなどを考慮して決めた方が良いと言われています。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。一方、報告することによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまず挙げられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、不当な差別的取扱いを行ってはいけないこと、企業や行政はできる範囲で合理的配慮を行う努力義務があることが定められました。このため、職場でも合理的配慮をお願いしやすくなりました。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人がいないとは限りません。発達障害について詳しい知識のある人は少ないので、仕事上での困難や起こりうる問題と、要望などを伝えるようにしましょう。また、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。デリケートな問題ですので、迷ったら自分だけで決めずに、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することをおすすめします。一方で、発達障害を開示・報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。発達障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法出典 : 発達障害のある人の中には、社会的な「暗黙のルール」というものに気づきにくいという特性も持っている方も多く、周りの人が忙しくしている時や、助けを必要としている状況に気づかず、手伝うことができない場合があります。また決められたこと以外のイレギュラーなことが苦手な特性のある場合、指示をされないと動かない・自分の仕事が終わったら他のことは何もしようとしない、などと周りから見られてしまうことがあります。【対処方法】具体的な指示があると動きやすいという特性を伝え、「具体的に今時点で何を手伝ってほしいのか」指示してもらうようにします。その仕事を終えたら、次の仕事をまた具体的に指示してもらうようにします。複数の仕事を同時に並行して行うことや、脳と体の複数部を同時に動かすことが苦手なこともあります。一つの業務の間には、わずかな時間でも休憩を挟み、終わった仕事に対して評価をしてから、次の仕事をするといった工夫をするとよいでしょう。時間の管理が苦手で、遅刻しがだったり、仕事の手順が就労時間で計画できない場合があります。スケジュールの調節、優先順位だけでなく、仕事に対して熱心に取り組んではいても、こだわりが強すぎて自分の納得いくまで作業を終わらせることができずに、納期が守れないといったこともあります。【対処方法】仕事の完成度が高いことも重要だが、納期を守ることも大切だということを理解しましょう。「納期」とはなにか、具体的にして再確認し、作業のスケジュールを「見える化」すると良いでしょう。またスケジュールは自分だけでなく、複数の人に管理してもらうなどがあります。具体的には以下のような工夫をするとよいでしょう。・作業内容を細分化して書き出し、それを見えるように張り、作業終了目標時間の5分前にアラームをセットする。・終わった作業にはチェックをし、終わった作業への充実感を感じられるようにする。・仕事の計画や優先順位を決めることが苦手な場合、スケジュールをほかの人に管理してもらい、ひとつの仕事を終えたら、次の仕事を具体的に指示してもらうようにする。周りが気になってしまって、やるべき仕事に対しても集中力が続かない場合があります。また、興味がない仕事の場合、会議中などの大事な席でも居眠りしてしまうことも。頼まれていたことを忘れてしまったり、集中力が続かないことが原因で、仕事がスムーズに終わらなかったり、やる気のないような印象を与えてしまい、接客などで様々なトラブルを起こしてしまうことも少なくありません。【対処方法】怠けているという訳でもなく、集中力が続かないという特性を持っている場合は、周りの人に自分の特性を説明し、理解してもらえるようにつとめます。何か別の考えごとをしているな、と感じたら、声をかけてもらえるようお願いしてみましょう。他のことを考えはじめたことに気付いてもらい、今やるべきことがあるのに他のことを考えてミスしてしまうのを防ぐためです。指示を忘れないようにメモの習慣をつけましょう。集中力低下時の居眠り防止には、睡眠不足にならないように心がけることも大切です。またデスクワークなどで気が散ってしまうときは、集中できるよう環境調整をすることも効果的です。デスク周りを片づけて集中できるようにしたり、聴覚過敏がある場合は相談してイヤーマフなどの使用許可をお願いするのもよいでしょう。「想像力の障害」や「コミュニケーション能力の障害」により、敬語の使い方が困難な場合もあります。本人が正しいと思って使っていた言葉使いが、仕事の上では失礼にあたったということに気づけないことがあります。また距離感をうまくつかめないという特性もあり、近くにいるのに声のボリュームが大きすぎて相手を驚かせてしまうこともあります。【対処方法】自分中心の話ばかりでなく、相手が話しているときは意識的に相づちをうつようにするとよいでしょう。場所やその場の雰囲気、相手に合った会話の内容や態度、表情などを意識するということを、ひとつずつクリアしていくようにします。相手のお世辞を正直に受け止め過ぎてしまうことがあるので、注意しましょう。まとめ出典 : 参考:『発達障害者と働く』(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)発達障害のある人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。発達障害は、一見して外からは見えにくいため、他人には障害があることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。発達障害だということを職場に告白し理解してもらうのは勇気のいることですが、仕事の円滑さやストレス軽減のための手段のひとつであるとも言えます。仕事がスムーズにいかないのは、本人の能力不足や怠け心があるというのではありません。今勤務している職場環境を改善したり、適職を見つけることのできる相談機関が全国にありますし。それによってサポートを受けながら、働きやすい仕事の環境で継続的に働いていくことも可能なのです。深呼吸し、ひとつずつ課題をクリアしていくように、業務の手順や対人関係の工夫を身につけていきましょう。自信をもって働ける職場環境をつくったり、より適切な職場を見つけたりすることで、仕事や生活全体の充実が得られるようになるでしょう。頑張り過ぎず、自分のペースでいられる時間を持つことで、バランスをとっていきましょう。参考:法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年12月15日発達障害のある5歳の娘は、とにかく褒め上手!Upload By SAKURA広汎性発達障害がある現在5歳の娘は、とてもよく人のことを褒めます。年少さんの頃から、お友達の服やカバンなど、身につけているものを褒めたり、お友達の描いた絵や、作った折り紙、行動を褒めたり…。ねたんだり、嫉妬することなく素直に人のことを褒められる娘を、私たち親は尊敬しています。お友達だけでなく、親のこともベタ褒め!!娘は幼稚園のお友達だけでなく、私たち親のこともいつも褒めてくれます。当たり前の行動でも、娘に褒められるとなんだかいい気持ちになります(笑)。Upload By SAKURA親とお友達だけじゃ物足りない!最近娘が褒めだしたのは…しかし、最近は親や周りのお友達を褒めるだけでは物足りないのか、外出先で見かけた知らない子まで褒めています。Upload By SAKURAそして私にも強制…。こうやって私は、いつも他人の子を全力で褒めさせられています(笑)。
2016年12月14日小児期崩壊性障害とは?出典 : 小児期崩壊性障害とは、それまで問題なく発達していた子どもが、突然、成長の過程で覚えた能力を喪失していき、知的障害を伴った自閉症のような状態になる障害です。ヘラー症候群、幼児性認知症、崩壊性精神病、共生精神病とも呼ばれるこの障害は、小児の0.005%に発症するまれな障害であり、男性に多いとされています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPこの障害は、広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(下図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)を指します。Upload By 発達障害のキホン小児期崩壊性障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類された障害です。しかし、2013年に出された、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに包括されました。そのため、現在は小児期崩壊性障害という診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、行政などで小児期崩壊性障害の名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されている小児期崩壊性障害についてご説明します。アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)による小児期崩壊性障害の定義は以下の通りです。小児期崩壊性障害の基本的特徴は,少なくとも2年の見かけ上正常な発達の期間に引き続く,多くの領域の機能における著名な退行である(基準A).見かけ上正常な発達は,年齢に相応した言語的および非言語的コミュニケーション,対人関係,遊び,適応行動に示される.生後2年以降(しかし10歳以前に),子供は,以下の各領域の少なくとも2つにわたり,以前に獲得した技能の臨床的に明らかな喪失を示す:表出性または受容性言語,対人的技能または適応行動,排便または排尿のコントロール,遊び,または運動技能(基準B).最も典型的には獲得された技能はほとんどすべての領域で失われる.この障害をもつ者は,自閉性障害をもつ者に広く観察される,対人的およびコミュニケーションの欠陥と行動的特徴を示す(82頁参照).対人的相互反応(C1)およびコミュニケーションにおける質的障害(C2),限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動の様式(基準C3)がある.障害は他の特定の広汎性発達障害または統合失調症ではうまく説明されない(基準D).この状態は,ヘラー症候群,幼児痴呆,または崩壊性精神病とも呼ばれてきた.参考文献:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2003年医学書院/刊小児期崩壊性障害という診断区分を定めている『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、この障害に相当する症状がある場合は、別の診断名が下されることが多くなってきています。ここでは、小児期崩壊性障害に相当する症状が、別の診断基準ではどう診断されるのか紹介します。・『DSM-5』における小児期崩壊性障害『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)・『ICD-10』における小児期崩壊性障害世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』における小児期崩壊性障害は「他の小児期崩壊性障害」というカテゴリーに相当するとされています。『ICD-10』で言われる「他の小児期崩壊性障害」の概念・診断基準と『DSM-Ⅳ-TR』における「小児期崩壊性障害」の概念・診断基準はほとんど同じとされています。参考文献:融道男 /著『ICD-10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン―』2015年医学書院/刊小児期崩壊性障害の3つの特徴出典 : 小児期崩壊性障害は、1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく3. 発症後は自閉症と似たような症状を示すという3つの特徴があります。以下において、小児期崩壊性障害の3つの特徴についてそれぞれ説明します。1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する小児期崩壊性障害は、2歳から10歳までの間に発症します。発症までは、言語的および非言語的コミュニケーション、対人関係、遊び、社会適応における年齢に相応した正常な発達が続きます。つまり、定型発達の子どもと同じように順調に成長していくのです。2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく発症後、成長の過程で覚えた能力を失います。以下の能力のうちの2つ以上を失うとされています。・言葉の使用と理解・対人的技能または適応行動・排便または排尿の機能・遊び・運動能力発症の前兆として、よく動いたり、イライラしたり、不安になったりすることがあります。また、言語やその他の能力の喪失の兆しや、周りの環境に対する興味、関心が薄くなることもあります。これらの能力が失われていく期間は、多くの場合数ヶ月で止まります。その後は、能力が失われた状態が一生にわたり続きます。しかし、脳や神経の病気もある場合には、これらの能力は失われ続けるとされています。3. 発症後は自閉症と似た症状を示す小児期崩壊性障害は発症後に、以下に説明する自閉症(『DSM-Ⅳ-TR』では「自閉性障害」)にみられる3つの特徴のうち少なくとも2つの特徴が当てはまるとされています。(1)対人的相互反応における障害・目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなどの非言語的な行動ができない・他人と満足のいく関係を築けない・対人的ないし情緒的な気持ちのやりとりの困難・他人の気持ちの共感・理解の困難(2)コミュニケーションの障害・話し言葉の発達の遅れ、または完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない)・会話の頻度が高い場合、他人と会話を開始し、継続する能力の明らかな障害がある・常同的で反復的な言語の使用または、独特な言語・発達の水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや、社会性をもったものまね遊びの欠如(3)運動性の常同症や衒奇症(げんきしょう)を含む限定的、反復的、常同的な行動、興味、活動の型・特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつこと・特定の対象に持続的に熱中すること・芝居じみた挨拶や身振りを繰り返すこと・複雑な全身の動きを続けるなど、型にはまった同じ運動を不自然に繰り返すこと小児期崩壊性障害の原因出典 : 小児期崩壊性障害の原因は現段階では解明されていません。現状では、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があるのではないかと考えられています。小児期崩壊性障害と似ている障害出典 : 小児期崩壊性障害と似ている障害として、小児統合失調症や認知症、この障害と同じ広汎性発達障害のひとつである自閉症が挙げられます。・小児統合失調症統合失調症は妄想や幻覚などの症状が続く疾患です。ほとんどが思春期以降の発症ですが、まれに幼いころに発症することがあります。小児統合失調症の症状にも感情的な反応の欠如が見られるなど、小児期崩壊性障害と似ている症状が見られることがあります。・認知症小児期崩壊性障害と似ている障害として、成人期における認知症があげられます。しかし、小児期崩壊性障害は、頭部外傷などの身体的な要因が原因ではないこと、技能喪失の後ある程度の回復がみられること、自閉症に典型的にみられる特徴がみられることなどの点において認知症とは異なっています。・自閉症小児期崩壊性障害にも自閉症のような症状がみられます。しかし、自閉症も発達の遅れがみられるとはいえ、一度獲得した技能を失う退行は見られない点において異なっています。小児期崩壊性障害かな?と思ったら…出典 : 上記で述べた症状が見受けられる場合、医療機関や専門家に判断してもらうことをおすすめします。いきなり専門医に行くことが難しい場合は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するとよいでしょう。・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。相談窓口の情報|発達障害情報・支援センターHP発達ナビ「地域情報」: 全国の発達障害者支援センターの一覧・どの診療科にいけばいいの?小児期崩壊性障害の診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などを行う他、専門機関によっては筆記や口頭質問などを通した知能検査や発達検査などを実施する場合もあります。こうした様々な情報を総合的に評価して、診断がくだされます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診ですぐに診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。小児期崩壊性障害は治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつである小児期崩壊性障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。障害のある子どもが、社会的に自立できるように取り組む治療と教育のことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP参考ページ: 療育とは何か|LITALICOジュニアHP小児期崩壊性障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援をあわせて行うと効果的であるともいわれています。小児期崩壊性障害の場合、障害者手帳は取得できるの?小児期崩壊性障害を含む広汎性発達障害と診断された場合、2種類の障害者手帳を取得できる可能性があります。・療育手帳小児期崩壊性障害と診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害があると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳小児期崩壊性障害は発達障害者支援法第二条において発達障害に指定されていて、さらに発達障害は精神障害に含まれます。そのため、小児期崩壊性障害により長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらもあると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 小児期崩壊性障害は、発症前までは子どもが問題なく元気に成長する障害であるため、発症時にはご家族の驚きも大きいかもしれません。しかし、小児期崩壊性障害は他の広汎性発達障害と同じく、早期発見と早期療育、通院治療等を通した支援が可能です。お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口や医療機関では、お子さんのことだけでなく、ご家族の方のためのアドバイスも専門家からもらうことができますので、お子さんの発達の仕方に何か違和感を覚えた段階で連絡をとることをおすすめいたします。悩みや疑問を解消し、お子さんの特性を理解することで、適切な支援方法を探していきましょう。
