2015年に初演され、昨年の再演&地方公演も大好評だったオリジナルミュージカルが、明治座にお目見えする。デイサービスでミニコンサートを開いたかつてのスターが、そこに集う個性豊かな高齢者たちとショウを創ろうと奮闘する『ザ・デイサービス・ショウ2017』だ。かつてのスター・矢沢マリ子役を務め、自らプロデュースも手掛ける中尾ミエに話を聞いた。舞台『ザ・デイサービス・ショウ2017』チケット情報「自分が初舞台を踏ませてもらった劇場で、ライフワークにしたいと思っている自信作を上演できるなんて、感無量です。以前、ヘルパーの側から介護の今を描いた作品をプロデュースしたんですが、年齢を考えればいまや私も高齢者。次の段階に行かないと……と考えて思いついた企画です。私の理想のデイサービスも投影した、等身大のテーマを扱ったコメディミュージカルなので、説得力はあると思います」81歳の庄司花江を筆頭に、出演者の半数は中尾も含めて70代以上。「皆さん、楽しみに稽古に通って来てくださるので、実際にデイサービスだと思ってやっているところがありますね(笑)」。そんな出演者たちが劇中で生演奏するポップスやロックンロールも、中尾の歌とともに本作品の大きな魅力。しかも毎年レべルアップしているとか。「MYベースを買って練習している光枝(明彦)さんも、最初は片手でしか弾けないと言っていたキーボードの初風(諄)さんも格段の進歩ですよ。続けると着実に上達していくのが自分でもわかるから、皆さん楽しんで練習されていますし、毎年ハードルを上げることでレベルアップしていくのを感じて、私もすごく楽しくて。このメンバーでは(モト)冬樹さんも私も若手なので、疲れたなんて言っていられません(笑)」地方公演の際に近くの高齢者施設を訪れたり、地元のコーラスグループに舞台に出てもらったりと、地域との交流にも積極的な中尾。明治座公演にも、日替わりでアマチュアのコーラスグループが出演する。「単に趣味でやるのもいいですけれど、その成果を人に見てもらうのは素敵なこと。気持ちに張りが出ますよ」と話す中尾は、人生の先輩たちの特技を生かしてショウを創ろうと奮闘する矢沢マリ子の姿と重なる。「やりがいや自分が必要とされていると実感することって、人間にとって大事ですよね。私の健康の秘訣も働くこと。ジャンルを問わず、現役で居続けたいなと思います。この『ザ・デイサービス・ショウ2017』を観ていただければ、いくつになっても楽しめることはあるんだと思っていただけるはず。元気になれること請け合いです。ぜひ明治座へお出かけください!」公演は8月24日(木)から29日(火)まで東京・明治座にて。チケットの一般発売は6月25日(日)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行を6月20日(火)午前10時より受付。取材・文/岡崎 香
2017年06月19日ロシアが推進する国際文化プロジェクト「ロシアン・シーズン」と、その一環として行われる「トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017」の記者会見がロシア大使館にて行われた。会見には、ロシア連邦副首相のオリガ・ゴロジェツや映画監督のアンドレイ・コンチャロフスキー、ヴァイオリニストでシベリア最大の芸術祭「トランス=シベリア芸術祭」芸術監督のヴァディム・レーピン、ボリショイ・バレエのプリンシパルであるスヴェトラーナ・ザハーロワとデニス・ロジキンらが出席。会場は華やかな雰囲気に包まれた。「トランス=シベリア芸術祭」チケット情報既に今春からスタートしている「ロシアン・シーズン」についてゴロジェツ副首相は「このプロジェクトは110年前に行われていたものですが、1929年に途絶えてしまいました。これを復活させるにあたり、次は日本の東京で行うということに、疑問の余地はありませんでした。日本の42都市において、250以上のイベントを行います」と説明。ラインナップには舞台、音楽、美術、映画に関する様々な催しが並ぶ。中でも最大の目玉は「トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017」として上演される「アモーレ」。ザハーロワがユーリー・ポーソホフ振付『フランチェスカ・ダ・リミニ』とパトリック・ド・バナ振付『レイン・ビフォア・イット・フォールズ』とマルグリート・ドンロン振付『ストロークス・スルー・ザ・テイル』という3つの現代作品を踊るもので、昨年5月にイタリアで初演されたばかり。ザハーロワの夫でもあるレーピンは「この芸術祭は、著名人も参加すれば若い世代も参加する、とても多面的なものです。日本でも様々な人を巻き込んでいきたいですね」と語る。『アモーレ』公演に続いて、そのレーピンがヴァイオリンを演奏し、ザハーロワと夫婦共演する『パ・ドゥ・ドゥ for Toes and Fingers』も予定。古典から現代作品まで多彩な演目が披露される。両プログラムの中心的存在であるザハーロワは「『アモーレ』はまだ生まれてから1年しか経っていない新しい企画。構成する3つの作品の間にはアモーレ(愛)という見えない糸が存在しています。私とレーピンが共演する『パ・ドゥ・ドゥ~』では美しく雰囲気の良い公演を楽しんでいただきたい。レーピンの音楽に対する責任感にはいつも感銘を受けますし、彼の理想的な音楽は理想的な踊りを促してくれます。ふたりに流れる特別な感情には、他とは比べ物にならないものがありますね」。司会者から、ザハーロワとレーピンは日本で知り合ったことが紹介され、ふたりして顔をほころばせる一コマも。また、ザハーロワと共に、『アモーレ』でド・バナ作品を、『パ・ドゥ・ドゥ~』で『ライモンダ』グラン・アダージョを踊るロジキンは、5月にバレエ界のアカデミー賞とも言われるブノワ賞を受賞した注目のダンサー。「ロシア・バレエを愛してくださる日本の皆様の前で再び踊ることを楽しみにしています」と述べた。「トランス=シベリア芸術祭」は9月26日(火)より29日(金)まで東京・オーチャードホールにて。取材・文:高橋彩子
2017年06月19日今年で4回目を迎える『吉本新喜劇 小籔座長東京公演』。座長・小籔千豊がコンビ解散後、芸人としての再起の場となった吉本新喜劇へ恩返ししたいという熱い思いから実現した公演だ。吉本新喜劇 小籔座長東京公演 チケット情報「何年も前から東京で、しかも吉本の常設劇場ではない劇場で吉本新喜劇の公演をやらせて欲しいとギャンギャン話してたんです。でも、会社はノー!ノー!ノー!……まぁ、そりゃそうですよね。大阪の番組にしか出てへん僕に言われてもそうなるのは今ならわかるんですけど、当時は断られてプリプリ怒ってました。そこから東京のテレビ番組のレギュラーをいただけるようになって、大阪吉本から東京吉本の所属になったタイミングでようやく実現できたんです」公演は1年目から注目を集め、チケットは全日即完。開催後には、先輩から嬉しい言葉もかけられた。「1年目の時、打ち上げで桑原(和男)師匠から『小籔のおかげで、一生出られんと思ってた格式高い俳優座劇場に出られた。舞台に立ててよかった』っていただきました。ほんまにやってよかったです。最近は東京で(新喜劇を)流していただいていることもあって、熱狂的なお客さんが増えてきた。毎年、新喜劇のあとにゲストを迎えてトークコーナーをやっているのは、みんなの人柄を知ってもらいたいから。今年も変な話を聞いていただいて、“面白いから応援しよう”と思ってもらえたらいいですね」近年、すっちー、松浦真也、吉田裕など、吉本新喜劇メンバーの活躍が著しい。今回は、史上初の女座長就任で注目を集める酒井藍の出演も決定している。「藍ちゃんは最高です!ほんまに面白い。ただ、痩せる気がないのが……。座長になることが発表された時、『おめでとう。感謝の気持ちを忘れずに。座長が膝痛いって休演でけへんから痩せなあかんで。寿司行こうぜ』ってメッセージを送ったんです。『はい。本当に感謝していきたいです。寿司もありがとうございます』って返信が来たんですけど、痩せることには一切触れてなかったんで、あいつナメとんなと。1回、ガッチーンとキレたらなあかんなと思ってるところです(笑)」入団当初、「ここで65歳まで飯を食う」と決意した小籔。50年以上受け継がれるテッパン技と劇団員の新しい個性を織り交ぜながら、さらなる発展を目指す吉本新喜劇に生涯、籍を置くつもりだ。「私利私欲で辞めることはない。もし辞めたらクビになったか、はらわた煮えくり返ることがあったんやと思っていただければ。はらわた煮えくり返って辞めた場合は、暴露本を出します。全10巻でどぎつい文句から感謝の気持ちを書きながら、最終巻にどーんって爆弾を落とす。著者は“座長の嫁”で(笑)」小籔が確固たる責任感と並々ならぬ使命感をもって挑む『吉本新喜劇小籔座長東京公演2017』は、8月9日(水)から13日(日)まで銀座ブロッサム中央会館にて開催。大阪でしか観られないベテランから注目の若手までが一堂に集まる本公演をお見逃しなく!先行抽選販売(プレリザーブ)は6月16日(金)より受付。取材・文:高本亜紀
