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\発達障害の子が、不安なく・よりよく育つためにできること/発達障害や親子関係、教育、地域支援など、子どもに関わるさまざまな分野で活躍するスペシャリストが集結!立命館大学教授で発達障害・知的障害の方への支援について研究している川﨑 聡大先生。川﨑先生監修・著の『発達障害の子が羽ばたくチカラ 気になる子どもの育ちかた』(KADOKAWA)では、子どもたちの育ちを支えるために、家庭・学校・地域社会がどのように環境をととのえていけばよいかを、わかりやすく解説しています。今回はその中から、療育の目的と、わが子の発達障害に気づくきっかけについて、ご紹介します。書籍『発達障害の子が羽ばたくチカラ 気になる子どもの育ちかた』療育は万能か 最初の向き合い方と考え方「療育」の目的を再確認する※画像はイメージです特に生活を送るうえでの困難さが診断の基準になっている知的障害や発達障害に関して、療育は障害や特性を「治す」ことが目的ではありません。風邪やケガではありませんから。こういうと「先生、治らないからですか?」と質問されることがありますが、それも正確ではありません。療育は発達障害特性によって生じる生活上の困難さを様々な手段を用いて少しでも楽にすることが目的です。療育は発達特性を「消して」典型発達にするためではなく、スキルを増やしていくのも目的ではなく手段! にすぎません。「発達障害特性を治す」「典型発達に近づける」といった考え方と、「できることが一つひとつ増えていった結果、またその人を取り巻く環境が変わっていった結果、典型発達の人と同様に楽しく生活を送ることができる」という考え方は同じではありません。言うまでもなく、療育は後者の第一歩です。前者の「治す」にとらわれてしまうと、本人と養育者ばかりが重荷を背負うことになりかねません。気付くきっかけ―乳幼児健診の本来の意義※画像はイメージです発達障害や知的障害に気付く(あるいは気付かされる)きっかけになるのが、「乳幼児健診」です。地方自治体(市区町村)によって流れは若干異なりますが、一般的には1歳6か月健診や3歳児健診の集団健診から精査の過程を経て、保健師やケースワーカーの定期フォローがあり、臨床心理士やPT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)といったリハビリ職が早い段階から介在する地域もあります。知的な遅れや行動面の課題が著しい場合は1歳半健診で、ASD特性が明確な児童も3歳児健診でその多くが見出される傾向にあります。乳幼児健診を含めた母子保健事業の本来の目的は保護者と子どもが安心して日常生活を送ることですので、心配もあると思いますが養育者としては「この子と私の生活を少しでもよくするための提案やアドバイスを聞くことのできる場所」と考えて、積極的に利用してください。まず具体的な生活上の困ることや、子どもの困った行動、将来の不安などを、担当の方にしっかりと話しましょう。まず話すことで自分の頭の中を整理することもできます。健診結果と進路をリンクさせたような都市伝説的な噂が流れますが、これは都市伝説以前の「デマ」です。=====この続きは、是非書籍でご覧ください。発達障害の子が羽ばたくチカラ 気になる子どもの育ちかた詳しくみる※本記事は、『発達障害の子が羽ばたくチカラ 気になる子どもの育ちかた』(監修・著:川﨑 聡大、著:川上 康則、神谷 哲司、三富 貴子、和田 一郎、石田 賀奈子/KADOKAWA)より抜粋・再編集して作成しました。
2025年07月09日早くも大反響!「マンガ発達障害の子どもと私たち」新章・りん編スタート。その他、訪問看護、兄弟ゲンカ、放デイ探し、児童精神科受診など6月に公開したエピソードをチェック!早くも大反響!「マンガ発達障害の子どもと私たち」新章りん編がスタート!娘さんの発達障害について食い違う夫婦の意見は……。その他、完結を迎えたアキラ編の一気読みや訪問看護、それぞれ特性の違う兄弟ゲンカの対応方法、発達障害姉弟の放デイ探し、児童精神科受診への迷いなど6月もさまざまなエピソードを公開しました。発達ナビユーザーから寄せられた体験談をもとにしたセミフィクションマンガ「発達障害の子どもと私たち」。新章「りん編」がスタート!子どもの幸せを願うのは同じなのに、子どもの発達や障害への対応を巡って、夫婦の意見が食い違う……そんなこともあるのではないでしょうか。支援が必要と感じる母と、成長を信じる父——。価値観や期待が異なることで、すれ違いが生まれてしまい……。小学6年生のりんさんは、3歳の時に中度知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。診断を受けた際、医師から「療育」を勧められた妻は支援に繋がろうとするのですが、夫は理解をしてくれませんでした。なんとか無事に支援に繋がることができ、療育を始めたばかりの頃は泣いてばかりのりんさんでしたが、だんだんと児童発達支援にも慣れ、少しずつできることが増えていきます。しかし、夫は依然としてりんさんの障害を分かってくれず……。先日完結を迎えた「発達障害の子どもと私たち」アキラ編。発達障害の兆候を初めての子育てということもありことごとくスルーしていたM子さん。周り人からさまざまな支援を受け、アキラくんが5歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されるまでの道のりをまとめて振り返ります。特別支援学校高等部に通う娘さんは、未就学の頃から自宅で訪問PT(理学療法)を受けています。娘さんは歩行が遅かったので、1歳半頃から自治体の発達センターでPTを受け始めました。歩行器やバギーも作ったほうがいいからと、2歳でとある先天疾患の診断がつく前から、理学療法士さんに身体障害の手帳取得をすすめられ、無事取得し、必要な補装具なども作成ができました。しかし、4歳になる年度からは「PTではなくOTをうけては?」とすすめられます。引き続きPTを受けたい……そんな時に知ったのが「訪問看護」でした。兄弟ゲンカが止まらない!性格が正反対なASD(自閉スペクトラム症)の長男とADHD(注意欠如多動症)傾向の次男。几帳面な兄の「指摘」と、活発な弟の「言葉の反撃」。お互いの個性や特性で衝突することが多く、母親のみちるさんも困惑の日々を送ります。感情の波をどう乗り越え、互いを理解させるのか?親の葛藤と試行錯誤の結果は……。姉弟ともにASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)があるけれど、特性がまったく違う……!?姉弟の子育てに奮闘する親が辿り着いた、放デイ利用のリアル体験談です。子どもたちそれぞれに最適な放デイを探した結果、静かな環境で夢を見つけた娘さん、活動型で成長した息子さん。合わない場所は変える勇気も必要で……放デイ選びの秘訣と子どもたちの輝く変化、そして親自身が救われる道のりとは?おしゃべり好きで人なつっこいですが、不安感が強く、聴覚過敏・触覚過敏がある小学校2年生の息子さん。小学校1年生の冬、「この程度で病院にかかるなんて、もしかして大げさ?」と思いながらも児童精神科を初めて受診しました。しかし、いざ医師に診察をしてもらうと、想像以上に支離滅裂な息子さんの反応に驚いてしまいます。医師が分析した息子さんの発達課題。そして診断の結果は……?ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』は皆さんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児している皆さんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。皆さんのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年07月05日障害受容をしない夫と支援に繋がろうと奔走する妻。そして娘は小学校へ入学し……娘の障害について理解してくれない夫。家族で話し合いができない中、妻は一人頑張って、児童発達支援へ繋がります。