2016年12月01日発達障害とは出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。2005年4月に制定された発達障害者支援法では発達障害は以下のように定義されました。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。これらの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害の原因は?出典 : 発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。ですが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかははっきりとは解明されてはいません。研究が進み、発達障害の一部について証明された事実であったり、関連が指摘された要因については少しずつわかってきました。ですが発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる原因はないのではないかとも言われています。一方で、かつて言われていた「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は現在では医学的に否定されています。以下に、現在考えられている発達障害の原因とそのメカニズムをご紹介します。発達障害の原因はまだはっきりとは解明されていないものの、発達障害を引き起こす脳機能障害には遺伝的要因が関連している可能性が指摘されています。例えば、広汎性発達障害に関しては、1970年代から盛んに双生児研究が行われ、一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果が多くあります。この数値は二卵性双生児の場合より高いと言われています。一卵性双生児は遺伝子情報が同じです。その一卵性双生児で一人が広汎性発達障害だと二人とも広汎性発達障害になる可能性が高いという結果が出たことは、何らかの遺伝子要因が広汎性発達障害と関連があることを示唆しています。また現在では、遺伝子研究が進み、染色体の一部分の重複により生じる発達障害があることや、それに関連する遺伝子がいくつか発見されています。ですが、一卵性双生児間での一致率が100パーセントではないことなどから、発達障害が単純な遺伝的要因だけで発現するわけではなく、現在では関連する遺伝子が複数あることもわかってきました。また、「親の育て方」という説や、MMRワクチンの接種が原因とする説など、研究の結果否定された環境要因もありますが、子どもの心身は、胎児期から発達期にとる睡眠や栄養、周りの人との関わりといった様々な要因によって支えられ、発達していきます。そのため、環境要因が全く関わりがないと考えることはできません。これらのことから、現在、発達障害にはなんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑かつ相互に影響し合って発現するという考えが主流になっています。つまりある特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、また遺伝的な要因と言っても親から子へ単純に遺伝するという意味ではないのです。さらに発達障害は、1つの原因による1つの道筋ではなく一人ひとり違った道筋を経て発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しいのではないかとも言われています。発達障害はどうやって発症するの?出典 : 発達障害が発症し、それが明らかになるまでには以下のようなステップがあります。1. 発達障害のもととなる脳機能障害が生じる発達障害はなんらかの遺伝的要因をもつ、つまり発達障害になりやすい体質が先天的にある人が、胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な要因の影響を受け、脳機能障害を生じることで起こると言えます。2. 脳機能障害により認知や感覚の偏りを引き起こされるそうした脳機能の障害や偏りによって、認知の方法や感じ方に違いが生まれ、それが様々な行動特性を引き起こすのではないかと言われています。例えば、情動を認知したりコントロールをする前頭葉や扁桃体などの機能に障害があり、そのために気持ちのコントロールやコミュニケーションをとるのが難しいのではないかという説もあります。また、発達障害のある人は記憶の仕方に特性があるといわれています。そのために非常に記憶力が高かったり、ワーキングメモリと呼ばれる情報の処理や記憶の仕組みにトラブルがあったりする人がいます。刺激を認識する機能になんらかのアンバランスが生じる人もいます。たとえば刺激を感じやすい感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍磨がある場合もあります。3. 発達の遅れなどの症状が現れ、問題や困りごとが明らかになる発達障害の症状の発現時期は人によって異なります。最近では早期にそのリスクを発見するため、特に自閉症スペクトラムや広汎性発達障害などではアイ・トラッキング・システムなどを使い、初期症状を見つけるための研究も進められていますが、一般的には症状が顕著に発現するのは幼児期頃からと言われています。乳児期には周りの子どもとコミュニケーションをとったりすることもあまりなく、また個人差も大きい時期なので、はっきりとはわからないことも多いのですが、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、行動面や対人関係・社会性の側面でなんらかの症状が目立ち始めると言われています。きっかけとしては以下のような場合に、発達障害がある可能性に気づき、なんらかの支援を受けることが多いようです。・1歳半や3歳健診などの乳幼児健康診査や小児科などで発達の遅れを指摘される・園や学校に進んで集団生活がはじまり、コミュニケーションなどで困りごとが起きる・子育ての悩みを相談するまた、学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは読み書きを覚え始める就学前の年齢になり、学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。障害が軽度の場合や特に困りごとが起きなかった場合など、見過ごされてそのまま成長することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して発達障害に気づく人もいます。発達障害の理解とl対応広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は?出典 : 自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害に含まれるグループについては、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊p.95~96より引用)上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。また、広汎性発達障害や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の症状を引き起こすと考えられる脳機能の偏りとしては以下のような説があります。1. 脳領域間の機能的連結低下脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることから自閉症スペクトラム障害になるのではないかという説があります。2. 社会的な活動をするための脳の部位の機能異常人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっています3. 小脳の異常小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。4. 脳内物質の異常自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、ADHDには複数の関連遺伝子が素因としてあり、それらが様々な道筋をたどって、このような特有の脳機能の偏りを引き起こし、ADHDの症状につながるのではないかと言われています。現在有力だとされている素因は脳の前頭野部分の機能異常です。近年の研究から、ADHDの人は行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないかと考えられています。前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりします。ADHDの人は、この部分の働きに何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。前頭葉が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合ニューロンによってドーパミンがうまく運べず前頭葉の働きが弱くなってしまい、それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が現れると考えられています。ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となると考えられています。出典 : 学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。脳は無意識に感覚器官から入ってきた情報を処理し、整理して記憶します。そして必要に応じてその情報を取り出します。文字を読んだり書いたり、計算をしたりといった学習にはこれらの働きが必要です。中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分であり、これらの情報処理を担っています。そのため、この機能のトラブルが学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。発達障害を検査する方法はあるの?出典 : 現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。今後も生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの困りごとや症状をきっかけに専門機関を相談・受診し、医師によって発達障害だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いのです。発達障害は治療できるの?出典 : 発達障害を完全に治療する薬や手術などの医学的な方法は現在ありません。しかし、障害の特徴を緩和させたり、本人の困りごとを改善する方法はいくつかあります。例えば環境調整を含めた心理・社会的アプローチや症状を和らげるための薬の使用などです。早期からの療育は症状改善に大きな効果があるとされています。各都道府県に設置された「保健福祉センター」などで相談すると、適切な医療機関や児童発達支援なども紹介してもらえます。療育的支援では、苦手な部分をサポートしたり得意なことを伸ばすような訓練を受けることができます。適切なコミュニケーションの取り方や自己コントロールを学び、苦手な部分に対する対処法を身に付け自信をつけることで、困りごとを減らし二次障害の予防に繋がります。二次障害とは、適切な治療やサポートを受けられない場合に、うつや不安障害、不登校やひきこもりなど障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことを指します。ペアレントトレーニングと言って、発達障害の子どもを持つ親のためのトレーニングを実施している機関もあります。親が適切に接することで、子どもが日々感じている困難を軽減し、症状の改善に繋げます。また、特別支援教育や通常の教育のなかでも環境調整や合理的配慮を行いながら、一人ひとりに合わせた支援が行われます。発達障害の人の中には、こだわりや集中力を活かして高い専門性を身につけたり、優れた才能を持っている人もいます。才能・いいところを伸ばせるような教育が求められます。多動性や衝動性が強い子どもの場合、服薬を取り入れることもあります。脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあり、症状がやわらぎます。症状が緩和することで、衝動的な行動で周りの友達と関係が築けず、孤立してしまう悩みなどが要因ともなる二次障害も予防できます。薬の服用で困難さが軽減されることで、本来の能力を発揮できるようになり、自分に自信が持てるようになるケースもあります。薬を服用している間は落ち着いて話を聞くことができるので、その間にスキルトレーニングを行い、本人の能力を高められるように親は努めましょう。しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用が働いてしまう場合もあります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。また薬を利用したとしても、行動面や学習面での親や教育者からのサポートは引き続き必要です。まとめ出典 : 発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果が少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。ただ、ひとつ確かなことは、発達障害は、親や本人のせいで起きるものではないということです。目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとがなくなるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。地域情報|発達ナビ日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考文献:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』日本評論社/刊参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 』医学書院/刊参考書籍:宮本 信也 , 竹田 一則 /編著『障害理解のための医学・生理学』明石書店/刊参考書籍:服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊せせらぎメンタルクリニック 「アスペルガー症候群の原因。アスペルガー症候群はなぜ生じるのか」松浦こどもメンタルクリニック 「ADHD」参考書籍:中山和彦・小野和哉/著『図解よくわかる大人の発達障害』ナツメ社,2011年/刊
2016年11月25日就職して3ヶ月後、自分が「発達障害かもしれない」と初めて知る出典 : 私は小学生のときに学習障害の診断を受けていました。しかし母は障害のことを私に伝えていませんでした。勉強するうえでの困難や友達関係は次第に改善されていったので、母をはじめとする周りの大人たちは、私の障害は「完治した」と思っていたようです。しかし私は会社で働き始めてから「自分が発達障害かもしれない」と気付くことになりました。学生時代、様々な困難はあったものの無事大学へ進学した私は、システム開発業の技術者を目指して勉強し、卒業後は望み通りシステムエンジニアとして就職しました。しかし、働き始めて2~3ヶ月後、早くも壁にぶつかりました。それまでの研修では特に問題無かったのですが、実際にシステムの開発作業を行い始めると、ほかの社員と関わることが多くなったためか、トラブルが多発しました。トラブルの内容は、・作業指示を他の人よりも詳細に話さないと理解できない・私の話の要点が分かりづらい・話の行間や雰囲気を察せず、上司の意図を誤解してしまうといった、コミュニケーションに関することでした。自分でもどうしたらいいのか分からず困っていると、上司から「発達障害ではないか?」と指摘されました。「発達障害」という障害の存在を知ったのは、この時が初めてでした。さらに母からも、私が過去に学習障害の診断を受けた経緯を聞き、自分のことについてもっと知る必要があると考えた私は、精神科医の元で発達障害の検査を受けることにしました。受け入れられなかった診断結果。「健常者」として生きることを選ぶ出典 : 発達障害の検査を受けることを、私はあまり深刻に考えていませんでした。なぜなら、母から「障害は完治している」と聞かされていたため、ちょっとした対処法で解決できると思っていたからです。しかし検査の結果を見て主治医が行った提案は、「今の仕事を辞めて障害者雇用で再就職する」というもの。私は大いに困惑しました。私は、「確かに仕事は上手く行ってないけれど、辞めるほどのことではないだろう」「上手く行っていないことを障害のせいにするのは、自分の苦手なことから逃げることだ」と考え、主治医の提案を受け入れられませんでした。また、家族に相談すると、「私に障害があるわけがない」と全員の見解が一致しました。こうした周囲の声もあり、私は主治医の診断を受け入れず「健常者」として生きることを選びました。そして、働いているうちに「自分が発達障害である」ことはすっかり忘れたのでした。解雇、そして再就職活動出典 : 自分が発達障害であることを忘れて仕事に励んだ日々の中では、成果を出せたときもありました。しかし、それよりも多くの失敗が続きました。会社は努力している私を見て、様子をみてくれていましたが、4年近く経っても問題である「仕事上のコミュニケーション」はうまくできないままでした。そしてついに、私の解雇が決定しました。解雇を宣告された時は、とても悲しかったのを覚えています。しかし、私はこれ以上頑張って挽回出来る見込みを自分でも感じられませんでした。また、解雇に無理やり抵抗して、会社にしがみ付いているだけの人生も嫌だと思い、解雇を受け入れました。再就職に向けた活動は難航しました。ハローワークで求人票などをチェックしましたが、「コミュニケーションに関する能力不足」が理由で解雇された私を雇ってくれる所なんてあるのかと途方に暮れ、全くと言っていいほど再就職活動は進みませんでした。私は次第に家にこもるようになりました。「このままだと精神を病む事になるだろうな」とぼんやり考えていました。人生に、絶望していました。迫りくる自分の無気力に対する不安。一か八か、わずかな希望に賭けるUpload By 穹峰蒼志引きこもり気味の日々を過ごしていたあるとき、私は1つの新聞記事を目にしました。それは、不登校で引きこもりだった少女が地球一周の船旅に出て前向きになるという内容でした。この記事を読んだ私は、家族の声が届かず、インターネットもつながらないような海の上で自分の人生を考えたいという思いと、私も長い旅を経て何かが変わるかもしれないという希望を持ちました。その船旅に出ることは私にとってやはり大博打でした。一応地球一周の船旅を企画しているツアーの中では格安ですが、それでも130万円以上の費用がかかります。