2017年06月16日w-inds.の千葉涼平らをゲストに迎えた梅棒 7th ATTACK「ピカイチ!」が6月23日(金)に開幕する。その稽古場に潜入した。ストーリーのある演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPで創り上げる、男だらけのエンタテインメント集団・梅棒。最近ではミュージカル『キューティーブロンド』や舞台『刀剣乱舞』義伝 暁の独眼竜など人気作の振付を手掛け、俳優としてもさまざまな舞台で活躍中の梅棒だが、その単独公演は、ほぼ言葉を使わずにJ-POPや懐メロなどヒット曲にのせ、ダンスで物語を表現する独自のステージが人気。回を重ねるごとに注目が高まり、今回は過去最大規模となっている。この日は、舞台セットの入った状態で初めての稽古。梅棒公演初の学園モノ、そして梅棒らしいコメディ作品となる今作のセットは、あちこちに学校らしい小道具があり、見た目もにぎやか。説明を聞いた後、出演者たちはそれぞれセットの幅をチェックしたり踊ってみたりして感覚を確かめる。真剣だが楽しそうだ。その後、梅棒の塩野拓矢(梅棒)が担当する曲の稽古に。その曲に乗せる感情を丁寧に説明していく。振りを確認し、まずは踊ってみるメンバー。それを見て再び、より場面が伝わるようにダンスならではの動きの追加や、芝居としての目線など、修正が加わっていく。ダンスのレベルの高さは言うまでもないが、感動するのはストンとストーリーが伝わってくることだ。基本設定を把握しないままで、衣裳も着ていないのに、これがどんなシーンで、それぞれがどんなキャラクターで、今どんなことを思っているかがわかる。それは演出と振付と演者の表現力の賜物だろう。このシーンは千葉を中心に展開していたが、千葉のやんちゃさが新鮮だった。1曲通すと稽古場からは笑い声が。このときは後藤健流がキメのポーズでキャラを全開にしていた模様。ある程度できてくるとそれぞれのオリジナリティが見え始めるのも楽しい。総合演出を手掛ける伊藤今人(梅棒)からの修正や、メンバーからのアイデアも取り入れながらシーンをつくりあげていく。次は伊藤が担当する本作1曲目の稽古に。ほぼ全員が登場するこのシーンでは、個性豊かな面々がそのキャラクターを発揮。遠山晶司(梅棒)に伊藤から「キャラ作りを濃くするのはやめて!」とダメ出し(?)が飛ぶと、稽古場は笑いに包まれる。その後、楢木和也(梅棒)がオープニングの振りを教え始めると空気は一変。誰もが真剣に取り組んでいた。この日みられたのは1.5曲分ほどだが、本作の楽しさは濃厚に伝わった。本番を期待して待ちたい。公演は、6月23日(金)から7月2日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木ほか、大阪、福岡、愛知にて上演。取材・文:中川實穗
2017年06月15日英国北部の炭鉱町で普通の少年が偶然バレエに夢中になり、大人たちを巻き込みながらも、やがてプロのダンサーを目指すまでを描いた映画『ビリー・エリオット』(邦題は『リトル・ダンサー』スティーヴン・ダルドリー監督)。2005年にはダルドリー自ら舞台化、エルトン・ジョンが楽曲を担当してトニー賞の10部門を獲得するなど、21世紀のマスターピースともいえるミュージカルだ。その待望の日本版を7月に控え、6月10日、都内のスタジオで公開レッスンが行われた。ミュージカル『ビリー・エリオット』チケット情報まずは演出補のサイモン・ポラードより、「私たちは昨年4月から1年かけてレッスン形式のオーディションをし、(主人公の)ビリー役を5人、(友人の)マイケル役を4人、500人以上の男の子から選びました」とアナウンス。これは初演のロンドン版、その後のブロードウェイ版も同様で、今回の日本版が世界基準に倣っていることを示すものだ。まずは1幕6場。ボクシングの練習に来ていたビリーが、女の子たち(バレエガールズ)のバレエレッスンに紛れ込んでしまう場面だ。登場するウィルキンソン先生(柚希礼音/島田歌穂とWキャスト)は色あせた服にくわえタバコという、いかにも場末のバレエ教師といういでたち。だが厳しくも的確にレッスンをつけていく様子は、ただ者ではない風格がある。年齢も体型もバラバラのガールズと繰り広げるナンバーはどこかコミカルで、面食らって右往左往するビリーがほほえましい。ふたつめは、炭鉱夫と警官とがストで衝突するナンバーに、ビリーのレッスン風景も織り交ぜて町の日常を描く1幕9場。バレエの稽古場に炭鉱夫の父親(吉田鋼太郎/益岡徹とWキャスト)が怒鳴り込んでくる1幕10場へと続く。“バレエは女の子かオカマがやるもの”と決めてかかっている父親なのだが、息子ビリーへの不器用な愛情が伝わるのは吉田ならでは。一歩も引けを取らない柚希との対峙は迫力がある。3つめは1幕12場、ビリーとマイケルのタップダンスだ。公開レッスンということで5人のビリーと4人のマイケルが登場、芝居をしながら難しいタップを踏むさまに驚く。初々しくも充実した表情を見せる彼らに、ますます本番の期待が高まった。囲み会見では「子どもたちは厳しいレッスンにもまっすぐ取り組んでいてすごい」と明かした吉田。続けて「来日スタッフも“今日はここまでにしましょう”という妥協がない。歌とダンスと芝居の三位一体を目指して頑張りたいね」と語った。また「稽古場でいいところも悪いところもさらけ出す子どもたちを見ると感動して……」というのは柚希だ。「(その過程も)この作品の演出の一部ということ。ぜひ細かいところまで見てほしいです」と、役柄そのままに子どもたちを思いやった。公演は7月19日(水)から10月1日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、10月15日(日)から11月4日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。取材・文佐藤さくら
2017年06月12日1989年にスタジオジブリでアニメーション映画化され、大ヒットしたことで知られる『魔女の宅急便』。児童文学作家・角野栄子氏の原作をもとに、3年前には実写映画化。昨年にはブロードウェイに並ぶ演劇の聖地、イギリスのウエストエンドで舞台化されるなど、その人気はますます広がりを見せている。ミュージカル『魔女の宅急便』は、注目の17歳・上白石萌歌を主人公のキキに据え、若手制作陣で贈るフレッシュな舞台。ミュージカル『魔女の宅急便』チケット情報魔女のキキ(上白石)は、父オキノ(横山だいすけ・中井智彦/Wキャスト)と母コキリ(岩崎ひろみ)と暮らす女の子。“13歳になったら独り立ちする”という魔女のしきたりにのっとり、黒猫のジジと一緒に空飛ぶほうきで旅へ出る。偶然降り立った町コリコで、飛ぶ機械づくりに熱中するトンボ(阿部顕嵐)に出会ったキキ。パン屋の夫婦で出産間近のおソノ(白羽ゆり)とフクオ(藤原一裕・なだぎ武/Wキャスト)に見守られながら、新生活をスタートさせるのだが……。キキ役の上白石は、愛らしい顔立ちにキキの服装がピタリとはまり、物語から抜け出してきたような立ち姿だ。紅茶のCMでも話題になった透き通るような歌声が、繊細ながら耳なじみのよいメロディ(作曲・音楽監督は小島良太)に重なり、一気に物語の世界観を形づくる。トンボ役の阿部は“飛行オタク”ゆえに最初はキキを怒らせるものの、その純粋さで次第に親しくなる少年を好演。さらにコキリ役・岩崎の芯の強さ、おソノ役・白羽の明るいたくましさが物語に厚みをもたらした。ゲネプロでのオキノ役・横山は少しとぼけたお父さん像がほほえましく、NHK教育テレビ『おかあさんといっしょ』で人気を集めた温かい歌声はここでも健在。終始無言というフクオ役を、静かな眼差しと茶目っ気のある表情で演じた藤原も印象に残った。ゲネプロ後の囲み会見では、「舞台に立ってみて、キキとしての気持ちがつながりました」と初々しく語った上白石。阿部も「共演の方から(演技の)いろんなことを盗んでいます」と話すと、「萌歌ちゃんと顕嵐くんの芝居がどんどん変わっているのが分かるので、見てキュンキュンしています」と白羽が言い、ベテラン陣がうなずくひと幕も。一方、横山が「お父さんとして、キキちゃんや奥さんを感じて演技をするようにしています」と話すと、岩崎も「普段から色々お話ししていますよね」と返すなど、役づくりの一端も明かされた。また、稽古中に実生活でも第1子のパパとなった藤原が「役づくりの苦労はなかったです」と言うと、キャストたちから思わず笑いが。温かな舞台そのままの会見となった。東京公演は終了。大阪公演は8月31日(木)から9月3日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文:佐藤さくら
2017年06月07日トップスター・明日海(あすみ)りおと新トップ娘役・仙名彩世(せんな・あやせ)の新コンビ本拠地お披露目となる宝塚歌劇花組公演『邪馬台国の風』『Sante!!』が6月2日、兵庫・宝塚大劇場にて幕を開けた。宝塚歌劇花組『邪馬台国の風』/『Sante!!~最高級ワインをあなたに~』チケット情報第一幕の『邪馬台国の風』は、約1800年前の古代日本が舞台。数多くの小国が乱立し、絶えず争いが繰り広げられていた倭の国。幼い頃に両親を失い、大陸から来た李淵のもとで生き抜くために戦う術を身に着けたタケヒコと、後に女王ヒミコとなるマナの運命を、邪馬台国と、対立する狗奴(クナ)国の争いを絡めて描いた物語だ。戦術と共に生きる術を学び、優しく、たくましく育つタケヒコ。邪馬台の兵士となり、まっすぐな人柄と棒術の腕で仲間と信頼関係を築いていく主人公を、明日海は柔らかな空気感の中に、強い芯を持たせて演じている。ハードな立ち回りのシーンでは目に力を込め、迫力を持たせながらも美しさを感じさせる。芹香斗亜(せりか・とあ)演じる狗奴国の将クコチヒコと対峙する場面での緊迫した空気も見応え十分だ。仙名が演じるのは、神の声を聞くことができるマナ(ヒミコ)。巫女になるべく邪馬台へ向かう少女マナを可憐に演じ、ヒミコとして女王に即位したときには凛とした佇まいで目を引く。さらに女王としての苦悩、ひとりの女性としての葛藤も繊細に表現し、丁寧な演技で魅せる。クコチヒコ役の芹香もときにゾクッとするほどの鋭い目つきで冷酷な敵役を好演。また、専科の美穂圭子(みほ・けいこ)が大巫女、星条海斗(せいじょう・かいと)が狗奴国の王ヒミクコを演じ、圧倒的な存在感で舞台の空気を締めている。第二幕の『Sante!!』は、フランス語で“乾杯!”を意味するタイトル。パリを舞台に「ワインを飲んで見る数々の夢」をテーマにしたエネルギッシュなレビューだ。プロローグではシャンパンゴールドや赤ワイン色の衣裳に身を包み、テーマソングを歌いながら弾けるようなダンスを繰り広げ、一気に観客をその世界へと引き込む。そこからはコミカルなシーンや、スーツにソフト帽のクールなナンバー、セクシーなデュエット、大階段の黒燕尾など、色とりどりに展開。さまざまなワインをイメージしたシーンは、まさにいろんな味をテイスティングするような感覚だ。両作とも、トップ4年目の充実期ともいえる明日海と、高い歌唱力、演技力で魅せる仙名の新コンビを中心に、個性豊かな花組の魅力が弾けるステージに仕上がっている。公演は、7月10日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、7月28日(金)から8月27日(日)まで東京・東京宝塚劇場にて上演。取材・文:黒石悦子
