ママ友から相談された、抑揚のない話し方自閉スペクトラム症と知的障害がある息子を育てていると、同じように自閉スペクトラム症がある子どもを育てている親御さんたちから相談されることがあります。昔からの友人に、自閉スペクトラム症の診断を受けている女の子がいます。3歳当時、言葉はたくさん出ていましたが、独り言の一方通行の言葉ばかりでした。友人は「抑揚のない感情を感じられない一本調子の話し方は、どうすればなおるもの?」と聞いてきました。私は医師でも専門家でもないのでためらいましたが、21年間自閉スペクトラム症のある息子を育ててきた経験から次のように答えました。「コミュニケーションをとりたい、人と関わりたいと思うようにならない限り、抑揚をつけて話すようにはならないと思う。人は『相手にこうしてほしい』という働きかけをしたいという動機があって言葉が出たり、声を大きくしたり、強弱や抑揚をつけたりするものだと思うんだ。だから、独り言の状態にいる限り、抑揚をつける必要もないから一本調子のまんまなんじゃないかな」親の価値観は子どもとは違うかもしれないから私の答えを受けて、友人はこう言いました。「じゃあ、友達をたくさん作って遊ばせたらいいんだ。友達と遊ぶと楽しいから、話し方も変わるかもしれないよね」私は「それは親の価値観であって、子どもが楽しいと感じて、しゃべり方まで変わるかどうかは分からないよ。友達と遊ぶことがストレスになり、1人で遊んでいるのが楽しいことなのであれば、それを潰さないほうがいいんじゃないかな。まだ3歳なんだからこれから経験を重ねていくうちに、自然と育ってくるからそのとき抑揚がでてくるかもしれないし…。」また、加えて次のように話をしました。「その時の言葉がたとえ『触っちゃダメ!』とか『嫌!』といった、拒否する言葉であっても、自分の気持ちをしっかり伝えている言葉であるなら、立派なコミュニケーション。それでよしとすればいいんじゃないかなとも思う」と伝えました。友人とは信頼関係もあるので、ここまで言うことができました。息子の初めてのコミュニケーションUpload By 立石美津子息子は5歳になるころまで、言葉を話しませんでした。発語するようになっても、スーパーではリンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている品種を順に言うばかり。けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。21歳になった息子は、会話はできるようにはなりましたが、相手に共感を求めるこういった言葉は今も言うことはありません。そんな息子でしたが、初めての言葉らしい言葉は5歳のとき、デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、店員に向かって「まだ食べる!」と大きな声で叫んだのです。自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。オウム返しはコミュニケーションではない?息子が特別支援学校高等部のころ、自閉スペクトラム症があるクラスメートの親御さんとお子さんと一緒に動物園に行きました。するとそのお友達は、パンダの檻の前で「友達の眼鏡をとってはいけません」「友達の眼鏡をとってはいけません」「友達の眼鏡をとってはいけません」と、授業中に担任から注意された言葉をずっと唱え続けました。なぜずっと先生の言葉をオウム返ししているの?なぜ以前言われた言葉を、動物園という状況で言うの?なぜずっと繰り返し唱えるの?「これはコミュニケーションではない。聞いた言葉をただ繰り返しているだけ」と親御さんは悲しそうに言いました。確かにそうだったのかもしれませんが、もしかしたら、一緒に動物園に来たクラスメートと並んでパンダを見ながら先生に言われた場面を思い出し、「お母さん聞いて、先生が『友達の眼鏡をとってはいけません』と言っていたよ」と伝えたかったのかもしれません。息子やほかの自閉スペクトラム症のある子どもたちのことを知れば知るほど、「抑揚とか声の大きさまで含めた会話を要求したり、期待したりすることは難しいのかな…」「そもそもそうした話し方を期待すること自体、親のエゴなのかな」と思うのです。執筆/立石美津子(監修鈴木先生より)言葉を発せなくとも、お子さんが「あー」とか「いー」とか何か声を出したら、それに反応するように親御さんも「あー」とか「いー」と言うように心がけてみてくださいと、健診の時にお伝えしていました。難聴がなければ母音は認識しているからです。新生児期でも名前で呼んであげることが大切です。例えば、「なおちゃん」と呼ぶと最初の「な:NA」の母音である「A」の音に反応することが分かっています。自閉スペクトラム症のオウム返しは聞いたことを確認する行為とも言われています。「私はこう聞いたけどそれでいいですか」という確認を繰り返し行っているともとらえられます。食べたいときに「まだ食べる」と言えたことは、どこかでそういうシチュエーションがあって記憶されていたのかもしれませんね。いろいろな場所へ連れて行っていろいろな経験をさせることが重要なのです。
2022年12月01日『自閉症児のいる家族の、特別ではない日常のエッセイ』と題し、日常の出来事をInstagramに投稿している、beth(3beth_gm)さん。長男のハルくんは自閉症を抱えており、bethさんは外出中、周囲に迷惑をかけないかと不安にかられることが多いといいます。ハルくんが通学のために使うバス停でも、bethさんはハラハラする出来事がありました。週に3回ほど、バス停で会う女性とは会話をするような仲ではなく、ハルくんのルーティンが迷惑をかけているのではないかと、bethさんは心の中でその女性に謝罪していました。しばらく経った頃、ハルくんのルーティンが崩される出来事が起きます。ハルくんが女性に対してとった行動は…女性を凝視するハルくんを制止し、代わりに謝罪したbethさんですが、その場はなんとも気まずい雰囲気になってしまったといいます。すると次の日…。女性の行動に、bethさんが驚いた理由女性は、昨日の一件を受けてか、ハルくんが座る場所を空けておいてくれていたのでした。その気遣いに感謝の言葉を述べたbethさんは、女性の返答にさらに嬉しくなったといいます。ハルのルーティンを理解してもらえたこと、受け入れていただけたこと、とても嬉しかった出来事でした。自閉症であるハルくんが、周囲から特別な目で見られたり、誤解されたりすることもあるという、bethさん。しかし、この女性は、ハルくんを『自閉症児』としてではなく、『ハルくん』として見て、また、受け入れてくれたのでした。その女性の思いに「温かな気持ちになった」「素敵です」「読んでいて涙が」と、bethさんが投稿したエピソードは、多くの人を幸せな気持ちにさせています。また、ハルくんと一緒にいると、bethさんは、多くの人の縁に恵まれるのだそう。この出来事をきっかけに、他愛もない話をする仲になったという女性との出会いもまた、ハルくんがつないでくれた縁なのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年11月26日自閉症スペクトラムの娘、あきちゃんとの日常をマンガで紹介しているさやこさん。ある日、アイスを食べていたときのことです。コーンの部分がポロっと地面に落ちてしまいました。「あ」と思わず声をあげたあきちゃん。さやこさんは「しょうがないね」と声をかけました。するとあきちゃんは……!? 娘の反応にビックリ アイスのコーンの部分を落としてしまったあきちゃん。ギャン泣きを覚悟したさやこさんは、少しでも落ち着かせようと、「落ちたらしょうがないね」と声をかけました。 けれど、そのフォローは必要ありませんでした。 あきちゃんは自ら 「だけど、まあいいや」 そう言って、コーンのことは諦めたのです。 そして、「まあいいや」ができたことを褒められると、あきちゃんはきっぱりとなでなでを要求してきました。さやこさんは「しますします、いっぱいします」となでなでしたのでした。 ◇◇◇ アイスのさくさくのコーンは、あきちゃんの大好きな部分なのだそうです。失敗をあっさり受け入れたあきちゃん。ちゃっかりなでなでを要求するところが、またかわいいですね♡ さやこさんのマンガは、このほかにもブログやInstagramで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター さやこ娘と夫の3人暮らし。自閉症スペクトラムの娘との日常を中心にいろいろと過去の出来事などエッセイマンガを描いてます。
2022年11月20日自閉症スペクトラムの娘、あきちゃんとの日常をマンガで紹介しているさやこさん。ある日あきちゃんは間違って紙を破ってしまいました。目には涙があふれていて、感情を抑えられないように見えました。このまま大泣きになるかなと、思いきや……!?娘がとった行動は… あきちゃんは失敗や間違いを受け入れるのが苦手。この日、紙を破ってしまったことで目には涙があふれていました。「これは大泣きになるな、仕方ない……」と、さやこさんは待ち構えました。 ところがあきちゃんは、クッションに顔をうずめたのです。 そして、 「いま、ひとやすみなの。ひとやすみちゅう、なの」 と涙を必死でこらえ、体を震わせながら言いました。 あきちゃんは大泣きをしまいと、自分の気持ちをコントロールしようと頑張っていたのでした。 ◇◇◇ 失敗や間違いを受け入れるのが苦手なあきちゃんが、自分で自分に休憩中なのだと言い聞かせて、泣くのを耐えていたようです。感情のコントロールは大人でも難しいことがありますよね。あきちゃんの頑張り、見習いたいですね。 さやこさんのマンガは、このほかにもブログやInstagramで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター さやこ娘と夫の3人暮らし。自閉症スペクトラムの娘との日常を中心にいろいろと過去の出来事などエッセイマンガを描いてます。
2022年11月19日自閉症スペクトラムの娘、あきちゃんとの日常をマンガで紹介しているさやこさん。今回は娘の癇癪がひどくなって、さやこさんが疲れていたときのこと。さやこさんがある行動に出ると……!?母、思わず涙… 自我が出るとともに、娘の癇癪がひどくなって疲れていたさやこさん。今日は、癇癪を起こす娘の手がさやこさんの顔面を直撃しました。 するとさやこさんは、「いいですか。お母さんはもうあなたが落ち着くまで相手をしません」と言って、娘の見えないところに隠れました。 5分ほどすると、 「おっかあっさーんっ、おちっついったー」 と、娘の呼ぶ声が。その声から頑張って泣き止もうとしているのが伝わってきます。 さやこさんが急いで戻ると、甘えてくる娘。その様子を見て「苦しいのはこの子だ」と思い、さやこさんは目に涙をためながら、娘に離れたことを謝りました。 そして同時娘の成長を実感し、成長を見守ろう、もう少し頑張ろう、と思えたのでした。 ◇◇◇ いつもは1時間ぐらい泣き続ける娘さんが、このときは5分で泣き止んだので、頑張って泣き止もうとしていることがわかったのだそうです。そして娘さんが少しずつ成長していることを感じたのだとか。自分の行動を娘にしっかり「ごめんね」と言えるさやこさん、とても素敵ですね。 さやこさんのマンガは、このほかにもブログやInstagramで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター さやこ娘と夫の3人暮らし。自閉症スペクトラムの娘との日常を中心にいろいろと過去の出来事などエッセイマンガを描いてます。
2022年11月17日環境の変化が苦手な私が引越しすることにこの秋、私は引越しをしました。引越しすることが決まってから出発当日まで1ヶ月しかないというタイトスケジュールです。引越し作業本体というか、梱包自体は黙々と自分のペースでやれば済むことなので比較的気楽でしたが、大変だったのがあいさつ回りや転居に伴うもろもろの手続き。車を運転できる夫とスケジュールを合わせなければならなかったうえ、私は通っている病院がいくつもあったので、紹介状を書いてもらって受け取るだけでも予定がどんどん埋まっていきました。プレッシャーと慣れない社交タスクの連続で片頭痛が連続して出るようになり、予防薬を飲み続けてやっと動ける状態でした。完璧主義と認知のスローさが足かせに引越し前の梱包作業でも、引越し後の買い物でも改めて思ったことですが、私は時間に追われる中で素早く決断することが非常に苦手です。知能検査の結果をもとに心理士さんに指摘されたことがあるのは、ものごとの認知のしかたが詳細だが動作はスローなため、いわゆる熟考タイプで、急かされると非常にストレスを感じるし本領が発揮できないということでした。なにをどこに入れるか、どれを買うか… そういったことの完璧な答えを必死に探そうとしてしまって優柔不断になり、半ばパニックになって固まってしまいます。いっぽう夫は、素早く決断して短い時間で行動することになんのストレスも感じていないようでした。私からするとすごく雑な判断をしているようにも見えてヒヤヒヤするのですが、彼は自分が想定外のできごとに対応できる自信があるのもあって、失敗が怖くないのだと思います。私は自分が想定外のできごとに非常に弱いし、失敗して叱責されたトラウマがたくさんあるので、失敗が怖くてつい完璧主義になってしまうのです。タイトなスケジュールでの引越し準備でどちらも疲れていたため、2人の間で雰囲気が険悪になりかけたこともありましたが、夫と自分の特性を対比して見ることができたのはよい経験になりました。新居で夫に驚かれた食器等の的確な配置、ストレス緩和対応策新居に着くと私は怒涛の荷解きを開始しました。ASDの几帳面さをいかんなく発揮し、食器棚の中の食器や食材の位置など、元あったそっくりそのままに収納。あるいは新しい環境でも一定の法則に基づいて非常に使いやすく配置しました。そういった作業を黙々と一日中続ける様子に、夫は「うーんさすがだ、こまねずみのようだ、こういうことはやっぱりお前が向いてるんだな」と感嘆します。夫「コーヒーはどこ?」私「食器棚のここだよ、元あったところだよ、適当なとこに気分でしまったりしないよ笑」夫「なるほど笑」というやりとりもありました。私は、自分が変化に弱いことをよく知っていたので意識してこのようにしたのですが、これは非常によい策だったようです。自分の本棚も梱包する前にどこに何が入っているのか写真に撮っておいて、そのとおりに詰め直したので楽だったし、前のとおりに本の並んだ本棚を見ていたらスッと気持ちが落ち着きました。また、3日目ぐらいからは、ふだん習慣にしていたヨガの決まったルーティーンを再開しました。ふだんどおりのヨガを違った環境・状態でやると、どこがどれだけ疲れているのかの違いがよく分かります。特に凝っていると思ったところを念入りにほぐすと、しばらくぶりによく眠れました。夫はそれを見ていて、「お前のそういう心がけは本当に立派だよな」とこぼします。夫はふだん私より何倍も忙しいのもあるのですが、セルフケアの苦手な人で、私の心がけには一目置いているようです。引越しを機に俯瞰することができた自分の特性私は変化が苦手だし嫌いでもありますが、引越しのような、人生の中でときどき起きる大きな変化はいろいろと気づきを与えてくれるので、疲れるばかりではなく収穫もあるなと思いました。私自身はいつも変わらないし、周囲の環境も変えまいとしますが、今回のように強制的に環境が変わることがあると、自分の特性がよく見えるよい機会となります。ふだんから見つめていた自分の特性――変化が苦手であること、セルフケアなしに元気を保てないこと―― への意識が引越しの乗り切りを楽なものにしました。また、完璧主義や動作のスローさのように、あまり意識しておらず、引越しの途中でうっかり足元をすくわれた特性もありました。発達障害の特性の中には、状況に対して有利に働くものも不利に働くものもありますが、いずれも過不足なく事実として認識し、的確に対応することが肝心だと思います。私は今回、悩みながらもきちんと自分の特性への対応ができているなと誇らしくなりました。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)環境の変化を「収穫」ととらえたことは素晴らしいことと思います。引越しをしてもできるだけ以前と同じような配置を工夫することで環境の変化を最小限に抑えることができます。また、ADHDの並存で片付けや整理が苦手な人でもこういう機会に断捨離ができます。そういう意味で引越しもいいものだと思えればいいのではないでしょうか。夫がASDを理解して、その特性について「立派だよ」と褒めてくれていることは大変重要で意義深いことです。夫婦お互いのできないところを責めるのではなく、できる特性を褒めてくれるやり方が夫婦円満の秘訣かもしれません。想定外の出来事に対応できる夫と苦手な筆者とで調和がとれているのだと思います。「動作がスロー」なのはRussell A.Barkley先生らのいうADHDの併存症状Sluggish Cognitive Tempo(行動がもたもたする)タイプにあたるのではないかと考えられます。完璧主義であるASDの裏に隠れたADHDも存在することがあります。そのために叱責され、自尊心が下がっているケースも多いのです。ADHDがあれば早めに介入して治療することで自尊心を上げることは可能です。
