「相続対策の大切さ」「相続対策の具体的な方法」「相続税の申告、納税の注意点」 をまとめたドキュメント(清田家の相続の記録)アマゾン書籍 : キンドル電子書籍 : 大反響! 発売たちまち4刷!東洋経済オンラインで紹介、アクセスランキング2位!Yahoo!ニュースで紹介!本書は、私の経験を通して、「相続対策の大切さ」「相続対策の具体的な方法」「相続税の申告、納税の注意点」をまとめたドキュメント(清田家の相続の記録)です。(本文より)相続税の申告を6,000件超、相談を22,000件超担当――日本トップクラスの実績を誇る相続のプロが初めて経験する特別な案件、それが自分の父親の相続でした。収益を生まない裏山の売却を提案しても首を縦に振ってもらえない、なかなか遺言を書いてもらえないなど、専門家として、息子として実感した相続の「現実」、そして生前の準備から、葬儀、手続き、申告までの一部始終を包み隠さず描きます。一方で実際に行った節税策を多数紹介。これから相続を迎えるすべての人に知ってほしい大切なことをまとめた1冊です。■目次第1章 私が「相続専門税理士」になった理由・農家の跡取り息子として、横浜に生まれる・都市近郊農家は、農業だけでは生活できない・「農業嫌い」の私が、農家を支える仕事に就く など第2章 父の相続対策をはじめる・相続対策の最初の一歩は「裏山」の整理・父が7人の孫に対し、15年間贈与をした理由・私が「遺言どおり」に分割しなかった理由・さまざまな相続対策を組み合わせて、合法的に税金を減らす など第3章 父、亡くなる・早めの相続対策は、じつは早めの介護対策でもある・人はいつか、必ず死ぬ など第4章 父の相続の手続き・申告をする・葬儀費用の一部は、相続税から控除できる・相続税は、「払いすぎてしまう」ことがある・相続トラブルは、コミュニケーション不足が大きな原因 など■著者紹介清田幸弘(せいた・ゆきひろ)ランドマーク税理士法人 代表税理士立教大学大学院客員教授1962年、神奈川県横浜市生まれ。明治大学卒業。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田幸弘税理士事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)、『都市農家・地主の税金ガイド』(税務研究会出版局)など著書多数。アマゾン書籍 : キンドル電子書籍 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年06月28日「相続する土地・家屋の20~30%は、望まない相続であるといわれています。使い道がないのに、維持費や固定資産税などを負担しなければならない“負動産”だからです。なかには、相続したのに登記しないケースも。こうした“所有者不明”となっている土地を合わせると九州の面積を超えていて、この状態が続けば、いずれ北海道の面積も超えるといわれています。その対策のために、来年、再来年と、新しい制度が始まります。知らなければ、過料を科されることもあるので、注意が必要です」こう話すのは司法書士法人リーガル・フェイスの田中均弥さんだ。資産価値が低く、利用する予定もない“負動産”が心の重しになっている人は多い。「買い手も借り手も見つからない空き家は、傷むのが早いので、定期的に空気を入れ替え、メンテナンスしなければなりません。しかし、相続した空き家と自宅が遠く離れている場合、難しいでしょう」■空き家でのトラブルは相続人の責任に放置されたままの空き家は、放火されたり、誰かが住みつき犯罪の温床になったり、倒壊して近隣の家に迷惑をかけるリスクがある。「『空家等対策特別措置法』によって、倒壊の恐れなど危険な建物は自治体の判断で取り壊すことができますが、基本的にトラブルがあれば、その責任は土地・建物の所有者が負うことになります」(田中さん、以下同)こうした“負動産”にも、固定資産税がかかる。タダでもいいので自治体等に寄付したいと思う人は多いはずだ。「ところが寄付というのは、互いの意思が必要で、どちらか一方の希望だけでは成立しない。所有者が『あげる』といっても、公園に利用できるなど、公共事業に有効活用できる土地でなければ、自治体は寄付を受け付けません」そんな人の助けになるのが、2023年4月27日から施行される「相続土地国庫帰属法」だ。「相続で取得した土地は、一定の条件を満たしていれば、どんなに資産価値が低くても国が引き取ってくれるようになります」しかし、どんな土地でも引き取ってくれるわけではない。「まずは更地であること。空き家があれば、解体しなければなりません。一般的な一軒家(30~40坪程度)であれば、解体費用は100万円から200万円くらいでしょう」土地が崖地だったり、所有権に争いがある場合もダメ。「国に引き取ってもらう土地の10年分の管理費を払うのも条件です。まだはっきりと決まっているわけではありませんが、市街地の約200平方mの宅地であれば80万円、山林や畑、原野などなら20万円ほどが目安となりそうです」まったく買い手のつかない田舎の実家などに困った場合は、解体費用含め120万~180万円ほどでこうした悩みとおさらばすることができる。それを安いと感じるか、高いと感じるかは、“負動産”をどの程度負担に感じているかによるだろう。「施行以前に相続した不動産などが対象になるのか、まだ明確な規定はされていないので、今後の指針が注目されています」
2022年06月22日みなさんは親戚の方々とは上手く付き合えているでしょうか? 大なり小なり親戚トラブルは皆さん経験があるみたいです…。 今回は実際に募集した義実家トラブルエピソードをご紹介します!相続問題実家の隣に叔父(父の弟)が住んでいました。叔父の家の隣に40坪程度の土地があり、私の父からは私に相続させると聞いていました。このことは叔父も知っていたはずだったのですが…父が亡くなった後、叔父から「私が相続するはずの土地」は叔父が相続するように聞いていた、と主張してきました。父と叔父はとても仲良しで、私も好きな叔父だったのですが、なぜ父が亡くなった後に土地の相続を主張してきたのかわかりません。その後叔父とは何回も話を繰り返し、どうやら叔父はその土地を自分の子どもや孫にあげたかったようで…。私も父からの思いを聞いていましたし、叔父の主張は断固拒否。出典:lamire結局その土地は私が相続した後に、叔父に金銭を払って購入してもらうことに。仲が良いと思っていた親戚ですが、お金や土地などの資産が絡むと態度や対応が変化するものですね…。情けなく悲しく感じました。そのことがあってから、叔父や叔父の家族とも表面的な付き合いとなってしまいました。(男性/無職)わが家の問題なのに…父が長患いの末に亡くなりました。私は実家を出ていたので、家で看病と介護をしてくれていた妹にお礼ということで、相続は放棄するつもりでした。それを嗅ぎつけた義実家の面々に呼び出され「あなた長女じゃないの!」「放棄なんて正気の沙汰じゃない!」と攻め立てられ…。相続と言っても妹が住んでいる実家くらいで本当に大したものはないのに、外野がうるさくて疲れ果てました。(女性/会社員)いかがでしたか?こんな親戚と付き合うとなると骨が折れそうですね。子どものためにも親戚とはいい関係でいたいものです…。以上、親戚トラブル体験談でした。次回の「トラブル体験談エピソード」もお楽しみに♪※こちらは実際に募集したエピソードを記事化しています。"
2022年06月18日夫に先立たれた妻が財産を相続した際、その一部申告漏れを指摘されるというケースが増えている。正しい認識で、先々のペナルティの発生を防ごうーー。「税務署から連絡を受けたときはびっくりしました。まさか自分が追徴課税を支払うことになるだなんて……」そう肩を落とすのは首都圏近郊に住むA子さん(70代)。A子さんは、夫の死後2年ほど経過してから税務調査を受け、その結果なんと数百万円のペナルティを科せられたという。夫は長年にわたり商売を営んでいた。夫が病いに倒れてから店をたたみ、夫名義の不動産をすべて処分。そのお金を夫と折半し、手元に所有していた。夫の死後、相続税の申告を税理士に依頼したとき、「預金通帳以外のお金は申告しなくてもいいのだろう」と考え、“へそくり”のことを伝えていなかった。押入れに保管していた多額のへそくりが、ペナルティの対象になったのだ。「タンス預金自体が悪いのではなく、問題なのは手持ちの現金まで税務署はわかるはずがないと、タンスの引出しやクローゼットの奥にしまってある現金について申告をしないことです。これは相続税を『過少申告』したことになります。配偶者が相続した課税遺産総額は『1億6000万円』もしくは『配偶者の法定相続分相当額』のうち、どちらか多い金額までは相続税が課せられないといったルールがあります。ところが、A子さんのケースは相続税を過少申告した『仮装隠ぺい行為』にあたる可能性があります。仮装隠ぺい行為と認定されると、配偶者の相続税の優遇措置が受けられなくなります。“へそくり”についても、すべて申告する必要があります」そう指摘するのは、税理士で円満相続税理士法人代表の橘慶太さん。橘さんはこれまで5000人以上の相続相談に乗り、手続きのサポートをするなかで、税務署に“狙い撃ち”される家族を見てきた。「結婚後、長年専業主婦をしていて、なおかつ実家の親から大きな遺産を相続したわけでもない。そういう妻の預金通帳に数千万円ものお金がある場合、『専業主婦だった妻の通帳に多額の預金があるのはおかしい』と疑われて調べられるのです。相続財産は夫が亡くなったときに残っていた『夫名義の財産』だと思う人も多いでしょうが、専業主婦の妻の通帳にあるお金は元をたどると『夫が稼いだお金』で構成されています。そのようなお金のことを『名義預金』といい、実際には夫の財産として相続財産に含める形で相続税を計算します」じつは、私たちの財産は、毎年の確定申告や給与の源泉徴収票をもとに「国税総合管理」(KSK)という国のシステムによっておおよそ把握されている。差額があると、「どこかに隠しているのではないか」と疑いの目を向けられるのだという。相続税の修正申告というと、「書類の不備」などを指摘されることをイメージするかもしれないが、相続税を申告しなかった人の財産もこのシステムで把握できるようになっていると橘さんは言う。「自分の預貯金が相続税の対象になるということは、まったく知りませんでした……」ため息をつくのは、首都圏在住のB子さん(80)だ。やはり相続税の申告漏れを指摘され、約100万円の追徴課税を支払うことになってしまったという。「申告漏れ」はB子さん名義の預金だった。「いきなり100万円と言われてショックでした。私の相続分には『配偶者の税額の軽減』が適用されたので相続税はかかりませんでしたが、2人の子どもたちの分には相続税が発生してしまいました」(B子さん)■夫からのプレゼントが対象になることもB子さんは生活費として夫からもらったお金の残りをコツコツ貯めて“へそくり”にしていた。このほかにも、20年ほど前に夫が定年した際に退職金の一部を預かっていた。「退職金を分けて、一部を妻の口座に入れるケースをよく見かけますが、妻へのプレゼントであれば年110万円を超えると『贈与税』が発生します。一時的に預かっているだけ、ということであっても、元をたどると夫が稼いだお金なので、相続財産に含めなければなりません」(橘さん)■「制度を知らなくて」は税務署には通用しない近年、税務署は相続税の申告書を提出しなかったB子さんのような「無申告者への税務調査」を積極的に行っているという。「不慣れだったので計算ミスをしてしまった、制度を知らなかった、という人に対しても税務署は容赦しません。’20年7月~’21年6月に税務調査を受けた家庭の85.3%が修正することになり、申告ミス等で、追加で課税される1件あたりの追徴課税額は943万円にもなりました」追徴課税の“ターゲット”になる財産は、預金のほかにもある。へそくりを使い株や投資信託など妻の名義で購入した金融資産も、元をたどって夫のお金であれば、相続財産に含めなければならない。このほかに、夫が保険料を支払っていた生命保険金、金やプラチナなどの貴金属類も相続財産になるため注意が必要だ。■追徴課税の“ターゲット”になりやすい財産【預金】妻名義の銀行口座のお金、タンス預金は、元をたどると夫の収入から成り立つので相続財産に含める。【不動産】自宅は「小規模宅地の特例等」が適用されれば相続税は8割減になるが、ほかに投資用の不動産がある、借地権付きの土地に建物を立てているなどのケースは要注意。【生命保険金】夫が保険料を支払っていたら、名義は妻でも受け取った生命保険金は相続財産に含める可能性が(※500万円×法定相続人の人数の分は非課税)。【株・投資信託】妻の名義で株や投資信託を保有していても、購入資金が夫のお金であれば、相続財産に含める可能性も。【金・プラチナ】夫から妻へのプレゼント、あるいは妻の自分へのごほうびであっても、購入資金が夫のお金であれば、相続財産に含める可能性が。「うちの財産はたいしたことはないから」と安易に判断せず、相続税が発生するかどうか、わからない場合は税務署や相続に詳しい専門家にきちんと相談しよう。相続で大切な資産を減らしてしまうことのないよう、親や自分のへそくりについて、正しい申告を心がけたい。
2022年06月09日簡単に人間関係を崩してしまうお金。お金があれば不自由はしませんが、トラブルの元になることも。 今回は実際に募集した金銭トラブルエピソードをご紹介します!相続亡くなった父方の祖父の相続で、家族みんなが大変な思いをしました。元々自分は父を亡くしていたため、祖父の相続を父の代わりに相続(代襲相続)しなければならず、叔父と共に相続手続きをしていました。戸籍を調べたところ、なんと祖父に隠し子がいたことが判明…。さらに海外の人であったため、なかなか相続が上手く進まず、さらに最終的に相続分のお金の取り合いで大喧嘩になってしまいました。結局、半分ずつに遺産を分けることになりましたが、親戚同士の仲も悪くなり後味が悪くなりました。(女性/専業主婦)出典:lamire遺産の分配妻の祖母がひとり暮らしをしていましたが、老人ホームには入りたくないと常日頃から言っていました。祖母には2人の娘がいましたが、長女(妻の母)はなくなっており、本来であれば二女である叔母が世話をするのかなと思いきや、叔母は拒否。結局我が家で同居することになって2年ほど一緒に暮らしました。その間、週末は祖母が暮らす家に移動して生活したり、その後、祖母が老人ホームに入ってからも、叔母はほとんど面倒を見ずにうちの妻が世話をしによく行っていました。祖母が亡くなり、祖母のまわりの人はみんな、うちの妻と叔母とで遺産を分割すればいいと思っていましたが、叔母は急に「1人で相続する」と言い、話し合いでは解決せずに、最終的には裁判に…。出典:lamire叔母がやや多めに相続することで決着しました。これを機に叔母とは完全に縁が切れましたが、それでよかったと思っています。(男性/保育士)いかがでしたか?お金はトラブルの元になりやすいみたいです。お金の貸し借りは慎重にしないといけませんね。以上、金銭トラブル体験談でした。次回の「トラブル体験談エピソード」もお楽しみに♪※こちらは実際に募集したエピソードを記事化しています。"
2022年06月07日「相続人の一人が認知症に……」 「わが家は相続人が行方不明」親が90歳、100歳まで存命なのは心強いが、そのぶん、子世代も60代、70代と高齢になる。勃発してくるのが「老々相続」問題だーー。「老々相続とは、高齢の親の財産を老いてきた子世代が相続すること。長年、老々介護をしてやっと親御さんを見送った後、『老々相続』という仕事が待っています。少しでも困らないために、いまから準備をしておくことは大事です」注意をうながすのは、老々相続問題に詳しい行政書士の塩崎由花里先生だ。「通常、法定相続人は配偶者と子です。配偶者と子がなければ親やきょうだいとなり、老々相続の場合、相続人が認知症や行方不明になってしまうケースがあり、相続手続きが難航します」考えられるケースを紹介しよう。■コミュニケーションをとることがいちばん大事【1】法定相続人が認知症に「法定相続人が認知症になると、成年後見人をつけなくてはなりません。成年後見人の手続きには3~6カ月ほどかかり、その間は本人に必要な法律行為ができません。遺産分割協議もできないため、相続手続きに長い期間がかかります」(塩崎先生・以下同)【2】法定相続人がすでに他界「法定相続人である配偶者と子どもがすでに亡くなっている場合、孫がいれば、相続は孫に引き継がれます。亡くなっている子が複数いると相続人が増え、20人、30人というケースも。全員で遺産分割の話し合いをして、手続きを進めるのは容易ではありません」【3】相続人が行方不明「私の担当したケースで、何十年も前に音信不通になったお子さんがいました。所在地を判明させ、やりとりできるまで数年がかりでした。さらに相続の手続きをしている途中で相続人が亡くなってしまい、手続きが初めから、となるケースも」相続手続きが何年も進まず、空き家が長年放置され、銀行口座が凍結され、財産分与がままならない事態にもなるという。回避策として「『遺言書』を作成しておくこと」と塩崎先生は説明。「自分は誰にどの財産を、どれだけ残したいのかを考えて遺言書を作成しましょう。その際に遺言執行者を指定しておけば安心です」遺言書は公正証書で作成するのが最善だが、それが難しい人も多い。そこで、今回は自筆で遺言を残す方法を教えてもらおう。「『全財産を妻○○に相続させる』という文言でも可能ですし、お世話になった知人に財産を渡したいとか、寄付することも可能です」遺言書サンプルは、図のとおり(画像参照)。「必ず手書きが原則で(財産目録はPC打ちが可。ただし署名などが必要)、誰に何を相続させるかを書いていきます。この場合、介護などで長年お世話をしてくれた子の取り分を多くするなども指定できます。できれば、なぜその配分なのかといった思いを記してもいい。相続人たちを納得させる材料にはなると思います」大切なのは、相続人が確実に発見できるようにしておくこと。発見できなければ遺言者の意思は実現されない。「司法書士や行政書士といった専門家に託しておくと安心ですし、法務省の遺言書保管制度を利用するという手もあります」また、遺言書の用意以外にもやっておくと安心なことを、次のリストで確認しておこう。【もめない老々相続のためにやっておくと安心!】〈1〉遺言書を作成しておく〈2〉相続人の間でコミュニケーションをとっておく〈3〉不動産、株などの財産を極力洗い出し、保管場所を把握しておく〈4〉借金などの負債を把握しておく〈5〉銀行口座は2行ほどに絞る〈6〉ペットの行き先を決めておく〈7〉デジタル製品のパスワードなど、万一のときにはわかるようにエンディングノートなどに記しておくそして最後に、もっとも大事なことは日ごろの交流である、と塩崎先生は言い切る。「相続が起きて、初めて相続人間で連絡をとり行方不明や認知症の人を把握するのではなく、日ごろからつながりを持つことが老々相続のトラブル回避になるでしょう」【PROFILE】塩崎由花里行政書士、塩崎由花里事務所代表。女性とシニアに向けて手続き業務を行う傍ら、メディア出演、セミナーなどで活躍
2022年05月26日すぐにでも相続対策を始めた方がいい5つのパターンキンドル電子書籍 : アマゾン書籍 : 本書は、私の経験を通して、・相続対策の大切さ・相続対策の具体的な方法・相続税の申告、納税の注意点をまとめたドキュメント(清田家の相続の記録)です。(本文より)●特に資産5,000万円いかの方の争いが全体の約8割。いま相続時のトラブルが増えている2000年8,889件↓↓↓2020年11,303件相続はお金のことに加えて感情も絡むのでとても難しい案件です。相続税の申告を6,000件超、相談を22,000件超担当――日本トップクラスの実績を誇る相続のプロが初めて経験する特別な案件、それが自分の父親の相続でした。収益を生まない裏山の売却を提案しても首を縦に振ってもらえない、なかなか遺言を書いてもらえないなど、専門家として、息子として実感した相続の「現実」、そして生前の準備から、葬儀、手続き、申告までの一部始終を包み隠さず描きます。一方で実際に行った節税策を多数紹介。これから相続を迎えるすべての人に知ってほしい大切なことをまとめた1冊です。●親が元気な時から相続に取り組み始めた結果、相続税を「約30%」も減税させることに成功しました。①相続対策(相続税対策)「亡くなる前」にすること②相続税の申告、納税の対策「亡くなったあと」にすること●すぐにでも相続対策を始めた方がいい人・兄弟がいる人・土地を持っている人・相続税を払う可能性がある人・子供がいない人・顔を見たことがない相続人がいる(特に甥・姪)相続税を余計に払ってしまう、家族間でトラブルが起こることが考えられます。早くから対策に乗り出すことで、「資産を残す」「節税する」「家族の平和を守る」ことができるようになります。本書が、みなさまの助力となることを願ってやみません。■目次第1章 私が「相続専門税理士」になった理由・農家の跡取り息子として、横浜に生まれる・都市近郊農家は、農業だけでは生活できない・「農業嫌い」の私が、農家を支える仕事に就く など第2章 父の相続対策をはじめる・相続対策の最初の一歩は「裏山」の整理・父が7人の孫に対し、15年間贈与をした理由・私が「遺言どおり」に分割しなかった理由・さまざまな相続対策を組み合わせて、合法的に税金を減らす など第3章 父、亡くなる・早めの相続対策は、じつは早めの介護対策でもある・人はいつか、必ず死ぬ など第4章 父の相続の手続き・申告をする・葬儀費用の一部は、相続税から控除できる・相続税は、「払いすぎてしまう」ことがある・相続トラブルは、コミュニケーション不足が大きな原因 など■著者清田幸弘(せいた・ゆきひろ)ランドマーク税理士法人 代表税理士立教大学大学院客員教授1962年、神奈川県横浜市生まれ。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田幸弘税理士事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)、『都市農家・地主の税金ガイド』(税務研究会出版局)など著書多数。キンドル電子書籍 : アマゾン書籍 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年05月24日清田 幸弘 著『相続専門の税理士、父の相続を担当する』2022年5月12日刊行株式会社あさ出版(代表取締役:田賀井弘毅、所在地:東京都豊島区)は清田 幸弘 著『相続専門の税理士、父の相続を担当する』 を2022年5月12日に刊行いたします。相続の専門家が当事者に。伝えたい大切なこと相続税の申告を6000件以上手掛ける日本トップクラスの相続専門税理士が初めて経験する案件――それが父の相続でした。プロが自分の親の相続を担当するとどうなるのか。生前の準備から、葬儀、手続き、申告までの一部始終をマンガや図解を交えてわかりやすく解説。実際に行った節税策も掲載しています。相続のプロが、親の相続の一部始終を包み隠さず描く前代未聞の1冊※本書よりマンガ部分を一部抜粋相続時トラブルは、 全体の約8割が資産5000万円以下相続時トラブルは、 全体の約8割が資産5000万円以下父がまだ元気なときから相続対策し、 相続税を「約30%」減額父がまだ元気なときから相続対策し、 相続税を「約30%」減額相続対策を「できるだけ早く」 はじめたほうがいい理由相続対策を「できるだけ早く」 はじめたほうがいい理由財産だけでなく、 親の気持ちも受け継いでいく財産だけでなく、 親の気持ちも受け継いでいく書籍情報表紙タイトル:相続専門の税理士、父の相続を担当する著者:清田 幸弘ページ数:232ページ価格:1,650円(10%税込)発行日:2022年5月12日ISBN:978-4-86667-385-1 amazon: 楽天: 目次第1章私が「相続専門税理士」になった理由第2章父の相続対策をはじめる第3章父、亡くなる第4章父の相続の手続き・申告をする著者プロフィール清田 幸弘(せいた・ゆきひろ)著者:清田 幸弘ランドマーク税理士法人 代表税理士立教大学大学院客員教授1962年、神奈川県横浜市生まれ。明治大学卒業。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田会計事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。【報道関係各位】『相続専門の税理士、父の相続を担当する』リリース.pdf : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年04月27日志村けんさん東京の北西部・東村山駅前には、銅像と一緒に写真を撮る人がいつもいる。みな“アイ~ン”のポーズだ。「志村けんさんの銅像です。昨年6月に完成しました。『東村山音頭』でこの地域を有名にした功労者ですからね。市内の有志がクラウドファンディングで製作費を募ったら、予定の2400万円を上回る3200万円が集まりました」(地元の住民)自撮りをしていた男子高校生は、母親のDVDで『8時だョ!全員集合』を見てファンになったと話す。「今でも毎日、全国各地からたくさんの人が訪れています。北海道から来た方もいましたし、タンクトップにジーンズの“志村どうぶつ園”コスプレで来るそっくりさんまで現れました(笑)」(駅の整備員)自宅の現在は「ぱっと見はきれいだけど」銅像の隣には、’76年に植樹された『志村けんの木』があり、空に向かって枝を広げている。長きにわたって市民から愛されてきた。「亡くなられたときは駅前に献花台を置きましたが、コロナ禍が続くいま、三回忌ではありますが同様のことを行うのは難しい。メールでメッセージをいただければ、責任を持って遺族にお渡ししています」(東村山市役所秘書広報課・渡辺茂治課長)志村さんが亡くなったのは、’20年3月29日。新型コロナの感染拡大が始まってすぐの時期だった。あれから2年がたつが、志村さんが住んでいた東京・三鷹の家は放置されたままのようだ。