2017年06月07日宝塚歌劇月組公演『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』の制作発表会が5月31日に都内にて開催された。『エリザベート』等の演出家としても名高い鬼才・小池修一郎が、デュマの古典的名作『三銃士』をもとに新たな物語として書き下ろす。会見では月組トップスター・珠城りょう、トップ娘役・愛希れいかをはじめ、美弥るりか、月城かなと、宇月颯、暁千星、沙央くらまの出演者7名によるパフォーマンスもあり、豪華なものとなった宝塚歌劇月組『All for One』~ダルタニアンと太陽王~脚本・演出を手がける小池によると「デュマの『三銃士』はルイ13世の時の話ですが、今回はルイ14世の時代で、20年後くらい。ですので銃士のみんなには20歳くらい若返ってもらいます(笑)。(珠城が演じる)ダルタニアンが銃士隊の中で一番の剣の使い手であると認められている、皆さんがよくご存知の『三銃士』の物語の後、という設定」とのこと。この大胆な脚色に「トンデモ三銃士と言われるかも」と言いつつも、「もともと三銃士の話は実在の人物の伝記があり、それを物語にした作家がいて、その上でさらにデュマが小説にしている。色々なエピソードがあるので、私たちがこの有名なダルタニアンと三銃士たちの物語を作ってもいいのでは」と主張。ただしこの会見時にはまだ脚本が出来上がっていないということを登壇者たちにバラされ、汗を拭きつつの説明で会場を笑わせていた。とはいえ、小池への出演者たちの信頼は厚く、ダルタニアンを演じる珠城も「小池先生の完全オリジナル作品ということが、まず嬉しかった」と話す。さらに作品については「All for One、One for All。自分のためにではなく誰かのために、みんなの幸せを勝ち取るために、みんなで力を合わせようという作品のテーマは、お客さまにも強いメッセージを与えられるのでは」と語った。相手役となる愛希はルイ14世役。「観終わった後にワクワクしていただけるような舞台を」と意気込みを。なお発表時に「トップ娘役がフランス国王? 男役?」とファンの間で話題になったこの配役について小池は「皆さん色々と想像なさってるでしょうし、それはかなり合っていると思いますが(笑)。とりあえずは公演初日まで引っ張りたい」と含みを持たせた。公演は7月14日(金)から8月14日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、9月1日(金)から10月8日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。兵庫公演は6月10日(土)、東京公演は7月30日(日)にそれぞれ一般発売開始。
2017年06月05日6月2日福岡・博多座で「六月博多座大歌舞伎」が開幕。中村橋之助が八代目中村芝翫を襲名。同時に、長男の国生が四代目中村橋之助、二男の宗生が三代目中村福之助、三男の宜生が四代目中村歌之助を襲名という、歌舞伎界初となる親子4人同時襲名披露として大きな話題を呼んでいる。その初日、中村芝翫が博多座ロビーで鏡開きを行ない、公演に対する思いを語った。六月博多座大歌舞伎「昨年の東京・歌舞伎座、そして今年お正月の大阪松竹座に続き、大好きな博多座で親子4人揃って、襲名披露ができます事、本当に嬉しく思います。先輩方、後輩、素晴らしい役者さんたち。スタッフの皆様、劇場に足を運んでくださるお客様。そして今日も朝から裏で頑張ってくれている家内。そんな皆様の支えあってこそですね。本当に有り難いです」と笑顔で挨拶する芝翫。詰めかけたファンも「成駒屋!」「八代目!」と掛け声で答える。今回は昼夜それぞれ親子4人の共演演目(昼:「車引」、夜:「祝勢揃壽連獅子」)が上演となるが、特に「車引」は並々ならぬ思いがあるとか。「橋之助の梅王丸は吉右衛門の兄さま、福之助の桜丸は菊之助さん、そして歌之助の杉王丸は染五郎さんがそれぞれ教えてくださって。倅たちもそれぞれ、役者への思いというものが少しずつピントが合ってきたように思います。本当に歌舞伎界全てで支えてくださって有り難いですね。身に余る光栄でもあり、なんとか恩返ししなくてはと思っております」残念ながら、休演となった中村獅童も今回の博多座公演は非常に楽しみに思っていたようで「博多の皆様によろしく」と電話をもらったとか。「この芝翫という名前は個人の名前ではない。中村芝翫という会社の社長に就任したようなものですよね。そして、私は八代目芝翫を大きくして業績もあげなきゃいけないということ。そしてそれを倅の誰かにこっそりと渡してやりたいと思いますね(笑)」と語り、博多手一本で締めくくった。6月26日(月)まで上演。チケット発売中。
2017年06月02日240年余の歴史を誇るモスクワのボリショイ・バレエが、6月2日から、広島を皮切りに東京、大津、仙台、大阪の全国5都市で、2年半ぶりの日本公演を行う。公演に先立ち、ロシア大使館で記者会見が開かれた。ボリショイ・バレエ チケット情報今年は同バレエ団の初来日から60年。また、ロシア政府が自国の文化芸術を紹介する “RUSSIAN SEASONS”の最初の開催国が日本に決まり、この公演がオープニングを飾ることになって、二重の意味で注目が集まる。プログラムは、ユーリー・グリゴローヴィチ振付の『白鳥の湖』と『ジゼル』、アレクセイ・ラトマンスキー振付、日本初演となる『パリの炎』の3作で、出演者には、世界的な舞姫スヴェトラーナ・ザハーロワをはじめ、エカテリーナ・クリサノワ、来日直前にブノワ賞受賞が決まったデニス・ロヂキンらスターダンサーに加え、将来を担う有望な若手も名を連ねる。会見に出席したマハール・ワジーエフ監督は、「ボリショイ・バレエの監督として来日するのは初めてですが、日本に来る時はいつも特別な思いがあります。今回のツアーは我々ボリショイ・バレエにとっても特別で、60年間来日し続けられたのは、日本の皆様に認めてもらえたからだと思います。これからさらに新しい歴史を紡いでいけるのではと期待しています」とにこやかに語った。「また日本に来られて嬉しいです。『パリの炎』を踊るのは初めてで、『ジゼル』も日本では初めてで責任を感じますが、同時にワクワクもしています。回を重ねるごとに気分が高揚して、素晴らしい舞台を作れるのではないでしょうか」と期待を込めるのは、プリンシパルのエフゲーニヤ・オブラスツォーワ。その2作で相手役を務めるリーディング・ソリストのイーゴリ・ツヴィルコは、「来日は2度目です。素晴らしい先輩たちの舞台に引けをとらないように、誇りを持って踊っていきたい」と力強く話す。入団1年目で抜擢されたアリョーナ・コワリョーワは、「初めて日本に来ることができ、喜びと共に責任と名誉も感じています。バレエを愛する日本のお客様の前で『ジゼル』のミルタを踊ることになり、とても緊張していますが、気持ちを込めて踊りたいです」と初々しく話した。世界最高峰のバレエを堪能できる贅沢な時間が始まる。東京公演は6月4日(日)に『ジゼル』にて開幕。6月7日(水)から12日(月)まで『白鳥の湖』。6月14日(水)・15日(木)は『パリの炎』を東京文化会館にて上演。チケット発売中。文:原田順子
2017年06月02日2016年7月16日に開幕したミュージカル『キャッツ』大阪公演が、2018年5月6日(日)をもって千秋楽とすることが決定した。大阪公演の開幕から1年10か月、総公演回数は612回を予定しており、2017年5月25日の時点では289回を上演し、28万人を動員した。劇団四季「キャッツ」チケット情報千秋楽決定を発表した5月25日の本編終了後には舞台挨拶を行い、マンカストラップ役の加藤迪(すすむ)が挨拶をし、「昨年7月に開幕した『キャッツ』大阪公演は、このたび来年5月6日を千秋楽とすることと決定しました。千秋楽は決定いたしましたが、最後までひとりでも多くのお客様に作品の感動をお届けできるよう、精一杯務めてまいります。どうぞ引き続きご声援を賜りますようよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました」と語った。『キャッツ』の国内上演記録は総公演回数9,478回、総動員数は930万人と、ミュージカルの金字塔ともいえる作品。未見の方は、お見逃しなく!現在、大阪四季劇場(ハービスENT内)にて上演中。チケットは発売中。
2017年05月31日日本で37年目を迎えるブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。今年は、吉柳咲良の10代目ピーターパンが誕生し、注目の若手演出家・藤田俊太郎が演出に初挑戦と、新たな『ピーターパン』が誕生する。そんなか、6年ぶりにウェンディとして戻ってくるのが神田沙也加。新たな座組で演じる神田に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2009年から3年間、ウェンディを演じてきた神田。抜擢には「すごくビックリして。『年齢設定がだいぶ離れてますけど大丈夫ですか?』って正直に聞きました」と笑う。けれど実は待ち望んでいたカムバック。「私、ジンクスがあって。もう一度出たい作品は観に行かないんです」と観なかったそう。「だからとても嬉しいです!」。6年ぶりに演じるにあたり「やっぱりそこは前回のトレースでは絶対にダメですよね。前回はやさしい、かわいい、あまーいっていう部分を打ち出したのに対し、今回はピーターパンと対峙したときの心境の変化だったり、ネバーランドに無邪気に憧れた後にくる例えば不安感だったりとか、そういう内面的な部分をもう少し見せられるようにしていけたらいいかなって。子供はもちろんですが、大人のお客様にも、ウェンディは今こう思ってるんだなっていうのをキャッチしていただけるような演じ方ができたらいいなと思っています」。子供も観られるファミリーミュージカル。実は神田にとっても生まれて初めて観たミュージカルだ。「お子様のお客様も多いから、思ったことをその場で口にしてくれたりするんですよ(笑)。そこで『そう観てくれるんだ』っていう発見もあったりして。みんなの表情からも“今こういう感情で観てるんだな”っていうのが伝わってくる。多分、気を使って笑ったりしないじゃないですか。面白いから笑うし、悲しいから黙っちゃったり、戦わなきゃいけないところは応援してくれたりして。だからお子様に観てもらえる作品って大好きです」。10代目ピーターパンの吉柳について「『私が審査員でも選ぶだろうな』ってくらい(笑)。中性的な魅力があって、フレッシュで、普通の服を着ていてもピーターパンでした」。先輩として教えることは?と聞くと「いやいや!」と謙遜するが、今作が吉柳の初舞台であることについては「初舞台というものが役者さんにとってどれだけ大事かっていうのはわかっているので、絶対に『楽しかった』って思わせてあげられる相手役でありたいと思っています。ずっとこの世界で活躍していっていただくためにも、最高の初舞台のお手伝いができれば」とやさしく語った。そんな新たな『ピーターパン』は7月24日(月)から8月3日(木)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、6日(日)静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール、12日(土)・13日(日)大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。取材・文:中川實穗
