付き合った相手が「実はとんでもない奴だった」ということはよくありますよね。20代女性のAさんもその1人。Aさんの彼氏は嫉妬深く、何かにつけて干渉してくるモラハラ男でした。Aさんが撮影してSNSに投稿した写真が「変」と感じれば「消せ」と迫る、Aさんの服が気に入らなければ叱りつける…。Aさんは執拗な干渉に耐えきれず、遂に別れることになったのですが、鬱状態になってしまいました。人生を滅茶苦茶にされたと感じているAさんは、元彼に損害賠償を請求したいと考えています。医師から診断書を貰い、後は訴えるだけなのですが、主張が認められるかどうか不安に感じているそうです。実際のところどうなのでしょうか?秋葉原よすが法律事務所の近藤美香弁護士に見解をお伺いしました。 Q.モラハラ元彼のせいで鬱に… 損害賠償を要求することはできる? A.認められない可能性が高い「損害賠償請求が認められるためには、民法709条の定める要件に該当することが必要です。具体的には、権利ないし法律上保護される利益を侵害するような加害行為があった相手に故意・過失があった損害が発生した侵害行為と損害との間に因果関係があったの4点です。ご質問のケースでまず問題となるのは、『①権利ないし法律上保護される利益を侵害する加害行為があった』に当てはまるかどうかでしょう。つまり、『元彼の言動が、他人を鬱病にさせることがある程度確実なほど悪質なものだったかどうか』という点です。元彼の言動が、写真を消すことを要求したり、衣服などのセンスについて小言を言う程度でしたら、残念ながら、権利ないし法律上保護される利益を侵害する加害行為があったとまでは言えないでしょう。全ての人には、憲法で「表現の自由」が保障されていますので、元彼にも、他人の権利を侵害しない範囲で好きな言葉を発する権利があるのです。今回の元彼の発言は、道徳的な問題はあるのかもしれませんが、法的に人の権利などを侵害するものとまでは言えないでしょう。元彼の言動が気に入らなかったのであれば、即別れを告げて今後会わないようにする、という選択肢もあったはずです。そのような選択をせず、敢えて交際を続けた結果として鬱病になってしまったとしても、元彼に対する損害賠償請求は認められないと考えられます」Aさんが不憫に感じられるかもしれませんが、元彼にも権利があります。損害賠償は、認められません。 *取材協力弁護士: 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)元彼のモラハラでうつ病になって…絶対許せない!損害賠償請求は可能?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。元彼のモラハラでうつ病になって…絶対許せない!損害賠償請求は可能?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年11月20日一方がセックスレスだと感じる反面、セックスを求めすぎて相手に苦痛を与えていた、慰謝料を請求される・・・なんてこともあるのかもしれません。そのあたり、法律的にはどう判断していくのでしょうか?今回、...
2018年10月17日たまにに、駅のホームなどで嘔吐物が放置されている様子を目にします。嘔吐物が放置されていたら、他の人間は大迷惑ですし、見たくもないものを見させられては、自分まで気分が悪くなってしまいます。それを片付ける駅の係員は、もっと迷惑。他人の嘔吐物を掃除するなどということは、気が進むものではありませんよね。また、当事者が放置したまま逃げてしまうこともあります。その場合、駅側から損害賠償請求などすることはできないのでしょうか?Q.駅で嘔吐したあと放置して立ち去った。駅側から損害賠償請求を請求できる? A.場合によっては請求できることもあります嘔吐物を処理せず立ち去った場合、鉄道会社はコストをかけてこれを清掃します。そのため、当該コストについて損害賠償請求を受ける可能性はあります。ただし実際に請求がされるケースは少ないのが現状です。仮に自分の嘔吐物を他人に掛けてしまった場合は衣服等のクリーニング費用について賠償を求められる可能性があります。 損害賠償請求されないとしても、他人に迷惑をかけることは確かです。体調管理や酒飲み過ぎなどに注意し、公共施設で嘔吐することのないよう努めましょう。*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*監修弁護士/梅澤 康二(プラム綜合法律事務所。労務全般の対応、M&A取引(対象会社に対するデューディリジェンス)、各種契約書の作成・レビュー、取締役会議事録の整備、その他企業法務全般のご相談一般民事・交通事件・債務整理・相続問題に係る法律相談、刑事事件に係る法律相談を中心に取り扱う。) 駅で嘔吐物を放置…損害賠償請求することはできる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。駅で嘔吐物を放置…損害賠償請求することはできる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年06月28日損害賠償請求など訴訟を起こす際には、弁護士の力が必要となります。それは誰もがわかっていると思いますが、実際費用がいくらかかるのかは、あまり知られていません。やはり、高いのではないかと思ってしまいますよね。仮に相手を訴えるとなった場合、その要因は相手方にあるわけですから、主張が認められた場合裁判を起こすことで発生した弁護士費用も負担してほしいと思うもの。そのようなことは可能なのでしょうか? Q.裁判を起こすことで発生した弁護士費用を相手に請求したい。そのようなことは可能?A.基本的にはできませんが、不法行為による損害賠償請求の場合は請求できることがあります。実は、基本的に裁判にかかった弁護士費用を相手に請求することはできません。しかし、相手の不法行為が原因の損害賠償請求については、弁護士費用も『損害』として相手方に請求することができることがあります。不法行為は、民法709条に定められるものですが、たとえば…・暴力による怪我・交通事故による損害・安全対策を怠ったことによる労働災害・不貞行為の慰謝料・DVの慰謝料などが挙げられます。このような場合は、相手方に弁護士費用を請求することが可能となります。なお、契約上の義務の不履行など、債務不履行による訴訟については、請求できないことが通例となっています。 裁判に勝訴するためには弁護士の力が必要ですが、費用が気になるのもまた事実。だからといって二の足を踏んでいては、何も始まらないとはいえますよね。たとえば、資力によっては法テラスという制度を利用するなど、弁護士費用に関しては工夫をすることが可能です。また、完全に成功報酬だけで対応してくださる先生もいます。費用についても親身になって相談に乗ってくれる弁護士がほとんどです。相手方に請求できるケースがあることを踏まえた上で、相談してみましょう。 *取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*監修弁護士: 虎ノ門法律経済事務所池袋支店齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)*画像イメージです(pixta)弁護士費用を訴訟相手に支払ってもらうことはできる?→できるものとできないものがあるはシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。弁護士費用を訴訟相手に支払ってもらうことはできる?→できるものとできないものがあるはシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年06月20日今年3月、滋賀県長浜市の市長(68)が、40代人妻女性と不倫していると週刊誌が報道。女性が市長のマンションを訪れる画像などが掲載され、「早朝まで帰ってこなかった」などと報じられました。さらに愛人女性は特に実績がないにもかかわらず、市長のはからいで第3セクターが運営する飲食店の責任者に抜擢されていたという報道も。このほかにも別の女性に対するセクハラ疑惑などが浮上しており、市長の呆れた性癖に市民を中心に怒りの声が広がっています。 ■市民が市長に損害賠償請求市長はこの報道後、市議会で真偽を問われますが、「事実無根・事実誤認」と述べるにとどまり、事実関係について明確な説明をしていません。しびれを切らした長浜市民と市議会議員の一部は5月30日、「市長のスキャンダルにより精神的苦痛を受けた」として市長に損害賠償請求を起こしています。このような行動は異例ですが、可能ならば自分の市区町村でも行いたいと思うもの。法的に見て、このような請求は妥当なのでしょうか?虎ノ門法律経済事務所池袋支店の齋藤健博弁護士にお聞きしました。 ■全てが認容されることは難しい齋藤弁護士:「法的に妥当かどうかの問いに答えるには、解決しなければならない問題が多い訴訟になりますね。まず、説明義務違反と、慰謝料請求の根拠となりえる精神的損害との因果関係は大いに争われてしまうでしょう。また、集団提訴といっても、ひとりひとりの置かれた状態が異なりますから、全部が認容されることは考えにくいです。慰謝料請求でなくても、住民訴訟などの手段を適切に使うことで同じ問題を争点にすることはありえます。住民訴訟とは、地方自治法242条の2に定められている訴訟の分類になります。これは、客観訴訟のうちでも民衆訴訟に数えられるものです。要は、慰謝料などの個人の問題ではなく、公共財産を適切に利用していたのかどうかを判断するものになります。」 ■住民監査請求をする可能性も齋藤弁護士:「実は、住民訴訟を適法に提起するには、住民監査請求をした住民が、その監査結果、勧告、措置等に対して不服がある場合、裁判所に対する訴えをもって請求することができると規定しています。これは、監査請求前置主義といいます。ですから、いきなり訴訟とはいきませんが、住民監査請求を行うことで、どのような使途でお金が使われたものであるかを問題とすることができる余地があるでしょう。ちなみに、監査請求は、住民が、自らの居住する地方公共団体の違法若しくは不当な財務会計上の行為があると認められる場合、その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、その行為に対し必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度です。本件のように、不貞交際を行政財産で継続しておこなった疑惑がある場合には、財務会計がどのようになされていたかを明らかにしていくことで、問題とすることはできるでしょう。」 昨今、県知事や市区町村長など、政治家による政治資金の流用やセクハラ・不倫・パワハラ問題は多々発生しています。そのような場合、税金を納付する県民・市区町村民が納得できないのは当然のこと。長浜市のような「損害賠償請求」が認められるの否か、注目されるところです。 *取材協力弁護士: 虎ノ門法律経済事務所池袋支店齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*画像はイメージです(pixta)長浜市民が不倫疑惑の市長に損害賠償請求…市民の主張は認められる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。長浜市民が不倫疑惑の市長に損害賠償請求…市民の主張は認められる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年06月13日『大量懲戒請求』、この単語を聞いてピンとくる方は多いのではないでしょうか?いわゆる、ネット右翼、通称『ネトウヨ』から、数名の弁護士に大量の懲戒請求が届いた問題。実際に大量懲戒請求を受けた弁護士がツイッターを通じて、この件に対し物を申したり、嫌がらせとも取れる手紙が届いたことを写真つきで公開したり、とネットでも話題となっており、ちまたではさまざまな声が上がっています。今回は、その渦中の弁護士のひとり、北周士先生に、『大量懲戒請求問題』について伺いました。 Q.今回の一件、先生に大量の懲戒請求が届いたきっかけや、経緯はどういったものだったのでしょうか?A.朝鮮学校への補助金の交付に賛成したとして東京弁護士会の会長・副会長合計9名と、佐々木亮弁護士のもとに、大量の懲戒請求が突然届きました。佐々木亮弁護士は、「朝鮮学校への補助金云々にはまったく関与していない、身に覚えがない」といった旨をTwitterにつぶやいており、そのツイートに、「そんな(大量の懲戒請求が届く)のはおかしい」とリプライ(返信)をしたところ、私にも飛び火してきた、というのが始まりです。詳しくは、Twitterにて佐々木弁護士が解説してくれているので、こちらをご覧ください。佐々木亮弁護士ツイッターアカウント Q.実際に先生が『朝鮮学校への寄付金交付』などに関わっていた事実はあったのですか?A.ありません。 Q.現状、どれくらいの懲戒請求が来ているのでしょうか?A.私のもとには960件、佐々木先生のところには約3,300件来ております。 Q.賠償請求はする予定ですか?する場合、何に対する損害賠償でしょう?A.6月末を目処に訴訟を提起する予定でおります。なお、それに先駆けて謝罪の申し入れと和解を呼びかけています。損害賠償の理由としては『虚偽告訴』及び『威力業務妨害』に基づく損害賠償請求となります。 Q.和解にも応じていますか?A.応じています。