「志村さんが三味線を弾く音が聞こえなくなって、本当に寂しいですね。亡くなった当時はお兄さんや家政婦さんがよく来ていましたが、最近は見ません。自宅前の掃除や草むしりは、近所の人たちでやってますよ。だから、パッと見はきれいですが、中庭は草や木がぼうぼうの生え放題。野良猫が子どもを産んですみついてしまいました。ずっと人がいないので、建物も傷んできたようです。雨樋が壊れたのか、昨年の大雨のときは、屋根から流れ落ちる水が滝のようにすごい勢いでした」(近くの住民)熱海のリゾートマンションも、そのままになっている。「志村さんは何度かお見かけしたことがあります。亡くなったときは、フロントに志村さんの肖像画が飾ってあって、花が供えてありました。それを見ると、もうここには来ないんだなって寂しくなりましたね」(マンションの住人)遺産相続のをゆくえを直撃志村さんは3人兄弟の末っ子。昨年6月、2番目の兄・美佐男さんが亡くなっていた。「体調が悪いとは思えず、ずっと元気に見えました。昨年の春くらい、普通に車で出かけるのを見ましたし、挨拶もしていました。どうやらその後、いつの間にか入院していたようですね」(美佐男さん宅近所の住民)親族によると、志村さんとは仲のいい兄弟だったそうだ。「美佐男には、よくゴルフを教えてあげていましたよ。私とウマが合ったから、ウチの会社に入って働いていたんです。それが40年くらい前。でも、芸能界で活躍していたけんが“兄貴は俺が雇わせて”って頭を下げて、直談判してきたの。それで美佐男は、けんの個人事務所に入りました。酒が好きで、美佐男はけんが来ると一緒に焼酎を飲んでいた。ふだんはまじめだけど、酔うと明るくて。事務所は六本木の近くだったから、そりゃあ飲むよね」(志村さんの親族)酒好きが仇になったのではないかともいう。「何年か前に会ったとき、体調が悪いって言っていた。飲みすぎで肝臓を壊しちゃったんじゃないかな。けんの一周忌もだけど、美佐男の葬式も参列しなかった。だって呼んでくれないんだもん。コロナの事情もわかるけど、それはないよね。知之は’15年にお母さんを亡くしてから、けん、美佐男を立て続けに喪って、疲れたんだとは思うけどさ」(同・志村さんの親族)知之というのは、志村さんの長兄のこと。志村さんの個人事務所の代表取締役になっている。美佐男さんが亡くなった後にはその息子が新たに取締役になった。ただ、残された不動産の登記は、今も志村さん名義のまま。知之さんに話を聞いた。─三回忌の予定は?「命日近くで内密に小さくやります。コロナが終わらないからね」─三鷹の家の掃除は?「庭は一昨年の夏、人に頼んでやりました」─2年がたちましたが、相続は進まない?「なんとなくね、やってはいるけどなかなか。コロナで進まないっていうのもあって」─美佐男さんも亡くなられたようで……。「内臓を壊していてね」─個人事務所は美佐男さんの息子に任せる?「俺が継いだんだよ。甥と2人でやっていきます」─熱海のマンションは?「あれから行ってない。忙しくて行けないんです」志村けんの遺産が10億円というのは“少ない”相続の手続きが進んでいないのは確かなようだ。前出の親族は、いらだちを隠さない。「三鷹の家だって放っておけば、傷んで資産価値が下がるし、治安が悪くなり、近所にも迷惑がかかる。“早く相続しなさいよ”って言ってやりました。事務所にはずっと美佐男が通っていたんだから、いずれは彼の息子が継ぐのが自然だろうね」志村さんの遺産は10億円ともいわれたが、長年、芸能界のトップで活躍してきたのだから、もっと多くてもおかしくはない。「志村さんの遺産が10億円って、確かに少ないですよね。あれだけ活躍したのだから、最低50億円は持っていそうですよ。でも、おカネの使い方は激しかった。20年ほど前ですが、私が勤めていた銀座のクラブには週に3、4回は来ていました。毎回、ダチョウ倶楽部の誰かなど何人か連れてきて、支払いはすべて志村さん。100万円単位で置いていきました。同じ日に何軒か回っていたそうだから、1日にいくら使っていたのかなって」(銀座の元ホステス)ただし、巨額な相続税も発生する。相続が遅れることに問題はないのか。弁護士法人天音総合法律事務所正木絢生代表弁護士に聞いた。「相続に関連して、コロナ禍を理由に延長が可能なのは、相続税の申告・納付期限についてです。通常は10か月以内という期限が定められていますが、コロナ特例にて、延長できます。しかし、それでも1、2か月程度でしょう」遺産分割については、今の制度上は特に期限が定められているわけではない。「遺産分割が終了するまで、何年もかかるケースもあります。制度上は期間が定められているということはありません。ですから、志村さん所有の不動産の名義の変更が遅れていることと、コロナ特例は関係していないと思われます」(正木弁護士、以下同)民法の改正が予定されており、不動産の相続登記は「相続を知った日から3年以内に相続登記をすること」が義務化されることになるという。志村さんの遺族は数億円の相続税を、不動産整理をせずに、どうやって支払ったのか。「志村さんが、たくさんの現金を所有していて、そこから支払われた可能性は高いと思います。その場合は、遺族の同意書を作成する必要があります」稀代の喜劇王が遺したものは、あまりにも大きい。
2022年03月25日※画像はイメージです近年、相続についての法改正が続き、妻や息子の嫁の権利がしっかりと守られるようになってきている。実はこれまで妻と嫁は、かなり割を食っていたのだ。妻や嫁が知るべき「相続」例えば、夫が亡くなったあとも妻が自宅に住み続けたいのに住めない場合があった。自宅に住み続けるためには相続する必要があるが、自宅の価値が自分の取り分を超えていると、売らざるをえないからだ。たとえ自宅を相続できたとしても、子どもが預金を相続し、妻は現金を得られずに生活費で困ることも。夫との思い出が詰まった自宅で残りの人生を過ごしたいと願う妻にとってはつらい状況だ。また、息子の嫁は、義理の親の介護をいくら頑張っても遺産を相続する権利すら与えられなかった。とっくに家を出ていって両親の面倒を何も見ていない実の子どもだけが遺産を相続するという理不尽がまかり通っていたのだ。それが2019年や2020年の改正で、妻は自宅を売ることなく現金も相続できるようになり、嫁は介護に尽くしてきた対価を支払ってもらえるようになった。配偶者が報われる時代になったといえるだろう。妻にとってうれしい話ばかりではない。高齢化が進んで認知症になる人が増え、いつ夫が認知症になってもおかしくない。認知症に対する準備を何もしていないと、いざというときに夫の資産が凍結され、銀行からお金を引き出すことすらできなくなる場合が。最近は「家族信託」という制度を使って相続とあわせて認知症にも対策する人が増えてきた。夫が元気なうちに妻がしっかり準備しておくことで、お金の心配をかなり減らせるのだ。相続なんてお金持ちだけの問題だと考えている人も多いかもしれないが、遺産の分け方についてはどの家でもトラブルになりうる。相続の新情報を知っているだけで、家族がもめて“争族”とならずにすむかもしれない。得られるお金が数百万円単位で変わることもある。ぜひ知っておきたい新常識を紹介する。妻が自宅に住み続けられない「理不尽」が解消夫が亡くなったあとも、長年住んだ自宅にそのまま住み続けたいと願う妻は少なくないだろう。ただ、お伝えしたように、自宅の価値が自分の取り分を超えていると希望が叶わないこともあった。その状況を変えたのが、2020年に新しくできた「配偶者居住権」という制度。例えば、夫の遺産として3000万円の自宅があった場合、「自宅に住む権利1500万分を妻が相続し、売却などができる権利1500万円分を子どもが相続する」というように、自宅をふたつに分けて相続できるようになった。妻が3000万円の自宅をまるまる相続するわけではないため、もし夫名義の銀行預金があればそれも子どもと分けることができるのだ。生活費に使える現金を手にしつつ、安心して思い出の自宅に住み続けられることに。夫がもしものときはぜひ活用したい制度だ。【これまで】自宅に住み続けようとすると自宅を相続する必要があるため、現金を相続できずに生活費に困ることも。【これから】新しい制度ができたことで、自宅を丸ごと相続しなくても住めるようになり、また、現金を相続することもできるようになった。夫が認知症になる前に絶対にやっておくべき制度「夫はまだ元気だから相続や介護なんて先の話だ」と考えていると後悔する。というのも、夫が認知症になると一切の資産が凍結されてしまうからだ。たとえ妻でも夫の銀行口座からお金を引き出せなくなり、自宅が夫名義なら売却も難しくなる。また、妻が財産の全容を把握できていない場合は夫の死後に遺産分割がなかなか進まない可能性も。そこで検討したいのが「家族信託」という制度だ。これは、元気なうちに夫の現金や不動産などの管理を、子どもなどに任せるというもの。たとえ夫や自分が認知症になったとしても、子どもが管理を任せられている口座からお金を引き出すことが可能だ。また、この制度を利用していると、夫の死後も安心。というのも、夫の資産がそのまま子どもに引き継がれるので、遺産の分け方でもめずにすむからだ。なお、認知症になってしまうと家族信託の契約は結べないため、夫が元気なうちに検討したい。【要注意】認知症になると「本人の意思確認」が難しくなるため、預金の出金や定期預金の解約、自宅の売却などが難しくなってしまう。「遺言書リスク」を払拭できるようにたとえお金持ちでなくても、遺産の分け方を決めるのは実はとても面倒。遺産がそもそもいくらあるのかを調べなければならず、また、実家を売るのか売らないのかで家族が対立するケースも少なくない。その点、遺言書があればもめずにすむし、遺言書を書く際に財産の一覧も作ることになるため、夫の死後に遺産を調べる手間も省ける。だが遺言書は、正しく書かなければ無効になってしまう。さらに死後に見つからなかったり、誰かに内容を改ざんされたりするリスクも。そのためにあるのが公証人が遺言書を作成・保管する「公正証書遺言」という制度だが、10万円前後の費用が発生する。そこで活用したいのが、2020年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」だ。遺言書を法務局に保管してもらうことで、紛失や改ざんを防げるように。また法務局の人が、遺言書の中身をチェックしてくれるため、無効になるリスクも低くなる。費用は基本的に申請手数料3900円のみ。自分や子どもの負担を減らすためにも、夫には遺言書を書いてもらいたいもの。まずは、お近くの弁護士や行政書士などに相談してみては。妻の相続は「税金がかからない」からこそ要注意!夫の遺産は、妻と力を合わせて築いたものと考えられているため、夫婦間の相続では税金がかかりにくくなっている。「配偶者の税額軽減」という特例で、最低1億6000万円まで相続税がかからない。その点、妻は優遇されているのだが、だからこそ注意すべき点がある。税金がかからないからといって、よく考えもせずに夫の遺産を自分がすべて相続すると、自分が死んだあとに子どもが痛い目に遭うのだ。子どもへの相続では「配偶者の税額軽減」が使えず、さらに子どもは夫の遺産と自分の財産の両方を相続することになるため、相続税が高くなりやすい。自分の死後、子どもに必要以上の負担はかけたくないもの。そのためには夫が亡くなったときに遺産の分け方を慎重に検討することが大切だ。必要に応じて税理士にも相談のうえ、子どもが損をしない引き継ぎ方を考えよう。【要注意】夫の遺産を妻が相続するときは税金面でとても優遇されているが、妻の死後、その財産を子どもが相続するときはしっかり課税される。「孫の教育費」を払って賢く節税!生きているうちに家族に財産を渡すと、自分が死んだときの遺産が減るため家族が相続したときにかかる税金を少なくできる。そのため、子どもや孫に生前贈与をして、税金対策をする人は少なくない。しかし、例えば孫が将来、大学へ進学するための資金を渡すというように、いますぐ必要のないタイミングで渡すと贈与税がかかってしまう場合も。そんなときに活用したいのが特例措置(正式には「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」という)だ。これを利用すると、最大1500万円の教育資金を贈与税がかかることなく渡すことができる。例えば、300万円を一括でそのまま渡すと19万円の贈与税がかかるが、この特例措置を利用すると税金が0円になるのだ。銀行で専用口座を開き、お金を渡した人に管理してもらうといった条件はあるが、無税でお金を渡すことができる。この特例措置を利用できる期限が去年の法改正で2023年3月末まで延長されたので今からでも間に合う。教育資金を渡したい孫がいるなら、節税のためにもぜひ検討を。おひとりさまの相続新常識相続と聞くと、配偶者や子どもがいる人だけの問題だと考えていないだろうか。しかし独身の人にとっても、相続対策が必要なことがある。亡くなった人の遺産は、身内がいないなら借金の返済や滞納している家賃の支払いなどに充てられ、残りは亡くなった人の身の回りの世話をした人などに引き継がれ、残りは国のものになる。せっかく築いてきた財産を国のものにしたくないのであれば、遺言を書き、お世話になった人や慈善団体などに渡すのも選択肢のひとつ。遺言書は、決められた形式に沿って書かなければ無効になってしまうため、弁護士や行政書士に相談しながら書くと安心だ。また、生前に贈与したり、不動産や株などの資産を売却・換金して自分で消費することももちろんひとつの手。いずれにせよ、おひとりさまが対策するのであれば、早めに動くことが大事だ。「義理の親の介護」をしたら財産をもらえる!義理の親の介護は、精神的にも体力的にも大きな負担を伴う。にもかかわらず、その義理の親が亡くなっても介護をしていた嫁は財産を1円も相続できない。ところが2019年にできた「特別寄与料」という制度によって、義理の親を必死に介護してきた対価を請求できるようになった。これが認められると、遺産を引き継ぐ息子や娘などからお金を支払ってもらえる。金額は話し合いで決まるが、まとまらないときは家庭裁判所での判断となる。ただ、この特別寄与料はほかに何も打つ手がないときに嫁ができる最後の手段と考えたほうがいいかもしれない。というのも、一般的に想定できる以上の介護を、最低1年以上していなければ特別寄与料は認められないからだ。食事の世話や病院の送り迎えなどをしていただけでは、1円も支払ってもらえない。そのため、義理の親が介護状態ではあるけれどまだ認知症ではないなら、ほかの方法も検討するのがおすすめだ。例えば、「介護してくれた〇〇(嫁の名前)に財産の3割を相続させる」などのように書かれた遺言書を残してもらうとか、「〇〇万円を渡すかわりに死ぬまで介護を続ける」といった契約を書面で交わすのも選択肢のひとつだ。また、契約者を義理の親、受け取り人を自分にして生命保険に加入してもらう方法も。生命保険の保険金は受け取り人のものになるため、ほかの相続人にとられる心配はない。いずれにしても、義理の親が元気なうちに対策をするのが、嫁が割を食わずにすむポイントだ。【これまで】どれだけ献身的に介護をしても、嫁は一切の遺産を受け取ることができない。【これから】今後は義理の親を介護すると、条件によっては特別寄与料をもらえることに。「嫁への生前贈与」ができるうちに遺産が少なければ相続税は安くなる。そのため、多くの人が生前に息子や嫁に財産を贈与して遺産を少なくしようとしてきた。1年間で110万円以内の贈与なら贈与税がかからないので(「暦年贈与」という相続税対策)、毎年少しずつ渡すのがこれまでの常套手段だったが、この生前贈与を使った税金対策が近いうちにできなくなる可能性が高い。現在でも亡くなる前の3年以内にもらった財産は、相続税の対象になりうるが、それが今後は亡くなる前の10年間や15年間にもらった財産も対象になる可能性が。生前贈与した財産にも、相続税がかかりやすくなってしまうのだ。早ければ、2023年の4月に何らかの改正があるとみられている。税金を余分に持っていかれないためにも、生前贈与を考えているならすぐに行動に移したい。執筆者紹介……品木彰さん●フリーライター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。大手生命保険会社にて7年半勤務し、人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。保険や不動産、投資、税金など幅広いジャンルの記事を執筆・監修している。
2022年03月05日小林亜星さん2021年5月30日、小林亜星さんが心不全のために亡くなった。「急死は2週間ほどが過ぎた後に公表され、これまで数千曲もの楽曲を手がけた希代の作曲家を悼む声が多くあがりました。それから5か月後の11月、『女性セブン』で《小林亜星さん「4億円遺産」巡って後妻と息子が相続トラブル》と報じられたのです」(スポーツ紙記者)トラブルの発端は、亜星さんの前妻の次男である小林朝夫氏だった。「記事には、預貯金や不動産などいっさいを、今の妻に相続させるという遺言書に従って遺産の手続きが終了したとあります。しかし、朝夫氏が自身の有料ブログで遺言書の内容へ不満を吐露。このことについて『女性セブン』が亜星さんの妻に尋ねると、《すべて弁護士さんに任せていますし、こちらには何も言ってきていません》と答えています」(同・スポーツ紙記者)そんな気になる相続トラブルの行方を取材すると、亜星さん亡き後も妻が暮らしている自宅近くでは見慣れない男が目撃されていて……。「最近、車で中年男性がよく来ているんですよ。亜星さんの財産でもめているって報道があったから、もしかしたら息子さんが話し合いに来ているんじゃないかって、噂になっています」(近隣住民)この男性は誰なのか。古くから亜星さんと家族ぐるみで付き合いがあるという友人が明かしてくれた。■次男・朝夫氏は自宅を訪れることなく「自宅に来ている人というのは、朝夫さんではなく、亜星さんの個人事務所の方です。亜星さんが代表取締役でしたが、お亡くなりになって別の方に引き継いだので、仕事の打ち合わせに来ているんです」当の朝夫氏は、自宅に訪れるどころか、実際は消息もわからないという。「亜星さんの奥さんに聞いてみたら、朝夫さんは奥さんに直接は何も言ってきていないみたい。それどころか、何年も音信不通だとか。奥さんは念のため、亜星さんの弁護士にも確認したそうですが、朝夫さんから相続や遺言書に関する連絡とか書類も届いていないって」(古くからの友人、以下同)音信不通の状態では、いくらブログで不満を吐露しても亜星さんの妻を悩ませるだけなのだが、“4億円遺産”はどうなるのか。「亜星さんは、遺産を朝夫さんに渡さないというわけではないんです。生前、奥さんと一緒に別の遺言書も作っていて、それによると奥さんが亡くなった後には、息子さん2人に遺産は相続されることになっているそうです。次男の朝夫さんがそれを知らないのかもしれませんが、長男は納得しているはずです」今はどこかで“地震予知”の有料ブログをせっせと更新している朝夫氏。こんな騒音は天国の亜星さんの耳に届かなければいいが……。
2021年12月25日生前贈与※画像はイメージです相続のルールを激変させる動きが加速している。早ければ2022年4月から、年間110万円までに定められた「生前贈与」の非課税枠が廃止されるかもしれないのだ。タイムリミットが迫る節税対策の方法と岸田内閣が目論む増税の行方を検証!■相続税のルールが変わるかも近年、相続税の対象になる人が増えているのをご存じだろうか。かつては相続税がかからない金額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったのが、2015年から「3000万円+600万円×法定相続人数」までにダウン。これにより、亡くなった人のうち4%程度しかいなかった相続税を払う人が、8%程度と倍増。地価の高い東京圏では約16%の人が対象になっているのだ。“相続税なんて、お金持ちしか関係ない話でしょ”と思うかもしれないが、都会の一戸建てを相続した人なども対象となることが増え、遺族が困惑することもままあるという。そのため節税対策として、元気なうちに少しずつ財産を配偶者や子に渡す「生前贈与」を行う人も数多くいる。そんな中、気になるのが、相続税と贈与税が一体化されるという動き。昨年12月に自民・公明両党が公表した『令和3年度税制改正大綱』という資料には、こう記されている。《相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める》む、難しい……。一体どういうこと? 税理士の西原憲一さんに解説してもらった。「相続税と贈与税の一体化が進めば、多くの専門家が『暦年贈与』の非課税枠が廃止されるとみています」暦年贈与とは、年間110万円以下であれば贈与税が非課税になる仕組みを利用し、毎年行う生前贈与の方法。「これを使って、多くの人が非課税枠の範囲内で生前贈与を繰り返し、相続税がかかる財産を減らし、節税対策をしてきました。しかし制度が変わると、この方法が使えなくなります」(西原さん、以下同)しかもそのXデーは、間近に迫っているおそれもあるという。「今年12月に『令和4年税制改正大綱』が公表される予定ですが、そこで具体的な時期や内容が示されるかもしれません。そうなれば、最速で来年4月には改正がスタートする可能性さえあります」■生前贈与の節税効果ただ、贈与税そのものがなくなるわけではない。「生前贈与を受けたときにまず贈与税を払っておき、くれた人が亡くなったときに相続税を計算しなおすのです。それで差し引きして、すでに払った贈与税のほうが多かったらその分は戻ってくるし、少なかったら追加で納税するという形になるでしょうね」いずれ使えなくなりそうな相続税対策、どのくらいの効果があるのだろうか。「例えば遺産が10億円で妻と子が2人いる男性がいたとします。こうしたケースは、早くから生前贈与を毎年続けておく(=『連年贈与』する)と結構な節税効果を得られるんです。このケースで、まったく生前贈与しなかったら相続税額は1億7810万円かかります。一方、子2人に、贈与税は多少かかりますが700万円ずつ15年間、生前贈与したとしたら、試算では差し引き2275万円の節税になるのです。しかし、贈与税と相続税の一体化が実現すれば、この2000万円以上もの節税ができなくなります」改正されると“どうせ相続税がかかるなら、さっさと財産を渡してしまおう”と考える人が増え、「高齢世代から現役世代へスムーズに財産が渡るよう促す国の目論見もあります」と西原さん。その結果、経済にも好影響が及ぶという狙いがあるようだ。■富裕層だけじゃない税制改正の影響とは一体化が予想される贈与税と相続税。どのような段取りで行われるのだろうか。「現在、生前贈与をしていた方が亡くなった場合、亡くなる3年前までの生前贈与財産が相続財産とみなされ、相続税の対象となります。ちなみに外国はどうかというと、アメリカは無期限にさかのぼって課税されますし、フランスは15年、ドイツが10年です。日本もこうした国々にならうと考えられます。もちろん、いきなりすべての生前贈与を相続税の対象にしてしまうと影響が大きすぎますから、今後、亡くなる前の5年前、10年前、15年前と徐々に対象が拡大されていく可能性が大です」ただし、すでに非課税となっている贈与財産までさかのぼって相続税の対象となる心配はない。「今まで相続税対策でこつこつ生前贈与を行ってきた人は、ルールが改正されるギリギリまで粘って、粛々と贈与をしていけばいいでしょう」■生前贈与の始めどきかも…ちなみに、相続税がかかるほどの財産がない場合、“自分には関係ない”と思ってしまいそうだが、私たち庶民でも何かやっておいたほうがいいのだろうか?「実はもう1つ、ゆくゆくは改正される可能性が高いものがあります。それが、相続税の非課税枠(基礎控除額)です。これをさらに減らして、相続税がかかる人を増やしていく可能性はあります」自分は金持ちではないから大丈夫と思っていても、いずれは相続税がかかるようになってしまうかも!「だから、妻や子、孫に渡したい財産があるのなら、生前贈与に関する非課税枠がある今のうちに、贈与をスタートしておくのもひとつの手だと思いますよ。暦年贈与の場合、2022年4月から改正スタートの場合は、今年の年末までと’22年3月末日までの2回、110万円の非課税枠を利用できるチャンスがあります。ほかにも表のとおり、贈与税非課税の特例がいろいろあるのですが、利用条件が厳しくなっているのが現状。期限がくる前に活用するといいでしょう」■実は増税路線!? 岸田政権の目論見西原さんによれば、税制改正は「政治家の思惑が大きく影響することが多い」そう。そこで注意したいのが、岸田政権の動きだ。「岸田内閣になってから少しずつわかってきたのが、やはり岸田総理は財政再建をやりたいんじゃないかということ。財政再建をするには、税金を増やしつつ国の支出は減らさなくてはなりません。コロナ禍に配慮しておおっぴらには言いませんが、18歳未満の10万円給付に所得制限つけたり、Go Toトラベルの枠を下げたりするなど、歳出を圧縮したい思惑が感じられます。言ってしまえば、今回の改正は増税案です。相続税は富裕層にかかる税金というイメージがあるので、“相続税の節税は許さない”という姿勢への反発は少ないかもしれません。そういう意味で、改正が早期に実施される可能性は十分にあります」ただ、政治の状況によっては、この増税案を押し返すことが可能かもしれない。「コロナ禍の今、それも来年夏の参議院選挙を控えた大事な時期に、こんなインパクトの大きい案を実施するのかなという疑問はあります。世論の動向を見極めつつ、進めていくのではないでしょうか」まずはできるうちに生前贈与は進めておくこと。そのうえで、贈与税・相続税一体化の行方に目を光らせておかなければ!相続税がかからない額(基礎控除額)3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数例:夫が亡くなり妻と子2人が残された場合、4800万円が基礎控除額に。これを超えると相続税の対象になる。生前贈与の主な制度・特例はココに注意!・暦年贈与内容その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産のうち、110万円までは非課税となる。期限最速で2022年4月から廃止の可能性あり。注意点他の非課税特例とは併用できない。110万円を超えた贈与分については、金額に応じて10~55%の贈与税がかかる。・住宅取得金等資金の贈与内容父母や祖父母から、自分が住むための住宅を新築、取得または増改築等するためのお金をもらった場合、一定の条件を満たすと贈与税が非課税に。非課税枠は、新築等で省エネ住宅なら1500万円。期限2021年12月31日まで。注意点税務署での申告手続きが必要。取得等した住宅の種類(新築か中古か、省エネ住宅かなど)によって、非課税となる金額が異なる。・教育資金の一括贈与内容30歳未満の人が、教育資金用に財産を父母や祖父母から受け取った場合、一定の手続きを踏めば1500万円まで贈与税が非課税となる。期限2023年3月31日まで。注意点信託銀行などで専用の口座を開設し、所定の手続きを行う。30歳までに使いきれなかった分は、贈与税の対象となる。使いきる前に贈り主が亡くなると残額は相続財産扱いに。・結婚・子育て資金の一括贈与内容20歳(2022年度からは18歳)以上50歳未満の人が、結婚・子育てのために財産を父母や祖父母から受け取った場合、一定の手続きを踏めば1000万円まで非課税となる。期限2023年3月31日まで。注意点信託銀行などで専用の口座を開設し、所定の手続きを行う。50歳までに使いきれなかった分は、贈与税の対象となる。使いきる前に贈り主が亡くなると残額は相続財産扱いに。※非課税になるには、さまざまな条件を満たし、所定の手続きを行うことが必要となるので、贈与を行う前に、税務署や税理士に相談すること!(取材・文/鷺島鈴香)
