女優・葵わかなが18日、NHK広島発地域ドラマ『舞え!KAGURA姫』(NHK BSプレミアム/今秋放送)の出演者発表会に出席した。葵は同作のヒロインを務める。本作は、広島北部に伝わる神楽(神にささげる歌と舞)がテーマ。都会で生きづらさを感じていた転校生の主人公・児玉咲子(葵)が、神楽と出会い、それを愛する人々と関わることで生きる力や人との関係を見直していく青春エンターテインメント作品となっている。中村ゆりか、中村梅丸、加藤諒、大塚寧々らの出演も発表された。葵は、「咲子を通して、広島北で大切にされている神楽を知って興味を持っていただけたらうれしい」とコメント。「神楽を舞わせていただく責任を感じつつ、地域に身をおいて、楽しく撮影ができたら」と意気込んでいる。発表会前日の17日には、初めて神楽を観劇したそうで、その後に「ステージの上で一緒に回らせていただいたのですが、目が回ってしまった」と振り返りながら苦笑。その際には、衣装も着ており「すごく重くて腕を上げるだけでも大変で、体力勝負だなと思いました」と伝統行事を実際に体験したからこその感心も口にする。咲子については「思春期特有の悩みを抱えていて、自分の悩みを表現するのが苦手な女の子」と説明。「その子が東京から広島に引っ越してきて友達や神楽と出会うことによって、どう変化していくのかがドラマの一つの見どころ」と明かしている。その上で、「高校生が感じる心の揺れというのは、私も咲子と同じ年代で共感できる部分がある」としながら、「そういった心の機微を細かく表現できたら」とアピールした。
2016年04月21日●普段は引っ込み思案『先生を流産させる会』(12年)、『ライチ☆光クラブ』(16年)などの内藤瑛亮監督が、近々共同統合することになった男子校と女子校の演劇部の合同合宿で遭遇する事態を女子と男子、それぞれの視点から描くダブルアングルホラー『ドロメ【男子篇】』『ドロメ【女子篇】』(公開中)。モデルからスタートし、現在、女優として引っ張りだこの森川葵が、女子篇で主演を務めている。まだ二十歳ながら、さまざまな役柄に挑戦し、独特の存在感を放つ森川に『ドロメ』の感想のみならず現在の彼女自身の心境を聞くと、終わったばかりのフジテレビ月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の現場で影響を受けた言葉などを教えてくれた。――おもしろい企画の作品ですね。最初に脚本を読まれたときの感想を教えてください。すごく分厚い脚本だったんです。でも読んでみたら、半分くらいで終わっちゃって。どういうことだろうと思ってその先を開いたら、またキャストの名前が並んでいて……。あれ?どういうことだろうとよく見てみて、男子篇、女子篇の2パートがあるんだって気づいたんです(笑)。事前になんとなく聞いてはいたはずなんですけど、ちゃんと理解してなくて。最初に台本を見たときは、中が2つに分かれている印刷ミスかと思いました(笑)。――実際に出来上がってみて、男子篇と女子篇の2つがあっていかがでしたか?どっちを観ても1本の映画として楽しめると思います。でもそれぞれ謎の部分もあるというか。両方を観ていただければ、種明かしというか、この裏ではこんなことが起きていたといった、答え合わせができます。あとはそれぞれのカラーが出ていておもしろいですね。女子と男子の恋愛に対する違いが出ているのかなって思いました。男子は明るくて、女子は本気で考えちゃう感じとか。――化け物のドロメが出てきますが、印象は?かわいかったです(笑)。登場人物たちの敵として出てくる化け物なのに、最終的にこんなにかわいそうに見えてしまうってなかなかないと思いました。殴るのはちょっとかわいそうだなと思いました。――少し前まで月9にも出演されていました。いま女優として大活躍ですが、モデルとしてスタートして、女優業には次第にはまっていったのでしょうか。はまったという感覚はないですけど、徐々にずぶずぶと連れ込まれている感じはあります(笑)。――女優業は楽しいですか?現場にいて、自分じゃないという感覚のときがあるんです。周りにカメラがあって、撮られているのも分かっているんだけど、でもカメラが見えなくなって、そこで本当に生活しているような、そこに実際にいる人物のようになる瞬間がある。自分とは違う記憶が入ってきて、別のものに支配されている感じなんです。ちょっと気持ち悪いけど、おもしろい不思議な感覚ですね。――今回の『ドロメ』の小春のようにおとなしい女の子から、嫌な女の子、不思議な子、二重人格などいろんな役を演じられてきました。森川さん自身はどんな性格ですか?今回の『ドロメ』で演じた小春に近いと思います。引っ込み思案だし、あまり人と交流を持とうとしないし。仲良しの友達さえいればいいみたいな。――5人きょうだいと伺っていますが、ご実家はにぎやかだったのでは?はい。ワーワーでした。でも私は割とひとりでいましたね。ひとりでぼや~っとしているのが好きなので。自分のペースがはっきりあって、それを崩されるのが嫌なんです。人とうまく合わせられないときがあります。●月9『いつ恋』の現場秘話――『チョコリエッタ』(14年)での森川さんも特別な存在感があって好きでした。ありがとうございます。――あのとき、丸刈りにしたことが話題になりました。抵抗はなかったとお話しされていましたよね。あのときはなかったですね。いま坊主にしろと言われたらちょっと迷うと思いますが、あのときはタイミングとしてもちょうどよかったんだと思います。難しい役だったといわれたりしますが、あまりそういうことも考えないです。いろんな役をいただけるのはありがたいし、難しいとかは考えずに突っ走るタイプです。そこで折れそうになってもどうにか頑張ります。負けず嫌いだとは思いますね。――最近感じているご自身の変化などはありますか?昔より人とちゃんと向き合って話をしたりできなくなったような気がして、ちゃんと向き合いたいと思っているところです。女優業をはじめて、人生やお仕事の先輩からいろんな話を聞けるチャンスがたくさんある環境にいて、育ててもらっていると感じているので、もっとちゃんと人と向き合えるようになりたいです。――そういう心配をされているということは、ちゃんと向き合えてるのではないでしょうか。では、特にこの出会いは大きかったと印象に残っている方はいますか?みなさんそうですが、最近の話としては、月9で共演させていただいた先輩とのお話を覚えています。私も二十歳になって、周りの友達も大学を卒業したり就職したり、自分の未来を決める年代になっています。そんなときに、私はお仕事はしているとはいっても、お休みの日とかに、何もせずにただ過ごしていていいのかなって思う瞬間があるとお話ししたんです。そしたらその方が、そういう休みの日の過ごし方も、お芝居に出てくるものだから、僕たちは休みも仕事なんだよって。そっか~って、納得しました。そういう風に考えると毎日がとても大切だし、例えばただ1日寝ているだけの日があったとしても、そういう役もあるかもしれない。だからぐだぐだして休むのも仕事なんだって思えるようになって、気持ちが軽くなりましたね。――お休みの話が出ましたが、森川さんのお部屋の雰囲気をお尋ねしていいですか?うふふ。部屋ですか? そんなに物は多くないと思います。特別なものは置いてないですけど、そうだな、cado(カドー)っていうメーカーの加湿器を使ってるんですが、それがかわいいです。見た目が美しいし、水がなくなると光を点滅させながらピピって呼ぶんです。それを、はいはい、お水ね、みたいに、ペット感覚でかわいいなと思っています(笑)。――動物はお好きですか?はい。実家でも猫を飼っているし、いつか自分がちゃんと面倒をみられるくらいに余裕ができたら猫を飼いたいです。――『ドロメ』のなかで料理のシーンが出てきましたが、森川さんは料理は?しないです。でも『ドロメ』の中での女子、男子ほどひどいことにはならないですよ(笑)。――小春たちは演劇部でした。今後舞台への興味は?あります。周りに結構やっている人がいて、お客さんの反応を肌で感じると言っているのを聞いて、いつかは自分も体験してみたいし、同じ芝居を毎日やってどんどん役を深めていくというのも興味があります。自分が舞台に立つことを好きかどうかはわからないけど、でもやってみないとわからないので、いつかは体験できたらいいなと思っています。――最後にもう一度、『ドロメ』をPRしていただけますか?ホラーだけど笑える映画です。確かに観ていて怖くて、ワッってなる瞬間もありますが、それよりもみんなの日常生活とか、わちゃわちゃしてる高校生らしい楽しさみたいなものがリアルです。女子目線、男子目線の小ネタみたいなものもすごくたくさん入っている、笑えますよ。■プロフィール森川葵1995年6月17日生まれ。愛知県出身。2010年、ファッション雑誌『Seventeen』の専属モデルオーディションでグランプリに選ばれる。2015年4月号で同誌の専属モデルを卒業した。2012年からは女優としても活躍。丸刈り、ロングヘア、ベリーショートなど、役によって髪型を含めて、まったく違い印象を見せる。この4月からトーク番組『A-Studio』で8代目アシスタントを担当。おもな出演ドラマに『ごめんね青春!』、『She』、『表参道高校合唱部!』、『テディ・ゴー』(主演)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、おもな出演映画に『渇き。』、『チョコリエッタ』(主演)、『おんなのこきらい』(主演)、『ドロメ 女子篇』(主演)、6月25日公開の『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』がある。(C)2016「ドロメ」製作委員会
2016年04月02日20代後半、年収250万ちょっと、恋人なしのおひとりさま女性・沼越さんが、“運命の物件”を求めてモデルルームを巡り歩く日々を描いた漫画『プリンセスメゾン』。『モチイエ女子web』との連動企画として『やわらかスピリッツ』に連載され、女性読者を中心にあたたかい共感とささやかな勇気を与えている本作の作者・池辺葵さんに、女性の人生と住みかの関係について前後編でお話を伺いました。 今回は後編です。■前編「おひとりさまが家を買ったっていいじゃない!」はこちら家を買うという決断には損得ではないその人だけの理由が必要『プリンセスメゾン(1)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――『プリンセスメゾン』で“運命の物件”を探す沼越さんは、20代後半で年収250万ちょっと。住んでいるのも古いアパートの1階と、かなり地に足の着いた設定ですね。池辺葵さん(以下、池辺)最初から、マンションが買えるぎりぎりの年収の人の話にしたいと思ってました。『モチイエ女子web』の人にもかなり取材や試算をしてもらったら、“年収250万”という表現でもダメで、“年収250万ちょっと”が本当にぎりぎりの最低ラインらしいです。――作中には「単身女性の住宅ローンは審査が下りにくい」とったセリフがあったり、シビアな現実も描かれていますが。池辺でも、ローンってもっと組みづらいものだと思ってたんですけど、取材をしてみて、思ってたよりなんとかなるんだとも思いました。銀行にもよると思いますが、派遣社員でも3年以上勤めていればローンが下りるとか、頭金をいくら払えるかによってもだいぶ変わるとか。持ち家は買った家自体が担保になるから、保証人に関してはむしろ賃貸のほうが厳しかったり、単純にスペックや数字だけで決まるわけじゃないんだなって。――1巻で「努力すればできるかもしれないこと、できないって想像だけで決めつけて、やってみもせずに勝手に卑屈になっちゃだめだよ」という沼ちゃん(沼越さん)のセリフがありましたが、本当にそうなんですね。池辺でも、実際のところ20〜30代の若いうちに自分の家を買う決断ができる単身女性ってそう多くないと思うんです。仕事が中心で家には寝に帰るだけとか、将来どうなるのかまだわからないって人なら、買う必要ないと思うし。沼ちゃんがそこまでして家を買おうとしていることに、どうやって説得力を持たせるかは悩みました。――2巻で、沼ちゃんが持ち家にこだわる理由というか背景が、初めて明かされたのはそのためですか?池辺それも実は後付けの設定なんですけどね(笑)。持ち家は将来的に資産になるから、長期的に考えると賃貸のほうが高くつきますよ、とか言われても、じゃあ買おうとは思えないじゃないですか。結局、損得ではなくて、たとえ高くても家を持ちたいという、その人だけの強い理由が必要だなと思って。自分の生き方や幸せの価値観を見直す作業、それが家探し ――そんな沼ちゃんの姿を見て、不動産屋の人々も次第に応援を始めて、沼ちゃんと深く関わるようになっていくんですよね。池辺最初は、沼ちゃん以外にもいろんな人が出てくる群像劇にしようと思っていて、不動産屋さんの人たちもあんなにずっと出てくる予定じゃなくて。でも、描いてるうちにみんながんばって生きてほしいなってかわいく思えてきちゃって、沼ちゃんが不動産屋さんの人たちと徐々に関係を築いていく展開に自然となっていきました。――最初はファミリー向けの物件や、都心の高層マンションを見ていた沼ちゃんが、だんだん自分に本当に必要な条件を絞っていきますよね。なんだかそれが、人生における就職や結婚に似ているなと思いました。池辺そうなんですよ。家探しって、自分の生活や生き方を見直したり、自分にとっての幸せって何か考える作業にもなるんだなと、描いていて思いました。