2022年11月05日カサンドラ症候群になりやすい人は?治療や対処法などあるの?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンカサンドラ症候群になりやすい人は?カサンドラ症候群とは、家族や身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)があることでコミュニケーションを築くことが難しく、対人関係の問題や心身の不調が生じている状態のことです。※カサンドラ症候群は世界的に広く用いられている精神疾患の診断基準『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)には記載がなく、医学的な疾患名ではありません。カサンドラ症候群になりやすい人は、性格的に、真面目、几帳面、完璧主義、忍耐強い、面倒見が良いなどの事例が多いようです。自閉スペクトラム症(ASD)の発現は男性に多いため、パートナーとなる女性側にカサンドラ症候群の発生割合が高いといわれていますが、必ずしも女性だけがカサンドラ症候群になるとは限りません。自閉スペクトラム症(ASD)のある家族が、社会性に欠けた言動をしたとしても、怒ったり放り出したりせず我慢し受け入れようとする忍耐強さがうまく機能せず、偏った関係性が固定化して、カサンドラ症候群へと進行してしまうことがあります。カサンドラ症候群の治療や対処法はあるの?カサンドラ症候群の治療法として、まずは症状として現れている抑うつ症状や不安障害について、薬物療法や認知行動療法などによるアプローチをすることが可能です。ただ、あくまで対症療法です。自閉スペクトラム症(ASD)のある家族や友人との関係性の改善や変化を目指さなければ、根本的な解決にはつながりません。まずは、パートナー同士や家族で孤立しないこと、カサンドラ症候群のある人は相談先を持つことが肝心です。・家族や友人に自閉スペクトラム症(ASD)の診断を強要しない自閉スペクトラム症(ASD)のある人は社会的に適応していることも多く、自身の特性に気づいていない場合もあります。そういった際に、無理に医療機関での受診をすすめると、本人の気持ちを傷つけてしまい、関係がこじれることもあるかもしれません。診断を検討する場合は、特性や症状について話し合ったり、理解している段階を経た上で医療機関に行くようにしましょう。・自閉スペクトラム症(ASD)の特性や対応方法について知る自閉スペクトラム症(ASD)の特性について書籍や情報サイトなどで調べてみましょう。自閉スペクトラム症(ASD)のある人が苦手だったりつらくなったりするきっかけやこだわりへの理解を深めることで、環境調整や自閉スペクトラム症(ASD)のある人が理解しやすいコミュニケーションを行う際に役立ちます。ただ、特性について学んだ知識を自閉スペクトラム症(ASD)のある人に押し付けると、反発を招くことがあります。特性はその人それぞれなので、その人に合った対応方法を取るようにしましょう。・行動の理由を相互理解し、生活上のルールを決めるお互いに話し合いながら行動の理由を教え合い、相手の行動に関する理解を深めます。また、生活の上での決め事、ルールをつくることで相手の意見を尊重することにつながります。・距離を置くことや関係性を変える、相談できる第三者とのつながりをつくる家の中にお互いの個別スペースを持つなど、住環境の変更など物理的な接触回数を減らしてみることも、関係性を変えるきっかけをつくる一つの方法です。また、親子の場合も含めて、発達障害の相談機関のカウンセラーや、主治医など相談にのってもらえる第三者を入れての話し合いをすることなども有効かもしれません。お互いに理解していくための一歩をカサンドラ症候群には医学的な疾患名でないこともあり、自分と自閉スペクトラム症(ASD)がある人との間の個人的な問題であると捉えられて理解が得られず、一人で悩みやつらさを抱え込む方も多いようです。もし、抱えている悩みやつらさがあったら、自閉スペクトラム症(ASD)への理解や知見のある発達障害者支援センターや、発達障害専門外来を持つ精神科などの専門機関に相談してみるとよいでしょう。また、全国にはカサンドラ症候群当事者による自助グループもあり、相談や共感を得ることで、治療につながる例もあるため自分に合う場を探してみるのもよいかもしれません。カサンドラ症候群は、どちらか一方が悪い、どちらか一方が正しいというものではないため、自分や相手を責めたり背負いすぎず、お互いに理解しあうための一歩を踏み出してみましょう。イラスト/taeko
2022年10月11日カサンドラ症候群とは?どんな症状なの?原因は?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンカサンドラ症候群とは?カサンドラ症候群とは、家族や友人などの身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)があることでコミュニケーションが難しく、対立や人間関係での満足感の低下、心的ストレスから不安障害や抑うつ状態に陥っている、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心身症状が起きている状態を指す言葉です。特に妻や夫といったパートナーに起こる場合が多いといわれていますが、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる親がカサンドラ症候群になる場合もあります。なお、世界的に広く用いられている精神疾患の診断基準『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)には記載がなく、医学的な疾患名ではありません。カサンドラ症候群以外にも、「カサンドラ情動剥奪障害」「カサンドラ状態」などと表現されることもあります。カサンドラ症候群の症状自閉スペクトラム症(ASD)やカサンドラ症候群に関する研究が多くある英国の心理療法家マクシーン・アストンによると、カサンドラ症候群には以下の要素があるとされています。・少なくともいずれかの家族に、自閉スペクトラム症(ASD)特性などによる、共感性や情緒的表現の障害がある・ 家族との関係において情緒的交流の乏しさを起因とした激しい対立関係、精神または身体の虐待、人間関係の満足感の低下がある・精神的もしくは身体的な不調、症状(自己評価の低下、抑うつ状態、罪悪感、不安障害、不眠症、PTSD、体重の増減など)がある参考書籍:アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ:親密な関係を保ちながら生きていくためのガイドブックさらに、カサンドラ症候群の命名者シャピラの定義では、ここに「その事実を他の人に伝えても理解をしてもらえない、信じてもらえないこと」が加わります。カサンドラ症候群の原因カサンドラ症候群を引き起こす発端には、身近な人の自閉スペクトラム症(ASD)の特性によるトラブルがあるといえます。では一体、カサンドラ症候群の発端となる自閉スペクトラム症(ASD)の特性とはどのようなものなのでしょうか。自閉スペクトラム症(ASD)には「社会性と対人関係・コミュニケーションの困難」「行動や興味の偏り」といった特徴があるといわれています。表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。明確な言葉がないと理解がむずかしく、比喩表現などをそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。具体的な例としては、曖昧な表現が苦手だったり、不適切な表現を使ってしまうことなどがあります。また、場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちを理解したり、それに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を無視をしたような言動になりがちで、対人関係を上手に築くのが難しい場合がみられます。具体的な例としては、気持ちの理解が苦手なことで相手を傷つけたり、自己中心的と思われる言動や行動をしてしまうことなどがあります。いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中する傾向があります。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることもあり、その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともできます。具体的な例としては、自分のルールがあったり、興味のあることに対して話し続けてしまうことなどがあります。周囲の人たちは、自閉スペクトラム症(ASD)の特性だと分かっていても、自閉スペクトラム症(ASD)のある人と接していくうちに、うまくコミュニケーションがとれないことに自信をなくしてしまったり、周囲に相談しても理解をしてもらえず、孤独を感じてしまう場合があります。特に、家族は毎日の生活の中で接する機会が多く、家族であればなおさら、心を通わせたいと思う気持ちは強いでしょう。それが難しいときストレスを感じるのは、ある意味当然のことかもしれません。その結果、体調不良や抑うつ状態に陥ってしまうことがあるのです。イラスト/taeko
2022年10月10日睡眠時間がどうしても一定しないわが家の凸凹兄妹の妹、いっちゃんは小さいころから眠るのが苦手で、眠ってもしばしば些細な物音などで目を覚まします。小学生になると、入眠に苦労するのは変わらずですが、一度眠ると深く眠り込むようになりました。一旦眠り込むと起こしても起きないのです。当然、学校は遅刻してばかりです。Upload By 寺島ヒロ睡眠の記録を取ってみると…実は母親である私自身、睡眠障害があり毎日覚醒する時間が遅れていく睡眠サイクルがあります。それで「もしや」と思い、いっちゃんの睡眠記録をつけ始めました。実際に眠った時間だけではなく、眠いと言い出した時間、眠ったがちょっとだけ起きた時間、起床した時間を詳細に記録していくと、「1〜2時間ずつ睡眠時間が後ろにずれていく」ことが分かりました。Upload By 寺島ヒロ小学校5年生から不登校に小学校低学年のうちは、起きると学校に行っていたのですが、4年生ぐらいになると、「11時を過ぎるとお昼ごはん食べに来たの?と、からかわれるから行かない!」と言って昼からは行こうとしなくなりました。いっちゃんの睡眠時間は9時間。朝から活動しているのは月の半分ほどです。5年生から次第に行かない日が増え、6年生のときにはついに1/3ほどの出席率となり「不登校」となりました。また中学校も、コロナで休校が続いたこともあり、ほとんど行くことができませんでした。「勉強は好き」進学先を探すけど…高校へは進学したいと希望していたいっちゃん。睡眠時間を固定しようと試みましたがうまくいかず、結局、通信制の高校に通うことにしました。志望校はいっちゃん自身がネットで検索していくつかの学校と比較検討して決めました。通信制の高校、実際に通ってみるとUpload By 寺島ヒロ部活動も部活ごとにslackがあって、娘は美術部に入っています。slackではお題を出し合ったり、作品をアップしたり、絵を描くときのツールの使い方など交流も盛んで「Twitterとかより突っ込んだ感想をもらえる!」と、喜んでいました。通信制の学校というと、家で1人でテキストを開いて…というイメージだったけど時代は変わったな…と思います。睡眠サイクルは固定できないまま「通信の学校いいなー」「大学もこうだったらいいのにー」という娘。高校生活を心から楽しんでいるようです。睡眠の問題が解決したわけではないので、これから進学や就職をどうするかなど、悩みは尽きませんが…今あっての未来。心配し過ぎることなく、今を大切に過ごしたいと思います。執筆/寺島ヒロ(監修:井上先生より)学校の始業時間は決まっているので、睡眠に問題のある子どもさんの場合、それに合わせようとすると、本人だけでなく親御さんもとても苦しくなってしまうと思います。高校では、始まりの遅い昼夜間の高校や通信制などが選択肢になってくると思いますが、いっちゃんには通信制がすごく合っていたようですね。通信制も学校によってはさまざまな活動をオンラインで提供しているところもあります。また対面出席を重視しているところもあります。子どもさんに合った学校を選択するため、オープンスクールや説明会に子どもさんと一緒に参加してみるのもよいかもしれません。