2021年12月06日「うちの子どもたちは仲がいいし、大した財産もないから、自分が死んでもその後、相続トラブルになることはない」と思い込んでいる親たちは多い。ところが、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルは、この20年で約1.5倍以上に増えて、近年の新受件数は1万4,000件強で推移。その約3分の1は「1,000万円以下」のケースという。「相続は遺産が少ないほどトラブルになりやすく、なかでも多いのは、すでに父親は他界していて、その後、母親が亡くなったことで、財産を子どもたちで相続する場合。すでに独立している子どもたちは集まれる機会が少ないうえ、限られた時間の中で決めなければならないことがたくさんあるので、冷静さを失いがち。特に、自宅とわずかな現金しか残っていないというケースは注意が必要です。やはり、親御さんが元気なうちに、自宅や預貯金をどのように相続してほしいのか、きちんと決めてもらうことが大切です」そうアドバイスするのは、相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さん。「死んだ後の話をするのは不謹慎だ」と思うかもしれないが、親族が集まれる機会に、相続について話し合っておくことが、トラブルの回避につながるという。 本来、被相続人の死亡をもって始まるはずの相続だが、なぜ、生前から準備しておく必要があるのだろう。それは、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告・納付」を、故人の居住地を所轄する税務署に出向いて行わなければならないというルールがあるからだ。「親が『遺言書』を遺していない場合は、相続人で遺産分割協議を行い、『遺産分割協議書』を作る必要があります。これを含めた必要な書類を10カ月以内にそろえ、相続税の申告・納付手続きを済ませなければなりません。仮に相続財産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)以下であれば相続税はかかりませんが、持ち家がある場合は、自宅の評価額だけで基礎控除額を超えてしまう可能性もあるので注意が必要です。万が一、申告が遅れてしまうと、不動産の『小規模宅地等の特例』などの優遇が使えなくなり、相続税の額が増えてしまう恐れも出てきます」(竹内さん・以下同)さらに、親に多額の借金があったことがわかった場合は、3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し出ることで、負債を背負わずに済むといった選択肢もあるので、モタモタしてはいられない。■スムーズな相続のためには親の生前から準備が必要もちろん“みとった後”も忙しい。葬儀や納骨のほかにも、健康保険、年金の死亡手続きや、銀行口座やクレジットカードの解約など、やらなければならないことは山ほどある。そんななかで円滑に相続を進めるためには、親の生前にやっておくべきポイントが3つあるという。まずは、相続財産を確認すること。「通帳を集めて残高を確認しておきましょう。相続開始後の預貯金の払い戻しは大変手間がかかります。複数口座があるとなおさらですので、口座はなるべく1つにまとめて、あとは親御さんが元気なうちに解約してもらうといいでしょう」通帳とともに、金融機関の届出印はどれなのか、目印のシールでも付けておくとわかりやすい。また、故人の銀行口座を解約するときに必要なこともあるので、日ごろから自分の実印もきちんと管理しておきたい。続いて、自宅はいくらの価値があるのかを、固定資産税の通知書をもとに調べておく必要がある。土地が共同名義になっていると相続時にややこしくなるので、自宅の登記簿謄本を取得して、所有者が誰なのか把握しておこう。2つ目のポイントは、誰が相続人になるのかを確認すること。きょうだいは2人だけなので、相続人は2人、と思いきや、じつは両親は再婚で先妻の子がいた、なんてこともありうる。「戸籍謄本を取り寄せて相続人の数を把握し、簡単な家系図を作成してみましょう。たとえば、父がすでに他界して、母の財産を3人の子どもが相続するときは、法定相続分は3分の1ずつになります」そして3つ目が、具体的な遺産の分け方を決めておくこと。介護の負担など、親との関わり方はきょうだいによって異なることもあるので、必ずしも法定相続分のとおりに分けなくてもよいというのだ。「たとえば、長男が親の介護やみとりの中心になり最期まで面倒を見たとしたら、『ほかのきょうだいたちより多くの財産をもらってもいいはず』、と思うでしょう。そのようなときは『遺言書』を活用して、相続に親の意思を反映せておくことです。きょうだい間の話し合いを円滑に進めるためにも、生前に『遺産の分け方の確認』をしておくことが大切です」相続でもめる原因の多くは、この「遺産の分け方」にあるが、そうしたトラブル回避の“切り札”になるのが「遺言書」だ。自ら公証役場に足を運んで、口述しながら公証人が作成する「公正証書遺言」と、原則すべてを自分で自書して作成する「自筆証書遺言」の2通りがあるので覚えておこう。いっぽう、「終活」ブームとともに耳にする機会が増えてきた「エンディングノート」は、相続財産を目録にするときには便利なツールだが、これだけで安心と思ってはいけないという。「エンディングノートは、終末期の医療の受け方やお葬式のやり方など、故人の希望を周囲の家族に伝えておくのにとても便利なツールなのですが、法的な効力はありません。かえってエンディングノートに書いてあることが原因でもめることもあるので、どれだけの財産を誰に遺すという相続に関しては、『遺言書』を作成して、具体的な分配方法を決めておくことをお勧めします」ちなみに’19年1月改正の相続法施行により、自筆証書遺言の作成は、だいぶハードルが低いものに。遺言書に添付する「財産目録」は、それまで手書きに限られていたのが、パソコンでの作成が認められるようになったほか、通帳などのコピー添付も認められるようになった。また、昨年7月からは、自筆証書遺言を市区町村の法務局で預かってくれる保管制度ができ、書類の不備を指摘してもらえるようになった。紛失リスクもなくなるので、ぜひトライしてみよう。■もめない相続のカギは相続人同士の“納得感”しかし、いくら「遺言書」で財産の分け方を指定しても、ほかの相続人から遺産の最低限の取り分である「遺留分」を請求されると、渡さなければならないといった決まりもある。たとえば、母と同居する長男が、「弟と妹は介護をほとんど手伝わないのだから、相続財産は分けなくてもいいだろう」と考えたとしよう。長男の気持ちを察した母は、「長男だけに相続財産を渡す」という「遺言書」を書こうとしたが、弟と妹から「遺留分」を請求されたら、法定相続額の2分の1を渡さなければならず“争続”のもとになる。もし遺産が3,000万円であれば、3人のきょうだいで分ける場合の法定相続額は1人1,000万円で、遺留分はその2分の1の500万円という計算になる。遺言書を書くときには、こうした遺留分に配慮し、相続人同士が納得できる内容にしておくことが望ましい。また、遺言書に不備があると無効になることも。遺言書を作成した「日付」の時点で親の認知機能に問題があったり、体調不良で正確な判断ができていないということが後でわかったりすると、無効になることがあるので注意したい。「遺言能力といって、遺言の内容を十分理解したうえで自分の死後にどのようなことが起こるのかを想定できる能力が問題になります。遺言能力がない人が遺言を書いたとして、ほかの相続人がその内容に納得いかないと家庭裁判所に申し立てられると、無効になる可能性があります」
2021年11月17日行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は、内縁の妻に遺産を残すために遺言書を作成した男性のケースを紹介します。※写真はイメージです■男性が超年下の“内縁の妻”を持つ事情突然ですが「内縁」という二文字が何を意味するのか、知っていますか?「内」の「縁」と聞いてもわかりにくいですよね。これは普通の夫婦(法律婚)と比べるとわかりやすいです。法律婚は婚姻届を提出し、同一戸籍に入っている男女のことです。一方、内縁とは「何らかの事情」で婚姻届を提出することができず、苗字は別々だけれど、一つ屋根の下で衣食住をともにする男女です。外から見れば普通の夫婦と変わりません。では、入籍できない事情とは何でしょうか?筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして男女の悩み相談にのっていますが、大半の場合、「離婚できないから」です。特に男性の側に戸籍上の配偶者(本妻)がいるパターンです。配偶者が承諾してくれず、まだ離婚していないのに、新しい女性と付き合い始めるケース。日本では重婚は認められていませんから、新しい彼女と結婚するには配偶者と離婚しなければなりませんが、例えば、「お前より若い子と一緒になりたいから」という理由で、妻は簡単に離婚に応じるでしょうか。離婚交渉を途中で断念した場合、内縁という奇妙な関係が発生するのです。内縁の妻は夫より20歳以上も若い……そんな「超」年の差も珍しくありません。なぜでしょうか?老夫が若妻を金銭的に養うことで成立するからです。具体的には非正規で生活を安定させたい30~40代女性と、前妻を失った寂しさを埋めたい60~70代男性が惹かれ合うのですが、持ちつ持たれつという感じ。今回の相談者・亮一さん(仮名・72歳)、美穂さん(仮名・48歳)もそんな組み合わせです。筆者の事務所へ二人そろって相談しに来たとき、亮一さんの寿命は尽きようとしていました。亮一さんが把握している限り、現金化できる財産は4,000~5,000万円程度ですが、何が問題なのでしょうか?<登場人物(相談時点、すべて仮名)>夫:亮一(72歳・年金生活)内縁の妻:美穂(48歳・家事手伝い)☆今回の相談者戸籍上の妻:鈴美(70歳・年金生活)長女:音美(34歳・専業主婦)亮一と鈴美との間の長女長女の夫:玲央(36歳・会社員)長女の子:大河(1歳)玲央と音美の間に生まれた長男「彼がまだ動けるうちにやっておきたいんです。でも何から始めれば……」美穂さんは不安そうな表情を浮かべますが、事務所の玄関で筆者は唖然としました。亮一さんの両足は1.5倍に腫れ上がり、靴が履けない状態だったのです。素足にサンダル履きという姿が余命の短さを象徴していると後でわかったのですが、亮一さんが侵されたのは末期の食道がん。4年間にわたる闘病の末、もう効く抗がん剤はなく、病院に見放されたのは先月のこと。亮一さんは残りの時間を自宅で過ごすことを希望しました。そして歩行困難になる前に筆者のところを訪れたのです。しかし、事情を知らない筆者が美穂さんに「奥さんですか?」と尋ねると二人とも難しい顔をします。美穂さんは10年間、亮一さんのことを心身ともに支えてきました。亮一さんは「今はとても幸せです」と言います。亮一さんはもともと妻、そして長女と生活していたのですが、亮一さんが61歳のとき、自宅を出て、美穂さんと一緒になったのです。■妻の癇癪に耐えられず家を出た夫亮一さんが家を出たのには理由がありました。彼いわく、件の妻は癇癪持ち。長年、激しい気性に悩まれてきましたが、特にひどくなったのは亮一さんが42年間、勤めた会社を定年退職してから。夫婦が同じ空気を吸う時間が長くなった影響で妻はますます神経質に。例えば、亮一さんの財布やスマホ、クレジットカードの明細までチェックするように。少しでも無駄使いを発見すると大変です。「馬鹿!」「ボケ!」「死ね!」と暴言を浴びせてくるのです。そのため、次第に亮一さんは昼間外出し、妻を避けるような行動を取り始めたのです。亮一さんが家に戻るのはシャワーを浴びるときだけ。寝室に入らず、リビングのソファーで寝る日々を続けていたところ、妻に見つかってしまい……。亮一さんが「ちゃんと家で休めるようにしてほしい」と頼むと、妻は「いつになったら出て行くんだ。早く死んでくれ!」と一蹴。亮一さんは完全に居場所を失い、自宅を追われ、行方をくらますしかなかったそうです。最初はひっきりなしに届いた妻や長女からの罵詈雑言も次第に減っていき、途中で完全に途絶えたのです。そして失踪から1年後。美穂さんと知り合い、お互いに惹かれ合い、夫婦同然の生活を送るように。二人は中途半端な関係だったものの、「日々の生活に特段、不自由していなかったので……」と亮一さんは弁明しますが、本妻との離婚はついつい後回しに。そしてきちんと「けじめ」をつけず、なぁなぁのまま、今に至ったそう。つまり、戸籍上の配偶者は今だに本妻。そして美穂さんは内縁の妻という位置づけなのですが、問題は相続権。今にも亮一さんの寿命が尽き、相続が発生しそうな状況ですが、法律上、「何もしなければ」内縁の妻に法定相続権(法律で定められた相続権)はありません。このままでは亮一さんの遺産は闘病中、何もしていない本妻と長女が総取り。献身的に看病した美穂さんには何も残らないのはあまりにも不平等な結果です。■彼女に遺産を残すための遺言作成確かに二人の間柄は不倫、美穂さんの存在は不倫相手ですが、亮一さんにとって10年間、その存在を忘れていた戸籍上の妻と、10年間、連れ添った内縁の妻とどちらが大事でしょうか?亮一さんは「美穂さんです」と断言します。亮一さんは残された美穂さんがお金に困らないよう、遺産を残すことを望んでいました。もちろん、亮一さんが本妻と離婚し、美穂さんと再婚することができれば、それが理想的な展開です。法定相続人は美穂さんと長女だけ。本妻に遺産を渡さずにすみます。本妻が美穂さんに「何様なの!」と文句を言う権利はありません。とはいえ亮一さんは余命わずかの状態。10年ぶりに本妻と連絡をとり、今さら「正式に別れてほしい」と頼み、亮一さんが亡くなるまでの間に離婚届に署名をもらう。それは全く現実的ではありませんでした。そこで筆者は「離婚せずに彼女に遺産を残すのなら遺言を作りましょう」と提案しました。なぜなら、遺言のなかで美穂さんに遺産を渡すと書けば、美穂さんにも相続する権利が発生するからです。ところで遺言は公正証書遺言と自筆証書遺言の2つに分かれます。前者の場合、公正役場で公証人立ち会いのもと本人が署名捺印するのですが、いざ本人が亡くなり、遺言を発見し、相続を開始する前に、遺言の発見者が勝手に中身を書き換える可能性があります。そのため、遺言の原本は本人だけでなく、公正役場でも保管しておきます。もし、発見した遺言と公正役場の遺言に相違があった場合、改変の事実が明るみに出るので安心です。後者の自筆証書遺言の場合、遺言を無断で改変していないかなどを相続の手続を始める前に、裁判所で確認しなければなりません(=検認)。今回の場合、自筆で遺言を残すのは極めて危険です。本妻は「夫が出て行ったのは女(美穂さん)が裏で糸を引いているはず。夫はあの若い女に騙されたに違いない。金欲しさで近づき、媚を売り、遺言を書くように仕向けた守銭奴」と思うに違いありません。美穂さんという存在のせいで遺産の分け前が減るのですから、筆者は「本妻や長女が美穂さんを逆恨みするでしょう」と指摘しました。美穂さんが亮一さんと出会ったのは別居後ですが、「寝取ったわけではない」と弁明しても、怒り狂った本妻は聞く耳を持たないでしょう。自筆証書遺言の場合、もし本妻が検認前に遺言を奪い取り、焼き払い、灰と化した場合、遺言を「なかったこと」にすることも可能といえば可能です。現時点で本妻や長女が何をどこまで勘づいているのかはわかりませんが、少なくとも美穂さんのことは「悪女」に映るでしょうから、本妻や長女が何を仕出かしてもおかしくはありません。亮一さんは美穂さんのことを本妻、長女から守らなければなりません。このことを踏まえた上で亮一さんは遺言の形式として「公正証書」を選びました。■寿命が尽きる中で感じた“罪悪感”次に具体的な内容です。亮一さんが家出せざるをえなくなったのは妻の責任も大きいでしょう。妻がまともなら悠々自適な老後生活が待っていたはずと考えると、遺産は美穂さん10割でもよさそうですが、亮一さんは言葉を濁します。美穂さんと暮らし始めて10年ですが、一方で結婚から別居まで25年。遺産の一部は妻のおかげで築いた財産も含まれています。そして亮一さんは別居から11年間、妻子に生活費を全く渡していません。さらに長女の結婚、孫の誕生、義母(妻の母)の逝去……いずれの場面も夫不在、父不在で迎えざるをえず、寂しい思いをさせたという自責の念もあります。亮一さんは自宅療養中、過去の人生が走馬燈のようによみがえったとき、家族を捨てた罪悪感が頭をよぎったそう。「彼女たち(本妻と長女)には悪いことをした」と。そのため、筆者の提案に対して亮一さんは本妻、長女にも遺産を残すことを望みました。そして本妻、長女、美穂さんは均等に3分の1ずつ分けることに決めたのです。そして本妻、長女に遺産分割の手続を任せた場合、美穂さんがどんな目に遭うかわかりません。そこで筆者は「遺言の執行人(相続人を代表して遺産分割の手続を行う人)を美穂さんにしましょう」と提案し、亮一さんと美穂さんは承諾しました。それから2週間。筆者は文面を作成し、美穂さんは印鑑証明、戸籍謄本等の書類を入手し、筆者は書類をもとに公正役場へ連絡し、公正証書化する準備を進めました。そして署名当日、車椅子で現れた亮一さんの姿に筆者は愕然としました。亮一さんは自らの足で歩くことが困難になっていたのですが、わずか2週間でこんなに悪化するなんて……。亮一さんが公正証書に署名する場所は公正役場ですが、エレベーターがない建物の2階。バリアフリー化された役場を選ばなかったことを悔やみました。結局、筆者と美穂さんが亮一さんを抱えて2階に運びました。そして亮一さんは公正証書遺言の手続きを無事、終わらせることができたのです。■早め早めに「終活」の準備をしかし、人生で最後の仕事を終えたことで残された力を使い果たしたのでしょうか?亮一さんは5日後に突然倒れ、救急車で搬送され、そのまま帰らぬ人に。筆者が亮一さんに会ったのは2回だけですが、どんな事情でも依頼者が亡くなるのはショックです。同時に「間に合ってよかった」と安堵したのも確かです。こうして亮一さんは美穂さんへの感謝の気持ちを遺産という形で残すことができたのですが、亮一さんのように妻との縁切りを別居で済ませ、離婚まで行わないケースは決して珍しくありません。なぜなら、別々に暮らし、連絡をとらず、存在を感じない生活は別居でも離婚でも同じだからです。しかし、別居と離婚の違いは戸籍です。別居先で新しい彼女と結びついた場合、「まだ妻が戸籍に入っている」という理由でさまざまな問題が生じます。今回の相続はあくまで一例。新しい家庭を持つ場合は古い家庭にけじめをつけるのが第一ですが、どうしても難しい場合は遺言を含め、「終活」を行う必要があります。もちろん、亮一さんのように土壇場で慌てたりせず、早め早めに準備しておくのが肝要です。<亮一さんが作成した公正証書遺言の文面>遺言公正証書本職は遺言者・**亮一の嘱託により、証人・***、***の立会の上、次の遺言の趣旨の口述を筆記しこの証書を作成する。鈴美、音美へ貴方たちがこれを読むとき、私はすでにこの世にいないでしょう。4年間、治療を続けた食道がんですが、今はステージ4、すでに余命8か月と言われたからです。長年にわたり、鈴美に苦しめられました。ここにすべての詳細を書き出すことはしませんが、事あるごとに思い出しては当時の苦しみがよみがえる日々を送ってきました。本当につらかった。そんななか私を救ってくれたのが美穂さんです。私は何度も死のうと思いましたが、ここまで生きながらえたのは美穂さんのおかげです。ありがたいことに私の病気がわかってからも、私のことを捨てずに支えてくれました。美穂さんのことを考えると私だけ苦しめばいいわけではありません。貴方たちの存在は美穂さんに大きく影響します。この遺言で美穂さんにもお金を残したいと考えています。ただ、世間から音美がどう思われているか。そのことをずっと負い目に感じてきました。そこで美穂さんには遺産の3分の1を受け取ってもらいますが、残りは貴方たちで分けてください。執行人は美穂さんに任せます。最後にくれぐれも美穂さんに迷惑をかけないでください。美穂さんのところに乗り込んできて、自分たちの権利を主張し、美穂さんを困らせないでください。そのようなことは何としても防ぎたい。その一心で私は筆をとったのです。本旨外要件遺言者無職神奈川県川崎市************亮一(以下、省略)露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! !慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。公式サイト
2021年11月14日「残すものは何もないから、わが家に限って相続争いなんか起きるはずがない」。そう思っていても、意外と基礎控除額を超えた金額が相続分として残ることが。今すぐ財産を洗い出して賢く節税をーー!「生前贈与ができなくなる!?」「相続税の節税ができない!」富裕層の間でそんな噂が飛び交っている。事の発端は’20年12月の税制改正大綱だ。「相続税と贈与税を一体的に課税する観点から課税方法を見直す」との記載が、さまざまな臆測を呼んでいる。「相続なんて、庶民には関係ない」そう思う人が多いだろう。だが、相続専門の税理士、橘慶太さんはこう警告する。「法改正があっても、富裕層は相続税が多少増える程度です。万全の準備も行うでしょう。しかし、もっとも大きな影響を受けるのは、相続税の対象ラインぎりぎりの方です。改正前なら相続税と無縁でいられたのに、改正後は相続税を払う立場になることもあるでしょう。相続税は、子どもたちに大きな負担を残します。’16年の相続税法改正以来、相続税の対象者は増えています。都市部の地価の高い地域に持ち家のある方は注意が必要です」■相続税の計算の仕方は?今のうちに考える庶民にこそ影響の大きい税制改正のゆくえを、Aさんの例をもとに解説してもらおう。夫と死別したAさんの財産は次のとおり。地価が高騰し自宅は3,000万円相当だが、子どもに負担をかけないよう節約に励むAさんの生活は、庶民そのものだ。【Aさん(72)の場合】子ども:2人Aさんの財産:土地・家屋3,000万円、預貯金1,500万円。計4,500万円相続税基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円相続税対象額:4,500万円−4,200万円=300万円「Aさんのような方が、いちばん危険です」(橘先生・以下同)相続税は3,000万円+(600万円×相続人数)が基礎控除で、これを上まわれば課税される。Aさんの場合、相続人は2人だから基礎控除は4,200万円。相続財産は全部で4,500万円。もし今亡くなると、300万円が相続税の対象だ。「相続税は死後10カ月以内に、申告手続きと原則現金での納税を終えなければなりません。ですが基礎控除額を超えなければ、申告も納税もいっさい不要。残された子どもたちの負担は雲泥の差です」相続税を回避できる対策は?「今なら、『生前贈与』を行えば相続財産を減らせます」生前贈与とは、生きている個人が財産を贈ること。親から子への贈与でも、もらう側の子に贈与税が発生する。課税方法は2種類だ。1つ目は「暦年課税」。1年ごとにもらった財産に対して、毎年贈与税を納める。ただし年間110万円の基礎控除があり、110万円以下なら申告も納税も必要ない。2つ目は「相続時精算課税」だ。通算2500万円までの贈与には贈与税がかからないが、贈与者が亡くなったときは、それまでに贈与された財産と相続財産とを合算して相続税を算出し、納税する。贈与税はどちらかを選ぶのだが、Aさんのようなケースでは、暦年課税を選ぶのが一般的だ。そのうえで、110万円の基礎控除内、たとえば100万円の贈与を2人の子どもに2年間行えば、相続財産を400万円減らすことができ、相続税の対象から外れる。もっと相続財産の多い人は、次の節税策も活用できる。【暦年贈与】非課税枠:年110万円注意点:贈与者の死から3年以内は相続税対象に【教育資金の一括贈与】非課税枠:1,500万円注意点:’23年3月末まで【住宅取得資金の贈与】非課税枠:省エネ住宅1,500万円、一般住宅1,000万円(※住宅の取得時期により、非課税枠が異なる)注意点:’21年12月末まで【結婚・子育て資金の贈与】非課税枠:1,000万円注意点:’23年3月末まで【扶養義務者間での生活費や冠婚葬祭での祝い金等】非課税枠:制限なし注意点:その都度、必要な金額を社会通念上妥当な範囲で■税制改正の本当の目的は?損しないためにできることところが、冒頭で述べた相続税と贈与税の一体化の方向に税制改正が進めば、相続税の節税ができなくなる可能性がある。「税制改正のシナリオはいくつか考えられる」という橘先生に3案挙げてもらった。【1】“持ち戻し”期間を5年、7年、10年などと長期化“持ち戻し”とは暦年課税で、贈与者の死からさかのぼって3年以内に贈与された財産を、相続財産に含めて計算し直すこと。税制改正で持ち戻し期間が長くなれば、高齢になって始める暦年贈与では、相続税を節税するのが難しくなる。【2】“持ち戻し”の対象を相続人以外の孫などにも広げる持ち戻し対象が広がると、死ぬ間際の「孫」への贈与も持ち戻しとなり、節税の効果がなくなる。【3】非課税制度の期限終了で延長なし非課税贈与がなくなれば、相続財産を一度に大きく減らす方法がなくなる。税制改正はいつ始まるのか?「来年すぐにはないでしょう。今年末の税制改正大綱に詳しく改正内容を示し、法整備を行って、早ければ2年後から施行でしょうか」それまでにやるべきことは?「Aさんのケースでは、まず財産を洗い出すこと。そして、生前贈与などを利用して、早いうちに相続財産を減らしておくことです」生前贈与以外に方法は?「子や孫の教育費や生活費の支援も、扶養義務者間は非課税ですから利用できます。ただし必要なときに必要な額を渡すのが条件です」将来、相続税制はどうなる?「暦年課税を廃止して相続時精算課税に一本化し、相続税の節税ができない税制にする。相続税の基礎控除をさらに引き下げて、相続税の対象を広げる。そんな未来を、国は描いているのかもしれません」相続税は人ごとではない。節税ができなくなる前に、生前贈与で相続財産をスリムにしよう。
