「『女性自身』の記事を見たという方から、『私も探してほしい』という相談が7件寄せられました。そのうちの1人は、亡くなったお父さんの“消えた年金”を探し出し、年金4,000万円を受け取ることができました」そう語るのは“年金探偵”こと社会保険労務士で年金コンサルタントの柴田友都さんだ。信用金庫に勤めていたころから、「請求もれ年金相談」を研究。行方不明の年金の専門家として、これまで5,000件の“消えた年金”を探し当ててきた。’17年9月26日号の本誌で紹介したところ、読者からの問い合わせがあり、実際に年金が見つかったケースが相次いだという。“消えた年金”とは、’07年に持ち主不明の年金記録が約5,000万件も存在することが発覚し、社会問題となったことを指す。4,000万円を見つけたかおりさん(仮名・68)の父は大正生まれ。昭和25年(’50年)に機械器具の会社を設立し、昭和44年(’69年)の退職まで、厚生年金の保険料を納めていたが、その期間は239カ月。かおりさんの父の世代だと、年金の受給には240カ月(20年)以上の加入が必要で、1カ月不足していたため、無年金状態だった(現在の受給条件は加入期間10年)。父は昭和60年(’85年)に68歳で死去。母も平成24年(’12年)に亡くなっている。「お父さんは会社設立時に33歳。それ以前にも、会社に勤めていて、厚生年金を払っていた期間がある可能性が高いと考えました。しかし、娘さんも、『働いていたと聞いているが、どこで働いていたかは不明』とのことでした」(柴田さん・以下同)昔は厚生年金の記録を照会する場合、本人の氏名や生年月日に加えて、会社名が必須となっている。「調査は難航しましたが、調査開始から8カ月後、社名が変更されていたある会社を見つけました。そこは戦前に輸入代理店をしていてかおりさんの祖父が社長をしていたことが判明。その会社名で照会をかけたところ、かおりさんのお父さんの、昭和19年(’44年)12月〜昭和21年(’46年)3月までの16カ月分の厚生年金記録が見つかったんです」すでに明らかになっている239カ月を足すと、年金の加入期間は255カ月となり、受給資格はクリアとなった。柴田さんは、かおりさんの父がもらうはずだった「老齢厚生年金」と、母がもらうはずだった「遺族厚生年金」を請求した。老齢厚生年金を受け取っている人が亡くなった場合、その人に生計を維持されている配偶者は、遺族厚生年金を受け取れる。「かおりさんのお父さんが亡くなるまでの8年間の『老齢年金』と、お父さんが亡くなってからお母さんが亡くなるまでの27年分の『遺族厚生年金』と合わせて4,000万円が支給。両親が故人だったので、次女のかおりさんを代表に、子ども3人が受け取りました」このように、本人が受け取らずに亡くなってしまった場合、配偶者や子どもが受け取ることもできるのだ。柴田さんは日本の年金制度についてこう話す。「日本の年金は、“請求されれば、支払う”という法制度になっています。つまり、国は請求されないと払わないのです。もし、自分や家族に、年金が支給されていない疑いがある場合は、迷わず私に相談をしてほしい」自分の、そして両親のために、もう一度、年金記録を確認しよう。
2019年08月29日持ち主が判明していない年金記録はいまだ1,800万件も……。関係ないと思っていたのに、実は自分や家族にもらい損ねた年金があった例も多い。専門家に聞く消えた年金の見分け方ーー。「『女性自身』の記事を見たという方から、『私も探してほしい』という相談が7件寄せられました。そのうちの1人は、亡くなったお父さんの“消えた年金”を探し出し、年金4,000万円を受け取ることができました」そう語るのは“年金探偵”こと社会保険労務士で年金コンサルタントの柴田友都さんだ。信用金庫に勤めていたころから、「請求もれ年金相談」を研究。行方不明の年金の専門家として、これまで5,000件の“消えた年金”を探し当ててきた。’17年9月26日号の本誌で紹介したところ、読者からの問い合わせがあり、実際に年金が見つかったケースが相次いだという。“消えた年金”とは、’07年に持ち主不明の年金記録が約5,000万件も存在することが発覚し、社会問題となったことを指す。そもそも“消えた年金”はなぜ生まれたのだろうか。「かつて年金の記録は手書きで紙の台帳に記載されていました。’80年代から年金記録はコンピュータで管理されるようになりましたが、紙の台帳から正しく統合されなかったり、コンピュータに統合されるときの入力ミスも多かったりしたんです」(柴田さん・以下同)現在でも、持ち主不明の年金がおよそ1,800万件残っているという。特に“消えた年金”が多く埋もれているのが、昭和17年(’42年)〜昭和36年(’61年)の期間だ。「戦時中の昭和17年にスタートした厚生年金の前身である『労働者年金保険』から、国民年金の始まった昭和36年4月までの厚生年金に関しては、年金手帳が従業員に配布されていなかったこともあり、もらっている人が少ない。厚生年金に加入していたことすら知らない人もいるのです」今回、『女性自身』の記事を見て、柴田さんに問い合わせた読者の中にも、同様の人はいた。洋子さん(仮名・65)の父は昭和4年(’29年)生まれの90歳。戦時中に軍需工場で働いていた記憶はあるものの、ずっと工場名がわからなかった。依頼を受けた柴田さんは、「戦時中に沼津の軍需工場に終戦まで勤めていた」という洋子さんの父の記憶を頼りに年金を探し当てた。「ある航空機のメーカーが、当時沼津で航空機を生産していたことが判明しました。年金事務所で、社名を問い合わせて、お父さんの厚生年金を見つけました」自営業だった洋子さんの父は、それまで国民年金のみ受給していたが、厚生年金分の1万2,000円(2カ月分)が加算されることに。さらに、60歳の受給開始まで遡り年金を請求し、約200万円を受け取った。洋子さんの父のように、戦時下で徴用されて働いていた人が、知らないうちに厚生年金に加入していたケースは多い。もちろん、戦後でも同じようなケースはある。本誌を読んで柴田さんに問い合わせたよしこさん(仮名・64)も、義父が会社に勤めていたことが発覚し、義父の厚生年金と義母の遺族厚生年金を取り戻した。100歳の義母は涙ながらに喜んだという。「転職が多かった人や、結婚前に働いていた女性も、厚生年金が埋もれている可能性があります。昭和30〜40年代にパートに出ていた人が、じつは厚生年金に加入していたケースもあります」もしかしたら、あなたの両親やあなた、夫の年金も埋もれているかもしれない。柴田さんの作成した、次のチェックリストで確認してみよう。□戦時中に、軍需工場、挺身隊などで働いたことがある□戦前から戦後にかけて、民間会社に勤めていたことがある□配給品を扱う商店、組合に勤めていたことがある□米軍キャンプで働いたことがある□昭和34年1月以前に農業会(現・農協)に勤めたことがある□結婚前に会社に勤めていた□転職が多かった□公務員になる前後に民間会社に勤めたことがある□勤めていた会社が閉鎖、倒産、合併、社名変更した□パート、アルバイト、夏や冬だけの職場で働いたことがある□家族や親せきが経営する合資、合名、有限、株式会社で働いたことがある□自営業をはじめる前に会社に勤めていたことがある□夜間学校に通いながら、会社勤めをしたことがある□日本年金機構から「あなたのものと思われる年金記録があります」という通知をもらったが、そのままになっている「もし、チェックリストにあてはまる項目があるなら、“消えた年金”の可能性を疑ってほしい」(柴田さん)
2019年08月29日こんにちは、婚活FP山本です。先般、国が老後資金として2000万円必要などと言いましたね。突然の発表に驚いた人も多いのですが、それほどまでに年金が少ないことを初めて知った方も多いようです。そもそも年金とはいくらくらい貰えるものなのか、何か対策は無いのか……気になった人も多いでしょう。そこで今回は、国民年金と厚生年金の平均受給額や年金・老後対策について詳しくお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。国民年金の支給額は満額で80万円ほど!まずは、国民年金についてお伝えします。結論からいえば、国民年金の支給額は「満額で80万円程度」です。具体的な金額は毎年のように変わり、最新の平成31年4月分からの年金額は78万100円となっています。一ヶ月あたりに直せば、およそ6万5000円ですね。詳しくは後述しますが、年金額は「保険料の納付年数(月数)」で変わります。40年しっかり支払えば80万円程度になりますから、例えば半分の20年分しか保険料を支払っていなければ、貰える年金額も半分の40万円程度です。どちらにせよ、少額かもしれませんが……。もっとも年金は、保険料の支払い期間は決まっているのに年金の受け取り期間は「終身払い」です。つまり生存している限りもらえます。色々と不満も聞きますが、メリットも大きいのではないでしょうか。会社員の妻である女性は国民年金!想像以上に勘違いしている方も多いのですが、いわゆる専業主婦の女性がもらえる年金は「国民年金」です。会社員の妻として扶養に入っていれば保険料を支払わずに済みますが、あくまで「無料で国民年金に加入している」という扱いになります。このため年金額は、満額でも80万円程度です。会社員の扶養なのだから、妻も夫と同じく厚生年金が貰えると思っていた……という勘違いは、かなり危険といえます。そう思っていた方は、早急に何か老後対策を取りましょう。厚生年金の受給額は満額でも300万円ほど!次は、厚生年金についてお伝えします。厚生年金は、会社員が国民年金の上乗せとして貰える年金です。ただ、厚生年金は「保険料の納付額(年収)」で、大幅に貰える年金額が変わります。最近は年収も変わりやすいので、尚更に金額が分かりにくいのですが、ひとまず目安は以下の通りです。(※あくまで目安です)これに、先ほどの国民年金が加算されて貰えることになります。仮に40年満額を合算すると、年収400万円の方なら約170万円で月14万円ほど、年収1000万円の方でも約300万円で月25万円程度です。老後資金がたくさん必要なのも、何となく分かるところではないでしょうか。ただ、この通り「年収を上げれば年金も上がる」点も知っておいて頂きたいところです。目先でもお金は必要でしょうし、ついでに先々のためにも年収アップに努めましょう。「想像以上に安い」と感じる人がほとんどハッキリ言って、年金額は「想像以上に安い」と感じる人がほとんどです。また当人の年収が高いほど生活水準も高い傾向にありますから、どちらにせよ年金だけでは生活が成り立たないでしょうね。むしろ年収が高い人ほど、「現役との格差」を感じることになります。かといって、収入が落ちるのに合わせて生活水準も落とせるものではありません。落とせるにしても、ダイエットと同じく「少しずつ」が基本です。先々を見据えて動いていきましょう。将来の受給額は「納付額と年数」で決まる今度は、年金全体の基本と大局観をお伝えします。年金の受給額は、基本として「納付額(年収)と納付年数」で決まるのですが、他にも様々な要素や制度が絡み合い、かなり複雑です。ただ、簡単にいえば「がんばったほど多くもらえる」わけですから、そこまで心配する必要はありません。また、統計によると全体的な平均年金額は月15万円ほどとなっています。年収なら180万円ですね。現在の平均年収が400万円少々ですから、計算通りといえます。もし結婚していれば、そして共働きなら二人分で月30万円ほど入ってくるのが基本です。一人で月15万円と考えると厳しいですが、二人で月30万円なら相応に余裕も出てくるのではないでしょうか。この数字を前提に、一度は老後を考えておくと良いでしょう。[adsense_middle]収入などを元に、年間いくら貰えるか確認を老後不安の高まりを受けて、最近では様々なところで「年金額の試算」ができるようになっています。大抵は、収入や勤続年数などを入力するだけです。どうしても不安なら近くの社会保険労務士に相談する手もありますが、お金も要りますし、まずは手軽に試算してみませんか。そうして、年間いくら貰えるかが分かったら、現在の生活水準と比べて「毎月・毎年どのくらい足りないか」を計算しましょう。その差額×余命分が、あなたに最低限必要な老後資金です。「繰り下げ受給」や「付加年金」を検討しようここからは、年金(老後)への対策についてお伝えします。まずは「繰り下げ受給」です。これは、簡単にいえば「もらう時期を遅くする代わりに年金額を増やしてもらう」という制度になります。厚生・国民のどちらも可能で、それぞれ一ヶ月あたり0.7%、最大で42%(70歳受給時)まで増額が可能です。また「付加年金」という制度もあります。これは国民年金が対象です。毎月400円を追加で支払う代わりに、将来的に「支払った月数×200円」が年金に加算されます。仮に40年間ずっと支払いを続ければ、480ヶ月×200円で9万6000円となり、ざっと2年で元が取れるというものです。どちらも、ほぼ誰にでもできる対策ではないでしょうか。誰にでもできますが、やったか否かで大幅に老後が変わる可能性があります。年金や老後が不安な人は、一つずつでも対策を積み上げましょう。65歳から貰わなくていい対策もセットに対策というのは「とにかくすればいい」わけではありません。例えば繰り下げ受給をするのなら、セットで65歳からすぐに年金をもらわなくても大丈夫な家計状態にしなければなりません。カツカツの人にとっては、たとえ400円でも将来の致命傷になることもあります。かといって、何もしなければ老後に困る可能性が高まってしまうでしょう。何かをする前提の一方、その行動の負の面や家計全体へのしわ寄せなども考えつつ、できる限り良さげな対策を取っていくことをおすすめします。年金保険やイデコ、不動産投資など方法は様々老後対策は、他にも様々です。一番、一般的な対策としては「年金保険」が挙げられるでしょう。様々な生命保険会社で取り扱っており、内容は様々ですが、基本は「一定の時期まで保険料を支払い、以後は年金形式でお金をもらう」というものです。これは節税にもなります。また最近では「iDeCo(イデコ)」も人気です。正式には「個人型確定拠出年金」といい、簡単にいえば「自分で運用して年金を作る」ものになります。自分で運用(投資)する以上、勉強も必要ですしリスクもありますが、節税になるなど様々なメリットもあるのでおすすめです。さらに、最近では「不動産投資」も注目されています。投資金もリスクも大きい代わりに、入ってくるお金も大きく安定性も高いです。まずは、どんな方法があるかを知ることが大切でしょうね。毎月コツコツ動くほどに収入総額は増える!結局のところ、老後対策に一朝一夕はありえません。すべての対策は毎月コツコツ動き、少しずつ将来の収入総額を増やしていくことになります。時間があるほど効果も大きくなる半面、時間がないほど効果も小さくなり、必要性を追求するならリスクが必要です。どの程度の時間が必要かは様々ですが、一般論としては「最低でも20年程度」でしょうか。仮に老後資金が2000万円必要なら、年間100万円で20年ですからね。金額や数字はともかく、なるべく早くから老後対策に動き出しましょう。老後をどうするか、夫婦で話し合うことが肝心最後に、肝心なことをお伝えします。確かに、いくら年金が貰えるかは大切ですし、増やす努力も重要です。しかし、一番大事なことは「老後をどうするか、どう過ごすのか」を、夫婦で話し合うことといえます。これ次第で、老後に本当に必要なお金が大幅に違ってきますからね。例えば仕事はどうでしょう?60歳、65歳で辞めるのか、それとも80歳くらいまで働くのかで随分違います。住まいはどうですか?実家や地方に移るのと、今のままかで大きく違ってくるでしょう。とりわけ「介護が必要になったらどうするか」は、かなりの金額差が出てくる要素です。入ってくる年金額を前提に老後を考えるのではなく、したい老後の暮らしぶりを前提に必要なお金を考えるのが正解といえます。その方が努力や向上にも繋がるでしょう。ぜひ一度、夫婦でじっくり話し合ってみましょう。[adsense_middle]「独身や熟年離婚」は老後を生き抜けない要素先ほどもお伝えしましたが、年金額は一人平均15万円です。一人ではかなり厳しいでしょう。日常生活はなんとかなっても、働けなくなったり介護が必要になったりしたらアウトです。結婚しなかった独身の方、熟年離婚を控えている方は、老後破産予備軍でしょうね。相応の年齢になれば中々どうにもなりませんが、まだ若いうちなら取り返しもつきます。なるべく婚活や夫婦仲の改善に励む一方、一人で生きるなら相当な対策が必要と考えて、励んでいきましょう。年金平均と生活水準を考え、差額への対策を考えよう年金は「いくら貰えるか」が大切な一方、「いくら生活に必要か」も重要です。一般的な年金平均と生活水準の差額を余命分考えたのが、例の「老後2000万円」になります。まずは年金の少なさと対策の必要性を知り、そして対策には時間が必要なことも知り、なるべく早めに老後対策を考えて動き出していきましょう。