2017年05月29日ミュージカル『レ・ミゼラブル』が、プレビュー公演を経て5月25日、初日の幕を開けた。日本でもコンスタントに上演され続けている人気作だが、今回は1987年の日本初演から数えて30年目の節目の公演で、いつも以上に注目が集まっている。同日、初日キャストである福井晶一、吉原光夫、知念里奈、昆夏美、生田絵梨花、森公美子が取材に応じた。チケット情報はこちらヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作に、19世紀初頭のフランスの動乱期に生きる人々の姿を描く群像劇。パンを盗んだことから19年投獄されたのち、名を変え新しい人生をまっとうに生きていこうとする主人公ジャン・バルジャンを演じる福井は「日本初演30周年。日本の皆さまにこれだけ愛され続けてきた作品に出演出来て嬉しく思います。先輩方が築き上げ、繋いできたバトンをしっかり守っていきたい」と意気込みを。バルジャンを追う刑事ジャベール役の吉原も「感慨深い。30年、たくさんのキャストやお客さまが携わり作り上げてきたものに負けないよう、でも意識しすぎないよう冷静に演じたい」と話した。30年のあいだ、多くの新しいキャストが加わり、卒業を繰り返していった作品。今回も、1987年の日本初演でバルジャンの養女・コゼットを演じた鈴木ほのかが、コゼットをいじめる宿屋のおかみマダム・テナルディエとして初参加するなど話題も多い。初日メンバーの中ではコゼット役の生田がニュー・キャストだが「先輩方が築き上げてくださったものをしっかり受け継ぎながら、新しい空気感を出していけるように頑張っていきたい」と初々しく挨拶した。乃木坂46のメンバーとして活躍する生田だが、1月に『ロミオ&ジュリエット』で本格的にミュージカルデビューを果たし、今回が歴史ある帝国劇場への初出演。ファンテーヌ役の知念が「いくちゃんはどんどん進化している。私もかつてコゼットを演じていたので、ファンテーヌ役もいつかやってくれたら嬉しい」、エポニーヌ役の昆が「自分の大好きな人が生田さん演じるコゼットに思いを寄せているという物語なのですが、生田さんを見ていると、これだけ美しく歌声も素敵なので、完敗だなと…」と話すなど、共演者からも高い評価を得ているよう。またマダム・テナルディエ役の森も「生田さんは本当にまっすぐで、声も素直に出る。何も言うことがない。最初はキスシーンなどにぎこちなさがあったけれど、今はもう“大女優”! ファンの方たちが相手役に嫉妬するんじゃないかと思うほど。素晴らしい」と絶賛、さらに「イギリス人のスタッフの方が、わざわざ生田さんを呼び出して「綺麗」って言ったのよ」とも明かした。最後に改めて福井が「ひとりひとりが作品と向き合い、いい仕上がりになっている。たくさんの方にこの作品の感動を届けたい」と話し、キャストは初日の舞台へと向かった。30年愛され続ける名作を、節目の年にぜひ。なお、メインキャストはすべてトリプルキャストで、日によって出演者は異なる。東京公演は7月17日(月・祝)まで同所にて。その後8月に福岡、9月に大阪、9~10月に愛知でも上演される。
2017年05月25日Kバレエカンパニー『海賊』が開幕した。マリウス・プティパの原振付に、主宰の熊川哲也が演出・再振付を施し、07年に初演。以来、一貫性あるストーリーと、ふんだんに散りばめられた踊り、深い色合いの美しい装置・衣裳などが好評を博し、再演を重ねてきた名プロダクションだ。今回、初演から10年という記念すべき節目に上演される本作の、初日のもようをお届けしよう。【チケット情報はこちら】開幕すると、地図が描かれた斜幕の上を、サーチライトのような光が動き回る。そして、斜幕の向こうに浮かび上がるのは、船に乗った海賊の首領コンラッド、その部下であるビルバント、アリらの姿ーー。熊川版『海賊』は冒頭から、わくわく感いっぱいだ。海賊達は大海を舞台に大いに暴れ回るが、やがて嵐に遭い、トルコ占領下のギリシャに打ち上げられる。彼らをみつけて介抱したのが、美しい姉妹、メドーラとグルナーラ。コンラッドとメドーラは恋に落ちるが、メドーラ、グルナーラら女性達は奴隷商人ランケデム達に捕らえられ、市場に売りに出されてしまう。果たして、コンラッドらは彼女達を救えるのか??熊川版『海賊』の大きなテーマは“男たちのロマン”。海賊たちの勇壮な踊りや強い絆が前面に押し出された、心躍るアドベンチャー大作となっており、殊にコンラッドに対してアリが見せる忠節は特長的だ。コンラッド役の遅沢佑介はリーダーにふさわしい堂々たる踊りを見せ、アリ役の伊坂文月は陽性のオーラと直向きなパワーでその場を盛り上げたり撹乱したり。一方、途中でコンラッドに反旗を翻すビルバント役の杉野慧は独特の陰影や鬱屈を踊りに昇華させ、卑劣なランケデム役の堀内將平は狡猾さを巧みに表すと共に軽やかな跳躍でも観客を魅了。それぞれに多彩な男性像を造形した。一方、女性陣も負けてはいない。今回、神々しい輝きで観る者の心を引きつけたのは、メドーラ役の中村祥子。長い四肢を活かした伸びやかな踊りは息を飲むほど美しく、ヒロインに相応しい気高さに満ちている。また、グルナーラ役の小林美奈は、確かな技術に裏打ちされた、可憐で表情豊かな動きが光る。奴隷となってランケデムやパシャを相手に繰り広げる踊りには、悲嘆と苦悩が滲み出て秀逸だった。コンラッド、メドーラ、アリが踊るパ・ド・トロワは活気にあふれ、会場の熱気も最高潮に。前日に行われた囲み会見で熊川は「うちの海賊達はジャック・スパローズよりカッコいい」と胸を張り、「この作品は10年やっている鉄板作品。非の打ち所がないと思っています。それを新しいダンサーが踊ることでまた色が変わる。どういう相乗効果、化学反応があるか、監督として見ていきたい」と語った。その言葉を裏付けるかのように、10年という歳月での作品の成熟とダンサー達の成長とが、躍動感みなぎる鮮やかな舞台を作り上げていた。取材・文:高橋彩子
2017年05月25日東京バレエ団はこの秋、〈20世紀の傑作バレエ〉と題した公演で初めてローラン・プティ(1924ー2011)の作品に取り組む。ビゼーの音楽に振付けられた傑作、『アルルの女』だ。このほど振付指導のルイジ・ボニーノらを迎えての公開リハーサルおよび記者懇親会が開催され、ボニーノはじめ、斎藤友佳理芸術監督、主演の上野水香、川島麻実子、柄本弾が公演への思いを語った。【チケット情報はこちら】懇親会冒頭から「『アルルの女』についてだね!この作品は実にディープで、受け取ることが難しいところがあるんです」と熱く語りはじめたボニーノ。婚約者がありながら、別の女性の幻影に心を奪われ、次第に正気を失っていく青年フレデリと、彼に献身的な愛を注ぐ婚約者ヴィヴェットの悲恋を描く作品だが、とくに終盤のフレデリのソロは、見る者の心をこれでもかと激しく揺さぶる。「世界じゅうで上演された、素晴らしい作品」と、愛情たっぷりだ。「35年間プティと一緒にいて、彼にすべてを学びました。最初は『コッペリア』の兵士役でしたが、始めた瞬間、恋に落ちました。ステップ、音楽性、感情、愛、ユーモア……。やりたいと思っていたまさにそのものだ、と。彼が亡くなって本当に寂しいし、こうして指導することは責任重大です」とボニーノ。稽古場では、コール・ド・バレエの指導を担うジリアン・ウィッテンガムとともに、実に緻密で、妥協のない指導を繰り広げた。初日と3日目に主演する上野は、昨年秋、モスクワでの〈クレムリン・ガラ〉でこの作品の抜粋を踊っている。パートナーは今回と同じく、イタリアの貴公子として名高いロベルト・ボッレ。この上演が今回の取り組みに繋がったと、斎藤芸術監督は話す。「求められるのは、99パーセントが“内面”。ダンサーたちには、この作品を通して変わっていってもらいたいのです」牧阿佐美バレヱ団在籍時よりいくつものプティ作品を踊ってきた上野だが、「以前客席から観たドミニク・カルフーニのヴィヴェットが本当に素敵だった。感情表現を、自分だけのものをつくっていきたい」と話す。2日目のヴィヴェット役、川島は「女性ダンサーの、感情的な意味での役割はとても大きいと感じた。どう掘り下げ、どう打ち破っていけるかが課題」という。彼女と組むのは柄本。数年前、ボニーノは彼に「『アルルの女』をやるといい」と声をかけたことがあるという。それがついに実現、「体力的にハードな作品と痛感。内側からストーリーを語れるようになりたい」と柄本も意欲的だ。〈20世紀の傑作バレエ〉公演は、9月8日、(金)から10日(土)まで、東京・東京文化会館にて。チケットは5月27日(土)午前10時より発売。取材・文:加藤智子