2022年09月27日くるくる回る自閉スペクトラム症のある太郎。回るときはほぼ無言。ときにはスローモーションで回ったりもする。寝る前にはくるくる回り、その後はコミック本をひらいて数分で眠りにつく。それが太郎のここ数年のルーティンだ。くるくると回ってるときの太郎はだいたい穏やかな顔をしている。ときには汗も出るほど回っている。Upload By まゆんあまりにも穏やかな表情で回るものだし、それがもう私たち家族の中では当たり前となっている。発達検査を受けた際、心理師さんやほかの専門家の方から「常同行動を止めたりすることはありますか?」と聞かれたことがある。この質問があるということは、止めてはいけないってことだなと先を読めた。それは私も分かっていたし、ほぼ止めることは今までもしなかった。過去に一度、激しく高速で回ってたときは流石に落ち着くように声がけはした。表情も強ばってたし、心の整理がついてないのが丸見えだったからだ。太郎は大人なしで友達と外で遊ぶことをしなかった。理由は私にもハッキリとは分からないが、外への不安があるのか、家が好きなのか、太郎にしか分からない理由がたくさんあるのだろうと思った。Upload By まゆんくるくるを解釈するある日の休日、家のインターホンがなった。ピンポーン。モニターに写ってたのは太郎の友達だった。私は太郎に声をかけた。「太郎、○○君だよ、対応してー」太郎の顔がこわばった。そして高速でクルクルと回り出した。「太郎とりあえず、ほら、インターホンに答えよう」太郎はカチンコチンにかたまりながらインターホン越しに友達の対応をした。「は、、は、、はいーー!」「太郎ちゃん、遊ぼーー公園行こーー」太郎はしばらくかたまった…。「む……無理!!!」Upload By まゆん友達は少し残念そうな顔をしたが「OK!分かった」Upload By まゆんそう言ってインターホン越しの会話は終わった。くるくるくるくる。くるくるくるくる。どんどんどんどん加速する。太郎はリビングをくるくる高速で回った。いろいろな感情が私には見えた。友達と遊びたい、外へ出るのが不安、遊び方が分からない、突然の誘いで驚いた、友達の誘いを断ってしまった。太郎は口にはしないが私にはそんな風にそのくるくるから勝手に解釈した。あまりにも表情が強ばってるし、高速くるくるだったものだし、見るに見兼ねて太郎に声をかけた。「太郎、急な誘いはびっくりしちゃうから、学校で友達と約束してみたら?準備とかしたら大丈夫かもだよ?」この声掛けに太郎のくるくるがピタッと止まった。「約束!!!してみる!!」名案だ!!的な表情を太郎はした。それからくるくるはゆったりとなり表情も穏やかになった。そして数時間後に太郎はこう言った。「お母さん、チャレンジのチャンスはまだあるよね」なんだか心が癒された。あとがき太郎のくるくるは、寝る前や手持ち無沙汰なときに見かけます。何かに集中してるときは静止してますが、なにをしていいか分からないときや空いた時間にはくるくるくるくると回ってます。本人は「落ち着くのと、回りたいから回る」と言ってました。もう一つのパターンが、イレギュラーな何かが起きたときもくるくると回ります。心の整理をするためなのか気持ちが行動にあらわれてるのか、突然の出来事をその場で言葉にすることが苦手なため、くるくると回るのかなぁと母の私は思いました。常同行動にはさまざまな説がありますが、ホントのところは本人にしか分からないわけで…私にも本当のところは分かっていませんが、私から見た太郎のくるくるはこんなところです。何度か一緒にくるくる回ってみましたが、目が回って気持ち悪くなりました(笑)ある意味すごいと感心しました。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症のあるお子さんは自己刺激としてくるくる回ったり、ジャンプしたりすることがよくあります。手をひらひらさせる常同運動のあった成人の自閉スペクトラム症のある方は何かを話すタイミングでやっているので止めないでほしいと以前話されていました。よほど他人に迷惑をかけていない限り止める必要はないようです。自閉スペクトラム症・発達性協調運動症の診断の一つとして、OT(作業療法士)が、お子さんを回転盤に乗せて左右に回すことがありますが、自閉スペクトラム症のあるお子さんは回転後に眼振が見られず目が回らないことが多いようです。
2022年09月20日長女ゆいの進学先、どうする?以前から中学校は地元の公立中学に行こうかなと考えていました。理由はまず近いこと、次に小学校のメンバーの多くが進学するため環境の変化で受けるつらさが少しは軽減されること、そして支援が手厚いということを小学校の先生に聞いていたからです。そして小学6年生の1学期、小学校の特別支援学級に在籍している児童に対して、個別で中学校の特別支援学級の説明会が開催されました。夫にも娘の通う学校のことや特別支援学級のことを見てほしかったので夫婦で参加しました。Upload By 吉田いらこ夫婦で中学の特別支援学学級の説明会へ参加してゆいの通う予定の中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級は、小学校のときと同じで、基本は通常クラスにいて、授業を受け、苦手な科目のみ特別支援学級で指導を受けるという体制でした。中学選びで私が一つ不安に思っていたことが、特別支援学級に在籍すると内申点がつかないのではないかということでした。もしそうなると、就学先の選択肢が狭まるのではないかと不安だったのです。しかし、この中学校では自閉症・情緒障害特別支援学級在籍の子どもにも内申点がつくという説明を聞いて安心しました。夫もふんふんと説明を聞き納得しているように感じました。※地域や学校によって特別支援学級の体制や内申点の詳細は違います。Upload By 吉田いらこ説明会の最後に、中学校の特別支援学級に入るにあたって入級申請書というものにサインをすることになりました。担当の先生は「まあ形だけみたいなものですけどね。ご希望であればいつでも退級、再入級ができますよ」と笑顔で書類を私たちの前に差し出されました。夫も「分かりました」とその場では何も問題なくサインをしましたが…。Upload By 吉田いらこ不満そうな夫の言った言葉とは説明会の帰り、夫はずっと不満げでした。「説明を一通り聞いたけどさあ、うちの子に特別支援学級なんて必要なくない?あの子は普通だよ。別に特別な支援なんて必要ないんじゃないかな?」と言っていました。この夫の一言で、私は「分かってないな…」と思ってしまいました。ゆいが小学校中学年あたりから勉強についていくのが難しくなって悩んでいた時期、ちょうど夫は3年間の単身赴任中だったのです。Upload By 吉田いらこ発達検査を受けたときも、学校での毎日がしんどくなって児童精神科に通院したときも、小学校の先生と支援について何度も打ち合わせをしたときも、私一人だったなとぼんやり感じました。夫に連絡はしていたけど、仕事が忙しい上に一緒に暮らしていないので当事者意識は低かったのかもしれません。たまに単身赴任先から帰ってきたときも、自宅で過ごしたり一緒に遊んだりする分には、場面緘黙や障害の特性など実感することはなかったと思います。ゆいの生きづらさは外の社会の中で他人と接するからこそ生まれるものなのです。Upload By 吉田いらここれから夫婦で考えていきたいこと単身赴任が終わった夫には、仕事が大変なのも十分承知していますが、これからしっかり子どものことにも関わってもらおうと思いました。正直なことを言うと、私一人で全てやるのは精神的にもういっぱいなのです。中学校の特別支援学級の説明会も私一人で行っても良かったのですが、夫に仕事を休んでもらって一緒に行ったのはこのためです。説明を聞き、書類に夫自身がサインをしたことで少しは意識を向けてくれたかもしれません。私はゆいのことに関しては不安ばかりなのですが、夫はおおらかなところがあるので今後夫婦でお互いに補い合って子どものことを考えていけたらうれしいなと期待しています。執筆/吉田いらこ(監修:井上先生より)就学先の決定に際して、学校見学や説明会にご夫婦で出かけられたのはとても良かったと思います。実際の授業を見たり、担任の先生に質問をしたり何よりも生の学校の様子に触れられることで就学のイメージが得られやすくなると思います。地域によっては実際に子どもさんに体験してもらう機会を作っているところもありますが、お子さんの意見なども参考になると思います。お父さんの理解がお母さんとずれることはあるかもしれませんが、実際に見学に行ったり先生たちと話をして頂くことで少しずつ変わっていけばよいかと思います。中学の特別支援学級では、通常学級で受ける授業の割合や内申点に関しては地域や学校ごとに事情が異なる場合がありますので、おのおのの就学先の学校で詳しく聞いてみられると良いと思います。
2022年09月19日ある日突然、ASDのある長男・ミミの前髪がなくなって…ASDの特性がある、わが家の長男ミミ。3年生になって、クラスも変わり2か月が経ったころ、担任の先生との初めての面談がありました。時間は15分間と限られていたので、焦らないように聞きたいことをあらかじめ紙に書いておくことに。・普段のクラスでの様子はどうか?・誰と遊んでいることが多いか?・先生から見て心配なことはないか?などを聞いていきます。実際の面談も、途中まではスムーズに進んでいったのですが…。Upload By taeko「ミミのことで、最近何か気になることはありませんか?」その質問をしたときに、先生がふと思い出したように言いました。「気になること…そうだミミくんの前髪、なくなりましたよね?」前髪といえば、それは昨日の朝の出来事でした。Upload By taeko自宅の庭から部屋に戻ってきたミミが、ニコニコしながら「見て!」と前髪をアピールしてきたんです。よく見てみると、前髪がざっくりと不自然になくなっていてびっくり!「ミミ、その前髪どうしたの?」「ハサミで切った!女の子がやってるでしょ?」と、笑いながら教えてくれるミミ。女の子が前髪を結んでおでこが出ている感じにしたかったみたいなのは分かったけど…。もしかしたら、学校で笑いを取ろうとしたのかな?私が「学校で笑われるかもしれないよ?」と言っても、ニコニコ・ヘラヘラしていてうれしそうなミミ。それでも、親バカな私は「ちょっと不自然な前髪だけど、ミミはかわいいから変に見えないよ」と伝えました。これって抜毛症?虐待!?と思われてしまう?そんな風に、あまり心に留めることもなかったのですが、ただ見方を変えると話は変わってくるようで。先生と、そしてパパの視点から見ると、同じ出来事でもちょっと心配になってしまったそうなんです。Upload By taekoまず先生は、「自分で髪を抜いたのかな?」と気にかけてくれていた様子でした。それを聞いて私はハッとしたんです。ASDのあるミミは周りから理解されず、ストレスで自分の毛を抜いたり、自傷行為が出始める年ごろなのかもしれない…と少し不安な気持ちになりました。「抜毛症」についてネットで見たことがあったからです。そしてパパ。帰宅後に面談での話を共有すると、「虐待と思われてしまわないかな」と思ったそう。「虐待!?」そのことについてまったく思い浮かばなかった私は驚きました。「発達障害の特性で周りに理解されず、怒られることが多くて二次障害として抜毛症が出る場合」を考えた私。「親などからの虐待によるストレスで抜毛症になる場合」を考えたパパ。なるほど、想像していませんでしたが、確かに人によって見え方が異なるようです。Upload By taekoもちろん私は虐待をしていないけど、子どもの変化に対する周りの受け取り方一つで、心配させてしまうことがあると気付きました。自分が見えている子どもの姿だけが全てだとは限らない、だからこそ先生やパパとの会話を通して、複数の視点を持って成長に寄り添っていきたいなと感じたんです。そんなことを考えていた、面談のあった日の夜。お風呂場でミミと2人になった私は、その不自然に切られた短い前髪に似合うように、ちょっとだけ髪の毛を整えました。髪が短くなったミミもやっぱり、かわいかったです。Upload By taeko執筆/taeko(監修:初川先生より)「自ら髪を切る」を一種の自傷行為としてするお子さんもいます。抜毛であれ、自分で髪を切ることであれ、お子さんが何らかのSOSサインとして出していることがあり、気に掛けるべきポイント(それをきっかけに子どもとそうしたことを話題にして話をすべき機会)なので、それにご両親や先生がすぐ気づいていたのはよかったと思います。ただ、今回のミミくんはどうやらそういう文脈で切ったのではなく、女の子の前髪(ポンパドール)をまねたようですね。こうした機会に、いろいろなことを教えてあげるのもいいかなと思いました。女の子の前髪は短く切っているのではなくて、折りたたんでいること(結ぶ、ピンで留めるならすぐに元に戻るけれど、切ってしまうとしばらく元には戻らないこと)。自分で髪を切るのは危ないから、お母さんやお父さんにまずは相談すること。自分で(自発的に)髪を切ると、「何か嫌なことがあったのかな?」など心配するということ。かわいいと思ったからやった、注目を集めたかったなど、ミミくんなりの思いはあると思いますが、周りがそうではない受け取り方をするということもあると伝えておくと良いと思います。taekoさんが今回前髪の件でパパ、先生の意見を聞いて視野が広がったように、対話によって視野が広がるということを、ぜひミミくんにも折々に感じてもらえたらと思います。
2022年09月02日パトカーや消防車、ショベルカーなど『働く車』と呼ばれる乗り物は、いつの時代も子供に大人気。アメリカに住む11歳のアベルくんは、トラックの中でも、特にゴミ収集車が大好きです。ゴミ収集車の大ファンの男の子にサプライズが!そんなアベルくんにとって、待ちに待ったゴミの収集日がやってきました。母親と弟と家の前でゴミ収集車の到着を待つアベルくん。そこへやってきたゴミ収集車のドライバーが、「お待たせ!」というように軽快にクラクションを鳴らします。実はこの日、作業員たちはアベルくんにサプライズを用意していました。アベルくんたちにトラックのボタンを押させてあげたり、クラクションを鳴らさせてあげたりと、サービス精神旺盛な作業員たち。さらに彼らは、アベルくんにゴミ収集車のおもちゃをプレゼント!自閉症をもつアベルくんは感情表現がとても豊かで、興奮すると片足で飛び跳ねたり、手をバタバタと動かしたりするのだそうです。思いがけないプレゼントをもらって、全身で喜びを爆発させました。そんなアベルくんを見つめる作業員たちも、とても嬉しそうですね。このほほ笑ましい交流は、動画を見た人たちまでも笑顔にしたようです。・男の子の喜びようが最高だね!・作業員の男性たちの優しさに感動した。・なんてこった。俺は何事でも泣かないが、この動画を見て泣いちゃったよ。・こういう思い出って一生忘れないんだよなぁ。今後の人生の支えになると思う。大きなゴミ収集車に乗って颯爽と現れ、ボタン1つでトラックのアームなどを動かす作業員たち。そんな彼らはアベルくんにとって、かっこいいスーパーヒーローそのものなのでしょう。憧れのヒーローたちからもらったプレゼントを、彼は一生大切にすることでしょうね![文・構成/grape編集部]