2019年08月14日「年金関連のデータは個人情報の宝庫といえます。いくら給料をもらっているのか、税金をどのくらい払っているのか、家族構成などはもちろん、結婚歴や離婚歴、さらには病歴や中絶経験があることなど、データを読めばその人の“すべて”がわかってしまうのです。そんなデータが2万3千人分も紛失してしまうなんて、本当に恐ろしいことです……」本誌にそう語るのは、派遣社員のA子さん。彼女が“恐ろしい”と語るのは、日本年金機構が7月23日に公表した“DVD紛失事件”のこと。国民年金の未納者計約2万3千人分の個人情報が記録された8枚のDVDが行方不明になってしまったという問題だ。国民年金未納者への支払いの督促を委託されていた会社が状況を報告するためにDVDを作成。それが日本年金機構の東京広域事務センターに宅配便で送付されたという。そしてA子さんは同センターで働いていたのだ。「センターは江東区有明にあるビルの3フロアを使用しています。働いているのは日本年金機構の正規職員が1割、残り9割は派遣社員やアルバイトなどの非正規スタッフという割合でしょうか。スタッフはパソコンでのデータ入力、電話対応、書類の整理など業務ごとにグループに分けられていて、郵便物の開封作業だけに携わっている人たちもいます。DVDの入った宅配便が届いたのは7月4日だと聞いていますが、それを受け取ったり開封したりしたのは、アルバイトスタッフだったそうです」“センターに届いた郵便物の受け取りは機構の正規職員が立ち会う”というルールもあるが、この日、機構職員は不在だった。「私たちがDVDのことを知らされたのは7月9日のこと。朝礼のときに“紛失したから捜索する”というお達しがありました。もう大騒ぎで、杉並区にある日本年金機構の本部から100名ほどの職員がやってきました。ゴミ箱を1つ1つ漁ったり、通路に1列に並んで床を這うようにして捜したり、派遣社員やアルバイトたちの荷物を全部チェックしたり……。ただDVD8枚といえばかなりの量です。2週間も捜索を続けていましたが、何だか懸命に捜したという“アリバイ作り”のようにも思えました。荷物チェックについては、私物を見たりさわったりするのですから、“スミマセン”とか“ご協力ありがとう”といった一言があってもいいと思うのですが、そういった気遣いはありませんでした」5千万件という“消えた年金”問題で社会保険庁が解体され、’10年に発足した日本年金機構。その設立委員も務めたジャーナリスト・岩瀬達哉さんは次のように語る。「機構が管理している個人情報は非常に重要なものですが、職員たちは、その認識が甘いように思われます。これらの情報が詐欺集団の手に渡れば悪用されることは目に見えています。悪徳金融業者に渡れば、逃げた顧客の追跡に使うことでしょう。いわば“金になる情報”であり、’17年には機構の職員らが、データを持ち出し、逮捕されるという不祥事も起こっています」A子さんが今回、“告発”に踏み切ったのも、日本年金機構のずさんな管理体制に疑問を抱いたからだという。「データの整理には納期もあり、厳守しなくてはいけません。そのため大勢の人員を確保しなくてはならず、日替わりのようにして新しいアルバイトの人たちがやってくるのです。大切な個人情報がいわゆる“日払いバイト”たちに任せられているのですが、立ち会うべき職員が立ち会っていなかったという事実からもわかるように、機構は非正規スタッフに仕事を“丸投げ”し、きちんと管理しているとはいえない状況です」今回の紛失事件についての見解を日本年金機構に取材したところ、広報担当者が次のように回答した。「DVDの記録は暗号化されており、限られたパソコンでしか読み取ることができません。現在までにそれらの端末が使用された痕跡はなく、さらにデータ自体を閲覧できないように処理しましたので、個人情報漏洩は起きることはありません。今後は郵便物の開封や、(DVDなどの)データの持ち運びなどは、複数人で行うようにし、同じような事態が起きないようにしていきたいと思います」だが事件後、非正規スタッフたちの負担はさらに増加したという。A子さんが嘆息する。「例えば荷物を運ぶにも、いまは最低でも2人以上で対応することになり、その分、スタッフたちの業務が増えています。セキュリティーを重視しているという姿勢をアピールしたいのでしょうが、時給1000円程度の非正規スタッフにばかり負担を強いるのではなく、管理体制そのものを見直すべきではないでしょうか」発足以来、不祥事ばかりの日本年金機構。汚名を返上できる日は来るのだろうか。
2019年08月13日今注目を集めているiDeCoですが、日増しに加入者が増えているようです。これまで、確定拠出年金制度は企業にしかありませんでした。しかし2017年より個人向けに開放され、その節税メリットを受けるべく沢山の方が資料請求や申し込みを実施しています。今回の話はメリットばかりでなく、iDeCoの仕組みに潜むデメリットについて解説していきます。60歳までは引き出せない確定拠出年金制度これは長い時間に渡って運用した場合のリターンの統計になります。長期に渡ればマイナス運用が解消されていく図になっています。つまり時間が使える方は早めに行っておいた方が損を回避し易くなるという意味です。逆に時間があまりない方は損失が出やすく、その可能性が極めて高くなるかもしれないとお考え頂ければと思います。少なくとも15年以上は投資に時間を使って頂けたらと私は考えます。使える時間を逆算した時に15年未満だとiDeCoはデメリットになってしまうかもしれません。確定拠出年金のスタートはお早めに!50歳以上からの加入は注意が必要!先程は長期に渡っての運用について解説しました。少なくとも15年超は欲しい所ではあります。制度自体は20歳~60歳までの方を対象にしていますから20代の方は十分な時間を使う事が可能です。年を重ねる毎に使える時間が無くなりますので、スタートは早いに越したことはありません。ここで、ご注意頂きたい点があります。実はiDeCoには「加入期間が10年以上満たなければ60歳からの受給が出来ない」という点です。具体的には50歳以上で始めると通算加入期間が10年に満たないケースが出てしまし、受取の年齢が繰り下がる事もあります。まずは下図をご覧ください。50歳以上でのご加入ですと、加入するタイミングにもよりますが、受給開始のタイミングが大きく異なります。付け加えて、運用期間も10年未満と短くなる為、運用成果が思ったほど望めないケースも出てくるでしょう。また掛け金にも上限がありますので、返って運用の影響を受けない預貯金で蓄えるばき、損失の可能性と天秤にかけた時にどちらがメリットになるのか?それと後述します掛け金の節税メリットを受ける事と、損失の出る可能性をお考えいただくのも非常に重要だと言えます。この点は非常に慎重なご判断をして頂ければと思います。かかる税金も優遇!その裏のデメリットって何?iDeCoと言えば「節税」のイメージが強いのではないでしょうか?節税というオプションがなければここまで広まらなかった気もします。ではiDeCo最大の特徴である「節税」はどんな時なのかを挙げます。支払った掛け金が節税運用している間の利益に対する節税受け取り時の節税以上3つです。ではそれぞれのメリットに隠れたデメリットも合せて解説していきます。[adsense_middle]支払った掛け金が節税確定拠出年金制度で使った掛け金は全額が所得控除の対象として計算されます。結果どんな効果があるのかという事ですが、毎年お支払いの所得税、住民税が減額される事になります。年末調整や確定申告によって納付した税金を所得と掛け金に応じて還付する事ができますので、メリットとしてはかなり大きいですね。ではいくら位までの支払いが節税対象になるのか図にしましたので、ご覧ください。特に自営業者の方には大きな節税効果があります。やはり国民年金のみでの老後と考えると今から出来る限り積立てておいた方がよさそうですね。ではこれだけのメリットの反対にあるデメリットは何かという事ですが、掛け金に上限がある事です。中にはもっとたくさん掛け金を支払いたいとお考えの方もいるかもしれません。しかし、iDeCoは一人一口座ですので、重複して加入はできません。さすがに節税の恩恵をたくさんは受けれないという事ですね。専業主婦に関しては、仕事をしていなければ、そもそも収入、所得がありませんので、節税のメリットを享受する事はできません。それと、⑤のお勤め先が企業年金制度や、企業型確定拠出年金制度を導入している場合、個人型への加入を認めない場合、またはマッチング拠出を利用している場合は個人型への加入が出来ないケースもありますので、お勤め先に確認した方が良いでしょう。ここでマッチング拠出に関して解説しておきます。マッチング拠出とは、企業型確定拠出年金制度において、本来はその掛け金を企業が支払うが、その支払額を超えない範囲で、従業員が手出しして上乗せで確定拠出年金に対し掛け金を支払う事。いずれにせよ掛金の限度を超えて行いたい場合は他の金融商品で行わなければならないという事になります。運用している間の利益に対する節税運用期間中の節税ですが、本来なら一般口座で投資信託を運用します。その際に運用結果によって利益が発生した際には源泉分離課税といって約20%もの課税が発生します。しかしiDeCoは利益が出ても運用期間中は非課税ですので、課税されるはずの金額も投資に回ります。ここに関してはメリットしか無いですね。受け取り時の節税iDeCoを長い期間やって、いよいよご対面の時ですね。60歳以降に受け取る事になりますが、受取の方法が2種類あります。一時金として一括で受け取るのか、年金として分割で受け取るのかという事です。ここでは税金がかかりますが、受取の金額に対して税金控除があります。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」年金で受け取る場合は「公的年金等控除」という控除が発生します。ではそれぞれのメリット、デメリットを確認してみましょう。一時金で受け取った場合これまで積み立てた金額を一気に受け取る方法です。この際に発生する控除には計算式がありますので、こちらをご覧ください。退職所得控除の計算式(勤続年数と積立期間は同じになります)勤続年数(積立期間)20年以下の場合40万円×勤続年数※80万円に満たない場合は80万円勤続年数(積立期間)20年以上の場合800万円+70万円×(勤続年数-20年)では上の計算式を元に具体的に解説します。例えば30歳から60歳まで勤務したと仮定します。すると800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円となります。この控除額までは一時金を受け取っても非課税になりますので、メリットとしてはかなり大きいのではないでしょうか。ではデメリットについてですが、上記退職所得控除は、iDeCoだけでなく、会社の退職金が発生した場合、合算しなくてはなりません。iDeCoの運用成果に左右される事もあるでしょう。ここで想定しておきたいのは、退職金制度並びに高額な退職金を支払ってくれる企業にお勤めの方です。退職金で数千万といった方もいらっしゃるかもしれません。その際は上記計算式で出た金額を遥かに超える可能性も否定はできませんので、憶えておいて頂ければと思います。年金で受け取った場合年金で分割して受け取るという選択肢を取った場合、受け取る金額に受け取った都度、控除は掛かります。65歳未満の場合は70万円まで控除対象です。65歳以上であれば120万円までとなります。先程のケースと同じように公的年金と合算して控除されます。ここでも想定しておきたい事は、先程も申し上げましたが、運用成果が大きければ公的年金と合わせて控除額を超えてしまう点、また勤続している期間中の収入が高額であれば、年金額もそれなりに大きい事が予想されますので、注意が必要です。かかる手数料はどれ位?iDeCoに関してはつみたてNISA同様に様々な手数料が発生します。また銀行やネット証券ではかかる費用が異なります。最近ネット証券では運営管理手数料を0円として打ち出していますが、銀行などで始める場合は手数料を取られる事が多い為、対面に抵抗が無ければネット証券を選んだ方が良いでしょう。それ以外に掛かる費用として、口座開設手数料が2,777円(初回のみ)、口座管理費用103円(月額)、事務委託先金融機関向け手数料64円(月額)と、どの金融機関で加入しても初年度で最大4,781円かかります。2年目以降も口座管理費、事務委託先金融機関向け手数料は発生し、年金で受け取る際も432円(1回当たり)の費用は発生します。この手数料はどこで加入しても同じ金額ですが、敢えて差がつくとすれば、投資信託における信託報酬という運用してくれる人への支払いでしょう。これはファンド毎に違いますので、しっかりと見ておいた方が良いでしょう。手数料は致し方無いですが、デメリットとしての部分は、信託報酬が低いファンドを自身で選択しなければなりません。前半にも書きましたが、投資は自己責任ですので、選択を人任せにはできない点は初心者の方にとってデメリットになるかもしれません。まとめ今回はiDeCoに関するデメリットについて解説してきました。メリットばかりでは無いという事や、細かいかもしれませんが、気を付けておいた方が良い部分に関して書きました。何度も言いますが、自己責任の下行わなければなりませんので、しっかりデメリットを把握して、許容範囲の中であれば是非一歩進んで頂けたらと思います。