2021年10月20日※画像はイメージです親が高齢になると、将来、実家をどうするかという問題が現実味を帯びてくる。自分が長年住んでいた思い入れのある家や、親が汗水たらしてやっと手に入れたマイホームでも、自分が住むのか、人に貸すのか、それともいっそ処分してしまうのか悩むところだろう。親がいなくなり、決めかねているうちに子どもである自分が税金や維持費を払い続けるということにもなりかねない。■先送りはNG「親の家問題」「本来は親が残してくれる大切な財産であるはずの実家が、売りたくても売れず税金や維持管理費だけがかかる『負動産』になってしまうのはとても残念なこと。それを防ぐためにも、親が元気なうちに家をどう処分するか、家族みんなで考えておく必要があります」そう語るのは、自分自身も親の実家の問題に直面した経験を持つ、相続・不動産コンサルタントの藤戸康雄さんだ。人が長く住んでいない空き家は、給配水管が経年劣化したり、畳や壁が腐食したり、シロアリが巣食うなどして傷みが一気に進む。そうなると、なおさら売りに出すのも人に貸すのも難しくなるので、親の家の問題に直面したら、解決を先送りせずにできるだけ早く決断を下すべきだという。負動産になりやすい家とはどういう物件だろうか?「都市部から離れた田舎や郊外の戸建ての空き家は、典型的な負動産予備軍といわれています。田舎や郊外は年々住んでいる世帯数が減る一方で、高齢者世帯の家が空いていくので、不動産の需要と供給のバランスが崩れてしまっています。この状況では、なかなか満足のいく値段や条件で売ったり貸したりすることは難しいでしょう」(藤戸さん、以下同)■都心の家でも安心は禁物戸建ての空き家だけとは限らない。建て替え問題に直面している老朽化した分譲マンションやリゾートマンションなども、今後さらに価値が下がり、費用だけがかさむ負動産になると見込まれている。ほとんど使う機会がない不要な別荘も、処分しようとしたところで簡単には売れず、高額な管理費や税金がかかってくる。また、かつて人気の高かった超高層のタワーマンションも、水害のおそれがある土地や埋め立て地に立つ物件は敬遠されて、負動産になる可能性が高い。場所がいいから高く売れると考えるのは間違い。住宅の需要が減っている今は、もはや都心の空き家でさえも「その気になればいつでも売れる時代」ではなくなっているのだ。■こんな親の家が負動産になりやすい!・田舎・郊外の戸建て「負動産」の代名詞ともいえるのが、人口の少ない田舎に立つ老朽化した戸建て・老朽化したマンション修繕費用が高額なうえ、高齢化で管理費を滞納するなど組合が機能しない場合も。利用しなくても管理費は高額。売り値100万円でも買い手がつかないのはザラ・リゾートマンション・別荘不便な立地から敬遠されがち。別荘地は空き家の管理メンテナンスも難しい・タワーマンション水害やエレベーターの渋滞など弱点が露呈。都心という立地だけでは売れない■親が元気なうちに家族で話し合う相続をめぐる家族間の争いが、「売れない」「貸せない」原因をつくることもある。「親が元気なうちに実家の相続について、家族が集まって話し合いをしておくことが大事です」と藤戸さんはいう。「相続をめぐるトラブルは、お金持ちだけに起きることではありません。相続争いの4分の3は、遺産総額が5000万円以下のケース。仲のいい兄弟姉妹だからといって相続争いが起こらないとは限りません。親の面倒を誰が見るか(見てきたか)などによって、それぞれの意見が衝突することもあります」親が元気なうちに家族会議を開いて、家をどうするかなど、遺産分割について腹を割って話し合っておけば、もめごとを回避することができる。預金や不動産のリストを作って、家族全員で情報を共有しておくと、実家を「売る」「貸す」などの判断もしやすくなるだろう。■まずは登記や修繕箇所の確認を「法務局などで実家の登記簿謄本を入手して、権利関係者を確認しておきましょう。名義が自分の親であればいいですが、祖父のままになっていると相続人が増えることになるので厄介。親が健在であれば相続人たちとも交流があり、登記の名義変更もスムーズにいくかもしれません。早めに動くことが肝心です」将来、実家を売ったり貸したりしたいと考えている場合は、土地の面積を正確に知っておくことも大切だ。先祖代々受け継いできた土地は、隣地との境界が曖昧なこともあるので、親が生きているうちにはっきりさせておいたほうがいいだろう。築年数が古い家やマンションの場合は、配管や水回りなど、修繕が必要な箇所を確認しておくことも忘れずに。親にあらかじめ費用を負担してもらうという選択肢もある。■親が認知症になってからでは手遅れ予想では、2025年になると65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれている。親が認知症と診断されると、親名義の不動産の売買が困難になり、不動産の処遇などを示しておく遺言書の作成ももはやできなくなる。しかし、元気な親に遺言書を書いてくれと言うのはさすがに気が引ける。そんな場合は、家族会議の場で親の考えや希望を聞いておこう。「近年では『家族信託』という制度で、親の財産を家族の誰かの名義にする方法もあります。家族信託とは、不動産や預貯金などの資産を、信頼できる家族に託して管理や処分を任せる仕組みのことです。遺言の場合は、親が亡くなるまで遺言書に書いたことを実現できませんが、この制度を利用すれば万が一、親が認知症になった場合でも、受託者である子どもが代わりに不動産を売却することができます」☆負動産にしないために! 今からできる処分術<1>親の死後、家をどうするか家族で話し合う<2>登記や修繕箇所などをよくチェックする<3>親が認知症になった場合を想定しておく■相続するかどうかは慎重にいざ親が亡くなって実家問題に直面したとき、知っておきたいのは、必ずしも相続することがいいわけではないということだ。所有した時点では財産であっても、相続後に「負の財産」になることもあるので、相続放棄の可能性もあわせて考えておく必要がある。住む予定のない親のマンションを相続してしまったが、老朽化しているため買い手も借り手も見つからない、だけど毎月の管理費や修繕積立金、固定資産税だけがかかってしまうなんて最悪だ。「本当に相続をしたほうがいいのかどうかは、慎重に考えるべきです。とはいえ、コロナ禍でリモートワークやワーケーションが注目され、郊外の広めの戸建てなど、負動産とされていたものでも見直される例もありますから、まずはこれから相続する実家が傷まないようにメンテナンスをしておくことが大事といえるかもしれません」■相続税が8割減になる特例制度親が亡くなって家を相続するときに大きな問題となるのが相続税だ。実際には売れない家であっても、高額な評価額がつけられてしまえば莫大な相続税を支払わざるをえない。配偶者が相続する場合とは違い、子どもが相続するときには「配偶者の税額の軽減」が受けられないということもあり、相続税を安くすますことに越したことはない。ここで知っておきたいポイントは、親の不動産を相続する場合、「小規模宅地等の特例」という制度を利用すると、相続税評価額が最大で80%も減額できるということだ。「例えば、賃貸暮らしをしていた子どもが実家に移り住んだ場合、一定の要件を満たせば、この特例の適用を受けることができます。仮に親1人子1人で、親が亡くなって1億円の実家を相続する場合は、相続するのが実家だけであれば相続税はゼロになります」ただし、この制度を受けるには、相続が発生してから10か月以内に申告しなければならない。「実家を大切にしたい」「家業を大切に守っていきたい」と考えている人は、速やかに専門家に相談し、この適用を受けられるようにしよう。■DIY賃貸や住み放題サービスでリスク削減最近は、家を「売る」「貸す」方法が多様化しており、例えば借り主が費用を負担して自分の好きなように内装をリフォームできる「DIY賃貸」などが注目を集めている。「誰も住まなくなった古い空き家を賃貸に出すには高額のリフォーム費用がかかりますが、DIY賃貸なら元手がない場合でも人に貸すことができます。借り主が初期の修繕費用などを自分で出して借りている物件なので、家賃滞納のリスクも低くなるでしょう」そのほか、「月額数万円で全国住み放題」という空き家を再利用したサービスも登場している。最寄り駅から徒歩圏内で、間取りや広さなどに条件はあるが、空き家オーナーは使っていない家を貸し出してリノベーション費などの初期費用を負担するだけで、2〜3年で賃料収益が出るモデル設計になっているという。テレワークやワーケーションが推進されるなか、今後ますますニーズが高まりそうだ。また、売りたい人が仲介業者を通さず、自ら販売活動を行うネット上のサイトもできている。親の空き家を再利用したいと考えている人は、ぜひ活用してみたらどうか。☆知っておきたい! 相続前後の処分術<1>「相続しないこと」も検討する<2>相続税の特例をうまく利用する<3>最新の空き家利用法を活用する■都心の一軒家が負動産になることも■都心の一軒家を相続したAさんの場合兄弟の意見の対立から、実家を売ることができずに時間だけが経過。空き家となった実家は日に日に老朽化していき……私の実家は今でもずっと空き家のまま放置されています。1年前に亡くなった両親が遺してくれたのは、都心に立つ小さな一軒家。私には兄がいるのですが、実家の相続について話し合いが続いており、合意に至りません。兄は生まれ育った実家に強い愛着を持っており、「長男である自分が実家を引き継ぐのが当然。いずれは老後をこの家で過ごしたい」と主張。一方、弟の私は「実家は両親のものだったのだから、兄弟で分けるのが法律的に妥当。実家を売却してお金に換えるべきだ」と考えたのです。意見の対立の原因には、お互いの経済的な事情の違いもありました。兄の家庭は子どもたちがすでに独立していますが、私のほうは私立中学に通う娘と、受験を控えた小学生の息子がいて余裕がありません。私は相続した遺産を教育費に充て、家計の負担を少しでも減らしたいのです。兄は「年間約30万円の固定資産税は全額自分が負担するから……」と言いますが、売りたい私からしてみれば、兄が負担するのは当然のこと。私は「家は古くても土地はそれなりの価値があるので、売れるうちに売却してしまおう」と兄を説得していますが、親の実家にこだわる兄は納得がいかず、話し合いは決着が着かないまま1年が経過。古びていく実家を横目に、もっと早くから話し合っておくべきだったと後悔しています。【注】上記は過去の事例をわかりやすく編集したものです。大切な親の実家。準備と心がけしだいで「負動産」にも、財産にもなるということを知っておきたい。
2021年09月19日※画像はイメージです少子高齢化で人口が減る日本。そんな中、築年数40年を超える分譲マンションは70万戸を超え10年後には2.5倍にもなるという。住人とともに高齢化するマンション。どんな問題が起きるのか、マンション管理士に直撃!■大問題(1)購入時と話が違う! 膨れ上がる修繕費どんなに素晴らしい高級マンションも、築年数を経過すると外壁や床材、給排水管などの設備も修繕工事を行う必要に迫られる。マンション管理士の松本洋さんは、「さらに12年に1度の割合で大規模修繕工事を行い、建物を竣工時の性能に回復させることや、防犯設備の強化。高齢化に配慮して手すりをつけるなどバリアフリー化の工事も必要になるケースもあります」修繕計画に従い、その費用を滞りなく住人が積み立てることが理想。だが現実はそうではない。なぜ計画どおりに進まないのか? その原因は、「分譲マンションを買う場合、修繕積立金や管理費の名目で修繕費を計上していますが、販売業者はその金額をわざと安く見積もってお得感があるように見せるんです」(松本さん、以下同)国交省では、修繕積立金月額を平米単価200円を推奨しているが、ネットなどで見るとその半分、3分の1の物件がざらにある。「以前からある話だが、最近はさらに酷くなり、修繕積立金が3倍から4倍に跳ね上がる。修繕積立金の金額に住人が反対し、安い積立金が継続するので築30年たったころ、お金が足りなくなってしまうのです」購入時に修繕費が安いからと飛びつく前に、落ち着いて確かめることが必要かも。■大問題(2)管理組合不在で終のすみかの老朽化「国交省の発表した『平成30年度マンション総合調査』によると、永住するつもりと回答したマンション居住者は過去最高の約6割に達しています。世帯主の年齢も高齢化が進み、70代以上の割合は2割超え。完成年次が古いマンションほど70代以上の割合が高くなっています」築年数40年を超え、大規模な修繕が必要となっている分譲マンションも、増加の一途をたどっている。「マンションおよび、住人の高齢化に伴い管理組合も役員のなり手がいなくなり、管理不全に陥ります。こうなると建物の老朽化に歯止めがかかりません」松本さんが受ける相談の中でも、管理不全が居住者のモラルの低下をもたらし、マンションがスラム化するケースも増えているという。「そうならないためにも、自分たちの住むマンションを“建て替える”“修繕工事を行い延命させる”などの選択に迫られます。しかしマンションの建て替えは、高額な建築負担金が必要なことから、建て替えを検討しているマンションも含め、これまで全国で280件足らずしか実施されていません」■大問題(3)住み替え先で後悔!? 隣人トラブルご用心今まで一戸建てに住んでいたシニア層が“終のすみか”として、マンションを選ぶケースも増えている。「高齢になると階段の上り下りや庭の手入れがおっくうになる。マンションならオートロック・防犯カメラもあるのでセキュリティー面でも安心。このような理由で、マンションを“終のすみか”に選ぶ人が増えています」しかしその際、気をつけなければいけないのが、マンション選び。一戸建てを処分して“終のすみか”とするのだから、慎重には慎重を期したい。「中古で購入するなら、ポイントは管理組合のよしあし。理事会の開かれる頻度や積立金の滞納がないか。さらに長期修繕計画や理事会の議事録も必ずチェックしてください」さらに内見する際、住人同士が挨拶を交わしているか、共用部分に物が散乱していないかなども重要だという。「引っ越した先でいちばん問題になるのが、隣人との人間関係。ゴミ出しや、子どもの足音などの生活音の問題など、戸建てとは違うトラブルになる要素はたくさんあります。居住者の意識の高さを知ることも、大切なことです」■大問題(4)所有者がいない!? 悲劇の“相続放棄”築年数の浅いマンションは買い手がつくが、老朽化したマンションは建物、給排水菅のメンテナンスがされてないケースも多く、買い手がつかないケースも増えている。「老朽化の進んだマンションの所有者が亡くなると、一般的には親族が相続するわけです。しかし相続しても修繕費用などの管理費用がかさんだり、固定資産税などの支払いが発生するため相続放棄されるケースが増えています」マンションの相続を放棄する場合、管理費や修繕積立金の滞納などの債権を相続する権利を持った人たちが、家庭裁判所に『相続財産管理人』の選任を申し立てる。相続財産管理人は、不動産会社などに物件を売却。そこで得たお金で管理費、修繕積立金の滞納分やローンの残額などを債権者に支払い、残ったお金は国庫に納めることになる。■大問題(5)修繕の先延ばしで結果、負担が増大!大規模修繕工事は、建物の立地条件、日常的な管理状態、社会的な要因などで個々のマンションによって異なるが、おおむね12年周期で行われる。「建築基準法で築後10年を経過した、外壁がタイル張りなどのマンションは、3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要があると定められていることから12年周期という数字が一般的になっています」気をつけなくてはいけないのが、費用の内訳。外壁だけでなく屋上の漏水、給排水管など共用部分は管理組合、専有部分は自己負担になる。「自己負担金を出したくないと、進めなければいけない工事を先延ばしにすれば老朽化は進みます。結果、エレベーターや機械式駐車場などの修繕と重なり、余計にお金がかかってしまうという状況にも」自己負担を渋っているうちに定年退職。収入は減り、部屋を担保に銀行などから、お金を借りなくてはならない場合も出てくる。「余計な借金を背負わないためにも、適切な長期修繕計画を作成し、それに基づいて算出した修繕積立金を積み立てておくことが必要なのです」大規模修繕工事は、多額の費用がかかるので敷地および、共用部分の大きな変更を伴わない場合は、出席組合員の議決権の過半数で修繕工事を実施するか中止するかを決めることができる。老朽化が進んでいない部分にお金をかけない選択もできるのだ。「建設材料や塗料も新しくなった今、18年に1度でいいのではないかという意見も出ています」■大問題(6)天国と地獄!? 管理会社の選び方管理組合員の高齢化と賃貸戸数の増加で、管理組合役員のなり手はますます少なくなるばかり。国交省の平成30年度マンション総合調査では、外部の管理会社に所属する、建築士や弁護士、マンション管理士など専門家を活用するマンションが4割を占めている。マンション管理士とは聞きなれない資格だが、「マンション管理組合へのコンサルタント業務がメインの国家資格で、2001年に創設されました」しかし、すべて管理会社任せでも問題があるという。「管理会社も営利目的でやっているので居住者側も意識を高く持っていないとダメです。やらなくてもいい工事を受けていたら、お金がかかって仕方がありません。修繕するに越したことはないですが、大規模修繕工事のときに一緒にやったほうが安くすむという考えも。共用スペースを実際に歩いてみて、今工事するべきか自分たちで見極めることが大切です」管理会社の言いなりではなく、自分たちで判断することも必要なのだ。■大問題(7)人気の高級タワマン修繕費もケタ違い!?あと10年たつと、築40年のマンションが今の2・5倍になり、老朽化マンションはさらに大きな社会問題になる。「こうした現状を見越して、去年、築年数のたったマンションの再生強化を目的にした法案が成立しました。地方自治体が資金計画や管理組合運営の状況を評価・判定して改善に努めさせる法案です。必要があると判断された場合は、各自治体が管理組合に助言・指導を行うことができます。さらにマンション管理士などの専門家を派遣することも可能です」また2000年前後から急増したタワーマンションも、大規模修繕が必要になる時期を迎えている。「豪華なプールやジム、最上階のラウンジなど、購入者の目を引きます。しかし、使用の有無にかかわらず管理費がかかるだけでなく、修繕時期が近づくにつれて、当初に予想していた費用を大幅に上回る可能性もあります」人気のタワーマンションにも押し寄せる老朽化の恐怖。あなたの“終のすみか”は大丈夫ですか!?まつもと・ひろしマンション管理士。NPO法人 マンションGPS専任講師。著書に『マンションの老いるショック! 』(日本橋出版刊)など(取材・文/KAPPO INLET GROOVE)
2021年09月09日不動産会社の選び方次第で3000万円も差が生まれることも「強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった」「解約には高額な違約金が発生すると言われた」消費生活センターによるとこういった自宅売却にまつわる相談が近年増加傾向にあるという。2020年に寄せられた事例の52%超は70代以上の高齢者からの相談だ。ある80代女性は、不動産業者から「マンションを2500万円で売ってほしい」という電話営業を受けた。「3000万円以下では売るつもりはない」と断ったが、後日、自宅に押しかけてきた営業員が「住み替えの物件を紹介するから心配はいらない」などと勝手に話を進め、書面に署名押印するよう言われた。内容を理解できないまま応じ、その場で手付金450万円を受け取ってしまったが、翌日思い直し、契約をキャンセルしたいと電話したところ、「キャンセルするなら約900万円を支払ってほしい」と言われて愕然としたという。このように、迷惑な勧誘や長時間の勧誘によって消費者が望まない契約をしてしまうトラブルは多い。押し売りされた場合と異なり、消費者が売り手になる場合は宅地建物取引業法に定めるクーリングオフは基本的にできない場合が多く、契約解消に高額な違約金が発生することも。■会社次第で「3000万円」の差もまた、売却した物件にそのまま住み続けることができるという「リースバック契約」にまつわる相談も多い。ある60代の男性は、不動産業者の来訪で「住んでいるマンションに建て替えの予定があり、このまま住み続けていると高額の費用がかかる」と真偽不明の説明を受けた。「今なら500万円でマンションを売却でき、その後も同じ場所を賃借して住み続けられる。建て替えにかかる諸費用を負担せずにすむので得だ」と言われて、そのまま売却契約をしてしまった。ただ、建て替えが本当にあるのかも不明で、さらに数年たてば払った賃料の総額が売却金額を上回ってしまうことに気づき、契約したことを後悔しているという。特に高齢者の場合、次に住む場所が探せなかったり、解約の際に違約金を支払うことで生活資金が少なくなったりするなど、今後の生活に大きな支障が生じる可能性も。安易な契約はしないよう消費生活センターも注意喚起を進めているところだ。とはいえ、コロナ禍の社会不安のなか、親の住まいや自分がシニア期に暮らす場所について悩む人も多いだろう。総合不動産会社ミライアスの山本健司さんによると、同社に寄せられた不動産の相続に関する相談は、昨年比で3倍ほどにもなっているという。「相続した物件があるものの、もっと手入れのしやすいコンパクトな家に住み替えたいという高齢の方や、今後相続が発生したときのために住宅まわりのことをきちんと整理しておきたいという方からのご相談も増えています。また、親が認知症になりはじめてしまい、慌てて今後の対策を始めた方も多いです」(山本さん、以下同)先述した詐欺まがいの強引な契約以外にも、売却を仲介してもらう不動産業者とのミスマッチによって「大損」をするケースも考えられる。「不要に契約を急がせる不動産業者は残念ながら今でも存在します。不動産業者から“今なら1億円で買い取れる”と言われたという物件売却の相談を受けたことがあります。物件の弱点になっていた近隣トラブルなどをきちんと解消し、売り出し条件をしっかり整えてから改めて売却先を探したところ、1億3000万円で売却できた事例となりました」このように、不動産会社の選び方次第で3000万円の差が生まれることも。マイホーム売却で損をしないポイントと段取りを山本さんに詳しく教えてもらった。「不動産売却で最も重要なのは、頼りになる不動産会社を選べるかどうか。名前の知られた大手なら絶対に安心というわけではなく、地元で厚い信頼を得ている中堅の業者や、高い志や発想力で勢いのある中小の業者など、不動産会社といってもいろいろなバリエーションがあります」不動産会社を選ぶうえで特に気をつけたいのが「両手仲介」に対する考え方だという。「ひとつの物件の売買取引で、1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を仲介することを両手仲介といいます。これに対して、売り主と買い主のそれぞれに別の不動産会社が入って仲介を行うことは、片手仲介と呼ばれています」両手仲介ができれば、不動産会社は売り主と買い主の双方から仲介手数料を貰うことができる。そのため、積極的に両手仲介を狙っていく不動産会社は多い。なかには両手仲介に固執するあまり、ほかの不動産会社に対して売り物件の情報を故意に隠したり、他社からの購入希望を握りつぶしたりといった「囲い込み」が起きてしまうことも。どちらも広く買い手を探したい売り主にとっては背信行為だ。■いい不動産業者の見極め方「できるだけ高く売りたい売り主と、できるだけ安く買いたい買い主という、利益が相反する二者を一度に抱えることは、初めから無理がありますよね。ときには買い主の希望を優先して、売り主に物件の値下げを“助言”するようなことも考えられます。片手仲介であれば売り主の利益だけのために忠実に動いてくれるので、片手仲介に応じてくれるか確認することは、信頼できる不動産会社かの判断材料になります」多くの人は、住所や築年数などの情報で価格をざっくりと査定する「簡易査定」を頼む段階で初めて不動産会社と接触することになる。