実際に東京でかなりの賃貸物件を見て回ったんですけど、東京の住宅事情にカルチャーショックを受けて。――え、どんなところにショックを受けたんですか?池辺私の実家の方だと十分いい部屋に住める値段でも、びっくりするくらい狭くて。東京の人は、家に関してはみんなすごく優しいんだなーと思ってしまったんですよね。でも、家ってそこまで気に入ってなくても実際住んでみたら慣れちゃうし、どこに住んでも自分が受け入れさえすれば馴染んでいくんだろうなって。それは持ち家を買うにしても同じで、どんなに気に入った理想の物件でも、暮らすうちに絶対何かしらの欠陥はあって100点にはならないと思っていて。何かひとつ自分にとって譲れない魅力があれば、あとは我慢できるのかなと思うんですよ。担当編集K(以下、担当K)すごい、まるで好きな人と結婚する話をしてるみたいですね(笑)。そういえば、20代のうちは家を買うことにリアリティを持てないけど、40代になるともうローンが組めなくなる、というのも出産のリミットに似ていますね……。今どう生きたいかを考えたら持ち家もいいかも、と思えた『プリンセスメゾン(2)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――家を買うつもりがない人も、もし自分が家を買うとしたらというのを真剣に考えてみると、自分の人生にとって大事なものや生き方を見つめるいい機会になりそうですね。担当K実際に家を買った単身女性にも取材をしたんですけど、みなさん「いざとなったら最終的には売ればいい」と言っていたのに驚きました。私はどうしても、持ち家を資産や投資と考えることができなくて、愛着を持って一生愛でるものだと思ってしまうので。池辺ただ、持ち家も自分の人生を彩るツールのひとつにすぎないから、そこまで一生ものと考えて情を持つ必要はないのかなって思ったりもするんです。自分の状況が変わって要らなくなったら、売って明け渡せばいいのかなと。これまで家を買うなんて興味もなかったけど、この連載を始めてから、家を買えるっていいなって思うようになりました。――そこをもう少し軽やかに考えられるようになったら、生き方のパターンも増えそうですね。池辺今住んでいる家は賃貸なんですけど、カウンターキッチンで選んだんです。私にとってはそれだけでテンションが上がって毎日が楽しくなる。あとすっごいつらくても、幸せな気持ちになれるんですよ。家賃は希望より少し高かったんですが、少しの間だけ、と思い切りました。すごく貯金したところで、人間死ぬときは1円も持って行けないんだって思って。将来のために、今少しの不自由さを我慢するのもいいことだと思うけど、上手に使って今を楽しく生きるのもいいのかなとも。どんなに大変なことになっても、絶対なんとかなるってどこかで思ってるところがあって。浪費に気をつけないとですね。本当の贅沢とは高価なものを持つことではなく、心の有り様だとおっしゃる(そして贅沢とは悪いことではない)森茉莉さんの「貧乏サヴァラン」を再読して原点に戻らないとです。――家を持つことを、将来への投資とか、老後のための保険と言われても、正直ピンとこない人は多いと思います。池辺私も少し前まで老後のことを考えてたんですけど、最近はもう死を考えるようになって(笑)。どこでどんなふうに死ぬんだろうと思ったら、自分が今どう生きたいのかをすごく考えるようになりました。そう考えたとき、ふと、自分が死ねる家があったらいいなって思って。まあ、実際は病院で死ぬことのほうが多いやろうけど。サスペンスとか見てると、ご年配の方が「死ぬ時は自分の家で死にたい」と言うシーンをたまに見るんです。それ、前までは何でやろって思ってたけど、最近、その気持ちがちょっとだけ分かるようになりました。――家のことに限らず、人の目を気にせずに、今の自分の幸せのためにがんばれる沼ちゃんのような生き方ができたらいいですね。今日はどうもありがとうございました!(プロフィール)池辺葵2009年、『落陽』でデビュー。洋裁店で働く女性が主人公の『繕い裁つ人』(講談社)は、2015年1月に中谷美紀主演で実写映画化もされた。他の作品に、喫茶店を舞台とした群像劇『サウダーデ』(講談社)、老婆の夢と現実を描いた『どぶがわ』(秋田書店)などがある。現在、『やわらかスピリッツ』(小学館)×『モチイエ女子web』にて、『プリンセスメゾン』を連載中。2月12日に最新刊第2巻が発売された。
2016年03月14日笑福亭鶴瓶が注目の人物の素顔に迫る番組「A-Studio」の新アシスタントとして森川葵が就任し、TBS局内で囲み取材が行われた。森川さんは、釣瓶さんより「お前はなんか肝が据わっているし、大丈夫だ」と背中を押されたと明かし、「本当に少しだけですけど大丈夫なんだって思いました」と、バラ色の笑顔を浮かべた。森川さんが8代目サブMCとして初登場する4月1日(#357)と4月8日(#358)の収録の後、取材は行われた。収録直後の感想を尋ねられた森川さんは、「たくさんのお客さまが目の前にいて、釣瓶さんがいて、自分が何をしていいかわからなくってずっと緊張しっぱなしでした。今日、肩こりがひどくなった気がします(笑)」と言いながらも、ようやく一息ついた様子。#357のゲストは多部未華子、#358は坂口健太郎と俳優同士の競演となった。特に、坂口さんとは現在放送中のフジテレビ系ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で想いを寄せられる役として近しい距離にいる。バラエティで一緒になることについて、森川さんは「普段の姿を知っているので、人生をどういうふうに生きてきたかとかを聞くと、なんか知ってる坂口さんと知らない坂口さんが出てきて…。これ知っちゃっていいのかなって思ったり(笑)」と、ゲストの魅力を引き出していく番組だと語った。ちなみに、話を聞いてみたいゲストは「橋本愛」だそう。その理由を「同じ年なんですけど、橋本愛と仲が良いんです。一緒にいて、『どう育ったらこの落ち着きが出るの?』っていうくらいなので、橋本愛に関して知ってみたいなって思います。調べてみたいです」と、ラブコールを送っていた。森川さんの8代目アシスタント起用について、番組プロデューサーの酒井祐輔氏は「ドラマや映画の役柄で始末の悪い女の子を演じさせると抜群ですが、実際の森川さんはすごくやわらかく、ほんわかした佇まいで、このギャップが魅力です。誰かの言葉の受け売りではなくて、自分の言葉で自分の考えをしゃべる姿勢が素敵だなと思いました」と、新しい顔に期待を寄せた。森川さんがアシスタントを務める「A-Studio」はTBS系にて、4月1日(金)夜23時から放送。(cinamacafe.net)
2016年03月14日自分の理想の家を求め、マンション見学にいそしむ25歳の居酒屋店員、沼越さん。女ひとりで家を買うという一見高いハードルに対峙する沼越さんは、<大きい夢なんかじゃありません><自分以外の誰の心もいらないんですから>と真剣だ。その姿に心を動かされ、いつしか不動産の販売スタッフまでもが、仕事を超えて応援するように…。家を買うことをめぐり、人生や人とのつながりを考えさせてくれる池辺葵さんの『プリンセスメゾン』。2巻では、沼越さんは、より具体的になってきた“購入可能物件”に案内される。内見中のうっとり笑顔が超かわいい。「連載を始めて、あらためて家とは何だろうと考えるようになりました。私自身はこれまで、2年くらい経つと家移りして気分を変えたくなる方でした。でも年齢を重ねるにつれ引っ越し先の町になじむのが大変になってきたこともあり、沼ちゃんのように、理想の居場所を探したいなと思うようになってきましたね」沼越さんの家探しのかたわら描かれるのが、ミステリアスな老女や若き女性編集者らと、彼女たちの住まいとの関係だ。そのほか、沼越さんが背負っている過去のドラマや、彼女のマンション探しを手伝う<持井不動産>の面々とのふれあいなど、サブストーリーにも揺さぶられる。また、池辺さんのアーティスティックな絵のタッチにも注目。繊細な風景描写にも魅せられるが、登場人物の表情における表現力は特に群を抜いている。ほぼ輪郭とメガネだけしか描き込まれてない<持井不動産>の伊達さんでさえ、微細な感情を不思議と読み取れてしまうのは、池辺さんの画力の賜物だ。本作を描くにあたり、東京でマンション巡りの取材もしているそう。「私自身が沼ちゃんになって、『これぞ運命!』というマンションに出合い、その高揚感も交えて描きたいなと思っているんです」◇来るオリンピックに備えて注目を集める東京で、自分のためにマンション購入を考えている沼越幸。理想の家は見つかるのか?web「やわらかスピリッツ」で連載中。小学館552円◇理想のマンションを求めて、女たちは真摯に人生と向き合う。(C)池辺葵/小学館◇いけべ・あおいマンガ家。2009年デビュー。祖母の洋裁店を継いだ女性を描く『繕い裁つ人』は映画化もされた。老婆の簡素な暮らしを彩る、優雅な夢物語『どぶがわ』など著書多数。※『anan』2016年3月9日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月04日小関裕太と森川葵が2月27日(土)、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2016」にて上映される『ドロメ【男子篇】』舞台挨拶に内藤瑛亮監督と共に登壇した。『先生を流産させる会』が同映画祭でセンセーションを巻き起こした内藤監督が新作を携えて凱旋。統合予定の男子校と女子校の演劇部が合同合宿を行う山奥の校舎で、地元に伝わる“ドロメ”と呼ばれる妖怪が現れるが…。森川さんを主演に女子側の視点から見た【女子篇】と、解答編とも言える小関さんを主演にした【男子篇】の2作で3日間の物語がつづられる。内藤監督はこの日、同映画祭のメイン会場で橋本環奈が登壇し、『セーラー服と機関銃 -卒業-』が上映されたことを引き合いに、あえて『ドロメ』のために会場に足を運んだ観客を「素晴らしいチョイスです!」と称賛し笑いを誘う。小関さんは開口一番「北海道、大好きです(笑)!」と語り、会場をわかせた。取材のスケジュールが立て込んで、なかなか映画祭を楽しむ時間はないようで「もったいないですね」と残念そうな表情を見せたが、映画祭の雰囲気について「空気が優しくてアットホーム。もっと堪能したいです」と笑顔を見せた。森川さんは北海道を訪れるのはこれが初めてだそうで、北国ならではの冷たい空気が「痛い!外に出ると、本当に空気が肌に突き刺さるようで…こんなに痛いんだ!という感じです」と顔をしかめる。それでも映画祭の雰囲気を楽しんでいるようで「気になる作品ばかりです。来年は個人的に見に来れたらと思います!」と笑顔で語っていた。この日の昼に、3人は会場近くで寿司を堪能したそうだが、内藤監督は「おいしさのあまり、森川さんがドラマ『監獄学園-プリズンスクール-』での“アヘ顔”をやってくれました(笑)」と暴露!ドラマ放送時に大きな話題を呼んだ森川さん演じる花のアヘ顔だが、壇上で披露を促されると「待って待って(苦笑)!」と森川さんは大慌て。「食べ物を用意してもらわないとできません(笑)!」となんとかムチャぶりをかわした。前日の【女子篇】に続く【男子篇】の上映となったが、小関さんは「【女子篇】の後に【男子篇】を見るとわかります」とニヤリ。内藤監督はホラーとはいえ「校舎に犬が入ってきたら大騒ぎになるでしょ?その犬くらいの感覚でモンスターを撮りました。学園の中に変な転校生がやって来て、それがモンスターだった」とアピール。森川さんも「青春や日常をリアルに切り取ってますので楽しんでいただけると思います」と語っていた。『ドロメ』は【女子篇】【男子篇】ともに3月26日(土)より公開。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2016」が2月29日(月)まで開催。(text:cinemacafe.net)
2016年02月28日月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」でも注目を浴びている森川葵が2月26日(金)、開催中の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016」にて、主演映画『ドロメ【女子篇】』の舞台挨拶に小関裕太、内藤瑛亮監督と共に登壇した。女子高と男子高の演劇部の合同合宿に、地元に伝わる謎の妖怪“ドロメ”が現れ…。『先生を流産させる会』が同映画祭で激賞された内藤監督が同じ時間軸の物語を【男子篇】と【女子篇】の2つの視点に分けて描き出す。上映前に一人で登壇した内藤監督は、これまで自身が描いてきた「青少年が殺し、殺そうとする作品」ではなく「もっとピースフルな少年少女が見たいと思った。笑顔あふれるホラーがあってもいいんじゃないか?」と本作の趣旨を語ったが、その言葉通り、上映中は謎の“ドロメ”への恐怖だけでなく、客席からはたびたび笑いがわき起こった。最後に「終」の文字が出た瞬間、思わぬ爽快感(?)に会場はドッと沸き、拍手に包まれた。内藤監督は会場脇でこの拍手を耳にしていたようで「そうなればいいなと思って作ったので嬉しいです」とホッとした様子。森川さんも「笑っていただけたようで嬉しいです」と笑顔を見せた。小関さんは「ジャンルにとらわれない作品です。見た人の感性によって、これはコメディ、これはホラー、いろんなジャンルが混ざってる…など、いろんな意見が聞けたら」と語り、さらに「【男篇】を見れば、そういうことか!という発見があります」と呼びかけた。撮影中のエピソードを訪ねると、森川さんは「期間中に撮り終わらず、再集合がかかったのは初めて」と明かす。内藤監督によると、外で撮る予定の最終シーンの撮影が雨のためにできなかったそうだが、森川さんは「いいシーンが撮れて良かったです」とニッコリ。小関さんは、劇中で男子部員が作る晩ごはんのマズいカレーについて言及し「本当にマズかった!すっごい薄いんです。あれは不思議…作れないです」と感嘆!森川さんも「何の味だろう?って感じでした」と顔をしかめていた。『ドロメ』は3月26日(土)より【男子篇】【女子篇】ともに公開。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016は2月29日(月)まで開催。(text:cinemacafe.net)