2019年08月11日2019年6月に端を発した“年金2000万円問題”ですが、実際もらえる年金を把握することは今後を考える上で必要なことです。前回は夫が会社員、妻が扶養範囲内(第3号被保険者)とした場合の事例をお伝えしましたが、今回は夫が自営業・妻が専業主婦(パート・自営業の場合を含む)についてお伝えします。※この記事は2019年6月時点を基準にしております。 今回の対象家族夫:33歳・会社員(20歳~22歳は学生、23歳~60歳は個人事業主)妻:30歳・扶養範囲内の主婦(20歳~26歳は会社員、23歳~60歳は個人事業主または専業主婦)子: 1歳 老齢年金について自営業の方は65歳以降に支給される年金は原則老齢基礎年金のみとなりますが、会社等に勤務し厚生年金保険料を1か月以上納めた場合は、老齢厚生年金も合わせて支給されます。老齢厚生年金は厚生年金保険料の金額と納めた期間に比例しますので、厚生年金保険料を納めた期間が短い場合は年間数千円程度の場合もあります。老齢基礎年金は20歳~60歳までの40年間、国民年金保険料を欠かさず納めた人は、年間約78万円(2019年度基準は780,100円)が支給されます。 国民年金保険料は、収入に応じて変動する会社員等の厚生年金保険料とは異なり、収入に関わらず一律の保険料となります。2019年度の国民年金保険料は月額16,410円です。この保険料と受け取る金額を現在の制度で今後の物価や制度改正を考慮せずに比較すると、40年間で合計786.68万円を納め、1年間で約78万円が受け取れるので、10年を少し超える期間以上受け取れれば、支払った保険料以上に年金を受け取れる計算となります。 また、個人事業主(第1号被保険者)の場合は会社員と異なり、配偶者の扶養(第3号被保険者)の適用は受けられないため、配偶者が年収130万円未満の場合も国民年金保険料を納める必要が生じます。 今回対象のご家族は、夫が65歳から支給できる年金は約78万円、妻が65歳から支給できる年金は約78万円となります。夫婦合計で年間約156万円となりますので、この年金額が夫婦二人で老後の生活のやりくりができるか考える前提の金額なります。 なお、ご自身の国民年金・厚生年金の試算をしたい方は、日本年金機構のねんきんネットに登録すると今まで払った年金保険料と今後の収入の推移で試算できますので、興味を持った方はアクセスしてみてください。 しかし、多くの自営業者の場合は65歳以降を老齢基礎年金のみで生活しているケースは少なく、65歳以降もお仕事を継続したり、貯蓄や私的年金等で自助努力したりされているケースが少なくありません。国民年金基金、確定個人型(iDeCo)、民間の保険会社の行っている個人年金・共済、小規模企業共済などの制度がありますので、ご家族や家計の状況に応じて、利用を検討されると良いでしょう。 遺族年金について国民年金は老後の生活費だけでなく、遺族年金としてご家族に支給される制度でもあります。 今回対象のご家族で、直近に夫が亡くなった場合には、遺族基礎年金が支給されます。子が18歳到達年度末日までは、遺族基礎年金が約100万円(2019年度基準は1,004,600円)支給されますが、それ以降(子が19歳になる年度以降)の遺族年金は支給されず、その後の年金は妻が65歳以降に受け取る老齢基礎年金となります。生命保険を検討する場合は、この遺族年金の支給も念頭に置いて計算しますが、会社員等の遺族厚生年金が支給されるご家族よりは保険金額が多めになることがほとんどです。 自営業者の方は会社員等に比べて、年金保険料が安くなるケースが多い反面、受け取る老齢年金額も多くありません。そのためにも、会社員等よりも老後の生活についてどうするかを若い時期に考えておく必要があります。子育て中に、老後資金の準備は難しい面もありますが、準備をせずに老後を迎えると働き続ける選択肢しか残らなくなります。そのために、老齢基礎年金をベースに働く時期を長くするか、自助努力で老後資金を準備するか、併用するか等を定期的に確認するようにしましょう。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年07月29日「老後2,000万円不足問題」で一躍クローズアップされた年金・給付金。制度は複雑だが、実は思わぬ「裏ワザ」が!そんな「裏ワザ」を経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。「老後2,000万円不足問題」から、年金への注目度が上がっています。ですが、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」の改訂は、大きく報じられていません。年金の受け取りは原則65歳からですが、60~70歳の好きな時期から受給できます。ただ、受給を65歳より早く「繰り上げ」ると0.5%×早めた月数分年金が減額され、65歳より遅く「繰り下げ」ると0.7%×遅らせた月数分増額されます。改訂版ねんきん定期便には、70歳まで繰り下げると受給額が増えることを図で解説。いっぽうで、繰り上げの図はありません。政府は繰り下げのお得感を強調し、当面の支給額を減らせる繰り下げに誘導したいのでしょうか。ですが、繰り下げが必ずしも得だとは言えません。年金を賢くもらう裏ワザを紹介します。■加給年金「加給年金」とは、厚生年金に20年以上加入した人が、65歳で年金を受給する際、年下の妻や18歳未満の子どもがいたら受け取れるもの。いわば、年金の「家族手当」です。妻の年収が850万円未満などの条件を満たすと、妻が65歳になって自分の年金を受け取るまで、夫の年金に加給年金がつきます。妻への加給年金は、年22万4,500円。特別加算と合わせると、年39万100円になり、月額では約3万2,500円受け取れます(夫が’43年4月2日以降生まれの場合)。ただし、夫がすべての年金を繰り下げてしまうと、加給年金は受け取れません。妻が5歳年下なら、年約39万円×5年=約195万円もの加給年金が一切受け取れない、残念な結果になってしまいます。【裏ワザ】年金を分ける厚生年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て、2つの年金は分けて受給でき、加給年金は老齢厚生年金に付随する制度です。年金すべてを繰り下げると加給年金はもらえませんが、年金を分け、老齢厚生年金を65歳から受給すれば、加給年金ももらえます。そのうえで老齢基礎年金だけを繰り下げれば、年金額を増やすこともできます。
2019年07月26日2019年6月には“年金2000万円問題”がさまざまなメディアで報道されましたが、実際もらえる年金はどれくらいか把握している人は多くないと思います。今回は、夫が会社員、妻が扶養範囲内(第3号被保険者)とした場合の現在の制度で支払われる厚生年金・国民年金の金額についての概要をお伝えしようと思います。 ※この記事は2019年6月時点を基準にしております。 今回の対象家族夫:33歳・会社員(20歳~22歳は学生、23歳~60歳は会社員・38年間の平均年収400万円と仮定)妻:30歳・扶養範囲内の主婦(20歳~26歳は会社員、27歳~60歳は扶養範囲内で主婦かパート勤務)子: 1歳 老齢年金について65歳以降に支給される年金を老齢年金と言いますが、会社等に勤務した場合にお給料から支払う厚生年金保険料が1か月以上ある場合は、老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されます。老齢基礎年金は20歳~60歳までの間、国民年金保険料か厚生年金保険料を欠かさず納めた人は、年間約78万円(2019年度基準は780,100円)が支給されます。老齢厚生年金は加入期間や給料等に連動する保険料によって支給額が異なりますが、勤務中38年間の平均年収を400万円とした場合、年間約85万円が支給されます。厚生年金保険料を払っている期間が短い場合は、年間数千円程度、勤務中の平均年収が1000万円を超える場合には、年間約150万円程度となることもあります。 夫婦の年齢差がある場合、加給年金が受け取れる場合があります。加給年金とは老齢厚生年金が支給される時点で、年金受給者によって生計が維持されている65歳未満の配偶者または原則18歳までの子がいれば、年金額が加算される制度で、2019年度では、390,100円です。また、配偶者が65歳になった時点で加給年金は打ち切りとなります。その代わりに配偶者に加算される振替加算の制度もありましたが、昭和41年4月1日生まれ以降の方は対象外となります。 今回対象のご家族は、夫が65歳から支給できる年金は約163万円(妻が年金支給を受けるまでは約202万円)、妻が65歳から支給できる年金は約79万円となります。夫婦合計で年間約242万円(妻が年金支給を受けるまでは約202万円)となりますので、この年金額が夫婦二人で老後の生活のやりくりができるか考える前提の金額なります。 なお、ご自身の国民年金・厚生年金の試算をしたい方は、日本年金機構のねんきんネットに登録すると今まで払った年金保険料と今後の収入の推移で試算できますので、興味を持った方はアクセスしてみてください。遺族年金について国民年金・厚生年金は老後の生活費だけでなく、生計の主体である方が亡くなった場合は、遺族年金としてご家族に支給されます。遺族年金の詳細は以前お伝えした記事「老後の支給だけでない?遺族給付や障害給付もある公的年金」をご確認ください。 今回対象のご家族で、直近に夫が亡くなった場合には、遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。子が18歳到達年度末日までは、遺族基礎年金が約100万円、遺族厚生年金が約41万円、合計約141万円が、それ以降(子が19歳になる年度以降)から妻が65歳以降老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るまでは、遺族厚生年金約41万円と中高齢寡婦加算約58万円(2019年度基準は585,100円)、合計約96万円が受け取れます。 生命保険を検討する場合は、この遺族年金の支給も念頭に置いて、それでも足りない生活費や子の教育費を保険で用意すると生命保険に入り過ぎといった状況を防げます。上記以外にも、勤務先によっては退職金や企業年金(厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、中退共等)が用意されている場合もあります。老後の2000万円はあくまでも平均値の比較に過ぎず、ご家族ごとに必要金額は異なります。 子育て中に、老後資金の準備は難しい面もありますが、現状どのような状況になっているか把握することも大切です。今回の内容でご自身やご家族の年金の内容が気になるようでしたら、ねんきんネットの試算やねんきん定期便の確認、年金事務所への問い合わせなどをすると良いでしょう。不安の解消や今後の対応をするためにも、年金の概算は確認するといいですね。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年07月24日日本年金機構の東京広域事務センター(東京都江東区)が個人情報を含む年金関連データを収載したDVDを紛失していたと明らかになった。またもやの不祥事に加えて、参院選の直後というタイミングでの発表に怒りの声が噴出している。22日の産経ニュースによると、機構は国民年金の保険料未納者に訪問や電話で支払い催促する業務を外部業者に委託してきた。その業者が状況を報告するための情報を記録したDVDを送付したが、同センターに届いた後に行方不明になったとのこと。機構の担当者は「具体的な個人情報の内容や人数、行方不明になった時期は調査中」とコメントしているという。DVDは同センターにある一部のパソコンでのみ閲覧できるよう暗号化されており、すでにデータを閲覧できないよう措置をとったと伝えられている。さらに21日の朝日新聞によると厚生労働省も今回の紛失を把握していたが、同日時点では公表していなかったという。機構が毎月発表する「事務処理誤り」に掲載するが、ネットではその方針含めて“紛失”に怒りの声が上がっている。《事務処理誤り?その処理方法こそが誤りだ。漏えいがないから良いのではなく、紛失した事が問題だし、それを発表しないのも問題》《これだけ個人情報の取り扱いが厳しい世の中で紛失して何も公表しないのは遺憾に思います》《管理体制に不備がなかったのか、顛末を明らかにし原因追求と再発防止策を国民に説明報告を求めます》また今回の件が明らかになったのは、参院選直後のこと。そのためネットではタイミングを疑問視する声も上がっている。《国民年金のデータ紛失したの?本当なの?選挙のあとにわかるの?あえてなの?》《こー言う大事な事を選挙で隠れる?タイミングで発表する機構はダメだと思うし、それをさせている現政府の監督責任も大きいと思います》《日曜日に分かるもんなんだ。厚労省の皆様、選挙当日も休日出勤されてたの?選挙前ということで、公表を差し控えてたのかな?って疑われかねないから、経緯をしっかりと説明すべきかと》07年の「消えた年金問題」の後に社会保険庁が廃止されたことで、10年1月に日本年金機構は設立された。しかし以降も、不祥事が相次いでいる。15年6月には職員の端末がサイバー攻撃を受け125万件の年金情報が流出したと公表し、17年9月には事務処理ミスなどから約10万6,000人に総額約598億円の年金の支給漏れがあったと陳謝。18年3月には約130万人に年金を過小支給していたことも発覚。機構は受給者のデータ入力を情報処理会社に委託していたが、この会社が契約に反して中国の業者へ約500万人分の業務を再委託していたことも明るみになっていた。
2019年07月23日「国民年金しかもらえない高齢者は2,000万円足りないのではなくて、5,000万円以上足りないのです」金融庁の報告書に端を発した「老後2,000万円不足」問題。これに対してキャスターの辛坊治郎さんが、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』(6月13日放送)で冒頭のように語り、話題になっている。公的年金の被保険者は’16年度で約6,700万人いるが、そのうち、個人事業主やその配偶者などが該当する「国民年金第1号被保険者」は約1,600万人。年金を納めたり、受給したりしているうちの「4人に1人」という計算だ。これほど多くの人たちが「5,000万円足りない」とする辛坊説を、経済評論家の加谷珪一さんは「的を射た数字だ」と説明する。「“老後2,000万円”は、総務省の『家計調査』の、無職夫婦世帯の実支出の平均額月26万4,000円と、実収入の平均額月20万9,198円の差額を根拠にしています。しかし、現在の国民年金は満額で月約6万5,000円。夫婦でも13万円ほどです。つまり国民年金だけで95歳まで生きるとなると、およそ5,000万円が不足するという計算になります」それでは、ファイナンシャルプランナーの中村薫さんに老後の準備の進め方を解説してもらおう。「1つは『月1万円でも支出を減らすこと』です。現在50歳で月1万円ずつ支出を減らすことができれば、65歳までに180万円減らせる計算に。さらに、老後にかかるお金を減らすこともできます。そしてもう1つが『国民年金の未納期間を減らすこと』です」以上が必ずやっておくべきこと。そのうえで、自らの所得や職種に応じて、老後資金を増やす4つの方法を考えよう(※1:加入年の上限や受取時期は国民年金の加入状況等により異なる場合がある。※2:課税所得400万円で上限額まで加入した場合の所得控除による節税効果の例)。【1】国民年金基金掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限(※1):60歳まで受け取れる時期(※1):60歳以降節税効果の例:年約24万円(※2)現在は予定利率1.5%で運用されている。ライフプランに応じて、受給の種類を選ぶことができて、終身受給のものもある。保険料は所得控除の対象になり、所得税や住民税を節税できる。「国民年金に“上乗せ”して加入することで、65歳以降に受け取れる年金額を増やすことができるのが『国民年金基金』です。厚生年金のない個人事業主のための“2階建て”システムです」自営業のCさん(50)は、1口目の終身年金A型をはじめ計8口を選択し、掛金は約6万7,000円。