最初は泣いてばかりだったりんさんも、笑顔を見せるようになってホッとしたのでした。そして就学前に受けた知能検査で、中度から軽度知的障害(知的発達症)と診断されたりんさんは、自閉症・情緒障害特別支援学級へ入学することになったのですが……。以下から続きをお楽しみください。特別支援学級でのりんUpload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談「子どもの好きを伸ばしたい」Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談娘の障害を理解しない夫が中学受験を提案。本人も乗り気になり自閉症・情緒障害特別支援学級に入学、放課後等デイサービスにも通い、少しずつ成長していくりんさん。そんな中、夫はりんさんの「生き物好き」を伸ばしてあげたいと、私立中学校の生物部を調べて見学を提案、妻は困惑します。そしてりんさん本人の希望で予想外の中学受験が始まることになりました。次回「自閉症娘の中学受験で家庭内はギグシャク…「障害のレッテルを貼っているのは君」と夫から責められ【マンガ発達障害の子どもと私たち/りん編4話】」は7月10日(木)に公開予定です。是非ご覧ください。イラスト/志士ノまる(監修:井上先生より)自閉症・情緒特別支援学級に入級し、りんさん自身の障害特性に合わせた支援によって学校生活も順調にスタートしました。環境が整い行動面の問題が落ち着くことにより、学習も安定した成長が見られています。学習面では、中学年以降は抽象的な学習が増え、特定の教科や単元で困難を感じる子どもも出てきますが、りんさんも好きなことや得意なことに関する動機付けを活かしながら全体的な学習を頑張っていたのだと思います。苦手分野の克服だけに力を注ぐのではなく、興味が高い分野を中心に学びの楽しさを重視して教えていくことはこの時期に大切なことだと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年07月03日特別支援学校では、入学時点で卒業後の進路を見据え4つのコースがあった現在24歳になる知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子は、小学校1年生から特別支援学校に通い、小学校3年生から中学3年生までは特別支援学級で学びました。中学卒業後は特別支援学校高等部に進学し、小学校時代の友人と再会してクラスメイトとなったことを、とても喜んでいました。息子が通っていた特別支援学校高等部では、入学時点で入学相談を元に卒業後の進路を見据え、以下の4つの類型に分かれていました。A類型:生活介護を必要とする重度の障害のある生徒のクラスB類型:就労継続支B型作業所への進路を想定したクラスC類型:就労移行支援事業所、就労継続支援A型、B型への進路を想定したクラスD類型:障害者雇用枠での企業就労を目指すクラスそして、1年生時、A、B類型は園芸班・工芸班・ホームサービス班を経験、C、D類型は接客班、食品加工班、清掃班、事務班、施設管理班を経験し、2年生になると経験した班から2つの班に選び、3年生でさらにその中から1つに絞る、という流れでした。このように、在籍クラスを見るだけで、その生徒の進路がほかの保護者にも分かる状態です。入学するお子さんの障害の程度がさまざまであるため、このようにクラスが分かれているのでしょう。息子はC類型「就労移行支援事業所、就労継続支援A型・B型への進路を想定したクラス」に所属し、2年生の時は事務班・施設管理班を経験、将来はパソコンを使う仕事につきたいとのことで3年生で事務班に入りました。※学校や地域によって類型の名称・内容・進路想定は異なります。詳細は各学校にご確認ください。息子の在籍していたクラスは、企業就労が難しいとされる生徒が対象でした。正直なところ、「本当に息子は働けるようになるのだろうか」「卒業後、自宅で過ごすことになってしまうのではないか」という不安が日々募っていました。2年生になり、クラス別の保護者会がありました。その時担任の先生から、企業以外の見学については保護者が直接B型や就労移行支援事業所に連絡を取り、自由に見学に行って良いとの説明がありました。しかし、その時は、どういうものなのか、どこをどう選べばよいのか、何を基準に判断すればよいのか、まったく見当もつかない状態でした。就労移行支援との出合い2年生になると保護者会以外で、進路についての説明会が複数回始まりました。「年金の話」「区分認定の話」「進路の話」などテーマ別に保護者を招集して詳しく説明してくれるのです。その中で、就労移行支援という制度についてきちんと知ることができました。「就労移行支援」という言葉を初めて聞いた時は、正直なところ「また新しい制度の名前か」という程度の印象でした。福祉の世界には似たような名前の制度がたくさんあり、その違いがよく分からなかったのです。ですが、息子が利用している相談支援事業所から詳しい説明を受け、いくつか就労移行支援事業所も教えてもらいました。そして、自分でも調べていくうちに、就労移行支援制度の基本的な仕組みが分かってきました。就労移行支援制度とは、障害がある人の就労をサポートする障害福祉サービスです。Upload By 立石美津子利用対象(1)身体障害・知的障害(知的発達症)・精神障害・発達障害や難病の診断のある人(2)企業等での就労を希望する人で、就労が可能と見込まれる人(3)原則65歳未満の人(状況によっては65歳以上でも利用できる場合もあります)利用期間原則2年間(最大12か月延長可能)サービス内容1. 職業訓練(例)・ビジネスマナー、挨拶、身だしなみなどのトレーニング・自己分析を通しての適正把握・職場でのコミュニケーションのトレーニング・パソコントレーニング(基本操作やOfficeソフトのスキル向上など)・個人の適性に合わせた仕事のスキル向上・職場見学・実習・レクリエーションを通してほかの利用者との交流など2. 適性に合った職場探し就労移行支援事業所が直接、職業紹介を行うことは制度上できません。そのため、事業所内ではスタッフとの面談やプログラムを通して、利用者の希望条件、適性の把握、合理的配慮の整理などを行うとともに、ハローワークなどと連携して適性に合った職場探しをサポートしています。3. 就職活動のサポート求人についての相談対応や、応募書類の書き方、企業研究の仕方、面接での受け答えなどのプログラムを提供しています。ほかにも、応募書類の添削や模擬面接の実施などを通して就職活動に関するさまざまなサポートを実施しています。4. 職場定着のためのサポート就労移行支援事業では、原則として就職後6か月間の職場定着支援を行います。企業や就労した本人と定期的に面談し、問題が起きた時に間に入って調整するなどのサポートを行います。また、6か月経過後は就労定着支援と別途契約して最長3年間の定着支援を受けることもできます。利用料金前年度の世帯収入に応じて決まります。Upload By 立石美津子月額負担上限額があるため、利用回数に関係なく、設定された上限額を超える負担は生じません。この場合の世帯収入については、利用者本人と配偶者の所得を合算したものが対象となり、親の収入は計算に含まれません。ただし、サービス利用に伴う料金設定は各市区町村によって異なるため、上記の金額はあくまで目安となります。ここから私は10か所程就労移行支援事業所を見学するのですが、それについてはあとに続く連載の中で詳しくお話しさせていただきます。今ひとつ触れるとしたら、実際に見たサポート内容の充実ぶりです。単に作業をするだけではなく、パソコンスキルの習得から、面接練習、職場でのコミュニケーション方法まで、きめ細かい支援が行われていて本当に驚いたのを覚えています。「息子も働けるのかもしれない」と思った瞬間でした。まとめ情報は特別支援学校で得ることができた私の知人の話ですが、知的障害(知的発達症)があるお子さんが普通科高校に進学したケース情報があります。その方に息子が就労移行支援事業所に通うことを伝えた際、「何それ、知らない」と言われました。地域によって状況はさまざまだと思いますが、義務教育ではない特別支援学校高等部は、ある意味で職業訓練の場でもあると感じました。