2016年02月27日20代後半、年収250万ちょっと、恋人なしのおひとりさま女性・沼越さんが、“運命の物件”を求めてモデルルームを巡り歩く日々を描いた漫画『プリンセスメゾン』。『モチイエ女子web』との連動企画として『やわらかスピリッツ』に連載され、女性読者を中心にあたたかい共感とささやかな勇気を与えている本作の作者・池辺葵さんに、女性の人生と住みかの関係について前後編でお話を伺いました。沼ちゃんは偏見や思い込みを打ち破る私にとってのスーパーヒーロー『プリンセスメゾン(1)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――そもそも、理想のマンション購入を目指すおひとりさま女性を漫画の題材にしようと思ったきっかけや経緯を教えてください。池辺葵さん(以下、池辺)もともと『モチイエ女子web』さんから、単身女性が家を買うことをテーマに漫画を連載したいという話があって、担当のKさんが私に企画を持ち込んでくれたんです。担当編集Kさん(以下、担当K)池辺さんはこれまで『繕い裁つ人』や『サウダーデ』などの作品で、衣食住の“衣”と“食”は描いてこられたので、「次は“住”はどうですか?」と。池辺私自身は、これまで家を買おうなんて考えたことがなかったんですけど、『サウダーデ』を描いたときに、家がないということや、帰るところがないということを、もう少し深く描きたいなと思って。『プリンセスメゾン』では、“ふるさと”や“居場所”をテーマにしていると自分では思っています。――沼越さんは、居酒屋に勤務しながら古いアパートの1階に住み、こだわりを持って地道な貯金とモデルルーム巡りを繰り返しています。恋愛や結婚とは関係なく、自分のためだけに家を買いたい、と主体的に行動する女性を描いているのが新鮮でした。池辺沼ちゃん(沼越さん)は、私にとって憧れのスーパーヒーローなんですよ。はたから見たら「沼ちゃんってかわいそうじゃない?」と思われてしまうような恵まれない状況でも、凛としていて、すごくいきいきと美しく生きている。独身で家を買う女性に対する、世間の偏見や思い込みをとっぱらってくれる存在なんです。――2巻には「まずは自分の人生をちゃんと自分で面倒みて、誰かと生きるのはそのあとです」というセリフがあって、とてもかっこよかったです。池辺沼ちゃんは、それはそれで極端だとは思いますけどね。もちろん、人は恋愛を通して成長したり、自己を確立したりすることもできるけど、そうじゃない人も魅力的に描きたいなと思っていて。共感を頼りにしか描けないからいろんな人の孤独に寄り添いたい『プリンセスメゾン(2)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――作品では沼ちゃん以外にも、さまざまな家で、さまざまな生き方をしている女性が描かれていますが、職業や地位やキャリアにかかわらず、人知れずみんなどこかに孤独を抱えている気がしました。池辺恥ずかしいことですけど、私はゼロから物語を作るのが苦手で。共感だけを頼りに描いているというか、自分が日々感じている感情をもとに膨らませないと、話に入り込めないんです。――でも、読んでいて決して寂しい気持ちにはならず、むしろ励まされて温かい気持ちになります。2巻に出てくる、旅をするOLの豊田さんが印象的でした。池辺実は、温泉で倒れたのは実話なんです(笑)。北海道へ一人旅に出かけたとき、札幌から帯広まで電車で3〜4時間かけて移動するのが大変で、疲れてたんでしょうね。温泉に入ったら気を失って浮いてたみたいで……。私、このまま死んでたかもしれないと思ったらなんかおかしくなっちゃって、これ絶対漫画に描こうと思いました。――最後、オフィスの屋上でタバコをふかしながら「さて、どこで生きようか」と見栄を切るのもいいですよね。池辺意地っ張りというか、虚勢を張っている女の人を描くのが好きなのかな。見栄を張るのって別に悪いことじゃないと思っていて。全然かっこよくないけどかっこつけてる、それが本当にかっこよく見えたらいいなと思って描いてます。担当K池辺さんの描く女の人は、ダウナーだけど読んでいて心地いいんです。テンションの高い超元気な人が出てきたら、「ああ、こっちも頑張らなきゃ……」みたいに思わされてつらいじゃないですか(笑)。池辺でも、ちょっと偏っているかなと思うときもあります。家を買う単身女性を応援するwebサイトなのに、持ち家やマンションの魅力をあんまり描けていないんじゃないかと心配で。『モチイエ女子web』さんがよく我慢してくれてるなって(笑)。――マンション購入をことさらよいものとしてゴリ押ししたりせず、ひとつの価値観を押しつけるようなところがないのがこの漫画のよさだと思いますよ。池辺ただ、買うか買わないかはともかく、「こんな暮らしが私にもあったら」と素敵に思えるように描いてほしい、とは担当さんからお願いされています。それに、登場人物たちがどんな境遇であっても、最終的には自分のことを肯定して前向きに生きているように見えたらいいな、と思って描いてますね。描きたい景色が先に浮かんでから物語が下りてくるのを待ちます――池辺さんは、描きたいシーンから話を考えたり、先にセリフが浮かんだり、というのが作品によって違うそうですが、本作ではどうですか?池辺『プリンセスメゾン』はシーンが先に浮かびます。たとえば、すごくきれいな景色を見たときに、「これを眺める女の人が描きたいな」と思ったり、あるいは「こういうところがふるさとだったらいいな」「でも、自分にはあそこに帰りたいと思えるような場所がないな」と思ったり。そういうところから発想していきますね。――描きたいと思った景色や感情は、普段から意識して覚えておくようにしているんですか?池辺以前はそういうのをスマホにメモしてたんですけど、あるできごとに感情を揺さぶられたら、そのとき感じたことはそのとき描かないとものにならないということがわかって。今は、ぎりぎりまで発想や衝動が下りてくるのを待つ感じです。待っていれば絶対に下りてくると言い聞かせて、自分を信じるようにしています。――毎回、見開きの絵がとてもきれいで素晴らしくて、息を呑みます。この景色を見開きで見せたいな、と考えて話を作ることは?池辺話の流れの中でこれが見開きにきたらいいな、と自然発生的に生まれるものなので、見開きで描きたいシーンから話を作ったことはないです。見開きの絵ってすごくインパクトがあるし、読む人に訴えかけるパワーがあるぶん、その力に頼ってしまっている気がして、最近は控えるようにしてるんです。――そうなんですか?毎回、どんな流れでどんな光景が見開きでバンとあらわれるのか、楽しみにしていました。池辺それまでデジタルデータで描いていたのを、2巻の途中からアナログ原稿に戻したんですよ。デジタルをうまく使いこなせなくて。そしたら、見開きはを描くのがすごくしんどくて、頭に浮かんでいるイメージをちゃんと表現できる画力が、自分にはまだないと思い知らされました。だから、見開きはもっと考えて使わないとなって。担当Kでも、アナログに戻してから書き込みが細かくなって、原稿がすごくよくなってると思います。コマの外に絵や書き文字をはみ出させたり、小さな遊びを入れてくださることも増えてきていて。タッチも変わっていると思うので、そこも味わいながら読んでほしいですね。後編「家探しとは自分の人生を見つめ直す作業である」につづく(プロフィール)池辺葵2009年、『落陽』でデビュー。洋裁店で働く女性が主人公の『繕い裁つ人』(講談社)は、2015年1月に中谷美紀主演で実写映画化もされた。他の作品に、喫茶店を舞台とした群像劇『サウダーデ』(講談社)、老婆の夢と現実を描いた『どぶがわ』(秋田書店)などがある。現在、『やわらかスピリッツ』(小学館)×『モチイエ女子web』にて、『プリンセスメゾン』を連載中。2月12日に最新刊第2巻が発売された。
2016年02月23日This!編集部員(左から小林、金城、前列濱谷)昨年11月13日に創刊した小学館のファッションカルチャーマガジン『This!(ディス)』。漫画、書籍、演劇など、ファッション以外のジャンルも幅広く扱う雑誌(ムック)です。同誌は、それぞれヒット作品を持つ女性編集者3人が、20代から30代の女性が本当に読みたいものを届けたいという思いで、所属部署の垣根を越え、各自の得意分野の企画を持ち寄ることでつくられています。そんな一大プロジェクトを実現させた彼女たちに創刊の裏側を尋ねたインタビュー第1回「やりたいことをやりたい女子へ!まずは「数字」と「好き」を探そう」では、客観的なデータを大事にしつつ「好き」を仕事にするのが、成功の鍵かもしれないという話に。ただ、多くの苦難を越えてまで実現したいと願う “本当に好きなこと”って一体どういうものなのでしょうか。第2回ではさらに詳しくお伺いしました。死ぬほどやりたい企画なのか?勝算があるからやりたい企画なのか?――『This!』は、編集部員それぞれの「好きなことを仕事にする」が体現されている雑誌だと感じます。ただ実際には、その第一段階の「企画を通す」というところにつまずく人も多いように思うのですが。金城小百合さん(以下、金城):そうですね。私は転職したばかりということもあり、本業『スピリッツ』での企画の通し方が分からず悩んでいた時期がありました。そのことを小林(『This!』編集長)に話したところ、「なんで悩むの?企画というものは通すものだよ」と返されたのが衝撃的で。その言葉に励まされて、さらに2、3回出し続け粘ったら、最終的には連載に至りました。濱谷梢子さん(以下、濱谷):「通すのが企画」、と小林はよく言っていますね。彼女は名言が多くて、ほかにも「それは土下座してまでやりたいことか」というのもあります(笑)。上司に土下座してたのみこんでもやりたい企画であれば実現させるべきだし、土下座をしてまでやりたいとは思えないなら、そもそもそれはいい企画じゃないんだって。小林由佳編集長(以下、小林):「土下座」なんて言ったっけ?(笑)私の場合、自分のセンスをあまり信用していないから、データを調べることで企画に自信をつけていきます。やりたいことを実現するためのコストや、過去の類似作の売上データなど、“数字”を把握することで「これならいける!」と自信をつけていくんです。濱谷:「好きを仕事にする」といってしまうと、情熱だけで動いている編集部のように受け止められるかもしれませんが、勝算もシビアに求められます。「絶対この企画がやりたい!」というとき、そう言える根拠はどこにあって、この記事があれば絶対この本を買う!という人がどのくらいいるか説明しなければいけないんです。小林:それはそうですね。でも究極を言っちゃうと、『This!』編集部では、明確な勝算がなくても、土下座してまでやりたい企画ならOKっていう気持ちはあるかも…(笑)。例えばふたりが依頼したい作家さんが編集長の私にはピンとこなかったとしても、それほどまでに推す思いがあるならいいのかなって。「…とはいえ、いかかでしょう?」の取材交渉術――データを根気強く調べたり、「好き」への情熱を持続させたり、「企画を通す」こと1つとっても粘り強さが必要なのですね。濱谷:そうですね。今回小林と金城と一緒に仕事をして、ふたりがとにかく「絶対に諦めない」のがすごいと思いました。『This!』創刊号で「あこがれの仕事につく100人の図鑑」というアンケート取材の特集がありますが、実際には200人以上に依頼しています。有名人や一般の方、国籍なども問わず幅広く取材しましたが、少なくとも3回断られるまでは同じ人に依頼するんです。そんな風に粘り強く交渉していると、先方から「今回はダメだけど、次は絶対協力したい」と言って頂くケースがでてきて、感動しました。「そんなに言ってくれるなら」って。小林:でも、断られるのが3回目ともなると、さすがに不安になります。それで金城に「どうかな、やっぱりやめようかな」と相談したら、「でも、交渉するのはタダだよ」って言うんです(笑)。金城:何度断られても、「…とはいえ、いかかでしょう?」を合言葉に決して諦めませんでした(笑)。小林も持ち前の粘り強さで、かねてより念願だったという今田耕司さんに漫画作品をレビューしていただく企画を今回実現していました。濱谷:その取材には私も立ち会ったのですが、初めてお目にかかる今田さんに対しても、実際のサイズで作ってきた見本を見せながら説明したりと、とても積極的でした。そうするうちに、今田さんの表情が生き生きとしてきて…そういうことが今回の創刊の過程で何度もありました。仕事とは「企画を実現する」までが半分――「企画を通す」、「企画を通して実現する」の過程でずっと情熱が行動として途切れない。それこそ、「本当に好き」だという気がします。金城:それだけ真剣に向かい合ったので、出版直後は本当に疲れ果てて燃え尽きました。