2022年08月29日子どものころからずば抜けた記憶力をみせていたわが家の長男タケル(ASD・22歳)は、子どものころから物覚えが良く、一度聞いたことは忘れません。平仮名はもちろん、一般的に使われる漢字も、4歳になったころには完璧に読めるようになってしまい、大人たちを驚かせました。小学校でも、授業で聞いたことはほとんど丸覚えしており、しばしばほかの子に先生のように教えるほど。先生方も「タケルくんは本当に頭が良いね」と、ほめて(おだてて?)くれていました。さぞかしテストもできるだろう…と思いきや小学校の6年生になり、タケルは中高一貫校を受験することになりました。学校ではお勉強のできる子のタケル。受験用勉強は学校の勉強とは違うとはいいますが、タケルなら結構良い線いくんじゃないか?そう思いつつ、12月に初めて有名予備校の模試を受けました。…ですが!結果は惨憺たるものだったのです…。Upload By 寺島ヒロどの科目もまんべんなく点数が低く、特に後半の文章題になると全部の科目で落としていました。やはり受験向けの勉強をしてないと難しいというのは本当なんだ…。と思いつつ、タケルを見ると…あれ?なんだか納得いかない顔…?Upload By 寺島ヒロなんと、タケルは「問題は難しくなかった。答えは読んだところは全部わかってた。」と、言うのです。ん??「読んだところ」とは?「問題数が多すぎて、全部読む前に終わっちゃったんだよ!答えも文字が多くて、枠の中にきっちり書ききれなくて、何度も書き直したの!」「タケル不器用なんだよ…。」悔しさを滲ませながら、タケルはそう言いました。実は隠れLDだった?タケルの言い分詳しく聞いていくと、タケルは漫画のセリフのような数行の文字なら問題ないが、小説のような長い文章になると、今読んでいたところがしばしばわからなくなったり、ほかの行に視線が飛んでしまうことがあるのだそう。しばらく読んで「ん?意味が通らないな?」と思うと読み直すので、普段はあまり問題にならないのですが、入試問題など時間内に読んで、答えを書かないといけないようなものだと時間が足りなくなります。また、タケルには文字を書く欄にぎっちり余白なく文字を書きたいというこだわりがあり、うまく収まらないと何度も書き直したくなり、時間が足りなくなるのだそう。そういえば、タケルのノートは余白がなく、びっしりと文字で埋まってます。あれはそういうこだわりだったのか…!特性はすぐにはなくならない!タケルの作戦とは?そうはいっても受験はもう目の前。できることで勝負をしていくしかありません。解答欄にはぎっちりと文字を入れたいこだわりのあるタケルでしたが、枠の中に均等に文字が入っている必要はないと説得。解答欄になるべく先詰めで答えを書く練習をすることにしました。Upload By 寺島ヒロまた、文字を読むときには、定規を当てながら読んでみるなど、本人も自分なりにいろいろ考えて工夫していたようです。特別扱いじゃない!実力を発揮するために必要なこと細かい工夫が功を奏し、タケルは希望の中学校に合格することができました。しかし、22歳の今でも、文字を読むのは遅く、書くのも苦手です。18歳で大学受験をしたときも、答えを書くまでの時間が足りず大変苦労しました。大学入試センター試験では、合理的配慮の範囲で時間延長をお願いできないかと相談もしたのですが、当時は「肢体不自由でペンが握れない」というような明らかな障害でなければ認められないと、適用されなかったのです。ちなみに、現在(2022年)では、センター試験が大学入学共通テストに変わると共に見直しが行われ、条件が緩和されているようです(※)。最近タケルが受けたTOEICでは、合理的配慮の申請フォームに既にASDの項目が用意されており、時間延長措置が選べるようになっていました。こういうところは、さすがアメリカ発祥の資格試験だな〜!と感心しました。「特別扱い」「下駄を履かせてる」という声が聞こえてくることもある合理的配慮ですが、障害がある子が実力を発揮する大きな助けになることですので、もっと理解が進んで、広がっていくといいなと思います。執筆/寺島ヒロ(※)合理的配慮の内容や条件はこちらをご覧ください。参考:令和5年度 受験上の配慮案内| 大学入試センター(監修:井上先生より)近年、LDを含む発達障害のある学生に対して、試験などでの合理的配慮が認められるようになってきました。合理的配慮の種類によっては、個別の教育支援計画の中に記載されていたり、日ごろの学校での配慮の実績などが問われる場合もあります。また、年齢が上がれば、配慮を受けたい/受けたくないといった本人の意思も関係してきます。大人になって合理的配慮を行う場合は、本人の申し出が必要になってきます。本人の自己理解やプライドなど、さまざまな段階や葛藤もあるかと思いますが、相談しやすい環境づくりとともに、合理的配慮に対する知識を学ぶ場が望まれています。
2022年08月25日自閉スペクトラム症のある太郎と学校のテスト自閉スペクトラム症のある太郎は、小学校の低学年から中学年のころ、学校でテストを受けるときに強いこだわりがありました。そんな当時の太郎の様子と、自分の気持ちを振り返ってみたいと思います。空白はすべて埋めたいUpload By まゆんテストで出された問題は全て分かりたい。でも分からない。空白は全て埋めたい。でも埋まらない。分からないや。まぁいいか、次の問題へ進もう。太郎にそういう考えはなかった。書きたい、分かりたい、全部埋めたい。そういう思いがあってもテストの1問目からつまずくことが多かった。Upload By まゆん先生がずっと1問目の問題を見つめ、フリーズしてる太郎に声をかけてくださった。それでも太郎は解かなかった。目の前の問題が気になるから次の問題は視界に入らない。そうして時間はいつも過ぎていった。テストは名前だけ書いて終わることも多かった。点数の意味も分かってはいた。でも点数が低いことを悪いことと認識はしていない。それが私としては救いだった。私も点数が低いことで怒ったり注意したりもしなかった。そう育ててきたし、何よりも太郎は家でも学校でも努力はしていたから。出された宿題は時間がかかっても悶えながらも必ず全てしていってた、そういう努力や真面目な太郎を私は見ていた。「正解」を書きたいそしてもう1つ。太郎は間違うことが嫌だった。「正解」を書きたかった。間違うことをおそれて少しでも自信がないと答えを書かなかった。家で宿題を解いていても1問1問、間違えていないかを確認してきた。Upload By まゆん間違えることはできない。正解を書きたい。それが太郎の世界だった。あとがきこの状態はいまだに続いています。小学校高学年のころからずいぶんと柔軟にテストを受けられるようにはなりました。きっかけは、特別支援学級の先生がしてくださった工夫でした。テストを個室で受けられるようにしてくださったり、太郎が大好きなぬいぐるみを目の前に置いて「次へ進もう」と先生が腹話術などもしてくださいました。そうしているうちに、ある日ひょんと初めて100点を取ってきました。そのときの喜びを知ったのか「高い点数を取りたい」という気持ちが芽生えてきたように思います。ときと場合によりますが…晴れの日もあれば曇りの日もあるように、太郎の世界も同じです。私はそんな太郎の成長を傍でゆっくり見守れたらいい…。そう思っています。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症特有のこだわりがあって問題を飛ばせないお子さんを、ときどき見かけます。音に敏感なお子さんは個室で静かな環境の中でテストが受けられるのが理想です。一方、投薬でこだわりを軽減することも可能です。初めのうちはトークン法の利用も効果があります。人生で初めての受験になる可能性が高い高校進学までにテストが柔軟に受けられるよう、できるだけ早期に学校側や教育委員会と相談して対策を練る必要があります。
2022年08月09日虫や生き物との触れ合いを通して、学べることがありますわが家にはたくさんの生き物がいます。猫、ヤモリ、カニ、どじょう、カエル、ダンゴムシ、季節によってオタマジャクシ、アオムシなどなど。そうです、ミミは虫や生き物が大好きなんです。Upload By taekoそんなミミが通う小学校のクラスで、アオムシを飼育することになりミミは大喜び!もちろんクラスでは虫が苦手な子もいるので、虫に慣れている男の子やミミがお世話を率先してやっているようです。理科の授業や放課後など、友だちと一緒に虫のお世話をすることをとても楽しんでいます。友だちからの信頼を集めて、イキイキしている様子が嬉しいです。そして何より、その時間を通してミミにとっては人との関わり方の学びにもなっている様子でした。Upload By taeko学校から帰宅すると、お世話をしているアオムシの様子を楽しそうに話してくれます。そして家にいるときも、図書室で借りてきた虫の飼育の本を読んだり、youtubeを見て飼い方を学んでいます。その興味は学校のアオムシに留まらず、自分で虫を探して捕まえることへと広がっていきました。虫が増える春ごろには、来る日も来る日も虫を探しに行く日々を過ごしました。パパのために始まった、1ヶ月間のカマキリ大捜索中でも、「パパが好きな昆虫のカマキリ」をどうにか見つけたいミミ。きっと、パパを喜ばせたいという優しい気持ちがあったのだと思います。土手や公園に探しに行きました。それでも、簡単には見つかりません。カマキリが見つからなかったときも、次はどこに行こう?と考えて、自宅から行きやすく昆虫採集が可能な公園を探します。自分から進んで考えたり行動したりすることができて、成長を感じられるのも嬉しいです。休みのたびにいろんな場所へ行くけれど、それでも本命は見つかりません。ただ、その途中で見つけたちょうちょやてんとう虫を観察することを、楽しんでいました。Upload By taekoそして、カマキリを探し始めて約1ヶ月。「あっ!カマキリいた!」やっとの思いで早朝の公園で見つけられたときは、私もミミも大喜び!!それはそれは、とても大きな達成感でした。生き物を飼育することで、寿命まで飼う大事さや、餌を確保するのが難しいときは捕まえた場所に戻したり、学びにつながっています。パパもミミの頑張りを喜んでくれましたが、同時にちゃんと伝えるべきことは伝えてくれます。「生き物を飼うってことは、責任が生まれるんだよ」パパはいつも、捕まえた生き物のお世話の大切さを厳しくも愛をもって教えてくれるので、良い親子の関係になっているなと感じます。生き物に限らずだとは思いますが、夢中になれる本当に好きなことからは、たくさんの学びを吸収することができます。これからも生き物と付き合いながら、さまざまな発見をしていって欲しいと思います。執筆/taekoUpload By taeko(監修:井上先生より)お子さんに夢中になれる対象が見つかり、クラスの子どもやご家族もそれに理解を示し、本人もより学びを深めたり、そこから発展させたりできていることは、とても素晴らしいことだと思います。生き物を飼育することは、成長とともにその生き物が死んでしまうということにも接するかと思います。このことを通して命の大切さや、育てることの責任を、考えるきっかけにしていけると良いですね。
2022年08月02日異常な記憶力と、マシンガントーク…!きっとこれは「壁打ち練習」なんだわが家の長男タケルは、子どものころから話し始めたら止まらない子。喋り始めたのは生後10ヶ月ぐらいで特に気になることもなかったのですが、3歳を過ぎたあたりから特徴的な喋り方をするようになっていました。Upload By 寺島ヒロこのころ、もうかなり長い台詞を喋るようになってきていました。もちろん、これはほんの序章に過ぎなかったのです…。ゲーム漬けの日々5歳のころ、スーパーファミコンのアクションゲームにはまったタケル。朝から晩までゲーム漬けになりました。ゲームをする時間の長さはそれほどでもないのですが、まず起きたらそのゲームのキャラクターの絵本を読み、幼稚園ではゲームのごっこ遊びをして、家に帰ってくると折り紙でゲームのキャラクターをつくり…。それだけでは終わらずに、ごはんのあとにちょっとゲームをやると、ゲームの音楽を歌いながら眠りにつきます。わたし自身、結構なオタクなので「ハマってるなあ、すごく好きなんだねえ」と思うだけでしたが、ともかく朝から晩まで、口を開けばゲームの話ばかりで閉口してしまいました。YouTubeにハマる!そして...小学生になるとYouTubeなどで動画を見るようになりました。これも見ている番組や時間は限られているのですが、見ていないときは動画の内容を繰り返して喋っています。こちらから別の話を振ると会話しますが、その話が終わるとまた動画の話を再開するのです。Upload By 寺島ヒロすごい記憶力だ…!だが...見たYouTube番組の話をしてくるのは、今も変わりません。最近は数学チャンネルをよく見ているらしく、「問題を出して良いかい?」とニヤニヤしながらやってきます。大体私では問題は解けませんが、解説まで完璧に教えてくれます。タケルは覚えたことを、親にアウトプットしてみせることで、記憶を強化しているのでしょう。壁打ち練習みたいなものなのかもしれません。問題は、その「壁打ち」がいつでもどこでも始まるということです。問題点はお喋りをやめられないこととにかく、タケルの話はワンセンテンスが長い!そして一度遮られても続きをしゃべる仕様です。忙しいときは本当にうっとうしい!親の私でもそう思うのですから、ほかの周りの人たちも同じように思っているはず…。実際、友達数人とボイスチャットをしていたとき、会話の流れに構わず、YouTubeで仕入れた知識をべらべらと長尺で喋ってしまい、友達に「ご講義はいいから!」と突っ込まれていたのを聞いたこともあります。Upload By 寺島ヒロしかし、そんな息子のおしゃべりを聞いて、黙って離れていくのではなく、ちゃんと叱ってくれるお友達がいるのはありがたいことです。次第に友達への「講義」の頻度が下がることを期待しつつ(笑)家での「壁打ち」にはなるべく付き合ってあげようと思っています。執筆/寺島ヒロ(監修:井上先生より)とてもユニークで頭の良いお子さんだと思います。寺島さんが書かれているように、お友達の注意の仕方もユーモアがあって本人も受け入れやすいのではないでしょうか。自分の知識をしゃべりすぎてしまうことは、同じ趣味のお友達ができると欠点から長所に変わるかもしれません。お子さまにはぜひ研究者の道を歩んでいただければと思います。