卒業後も社会で生活できるよう、B型、生活介護、就労移行支援事業所、企業など、学校側が手厚くサポートしてくれました。実際、学校の先生は何度も息子が希望する進路先に足を運んでくれました。そのため、特別支援学校高等部に進学したことは良い選択だったと思います。そして、知った就労移行支援制度。知る前は、「息子の将来はどうなるのだろう」という漠然とした不安ばかりでした。しかし、この制度を知ることで、「息子にも働く可能性があるのかもしれない」「しっかりとしたサポートがあるなら挑戦してみよう」と前向きに考えられるようになりました。次回は「障害者雇用か就労移行支援か」わが家が就労移行支援を選んだ決め手についてお話しさせていただきます。執筆/立石美津子(監修:渡部先生より)立石さんの就労移行支援に関するコラム、息子さんの実際の経験を元にした、とても参考になる内容でした。サービス内容の4で、「6か月経過後は就労定着支援と別途契約」とあります。この就労定着支援は、それまで利用していた就労移行支援事業所が継続して行う場合と、別な事業所が行う場合があります。障害者本人の意向や、事業所側の状況などによって変わってきますので、就労定着支援を希望する場合は、まずはそれまで利用した事業所に相談してみてください。就労に関する障害福祉サービスは種類も多く、仕組みも複雑なので、息子さんの希望や特性を知る特別支援学校が、しっかり支援してくださったというのは、とても良かったですね。6回連載とのことなので、今後も楽しみにしています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月30日5歳児健診とは?何のために行う?この時期の健診が重要な理由5歳児健診は、主に就学前の発達上の課題などの早期発見と支援につなげることを目的としています。また、生活習慣の指導も目的に含まれています。5歳児は言語理解力や社会性が発達するとともに、課題が顕在化しやすい時期でもあるため、この時期に健診を行うことでお子さんの特性を早期に把握し、適切な支援につなげやすいと考えられています。実際に5歳児健診により不登校発生数が減少したという調査もあります。5歳児健診は3歳児健診などとは異なり実施は任意なので、実施していない自治体もあります。ただ、こども家庭庁では令和10年度をめどに全国展開を目指していて、自治体への助成などを強化しています。参考:5歳児健診ポータル保護者の方へ|こども家庭庁参考:乳幼児健診について|こども家庭庁参考:こどもまんなか実行計画2024|こども家庭庁発達が気になるお子さんにとっての5歳児健診は、3歳児健診では気づきにくく、就学前には気づいて対応したい発達上の課題を発見でき、早期の支援につなげるなど就学に向けて準備できるという意味合いがあります。5歳になると言語の発達が進んでいたり、園などで集団活動する機会が増えたりと3歳の頃とは状況が変わっており、新たな課題が顕在化することも多いと言われています。また、家庭内でも睡眠リズムが整わないなどの生活習慣やテレビやタブレットの動画視聴などメディアの利用でも気になる点が生じているかもしれません。5歳児健診はそのことに気づく機会になるとともに、家や集団生活で日ごろ気になっていることを専門家に相談して保護者の不安を解消する機会ともなります。また、5歳児健診は小学校に入学する前の就学時健診とも内容や目的が異なります。5歳児健診は就学時健診の約1年前に実施されるため、何か課題があった場合でも小学校入学前に医療や福祉などの支援につなげやすい点が特徴です。それとともに、発達に課題がある場合はお子さんの通っている園や入学予定の小学校と情報共有も行います。対して就学児健診では、内科や眼科、歯科の健診や教師による面談で学校生活を送る上で課題となる疾患を早期に発見することが主な目的となっています。歳児健診マニュアル.pdf参考:5歳児健康診査マニュアル|令和3年度~5年度 こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業5歳児健診では何をするの?具体的な内容をチェック5歳児健診は自治体によって集団で行う場合と、小児科のクリニックなどで個別に行う場合があります。保護者やお子さんとの問診や計測などを通してさまざまな項目を確認していきます。事前に問診表を提出し、身体計測、診察、保健指導、相談などを行う、というのが大まかな流れです。具体的な内容は以下のようになります。身体計測:身長、体重などを測定し、成長の進み具合を確認します目や耳の検査:問診や診察を通して疾患の可能性などを確認します精神・神経発達の確認:会話やしりとりなどを行い、知的能力や言語能力、社会性などを確認します運動機能の確認:片足立ちなどを行い、粗大運動・微細運動の発達などを確認します生活習慣の確認:食事、睡眠、排せつ、歯磨き、メディアの利用状況などの生活習慣を確認しますその他:必要に応じて医師、保健師、管理栄養士などによる保健指導や心理相談を実施します以上のような内容で行われ、3歳児健診時点の結果なども踏まえたうえで、発達の遅れなどを判断していきます。※自治体によって健診の内容には違いがあります5歳児健診では、運動・言葉・社会性・認知など、子どもの発達状況を確認するために、さまざまな項目が実施されます。具体的には片足立ちやしりとり、じゃんけんなどを通して一定の基準に照らして判断していきます。片足立ちは運動機能に遅れがないかをチェックするために行います。具体的には、片足立ちで左右とも5秒以上できるか、著しい左右差がないかを確認します。運動機能のチェックにはほかにもボタンのかけはずしや図形の描写などがあります。しりとりでは知的能力、ルールの理解、対人コミュニケーション能力などの精神発達をチェックします。5歳児は目安として3往復以上のしりとりができるとされているため、うまくできない場合は発達の遅れや難聴などの可能性が考えられます。じゃんけんも勝ち負けやリズムに乗ってできるかによって、発達の遅れがないか確認します。ほかにも会話を通しての言語理解、家庭や保育園での様子のヒアリングなどを通してお子さんの発達状況を確認していき、気になる様子があれば専門機関への相談などへつなげていきます。歳児健診マニュアル.pdf参考:5歳児健康診査マニュアル|令和3年度~5年度 こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業参考:田中 駿, 牛山 道雄, 清水 里美, 郷間 英世 著「しりとりを通してみた幼児の言語発達」LD研究 33巻 (2024年)2号 p. 187-1955歳児健診で発見される発達障害のサインは?発達が気になる時の相談先お子さんに気になる様子があっても、それが発達障害に関係しているのか判断が難しいと思います。ここでは、5歳頃に見られる発達障害のサインを紹介します。多く当てはまったからといって、必ずしも発達障害があるとは限りませんが、相談する際の参考にしてみてください。Upload By 発達障害のキホン参考:青森県子どもの発達支援ガイドブック|青森県参考:指導・支援|発達障害教育推進センターお子さんの発達で気になることがある場合は、専門機関に相談することでアドバイスや適切な支援などを教えてもらえることがあります。ここでは5歳児のお子さんの発達について相談できる窓口を紹介します。【お子さんの発達に関して相談できる窓口】自治体の発達相談窓口:自治体の窓口や児童相談所などで相談対応や支援機関などの紹介を受けることができますかかりつけの小児科医:専門的なアドバイスや医療機関などの紹介を受けることができます精神保健福祉センター:発達障害に関する相談や、医療機関の紹介などを受けることができます発達障害者支援センター:発達障害に関する専門機関でアドバイスや支援、情報提供などを受けることができます児童発達支援センター:児童発達支援や放課後等デイサービスなどの利用や情報提供を受けることができます場所によって予約の有無や対面、電話などの相談方法も異なります。まずは相談しやすいと感じる窓口に問い合わせてみるといいでしょう。参考:1.成長、発達で気になることを相談したいとき|独立行政法人 福祉医療機構 WAMNET【専門家に聞く】5歳児健診にまつわるギモンを分かりやすく解説!Q:幼稚園年中の男の子です。