Cさん自身がこう語る――。「増える年金の額は年齢によって年6万~54万円の間で変動しますが、95歳まで生きた場合、合計1,200万円になる計算です。国民年金だけだと6万5,000円しかもらえないので、60歳までの10年間、上限6万8,000円に近い月額を頑張って掛けることにしました。だいぶ安心できます」【2】iDeCo掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限(※1):60歳まで受け取れる時期(※1):60歳以降節税効果の例:年約24万円(※2)/運用益非課税金融商品を選んで、自分で運用する。国民年金基金よりも高い利率で運用できる可能性がある一方、元本割れのリスクも。受け取りは分割と一括が選べて、一括の場合、サラリーマンの退職金と同様に、税金が大きく優遇される「退職所得控除」の対象になる。「個人型確定拠出年金。税制面でも優遇された制度です。国民年金基金と併用できますが、月の掛金は2つ合わせて6万8,000円が上限です。元本が保証される『定期預金』『保険』商品か、元本割れのリスクがある『投資信託』から選択できます。非課税メリットは大きいですが、積立期間の満期の60歳まで途中解約できず、引き出せないことがデメリットです」(中村さん)【3】つみたてNISA掛金の上限額(自営業者、年間):40万円加入年の上限(※1):20年(非課税になる期間)受け取れる時期(※1):いつでも節税効果の例:運用益非課税一定の条件を満たした投資信託などを積み立て方式で購入していく。年間40万円、最長20年間で800万円まで投資可能。いつでも売却できて、売却益は非課税。「つみたて型の少額投資非課税制度で、iDeCoとの最大の違いは、途中でいつでも売却して引き出せるという点。事業に必要な資金が急に必要になることが多い人などは、こちらのほうが向いているかもしれません」(中村さん)【4】付加年金掛金の上限額(自営業者、年間):4,800円加入年の上限(※1):60歳まで受け取れる時期(※1):65歳以上節税効果の例:年約1,500円(※2)国民年金保険料に月々400円を足して納めると、将来の年金額が月々200円増える。仮に50歳から10年間払い続けると、年金額は2万4,000円増える。国民年金基金に加入していると、付加年金を払うことはできない。老後のために資金を回す余裕がないという人におすすめがこちら。「付加年金は年金保険料に月400円を加えて払うだけで、納付した月数×200円が終身で増えます。利幅はいちばん大きいですが、国民年金基金と併用することができないのがデメリットです」(中村さん)さまざまな手段がわかったところで、中村さんはこうアドバイス。「それぞれに一長一短がありますので、『国民年金基金とiDeCo』とか、『国民年金基金とつみたてNISA』など、複数のものに分けて、少しずつ運用するという方法を取る人も多い。経験を積みながら、規模をだんだんと大きくしていくのがいいでしょう」
2019年07月05日「国民年金しかもらえない高齢者は2,000万円足りないのではなくて、5,000万円以上足りないのです」金融庁の報告書に端を発した「老後2,000万円不足」問題。これに対してキャスターの辛坊治郎さんが、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』(6月13日放送)で冒頭のように語り、話題になっている。公的年金の被保険者は’16年度で約6,700万人いるが、そのうち、個人事業主やその配偶者などが該当する「国民年金第1号被保険者」は約1,600万人。年金を納めたり、受給したりしているうちの「4人に1人」という計算だ。これほど多くの人たちが「5,000万円足りない」とする辛坊説を、経済評論家の加谷珪一さんは「的を射た数字だ」と説明する。「“老後2,000万円”は、総務省の『家計調査』の、無職夫婦世帯の実支出の平均額月26万4,000円と、実収入の平均額月20万9,198円の差額を根拠にしています。しかし、現在の国民年金は満額で月約6万5,000円。夫婦でも13万円ほどです。つまり国民年金だけで95歳まで生きるとなると、およそ5,000万円が不足するという計算になります」国民年金(満額、夫婦2人):12万9,882円-実支出:26万3,718円(総務省「家計調査」2017年より)=-13万3,836円(不足額)。30年で不足額は4,818万円になる。だが、必ずしも悲観することばかりではないと加谷さんは言う。「会社員と違って、個人事業主に定年はありません。会社員が定年後、働こうと思ったら、今までと別の仕事をしなければいけませんが、個人事業主であれば、慣れた仕事を続けることができる。“人生100年時代”は働き続けることが最大の防衛術になります。とはいえ、一生涯働くことも困難です。いずれ、働けなくなったときに備えて、老後の準備を怠ってはなりません」それでは、ファイナンシャルプランナーの中村薫さんに老後の準備の進め方を解説してもらおう。「1つは『月1万円でも支出を減らすこと』です。現在50歳で月1万円ずつ支出を減らすことができれば、65歳までに180万円減らせる計算に。さらに、老後にかかるお金を減らすこともできます。そしてもう1つが『国民年金の未納期間を減らすこと』です」■必ずやっておきたい老後の準備(※令和元年度の金額を基に概算)【家計の見直し】支出が減れば、必要な老後資金も減る。月1万円の節約ができれば、65~95歳の30年で360万円の節約に。【国民年金を満期(40年)に近づける】国民年金の満期は40年。現在の保険料は年間19万6,920円で、納付年数が1年増えるごとに年金受給額は約2万円増加する。未納になっている保険料を過去2年1カ月ぶんを遡って払う「追納」や、60~65歳になるまでの間に総加入年が40年に達するまで納付できる「任意加入」など加入期間を延ばすことができる。老後資金を増やすため、この2つは必ずやっておこう。
2019年07月05日これだけあれば、なんとかなるかも……。あなたがもらえると思っている年金額は本当に正しいですか?じつは年金にも社会保険料がかかるし、額は自治体によって違います――。「年金不安が広まっていますが、年金受給を控えた50代の人でも、自分が受け取れる年金の手取り額を知っている人は少ないのです。実際に年金を受け取ってみて“こんなに引かれるの?”と愕然としたという話はよくあります」そう解説してくれたのは『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』(ダイヤモンド社)の著者で、「生活設計塾クルー」取締役の深田晶恵さんだ。「ねんきん定期便」で将来もらえる年金額を知っているから大丈夫、という人こそ要注意だ。「1年半前に埼玉県から、都心のマンションに引っ越しましたが、前年より3万円も手取り額が減りました。年金は全国どこでも同じ額が受け取れると思っていましたのに……」と語るのは東京都在住の70代の女性。深田さんが解説する。「年金の手取り額は、額面の年金収入から、社会保険料である国民健康保険料と介護保険料、そして所得税や住民税を引いたものになります。じつは自治体によって社会保険料が大きく異なるので、同じ年金額でも、住んでいる自治体で、手取り額に差が出てくるのです」そこで本誌では、深田さんの協力を得て、全国の県庁所在地ごとの年金の手取り額を調査した。年金額は、一般的なサラリーマンの受給額とされる月約22万円、年間で265万円を基準とした。「手取り額が少ない県庁所在地」のランキング上位5都市、下位5都市は次のとおりだ(※「社会保険料」は国民健康保険料と介護保険料の合計、「税金」は所得税と住民税の合計。試算の前提は、65~75歳の年金のみで生活している男性で、妻(65~74歳)を扶養している。国民健康保険料は世帯(夫と妻)の合計額、介護保険料は夫だけにかかる)。【1位】大阪府大阪市=手取り額:224万2,495円/社保+税金合計:40万7,505円【2位】愛媛県松山市=手取り額:224万3,480円/社保+税金合計:40万6,520円【3位】島根県松江市=手取り額:224万6,970円/社保+税金合計:40万3,030円【4位】佐賀県佐賀市=手取り額:225万4,024円/社保+税金合計:39万5,976円【5位】熊本県熊本市=手取り額:225万7,912円/社保+税金合計:39万2,088円【43位】栃木県宇都宮市=手取り額:231万500円/社保+税金合計:33万9,500円【44位】神奈川県横浜市=手取り額:231万4,590円/社保+税金合計:33万5,410円【45位】千葉県千葉市=手取り額:231万6,510円/社保+税金合計:33万3,490円【46位】埼玉県さいたま市=手取り額:231万8,300円/社保+税金合計:33万1,700円【47位】静岡県静岡市=手取り額:232万1,900円/社保+税金合計:32万8,100円年金の手取りがもっとも少ないのは大阪市で224万2,495円。一方、もっとも多く受け取れるのが静岡市の232万1,900円。その差は1年間で約8万円(7万9,405円)。95歳まで生きた場合、30年間で両市の差は240万円にもなる!「このランキングは、おおまかな目安にはなります。ただ、収入が低ければ軽減措置などで負担率は低くなり、受け取る年金が高ければ、負担率は収入に合わせて高くなる。年金額265万円のケースということを忘れないでください。また同じ都道府県でも市区町村によって、手取り額は異なります」そこで、全国的に話題の自治体の手取り額も同じ基準で調べてみた。【日本一の企業城下町】愛知県豊田市=手取り額:233万7,800円/社保+税金合計:31万2,200円【財政破綻した】北海道夕張市=手取り額:233万9,560円/社保+税金合計:31万440円【日本一小さい村】富山県舟橋村=手取り額:232万1,000円/社保+税金合計:32万9,000円【日本一リッチな村】愛知県飛島村=手取り額:234万7,440円/社保+税金合計:30万2,560円【日本一所得の高い村】北海道猿払村=手取り額:234万7,400円/社保+税金合計:30万2,600円【ふるさと納税日本一】大阪府泉佐野市=手取り額:225万7,000円/社保+税金合計:39万3,000円泉佐野市を除き、どこも社会保険料が安く手取り額が高いという結果が出た。「愛知県豊田市は、トヨタ自動車やその関連企業が多く、法人税の収入が多い。また、ホタテ漁が盛んで、住民の平均年収が“日本一の村”である北海道猿払村は、国民健康保険の加入者に高収入な漁師さんが多いため、村の財政が潤っていることが考えられます。さらに、自治体の財政力を表す『財政力指数』全国1位の愛知県飛島村は、火力発電所や大型コンテナ船が接岸できる飛島ふ頭などを有している一方、人口が少ないので、税収が多く社会保障費などの支出が少ないためでしょう」とはいえ、財政破綻をして、全国唯一の財政再生団体となった北海道夕張市、ディズニーランド7個分の大きさで“日本一の小さな村”といわれる富山県舟橋市なども手取りが多いのは?「夕張市はずっと国民健康保険料が高かったそうですが、今年度から積み立ててきた準備基金を有効活用し、保険料の高騰を抑制したそう。また、舟橋村は人口増加率が全国トップクラスで、現役世代の割合が多く、財政が健全です。ふるさと納税で全国1位となる約500億円(’18年度)の寄付金を集めた大阪府泉佐野市は、社会保険料の抑制ではなく、別のところで還元しているのかもしれません。年金の手取りを比較することで、自治体の取り組みや指針が見えてくるのです」気がかりなのは、年金の手取り額が今後、減っていく可能性が高いということだ。「3年ごとに見直される介護保険料は、制度が始まった’00年から、全国平均で倍近く上昇しました。ますます高齢化が進むことで、今後も社会保険料は上がっていくとみられています」実際の手取りを知ることは、老後資金を守る大きな一歩になるはずだ。
2019年06月28日「年金不安が広まっていますが、年金受給を控えた50代の人でも、自分が受け取れる年金の手取り額を知っている人は少ないのです。実際に年金を受け取ってみて“こんなに引かれるの?”と愕然としたという話はよくあります」そう解説してくれたのは『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』(ダイヤモンド社)の著者で、「生活設計塾クルー」取締役の深田晶恵さんだ。「ねんきん定期便」で将来もらえる年金額を知っているから大丈夫、という人こそ要注意だ。「1年半前に埼玉県から、都心のマンションに引っ越しましたが、前年より3万円も手取り額が減りました。年金は全国どこでも同じ額が受け取れると思っていましたのに……」と語るのは東京都在住の70代の女性。深田さんが解説する。「年金の手取り額は、額面の年金収入から、社会保険料である国民健康保険料と介護保険料、そして所得税や住民税を引いたものになります。じつは自治体によって社会保険料が大きく異なるので、同じ年金額でも、住んでいる自治体で、手取り額に差が出てくるのです」そこで本誌では、深田さんの協力を得て、全国の県庁所在地ごとの年金の手取り額を調査した。年金額は、一般的なサラリーマンの受給額とされる月約22万円、年間で265万円を基準とした。「手取り額が少ない県庁所在地」のランキング上位5都市、下位5都市は次のとおりだ(※「社会保険料」は国民健康保険料と介護保険料の合計、「税金」は所得税と住民税の合計。試算の前提は、65~75歳の年金のみで生活している男性で、妻(65~74歳)を扶養している。国民健康保険料は世帯(夫と妻)の合計額、介護保険料は夫だけにかかる)。【1位】大阪府大阪市=手取り額:224万2,495円/社保+税金合計:40万7,505円【2位】愛媛県松山市=手取り額:224万3,480円/社保+税金合計:40万6,520円【3位】島根県松江市=手取り額:224万6,970円/社保+税金合計:40万3,030円【4位】佐賀県佐賀市=手取り額:225万4,024円/社保+税金合計:39万5,976円【5位】熊本県熊本市=手取り額:225万7,912円/社保+税金合計:39万2,088円【43位】栃木県宇都宮市=手取り額:231万500円/社保+税金合計:33万9,500円【44位】神奈川県横浜市=手取り額:231万4,590円/社保+税金合計:33万5,410円【45位】千葉県千葉市=手取り額:231万6,510円/社保+税金合計:33万3,490円【46位】埼玉県さいたま市=手取り額:231万8,300円/社保+税金合計:33万1,700円【47位】静岡県静岡市=手取り額:232万1,900円/社保+税金合計:32万8,100円年金の手取りがもっとも少ないのは大阪市で224万2,495円。一方、もっとも多く受け取れるのが静岡市の232万1,900円。その差は1年間で約8万円(7万9,405円)。95歳まで生きた場合、30年間で両市の差は240万円にもなる!「大阪市は、大企業本社の首都圏への移転、失業率の高さなどの問題を抱え、財政状況が低迷していました。それが社会保険料に反映されているのです。特に“格差”の最大の要因となるのが、国民健康保険料。ランキング上位の県庁所在地ほど、高い傾向にあります。もっとも高かった松江市(23万9,730円)と、もっとも安かった静岡市(16万1,100円)で、7万8,630円もの差が出ました。国民健康保険料の差は、医療機関を多く利用する高齢者の割合や、税収などが関係しているとみられます」(深田さん)社会保険料が高くなれば、税金は多少安くなる。これは、社会保険料を控除した(差し引いた)あとの金額に、税金がかかるためだ。「このランキングは、おおまかな目安にはなります。ただ、収入が低ければ軽減措置などで負担率は低くなり、受け取る年金が高ければ、負担率は収入に合わせて高くなる。年金額265万円のケースということを忘れないでください。また同じ都道府県でも市区町村によって、手取り額は異なります」