貯金で払うことは可能でしたが、当時無職で再就職のあても全く無い私は、この旅で何かを得られなければただ散財するだけになってしまいます。しかし、「このままだと確実に気力を失って、死が待っている」と感じた私は一か八か賭けてみることにしたのです。世界中の人々との出会い、広がりゆく視野Upload By 穹峰蒼志Upload By 穹峰蒼志私はわずかな希望に賭けて、地球一周の船旅に出かけました。さて、地球一周の船旅と聞くと、リッチで高級、ゴージャスといったイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?残念ながら私が参加した船旅は、それとはかなり程遠いものです。しかし、この船旅は私も含めてほとんどの方が退屈していませんでした。というのも、乗船者自身が船内でイベントを企画する「手作り感満載」な船旅だったからです。ゴージャスでこそないものの、娯楽を自分達で作り出す過程はとても楽しいものでした。私はこの旅で、幅広い世代と交流し、世界各国を巡り様々な人々と出逢いました。「失業中」という事実に、家族や友人達との間では私は気まずさや負い目を感じていましたが、船には似たような境遇の人もいます。社会とうまく関われない人間は私だけではないのだと知り、どこか安心できました。旅を通して、国や人種や宗教の違いを目の当たりにして、私は”人間には多様な生き方がある”ということを肌で感じました。私の視野は、確かに広がり始めていたのです。同性愛者の友達のカミングアウトを聞いて、人生が変わった出典 : 船旅の中で、ついに私の人生を180度変える出来事が起こりました。ある日、同性愛者や性同一性障害の方々が自分達の事をカミングアウトする船内イベントがありました。カミングアウトをした人たちの中には、私がよくお世話になっている方もいて、私は衝撃を受けたのです。「どうして同性愛者である事を告白したのですか?隠しておけば良さそうなのに、告白するのは怖くはなかったのですか?」と私はその人に聞いてみました。それに対する答えは、「同性愛者である自分を知って離れていく人がいても仕方がない」というものでした。その人は、同性愛も含めてありのままの自分を受け入れていたのです。この出来事がきっかけで、「私は私の全てを受け入れていただろうか?」と考え始めました。そして、過去に受けた発達障害の診断についてもう一度考え直しました。今までの私は、都合の良い自分しか見ようとせず、不都合な自分のことを無視していたと気付いたのです。発達障害の診断を受けた当初、診断を認めれば出来ない事や失敗した事を障害と紐付けて、逃げることになると思っていました。しかし、本当は自分の障害と向き合わないことこそが逃げることだったのです。こうしてようやく私は、自分の発達障害に目を逸らさずに向き合う決意をしたのです。障害があることを理由に、将来の可能性を狭めないで出典 : 以前、発達障害のお子様を持つ保護者の方から、以下の相談を受けたことがあります。「子どもが将来やりたいことを、親としては応援してあげたいと思いますが、やはり難しいのでしょうか?」私は障害の有無が問題では無いと思います。障害の無い人でも、やりたいことを実現できていない人もいます。重要なのはやりたいという気持ちと、何ができるかの把握だと思います。私は以前システムエンジニアになりたくて、休日も惜しんで勉強をしました。でも仕事で十分な成果を出すことはできませんでした。もし得意・不得意分野を把握し、それらが障害の特性からくるものだと分かっていれば、不得意なことへ必要以上に時間を割かず、成長しやすい得意分野を伸ばすなど、何かしらの対応ができたかもしれません。どうか障害がある事だけを理由に、将来の可能性を狭めないで下さい。できない理由や失敗した原因を安易に障害のせいにしていると、いずれ何もできなくなってしまうと思います。でも、自分の障害上の特性を理解すれば、活路を見出せるかもしれません。障害者雇用で働くことを決意した私ですが、その道のりにも様々な困難が伴いました。しかし、発達障害を受け入れた私にとってその困難は乗り越えられないものではなく、無事に再就職してから3年半が経ちました。次回は、発達障害を受け入れながら働くとはどういうことなのかを振り返ってみたいと思います。
2016年11月24日発達障害のある5歳の娘。だんだん周りの子との違いが目立ってきた広汎性発達障害がある5歳の娘は、言葉の発達に少し遅れがあります。3歳ぐらいまでは周りのお友達との差も少なく、少し接したぐらいでは娘に障害があることはわからなかったと思います。でも4歳を過ぎると、初対面の人でも娘のしゃべり方や雰囲気に違和感を感じたり、「あれ…?」と思われることが増えてきました。Upload By SAKURA誰に、どこまで、どんなふうに話せばいいのだろう?Upload By SAKURA相手が娘に対して「あれ…?」と思った時、私も外から見ていてそれに気づきます。その相手が初対面の人や、それほど親しくない人の場合…娘の障害について話すべきなのかとても迷います。いきなり「娘には障害がある」と話したら、どうリアクションしていいか困ってしまうのではないか。そして困ったリアクションをされたら、私もなんと言っていいかわからなくなってしまう。実際娘の障害のことを話してみて、「あ、言わなきゃよかった」と思うことがよくあります。Upload By SAKURA試行錯誤の結果、私が実践しているやり方は…Upload By SAKURAいろいろ試した結果、今は…「あ、うちの子、言葉に遅れがあってね~聞き取り辛かったらごめんね!」とさらっと明るく話し、そしてすぐに話を変え、相手にリアクションする隙を与えないようにしています。それ以上聞きたくない人は、そのまま話を流してくれますし、「え?どういうこと?」と思った人は、聞き返してくれます。そういう人にだけ、障害のことや詳しい話をするようにしています。娘のことを、いろんな人にわかってほしいから私は娘の障害のことは、恥ずかしいと思っていませんし、障害について話すことは苦ではないです。むしろ娘のことを理解してもらえるためなら、いくらでも詳しく話したいと思っています。ただ、それを聞いた相手を困らせたくないという想いがあります。今は幼稚園の3年間でできたお友達や、ママ友にはうまく伝わり、娘のことを理解してもらっています。しかし来年は娘も小学生…。新しい出会いもあり、娘の障害について話す機会がどんどん増えていくでしょう。娘のことを理解してもらえるよう、私自身努めていきたいと思います。Upload By SAKURA
2016年11月23日聴覚障害とは?出典 : 聴覚障害とは、音の情報を脳に送るための部位のいずれかに障害があるために、音が全く聞こえない、あるいは聞こえにくい状態のことです。全く音が聞こえない状態を全聾(ぜんろう)、音が聞こえにくい状態を難聴といいます。また、聴覚障害には、後天性のものと生まれつきの先天性のものがあります。先天的に難聴のある子どもは、毎年1000人に1人の割合で生まれています。聞こえの障害は、生まれつきの障害の中で、もっともよく見られるもののひとつです。そのために新生児の段階で聴覚に問題がないかどうか調べるためのスクリーニング検査を受けることがすすめられています。子どもの難聴が中軽度の場合には、重度の場合に比べてその発見が遅れる傾向にあります。というのも、中軽度の場合には、自分が難聴であると自覚することが難しく、日常生活の中で不自由が生じても、保護者に伝えることが稀であるためです。耳から情報を適切に取り入れることができない聴覚障害の子どもは、コミュニケーションや言語発達の面に遅れが生じる傾向にあります。そのために、聴覚に問題が見つかったときには、できるだけ早く治療を行うことが大切です。聴覚障害のある子どもに対しては、聞こえを改善する訓練や治療、視覚的な手段を使ったコミュニケーションの方法を取り入れることにより言葉の獲得を目指します。耳鼻科疾患分野 先天性難聴|難病情報センター聴覚障害の原因出典 : 父親と母親の遺伝子の組み合わせや、遺伝子の突然変異などにより引き起こされる難聴です。遺伝的な要因の場合には、外耳やその他の器官の奇形など難聴以外の障害が同時に出現することがあります。遺伝以外の要因には、妊娠中にかかった以下の疾患があげられます。●風疹●サイトメガロウイルス感染●トキソプラズマ●ヘルペス感染●梅毒そのほか、●早産(妊娠37週未満での出産)●出生後の頭部外傷や、幼小児期の感染症(髄膜炎、麻疹、水痘)●ある種類の薬(ストレプトマイシンという抗生物質など)が難聴の原因となることもあります。また、耳の感染(中耳炎)によっても一時的に難聴となることがあります。耳の感染を繰り返していて、きちんと治療されていないような場合、難聴となってしまう可能性があるので注意して下さい。ここで紹介したものは、聴覚障害全体の原因の約6割であり、その他の原因についてはまだ調査が行われている途中です。幼少児難聴とは?|独立行政法人国立病院機構 東京医療センター聴覚障害のタイプ出典 : 聴覚障害は、聞こえを阻害する部位によってタイプが異なり、伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴という3つの種類があります。タイプごとに治りやすさや治療、改善の方法も変わってきます。外耳から中耳の間で、異物などが音の通り道をさえぎることで起こるのが伝音性難聴です。具体的な原因は、以下のような場合です。・腫瘍や耳垢などにより外耳道が塞がっている・鼓膜に傷がついている・中耳に水が溜まっている・中耳が菌などに感染し、膿(うみ)が溜まっているこれらが原因の難聴は一時的なものであり、ほとんどの場合は薬を飲んだり、溜まった水や膿(うみ)を抜く治療を行うと、聞こえは改善されます。感音性難聴とは、耳の奥の内耳と呼ばれる部位に障害がある状態を指します。遺伝的な要因や、妊娠中の感染が原因のときには、このタイプの難聴が起こることが多いです。音を感知する部分、その音を信号に変換する部分に障害が起こっているために、治療や手術によって聞こえを改善することができないことがあります。そのような場合には、補聴器や人工内耳の装着により、聞こえを補うことが必要です。上記のふたつの難聴が同時に引き起こされる場合が混合性難聴です。聴覚障害はどうやってわかるの?診断は?出典 : 聴覚の障害が重い場合には、生後間もなく聞こえの問題が発見されますが、中軽度の場合にはその発見が遅れる傾向にあります。子どもの聴覚障害の場合には、コミュニケーションや言葉の発達の面に遅れが生じることがあり、それらの遅れが聴覚障害を見つけるきっかけとなることが多いようです。聴覚障害のサインとしては以下のようなものがあります。・乳児のとき、一時期は出ていた「あー」「あうあう」などの声が出なくなった・大きな音がしたときに反応を示さない・生後6ヶ月を過ぎても、相手の声の真似をしようとしない・3歳までに単語をしゃべらない・言葉の代わりにジェスチャーを使うより年長のお子さんでは、難聴のサインとして以下のようなサインがあります。・周りの子どもより言葉の数が少ない・理解しにくい言葉でしゃべったり、非常に大きい(またはか細い)声を出したりする・何度も聞き返す・授業中ぼんやりしていたり、読み書きや計算が苦手だったりするこれらの項目に当てはまる場合にも、一概に聴覚障害であると判断することはできませんが、子どもの様子を見て、心当たりのある場合には一度聴覚検査を受けてみるとよいでしょう。聴覚検査は、病院の耳鼻咽頭科で受けることができます。聴覚検査で調べることができるのは主に2つです。聞こえの程度と、どこの部位に異常があるかどうかについてです。聴覚を調べる際には、月齢、年齢に応じた検査が行われます。6ヶ月未満の子どもによく行われているのは、脳波を測定する検査です。この検査では、小さなイヤフォンで音を聞かせます。子どもの頭の上に、コンピューターに接続されている電極をつけることにより、音に反応して脳波に動きがあるかどうか確かめます。年齢が上がってきたときには、スピーカーから音を流して何らかの反応があるか調べる検査や、音が聞こえたらおはじきを取ったり、ボタンを押したりする検査を行います。耳の聞こえのチェックは、1歳半、3歳の乳幼児健診のときに行われますが、聴覚障害のある場合には、治療を施す時期が早いほど、聴力が回復しやすく、言葉の学習をスムーズに行うことができます。ですので、定期検診が来るのを待つのではなく、なるべく早い段階で検査を受けるようにしましょう。聴覚障害の等級出典 : 聴覚障害の等級分類は、聴力のレベルと、言葉がどれくらいはっきりと聞こえるかを示す語音明瞭度により決まります。聴力のレベルは音の大きさを示すデシベル(db)という単位により表されます。デシベルの数値の示す音の大きさの目安は以下をご覧ください。どの程度大きい音からなら聴き取ることができるかという測り方をするため、聴力の場合は、デシベルの値が大きくなればなるほど、耳が聞こえにくいということになります。正常聴力の場合は、0デシベル近辺であり、難聴の程度が強くなるほどこの値が大きくなります。Upload By 発達障害のキホン厚生労働省により定められている聴覚障害の等級の基準は以下の通りです。◇2級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上、全聾(ぜんろう)の場合◇3級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上の場合◇4級:両耳の聴力レベルが80デシベル以上の場合、または両耳による通常の話し声の語音明瞭度が50パーセント以下の場合◇6級:両耳の聴力レベルが70デシベル以上の場合、または片方の聴力レベルが90デシベル以上、もう片方の聴力レベルが50デシベル以上の場合上記のいずれかに該当する場合には、身体障害者手帳の交付を受けることができます。身体障害者障害程度等級表|厚生労働省身体障害者手帳とは、難聴を含め、障害のある人が取得することができる手帳です。平成23年の時点で聴覚に障害があり、身体障害者手帳を所持している人数は14万2000人です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。交付を受けるためには、指定された医師による診断書と意見書が必要となります。用紙は市区町村の窓口にある用紙に記入をして申請を行います。申請から約1ヶ月程度で身体障害者手帳が発行されます。手帳の申請については、以下のページに詳しく手順が載っているので参考にしてください。身体障害者手帳の所持者数|内閣府聴覚障害の治療・改善方法先天性の聴覚障害には、治療により治すことができるものと、治療によっては治すことができないものがあります。治すことができない聴覚障害の場合には、聴力を補うために何らかの改善方法がとられます。子どもが聴覚障害の場合には、早い段階で治療を開始するのが理想的といわれています。聴覚障害の改善には、難聴の種類や聞こえの程度により、その内容が変わってきます。ここでは、聞こえの改善のための方法についてお知らせします。出典 : 補聴器は、普通の大きさでの会話が聞こえにくくなったときに、はっきりと聞くための医療機器です。補聴器が有効となるのは、音を伝える部分の障害である伝音性難聴に対してのみとなります。音を脳に伝える機能の障害である伝音性の難聴には別の改善方法がとられます。補聴器にはたくさんの種類があり、また価格によってついている機能もさまざまです。最適な補聴器を選ぶために、補聴器の相談医から販売店の紹介を受けるようにしましょう。補聴器の購入の際には、保険は適応されません。しかし、身体障害者手帳をお持ちの場合には、補装具交付申請書を市区町村の福祉関係の窓口に提出することで1割負担で購入することが可能となります。人工内耳は、機能しなくなった内耳の部分に電極を挿しこみ、音を電気信号に変えて神経に送る方法です。人工内耳をつける場合には、以下の条件を満たした上で、手術が必要となります。・内耳が原因の感音声難聴である・年齢が1歳以上である・体重が8kg以上である・6ヶ月以上の補聴器装用によっても十分に聞くことができない人工内耳の手術には、健康保険が適用されるほか、自立支援医療(更生医療)、高額医療費支給などの各種医療費の助成を受けることにより、負担額の軽減ができます。詳しくは、お住まいの市区町村のHPをご確認ください。補装具費支給制度の概要|厚生労働省自立支援医療(更生医療)の概要|厚生労働省高額療養費制度|全国健康保険協会小児人工内耳適応基準|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会難聴の原因部位によっては、手術が行われることがあります。手術が必要なものの例としては、音の聞こえを阻害している異物の除去や、新たな鼓膜の形成、中耳の骨を人工のものに置き換える必要がある場合などがあります。耳の手術は、耳の後ろを開いて行うものと、耳の穴から原因となっている部位に治療を施す方法があります。耳の手術について | 耳鼻咽喉科専門 医療法人財団 神尾記念病院内耳の循環や血行を良くするために、血管拡張薬、向神経ビタミン製剤(ビタミンB12)の服薬が処方されることがあります。薬物による治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、服薬の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守りながら行いましょう。難聴、耳鳴り|慶應義塾大学病院 KOMPAS聴覚障害のある子どもの学び場出典 : 聴覚障害があるときには、どのような場所で学ぶことができるのでしょうか。子どもの状況に応じて、必要な環境を柔軟に選択していくことが大切です。この章では、それぞれの学び場の概要や特徴をご説明します。聞こえやコミュニケーションの程度と照らし合わせ比較しながら、お子さんに合う学びの場はどこか検討してみましょう。Upload By 発達障害のキホン強度の難聴のある子どもや、まったく耳の聞こえない聾(ろう)の子どもが入学することができます。入学の際には、学校教育基本法の就学基準を満たしていることが条件です。就学できるかどうかは、保護者の意向を尊重しながら、市町村の教育委員会が総合的な視点から判断して、本人の聴力レベルと、コミュニケーション能力、学力から総合的に判断されます。学校教育法施行令第22条の3による、特別支援学校の就学基準は以下の通りです。・両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもの・補聴器等 の使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度のもの特別支援学校の授業には、国語や算数などの一般的な学習のほか、自立活動が時間割に取り入れられます。例えば、補聴器の取り扱いや音の聞き取り、語句・文・文章の意味理解やコミュニケーションの改善についてが自立活動の内容になります。1クラス当たりの人数は平均で3人であり、少人数での教育が行われています。特別支援学校への就学(入学・転校等)をご検討されているお子さん、保護者に対して、見学や教育相談に対応している学校もあります。◇聾(ろう)学校また、特別支援学校という区分の中に「聾(ろう)学校」という学校があります。ですが、厳密には、学校教育法が2007年に改正された影響を受けて、聾(ろう)学校という個別の区分はなくなりました。現在、校名の変更や休校・統廃合が進められたりすることにより、全国的に聾(ろう)学校の数は年々少なくなってきています。聾(ろう)学校という名前がついていても、その受け入れは聴覚障害のある子どものみではない学校もあります。学校名は「聾(ろう)学校」 のままですが、他の障害種別の学校と統合されたり、知的障害教育部門が設置されたりするなど、様々な形態が見られるようになっています。