家ではあまり困りを感じていないのですが、幼稚園では落ち着きがなく、医療機関を受診するまではいかないけれど今後の発達に少し不安があります。就学時健診だけではなく、5歳児健診も受けたほうがいいのでしょうか?A:就学時健診だと就学まで1年未満のため、そこで何か対応を検討しても、すぐに支援を受けられない可能性があります。小学校に入学後、スムーズな集団生活を安心して送ることができるように、園での様子を5歳児健診時に相談されることをお勧めします。家だと落ち着いていても、集団で落ち着かない場合、ザワザワした環境が苦手だったり、いろいろな視覚情報が多いことが苦手など、お子さんによっても特性はさまざまです。お子さんの特性を早めに理解し、環境を整えることで、就学までの時間をより安心して過ごすことができます。Upload By 発達障害のキホンQ:幼稚園年中の女の子です。人見知りや場所見知りがあるので、検査がうまくできないのではと心配です。5歳児健診にはどのような準備をしていったらよいですか?A:5歳児健診は、検査という形で身構えて取り組む必要はありません。ご家庭や集団生活のご様子を問診し、健診での診察などを踏まえて総合的に判断します。「知らない場所で知らない大人と話す」というのは誰でも、緊張してしまうことはあります。少しでも安心して過ごせるように、例えば、・事前に行く場所を伝えて、先生とお話しするよなど、イメージができるように説明をしておく・お気に入りにの小さいぬいぐるみやタオルなどを持参する・「緊張しちゃっても大丈夫」と声掛けするなどの準備をしてお子さんに安心感を与えてください。Upload By 発達障害のキホン5歳児健診は早期の支援につなげるためにも大切な機会5歳児健診は3歳児健診では気づきにくい発達上の課題を発見し、早期の支援につなげるためにも大切な機会です。5歳児健診で発達の遅れなどが見つかった場合、専門家への相談や、園や小学校への情報共有などを行うことで、お子さんが学校生活へ適応するための支援も行っています。現在は実施していない自治体もありますが、こども家庭庁では早期の全国展開を目指して援助を行っています。また、実施していない自治体でも、似たような健診や発達相談を行っている場合があります。お住まいの自治体のWebサイトなどを確認し、活用していくといいでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年06月29日中度知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた3歳の娘。夫は娘の障害を理解してくれず……小学6年生のりんさんは、3歳の時に中度知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。診断を受けた際、医師から「療育」を勧められたTさんは支援に繋がろうとするのですが、夫は理解してくれず……。今回は2話目をお送りします。家族で話し合うなんて、うちには無理Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談積み重なる「できるようになったこと」Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談「特別扱いなんて必要ない」頑なな夫。そして自閉症・情緒知的障害特別支援学級へ母の頑張りで、無事支援に繋がることができたりんさん。療育を始めたばかりの頃は泣いてばかりでしたが、だんだんと児童発達支援にも慣れ、少しずつできることが増えていきます。しかし、父は依然としてりんさんの障害を分かってくれず、話し合いになりません……。そんな中、就学前に受けた知能検査で中度から軽度知的障害(知的発達症)となったりんさんは、自閉症・情緒障害特別支援学級へ入学することになりました。次回第3話「娘の障害を受容せず中学受験を提案!?夫の行動に驚くも娘は乗り気で…【マンガ発達障害の子どもと私たち/りん編3話】」は7月3日(木)に公開予定です。お楽しみに。イラスト/志士ノまる(監修:井上先生より)ワンオペ育児の中で、お子さんの最もよい環境を探し、療育もがんばって通われたんですね。りんさんの場合は、そのような努力もあり、知的障害(知的発達症)の状態は中度から軽度へ改善したのではないでしょうか。発達が見られたことは喜ばしいことですが、親の期待もより高まります。就学先の選択もその期待値を盛り込む非常に悩ましいものであったのだろうと思います。さまざまなことをおひとりで乗り越えられたのに、パートナーにそれを否定されると自分の子育てすべてを否定されたように感じてしまうかもしれません。しかし、漫画には書かれていませんが、この時期にはさまざまな支援者が相談に乗ってくれたのではないでしょうか。できるだけ多くの味方を作っていくことで少しでも気持ちを楽にすることができるかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月26日姉弟ともに発達障害の診断。わが家の放デイ選び3つ条件わが家の子どもたちは2人とも発達障害の診断が出ています。診断はともに小学校1年生の6月頃でした。現在大学1年生の娘はADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)のグレーゾーンで、注意欠陥の特性が高め。現在高校2年生の息子は、ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)で多動、衝動性が強く、中学3年生の時に精神障害者保健福祉手帳3級を取得しました。2人とも同じ診断名がありますが、特性は全く違います。子どもたちに診断が出てから、市の障害者支援センターに相談を続けていました。担当の方から「お母さんも2人の育児で疲れてしまうでしょうから、放デイ(放課後等デイサービス)を利用してみませんか?」と提案されました。当時私は、途方にくれていました。夫は協力的でしたが、私自身も持病があり家事もままならない状態。また、2人が一緒にいるとどちらかが癇癪やパニックを起こし、毎日が戦場のようでした。(少しでも子どもたちと離れる時間が持てるなら……)と、私の希望に合う受け入れ先を相談支援専門員さんに探してもらい、放デイの利用を決めました。Upload By ユーザー体験談私が放デイ選びの条件にしたのは以下の3つです・送迎あり(マスト)・プログラムの内容よりも、生活リズムを整えてくれるかを優先・生活リズムのため、曜日固定で利用できるところわが家は2人同時に預けられる放デイと、それ以外にも子どもたちそれぞれの特性に合った放デイを利用し、週3回利用していました。また「合わない」と感じた放デイをいくつか辞めています。今回はわが家の放デイ利用についてお話します。静かな環境が大事。支援だけでなく「夢」もくれた娘の放デイ娘は人見知りで穏やかでおっとりした性格。周囲に優しいものの、自己肯定感が低く、自分を卑下してしまいます。そのため、静かな環境でやりたいことができる放デイを選びました。娘は簡単なお菓子作りを楽しく感じていたようで、お土産として持ち帰ってくれることもありました。夏休みなどの長期休暇には、お出かけ体験、プール遊び、近所の公園散歩など多彩なイベントがあり、楽しそうにしている姿はとても嬉しかったです。また、放デイで重度の障害のあるお子さんと接する中で、「優しく接する気持ち」も育ててもらいました。娘は「特別支援学級の先生になりたい」との発言もあり。大学では、教員免許取得を目指しています。放デイには娘の「夢」もいただきました。多動の弟には活動型放デイ。習い事で悲しい思いもしたけれど……息子は利発で勉強好き、手先が器用ですがマルチタスクが苦手です。癇癪が起こると大パニックになり、多動であちこち走り回るため、居室が広く、壁登りやトランポリンなど室内運動ができる活動型の放デイを選びました。息子は活動型の放デイが好きで、夏場は水遊びができる施設が特にお気に入りでした。宿題を終えた後、その日のメンバーで遊びを決めるトレーニングなどもあり、成長に繋がったと思います。余談になりますが、放デイのない日にやっていた習い事では悲しい思いをしました。