2017年05月25日昨年、ブロードウェイ(BW)初演から20年を迎えた、メガヒット・ミュージカル『シカゴ』。2012年に『シカゴ』でBWデビューした米倉涼子が今年7月、再びBWの舞台に立ち、東京での米カンパニー特別公演でも主演する。【チケット情報はこちら】先日、公開稽古が行われ、ロキシー・ハート役の米倉が華麗な歌とダンスを3曲披露した。一躍スターダムにのし上がった喜びを歌い踊る『ロキシー』では、米倉は実にチャーミング、役がそのまま体の中からにじみ出るようだ。『ミー・アンド・マイ・ベイビー』は想像上のお腹の赤ちゃんと歌うアップビートの曲で、米倉は男性ダンサーふたりと息の合うキレの良いダンスを見せた。『ナウアデイズ~ホット・ハニー・ラグ』はヴェルマとロキシー女性2人による、ラストを飾るナンバー。今を生きる喜びが溢れ、前向きなエネルギーが伝わってくる。米倉ロキシー、お帰りなさい!と、期待で胸が膨らんだ。公開稽古後、米倉は作品への強い思いを語った。「私が『シカゴ』に携われていることは、宝くじに当たったみたいに究極なこと。初めて出演した時から幸せと後悔が混ざり合い、また次をやりたいと願う。できることなら一生やりたい作品です。今回は4月から稽古を始めました。2008年、2010年、2012年の経験から、歌も台詞も振りもまだ身体に入っています。今は動きながら台詞を思い出し、発音の練習や体力づくり、またブロードウェイで振りが変わっているパートを調整したり。歌唱力はもっと上げたいですね。舞台の練習では生きているなぁという感覚が取り戻せて、貴重な時間を過ごしています。ロキシー役は、自分と重なるところも多くて。子供の頃バレエをやっていたけど頂点までは行けず、ドラマの主役も最初のうちは取れなかった。私は男になる!3年以内に主役をとる!と決めたのが2000年。雑草のように強く、高いところまで伸びていきたいという気持ちがロキシーと重なったのかな。人を使っても、這い上がる(笑)。シカゴの魅力は歌、踊り、芝居、美術、衣裳などのトータルバランスが100点満点。肌と黒だけの世界で、ストーリーもちょっと意地汚くて、音楽が全て前向き。カッコよくてコミカルで、全てがこれほど一体化しているショーは他にないでしょう。曲では『オール・ザット・ジャズ』と『セル・ブロック・タンゴ』が一番好き。どちらも私は出ていないけど(笑)。ビリー・フリンが登場するシーンも、後ろで羽を持って踊りたいくらい!他の方のシーンもしっかり見ているので、ダメ出しは完璧ですよ。20周年の特別な時期にこの舞台に立てることに感謝していますし、その分のお返しをしたい。BW公演も日本公演も思い切って頑張ります。ぜひ見に来てください!」公演は8月2日(水)から13日(日)まで、東京・東急シアターオーブにて。チケットは発売中。取材・文:三浦真紀
2017年05月25日2015年に韓国で初演され、昨年の再演時も連日ソールドアウトを記録した人気の創作ミュージカル『メイビー、ハッピーエンド』日本公演が5月19日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。ミュージカル『メイビー、ハッピーエンド』チケット情報2044年、旧型となって捨てられ、狭いアパートの一室でひとり過ごす“ヘルパーボット”のオリバー。ある日、向かいの部屋に住むクレアが充電器の故障で助けを求めてきたのをきっかけに、孤独な彼の生活が一変する。同じロボットでありながら、引きこもり気味のオリバーとは正反対に活発なクレア。彼女の強引な誘いで、オリバーは元の雇い主ジェームズに会うため済州島に向かう。旅を終えて戻ったふたりには、プログラムされていなかったはずの“愛”という感情が芽生え始める。だが、故障すれば修理の方法もない彼らは遠くない将来、自分たちが動かなくなる日が来ることをよくわかっていた…。この日、オリバーを演じたSE7EN(チェ・ドンウク)は、2015年に『エリザベート』でトート役を務めて以来のミュージカル出演。人間そっくりだがちょっと違うロボットらしさや、孤独だったオリバーが変わっていく様子を繊細に見せて観客を魅了した。終演後のアフタートークでは「見たこともないような量のセリフで覚えるのが大変でした。2か月たっぷり稽古したんですが、生まれてからこんなに集中したことがあったかと思うほど」と語った。『レベッカ』などで注目される若手女優ソン・サンウンは、透明感のある歌声と愛らしい演技を披露。さらに、SE7EN顔負けの上手な日本語で「とても感動的な公演なので、また見に来てください」とアピールした。ジェームズをはじめ数役を引き受けた実力派俳優のラジュンは「ピアノ演奏や電動ローラーボードなどに苦労したけれど、観客の皆さんにお会いできたことが何よりも良かったです」とコメントし会場を沸かせた。SE7ENが「ロボットを通して見える人間の感覚や気持ちに共感してもらえれば」と言うように、終わりを知るオリバーとクレアは誰もがいつかは死を迎える人間のようにも思えてきて共感度満点。キュートなふたりの恋は切なくて思わずホロリとさせられる一方で、彼らを待つ結末には心癒され、じんわり温かな気持ちになるはず。オリバー役はトリプルキャストで他にソンジェ(超新星)と元U-KISSのKEVINが、クレアはWキャストでもうひとりはベテラン女優のキム・ボギョンが務める。心温まるストーリーと素敵なナンバー、魅力ある俳優たちによる秀作ミュージカルは5月28日(日)まで上演中。取材・文:小田香
2017年05月23日1999年にトニー賞最優秀作詞作曲賞、最優秀脚本賞を受賞した秀作ミュージカル『パレード』が5月18日(木)、遂に日本初演を迎えた。主演は石丸幹二と堀内敬子、演出は森新太郎。石丸と堀内は「劇団四季」時代以来17年ぶりのミュージカル共演、森はミュージカル作品を手掛けるのは初となる。ミュージカル『パレード』チケット情報本作は、20世紀初頭に起きた冤罪「レオ・フランク事件」を題材にした作品。南北戦争終結から半世紀が過ぎてもいまだその空気を引きずるアメリカ南部を舞台に、人種差別や権力争い、そしてマスコミ、世間によって無実の人間が犯人に仕立て上げられていくさまと、夫の潔白を証明しようとする妻の奮闘を描く。大掛かりなセットがほとんどない舞台。大きなセット転換もなく、照明の当て方でシーンが変わるシンプルさだ。ただし前方に向かって傾斜のついた八百屋舞台になっているため、舞台上の様子が奥までよく見え、登場人物一人ひとり、本作の重要な存在である“民衆”の表情までわかる。本作の伝えたいものがそこからも感じられる。物語の発端は13歳の少女の殺人事件。しかし本作が主に描いているのはその“真相”ではない。それを取り巻く怒り、妬み、憎しみ、狡さ、正義感、プライド、愛……。それらが絡み合い、膨らんで、ある夫婦の運命を変えていく様子だ。それを伝えるキャスト達の豊かで繊細な芝居、歌唱は本作のなによりの魅力。シンプルな舞台を熱で満たす。終演後、石丸が「今のこの時代だからこそ観ていただき、考えていただきたい。そんな作品だと思います」と話したが、劇中、今この人たちは何を思うか、と考える瞬間が何度もあった。登場人物の一人ひとりを見ると悪い人間はほとんどいない。けれどその人たちが“正義”と名付けられたものに目がくらみ、嘘に加担し、“民衆”として大きなうねりを生みだし、冤罪を生んだ。ここに自分も参加しているのではないかということは、考えずにはいられない。石丸が「かなりヘヴィーな内容に、皆様も今どのような気持ちで手を叩けばいいのか、いろいろ交錯しているかもしれません」と客席に語り掛けたカーテンコール。この日は日本初演・初日を記念して、演出の森と、脚本のアルフレッド・ウーリーも登場した。森が「おかげさまでいい緊張感に包まれた初日を迎えられました」と挨拶すると劇場は熱い拍手に。アルフレッドは「この作品で描かれている出来事は、地球の裏側の私の生まれ故郷で起こったことです。それをこの遠く離れた日本で具現化できたことは、私に感動をもたらしてくれました」とキャストに拍手を送り、キャスト達も笑顔で応えた。公演は6月4日(日)まで東京・東京芸術劇場プレイハウスにて。取材・文:中川實穗
2017年05月22日1987年の日本初演以来、30周年を迎えるミュージカル『レ・ミゼラブル』。2013年には演出を一新した“新演出版”が上演され、2015年には上演回数3000回を達成と、上演されるたびに話題を呼ぶ人気作だ。2013年からジャン・バルジャン役で出演する福井晶一に、本作にかける思いや意気込みを聞いた。ミュージカル「レ・ミゼラブル」チケット情報ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作に、19世紀初頭のフランス動乱期の社会情勢や、民衆の生活を描いた物語。日本初演から30年、変わらず愛され続ける作品の魅力について尋ねると、「一番は音楽。特別なことをしなくても、そのときどきのキャラクターの感情を音楽が表現してくれます。それにオーケストラが素晴らしい。ミュージカルの中でもこれだけ豪華な編成でやることはなかなかないですよね。僕たちもオーバーチュア演奏が始まるだけでテンションが上がります」と語る。さらにもうひとつの魅力は“普遍的なテーマ”だ。「観終わって劇場を後にしたとき、明日から強く生きていこうって思えたり、希望や光を感じられる作品だと思います。どの人物に感情移入するかは観る人によって異なると思いますが、時代や世代を越えて感情移入できる。僕は20歳の頃に初めて観ましたが、40歳を過ぎた今でもまた違う見方ができるんです。そこが愛され続ける理由のひとつかなと思います」。バルジャン役はトリプルキャストで、2015年と同じ顔ぶれ。吉原光夫、ヤン・ジュンモと共に日替わりで演じる。「3人それぞれに個性があるので敢えて意識することはありません。お芝居に関しては、自分で劇団や演出もやっている光夫から、また神に対しての思いをクリスチャンであるジュンモから学ぶことがありました。そんな中自分の強みかなと思うのは、劇団四季の頃から大切にしてきた、しっかりと言葉を伝えることです。素晴らしい歌詞をしっかりとお客さまに伝えていく、僕はその使命を担っているなと感じます」。上演されるたびに進化する演出もさることながら、新キャストが加わるのも楽しみなところ。「新しいキャストが起爆剤になって新たな発見が出てきますし、キャストが変わると芝居も変わるんですよね。新しいメンバーがどんなお芝居をしてくるのか、どう歌うのか、僕もその化学反応がとても楽しみです。役はダブル、トリプルで演じられるので、いろんな組み合わせの妙を楽しんでいただけたら嬉しいですね」。公演は、5月25日(木)から7月17日(月・祝)まで東京・帝国劇場、8月1日(火)から26日(土)まで福岡・博多座、9月2日(土)から15日(金)まで大阪・フェスティバルホール、9月25日(月)から10月16日(月)まで愛知・中日劇場にて上演。チケットの一般発売は、大阪公演は6月3日(土)10:00より、福岡・愛知公演は6月10日(土)10:00より開始。取材・文:黒石悦子