近年ではインターネット上で物件の情報を打ち込むだけで、複数の不動産会社による一括簡易査定を行えるサービスもよく利用されているが……。「不動産会社が無料の簡易査定を行うのは、そのまま自分の会社と売却のための媒介契約をしてもらいたいため。一括査定をしたあと、複数の会社からのしつこいセールス攻勢に悩まされるというケースも後を絶ちません。よくわからない一括査定よりは、大手、中堅、中小といった毛色の違ういくつかの会社を自分で選び、それぞれで簡易査定をすることをおすすめします」よく「この物件を買いたいお客様がいます!」といったチラシがポスティングされていることもある。こういった定型の謳い文句を使ってくる業者にも注意が必要だ。「媒介契約をとるための“撒き餌”であることが多く、本当に買いたい人がいたとしてもその不動産会社で有利な売却ができるかは別問題です。簡易査定のあとにも“実はもう購入希望のお客さんがいますよ”とささやかれて、媒介契約を急かされることもあるかと思いますが、あまり真に受けないほうがいいでしょうね」簡易査定をすませたら、さらに2~3社に絞って、訪問査定を依頼することになる。実際に物件を見てより詳細な査定額を出してもらう流れだが、初めて営業担当者と対面する機会にもなる。この担当者との相性もとても重要だ。「いい不動産業者というのは、“会社と担当者の掛け算”で決まってきます。その会社が両手仲介をせず、顧客目線の対応をしてくれる会社なのかはもちろん大切ですが、対応してくれる担当者が自分と同じ方向を見てくれているかも大事です。どちらかひとつでもマイナスがあれば、結果として損をするような売却になってしまいがちです」信頼できそうな不動産会社でも、担当者の経験が不足していたり、有能なあまり顧客を抱えすぎて対応がおざなりになるケースもある。「売り方のプランニングで、なるほどと思えるような提案があったり、気をつけるべきところを丁寧に説明してくれたりと、親身に対応してくれるのがいい担当者。売却完了まで長く付き合うことになるので、相性が合わないと感じるならば、担当者を変えてもらうことも検討しましょう」訪問査定が終わると、いよいよ不動産会社と媒介契約を交わすことになる。「大きく分けると、複数の会社に売却活動を依頼できる“一般媒介契約”と専属の1社のみに依頼する“専任媒介契約”があります。専任媒介契約は、販売活動の進み具合を定期的に売り主に報告する義務があり、細やかにコミュニケーションをとれる環境も整うため、後者の契約のほうが売り主にとってはメリットが大きいと思います」とはいえ、1社だけの専任契約では、物件情報を拡散して買い手を探すのに限界があるのではないだろうか。「ほぼすべての不動産会社が利用する業者専用のレインズというデータベースがあり、専任媒介契約はそのレインズに物件情報を登録する義務が生じます。登録情報をもとに別の不動産会社も広く買い手を探せるようになっているので、物件情報の囲い込みを防ぐためにも、契約後はレインズへの登録証明書を必ず確認させてもらいましょう」■所有物件の相場を知る重要性媒介契約後は、必要に応じて測量や土地境界の確定、確定測量図をつくるなど、売り出しまでに担当者との細かい打ち合わせが生じる。「土地境界の確定には隣接する土地所有者全員の承諾が必要で、その交渉を遅滞なく進めることが重要になってきます。また、例えば敷地内に防火水槽などがある場合、それが買い手にとっての懸念点にならないよう、まず取り出してから売り出しましょうといった物件の弱みを解消できる戦略を提案できるかどうかも、担当者の力の見せどころです。これらの内容をもとに売り出し価格を決めますが、中古物件には価格の交渉もつきもの。ある程度の値引き価格も想定したうえで、納得のいく金額を相談しましょう」売り出し価格が決まれば、販売活動がスタート。内覧の申し込みもあるため、物件の掃除なども欠かせない。「内覧は、とにかく第一印象が重要。室内の照明は全部屋つけておき、明るいイメージを演出するだけで印象はガラリと変わります。特に見学者様が気にされる水回りをきれいにしておくと好印象です。引っ越しの準備も兼ねて、家財道具の整理や掃除を進めておくことは大切ですね」購入希望者が現れたら、契約条件を調整し契約の準備に入る。必要な書面の確認や手続きなど、煩雑な作業も多いため、ここでも担当者のサポートが不可欠だ。「売却は、価格・期日・諸条件の3つをしっかりと納得したうえで決断する必要があります。価格はもちろん、引き渡し期日が買い手・売り手の双方で折り合うか、エアコンなどの設備を残してほしいといった細かな諸条件を受けるかどうかなども、売買成立に直接関わってきます」こうして流れを追ってみると、やはり最初の不動産業者選びが命運を分けるといっても過言ではない。これまで数々の売り主と対峙してきた山本さんに、最後にお得にマイホームを売り抜ける人の特徴について教えてもらった。「自分の物件の相場を知っておくことは重要です。基本的な知識を身につけている賢い売り主さんには、ウソやごまかしは通じないので、“プロとして満足してもらえるように頑張ろう”と担当者も奮い立つものです。また、全体のスケジュールに余裕を持って売却を考えているかどうかも大切。売却を焦って足元を見られないように、計画的に進めることが重要です」ライフプランを考えるうえで重要なマイホーム。余裕を持った計画こそが、何より損をしないコツとなる。流れを知っていればダマされないマイホーム売却成功のダンドリ1.不動産の売却を考え始めるいつごろ売りたいのか、費用や転居先はどうするかも考えておく。2.不動産の相場を調べる不動産売却のポータルサイトで似た物件の売り出し価格や成約価格を確認。3.不動産会社に査定を依頼3~5社に簡易査定を依頼して結果を比較。査定は無料が多い。そこからさらに2~3社に絞って、実際に物件を見せる訪問査定を依頼。4.不動産会社を決定不動産会社を決め、タイムスケジュールを含めて販売計画を立てる。測量、境界の確定等、図面や書類がない場合は作成する。売り出し価格を決め物件情報をレインズに登録し買い手を募集。5.購入希望者と売買条件の交渉内覧に対応。買い手が物件を気に入った場合は、後日、購入申込書が提出される。詳細な物件情報を購入希望者に開示し価格や諸条件について話し合う。契約日と物件の引き渡し予定も相談。6.売買契約の成立買い手が決定したら売買契約を結ぶ。売却代金のうちから手付金が支払われる。7.決済の準備をする決済とは売買契約を完結すること。必要書類等は早めに準備を。物件の明け渡しと引っ越し準備を並行して進める忙しい時期。8.決済日の各種手続きを行う鍵と所有権を買い手に引き渡し、所有権が移転。売却代金の残金を受け取り、ローンが残っていたら一括返済。不動産会社に仲介手数料を支払う。不動産売却による譲渡所得は確定申告が必要。物件取得時と譲渡時の契約書や領収書が必要となるので、きちんと保管を。おすすめサイトレインズ・マーケット・インフォメーションwww.contract.reins.or.jp/国交大臣指定の不動産流通機構が運営する、一般向けの不動産情報サイト。各地のマンションや戸建て住宅の物件情報や、直近1年の成約価格が閲覧できる。まずは自宅に近い物件の成約価格を確認土地総合情報システムwww.land.mlit.go.jp/webland/国土交通省によるサイト。土地、土地と建物、中古マンションの取引情報が、地域や物件情報をもとに検索できる■お話を伺ったのはーー山本健司さんミライアス株式会社代表取締役。業界最大手2社でNo.1の営業実績を経て、独立しミライアス(株)を創業。顧客の利益を最優先する「スマート仲介」を打ち出し、不動産業界に新風を吹き込む。(取材・文/吉信 武)
2021年08月28日子なし夫婦が避けては通れないのが「相続問題」です。子なし夫婦が残した遺産は、誰が受け取るのでしょうか。今回は、子なし夫婦が考えなければならない問題として、遺産の相続先や遺言書の活用方法を解説します。子なし夫婦の遺産は誰に相続される?本来相続すべき、子どもがいない夫婦が残した遺産は、誰に渡るのでしょう。ここでは、相続人の決まり方や配偶者が存命だった場合に渡される遺産の割合を解説します。遺産は法定相続人の順位に沿って決まる子どもの有無に関わらず、被相続人の遺産は「法定相続人の順位」によって決まります。そして「配偶者」は常に相続人となります。 法定相続人の優先順位で最も高いのは、子どもです。子どもが既に亡くなっている場合は、孫に相続されます。2番目に優先順位が高いのは、親や祖父母、そして3番目に兄弟姉妹や姪・甥と並びます。遺産の相続権は、基本的にこの優先順位によって決められているのです。配偶者が存命な場合、3分の2が渡される配偶者は常に相続人になると前述しました。では子なし夫婦の場合、配偶者にはどの程度の遺産が入るのでしょうか。以下を参考にしてください。「配偶者」のみの場合は全額「配偶者」と「両親」に相続する場合、配偶者は3分の2、両親は3分の1「配偶者」と「兄弟姉妹」に相続する場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1子なし夫婦は遺言書を活用しよう配偶者が既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹や甥、姪などの遠い親戚が相続します。しかし、なかには「あまり会っていない遠い親戚へ遺産が渡るのは嫌だな」と感じる方もいるでしょう。その場合は、言書の作成がおすすめです。遺言書は法定相続分より優先遺言書に書かれた内容は、法定相続分より優先されます。そして、遺言書は遺産を誰にどれだけ残すのか、自由に決めることができます。たとえば遺産を全額、配偶者へ残したいという希望も、遺言書を活用すれば可能です。家族以外に遺産を残したい場合でも同様。法定相続人の第1優先である子どもがいない夫婦の場合は、生前から遺言書を作成し、相続人を決めておくとよいでしょう。遺言書を作成するときの注意点遺言書の作成には注意点もあります。法的に認められる遺言書を作成しなければならないという点です。遺言書作成の際は、記入すべき必須事項があります。法的効力をより確実なものにするなら、弁護士に相談するのも良いでしょう。遺留分の扱いには注意しよう!ある程度の自由が認められた遺言書ですが、「遺留分」という例外もあります。ここでは遺留分とは何なのか、知っておくべきポイントなどを解説します。そもそも遺留分って?相続人に与えられる最低限の権利が「遺留分」です。遺留分の対象となるのは、配偶者や子ども。被相続人が残した財産は、家族の協力があってこそのものという考えに基づき定められています。遺留分は遺言書をつかっても自由に相続できない遺言書は自由に作成することができますが、遺留分は法律上保障されており、対象外です。どのような遺言書を書いても、一定額は配偶者や子どもに相続されます。子なし夫婦は元気なうちに、相続について考えよう!子なし夫婦の場合は、相続について元気なうちからしっかりと考えておくことが重要。年をとって身体の自由が利かない場合や、病気で入院した場合などは、弁護士の元へ相談しに行くことも難しくなります。夫婦がどちらも元気なうちに、相続問題は解決しておくのがおすすめです。
2021年06月28日小林亜星さん「直前までお元気だったそうで。亡くなる前日の夜も、家でお酒を飲みながら、焼き鳥と枝豆、トウモロコシなんかをつまんでいたって……」(古くからの知人)5月30日に亡くなっていたと公表された作曲家・小林亜星さん。1961年にデビューして以降、レナウン「ワンサカ娘」やサントリー「夜がくる」、日立「この木なんの木」に明治「チェルシー」……数々の名CMソングを送り出した希代のヒットメーカーだった。かつて亜星さんと仕事をした音楽ライターの中村俊夫氏は、その死を惜しむ。「亜星さんのすごいところは、子どもから大人まで“どこかで一度は彼の曲を耳にしたり口ずさんだりしたことがある”ということ。童謡『あわてんぼうのサンタクロース』も彼の作品だし、アニメソングもたくさん書いた。都はるみさんの『北の宿から』でレコード大賞もとった。大御所作曲家は何人もいますが、これだけバラエティーに富んだ作品をこなしたのは亜星さんだけです。本物の天才でした」活躍は音楽だけにとどまらない。1974年からスタートしたドラマ『寺内貫太郎一家』では、“体重110キロ”という風貌を買われ俳優に。頑固親父を熱演した同作は平均視聴率30%を超えた“怪物ドラマ”として今も語り草だ。「亜星さんは寺内貫太郎と同じように頑固なところもあってね。天下のJASRACに反旗を翻して脱退したり。酒を飲みに行けば2、3軒はしご。朝まで飲んで、明け方に寿司をつまんで帰るんです。80歳近くになってもそうやって元気に飲み歩いていましたから」(音楽関係者)■参列を許されなかった次男誰からも愛された亜星さん。いちばん驚き悲しんでいるのは、マネージャーとしても亜星さんを支えてきた妻だ。「30日の朝、起きてトイレに入ったところでドーンと倒れちゃったんだって。奥さんが亜星さんを起こそうとしたんだけれど、あの身体でしょう?奥さん1人ではどうにも動かせなくて、ご近所の友人夫婦に助けを求めて、どうにか救急隊を呼んで搬送してもらったんだけれど、そのまま……」(前出・知人)葬儀は近親者のみで執り行われ、亜星さんが亡くなったことは長年付き合いのあった近所の人々にも伏せられた。「病院への搬送を手伝ったご夫婦だけは参列して、あとはご家族だけで“静かに送り出してあげたいから”と。“俺の葬式はやらなくていい”という亜星さんの生前の意向もあったそう」(同・知人)だが、その葬儀にひとりだけ参列を許されなかった家族がいた。亜星さんの次男・小林朝夫氏である。朝夫氏は1982年に離婚した前妻との間にできた子どもで、特撮ヒーローものに出演経験もある元俳優。芸能界引退後は塾講師に転身し数冊の著書も出版……していたまではよかったが、いつからか、自称“特別な力を持った地震研究家”としてブログを開設。2011年には“東日本大震災を予言した”と話題になった。私生活では結婚、事実婚を何度も繰り返し、DV騒動まで起こしているといういわくつき……なんとも波瀾万丈な人物。「亜星さん、朝夫さんとは絶縁状態だったんです。そうなる前から、朝夫さんは亜星さんの頭痛の種だったんですが、例の“事件”の後、亜星さんが勘当したんです。今回も朝夫さんには“亜星さんが亡くなった”という連絡だけで、葬儀には呼ばなかったそうです」(同・知人)“例の事件”とは朝夫氏が2013年に起こした淫行事件。青森県内のアパートの一室で女子高生にみだらな行為をした罪で逮捕、起訴されている。「その弁護士費用や60万円の罰金、被害者への賠償金を立て替えたのが亜星さんだったって。“手切れ金”代わりにね」(同・知人)■「人生の終止符です」雪解けも叶わぬまま父を失った息子は何を思うのか─。朝夫氏のブログをのぞくと、今も“地震予知”や“人類選別”といった物騒な投稿が続く中、5月31日だけ《ボクの中の昭和が終わりました》と題する意味深な文章が。《長かった、昭和の時代がおわりました。人生の終止符です。今日から再スタートを切ります》そこで週刊女性は、朝夫氏が暮らしているという長野県の八ヶ岳の麓へ向かった。彼は2006年ごろに東京から妻と2人の娘、家族4人でこの地に移り住んでブロガー活動の傍ら塗装業を営んでいる、ということなのだが……。「朝夫さんはもういないよ。もうずいぶん前に一家離散です。朝夫さんのことは思い出すだけでも嫌だねぇ」そう近隣住民が苦笑する。「仕事もロクにせず、いつもブラブラしていました。代わりに奥さんが駅の売店でアルバイトをして生活を支えていたんだ。でも、こっちに来てから3、4年もたつと奥さんがストレスで下血したり円形脱毛症になったりね」原因は朝夫氏の女性問題。当時、一家の隣に住んでいた別の住民も声をひそめる。「沖縄と隣町に愛人をつくっちゃってね。隣町の愛人との間には子どもまでできちゃったのよ。それで奥さんは上の子の大学進学のタイミングで家を出ていったんだけれど、下の子はまだ中学生だったからこっちに残ったんだ」朝夫氏は愛人だったその女性と籍を入れ、下の娘、そして新たに生まれた幼子と4人で生活を始めた。「だけど、朝夫さんは下の子を同じ敷地の“離れ”にたった1人、ほったらかしにしちゃったの。朝夫さんはたまに箱買いしたカップラーメンを差し入れするだけ。あまりに不憫でウチで食事を食べさせたことも何度かあったよ」(同・近隣住民)■「遺産が4億円はある」朝夫氏はそのころ、周囲にこう吹聴していたという。「“親父は金持ちだから遺産が4億円はある”って。でも前の奥さんと一緒のときには、亜星さんもちょくちょく遊びに来ていたけれど、その愛人が来てからはピタッと姿を見なくなった。例の事件が起きたのはそれからしばらくしてですよ」(同・近隣住民)朝夫氏がどうやって4億円という金額をはじき出したのかは判然としないが、亜星さんの6000曲にも及ぶ作品の印税収入を考えれば、ありえない話ではない。そして確かに、絶縁されていたとしても法律上、朝夫氏の遺産相続の権利は保証されている。冒頭の知人は嘆息する。「亜星さんも“家族の争いになるくらいなら何も遺さないほうがいいんだ”とよく言っていた。天国の亜星さんが悲しむようなことにならないといいけれど……」骨肉の争いは世の常か─。
2021年06月22日’86年の作家デビューから70代に至る現在まで、一貫して「ひとりの生き方」を書き続けている松原惇子さん。ひとり身女性を応援するNPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表でもある松原さんが、これから来る“老後ひとりぼっち時代”の生き方を問う不定期連載です。※写真はイメージです第20回ひとりで老いるのは大変だNPO法人SSSネットワークも今年で25年目を迎え、80歳以上の会員が全体の17%を占めるようになった。団体を立ち上げたとき50歳だったわたしも74歳になった。あまり実感がないが、社会的には高齢者枠に入ったことになる。「ひとりは気楽でいい」と豪語してきたわたしだが、年々、トーンダウン気味だ。なぜなら、同じひとりでも、若いときのひとりと、老いてからのひとりは、別物だからだ。90歳に近づいた会員を見ていると、ひとりで老いるのは、そう生易しいものではないと、気づかされる。■相続人がいなければ遺産は国庫に持っていかれる89歳になる花子さん(仮名)は、地方公務員として定年まで働き、その後、夢だった喫茶店を経営する陽気でおしゃれな女性だ。現在はコロナを機に店をたたみ、悠々自適な老後生活を送っている。イベントで彼女の姿を見かけるたびに、「まあ、なんてチャーミングな方なの。80代でもこんなに素敵にいれるのね」とわたしは密かに勇気づけられていた。しかし、明るいのはいいが、子どもも兄弟姉妹もいないひとり身なのに、遺言書を書いていないと知り、驚かされた。彼女のようにまったくのひとりで相続人がいない場合、遺言書がないと、ひとりで頑張って働いて貯めた預貯金や不動産などの全財産を国庫に持っていかれるからだ。ちなみに産経新聞の報道によれば、国が引き取った遺産の額は2019年度は603億円にのぼり、わずか4年間で約1・4倍に急増しているのだという。このことを話すと「それだけは絶対に嫌だ!ガースーなんかにあげたくない!」と本気で声を荒げたので、「でしょ。だったら、遺言書だけは書いてくださいね」と念を押した。後日、遺言書の書き方の見本まで付けて渡したが、本当にわかっているのかどうか。わたしの前では「はい。わかりました。」としっかりと答えるが、家に帰ったら忘れるのではないかと思われた。90歳近くになると、本人にその自覚はなくても、軽くネジが緩んでくるのを見ているからだ。そして、その緩みは1年ごとに増す。しかし、財産に関することをアドバイスするのは難しい。あまり詳しく聞いたり、熱心に話すと、遺産が欲しいように思われる。頼まれたわけではないので、放っておこうか思っている。しかし彼女は、もうすでに10年も会っていない知り合いから生活費に困っていると呼び出され、だいぶあげたようだ。相手は交通費もなかったのか、花子さんはお金を持っていそいそと出かけたという。思うに、老いると人からの誘いもなくなり、寂しくなるので、そんなに親しくない人からでも誘われると、うれしくなるのではないかと。さらに、わたしが聞いてもいないのに、「年金が使い切れないの」とうれしそう。そんなことを人に言うなんて、自分からお金を差し出しているようなものだ。昨今は、物騒なご時世だ。ひとり暮らしのお年寄りの寂しさにつけ込んでくる若者もいると聞く。うちの90代の母もアポ電詐欺に引っ掛かったことがあるが、もしかして、ひとり暮らしで寂しかったからなのかなと、今になると思う。花子さんの話を聞いていると、すでに巧みに彼女に近づいている近所の人もいるようだった。危ないと思うが、根拠がないのでそこまで踏み込んでいいものか否か。■養女をもらい財産を相続させる人もおひとりさまが多いSSSネットワーク会員の中には、85歳ぐらいになると、養女をもらい自分の財産を相続させる人が出てくる。養女になる人は財産を全て相続できる。一方、ひとり身の高齢者は自分の面倒を見てもらえる。そこでお互いに握手というわけだが、実際はそう簡単ではなさそうだ。実際に養子縁組をした93歳の方に「これで安心ですね」とわたしが言うと「いろいろありますよ。でも、お世話になるのだから我慢しないとね」と小さく笑った。養女になる人を悪く言う気はないが、お金の臭いがプンプンするのはわたしの気のせいか。ひとりで気楽に生きてきた最後の最後で、欲深い他人の標的になるとは、誰が予測できただろうか。ひとり暮らしのある高齢女性が病気で入院していたとき、どこで聞きつけたのか知らないが、大昔の同級生がひょっこりお見舞いに来て、1000万円あげた話も聞いた。いくら気丈な人でも、人との接触もなくひとりで暮らしていると、言い知れぬ寂しさに襲われるのかもしれない。ましてや、老いて身体が弱ってくればなおさらだ。いくら余るほどの年金をもらっていても、使えないほどの預貯金があっても、心の寂しさを埋めることはできない。花子さんには言わなかったが、あなたの預貯金をコロナ禍で生活に困っているシングルマザーに寄付してあげたらと心の中で思った。このままだと、ガースーのところに行ってしまう。ああ……まったく、バランスの悪い世の中だ。90歳前後の方たちを見させていただくうちに、今は“ひとり孤独を愛す”などとかっこつけているわたしだが、果たして、その年になったときにも同じ心境なのか。まったくもって自信がない。花子さんの遺言書のことは、これ以上かかわらずに、民生委員につなぐつもりだ。結果的に彼女の財産がガースーに行くことになっても、他人のわたしがやきもきすることではないし、それはそれで彼女の人生なのだから、尊重しようと思う。世の中にはいろいろな人がいる。「立つ鳥跡を濁さず」ではないが、遺品整理人に死後の片づけを依頼して律儀にあの世に旅立つ人もいるかと思えば、何もせずに、ただ飲んで食べて、お金も残さずにあの世に旅立つ人もいる。どっちにしても、終点は「死」なので、自分の好きなように生きるのが一番。<プロフィール>松原惇子(まつばら・じゅんこ)1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSSネットワーク代表理事。著書に『老後ひとりぼっち』、『長生き地獄』、『孤独こそ最高の老後』(以上、SBクリエイティブ)、『母の老い方観察記録』(海竜社)など。最新刊は『わたしのおひとりさま人生』(海竜社)。