サッカーを習っていたのですが、小3のときにコーチから「障害のある児童は集団指導が困難だから辞めて欲しい」と言われたのです。泣く泣く退部しました。そんなつらい状況の中でも、放デイで生活リズムを作っていたので、大きく乱れることはなくホッとした覚えがあります。その後、息子は柔道教室に巡り合い、ここでも体を目一杯、動かす楽しさを学びました。中学は柔道部。今も柔道教室に週1回通っています。Upload By ユーザー体験談何か所か放デイを辞めたことも。見極めの難しさを感じて放デイを利用するようになって、放デイから帰宅すると、夕食→入浴→就寝と流れができ、生活が安定しました。放デイで目いっぱい楽しんでくるので、すんなり寝てくれることも増えました。送迎ありの施設を選んでいたので、私も帰宅した子どもたちを笑顔で迎えることができ、わが家が各段に落ち着いたのは本当に助かりました。一方、新規オープンした放デイに通ったことがあったのですが、職員の入れ替わりが激しく子どもたちが落ち着かなくなってしまったことがあり、退所したことがあります。また、早いもの勝ちでスケジュールを押さえるシステムの放デイについては、生活リズムをつけるため固定の曜日で利用を希望しているわが家とは合わないと感じ、利用を辞めました。また、指導員の力不足を感じる放デイもいくつか見てきました。新規参入の放デイが増えている中、どこがいい施設なのかという見極めは非常に難しいと感じました。通ってみて「合わない」と思ったら、無理せずに別の場所を探すことも大切だと思いました。中学生からの放デイは?高校生が通える施設も増やしてほしいわが家は、子どもたちと話し合い、小学校卒業と同時に放デイも卒業しました。娘は「中学からは勉強に集中したい」と希望し卒業、息子はそんな姉を見ていたので、同じように辞めた形です。実際、中学生になると勉強や部活動が忙しく、中学での利用は難しかったと思います。娘は、高校生になってから、一時期高校生向けの放デイへ通っていたのですが、こちらも時間がなくて通えなくなり、半年で辞めました。私の住む地域では、高校生への放デイの受け入れがほぼなく探すのが大変でした。思春期以降の子どもが利用できるデイサービスが増えることを期待しています。わが家はどうなってしまうのだろう……という不安が和らいだ。一方、18歳以上の支援の少なさが心配子どもたちが幼い頃は、(わが家はどうなってしまうのだろう)と不安でいっぱいでした。いろいろな方の支援があり、今の子どもたちの成長に繋がっています。現在大学生の娘。高校生まではよくパニックを起こしていましたが、今は厳しい校則も無く、笑顔で夢に向かって頑張っています。課題に計画的に取り組み、留学費用のために、アルバイトも始め、教員になるため頑張っています。息子は、幼少期からの夢を目指し、楽しく学校生活を送っています。難易度の高い資格試験に挑戦するという大きな目標に向かう姿は頼もしいです。息子に関しては、精神障害者保健福祉手帳を持っていることもあり、将来は障害者雇用も検討しています。そんな成長した2人ですが、18歳を過ぎると支援の手が少なくなるのが不安のひとつです。今の大学は、障害学生支援制度が充実しており、入学事前面談を利用し大学内では支援を受けられていますが、この先、就労後はどうなるのか……。娘、息子の気持ちを大切にしつつ、前に進んでいけたらと思っています。イラスト/鳥野とり子※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:室伏先生より)お子さんお二人それぞれの 異なる特性に合わせて放課後等デイサービスを柔軟に選び、工夫して利用されてきたこと、とても素晴らしいと感じました。診断名は同じでも、実際の支援ニーズは全く違うこと、その違いをきちんと受け止めて 「一律ではない支援」 を求めていかれた姿勢はとても大切なことだと思います。今回共有いただいた通り、一度利用を始めた放デイであっても、「合わない」と感じた場合は、無理に継続する必要はありません。お子さんの特性やご家庭の状況に合う施設はさまざまですので、ぜひ複数の選択肢を比較しながら検討してみてください。そうした柔軟な姿勢が、結果的にお子さんたちにより良い環境を提供することにつながっていると感じました。放デイでのお子さんの学びももちろん重要なことですが、放デイがあったことで「帰宅後の生活リズムが整った」「親が時間的・精神的余裕を持って子どもを迎えられるようになった」という効果は、家庭内の親子関係の質にも良い影響を与えることが多く、これは 本人の情緒の安定にとってもとても大切な要素です。放デイの利用で、親子ともに安心できる時間が増えることの大切さを改めて感じるとともに、18歳以降も切れ目のない支援がさらに広がっていくことを願わずにはいられません。お子さんたちのこれからの歩みを心から応援しています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年06月25日障害への対応をめぐってすれ違う夫婦……新章「りん編」がスタート子どもの幸せを願うのは同じなのに、子どもの発達や障害への対応を巡って、夫婦の意見が食い違う……そんなこともあるのではないでしょうか。支援が必要と感じる母と、成長を信じる父——。価値観や期待が異なることで、すれ違いが生まれることも。セミフィクションマンガ「発達障害の子どもと私たち」、今回から始まる「りん編」は、発達ナビユーザーの実際の体験談です。自閉症・情緒特別支援学級在籍している小学6年生の娘。「娘に障害があるとレッテルを貼っているのは君」という夫の言葉に私は——Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談「少しずつ」できることを増やしていく場所へUpload By ユーザー体験談子どもの障害について夫婦ですれ違い、孤独は深まる保育園の先生から勧められたこともあり、りんさんの発達相談を受けた母。中度知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向を指摘されました。母は支援を受けたいと考えますが、父は「療育って意味あるの?」「大きくなればできるようになるだろ」と理解してくれず……。一人で抱え込む母。夫婦のすれ違いは、この先どうなっていくのでしょうか。次回、第2話「就学を前に夫は「特別扱いは必要ない」と言い出して…。自閉症娘に必要な支援をめぐってすれ違う私たち【マンガ発達障害の子どもと私たち/りん編2話】」は6月26日(木)に公開予定です。お楽しみに。イラスト/志士ノまる(監修:井上先生より)りんさんのお話のように、パートナー間で発達の遅れの認識や診断名や療育への理解に食い違いが見られることは多いように思います。2人だけでそのギャップを埋めようと頑張りすぎたり、諦めてワンオペになってしまうことは、孤立感を深め非常につらい状況になられたのではないでしょうか。ギャップの解消には、時間が必要なことも多いと思います。再受診には夫婦で行くなど、あいだに人を介していくのもひとつの方法かもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月19日兆候をことごとくスルー!? 息子が5歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されるまでの道のりは?「発達障害の子どもと私たち」アキラ編まとめ発達ナビユーザーの体験談から生まれたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。現在5歳のアキラくんは最近ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。思い返すと1歳の頃から兆候はありましたが、保護者の方は初めての子育てということもあり「そんなものなのかな」と気づかず……。ASD(自閉スペクトラム症)と診断されるまでに一体何があったのか、今回は3章アキラ編完結記念としてアキラ編の連載コラムをまとめてご紹介します!「息子には障害があるの……!?」1歳半健診の経過観察を楽観視。保育園入園後も言葉が増えずに不安に。