2017年05月22日2013年に東京で日本初演を迎えた、劇団四季のミュージカル『リトルマーメイド』。東京、名古屋に継ぎ、日本3都市目となる福岡公演が8月11日(金・祝)、いよいよ幕を開ける。これに先駆けて5月15日、福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」にて記念イベントが開催された。劇団四季『リトルマーメイド』チケット情報トークイベントには、主人公アリエル役候補の松元恵美とアリエルの父・トリトン役候補の村俊英が登場。「ディズニーのアニメーション映画を何度も観て、幼い頃からアリエルに憧れていたんです。芯が強くて、目標に突き進んでいく強さがある女の子ですよね」と語る松元は、自身も幼い頃から始めたクラシックバレエで「できるまで泣きながら練習する」という負けず嫌いな女の子だったそう。村は、2012年の『サウンド・オブ・ミュージック』以来、5年ぶりの地元・福岡だという。「久しぶりに帰ってきて、故郷の空気に懐かしさを感じてます。キャナルシティのそばまで歩いてきたのですが、当時の事をいろいろ思い出しますね。福岡のうどんが大好きなので、今回ももちろん食べます」と笑顔で語る。『リトルマーメイド』は、地上世界に憧れる人魚姫アリエルが、人間の王子エリックに恋をする物語。舞台では、海の中での人魚の動きを、フライングを使って表現。最新鋭の舞台技術を使い、海の中の世界をダイナミックに描き出している。松元は「地に足をつけ、支えがある状態で歌うのが普通ですよね。でもフライング中は吊られた状態で歌うので、慣れるまでは大変でした」と本作ならではの苦労を語る。また、アリエルの視点をコンセプトとした舞台表現も注目すべき点のひとつ。村は「アリエルにとっての現実世界である海の中は立体的な三次元の世界で表現され、アリエルの空想世界である地上は絵本のような二次元の世界で描かれています。その対比も楽しんでください。」と見どころを教えてくれた。イベントの最後には、2013年の日本初演よりアリエル役を務める谷原志音が、魚たちが悠々と泳ぐ外洋大水槽をバックに劇中歌「パート・オブ・ユア・ワールド」を披露。その歌声で、会場が『リトルマーメイド』の世界へ一瞬にして変化した。他にも、作曲家アラン・メンケンが手がけた「アンダー・ザ・シー」「キス・ザ・ガール」など、名曲の数々を堪能することができるミュージカル『リトルマーメイド』。福岡公演は8月11日(金・祝)キャナルシティ劇場にて開幕。チケットの一般発売は5月20日(土)。
2017年05月19日6月に行なわれる日本舞踊協会の3年ぶりの新作、日本舞踊未来座『賽 SAI』(東京・国立劇場小劇場)に先がけ、5月27日(土)に『未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~』と題したイベントの開催が決定した。講師は第一線で活躍する各流派の日本舞踊家らが勤め、講座内では歌舞伎俳優で松本流家元の市川染五郎(松本錦升)の舞踊も披露される。未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~ チケット情報未来座『賽 SAI』は日本舞踊協会が新たなシリーズとして立ち上げる舞踊公演の第一弾。“SAI”とは「Succession And Innovation」(継承と革新)の頭文字と、賽子の賽の字を重ね合わせ、振られた賽子のように姿を変える日本舞踊の多彩さや進化への決意を表している。第一弾公演は水をテーマに4つの作品を上演。絶え間ない水の流れと過去、現在、未来へと移ろう時の流れが重なり合っていく様を、日本舞踊で表現する。今回のイベントは6月「未来座」上演の前に、日本舞踊をもっと身近に感じて欲しいと企画されたもの。初心者でも楽しめる内容で3講座を開催。講師は、大河ドラマ「おんな城主 直虎」で所作指導を務める橘芳慧、人間国宝・七世中村芝翫より中村流家元を継承した中村梅彌、『NINAGAWAマクベス』への出演経験を持つ花柳輔太朗が担当。いずれの講座も定員30名までという少人数の濃密な空間で日本舞踊の楽しさを教わることができる。会場は、親子丼発祥の鶏料理の老舗「玉ひで」。当日は浴衣の無料貸出しもある(事前チケット購入必要)。<イベント概要>◆日時:2017年5月27日(土)【第一限講座】“美しい所作を!” 講師:橘 芳慧13:30~15:00(12:45~受付)大河ドラマ「おんな城主 直虎」で所作指導を務める橘流家元・橘芳慧による日本舞踊の基本的な所作を学ぶ。【第二限講座】“日本舞踊を知ろう!” 講師:中村梅彌16:00~17:30(15:15~受付)中村流家元・中村梅彌による日本舞踊の振りや動きの意味を学ぶ。【第三限講座】“実践!踊ってみる!”講師:花柳輔太朗18:30~20:00(17:45~受付)花柳流花柳会理事・花柳輔太朗による6月に開催される第一回日本舞踊 未来座『賽=SAI=』公演の演目のひとつ『当世うき夜猫』の振付を学ぶ。イベント詳細は日本舞踊協会公式サイトに掲載。イベントは有料で、参加には「未来座」と講座のセット券が必要。チケットはチケットぴあにて発売中。
2017年05月18日ダンス×J-POP×演劇という独自路線で快進撃を続けるダンス・エンタテインメント集団「梅棒」。J-POPや懐メロなどのヒット曲で構成し、その歌詞と曲の世界観で描き下ろしたオリジナルの物語を繰り広げる。セリフはない。でも、まるでセリフをしゃべっているよう。音楽の力をもとに、ドラマをダンス×演劇で表現する新ジャンル。わかりやすく、楽しい。ダンスファン×演劇ファン×J-POPファンが客席に入り乱れ、エンタメ業界も大注目だ。梅棒 7th ATTACK『ピカイチ!』チケット情報演劇界デビューは2012年。大阪には14年に初登場、徐々に公演劇場が大きくなり、参加ゲストも増えた。今回は、東京、大阪、福岡と、初めて愛知へ上陸を果たす4都市ツアー。総合演出・出演の梅棒のリーダー・伊藤今人と共に、今作『ピカイチ!』にゲスト出演するw-inds.の千葉涼平が来阪、意気込みを語った。千葉は、昨年梅棒を初体験。「周囲から『最近、梅棒の舞台がヤバイ』って聞いていて、やっと昨年、観に行けました。すごくおもしろかった!」。今回の物語は、転校生によって、楽しく平和な学園に大騒動が巻き起こる!という、青春学園モノ。「僕らは基本的にお客さんに喜んでもらえるものを目指したいんです。だから今回、ファンの人が既に知っている千葉君ではなく、やったことのない役がいいだろうなと、ちょっと悪い役にしました。これまで観たことのないブラック千葉君です(笑)。で、ガッツリ踊ってもらいますよ!」と伊藤。千葉は「悪役は初めてなので、新しい自分を引き出していただけるのかなというワクワク感があります。でも、梅棒さんの世界観に自分が入ったらどうなるんだろう、どんなキャラクターができ上がるんだろうって、楽しみなんですけど、まだ想像がつかなくて(笑)」。千葉はヒールなカリスマ役とは言え、「コミカルなところも担ってもらおうと。行き過ぎたカリスマって、ちょっとおもしろいじゃないですか。今回はドタバタバカバカアクションですから(笑)。コメディ集団としての梅棒を楽しみに来てほしいですね。使う曲はいつものように20曲ぐらい。w-inds.の曲も生かせたらいいんですけどね~。今回は、オレとか千葉君とか、昭和最後の世代はみんな楽しめる曲が並んでます(笑)。初恋した時、振られた時、部活頑張ってた時にかかってた曲とか…ノスタルジーに浸って、曲と一緒に学生時代を思い出してもらえると思いますよ」。ゲストには千葉のほか、吉川友、後藤健流らも出演。「ギリギリまでかかりましたけど、いいのできました。おもしろいっす!」(伊藤)。公演は、6月23日(金)から7月2日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木、7月4日(火)・5日(水)大阪・森ノ宮ピロティホール、7月8日(土)から9日(日)福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、7月12日(水)・13日(木)愛知・名古屋市青少年文化センター アートピアホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:高橋晴代
2017年05月18日松本幸四郎、中村吉右衛門、片岡仁左衛門、市川左團次、片岡秀太郎、中村歌六、中村雀右衛門、中村又五郎、尾上松緑、市川猿之助、尾上松也らが出演する歌舞伎座「六月大歌舞伎」。昼の部は『名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)』『浮世風呂(うきよぶろ)』『御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)弁慶上使』、夜の部は『鎌倉三代記(かまくらさんだいき)』『曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)御所五郎蔵』『一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)』が上演される。歌舞伎座六月大歌舞伎 チケット情報今回、『名月八幡祭』の船頭三次、『浮世風呂』の三助政吉、『一本刀土俵入』のお蔦を演じる猿之助に話を聞いた。四代目市川猿之助の襲名披露公演「松竹大歌舞伎」(2014年)以来、お蔦を演じる猿之助。「(お蔦は)好きな役なので、『一本刀土俵入』ができることが嬉しい」と語り、今回「高麗屋のおじさん(幸四郎)とできるってことが嬉しい。もうすぐお名前変わられちゃうから」(幸四郎は2018年に二代目松本白鸚を襲名)と感慨深げに話す。大阪公演(2001年)での七世芝翫のお蔦を見ていた猿之助に芝翫のお蔦の魅力を尋ねると「薄情なところがいいでしょ。親切だけど情があっちゃダメな役だから。それがだんだん時代が変わって、わが身の不幸さと茂兵衛を重ね合わせちゃってそこに情が移って…っていうのは現代的な解釈。片方は全く覚えてないのに、片方はそれを一生覚えてて恩返しするっていうのが大事なとこ」と改めて解説した。『名月八幡祭』は初役となるが「(縮屋新助を演じるのが)松緑さんだから、ぜひ出たいと思って」と笑顔。初役に対して「この前、(三次を演じた事がある)竹三郎さんが、四世菊次郎さんから言われた小道具の扱いとかそういうポイントを教えてくれた」と明かす。歌舞伎座では約16年ぶりとなる『浮世風呂』は「この時期のものだからね。ちょっと季節感を出そうと思って」と猿之助の提案だったそう。なめくじ役をかつては自身も演じており「なめくじはいい役ですよ。本当は僕はなめくじのほうがいいんだけど、やっぱり主役の三助をやらなきゃいけない」と笑う。