詳しくは直接学校へお問い合わせください。Upload By 発達障害のキホン聴覚障害が比較的軽度の場合には、難聴の特別支援学級に通うことができます。就学ができる条件は、主として聞くこと・話すことにかかわる特別な指導をすれば、通常の教育課程や指導方法によって学習が進められるような場合です。難聴特別支援学級では、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われます。それに加えて、必要に応じて、音の聞き取りや補聴器の扱いなどに関する自立活動が行われます。聴覚の活用のためにオージオメータや集団補聴器、発音・発語指導のための音声直視装置などの機器が用意されていることがあります。聴覚障害の程度が軽度な場合や、その学校・学級で適切な配慮・支援を実施できる場合には、通常の学級で指導することが適当なことがあります。難聴のある子どもが通常学級で学習する場合には、教室内の音の環境や、座席の配置などに配慮をしてもらう必要があります。Upload By 発達障害のキホン「通級による指導」は、学校の通常学級に在籍している軽度の障害のある子どもに対して、決められた時間のみ、在籍する学級の授業の代わりに受けられる特別な指導のことです。通称「きこえの教室」といわれています。平均的には、週1~2回ほどで、1回あたり90分ほどの個別指導を行います。必要に応じて、グループでの指導も取り入れられます。通級指導の先生は、子どもがよりよく通常学級に適応できるよう、連絡帳や連絡会を用いて、学級担任の先生方と密に連絡を取りあいます。聴覚に障害がある人のコミュニケーション手段出典 : 聴覚に障害のある人のコミュニケーション方法には、手話、指文字、読話、補聴器、筆談などの方法があります。コミュニケーション手段をいろいろな場面や相手に応じて使い分けたり、併用したりすることによってコミュニケーションを行っています。手や指の形、動きによって、お互いの意思を伝え合う方法です。手話は、話し言葉とは異なる文法や語彙をもつ、ひとつの言語として捉えられています。手話にもさまざまなバリエーションがあり、障害の生じた時期や手話を覚えた時期によって、使用される手話も異なります。50音をすべて指の動きで表現する方法です。指文字だけを用いる場合もありますが、手話と一緒に補助的に使われることがほとんどです。母音を口の形で表しながら、子音を手の形で表すコミュニケーションの方法です。キュードスピーチは、母音を口の形で表すために、発音の勉強にも使われます。発音を1文字ずつ丁寧に表すときに使用します。習得すると、会話と同じかそれ以上のスピードでコミュニケーションをとることができるようになります。紙やボードへの読み書きによって、意思を伝え合う方法です。特別な技術を習得することなく取り入れられるコミュニケーションの手段です。ただ、文字による情報だけでは細かいニュアンスや感情が伝わらない場合があります。口話は、話し手の口の動きや表情などを見て相手が発する言葉を捉え、話し言葉を用いて意思を伝える方法のことをいいます。口話は、耳の聞こえる人とのコミュニケーションにおいては便利なものではありますが、伝わりにくい場合もあります。例えば、「たばこ」「たまご」「なまこ」など口の動きが似ていることばや、「協力」と「強力」など同じ発音の言葉などです。また、暗い場所や、相手との距離が離れている場合には、相手の口の動きがわかりくいために、ジェスチャーや筆談と併用されて使われます。聴覚障害のある子どもが周りにいる方へ出典 : 聴覚障害のある子どもは、耳から情報を取り入れることができない、もしくは取り入れにくいために、生活の中でさまざまな困りごとに出くわします。聴覚障害のある子どもに対して、どのような配慮をすればより過ごしやすくなるのかご紹介します。補聴器や人工内耳をつけていても、騒音に囲まれた場所では、相手の声が聞こえないこともあります。ですので、補聴器や人工内耳をつけていたとしても、聞こえの困難を抱えていることを理解して対応する必要があります。例えば、静かな部屋では言葉のやりとりができるのに、にぎやかな場所に行くと、相手の声が聞き取れず、急に無口になるということが生じます。音声での会話に加えて、視覚的に情報を示すことで、周囲と円滑にコミュニケーションをとることができます。そのほかには以下のような配慮が考えられます。・向かい合った状態でアイコンタクトをとり、相手が自分の顔を見ているか確認してから話し始める・文節で区切りながら、ひとつひとつの単語をはっきりと話す・複数の人数で話すときには、手をあげるなどして話し手が誰かわかりやすくする・明るい場所で話す耳の聞こえない子どものコミュニケーションの方法は、手話に限らず、さまざまです。どの手段が確実にコミュニケーションできるのか把握しておくことが重要で す。確実にコミュニケーションできているかどうかを確認するには、大人が話したことをもう一度言わせたり、質問に答えさせたりします。そのときには、指文字を使ったり、文字で書かせたりします。そのほか、子どもの実態に合わせて、具体物や絵カードなどの視覚的な情報を使い確認をしてみましょう。子どもがどのような方法を用いてコミュニケーションをとるのか知っておくことで、円滑なやりとりを行うことができます。聴覚に障害があると、音の情報がはっきりと聞こえないために、周りの状況がつかめず、場にそぐわないことをしたりすることがあります。周りが騒がしかったり、話し手の声が小さい場合には、その場の状況をもう一度伝えてあげるなどして、大人が援助してあげるとよいでしょう。その他には、クラクションや、近づいてくる車の音が聞こえないことがあります。一緒に外出する際には、あらかじめ危険な場所などを伝えておくとともに、大人が道路側を歩くなどの配慮をしてあげましょう。まとめ出典 : ここでは、子供の聴覚障害の原因、種類や障害の等級の判定、改善方法や、周りの人が気をつけておきたいことについてご紹介しました。聴覚に障害が見つかった場合には、できるだけ早くに治療、改善を行うことが大切です。生まれてくる子どものうち、1000人に1人は聞こえに障害があるというデータが示すように、子どもの聴覚障害は決して珍しいことではありません。現在は、子どもが新生児期のときにスクリーニング検査の受診が進められており、早期発見が進んできてはいます。ですが、子どもの聞こえに何か不安があるときには一度検査に行くことをおすすめします。聞こえの障害の程度が中軽度の場合には、周囲から気づかれにくいことが多く、耳の聞こえがよくない状態で長い間過ごしてきています。必要な情報を聞き取ることができないために、言葉やコミュニケーションの面に遅れが生じる傾向にあります。聴覚障害のある子どもは、耳の聞こえる子どもに比べると、言葉を覚えるのに長い時間がかかります。言葉を覚えさせようと急かすのではなく、子どもの成長の可能性を信じて待つことが、子どもの育ちを支えます。子どもに対して積極的に関わっていこうとする大人の姿勢が、子どものコミュニケーションをより豊かなものにしていくでしょう。
2016年11月21日PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?出典 : とはPervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specifiedの略で特定不能の広汎性発達障害のことです。自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群などの、他の広汎性発達障害の特徴がみられるが、それらの基準を満たさない場合に診断される障害です。この障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類されたものです。しかし、2013年、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。そのため、現在はPDD-NOSの診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、医療機関などでPDD-NOSの名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されているPDD-NOSについてご説明いたします。Upload By 発達障害のキホンこの障害は、発達障害の1カテゴリーである広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(上図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOSを指します。この広汎性発達障害という発達障害のグループの特徴として①対人関係・社会性の障害②コミュニケーションの障害③特徴的なこだわりや興味の3つが挙げられます。『DSM-Ⅳ-TR』によるPDD-NOSの定義は以下の通りです。対人的相互反応の発達に重症で広汎な障害があり、言語的または非言語的なコミュニケーション能力の障害や常同的な行動・興味・活動の存在を伴っているが、特定の広汎性発達障害、統合失調症、失調型パーソナリティ障害、または回避性パーソナリティ障害の基準を満たさない場合に用いられるべきである。例えば、このカテゴリーには“非定型自閉症”――発症年齢が遅いこと、非定型の症状、または閾値に達しない症状、またはこのすべてがあるために自閉性紹介の基準を満たさないような病像――が入れられる。引用:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2004年医学書院/刊という診断区分を定めた『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、PDD-NOSに相当する症状がある場合は、『DSM-Ⅳ-TR』以外の診断基準で診断をされることが多くなってきています。ここでは、PDD-NOSに相当する症状が、別の診断基準ではどのような名称なのか紹介いたします。・『DSM-5』におけるPDD-NOS『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン・『ICD-10』におけるPDD-NOS世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』におけるPDD-NOSは非定型自閉症、他の広汎性発達障害、広汎性発達障害,特定不能のものという3つのカテゴリーに相当するとされています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:神尾陽子/著『DSM-5を読み解く』2014年中山書店/刊PDD-NOSの診断基準出典 : は、1.広汎性発達障害にみられる症状がある2.広汎性発達障害に含まれる他の障害カテゴリー基準に当てはまらず特定できないという2つの条件をどちらも満たすものです。そのため、一言にPDD-NOSといっても、その症状は一人ひとり異なります。また、症状の程度は他の広汎性発達障害のなかでは比較的軽いと一般的には言われています。以下において、PDD-NOSの2つの条件についてそれぞれ説明いたします。1.他の広汎性発達障害にみられる症状があるPDD-NOSを除く4つの広汎性発達障害にみられる症状の特徴として以下の3点があります。・対人関係・社会性の障害人とのかかわりにおいて、お互いが快適に過ごすための振る舞いが難しく、良好な対人関係を築きにくいこと。・コミュニケーションの障害話し言葉や、表情や身振りなどのコミュニケーション能力において、なんらかの障害がみられること。たとえば、一方的な発話、独り言、言外の意味の組み損ねや話題の偏りやお決まりのフレーズなどが例に挙げられます。・特徴的なこだわりや興味特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつことや、特定の対象に対して持続的に熱中すること。参考ページ ペック研究所HP2.他の広汎性発達障害の基準に当てはまらない以下において説明する、4つの広汎性発達障害の基準を満たさない場合、PDD-NOSに分類されます。・自閉症自閉症は、目や耳から脳に入ってきた情報を「意味のあるまとまったこと」として認知することを苦手とします。原因は脳の器質的な異常によるもので、遺伝病ではありませんが、染色体異常や遺伝子異常などの遺伝的素因が強く、先天的に発症するという考え方が有力です。具体的な原因遺伝子はまだ解明されていません。詳しくは以下の記事をご覧ください。・アスペルガー症候群アスペルガー症候群(AS)は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。明確な原因は現在もわかっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。詳しくは以下の記事をご覧ください。・レット障害レット障害(レット症候群)は、ほとんどが女児に見られる脳障害で、少なくとも6ヶ月の正常な発達の時期を経た後に、重度の精神および運動の発達的後退がみられます。この障害の原因はX染色体上の遺伝子異常(MECP2、CDKL5、FOXG1)であることが1999年に解明されています。このため、『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版である『DSM-5』では、自閉症スペクトラム障害から除外されました。参考ページ:レット障害|ハートクリニックHP・小児期崩壊性障害2~5歳頃まで健常な発達をしていたが、言語の理解や表出能力の退行が始まり、退行が終わったあとは自閉症と類似した症状を示すようになる障害です。原因はほとんど解明されていません。脂質代謝異常(コレステロールの蓄積)、はしかやウイルスの脳への感染、遺伝性疾患などとの関連がある可能性を指摘されています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPPDD-NOSの発現時期出典 : 広汎性発達障害の子どもを持つ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの症状から何らかの疑いを持つ時期は、3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診査で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。PDD-NOSの原因特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は、その名の通り特定の原因は不明とされています。現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。PDD-NOSかなと思ったら…?出典 : 上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめします。ですが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診査がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。発達ナビ地域情報|発達障害者支援センターの施設一覧・どの診療科にいけばいいの?PDD-NOSの診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」発達ナビ地域情報|病院(発達障害の診療可)の施設一覧・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。PDD-NOSは治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつであるPDD-NOSの根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。療育とは、障害のある子どもが社会的に自立できるように行う、治療と教育を組み合わせた発達支援の取り組みのことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことで、その子に合った学び方や人との関わり方を見つけやすくなります。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。(出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP)療育とは何か|LITALICOジュニアHP広汎性発達障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、その子の課題に応じた支援を行い、自分に合った学び方や人との関わり方の獲得を促していくと効果的であるともいわれています。PDD-NOSの場合、障害者手帳は取得できるの?出典 : 障害者手帳の取得により、就職時に障害に応じた配慮を受けやすくなったり、税金面での控除や医療費助成を受けたりすることができます。・療育手帳PDD-NOSと診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害を有すると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳精神神経症状をともなう発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。そのため、PDD-NOSの症状によって、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は、精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらも有すると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 特定不能の広汎性発達障害)も、他の広汎性発達障害と同じく、早めに症状に気づくことで、療育や通院といった専門的な支援につながりやすくなります。お子さまの発達に何か違和感を覚えた段階で、お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口に連絡を取ることをおすすめいたします。専門家や支援機関のアドバイスも参考にしながら、子どもの課題に応じた支援を受け、その子らしい学び方、過ごし方を身につけることを応援していきましょう。