『This!』を見るのも嫌だというぐらい(笑)。小林:私も、終わった直後は朝なかなか起きられなかった。でも、糸井重里さんがツイッターで「人は仕事をするためには休まないといけない」というようなことをおっしゃっていたので、休んでもいいかなと。自分を振り返ってみても、『おじさん図鑑』など気合い入れた本を作った後は、よく休んでいます。ただ休んだ後は、こうしてネットの媒体に取り上げていただくようにPRをしたりと、本をつくった後もすごく大事だと感じています。金城:PRは本当に大事ですよね。今、担当している『プリンセスメゾン』という漫画があるんですが、絶対に面白いし、たくさんの人に読んでほしかったので、たとえば漫画書評家の方に献本した後、電話でも追いかけて「○○で取りあげてください!」とお願いしました。「そこまでお願いしてくる編集者は初めてだ」と驚かれましたが、ご紹介くださって。「でも、このやり方は1回だけだぞ」って言われました。ブルボン小林さんですが、すごく感謝してます。そこまでしたくなるぐらいの心からの自信作だったということがあります。濱谷:仕事って企画を実現するまでが半分で、そこからそれを世の中にどこまで広げるかがもうあと半分なのだと実感しています。本をつくるなら、製作に費やしたエネルギーと同じぐらいの熱量で、世の中に広めたいと思うような本をつくらなければと思います。『This!(ディス)』が気になった方はこちら!【プロフィール】小林由佳さん(こばやし・ゆか)さん1980年生まれ。山と溪谷社を経て2007年小学館入社。児童・学習編集局 図鑑百科編集室所属。<主な担当書籍>『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘 作・神谷圭介 絵)、『おじさん図鑑』(なかむらるみ/絵・文)、『図鑑NEO花』、『わたしがカフェをはじめた日。』以上、小学館。『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。濱谷梢子(はまたに・しょうこ)さん1979年生まれ。リクルートを経て2007年小学館入社。女性誌局編集部を経て、現在は広告局所属。<主な担当雑誌>『Oggi』(編集部、後に広告担当)、『AneCan』(編集部)、『Domani』(広告担当)以上、小学館。『ゼクシィ』(編集部、リクルート)。金城小百合(きんじょう・さゆり)さん1983年生まれ。秋田書店を経て2014年小学館入社。第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ編集部所属。<主な担当漫画>『アイアムアヒーロー』(花沢健吾)『プリンセスメゾン』(池辺葵)以上、小学館。『cocoon』(今日マチ子)、『花のズボラ飯』(久住昌之 原作・水沢悦子 漫画)以上、秋田書店。Text/皆本類
2016年02月22日This!編集部員(左から小林、金城、前列濱谷)昨年11月13日に創刊した小学館のファッションカルチャーマガジン『This!』。ファッション、漫画、書籍、演劇などジャンルも幅広く扱い、表紙の「水曜日のカンパネラ」のコムアイや劇団「マームとジプシー」の主宰・藤田貴大など今注目の才能が続々登場しています。さらには、湯山玲子、まんしゅうきつこなど、SOLOにもご登場いただいた方々のコンテンツも!20代~30代の女性を中心に、今を楽しく過ごしながらも、どこか漠然とした不安を抱えながらその解消策を探している…、そんなニーズを持っている女性に届けたいという思いで作られたという同誌。別々の部署にいる女性3人が集まって実現させた創刊の裏側について、全3回にわたってお話をうかがいました。『This!』編集長は小学館の“半沢直樹”!?――みなさん出版社にお勤めで本来の業務だけでもお忙しいはずなのに、そのうえで新しい雑誌(ムック)を創刊しようと思ったのはなぜなのでしょうか?小林由佳編集長(以下、小林):私は児童書の部署で、これまで児童書のほかに『おじさん図鑑』や『あたらしいみかんのむきかた』など、自分が得意とするサブカルチャーっぽい単行本を“1人編集長”のようにつくってきました。ただ、雑誌を読んで育ったことから「いつかはチームで雑誌もつくってみたい」という思いもあり、それが2人が集まってくれたおかげで実現しました。濱谷梢子さん(以下、濱谷):私はもともと女性ファッション誌の部署に所属していて土日もないような日々でしたが、最近広告部に異動して以前よりは少し自分の時間がとれるようになったんですね。それで、通勤前の早朝に、4コマ漫画をインスタグラムに趣味でアップし始めたら、1週間で1000人もフォロワーが増えたんです。そんな話をあるとき同期の小林にしたところ「そんなにやる気があるんだったら、一緒に雑誌をつくろうよ」と持ちかけられたんです。小林:せっかく雑誌や本をつくれる出版社に勤めていて、色んな意欲があるんだったら公式に仕事としてもかたちにしたいと思って。ですが、私たち2人だけだと分野の幅が少ないと感じ、そこで思い浮かんだのが『週刊ビッグコミックスピリッツ』の編集をしている金城でした。金城小百合さん(以下、金城):私は一昨年中途入社してきたのですが、転職した頃すぐに小林から社内メールでランチに誘われて。それが初対面でした。小林は私が前職で担当した漫画作品を知っていて、仕事ぶりを評価してくれていました。それで『This!』での漫画家さんの開拓を中心に、私もスピリッツの編集をしながら編集部員として参加することになったんです。空気は読めないというか “読まない”――小林さんが求心力となってプロジェクトが進んだんですね。濱谷:小林は、弊社における「半沢直樹」的存在かも。ヒット作を生み出しているから上司からの信頼も厚いけれど、いいものをつくるためだったら目上の人に対しても決して譲らないところがあります。『This!』の創刊を通すための会議でもすごかったよね。小林:空気は読まないところがあるかもしれません。初めに雑誌の新創刊を会議で提案したときに、「雑誌をつくったことのない君にはまだ早い、もう少し準備をしてから出直しなさい」というような趣旨の判断をされたのですが、めげずにその1カ月後にまたすぐ企画を持って行きました。そうしたら、「えっ!?この人また来た。空気読めないなぁ…」みたいな雰囲気に(笑)。でも、空気読んでも通せなければ意味ないですからね。「雑誌をつくったことがないから無理」なのではなく、具体的にどういった部分がダメかを言ってもらえないことには前に進めないと訴えたんです。すると、児童書の部署だけでなく、他部署や営業系や宣伝など雑誌畑の方にも検討していただくチャンスを与えられ、その場でようやく認められました。感性は信じないけど「数字」や「好き」は信じられる――味方の少ないアウェーな状況のなかでも、自分の企画を信じて突き進めるためになにを支えにしていますか?小林:自分の感性はそこまで信じていなくて、大手書店が出しているデータなどを使って、ものすごく調べます。自分の企画の類書が今どれくらい売れているのか細かく数字で分析していくことで自信を付けるんです。まずはそれをベースに、自分の好きなことをプラスするというか。やっぱり好きなことしか本気で頑張れない部分もあるので、数字と自分の好きなこと、そのバランスが取れるところを狙っていきます。濱谷:私の場合はひたすら「リサーチ」です。たとえば、今回出稿いただいたカシオさんの「BABY-G」の公式サイトではイラストレーターさんとのコラボレーションなどを盛んにやっていらして、それがポップで素敵だったんです。きっと『This!』の目指す世界観をわかってくださるはず、とアプローチしました。金城:でも、濱谷も「好き」が仕事の原動力の1つになっているよね。誌面にあるカルビーの「フルーツグラノーラ」でのプレゼンに同席しましたが、向こうの担当社に“フルグラ愛”をとつとつと語る姿がすごい熱量で。まるで憧れの漫画家さんに仕事を依頼するときのような勢いだと思いました。「スピリッツ」での通常業務でも、「好き」という気持ちは重要だと思っています。たとえば、今回登場いただいた漫画家の鳥飼茜さんはほかの漫画誌で活躍する、個人的には大好きな作家さんです。今回『This!』での執筆のお願いを機に初めてお会いしましたが、その際、鳥飼さんから「新しい表現方法を試したい」との要望を伺い、その解答である「鉛筆線」の原稿が最大限に映えるよう、原稿をいただたてからは紙やインクを選び直したり、印刷所に何度も出し直してもらったりしました。鳥飼さんからあがった原稿が素晴らしくて、なんとかそれに報いたくて執念的に頑張った。それが「好き」のなせる業だと思いました。小林:記事でも広告でも意外にも「好きなこと」をやるのが仕事を成功させる一番の近道かもしれないという実感を持ちました。女性3人だけで雑誌を創刊するというと外部からは「健気」にみえることもあるようなんです、実はすごくたくましいメンバーなのに(笑)。でも、自分たちのなかでは「健気」というよりは、客観的なデータと自分の好きなことへの思いをとにかく「一生懸命」に探っているという感覚があります。【プロフィール】小林由佳さん(こばやし・ゆか)さん1980年生まれ。山と溪谷社を経て2007年小学館入社。児童・学習編集局 図鑑百科編集室所属。<主な担当書籍>『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘 作・神谷圭介 絵)、『おじさん図鑑』(なかむらるみ/絵・文)、『図鑑NEO花』、『図鑑NEOポケット植物』以上、小学館。『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。濱谷梢子(はまたに・しょうこ)さん1979年生まれ。リクルートを経て2007年小学館入社。女性誌局編集部を経て、現在は広告局所属。<主な担当雑誌>『Oggi』(編集部、後に広告担当)、『AneCan』(編集部)、『Domani』(広告担当)以上、小学館。『ゼクシィ』(編集部、リクルート)。金城小百合(きんじょう・さゆり)さん1983年生まれ。秋田書店を経て2014年小学館入社。第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ編集部所属。<主な担当漫画>『アイアムアヒーロー』(花沢健吾)『プリンセスメゾン』(池辺葵)以上、小学館。『cocoon』(今日マチ子)、『花のズボラ飯』(久住昌之 原作・水沢悦子 漫画)以上、秋田書店。Text/皆本類客観的なデータの分析を大事にしつつ、「好きなこと」をするのが仕事の成功させる一番の近道かもしれないという予感を感じたという『This!』編集部の面々。ただ、本当に「好きなこと」とは一体どのような基準で測られるものなのでしょうか。次回は、「好きなことで仕事する」の本質に迫ります。
2016年01月26日書店員や編集者、その年を象徴する有名人らの投票によってランキングされる『このマンガがすごい!』が10年めに突入。少女マンガに対する深い愛情で舌鋒鋭い評論をする女子マンガ研究家の小田真琴さんに、今年の結果を講評していただいた。「サブカルすぎず、ライトすぎず、たまにはマンガも読みたいといういわゆる浮動票読者をも惹きつけてきた歴史がありますが、今回のオンナ編を見ると異変が。これまでの少女マンガの文脈の外にある『ヲタクに恋は難しい』が1位になってしまったことがちょっと驚きでした」ヲタクを自称する男女のラブコメディは、書店員たちの圧倒的な票を集めた。2位の『東京タラレバ娘』は、第6回アンアンマンガ大賞も受賞している超人気作。「しかし、この世界観に疲れてしまった人にはぜひ10位にランクインした池辺葵先生の『プリンセスメゾン』をお読みいただきたいです。誰かを必要とする幸せを描く『東京タラレバ娘』と、誰の心も必要としない幸せを描く『プリンセスメゾン』は、表裏一体の関係にあります」3位には、『町田くんの世界』が。「多くのマンガにあるように、カッコいい、可愛い、センスがいいなど“スペシャルな何か”がなくても世界は美しいのだと、このマンガは教えてくれるところが素敵です」『町田くんの世界』安藤ゆき著(集英社)各400円現在2巻まで。「絶大な優しさで老若男女に愛される町田くん。この不思議な幸福感は癖になります」。『ヲタクに恋は難しい』ふじた著(一迅社)815円現在1巻まで。「ヲタクを恋愛しない言い訳にしている人は共感しそう」。『東京タラレバ娘』東村アキコ著(講談社)各430円現在4巻まで。「賛否両論ありますが作者一流の語りは一読の価値あり」※『anan』2016年1月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年01月19日中高生向けライブ学習サービス「スマホ学習塾アオイゼミ(以下、アオイゼミ)」を運営する葵はこのたび、KDDIによるコーポレートベンチャーキャピタル「KDDI Open Innovation Fund」とマイナビ、電通デジタル・ホールディングス、日本政策金融公庫などを調達先とし、総額2.8億円の資金調達を実施したことを発表した。アオイゼミは、平日19時から配信される「ライブ授業」を無料で受講できる中高生向けライブ学習サービス。リアルタイムに配信するため、オンライン上の教室に全国から毎日3,000人を超える中高生が集まるほか、生放送の利点を活かし、実際の教室にいるかのようにその場で講師に質問できたり、他の受講生とコミュニケーションしながら学習をすすめることができる。アオイゼミは今回の資金調達により、更なる経営体制の強化を図るとともに、前年同月比200%以上に成長する受講生徒数に対応する新しいライブ配信システムや、受講生一人ひとりに最適な学習コンテンツを届けるレコメンド機能の開発など学習システムについての強化を図っていく。また、学習コンテンツの更なる拡充を目的に、大手予備校出身の人気プロ講師の採用を進めつつ、新規科目の開講やコンテンツ数を増加させたい考えだ。加えて、KDDIの「auスマートパス」や、マイナビの進学情報サイト「マイナビ進学」との連携を図り、大企業×ベンチャーのシナジー効果を発揮していくという。