詳しい数字は言えませんが、現時点で二桁ほどの方々と和解が成立しています。 Q.賠償金・和解金それぞれの金額はどのくらいを想定しているのでしょうか?A.1名あたり5万円です。なお訴訟時の請求金額については30万円を予定しています。 Q.和解をした人から謝罪の表明などはあったのでしょうか?A.ありました。主なものとしては「そのときは本当に日本が良くなると思っていた。」「時代を変えられるのではないかという高揚感があった。」などの表現が多かったと思います。 Q.ネット右翼、いわゆる『ネトウヨ』について先生はどうお考えですか?A.ネトウヨと言ってもすでに意味としては多義的です。本件はネトウヨであること自体は問題ではないと考えており『匿名性を盾に特定の個人を集団で叩く』という行為に問題があると思っています。 Q.ネットでは、『匿名で発言できる』ということから『好き勝手言える』という意識が蔓延しているように見受けられ、今回の一件もその象徴だという印象を受けました。このようなネットリテラシーについて、弁護士の視点から、どんな危険性があると考えますか?A.ネットリテラシーの問題ではなく、彼らは彼らなりに『自分の行いは正義である』『自分の行いは日本をよくするものである』と考えていたことが問題だと思います。思想に関係なく『直接的に他者を加害する行動は問題である』という当たり前の点を認識し直す必要があると思います。ネットの匿名性と顔が見えない他者性はこの部分の攻撃のたがが外れやすくなると考えています。ネットを通じた先の相手方も実在する人間であり、直接的な加害行為を行った場合ペナルティを受ける可能性があるということを認識すべきであると考えます。またネット上の『匿名性』は実際に特定をしようとすれば特定が可能なものに過ぎません。その点についても認識を持つべきだと思います。 Q.懲戒請求をしてきた人々に伝えたいことはありますか?A.私を懲戒しても日本は特に良くならないと思います。他者の権利を制限しようとするときは自己にそれが跳ね返ってくる可能性が当然にあるということについては認識しておくべきだと思います。特に専門家に対し懲戒請求をしようとするのであれば、それこそ専門家(弁護士)に相談をしてからするべきでしょう。 Q.事実上、誰でもできてしまう『懲戒請求』。改善の余地がはないのでしょうか?A.弁護士法では『何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる』と規定されていることからすれば、懲戒請求権者を制限することは現行法上困難であると考えます。しかしながら、現時点では架空人でも懲戒請求ができてしまうことからすれば①本人確認資料の添付、②実費(郵送代等)の予納程度は求めるべきではないかと考えています。また、明らかに懲戒理由に当たらないものについては、本人に対する答弁書等の提出を求めることなく弁護士会が請求を却下する簡易却下の手続も設けるべきではないかと考えます。 Q.今回のことを受けて、先生のご意見A.ほぼ上で述べた通りです。本件を思想の問題に『矮小化』することは避けるべきだと考えております。 編集部コメントネットが普及し、匿名でなんでも言えるようになってから、それなりの年月が経ちました。今回の一件には、多くの人々が関与するこのネット社会で、自身がどうあるべきか、自身の行いはモラルに反していないか、見つめ直すよい機会になったのかもしれませんね。 取材協力/北周士先生(北・長谷見法律事務所企業・個人を問わず「困難な状況にいる方」がその状況を克服し、さらに先に進んでいくための手助けを担うことを得意とする弁護士。「特にこれから企業を発展させていこうとしている若手経営者及び先代が育て上げた企業を引き継ごうとしている若手経営者の活動をお手伝いする業務に注力しております。」)執筆・取材/アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)画像提供/北周士先生【弁護士大量懲戒請求】渦中の北周士弁護士に直撃! 「ネトウヨが問題なのではない」はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。【弁護士大量懲戒請求】渦中の北周士弁護士に直撃! 「ネトウヨが問題なのではない」はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年06月12日ある美容室Aに勤めるNo.2美容師のBさんは、前々から独立志向を持っていました。そんなBさんは、ついに独立開業を決意。美容室を退職します。その際、BさんはA美容室のスタッフに声がけ。呼応した同士とともにA美容室の近隣で独立開業します。さらにBさんは、A美容室の顧客情報を持ち出したようで、A美容室のお客さんが、Bさんの店舗に流れているそうです。A美容室としては、商売上がったりの危機。Bさんに損害賠償請求したいところです。そのようなことは可能なのでしょうか?センチュリー法律事務所の小澤亜季子弁護士に見解を伺いました。 ■損害賠償請求できる?小澤弁護士:「社会的相当性を逸脱した引き抜き行為は、不法行為として損害賠償請求できる可能性があります。例えば、スタッフを一斉にかつ大量に引き抜く場合や、店が倒産する等の虚偽の情報を流して引き抜いた場合には、不法行為が成立しうるといえます。また、Bの持ち出した顧客情報が、不正競争防止法上の「営業秘密」に当たる場合、A美容室は、営業秘密侵害行為によって被った損害の賠償請求ができます。顧客情報が「営業秘密」に該当するためには、その顧客情報を秘密として管理すること、例えば、カードやファイルの場合であれば、マル秘の表記をする、施錠できる場所に保管する必要があります。データの場合であれば、パスワードを設定する等して、従業員の中でも一定の者しかアクセスできないようにすることが必要です。」 ■独立店舗を近隣に出す行為を防止できないの?損害賠償請求は?独立店舗を近隣に出す行為については、違法ではないのでしょうか?小澤弁護士:「Bには「職業選択の自由」があるため、退職後に競合する他店を営むことは、原則として許されます。しかしながら、Bが、違法にAの顧客を奪う等社会通念上許容できない行為を行った場合には、例外的に、損害賠償請求できる可能性があります。Bの行為に違法性があるかどうかは、退職した者の地位、待遇、元の店に及ぼす影響、行為態様、計画性等、諸般の事情が総合考慮されます。」 ■防止策は?このような独立開業や営業データの持ち出しなどを防止するために企業はどのような対策を取ればよいのでしょうか?小澤弁護士:「顧客情報の管理方法を見直す、顧客情報等の秘密保持、退職後の競業禁止、引き抜き禁止について、スタッフから誓約書を提出させるなどの対策が挙げられます」雇っているスタッフが独立開業し、ライバルとなるケースは多々あると聞きます。オーナーとしてはそのような場合を見据えた店舗運営と従業員管理が必要といえるでしょう。 *取材対応修弁護士:センチュリー法律事務所小澤亜季子(依頼者の皆様の不安を少しでも取り除けるように、お気持ちに寄り添い傾聴すること、なるべく早く具体的な解決策を提案すること、そのための費用がいくらかかるのかを明確にすることを心がけております。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*画像はイメージです(pixta)従業員がメンバーを引き抜き独立…近所に出店した相手に損害賠償は請求できる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。従業員がメンバーを引き抜き独立…近所に出店した相手に損害賠償は請求できる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年06月09日■ATMコーナーはこの撮影用に制作したオリジナルのセットです。実在するものではありません。イメージ写真です。5月1日、東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併し、「きらぼし銀行」が発足。行員は気分新たに業務を開始させました。ところが、蓋を開けてみると、旧新銀行東京の店舗でキャッシュカードが利用できない、旧八千代銀行のATMで一部の振り込みができないなどのトラブルが発生。15時頃には復旧しましたが、なんとも幸先の悪いスタートとなりました。なかには、影響を受けた利用者もいたことでしょう。 ■原因はプログラムミス?一連のシステム障害ですが、プログラムミスが原因だった可能性が高い模様。システムは人間が作るものですから、どうしても不具合は発生してしまうもの。開発会社としては、ある種致し方ない部分があります。しかし、お金を支払う側にしてみれば、当然約束した期日にシステム障害が発生するのは納得がいかず、損害賠償を請求したくなるのは当然ではないでしょうか。はたして請求することはできるのでしょうか。パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。 ■損害賠償を請求できる?「毎日新聞平成30年5月1日付「きらぼし銀行復旧システム障害で1万6000件に影響」によれば,「合併に伴って旧八千代銀の送金に使うシステムを修正した際、不具合が生じた可能性がある」、「今回のきらぼし銀行のシステムトラブルもプログラムミスが原因とみられる」とあります。きらぼし銀行のシステムトラブルが、報道でいわれているような「プログラムミス」に起因するものなのかどうかは、今後の調査をまたなければ分かりません。仮にシステムが納入・検収され、実際に稼働を開始した後になって、プログラムの不具合(いわゆる「バグ」)が原因で(発注者側の)想定したとおりにシステムが稼働しないという問題が生じた(判明した)場合には、一般に、「瑕疵担保責任」(民法570条。同559条で他の有償契約について準用)の問題として扱われることになります。」(櫻町弁護士) ■瑕疵担保責任とは?「ここで瑕疵担保責任にいう「瑕疵」とは、契約の目的物が(その種類のものとして)通常有すべき品質・性能を有していない状態をいうものとされています。ただし、裁判例においては開発されたシステムに「バグ」がある場合に、ただちに「瑕疵にあたる」とされている訳ではありません。例えば、東京地方裁判所平成9年2月18日判決(判タ964号172頁)は、「いわゆるオーダーメイドのコンピューターソフトのプログラムで、本件システムにおいて予定されているような作業を処理するためのものであれば、人手によって創造される演算指示が膨大なものとなり、人の注意力には限界があることから、総ステップ数に対比すると確率的には極めて低い率といえるが、プログラムにバグが生じることは避けられず、その中には、通常の開発態勢におけるチェックでは補修しきれず、検収後システムを本稼働させる中で初めて発現するバグもありうるのである。(略)顧客としては、そのような既成ソフトのない分野についてコンピューター化による事務の合理化を図る必要がある場合には、構築しようとするシステムの規模及び内容によっては、一定のバグの混入も承知してかからなければならないものといえる。」として,(システムの規模及び内容によっては)一定のバグが生じることを前提に,「コンピューターシステムの構築後検収を終え、本稼働態勢となった後に、プログラムにいわゆるバグがあることが発見された場合においても、プログラム納入者が不具合発生の指摘を受けた後、遅滞なく補修を終え、又はユーザーと協議の上相当と認める代替措置を講じたときは、右バグの存在をもってプログラムの欠陥(瑕疵)と評価することはできないものというべきである。これに対して、バグといえども、システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせる上、遅滞なく補修することができないものであり、又はその数が著しく多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生じるような場合には、プログラムに欠陥(瑕疵)があるものといわなければならない」として,「不具合発生の指摘を受けた後、遅滞なく補修を終えること」ができたときや、「ユーザーと協議の上相当と認める代替措置を講じたとき」には,バグがあったとしても瑕疵と評価することはできない,と判示しています。また,東京地方裁判所平成25年5月28日判決(判タ1416号234頁)も、「一般に,コンピュータソフトのプログラムには不具合・障害があり得るもので,完成,納入後に不具合・障害が一定程度発生した場合でも,その指摘を受けた後遅滞なく補修ができるならば,瑕疵とはいえない。しかし,その不具合・障害が軽微とは言い難いものがある上に,その数が多く,しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生ずるような場合には,システムに欠陥(瑕疵)があるといわなければならない。」と、一定程度のプログラムの不具合・障害の発生を前提としてそれらが「遅滞なく補修ができる」ときは、瑕疵にはあたらないと判示しています。したがって、システム構築を発注した側がシステム会社に損害賠償請求をすることができるかどうかは、バグが遅滞なく補修できるかどうか、システムの稼働に支障が生じるかどうか、といった観点から判断されるということになるでしょう」(櫻町弁護士)※なお,2017年5月に成立し,2020年4月に施行予定の改正民法(平成29年法律第44号)においては、瑕疵担保責任という概念に代えて、「契約不適合責任」という概念が採用され、代金減額請求権が認められるなどの変更がありますので注意が必要です。 