2022年06月07日穏やかで友達トラブルとは無縁だったUpload By ゆきみ自閉スペクトラム症のある長男けんとは、赤ちゃんのころから、とにかくマイペースで穏やかな性格。好きなものに対するこだわりは強かったものの、遊んでいたおもちゃを誰かに取られてしまっても、お友達が遊んでいるおもちゃで遊びたいときも、ほとんど泣くことはせず、サラリとおもちゃを奪ったり、無理だなと思うとその場を離れて違う遊びをする…などの行動をとっていました。なので、赤ちゃんのとき、発達支援施設に通っていたとき、こども園の年少に至るまで、お友達トラブルとはほぼ無縁の生活。一人遊びが大好きで、集団行動にも参加していなかったのでトラブルは起きなそうだなーとママは呑気に考えていました。年長の夏。園のあとに通っていた発達支援施設の先生に「けんとくん、最近、自我が出てきたように感じます」と言われました。家で遊んでいる様子はそこまでの変化を感じていなかったので、さすが先生!よく見てくださってるなと感心し、感謝したのを覚えています。自我の出現と共に友達トラブル急増!?Upload By ゆきみ「自我が出てきたように感じる」と言われたころ、こども園の先生から「お友達を引っ張ってしまった」と報告を受けたのです。初めての友達トラブルにビックリ。表出言語が苦手でほぼ単語。さらに構音障害で発音が悪く、何を言っているのかわからない、けんと。自我が出てきたことで、やりたいこと、やってほしくないことを上手く伝えられなかったり、伝わらないことに苛立ったりしてお友達に手を出してしまうのではないか、と発達支援施設の先生から言われました。最初はお友達を引っ張ることが「ダメなこと」だというのが分かっていないような様子でした。それでも毎回、「お友達は引っ張りません」と伝えたり「引っ張っていいんだっけ?」と質問して答えてもらうようにしたら、少しずつダメなことなのだと理解し始めていきました。引っ張ってしまう園行事の練習期間中、「引っ張らない」を目標に定めた「できたカード」を毎日持たせていただきました。手を出しそうになったとき先生が「今日のできたカードは何だったっけ?」と声をかけてくださり引っ張らずにすんだ日もありました。そんな日は、嬉しそうに「できたよ☆」と自ら報告してくれて、頑張ったんだなーと私にも伝わってきました。抑えられない!?ションボリな様子の息子Upload By ゆきみ年長の3学期になると、行事のときに引っ張るだけではなく、好きなおもちゃを独り占めにしたくてお友達に手を出すようになってしまいました。先生からお話しを聞くと、3学期にクラスに導入されたおもちゃがけんとのとっても大好きなおもちゃだったため、「お友達と一緒に遊ぶ」と自分の思い通りに遊べないことが多く、ストレスになったり苛立ったりしている様子とのことでした。園のあとに通っていた発達支援施設でも、つくりたいものがあったのに壊されてしまい、お友達とケンカしてしまった。と、先生から報告を受けました。帰り道、けんと自身の口から「お友達を引っ張っちゃった」とションボリ報告をしてきてくれました。悪いことだと分かってはいるけど、自分の気持ちをコントロールできないんだ…ということが私にも伝わってきました。トラブルはいつまで?毎日心配が止まらないUpload By ゆきみ4月、小学校に入学しました。生活をしていく中でまだ通常学級で過ごす時間が短く、特別支援学級のクラスは年上のお兄ちゃんとお姉ちゃんしかいないため(1年生はけんとだけ)、大きなトラブルは今のところ起きていません。しかし、新しく通いはじめた放課後等デイサービスで、おもちゃの取りあいをしたり、1人で遊びたいのに邪魔をされたといって押してしまったり…と、トラブルが出てきています。まだまだ始まったばかりの小学校生活。これからお友達との関わりが増えていくにつれ、さらにトラブルも増えていってしまうかと心配です。小学校、放課後等デイサービスの先生方と連携して情報交換し、けんと自身が自分の心をコントロールできるようになったらいいなと願っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)「自我が出てきた」ことで、お友達に手を出してしまうことなどトラブルが急増すると、とても心配ですし、親としてやきもきすることも多くなりますね。ただ、「自我が出てきた」ことは大切な成長です。自分のやりたいことがある、こうしたいという強い思いがある。それ自体はとても大事なことです。何事にもやる気が持てず、あるいは常に受け身でいて、自分のやりたいことよりも友達を優先して譲るのみ…ということはトラブルが起きなかったとしても私はそれはそれで心配だなと感じてしまいます。お友達のことを引っ張ってはいけない、お友達に手を出してはいけない。それはその通りなのですが、その前の、けんとくんの気持ちをどう扱っているかは気になりました。理想としては遊びたいときに「(ぼくが)遊びたい」「これ(おもちゃ)使いたい」など言葉で気持ちを言えるといいなと思います。うまく言えないときは「せんせい!」と大人を呼ぶのもいいと思います。ともあれ、○○したいと強く思うこと自体は悪いことではないので、それはそれとして表出できたら(あるいは、大人がその部分を「けんとくんは、これで遊びたいんだよね」と代弁したりフォローしたりして尊重できたら)いいなと思います。その次にようやく、「でも手を出すのはいけないね」というところ。「○○したい」と強く思うと同時に、「手を出してはいけない」をやり抜くという2つの課題が課されている状態なのは、まだまだ難しいだろうな…と感じました。そんな中でも、けんとくんは、落ち着いているときにお母さんと一緒に「今日手を出しちゃった」と振り返ることができていましたね。ある意味とても気にしているということでもありますが、それほど何とかしようと考えているということでもあり、目標としては共有されている、そこまで発達してきているのだと感じました。どうしたら気持ちが伝わるか、どうしたらもめずに遊べるか、どうしたら先生に注意されずにスムーズに遊べるか。そうしたことをきっとトラブルの中で学んでいる面もあると思います。保護者の立場からすると、ひやひやする思いが続きますが、しかし、どんな塩梅で自分の気持ちを出したり、譲ったり、そのときにどんな手段を使うかということは実際にその場面を経験することで磨かれていきます。もうしばらくひやひやは続くと思いますが、先生方との連携の中で、一進一退しながらも成長してゆくことを信じて見守りましょう。
2022年05月31日人への指摘が目立っていた小学校低学年のコウUpload By 丸山さとこ小学校低学年ごろのコウは、クラスメイトへの指摘が多くトラブルになることがしばしばありました。ASDの特性ゆえの「相手の気持ちや空気の読めなさ」によるものなのか、ADHDの特性ゆえの「思ったことを衝動的に口にしてしまう」ことからなのか、コウが何気なく繰り出す言葉の数々は相手の心を傷つけることも多く、その度に周りからひんしゅくを買っていたようです。行き過ぎた指摘を減らせないかな?と試行錯誤していたあのころコウと話をしていると、『人の嫌がることはやめよう』というのは分かっていても、指摘することの何がいけないのかよく分からないようでした。コウが指摘したことで相手の子と口論になり、ヒートアップして喧嘩になってしまった場合、それ自体は「よくなかったな」と思うコウです。けれども、きっかけとなった自分が相手にした“指摘”そのものの問題は見えないようで、「みんなも同じように言っているのに?」と基準点の見えなさに困っているようでした。Upload By 丸山さとこ実際、学校や公園などで子どもたちの様子を見ていると、指摘することそのものは多くの子どもがやっていることのようです。盛んに指摘し合い、ときに行き過ぎて揉めたりする中で徐々に加減を覚えていくのだろうと思います。そんな風に『コミュニケーションの練習』を重ねていく子どもたちの姿を見ながら、「その『加減』の習得が難しいのがコウなんだよな~…!」と私は頭を抱えました。コウが指摘でひんしゅくを買うときは、相手に対する指摘の遠慮なさだけではなく「そういう自分はできてるのか!」という突っ込みも原因の一つになっているようだったので、そこも踏まえてコウに話すことにしました。「人の世話は、自分のことができていて余力のある人がすること。まず自分の世話を終えてからだよ。自分の口元がケチャップでベタベタな人に『口ベタベタだよ』と言われても、『いや、まず自分が拭きなよ』ってなるじゃん?」…と私が言うと、「あ~、『頭の上のハエを追え』ってことだね?」と彼はうなずきました。Upload By 丸山さとこ『頭の上のハエを追え』とは、『人の頭上のハエをとやかく言う前に、自分の頭上を飛んでいるハエを始末しなさい』という言葉を通じて『人のことをとやかく言う前に自分のことを何とかしなさい』と表していることわざです。私はコウに「自分の頭の上にハエがいるかどうか自覚が難しいなら、基本的にはやたらと人に口出ししない方がいいと思うよ」と言いました。するとコウは「それはそうだね。僕そういうの気づかないとこあるからね」とアッサリ納得してくれました。そうして、『頭の上のハエを追え』ということわざを通じて状況を理解したコウのクラスメイトへの指摘は、少しずつ減っていきました。相手への行き過ぎた指摘が始まったときも「頭の上のハエはどうなってる?」とコウに聞くと「ブンブン飛び回ってるね~」と笑って気持ちを切り替えられるようになりました。そして、癇癪を起こすことなく自分のことに専念できるようになっていきました。Upload By 丸山さとこ毒をもって毒を制す!?トラブルの種同士がぶつかって…当時(小学校低学年ごろ)のコウは辞書を読むのにはまっており、故事成語やことわざを気に入って日常の会話でもよく使っていました。『今の状況にピッタリだな』『この話はあの言葉と同じだな』という故事成語やことわざが思い浮かぶと、「これって○○だよね」「それは□□だね」などと言うのがコウのお決まりでした。そのために「またコウが難しいこと言ってる」「自分のこと頭いいって思ってない?」とクラスメイトからひんしゅくを買うこともしばしばでした。Upload By 丸山さとこそんな風にトラブルの種になることもしばしばであった故事成語やことわざが、別のトラブルの種である指摘癖を抑えることになるとは、何がどう作用するのか分からないものです。「これは『毒をもって毒を制す』っていうヤツかな?」と、思わずコウのようなことを考えてしまう私でした。執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症のあるお子さんは、耳よりも目からの情報が多いことが知られています。従ってお子さんに物事を伝えるには口頭だけでなく、視覚的にも訴えると伝わりやすくなります。絵を描いたり、写真を見せたりして説明すれば理解が早く進むことが多いです。今回コウくんはことわざを通して理解をしましたが、同じように理解するのは難しいというお子さんには絵カードを用いたり、図示して説明したりするとよいでしょう。
2022年05月24日周囲は知らない人ばかりの小学校一年生タケルは私立の幼稚園に3年間通い、地元の公立の小学校に進みました。新学期が始まってみると、周りはほとんど小学校付属の幼稚園から来た子たち。すでにお友達グループができているようだったので、この中に入っていくのは、難しそうだな、と思いました。幼稚園でウケた「大技」を披露しかし、言われたことはそのまま受け取るASDの息子のこと、入学式での「お友達をいっぱいつくってくださいね」という校長先生のスピーチに、すっかりやる気になりました。早速「友達つくるぞ!」と、入学式の後、校庭で立ち話をしている男の子たちのグループに割り込みますが、知らない子が無言で入ってきても、話しかけてくれる子はいません。なんとなく距離を空けられ、いつしか解散してしまいます。Upload By 寺島ヒロなんて言って良いか分からないのかな…と、ハラハラしながら見ていると…大人びた感じの女の子が近づいてきました。どうやら、タケルが子どもたちの輪に入れないことを見て、話しかけてくれようとしているみたいです。良かった…!と、思ったのもつかの間、タケルが、急に大きな声で「ピコーン!ピコーン!」と言いながら飛び跳ね始めました!Upload By 寺島ヒロあれは…!「某有名ゲームのキャラクターが21連続でコインを叩く」というタケルの持ちネタ…!しかし、そんなことは知るよしもなく…汗だくになりながら「ピコンピコン」と繰り返すタケルに恐れをなし、女の子は半泣きでどこかに行ってしまいました。大滑りを経験して思ったこと友達をつくるぞ!と意気込んでいたものの、幼稚園ではテッパンだった「ゲームの真似」も不発に終わり、当時はタケルも相当落ち込んだようです。幼稚園では、物心つく前から一緒にいた仲間だったので、特に彼らには前振りなどなくても、タケルが何かネタを披露していると集まってきて、笑ってくれてたのですよね。でも、知らない人ばかりの中では、タケルは、急に予想のつかない動きを始めるコワイ人でしかありませんでした。会話の中で話題を変えるときのスキルそんなタケルでしたが、小学校に通い始めて2〜3ヶ月もすると、学校で親しく話すことのできる子ができてきました。4年生になるころには、クラス替えがあっても「友達」と言えるような子もでき、なんとかなるもんだなあとホッとしました。今、大きくなった息子に、小学校のときの友達のことを聞いてみると…Upload By 寺島ヒロ自分なりにルールをつくっていたようです。いつもうまくはいかないけれど…相手があることでは、自分の思いついたことをいきなり始めないというのは、当たり前のことではありますが、ASDのある子どもの場合、なかなか想像できないことかもしれないと思いました。実は二十歳を越えた今でも、それまでの会話と関係なく、思いついたことを長尺で喋ってしてしまうことがあり、しばしば友達に「ご講義はいいから!」とツッコミを入れられたりしています。三つ子の魂なんとやらですが、それでも、いつしか外で「いきなりゲームキャラの真似」はしなくなったので、少しずつ人付き合いの中で学んでいるんだろうなと思います。執筆/寺島ヒロ(監修:井上先生より)ASDのある方の場合、自分が会話に入っていくときや話題を変えるときに、タイミングが計れない、あるいは切り出し方が分からないといった声をよく聞きます。タケルさんのように、話題を転換するときに予告をしたり、相手に指摘されたときにうまく受け入れることができると、苦手意識は軽減するかもしれませんね。また、相手の話を相槌を打ちながら、上手に聴く、というスキルがあると相手との関係も取りやすくなると思います。
2022年05月03日知的障害・自閉症スペクトラムで療育園に通う、5歳のえぬくんと、えぬくんママの日常を紹介するYouTube「えぬくんちゃんねる」をご存知でしょうか。 知的障害・自閉症スペクトラムのえぬくん(5歳)は、ママとパパと3人暮らし。強いこだわり・かんしゃくはあまり無く、おしゃべりは喃語(なんご)が多く踏切の音の「カンカンカン」や「やったー」など、数語話すこともあります。愛嬌があって、人と関わることが大好きです。 「障害はあるけれど、こんなに可愛くておもしろいえぬをみんなに見てもらいたい。困りごとや悩みを共有できるきっかけになれば」とYouTubeを始めた、えぬくんママ。 今回は、1番大変な時間と言っても過言ではない、帰宅〜お風呂に入る前までのワンオペ・ナイトルーティンを紹介します。 15:00療育園にお迎え自転車で療育園にお迎えに行き、帰るところから動画はスタート。えぬくんは、1歳10カ月から療育園に通っています。3歳までは週5日で通っていましたが、現在は週4で療育園、週1で作業療法に通っています。 ※療育園とは:障害を持つ子どもの発達を支援する施設※作業療法とは:運動や遊びを通して発達を支援する療育のこと 自宅ですが、マンションのエントランスで必ずピンポンを押したいえぬくん。自宅ドア前のピンポンも押して、ドアが開くと靴のまま自宅へ突入! ママさんが追いかけます。 ゆる〜くトイトレを実践中という、えぬくん。 療育園ではパンツですが、まだまだ成功しないので家ではおむつに履き替えます。療育園からは、毎日お漏らししたパンツとズボンを大量に持ち帰ります。 16:00えぬくん大好きなお米を催促 えぬくんは白いご飯が大好き! 療育園で、お昼ごはんもおやつも食べているえぬくんですが、大好きなお米が炊き上がるのを待ちきれず、茶碗を持って「お米をください」アピールしています。 ママが夕食を作っている間、えぬくんはお気に入りの毛布を持ってYouTube鑑賞。大好きな電車や自分のYouTubeを観ていることが多いそうです。 16:30早めの夕食 えぬくんが待ちきれず、16時半ごろに早めの夕食スタート。おかわり地獄が始まります(笑)。茶碗2つをママに向けて、「ご飯を入れて!」とアピールをするえぬくん。多いときは3個の茶碗を出すそう(気分によって、食べてくれない日もあるそうです)。 白米の上の部分だけを食べては、何度もおかわりのポーズ(ママに向けて茶碗を差し出します)。おかずのソースを何度も「かけて!」とアピール。何度も席を立たないといけないので、ゆっくり食べることもできず、ママもイライラMAX! おかわりでは大きな声を出したり、机を叩いたりする様子は見られませんが、何度もご飯とソースを要求されるのでついにママが拒否! すると、床に寝転んで抗議します。機嫌が悪くなって対応がさらに大変になってしまうので、つい要求をきいてしまうそう。 おかわり地獄の食事タイムが終わったら、ママはお風呂のお湯をためている間に食器洗い。パパは仕事で帰宅時間が遅いので、一緒に夜ごはんを食べられるのは週1回くらいです。 18:00お風呂えぬくんは、お風呂が好きなので嫌がらずに入ってくれることが多いそうです。 18:30 お着替えまだ、自分でお着替えはできないので、ママに着替えさせてもらいます。 19:00 寝る準備が完了動画はここで終了。少し遊んで20:30頃には寝室へ移動しますが、寝室に行くとハイテンションになるえぬくん。ママさんは隣で寝たふりをして寝かしつけますが、寝たと思ってもベッドを出るときに何度も気づかれてしまい、結局寝るのは23時ごろ。もっと遅くなるときもあるそうです。えぬくんに終始やさしく微笑み、正面から向き合って接しているえぬくんママさん。特性のあるお子さんの子育ては大変だと思うのですが、えぬくんと笑顔で楽しく過ごしている日常を見ていると、ほっこりやさしい気持ちになります。 この動画には「怒らず、できる限り要求に応えてあげてるママさん本当にすごい」「優しくていつも笑顔で明るくて、尊敬しかない」など、ママたちから多くの賞賛コメントが多数寄せられていました。えぬくんママさんのやさしい子育ての様子に、励まされるママも多いようです。著者:ライター 廣瀬尚子二児の母。女性誌の編集を経て、フリーランスに。広告やアパレルブランドの撮影、雑誌やWEBマガジンの執筆などを手がける。