繋がった支援は……「アキラ編」を完結まで一気読み以下関連リンクから全4話を一気にご覧いただけます。不登校・学習の壁・転籍……「はるき編」「みき編」もまとめ読み!2人の主人公・小学3年生のはるきさん、小学4年生のみきさんはそれぞれの「壁」に直面し、学校へ行くことができなくなってしまいました。学校に行けないもどかしさ、葛藤、苦しみ……本人とその家族がどう立ち向かっていったのかがリアルに描かれています。各話の終わりに鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生からのアドバイスも掲載。プロローグ、そして二人のその後が描かれたエピローグとともに、「発達障害のある子どもと私たち」全10話を読み返してみませんか?「発達障害の子どもと私たち」次回の展開は……「発達障害の子どもと私たち」、はるき編、みき編、アキラ編に続く第4弾「りん編」が間もなくスタートします!りんは小学6年生の女の子。幼少期、保育園でパニックを起こすことがあり、発達相談を受けた結果、ある診断を受けます。母は支援を求めますが、父は娘の障害を受容してくれませんでした。障害への対応をめぐってすれ違う夫婦の結末は……。2025年6月19日(木)から連載開始予定です。お楽しみに。Upload By ユーザー体験談(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月15日「マンガ発達障害の子どもと私たち」新章・アキラ編の結末は?その他、訪問看護や服薬など5月に公開したさまざまなエピソードを紹介!「マンガ発達障害の子どもと私たち」新章・アキラ編の3、4話が更新!療育のチャンスを逃してしまったM子さんがようやく自覚したわが子の障害は……。その他、気になる方も多い訪問看護や睡眠障害の服薬、きょうだいで違う放課後等デイサービスの使い方、発達ナビでの「行き渋り、不登校」アンケート結果など5月もさまざまなエピソードを公開しました。発達ナビユーザーから寄せられた体験談を基にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」アキラ編第3話。療育を受けるために受給者証を取得したものの、市の心身障害児訓練施設の療育利用を勘違いから断ってしまった!?3歳児健診で発達について診てもらいたいと相談し、紹介された療育センターはなんと1年待ちでどうしたらいいの!?そんな時に見つけたのは……。近所で偶然見つけた発達外来を受診したM子さんはそこで診断書をもらいます。もらった診断書に書いてある内容を見て、改めてうっかり断ってしまった心身障害児訓練施設で療育を受けたい!と決意をします。進級前の引継ぎのため保育園に「生育歴」を提出して先生から指摘を受けたり、4か月に1回の発達外来受診では医師からのコメントに驚き……それでも今までの育児を振り返ってみて感じたことは……アキラ編、最終回の結末は?就学前はお子さんの発達障害に気づいていなかったチノパンさん。入学3日目には友だちとのトラブルが起き学校から連絡、その後も集団行動が難しい、お友だちとの関係がうまくいかないなどのトラブルは続き……不登校を選び、その後は特別支援学級への転籍。さまざまな出来事がありましたが、その中で訪問看護との良い出合いもありました。重度障害があるこっこさんの娘さん。睡眠障害があり、それも15年近い付き合いとのこと。コマ切れ睡眠、必須の添い寝に腕枕……母であるこっこさんが眠れるのは毎日3時間か4時間という万年寝不足状態に。体は限界を迎え、とうとう腎臓を悪くしてしまいます。そんな中、娘さんに「メラトベル」を処方してもらい、入眠問題は一歩前進……と思ったのも束の間、今度はまた別のトラブルが!?同じASD(自閉スペクトラム症)でも放課後等デイサービスの使い方はそれぞれ違う!?小4の娘さんと小2のASD(自閉スペクトラム症)きょうだいを育てるmuscatさん。放課後等デイサービスと自宅、放課後教室などを使いながら働いています。姉と弟は別の放課後等デイサービスを利用しています。その理由はそれぞれの特性や性格に関係しているようで……。きょうだいでの放課後等デイサービス利用を考えてる方の施設探しの参考になるコラムです。発達ナビでは、会員のみなさまに『新学期、環境の変化に不安…「行き渋り」「不登校」についてアンケート&エピソード募集!』を実施、124名から回答をいただきました!新学期による環境の変化、そして長期休み明け……このような時期は行き渋りや不登校が多くなる傾向にあります。アンケートの具体的なお話や、体験談に綴られた子どもへの寄り添い方の中には悩み解決のヒントがあるかもしれません。ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』は皆さんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児している皆さんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。皆さんのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月07日私が発達ナビライターになった経緯Upload By 発達ナビ10周年企画2014年12月、娘の支援をしてくださっていた先生などからのすすめもあり、私は自身の子育て体験談を4コマ漫画にしてブログで描き始めました。漫画といっても私はプロでもなくただの一保護者です。アナログ人間の私が苦手なデジタル作業などは、パソコンが得意な当事者の娘(中学3年生)が担ってくれました。翌年、ブログを見たLITALICOの担当者さんから、新たに立ち上げるサイトのライターの依頼がありました。当時はWeb会議ツールは今ほど普及しておらず、私は詳細説明を受けるため東京のLITALICO本社に行きました。担当者の熱意新設サイト担当者のLさんは若く熱意あふれる女性でした。LITALICOジュニアで児童指導の経験もある彼女は「お子さんを指導していくなかで『保護者が元気なこと』が、お子さんのためには一番良いことだと感じたんです。だから保護者の方々が元気になれるようなサイトを作りたいんです」そして「今までなかった『全国の情報が集まるサイト』にしていきたいと思っています」とお話してくださいました。Upload By 発達ナビ10周年企画乳幼児健診で指摘はされませんでしたが、未就園児の頃から私は娘の発達に違和感を抱いていました。身近に頼れる親戚もいなかったため、私は自治体の相談窓口や保健師さん、赤ちゃん広場・児童館の支援員さんなどに相談をしたり、未就園児を対象とした幼・保育園の体験プログラムなどに積極的に参加しました。困りごと感を理解してもらえなかったことも度々もありましたが、めげずにあちこちに相談しているうちに子育て支援センターに繋がり、親同伴の療育プログラムを受けることができました(その頃私は『療育』という言葉すら知りませんでしたが)。もしこのとき私に体力や精神的な余力がなかったら、周りに相談したり、あちこち出向いていくことはできず、きっと孤独の中で娘と二人煮詰まっていたことでしょう。娘は小学生の間は『グレーゾーン』と言われていて、療育センターではこれといった療育は受けていませんでした。娘は表面上は会話はできます。得手(読むこと、暗記、絵を描くこと)不得手(運動、計算)の差が大きいです。人は好きですが、他人とのコミュニケーションが苦手です。受け身で自らトラブルを起こすことはありませんが、高学年になってからは、いじめにもあいました。なので進路には、とても悩みました。果たして特別支援学校や特別支援学級が娘に合っているのか?本人はそれを望んでいるのか?私は中学卒業後の進路先も視野に入れつつ、通える範囲で娘に適した学校を探すことに奔走しました。『発達障害』『学校』『進路』『中学』『高校』といったキ-ワードの検索魔となり、ヒットしたブログを片っ端から読んだり、学校に関する書き込みや掲示板を目を皿にして読み漁ったりしました。そしてずっと「情報が一元化してくれていたらどんなに良いか」と思っていました。新サイトはまさに私がずっと望んでいたものでした。