2021年05月30日行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は借金夫に見切りをつけ、熟年離婚をしようか悩む妻の実例を紹介します。※写真はイメージです■メディアで報じられない熟年離婚の現実女性目線の熟年離婚。このことをテーマにした記事を目にしたことはありますか?あらゆるメディアが何度となく取り上げており、すでに語り尽くされた感があります。わざわざ今、取り上げる価値はなさそうですが、本当にそうでしょうか?そんなことはありません。過去の記事は現実味に欠けるものが多いと感じます。例えば、まとまった額の退職金、住宅ローンを完済した持ち家、生活に困らないだけの年金。そして2年前に老後2000万円問題が注目を集めましたが、十分な残高の預貯金。これらを持っている夫に対して長年の恨みつらみ、不満や鬱憤を溜め込んだ妻が三行半をつきつける。精神的苦痛の慰謝料、内助の功の財産分与、そして老後の生活費として財産の半分を請求するというのが規定路線ですが、そんなことが可能なのでしょうか?熟年に限らず、離婚する夫婦は金銭問題を抱えている場合が多いです。例えば、齢60を超えても賃貸に住み、退職金が見込めない会社に勤めており、微々たる年金しかもらえない。そして残っているのは少々の貯金だけ。それが熟年離婚の現実です。無理に離婚したせいで金銭的に困窮し、生活が成り立たないようでは困ります。あえて何もせずに添い遂げる(途中で夫が先に亡くなるかもしれない)という選択肢もあるでしょう。このような場合、別れを切り出すべきか。それとも我慢してやり過ごすかは離婚と死別の場合をシミュレーションする必要があります。このように人生の岐路に立っているのは今回の相談者・千代子さん(59歳)。夫と40年間も連れ添ったのに退職金は手元に残っておらず、遺産を除き、貯金がないようなのです。一体、何があったのでしょうか?<登場人物(年齢などは相談時点、名前は全て仮名)>夫:哲也(63歳・会社員・年収1200万円)妻:千代子(59歳・ヨガ教室経営・年収22万円)☆今回の相談者義父:俊三(88歳・年金生活)哲也の父親義妹:孝美(60歳・専業主婦)哲也の妹■63歳の夫が会社から退職勧告「本当は1年でも長く勤めてほしいんですが、こればかりは……」千代子さんはため息をつきます。夫の雇用形態は1年毎の年俸制で、現在の年収は1200万円。今までは毎年更新されており、終身雇用ではないとはいえ、夫にやる気がある限り、ずっと更新され続けると千代子さんは思い込んでいたようです。しかし、昨年は新型コロナウイルスの影響で業績が悪化。そして年初には恐れていた事態に発展。夫が会社から退職勧告を言い渡されたのです。このままでは仕事と収入、そして会社員としての社会的地位を失いかねません。筆者は「今は高年齢者雇用安定法(第9条)があるので、会社は本人が望んでいる場合、65歳まで雇用しなければならないんですよ」と励ましたのですが、千代子さんは「先生は外資系をご存じですか?」と返してきたのです。千代子さんいわく、「日本という国はお年寄りに優しい」という幻想は通用しない世界らしく、社員が会社と揉めた場合、会社は個人を全力で潰しにくるそうです。「何もできずにクビになった会社の人を何人も知っていますよ」と言います。筆者が「不当解雇なら和解金を請求できる」と口を挟む間もない感じで。しかし、千代子さんは筆者に相談したかったのは夫の仕事ではなく「夫との離婚」。前々から離婚計画を立てており、今か今かと手ぐすねを引いて待っており、今がその好機ではないか。そう思い立ったのです。40年間の結婚生活は「まさか」の連続だったと千代子さんは言います。■酔った勢いで消費者金融のATMで借金まず1つ目の「まさか」は夫の裏切りです。夫は無口で無表情、仕事を家庭に持ち込まない主義。いわゆる抱え込むタイプで弱音をこぼさないのですが、その性格が仇となりました。勤務先の会社は夜討ち朝駆けが当たり前の外資系。終電で帰宅し、始発で出勤する過酷な生活により、年収は最高で2500万円に達したものの、それは「一歩、間違えたら転落する」という過大なストレスやプレッシャーがかかり続ける環境下に身を置くことと引き換えでした。そんな夫が頼ったのは酒。疲労困憊の身体に酒を流し込むことで不眠不休に近い異常な生活をかろうじて維持できたのですが、酒浸りの日々は長くは続きません。酔った勢いで消費者金融のATMへ行くように。そしてカードで借金をし、2軒目、3軒目とハシゴ酒を繰り返したのですが、どんなに酔いつぶれても仕事に出かけるので千代子さんは気づかなかったようです。当人は借りた記憶がないので返済せずに放置。筆者が「どうして借金がわかったんですか?」と尋ねると、千代子さんは「うちに催促の葉書が届いたんです」と振り返ります。借金はわずか3年で520万円に膨れ上がったのですが、夫が思いついたのは退職金を使った一括返済。新卒で就職した会社を退職し、借金を帳消しにしたのですが、そのせいで悪しき習慣が身についてしまったようで……。夫は反省せず「また退職金で返せばいい」と軽んじているから、アルコール依存と借金癖はそのまま。酒に飲まれる夫も昼間の仕事ではこの上なく優秀でした。そのため、転職市場では引く手あまたで、夫はまた別の会社に就職。その後も激務を酒の力で乗り切り、多額の借金を作り、また退職金欲しさに退職するという場当たり的な生き方を続けたのです。筆者は「これが多重債務者の特徴なんです。同じことが起こっても、また誰かが何とかしてくれると思うから破滅するまで終わらない」と解説すると千代子さんは深くうなずきます。結局、5回も転職し、4回も退職金を受給したにも関わらず、手元に1円も残っていない現状。もちろん、千代子さんはトラブルのたびに「何度、同じことを言ったらわかるの!」と責めたものの、夫は「俺の稼いだ金を何に使おうが自由だろ!」の一点張り。「借金は稼いだお金じゃないでしょ?」と思いつつも、退職金は夫のお金なので、それ以上、何も言えずに夫婦喧嘩は終了。そんな千代子さんが当てにしていたのは義父(夫の父)からの相続でした。■義父を引き取って介護することに2つ目の「まさか」は義父の裏切りです。義父が転倒して腰を圧迫骨折したのは4年前。これは緑内障や加齢黄斑変性と言う目の病気で歩行が困難なことが原因でした。義父と仲がいいのは義妹ですが、親戚会議では何も発言せず……すでに義母とは離婚しているため、消去法で夫が引き取ることに。しかし、義父を介護するのは夫ではなく千代子さん。「家に人を呼ぶな」と言う頑固な夫のせいでヘルパーにも頼めず、食事や入浴、排泄など一切の介護を一身に背負わされたのです。義父は衰えたとはいえ体重70kg超の成人男性でしたから、40kg少々の千代子さんが介助するのは並大抵のことではありません。特に床にはいつくばって義父の尿を拭くのは屈辱的。千代子さんは心療内科で適応障害の診断を受けるほどでした。千代子さんが義父との同居を承諾し、介護を担当したのは夫の実家が農家で土地持ちだったからです。特に夫が本家の長男なのが大きなポイントです。なぜなら、先祖代々の遺産は長男が総取りするのが農家や地主の家系では主流だからです。次男や三男、長女などに財産を分け与えれば、その分だけ本家の財産は減りますが、財産が魅力的な金額でなければ、本家の土地や家屋、そして墓を守る人がいなくなってしまうという背景があります。つまり、法定相続分(法律で決められた相続分)とは別の古い考え方が残っている稀有な地域なのです。借金まみれで貯金はなし、退職金を食いつぶす夫ですから、遺産相続が終わるまで我慢して、まとまった額の遺産が入れば、十分な慰謝料をもらい、離婚しよう。千代子さんはそう考えていたのですが……。■義父の遺言には信じられない内容がしかし、千代子さんの献身が報われない事態に発展。2年前、義父が入浴中にヒートショックを起こしたのです。救急車を呼んだのは千代子さんでしたが、結局、搬送された病院で死亡を確認。そして後日、葬儀場で義妹が夫に「遺言がある」と耳打ちしてきたのです。後日、郵送で届いた遺言のコピーには信じられない内容が。「孝美(義妹)にすべて任せる。全財産を譲る」と。義妹が義父の元に顔を出すのは3か月に1回程度。千代子さんは「これだけ一緒にいれば私に不満の1つや2つあったのかも……」と後悔しますが、近くの嫁より遠くの娘のほうがかわいいだなんて。目が不自由な義父が残すことができるのは公正証書遺言。これは公正役場を通す方法ですが、筆者は「目が見えなくても遺言は作れるんです」と言い添えました。具体的には公証人が義父の話をもとに証書を作成(民法969条2)。義父に読み聞かせ、納得した場合、公証人が代わりに署名することが認められています(同法969条4)。そして公正役場へ電話で確認したところ、手続きを行ったのは義妹だったことが判明。義父は過去の恩を仇で返してきたのです。千代子さんは「ひどすぎます!憎くて仕方ありません」と狼狽します。そこで筆者は「遺留分はどうなったんですか?」と尋ねましたが、「孝美さんはああいう性格なので大変でした」と答えます。夫は義父の直系卑属なので遺留分(どんな遺言を作成しても残る相続分)が認められており、今回の場合、遺産全体の4分の1。義妹いわく遺産の合計は4000万円。義父が所有していた土地は農地ばかりで売りたくても値がつかず、実家の建物は築40年のボロ家。遺産に計上したのは実家の土地と預貯金だけでした。10割欲しい妹と10割渡したくない兄(夫)。4000万円をめぐる争いは1年にわたり平行線のまま。業を煮やした夫が家庭裁判所へ遺産分割の調停を申立。「訴訟でも認められないよ」という調停員の叱責が効いたのか、妹はついに観念。「妹が兄へ1000万円を支払う」という内容で調停が成立したのです。こうして夫が4000万円を総取りするという千代子さんの目論見は外れ、夫が手にしたのは1000万円だけ。義父のせいで夫は3000万円を損したのですが、同時に千代子さんの離婚計画も狂ってしまったのです。夫は数々のトラブルを抱えつつも、毎月30万円の生活費(毎月12万円の家賃含む)を結婚から現在まで欠かさずに渡してくれたので日々の生活に困らなかったものの、40年間で準備すべき老後資金を全く用意できないまま、リタイア生活をむかえてしまったのです。■頼みの綱だったストックオプション3つ目の「まさか」は夫の会社のミスです。勤務先の会社にはストックオプション(株式会社の従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利)の制度がありますが、千代子さんがそのことを知ったのは6年前。人事部へ電話確認をしたところ、これは社内の成績上位者に対して株式が現物支給されるRSUタイプ。夫はこれに該当するので、すでに自社株を持っているとの回答。しかし、当時はまだVest(売買できる状態)の期間に達していなかったのですが、これは千代子さんにとって好都合。もしVestになれば夫はすぐ売却して現金化してしまい、あっという間に水の泡と化すでしょう。そこで千代子さんは「Vestになったら教えてほしい」と頼み、人事担当は「わかりました」と快諾してくれたので安心しきっていたのですが……今年に入って千代子さんはたまたま夫の確定申告書を目にしたそう。そこには夫が株式を売却し、1000万円の利益を得たことが書かれていたのです。筆者は「ストックオプションの利益は源泉徴収の対象外なので確定申告をしなければならないんです」と教えましたが、すでに手遅れでした。このような事態を防ぐため、人事担当に頼んでおいたのですが、入れ替わりが激しい外資系企業。当時の担当者はすでに在籍しておらず、引継ぎもされていなかった模様。「なんで教えてくれなかったの?」と食い下がる千代子さんに対して、夫は「俺が稼いだ金だろ?お前のじゃないのに何様だ」と言い放ったのです。同じころ、緊急事態宣言明けの2021年3月にたまたま居酒屋を通りかかった千代子さんの女友達が、テラス席で大騒ぎする客のなかに夫の姿を見つけ、そのことを報告してくれました。夫の酒癖はコロナ禍でも相変わらずで、また借金を作り、返済をせず、膨れ上がった分を株式の利益で完済したのでしょう。頼みの綱だったストックオプションも失い、千代子さんは途方に暮れたのです。■離婚する場合のシミュレーションこのように千代子さんは40年間、夫に振り回され続けたせいで退職金、預貯金(遺産除く)、有価証券……何も持たずに現在に至ったのですが、夫は長年のアルコール依存がたたり、慢性的に肝炎の症状に悩まされている現状。担当医からは肝硬変や肝臓がんを発症してもおかしくないと釘を刺されているのに夫は禁酒をせず。これらの重病にかかった場合、数年で命を落とす可能性があります。そこで筆者が千代子さんがこのまま離婚する場合と、離婚せずに死別する場合をシミュレーションをすることにしました。なお、夫婦がこの先、何年間、生きるか分からないと計算できないので、夫は3年後に亡くなり、千代子さんは80歳まで生きるという設定にしました。第一に死別の場合です。まず生活費ですが、千代子さんは夫から毎月30万円の生活費を受け取っていましたが、途中で減額されたり、停止されたりすることはなかったそう。減額したり、停止したりした分を借金の返済に回さなかったのは、千代子さんに「生活費も入れられない夫」と見下されるのがシャクに触るからという夫のプライドの高さゆえでしょう。夫は退職の翌月から企業年金を受給することができ、月額で約30万円。そして翌年(65歳)から厚生年金も受給することができ、月額で約20万円。このことを踏まえた上で筆者は「今後も変わらず、毎月30万円の生活費を入れ続けるのではないでしょうか?」と助言。千代子さんが3年間(夫が健在の間)受け取る生活費の合計は1080万円(月30万円×3年)に達します。次に年金ですが、筆者は「旦那さんが亡くなってから奥さんの年金を受給するまでの間(妻が62歳~65歳)は遺族年金を受給することができますよ」とアドバイス。夫の年収から計算すると遺族年金は毎月13万円(×3年間=468万円)でした。そして妻が65歳で自分の年金を受給し始めると、その分だけ遺族年金から差し引き、遺族年金(月7万円)+国民年金(月6万円)と切り替わります。この金額を80歳まで受け取る場合、あわせて2340万円(月13万円×15年)になります。また財産分与ですが、離婚と相続では異なります。離婚の場合、分与の対象は夫婦の共有財産だけですが、相続の場合、共有に限らず、夫名義のすべての財産です。千代子さん夫婦に子どもはいません。そして義父の相続の件を今だに根に持っているのは千代子さんだけでなく夫も同じ。夫は「あいつに俺の金は一銭もやらん!」と息巻いており、「すべての財産を妻に渡す」という遺言を書くことを約束してくれたそう。法律上、兄弟姉妹に遺留分は認められていません。そこで筆者は「旦那さん名義の財産は、残らず奥さんが相続できますよ」と伝えました。現時点で夫の財産は遺産の1000万円だけなので、夫が亡くなった時点で千代子さん名義に切り替わります。■離婚する場合、義父の遺産はすべて夫のもの第二に離婚する場合です。千代子さんが夫へ請求できるのは年金分割しかありません。年金分割とは結婚期間中、夫と妻が納めた厚生年金(共済年金)の合計額を夫と妻で折半する制度です。筆者は千代子さんに年金事務所で「年金分割のための情報提供書」を手に入れるよう頼みました。そして3週間。この書類が届いたのですが、年金分割の結果、千代子さんの年金は月額で4万円増えることが分かりました。なお、企業年金は年金分割の対象外です。次に生活費ですが、離婚したら夫婦は赤の他人。元夫が元妻を扶養する必要はありません。筆者は「別れても生活費を送って欲しいと頼むのは、さすがに無理があるのでは」と伝えました。そして千代子さん夫婦にとって唯一ともいえる財産は、夫が義父から相続した1000万円。法律上、結婚期間中に築いた財産は夫婦の共有です。そして離婚するときに共有財産を分け合うのが原則です(民法768条)。しかし、独身時代に貯めた貯金、両親から贈与された財産、相続した遺産は共有ではなく特有財産です(同法762条1)そのため、離婚するときに分け合う必要はありません。筆者は「旦那さんに対して“遺産の半分をください”と言うことはできないんです」と厳しい現実を伝えざるをえませんでした。千代子さんは離婚することで年金の受取額が増えるのですが、それでも月額10万円。80歳までの合計は2160万円です。離婚後、千代子さんは経済的に自立しなければなりませんが、家賃、生活費、携帯代などの生活費が発生します。そして貯金は相変わらずゼロです。千代子さんは自宅でヨガ教室を開いており、先生として生徒に教えていたのですが、月謝の収入はあくまで夫の扶養の範囲内。しかも現在はコロナの影響で生徒はすべて辞めてしまったそうで、生活費の不足をヨガ教室の売上で補うのは難しい状況。■お金に不自由しない熟年離婚は「夢物語」このように千代子さんが受け取る金額の合計は死別(4888万円)が離婚(2160万円)の2倍以上と大差です。夫と顔を合わせず、夫と話を交わさず、そして夫の姿を忘れる。それは離婚、死別のどちらも同じです。千代子さんは夫のせいで長い間、悩み、苦しみ、傷ついたのだから、その代償として可能な限り、多くのお金をもらいたいところです。筆者は「もらえる額の多い少ないで選んでも、バチは当たらないのでは?」と諭しました。千代子さん夫婦のように分け合うほどの財産は残っていない。これが熟年離婚の危機にある夫婦の大半です。もし分割後の年金と遺族年金がほとんど同じなら、死別の有利性は夫の財産が少なければ少ないほど際立ちます。これは夫の財産が少ない夫婦ほど離婚しないほうがいいという意味です。実際には離婚と死別の二択ではなく、死別の一択ですが、今すぐ縁を切ることができる「離婚」という選択肢が妻を悩ませるのです。むしろ一択のほうが迷わないはずです。どうしても熟年離婚の特集は「離婚したほうがいい」という論調になりがちですが、それは夢物語です。熟年離婚に踏み切ることができるのは、よほどの条件がそろい、離婚後の生活が保証される場合に限るということを念頭に置いておいたほうがいいでしょう。露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! !慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。公式サイト
2021年05月29日2015年、母の葬儀で「産んでくれてありがとうという言葉しかない」と語った志村けんさん国民的コメディアン・志村けんさんが、新型コロナウイルス感染によって突然この世を去ったのは昨年3月29日のことだった。「いまだに全然、実感がないんです。悲しいとか寂しいよりも、志村さんがいないということが不思議な感じで……。“緊急事態宣言が明けたら、また飲みに行きましょうね”って、ふと電話してしまいそうになるくらいで」女優の川上麻衣子は、しみじみとそう振り返る。志村さんとは、25年来の仕事仲間であり、友人だった。「番組で共演していた当時は、志村さんも40代でいちばん元気な時期でね。みんなで一緒によく飲みに行きました。カラオケに行くと、志村さんは吉幾三さんの『雪国』を歌うんですけど、それがすっごい上手でね……」■志村けんさんは助かったかもしれない感染が報じられてから、わずか10日あまりでの訃報に、日本中が驚きと同時に、新型コロナという未知のウイルスの恐ろしさも思い知った。川上自身も昨年11月に新型コロナに感染し、それを身をもって経験したひとり。「私はそれでも2か月ほどで回復しましたが、私が感染させてしまった知人は、志村さんのときに初めて聞いた“ECMO(エクモ)”という人工心肺装置をつけるほど重症化してしまって。知人は私より若くて基礎疾患もなかったのに、2度も危篤状態に陥ってしまいました。結局、自分の足で歩けるようになるまで3か月も入院したんです。それでも、コロナの正体がわかりだしていたから助かった。志村さんも、今だったら助かったかもしれないと思うと悔しいですよね……」志村さんの“最後の弟子”として付き人を務め、現在は鹿児島を中心に活動するタレントの乾き亭げそ太郎は「今でも何かあると“師匠に怒られたくない”って思っちゃうんです」と頭を掻く。「僕の気が緩みそうになったとき、すぐに師匠の顔が浮かんできますね。僕が付き人について3年目に言われたことがあるんです。“何かをやるときに環境のせいにするな”“今できないやつは環境が変わっても何もできないぞ”って。僕は芸人の世界から、故郷に戻ってレポーター業に転身したんですが、慣れない世界でしたから逃げ道をつくりたくなることもあったんです。でも、師匠のその言葉を思い出しては、言い訳だけはしないぞって」志村さんを偲んでいるのは、川上やげそ太郎だけではない。出身地である東京・東村山も同じだ。駅前に志村さんの活躍を記念して植えられた『志村けんの木』。長年市民に愛されてきたこの木の隣には、間もなく志村さんの銅像が建つ予定。全国のファンから集まった2700万円もの寄付金でつくられるそれは、志村さんの十八番ギャグ《“アイーン!”のポーズに決定》したと、先日ニュースにもなった。「デザイナーと打ち合わせの真っ最中です。細かいデザインが決まり次第、制作に入ります。夏休みに間に合うよう、7月中の完成を目指しています」(志村けんさん銅像プロジェクト実行委員会)だが一周忌を前にそうした動きがある一方、法要はごく身内だけで、ひっそりと執り行われるという。志村さんに近しい親族の男性が嘆く。「一周忌の法要には呼ばれていないんですよ。兄弟とその家族だけでやるって。コロナの影響もあって集まれないだろうからしかたないけれどね……。ただ、その一周忌法要は、彼の母親の七回忌法要と一緒にやるんだってことは聞きましたよ。“お別れの会をやる”って、けんのお兄さんは言っていたけれど、それもいつやれるのかわからないし」■総額10億円になる志村さんの遺産志村さんが暮らしていた東京・三鷹の自宅も、主を失って以来、寂しいままだ。「志村さん、おひとりのときはこっそり家から出てくる感じだったんですけど、犬と一緒のときはいつも明るく挨拶してくださってね。でも、もうずっと人の出入りはないですね。志村さんがいらっしゃったころは、窓なんていつでもピカピカだったんですけど、埃ですっかり曇っちゃってるし。家政婦さんどころか、ご家族らしい人が片づけやお掃除に見えたりとかもないみたい」(近所の主婦)1987年に購入当時、4億円と報じられたこの豪邸以外にも、志村さんは東京・港区内のマンション、静岡県熱海市内にあるマンションと、少なくとも3つの物件を所有。絶頂期には年収3億円以上を稼ぎ、当時の高額納税者番付タレント部門でトップにも立ったこともある億万長者だ。「現預金などを含めると、志村さんの遺産は総額10億円とも言われていますけど、彼のこれまでの稼ぎっぷりを考えれば、少なすぎるくらい。ただ……聞いたところによると、亡くなってもう1年がたつのに、自宅も港区のマンションも、いまだに相続の手続きがとられていないそうなんですよ」(芸能プロダクション関係者)いしのようこや優香をはじめ、あまたの女性たちと浮名を流した志村さんだが、生涯独身を貫いた。当然、子どももいないため、法的には2人の兄が遺産を半分ずつ相続することになる。志村さんの長兄・知之さんに相続の件を尋ねると、言葉少なに、「まだ、そのままなんです。そんなにすぐに(相続の)整理できる段階ではなくて」手続きがまったく進んでいないことを明かしてくれた。だが、それを待ってはくれないものがある。相続税だ。志村さんの遺産を相続する兄2人には、同時に莫大な相続税が課される。仮に志村さんの遺産が10億円だとすると、相続人1人あたりの税金はざっと2億円、合計4億円ほどにもなる計算だ。相続税の納期は、相続が判明した日から10か月以内の納付が義務づけられている。「現状、コロナの影響がずっと続いているので、税務署に理由を申告すれば納付期限の延長が認められるんです。とはいえ、そう遠くないうちには、その大金を一括で納めないといけません。4億円ともなると、さすがにすぐには現金を用意できないんじゃないですかねぇ。自宅などの不動産も処分しないと、なかなか払えないでしょうね……」(前出・芸能プロダクション関係者)■いっそのこと相続放棄しようか長引く“宙ぶらりん”状態は、兄たちにとっても大きな心の負担になっているという。古くからの志村家の知人が心配する。「お兄さんたちだって“お金の話なんてアイツとはしたことなかった”って。けんちゃんもお金や財産の管理は無頓着だったみたい……。何がどうなっているのか、どこに何があるのか、まだ全部わからないんだろうね。“いっそ全部、相続放棄をしようか?”なんて話が家族から出たこともあったそうだから……」手続きが遅々として進まぬ理由はそれだけではない。「やっぱり、大切な弟を突然失ったことがショックなんだろうね……。コロナのせいで、入院中ひと目見舞いにも行けず、葬式をあげるどころか、最後のお別れをすることも許されなかったから。知之君は“今も夢に弟が出てくるんだよ。思い出さない日は1日もない”って。気持ちの整理もまだついていないんだ」(前出・知人)あれから1年。新型コロナは、いまだに社会全体に影を落としている。残された人々の時間も止めたまま─。
2021年03月24日相続が発生したとき、一番の難題は実家の土地や建物はどうしたらいいかということ。相続すれば税金や維持費が重くのしかかってきます。「空き家を放置するのはリスクがあります。相続の前に実家の状況や不動産価値を見極めることが大切です」と話すのは、FP2級の資格を持つ海田幹子さん。今回は住む予定のない実家を相続した場合としなかった場合、それぞれの対処法について教えてもらいました。■ 空き家を放置するのはリスクがある!固定資産税が最大6倍になることも空き家を放置すると以下のようなリスクがあります。固定資産税や修繕費、管理費など、維持管理するためにコストがかかる人が住まなくなると、建物の老朽化の速度が早まり資産価値が下がる老朽化や自然災害などで建物が倒壊すると人にケガをさせる可能性がある景観や衛生面などの悪化により周辺住民や行政からの注意を受ける税制優遇措置から外れて固定資産税が高くなることがある「住む予定がないから」「今住んでいる場所から遠いので」などと、相続した不動産の管理をしないことはNG。空き家を放置してしまうと、様々なリスクがあると覚えておきましょう。きちんと管理がされず、倒壊や保安上の危険があると見なされたときや、衛生上有害な状態と判断されたときは「特定空家」に認定され、固定資産税が最大6倍に増額されてしまう可能性もあります。実家として住宅が建っている土地には、固定資産税評価額が以下のように軽減されます。住宅の固定資産税評価額固定資産税=評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)200㎡以下の部分:固定資産税評価額×1/6200㎡を超える部分:固定資産税評価額×1/3しかし特定空家に認定されてしまうと、軽減がなくなってしまうのです。では、固定資産税評価額の軽減がある場合とない場合でどのくらい負担が増えるのか見てみましょう。建物評価額100万円・土地評価額1000万円の不動産の固定資産税固定資産税評価額の軽減がある場合100万円×1.4%+1000万円×1/6×1.4%=約3万4333円特定空家に認定された場合100万円×1.4%+1000万円×1.4%=15万4000円上記の場合、評価額の軽減がある場合とない場合では、年間約11万9667円もの差がでました。特定空家に認定されると、固定資産税の負担が上がってしまうので、空き家は放置せず、適切に管理しましょう。■ 住む予定のない実家を相続したときの対処法3つ住む予定がない場合は、実家を手放すか活用するかが選択肢に挙げられます。対策1.賃貸に出す借りてくれる人がいるなら、賃貸に出すことが可能。家賃収入が見込め、人が使うことで建物の老朽化のスピードが遅くなるというメリットがあります。対策2.売る住まない不動産を持っていても維持費がかかり続けるため、地価が上がる見込みがなければ売却もあり。立地や空き家の状態などにより買い手が見つからない場合は、実家の近くに住む親戚や住民に低額で売却、または無償譲渡も選択肢のひとつになります。対策3.寄付する土地は自治体に寄付をすることも可能です。ただし寄付できる土地は、自治体にとって有用な不動産に限られるため、買い手が見つからない不動産を寄付することは難しいかもしれません。■ 買い手がつかなさそうな不動産…相続前なら放棄できる!基本的に所有している土地は売却や寄付をしない限り手放すことはできません。ただし、これは「所有」している場合のこと。相続前なら相続放棄をすることで土地の所有権を放棄できます。買い手がつかなさそうな不動産の場合、検討する余地はあるでしょう。注意しなければいけないのは、不要な土地だけを放棄し現金だけを相続することはできないということ。相続放棄をするならすべて放棄しなければならない、ということを覚えておきましょう。土地の所有権がない=固定資産税を払わなくていいということ。ただし、相続放棄をしたあとも、土地の管理義務は残ります。管理義務からも免れたいときは、土地の管理を代わりに行ってくれる相続財産管理人の選任が必要です。相続財産管理人の申し立ては家庭裁判所で行います。申し立てにかかる費用は、収入印紙や郵便切手、官報公告料など。それにプラスして、相続財産管理人の経費や報酬にあたる予納金が必要です。予納金は裁判所が決定し、数10万程度の場合もあれば100万円ほどになることもあります。相続財産管理人が決まってはじめて、土地の管理義務から解放されることになります。住む予定のない実家などの不動産は、賃貸や売却、寄付をしない限り、固定資産税や管理費などの費用がかさみ続けます。一度取得した土地は、基本的に放棄することはできません。相続する実家に不動産価値がなく買い手がつかないと判断した場合は、相続の際に「相続放棄+相続財産管理人の選任」により手放すのもひとつの手でしょう。●教えてくれた人/海田幹子さんファイナンシャルプランナー2級の資格を持つwebライター。ライフプランニングや住宅ローン、資産運用などお金にまつわる内容を多数執筆。私生活では2児の母。わかりやすくてためになる記事を心がけている