2016年11月21日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日情緒障害とは出典 : 「情緒障害」とは、子どもが何らかの要因により感情面に問題が生じ、社会に適応できない状態にあることを指す言葉です。広義に解釈すると上記の意味ですが、実は「情緒障害」は、厳密かつ普遍的な定義がなく、その意味や内容は時代や社会的な背景とともに大きく変遷してきました。そのため現在実際に使われている「情緒障害」という言葉も、文部科学省、厚生労働省、医学のそれぞれにおいて定義や概念にばらつきがあります。情緒障害に含まれる具体的な障害もそれぞれの定義によって異なるため混乱を招くこともままあり、必要に応じて関係機関の定義を参照し、確認する必要があります。以下でそれぞれの定義を見ていきましょう。教育、福祉、医学、それぞれ違う「情緒障害」の定義出典 : ・情緒障害の教育的定義主に特別支援教育の場面で使われる、文部科学省による「情緒障害」の定義は以下の通りです。状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP・情緒障害の教育的定義に当てはまる症状教育の場で用いられる情緒障害にあてはまる症状の具体例としては、主に選択性緘黙(かんもく)を指し、その他、集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。・教育的定義における情緒障害と発達障害の関係文部科学省では、情緒障害は心理的な要因から生じる後天的な問題であり、先天的な問題から生じる発達障害とは違うものと定義しています。・「情緒障害」の教育的定義の成り立ち教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。現在、このようなわかりにくさを生んでいるのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることと、特殊支援教育の歴史的背景に由来しています。公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義していました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもを分類するための概念と修正されました。平成18年には「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が発令され、平成21年には「情緒教育特別支援学級」の名称も「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更され、特別支援教育の場でも自閉症が情緒障害から分けられるようになりました。・情緒障害の福祉的定義厚生労働省管轄の情緒障害児短期治療施設などの福祉の場面で用いられる「情緒障害」は、厚生労働省が定義したものに沿っています。厚生労働省の情緒障害児の定義は以下の通りです。情緒障害児とは,家庭,学校,近隣等での人間関係のゆがみによって,感情生活に支障をきたし,社会適応が困難になった児童をいう。厚生白書(昭和53年版)・情緒障害の福祉的定義に当てはまる行動や状態不登校、引きこもり、かん黙、軽度の非行、チック、発達障害による二次障害、虐待により心理的に傷ついた状態など参考ページ:厚生白書(昭和43年版)第3章社会福祉|厚生労働省HP・福祉的定義における情緒障害と発達障害の関係厚生労働省が定義する「情緒障害」(情緒障害の福祉的定義)は、同省が定義する発達障害に含まれる、としています。参考ページ:発達障害者支援法の施行について|厚生労働省HP医学的な用語としての「情緒障害」は、主として、心理的な反応として起きる、情動が著しく不安定で激しい現れ方をする状態であり、病名ではないとするのが主流です。国立特別支援教育総合研究所によると、医学的な用語としての「情緒障害」は次のようにまとめられます。1)厳密で普遍性のある定義はない。2)病名ではなく症状もしくは状態像を指して用いられることが一般的。3)現在では、心理的要因が原因と想定されるものに主に用いられるが、例外もある。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)においては、「情緒の障害」と表記されているものが、医学的な用語としての情緒障害とほぼ同義とされ、病名に相当する診断カテゴリーとされています。参考:発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究・医学的見地における情緒障害と発達障害の関係基本的に、医学的には情緒障害と発達障害は別の区分とされています。就学相談などで使われる「情緒障害」のさす意味とは?出典 : 教育の場で「情緒障害」とされる状態は、具体的には2種類の問題行動があります。一つは、周囲から介入しない限り周囲に迷惑や支障を生じない、内向性の問題行動、もう一つは、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる外向性の問題行動です。専門用語で「内向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じないものをさします。具体的な例として、・選択性緘黙(かんもく)・不登校、集団行動・社会的行動をしない・ひきこもり、指しゃぶりや爪かみなどの癖・身体を前後に揺らし続けるなどの同じパターンの行動を反復すること(常同行動)・自分の髪の毛を抜くことなどです。一般的にはただの「癖」と考えられているものでも、この行動が長期間頻繁に続き、学校での学習や集団行動に支障をきたすほどの場合には情緒障害としてとらえられます。専門用語で「外向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合をさします。具体的な例は、・離席、教室からの抜け出し・集団逸脱行動・犯行、暴言、暴力、反社会的行動・非行、性的逸脱行動などです。これらの行動から、学校での学習や集団生活に支障をきたしてしまいます。攻撃性を示す場合が多く、その攻撃性が自分に向った場合である自傷行為も情緒障害としてとらえられます。教育の場で「情緒障害」としてあがることの多い、選択性緘黙と不登校について紹介します。・選択性緘黙文部科学省が定義する選択性緘黙は、以下の通りです。選択性かん黙とは,一般に,発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが,心理的な要因により,特定の状況(例えば,家族や慣れた人以外の人に対して,あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せず,学業等に支障がある状態である。(平成25年文部科学省教育支援資料)・不登校文部科学省の教育支援資料において、不登校は、以下のように定義されています。不登校の要因は様々であるが,情緒障害教育の対象としての不登校は,心理的,情緒的理由により,登校できず家に閉じこもっていたり,家を出ても登校できなかったりする状態である。そして,本人は登校しなければならないことを意識しており,登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態である。したがって,一般的には,怠学や学校の意義を否定するなどの考えから,意図的に登校を渋る場合は,学校に登校しないという状態は類似しているが,ここでいう情緒障害の範囲には含まない。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP「情緒障害」の子どもには、どのような支援があるの?出典 : 自閉症・情緒障害通級指導教室通級指導教室とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受ける場合もあります。障害の種別に分かれ、その子に合った指導が受けられますが、情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害通級指導教室」に通うことになります。・対象者通常の学級におおむね参加でき、一部特別な指導(社会的適応のための特別な指導や強化の補充指導など)を必要とする程度のものであるとされています。・どのような指導がされるか基本的には、特別支援学校などにおける、障害がある生徒の自立を目指した教育的な活動を参考とした指導が中心で、社会的適応性の向上が目的とされています。通級指導を受ける場合、大半の時間を通常学級で過ごし、通級指導を受ける時間は限られています。そのため、必要に応じて各教科などの補充的な指導は行っていますが、個別の指導内容を設定することはできません。自閉症・情緒障害特別支援学級特別支援学級とは、通常学級ではなく特別支援学級に籍を置き、よりきめ細かな指導を受ける少人数の学級です。もし、子どもに手厚い指導が必要な場合は、上記の通級指導教室ではなく特別支援学級に通う場合が多いです。情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害特別支援学級」で指導を受けることになります。・対象者文部科学省は、自閉症・情緒障害教育の対象を以下のように定めています。一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成 が困難である程度のもの二 主として心理的な要因による選択性かん黙などがあるもので,社会生活へ の適応が困難である程度のもの平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP選択性かん黙や不登校などの感情面での問題のために、通常の学級では学習を行うことが難しく、社会的適応のための特別な指導を行う必要がある子どもが対象者であるとされています。・どのような指導が受けられるか情緒障害や自閉症のある子どもなどが、人とのかかわりを円滑にし生活する力を育てることを目標に指導を受けることができます。 特別の教育課程を編成することができることが特徴です。基本的に主な授業は特別支援学級で受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。特別支援学校基本的には、情緒障害であるというだけで特別支援学校の支援対象となることはありませんが、情緒障害とされている子どもが、知的障害や病弱・身体虚弱を伴う場合は、知的障害、病弱などの区分での支援対象となることもあります。特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室の違いについては、以下のコラムに詳しく解説されています。・放課後等デイサービス幼稚園・大学を除いた学校に就学中で、かつ障害のある子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中などに通い、生活能力向上のための訓練および、社会との交流促進を行う施設です。施設利用にあたって療育手帳や障害者手帳は必須ではなく、障害児通所支援受給者証を申請し、認可が下りれば利用することができます。施設のタイプは、習い事型、学童保育型、療育型の大きく分けて3つのタイプに分けられます。詳しくは以下の記事をご覧ください。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)情緒障害短期治療施設とは、学校教育との緊密な連携をとりつつ、医学的な心理治療を行う総合的な治療・支援施設です。情緒障害児短期治療施設の対象児童は、心理的困難や苦しみを抱え日常生活に生きづらさを感じている子どもたちであり、心理治療が必要とされる子どもたちであるとされています。知的障害児や重度の精神障害児は基本的に対象ではありません。利用方法は、宿泊入所、通所、外来相談の3つがありますが、施設によっては外来相談が設置されていない場合もあるため、一度お近くの情緒障害児短期治療施設に電話などで相談してみることをおすすめいたします。・児童相談所児童相談所とは、家庭や学校などから18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じ、また、子どもおよび家庭に対して医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定や調査、調整を行う場所のことです。各相談所には精神科医師、児童心理士、児童福祉司などの専門職員が配置されています。・児童家庭支援センター児童家庭支援センターは、児童心理療育施設、児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、乳児院に設置されているもので、18歳未満の子どもに関する様々な相談を、子ども、家庭、地域住民から受け付けます。また、児童福祉施設などの関係する機関との連絡調整も行います。学校で子どもが直面する「情緒障害」の原因は?出典 : 教育的定義における「情緒障害」とされる状態を引き起こす原因としては、対人関係のストレス状況、学業・部活動の負担、親子関係の問題などが考えられるとされています。友人同士や教師との関係において、対等な人間関係が崩れた場合大きなストレスが生じます。いじめがその最たるものとされています。一方的、威圧的に教師や友人に接されることによりストレスが生じ、情緒障害とされる状態に陥る原因になります。学業、部活などにおいて、本人の能力に見合わない要求をされ、かつその環境から抜け出すことができない雰囲気がある場合、それがストレスとなり情緒障害の原因となると言われています。親子関係において信頼関係が築けていない場合に、教育的定義における「情緒障害」の原因となる可能性があります。親子の信頼関係が築かれていないパターンで、児童虐待なども含まれます。子どもと過ごす時間を十分にとることが信頼関係の構築において大切です。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP子どもが情緒障害の疑いがあるとき、どう対応すべきなの?出典 : 生活上の問題が生じたときは、できる限り早い段階でなんらかの対応をとることが必要です。・毎日の基本的な生活環境を整える子どもの成育には、障害の有無、障害の種類にかかわらず、安心して過ごせる環境作りが必須です。毎日の生活のなかで、家族関係の安定を意識し、なるべくお子さんをほめてあげること、そして、できるだけ一緒に過ごしてあげること。このような安心して過ごせる基本的な環境作りを心がけることこそが、お子さんの症状の回復のための基礎づくりとなります。・いじめはすぐ対処もし、お子さんがいじめを受けているように感じたら、本人に対処させるのではなく、いじめが起きている環境から保護することが最優先です。まず、教師に相談し、お子さんのいる環境を変えるなどの対応をし、それに加え児童精神科などで専門的な治療を受けることで、心の傷がこれ以上深まらないようにする必要があります。・医療機関を受診する身体症状が強い場合は小児科、情緒面の問題が強い場合は児童精神科を受診することをおすすめします。専門家の指示を仰ぎ、適切な指示を受ければ、ご家族もお子さんも、無為に苦しむことなく解決の糸口を見つけることができます。どうしても、医療機関の受診への敷居が高い場合には、スクールカウンセラーや各相談機関を利用するのも一つの手です。もし、近くに児童精神科がない場合は、大学病院や総合病院の精神科でも診療してもらえます。少しでもお子さんが何らかの問題を抱えているように感じたら、どうか一人で抱え込まずに、専門家の助けを求めてください。参考文献:杉山登志郎 /著『子どもの発達障害と情緒障害』2009年講談社/刊まとめ出典 : 「情緒障害」の定義はさまざまですが、一般に情緒障害とされる状態は、主に対人関係などの後天的なストレス要因から生じるとされています。先述の通り、お子さんの成育の基本となるのは安心して生活できる環境づくりであり、それには家族からの理解が不可欠です。お子さんをあたたかい目で見守ってあげることこそが、問題解決のための近道となります。とはいえ、保護者の方が、何のストレスも感じずお子さんに接し続けるのは難しいこともあります。専門家からアドバイスしてもらうことで、今までずっと悩んでいた問題から抜け出す解決の糸口が見つかることもありますので、少しでも悩み事がある場合は一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡を取ることをおすすめします。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HPあなたのそばの相談機関|情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワークHP発達障害者支援施策について|厚生労働省HP厚生白書(昭和53年版)|厚生労働省HP情緒障害児短期治療施設運営指針|厚生労働省HP特別支援教育について|文部科学省HP 自閉症・情緒障害とは|国立特別支援教育総合研究所HP
2016年10月24日もうすぐ運動会シーズン。ふとリレーの順番表が目に留まり…出典 : 運動会を間近に控えた、長男の保育園での出来事です。いつもより早くお迎えに行った日、誰もいない教室をふと覗くと、そこにはリレーやかけっこの順番表が貼り出されていました。その順番表を見て思わず嬉しくて、涙が溢れました。順番表に長男の名前が「あった」からです。これまで受けたことのない対応につい感動出典 : 私は順番表に名前があったことが嬉しくて、保育園の先生に伝えました。私「長男もリレーに出られるんですねー!嬉しいです。」先生「あたりまえじゃないですか。みんなで参加する行事ですから。」私「実は、去年通っていた幼稚園では、出ないで欲しいと言われたんですよ。だから嬉しくて正直驚いています。」これまで、園の先生とここまで話せたことはありませんでした。その後も先生は、長男のために「環境に慣れるためにも積極的に運動会の練習に参加してください」と言ってくれました。私はこうした園の対応がとても嬉しく、感動していました。もう終わったことと思っていた、以前の幼稚園での出来事出典 : 以前、コラムにも書いたことがありますが、発達障害のある長男は以前通っていた幼稚園で「かけっこに出ないでください」と言われたことがあります。それでも私の意地で出場させた結果、長男の尊厳を傷つける結果になったのでした。結局その幼稚園はやめてしまったのです。現在長男は、別の保育園に通っています。あのときの出来事は「絶対におかしいことだ」とは未だに思いますが、それでも私なりには「仕方がなかった」と消化したつもりでいました。しかし、名前のある順番表を見て涙するなんて、心の中ではずっと消化されないままだったようです。運動会が近付くにつれ、「かけっこはゴールできないだろうから出してもらえないかもしれない」「リレーに出ると迷惑がかかるから、出してもらえないかもしれない」そんな気持ちがあったからこそ、順番表を見るときには息苦しくなるほどに緊張をしましたし、名前があったことに感動し、感謝し、涙が溢れたのだと思います。障害児をもつ私たち親が、気付かずに受け入れている悲しい現実出典 : 本来ならば「クラスに在籍しているのだから出場して当たり前」な運動会。しかし私は、これまで何度も園から断られ、「息子の障害のせいでイベントに参加できない」ことに、すっかり慣れてしまっていたことに気付きました。例えば、健常のお子さんが「足が遅いので、リレーには出ないでください」と言われたらどうでしょう。きっと学校や地域を巻き込んだ大問題になるのではないでしょうか。しかし、障害のある子どもやその保護者は、「周りのために遠慮する」ということを当然のように強いられ、私たち親も無意識のうちにそれを受け入れ、生活していることが多いように思います。これは果たして社会の望ましい姿なのでしょうか?障害者という理由で、奪われて当然なものなんてあるのだろうか?出典 : 園に断られたイベントは、他にこんなものがありました。入園式お誕生日会かけっこ園外学習…これらは全て、子どもの発達障害が理由で参加できなかった数々です。思い返せばもっともっと浮かんでくるでしょう。そして、きっとこれから就学すれば、もっともっと分け隔てられて、手の届きそうな「普通」さえも、我慢しなくてはならないのかと思うと、とても切ない気持ちでいっぱいです。子どもがいつか大きくなったとき、「皆が当たり前に過ごしてきたことを、自分は経験してこなかった」と、辛い思いをしないかどうか、私は気がかりなのです。解決方法は1つだけじゃないはず。全ては参加できなくても、「工夫」できる社会に出典 : 発達障害のある子どもたちも、それぞれの速度でそれぞれの形で成長していきます。彼らもいつか大人になるのです。過去を振り返ったときに、さまざまな園や学校のイベントを、「障害」を理由に勝手に奪われていたとしたら、どんな気持ちになるのでしょうか。たくさんの選択肢の中から、何を選べば正解、というものは無いのかもしれません。ただ、周りが少し工夫すれば経験できたことも、きっとあると思うのです。さまざまな可能性を前にして、「ただ取り上げる」だけで解決することは、もうやめにして欲しい。親として、心から訴えたいと思うのです。