2022年04月28日普通の赤ちゃんだったのに…歩かない息子と発達の遅れ私の息子は、知的障害を伴う自閉スペクトラム症(ASD)があります。知的障害があるといっても程度はさまざまですが、息子はその中でも「重度知的障害」にあたります。Upload By べっこうあめアマミUpload By べっこうあめアマミ息子は生まれる前も、生まれたときも、生まれたあと1年くらいも、何の異常もないごくごく普通の赤ちゃんでした。「あれ?」と思ったのは1歳のころ。首すわり、寝返り、ずりばい、ハイハイと、問題なく身体発達を遂げてきた息子が、「歩く」という段階で、初めてのつまずきを見せました。息子がはじめて1人歩きをしたのは1歳8ヶ月。一般的な発達段階から考えると、遅めです。当時の息子はどちらかというと、「歩けない」というよりも「歩かない」ように見えました。伝い歩きはできていたのですが、体を支えるというよりは、何かに触っていないと不安を感じていたようです。そのため、最後のほうは、てすりや壁に触れる程度の伝い歩きでした。何事にも慎重な息子なので、歩くことが怖かったのかな?と思いましたが、今思えばこれはある種の「こだわり」だったのかもしれません。歩き出すのが遅いというと、一見「身体発達」の面に遅れがあるように思えます。でも実は、息子の場合は精神発達の遅れのほうが深刻だったのです。人への興味が薄い息子、私の育て方のせい?Upload By べっこうあめアマミ当時は「歩かない」ことが息子の発達における最も重大な問題に思えました。ですが問題なのは精神的な発達の遅れのほうだったと、今なら思います。というのも、今の息子はむしろ同年代の定型発達のお子さんより歩くんじゃなかろうか、というくらいよく歩く子ですが、指さしは7歳になった今もできません。人の真似などもほとんどしません。突然突きつけられた発達の遅れに、私の育て方が悪かったのかと何度も自分を責めました。Upload By べっこうあめアマミこれまでずっと「育てやすい赤ちゃん」だと周りから言われ、自分でもそう思って育ててきたので、息子に対して「障害」という言葉はなかなかピンとこなかったのです。苦しんでいる親御さんに寄り添いたいしかし、そんな息子も4歳のときに正式に知的障害と自閉スペクトラム症の診断がおり、この4月に特別支援学校の2年生になりました。息子が3歳のときには娘も生まれ、いろいろな問題を乗り越えながら、家族4人、楽しく暮らしています。子どもに発達の遅れがある、障害があるかもしれないと思うと、親の心は大きなストレスに押しつぶされそうになるでしょう。でも、そんな時期を乗り越え、「なんとかなる!」と前を向いた私たち家族のお話が、今まさに悩んでいたり、苦しんでいる親御さんの心に少しでも寄り添えたらいいなと思っています。Upload By べっこうあめアマミ執筆/べっこうあめアマミ(監修:井上先生より)ここまでの子育て振り返ると、お子さんの発達の遅れに気づかれ悩まれた時期、妹さんが生まれ2人の子育てに大変だった時期、そして就学の時期を乗り越えられ、今は妹さんも少しずつ手がかからなくなってきているころかもしれません。いろいろなことがあり、さまざまな体験をされ、本当によく頑張られたと思います。お子さんの障害の種類や程度は異なっていても、先輩の親御さんの体験は幼児期のお子さんをもつ親御さんの心の支えになると思います。これからの連載を楽しみにしています。
2022年04月21日共感の言葉が欲しい幼い自閉スペクトラム症の子を育てている知人も次のように話していました。「今までで一番嬉しかったことは、オウム返しだった息子が、母親の声かけに対して『うん』と答えたこと」私には知人の嬉しい気持ちがとてもよくわかります。「う・ん」これはたった2文字の言葉ですが、立派な会話だからです。息子は2才ごろから言葉を話せるようになりましたが、動物園に連れて行くと、ゾウの展示の前で、全くゾウと関係ない、大好きなトイレの便器の型番をずっとブツブツと言っていました。Upload By 立石美津子「象がいるね」と話しかけたら、息子に「うん」と言って欲しかったものです。だから、知人の気持ちがとてもわかるのです。小さな成長がともかく嬉しいこうした、小さな出来事のように見えるかもしれないことに幸せを感じられるのは、障害のある子の子育ての醍醐味かもしれません。先日も45リットルのゴミ袋のストックがないのを見て「お母さん、ゴミ袋ないよ」と言ってきました。こんなことでいちいち、心が嬉しくて震えます。聞かれてもいないのに、「2023年8月3日は木曜日」なんて言えなくていいから、一緒におやつを食べながら、「お母さん、このアイスクリーム、冷たくておいしいね」と言って欲しい…。一緒に外に出たときに、自分から「お母さん、今日は暖かいね」と言って欲しい…。自閉スペクトラム症のある子どもを育てる親の願いです。言葉が出ない子どもでも表情で「うん」と答えてくれる、言葉が出るようになってもオウム返しではなく、「これ美味しいね」「今日は寒いね」と親に自ら共感を求める言葉を言ったとき、心が嬉しくて震えるのです。こういうことに幸せを感じられるとき、私も親として少しは成長をしているのかなと、思うのです。(監修者・鈴木先生から)以前私の患者さんでADHDの治療をしたら入浴後に「シャンプーがないよ」と言ってくれたお子さんがいます。治療を継続する中で、自ら気づくようになり、それを記憶して母親に言えるようになったのです。そういうところからも会話が増えることはあります。息子さんも成長してゴミ袋のストックがないのに気づき、忘れないうちに言えるようになったのかもしれません。返事に関しては周りの大人も気をつけなければいけません。相手に対して大人もきちんと返事をしていれば自然と子どももまねるものです。最初はオウム返しでも構いません。赤ちゃんのころからお子さんの口ずさんだことに対して無視せずにその子の顔の前で必ず反応してあげることが大切です。
2022年04月07日「世界自閉症啓発デー」とはUpload By 発達ナビニュース2007年の国連総会において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とすることが定められました。それぞれの加盟国が、自閉症(自閉スペクトラム症)についての理解が進むように意識啓発の取り組みを行うことなどが求められています。また、日本では、4月2日から4月8日は発達障害啓発週間となっています。自閉症(自閉スペクトラム症)について十数年前に比べ日本での認知度は高まったものの、今もなお偏ったイメージやあいまいな情報も存在しています。自閉症(自閉スペクトラム症)に関しての研究は世界で現在も続いており、はっきりとした原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足など育て方が直接の原因ではないことが分かっています。自閉症(自閉スペクトラム症)のある子どもはこだわりが強かったり、感覚過敏や感覚鈍麻などの特性があります。そのため、育てにくさを感じたり、適切な接し方が難しいと感じる場合があります。しかし周囲の自閉症(自閉スペクトラム症)についての理解や支援が十分であれば、自閉症(自閉スペクトラム症)があっても住みやすい環境で、その人らしく充実した生活をすることができます。「世界自閉症啓発デー」は、自閉症(自閉スペクトラム症)に関する理解を深めることで、自閉症(自閉スペクトラム症)のある人を含めたすべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日なのです。「Warm Blueキャンペーン」に参加しよう!Upload By 発達ナビニュース「癒やし」や「希望」などを表すブルーを、自閉症(自閉スペクトラム症)のシンボルカラーとしています。毎年4月2日はナイアガラの滝やピラミッドなど世界中のさまざまなランドマークが青に染められ、また青い服を身に着けるなどの青をテーマにした啓発イベントが各国で行われます。4月2日に向け青いものを身に着けたり、ブルーにデコレーションした施設などの写真をSNSに投稿してみませんか?以下のハッシュタグをつけてぜひ投稿してください!#自閉症啓発デー #WB_2022 #2022TT #LIUB発達ナビ連載陣にも「青」をテーマにイラストを描きおろしてもらい、SNSで発信中です。ぜひチェックしてくださいね。東京都自閉症協会、Get in touchを中心としたTT2022実行委員会主催のオンラインイベントが予定されています。発達障害当事者のふわふわおさん、ミス日本グランプリの河野瑞夏さんが司会。ゲストとして自閉スペクトラム症のある方々、Get in touch代表で俳優の東ちづるさんが登場し、さまざまなブルーアクションを紹介します。日時:2022年4月2日16:40配信スタート予定※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトからYouTubeに遷移しますUpload By 発達ナビニュース4月2日に向け日本でもさまざまな取り組みが行われます。東京都で行われる取り組みの一部をご紹介します。■東京都都庁、東京ゲートブリッジがブルーにライトアップされます。■渋谷区4月8日まで渋谷区役所本庁舎、渋谷区子育てネウボラ、中央図書館がブルーでデコレーションされます。また自閉スペクトラム症や発達障害について、理解を深めてもらうための啓発パネル展示や関連書籍の展示を行うほか、区内障害者施設で制作したオブジェの展示やシブヤフォントを使ったオリジナルの啓発ステッカーも配布しています。■丸井グループ商業施設運営を行う丸井グループでは、各店舗にて、Blueの装飾やBlue商品コーナーの展開を行い、スタッフもBlueのアイテムやバッジを着用して、お客さまへ自閉症啓発デーの周知を行います。■SHIPSセレクトショップのSHIPSでは、各お店のウインドーをブルーで色どり、スタッフもブルーのコーディネートに。また、異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」とのコラボ商品の販売がされます。■日本障がい者サッカー連盟武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で東京のJクラブや障害者チームと一緒にまぜこぜウォーキングフットボールが開催されます。■アクサ生命ブルーのリストバンドと啓発ステッカーの制作、配布を行います。ほかさまざまな企業や自治体など100を超える団体がこのキャンペーンに参加しています。自閉症(自閉スペクトラム症)がある人だけでなく、どんな人もさまざまな個性をもっています。誰もが自分らしく日々を過ごせるように「世界自閉症啓発デー」を通して一人ひとりにできることを考えてみませんか。
2022年04月01日入園式でのパニック回避をしたくて…Upload By ゆきみ3歳のときに自閉スペクトラム症と診断を受けた長男けんと。年中から転園したこども園には制服がありました。以前、写真スタジオでスーツのような服を着たとき、早く脱ぎたくて大号泣。シャツやスーツといった普段と違うものを着るのが大の苦手でした。当日いきなり、初めての制服を着る!となると絶対にパニックになると思い、時間をかけて様子をみていくことに。制服を初めて見たとき、警戒している様子だったので、まずは目につくリビングにずっとかけて「この洋服、新しい園に着ていく洋服なんだよ」と声をかけるのを続けてみました。それから数日、制服を見慣れたころに「着てみようか?」と誘ってみると、ズボンは全く嫌がらず、すぐにはいたのですが、上着は抵抗があったようで着たらすぐに脱いでしまいました。そこからは、毎日1回。数秒でも上着を羽織ってくれたら褒めるというのをくり返し、慣れてくれたようで、入園式も嫌がらずに着てくれました。制服でのパニックは回避することができ、一安心。みんな静かに座ってる!周りと違いすぎて…Upload By ゆきみ年中からの転園だったので、入園式は1つ年下の年少の子どもたちが大多数。会場に入ると、保護者の方と静かに座っていてビックリ。けんとは、動きたくてソワソワしていました。式が始まるまでの待ち時間が長かったので、その間はスマホの中の写真を一緒に見たり、しりとりや、じゃんけんなどのプチゲームで気を紛らして、なんとかギリギリ静かに過ごせました。式が始まると、スマホを出すわけにも、しりとりなどのゲームをするわけにもいかず、けんとも退屈そうな様子。まっすぐ座っていられず、椅子にグデーと伸びきったり、床に寝転がろうとしたりするので抱っこしたら、膝の上で伸びきった体勢に。周りの子とは様子が全然違ったけど、奇跡的に静かにはしていてくれたので良かったです。式が短かったのでなんとか大丈夫でしたが、みんなが最後まで静かに座っていられていることにビックリ。けんとは、式の最中全く先生の話を聞かず、ただただ時間が過ぎるのを待っているかのようでした。通園スタート!マイペースが止まらないUpload By ゆきみ遂にこども園生活がスタート!新しい環境が不安でしたし、パニックになってしまった場合の対応法を先生にお伝えしたかったこともあり、園にお願いして2~3日間、私は廊下から見学させていただくことにしました。初日!年少さんと一緒に「園の散策ツアー」に参加。気になる教室があると勝手に入っていってしまうけんと。