2019年06月28日老後20~30年で最大2千万円の資金が不足する――。“年金神話”崩壊を告げた、金融庁が6月3日に発表した「金融審議会『市場ワーキング・グループ』報告書」。発表当初はその内容を支持していた麻生太郎金融相(78)だが、11日に「正式な報告書としては受け取らない」と表明。さらに、18日には報告書を基にした質問への回答を拒否する方針を閣議決定していた。7月の参院選を見据えた、不誠実な政府の対応に国民も怒り心頭だ。火消しに躍起な麻生金融相は11日、記者会見で報告書の内容をこう疑問視した。「高齢者の生活は極めて多様だ。(資金が)一概に足りないと決めつけるのはいかがなものか」確かに“老後に2千万円”が根拠としているのは、高齢者世帯の支出と収入の単純な差額だ。“普通の生活”を諦めて、食費や光熱費を無理に削ったり、お金のかかる趣味を諦めたりすれば、赤字額を減らすことはできるだろう。しかし、問題はそう単純ではなかった――。「年金は将来的にどんどん減らされていきます。それは年金に“悪魔の仕組み”があるからです」そう語るのは、“年金博士”として知られる社会保険労務士の北村庄吾さんだ。10日、安倍首相は参議院決算委員会で「マクロ経済スライドによって、100年安心という年金制度ができた」と安全性を強調。この「マクロ経済スライド」こそが、北村さんの言う“悪魔の仕組み”そのものだという。「かつて物価が上昇した場合、年金額も同じように上昇する決まりでした。ところが、マクロ経済スライドが発動されると、物価が上昇しても、年金の上昇が抑制されてしまうのです」(北村さん)年金の上昇率が何パーセント抑制されるかは、被保険者の減少率や平均余命の延びによって決まる。現在の“調整率”は約0.9%。つまり、物価が1%上昇しても、年金額は調整率を差し引いた0.1%しか上昇しない。仮に、物価が毎年1%上がっていった場合、10年後には現在よりも約10.5%も物価が上がっていることに。しかし年金は0.1%しか上昇しないので、10年で1%しか上がらない。その差が9.5%にまで膨れ上がるのだ。「つまり、年金の価値が10年で約10%減ってしまうのです。金融庁の報告書によると、平均年金受給額は19万円ほど。そうすると、10年後の年金の価値は、現在の感覚でいうと、17万円ほどになってしまいます。そうなれば、赤字額は5万5千円では足らない。おそらく月7万5千円程度の赤字が出るようになります」(北村さん)10日、日本共産党の小池晃書記局長(59)も「マクロ経済スライドの発動などで、すでに安倍政権の7年間で実質6.1%の年金が削減された」と指摘していた。こうなると、“生活費だけで2千万円の不足”という予想でさえ、楽観的な計算になりそうだ。金融庁の報告書によって、あらわになった老後資金の不足。報告書は、投資によって増やせる」としているが、平野さんは疑問を呈する。「株の運用は、初心者ではほとんど利益を出せません。今の50代にとっては『何を今さら……』という話でしょう。そもそも、この世代は投資に関する知識があまりありません。バブル崩壊を目の当たりにし、若いころから貯蓄に力を入れてきた世代。今さら投資をしろと言われても、ハードルが高いでしょう」報告書の対処に焦りを見せる政府だが、自民党関係者はその様子を冷ややかに見ている。「ちゃんとデータで示されているのですから、麻生さんの『政府の政策スタンスと異なるから受け取らない』という言い訳なんて通らない。政府が言っていた“年金は100年安心”神話は完全に崩れたと言えます」はたして、作成者側はどう考えているのか?今回、報告書を作成したワーキング・グループに参加したのは、大学教授、弁護士、投資会社社長、ファイナンシャルプランナーなど21人。座長を務めた学習院大学大学院の神田秀樹教授に連絡をすると、助手らしき女性がこう対応した。「この件は『すべて金融庁に聞いてください』と伝えるように言われています」連絡が取れたメンバーのほとんども、「コメントは差し控えます」と異口同音の回答。まるで“取材を受けるな”と、お達しが出ているかのような対応だ。実質賃金の低下や10月に予定されている消費税増税など、ますます厳しくなる国民の家計事情。政府が報告書を“なかったこと”にしても、国民の老後への不安は事実として決して消えない――。
2019年06月21日「公的年金支給開始年齢の引き上げ検討」「受給額減額か」、こんな新聞見出しを見るたびに「私って、どれくらい年金がもらえるのかしら……」と不安に思う人が多いだろう。それぞれの納付期間や年金の種類などによって、複雑に支給額が変化するのが年金制度だ。「いつも年金問題を解説してくれるファイナンシャルプランナーの人たちって、自分ではどんな年金に入っているのかしら?」(50代・主婦)そんな疑問に答えるため、“お金のプロ”女性に、「あなたが実際に行っている年金対策」を緊急調査。賢女たちがプロの知識を生かしてどういうプランを立てているのか教えてもらった。「今年4月、これまで物価の上昇に合わせて、年金支給額も2.3%増加させる予定でしたが、それが0.9%に抑えられたことで、実質もらえる額が減りました。受取り方法だけでなく、“納め方”も見直すことで、最大限に年金を受け取れるよう工夫しています」そう説明するのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。じつは厚生年金が未納だった期間が数カ月過去にあったという。「その不足分は、60歳以降に厚生年金加入を延長することで埋めようと考えています」社労士・ファイナンシャルプランナーの中村薫さんも、未納には細心の注意を払っている、と語る。「20年前、厚生年金から国民年金に切り替える段階での未納がありました。『月末に退職すると社会保険料が引かれるから、月末の1日前にしたらいいわよ』と教えられ、そのようにしたためです。自腹で国民年金などを払う必要があるにもかかわらず、当時は理解できていませんでした。未納がきっかけで、障害年金を受け取れなくなったケースもあるので、加入状況は常に確認するようにしています」個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」には“もちろん加入している”と話すのは、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん。誰でも入れる個人年金として人気が広がっているが、その受け取り方にプロならではのワザが。「iDeCoは、投資信託などを毎月定額で購入して運用するもの。積み立てたお金は、60歳以降に年金や一時金として受け取れます。その拠出金は全額所得控除の対象で、利益も非課税。私は将来、一時金として受け取ることで退職所得控除を利用し、それを上回る部分は公的年金等控除を使いながら分割受給することで、控除をフル活用する予定です」また、国民年金には保険料を前納すると、一定額が割引されるという、保険料の前納制度がある。’14年4月から2年分前納することが可能になっており、割引額はなんと1万5,760円(口座払いの場合)。この割引制度を利用しているのが節約アドバイザーの丸山晴美さんだ。「クレジットカード払いにしています。割引額は口座払いと比べて1,000円ほど落ちますが、ポイントをつけることができます。2年前納やクレジットカード払いをするには、毎年2月末までに年金事務所へ納付の申し込みが必要ですので、実践したい方は年金事務所に相談を」ファイナンシャルプランナーの野々市恵子さんは年金について次のように語る。「年金の機能は、老後の資金としてだけでなく、一定の障害になったり、死亡したときに遺族の生活費として、現役世代も受け取れることです。自分はどの年金をどれくらい払い続け、どの制度を利用できるのか、いまいちど把握しておきたいですね」
2019年06月12日「公的年金支給開始年齢の引き上げ検討」「受給額減額か」、こんな新聞見出しを見るたびに「私って、どれくらい年金がもらえるのかしら……」と不安に思う人が多いだろう。それぞれの納付期間や年金の種類などによって、複雑に支給額が変化するのが年金制度だ。「いつも年金問題を解説してくれるファイナンシャルプランナーの人たちって、自分ではどんな年金に入っているのかしら?」(50代・主婦)そんな疑問に答えるため、“お金のプロ”女性に、「あなたが実際に行っている年金対策」を緊急調査。賢女たちがプロの知識を生かしてどういうプランを立てているのか教えてもらった。賢女たちは、いかにして年金額を増やすのか。そのポイントは、公的年金の受給方法にある。「年金受給開始の年齢を遅くして支給額を増やす『繰り下げ受給制度』を検討しています」と話すのは独身のファイナンシャルプランナー・野々市恵子さん。将来的な減額が危険視されているなかで、「繰り下げ受給」を検討しているという。繰り上げ受給と繰り下げ受給の違いは何なのか。1カ月早めて「繰り上げ受給」すると、年金を早く受け取れる代わりに0.5%支給額が減額される。反対に、1カ月遅らせて「繰り下げ受給」すると、0.7%の増額。最長70歳まで待てば、本来の支給額より42%もアップする。ただし、繰り下げ受給は、早く死亡してしまうと、65歳から受給するはずだった本来の受取総額より減ってしまうというデメリットがある。資産運用などに詳しいマネーステップオフィス代表の加藤梨里さんも、繰り下げ受給を検討している1人だ。その理由を、次のように説明する。「たしかに、“長生き前提”の制度ではありますが、81歳以降も生き続ければ、本来より総受給額が多くなる計算になります。平均寿命約81歳の男性の場合、トクができるかどうかは非常にギリギリでしょう。しかし、女性の平均寿命は約87歳。受給額を増やせる可能性は十分高いと考えます」経済ジャーナリストの荻原博子さん、社労士・ファイナンシャルプランナーの中村薫さん、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんも、「増額された年金額を確保」を理由に、繰り下げを検討している。「貯蓄や有価証券、完済した不動産の賃料収入、そして健康ならば60歳以降も働くことで、65歳以降も当面生活費をまかなえる見込みです。自分の資産がある間は、自分の資産で生活したいもの。そして、その資産が足りなくなりそう、あるいは働くペースが落ちたときに、増額された公的年金を受給するのがよいといえるでしょう」(風呂内さん)反対に、唯一「繰り上げ制度」を検討していると話すのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん。「50代の私にとって、今後も年金への利益率は下がると考えてしまいます。減額などの措置が行われる前に、早くもらってしまったほうがおトクになるかもしれませんね」
2019年06月12日「公的年金支給開始年齢の引き上げ検討」「受給額減額か」、こんな新聞見出しを見るたびに「私って、どれくらい年金がもらえるのかしら……」と不安に思う人が多いだろう。それぞれの納付期間や年金の種類などによって、複雑に支給額が変化するのが年金制度だ。「いつも年金問題を解説してくれるファイナンシャルプランナーの人たちって、自分ではどんな年金に入っているのかしら?」(50代・主婦)そんな疑問に答えるため、“マネーの賢女”たちに、「あなたが実際に行っている年金対策」を緊急調査。将来受け取れる年金額のイメージを聞いた。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが加入している年金の種類は国民年金。しかし、会社員時代に11年間ほど厚生年金に加入しており、現在も夫は厚生年金を納めている。「会社員時代に納めた厚生年金も合わせて考えると、年金受給制度が現行水準のままなのであれば、夫婦で月額あたり28万円程度を想定中です」夫婦ともに厚生年金に加入しているというファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんは、「夫婦合わせて月30万円ほど」、独身のファイナンシャルプランナー・野々市恵子さんは「月10万円ほど」と将来の受取見込み額について話す。厚生年金を選択している人はそのほかも、既婚であれば夫婦合わせて月20万~30万円、独身であれば月10万円程度としていた。公的年金を将来いくら受け取れるのかを確認する手段として、賢女が挙げたのが「ねんきん定期便」。毎年誕生月に送られてくるこの通知書は、受取見込み額や35歳、45歳、受給開始前年59歳時点での加入・納付状況が把握できる。毎年必ず目を通し、老後の生活設計に役立てているという。では、厚生年金に加入していない場合を見ていこう。独身で節約アドバイザーの丸山晴美さんが加入しているのは、国民年金。満額支払っていることは「定期便」で確認しているが、それだけでは老後資金に不安を感じたという。「国民年金に加えて国民年金基金に15年間、そして損害保険会社の『年金払積立傷害保険』に月2万円を24年間支払っています。損保の年金積立がありますので、60~75歳まで年間260万円、75歳からは年間130万円、公的年金に加えて受け取ることができる予定です」同じく厚生年金に加入していない生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんも公的年金(柏木さんは月10万円程度と試算)に加えて、民間の生命保険の個人年金に加入している。厚生年金に加入している期間がない、もしくは少ない場合、民間の年金積立制度を利用して、カバーするケースが多いようだ。しかし、「長く働いて収入を得たほうがいい。“年金”より“現金”です」と、きっぱり言うのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。風呂内さんも、老後資金を年金ひとつに頼ることを危険視していると話す。「収入も変動しますし、想定より少ない場合もあるでしょう。今は月額28万円程度受取れそうと計算していますが、結果的には月額23万円程度という可能性もあると考えています。終身でもらえるという特徴は非常に心強いとは思うのですが、老後資金にするには、年金額を“増やす”施策を考えなければなりませんね」