2016年10月18日発達障害児童の親が何よりも知りたいのは、子どもの将来のこと出典 : 発達障害の息子は6歳。その成長は一進一退を繰り返す日々です。今回は、栗原類さんの書籍『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を読んで、発達障害児を育てる親として、感じたこと、気付いたことを綴ってみたいと思います。幼い頃に発達障害(ADD)と診断を受けた栗原類さん。類さんが今こうしてご自分の障害を告白し、その生きざまを本にして綴ったことには、大きな意味があると私は思います。まず、私たち発達障害児の親は、毎日毎日が子どもへの支援や配慮に手いっぱいの状態です。肝心の「この先に何があるのか」「この子がどう育っていくのか」ということに対する将来像が全く見えていません。これは、発達障害児を育てている親同士で話すと、よく出てくる話です。発達障害児を育てていると、誰もが思うのです。「ロールモデルが欲しい」と。しかし、一般的に取り上げられる「発達障害の大人」のロールモデルといえば、人より秀でた才能があったり、その才能ゆえに幼い頃から特別だったような、いわゆる「天才型」の人が多いのです。実は、これは親にとって、何の励ましにもなりません。そんな特別な子どもはごく一部で、大抵の親は、「誰にでもできることがなかなかできるようにならない」という発達障害児の育児に、毎日くじけそうになりながらも、自分を励ましている状態ではないでしょうか。等身大のロールモデル、それが栗原類さんだった出典 : そこで彗星のように現れたのが、栗原類さんという存在でした。彼は、感覚過敏や強いこだわりといった、発達障害児独特の特性があったのはもちろんのこと、記憶力の弱さや人の感情の読み取りが苦手といった困難さを持ち、学校の勉強にもとても苦手意識がありました。中学生時代にはいじめに遭って不登校になり、高校受験も失敗、決して順風満帆とは言えない人生を送ってきています。この言い方は語弊があるかもしれませんが、私たち親から見ると、栗原類さんは「とても身近な発達障害児」であり、等身大の発達障害当事者であると言えます。この本の表題には「僕が輝ける場所をみつけられた理由」という言葉が入っています。「輝く」という言葉に、芸能人として、モデルとして、華々しい生活をしている類さんのイメージが湧くかもしれません。しかし、この本を読んでいるうちに、類さんは決して「輝ける場所」という言葉を、才能を生かして大活躍する華々しい場所、という意味で使っているわけではないことが分かります。類さんにとっての「輝ける場所」とは、できないことや苦手なことが沢山あっても、それを補い受け入れながら、好きなことを好きと言える安心できる居場所、そんな場所である気がします。そしてそれこそが、多くの発達障害児にとっての「輝ける場所」なのかもしれません。類さんを支えてきた存在、栗原泉さん。その子育てスタンスとは?出典 : 発達障害児は、よくある曖昧なルールや、空気を読み取るのがとても苦手です。普通の子どもであれば、いちいち口に出して注意せずとも習得してくれる社会的ルールのようなものを、発達障害児には、繰り返し伝えなければなりません。しかも、伝えたとしてもすぐに忘れます。次第に、毎日毎日ガミガミと注意を繰り返す自分が、嫌になってきます。本の中に登場する、栗原類さんのお母さん、栗原泉さん。彼女の強力な支援のもと、類さんは目の前に立ちはだかる数々の困難に、1つひとつ対処していきます。面白いことに、栗原泉さんも、決して特別なお母さんではありません。類さんの教育環境を考え、海外に移住するようなフットワークの軽さはありますが、言われたことをどんどん忘れていってしまう類さんに、何度も何度も同じことを畳みかける一面も描かれています。泉さんは「過保護と言われてもいい。子どもの幸せを優先する」というスタンスで育児をしています。発達障害児の親は、これを読んだらきっと、肩の力が抜けることでしょう。なぜなら私たち親は、いつも自分が過保護になり過ぎていないか?自問自答している状態だからです。手助けをしなければ、当たり前のことがなかなかできるようにならない、しかし、「自分の手助けが、いつかこの子の自立を阻むことになるかもしれない」、と手助けするたび罪悪感を感じる毎日。泉さんの「子どもが今幸せであることを大切にする」という割り切った姿勢は、子育てに葛藤を抱いていた私にとって、涙が出るほど有り難いものでした。子どもの得意なこと、好きなことを無理して探していない?出典 : また、泉さんは、発達障害児の世界観を形作るのは「好きなこと」である、と述べ、いろいろなことを体験させることの大切さを説いているものの、泉さんが類さんに体験させてきたことは決して、「特別な何か」ではないことが分かります。博物館や美術館に連れて行くでもいい、インターネットやゲームをさせるでもいい、テレビで一緒にコメディを見るでもいい、泉さんが類さんに体験させたのは、日常的にできる小さな楽しみでした。この本を読んで、発達障害児にとっての「好きなこと」を探すのは、もっと気楽な気持ちで取り組めばいいのだと分かってきます。発達障害児の親をしていると、なぜか「この子の好きなものは何?」「才能のありそうなものは何?」という質問を、周りから嫌というほどされるのです。この質問は、数学や芸術などの天才的な能力があることを、暗に子どもに期待しているものだと思います。これは、一部の天才的な才能のある発達障害者ばかりが取り沙汰されてきたことに原因があるように思います。他のことが全部苦手でも、1つとんでもなく長けている部分があるはずで、そこを伸ばせば良いじゃないかと。この質問をされるたびに、子どもの天才的な才能を見つけることのできない自分のダメさ加減と、特に飛び抜けたものがないように思える息子への情けなさが募るのです。等身大の泉さんの姿で気付かされる、私たち親が背負ってきた無言のプレッシャー出典 : しかし、ほとんどの発達障害児は、平凡な子どもたちです。いや、平凡なことすらも、普通の人よりも何倍もの努力をしないとできるようにならない子どもたちです。ですから、「特別な才能」をわざわざ探すこと自体が、子ども自身の本来の姿を見ていないように感じるのです。そうではなく、泉さんは、類さんが楽しい経験をすること、ちょっとでも好きだと言ったことをとても大切にしています。そして、そんな毎日の小さな「好き」が、やがて大きくなってからの類さんにとって宝物となります。しかし、泉さん自身は、類さんに好きなことを作らせるために躍起になっているわけでもなく、それを極めさせようとするわけでもなく、類さんの楽しいという気持ちを自然に尊重しています。この本で泉さんという等身大の母親の姿を目にして、私たち発達障害児の親は、子どもに対する目も、自分に対する目も、少し優しくなるのを感じるのです。環境は違っても、泉さん親子が取り組んできたことは、「特別なこと」じゃなかった出典 : この本を読むと、類さんが育ったアメリカという国の教育の包容力や、日本の教育とのシステムの違いがとても印象に残ります。ややもすれば、「アメリカで育ったから類さんは恵まれていたんじゃないか?」というようなことを考える人も少なからず出てくるのではないかと思います。けれども私は、類さんが「輝く場所をみつけられた理由」は、アメリカという環境で育ったことが全てだったとは思いません。類さんと泉さんの凄さは、困難にぶつかるたびにそれを分析し、それにいかに対処するかを冷静に考え続けてきたことだと思います。また、高橋先生という専門家に相談し、自己判断のみに頼らなかったことも重要なことだったと思います。そして、対処法についても、誰もが雰囲気やコミュニケーションの中で察してしまうような些細なことでも、泉さんはしっかりルール化していました。泉さんと類さんが、発達障害である自分と向き合うために日々やってきたことは、決して「何かすごいこと」ではないのです。それは本当に、小さな取組みの積み重ねでした。なぜ私たちは、子どもの成長を待てないのだろうか?出典 : 発達障害の特性を劇的に軽減する魔法なんて、残念ながらありません。けれども私たちは、結果が出るか出ないか分からないような小さな取組みを日々積み重ねることに辛くなってしまって、どうしても劇的に変わる何かを求めてしまいます。そこをグッとこらえ、20年、30年の長いスパンで子育てを見つめながら、今ここでできる小さな行動を積み重ねていく、それが今の「輝ける場所」にいる類さんを作ったのだと思います。泉さんは、「コツコツやることの大切さ」を類さんに教えたい、と言っていましたが、お2人の20年の生きざまこそが、まさに「コツコツやることの大切さ」を表していると思います。そしてそれは、先の見えない毎日をもがきながら歩き続ける、発達障害児とその親を、どれだけ励ますものであるか、想像に難くありません。栗原さんの体験談に、発達障害児を育てる親としてもらったもの出典 : 類さんがアメリカにいた当時、まだ日本では「発達障害」という言葉がそれほど認知されておらず、教育現場でただの問題児として扱われて育った人たちが沢山いました。類さんが1番辛かったという中学校時代は、まだ日本では発達障害に関する認識が薄かった頃かもしれません。そういう意味では、先をいっていたアメリカという国で幼少期をおくり、適切な支援を受けることができた類さんはとても貴重な体験をされたのではないかと思います。しかし最近になって、日本の教育現場でも発達障害についての認知が広まり始め、いろいろな体制が急速に変化してきていることを私は肌で感じています。私の息子が入学する予定の学校では、発達障害児の聴覚過敏に配慮し、運動会のピストルを音が小さいものに変えました。刺激に弱い子どもは、特別支援級のついたての中でテストを受けることもできます。別の学校では、特別支援級の授業にiPadを導入するようになりました。類さんが10年以上前にアメリカで受けていた特別支援教育が、ようやく日本にも少しずつ入ってきています。今この時代は、10年、20年前に辛い思いをして育った発達障害の子どもたちが築いてきたのだと思います。私はこの急速に変化していく過渡期の社会を、発達障害児の親として、しっかり見守っていこうと楽しみにしています。類さんの本は、そんな社会を生きる私たちに、生きるヒントをくれる貴重なものであったと思います。発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著)KADOKAWA出典 :
2016年10月13日こんにちは、親子でADHD(注意欠陥・多動性障害)をやっています、ママライターの木村華子です。事の発端は今年の4月。年度始めの家庭訪問で担任から「療育センターで教育相談を受けてみては?」と勧められたのが始まりでした。それから今日に至るまで、検査や今後の支援・教育方法にまつわる相談を重ねています。そんなある日、ADHDの支援を受けようとする私たち親子のことを知った近所のママ友から声を掛けられました。要点をまとめると、それは以下のような意見です。・『療育センターを勧めるなんて、なんて失礼な担任だ!』・『私だったら、「うちの子の何を見て、そんなことを言うんですか!?」とキレると思う』・『木村さんちのお子さんは全然良い子!担任が間違っている。療育センターなんて行く必要はない』じつは、彼女のような意見は少数派ではありません。多くの親が、わが子の発達障害を受け入れられない心境に陥る といいます。今、この記事を読んでいただいている方の中にも、心あたりのある方がいらっしゃるかもしれませんね。しかし、実はその思考や姿勢が、子ども自身をさらに苦しめてしまうことをご存じでしょうか。今回は、発達障害を持つお子様のパパ・ママが現実を受け止めることの重要性についてお話しします。●「わが子に限って、そんなこと……!」親の姿勢が子どもを傷つけた悲劇3つ息子の教育相談を受ける中で、さまざまな方から両親の姿勢が子どもの支援を阻害してしまったというエピソードを耳にしました。以下に、「わが子に限って、そんなこと……!」と拒否してしまう心が招いた3つの悲劇を紹介します。●(1)療育センターを勧められたのが納得できなくて……!『知り合いの息子は療育センターを勧められたけど、ママは納得していなかった。学校から提出を求められた教育相談の申込書に子どもの能力についてのアンケートがあったが、“障がい者”になってしまうのが怖くて、本当はできないことも「できる」と回答。その結果、支援は不要だと判断され、息子には何の改善策も取られなかった 。支援も無く、能力に見合わない教育を受ける息子は学校の勉強からどんどん取り残されていった』(Sさん/30代・主婦からのエピソード)●(2)パパの理解が得られないため、家庭のムードが険悪に『同級生に、発達障害があるお子さんがいた。ママは比較的早くに娘の状況を飲み込んでいた。問題点を理解したうえで、受けられる支援や教育方法の改善を前向きに学んでいたようだけど……。パパがそうも行かなかったみたい。ママが「こういう支援があるみたいだから、考えてみよう」と提案しても、「そんなもの必要ない!あの子は普通!甘やかしたら、それこそ将来ろくでなしになるぞ!」などなど、理解ゼロな発言でママを罵倒していた らしい。ママ友と愚痴っているのをよく聞いた。お仕事の関係か、パパが家にいるのは平日の夜と休日。つまり、子どもがいる時間帯に言い争いをしていた様子。いつもニコニコとかわいい笑顔を浮かべていた同級生のお子さんも、次第に卑屈な性格に変わってしまった 』(Mさん/30代・主婦からのエピソード)●(3)通級指導教室へ通うことを、親子ぐるみで隠し通しているうちに『通常学級に在籍しながら、週1回の通級指導教室へ通うある親子のお話。決められた曜日に通常学級の授業を抜けて通級に行くため、他のクラスメイトから「どこへ行くの?」と聞かれることもあるようです。その子のママはわが子が通級へ行くことをできるだけ他言したくなかったため、「同級生には、毎週病院へ言っていると言いなさい 」と言い聞かせたそうです。お子さんもママの言いつけを守り、「病院へ行くんだ」と答えていたようなのですが、毎週ウソを重ねることがストレスになり 、次第に「ウソをつかなきゃイケナイことを、私はしているの?私は隠さなきゃイケナイ悪い子なの?」と、心が不安定な状態に。ママの考え方や言動が自己肯定感を引き下げてしまった出来事でした』(福岡県で通級教室の指導員を行う女性からのエピソード)●子どもの障がいを認めること、まわりに隠さないことの大切さわが子の発達障害を受け入れることや、周囲の人たちにそれを隠さないことには大きな勇気が必要です。私たち夫婦も、当初は「ちゃんとした大人になれるのか……これからどう育てていくべきか……」などと不安を抱きながら、何度も話し合いを重ねました。そんな大人たちの懸念を吹き飛ばしてくれたのは、息子本人です 。療育センターへ行くことに対し、お友達から「どこへ行ってるの?」と聞かれた彼は、臆することなく「僕って、大人のお話を集中して聞けないじゃん?それを直してくれるトコロがあるみたい!」と返していたのです。そしてまわりのお友達も、「へえ、そうなんだ!頑張ってね!」と送り出してくれていた様子。あっけらかんとした子どもたちのやりとりに、覚悟が足りていないのは大人の方だった ことを思い知らされました。息子はとっくの前から自分の不得意に悩み、受け入れ、そして改善させようと前を向いていたのです。わが子が“その気”になっているのに、大人が後ろを向いているわけにはいきません。一口に学習障害といっても症状や程度はさまざまで、ケースごとに抱く不安も異なるかと思います。とはいえ、極端にまとめれば、“できないこと・苦手なことに悩んでいる ”ということに変わりはありません。不得意なことができるようになるためには親がその事実を認めることと、周囲の方に隠さず伝えることで積極的にサポートを仰ぐことが重要なのではないでしょうか。●世間体は、お子さまの“できない”を受け入れることより大切でしょうか?私事ですが、このたびの“息子のADHD騒動”の最中(さなか)、母親である私自身のADHDも発覚しました。昔から物忘れが激しく、お勉強も決して得意ではなかったことには原因があったのです。そんな私ですが、発達“障害”を障害だと感じたことはありません 。特別忘れっぽい性格をしている私は成長の中で、「お、提出物だ。こういうの、私はすぐ忘れちゃうんだよね〜、だから今すぐ済ましちゃおう!」といった具合に、自分なりの対処法を編み出してきました 。発達障害の有無に限らず、すべての人間に得意・不得意があって、おそらく私のように自分なりの対処法を見出してきたはず。それぞれが持つ不得意やそれに応じた対処法は、それぞれがうまく生きていくためのノウハウです。決して特別なことではないと感じませんか?昨今注目度の高まっている発達障害児への支援については、要は私のような小学生に対して早い段階で“自分なりの対処法”を教えてあげるサポート なのだと思っています。「私が小学生のころにこんなサポートがあったらよかったのにな」と、正直わが子がうらやましい……。障がいと言ってしまえば、確かに聞こえは良くないかもしれません。しかし、「頑張ってるのに、まわりの友達と同じようにできない……」と不得意なことにわが子が苦しんでいることだけは確かです。小さな胸に芽生えたコンプレックスは、パパやママが気にする世間体よりも無価値でしょうか?優先すべきは、お子さまの“できない”に真っ向から立ち向かってあげること。親子で逆上がりや自転車の練習に励んだときと同じテンションで、お子さまの“できない”を受け入れてあげてみてはいかがでしょうか。●ライター/木村華子(ママライター)