2015年11月26日注目のイットガールが登場する連載。今回のゲストは、話題作に次々出演中の女優・葵わかなさん。デビューは小学生の頃。「TVに出たい」と思い始めた矢先にスカウトされたのだとか。「TVに出たかったのは、当時クイズ番組にハマっていて早押しボタンを押してみたかったから。母とオーディション用の写真を撮りに行った帰りに声をかけられたんです」。その後、着々とキャリアを積み、今年は『くちびるに歌を』『暗殺教室』『罪の余白』と、出演映画が次々と公開に。「私、暗く見えるのか、シリアスな役が多いんですよ(笑)。でもおしゃべり大好きなので、ラジオ番組を持つのが今の目標です!」◇あおい・わかな 1998年生まれ。上で紹介した漫画『おとなりボイスチャット』のドラマ版は、11月10日『Eテレ・ジャッジ』 (NHK Eテレ)内で放送予定。 ◇DVDやポスター…部屋は宝塚でいっぱい。「華やかで、夢がある。宝塚の舞台を観るとすごく元気が出るんです」◇ドジでかわいい愛猫のちゃろさん!「母や父ばかりになつくので、私に振り向くように試行錯誤中(笑)」◇大好きな漫画のドラマ版に出ます♪「壁越しの会話から始まるラブストーリー。謎の多い女性を演じます」※『anan』2015年11月11日号より。写真・土佐麻理子文・間宮寧子
2015年11月10日女優の葵わかなが16日、都内で行われたドラマ『いつも まぢかに』のトークショーに、俳優の津嘉山正種、女優の浅見れいならとともに出席した。同作は、映画・ドラマ専門チャンネル「イマジカBS・映画」の開局20周年を記念して、制作されたオリジナルドラマで、ある老夫婦の"いままで"と、"これから"に寄り添ってきた名画がもたらす小さな奇跡と軌跡を描く物語。津嘉山が演じる主人公の孫娘・彩香役を演じた葵は、設定年齢が自身と同じ17歳ということで、共通点を聞かれると「進路に悩んでいる役で、私自身も周りもそうなんですが、学校でも進路の話になってきているので、彩香が悩む気持ちがすごくよく分かりました」と共感し、「他人に自分の夢を打ち明けるのは怖いことだと思うんですけど、そういうことを体験するタイミングが17歳にはあるんじゃないかなと思って、今のこの時期に私が考えていたようなことが、そのまま役作りとしてできたので、よかったなと思います」と等身大で演じたことを明かした。また、津嘉山との2人のシーンが多かった葵は、津嘉山の印象について「すごく優しい方で、台本のセリフ合わせを何度もやってくださいました」と打ち明け、「キャッチボールをするシーンで、監督から“女の子投げじゃなくてカッコよく投げて”と言われたので練習したんですけど、すぐにできるようなものではなくて、津嘉山さんはカメラが回っていないときもキャッチボールの練習も手伝ってくださって、ボールを投げながらセリフを言ったりして、ありがとうございました」と感謝。これに津嘉山は「いい球でしたよ」と孫を見つめるような眼差しで葵を褒め、「昔、草野球をやっていたので、できるものだと思っていましたが、久しくやってないとなかなか難しいなと、まともにちゃんと相手に行ってくれないと思いましたね」と自身も苦労したことを告白した。ドラマ『いつも まぢかに』は、映画・ドラマ専門チャンネル「イマジカBS・映画」にて10月1日(21:00~)放送。
2015年09月17日中谷美紀は三島有紀子監督を「荒野を駆ける美しき野獣」と表現し「美しく聡明な方ですけど…運転すると人格が変わる人っていますよね?そんな感じです(笑)」と評した。ちなみに、中谷さんは三島監督からの『繕い裁つ人』の主演オファーを快諾したが、資金不足のため予定通りにクランクインをすることができなくなり、一度は企画が暗礁に乗り上げるという事態に見舞われた。それでも、三島監督と本作の持つ魅力を信じて時機を待ち、もう一度この映画のためにスケジュールを空けたという。2012年の『しあわせのパン』、昨秋公開の『ぶどうのなみだ』とどこか幻想的な世界の中で、しかし、地にしっかりと足をつけて前に進もうとする人々の姿を描き、女性を中心に高い支持を集めた三島監督。なぜ彼女が紡ぎ出す映像や登場人物たちのやり取りは観る者を惹きつけるのか?先に挙げた2作の主演を務めた大泉洋、本作の中谷美紀など既に十分過ぎる実績を持ち、様々な役をこなしてきた俳優たちがなぜ彼女の演出の下でこれまでにない表情を見せるのか?今年1月に公開された『繕い裁つ人』のブルーレイ&DVDが発売されるのを機に改めて三島監督に話を聞いた。池辺葵の同名漫画を原作に、祖母の後を継いだ「南 洋裁店」の頑固者の2代目店主・市江が仕事への誇りを胸に、真摯に洋服を紡いでいくさまを描き出すが、三島監督はこの原作に出合う以前から、仕立て屋を主人公にした映画を撮ることを構想していたという。話は、いまは亡き父親の思い出にまで遡る。「元々、うちの父はスーツしか着ない人で、神戸のテイラーに仕立ててもらっていたんですが、全部で8着を一生大切にして着ていたんです。常々『服ではなく、職人の誇りをまとっているんだ』ということを言っていて、ひとつのものを丁寧に作り上げる職人さんの姿が素晴らしいなというのを私もずっと感じていて、いつか仕立て屋さんの映画を撮りたいと思っていたんです」。その思いを胸に、独自に仕立て屋に取材を重ねるなど、映画に向けて少しずつ準備を進めてきた三島監督。その中でいくつかもの出合い(と苦難)があった。「ある洋裁店の女性に『いままで仕立てた中で一番思い出深い服はどんな服ですか?』と尋ねたら『車いすの女性のために作ったウェディングドレスです』と仰られて、あぁ、その人自身が最も美しく見える服を作るというのが、オーダーメイドなんだなと思い、オーダーメイドの意味を深く見つめるような映画を作ろうと思ったのが8年前ですね」。そして、池辺さんの手による原作漫画と出合った。「自分で本を書いてもなかなかお金も集まらず、企画も通らない中で原作を初めて手に取ったのが5年前ですね。その中でも市江さんというキャラクターが本当に素晴らしくて、“頑固じじい”と呼ばれるくらい、ひとつひとつを丁寧に、自分の最高の技術で服を作る姿が美しいなと。市江さんは言葉で聞くのではなく、お客さまをつぶさに観察して、何を願っているのかを受け取って、服に縫い込んでいく。市江さんと人生を共に生きたい、彼女の人生をもう一度、自分の映画の世界で旅したいと願って映画化を希望しました」。そして、市江を演じる中谷美紀との出合い。オファーから撮影に至る経緯は冒頭で書いたとおりだが、三島監督にとって、中谷さん主演では映画を撮るというのは、およそ20年に渡って熱望し続けてきたことだった。きっかけは中谷さんの初の主演映画『BeRLiN』(利重剛監督)。1995年公開当時、中谷さんは19歳だったが、スクリーンの中の中谷さんの姿に衝撃を受け、手元のメモにペンを走らせた。「私、昔から『一緒にもの作りをしたい!』と思ったら、名前をメモするクセがあるんです(笑)。『BeRLiN』の中で中谷さんが手を離すシーンがしばらく忘れられなかったんです。こんな表情をする女優さんがいるんだ?と。市江さんもそうなんですが、中谷さんはそこに立っているだけで、空気が静謐に感じられる人。車が行き交う騒々しい通りでも、中谷さんが立つとスッと静かになる。絵画ではそういうことってあるけど、動画でそう感じさせる人はなかなかいないと思います」。いまでもその印象は変わらないが、実際に現場を共にする中で、中谷さんの思いもよらなかった一面に驚かされることもあったという。「中谷美紀という女優さんは、それこそ市江さんのように、ストイックに自分の本分だけをやられる方だと思っていましたが、もっと作品全体を見つめるアーティストなんだと感じましたね。この作品をどういう方向に持って行けばいいか?それを考える時、彼女は私が一番に話をしたい人なんです。単に監督と役者というよりは共にゴールを目指す“戦友”でした。また周りを気遣い、スタッフに声を掛けたり、スープを作ってきてくださったり……座長でもあり、女優でもあり、よりよい作品作りを渇望し邁進するクリエイターだと思います」。4歳の頃から、映画に親しんできたという三島監督。「バレエを習ってたんですが、教室の下が名画座で、レッスンを終えて名画を見て帰るというのが日曜のお決まりのコースだった」という。「小学生の時に映画監督・演出という存在を知ったんです。ちょうどスピルバーグなどの監督という生き物が脚光を浴びるようになって、どうやらこの人たちが映画の世界を作っているらしいと。家の近くに東映の映画会館があったんですけど、そこで掛かった映画のパンフレットが置いてあって、立ち読みするのが小学生の時の日課でした(笑)。その中の熊井啓監督のインタビューを読んで『監督って大変なんだな』と思ったり、映画もいま思うとどこまで理解してたのか怪しいんですけど…(苦笑)。補導されかけたこともありましたよ。お巡りさんが『こんなところで何をしてるんだね?』『いや、映画のパンフレットを…』って(笑)」。10代で自主映画を撮り始め、大学卒業後はNHKにディレクターとして入局し、その後、独立していまに至るが、そりゃ映画監督になるしかないだろう。その中で、本作に限らず、誇りを持って仕事に臨み、優しく他者に寄り添っていく人々を描く原点には先に語った父親の教えがある。「『ものとはものではなく、それを作った人である』という考えなんですよ、父は。ものが生まれる時、そこにどれだけ作り手の思いが込められているか?ということをいつも聞かされてきました。だから、私も小さい頃からものを見る時に、それが思いが込められて作られたのかどうかというセンサーが働くんです(笑)。その技術を身につけるための時間も含めて人生を懸けて作られたものってとても力があるし、慈しむ気持ちが芽生えてくる。だからこそ、それを作った人たちが浮かばれてほしいし、それをよしとする世の中が美しいと思います」。それは単なる技術ではない。仕事に対する責任と誇り――失われかけた精神を映画は優しく静かに映し出す。(text:Naoki Kurozu)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年09月09日『しあわせのパン』や『ぶどうのなみだ』を手がけ、世界でも高く評価されている三島有紀子監督の新作『繕い裁つ人』のBD&DVDが本日発売となる。本作で、「頑固じじい」と言われるほど頑なこだわりを持つ仕立て屋の2代目店主・市江を演じた中谷美紀。実は原作である池辺葵のコミックとは別に、市江を演じるにあたり参考にした身近なモデルがいたという。その他の写真「この作品と出逢い、私以上に私の友人に変化が訪れました」と中谷美紀。「『Lisiere(リジエール)』というアパレルブランドを立ち上げている友人なのですが、大量生産はせず、自分の信念を頑なに貫いている、まさに市江のような人だったんです。この作品のお話をお受けしたときに、『あなたをモデルに役作りをします。いろいろと教えてください』と、お伝えしにいきました。その友人がこの作品を観て、自分で設けていた限界を取り払って、もっともっと大きな世界に飛び込んでくれるようになりました。伊勢丹さんでのポップアップストアも決まったんですよ。藤井(三浦貴大)のおかげです(笑)」。1年ほど撮影時期が延期してしまったという本作だが、それでもこの作品に出たいと思った理由について、「監督もプロデューサーも最高の舞台になるまで妥協をしなかったからこそ、私もついて行きたいと思いました。女優としての理想は、本当に尊敬できる作り手さんと出逢い、作り手さんの色に染まること。それしかないと思っています。三島監督と出逢えたことは財産です」。衣装について感想を尋ねると、「はじめは戸惑いました」という意外な答えが返ってきた。「体を使って作業をする人間なのに、スカートもボリュームがあって袖も長くて、こんなに固い衣装で果たして自由に体が動くのだろうか、と少し違和感がありました。でも実際にセットに入ったら、衣装合わせで感じた違和感が払拭されたんです。その鎧のような衣装をまとってその場に立つということが、市江にとってどれだけ大切だったのか、ということを実感しました。まさに市江そのもののような衣装で、伊藤佐智子さんの意図に感服しました」。来年40歳を迎える中谷だが、歳を重ねることは楽しみだという。「自分の発した言葉にようやく説得力がでてくるのかな、と思います。若いうちは理想と現実のギャップが開いて苦しかったのですが、最近は縮まってきました。身の程を知ったらかでしょう。理想の女性像は、言い訳をせずに自分の仕事や行動に責任を持ちつつ柔軟である人。演じるという仕事を通じて、人の心を表現できたらなと思います」と語った。凛とした気品がありながらも、飾らない自然体な姿で多くの人々を惹き付けてやまない中谷。年齢を重ね、今後ますます魅惑的な女優になっていくに違いない。『繕い裁つ人』ブルーレイ&DVD発売中ブルーレイ:5500円+税DVD:4700円+税発売元:ポニーキャニオン写真:宅間國博取材・文:小杉由布子