2019年06月12日100年、安心と言っていたのに――。「年金だけではたりません」。国が明らかにしたのは、国民にとって厳しすぎる未来だった。金融庁が公開した驚愕の報告書の中身とは?<(老後資金の)不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる >そんな記述を含んだ金融庁の「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」が波紋を呼んでいる。この51ページにも及ぶ報告書が発表されたのは6月3日のこと。報告書によれば、年金収入で暮らしている高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の月間収支は約5万5,000円の赤字である。仮にこの生活が20年続けば約1,300万円が、30年続けば2,000万円が年金とは別に必要になる、というわけだ。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは、報告書を読んだ率直な感想をこう語る。「老後のために、2,000万円ほどの貯蓄が必要という試算は、民間では言われてきたことではあります。でも、省庁が“年金だけでは足りない”と表現したことはなかったかもしれません」――年金は100年安心政府はずっとそう喧伝してきただけに、“年金だけで生きていけない”という内容への反発は激しい。6日朝、野党5党派は政府の担当者を追求した。「政府の責任を放棄したと言わざるをえない。まず謝れよ、国民に。申し訳ないと」(立憲民主党の辻元清美国会対策委員長)また、経済評論家の平野和之さんは、こう分析する。「年金の状況の厳しさを伝えるのは、年金受給開始年齢を、短期的に70歳、長期的には75歳に遅らせたいという本音が見えています」報告書で協調されているのが、日本の長寿化がますます進んでいくということだ。「60歳の人の約46%が90歳まで、25%が95歳まで生きると試算されています」(平野さん)「今後、年金は“減っていく”」と話すのは、第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんだ。「額が減るわけではない。価値が減っていくのです。もともと、年金は物価の上昇とともに、支給額も上がっていました。しかし現在、年金制度を維持するために、物価が上昇しても、年金額の上昇は抑制される“マクロ経済スライド”という仕組みが導入されています」金融庁「報告書」より本誌が作成した、『現役世代の男性の平均手取り額』に対して、夫婦2人で何%の年金が支給されるかを示したグラフを見てみると、今年70歳を迎える夫とその妻は、現役世代の所得の約63%の額の年金をもらっていることになる。だが、現在50歳の場合、将来の年金額は約55%、40歳に至っては50%ほどにまで下がってしまう。「これからの世代は、ますます年金だけでは生活できなくなっていく。さらに、長寿にもなっていくので、たとえ金融資産があっても、途中で尽きてしまうかもしれない。そのため、『資産寿命』を延ばすことが必要だと、報告書では強調されています」(風呂内さん)「資産寿命」とは、報告書によると、<老後の生活を営んでいくにあたって、これまで形成してきた資産が尽きるまでの期間>。これが尽きてしまえば、後は年金だけで生活するほかなくなる……。
2019年06月11日年金と聞くと老後に貰えるお金程度と思っている人も少なくないと思いますが、障害状態になった場合や亡くなった場合にも年金支給されることはご存知でしょうか。出産前後に生命保険の加入を検討した人も多いと思いますが、生命保険だけでなく公的年金からも支給される額が少なくありません。 今回は、遺族年金と障害年金についてお伝えします。 遺族年金は年金加入者が亡くなったときに遺族に支給遺族年金は年金加入者が死亡したときに、亡くなった方と生計維持関係にある遺族に支給されます。加入しているが国民年金か厚生年金によって遺族の要件や支給額が異なります。亡くなった方が自営業・フリーランスの場合は遺族基礎年金が、会社員・公務員・団体職員等の場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金が遺族に支給されます。 主な概要は次のとおりです。あくまでも簡単に説明するための概要ですので、詳細は厚生労働省のホームページや最寄りの年金事務所でご確認ください。なお、下記の年齢や金額等は2019年4月時点の制度を基準としております。 【遺族基礎年金】国民年金の加入者等が亡くなった時に、生計維持されていた子どものいる配偶者または子どもに遺族基礎年金が支給されます。遺族年金の支給される対象の子どもは、18歳になって最初の3月31日まで(一般的な高校卒業まで)となり、大学・専門学校の通学時期には支給されない点は覚えておきましょう。 遺族基礎年金の支給額は年間781,000円に対象となる子どもの人数の加算(第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円)がされます。例えば、お子さんが2人の場合の遺族基礎年金の支給年額は、781,000円+224,500円+224,500円=1,230,000円となります。 【遺族厚生年金】厚生年金保険の加入者等が亡くなった時に、生計維持されていた配偶者・子どもに遺族厚生年金が支給されます。配偶者・子どものいない場合は父母や孫、祖父母が受け取る場合もあります。会社員・公務員・団体職員等の場合は遺族基礎年金も合わせて支給されます。 遺族厚生年金の支給額は、老齢厚生年金の報酬比例部分(目安の金額はねんきん定期便にある厚生年金保険の加入実績に応じた年金額)の4分の3相当額となります。しかし、多くの場合は300月(25年)未満であるため、最低でも25年分としてプラスの修正がされます。 例えば、35歳(勤続年数12年)・報酬比例部分が30万円のご主人が亡くなった場合は、30万円×4分の3=22.5万円でなく、勤続25年と修正された62.5万円×4分の3=46.8万円が遺族厚生年金の支給額となります。 上記以外にも寡婦年金や、中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算などの対象となる子どものいない場合や年齢が高齢になった場合の制度もあります。 障害年金は年金加入者が所定の障害状態になった時に支給障害年金は病気やケガを原因として障害となった際に支給される年金です。障害となった病気やケガの初診日に加入していた年金制度から支給され、自営業者等は障害基礎年金、会社員等は障害厚生年金となります。 障害の程度に応じて支給額は変わります。障害基礎年金の支給額は、1級で975,125円+子の加算、2級で780,100円+子の加算となります。子の加算は遺族基礎年金と同じく18歳の3月までが対象で、第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円です。 遺族厚生年金の支給額はは1級で(報酬比例部分×1.25)+配偶者加給年金額、2級で報酬比例部分+配偶者加給年金額、3級で報酬比例部分(最低保証額は585,100円)となります。報酬比例部分は、遺族基礎年金と同様に期間が短い場合も25年分としてプラスの修正がなされます。 ねんきん定期便は確認をしよう遺族年金にしても障害年金にしても、公的年金に加入している限り対象となった場合は利用できる制度ですが、保険料未納の場合には需給対象とならない可能性もあります。そのためにも現在加入している年金制度を確認して、万一の場合にどの程度の遺族年金や障害年金が支給されるか確認をすると良いでしょう。 特に生命保険の加入や見直しを考えている人は、まず公的年金から支給される額を確認したうえで、不足している金額を生命保険で補うと、無駄な保険料を払うことを防げます。生命保険の見直しを考えていない人もねんきん定期便が届いたときには確認することをおすすめします。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年06月01日「6月第1週あたりから、年金受給者を対象に『年金額改定通知書』が郵送されます。毎年少しずつ年金額は変わるため、キチンと目を通しておくことが重要です。なかでも、見落としたくないのは、妻が65歳以下で夫より年下の場合、夫が『加給年金』をもらえているか。逆に妻が年上の場合、妻の年金に『振替加算』が上乗せされているか、ということです」こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの中村薫さん。そもそも、「加給年金」と「振替加算」とは何なのだろうか。「会社員だった夫が65歳になり、老齢厚生年金を受け取れるようになったとき、専業主婦である年下妻のために与えられる“家族手当”に当たるのが加給年金です。厚生年金に20年以上加入している人(この場合、夫)が65歳になり、65歳未満の配偶者(妻)、子どもがいれば18歳到達年度の末日まで、あるいは所定の障害状態にある20歳未満の子がいる場合に支給されます」加給年金は、夫が1943(昭和18)年4月2日生まれ以降なら、年額で39万100円が給付される。「次に、振替加算については2つのパターンがあります。(1)年下妻が65歳を迎えたとき、夫が加給年金をもらえなくなる代わりに、妻自身の老齢基礎年金(=国民年金)に加算されるもの。(2)もともと加給年金が支給されない年上妻のために、夫が65歳を迎えたときに妻の老齢基礎年金に加算されるもの。どちらも、加算額は同じです」振替加算として上乗せされる額は、妻の年齢によって細かく分けられている。じつは、この2つのどちらかを受け取れる資格があるのに、もらえていない家庭は多いのだという。「年下妻の場合、夫が65歳になったときに、夫の通知書を見てみましょう。まず見るべきなのは『厚生年金保険』の欄。そこに『加給年金額』と記載されていなければ、“受給漏れ”の可能性があります。年上妻の場合は、自分の通知書を見て、国民年金の欄に『振替加算額』が記載されていなければ、同じく“受給漏れ”を疑うべきです。来月みなさんのもとに届く通知書は、もらえるはずの年金を見抜くための手がかりなのです」年金通知書でのチェック法を把握したら、次は「年下妻」と「年上妻」それぞれの場合での注意事項を見ていこう。【妻が年下の場合】■もらい忘れに気づいた場合はどうすればよい?「夫のもとに届く『年金請求書』や、戸籍謄本と所得証明、年金番号などの書類を提出し、請求を行いましょう。しかし、さかのぼって請求できるのは5年分まで。最大約200万円です。夫との年の差が5歳より少なければ、受給漏れに気づいてからでも満額取り戻せますが、それ以上年の差がある場合は、妻が65歳になってからではさかのぼって取り戻せないこともあるので、注意しましょう」■夫が加給年金をもらえる条件とは?「もし妻が20年以上勤務している場合、つまり厚生年金に20年以上加入期間があり、現在受給中であれば、夫は加給年金はもらえません。妻の会社勤めの期間が短いことがポイントです。また、妻の年収が850万円以上ある場合にも、夫に『生計を維持されている』とはいえないので、加給年金の対象になりません。そして、夫が65歳になる以前に、妻の基礎年金番号などを含めて年金受給登録をしていることが前提です」【妻が年上の場合】■振替加算の受給手続きは、いつ、誰がしなければならない?「夫が65歳になってから、妻が行わなければなりません。事前に案内などは届かないので、注意してください。年金事務所あるいは日本年金機構のホームページで、『老齢基礎年金額加算開始事由該当届』を入手してください。必要事項に情報を記入し、戸籍謄本、住民票、妻本人の所得証明書と一緒に年金事務所に提出しましょう」■もらい忘れに気づいた場合はどうすればよい?『申請し忘れに気づいたときも、同様の手続きを行えば、過去もらい損ねた分を取り戻すことができますが、こちらも“時効”は5年です。とくに、年上妻は夫が65歳になったとき年金をすでに受給していますから、この手続きを知らないまま過ごしているケースがあります。『年金額改定通知書』をもとに、自分が申請を済ませているか確認してください。念押しのためにも、夫が65歳になるときも確認すべきです』「加給年金」も「振替加算」も、これらの手続きなしではもらえない年金なので、受給漏れがないようにしたい。
2019年05月29日「10年前の’09年より、すべての年金加入者に『ねんきん定期便』が郵送されるようになりました。これは毎年、加入者の誕生月に届くものです。国民年金、厚生年金などの加入期間や、65歳を迎えたときに受給できる年金の見込み額、これまでの保険料納付額などが書かれているので、自分の納付状況を知る大きな手段となります」こう語るのは、年金制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。「ねんきん定期便」は、はがきで郵送されるため保管はしやすいが、受給者が受け取る「年金額確定通知書」とは違い、これだけでは“見落とし”についての決定的なヒントにはならないと加谷さんは話す。「直近約1年の自分の納付状況に関しては、はがきの裏面に記載がありますから、納めていない場合は知ることができますが、納付開始からの全期間を把握できるわけではありません。そこで併せて利用したいのが、日本年金機構のホームページから行くことができる『ねんきんネット』というサイトです。パソコンやスマホでアクセスし、基礎年金番号などを入力して登録するだけで、定期便にはない『未納月数』などの情報を把握することができます」ログインしたら、「各月の年金記録の情報」の欄を見てみよう。すると、これまでの国民年金、厚生年金の全加入期間が月別に記録されており、ページ下へとスクロールすれば、すべての期間分チェックができる。「『国年』とあれば国民年金に加入し、『厚年』とあれば厚生年金に加入していたことを指します。もし自分に納め忘れがあった場合、該当する期間は赤字で『未納』と出ます。『未加』と表示されていたら、その時期に年金制度に未加入だったことを表しています。納められていない時期については、このページで期間を確認しましょう。年金は、過去2年分までさかのぼって納めることができますので、いまなら’17(平成29)年度の6月分までは、納付できます。納めておけば、将来の受給額をアップさせることができます」ねんきんネットでは、今後の収入などを入力し、受給の見込み額をシミュレーションすることもできる。現役世代はねんきん定期便とねんきんネットをフル活用して、“見落としゼロ”の年金ライフを目指そう。
2019年05月29日「6月第1週あたりから、年金受給者を対象に『年金額改定通知書』が郵送されます。毎年少しずつ年金額は変わるため、キチンと目を通しておくことが重要です。なかでも、見落としたくないのは、妻が65歳以下で夫より年下の場合、夫が『加給年金』をもらえているか。逆に妻が年上の場合、妻の年金に『振替加算』が上乗せされているか、ということです」こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの中村薫さん。そもそも、「加給年金」と「振替加算」とは何なのだろうか。「会社員だった夫が65歳になり、老齢厚生年金を受け取れるようになったとき、専業主婦である年下妻のために与えられる“家族手当”に当たるのが加給年金です。厚生年金に20年以上加入している人(この場合、夫)が65歳になり、65歳未満の配偶者(妻)、子どもがいれば18歳到達年度の末日まで、あるいは所定の障害状態にある20歳未満の子がいる場合に支給されます」加給年金は、夫が1943(昭和18)年4月2日生まれ以降なら、年額で39万100円が給付される。「次に、振替加算については2つのパターンがあります。(1)年下妻が65歳を迎えたとき、夫が加給年金をもらえなくなる代わりに、妻自身の老齢基礎年金(=国民年金)に加算されるもの。(2)もともと加給年金が支給されない年上妻のために、夫が65歳を迎えたときに妻の老齢基礎年金に加算されるもの。どちらも、加算額は同じです」振替加算として上乗せされる額は、妻の年齢によって細かく分けられている。じつは、この2つのどちらかを受け取れる資格があるのに、もらえていない家庭は多いのだという。「’17年9月に厚労省が公表し、世間を騒がせたのが振替加算の“支給漏れ”。その存在を知らず、約10万人もの人が受け取っていなかったことが明らかになりました」(経済部記者)もし、加給年金も正しく受け取れていない人が同じだけの数いたら、それらの夫婦は1年につき約40万円損していることになってしまう……。それを防ぐためにチェックすべきなのが「年金額改定通知書」だ。「年下妻の場合、夫が65歳になったときに、夫の通知書を見てみましょう。まず見るべきなのは『厚生年金保険』の欄。そこに『加給年金額』と記載されていなければ、“受給漏れ”の可能性があります。年上妻の場合は、自分の通知書を見て、国民年金の欄に『振替加算額』が記載されていなければ、同じく“受給漏れ”を疑うべきです。来月みなさんのもとに届く通知書は、もらえるはずの年金を見抜くための手がかりなのです」