今回のようにシステムトラブルによって営業に支障をきたすことは多々あります。そのようなとき、損害賠償を請求ができるか否かについては、トラブルの度合いによるようです。大規模なシステム改修が入るときは、予め「障害が発生した場合」の対応について、決めておくとよいかも知れませんね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*画像はイメージです(pixta)きらぼし銀行の発足初日にシステム障害…発注側は損害賠償を請求できる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。きらぼし銀行の発足初日にシステム障害…発注側は損害賠償を請求できる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年05月18日6万作以上の漫画を無料で読める状態にし、月間利用者は1億人とも言われた漫画村。閉鎖はしたものの、漫画村の運営方法や法的解釈、国としての対応など、未だ注目が集まっています。通常、著作権を侵害された者は損害賠償請求ができますが、この巨大サイトの場合、もし損害賠償をしたら一体いくらになるのか?りのは綜合法律事務所の荻原邦夫弁護士にお伺いしました。本当に違法ではないのか?漫画村サイト内では、「他サーバーにアップされた漫画を閲覧させているだけなので違法ではない」「海外運営なので日本の法律は適用されない」と説明されていました。本当にそうなのでしょうか?荻原弁護士「漫画村内のサーバーには画像を保管していないことについてですが、そもそも何をもって漫画村外だと主張しているのか、です。漫画村により管理されているのであれば、それは漫画村内と評価することができます。多量のデータを整然と管理できていることからも、漫画村の関与は推察されてしまうでしょう。また、海外での運営が本当だとしても、その実態が問題になります。実質の運営主体が日本にあるとされることは十分考えられます。また、日本に向けた日本語によるサービスであれば、それをもってそもそも日本で行われていると評価することができる場合もあります。漫画村側は、違法ではないことを主張していますが、それが裁判で認められるのは容易ではないと考えます。」利用しただけでも犯罪になる?法的に問題があるサイトを利用した場合、利用者も罪に問われることはあるのでしょうか?荻原弁護士「利用者の行為は、漫画村のWEBサイトで漫画を見ることですが、いわゆる海賊版ということになり、著作権法違反の問題を考えなければなりません。現在の著作権法では、仮にそれがいわゆる海賊版であるとしても、罰則が適用されるのは、ダウンロードして録音または録画をしたときです。漫画の閲覧だけで利用者に対して著作権法違反を問うことはできません。しかし、広い意味で違法行為への加担と評価する余地がないわけではありません。漫画村を利用することが完全に合法であると言い切ることは難しいです。」漫画村の存在自体もグレー、利用についてもグレーのようですね……。 賠償金は数百億円から数千億円!?もしも漫画村で閲覧可能にされた作品の全著作者が損害賠償請求したら、総額はいくらになりますか?荻原弁護士「損害額は、請求する側が算出する必要があります。漫画村の場合は、単純に物を転売された場合と異なり、複製が容易な著作物を閲覧させるという形態ですので、どのように損害を算定するかを考えなければなりません。ひとつの考え方として、本来であれば売れた商品が売れなくなったというものがあります。今回のケースでいえば、漫画村で閲覧されたものは、本来であれば正当な商品が買って読まれる商機を奪ったということになります。著作権法では、このような考え方により損害額の推定のための規定をいくつか設けています。実際の計算は複雑な部分もありますが、概要、次のいずれかの方法を取ることが可能です。1)侵害者の譲渡等数量×権利者の単位あたりの利益2)侵害者が得た利益3)ライセンス料相当額1)の方法が比較的容易な算出方法でしょう。漫画村への訪問者数が数億ならば、一冊あたりの利益を数百円とすれば、全体で数百億円から数千億円以上の損害額が推定は一応可能になります。もちろん、この金額は、現実の漫画の市場の規模からして大きすぎますので、それだけの損害が実際にあったといえるかという問題はあります。個々の著作権者全員が損害賠償を請求するともいえません。また、損害額が認められたとしても、侵害者側の支払能力がないことも考えられます。漫画村に類似する侵害行為は、今後も生じてくることが考えられます。個別の損害賠償事件としての性質もありますが、コンテンツ産業として、法整備も含めての対策が必要といえます。」著作者全員での損害賠償請求は途方もない金額になってしまいそうです。これが現実的な金額ではない可能性があるとはいえ、利用者の「タダで読めてラッキー」「違法じゃないなら利用してもいいだろう」という軽い気持ちの積み重ねがこの金額に表れているともいえます。漫画などのコンテンツ文化を廃れさせないためには、法整備などの対策とともに著作権に対する国民の意識向上が必要なのではないでしょうか。 *取材協力弁護士:荻原邦夫(りのは綜合法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)*画像はイメージです(pixta)漫画村を全著作者が損害賠償請求したら総額はいくら?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。漫画村を全著作者が損害賠償請求したら総額はいくら?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年05月14日昨今婚活アプリの普及で、男女が出会う機会が増えました。それ自体は歓迎されるべきことでしょうが、付随してトラブルも増加しています。とくに多いのが、既婚者が独身と偽り紛れ込むケース。また、結婚相談所などでは、結婚する気がなく、遊び目的で利用する人もいるようです。真剣に婚活している人にとっては、迷惑でしかありません。『既婚』であることや、『遊び目的』だったことが判明した場合、騙した人間や、アプリ・結婚相談所運営者に損害賠償などを要求できないのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解を伺いました。 ■既婚者や遊び目的の婚活に賠償を迫ることができる?「近年、婚活市場の盛り上がりが激しさを増してきていることもあり、結婚相手紹介所や婚活サイトなどの紹介所等で知り合った相手とのトラブルもまた増えてきています。その中でも特に多いのが、紹介所等を通じて知り合った人が、既婚者や遊び人など『結婚するつもりはないのに、紹介所等に登録していた」というものですが、これは何らかの犯罪となり得るのでしょうか。また、犯罪にはならないとしても、その相手や紹介所等に対して損害賠償の請求などはできるのでしょうか。」(大達弁護士) ■犯罪になる?「まず、犯罪とは、そもそも刑法やその他の法令で刑罰を科することを明記して定められているものに限られますので(罪刑法定主義といいます)、法令で刑罰が科されることが明記されていない限りは、犯罪となりません。そのため『結婚するつもりはないにもかかわらず、紹介所等の登録者と交際した』というにとどまらず、『それによってその相手から金銭や何らかの物をだまし取り、あるいは何らかの物を購入させた』というようないわゆる結婚詐欺に当たる場合には詐欺罪(刑法246条1項)に当たり得ますが、それ以外の場合で犯罪となるケースは少ないように思われます。」(大達弁護士) ■損害賠償請求は可能?「一方、民事的な損害賠償については、可能な場合もあります。その紹介所等が婚活目的による利用に限定され、規約等によって婚活以外の目的による登録が禁止されているような場合には、規約の違反があることになります。同規約は、利用者が相互に守らなければいけないことが前提になっているものと思われるため、その規約に違反した結果として他の利用者に損害が生じ、その利用者が退会をして損害が生じたというような場合には、紹介所等はその損害を生じさせた行為について規約違反をした利用者に債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償請求をすることができるでしょう。また、他の利用者自身の損害賠償請求としても、既婚者であるなどと嘘をついた行為に関し、不法行為(民法709条)上の違法性が推認でき、損害賠償請求をできる可能性が出てくるものと思われます」(大達弁護士) ■紹介所やアプリ運営会社の責任は?「また、損害を受けた利用者の紹介所等に対する請求はどうでしょうか。紹介所等は、利用者との間にサービス利用契約を締結しておりますが、契約上求められる義務として、利用者の性格や収入などの繊細な個人情報を多く扱う上、人生の大きな選択である結婚に関するサービスを提供していることを考えると、高度な注意義務を負っていると考えられます。そのため、紹介所等に対しては、その注意義務の一環として、規約違反がないか否かに関する注意義務を怠ったといえる場合には、サービス利用契約上の義務違反があるとして、紹介所等に対する損害賠償請求も認められる余地があるでしょう。いわゆる結婚相談所などの紹介所入会の際には、独身証明書の提出が求められることが通常です。そのことを考えると、少なくとも独身証明書の提出も求めていないような紹介所等に関しては、注意義務の違反があったものと言えそうです。近ごろは伝統的な紹介所等のみならず、マッチングアプリなどでの婚活も流行っているとか。数多くの人がいながらも運命の人に出会えない!と焦る声が自分も含めそこかしこで聞こえますが、果報は寝て待てとも言いますよね。筆者の現在のパートナーはもっぱら瓶ビールと焼き鳥くらいですが、焦ることなく、また現実を見つつ、いつか人間のパートナーを見つけたいものですね」(大達弁護士) 相手が既婚者だった場合や、遊び目的ということがはっきりしている場合は、損害賠償を請求できる余地はあるようです。結婚という人生をかけた活動ですから、遊ばれるのは嫌なもの。仮に自分がそのような目に遭ってしまった場合は、弁護士に相談してみるのも、いいかもしれません。婚活相手が既婚者や遊び目的だった…損害賠償請求は可能?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。婚活相手が既婚者や遊び目的だった…損害賠償請求は可能?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年04月11日ここ数年、CMや広告で『過払金請求』というワードをよく見かけるようになりました。「お金が返ってくるんだろうな〜」「借金が少なくなるんだな〜」くらいには認識しているけど、実際のところ、どういったものなのかわからないという人が多いのではないでしょうか。今回は虎ノ門法律経済事務所の齋藤健博弁護士に監修いただき、過払い金請求についてできるだけわかりやすく解説していきます。 ■なぜ過払金請求ができる?2010年6月17日に利息制限法と出資法が改定されました。改定前は、金利(これは利息のことです。利息は、何も合意しなければ私人間は5%、商事は6%です)の上限が、利息制限法では年率15〜20%(貸付額による)、出資法では年率29.2%と定められていました。実は、20%を超える金利は民法上は、無効とされますが、あくまで民事法上の、不当利得返還請求の対象となるだけです。簡単にいうと、罰せられることはありませんでした。これは実は、その年率20%〜29.2%の間の金利で、『グレーゾーン金利』と呼ばれていたものです。貸金業者はそこの穴をついていました。グレーゾーン金利で貸付を行なっていたのです。今じゃ考えられませんが、年率29%とかでお金を貸していたんです。年率29%の金利は具体的に言うと、100万円を1年間借りたら、1年間に29万円支払うことになります。 2010年6月17日に改正され、これが変化しました。金利の上限を、利息制限法では貸付額に応じて年率15%・18%・20%、出資法では年率20%と定めました。つまり、改正されたことで、グレーゾーン金利の概念そのものがなくなったのです。最近では年率3〜18%(貸付額による)のような金利がスタンダードといえましょう。グレーゾーンがなくなり、「改定前に借りたお金を改定後まで返していたらどうなるの?」「改定前に借りていたとしても、返している間に法律が変わり、違法な金利で貸し付けられてるんじゃないの?」と思いますよね。その通りです。だから法的に正当な理由で過払金請求が可能なのですね ■どんな人が過払い金請求できるの?利息制限法と出資法の改正前、つまり、2010年6月17日以前にお金を借りていた人には、可能性があります。改正法の施行は2010年ですが、法改定の判決が出てすぐの2006年に金利を変更している貸金会社も存在しています。よく耳にする名称の、大手の貸金会社はいち早く変更しているところが多いようですが、業者も玉石混交ですから、一概には言えません。 下記のような方は過払金を請求できる可能性があります。 ・年率20%以上のグレーゾーン金利でお金を借りていた貸付額によって金利は変わってきます。しかし、年率20%以上であれば確実にグレーゾーン金利といえるでしょう。 ・利息制限法・出資法の改正前に完済していないこの場合には、返済が継続している状態ですから、改正法の適用対象となります。そのため、過払い(不当利得返還請求)ができる可能性があります。