年少の子たちは廊下から順番に教室を覗いて、先生のお話しを聞いている姿を目の当たりにし、改めて集団行動の難しさを感じました。年中のクラスでは、みんなが先生のお話しを聞いて座っている中、けんとは壁に貼りつけてある紙類が気になるらしく、一つひとつ読み歩いてマイペースに過ごしていました。入園したのが、コロナの流行がはじまったくらいのとき。すぐに園がお休みになってしまいました。そこで園が「リモート幼稚園」を開催してくださり参加してみることに。パソコンの画面越しに「〇〇ちゃんだ!元気?」などと子ども同士が会話をしている姿に驚愕。けんとは全く興味がなかったようで、ほかの遊びを始めてしまい、ママ1人で参加している様子が画面に映されてしまいました。園生活の不安を消してくれたものは…Upload By ゆきみ「今日、園で何があったか」などを話せない子なので心配していましたが、担任の先生が連絡帳で様子を教えてくださり安心感につながりました。園であった困りごと、質問、相談などの細かいことまで連絡帳を通してやりとりしてくださったので園トラブルも把握し、対応策を考えることもできて感謝しています。そして、参加できそうなことには参加させてくださり、苦手なものは無理をせず、少しずつ様子をみながら誘っていただく形にしてくださったので、年中、年長と進むにつれてお友達と一緒に参加できるものも増えていきました。集団行動は今も苦手なままですが、私の不安をよそに、けんとは毎日楽しそうに通ってくれて、けんとの特性を理解しようとしてくださった園、受け入れてくれたお友達には感謝です。もうすぐ小学1年生。特別支援学級の情緒クラスに決定しました。幼稚園でのさまざまな経験を生かして、小学校にも楽しく通えたらいいなと願っています。執筆/ゆきみ(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症のあるお子さんは、制服を好む傾向があります。毎日洋服を選ばなくて済むからです。制服でなくとも、恒常性のこだわりから毎日同じ洋服を着ることが多いのです。ただ、感覚に敏感なお子さんの場合、洋服の生地の肌触りやにおい、重さなどが合わないと嫌がります。中学校へ進学するとき、詰襟は首が絞めつけられるのが嫌で、わざわざブレザーの制服のある学校を選ぶこともあります。入園式や冠婚葬祭などじっとしていなければならない場面では、ポケットの中に本人の好きな手触りのいいものを入れて握らせていると落ち着くこともあります。園も小学校も担任の先生次第です。連絡帳しかり、苦手なものを無理しないことしかり、少しずつのスモールステップしかり、です。
2022年03月25日Get in touchの最初の活動が、「ウォームブルー・デー」、世界自閉症啓発デーのイベントだった発達ナビ牟田暁子編集長(以下――):発達ナビの読者には、東ちづるさんが理事長を務める一般社団法人Get ㏌ touch(ゲットインタッチ)の活動について、あらためてGet ㏌ touchはどういう団体なのかお話しいただいてもいいでしょうか。東ちづるさん(以下、東):Get ㏌ touchは、「誰も排除しないまぜこぜの社会」を目指すプロボノ団体です。主にアート、音楽、映像、舞台などのエンターテイメントを通じて活動しています。私たちは、まぜこぜ・多様な社会で暮らしているということを見える化・体験化していきます。メンバーはそれぞれ本業があり、さまざまな職種においてプロフェッショナルで、それぞれが培ってきたスキルやアイディア、人脈などを提供しています。特徴的なのはクリエイターやエンタメ業界に関わる人たちが多い、という点です。私個人は、30年前から社会的な活動をしていますが、ずっと何かモヤモヤしていたんですよね。それは、講演やシンポジウムに参加すると、同じような顔ぶれになりがちということ。社会課題への意識が高い人たちは集まっているけれど、本当は、こうした課題について無関心な人たちをどう巻き込むかを考えなくちゃいけないんじゃないの?と。――どんな活動がスタートだったんですか?東:最初は自閉スペクトラム症を啓発する活動からでした。4月2日の世界自閉症啓発デーのイベント「ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)」の企画ですね。この4月2日には、先進国ではさまざまな形で「青くなっている」と知ったとき、「私は20年以上活動しているのに知らなかった」ということがショックだったんですよね。それが10年前です。「青くなる」というのは、街のライトアップをはじめ、新聞の文字をブルーにしたり、アーティストや芸能人、ニュースキャスターが、その日はこぞってブルーの服を着たり、ブルーのものを身につけたりしてメディアに登場するということなんです。そして、ブルーにするのは自閉スペクトラム症の啓発であることをみんな分かってやっている。これって、日本でもできるんじゃない!?と思ったんです。それも楽しみながら。はじめてのウォームブルー・デーのプロジェクトは批判が殺到!?Upload By 発達ナビ編集部――それが10年前なんですね。東:それまでも、自閉症協会さんや厚生労働省の働き掛けで、全国各地で青くライトアップされたり、青を使ってアピールしたりといった動きはあったけれど、「世界自閉症啓発デー」だからということは、一般の人にはほぼ知られていないという状況でした。なぜならメディアになかなか取り上げられないから。メディアに取り上げられるにはどうすればいいの?と考えて、エンタメでやっていこう!となったわけです。第1回は、東京タワーでウォームブルー・デー(Warm Blue Day)と名づけて、全国各地の自閉スペクトラム症があるお子さんのご家族や当事者、そうではない人たちが「まぜこぜ」に集まるというイベントを開催しました。ショップのウィンドウをブルーにデコレイトしてもらったり、ブルーにペイントされたスーパーカーのパレードがあったり、コスプレイヤーがブルーの服を着て歩いたり。にぎやかな祭典となりましたが、その裏では、警察や厚生労働省、自閉症協会をはじめ、さまざまなところに、私たちは一から企画の説明をして、文字通り泥臭い地道な調整をして実現したイベントでもありました。…でもね、この初回は、叩かれたりもしたんです。――そうだったんですか?それは、なぜでしょうか。東:エンターテインメントでしたから。こうした啓発活動をするときには、真面目にやらなくてはならない、というムードが日本にはありますよね。楽しいことは後ろめたい、というような。だから、「お祭り騒ぎをして何が啓発だ!」というお叱りをたくさん受けました。当事者ご家族、支援団体さん、厚生労働省からも、それはもうかなり賛同を得られませんでした。ところが、です。実際に蓋を開けてみたら、ものすごくたくさんの人が集まりました。そして、自閉症協会さんはじめ、自閉スペクトラム症や発達障害に関するサイトが問い合わせでパンクしたのです。そこでようやく、「ああ、これも啓発なんだ」と理解していただけました。今振り返ると、本当によく闘ったなと思います。――そうだったんですね。今やGet ㏌ touchは、自閉スペクトラム症や発達障害の啓発活動ではすっかり頼りにされている存在ですよね。東:ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)に関しては、現在は東京都自閉症協会さんが都内の関連団体に呼びかけて集まった「東京タワー実行委員会(TT実行委員会)」に引き継いでいます。もはや私たちが始めたということも忘れられているくらいの盛り上がりになりました。これはGet ㏌ touchの成果の一つだと思っています。社会的に知ってもらうということが最初の目標でしたから。でも、4月2日には日本全国でさまざまな人たちが自発的に青い服を着たり、SNSで発信するのがあたりまえのように日常に溶け込んだ社会になったらいいなと思っています。たとえば、ハロウィンのようにね。障害がない人だけにマーケットが用意されているということへのモヤモヤUpload By 発達ナビ編集部――まぜこぜの社会を顕在化することを達成して、10年で解散することが目標ということでしたが、解散していないのはまだまだ課題があるということですね?東:新たなことがどんどん出てきますからね。でも、確実に社会はアップデートされています。その半面、分断はまた広がっているというか、生きづらさを抱える人が増えているのが現実です。私は、芸能界がグレードアップするといいなと思っています。「まぜこぜ一座」を立ち上げたときに、マイノリティの表現者たちのすごいスキルを目の当たりにしました。彼らの才能と努力は素晴らしい、けれども発揮する場が限られている。その才能を広く披露するチャンスがあらかじめ絶たれているという現実があります。最近気づいたことなんですが、私には、マイノリティの表現者たちに対する「後ろめたさ」もあるのだと思います。私は劇団出身でもないし、偉大な師匠について修行したわけでもない。そういうベースがなくても、芸能界で仕事をさせてもらってきたんですよね。もちろん、努力はしてきましたけどね。一方でマイノリティの表現者には、プロダクションもなく、活躍できるチャンスがまずない。私にはそれがあったんです、障害がないから。フラットにみんなにチャンスがある方が、私自身も気持ちよく仕事ができると思っています。ドラマや映画で当たり前のように共演したいんですよ。「まぜこぜ一座」のように、私が脚本を書いて演出するステージではなくて、オファーをいただいてドラマに出てみたら、私の上司がマメ山田さんで、部下が後藤ひとみさんで、同僚にかんばらけんたさんがいる、なんていう設定。すごく面白いと思う。海外では実際にそういう風にキャスティングされた映画やドラマがあって、いろいろな人たちが出演しています。海外のドラマを見ていると、普通にLGBTQの設定の役柄がある。主役ではなくて、障害やマイノリティを「克服する」といったテーマでもなくて。社員の一人だったり、近所の住人だったり、学校の生徒の一人とか、そういう方がいる日常が表現されているんです。それこそが多様性ですよね。日本でもそういうドラマや映画が増えたら、見る側の意識もかなり変わるはず。家族や友達、同僚の間でも、「そういえば、うちの学校・会社にはこういう人がいないよね、なんでだろう」とか、そういう話題が出てほしいと願っています。――当たり前だと思っていることについて、見直してみるといいんですよね。東:そうですね。見える人が見えない役を、聞こえる人が聞こえない役を演じるのもいいけれど、実際に聞こえない俳優もいるし、見えないタレントもいるので、チャンスはあった方がいいですよね。社内研修は、社会貢献じゃなくて社内貢献だった!Upload By 発達ナビ編集部――これから2022年度、やっていこうと思っていることは?東:やりたいことは、やっぱり解散ですよ、本当に。解散して、「まぜこぜ一座」も寄付による運営ではなく、ビジネスとして進めていけたら最高ですね。それから、今年はGet ㏌ touchとつながってくださっている企業さんでの、「まぜこぜの社会」についての社内研修に力を入れたいです。オンラインで研修ができるので、私とGet ㏌ touchのメンバーから、LGBTQの専門の人、自閉スペクトラム症に詳しい人などのチームで研修プログラムを展開します。実際に研修を行った企業さんからは、「社会貢献だと思っていたら、社内貢献だった」と言われるんです。家族に障害者がいる人が、実はこんなに社内にいたんだと気づかれたそうなんです。それまではあえてオープンにしていなかったんですね。うちの子は耳が聞こえないとか、発達障害のある子どもを育てているとか、親戚にダウン症のある子どもがいるんだということを。それが、社内研修をしてみると、多くの社員がそういう話をし始める。人事や取締役の方たちはびっくりしています。――そうしたことを言えないと、周りに遠慮したり、休みたくても休めなかったり、無理がたたって会社を辞めてしまうことだってありますよね。東:そうなんですよね。研修のディスカッションでそういう話がシェアできたら、その後は言いやすくなることもあります。だから社内貢献。そういう意味でも、発達ナビのユーザーさん、保護者のみなさんは、ものすごく頑張っていますよね。頑張り過ぎていない?ということが気になっています。グチを言ったり弱音を吐いたり、そういうことを発信できる場はあるので、そこでのびのびと心身を開放して、リフレッシュしてほしいと思います。――サードプレイスは大事です。肩書きとか立場とか関係なく弱音を吐けるところは必要です。そういう意味では、エンタメとしての劇場に、「まぜこぜ一座」の舞台がサードプレイスになりうるんじゃないかと。東:なると思います。劇場にはなかなか来られない方たちも多いので、ライブ配信したり、編集した映像をYouTubeで気軽に見られるようにしたりもしています。『月夜のからくりハウス渋谷の巻』4月2日には、#世界自閉症啓発デー#ブルーコーデをつけて発信をUpload By 発達ナビ編集部――今年の4月2日、ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)も、みんなで楽しんで発信していきたいですね!東:そうですね。まずは、4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーであると知ってもらうことが大事なので、青いものを見つけてハッシュタグをつけてSNSなどで発信していきましょう。Get in touchからは、#ブルーコーデ#世界自閉症啓発デー#WB_2022をつけて、青い服を着たり、青いアイテムを身につけたりした写真を、ぜひ投稿してほしいという提案をしています。――発達ナビ編集部でも盛り上げていきますね!文/関川香織撮影/鈴木江実子俳優。一般社団法人Get in touch 代表。広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから情報番組のコメンテーター、司会、講演、出版など幅広く活躍。プライベートでは骨髄バンクやドイツ平和村、障がい者アート等のボランティアを30年間続けている。2012年10月、アートや音楽、映像、舞台等を通じて、誰も排除しない、誰もが自分らしく生きられる“まぜこぜの社会”を目指す、一般社団法人「Get in touch」を設立し、代表として活動中。自身が企画・インタビュー・プロデュースの記録映画「私はワタシ~over the rainbow~」が順次上映。『東京2020 NIPPONフェスティバル』のひとつとして世界に配信されている「MAZEKOZEアイランドツアー」の総合構成・演出・総指揮を担当。「私はワタシ~over the rainbow~」「MAZEKOZEアイランドツアー」