2015年09月02日女優の中谷美紀が主演した三島有紀子監督作品『繕い裁つ人』のBlu-ray&DVDが9月2日、発売される。本作は、『ハツキス』(講談社)で連載中の池辺葵による同名コミックを、『しあわせのパン』(2012年)、『ぶどうのなみだ』(2014年)を手がけた三島監督が、構想8年を経て実写化。洋裁店の店主・市江を演じるため、中谷が撮影の1カ月前からミシンを猛練習して撮影に臨んだことも話題になり、30館上映と小規模でのスタートながら、興行収入では約2億円を達成するなど、ロングランヒットを記録した。パッケージ化にあたり中谷は、市江と同じようにものづくりに携わる友人や知人を例に、「そうした方々の揺るがぬ姿勢やものを慈しみ、大切に扱う暮らしぶりがとても崇高なものに思えます」としながらも、「その一方で、素晴らしい作品を作ることには長けていても、それをこの世に広めることには尻込みしてしまう、つつましい職人気質にもどかしさを感じたりもしていました」と明かす。しかし映画の中では、市江の作る服を広めようと提案する藤井(三浦貴大)が、長年抱いていた中谷の思いを代弁してくれていたことで、「仕事というよりは、好きなことを思う存分させていただいたというような感覚です」と充実ぶりをうかがわせた。一方の三島監督は、劇中の市江のセリフ「今生きているお客さまには、今生きている私にしか、作れないんですもの」を引用し、「もしこの映画が、市江の仕立てる服のように、みなさまの"大切なひとつ"となって一生寄り添っていけたら、それはこの上ない幸せです」と語った。映画の舞台は、神戸を見渡す坂の上にある「南洋裁店」。店主の市江(中谷)が作る服は、いつも即日完売。デパートに務める藤井(三浦)がブランド化の話を持ちかけるが、彼女は全く興味を示さない。祖母が作った服の仕立て直しや、先代のデザインの流用で満足だった市江だが、「自分がデザインしたドレスを作りたいはずだ」という藤井の言葉に、少しずつ心を動かされていく。ほかにも共演には、片桐はいり、黒木華、杉咲花ら若手をはじめ、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子らのべテランまで豪華な顔ぶれがそろう。『繕い裁つ人』Blu-rayは5,500円(税別)、DVDは4,700円(税別)で発売。どちらも特典ディスクがついた2枚組となっている。(C)2015池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年06月04日大人の女性たちから圧倒的な支持を受けている池辺葵の同名コミックを原作に、“衣”というテーマと仕事に生きる女性のスピリットを唯一無二の映像美で描いた『繕い裁つ人』のBD&DVD発売決定を受け、主演の中谷美紀、三島有紀子監督の最新コメントが到着した。これまで食と人をテーマに物語を紡いできた三島監督が池辺葵の同名コミックに惚れ込み、着ることと生きることの表裏一体の関係性を、温かくも厳しい眼差しで描いた感動作。三島監督は、「もしこの映画が、市江(中谷)の仕立てる服のように、みなさまの“大切なひとつ”となって一生寄り添っていけたら、それはこの上ないしあわせです」とコメント。南洋裁店という小さな店で“夢をみるための服”を真摯に繕い続ける店主・南市江役の中谷さんは、「友人知人には、物作りに生涯を捧げている方が何人もおり、気まぐれで移り気な私には、そうした方々の揺るがぬ姿勢やものを慈しみ、大切に扱う暮らしぶりがとても崇高なものに思えます」という想いを抱いていたそうで、「その一方で、素晴らしい作品を作ることには長けていても、それをこの世に広めることには尻込みしてしまう、慎ましい職人気質にもどかしさを感じたりもしていました」と同作のテーマが身近だったことを告白。そして、「とりわけ市江のように丁寧に、頑固に、洋服を作っている友人へ長年抱いていた思いを、この作品のなかで藤井(三浦貴大)が代弁してくれていたので、仕事というよりは、好きなことを思う存分させていただいというような感覚です」と出演作品を回想した。劇場公開時、30館スタートながら興収約2億円達成し、服と映画を愛する人たちの大きな支持を得てロングランヒットを記録した本作。特典ディスク付き2枚組の永久保存版仕様のBD&DVDを観て、一着の洋服を大切に着るという意味をもう一度考えてみて。<『繕い裁つ人』ブルーレイ&DVDリリース情報>発売日:9月2日(水)よりリリース【ブルーレイ】通常版¥5,500+税【DVD】通常版¥4,700+税発売元:ポニーキャニオン(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会(text:cinemacafe.net)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年06月04日中谷美紀が主演し三島有紀子監督が手がけた映画『繕い裁つ人』のブルーレイ&DVDが9月2日(水)に発売されることが決定し、中谷と三島監督がコメントを寄せた。その他の画像『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』では食と人をテーマにしてきた三島監督が、池辺葵の同名コミックを原作に、“着ることと生きることの切っても切れない関係”を描いた本作。監督は「8年前に“その人のためだけに作られるオーダーメイドというものを深く見つめた仕立て屋の映画”を作りたいと思い、企画書を書いてひとりでいくつもの映画会社をまわっていました。そして、最初にできた戦友が中谷美紀さんでした」と明かす。映画は、祖母から“南洋裁店”を引き継いだ2代目の店主・市江(中谷)を主人公に、職人スタイルを貫き、古びたミシンで作るオーダーメイド服に魅せられたなじみの客たちと、市江の才能に惚れ込み、ブランド化を依頼するデパートの営業マン・藤井(三浦貴大)ら、彼女を取り巻く人間模様が描かれる。中谷は「友人知人には、物作りに生涯を捧げている方が何人もおり、気まぐれで移り気な私には、そうした方々の揺るがぬ姿勢やものを慈しみ、大切に扱う暮らしぶりがとても崇高なものに思えます」といい、「その一方で、素晴らしい作品を作ることには長けていても、それをこの世に広めることには尻込みしてしまう、慎ましい職人気質にもどかしさを感じたりもしていました。とりわけ市江のように丁寧に、頑固に、洋服を作っている友人へ長年抱いていた思いを、この作品のなかで藤井が代弁してくれていたので、仕事というよりは、好きなことを思う存分させていただいたというような感覚です」と語っている。三島監督は「『今生きているお客さまには、今生きている私にしか、作れないんですもの』市江の台詞で、一番好きな台詞です。もしこの映画が、市江の仕立てる服のように、みなさまの“大切なひとつ”となって一生寄り添っていけたら、それはこの上ないしあわせです」とコメントを寄せている。『繕い裁つ人』ブルーレイ&DVD 9月2日(水)リリースブルーレイ:5500円+税DVD:4700円+税発売元:ポニーキャニオン
2015年06月04日撮影現場での「一発勝負を楽しんでます」と楽しそうに笑ったかと思えば、TVドラマが好きで自らオーディションを受けて女優を志したにもかかわらず「昔からみんなの前に立つのとかダメなんです(苦笑)。授業中に作文を読むのも緊張しちゃうし…」とため息をつく。可能性に満ちた17歳はアンバランスに揺れ動くーー。「Cook Do」(味の素)のCMで豪快に回鍋肉をほおばる女の子、「au」のCMで踊りながらはつらつとした笑顔を見せる少女と言えば、名を知らずとも顔が思い浮かぶ人も多いのでは?彼女の名は杉咲花。CMに加え、この2年ほどで「夜行観覧車」、「なぞの転校生」「MOZU」など次々と話題のドラマに出演し鮮烈な印象を残し、昨年末には情報誌「日経トレンディ」で“2015年の顔”にも選出された。いま、最も注目を浴びる17歳である。そんな彼女が出演する映画『繕い裁つ人』が公開された。昨秋公開された『イン・ザ・ヒーロー』とほぼ並行して行われた本作の撮影を通じて、17歳の少女は映画の楽しさに目覚め、完成した作品を見て「嬉しくて震えた」という。池辺葵の人気漫画を原作に『しあわせのパン』、『ぶどうのなみだ』など多くの女性の支持を集める三島有紀子監督がメガホンを握った本作。長年、街の人々に愛されてきた頑固な仕立て屋と店に集う人々のドラマを描いており、彼女は、中谷美紀演じる主人公・市江の元に、母がかつて着ていたワンピースを自分用に仕立て直してほしいと持ち込む高校生・ゆきを演じている。「三島さんの『しあわせのパン』が好きだったので、出演が決まった時は嬉しかったです。どんな映像で、どんな作品になるのか?と楽しみでした」と振り返るが、撮影現場にはその期待を上回る、想像以上の刺激と緊張、そして喜びが彼女を待っていた。「監督の下で、みんなで映画を作っているという感覚がすごく大きくて、それが何より嬉しかったし、それに応えたいって思いました。そうした思いが映画ににじみ出ている気がします。スタッフ、キャストのみなさんが監督のことが大好きで愛情を持ってるのが伝わってきて、それは私の中にもすごく強くありました」。特に彼女にとって忘れられないシーンとなったのが、大人たちが市江の手による晴れ着で着飾って一堂に会する“夜会”のシーン。夜の闇に温かい光が溶け込み、めくるめく幻想的な世界が浮かび上がるが、じっくりと時間をかけた撮影の中で、彼女は映画の魔力に胸を撃ち抜かれた。「タイトなスケジュールの中、すごく時間がかけて撮影したんですが、スタッフさんは特に朝早くから晩までずっとで…(苦笑)。あの広い空間をカメラ1台でアングルにも注意しながら撮っていくんですけど、本当に大事に、大事に――『撮る』ってそういうことなんだ!すごくいいなぁって思いました。納得するまで撮るから良いものができるんだということを実感しました。ドラマが好きでいまの事務所に入って、もちろんいまでもドラマは大好きですが、今回、新しい世界を知って『映画っていいなぁ…もっと出たい』と思ったし、自分でも映画をどんどん見るようになりました」。ゆきについて「自分の意見を強く言うことができない。気が弱いし自信がないけど、優しい心を持ってて、他人のことも考えてる女の子」、「市江さんのところにワンピースをに持っていくこと自体、彼女にとっては勇気のいること。そこで踏み出したら、市江さんが応えてくれて素敵なものが出来て、それが自信になったんだろうと思う」とその性格や物語を通じての成長を語ってくれたが、これらは全て彼女自身が脚本を読み込んだ上で考えた解釈。役柄や演技について「三島さんと話しあったことはほとんどなくて、『好きなように、思うようにやって』と言われてました」と明かす。もちろん、頭の中の解釈だけで素晴らしい演技が可能になるわけではない。だが深く人物の心情や変化をくみ取るこの“読解力”が、同世代と比べても際立っている高い演技力、感情表現の一端を支えていることは間違いないだろう。「毎回、役作りのやり方は違うので(自分なりの決まったアプローチ方法は)特にないです。まだ、この仕事を始めてから時間が経ってないので、いろんなことを試して、何が自分に向いているのか探り探りですね。(役に)入り込んじゃう時もあります。入り込んだら1か月くらい抜けられないこともあって(笑)。何がいいのかな?と思いながらやってます」。冒頭に紹介した「一発勝負が好き!」という発言は、ゆきが持ち込んだワンピースに、市江がおもむろにハサミを入れるシーンの撮影について振り返る中で発せられた言葉。だから、正確にはこの時、一発勝負に挑んだのは彼女ではなく中谷美紀。現場の空気は緊張で張りつめていたというが、中谷さんの傍らで彼女は「絶対に何とかなる」と妙な確信を抱き、楽しんでいたという。そんな彼女に“2015年の顔”に選ばれ、一気に世の中の注目を浴びて重圧や逃げ出したくなるような気持ちは?と尋ねると「プレッシャーはないです」と今度はキッパリと言い切った。「決まった時は『どうしてだろう?』と思ったし、何が起きたのかとびっくりしましたけど、そうやって名前を挙げていただけるのは嬉しいです。“2015年の顔”に選ばれたから何かを変えたいという思いはなくて、むしろ変わりたくない。いまの自分を忘れたくないと思ってます。ただ、こうして取り上げていただくことで自分が出ている作品がいろんな人や遠くに届けられるのかと思うとすごく嬉しいです」。受賞や周囲の声で自分を見失いたくないという強い思いの一方で、次々と新たな作品や役柄と出合うことで「女優としては常に変化し続けたい」とも。「進化というか変わり続けたいし、そこで止まりたくないです。いままでに自分が出た作品を見返すことがよくあるんです。自分が出た作品はどれも大好きなので。でも満足することはなくて『あ、こんな顔してたのか』と思うこともよくあります。でも、それはその時の自分の100%を出したものだから、それでいいと思うのですが、そこから変わっていきたいと毎回、思いますし、その気持ちはずっと忘れたくないですね」。と、こうした発言を見ると、強気で天真爛漫な少女そのものだが、緊張しやすいところはいまでも変わらないと苦笑する。「学芸会も苦手だった(笑)」という少女は大好きなTVドラマの中で見た志田未来に憧れ、彼女が所属する事務所の門を叩き、女優の道を歩み始め、ここまで来た。「いまでも『怖いなぁ…』とは思います。本当に緊張してる時は楽しさなんて感じてないし!でも…やっぱり『絶対何とかなる!』って思ってるんですよね。楽天家?そうですね(笑)、おおざっぱというか…」。