ただし、詳細な取引の内容は、取引履歴の開示請求をしないといけません。 ・完済してから10年経っていない過払い金には最終完済から10年という時効があります。不当利得返還請求権も、民法166条・167条の時効に服します。時効を迎えてしまっていたら請求ができませんので注意しましょう。ただ、あくまで最終取引から10年であり、借りた日からではないので、まだ返済中の方や10年以内に完済した方は時効を迎えていません。 過払金請求は基本的に、取引履歴の開示請求をして、その内容を精査して、正確な金額の算定の根拠を出して…とやらなければいけない手続きが多く、自分で請求するのは難しいでしょう。弁護士等の専門家に依頼することをおすすめします。過払い金があるかどうか知りたい!という相談でしたら無料で受けてくれるところも多いので、一度相談だけでもしてみるのもいいでしょう。 *弁護士監修/ 虎ノ門法律経済事務所池袋支店齋藤健博弁護士(弁護士となってから、数々の不倫・離婚問題を解決。弁護士として働くかたわら、慶應義塾大学にて法務研究科助教も務める) *取材・執筆/アシロ編集部【過払い請求】ってよく聞くけれど、一体どういうこと?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。【過払い請求】ってよく聞くけれど、一体どういうこと?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年03月30日身に覚えのないアダルトサイトからの料金請求メールが届いたらどうしますか?『○○日以内に支払いがない場合には、訴訟を起こす』なんて書いてあれば、不安になって電話してしまうかもしれません。しかし、実はその対応は逆効果です。毎年、アダルト情報サイトに関する相談が、国民生活センターには数多く寄せられています。ここでは、実際にメールが送られてきたときの正しい対処法をご紹介します。 この記事は、法律事務所アルシエンの清水 陽平先生に監修いただきました。 一方的に送られてきた請求メールは詐欺の可能性大身に覚えがなく一方的に送られてくるアダルトサイトの料金請求メールは、悪質な業者が不特定多数に送信している迷惑メールである可能性が高いです。いわゆる『架空請求』と言われる詐欺の一種だと思ってください。仮に身に覚えがあったとしても、無視するに越したことはありません。メールに返信してしまうと、悪質な業者が『カモ』と判断してあなたのメールアドレスをリストに登録し、他の迷惑メールが、多数送られてきてしまう可能性があるからです。基本的には、電話はもちろん、メールの開封も避けたほうがよいでしょう。メールに添付されているファイルに、ウイルスが仕組まれていることもあるからです。本文内に記載されたURLをクリックするのもやめておきましょう。クリック先のリンクであたかも契約が正式に完了したような画面が表示されるからです。もちろん、そのような契約が有効になることはないのですが、突然のことに正常な判断ができなくなることがあります。表示画面に携帯電話の個体識別番号や、パソコンの固有識別番号、IPアドレスで『個人を特定しました』と書いてあることがありますが、それらの情報だけからは個人を特定できないので安心してください。また、URLをクリックすることでウイルスに感染させるサイトもあるので気を付けましょう。 誤って電話してしまった!そんなときの対処法メールに記載されていた電話番号に連絡してしまうと、業者からのしつこい請求が来るかもしれません。もし、実際に連絡してしまった場合には、以下の対処法を参考に行動するとよいでしょう。 ・着信拒否する電話番号しか知られていなければ、業者側も電話しかできません。身に覚えがない請求は無視してしまって大丈夫です。 ・電話番号を変更する業者によっては違う電話番号からかけてくることもあります。その場合には面倒ではありますが、電話番号を変えてしまうのがよいでしょう。 ・国民生活センター・警察に相談する電話した際に個人を特定できそうな情報を話してしまい、急に家や職場などに押しかけられるのではないかと不安な場合には、警察や国民生活センターに相談してみましょう。国民生活センターでは、アダルト情報サイトに関する相談が多数寄せられていますので、的確なアドバイスがもらえるはずです。 ・弁護士に相談する極めてまれなケースですが、過去に出会い系サイトの業者が、架空請求でサイト利用者に訴訟を起こしたことがあります。裁判所は訴状の形式に問題がなければ受理してしまいますので、訴える内容が正当なのかどうかまでは事前に判断をしないのです。 裁判所からの呼び出しを無視して答弁書を出さず、審理にも出なかった場合、原告の請求が認められ、裁判に負けることになってしまいます。また、訴訟で求める支払いの請求額が60万円以下の場合、少額訴訟手続による審理になると思いますが、少額訴訟手続は1回の審理で終了してしまうので、適切な反論をすることが必要になります。訴訟が起こされると、『特別送達』と書かれた封筒が裁判所から届くので、必ず確認して失くさないようにし、どう対応していくかは弁護士に相談するとよいでしょう。 基本的にアダルトサイトからの料金請求メールは無視してかまいません。しかし、メールに記載された番号に電話してしまって、問題が起きた場合には、公的機関や弁護士に相談してみるとよいでしょう。 *記事監修弁護士:法律事務所アルシエン清水 陽平先生(Twitter、Facebookに対する発信者情報開示請求仮処分について、それぞれ日本第1号事案を担当するなど、インターネット上の誹謗中傷に対する事案解決に注力しています。)*取材・文:アシロ編集部【画像】イメージです*siiixth/ PIXTA(ピクスタ)アダルトサイトの料金請求メール…もしも誤って電話してしまったら?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。アダルトサイトの料金請求メール…もしも誤って電話してしまったら?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年03月29日読者にはいないと信じたいが、「うっかり家賃払い忘れちゃった」ことがある人も……。それは立派な違反行為であり、場合によっては住居を追い出され損害賠償請求をされることもあります。トラブルを避けるためには家賃を滞納しないことはもちろん、法を理解しておくことが大前提です。とっつきにくい難しい法律を易しく解説しました。履行遅滞ってなに?約束を守らないことを債務不履行といいますが、これには3種類があります。「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」の3つがそうですが、不動産では特に「履行遅滞」が肝心となるでしょう。たとえば、あなたが10万円のアパートに住んでいるが、家賃を支払うことができなくなったとします。部屋を借りる代わりに家賃を支払うといった義務を守らない(債務不履行)この状況を、「履行遅滞」といいます。「約束期限を過ぎてしまった」と覚えると良いでしょう。さて、履行遅滞についてもう少し詳しく見てみましょう。履行遅滞とは履行遅滞は約束期限を守らなかったことをいいます。法律では以下のように定めています。【民法 第415条】債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。これにより債務者は債権者より責任を問われることとなります。責任についてみてみましょう。履行遅滞によって問われる責任約束期限を過ぎれば、以下のような責任を債権者より問われます。1. 履行の請求当然、債権者は債務者に引き続き債務の履行を請求することができます。要は「早く家賃を支払いなさい!でないと損害賠償請求しますよ!!」と怒鳴られるわけですね。これ以上債権者(大家さん)怒らせてしまうと、さらにお金を請求されてしまいかねません。ところで、損害賠償請求とは何でしょうか。2. 損害賠償請求される損害賠償請求とは、履行遅滞によって債権者が損害を被った場合に、債権者が債務者に請求できる権利のことをいいます。3.契約の解除履行遅滞すれば、契約自体を解除される場合もあります。履行遅滞すれば、債権者はいつでも契約を解除することができます。ただし不動産の賃貸契約の場合、大家さん側はまず「督促状」を請求する必要があります。これは通告みたいなものです。「1か月以内に未払い分の賃料を払わない場合は出て行ってもらいます!」みたいな文言が書かれています。すぐには追い出されませんが、契約を解除される前に早く履行しましょう。まとめ約束期限を過ぎたら債権者(大家さん)から3つの責任を問われることが分かりました。この3種類は段階的なものではありませんが、まずは1の履行請求から問われることが多いです。家賃滞納は裁判をしても勝てない場合がほとんどなので、しないようにしましょう。
2018年03月18日*画像はイメージです:交通違反などが原因で、パトカーから止まるよう指示されることは、多々あります。そんなときほとんどの人は指示に従うことでしょう。しかし、なかには逃げたいと思う人もいるはず。交通違反以外に「やましいこと」がある場合などは、実際に逃走するケースもあるようです。 ■死亡事故を起こすケースも稀に発生するのが、パトカーから逃げようとして事故を起こし、運転者が亡くなってしまうケース。この場合、逃走するほうに非があるのはわかるのですが、追い立てたパトカー側にも責任を問う声があります。このような場合、運転者の遺族としては警察に補償を求めたいところ。また、仮に何の罪もない通行中の一般人を巻き込んだ事故となれば、こちらの家族も治療費や補償を警察に求めていきたいところでしょう。警察に補償を求めることはできるのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■警察に補償を求めることはできる?「警察官などの公務員の違法な行為によって損害を受けた場合には、その公務員が所属する国又は公共団体に対して、国家賠償法による損害賠償請求をすることが考えられます(国家賠償法1条1項)。パトカーに追跡されていた車が事故を起こしたようなケースでは、その追跡行為が違法である場合に限り、その警察を設置している公共団体に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることができます。そして、どのような場合に警察官の追跡行為が違法となるかについて、最高裁判所は、「およそ警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問し、また、現行犯人を現認した場合には速やかにその検挙又は逮捕に当たる職責を負う(警察法2条、同65条、警察官職務執行法2条1項)」として職責を認定しています。そのうえで「職責を遂行するために被疑者を追跡することはもとよりなしうるところ」として、追跡行為自体の正当性を認めています。「警察官がかかる目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合」については、その「追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要する」として、逃走態様や交通状況等の事情から判断して追跡が不相当と言える場合には違法性を認めるとしました(昭和61年2月27日判決)。これは、パトカーに追跡されていた車に同乗していた者や、事故に巻き込まれた一般人のような第三者が損害賠償請求する場合だけでなく、パトカーに追跡されていた車を運転していた本人が損害賠償請求をする場合にも、警察官の追跡行為が違法となるのはどのような場合かについての判断基準となっています。この判例を受け、実際の裁判例を見てみると、損害賠償請求が認められたものとしては、警察官が、暴走行為をするバイクを停車させるために幅寄せ等の行為をした結果、バイクが標識と衝突し、運転者が死亡、同乗者が重傷を負った事例において、幅寄せ行為等に警察官の過失が認められ、追跡方法が違法であると判断され、損害賠償請求が一部認容されたものがあります。(徳島地裁平成7年4月28日判決)」(大達弁護士) ■損害賠償が認められる可能性は低い?「その他、警察官の呼びかけを無視して逃走をしているような場合で、警察官の追跡行為が違法とされた目立った例は見当たりません。警察官の追跡行為が違法とされる可能性がある例として考えられるのは、下記の条件をすべて満たすような限定的な場面と思われます。・逃走運転者の人物や住所が警察に知れていて、後に逮捕や検挙、任意の取り調べが容易でその場での追跡が不必要である・追跡原因となった違法事由や嫌疑が軽微なものである・追跡行為によって事故等が起こる具体的な危険性が生じている上記の条件をすべて満たしつつ、漫然と追跡し続けた結果として事故が発生したような場合でない限り、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められる可能性は低いと考えられます。なお、事故に巻き込まれた第三者は、事故を起こした運転者やその保険会社に対して、損害賠償請求をすることができ、それによって損害はある程度填補され得ます(自動車損害賠償保障法3条、民法709条)」(大達弁護士) 警察による追跡行為が違法とされる例は限定的のようです。