2019年05月29日《厚生年金、加入期間70歳以上も受給年齢見直しに合わせ》4月21日、共同通信が報じたニュースが、波紋を広げている。経済ジャーナリストはこう語る。「現在、5年に1度の財政検証が行われており、厚生労働省は年金加入期間の延長も視野に入れています。年金は、受給開始を1カ月遅らせるごとに、受け取れる年金額が0.7%ずつ増額される仕組みです。現在、繰り下げの限度は70歳までですが、今後は70歳以降も可能にする見込みです」年金博士こと、北村庄吾さんは、自分自身の年金状況を知ることがもっともお得に年金をもらうための第一歩だという。「たとえば、主婦で、夫が会社員の方は、負担なしで基礎年金が積み立てられている第3号被保険者にあたります。しかし、制度が始まった’86年4月以降に専業主婦になった人は、3号に切り替わっておらず、未納状態になっていることがあります。’02年まで、役所で本人が手続きをする必要があったためで、切り替えを忘れている方が相当数いるとみられており、確認が必要です」切り替えが行われていなくても、「第3号被保険者関係届」を出せば、過去に遡って第3号被保険者だったと扱われることになる。「まず『ねんきん定期便』を確認するなどして、自分の状態を正しく知りましょう。50歳以上は、もらえる年金の見込み額も通知されます。これらの情報を基に、もっとも得する年金のもらい方を考えてください」(北村さん・以下同)少子高齢化に対応するために次々と改定が行われる年金制度。令和時代には、どのように制度を活用するのが、もっとも得なのか――。北村さんがもっとも得する“年金受給術”を教えてくれた。【受給術1】加入期間を増やして年金を増やす「平均寿命は、女性で87歳を超えています。死ぬまで受給できるものですので、いかに受給額を増やすかがポイントです」大学生時代や、転職、結婚時などに未納が生じるケースが多い。「基礎年金の支払いは20歳から60歳までの40年間で、それ以上は積み立てられません。しかし未納期間がある場合、60~64歳までの間に支払うことができます。目安として《支払った年数×2万円=1年間にもらえる基礎年金額》となるので、可能な限り未納を埋めることが大切です」’16年から、パートでも、従業員数501人以上の企業で週20時間以上働いていて、年収106万円以上などの条件に当てはまる場合は、厚生年金への加入義務ができた。「500人以下の企業でも労使間で合意すれば厚生年金に加入できますし、今後も条件がますます緩和される見通しです」厚生年金は、企業が半額負担してくれるというメリットがあるうえに、70歳まで加入できる。「当然、保険料を払う必要がありますが、年金受給は一生涯です」【受給術2】繰り下げは手取りで考える「年金受給を5年遅らせれば、年金は42%増」。そんなうたい文句を見たことがある人は多いだろう。「確かに額面では、そうなりますが、手取りでいうと、正しくありません。なぜなら、年金受給者も税や社会保険料の支払いが義務付けられているからです」厚生労働省の厚生年金受給者のモデルケース月額15万6,496円(平成31年度・男性)で計算した場合、65歳の平均的な年金額は約188万円。1カ月遅らせるごとに0.7%増えるから、70歳まで繰り下げで、42%増の約267万円。だが、手取り額だと約225万円と、35.8%増だ。「現在、検討中といわれる75歳で受給開始にした場合、現行ルールでは手取りが289万円(増減率0.7%で試算)となります」繰り下げを検討している人は、増加率での単純計算ではなく、手取り額で人生設計をしてほしい。
2019年05月15日突然の病気やケガで介助が必要になって、働けなくなったら仕事も家事も滞り、家族の一大事。そんな危機を救うのが、障害年金。基本的なことから押さえておこう。「自分や夫が大きなケガや、がんなどの病気にかかったとき、『収入が減ってしまう』と不安を抱く人は多いことでしょう。家のローンが残っていたり、子どもの学費が100万円単位でかかったり……。そんな出費が重なる50代でも、年間で100万円以上の『年金』を受け取ることが可能なんです」こう話すのは、社会保険労務士の石田周平さん。年金っていまは、確か65歳以上にならないと支給されないんじゃ?「ええ、年齢が高齢になって受け取る年金は『老齢年金』(『厚生年金』と『国民年金』がある)というんですが、病気やケガによって生活や仕事が制限される場合には、『障害年金』というものがあって、20歳以上で条件に該当すれば受けられるんです」(石田さん・以下同)障害年金とは仕事ができないなどの状態、つまり「介助が必要」になったなどの場合にもらえる年金。「受け取る権利があるのに、障害年金という制度の名前が広まっていかないのは、仕組みが複雑で手続きが煩雑なうえに、年金事務所の窓口で受け入れられて初めて認められるという、『申請主義』の側面が根強いからです」制度が複雑でも、多額の年金が受け取れるのが障害年金。いざというときのためにも仕組みを知っておいて損はない。「病気やケガをして初めて診療を受けた日を『初診日』と呼びますが、その日に国民年金に加入しているのか、厚生年金に加入しているのかで、手続きする障害年金の種類が変わります。自営業や専業主婦は『障害基礎年金』、会社員などの方は『障害厚生年金』(1、2級は障害基礎年金も)を請求することになるんです」障害年金を受け取るには、「3つの条件」があるという。「1つ目は先述のとおり、初診日に『国民年金』か『厚生年金』のどちらかの年金に加入していること。2つ目は、初診日から『1年6カ月後』にあたる『障害認定日』に、障害の程度が1~3級(国民年金は1、2級)に該当すること」障害年金の「初診日」は、その原因となった病気やケガについて初めて医師などの診療を受けた日を指す。たとえば「うつ」の場合、「倦怠感」や「頭痛」などで受診したA内科で、その数年後にB心療内科を紹介され、B心療内科で「うつ」と診断されたとすると、初診日はA内科を受診した日になる。「この初診日から起算して1年6カ月後が『障害認定日』になります(それ以前に症状が固定し、治療の効果がこれ以上、期待できない状態に至った場合は、その日が「障害認定日」となる)。初診日のカルテは障害年金を受給するうえで極めて重要ですが、病院の保存期間は5年です。初診日が5年以上前のものは証明が難しくなる恐れもあるので、注意が必要です」この「障害認定日」の時点で1~3級に該当すれば、障害年金の受給対象となる。「そして3つ目が、年金の納付要件を満たしていることです」年金の納付要件とは次のとおり。「『納付要件』は、納付期間が各年金の加入期間の3分の2を満たしていること、直近1年間に未納がないことのいずれかを満たしていればクリアできます。直近1年間に1回でも未納があると、さかのぼって支払っても要件外になってしまいます」要件を満たしていても、非常に煩雑な申請の手続きが残っている。障害年金の申請手続きには、診断書や病歴・就労状況等申立書、戸籍謄本(抄本)、住民票に加え、受診状況等証明書などの提出が必要な場合もあるが、まずは年金事務所に相談するべきだという。「診断書などの書類の多さや記入の難しさは、医師も間違えるほどです。年金事務所で必要書類の用紙を受け取り、やってみて難しければ、必要に応じて社会保険労務士(有料)などの専門家に依頼するのもいいでしょう」そもそも障害年金を受け取るのは、なんらかの大きな傷病にかかった“ピンチ”のとき。「必要なときに受け取れない」ということがないよう、いまのうちに「納付」など、できるところからカバーしよう。そして、いざとなったら悩むより、専門家に相談してみるのが手かもしれない。
2019年05月05日突然の病気やケガで介助が必要になって、働けなくなったら仕事も家事も滞り、家族の一大事。そんな危機を救うのが、障害年金。基本的なことから押さえておこう。「自分や夫が大きなケガや、がんなどの病気にかかったとき、『収入が減ってしまう』と不安を抱く人は多いことでしょう。家のローンが残っていたり、子どもの学費が100万円単位でかかったり……。そんな出費が重なる50代でも、年間で100万円以上の『年金』を受け取ることが可能なんです」こう話すのは、社会保険労務士の石田周平さん。年金っていまは、確か65歳以上にならないと支給されないんじゃ?「ええ、年齢が高齢になって受け取る年金は『老齢年金』(『厚生年金』と『国民年金』がある)というんですが、病気やケガによって生活や仕事が制限される場合には、『障害年金』というものがあって、20歳以上で条件に該当すれば受けられるんです」(石田さん・以下同)障害年金とは仕事ができないなどの状態、つまり「介助が必要」になったなどの場合にもらえる年金。「受け取る権利があるのに、障害年金という制度の名前が広まっていかないのは、仕組みが複雑で手続きが煩雑なうえに、年金事務所の窓口で受け入れられて初めて認められるという、『申請主義』の側面が根強いからです」制度が複雑でも、多額の年金が受け取れるのが障害年金。いざというときのためにも仕組みを知っておいて損はない。「病気やケガをして初めて診療を受けた日を『初診日』と呼びますが、その日に国民年金に加入しているのか、厚生年金に加入しているのかで、手続きする障害年金の種類が変わります。自営業や専業主婦は『障害基礎年金』、会社員などの方は『障害厚生年金』(1、2級は障害基礎年金も)を請求することになるんです」1~3級という障害の程度について、説明してもらおう。「年金で定められた障害の等級は1~3級ですが、これは、障害者手帳の障害等級とはまったく別モノです。障害年金には独自の等級があり、障害者手帳の等級とは連動していないので注意が必要です。障害年金の等級の考え方として覚えてほしいのは、『がん』などの病名やステージなどで決まるのではなく、その病気やケガが原因となって生じている『障害の状態』で判断されるのです」詳しくは次の各項目を見てほしい。■障害年金の等級と判断の目安【1級】身のまわりのことはかろうじてできるが、他人からの介助が必要でベッド周辺や寝室での生活しかできない障害の状態:両目の視力の和が0.04以下。両耳の聴力レベルが100デシベル以上しか聞こえない。著しい機能の障害や、すべての指を欠くなど、上・下肢の著しい障害。座っていたり、立ち上がることができない。長期の安静が必要で、または精神の障害で、日常生活ができない、など。【2級】長期安静が必要で歩くことができないので仕事をすることは難しい障害の状態:両目の視力の和が0.05以上0.08以下。聴力レベルが90デシベル以上しか聞こえない。咀嚼機能を欠く。音声、言語機能に著しい障害。両上肢の親指および人さし指または中指がないか、著しい障害がある。また、片方の腕、片方の足の機能に著しい障害がある。歩くことができない程度の障害がある。身体障害や精神障害、長期安静の必要などで日常生活が著しく制限される、など。【3級】障害が残っているが、職場の理解や援助などの配慮があれば仕事ができる障害の状態:両目の視力の和が0.1以下になった。40センチ以上離れた声を聞き取れなくなった。咀嚼や言語機能、脊柱機能に著しい障害が残った。腕、足の大きな関節が使えなくなった。上・前腕、大・下腿に骨折の後遺症を残し著しい障害が残ったなど。労働が著しく制限される身体、精神・神経障害が残った場合。【障害手当金】治療効果が期待できない状態で、労働が制限される障害の状態:両目の視力の和が0.6以下になった、など1~3級より軽度で病状が固定している状態。※1、2級は国民年金法施行令別表より、3級は厚生年金保険法施行令別表第1より、障害手当金は同表第2より、それぞれ要約し抜粋。しかし「障害の等級」の各項目だけでは、私たちが罹患する可能性があるがんや腎臓病、うつなどの病気やケガが、それぞれどこに該当するのか、実際わかりにくいが……。「たとえば『骨折』により『車いすを要する』といっても、足の機能の障害は程度によって細かく区分されていて、1~3級のどこに該当するかは、個別に詳しく審査しないと判定できません。これは、がんやうつにしても同じで、あくまで傷病名ではなく、その状態によるんです。しかし、たとえば腎疾患患者にする『人工透析』は、原則として『2級』に該当するように、病名別の細則で決められているものもあります」
2019年05月04日出産や子育てに関する制度は拡大される傾向にありますが、2019年4月からは産前産後期間の国民年金保険料が免除されることとなりました。対象となる方や手続き方法などお伝えしますので、国民年金保険に加入している方は内容をご確認ください。 1.免除となる国民年金保険の加入者は第1号被保険者日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が国民年金に加入していますが、今回の国民年金保険料の免除の対象となるのは、第1号被保険者の方です。第1号被保険者とは、第2号被保険者(会社員や公務員、医療機関・教育機関の従事者等の厚生年金、共済の加入者)と第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)以外の人です。 第1号被保険者を簡単にまとめますと、ご本人が自営業・フリーランス・無職である人か配偶者に扶養され、その配偶者が自営業・フリーランス・無職である場合です。 なお、第2号被保険者(本人が会社員・公務員等)の場合は、既に産前産後休業中・育児休業中の厚生年金保険料は勤務先からの申請で免除されますし、第3号被保険者は保険料の本人負担がそもそもありません。 今回の産前産後期間を理由として、国民年金保険料の免除となるのは、第1号被保険者の方となります。 2.対象となる期間や手続きなど【1】免除となる期間出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間(以下“産前産後期間”と表示)の国民年金保険料が免除されます。なお、双子以上の妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の国民年金保険料が免除されます。 なお、この制度となる出産とは、妊娠85日(4カ月)以上の出産をいい、死産、流産、早産を含みます。【2】届出窓口住民登録をしている市区町村役所・役場の国民年金担当の窓口となります。【3】届出時期・方法等出産予定日の6カ月前から届け出が可能で、窓口備え付けの申出書を記入の上、マイナンバーカード(マイナンバーカードのない場合は、マイナンバーの通知カードまたはマイナンバー付の住民票と運転免許証やパスワード等の本人確認書類)、出産前は母子健康手帳をご持参ください。 この制度は2019年4月から始まりましたが、出産日が2019年2月1日以降の方であれば対象となります。また、この制度の対象となった場合、対象期間中に支払った国民年金保険料は後日還付されます。こちらの制度の対象となる場合やなるかどうか分からない場合等はお住まいの市区町村役所・役場の国民年金担当の窓口に問い合わせをすることをお勧めします。