取材後、「あっという間に6月ですよ!」と猿之助。5月には大阪松竹座公演で宙乗り通算1000回を達成し、10、11月にはスーパー歌舞伎II『ワンピース』と続く。「六月大歌舞伎」ではどのような姿をみせてくれるのか期待が高まる。公演は、6月2日(金)から26日(月)まで東京・歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2017年05月16日スタジオジブリのアニメ映画で知られる『魔女の宅急便』が新たにミュージカル化される。脚本・演出は岸本功喜、作曲は小島良太。主役のキキを演じるのは話題の新星、上白石萌歌だ。ミュージカル「魔女の宅急便」チケット情報「子供の頃から『魔女の宅急便』の映画や本で育ったので、本当に驚きました。今日、初めて衣裳を着て、やっと実感が湧きました。共演の方々にお会いしたら、皆さん扮装姿で、うわぁトンボ君だ!オソノさんだ!って、まるで物語の中から出てきたみたいでした。トンボ役の阿部(顕嵐)さんは黒縁のメガネが似合っていました。トンボ君より筋肉がすごくて大人っぽい印象ですが、お芝居したらきっと可愛いトンボ君になるんだと思います」映画での好きなシーンを聞くと、愛くるしい目をキラキラ輝かせた。「満月の夜、自分の故郷から新しい町へと旅立つシーンです。ラジオから『ルージュの伝言』が流れ、輝く町を見下ろしながら、キキは箒に乗って飛んでゆきます。舞台ではフライングもあるそうなのでドキドキです!キキは13歳で旅立ちますが、私も仕事のために地元・鹿児島から13歳で上京しました。不安と楽しみ、故郷への愛おしさ、そんな気持ちはキキと同じかな、と思います。また、ジジが喋らなくなるシーンも印象的です。自分からいろんなものが消える悲しさ、空が飛べなくなる辛さを繊細に演じて、その先、力強く成長していく姿を描きたいです。ジジは子役さんが演じるそうで、きっと可愛いでしょうね!映像も取り入れる演出があるそうなので、きっとお客さんも一緒に飛んでいる気分になれるはずです!」まだ幼さを残す17歳。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。映画やドラマ、舞台で経験を積み、最近では紅茶のCMに出演してcharaの『やさしい気持ち』を歌い、その可憐な歌声が評判になった。「歌は大好きです。幼稚園の年長から習い事として、ミュージカルスクールに通っていました。すごく人見知りで、人前に出たくないタイプだったんです。スクールの発表会でひらがなの世界を表現したミュージカルをやったのですが、私は「うーん」と考え込む“う”の役(笑)。オーディションを受けたのも、周りの勧めでした。昔は自分の意思がなかったんです。それでもこの仕事に関わるうちに、どんどん女優になりたい気持ちが膨らんできました」今は、演じることが楽しくて仕方ないという。「お芝居をしていると、自分のどこにそんな感情が隠れていたのか!と驚きや発見がいっぱいあって、ワクワクします。演じることで、新しい自分を知ることができます。ひとつの人生とは思えないくらい、いろんな自分を見てきた気がします。『魔女の宅急便』でも、また新たな自分に出会いたいです」公演は6月1日(木)から4日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場、8月31日(木)から9月3日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。東京公演のチケットは発売中。大阪公演は5月20日(土)10:00より発売開始。取材・文:三浦真紀
2017年05月15日少女漫画界屈指の大ヒット作『王家の紋章』が現在ミュージカルとなって上演されている。昨夏の初演の好評を経て早くもこの春には再演。5月7日に幕を閉じた東京公演に続き、今週末には大阪公演が開幕する。主人公であるエジプト王メンフィスを演じる浦井健治、ヒロイン・キャロルを演じる新妻聖子に、役作りのこだわりから再演版のみどころまで、話を訊いた。チケット情報はこちら現代アメリカから不思議な力で古代エジプトへタイムスリップしてしまったキャロルと、古代エジプトの若き王・メンフィスの愛を軸に、国同士の争いや陰謀といったドラマを描いていく壮大な物語。ふたりはともに「王族」(原作漫画ファン)を公言しているが、再演にあたっては「稽古場で“メンフィスとキャロルはこうだ!”というものを、どんどん提示していきました」と浦井。具体的な例を新妻に聞くと「初演はメンフィスとキャロルが恋に落ちる展開がわりとスピーディでした。その“一体、いつ好きになったのよ”という感じも王族としてはたまらなかったのですが(笑)、今回はふたりが惹かれあう過程をもっと丁寧に描こうと試行錯誤しました。それによって、原作を知らない方でもスムーズに観ていただけるようになったと思います」。彼らをはじめカンパニーの努力が実を結び、再演は物語としてのまとまりがより増し、ミュージカルとしての完成度も高まった。役作りについても、「今回僕が意識しているのは、メンフィスは“王子”ではなく“王”だということ。初演では原作に忠実に、綺麗に立ち上げようとしたのですが、ちょっと“王子様感”が強かったと思うんです。今回は“王”である説得力を増すために、キーを低めにしたりしています。また宿命のライバル・ヒッタイトのイズミル王子(宮野真守、平方元基のWキャスト)との関係性を深めたくて、どうしてもイズミルと直接剣を交えたいとお願いしたら、演出の荻田浩一さんが採用してくださった。激しい殺陣がつきましたが、そのシーンはとても血がたぎります」と再演版・メンフィスのポイントを浦井が熱く語る。ちなみに新妻は原作愛が深すぎて「いたるところで誰も気付かないような仕掛けをしている」そうで、浦井が「先日、舞台上でキャロルを抱きしめたら、身長差があるので聖ちゃん(新妻)が浮いちゃった!でもそのサイズ感もたまらなく可愛いよね」と話したところ「計算、計算! 自ら浮きにいったの(笑)」。そんなユニークなやり取りの中には、作品愛とともに、ふたりの信頼関係も垣間見れる。「再演で、ミュージカル『王家の紋章』が、初演から目指していたひとつの完成形に到達したと思います。その状態のものを大阪に持っていけるのは光栄です」(浦井)、「大阪で有終の美を飾れるよう、日々進化して、大阪公演はお祭り状態になればいいですね」(新妻)。なお、キャロル役は宮澤佐江とWキャスト。大阪公演は5月13日(土)から31日(水)にかけて、梅田芸術劇場メインホールで上演される。
2017年05月12日Live Musical「SHOW BY ROCK!!」~THE FES II-Thousand XVII~が5月11日に東京・ステラボールで開幕。初日公演前には公開ゲネプロと囲み取材が開かれ、クロウ役の米原幸佑、シュウ☆ゾー役の鎌苅健太、チタン役の糸川耀士郎、MCことエムシ役のKimeruが登壇した。Live Musical「SHOW BY ROCK!!」~THE FES II-Thousand XVII~チケット情報「SHOW BY ROCK!!」は音楽・バンドをテーマとしたサンリオキャラクターで、スマートフォン向けソーシャル音ゲーアプリとしても大人気の作品。今回はその5周年を記念したLive Musical「SHOW BY ROCK!!」初のライヴイベントとなり、10月にはシリーズ2作目となるミュージカル公演が予定されている。囲み取材で米原は「今回のライヴイベントは10月の公演に向けての布石でありお披露目。『SHOW BY ROCK!!』の音楽ってこんなにカッコいいんだぜ!とより分かってもらえるライヴになると思いますので、存分にはしゃいで、存分に楽しんで帰ってもらえたら」と挨拶。それぞれのバンドの特徴について「シンガンクリムゾンズはばかな奴らの集まりなんです。だけどライヴが始まった瞬間にまとまる一体感や派手なライブパフォーマンスに注目してほしいし、ぜひ煽られて欲しいなと思います。他のバンドに負けないぞって気持ちは僕らが一番表に出てる気がします」鎌苅は「トライクロニカはアイドル。男性アイドルのライブでメンバーが仲良くしていると、僕もキュンキュンすることがありますし、そこを観ていただきたいです」、糸川は「アルカレアファクトは『俺たちはアイドルじゃない、アーティストだ、俺たちの音楽を聴け』っていうNAMAIKIスタイル。ピアノサウンドが綺麗な楽曲で、お客さんも声を出して盛り上がれるところもあります」と紹介した。謎に満ちた役を演じるKimeruは「今回、僕の役は10 月の公演に向けた布石となっています。ライヴを観ていただけたら、僕の存在がなんとなく明かされる感じになっています」と説明した。稽古中のエピソードを問われ糸川が「セレン役の板垣李光人くん(15歳)にみんなメロメロだった」と話すと鎌苅は「そこは気を使いましたね。李光人くんがかわいすぎるんですけど、うちにもゆうたろう(リク役)っていうめちゃくちゃかわいいやつがいて。みんなが李光人にいきすぎたら、俺はゆうたろうにいきました(笑)」と明かすなど、各バンドの仲のよさを滲ませた。その後の公開ゲネプロでは全9曲を披露。芝居も挟みながら各バンドの魅力あふれるパフォーマンスで客席を盛り上げた。ライヴは、5月11・12日のGenius、13日のDestinyと2種類のプログラムで上演。「“ライヴ2日間”のお話で、初日がGenius、2日目がDestinyという全然違う内容になってます。両方観ていただけけると10月がより楽しみになる構成です!」(米原)。ぜひ劇場に足を運んで!取材・文:中川實穗