2021年03月15日※画像はイメージです70代以上のネット利用者は7割以上、スマホ決済が広がり銀行の利用も株取引もネット化が進む昨今。持ち主が死んでしまった後、残されたデジタル機器のデータをめぐって、さまざまなトラブルが発生するケースが増えているという。備えあれば憂いなし!たった1分でできる対策をチェックしておこう。■相続されるべきお金が放置されてしまう可能性もお金の管理から、重要データの保存など、今やデジタル機器は、老若男女、すべての人にとってなくてはならない存在。それゆえに注意したいのが、ある日、命が尽きたとき、その中身をどう遺族に引き継ぐかということ。「スマホやパソコンが開けないと、まず困るのが葬儀です」と話すのは、日本デジタル終活協会代表理事で弁護士の伊勢田篤史さん。遺影用の写真や葬儀の連絡先などすべてスマホの中で、葬儀の手配ができない……なんてことが起きるのだ。また特に注意したいのが、故人がネット銀行やネット証券を利用していた場合。契約や取引の書面は電子データでやりとりすることが多く、紙の書類はほぼゼロ。家族に何の情報も伝えていないと、遺族はその存在にすら気づかず、相続されるべきお金がごっそり放置されてしまう可能性が出てくる。総務省の情報通信白書(2020年版)によると、60歳以上でインターネットの利用目的が「金融取引」と答えた人は15・9%にも及ぶ。「うちはどうなの?」と、ぜひ確認をしておきたい。「“○○ペイ”などの電子マネーも見落とされがち。最近では政府より、給与デジタル払い解禁の方針も示されたことが話題となりました。扱う金額も大きくなるので、今後ますます注意が必要ですね」(伊勢田さん)加えて心配なのが、さまざまなアプリの使用料やクラウドサービスの定額支払い、動画配信サービスなどの引き落とし。ネットの活用頻度が高い人ならば、トータルで月々数万円を支払っている人も少なくない。スマホの月々の契約料金やサブスクコンテンツなども、解約しない限りは引き落とされ続ける。「利用規約にもよりますが、遺族が契約を止めるか各サービスに契約者が亡くなったと報告しない限り、料金は引き落とされてしまいます。遺族が“契約の存在を知らなかった”と主張しても、返金を受けることが難しいケースがあります」(伊勢田さん)■ロック解除に失敗してデータが消失!?デジタル機器の中には重要な情報がぎっしり詰まっているが、そもそも「スマホやパソコンが開けず、中が見られない!」という遺族が多い。ロック解除のパスワードがわからず、思いあたる番号を適当に入力……とやりがちだが実はこれ、危険な行為。デジタル機器のデータ復旧やパスワード解析を専門とする会社・デジタルソリューションの嘉藤哲平さんによると、「機種や設定にもよりますが、10回間違えると自動的に初期化されてしまうことが。すると、すべてのデータが消えてしまいます」こうなると、専門会社に解析を依頼しても、データを復元することは不可能。思い出の写真やメールの履歴など、きれいさっぱり消えてしまうのだ!ならば、専門会社にパスワード解析を依頼すればいいのか……と思いがちだが、そんなにお手軽なものではない。まず費用。ロック解除のパスワード解析だけで数十万円、ときには100万円程度の費用がかかることも。作業期間も3か月から半年を要することが多い。しかもセキュリティーが堅牢なスマホは必ず解析が成功するとは限らない。「デジタル遺品に関するご相談は増加傾向にありますが、費用などの問題から実際に解析を依頼される方は20%ほどです。事故などで突然死された方のご遺族で、どうしてもデータを見たいという場合が多いですね」(嘉藤さん)さまざまな弊害が想定される「デジタル遺品」だが、実際に対策を取っている人は「ほぼいない」と伊勢田さんは言う。「遺族に不要な負担をかけないためにも、最低限、各デジタル機器のログインパスワードは共有しておくべきです」(伊勢田さん)紙に書き出し、財布や通帳など、万が一の場合に遺族が確認するであろう場所に保管しておこう。ひとり暮らしなら冷蔵庫に貼っておいても。これなら、1分でできるはず。たったそれだけでも、残された家族への恩恵は絶大!「理想としては、金融取引の状況や課金されているものなどを棚卸ししておくこと。それぞれのIDやパスワードを紙にメモしておけば、残された人の負担は大幅に減るものです。ゼロからすべてを調べるのは相当な労力が必要ですからね」(伊勢田さん)棚卸しの際には、「必ず対応してほしいもの」「できれば対応してほしいもの」「破棄していいもの」と3つに分類しておくといい。金融資産に関するものは「必ず対応してほしいもの」へ、SNSやブログなどの取り扱いは「できれば対応してほしいもの」、不要となった仕事の資料や趣味の情報は「破棄してほしいもの」といった具合に仕分けを。万が一は、いつ訪れるかわからない。逝く人も遺された人も、悔いが残らないよう、できる備えはぜひやっておきたい。「デジタル終活」やっていないと、遺族は こんなに 困る!【困】アドレス帳が見られず、葬儀の連絡ができない【悲】思い出の写真が見られない【損】ネット銀行やネット証券の存在に気づかない【損】スマホやサブスクコンテンツなど、契約料金がとられ続ける【困】“○○ペイ”の残高に気づけない【損】FXなどが負の遺産になることも【損】さまざまなアプリが課金され続けてしまう【損】クラウドサービスや動画配信サービスなどの使用料が引き落とされ続けるデジタル遺品にまつわる「失敗リアルエピソード」夫との思い出がすべて消えてしまった(M・Kさん70代)長年連れ添った夫が不慮の事故で亡くなってしまったKさん。「亡くなる直前までの元気な様子の写真がスマホに残されていると思ったのですが、ロックがかかっていて……。思いつく限りの数字を入力したんです」。数回入力を失敗すると、パスワード入力画面が出なくなり「こんにちは」と表示された画面に。知人に相談し、初期化されてしまったことを知り、無知だった自分を悔やんでいるという。遺産相続1500万円に関するデータを復旧(K・Sさん50代)「母が亡くなる前、私に“財産1500万円のうち、500万円を相続させる”という発言を動画で撮影していた」というSさん。ところが、母の死後、スマホが破損し、データが取り出せない状態に。「それがないと自分の遺産が減ってしまう。相続の裁判で証拠にしたい」と専門会社にデータ復旧を依頼。数十万円の費用がかかったが、無事に映像の復元に成功。遺産も相続できた。故人のFXの含み損を支払うなんて…… (W・Aさん40代)夫が突然死をしてしまったAさん。「どのような投資をしているか一切知らなかったのですが、突然、証券会社から支払い請求がきてびっくりして」。生前にFXの取引をしていて、マイナスが大きく膨らみ、追加証拠金が発生してしまったのだ。「大切な遺産からなんとか捻出して対応しました」身内の死後に知りたくなかった事実が……(A・Kさん50代)独身であった兄が亡くなり遺品を片づけることになったKさん。「パスワードはメモがあったのですんなり解除できたのですが、データに残っていた写真などを見ると、兄の生前の趣味が特殊で。勝手に見てしまってよかったのだろうかという葛藤と、知りたくなかったという思いが今もあります」教えてくれたのは…伊勢田篤史さん弁護士・公認会計士。日本デジタル終活協会代表理事。「相続で苦しめられる人を0にしたい」という思いを胸に、「終活弁護士」として、争族対策に特化したサービスを提供している。
2021年03月08日夫の死後、ひとりになったときに財産がしっかり確保。できるようにしておかなければ老後資金が目減りする!相続は「よかれと思って」「ついうっかり」が通用しない世界。老後の自分が困らないために、しっかり知識をつけよう。イラスト/上田惣子同世代の人のコロナ感染やコロナ死の情報が次々と目に入り、不安になることもしばしば。「夫や自分に何かあったら、わが家の財産どうなるの?」と気になるもの。「特に今は、健康な人でもコロナにかかって、あっという間に亡くなることもありえます。いつ何があるかわかりませんから、贈与・相続については夫婦できちんと考え、話し合っておきましょう」そう話すのは、(株)夢相続の代表取締役として多くの相続相談にのってきた曽根惠子さん。■遺産総額によっては半分以上が税金でパア相続対策といえば、まず気になるのが相続税。そもそもどのくらい取られるもの?「まず、知っておきたいのは、相続税には基礎控除(税金がかからない範囲)があること。その計算方式は、[3000万円+600万円×法定相続人の数]で、例えば法定相続人が3人なら、遺産の総額が4800万円までなら相続税はかかりません。それより多ければ、オーバーした額に応じて、10~55%の相続税を払うことになります」(曽根さん、以下同)わが家に財産はないし、相続の準備って、一部のお金持ちだけの話でしょ?と安心してはいけない。「確かに、実際に相続税を払っているのは全体のうち1割足らずの人たちです。ただ、それ以外の人が何の手続きもなしに税金を払わずにすんでいるわけではありません。都会で家を持っている場合、無策のままだと相続税を払うはめになることも。相続時に配偶者のための優遇制度などを利用してそれを税務署に申告するのもひとつの手。また、生きている間にお金を渡す、不動産の名義を家族の名前に変更するなどの生前贈与をしておく方法もあります」では、さっそく夫の口座から自分の口座にお金を……。「それはちょっと待って!基本的には相続税のほうが贈与税よりも、控除や優遇が多いし、税率も低いんです。安易に生前贈与しないよう気をつけて。各種対策で得をするにはコツがあるので、それを調べ、できれば税理士や専門家に相談をしてみましょう」■よかれと思って損を招く、5大アクション「相続税対策に」「家族を安心させたい」と、元気なうちにお金をあげたり、不動産の名義を変更したりする「生前贈与」。安易にやってしまいがちだけど、やり方を間違えるとかえってお金がかかってしまうことも。代表的な「5大アクション」をチェックしましょう!【Q】持っている不動産を売って現金化すると損?【A】お金より不動産で渡すほうが節税になる「相続税や贈与税の計算をする際、賃貸不動産は、時価の3割ぐらいと低く評価されます」。つまり、3000万円分の預貯金や株よりも、3000万円分の賃貸不動産をもらったほうが税金が安くなるということ!「さらにその不動産が自宅で100坪までなら、相続の際に課税価額が最大80%安くなるという特例が使えます」ただし、注意点も。「売ったり貸したりしづらく、自分が住まないような不動産は、むしろ相続人の負担に。生前に処分しておきましょう」【Q】夫の銀行口座から一気に妻の口座へお金を移すと損?【A】金額によって相続税より高い税率で贈与税が課税にたとえ夫婦であっても、金融資産や不動産を渡すと「贈与」とみなされ、その価額によっては贈与税を払うはめに。「年間110万円超の財産を渡すと、金額に応じて10~55%の贈与税がかかります。贈与税を払いたくないなら、少しずつ贈与してもらいましょう。“年間110万円以内じゃ間に合わない!”といった場合は、贈与税を払ってでも多めに受け取る、あるいは不動産にかえて受け取る手も」そのほか、非課税になる特例もいろいろあるので税理士などに相談を!■相続税の税率(法定相続分に応ずる取得金額/税率/控除額)・1000万円以下/10%/控除なし・3000万円以下/15%/50万円・5000万円以下/20%/200万円■贈与税の税率(一般税率)(基礎控除後の課税価格/税率/控除額)・600万超1000万円以下/40%/125万円・1500万超3000万円以下/50%/250万円・3000万円超/55%(※)/400万円(※55%が最高)【Q】「婚姻期間20年以上の特例」を使い、家の名義のうち2000万円分を贈与すると損?【A】名義変更の手数料などで数十万円が必要!「婚姻期間20年以上の夫婦なら、自宅用の不動産(またはそれを買うためのお金)を配偶者に贈与する際は、2000万円分までは贈与税がかからないという特例があります」ただし注意点が!「贈与税はかからなくても、不動産の名義変更の費用や、不動産取得税で合計何十万円もかかる可能性が。一方、相続であれば、取得税がかからないし、名義換えの費用は5分の1ですみます」相続税がかからない範囲の財産であれば、「妻に渡す」という遺言書を書いてもらったうえで、相続時にもらうほうが得ということ!【Q】生前贈与用に妻子の通帳を作って夫が管理しておくと損?【A】生前贈与の成立要件を満たさず、相続税の対象に「通帳の名義が誰であれ、夫がお金を出して管理していたなら、夫の財産とみなされます。夫の死後、そういう通帳が見つかったら、夫の財産として税務署に申告しなくてはなりません」それを避け、妻の財産として生前贈与したい場合は、贈る側ともらう側で贈与契約書を残して、通帳ももらっておくのがおすすめ。そして贈与額によっては夫は贈与税を納めておくこと!【Q】車や高級時計をもらうと損?【A】高額なら贈与税がかかる自動車、貴金属、高級時計、楽器、絵画骨董品、着物なども、相続税や贈与税の対象となる。よかれと思って高級時計や車をポンとプレゼントされた場合、その価額によっては税金がかかる。価値が110万円以下のものなら生前贈与してしまってもいいけれど、それ以上の価値があるものなら相続まで待ったほうが税金面で得になることも。相続させる場合は、財産目録に書き出しておき、どのくらいの価値のものなのかも伝えよう。■相続するために、こんな書類をチェック!夫にもしものことがあった場合、残された家族はその後の手続きに追われる。葬儀や火葬の手配、役所への届け出などがあわただしいことは多くの人がご存じのとおり。そして、想像以上に大変なのが相続財産の名義変更や相続税の申告手続き。預貯金、株などの有価証券、不動産などは名義変更をしないと相続人のものにはならない。そして名義変更をするには、各種書類が必要になる。その際、遺言書がなければ、法定相続人全員の同意とそれを示す書類(遺産分割協議書)も必要に!「故人がどんな財産があるのか、家族にまったく明かしていない場合は大変です。預金通帳や金融機関からのお便りなどがあればいいのですが、ネット口座はペーパーレスですから、家族が口座の存在に気づかない場合もあります。相続税を申告した後で税務署に見つかったりすると、修正申告などが必要になることも」さらにやっかいなのが、借金の存在を隠していた場合。「故人が借金を抱えていた場合は、相続人が返済義務を負うことになります。借金が莫大な場合は、死後3か月以内に“相続放棄”の手続きをしないと大変なことに……。財産を相続してしまってから借金の存在がわかった場合は、相続放棄できないので注意してください」家族を困らせないために、まずは今から財産と借金、そして相続人をリストアップしておくこと!そして遺言書を書いてもらうのがおすすめ。名義変更の際の手間や必要書類がぐっと減る。《チェックすべき書類など》■銀行の預貯金【通帳】……口座の名義変更に利用。【定期預金証書】……定期預金の名義変更に利用。【貸金庫の鍵】……貸金庫を開ける際、相続人全員の同意と立ち会いが必要な場合も。財産の重要書類を入れている場合は、貸金庫を利用していることを家族に伝えておく。■自宅、その他の不動産、株式など【取引報告書】……株や投資信託の名義変更の際、どの金融機関と取引していたか知る手がかりとなる。仮想通貨など取引報告書が発行されないネット取引などについては、取引所やログインID、パスワードなどを書いて保管し、そのありかを家族に伝えておく。【登記済証】……相続の手続きの際に、所有している不動産をきちんと把握するために必要。【不動産売買契約書】……不動産を売却した際、所得税の申告のために必要。【固定資産納税通知書】……故人がどんな不動産を所有しているかを知る手がかりになる。■保険【生命保険証券】……保険金の請求に必要。受取人が親のままになっている人もいるので、元気なうちに確認しておくこと。【火災保険証券】……契約者が亡くなった場合、契約者の名義を変更する必要がある。■年金【年金証書】……年金事務所に死亡届を出す際に必要。遺族年金や未支給年金の請求手続きなども行う。■自動車【自動車検査証】……自動車の売却時に必要。【自賠責保険証書】……損保会社で自賠責保険の契約者を変更する際に利用。■墓地【墓地使用許可証】……墓地を引き継ぐ際に、霊園や管理する自治体に提出する。■借金【金銭消費貸借契約書】……相続放棄するかどうかを判断する材料となる。相続放棄は故人の死を知って3か月以内に家庭裁判所に申し立てなくてはならない。【カード利用明細書】……相続放棄するかどうかを判断する材料となる。■その他【印鑑証明書】……さまざまな名義変更で、相続人が提出することを求められる。妻は持っていないことが多いので、元気なうちに役所で登録しておきたい。なお、証明書は「発行後3か月以内のもの」といった条件がつくことが多いので、生前に発行してもらう必要はない。【給与や年金の源泉徴収票】……故人が2か所以上から給与をもらっていた、給与以外の雑所得が20万円超あった、などの場合は、死後4か月以内に故人の所得について準確定申告を相続人全員で行う。その際の添付書類となる。■作っておきたい書類【遺言書】……遺言書がないと、名義変更の手続きのたびに法定相続人全員が同意した遺産分割協議書や印鑑証明書が必要になる。特に子どもがいない夫婦は、親やきょうだいともめないために、それぞれが遺言書を作っておきたい。【財産目録】……預貯金や株式などの残高を、夫婦がお互いにまったく知らないケースが増えている。相続財産の全体像を明らかにして、残された家族の相続手続きの負担を減らすためにも、夫婦それぞれの財産目録を作っておく。■ここは確実に!重要書類ベスト5【1】家に関する書類自宅を登記したときに発行される「登記済証」(’05年からは「登記識別情報通知」)のほか、固定資産税納税通知書などをもとに、どんな不動産を所有しているのかきちんと確認しておくこと。【2】金融資産の書類夫婦それぞれの通帳や定期預金証書など。株や投資信託に投資している場合は、取引している金融機関名、支店名、口座番号なども書き出しておきましょう。ネット取引している場合は、金融機関名、ログインIDやパスワードも忘れずに。【3】生命保険の書類保険証券を探し出し、保険金の受取人を確認。独身時代に親を受取人に指定してそのままになっている場合は、希望する家族名に変更しておきます。保険証券は、すぐ請求できるよう家族に保管場所を知らせます。【4】借金の書類金融消費賃借契約書など、お金を借りている相手や借りている内容がわかるもので確認しておきます。金額が資産の額より大きい場合は、夫が万一の際には死後3か月以内に相続放棄の手続きをするよう、親きょうだいにも伝えておきましょう。【5】財産目録不動産、預貯金、株式や投資信託、保険、借金などをリストアップ。それぞれの取引先なども書き出して、家族がわかる場所に保管してもらいます。ネット取引ならIDやパスワードを書き出し、金庫などに保管。■意外と大変!夫の死後の名義変更故人の財産は故人の名義のままだと、いくら家族でも勝手に使うことができません。遺言書や遺産分割協議の内容に従って、きちんと名義変更の手続きをすませることが必要です。■預貯金の名義変更銀行口座の名義を変更する、あるいは預貯金を払い戻してもらう。その際、ほかの支店に口座がないか、定期預金がないかなども確認してもらう。必要書類は遺言書の有無によって、また銀行によっても異なる。【遺言書がある場合の必要書類】・遺言書+検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)・故人の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡が確認できるもの)・預金を相続する人の印鑑証明書……など【遺言書がない場合の必要書類】・遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)・故人の除籍謄本・戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書・相続人全員の印鑑証明書■不動産の名義変更自分ですることもできるが、多くの書類が必要なことから、司法書士などのプロに依頼する人も多い。自分で手続きする場合は、あらかじめ必要書類などについて法務局に相談しておくのがおすすめ。【遺言書がない場合の必要書類】・名義変更する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)・故人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)・故人の出生から死亡時までの戸籍謄本すべてと除籍謄本・相続人全員の現在の戸籍謄本・遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書……など■株式の名義変更多くの場合、取引支店やコールセンターなどに連絡して、必要書類を提出。株式の名義を変更してもらう。【遺言書がある場合の必要書類】・遺言書と検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)・故人の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡が確認できるもの)・相続する人の印鑑証明書……など【遺言書がない場合の必要書類】※預貯金の名義変更の遺言書がない場合と同様の書類が必要(取材・文/鷺島鈴香)《PROFILE》曽根惠子◎(株)夢相続代表取締役。WEBメディア「家族をつなぐきずな倶楽部」を運営「相続実務士」の創始者として1万4600件の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。