また「どうぞ荒木さんもこのサイトをどんどん“利用”してくださいね」と『サイトとユーザーのwin-winの関係』を示唆するLさんの茶目っ気たっぷりなところにも私は好感を抱きました。新サイトオープン!2016年1月に、発達障害ポータルサイト・LITALICO発達ナビはオープンしました。当時は何十人ものライターさんが在籍し、さまざまな記事を書いていました(ライターさんは未就学~小学生ぐらいのお子さんの保護者の方がほとんどでした)。私は自身のブログを立ち上げた時から、娘のことを書くときは内容に間違いがないかを事前に本人に確認していたので、発達ナビの記事も娘にチェックしてもらってから入稿していました。サイトオープン当初は当時のメインユーザーに合わせ未就園児~小学生の頃の話をよく書いていたので、娘は自分の記憶にない小さかった頃の話や、その時の親の気持ちを書いたコラムを興味深く読んでいました。ライターのイロハを学ぶ今私が持つライターのノウハウは、全て発達ナビ編集部担当さんから教えてもらいました。Upload By 発達ナビ10周年企画コラムは“初めてサイトを訪れたユーザーさんや、初めて私のコラムを読む方にも分かりやすい内容にすること”が大切です。でも、何本もコラムを書いていくうちに「発達ナビの読者さんなら、このことは知っているだろうから、端折っても良いかな」「この内容は以前もコラムで書いたことがあるから、説明はいらないかも」と思ってしまうことがあります。そんな時は必ず編集担当者さんから指摘を受けます。発達ナビのコラムは、担当者の他にも編集部で複数のチェックが入ります。時間と手間がかかりますが、複数の目で確認することで記事がブラッシュアップされる過程が私は好きです(誤字脱字を直してもらえるのもうれしい!)。近年では専門家の監修も付くようになり、読者さんがより安心して読める記事になっているかと思います。情報過多最近ではSNS上で数多くの子育て漫画や体験談を目にするようになりました。動画配信なども増え、欲しい情報も以前より簡単に手に入るようになってきています。でも、便利になった一方で、情報の多さゆえに子育てに不安を感じてしまう保護者が増えているようにも感じます。『障害児の子育てはこんなに大変!』といった内容のものや、アクセス数目的のインパクトのある見出しのものが「おすすめ動画」として次々と出てきてしまったら、不安が増すのは当然なのかもしれません。小さなお子さんを持つ保護者の方へ前に述べたように発達ナビは保護者を元気にすること目指しているサイトです。コラムや動画には必ず何かしらの気付きやヒントがあるはずです(少なくとも私はそう心がけてきました)。コラムの他にも『Q&A』では先輩保護者が親身になって答えてくれます。『コミュニティ』では同じ悩みや趣味を持つユーザー同士が交流しています。『ダイアリー』は子育て記録や自分の気持ちを公開・非公開でつづることができます。ユーザーは、プロの支援者や医師ではないので聞かれても答えられないこともあります。でも、支援者や医師では分からない親としての気持ちを共感しあうことができます。そして、実体験に基づくちょっとした知恵やアイデアは意外と役に立ったりするのです。チャレンジ、そして……自分の子どもに障害があったとしても、将来を悲観する必要は実はそれほどないんです。何もしなくても良いというわけではありませんが、けっこうどうにかなるものです。そもそも障害があってもなくても子どもを育てていく上ではいろいろなことがありますし。ずっと先のことをあれこれ考える時間を、目の前のお子さんと一緒に過ごす時間に充ててほしいと思います。そして不安を感じたときは周りをどんどん頼ってみてください。リアルでお子さんを見てもらい、プロの方にお子さんへの接し方やアプローチの方法を相談していろいろと試してみてほしいです。スピードは違うかもしれないけれど、成長しないお子さんはいないので、一度や二度の失敗にはめげず、ぜひいろいろチャレンジしてみてください。そしてもし少しでも上手くいったアプローチがあったら、それを次の世代の保護者さんに伝えていってもらえたらうれしいです。今回は小さなお子さんを持つ保護者の方へのお話がメインとなりましたので、小中学生のお子さんを持つ保護者の方へのお話はまたの別機会に書いていこうと思います。執筆/荒木まち子(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年05月28日発達外来の受診。そこで診断書をもらい療育へつながり……Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談はっきり言われてやっと自覚したわが子の障害名。でも支えてくれた方々には感謝の気持ちがいっぱいで発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第3章アキラ編もこれにて最終回です。近所で偶然見つけた発達外来を受診したM子さんはそこで診断書をもらいます。もらった診断書には「言葉の遅れを母親が気にして受診。言葉を促す訓練が必要と認める」と書いてあり、改めてうっかり断ってしまった心身障害児訓練施設「わかば」で療育を受けたい!と感じたM子さん。保健センターへ電話をして利用の手続きをし通い始め、発達検査(新版K式)を受け、心理指導や言語指導なども不定期ながら受けられることになりました。そんな中、進級前の引継ぎのため保育園に「生育歴」を提出することに。気になる点などの項目を空白で提出したところ、先生からツッコミが。ここで初めて「健診で要フォロー」となっていることや「様子見」の意味を知ることになりました。その後、4か月に1回の発達外来受診ではっきりと「息子さんは間違いなくASD(自閉スペクトラム症)です」と言われ、やっとアキラくんの診断名を自覚することとなります。しかし、振り返ると「必要な支援はそれなりに受けられていた」と感じていたというM子さん。周りの方の絶妙なアシストやサポート、気遣い、なにより障害にかかわらず「アキラくんのために」と動いてくださる方がたくさんいてくれて感謝をしているとM子さんは言います。お子さんの発達に遅れなどがあると不安を感じてしまう方も多いと思います。周りに相談し、時には頼って一人で抱え込まずに子育てをしていけると良いですね。※心身障害児訓練施設「わかば」は仮の施設名です。イラスト/星あかりエピソード参考/M子(監修:井上先生より)気づきから診断、そして支援機関での情報の共有というプロセスや期間は一人ひとりの子どもやご家族にとっておいてさまざまです。まさに子育てにとって激動の時期ですがアキラくんのお母さんのように周囲の支援者が心理的に寄り添ってくださることがこの時期の親にとって大きな助けになると思います。人によって診断や障害の理解、支援の受け入れなどに時間がかかる場合もあり、それぞれの方のペースに合わせた支援が必要とされます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月27日息子には支援が必要なの?療育のために受給者証を申請、しかしその間にもまた気づかず支援を1つ逃していて……!?Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談療育を受けるために受給者証を取得。しかし、市の心身障害児訓練施設の療育利用を断ってしまったり、発達を診てもらうには1年待ち。そんな時に見つけたのは……発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第3章アキラ編の第3話目はいかがだったでしょうか。アキラくんは5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けています。知育教室(習い事)で言われた「クレーン現象」がきっかけで息子さんにはASD(自閉スペクトラム症)かも?と感じるようになったM子さん。発達の遅れがある子どもが受けられる「療育」という存在を知り、受けるために必要な「受給者証」を申請しようと決意します。相談と申請に必要な意見書をもらうために半年前に予約した保健センターへ行きますが、その間に市の心身障害児訓練施設「わかば」での療育を打診されます。最初は「できることはやろう!」