2017年05月12日爆発的な笑いが魅力のストリートショーと、ドラマ性の強い舞台作品でパントマイムの魅力を提示しながら、常に新たなものに挑戦し続けるサイレントコメディー・デュオ、が~まるちょばが、今、全国51か所(現時点)を巡る未曾有の全国公演に取り組んでいる。赤いモヒカンのケッチ!と黄色のモヒカンHIRO-PONに、意気込みをきいた。が~まるちょば全国公演 チケット情報「今年はちょっと違う」という今回の全国公演。「2013年から2015年にかけて、東京JACKというツアーで東京の全62市区町村に出向いて行ったのですが、これが好評で、今度のツアーはその全国版となります」と話すケッチ!。HIRO-PONも「東京JACKでは普段足を運んでくれないお客さんもたくさん観に来てくださった。こんな嬉しいことはない。50か所もできるという喜びは大きいですね」と明かす。上演するのは、1999年の結成当初から世界中の観客を魅了し続けている『That’sが~まるちょばSHOW』。身体を張って皆を笑いに引き込むネタそのものは当初からまったく変わっていないというが、「つい最近、2000年にやった時の映像が見つかったのだけど、これが全然違う!今はもっと洗練され、無駄な動きがなくなってきています」(ケッチ!)、「毎回毎回、段取りは同じだけれど、いつも初めて出会ったようにびっくりしながら演じている。飽きそうになったとしても、常に違う面白みを見出します」(HIRO-PON)と、果てなき進化をうかがわせる。同時上演は、『ロッケンロールペンギン』。「ロッケンロールペンギンさんという別のグループが出演すると思われた方がいましたが、そうじゃないです(笑)。が~まるちょばを結成する前からふたりでやっていたものが原型の、日本ではあまり上演する機会がなかったパフォーマンスですね」(HIRO-PON)。「ペンギンの姿でやる“クラウニング”──つまり、道化です。ニュージーランドでやったことがあるんですが、ペンギンが身近な土地だけに、ペンギンの動きを表現した思わぬ場面で受けたこともありました(笑)」(ケッチ!)。子供から年配の人まで、全国のあらゆる人たちの心を掴みたい、という思いは強い。「僕らのほうから近くまで出向きますから、湯上りにサンダルつっかけて観に来てください!」とふたりは意気盛ん。HIRO-PONの「人生折り返さず、往きっぱなしでもいいんじゃないかと思う」という言葉どおり、ぐんぐん先を目指して行くが~まるちょばの挑戦は、限りなく続く。全国公演は現在開催中、5月27日(土)千葉県・船橋市民文化ホール、5月28日(日)埼玉県・草加市文化会館、7月1日(土)神奈川県・相模女子大学グリーンホールほか、全51都市(現時点)を巡演。チケットは順次発売。取材・文:加藤智子
2017年05月11日5月18日(木)に日本初演を迎えるミュージカル『パレード』。20世紀初頭のアメリカで起きたレオ・フランク事件(冤罪)を題材にした作品で、主演の石丸幹二と堀内敬子の17年ぶりのミュージカル共演や、森新太郎が初めて手掛けるミュージカル作品としても注目を浴びている。その稽古場に潜入した。ミュージカル『パレード』チケット情報本作は、人種差別の意識やさまざまな思惑、権力、そして世間により、無実の人間(レオ・フランク/石丸)が犯人に仕立て上げられていくさま、夫の無実を信じ疑いを晴らすために動く妻(ルシール・フランク/堀内)の姿を描いた作品。この日、稽古が行われていたのはレオの裁判シーン。レオの職場のスタッフやフランク家に勤めるメイドらが、レオの身に覚えのない証言を次々と述べ、有罪の判決が下されるというシーンだ。裁判では、州検事ヒュー・ドーシー(石川禅)は、被害者が最後に着ていた服を持ち出したり、被害者の人生を大げさに語りあげたりと派手なスタンドプレーで陪審員を煽る。冤罪と知っていると余計に白々しく感じるが、その嘘を真実にするのが「民衆」という存在だった。製作発表で森が「主人公は言う間でもなくフランク夫妻ですが、もうひとり主役がいるとしたら、彼らを追い詰める民衆ではないか」と話したその存在。観客はもしかしたらこの「民衆」に自分を重ねる人も多いかもしれない。反ユダヤ主義を扇動する男(新納慎也)にアッサリ煽られる民衆、真犯人の調子のいい証言に踊らされる民衆、ザワザワした声がいつしか強い「殺せ!」という叫びになる。火の粉が風に煽られ大きく燃え広がり、真実を焼き尽くすさまを見たようだった。セットは奥に並んだ民衆の姿もよく見える八百屋舞台。中央が回転すると並んだ民衆が壁のように視界を遮る瞬間があり、その向こう側を見せなくしていたのも印象的だった。ちなみに石丸と堀内以外の全員がこの名もなき民衆を演じるという。森は、例えば“お辞儀がちょっと深い”など妥協なき姿勢が印象的。特に裁判の最後、レオの陳述の歌唱シーンでは、声のトーンや一歩踏み出すタイミング、レオの思いが溢れ出す瞬間など、石丸と話し合いながら繊細に作り上げていて、そうやって生まれたシーンは、それまでの民衆の高揚を断ち切るほどに胸に強く響く印象的なものになっていた。重く深く繊細なテーマの作品だが、どの場面も驚くほど理解しやすいのは森の演出、そして実力派揃いのキャストによる芝居、歌唱の賜物。ぜひ劇場に足を運んでこの熱を体感してほしい。公演は5月18日(木)から6月4日(日)まで、東京・東京芸術劇場プレイハウスにて。取材・文、撮影:中川實穗
2017年05月09日梅棒 7th ATTACK「ピカイチ!」がこの夏に上演される。<ダンス×J-POP×演劇>という独自のステージが人気を集め、公演を重ねるごとに注目の高まる梅棒。これまでの最大規模となる7作目は、梅棒ワールド全開のコメディ作品。総合演出を手掛ける伊藤今人(梅棒)、ゲストの千葉涼平(w-inds.)に話を聞いた。梅棒 7th ATTACK「ピカイチ!」チケット情報今作は“学園モノ”。伊藤は「前作『GLOVER』がいい話で感動したっていうお客様もいると思うんですけど、今回は男の子だなって思ってもらえるような、めちゃくちゃなコメディをやろうとしています。前作で好きになった人はズッコケるかもしれませんが、もともと梅棒はこんだけバカな奴らだよっていう。こんなぶっ飛んだ梅棒もまたおもしろいなと思ってもらえたら!」。その中で千葉が演じるのは、意外にも悪役(予定)。「悪役を演じたことはあまりないです」と言う千葉に、伊藤は「きっとないだろうなと思って」とニヤリ。「せっかく出てくれますからね!ちょっとドキッとするような悪さとか、むちゃくちゃぶっ飛んだ役を千葉さんが演じたら面白い」(伊藤)。梅棒作品への初参加を「自分に今までなかったものを引き出してくれるんじゃないかってすごく楽しみ」と喜ぶ千葉。梅棒の舞台の印象を聞いてみると「面白かったです。J-POPを中心に使われてたのもすごく印象的でしたし。僕は前作の冒頭で今人さんが語り部的なお芝居をされてたのがすごく印象に残っているんですよ。あれでぐっと惹きつけられましたから。“ダンス舞台”というイメージがあったので意外でしたね」。千葉に出演をオファーした理由は「舞台上の千葉くんを観て、楽しんでいろんなことに挑戦してくれる人なんじゃないかと感じて。それにパフォーマンスが全力だったので梅棒に合うなと思ったんですよね」(伊藤)。「千葉くんはブレイクダンスをはじめいろんなダンスが踊れますし、大きな劇場でも学園モノのドタバタ感がある派手な動きが映えそう」と期待する伊藤だが、それに加え今作で千葉に踊ってもらいたいダンスがあるという。「梅棒のジャズダンスを!優雅に踊る一般的なジャズダンスと違って、我々のはゴリゴリに力で振り回すみたいな(笑)、特徴的な動きをしますので。それを千葉くんが踊ると思うと楽しみ」(伊藤)。今作では東京、大阪、名古屋、福岡と全国4か所を巡演する。伊藤は「名古屋に行けるのが初なので嬉しいです。福岡も前回、歓迎してくれてる感が半端なかった。満員ですごい熱気だったんですよ。大阪もコメディへのリアクションが大きいし…楽しみしかないです!」公演は、6月23日(金)から7月2日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木ほか、大阪、名古屋、福岡にて。取材・文:中川實穗
2017年05月08日落語の伝統を守る一方で、独演会ではさまざまな挑戦を続けている柳家三三。昨年は文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、その活躍がいっそう注目されるなか、六ヶ月連続独演会〈たびちどり〉で挑む演目が、大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』だ。幕末から明治期に活躍した柳派の談洲楼燕枝(だんしゅうろう・えんし)が創作した長編人情噺を、毎回2話ずつ高座に上げ、全12話を通すという試み。長らく演じ手が途絶えていたという本作への想いを、三三に聞いた。たびちどり 柳家三三 六ヶ月連続独演会チケット情報大商人の跡取りでありながら侠客となった“佐原の喜三郎”。物語は彼と、やはり裕福な家の娘ながら芸者から遊女へ身をやつすお虎の運命を軸に、巾着切りの庄吉や、なまぐさ坊主の玄若、三宅島に流された罪人の長・勝五郎、旗本の優男・梅津長門ら多彩な人物を巻き込んで展開する。「人情噺というと泣ける話をイメージするかもしれませんが、元々は広い意味で人情の機微を描いた話のことなんですよ」と三三は言う。「燕枝は九代目市川団十郎と親交が深かったこともあり、この作品も“白浪物”(盗賊を主人公とする物語)や“三尺物”(博徒や侠客が主人公)、“世話物”(町人の人情を活写した芝居)と、色々な要素がたっぷり詰まっているんです」と、その口調にも自然と熱がこもる。今回はこの大作を12話に分け、三三自ら再構成。「怪僧玄若坊」「闇の島脱け」「お虎の美人局」など、内容に合わせて付けられたタイトルは、どれもワクワクするものばかりだ。「本当にね、なぜこの演目が長い間忘れ去られていたのか不思議なくらい」と三三は話しつつ、「ただ、長編だけにダイナミックな場面と地味な場面とがありますから、そこは1話ずつ観ても楽しめるように調整しました。あとは、初見でも、途中の回を観ていなくても内容が分かるように、前回までのあらすじは読み物で配る予定です」と“続き物”ならではの工夫を明かす。そんな苦労もいとわないのは、落語のもつ豊かな世界をもっと知ってもらいたいから。「燕枝が活躍した当時は町内に1軒ずつくらい寄席があって、人々は晩ご飯を終えた後、ちょうどテレビを観てくつろぐ感覚で寄席に足を運んだそうですよ」と三三は語る。「だから『あの寄席で面白い“続き物”をやってるぞ』と評判になると、その寄席によその町からわーっとお客さんが集まったりしてね。艶のある場面にドキドキしたり、切った張ったの立ち回りにハラハラしたり。そういった楽しさを、現代のお客さんにどうやったら届けられるか。それだけを考えて演りたいですね」という三三。その言葉からは、名作を伝える演じ手としての覚悟が伝わってきた。公演は愛知・大須演芸場と大阪・グランフロント大阪にて、5月から10月まで毎月1回ずつ開催。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2017年05月08日