2021年02月26日三浦春馬さん(2019年)《私と春馬は、よその親子では考えられないくらい一心同体でした。たぶん、春馬も私がいない生活は考えられなかったと思うの》2月18日発売の『週刊新潮』2月25日号で5ページにわたって組まれた特集記事で、冒頭から《言いたいことはたくさんあるの》と告白を始めたのは三浦春馬さんの実母・A子さんだ。昨年7月18日に自宅マンションで亡くなった春馬さんの遺骨は、現在もお墓に入ることなく彼女が持ち続けているという。訃報から7か月経った今なお、安らかに眠ることが許されない故人の周囲で何が起きていたのだろうかーー。茨城県土浦市に生まれ、幼少より劇団に所属して子役としてデビューした春馬さん。その後もドラマや映画に出演し、2008年にTBS系ドラマ『ブラッディ・マンデイ』で主演を務めると大ブレイク。以後は演技力に磨きをかけて難役もこなす実力派に成長し、順風満帆な芸能人生活を送っているように見えた。しかし、彼を取り巻く家庭環境は複雑なものだったという。スポーツ紙芸能デスクが解説する。「両親は彼が7歳の頃に離婚し、A子さんは春馬くんを連れて自宅から出て行ったのです。その後、彼女は客として訪れていたホストクラブのオーナー男性と再婚して3人で暮らし始めるも、春馬くんは家で1人きりになることが多かったそう。彼の拠り所となったのは、当時通っていた劇団だったと言います」しかし、春馬さんが次第に“芸能人”として有名になっていくと、A子さんの興味は息子に向けられていったようだ。「春馬くんが都内の高校を卒業する頃には、母親や義父との関係も良好に。一方で、次第にA子さんの身なりが派手になっていったと言います。そして、彼女は再び離婚。すると、春馬さんにお金の無心をすることも多くなった、という取り巻く家庭環境の移り変わりが週刊誌などの周辺取材で浮き彫りになっていったのです」(前出・芸能デスク)そんなA子さんに愛想を尽かしたのか、以降は連絡を取ることを断っていたという春馬さん。さらに母方の戸籍を抜けて、本名を生き別れた実父の「三浦」に改姓した、とも伝えられた。つまりそれは母親との“絶縁”宣言だったのかもしれない。■実父との20年ぶりの再会で“歯車”がそして春馬さんはさらなる行動を起こす。報道によると、いまから2〜3年ほど前、“生き別れた”実父・Bさんと約20年ぶりの再会をはたしたのだという。「彼にしてみれば、残された“唯一の肉親”で、幼心に父とのいい思い出もあったのでしょう。ところが、当初こそ迎え入れらて絆を深めるも、心臓の手術をするなど健康面に不安を抱えていたBさんだけに、今度は父親からも金銭的支援を求められた、というのです」(前出・芸能デスク)母親のA子さん、そして父親のBさんと双方が春馬さんの資産を当てにしていた。そして彼が亡くなったことで、これが遺産争いとなったのだ。「春馬さんは個人会社を設立していて、所属事務所『アミューズ』からのギャラや印税がそこに振り込まれていたと言います。今後に見込まれる収益は事務所が管理し、基金を設立して収益を寄付していく仕組みになるようです。遺産となるのは預金や自家用車などの個人資産で、両親や兄弟で分配されますが、彼は一人っ子なので本来ならば父と母で2分の1ずつに分けられると思います。ただ、Bさんは約20年間を“不在”にして父親としての役割を果たしていたと言えるのか、A子さんがどう判断していたのか」(芸能プロ関係者)春馬さんが亡くなって以降、ともに沈黙を貫いてきた両親。A子さんは件の遺骨、生前の記録が残る携帯電話や手帳などの遺品を持ったまま、親族も連絡がとれない“行方不明”状態にもなっていた。そんな中で、先に沈黙を破ったのがBさんだった。昨年末に『女性自身』12月22日号の取材に応じたのだ。同誌ではまずBさんの知人の話として、「(Bさんは)お金に困っている様子はない」「父子関係がギクシャクした様子もない」と、春馬さんとの関係は良好だったとし、さらに「元奥さん(A子さん)はお金遣いが少々荒いタイプ」と添えられていた。そして当のBさんの話。報道をくまなくチェックしていたのか、春馬さんとは「20年ぶりの再会」ではなく「芸能界デビュー後から連絡をしていた」と訂正し、遺産相続については《私自身は息子の遺産はまったくあてにしていません》とするも、《この数年、(春馬は)母と折り合いが悪く、本人も悩んでいるようでした。いくら母と子といっても、金銭的なことでもめていると聞いて、私も心配はしていたのですが……》と、あらためて母子間に金銭トラブルがあったことを強調したのだった。すると、『週刊文春』12月31日号に“行方不明”になっていたA子さんが登場する。涙ながらに重い口を開いたという彼女は、春馬さんが役者として稼ぐようになった後も「仕事を続けていた」とし、「役員報酬」を得ていたことや「車を買ってもらった」ことは認めるも「息子に頼った生活をしたことはない」と、一連の報道を否定。さらに、《ここ七年は経済的な援助と言われるようなものは全く受けておりません。なのでここ数年間本人がどんな心境だったのか、私も全く心当たりがなく……》春馬さんとは連絡を取っていなかったことから、“経済的援助”はなかったと繰り返していた。そして故人の埋葬に話が及ぶと、《まだお墓のことまで考える余裕がありません。ゆくゆくは遺族として為すべきことは必ず行なっていくつもりです。ただ……、もう少し心の整理をつけるまでお時間を頂ければと思います》子を失った母の悲しみを吐露していたA子さん。春馬さんが大事に保管していたファンからの手紙などの遺品を手に感謝の意を述べるも、遺産問題について語られることはなかった。■実父が急死、そして実母は…そして今年、2月9日発売の『女性自身』2月23日号で事態は急展開を迎える。《実父が遺産問題渦中に急死!》として、Bさんが1月中旬に亡くなったことを報じたのだ。心臓に持病があり「俺はいつ死ぬかわからない」と周囲に話していたというBさんは、同誌によれば行きつけの飲食店を後にしてワンルームの自宅アパートで倒れたとある。そんなBさんが生前、取材班にこぼしていたことも付け加えられた。《いまの私お願いは、春馬の墓がどこかに建てられて参ることができるようになること。そして、コロナのために延期になってしまいましたが、仲よくしてくださった方やファンの方のためにも偲ぶ会が開催されること、その2つだけ……》子を追うようにこの世を去った父。そして、この訃報から10日もしないうちに冒頭のA子さんによる“ロングインタビュー”が掲載されたのだ。以前に初告白した『文春』ではなく舞台は『新潮』に移ったわけだが、今回は実に“じょう舌”だった。Bさんが亡くなったことを弁護士を通して知ったという元妻は《それはショックでした》としながらも、《私は香典を送りましたが、やっぱり最低限のことはね……。だからもう、遺産の件はこれでおしまいです》と遺産問題の“解決”宣言をしたのだ。その後も、春馬さんの葬儀に内縁妻を連れてやってきたというBさんがその1か月後に弁護士を立ててきた、などと元夫に対する明らかな不満もぶちまけていた。《彼がすごく主張してきた部分があって。そう、春馬の遺産を欲しがってきたから争うことになった。彼と春馬を最後に会わせてあげたのは私なのに、感謝の言葉の一つもないどころか、彼は私に対して“いい車に乗っているな”とか“随分とよい生活をしているね”と言い放った》《春馬は私が親権を持ち、育てた子です。(離婚時に)一円も貰わずにね。それなのに遺産の権利を主張してきてすごく迷惑でした》春馬さんとの間になされた“お金を無心”をめぐる報道についてもあらためて反論し、息子から連絡を断たれたことについては《春馬の心身の状態がよくなかったのね》と弁明する。《私や再婚相手の男性、そして所属事務所のアミューズとの関係で揉めていたし、いろいろな悪いことが春馬の精神や体に重なっていった。タイミングが悪かったんだと思う》続けて、春馬さんを取り巻いていた環境やボロボロに蝕まれていった心身についてを、まるで息子が我が身に“降りてきた”かのように代弁し、しゃべり倒すA子さん。そして彼が亡くなった原因にも言及したのだった。《春馬が亡くなった一番の原因は、私がそばについていられなかったこと。そこがもう、凄く後悔しています。たとえ何があったって、私が命をかけて守れなかったことは確か。そこはすごく悔しい。(中略)春馬は私がいなきゃ生きていけない。私も春馬がいないと生きていけない。そういう関係だったの》Bさんが亡くなった以上は、おそらくはA子さんが全ての遺産を相続するのだろう。現在も遺骨を持つ彼女は今後、Bさんのお墓に埋葬することは考えておらず、地元の茨城に母子が入るお墓を自ら建てるつもりのようだ。■“死人に口無し”「悲しいですね。亡くなった息子の遺産を両親が取り合うーー。なんとも浮かばれない話になりました」とは芸能ジャーナリストの佐々木博之氏。「遺産問題はなくなったのに、なぜ、ここまでしゃべる必要があったのか。確かに家庭内の事情やトラブルが掘り起こされはしましたが、いずれは忘れられるような話。しかし、今回のような家族による肉声はインパクトが強く、春馬さんのファンも聞きたくはなかった内容でしょう。よほど腹に据えかねるものがあったのか」春馬さんの死去後、ずっと沈黙を守ってきたはずのA子さんだったが、琴線に触れたのはやはり家族の肉声だったのか。「おそらくはBさんが最初に取材に答えなければ彼女も表に出ることはなく、ここまでの展開にはならなかったのかなと思います。“死人に口なし”ではないですが、まるで離婚後も良好な父子関係を築いていたかのような元夫の口ぶりが許せなかったのか。そして、そのBさんも亡くなったことでA子さんのひとり語りになりましたが、世間からすれば彼女の言い分も同じように、証言や反論することが不可能なので“死人に口なし”に映っていると思えてしまいます。こうした状況を何よりも春馬さんが嘆いているのではないでしょうか」(佐々木氏)願わくば、春馬さんが安心して眠れる静かな場所をつくってほしい。
2021年02月19日「親が存命の人であれば、相続の問題は決して人ごとではないはず。けれど、相続に関して無頓着である人は少なくありません。じつは私自身も父の死後“相続地獄”に陥ってしまったんです」こう語るのは『相続地獄』(光文社)を出版したばかりの、経済アナリスト・森永卓郎さん(63)だ。森永さんといえば、かつて本誌の取材でも「ケチと呼ばれることを恐れず、楽しく生きる」とケチ哲学を提唱。ロケ弁を多めに持ち帰る、スーパーの半額シールを狙うなど、徹底した節約生活ぶりを発信してきたが、意外なことに、相続対策はしていなかったという。「父が生きている間、相続に関して、何も考えていなかったんです。当時は知識がなく、どこをケチればいいかも、わかりませんでした。父が亡くなってから、財産を把握したり、遺品整理をするのは本当に大変で……。相続地獄を味わった身として、親の存命中に相続準備をすることの大切さを痛感しています」森永さんいわく「ケチは情報と知識の積み重ね」。“相続地獄”にハマりお金も労力も無駄にしてしまった森永さんに、たとえケチと言われても、親の存命中にやっておくべき準備を聞いた。【極意1】資産リストを作っておく「親の預金口座は生前にかならずリストアップを。金融機関は500以上ありますので、親の死後、口座があるか問い合わせるだけでもひと苦労。気づかずに、消えてしまう口座もあるかもしれません」(森永さん・以下同)10年以上出し入れのない休眠口座の預金額は毎年1,200億円にものぼるという。さらに、タイムリミットがあるのもやっかいだ。相続税の申告と納税は、親の死後、10カ月以内に行わなければならない。「四十九日法要が終わるまではバタバタしていますから、申告作業は実質8カ月ほど。漏れがあれば脱税になりますし、相続税の支払い期限を過ぎると、期日から2カ月までは年利7.3%、2カ月を過ぎると14.6%と消費者金融並みの延滞税が発生します」相続税をスムーズに申告するためにも、資産リストは必須なのだ。さらに、生前に小額口座を解約してまとめておくことも重要だと森永さん。「苦労の末、ようやく探り当てた口座が、残高わずか700円というケースもありました(笑)。この労力なんだったの……という感じです。口座をまとめる際の注意点として、預金額は、金融機関が破綻しても補償される1,000万円を超えないこと」近年は、ネット証券などデジタル資産にも注意が必要だ。「今思えば、父はパソコンを使っていたから、私の知らない株式取引やネット銀行があったかも。そこまで考えが及びませんでした」デジタル資産の有無を確認し、ログインID・パスワードは残しておいてもらおう。【極意2】財産は生前に整理「親の死後に一つずつ遺品の価値を見極めるのは途方もない労力がかかります。私の場合は、弟が業者に頼んで一括処分しました。しかし、まとめて処分するのでは損する可能性も」親の存命中に価値のある財産がどれなのか、聞き出しておくことが重要だ。「見落としがちなのは百貨店友の会の積み立てや航空会社のマイル。じつは、配偶者や法定相続人に受け継ぐことができるので、存在の有無を確認しておきましょう」さらに、死後の整理を楽にするためにも、不要なものは生前に処分を進めたい。優先すべきは自動車など持っているだけで費用がかかるものだ。「固定電話もスマホがあるなら、詐欺電話のリスクもあるので解約を検討してみてください。親が介護施設に入居して実家が空き家になっている場合は、思い切って手放すのも選択肢」【極意3】ファミリーヒストリーを聞いておこう「“公正証書はお金がかかるのでハードルが高い”という人は、自筆遺言を残してもらいましょう。思い出の品、家族への思い、財産の分割など、親の考えを知っておくことは重要です」ファミリーヒストリーを作り、把握していない「相続人」がいないかどうかも確認を。「以前、私は家系図を作る会社に依頼し、江戸時代まで家系をさかのぼりました。すると、びっくりすることに、亡くなった母親には夭逝した妹がいたんです。幸い、相続に関するような発見はありませんでしたが、もし隠し子などが見つかれば“争族”の種になるので、早めに把握しておきましょう」【極意4】葬儀・墓の準備も生きているうちに親の希望する葬儀や、墓をどうするかも確認しておきたい。「葬儀は、死の悲しみもあるなか進めなければならないので、相見積もりを取らず、病院から紹介された葬儀社にすべて任せてしまうケースが多いです。しかし、本当にそれでよいのか冷静に判断を」現在は比較的安価な家族葬や、火葬場で弔う直葬(20万円ほど)など選択肢も広い。「親の生前に葬儀の話題を持ちかけるのは気が引けますが、気持ちよく親を送るためにも話しておくべきです。墓についても、新たに購入する場合、都内だと500万円はかかります。できれば葬式費用とあわせて用意してもらうほうが安心です」とはいえ、相続準備をしようとしても、そもそも親に財産や死後の話をするのは抵抗があるもの。「いきなりお金の話はケンカになり、信頼もなくします。ふだんから親にリスペクトの念を持って接することが、肝心です。話す前には『いつもありがとう』、いろいろ教えてもらったときには『お陰で安心したよ。ご飯行こうか』とねぎらうことを忘れずに」親子のコミュニケーションが、“相続地獄”回避の第一歩なのだ。「女性自身」2021年2月23日号 掲載
2021年02月15日浅香光代さんと内縁夫の世志凡太「浅香光代さんの四十九日法要は、コロナの影響を考慮して行いませんでした。せめて納骨はしようということで、息子さんたちが遺骨をお墓に納めたのですが、長年連れ添った世志凡太さんの姿はなかったそうです。彼は“浅香さんが亡くなった以上、自分はもう関係ない”と言って、法要があっても行くつもりはないと周囲に話していました」(浅香さんの知人)浅香さんが膵臓がんで亡くなったのは、昨年の12月13日。92歳だった。「9歳で剣劇の世界に入りスターに。江戸っ子らしいハキハキした話しぶりが人気で、1999年には野村沙知代さんとの“ミッチー・サッチー騒動”が話題になりました」(スポーツ紙記者)彼女の人生は、まさに波瀾万丈と言える。「若いころに、妻子ある政治家との間に2人の息子をもうけています。その後も結婚と再婚を繰り返し、1992年からはコメディアンの世志凡太さんと、事実婚の関係で晩年まで暮らしていたんです」(同・スポーツ紙記者)血のつながらない父と子だが、どうやら彼らの間で浅香さんの遺産相続をめぐって不協和音が生じていたようだ。「遺産の分配について、世志さんは自分が2分の1を受け取り、残りを息子2人で分けるように提案しました。でも、息子さん側は納得せず、3人で均等に分けるべきだと主張したんです」(前出・浅香さんの知人)彼女が持つ財産でいちばん高額と考えられるのは、事務所兼自宅として使っていた浅草の5階建てビルだろう。「浅草寺からほど近く、築30年ほど。似たような立地条件ですと、おおよその売却価格は5000万円くらいになると思います」(不動産関係者)■内縁の配偶者に相続権はない世志の主張は妥当なのか。『弁護士法人 天音総合法律事務所』の代表弁護士である正木絢生氏はこう語る。「法律上、内縁の配偶者が亡くなった場合に、残された配偶者に相続権は認められていません。したがって、世志さんには浅香さんの財産を相続したとして、当該財産の分配を請求する権利はありません」一緒に過ごした時間の長さにかかわらず、本来なら相続する権利はないようだ。ただ、仮に3人で分配するとなれば、世志の手元にはいくら入るのだろうか。「ビルの売却価格が5000万円だとしたら、相続税を差し引くと4920万円。その売却した現金を3人で分けることになるかと思います。ただし世志さんの場合、相続権がないために財産の分配を受けると、息子さんたちからの贈与ということになると思います。そうなると、世志さんとしては贈与税の約515万円を負担することになり、取り分としては少なくなってしまうと思われます」(正木弁護士)世志と息子側の対立は、お金のことだけではない。“浅香光代”というブランドに関しても、意見の相違があった。「息子さん側は、浅香さんの写真などを管理する法人を立ち上げたのですが、世志さんは茨城県に『浅香光代記念館』を建てることを一方的に計画して、スポンサーを募ったんです。息子さんたちには事前に相談せず進めてしまったため、問題になったそうです」(前出・浅香さんの知人)もともと両者の関係は良好なものではなかったという。「世志さんが浅香さんと一緒になったとき、息子さんたちはすでに成人していましたから交流も少なかったんです。浅香さんが亡くなって、さらに距離ができてしまったのでしょう」(同・浅香さんの知人)対立は根深かったが、一応の決着を見たらしい。「一時は裁判になりそうでしたが、なんとかおさまりました。遺産の分配は3分の1ずつ、記念館の計画は中止ということで落ち着いたそうです」(同・浅香さんの知人)■双方の「言い分」を聞くと次男の北岡昭次氏に、相続争いについて問い合わせると、「詳細は申し上げられませんが概ね事実です。すでに解決ずみです」とのことだった。一方、世志にも話を聞くと、少しニュアンスが違う。「遺産は仲よく分配しました。揉めごとはありません」トラブルはなかったと話す。しかし、記念館の建設については、「これからの話です。計画中ですよ」まだ諦めていないようだ。納骨には参加しなかったが、追悼行事にも積極的な姿勢を見せた。「私は私で浅香を送り出すために、盛大に何かやりたいなと考えています」彼がどうしても開催したがるのには理由がある。「浅香さんの葬儀は息子たちが仕切ったのですが、世志さんは内縁の夫だという理由で親族ではなく“友人・知人”の扱いに。そのことが不満だったそうです。納骨に立ち会わないのはあてつけで、息子さんを抜きにして『お別れ会』を開きたいんだと思いますよ」(前出・浅香さんの知人)夫と子の間にはまだ溝が残る。浅香さんなら「あたしゃ許さないよ!」と一喝してくれるはずなのだが……。
2021年02月02日「うちは仲がいいから問題ない」「争うほどの財産もない」と思っていても、いざそのときがきたらトラブルになりがちな相続問題。誰もが知っている「サザエさん」一家のキャラクターを使いながら、円満な相続の基本を学びましょう。 ■相続は“もめる”前提で今のうちにしっかり対策!「どんなに幸せな家族でも、遺産相続はもめるものです」というのは、弁護士・税理士の長谷川裕雅先生。ひと昔前と比べて相続問題は身近な問題になっている。長谷川先生の弁護士事務所でも、遺産に関する相談が増加の一途をたどっている。「もめることを前提にして、生前にしっかりと対策を練っておくことをおすすめします。相続財産を残す側と残される側、親世代と子世代の双方が、じっくり話し合える機会を持つことが理想です」(長谷川先生、以下同)しかし、相続に関する事柄は専門用語も多く、複雑で理解しづらいのも事実。そこで登場してもらうのが、3世代が同居する、“幸せな家族”の象徴ともいえる磯野家だ。「もちろん、原作の世界といかなる関係もありません。昔から慣れ親しんだ『サザエさん』に敬意を表しながら、登場人物にモデルになってもらい、複雑な相続問題を考えてもらえたらと思います」■もし波平が亡くなったら……相続できるのは誰?「死亡して財産を相続させる人を『被相続人』、残された財産を相続する人を『相続人』と呼びます。磯野家でいえば、波平が亡くなった場合、波平が被相続人、フネ、サザエ、カツオ、ワカメが相続人となります」配偶者や子ども以外にも、相続の権利を得られる人もいる。「民法では相続人の範囲を規定しており、この範囲に該当する相続人を『法定相続人』といいます」法定相続人は「配偶者相続人」と「血族相続人」に分類。「配偶者相続人とは、被相続人の妻または夫を指し、どんな場合でも相続人になる権利があります。仮に相続開始時に被相続人の配偶者であれば、相続開始後に別の人と再婚しても相続権を失うことはありません。ただし、相続開始前の段階で離婚していると相続権はないので要注意です」血族相続人は、被相続人の子ども(実子か養子かは問わない)、孫といった「直系卑属」や父母など「直系尊属」および兄弟姉妹のことだ。「血族相続人には優先順位があり複雑です。ひとまず、被相続人の配偶者と子どもは優先的に相続人になれることを覚えておくといいでしょう」ちなみに、波平の双子の兄である海平と妹のなぎえは、被相続人の直系卑属や直系尊属がいない場合、またはいたとしても権利を失っている場合、相続権を獲得できる。「ひと昔前は、ほとんどの家庭に子どもや孫がたくさんいたため、兄弟姉妹に相続の権利が回ってくるケースは多くありませんでした。ですが、近年は晩婚化や少子化が影響し、兄弟姉妹が相続人になるケースが増えています」■妻のフネは、相続の割合や住まい、税金面で優遇される民放では、誰が相続するかだけでなく、それぞれがどれだけもらえるかという、受け継ぐ相続財産の割合(相続分)も定められている。「『法定相続分』といいますが、その割合は相続人の組み合わせによって異なります。基本的なパターンは、(1)配偶者と子どもが相続人になる場合(2)配偶者と父母または祖父母が相続人になる場合(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合の3つとなります」それぞれの相続分については、下図でチェック!(外部配信先で画像が削除されている場合は関連画像リンク先または週刊女性PRIMEの元記事で確認できます)どのパターンでもフネの割合がいちばん大きいのは、相続において、配偶者には特別な配慮がされているからである。「配偶者は、相続開始のときに相続財産である建物に居住していた場合、遺産分割が終了するまでの期間、無償でその居住建物を使用することが可能です。また、2018年7月の相続法改正により、配偶者が居住する建物は、終身または一定期間、使用を認める居住権(配偶者居住権)を、遺産分割で取得することができるようになりました。これにより、遺産分割の結果、建物の所有権を配偶者が持たなくても、居住権により、そのまま生涯、住み続けることができます」さらに配偶者は、相続税の申告においても優遇される。「配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、(1)1億6千万円(2)配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません」■波平にまさかの借金が!相続は一体どうなる?相続で受け継ぐ財産は、現金や預貯金、不動産などのプラス財産だけとは限らない。「借金や買掛金、未払いの税金、被相続人の医療費や入院費、住宅ローンなどの『債務』も、相続財産に含まれます」もし波平に生前、抱えた借金があった場合、フネとサザエ、カツオ、ワカメは、当然その借金も受け継ぐことになる。「被相続人に借金があることがわかっていながら何も法的手続きを取らず、3か月が過ぎてしまうと、『単純承認』といって『すべての財産を受け継ぐ意思がある』と判断されてしまいます」そこで検討したいのが、プラス財産の範囲内で借金を払い、結果的に財産が残ったら相続する『限定承認』と、無条件に相続を放棄する『相続放棄』という方法だ。限定承認と相続放棄は、相続人が相続開始を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所での手続きが必要なので注意しましょう。相続開始の3か月間で、プラスとマイナスの財産を把握し、きちんと考えることが必要だ。「相続財産の全部または一部を勝手に売却したり、どこかに隠すと、『法定単純承認』といって単純承認したとみなされ、ほかの2つの選択肢が問答無用で消滅します。手続きが完了するまでは、財産には手をつけないことも肝心です」■波平が遺言書を作成していればよかった!相続は、被相続人が死亡したのと同時に、自動的にスタートする。そして、細かな作業や必要書類の手続きなどやることがたくさんある。死亡届の提出に始まり、健康保険や公的年金の手続きなどといった法律関係の処理のほか、遺言書の有無の確認、相続人や相続財産の調査など、相続関係にまつわる手続きもある。「法律関係の処理や相続の手続きは、多岐にわたりますので、漏れがないよう気をつけなければなりません」また、複数の相続人がいる場合に「もめるポイント」となるのが、遺産分割である。「被相続人の相続財産を各相続人の相続分に応じて具体的に割り振りすることを遺産分割といいます。遺産分割を行う方法には、(1)遺言による指定分割(2)協議による分割(3)調停による分割(4)審判による分割の4種類があります」遺言があり分割の内容なども指定されている場合は、原則としてその内容に沿って遺産分割が行われる。遺言による指定がない場合は『遺産分割協議』といって、相続人全員で協議を行い、具体的な財産分割を決めることになるが、たいていこの協議が争いのもとになるのだ。「重要なのは、“遺産分割協議は相続人全員の合意が得られないと成立しない”ということです。お互いが自分に都合のよい主張を繰り返すだけでは一向に成立しませんし、相続人と連絡がとれないため話し合いができないということもあります」協議がもめて成立しない場合には、家庭裁判所に「調停」や「審判」を申し立てることも必要になってくる。「財産の所有状況をいちばんよくわかっているのは被相続人自身。ここでいえば波平です。無用な争いを防ぐためにぜひ『遺言書』の作成をおすすめします」相続後の調査に無駄な費用や労力を費やさないために、「財産目録」も合わせて作成しておこう。【コラム】サザエ「お父さんの預金が下ろせない!?」銀行や郵便局などの金融機関は、被相続人が死亡した事実を知ると、その時点で被相続人名義の預貯金口座を閉鎖、凍結します。以後は預貯金の入出金や公共料金などの引き落としができなくなります。サザエがフネに頼まれて波平の口座からお金を下ろしたい……。そんなときは、銀行に必要な手続きを踏まえて相続人であることを証明し、相続分の預貯金の払い戻しの請求をする必要があります。(2018年7月の相続法改正により、遺産分割前に相続分の預貯金の一部払い戻しができるように。預貯金の一定割合については、家庭裁判所の判断を経ずに銀行の窓口で支払いを受けられるようになりました。ただし、銀行は原則として「法定相続人全員」による払戻請求を求めてきます)【コラム】波平の生命保険金を受け取るのは誰?保険金は、「受取人が誰になっているか」がポイント。サザエが波平の遺産を「相続放棄」したとして考えてみましょう。この場合、受取人が波平自身の場合、生命保険金は被相続人の相続財産に含まれるため、相続を放棄したサザエは受領できません。ですが、「受取人はサザエ」「受取人は相続人」になっている場合、生命保険金は相続財産に含まれず、相続人固有の財産とみなされるため、相続放棄とは無関係に受け取れます。波平に多額の借金があったとしても、この方法ならサザエに財産を残すことが可能です。また、サザエが相続放棄をせず、生命保険金の受け取りがサザエに指定されていた場合は、サザエは法定相続分に加えて生命保険金も受け取れることに。(構成/長谷川英子)《PROFILE》弁護士・税理士/長谷川裕雅◎早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士が扱う遺産分割から税理士が扱う相続税対策まで、相続問題を総合的に解決する相続分野の第一人者。『老後をリッチにする家じまい』(イースト・プレス)など著書も多数。
2021年01月16日