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年05月02日今月5日、厚生年金の加入条件をクリアしているのに加入せず、国民年金のままになっている“加入漏れ”が推計で156万人いるとわかった(厚生労働省)。厚生年金の加入漏れについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。そもそも公的年金には国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳になると全国民が加入する基礎年金で、厚生年金は基礎年金に上乗せする構造です。厚生年金に加入すると、老後の年金額が多いなど有利な点があります。厚生年金の加入条件は、会社の労働時間の4分の3以上働くことです。たとえば社員が週40時間働く会社で、週30時間以上働く方は全員、パートでも加入できます。また’16年10月からは、従業員501人以上の会社で、週20時間以上、月収8万8,000円以上などの方も加入対象になりました。年収に換算し“106万円の壁”と呼ばれます。さらに’18年4月からは、従業員500人以下の会社でも労使で合意すれば、加入できます。国は年金を支える加入者を増やしたいのでしょうが、厚生年金の保険料は労使折半。経営が厳しい、保険料負担を抑えたいなどの理由で、加入逃れの疑いのある事業所は約40万件に及ぶといいます。加入漏れには、おおよそ2つの事情が絡んでいます。1つは、会社員の妻がパートで働く場合(男女を入れ替えても同様)。もともと、夫に扶養される会社員の妻は、保険料を払わなくても国民年金の第3号被保険者です。それが月収8万8,000円で厚生年金に加入すると、保険料は月約8,000円。老後の年金が増えるより、今の手取りが減ることのほうが困ると考える方もいるでしょう。もう1つは悪質です。給与明細では年金保険料が天引きされ、働く方は厚生年金に加入済みと認識。でも実際は、会社が届けを出さず加入していないケースです。保険料は会社がネコババすることも。被害者が会社員の妻なら、第3号被保険者のままで老後の年金は増えません。また、自営業の妻が会社に入り厚生年金に加入したと思って、それまで納めていた国民年金保険料をやめてしまうと、未納になり老後の年金が減ってしまう危険性もあります。不安な方は年金事務所などにお問い合わせを。いっぽうで最近は人手不足。パートの待遇改善も進んでいます。たとえば、外食大手の「ワタミ」は今年10月から、パートにもボーナスを支給します。イオンのプライベートブランド商品を作る「イオントップバリュ」は、子ども向け教育手当を時間給に上乗せします。また、カラオケの「シダックス」はパートの定年制を廃止。70歳超でも働けるようにしました。今後、国は501人以上の企業の加入条件を中小企業にも広げ、今秋以降には、月収を8万8,000円から6万8,000円に引き下げる議論を始めるといわれています。加入対象はますます広がっていくでしょう。だったら保険料負担を避けず、106万円の壁を超え、しっかり稼いではいかがでしょう。売り手市場のうちに、条件のよい職場を探してみるのもいいと思います。
2019年04月19日「厚生労働省は6月にも、年金の将来的な給付の予測を、令和になって初めて発表する予定です。最悪のシナリオだと、およそ15年後に、年金額が20%も減額される可能性があるんです」こう話すのは、財政制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。年金財政は、人口の減少や構成比率、経済情勢などによって不安定化する恐れがある。そのため、日本の年金制度では「5年に1度」、最新のデータを基に、給付される水準を検証することが法律で定められている。「これを『年金財政検証』と呼び、前回は『平成26(’14)年』に実施されています。その最新版となる『令和元年財政検証』が、厚労省の社会保障審議会年金部会で行われていて、前回までの例にならえば、この6月をめどに公表される見通しです」(加谷さん・以下同)「財政検証」の柱となるのが、将来の年金予想。これを理解するには、まず「所得代替率」という言葉を理解しなければならない。所得代替率とは、「現役男子の平均手取り収入の額」に対する「夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金(=世帯の年金受給額)」のこと。「まず、厚労省は年金のモデル世帯を、夫が元会社員で厚生年金を受給している夫婦と設定しています。この世帯の年金受給額は、国民年金(=老齢基礎年金)月額6万4,000円が、夫婦2人分で12万8,000円。加えて夫の厚生年金(=老齢厚生年金)が月額9万円で、世帯では月額21万8,000円となります」一方、現役男子の平均手取り月収は34万8,000円。これは税引き前の年収でいうと、およそ510万円に相当する。「この34万8,000円に対する21万8,000円の割合を計算すると、所得代替率は62.7%という水準になります(いずれも前回の「財政検証」時の値)」「国民年金法」の原則では、所得代替率が50%を上回るような給付水準を将来にわたり確保するとされている。一方、厚労省は年金制度を維持するために、段階的に所得代替率をこの50%に近づけていくと、明言している。「『財政検証』で、いつ50%に至るかというのが、複数のケースにおいて、試算されています。しかし、ほとんどのケースは、日本経済が順調に成長するという前提のもとに作られているんです」前回の「財政検証」では、A~Hまで8つのケースが試算されている。そのうち、最悪の試算はケースH。2036年(令和18年)には所得代替率が50%に達し、2055年には年金積立金が枯渇。以降は、所得代替率35~37%という水準にしなければ、年金制度が維持できなくなる。次の「財政検証」でも、同様のケースが試算される見込みだ。これから、年金をもらう世代を襲うのは、受給額の減少だけではない。政府が1億総活躍社会の目標として、定年を「将来的に70歳とする」方向で検討に入っている。「70歳まで継続雇用をしてもらえるという意味では、5年分収入を確保できると考えられましが、裏を返せば、『70歳まで年金は支給しない』と政府が公言するための、格好の大義名分となります。まず、政府は年金支給開始年齢を68歳に引き上げるでしょう」仮に引き上げられた場合、現在50歳の人が年金を受給するのは、2036年(令和18年)となる。最悪のシナリオが重なれば、68歳になって、初めてもらう年金額は、現在よりも20%も少なくなっていることになる。政府は、仮に支給年齢を引き上げた場合には、月当たりの支給額を増やすとしているが。「現在の経済状況を見るに、そうなる可能性は極めて低いでしょう。将来的には、年金は70歳支給開始、支給額2割減となるでしょう。大事なのは、いまのうちに、10年後、20年後の生活規模をシミュレーションして、縮小した生活設計を立てていくことです」
2019年04月18日5年に1度、『令和』初めての年金制度の見直し時期がやってきた。政府は「年金は100年安心」と繰り返すが、実際は我々の生活を脅かすまでに、制度は疲弊していた――。「厚生労働省は6月にも、年金の将来的な給付の予測を、令和になって初めて発表する予定です。最悪のシナリオだと、およそ15年後に、年金額が20%も減額される可能性があるんです」こう話すのは、財政制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。年金財政は、人口の減少や構成比率、経済情勢などによって不安定化する恐れがある。そのため、日本の年金制度では「5年に1度」、最新のデータを基に、給付される水準を検証することが法律で定められている。「これを『年金財政検証』と呼び、前回は『平成26(’14)年』に実施されています。その最新版となる『令和元年財政検証』が、厚労省の社会保障審議会年金部会で行われていて、前回までの例にならえば、この6月をめどに公表される見通しです」(加谷さん・以下同)「財政検証」の柱となるのが、将来の年金予想。これを理解するには、まず「所得代替率」という言葉を理解しなければならない。所得代替率とは、「現役男子の平均手取り収入の額」に対する「夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金(=世帯の年金受給額)」のこと。「まず、厚労省は年金のモデル世帯を、夫が元会社員で厚生年金を受給している夫婦と設定しています。この世帯の年金受給額は、国民年金(=老齢基礎年金)月額6万4,000円が、夫婦2人分で12万8,000円。加えて夫の厚生年金(=老齢厚生年金)が月額9万円で、世帯では月額21万8,000円となります」一方、現役男子の平均手取り月収は34万8,000円。これは税引き前の年収でいうと、およそ510万円に相当する。「この34万8,000円に対する21万8,000円の割合を計算すると、所得代替率は62.7%という水準になります(いずれも前回の「財政検証」時の値)」「国民年金法」の原則では、所得代替率が50%を上回るような給付水準を将来にわたり確保するとされている。一方、厚労省は年金制度を維持するために、段階的に所得代替率をこの50%に近づけていくと、明言している。「『財政検証』で、いつ50%に至るかというのが、複数のケースにおいて、試算されています。しかし、ほとんどのケースは、日本経済が順調に成長するという前提のもとに作られているんです」前回の「財政検証」では、A~Hまで8つのケースが試算されている。そのうち、6つのケースでは、所得代替率がおよそ50%に達するのは、2040年以降という甘い見通しになっている。「しかし、現時点ですでに、政府が目標としてきた経済成長率の数値は未達成。さらに、世界的不況の兆しも見え始めている。今後、日本の経済は、右肩下がりになっていくことが、容易に予測できてしまいます。となると、財政検証でもっとも参考になるのは、いちばん悲観的なケースになるでしょう」前回の財政検証で、最悪の試算はケースH。2036年(令和18年)には所得代替率が50%に達し、2055年には年金積立金が枯渇。以降は、所得代替率35~37%という水準にしなければ、年金制度が維持できなくなる。次の「財政検証」でも、同様のケースが試算される見込みだ。現在の約63%の所得代替率よりも13%も低い、50%というのは、どの程度の水準なのか。仮に、現在の現役世代のモデルケースから試算すると、夫婦の年金は208万円、月の受給額は17万4,000円となる。現在の水準よりも20%減、年額で約53万円も減ってしまうことになる。’17年の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の月々の支出額の平均は約26万4,000円だから、毎月9万円もの赤字が出る計算だ。「この『50%』という水準を想定して、今後の生活を設計していくべきです」
2019年04月18日年金のことは「会社員の夫におまかせ」と考える主婦もいるだろうが、家族の状況や制度改正によってその“計算”は大きく変わる。しかも自分で申請しなければ支給されないものがあって、知らぬ間に大損していることも――。「日本年金機構は、年金の受給対象となる人に毎年、受給に必要な手続きの通知を送りますが、おおよそ1割くらいの受給対象者からは反応がないといわれます。つまり10人に1人が手続きをしていない=年金をもらっていないことになるんです。また、年金事務所に相談に来る人も、約1割が手続きや申請に不備があるケースです」こう話すのは、年金制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。年金はいま、支給開始が65歳に引き上げられているが、政府は、さらに70歳までの引き上げを検討しているという。そんな状況だからこそ、自分の認識不足で年金が減ってしまうようなミスはおかしたくない。「65歳になる人の数は、例年180万人ほどいるので、毎年18万人ずつ、年金を『とりっぱぐれている』ことになります。ですから、私は大丈夫とか“主人の勤める会社が管理しているから安心”などと思い込まず、記入漏れや単純ミスが、あるはずだと思って、過去の記録をすべて見直すべきです」(加谷さん)制度が難解なうえに、受給資格があっても、自分から申し出て初めて受け取れるお金も多くあるという、いわば「申請主義」の年金システム。加谷さんの言うように、最初から「漏れがあるかもしれない」と疑ってかかっても損はない。そこで、ファイナンシャルプランナーの中村薫さん、社会保険労務士の石田周平さんに陥りがちな「年金の申請漏れ」のケースについて、解説と対策アドバイスをお願いした。【ケース1】はじめての妊娠・出産だったのでおっかなびっくり。年金免除の制度が新しくできたことを知ったのは、2月の出産後でした(30代・主婦)「自営業やフリーランスの人などが出産するとき、予定日または出産月の『前月から4カ月間』は国民年金が免除される制度が4月1日から施行されます。対象は『’19年2月1日以降に出産した人』で、彼女は2月に出産したので、4月の1カ月分の保険料を納めなくても納付したと見なされ、『1万6,000円』ほどお得になります。期間は最長4カ月ですが、双子など多胎児の場合は、最長6カ月免除となります」(中村さん)【ケース2】会社員の夫と離婚した際、ショックで第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更を忘れてしまいました(50代・自営業)「結婚、離婚、就職、退職など、人生の節目には、『種別変更』の届け出が必要です。会社員の夫(第2号被保険者)と離婚すると第3号から第1号へと種別変更し、国民年金保険料を納めるようにしなければなりません。それを忘れると、『未納』期間となり、受給可能な加入期間10年に不足してしまうこともありますので、注意しましょう。しかし、’61年4月から’86年3月までに20歳から59歳だった専業主婦は、この期間が、保険料を納めていないが加入期間には含まれるという『カラ期間』に該当します。受け取れる金額は増えませんが、加入期間が足りない人は補える場合がありますので、ねんきんネットなどで確認し、日本年金機構へ問い合わせてください」(石田さん)日本年金機構のHPトップページ「ねんきんネット」で必要情報入力などの手続きをして登録。「各月の年金記録の情報」ページでは国民年金=「国年」、厚生年金=「厚年」、未加=「未加入」、赤字は「未納」など、過去の年金の全記録を把握できる。「加入期間の情報」では国民年金、厚生年金ごと、および合計の加入月数と未納月数などがわかる。さらに今後の収入などの入力をしてシミュレーションし、年金見込額も算定可能だ。【ケース3】シングルマザーとして、子育てしながら仕事をしてきました。生活はキツかったのですが、意地で国民年金は支払い続けてきました(40代・自営業)「国民年金は、支払いが困難な人が申請をすると、免除される制度があります。これは、第1号被保険者だけが適用されます。この申請免除は、所得によって4段階の免除に分かれていて、『全額』『4分の3』『半額』『4分の1』となります。たとえば世帯主の年間所得が約120万円だとすると、半額免除の対象となり、その免除期間は加入期間と見なされるのに加え、保険料の半額を支払ったことにしてくれるんです。この期間の残りの保険料(=半額免除の場合は半額)は、10年以内に後から支払うことができます」(石田さん)さまざまなケースで大損とならないよう、アドバイスを参考に難解な年金パズルに取り組もう。
2019年03月06日