2016年10月12日反抗挑戦性障害(ODD)とは?出典 : 反抗挑戦性障害(ODD)とは、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。症状の現れ方によって過興奮型、すね型、マイペース型に分類される場合があり、症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。反抗挑戦性障害が発達期を通じて何年間も続く場合、両親、教師、監督者などの目上の人だけではなく、同年代の友人、恋人ともトラブルを起こしてしまい日常生活に様々な障害が発生します。反抗挑戦性障害は捉え方によって特徴が異なる疾患です。とくにアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では診断基準などが違う場合があるので注意が必要です。反抗挑戦性障害の主な症状出典 : 反抗挑戦性障害の症状として大きく3つのパターンがあげられます。・怒りっぽくイライラする:周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラしてしまいます。そのためしばしばかんしゃくを起こしたり、腹を立てて怒ったりしてしまいます。・周囲に挑発的な行動をする、口論がすき:権威のある目上の人物や、子どもの場合は大人から決められたルールに従うことに積極的に反抗し、口論をふっかけます。そしてわざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにしてしまいます。・意地悪で執念深い:周囲の人との間に起こった出来事を根に持ち続け、他人に対して優しくなれない状態が半年に少なくとも2回発生します。反抗挑戦性障害と反抗期の違い出典 : 通常子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。反抗期には誰でも親に反抗的な態度をとったり、いらいらしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。例えば第一次反抗期にあたる5歳未満の子どもの場合、周囲の人に対して怒ったり、乱暴な言葉をもちいて反抗したり、かんしゃくを起こしたりする行為が1週間に1回、少なくとも半年間続くことが条件となっています。しかし反抗挑戦性障害か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害と診断されます。判断することが難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。反抗挑戦性障害を発症しやすい人出典 : 反抗挑戦性障害は通常就学前に発症し、青年期初期以降の発症はあまり見られないといわれています。発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いです。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまり見られなくなります。2~5歳児を対象とした調査では反抗挑戦性障害を発症している人の割合は、それ以外の疾患を発症している人の割合より格段に多く、16.8%のという研究結果がでています。そのうちの半数は重い症状があると診断されました。参考文献: ロバート・ヘンドレン/著 『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち』 2011年 明石書店/刊反抗挑戦性障害の主な原因出典 : 反抗挑戦性障害の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。その理由として、反抗挑戦性障害は、目上の人からの指示などに対して拒否する拒絶症状が症状の中核となっていることが挙げられます。拒絶症状は一日で現れるものではなく、反抗的な感情がだんだん積み重なって発症してしまうと考えられており、主に幼少期の環境に左右されやすいのです。保護者や周囲の人と対立してしまったときに、大人が次はこうしようかという改善策を提示せず、子どもをただ批判、非難することによって抑圧してしまうことはとても危険です。これにより、子どもは自分を守るため挑戦的で反抗的な感情をおこしたり、行動してしまう可能性が生まれるのです。しかし環境要因は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢することを苦手などのもともとの気質要因、遺伝的要因なども関わり合うともいわれているため、はっきりとは原因が解明されていないのが現状です。反抗挑戦性障害の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A. 怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも一人以上の人物とのやりとりにおいて示される。怒りっぽく/易怒的な気分:(1)しばしばかんしゃくをおこす(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい(3)しばしば怒り、腹を立てる口論好き/挑発的行動:(4)しばしば権威のある人物や、または子供や青年の場合では大人と、口論する(5)しばしば権威のある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(6)しばしば故意に人をいらだたせる(7)しばしば自分の失敗、または不作法を他人のせいにする執念深さ:(8)過去6ヶ月に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもでは、ほかに特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヶ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、たとえばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮すべきである。B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他社の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中のみ起こるものではない。同様に重篤気分調整相の基準は満たされない。■現在の重症度は軽度:症状は一つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)中等度:いくつかの症状が少なくとも二つの状況でみられる重度:いくつかの症状が三つ以上の状況でみられる『DSM-5』では、反抗挑戦性障害と素行症を別の疾患として定義しています。素行症とは、周囲の人に反発して、学校のずる休みや繰り返しの嘘をつくなどの挑発的な行動をとったり、激しい喧嘩をしたりすることに加えて、放火や盗み、物に対しての破壊行為などの法律違反に当たる行動をとることを指します。一方、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害は素行症という疾患の中に含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する行為障害(素行症)の軽度の症状であると位置づけられます。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊反抗挑戦性障害の合併症出典 : ■素行症反抗挑戦性障害の代表的な合併症として素行症が挙げられますが、これは小児期発症型のをもつ子どもによくみられる併存症です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行症の症状もあらわれてきてしまうのです。しかし反抗挑戦性障害と違い、素行症には人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、しっかりと区別することが重要です。■ADHD(注意欠陥・多動性障害)もう一つの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられます。ADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するといわれており、発症する確率は3歳の子どもが一番高いと言われています。その他にも反抗挑戦性障害は不安症群やうつ病の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。発達障害に関連のある行動障害についてl 国立特別支援教育総合研究所ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害出典 : 反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーション障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響の及ぼし合いが多く発生します。例として母親との関係を挙げると、ADHDと反抗挑戦性障害が合併している10代の子どもの多くで、その青年の症状に加えて母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響の及ぼし合いが発生することが分かっています。反抗挑戦性障害が気になったときの相談先出典 : 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。また、年齢が上がってからの治療は、反抗挑戦性障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため、早期に診察・治療することがおすすめとされています。明らかに感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科・心療内科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。反抗挑戦性障害の治療法出典 : 反抗挑戦性障害の治療は・症状の重さと発症する頻度を減らすこと・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること・家族のストレスを軽減すること・行為障害へ進行することの予防を目的として実施されます。治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。社会技能訓練とは反抗挑戦性障害がある人が、大人や友だちがいる場で周囲の人のサポートを受けながら行う、社会の中での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとり方、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処方、目上の人との適切なやり取りの仕方などの練習を行います。また、反抗挑戦性障害がある人が否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。そこでは主に反抗挑戦性障害がある人がトラブルをおこさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。反抗挑戦性障害がある人を訓練するのではなく、その保護者の子どもとのかかわり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援方法もあります。主に、保護者の子どもへの行動、対応方法を変えられるようになることを目的としています。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動にたいして上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングをさらに日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。反抗性挑戦性障害がある子どもへの周囲の人の対応方法・接し方出典 : 反抗挑戦性障害には主に過興奮型、すね型、マイペース型の3つのタイプがあります。タイプ別の対応法を解説します。■反抗-過興奮型過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にも関わらず指示を繰り返すと、子どもが興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。「指示に従うことは自分の負けだ」などと、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です。このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との闘い」となるように誘導します。具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞きだすのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。■反抗-すね型すね型の子どもは衝動性が高く、思いついたら計画性なくすぐに行動してしまいます。しかし、自分の思い通りにならないことがあると、ちょっとした拍子ですねていじけてしまったり、ケンカをしてしまったりします。すねていじけてしまう原因として、数多くの失敗体験が心の中にたまり自信が持てなくなり、どうせやっても失敗してしまうとネガティブな思考が染み付いてしまったことが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を実感してもらう必要があります。おすすめは、運動や料理などを通じて、成功体験を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっているという実感を体験してもらいます。ここで重要なポイントは、・何をやるべきかを明確にする・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す・子どもの取り組みのモチベーションを維持するために結果のみではなく過程を評価することです。また子どもは。本当に自分にできるかと、心の中では不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけをしつつ、自信をつけてあげることが大切です。■反抗-マイペース型マイペース型の子どもは集団で遊ぶことや、他の子との共同作業を苦手とします。幼児期では集団に入るよう誘うとパニックを起こしてしまうことがあります。その後、小学校の半ばあたりになると、周りの子どもたちと興味やペースが合わないことがはっきりとしてきます。マイペース型は、じっとすることは苦手であるにも関わらず、好きなものには集中することができるといった子どもによく見られます。また、人の気持ちを理解することを苦手とする一面がある子もいます。このような子どもに対しては、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整してあげることが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないで合わせてあげることが重要です。出典 : と反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。1. 感情的に対応しない:子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接してしまうと状況が悪化してしまう恐れがあります。2. パパに理解してもらう多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのはママである場合が多いです。そのため、たとえ子どもとママの関係が悪化してもパパはあまり状況をつかむことができず、子育てから離れるようになってしまうケースは少なくありません。一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならないパパの話にはよく耳を傾けることも多いため、パパが話し合いに加わることでみんなで冷静な話し合いができるということも考えられます。思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、パパの理解を得てみんなで協力していくことが重要です。3.約束を守りきる経験を積ませる:ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見ることを続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきれる約束をすることが大切です。守れたらいっぱいほめる、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。4. 子どもに期待し、ポジティブになる:過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。の理解と対応l 公益社団法人発達協会まとめ出典 : 反抗挑戦性障害とは、通常子どもが発症する障害であり、青年期早期以降の発症はあまりみられません。発症する症状として怒りっぽい、口論が絶えない、執念深く根に持つなどの症状が少なくとも半年続くことが挙げられますが、現れる症状は人それぞれです。通常、反抗期そのものは子どもの健康な成長には必要なものです。それゆえ、反抗期と反抗挑戦性障害の見極めが難しい場合があります。また反抗挑戦性障害はADHD・素行症などの他の障害とも合併・併存しやすい疾患であり、症状が複雑化しやすい傾向にあります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年10月09日不自然なまでに文字を間違える息子…病院の診察で判明したのは?出典 : 発達障害のある小学生の息子は、ディスグラフィアの診断を受けています。ディスグラフィアとは、知的な発達は遅れておらず、文字を読むこともできるのに、文字を「書く」ことに大きな困難がある障害を言います。小学校1年生のときの息子の字は、枠からはみ出たりして乱雑だったのですが、学校の先生も私も「丁寧さに欠けているだけ」だと思っていました。ただ、100点ばかりのテストでも、名前だけ赤ペンで「ていねいにかきましょう」と直されていたことがありました。しかし1年生の終わりごろになって、文字の汚さ以上に間違い方に特徴があることに気が付きました。例えば「お」の点が無かったり、1つの単語の中にひらがなとカタカナが混ざったり、漢字の「へん」と「つくり」が逆だったり、鏡文字になっていたり…ちょうど発達障害について専門機関にかかり始めた頃だったので、合わせて相談すると、「書く」ということが特に難しいディスグラフィア(書字障害)があるとわかったのです。とにかく「書けるように」訓練する日々…息子と私の葛藤出典 : その後、字が書けるようになるための訓練が始まりました。息子はなぜ字を書けないのか、そしてどうすれば書けるようになるのか。通級の時間も漢字を覚える練習をたくさんして、言語聴覚士さんによる訓練も受けました。このとき特に役立ったのは「ハイブリッド・キッズ・アカデミー」の遠隔評価キットです。子どもの読み書きの遅れがどの程度であるのか?の評価を、在宅で受けることができ、どういった対処が望ましいか?までのアドバイスがもらえます。ハイブリッド・キッズ・アカデミーしかし、通級の時間全てを漢字を覚えることに費やして、その時間には覚えても、家に帰るともう書けない…息子は決して怠けているわけではなく、何度も何度も練習しています。でも書けるようになったと思っても、それも束の間で、覚えた漢字がポロポロと頭の中から消えていく…それがどれ程悔しく辛く、そして切なかったことでしょう?いつしか息子は「文字を書く」行為にものすごい拒否反応を示すようになっていました。そんな息子の様子を見ていて、私は葛藤していました。確かに今後、受験などで字を「書かなければいけない」ことはあるかもしれない。でも、ここまでさせなければいけないのだろうか。「文字が書ける」ことはそこまで大切なことなのだろうか、と。「文字が書けない」ことは障害なのか?息子の成長を本当に阻んでいたものは出典 : 息子はパソコンを使ってローマ字のタイピングもできますし、正しい漢字を選んで変換することもできます。それに、自分で字を書くことは難しいですが、「作文」は出来ます。私が代筆すれば、原稿用紙2~3枚の良い文章を書くことができるのです。そんな息子の様子を見ているうちに、息子に対する「文字を書けるようになってほしい」という思いは消えていました。それよりも「書く」ことが前提の課題を前にしたとき、「書く」という最初のハードルにとらわれて、課題自体に取り組む意欲を失くしてしまう方が大問題だと思うようになりました。何か自分のやりたいことを始める前に、「自己紹介」「説明」「作文」などが求められると、未だに息子は顔が暗くなります。「これ、書かなきゃいけないの?」「…やっぱりやめようかな…」と恐る恐るつぶやきます。「パソコンで打ち込めばいいんだよ。何なら喋ってくれたらママが打ち込んでもいいから。」と私が言うと、息子はホッとして取り組む気になってくれています。目の前の「できないこと」にとらわれて、子どもが意欲を失わないように出典 : まだまだ社会にはこういった障害は認識されておらず、学校側に理解してもらえないこともあるかもしれません。私も学校の先生にはICT機器の導入などをお願いしたのですが、難色を示されてあきらめたという経緯があります。「できないこと」ばかりにとらわれて、子どものやる気や意欲の芽を摘んでしまわないよう、「こういう子もいるんだ」という認識が浸透してほしい。そして「合理的配慮」として快く代筆やICT機器などを使わせてあげてほしい!心からそう思います。