そう笑う彼女の“顔”はこれからどんな感情を届けてくれるのか?2015年などと言わず、日本映画界の顔となる日を楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年02月03日女優・中谷美紀のおよそ4年ぶりの主演作『繕い裁つ人』が先週末に公開を迎えた。本作で中谷さんが演じるのは、頑なな服作りを貫く店主・市江。そんな彼女が手がける洋服の数々は、本作で物語の鍵を握る重要なファクターとなっている。今回は、女子必見のファッションに注目したい。本作は、町の仕立て屋「南洋裁店」を受け継いだ2代目店主・市江を中心に、彼女が古びたミシンで作るオーダーメイド服と、そんな彼女が仕立てる服を愛する人々が織りなす感動の物語が描かれる。ヒロインの市江は、洋服の量産はできないし、しないという職人スタイルを貫く女性だ。彼女にとっては“その人だけの服”を繕う日々で十分なのだ。劇中で彼女が“繕い裁つ”洋服を実際に手がけたのは「あまちゃん」をはじめ、是枝裕和監督作『空気人形』ほか、数多くの舞台や映画の衣装デザイナーとして活躍する伊藤佐智子。伊藤さんへのオファーのきっかけは、中谷さんと三島有紀子監督の両名からの希望だったようで、「衣装の相談をしたときに中谷さんの口から『伊藤佐智子さん』の名前が出てきて、ああ、中谷さんはこの映画の世界観を深く理解してくださっているんだって、嬉しかったんです」と三島監督はふり返る。今回特別に、伊藤さんが本作の為に描いたという、市江(中谷美紀)の仕事服、新星女優・杉咲花が演じるゆきのワンピース、泉先生(中尾ミエ)に捧げる死に装束、葉子(黒木華)のウェディングドレスの4点のデザイン画も公開。衣装デザイン担当として伊藤さんは「衣装全体が甘くなりすぎないように気をつけました。甘くないけれどチャーミングでありたいと思ったので、その点にこだわりました。この映画では、本当の意味での良い手仕事というのが見せられたらと思いました。安直で、イージー・ソーイング的なものに見えない様に、衣装がチャーミングでありながらどこか着る人間が凛とした印象になるよう意識しました」とポイントを解説する。さらに、伊藤さんは「洋服というのは人生を楽しむためのツールの一つ。と、同時に自分自身を否応なしに表現してしまうもの」の独自のファッション哲学も明かす。「ファストファッションが好きで、洋服を毎年毎年買って毎年毎年捨てているような人がいても、それはそれで否定するつもりは全くないですが、この映画を観て『共に生きていく服もある』ということを知ってもらうきっかけになれば良い」と語っており、ファストファッション隆盛の現代において、“着続ける”ことの大切さを知るきっかけとなるかもしれない。『繕い裁つ人』は1月31日(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年02月02日映画『繕い裁つ人』が1月31日(土)に公開を迎え、主演の中谷美紀をはじめ、三浦貴大、黒木華、三島有紀子監督が舞台挨拶に登壇。撮影現場での中谷さんの大活躍ぶりが明らかになった。池辺葵の人気漫画を『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』など繊細な描写で女性の指示の高い三島監督が映画化。「南洋裁店」の2代目の頑固一徹の店主・市江と彼女の作る服を求めて店に集う人々のドラマを綴る。前日の大雪とは打って変わって快晴の中で公開初日を迎え中谷さんは晴れ晴れとした表情。「三浦さんが雨男で、彼が来ると撮影は必ず雨だったんです。今日も『来なくていい』と思ってたんですが(笑)、晴れて良かったです」と冗談交じりに語り笑いを誘う。三浦さんは「今日降ったら、中谷さんに何を言われるかとビクビクしてました…。昨日のうちに雪を降らせといたので(笑)、快晴で初日を迎えられて嬉しい」とホッとした様子。黒木さんも「本当に本当に晴れて良かったです。中谷さんと監督は晴れ女なので、『勝った!』という感じです(笑)」と嬉しそうに語っていた。中谷さんは本作について「個人的には監督と相思相愛だったと思います。プロデューサーや映画会社による“お見合い結婚”ではなく、“恋愛結婚”できたと思います」と独特の表現で監督とぴったりと寄り添っての作品づくりを述懐する。原作と出会う以前の8年前から仕立て屋を題材に映画を作りたいと企画を温め続けてきて「中谷さんが『やらない』と言ったら(企画の続行は)ないかもという気持ちで口説きに行った」という三島監督。初日を迎えて「本当に嬉しく感慨深いです。(作品が)この世にこうして生まれてきてくれて信じられないくらい嬉しい」と最後は少し声を詰まらせた。黒木さんは劇中でウエディングドレスをまとうが、自身にとっても初の体験。衣裳デザインを担当した伊藤佐智子氏の名を挙げ「素晴らしいドレスで、車椅子でどう見えるかまで計算して丁寧に作られていて、着てるだけで気持ちがわいてくる素敵なドレスでした!」とふり返る。また、いつか自分が着ることになるウェディングドレスのデザインも伊藤さんにお願いしたそうだが「まだまだまだまだ先なので…」と苦笑を浮かべていた。三浦さんは、服に人一倍の思い入れを持つデパートに勤める男を演じたが、自身はファッションへの興味が全くなかったそうで、今回の役には苦戦させられたよう。それでも母親で元女優の山口百恵さんがパッチワークやキルティングを趣味とし、手縫いをしている姿を小さい頃から見てきたそうで「(母が)観て、どういう感想持つのか聞いてみたい」と語った。中谷さんは、本作のために1か月にわたって裁縫やミシンを踏む練習をしたそうで「練習用の布で真っ直ぐ縫うのに飽きた(笑)」ということで、自身の手でケープを作り、三島監督にクランクアップの夜にプレゼントしたという。監督はこの日もそのケープを持参したが「“南洋裁店”の箱に包んで市江としてくださったんです」と感激を口にする。また、中谷さんはそれ以外でも予算の厳しい現場で、冬の撮影でも温かいものが食べられるようにと、自ら鶏団子のスープや中華スープを作ってふるまったそうで、いち女優、主演という立場を超えて、スタッフや現場を気遣う中谷さんの姿勢がうかがえる。改めて、最後にマイクを握った中谷さんは「こんなにささやかで、こんなに贅沢な映画に携われたことを幸せに思います」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。『繕い裁つ人』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年02月01日女優の中谷美紀が31日、都内で行われた映画『繕い裁つ人』の初日舞台あいさつに、出演者の三浦貴大、黒木華、監督の三島有紀子とともに登壇した。本作は、池辺葵の大人気コミックを映画化したもので、神戸で祖母が始めた仕立て屋「南洋裁店」を受け継いだ2代目店主・市江(中谷)のかたくなな服作りの姿勢を通じ、彼女を取り巻く人々の心の変化を描く。洋裁店の店主を演じる上で中谷は「まずは何よりも私が不得手とするお裁縫をマスターするところから始めました。市江が20年近くミシンを踏んできた姿を滑らかに完璧に演じてほしいと、監督からのご依頼がありましたので、そこはこだわって1ヶ月ほど練習させていただきました」と役作りの苦労を明かした。また、その練習の間にケープを作って監督にプレゼントしたそうで、中谷は「練習用の布をただ真っ直ぐに縫うことに飽きてしまって、何か完成形が見たいなと思いました」とキッカケを話し、「本番に向けてボルテージを上げていくには、監督のために何かを差し上げるのがいいのではないかと思い、監督のお人柄や普段お召しになっているお洋服、あとはこちらの都合ですが、どれだけ簡単に縫えるか(笑)などを考慮に入れて、ケープが一番ふさわしいのではないかと思いました」と説明。三島監督は「監督冥利に尽きる」と感激し、「虫に食われないように気を付けます」とコメントすると会場が沸いた。さらに、中谷が現場で「豚汁、鴨汁、中華スープ」などの料理をふるまっていたことが明かされると、中谷は「予算的にも厳しい映画でもありましたので、豊かな映像を映画の中で生かすためには、一番削られるのは食費なんですよね」と明かし、「真冬だったので温かいものをいただきたいと思い、スタッフさんもキャストも一緒だろうと思いまして、そのようなことをしました」と語ると、監督は「お腹が減ってスタッフの士気が落ちていく中で、中谷さんが座長としてみんなの士気を高めてくれた」と感謝しきりだった。映画『繕い裁つ人』は、1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。
2015年02月01日研ぎ澄まされたテクニックと抒情性で、若くしてクラシック・ギター界の最高峰に上り詰めた朴葵姫(パク キュヒ)。日本でも人気が高く、パフォーマンスの質の高さでは若手随一の実力派だ。新作『SAUDADE-ブラジルギター作品集-』も高い評価を得ている彼女が、よみうり大手町ホールでリサイタルを行う。「朴葵姫東京ソロコンサート」の公演情報「イタリア、スペイン、ドイツなど世界中のコンサートホールを訪れましたが、日本のホールは音響が素晴らしく、700人規模でも生音で演奏できるのがすごいです。でも、ギターは音の小さな楽器で親密な表現を行うので、小さめのホールのほうがお客さんに届きやすい。よみうり大手町ホールは500人と聞いているので、とても楽しみなんです」バッハの「シャコンヌ」はピアノやヴァイオリンのソロとして有名な曲。超絶技巧のテクニックを求められる「演奏家泣かせ」の曲としても有名だ。「ギター編曲版も結構難しいんですよ。この曲を日本の皆さんに披露するのは初めてなので、最近は毎日練習しています。トレモロで表現する箇所もありますし、ドラマティックな内容の曲ですね」2012年アルハンブラ国際コンクールの優勝者である朴。ギタリストとして最高の栄誉だが、それは他でもない彼女のストイックな日々の努力の賜物だった。「全部で16くらいのコンクールを受けてきましたが、22、3歳の頃は特に頻繁に挑戦していたので、一日13時間練習していたんです。料理を作る時間もないので、食事はバナナとチョコだけで…(笑)。それでもすぐに結果が出たわけではなく、2、3年後に急にミスが少なくなった。そのときに鍛えた基礎が、時間をかけて身に着いたのだと思います」ふんわりとした可愛いルックスとは裏腹に、音楽に賭ける情熱は熾烈で妥協がない。プログラムにはバッハの他、ロドリーゴ、ソル、リョベート、ヴィラ=ロボス、バリオス、ヒナステラといったバロックから近現代の作曲家の名曲が並ぶ。「前半ではかっちりした古典的な曲を、後半では中南米の作曲家の寛いだ音楽を楽しんでいただきたいです。日本のお客さんはとても集中して聴いてくださって、反応はシャイですが深く音楽を受け止めておられるのが分かります。サイン会で感想を伝えてくださる方もいて、独特の熱心さがありますね」磨きこまれた究極のギターの音を、親密な空間で楽しみたい。取材・文:小田島 久恵◆クラシックギター界のニューヒロイン朴葵姫東京ソロコンサート2015年2月1日(日)13:30開演(13:00開場) よみうり大手町ホール
2015年01月30日三島有紀子監督(『しあわせのパン』)の新作は、仕立て屋のヒロイン・市江と、彼女を取り巻く人々を見つめた『繕い裁つ人』。先代の祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、祖母のデザインを流用したオーダーメイドを、足踏みミシンで作り続けることに、頑なにこだわる市江に扮した中谷美紀が裏話を明かした。その他の写真原作は池辺葵による同名コミック。映画化にあたり、最初から中谷を主演に考えていた監督は、作品のイメージとしてデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイのポストカードを中谷に渡した。「実は『スイートリトルライズ』に出演させていただいた折に、矢崎(仁司)監督からもハンマースホイの画集をお預かりしたんです。ふたりの監督が、同じ世界観、空気感を私に求められたというのは、とても不思議な感じがしました」と振り返る中谷。同時にストンと納得できたとも。「この世界観を作ろうとされているのだとの保証書をいただいた感じでした。あとはもう監督を信じれば大丈夫という気持ちになりましたね」。洋服も重要なパートを担う本作。どれも美しい衣装の中で、鎧のようにも映る市江の青い作業服がとりわけ存在感を放つ。中谷はそれを身にまとい、凛としていて芯があり、それゆえ時に頑固ジジイと呼ばれるが、チャーミングな面も持ち合わせる市江そのものとして生きる。さらに本作は変化の物語でもある。特に影響を与えるのが、三浦貴大扮する大手デバートの服飾担当・藤井。「監督はすべてを見せることはしないんです」とほほ笑む中谷が秘話を語った。「藤井の登場はあるシーンで終わっています。でも実際の撮影ではもっと登場シーンがあって踏み込んだ表現になっていました。それを監督は編集でカットなさった。さすがだと思いましたね。観る方に想像の余地を残す。私はとても好きな終わり方です」。カットしたからこそ、より思いが伝わることもある。爽やかなラストに、ふと心が軽く、そして温かくなる。『繕い裁つ人』1月31日(土) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー取材・文:望月ふみ