2022年03月20日21歳になった息子の様子現在、自閉症(自閉スペクトラム症)のある息子は21歳になりました。以前は多かった腕を噛むなどの自傷や、パソコンのマウスを思い切り叩きつけるなど物に当たり散らすこともたまにありますが、そうしたことは減ってきました。Upload By 立石美津子自分自身を傷つけるという行為は、形を変えながらも今も続いているのではないかと感じています。幼児、小学生のころの自傷身体への自傷が最も激しかったのは幼児期です。息子は6歳になるまで言葉が出なかったので、思い通りにならないとき自分の身体を傷つけるしか、方法を知らなかったのではないかと思います。Upload By 立石美津子例えば・自分の頭を叩く・腕を思い切り噛む・(普段は適切な量を口に入れることができるのにもかかわらず)入りきらない量の食べ物を口に押し込む・壁に頭を打ちつける・顔を叩くただ、「これ以上やると痛いぞ」のギリギリのところまでのラインでやっているように見えました。ですから、大けがをするようなことはありませんでした。言葉で自分を傷つけている?言葉がでるようになってからは、自分の身体を傷つけるだけでなく、言葉によって自分を傷つけるようになってきました。例えば、気持ちと反対のことを叫び、そして癇癪をおこすのです。「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。(←どこに帰る?)「入院する」(←入院したくない)「注射する」(←注射したくない)「家出してやる」(←家出したくない)「死んでやる」(←死にたくない)「9時58分に寝る!」(←毎日必ず10時に寝るこだわりがあるのに、僅かに時間をずらして叫ぶ)心にもない言葉を言うときの対応法これらの言葉は、実は息子の心にもないこと、望んでいないことだろうとわかるので、息子の言った言葉をオウム返ししながら、共感の形をとるようにしています。息子「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。私「もう、帰りたくなっちゃたんだね」息子「入院する」私「入院したくなっちゃったんだね」息子「注射する」私「注射したくなっちゃったんだね」息子「家出してやる」私「家出したくなっちゃったんだね」息子「死んでやる」私「死にたい気持ちになっちゃったんだね」息子「9時58分に寝る!」私「9時58分に寝たくなったんだね」火に油を注がないようにもし、「家出する!」と言ったとき、「気をつけていってらっしゃい」と家出を推奨するような言葉をかけたとしたら、特性のある息子は字面通り受け止めて、出て行ってしまうかもしれません。ですので、そのような言い方はしないようにしています。Upload By 立石美津子また、以前、次のように言ったことがあるのですが…「なんでそんなこと言うの!」「いい加減にしなさい!」これらは、火に油を注ぐ結果になってしまい、息子は激しい癇癪を起こしてしまいました。切り替えの手段を探す私は、身体への自傷も言葉での自傷も、自分の混乱した心の安定を図るためにやっているような気がしています。そんなとき親が止めようとすればするほど、混乱して自傷が続くことがあります。先に述べたように、癇癪をおこし自傷までするときは、共感する言葉をかけるのも一つの方法ではありますが、状況によっては、その言葉がけ自体が刺激になることもあるかもしれません。そんなときは時間経過によりクールダウンするのを待つしか方法がありません。わが家は共感の言葉でも息子が落ち着かないときは、黙って見守りながら、ぬるめの湯加減のお風呂を用意し、入浴を促します。息子の場合は、風呂につかり気分が変わると、気持ちの切り替えがしやすくなるようです。お子さんによって、切り替えられるきっかけはそれぞれだと思います。それを一緒に探してあげるのも大切なことだと感じています。執筆:立石美津子(監修者・鈴木先生より)思い通りにならないときの癇癪は自閉スペクトラム症の易刺激性からきていると考えられます。マンションの壁を蹴って穴をあけたり、ドアを壊したりするケースも多いです。自傷や他傷は抗精神病薬で調整することも可能です。爪をかむお子さんには、「爪はばい菌がたくさんついていてきたないよ」と説明したりしますが、それでも難しい場合は、逆に透明なマニュキアを塗ってきれいにして「噛まないでおきたい」と思わせるようにしてみるのも一つの手です。いい景色を見て散歩したり、何か運動したり、音楽を聴いたりするのもいいですね。また、リズムが乱れると癇癪をおこしやすくなるので、サーカディアンリズム(睡眠覚醒リズム)を規則的にすることも重要です。
2022年03月01日手伝っても着替えが難しかった理由は…長男けんと(6歳)は、自閉スペクトラム症があります。けんとが4歳になる少し前。自分で着替えをする気がまったくなく、いつもママが着替えをしていました。ズボンをはくのは大丈夫だったのですが、問題は上着!腕を上にあげる「バンザイポーズ」ができないので、脱がすのも難しいし、自分で着替えられる気もしていませんでした。発達支援施設でお友達が上手に自分で上着を着替えている姿にビックリ!思わず「どうやって脱ぐの?」とママ友に聞いたら「腕をクロスして…」と教えてくれたのでチャレンジしてみました…が、案の定うちの子はできませんでした。Upload By ゆきみ年中から地域のこども園に通うことになっていたので、自分で上着が脱げないと…と思い、少しずつ練習。なんとか、転園前に脱げるようになって安心しました。いつかいろいろなタイプの洋服を着れるように…と、発達支援施設のバザーでゲットした手芸のボタンをとめたり、はめたりするオモチャで遊びながら指先を使うのを意識しました。Upload By ゆきみ制服のボタンに苦戦!細工をしてみた年中で転園したこども園には制服がありました。その制服はボタンがとてもかたいため、指先の力が弱いけんとにはとても難しく、首元のボタンは見えない場所についていたので、更に難易度アップ。ネットで調べてボタンに細工をして、少しの力でとめられるようにしてみました。そして、毎日1回5分程度、着替えの練習をしました。けんとは「自分で着たい!」と思ったようで、誘うと嫌がることはなく練習をしてくれました。最初は1番下の見やすいボタンを1つはめるところから。親がサポートして、「できたね」をひたすら続けました。できるようになったら、下から2番目のボタンを追加。これを地道にくり返し、半年かかって全部のボタンをはめられるようになりました。途中、あまりの難しさに親子で何度か心が折れそうになりました。普段「悔しい」感情を出さない子なのですが、1度だけ、悔しくて号泣。今でもそのときの泣き顔を忘れられません。初めて全部を自分ではめられるようになったときは、家族みんなで拍手喝采の大感動に包まれました。Upload By ゆきみ前、後ろを間違えるのは日常茶飯事着替えは年長になった今でも大の苦手です。そもそも洋服がどのような状態なのかを見ないで着るので、前後を間違えて着てしまうのは日常茶飯事。たまに表裏が違うこともあります。さらに…上着、ズボン、下着、パンツ、全ての前後を間違えているときがあり、裸の状態から着替えなおしになるときもあるほどです。上手くいかなくて、けんともイライラがはじまります。園の制服はポケットが前についているので「ポケットがついている方が前だよ」と教えたら、私服のジーパンもポケットがついている後ろ側を前にしてはいていました。着替えなおそうとすると「ポケットがついてるからこっちが前!」と…。これが、こだわりになってしまい、号泣。今は地道に、洋服ごとに前と後ろを教えています(それでも間違えますが…)。Upload By ゆきみUpload By ゆきみ園に着ていく上着は予め前側に名札をつけて、着る前に「名札が前よ」と説明しても…やはり間違えてしまいます。来年度の小学校入学に向けて、そして将来できるようになるのか…心配で悩んでいる最中です。着替えで怒って…自己嫌悪さらに悩まされているのが…着替えている最中に遊び始めたり、ボーっとしてしまったりして、全然着替えが進まないこと。園のバスの時間もあるので、毎朝ママはイライラ!怒ってしまうことも多々…。そのたびに自己嫌悪に陥ってしまいます。そこでやり始めたのは…、タイマーを使って「4分以内に着替えましょうゲーム」や、「みんなで競争!誰が1番に着替えられるかな?ゲーム」を開催すること(ママと次男も参加)。ママのよーいドンのかけ声で、子どもたちはテンション大上昇!「いそげー」と笑いながらも真剣に着替えをしてくれます。急いで着替えるので前後を間違えてしまうことも多いのですが、楽しいようでイライラすることは少なくなりました。Upload By ゆきみ「ママに余裕がないとき」にイライラしてしまうことが多いと思うので、なるべく「余裕をもって行動する」を心掛けていきたいな…と思っています。実際はなかなか難しいですが…。将来、親なきあとのことを考えて、着替え問題が少しでも解決できたらいいなと願っています。執筆/ゆきみ(監修:鈴木先生より)着替えている最中に遊び始めたりボーっとしてしまったりということは、ADHDの特性である不注意からくることが多いです。いっぺんに全部はできないので、少しでもできたことから褒めてあげてください。ボタンも大きめのものから始めて徐々に小さくしていくといいでしょう。ボタンやヒモが難しい場合はマジックテープという使い方もありです。洋服が着られなかったり、靴を左右逆に履いたり、ボタンができなかったりと、衣食住の「衣」に関する問題は多く聞かれます。一つのヒントを以下に示します。無理をせずできることからやっていきましょう。(引用)くふう3さゆうのくべつをつける“みぎ”と“ひだり”をはっきりさせたら しっぱいせずに着替えることができました。Upload By ゆきみ
2022年02月25日マンガで自閉症スペクトラム(ASD)を学ぼう!マンガで分かりやすく発達障害が学べる『マンガで学ぶ発達障害』シリーズ。自閉スペクトラム症(ASD)について分かりやすく解説した3つのコラムをまとめてご紹介します。主に社会性と対人関係、コミュニケーションの困難、行動や興味の偏りなどの特徴があると言われている自閉スペクトラム症。その特徴の詳しい説明や、自閉スペクトラム症の診断や治療方法、困りごとを解消するために行いたい療育について、強いこだわりがある場合が多いASDのある子への接し方など、公認心理師の井上先生の解説とともに詳しく解説します。自閉スペクトラム症(ASD)は先天的な発達障害の一つで、・社会性と対人関係・コミュニケーションの困難・行動や興味の偏りの2つの特徴があると言われています。このコラムでは自閉スペクトラム症の特徴や原因について解説します。自閉スペクトラム症の医学的な治療の話や療育方法を解説します。自閉スペクトラム症の特性に合わせてトレーニングをしたり、環境調整をすることで、困りごとを改善したり、得意なことを伸ばしたりできるのが療育です。そんな療育の原則『SPELL』についても詳しく説明!自閉スペクトラム症のある子どもは、強いこだわりや特性などを持つことが多いです。どのように接すればいいのか、9つのポイントとともに解説します。まとめ自閉スペクトラム症のある子は、ものしりだけど、興味の対象が独特だったり、知識に偏りがあることが多く、一人で遊ぶのが好きでお友達に関心をしめさない、初めてのことが苦手で不安にもなりやすいです。ですが、そのユニークな感性を尊重し、接することで、唯一無二の個性となっていきます。まずは自閉スペクトラム症のある子どもそれぞれが抱える苦手なこと、困っていることを知って、その世界を一緒に楽しむことが成長や生きやすさにつながっていくはずです。
2022年01月23日成長と共にオムツ交換スペースを利用しずらくなってくる自閉スペクトラム症のあるPが、3歳のころの話です。外出先でオムツ交換スペースを利用したくても、「ベビールーム」「赤ちゃん休憩室」と書かれている場合が多く、3歳になり身長も大きくなったもう赤ちゃんではないPが、赤ちゃんや小さな子たちと同じスペースでオムツを交換するという行為が気になるようになりました。3歳になったPは自分より小さな子たちに「お兄ちゃんまだオムツなの?」と言われたり、不思議な目で見られたりしてしまうこともありました。Pは自分の気持ちを言葉にすることがまだまだ難しく、3歳を過ぎてもオムツ交換スペースへ行くと言うことをP自身がどのように考えているのかまでは分かりませんでした。実際本人は全く気にもしていなかったかもしれません。それでもPの立場になって考えて想像してみると、やはりもう赤ちゃんではないPがオムツ交換スペースを利用するのは本人にとっても恥ずかしいことなんじゃないかな?と考えるようになりました。Upload By みんオムツ交換スペースの次に利用し始めた場所は?それからはなるべく車の中でオムツを交換するようにしていましたが、すぐに駐車場へは戻れない場合や、身長が高くなってからは車の中では狭くて交換しにくい場合もあり、なかなか不便なことも多かったです。そこで新たに利用するようになったのは「多目的的トイレ」です。多目的トイレにはオムツ交換のしやすいベッドもあったりするので、多目的トイレがある場合はそこに入るようになりました。それまで多目的トイレは「本当に必要な人を待たせてしまうことにつながる」のでなるべく利用しないようにしていました。でもPのオムツが外れてトイレを利用できるようになってからも、変わらず多目的トイレを利用させていただいています。Pが5歳を過ぎたあたりからは、夫や長男と男子トイレに一緒に行けるようになりました。ですが、私と2人だけで出かけたときなど、一緒に女子トイレにつれていくのはPと同じくらいの歳の女の子への配慮を考えるとやはり難しいです。でもPをトイレの外で待たせて、私だけが女子トイレへ入ることは絶対にできません。逆に、Pを一人で男子トイレに行かせることもまだまだ難しく、外出先で私もPも両方が安心してトイレを利用するためには多目的トイレが1番使いやすいのです。Upload By みん利用しずらかった多目的的トイレを、私たちが利用するためには…今まで多目的トイレは、車椅子の人、オストメイトが必要な人の為のトイレだと思っていたので、なるべく利用しないようにしていましたが、私たちのような親子にとっても外出の際にはとても大切で必要な場所となりました。今ではどこにでもあって当たり前のようになってきた多目的トイレですが、昔は限られた場所にしかなく、トイレ問題が壁になり外出したい場所へ自由に行くことのできない障害のある方や困った方も多かったと思います。しかし、車椅子、お年寄り、赤ちゃん連れの人など見た目で分かりやすい場合は堂々と利用ができても、私たち親子のように一見見た目では何に困っていて多目的トイレを使うのかが分からない場合は、「必要ないのに使っている人がいる」と誤解されてしまう場合もあります。そんな誤解を避けるために、外出するときには普段からPにヘルプマークをつけるようにしています。(※ヘルプマークとは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです。)ヘルプマークで、外見だけでは分からない障害などがあることを知らせ、周りの人へ多目的トイレの使用を理解してもらうことも必要だと感じています。そして同時に、一見普通の親子連れに見えるかもしれませんが、そのような理由があり、多目的トイレを使う場合もあることを少しでも覚えておいてもらえると嬉しいです。参考:東京都福祉保健局 ヘルプマークUpload By みん執筆/みん(監修:三木先生より)これは難しい問題なのですが、「本当に必要な人」にP君は含まれているように思います。見た目では何が困るのか、ご本人以外には分からないこともあります。ヘルプマークをつけるのは周りの理解を得るために良い方法の一つに思えますが、そういったものがなくても「きっと何かあるんだろうな」とお互いに思える社会になると良いですね。
2022年01月09日