2016年10月09日栗原類さん、自身の発達障害について語る初の自叙伝発売!モデル・俳優として、テレビや舞台、ファッションショーなど様々な分野で活躍する栗原類さんが、10月6日に自身の生い立ちから現在までを綴った著書『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を発売されました。LITALICO発達ナビでは、書籍の出版を記念して栗原類さんに単独インタビューを実施。ご自身の発達障害(ADD: 注意欠陥障害)を公表し、書籍を出版するに至った背景、自身の特性を理解し俳優として「輝ける場所」をみつけられるまでの日々、お母様である泉さんと歩んできた21年間の日々について、たっぷりと語っていただきました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)栗原 類さん: 1994年生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。8歳のときNYで発達障害と診断される。中学時代にメンズノンノなどのファッション誌でモデルデビュー。17歳の時バラエティ番組で「ネガティブタレント」としてブレイク。19歳でパリコレのモデルデビュー。21歳の現在は、モデル・タレント・役者としてテレビ・ラジオ・舞台・映画などで活躍中。2015年に情報番組でADDと告白し話題となる。実は「カミングアウト」したつもりなんてなかった!?―出版おめでとうございます。出来上がった本を今日手にとってみて、ご感想はいかがですか。栗原類さん(以下、類さん): いやー、本当に思った以上に時間がかかってしまって、担当の方には、正直ご迷惑をかけっぱなしだったと思います…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―初の長編エッセイですもんね。やはり大変でしたか。類さん: これまでも雑誌の連載などで文章を書いたことはあったのですが、今回のように自分の過去を深く掘り下げて書く本は初めてで。僕はあまり記憶力が良くないので、昔のことはほとんど覚えていなかったんですよ。母親や友人、主治医の高橋猛先生などに自分の過去を聞いて回って、そこから思い出して書くまでにものすごく時間がかかりました。それに、これまでのファッションやアートの分野での執筆ではなくて、発達障害をテーマにしたエッセイですから、どうやって興味を持って読んでもらえるかはかなり悩みました。担当編集の方に、全然進んでいない原稿を見せては、「この状態では出版も出来なくなりますよ」などと言われる始末で…。長い間辛抱強く待ってくださって、本当に感謝しています。―それはそれは…本当にお疲れ様でした。今回の出版は、類さんにとっても新しい挑戦だったと思うのですが、なぜ、ご自身がADD(注意欠陥障害)であることを公表し、書籍まで出版されようと思われたんでしょうか?類さん: そもそも僕は、自分がADDであることを隠していたことはないんですよ。―え、そうだったんですか。類さん: 最近まで、他人から「発達障害なんですか?」なんて聞かれたこともなかったし、聞かれていないなら答える必要もないかと思っていただけで、この仕事をする前から、ブログやツイッターでは自分の発達障害について書いていました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―へえぇ、知らなかった…類さん: だから僕としては、「書いているんだから、みんなもう知っているだろう」ぐらいに思っていたし、テレビ番組で話した時も、「カミングアウトする」というような気持ちでは全くなかったんです。それが、いざテレビに流れるとすごい反響で…―昨年5月、NHKの「あさイチ」ですね。放送後、ネットで話題になっていたのをよく覚えています。類さん: 僕も放送直後に自分の名前でツイッター検索をかけたら、本当にたくさんの方がコメントされていて。自分で言うのもおこがましいんですけど、賞賛のコメントも多く、「公表するのは勇気があることだ」とか「私も勇気をもらった」とか…色んな声をいただけてすごくありがたかったです。―ポジティブな反応も多かったですよね。類さん: KADOKAWAさんから出版のお声がけをいただいたのは、それからしばらく経ってからのことでした。自分と母がこれまでやってきたことや、生まれ育ったアメリカの教育制度など、僕の人生を紐解くことで、もっと多くの人が発達障害に興味を持ってくれるかもしれない。いま発達障害に悩んでいる人たちにとっても何か励みやヒントになるものを提供できるかもしれない。そんな思いで、今回のお話をお受けしました。他人の気持ちが分からなかった少年が、「演じる」楽しさに目覚めるまでUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ここからは本を拝見していくつか印象に残ったところを中心に、お話をお聞きできればと思います。ご自身の特性として、感情表現や人の気持ちを読むことが苦手だと書かれていましたが、俳優やモデルといった、むしろ、感情理解や表現をかなり求められる世界に飛び込んだというのが印象的でした。類さん: やっぱり傾向としては、発達障害のある人って、他人の気持ちを読み解くのが苦手な人が多いようで、僕もそのタイプでした。原因としては色々あると思うんですけど、僕の場合は、そもそも自分自身の内面にも興味がなかったというのが大きかったです。自分に興味がないから、他人にもそこまで興味を持てなかった。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―もともと自分にも他人にもあまり興味がなかった。そこからどうしてお芝居の世界に?類さん: ニューヨークにいた頃、小学1年の担任の先生の勧めで、コメディ映画を観始めたのがきっかけです。―コメディ映画を。類さん: 僕は昔から冗談が通じない子で、周りの冗談を真に受けてすぐにカチンと来てしまうなところがありました。先生は、このままでいると僕が人間関係で躓くことになると予見して、人の感情、特にユーモアを学ぶ必要があると言い、コメディ映画を観ることを勧めてくれたんです。特にハマったのはアニメの「サウスパーク」ですが、他にも色んなアメリカのコメディ映画やドラマを観ていました。僕が気になった部分があると一時停止して、「この人はこんなセリフを言っているけど、内心こういう感情で、本当はこういうことを伝えたいから、こんな表情をしているんだよ」っていう風に、母がひとつひとつ解説してくれたんです。おかげで、少しずつ登場人物の気持ちや意図が予想できるようになっていきました。―お母様が横で解説を入れてくれたんですか!セリフと表情のギャップを学ぶという点では、コメディはピッタリの教材かもしれませんね。類さん: そこからは僕も予想外だったのですが、ユーモアを理解するためにコメディ映画を観ていたのがきっかけで、お芝居自体に興味を持つようになったんです。自分ではない、色々な人になりきることの面白さを感じ、自分も俳優になりたい、と思うようになりました。―なるほど、そこから俳優を目指すように。類さん: モデルの仕事はもっと早くからやっていたのですが、本格的に芝居に取り組んだのは高校の演劇部に入ってからです。そこからバラエティ番組に出て、2012年にNHKのドラマで役をもらったのが、俳優として初のお仕事でしたが、最初は右も左も分からず、自分のセリフを覚えるだけでも精一杯で…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―自分から興味を持って飛び込んだ世界とはいえ、集中を要したり、シーンに応じた振る舞いを求められたりと、大変な部分も多かったでしょうね…類さん: そうですね。実際、今でも苦労している部分はありますし、これからもたくさんあると思います。でも、先輩の役者さんにアドバイスをいただいたり、舞台を観に行ったりと、学ばせてもらう機会にはとても恵まれていて、いま少しずつ吸収、成長していく時期なのかなって思います。―コメディ映画に学んでいた頃のように、今後は周囲の先輩たちから学んで吸収されているのですね。類さん: すぐにはうまく出来なくても、ひとつひとつ訓練していけば、いつかは壁を突破して成功できる。そうやって、長い目で見る気持ちは忘れないようにしようと思っています。自分のことを「ネガティブ」だなんて思ったことはない?Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―お話を聞いていると、類さんは、身の回りの物事への注意集中が難しいという特性がある一方で、ものすごく楽観的だったり、長期的な視野を持っている印象を受けます。先ほどの話のように、「いつかは成功できる」と思って苦手なことも続けられたり、かと思えばバラエティ番組で人気沸騰だった時期にも、「この人気が続くわけがない」と、パリコレのオーディションに挑戦したり…類さん: バラエティは毎年旬が変わっていくものですし、そもそも自分に向いていないと思っていたので、ずっと続けていくつもりはありませんでした。それよりも、今までやったことがない新しい挑戦をしたいなと思ったんです。―とはいえ、まとまった期間で日本を離れると、連ドラなどの仕事は断らなければいけないし、オーディションに落ちてしまったら仕事が全部なくなってしまうかもしれない。なかなか勇気の要る挑戦だったと思いますけど。類さん: 確かに、僕にとっては大きな挑戦でしたね。でも、パリコレは21~24歳ぐらいの若いモデルが求められていて、僕のこの年齢で飛び込むのがむしろベストなのかなとは思っていました。結果的に、「Yohji Yamamoto」では4期連続、2年間を通して出演させていただきました。―周りからは当時、「ネガティブすぎるモデル」とか言われていましたけど、ネガティブというよりむしろ戦略的というか、かなりリスクを取って挑戦するタイプじゃないですか…類さん: というかそもそも、僕は自分のことを「ネガティブです」と言ったことは一度も無いんですよ!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)類さん: 僕は普通に振る舞っていただけなのに、気づいたら周りからそのような煽りが付けられていて…僕はメディアの取材などでは毎回「言っていないです」って説明してたんですけど、必ず毎回カットされるんです。―メディア的にはあまり美味しくはないセリフなんでしょうね…(笑)類さん: まぁでも、周りからの評価も含めて客観的に受け止める性格なので、そういうことが2, 3回続いたあとは諦めて受け容れてましたね(笑)親子というより友人―母、泉さんのことUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―焦らず、長期的な視点を持つというのは、「人生はマラソン」だと語られた類さんのお母様、泉さんの影響も大きかったと思うのですが、類さんにとって泉さんはどんな存在ですか?類さん: 僕の一番の理解者ですし、すごく尊敬しています。本にも書きましたし、どんだけお母さん好きなんだって言われるかもしれないけど、やっぱりあの人の影響によって今の自分が成り立っているんだと思います。好きな音楽とか役者とか、映画のセンスも、あの人が見ていたものを一緒に見たりとか、こういうオススメがあるよって連れて行ってもらうなかで確立したものがあって。僕がどうして今この仕事をするようになって、これから何を目指したいのか、僕自身がちゃんと理解して歩んでいけるようになったのは、母の影響がすごく大きいです。―なるほど。類さん: それから、母は自分が出来ることだからといって、子どもの僕に決して同じようには要求しない人でした。母自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)だと言われているんですけど、同じ発達障害といっても、お互いに真逆な性質なんです。母はものすごく記憶力が良いのに、僕は極端に忘れっぽい。母は他人に言われた嫌なことも全部覚えてストレスになっちゃうけれど、僕はどれだけ怒られても翌日にケロっと忘れたりすることがしょっちゅうありました。僕は忘れ物や同じミスを繰り返すので、そのつど耳にタコが出来るぐらい母に怒られていましたが、「長い目で見たらあなたの性質の方が気楽だし、メンタルも安定していて良いわよね」なんて言われたりもします。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ほんとに真逆の凸凹なんですね。人生の先輩として厳しい言葉をかけつつも、長い目で類さんの成長の過程に伴走していこうという泉さんの思いが、本を読んでも伝わってきます。類さん: お互いの長所も弱点も理解しながら、20年以上ずっと二人暮らしてきているので、息子と母親というよりは、むしろ心を開ける友人という感じがしますね。普通の親子なら言わない冗談とか言葉遣いもけっこうあったりします。発達障害に悩める人たちへ―「背負い込まず、一人でも仲間をみつけて」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―最後に、自分やお子さんに発達障害があって悩んでいる人たちにメッセージがあれば、お願いします。類さん: 大人の当事者の場合でも、子どもに発達障害がある保護者の場合でもそうですけど、全部自分一人で背負い込んでしまわないことが大切だと思います。これまで親子の関係について多く話してきましたが、信頼できる第三者の相談相手がいると、すごく良いと思います。僕にとっては、主治医の高橋猛先生がそうでした。誰だって、どうしても親には話したくないことだってありますし、親子だけだと視点が偏って閉塞的になることもあります。そんな時、信頼できる第三者の意見を聞くことが出来れば、新しい発想やアプローチも出て来ると思います。大人の場合でも、仕事がうまくいかないからといって、自分のせいだと背負い込みすぎたら絶対身体も心も持たないです。全員に100%発達障害のことを理解してもらうなんて出来ませんが、上司や同僚、相談できる相手が一人いるだけでだいぶ違うと思います。一人でもいいので、信頼できる人を見つけること。それから、自分の特性や周囲の人たちと、長い目で見てじっくり付き合っていくことだと思います。―信頼できる人を見つけて、焦らずじっくりと。人生は「マラソン」、これからもずっと長い道のりが続きますものね。今日はありがとうございました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)聞き手・書き手: 鈴木悠平写真撮影: タナカトシノリ出典 : 発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著) , KADOKAWA
2016年10月06日目を離せばすぐあちこち走り回る子どもたち。当然外出なんて場所を選べる訳もなく…出典 : 我が家には2人の発達障害児がおり、毎日がご想像の通りのハチャメチャぶりです。衝動性の高い子どもたちと出かけることはもちろん至難の技。私の手を振り払って後方へ走り出す次男、それを追いかけるうちに勝手にエスカレーターに乗ってしまう長男。想像しただけでどっと疲れませんか?(笑)そんな子どもたちを連れてわざわざ出かけようという気も、いつしか起きなくなりました。ましてや「子連れで遊ぼう」というお誘いなんて夢のまた夢。行きたいなあ、と思いながらもずっと断ってばかりいました。そんな我が家でも、思いっきりレジャーを楽しめる「キャンプ」があったのです!どんな様子か気になる?ご紹介しましょう!東京都自閉症協会「おやじの会」主催のキャンプに家族で参加出典 : 私も会員として参加している東京都自閉症協会には「おやじの会」という自閉症児の父親の会があり、いろいろなイベントを企画、運営しています。例えば先日参加したキャンプ「エンジョイアウトドアスポーツ」や、障害児のきょうだいにフォーカスを当てた「きょうだいキャンプ」、そして初夏と新年に開催されるBBQなど、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。ここなら、衝動性の高いうちの子を連れていっても安心です。先日は、主人も連れて家族全員でキャンプに参加してみました。東京都自閉症協会おやじの会母親が子どもにつきっきりにならなくて済む理由出典 : 「迷惑をかけているのでは」と人の目を気にしたり、「迷子になってしまうのでは」と神経を尖らせたり…そんな思いから解放され、心置きなく楽しめるこのキャンプ。それには大きな理由が2つあります。1つ目は、皆が「お互い様」の気持ちでいられる環境であること当事者とその家族が集まってのキャンプなので、普段の生活で感じる気疲れがありません。もう1つは学生などのボランティアさんがたくさん参加していることボランティアさんが野外活動、子どもたちの見守り、イベントの進行や食事の支度など何から何までおやじたちと一緒に取り組んでくれているのです。ボランティアさんの中には、おやじの会のイベントに何度も足を運んでくれている方もいて、あまり人の顔や名前を覚えない長男も、大好きなボランティアさんの名前を覚えて一緒に遊べるのを楽しみにしていました。普段私が「もう休憩させて…」と言ってしまいそうな激しい遊びでも、若い力と優しさでずっと付き合ってくれる姿には、感謝の気持ちでいっぱいになりました。予想を裏切る働きっぷりに、おやじを見直す3日間出典 : このキャンプで家族として得られる大きな収穫、それは「おやじって、結構頼れるんだな」という瞬間です。普段は園や療育への送り迎え、地獄のようなスーパーでの買い物、体力の限界を感じる外遊び…これらを一手に引き受ける母親からすると、「こんなおやじに、子どもを任せても大丈夫かいな」と失礼ながら思ってしまうのも、やむを得ないかもしれません。でも、彼らは違いました。ベテランになると、持っている情報量も多く、ネットワークも広い。そして障害を見つめる切り口が母親とは違う。普段社会で働いているからこそ、イベントの運営もきめ細かくスムーズです。やっぱりいざという時、パパは我が家を立派に支えてくれる存在なんだな。そんな気持ちが何度もよぎる3日間なのです。母親が1人で抱え込まないよう、父親にも子育てに積極的に参加できるきっかけを出典 : パパには日頃、ついつい「療育手帳と受給者証の違いもわからんのか!」「就労移行支援と移動支援は別モンよ!」なんて、偉そうについ言ってしまう私。でも、おやじにはおやじの活躍の場所がたくさんあって、私たちでいう「ママ友」みたいなおやじのコミュニティーってとっても大切だな、と改めて感じました。普段、療育関係のことは私が全て管理したり実際に出向いたりしているので、主人には仲間を増やす機会がなかなか無いことから、同じ環境にいる父親に会えるというのは、主人にとって貴重な時間。また主人が、こんな風に仲間を作ってくれることにより、障害への理解が高まったり育児へ積極的になったりしてくれたので、今回のキャンプの参加は、結果的に家族みんなにとって良かったのでした。自閉症協会に関わらず、全国各地にいろいろな「当事者の会」や「家族会」などが発足されています。気を遣って生活している日々の息抜きとして、同じ気持ちをわかってくれる人のところへ出向いてみるのも、いいかもしれません。きっと新しい発見や仲間が待っているはずです。
2016年10月04日