2015年01月30日●役に入り込んで「1カ月ぐらい引きずることも」昨年、日経トレンディが選ぶ"2015年の顔"に選ばれるなど、業界内外から熱い視線を浴びている女優・杉咲花。現在17歳の彼女は、志田未来に憧れて2011年4月に現在の事務所・研音に自ら応募し、2013年のドラマ『夜行観覧車』(TBS系)でのいじめられっ子役の熱演や、味の素「Cook Do」のCMでの食べっぷりなどで多くの人の記憶に刻まれることになる。その杉咲が、1月31日から公開される映画『繕い裁つ人』に出演。祖母が始めたこだわりの洋裁店を受け継いだ中谷美紀演じる2代目の店主・市江の物語で、杉咲はその店を訪れる少女・ゆきを演じる。撮影が始まると、その役に入り込んでしまうという"憑依(ひょうい)型"の一面を持つ杉咲。デビューからこれまでを振り返ってもらい、注目が集まる中での心境、演技との向き合い方、女優としてのこれからを聞いた。――まずは本作の感想をお聞かせください。私は、三島(有紀子)監督の作品がすごく好きだったので、決まった時はすごくうれしかったです。きっとステキなものができるんだろうなと思いながら撮影していたんですが、できあがった作品を観てその予想を上回ったというか。良い意味で裏切られてしまったので、そんな作品に参加できたことがすごく幸せでした。――"ゆき"という役柄について、ブログには「素朴でちょっと弱気」「でも優しい心を持った少女」と書いてありました。このイメージは監督と話し合いながら作り上げていったのでしょうか。自分で感じたことです。台本を読んだ時に、ストレートにゆきの人物像が見えたというか。こういう子なんだろうなというのが分かりやすかったので、衣装合わせの時に初めて監督にお会いしたんですけど「お任せします」とおっしゃってくださって、細かいことは現場で話し合いました。――細かい指示をする監督と比べていかがですか。「好きにやってください」って言われた時ほどプレッシャーを感じるものはないなと思います(笑)。ちょっと怖いと感じることもあるんですけど、"ゆき"の場合は特に不安に感じることもなかったです。洋服を直してもらうために市江さんのもとを尋ねるシーンがあるんですけど、ゆきはすごく内気な性格だからその場に行くこと自体が大変なことなんだろうなと想像したり。ゆきが一歩を踏み出すようなシーンだったので、そんな思いで演じました。――ちょうどそのシーンで、市江の先代の言葉「着るものによって心の持ちようも変わる」が語られますが、これまでそれを感じたことはありますか。私は洋服がすごく好きで、自分の好きな服をいつも着られていることはうれしいですし、楽しいことです。洋服選びで普段は迷うことはないんですが…お仕事関係の方々が集まる場所に参加させていただく時とかは悩んでしまいます(笑)。洋服は興味がある人とない人がいると思いますが、衣裳さんはイメージのヒントとなるものが台本しかないから、すごく大変なんだろうなと思います。――そのほか、ブログには「役に入り込んでしまう」ことも書いてありました。毎回そうじゃないんですけど、役によって役作りは毎回変わります。どんな役が自分に合っているのかもまだ分からないので、探り探りなのですが…。でも、入り込んでしまうと1カ月ぐらい引きずることもあります。集中している時はいいんですが、家にいる時に迷惑かけるのが嫌で。例えばすごく悲しい役だと、家ですごく負のオーラが出ているみたいで(笑)。入り込んだ時は、落ち込んだりすることもありました。でも、役と向き合っている時は、そういう状態でいる方が自分にとってはすごく楽なんです。●家族の反応「一体どんな作品が花をそうさせているの?」――今まででいちばん辛かった役は?『夜行観覧車』(2013年 TBS系)というドラマに出た時でした。すぐに癇癪(かんしゃく)を起こしてしまう役で、家で怒られた時に役柄のまま「暴れたい」という気持ちになったりしたんです(笑)。いじめられている役だったので、実際にいじめられているような気持ちになって。「学校に行きたくない」と思ったこともありました。――あの作品をきっかけに杉咲さんを注目する人が増えたと聞きます。やっぱり、インパクトがあったんだと思います。でも、あの作品に出会えて本当に幸せでした。――現在の事務所・研音に入ったのが2011年。志田未来さんに憧れて応募したそうですね。そうです。もともとドラマを観るのが好きだったんですけど、中でも『女王の教室』と『14才の母』と『正義の味方』。全部、志田さんが出演されていて「志田さんみたいになりたい」と思うようになりました。母と事務所を調べて、オーディションを受けました。――近年の活躍はご家族も喜んでいらっしゃるのでは?どうなんでしょう…。あまり、感想とか言われないんですよ。でも、私の出演作を観たがるんです。やっぱり、迷惑をかけてるせいか(笑)。「一体どんな作品が花をそうさせているの?」と思いながら観るみたいです(笑)。――昨年は日経トレンディの「2015年の顔」に選ばれましたね。どうして私を選んで下さったんだろうと思いました(笑)。とてもびっくりしましたけど、うれしかったです。でも…記者さんの前に立った時にすっごく緊張しました。基本的に大勢の人の前で立つのが苦手で。「こんなにたくさんの人が見てる!」と思うと緊張してしまいました(笑)。――これからそういう機会がどんどん増えると思います。舞台もその1つですよね。舞台は挑戦してみたいです。どうなってしまうのでしょう…やったことがないのでどうなるのかは分かりませんが、演じて人の前に立つのはまた違う感覚だと思います。雑誌の撮影や取材が難しいなと思うのは、役を演じていない私自身だからです。話すことはまだ大丈夫なんですけど、カメラに写るのがちょっと緊張してしまいます(笑)。――舞台に立たれる日を楽しみにしております。それでは最後に2015年の抱負を。今まではドラマが多かったんですが、2014年は映画の撮影がたくさんありました。ドラマが好きでこの世界に入ったんですが、新しい物を見て、新しい場所に立って感じたのは、「映画は1つの物をすごく大事に撮る」ということ。2014年は「映画が好き」と感じて、「もっと映画に出たい」と思えるようになった年でした。2015年はその思いを届けることができるので、すごくうれしいですし楽しみです。無事に届けられればいいなと思います。■プロフィール杉咲花1997年10月2日生まれ。東京都出身。身長152cm。B型。これまで、『夜行観覧車』(13年TBS系)、『なぞの転校生』(14年テレビ東京系)、『MOZU』(14年TBS・WOWOW)、現在放送中の『学校のカイダン』(日本テレビ系)など数多くのドラマのほか、昨年は『思い出のマーニー』で声優を務める。今年は本作のほか、『愛を積むひと』が初夏に公開される予定となっている。(C)池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年01月30日表参道ヒルズのセレクトショップ「パスザバトン(PASS THE BATON)」は、映画『繕い裁つ人』とのコラボレーション企画を展開する。期間は1月22日から2月15日まで。『繕い裁つ人』は池辺葵の人気コミックを原作に、映画監督の三島有紀子が実写映像化したもの。主演は女優の中谷美紀。神戸の街に古くからある仕立て屋「南洋裁店」を舞台に、昔ながらの職人技を引き継ぐ2代目店主と、彼女を取り巻く人々による人間ドラマを描いている。期間中の店内には洋裁店が期間限定オープン。デッドストックの生地やリボン、ボタンに加え、監督や出演者から出品された私物が展示販売される。これらを利用して、映画のように世界に1着だけの服を仕立ててみようという趣向だ。また、対象商品を1万円以上購入すると、先着10名に劇場鑑賞券が、その後は更にオリジナルマスキングテープが先着10名にプレゼントされる。
2015年01月19日中谷美紀が主演する映画『繕い裁つ人』のキャストと監督による初日舞台あいさつが、1月31日(土)に新宿、横浜で開催される。その他の写真本作は、池辺葵のコミックを『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』などを手がけてきた三島有紀子監督が映画化するヒューマンドラマ。祖母が始めた洋裁店を受け継いだ2代目の店主・市江と、彼女の服に魅せられたデパート勤務の藤井ら市江を取り巻く人々の生活が繊細に描かれる。中谷のほか三浦貴大、片桐はいり、黒木華、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子らが出演する。初日舞台あいさつは、新宿ピカデリー、横浜ブルク13で行われ、中谷、三浦、黒木、三島監督が登壇する。チケットは、プレリザーブ(先行抽選)が、1月17日(土)より受付開始。一般発売は、24日(土)午前10時より開始される。『繕い裁つ人』初日舞台あいさつ1月31日(土)■会場:新宿ピカデリー11:50の回上映後/舞台あいさつ■会場:横浜ブルク1314:50の回上映後/舞台あいさつ登壇者(予定):中谷美紀、三浦貴大、黒木華、三島有紀子監督料金:2000円(税込)プレリザーブ:1月17日(土)11:00AMより~23日(金)11:00AMまでチケット発売:1月24日(土)10:00AMより
2015年01月16日女優の黒木華が映画『繕い裁つ人』(2015年1月31日公開)で披露したウエディングドレス姿が15日、公開された。本作は、漫画家・池辺葵が漫画雑誌『ハツキス』(講談社)で連載中の『繕い裁つ人』を原作に、『しあわせのパン』(2012年)や『ぶどうのなみだ』(2014年)などで知られる三島有紀子監督がメガホンを取った作品。祖母が始めたこだわりの洋裁店を受け継いだ2代目の店主・市江を中谷美紀が演じ、彼女の「世界で1着だけの一生もの」というこだわりが、ブランド化を勧める営業マン・藤井(三浦貴大)との出会いによって揺れ動いていく。黒木が演じるのは、市江にオリジナルブランド立ち上げを持ちかける藤井の妹・葉子。物語の後半には、藤井との出会いをきっかけに市江が初めて手掛けたオリジナルのウエディングドレスを、葉子が着用するシーンがある。「洋服」がテーマとなっている本作の衣装を手掛けたのは、『あまちゃん』など数多くの作品に衣装デザイナーとして参加してきた伊藤佐智子氏。今回のウエディングドレスは「一輪の花のようなドレス」をイメージし、衿はアンティークの手作りのレース製など細かい装飾が施されている。山田洋次監督に「割烹着が1番似合う女優」と言わしめ、2014年に映画『小さいおうち』の女中役でベルリン国際映画祭最優秀女優賞し、NHK連続テレビ小説『花子とアン』では花子の妹役を好演した黒木。作品の中でウエディングドレスを着用するのは今回が初めてで、本人も「初めてのウエディングドレス経験を、伊藤佐智子さんのオートクチュールの繊細で素敵なドレスで出来て、とても幸せでした」と感激のコメントを寄せている。(C)池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年01月15日中谷美紀が主演を務め、注目を集めている人気コミックの映画化『繕い裁つ人』。本作で、中谷さん演じるこだわりの仕立て屋・店主の市江にオリジナルブランドの話を持ち掛ける営業マン・藤井の妹役を演じている黒木華が劇中で披露する、オーダーメイドのウェディングドレス姿の場面写真が解禁となった。本作は、町の仕立て屋「南洋裁店」を、店を受け継いだ2代目店主・市江を中心に、彼女が古びたミシンで作るオーダーメイド服と、そんな彼女が仕立てる服を愛する人々が織りなす感動物語。中谷さん演じる市江は職人スタイルを貫くため、洋服の量産はできず、それがなじみの客たちには好かれていた。そこへ、三浦貴大演じる百貨店の営業・藤井がブランド化の依頼を持ちかけるが、市江は断り続ける。彼女は、“その人だけ”の服を繕う日々で十分だったのだ。現在、13年ぶりの主演連続ドラマ「ゴーストライター」にも出演する中谷さんを始め、今年は待機作が5本も控えている三浦さん、日経トレンディにて「2015年の顔」に選出された若き演技力派・杉咲花、独特の世界観と圧倒的な存在感で作品を彩る片桐はいり、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子ら豪華共演陣が名を連ねている本作。とりわけ、山田洋次監督に「割烹着が1番似合う女優」と言わしめ、2014年には『小さいおうち』でベルリン国際映画祭「最優秀女優賞」を受賞、NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」でヒロイン・花子の妹役を演じるなど、圧倒的な存在感を見せつける黒木さんは、藤井の妹役で登場。物語の後半には、藤井との出会いをきっかけに市江が初めて手掛けたオリジナルのウェディングドレスを着用するシーンがあり、今回届いたのは、その際の場面写真。これまで多くの作品に出演してきた黒木さんだが、ウェディングドレスを着用するのは、実は本作が初めて。衣装を手がけたのは、「あまちゃん」など数多くのドラマや、舞台、映画の衣裳デザイナーとして活躍する伊藤佐智子。“一輪の花のようなドレス”をイメージして作られたウェディングドレスの裾の部分にはほんのり淡いピンク色がのせられ、衿にはアンティークの手作りレースが配されている。黒木さんは「初めてのウェディングドレス経験を、伊藤佐智子さんのオートクチュールの繊細で素敵なドレスで出来て、とても幸せでした」とその喜びを語り、満面の笑みを見せていた。『繕い裁つ人』は1月31日(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年01月15日