補償を求めることができるケースもありますが、無用なトラブルを避けるためにも、やましいところがないのであれば、パトカーに呼び止められた場合には、素直に応じることが無難なようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*curvabezier / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月18日マンションを売却する際に注意することのひとつに瑕疵担保責任があります。この瑕疵担保責任によって、物件を引き渡した後に損害賠償を請求されるといった事例も少なくありません。トラブルを未然に防ぐためにも瑕疵担保責任についてしっかり学んでおきましょう。難しそうだけど瑕疵担保責任って重要なの?瑕疵担保責任とは不動産売買の際に重要なもののひとつで、簡単に言うと、「物件に問題や欠陥があった場合の責任」です。マンションを売却する場合は、そのマンションで買主がきちんと生活できることを保証する責任が売主にあるということを意味しています。細かく分けると、瑕疵が「通常必要な品質や性能を有していない」という意味にあたります。売主が故意に隠したものはもちろん、過失(気付かなかった)であっても責任を負うことになります。その場合、買主が欠陥や問題を見つけてから1年以内であれば売主に責任を追及できることになっています。責任の追求とは具体的に契約の解除か、損害賠償請求を指します。瑕疵担保責任は、宅地建物取引業法と民法で定められているものです。民法の「第570条(売主の瑕疵担保責任)」には、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。」とあります。民法第566条は、売買の目的物が契約に達せない時は、買主は契約の解除を求めるか、損害賠償を請求することができるという内容です。また、買主がこの事実を知った時から契約の解除や損害賠償の請求は1年以内に実行しなければならないと記載されています。ただし、いつから欠陥や問題が始まったのか判断がつきにくいため、売買の際に瑕疵担保責任についても契約を結ぶのが一般的です。通常は引き渡し後3か月や6か月、古い物件の場合は瑕疵担保責任を負わないという「瑕疵担保責任免責」を設定するケースもあります。買主に不利が及ばないための瑕疵担保責任ですが、売主にも不利が及ばないような配慮もされています。マンションの価格を無料査定してみる瑕疵担保責任で多い事例は何?マンションの売却後に瑕疵担保責任を追及されるケースには、いくつか特徴があります。一番多いのはやはり設備や設置機器の故障や不具合でしょう。例えば、給湯器が故障していてお湯が出ないなどです。またエアコンの効きが悪いなども瑕疵担保責任の対象になります。買主に追求された場合、売主が修理費用を負担することになります。また、換気扇から異音がするといったことも瑕疵担保責任の対象になります。細かいところで言えば、「蝶番に付いているはずのネジが1つない」といったことでも、追求されると瑕疵担保責任の対象になります。こうしたことは、普段の生活をしている分には気にならないのですが、買主の新生活を保証する責任があるため、瑕疵担保責任の対象になります。「契約に不利なので言いたくない」という売主もいますが、後で追求される前に気になる点を不動産会社に話しておいた方がいいでしょう。また、住居内で家族が死亡した場合も注意が必要です。自然死であれば瑕疵担保責任の対象にはなりませんが、自殺の場合は瑕疵担保責任の対象になる、といったように素人では判断の難しいケースもあります。このようにご自身で判断が付きづらい場合も、あらかじめ不動産会社に確認するのが無難です。瑕疵担保責任の内容は契約書に記載するマンションの売買を行う際は不動産売買契約を交わしますが、同時に売主が瑕疵担保責任を負うかどうかを決め、契約書に記載してから取り交わすことになります。これはマンションの売却後、物件に欠陥があった場合にどのように対応するのか、あらかじめ決めておくためです。あまりにも物件が古い場合は、双方の合意のもと売主が瑕疵担保責任を負わない「瑕疵担保責任免責」を選択する方法もあります。一方、売主が瑕疵担保責任を負う場合は、引き渡しからどれくらいの期間かなどを取り決めます。それは売買契約に瑕疵担保責任についての記載を行わない場合、民法の規定が採用されるからです。民法では期間が限定されないため、売主は半永久的に瑕疵担保責任を負うことになってしまうのです。不動産売買は宅地建物取引主任者などが執り行うため、瑕疵担保責任のことについてはほとんどお任せすることとなります。しかし「分からないので」と言いなりになっていては売主に不利な契約となる可能性もあります。しっかり瑕疵担保責任の知識を得ておくことも、売主としての責任と言えるでしょう。まとめ愛着を持って住んでいたマンションの次の住人は新しい買主です。売主には、買主の新生活を保障する責任があるということを覚えておきましょう。そのためにも瑕疵担保責任について正しい知識を得ることはとても重要です。ただし2017年に民法の改正案が可決され、3年以内に施行されることになっています。改正民法では実は瑕疵担保責任という概念がなくなり、買主の権利がさらに拡大する見通しです。マンションの売却を検討している方は改正民法の動向にも注目しておきましょう。まずはマンションの価格を無料査定してみる
2017年11月16日10月23日、NHKが定例会見を行い、俳優・小出恵介(33)の所属事務所との損害賠償請求を含む協議について言及した。今年6月、小出が『フライデー』に17歳の女性との“淫行疑惑”を報じられた影響で、同局の土曜ドラマ『神様からひと言~なにわお客様相談室物語~』が放送中止になっていたのだ。 「NHKのドラマは全6話まで撮影が終わっていたにも関わらず、お蔵入りになってしまいました。1話あたり5千万円ほどで、NHKだけでも違約金は3億円に上るそうです。ほかに出演予定だったドラマや映画、CM等もろもろ計算すると、違約金の総額は5億円以上とも言われています」(芸能関係者) 同局の木田幸紀放送局長は損害賠償について「(小出の)所属事務所と協議し、合意にいたりました」と報告。「内容に関しては公表を差し控えたい」としたものの、「こちらの求めていた通りの合意でした」と説明した。 実は3カ月前、本誌は謹慎生活中の小出を直撃している。そこで語っていた“複雑胸中”とは――。 7月下旬の午後4時ごろ、自宅マンションから姿を現した彼に記者が声をかけた。 ――『女性自身』です。事件に関して何かおっしゃりたいことは? 「……」 報道直後は小出が一方的に叩かれていたが、高校生と報じられていた相手女性が“シングルマザー”と判明。それ以降、ネット上では彼女のプライバシーが次々とさらされるという事態に発展した。小出と関係を持ったことを、当初は自慢げにSNSで吹聴していたとされ、女性への心ないバッシングもあった。 いずれにせよ、これまで明らかになっているのは、女性側の声ばかり。小出の“言い分”もあるはずだが、彼は口を開いてこなかった。 ――小出さんも、いろいろお話されたいことがあるのでは。 「ええ、そうですね。なんか、自分もやっぱり発言させてもらえない色んな事情があって……。ただ、世の中の空気がどういうふうになっているのか、僕も知りたいなって思ってるんです。でも、なかなか触れられなくて……」 ――NHKの違約金だけで3億円と聞きました。 「金額のことは分かりません。もちろん違約金が発生していることは知っています」 ――小出さんと事務所、どちらが払うんですか。 「まだ協議中です」 そして、今後についてはこんな“不安”を語った。 ――復帰はいつごろに? 「正直、分からないです。事務所もどうするかわからないみたいなので」 彼は現在も、猛省の日々を送っている。
2017年10月23日*画像はイメージです:「私は、ある株式会社の常務取締役を務めておりますが、社長から『他の取締役と意見が合わないから辞めてくれないか』と言われました。辞めざるを得ないのでしょうか。会社に対して何も主張できないのでしょうか」取締役のかたからこのようなご相談をいただきました。通常の労働者であれば、労働法によってその地位が保護されていますが、取締役などの会社の役員は会社との関係でどのような立場になるのでしょうか。 ■労働者との違い株式会社と取締役との法律関係は、雇用関係ではなく、委任関係とされています(会社法330条)。従業員が取締役に選任されるにあたって、退職手続をとり、退職金をもらう人もいらっしゃるかと思いますが、それはいったん労働契約が終了するためです。したがって、労働者の場合と異なり、取締役には労働契約法上の解雇規制(労契法16条)の適用はありません。なお、取締役の中には、従業員兼務取締役という立場の人もいて、この場合は労働者の地位が残っていると考えられています。次に、任期中に取締役を解任したい場合には、株主総会決議によって解任することができます(会社法339条1項)。取締役の解任には、労働契約上の解雇規制とは異なり、特段の理由を必要とせず、株主総会決議があれば自由に取締役を解任することができます。 本件では、常務取締役ですので、通常従業員兼務取締役ではなく、純然たる取締役です。そうだとすると、労働者ではありませんので、労働契約法上の解雇規制の適用もなく、当該会社の株主総会決議によって、解任することができます。 ■取締役解任の損害賠償請求それでは、取締役の解任の場合には、会社に対して何も主張できないのでしょうか。会社法339条2項は、解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができると規定しています。これは、取締役の解任の自由を保障しつつ、正当な理由がある場合を除いて、解任そのものによる損害賠償を認めることで、取締役の任期に対する期待保護と株主の会社支配権の確保との調和を図ったものと説明されています(法定責任説)。この会社法339条2項により請求できる損害賠償の範囲は、取締役が解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額とされており、典型的には残任期分の役員報酬相当額となります。一方で、慰謝料や弁護士費用は原則として認められません。 ■損害賠償請求が認められないケースも先ほど、損害賠償額の範囲について触れましたが、どんなケースで損害賠償請求が認められるのでしょうか?これについては、会社法339条2項には記載があり「正当な理由」のある解任を除き損害賠償請求が認められる、とされています。つまり、「正当な理由」がある場合には、取締役解任に対する損害賠償請求は認められないことになります。取締役解任の「正当な理由」の有無で争われる主要なケースは以下のような4つに大別されます。 (1)法令・定款違反行為、心身の故障(2)職務への著しい不適任など(3)経営上の判断の失敗(4)主観的な信頼関係喪失(大株主の好みや、より適任な者がいるというような単なる主観的な信頼関係喪失) それぞれのケースが正当な理由に該当するかどうかですが、(1)(2)に関しては、正当な理由に該当するとされています。(3)については正当な理由の有無について争いがあるとされており、(4)は正当な理由とは原則として認められません。 本件では、他の取締役と意見が合わないという理由だけでは、④の主観的な信頼関係喪失といえ、正当な理由は認められないでしょう。したがって、本件では、残任期分の役員報酬相当額の損害賠償請求が認められる可能性が高いといえます。 *著者 弁護士 小林 洋介(センチュリー法律事務所。一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に応じて、既存の解決策にとらわれず、新しい解決策を常に模索し、提案し続けていきたいと考えております)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月31日昨今は「完全紹介制」「会員制」の飲食店が増加しています。情報化社会の中で敢えて住所などを公開せず、ひっそりと営業することで、「存在価値を上げたい」「来てくれるお客様を大切にしたい」などの狙いがあるようです。当然そのような店舗はお客様に対しネットに住所や評価を書きこまないよう求めるわけですが、中にはそれを無視する形で飲食店の評価サイトに投稿する人もいるようです。店側としては情報の削除を求めるのは当然のことでしょう。書き込んだ人間が断り続けるのなら、損害賠償などの法的措置に出ざるを得ません。しかし、仮に提訴したとしても、訴えが認められない可能性が高いというのです。本当でしょうか?桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に真相を聞いてみました。Q.完全紹介制の情報を勝手にサイトに投稿されたうえ、削除要求にも応じない…損害賠償は可能ですか?*画像はイメージです:名誉毀損や営業に支障がでた場合でない限り、損害賠償は認められないものと思われます。「飲食店の情報についてサイトに掲載されたことについて損害賠償を求める裁判はいくつかなされておりますが、公開されている裁判例を見る限りでは名誉棄損等が伴う場合でなければ基本的には損害賠償を認めていません。紹介制の店舗がサイトに掲載されたことについて損害賠償を求めた裁判(ニュースなどでも取り上げられました)についても、店舗側の訴えが否定されています。同判例で裁判所は、店舗情報について公開するかしないかについては営業権の一つとして認められているものの、店舗情報がそのサイト以外では公開されていることや、店舗情報の掲載が名誉棄損等を伴うものではないことを理由として、店舗情報の公開を違法とは認めませんでした。裁判所が上記判断を行ったのは、サイト運営者の表現の自由や受け手の知る権利を重視しているという理由からだと考えられます。もっとも、店舗情報が完全非公開であり、かつ情報開示により実際に営業に支障が生じたという場合であれば、損害賠償が認められる余地はあるでしょう」(大窪弁護士) 過去の裁判事例を見る限り、名誉毀損や情報開示によって営業に支障が生じたというケースでない場合、損害賠償請求などを行ったとしても、認められる可能性は低いようです。 *取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*amadank / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月10日*画像はイメージです:今年3月、大阪市城東区の分譲マンションに住む男性が、購入した部屋の近くに設置された生ごみ処理機(ディスポーザー)の臭気がひどく住み続けられないとして、不動産会社に約5,800万円の損害賠償請求を起こす事案がありました。購入時、不動産会社から臭気について説明がなく、入居後間もなくひどい臭いと騒音がするようになり、住めないほどになったそう。原告は不動産会社の過失を主張しています。しかし、被告側は「売買締結時には臭気がなく、管理の問題」として請求棄却を求めているようです。このようなことはレアケースですが、分譲・賃貸にかかわらず、物件に住んだあと、知らされていなかった事態が出てくることも稀にあります。そのようなとき、部屋を買った・借りた人間は不動産会社に損害賠償請求することはできないのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。 ■損害賠償を受け取ることができる?「大阪のケースのように、部屋の近くにディスポーザーの排気口があり、臭くて日常生活を送れないというのであれば、正当な家賃を払って住んでいる意味がありませんね。賃貸借契約における貸主の義務は、借主に貸した家屋を支障なく使ってもらう義務がありますし、借主はその義務の履行に対しての対価として家賃を支払うわけです。部屋の近くにディスポーザーの排気口があって、臭くて支障をきたすというのであれば、それをなんとかしてもらう権利が借主に発生し、家主はそれに従う義務があります。家主は、その義務を行わない限り、債務不履行ということになり、家賃の値引きに応じる、あるいは、借主からの解約に応じなければならなくなります。解約の場合には、敷金礼金、引っ越し代などの損害賠償請求をされる可能性が高いものと思います。仲介会社については、あらかじめそのような事情を知っていたながら、借主に説明しなかったということになりますと、やはり支障をきたす物件を仲介したということになりますので、仲介手数料や引っ越しにかかる費用など、損害賠償請求される可能性が高いものと思います。またこれは分譲についても同様です」(小野弁護士) 不動産会社がその事実を知りながら、借主や購入者に説明をしなかった場合は、損害賠償請求される可能性が高いのですね。 *取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kuro / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月02日先日、ある掲示板の運営者がネットTVに出演。累計30億円という多額の損害賠償請求を受けていることを明かしたうえで、「踏み倒した」と発言しました。彼によると賠償請求は10年経過すると時効となるそうで、「そんなものは払わなければいい」などと発言。その態様が物議を醸すことになりました。*画像はイメージです:民事裁判で賠償義務が認められているにもかかわらず、「無視して踏み倒す」行為は、やはり許されていいものではないように思われます。強制的に支払いを迫ることはできないのでしょうか?星野法律事務所の星野宏明弁護士にお訊きしました。 ■支払いに応じない場合強制執行を行うが……「民事では、債務者の預金や不動産、現金その他財産の差押によって、債権者の金銭債権を回収することになっています。これを強制執行といいます。強制執行するためには、支払いを命じる判決などの債務名義が必要です。損害賠償を命じる判決もこの債務名義となりますが、債務者が判決で命じた内容に従って任意に支払いをするとは限りません。そうすると、判決の内容を強制的に実現するために、強制執行をする必要があります。しかし、強制執行するために、債権者側で債務者の保有している財産を調査し、裁判所からは時に現実的には困難なまでの財産の特定を債権者側に求められることがあります。そのようなとき、賠償を命じる判決に債務者が従わない場合であっても、(1)債権者側が債務者の財産を調査できない(2)債務者に本当に財産がないに該当する場合は、強制執行しても実際には債権を回収できないことになります」(星野弁護士) ■踏み倒しても刑事罰にはならない「実際の事件では支払いを命じる判決があっても、債権者側が債務者の財産を調査できない場合や、債務者に本当に財産がないケースはかなり多数あります。このような場合、執行官の強制執行妨害など積極的な妨害をしない限り、判決にただ従わないだけでは判決を無視して踏み倒しても犯罪ではないので刑事罰になりません。したがって現状は、債務者が判決に従わず財産が不明か不存在のため強制執行による判決内容実現も不可能で、事実上支払いを命じる判決を踏み倒されるケースは多数に上ります」(星野弁護士) ■法改正での改善が期待される「現在の運用では、預金などを金融機関の本店に一括して調査照会できないなどの不都合もあり、踏み倒しとなるケースが後を絶ちません。民事執行法改正により、債務者の預金の金融機関本店への一括調査手続きの導入などが議論されているところであり、今後の改善が期待されますが、それでも債務者に本当に財産がない場合には債権回収の対策のしようがありません」(星野弁護士) 残念ながら損害賠償請求を「踏み倒す」行為は、現状可能となってしまっているようです。今後の制度改善に期待したいところですね。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*buri327 / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月29日先日、居酒屋を営む男性がTwitter上で「予約のあった29名の団体客に連絡がないままキャンセルされた」と被害を訴える事案が発生。店は29人入るといっぱいになるようで、事実上貸し切り状態。料理も人数分用意し、準備万端で到着を待っていましたが、時間になっても客は来ず。連絡先に電話をしても出ないそうで、「バックレ」られたそうです。Twitterで来店を呼びかけたところ、同情した常連やネットユーザーが多数来店。料理を無駄にすることなく、なんとか赤字は回避することができたようです。このケースはネットでの訴えにより様々な人々が協力したため、難を逃れたようですが、居酒屋などではこのような団体客予約客による「バックレ」が頻発しています。店側としては、このような行為については厳しく接したいところ。損害賠償を請求することはできないのでしょうか?Q.予約を「バックレ」た団体客に損害賠償を請求することはできる?*画像はイメージです:予約が確定している場合はそこで契約が成立していますので、賠償は可能であると思われます。団体客が予約を入れ、店との間で開始時間とスペースの確保を合意した時点で契約が成立しています。そのような状況で時間になっても姿を現すことなく、店側に損害が発生した場合は、「契約不履行」ですから、当然ながら損害賠償を請求することは可能であると思われます。しかし、今回のケースのように団体客側との連絡手段が途絶えてしまえば、賠償を請求することは事実上不可能です。予約時に電話番号だけではなく、住所などを聞いておいたほうが良いでしょう。もちろん、それも全てウソである可能性も否定しきれません。店側としては、団体客の予約については身分証明書の提示させたうえ、事前にキャンセル料や損害賠償請求の可能性があることを取り決めるなどして、自己防衛しておく必要があります。悲しいことではありますが、人を簡単に信用せず、常に不測の事態を想定した行動が求められます。それが、店を守ることになります。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年04月28日3月、NHKの生活情報テレビ番組が糖尿病の治療について事実と異なった情報を流し、謝罪する一幕がありました。健康被害などは報告されていませんが、実際に番組を見て実践しようとした人もいたようです。生活お役立ち番組や医療を扱った番組はこれまでも数多く放送されており、納豆やココアなど、番組で取り上げられたことをきっかけに品薄状態になるほど売れることもありました。本当に健康になることができるのなら良いのですが、なかには今回のように後に誤っていることが発覚し、番組が打ち切りになったケースも発生しています。仮に番組内で紹介された健康法を実践し、体調不良や病気になった場合、謝罪だけでは納得いかないでしょう。放送したテレビ局に治療費はもちろん、慰謝料や損害賠償を請求したいところ。そのようなことは、可能なのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。 Q.テレビ番組が間違った健康法を紹介し、実践して健康被害がでた場合、テレビ局に損害賠償請求できますか?*画像はイメージです:放送内容によりますが、かなり難しいと思われます。「放送内容にもよりますが、原則的には損害賠償請求の対象にはならないと考えます。損害賠償の請求が認められるためには、(1)他人の権利利益の侵害、(2)これに対する故意又は過失、(3)故意または過失と発生した損害の間の因果関係という要件をすべて満たす必要があります。仮に、放送された健康法が誤ったものであり、放送局側に過失があるとしても、実際に発生した健康被害、これに基づく損害の発生との間に因果関係を認めることが難しいと思われるからです。例えば、なんらかの運動法が紹介されてこれを実践した後に、負傷したというケースでも、そもそも実践した人に疾患があった場合には因果関係は認めにくいでしょう。何らかの食品を摂取する健康法が紹介されてこれを実践した後に、体調を崩したというケースでも、当時の体調や、過剰摂取、元々持っていた疾患などが関わっているケースもありえ、やはり因果関係を認めることは難しいのではないかと考えられます。但し、かなり詳細に健康法が紹介され、それを忠実に再現したこと、他に健康被害が生じる原因がなかったこと、これらを全て証明できた場合には、損害賠償請求が認められる余地があります」(寺林弁護士) 健康被害が生じる原因が他に考えられないことを立証できるうえ、紹介された健康法を忠実に再現したとみなされた場合は損害賠償請求が認められる可能性がでてきますが、健康被害と放送との因果関係を立証することが困難と思われるため、基本的に損害賠償を請求することは難しいようです。「テレビが言っているから正しいだろう」ではなく、「間違っているかもしれない」と注意深く話を聞くことが重要かもしれません。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Yoshi / PIXTA(ピクスタ)
2017年03月30日3月12日から26日まで行われた大相撲3月場所。注目を浴びていた優勝争いは、千秋楽にまでもつれ込み、新横綱の稀勢の里が2場所連続2回目の優勝を果たしました。今場所では、稀勢の里は、安定した取り口で勝利を重ねる一方、これまで盤石の強さをみせてきた白鵬が5日目に休場。17年ぶりの4横綱による優勝争いに注目していたファンにとっては、少々残念な場所になりました。横綱は相撲界でトップの立場にあり、つねに勝利を義務づけられた存在。仮に格下相手に負けると、会場に座布団が舞うことになります。場内アナウンスでは「座布団を投げないてください」と呼びかけ、館内の禁止事項にも明記されているのですが、金星が発生すると、必ずその光景を目にします。マス席の座布団は意外と重く、舞った物が当たると痛いもの。仮に当たりどころが悪く、怪我をしてしまったら、投げた人間に治療費や損害賠償を請求したくなりますね。実際のところ、そのようなことは可能なのでしょうか? Q.大相撲の会場に舞う座布団に当たって怪我をした場合、損害賠償を請求できる?*画像はイメージです:できます。投げた座布団が人に当たれば怪我をさせてしまうことも予見可能ですから、座布団で怪我をした人は投げた人に対して治療費等の損害賠償を請求できるものと思われます。刑事上も座布団を投げて人に怪我をさせると傷害罪や過失傷害罪に該当する可能性があります。また、安全対策が十分でなかったのであれば、主催者や管理者に損害賠償を請求することも考えられます。現実問題として投げ込まれた座布団から投げた人物を特定することは難しいわけですから、仮に上記のようなことが発生すれば主催者である相撲協会に損害賠償を請求せざるを得ません。場内アナウンス等による注意でも座布団の舞がなくならないことからすると、法的リスクという意味でも、相撲協会はより効果的な安全対策を講じる必要があるように思います。なお、「座布団の舞」は、名物となっていることや、プロ野球の硬式ボールのように当たって失明や骨折など重大な怪我に繋がることが少なそうなこともあって、これを許容する相撲ファンの意見もあるようです。しかし、座布団投げは、当たれば人を怪我させる危険があり、本来は禁止されている行為で、怪我をさせれば法的にも損害賠償の義務を負います。それだけは忘れないようにしてください。 *記事監修弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Yuka Tokano / Shutterstock
2017年03月28日イギリスのパフォーム・グループが運営するスポーツ動画配信サービス『DAZN(ダ・ゾーン)』。全世界の様々なスポーツをネットで閲覧することができるため、高い人気持ちます。同社は、昨年約2,100億円を投資して明治安田生命Jリーグと10年間の放送契約を締結。これまで試合を放映してきた『スカパー!』が同リーグの中継を断念したため、ファンにとっては重要な観戦ツールとなりました。2月26日、ついに明治安田生命Jリーグが開幕。有料契約者たちが、DAZN(ダ・ゾーン)で試合を見ようとアクセス。お金を支払っているわけですから、「視聴できて当然」なのですが、出てきた動画はカクカクで、止まることも多々。有料契約者たちは一様に「酷すぎる」と、怒りの声をあげ、炎上状態になりました。のちにDAZN側は記者会見を開き謝罪するとともに、技術的な問題が発生していたことを公表。今後は「万全の体制を期す」としています。しかし、ファンとしては1度あったことは2度あるのではないかと勘ぐってしまいます。仮に開幕戦のようなことがあれば、損害賠償請求などを検討したいところです。動画配信サイトが料金を徴収したにもかかわらず、内部の問題で配信できなかった。このような場合損害賠償請求をすることはできるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。Q.有料のストリーミング中継がカクカクでまともに見られない!賠償を請求することはできますか?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースですが、配信者側に問題があったことに起因するトラブルなら請求できる可能性があります。「最近は、テレビだけでなくインターネットでも様々な番組を見ることができるようになり、動画配信業者もどんどん増えてきました。この記事を読んでいる方の中にも、インターネットで配信される番組をよく見ている、という人もいるはず。そして、それらの動画配信サイトは、有料会員になると快適に動画を見ることができる、という場合が多いように思われます。しかし、有料会員となり、お金を払ったのにもかかわらず動画をまったく快適に見られない場合、有料会員は動画配信業者に対して損害賠償をすることは可能なのでしょうか。今回のような場合、視聴者である有料会員と配信業者との間には、視聴者は「会員が一定の金銭を支払う義務」を負い、配信業者は「動画を配信する義務」を負うという内容の契約が成立しています。そして、この「動画を配信する義務」の具体的内容として、同契約上、通常想定しうる程度の通信環境が整っている場合には、配信を会員が快適に見ることのできるようにすることも含まれるものと考えられます。配信業者がそもそも配信をしていない場合は当然ながら、仮に配信をしていたとしても、一般の視聴者が準備をするのが困難なほどに高度な環境じゃないと見られないといった場合には、配信業者は債務不履行責任(民法415条)として、損害賠償をする責任を負うことになりますが、そうではなく、原因が会員側にある場合には責任を認めるのは難しいことになると思います。なお、仮に業者側に責任が認められる場合、その損害額は、原則として動画を快適に見られなかった期間に応じて決まることになると思われます。例えば月会費制の場合、月会費を1ヶ月分の日数として30で割り、その数字に見られなかった期間の日数分を乗じた金額、というように決められることが多いでしょう。ただし、その時にその番組を見ることに意味があり、その番組を見るために有料会員登録した、という事情がある場合において、配信業者がそれを知り、又は知ることができたといえるような場合には、例外的に、月会費分に加え、慰謝料を請求することができる可能性もあるかもしれません。また、視聴者が、配信業者に対して改善を求めたにもかかわらず、動画環境が改善されない場合には、損害賠償に加え、契約を解除することもできます(民法541条、545条3項)。ただし、同時にストリーミング中継の配信を受けるには、業者が推奨する環境が指定されているのが通常で、その環境がよほど高度なものではなく、会員側にとって容易に準備できるようなものであれば、それが準備できていない場合などが規約上免責されると定められている場合も少なくありません。 では、そのような規約の有効性が次に問題となりますが、規約自体が全くの不合理であって公序良俗違反(民法第90条)として無効になったり、消費者契約法に違反したりしない限りは、原則として有効といえそうです。インターネット動画配信の市場が年々大きくなっています。ユーチューバーがひとつの仕事として確立したり、テレビ番組のオンデマンド配信が始まったり、大手メディアでは取り上げられないような話題も、ネット動画配信だからこそ世の中に知らせる機会ができるなど、その広がりはまさに無限大。近頃では弁護士もYouTubeを利用して広告を行っている例も珍しくありません。このように、インターネット動画配信の市場が広がっていることもあり、このようなトラブルも今後増えていくことも考えられますが、配信業者と視聴者が良い関係を築き、より進んだ技術の進歩が得られるように、これからの市場の広がりに期待したいところです」(大達弁護士) まだまだ法整備が進んでいない分野といえるだけに、様々な見解があるでしょうが、やはり運営側のトラブルで配信できない場合は、債務不履行責任が発生する可能性が高いようです。頭の片隅に入れておくべきかもしれません。ただし自身の環境不全が原因である場合は、無効です。このあたりが争点となりそうですね。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*nito / PIXTA(ピクスタ)
2017年03月20日3月7日、関西地方の不動産会社に勤務する女性が、物件を紹介する動画の音声を消えているものと勘違いし、男性を誹謗するような会話が入ったままYouTubeにアップロードされる事案が発生。さらに他の動画でも卑猥な発言や私的な会話、さらに放屁などが録音されていたうえ、物件に対する乱雑な振る舞いが「不動産会社社員にふさわしくない行動」と批判を受けています。この社員がどうなったのかは不明ですが、一部では解雇されてしまったのではないかとの噂があります。「ウッカリ」の代償は、かなり大きなものになってしまいました。*画像はイメージです:■ネットでの誹謗中傷は少なくない最近はニコニコ生放送やツイキャス、ふわっちなど自ら動画を配信することが容易になる世の中になりました。それに比例して、動画内で第三者を誹謗中傷する、馬鹿にするなどの事案が発生することが多くなり、警察が出動する事態に至るケースもあります。また、SNSでも嫌な思いをしている人は多いと聞きます。いわれなき誹謗中傷や、過激な悪口など、匿名性が担保されているサイトほどそのような光景を目にします。そのような書き込みには慰謝料の請求や名誉毀損罪での提訴を検討したいところです。しかし、匿名性が高いネット社会でそのようなことは可能なのでしょうか? ■匿名性の高いネット社会で誹謗中傷者を訴えることは可能なのか?まず慰謝料の獲得についてですが、目に余る名誉毀損や悪口を書き込んだ者については、プロバイダ責任制限法を活用することで、情報の開示を求めることができます。ただ、実際に書き込んだ者を特定するためには、まずサイト運営者にIPアドレスの開示を求め、それにより判明するプロバイダに対して契約者の情報を求めなければならず、しかもログの保存期間は書込みから3~6か月程度のため、迅速に動くことが求められるなど、ハードルは低くありません。書込みをした者の情報を得ることができれば、慰謝料を請求することができます。相手が素直に支払わない場合には、裁判を起こすことになるでしょう。なお情報の開示を求める場合は、そのURL、動画、書き込みのスクリーンショットなど証拠が必要となりますので保存しておきましょう。 ■削除依頼に応じない場合は……動画や書き込みの削除については、運営者に通報することが基本的な対応です。その際、単に通知をするだけでは対応してくれないことが一般的であり、自分の権利が侵害されたということのきちんとした説明と、本人確認書類を送ることが必要です。本人確認書類は、免許証やパスポートの写し、印鑑証明書などが想定されています。なお、自分で対応することが難しいと考えた場合などは、法務局が削除の対応や、場合によっては開示請求についても援助してくれることがあるので、相談してみるとよいでしょう。悪質な書き込みに悩んでいる方は、弁護士に相談するとともに、法務省の人権擁護機関への相談も検討してみましょう。 *記事監修弁護士:清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年03月19日少し前ですが、ある参議院議員が田園都市線の遅延に関し「遅延度に応じて料金を割り引く制度の導入を提案する」とTwitterで発言し、話題になりました。定刻運行のためにリスクのある無理な運行をするより安全性を重視すべきとの声が多かったものの、電車遅延によって大切な用事に遅れてしまうのは困り物です。議員の言うように鉄道会社、あるいは遅延の原因を作った乗客などに責任を問うことはできるのか、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士にお聞きしました。*画像はイメージです:■遅延が発生した際に乗客は鉄道会社に損害賠償できるのか議員は「料金を割り引く制度の導入を提案する」と鉄道会社の責任を問う姿勢でしたが、国交省の「遅延対策ワ―キンググループ最終取りまとめ」では、遅延の発生原因の94%が混雑やドア挟みなど乗客などによるものとなっています。遅延の原因が乗客同士のけんかや酔っ払いの線路内立ち入りなどの場合、乗客は鉄道会社や遅延の原因となった人物や対して、損害賠償請求ができますか?「まず、乗客が鉄道会社に対して損害賠償できるかどうかが問題となります。乗客が電車を利用する場合、乗客と鉄道会社の間に旅客運送契約が成立することになり、この契約に基づいて電車により乗客が目的地に移動することとなります。ただ鉄道会社はこの旅客運送契約に関して営業規則を定めており、規則上鉄道会社は運航不能や2時間以上の遅延の場合などには料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。したがって、乗客が鉄道会社に対して損害賠償することはできません」(大窪弁護士)なんと、電車に乗る時点で鉄道会社と乗客との間でこの旅客運送契約は成立しているそうです。知らずに電車を利用している方も多いのではないでしょうか?「過去にこの営業規約の有効性について裁判で争われたことがありますが、裁判所は、営業規則で免責規定を設けることには相応の合理性を認めることができることから、鉄道会社は旅客運送契約上、本件列車遅延による精神的損害について損害賠償責任を負わないとして乗客側の請求を認めませんでした(平成18年9月29日東京地裁判決)」(大窪弁護士) ■遅延の原因を作った人物に対してはどうなる?では、遅延の原因を作った人物に対しての損害賠償請求はどうでしょう?「上記裁判例の理屈からすると、運送契約上、そもそも乗客には遅延することなく運送してもらう権利自体がありません。先例となる裁判例等がないため考え方はわかれるかもしれませんが、遅延の原因を作った乗客に対する請求についても難しい点があるのではないかと思います」(大窪弁護士)契約上、遅延することなく運送してもらう権利自体がないというのはちょっと衝撃的です。現代では電車は遅れずに到着するのが当たり前と思われていますが、それはそういう契約だからではなかったのですね……。 ■鉄道会社による損害賠償では、鉄道会社から遅延などの原因を作った人物に対して損害賠償が請求されることはあるのでしょうか?電車を止めると高額の請求をされるという噂もありますが……。「マスコミでも話題になりましたが、線路内に立ち入って事故が起こった結果、列車の遅れが生じたとして、事故を起こした故人の遺族に対して鉄道会社が損害賠償を起こしたことがあります。この時に鉄道会社は、振替輸送代や乗客対応にかかる人件費として合計約720万円の請求を遺族に対して行っています。この件で裁判所は故人に責任能力がないこと、および遺族に監督義務がないこと等を理由として鉄道会社の請求を認めませんでした(平成28年3月1日最高裁判決)。しかし、そのような事情が無ければ列車の遅れが生じたことによる損害について故人が責任を負った可能性があります。また、線路の立ち入りということでなく乗客が列車に遅延を生じさせたという場合でも、不法行為としてそれに対する実損を鉄道会社から請求される可能性は十分あります」(大窪弁護士)遅延を生じさせる原因を作れば損害賠償請求される可能性はあるようです。遅延の原因を作らぬよう、マナーを守って利用したいものです。 *記事監修弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*柳生 鉄心斎 / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月15日公務員が国民・住民に対して損害を与えたとき、その公務員は原則として責任を負いません。なぜなら、国家賠償法という法律によって、国や公共団体が責任を負うことになっている(国家賠償法1条1項)からです。ですが例外もあり、公務員個人がわざと又は甚だしい不注意(法的に「重過失」といいます)であった場合は、国又は公共団体は公務員個人に対して国民・住民に支払った分のお金の支払いを求める(法的に「求償」といいます)ことができます(国家賠償法1条2項)。しかし、従来裁判所は、重過失による求償権をあまり認めてきませんでした。「重過失」を安易に認定すると公務員の活動を必要以上に委縮させてしまうのがその理由でした。ところが、平成28年12月に、地方公共団体の公務員に「重過失」を認め、公務員個人に対する求償権を認める裁判所の判断が立て続けに出されました。そこで、今回は、これらの裁判所の判断を紹介します。*画像はイメージです:.東京都国立市が元市長に対して求償請求をした事例(最高裁平成28年12月13日)建築基準法に違反しない建築物の建築・販売をしようとした不動産デベロッパーに対し景観利益を重視する国立市の当時の市長が行った妨害行為が、裁判所によって国家賠償法1条1項の「違法」であると判断されたため、国立市は平成20年に不動産デベロッパーに対して約3,120万円の賠償金を支払っていました。この損害賠償金相当額等の支払を国立市の元市長に対して請求する住民訴訟が提起され、国立市が元市長に対して求償請求したのがこの事例です。元市長の妨害行為というのは、次のようなものでした。 (1)マンションの建築計画が、不動産業界の噂程度のもので、土地周辺住民や一般市民には知られていなかった段階で、市長として知り得た建築計画という内部情報を住民に提供してマンション建設に反対する住民運動を企図したこと(2)将来給水拒否等の不利益を受ける可能性があることを示唆して不動産デベロッパーの顧客に影響を与えたこと (1)は、内部情報の提供行為について、この行為の違法性の認識について元市長は当然に認識していたはずであり、元市長に違法性の認識がなかったとしても、この行為が市長の職務を逸脱したもので、手段として社会に認められることがない違法な行為であることは容易に認識できた、という理由で重過失を認定しています。また(2)は、給水拒否の示唆については、上下水道を供給しないなどの対応が不動産デベロッパーの顧客に対して不安を与えることは容易に認識でき、これによって不動産デベロッパーにも損害を与えることも容易に認識できたはずであること、また正当な理由なく上下水道の供給をしないことが違法であることは明らかであるから、そのような不安を与える行為の違法性について容易に認識できた、という理由で重過失を認定しています。 2.大分県が元顧問に対し求償権を行使することを認めた事例(大分地裁平成28年12月22日)剣道部の練習中に重度の熱中症で倒れ死亡した生徒の親は、国家賠償法に基づく損害賠償請求で大分県に勝訴していました。しかし、元顧問に対する請求が認められなかったために、住民監査請求を経て住民訴訟を提起し、大分県に対し元顧問に対する求償権行使を求めていた事例です。下記の2つの理由から重過失と認定されています。(1)事故当時、亡くなった生徒は竹刀を落としたのに、気づかず竹刀を構えるしぐさを取った。熱射病による異常行動と容易に認識できたのに、元顧問は何ら合理的な理由もなく演技をしていると決めつけ、練習を継続させ、適切な措置を取らなかった(2)元顧問は、元生徒を前蹴りし、倒れた生徒にまたがって10回ほど頬を平手打ちをする、という状態を悪化させるような不適切な行為にまで及んだ。注意義務違反の程度は重大であり、その注意を甚だしく欠いた 地方公共団体が公務員個人に対して求償できることを認めた裁判所の判断は少ないですが、近時の裁判所は、認める傾向にあるといえましょう。今後は公務員個人としての責任ある行動がより一層求められるでしょう。 *著書:弁護士 鈴木謙太郎(1972年の設立以来40年以上の歴史がある、虎ノ門法律経済事務所の池袋支店で支店長を務める。注力分野は遺産相続、不動産取引、交通事故、債権回収、労働問題、債務整理、刑事事件、離婚等。「皆様の人生の一大事を共に解決するパートナーとして、真摯に業務に取り組んでまいります。」) 【画像】イメージです*bee / PIXTA(ピクスタ)
2017年01月25日評論家の池田信夫氏がインターネット上で発信した表現に対し、弁護士の伊藤和子氏が名誉毀損等を理由とする損害賠償を求めた裁判につき、平成28年11月24日、東京地方裁判所で判決が言い渡されました。裁判を担当した手嶋あさみ裁判長は、伊藤弁護士に対する名誉毀損等が成立することを認めて、約57万円を支払うよう池田氏に命じました。*画像はイメージです:■「スラップ訴訟」とは何か?池田氏は、伊藤氏が提起したこの裁判に関し、自身のブログ記事「伊藤和子のスラップ訴訟について」で、「このように他人を脅迫して言論を封殺するための訴訟をスラップ訴訟(Strategic Lawsuit Against Public Participation)と呼ぶ。こういう訴訟を許すと、ネット上の言論に対する萎縮効果が大きい。まして「人権派」を自称する弁護士がこのような人権侵害を行なうことは弁護士の職業倫理に反するので、彼女が訴訟を撤回しなければ、弁護士懲戒請求も検討する。」などと批判していました。「スラップ訴訟」とは、ウィキペディアでは「大企業や政府などの優越者が、公の場での発言や政府・自治体などの対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟である。」と説明されているように、本来、「大企業等の経済的・社会的に個人を圧倒する力を持つ存在」が、「個人」に対しておこなうものを指します。伊藤氏が池田氏に対して提起したような、「個人」が「個人」に対しておこなう訴訟は、(訴えを提起した個人が高い社会的地位にあるといった例外を除けば)スラップ訴訟にはあたらないと考えるべきでしょう。訴えられた方が、(本来はそうでないのに)「スラップ訴訟だ」という言葉で非難することは、「正当な被害の救済」を妨げるという(負の)効果を生じさせるものだと思います。なお、伊藤弁護士は、池田氏が「スラップ訴訟だ」と非難したことに対して、自身のブログ記事「【ご報告池田信夫氏を名誉棄損で提訴しました】」で、「この訴訟はスラップ訴訟に該当しないことは明らかです。不当な名誉棄損を受けた個人が裁判手続きを通してこれを是正することは、個人の基本的人権であり、憲法でも“裁判を受ける権利”として保障されています。訴訟による法的解決自体を糾弾する姿勢にははなはだ疑問です。」と述べています。私も同感です。 ■名誉毀損が成立するために必要な要素とは?ところで、池田氏は「スラップ訴訟だ」などと伊藤氏を非難しながら、裁判においては、自分が投稿した記事が「真実であること」について、何ら主張立証をしなかったそうです。名誉毀損とは、不特定多数に向けて、人の社会的評価を低下させるに足る事実を摘示(または、意見ないし論評を表明)することです。しかしながら、摘示された事柄(意見ないし論評の表明の場合は、前提とされた事柄)が、(1)公共の利害に関わる事実であること(2)専ら公益を図る目的であったこと(3)真実であること(または真実であると信じたことに相当の理由があること)という要件を満たす(と表現者が主張立証した)場合には、違法性が阻却され、名誉毀損は成立しません。これは、一定の要件を満たす場合には、名誉毀損にあたる表現であっても法的な責任を負わないとすることで、「表現の自由」の保障と、表現によって人格権(名誉権)を侵害された者の救済とのバランスを図ったもの、と理解されています。しかるに、名誉毀損にあたる表現について池田氏が「真実であること」を主張も立証もしなかったということであれば、違法性が阻却されることはなく、名誉毀損が成立するということになりますね。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【参考】池田信夫氏ブログ:伊藤和子のスラップ訴訟についてWikipedia:スラップについての記述伊藤弁護士ブログ:【ご報告池田信夫氏を名誉棄損で提訴しました】【画像】*Andrey_Popov / Shutterstock
2016年12月06日プリンスの遺産管理団体がイベントプランナーから5万6,260ドル(約580万円)の損害賠償を求められている。今年4月にプリンスが死去したことにより、ミネソタ州ペイズリー・パークにあるプリンスの自宅で予定されていた2つのイベントが中止となっており、そのイベントを企画したリッキー・バロン氏が自腹を切るはめになったと主張しているという。ピープル誌が入手したミネソタ州の裁判所に提出された書類によれば、バロン氏はペイズリー・パークの代理として行った仕事と遺産管理団体が中止したイベントによって得るはずだった利益5万6,260ドルを求めているという。イベントの1つは、難病と闘っている子どもたちの夢を叶える活動を行うメイク・ア・ウィッシュ、もう1つは、文化多元主義の劇団ミクスド・ブラッド・シアターとの企画だったといわれている。今回のバロン氏が訴える前には、ミクスド・ブラッド・シアターでアーティスティック・ディレクターを務めるジャック・ルーラーが、40周年ガラが中止されたことを受け、34万8,358ドル(約3,600万円)をプリンスの遺産管理団体に求めていると伝えられていた。そんな中、先日にはプリンスの自宅ツアーが来月6日から始まると明らかになったばかりだ。そのツアーでは、プリンスが数々のヒット曲を生み出したレコーディングスタジオを含む建物の主要な箇所を回り、プリンスが手にしたアワード、コンサートの衣装、レアな音源や映像に加えプリンスが手にした楽器も数点も目にすることができるという。(C)BANG Media International
2016年09月18日小さな子どものいたずらは、かわいらしく微笑ましいですよね。同時に、自分の小さかった頃もちょっとしたいたずらをしては両親に怒られたことを思い出します。たいていの場合は怒られて済むのですが、だからといって何をしても法律上大丈夫、というわけではありません。今回は、子どものいたずらに関する損害賠償の責任について、法律ではどうなっているのかお話しいたします。■子どもが“やらかした”行動についての責任は?未成年者は、未熟な存在であることを理由に、法的には成人と異なる扱いがされています。具体的には、13歳未満であれば刑事責任(犯罪の責任)を負わないとされていますし、民事上は、「自己の行動の責任を理解する能力(責任能力)がない」として、およそ12歳くらいの年齢に満たない子どもは賠償責任を負わないとされています。その場合、親が「監督義務者」として原則として責任を負います。仮に、子ども本人に責任能力があり、法的には責任を負うとしても、通常はその子どもには資力がなく、親の「監督責任」を理由に賠償請求されるのが通常です。親が「監督責任を尽くした」と証明できれば責任を免れますが、通常は自分の子どもである以上、そのような証明は難しいといえるでしょう。■壁や、建物に落書きをしてしまったら?あまりにもひどい落書きで、修復がおよそ不可能というレベルに至れば、建造物損壊罪・器物損壊罪が成立します。壁のように建物の一部と評価される場合は「建造物」、取り外しができるようなドアや窓などであれば「器物」と一応分けることができます。チョークや鉛筆など、簡単に消えるものであれば「損壊罪」とはいえない可能性が高いですが、スプレーやペンキで書く、石で削る、となると容易には消せないので、「損壊罪」に該当する可能性が出てきます。落書きの内容によっては他の犯罪成立の可能性もあります。「バカ・あほ」といった記載なら侮辱罪、「~~は浮気をしている」といった記載なら名誉棄損罪、「殺してやる、死ね」といった記載なら脅迫罪と言った犯罪が成立する可能性があるでしょう。いずれにせよ、これらは不法行為(民法709条)に該当し、民事上の賠償責任(修復費や慰謝料等)を負うことになります。 ■お隣の家の車に、傷をつけてしまった!わざと傷をつけたのであれば、器物破損罪となりますし、「いたずらしよう」と敷地内に入り込んだのであれば住居侵入罪の可能性も出てきます。わざとの場合はもちろん、ボールをぶつけたなどうっかりミスによって傷をつけてしまった場合でも、民事上の賠償責任が少なくとも「監督者である親」には生じることとなります。具体的には、「修理費用」または「その車の時価相当額」のいずれか低い額の方を賠償せねばなりません。■お友達のおうちのペットに怪我をさせてしまったら?わざと怪我をさせた、虐待したとなれば、器物損壊罪や動物愛護法違反となります。法律では、ペットはモノ扱いになるので、「モノが壊された場合の賠償」という考え方が一般的です。なので、民事上は、たとえ命を奪ったケースであっても、「ペットの時価がいくらか」により賠償額が決定されるのが原則です。ただ、最近では、「家族のように大事にしているペットが大ケガをさせられた」ケースでは、治療費や慰謝料なども認めるようになってきているので、治療費や慰謝料を支払う責任を負う可能性も十分あります。子どもは思いもよらぬ行動をとり、トラブルに発展しがちですね。民事上の賠償責任にとどまらず、犯罪となる場合もあり、いずれにせよ親は子どもの行動につき責任逃れは基本的にできません。普段からお子さんの行動には十分注意をはらっていただくことが大事です。 監修協力:弁護士法人アディーレ法律事務所 (東京弁護士会所属)
2016年08月06日