と思っていましたが、実際わかばは隣の市にあり通うのがかなり大変……。その後かかってきた保健センターからの電話でわかばのキャンセルを募っていると思ったM子さんはわかばに通うことを断ってしまいます。しかし、「今考えると障害児訓練施設の利用ということもあり私が発達の悩みで追い詰められてないかなど気を配っての発言だったのかも」と振り返っています。3歳過ぎてからぽつぽつと言葉も出てきたアキラくん。3歳児健診にてM子さんは発達について診てもらいたいと相談しますが、紹介された療育センターはなんと1年待ち!帰り道に「何かできないことはないのか……」と悩んでいたら目の前に『発達外来』の文字が!次回は最終回となる第4話「発達外来の受診。そして生育歴でやっと気づいた『様子見』の意味」。続きもぜひご覧ください。※心身障害児訓練施設「わかば」は仮の施設名です。イラスト/星あかりエピソード参考/M子(監修:井上先生より)初めてのお子さんで子育てに悩みつつ、発達の遅れに不安を抱いた状態で専門機関である保健センターを訪れることはとても勇気が必要な決断であったと思います。療育という手段があることを知り、それに必要な「受給者証」「意見書」など初めて接する言葉に対する戸惑い、不安、そして自らが判断したり決めなければならないことの多さやさまざまな人が関わる手続きの複雑さ、待ちの長さなど親御さんの負担や不安はいかばかりであったかと思います。支援者にはこの時期の親御さんの心理状態を理解し、共感的でかつ具体的な丁寧な説明が求められます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月21日就学・進路の大調査!発達特性のある子どもの中高進学先、受験の割合は?【小学校高学年、中学、高校編】2024年12月20日から2025年2月28日に、LITALICO発達ナビでは「就学・進学アンケート」を行い、発達障害のある子どもの保護者283名の声が寄せられました。アンケートへのたくさんのご回答、ありがとうございました。2022年の文部科学省の調査によると、通常学級に通っている中で特別な支援が必要だと考えられるお子さんの割合は、小学校・中学校では8.8%、高等学校では2.2%という結果になっています。参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する 調査結果について|文部科学省このコラムでは発達障害や特性のあるお子さんの思春期での困りやトラブル、悩み、受験についてや合理的配慮など、アンケートの回答と併せて「就学・進学」にまつわる質問や思いなどもご紹介いたします。今回は「小学校高学年(4.5.6年)、中学、高校編」のアンケート結果を紹介します。気になる中学・高校受験の割合についてや進学先の選び方など皆さんの参考にもなるはずです。回答者や回答者のお子さんの情報については「未就学・小学校低学年編」で公開中です。こちらもぜひ合わせてご覧ください。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」コラムや会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:283名の回答を集計しました。(調査期間:2024年12月20日から2025年2月28日)※設問によっては283名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。高学年になって振り返る……就学先は正解だった?合理的配慮についてのエピソードなども【小4以上のお子さんのいらっしゃる方へのアンケート】ここからは小学校4年生以上のお子さんのいる保護者の方の回答とコメントをピックアップしてご紹介します。小学校4年生以上のお子さんの在籍クラスは通常学級が35%と一番多い結果となりました。その後自閉症・情緒障害特別支援学級(22%)、通常学級+通級指導教室(22%)、知的障害特別支援学級(12%)、特別支援学校(5%)と続きます。高学年になり転籍を考えるお子さんも多いのではないでしょうか。Upload By 発達障害のキホン実際に決めた就学先については合っていたと感じた方が64%と一番多い結果となりました。どちらともいえない方は26%、合っていなかったと感じた方は7%でした。特別支援学級の縦割りクラスに支えられることもある一方で高学年になり同級生との差に悩むお子さんもいらっしゃるようです。Upload By 発達障害のキホンアンケートに寄せられたコメントをご紹介します。・合っていたと感じる(知的障害特別支援学級在籍)入学当時は特別支援学級は1クラスしかなく、1~6年生まで全員の合同クラスでした。九九を覚えたり、宿泊行事があったり、それぞれの運動会の過ごし方など、小学校6年間の学校生活を、1年生のときに身近に見知ることができたのが、よい「予告」になったと思います。また、親としても、頼もしい高学年の先輩をこの目で見られたことは、大変心の支えになりました。(以下略)・どちらとも言えない(知的障害特別支援学級在籍)先生が学年が上がる度に変わるが、引き継ぎができていないので、子ども自身が先生のやり方に慣れないといけないので、苦労する。就学先の支援や合理的配慮に満足をしている(22%)、おおむね満足している(47%)という結果となり、合わせて69%の方が満足をされていると回答しています。しかし、あまり満足していない(17%)、不満がある(6%)という方もいらっしゃいます。学年が上がるにつれて悩みも多様化してきますので、そのお子さんに合った支援が望まれます。Upload By 発達障害のキホン・満足している(通常学級)【中学年で困ったこと】小3からは徐々に勉強で困ることが増えてきました。算数はたし算・かけ算は何とかなるが、引き算・わり算の理解に苦戦。桁の概念の理解が弱く、計算問題は扱う数字が1000を超えると扱いが分からなくなりました。国語は小4の終わり頃に漢字を頑張らせることを捨てて、将来に向けてタイピングの練習をする方向に切り替えました。【高学年(小5)で困ったこと】算数は九九を覚えてもすぐ抜けていく対策が必要でした。図形問題は計算が比較的簡単なので得意ですが、通分と約分が必要な分数同士の計算、割る数に小数点を含むわり算の筆算など、手順が多く目線の複雑な移動が必要な問題は、途中で迷子になってどうしたらいいのか分からなくなりました。国語は、漢字を捨てたことで逆に安定したようです。生活面では、友だちと夜遅くまでオンラインゲームで遊んでしまうことで入眠の困難さが増すなど、タイムスケジュールの乱れからくる情緒の不安定さ・気持ちの切り替えの鈍さが目に付くようになってきました。・満足している(自閉症・情緒障害特別支援学級)交流学級での失敗を、なぜダメだったか、どうすれば良かったのか等、特別支援学級で丁寧に教えてもらえた。学習もマンツーマンで丁寧に教えてもらえたので良かった。・おおむね満足している(通常学級)3年生から申し出て、なかなか思うような支援が受けられなかったが、5年生の途中から、専科の先生により、板書がタブレットにテストの時は補助がつくなどしてもらっていて、過ごしやすくなっていると思う。※特定の就学先によって困り事が生じたり解決したりするわけではなく、あくまで子どもの状態と環境によって変わりますので注意が必要です。中学校の在籍クラスは?【中学生以上のお子さんの保護者アンケート結果】中学の在籍クラスは通常学級が55%と半数を占める結果となりました。続いて自閉症・情緒障害特別支援学級が17%、通常学級+通級指導教室が13%、知的障害特別支援学級が10%となっています。Upload By 発達障害のキホン中学受験はした?【中学生のお子さんのいらっしゃる方へのアンケート】ここからは中学生以上のお子さんのいる保護者の方の回答とコメントをピックアップしてご紹介します。中学受験をしたお子さんは29%、していないお子さんは71%という結果になりました。私立中学でも合理的配慮が義務化されたことにより、私立中学の選択をする方も多くなっているのかもしれません。Upload By 発達障害のキホン・本人が、地元の学校でないところに行きたいと言い出したのが一番の決め手になり、小5の三学期あたりから急いで学校探しと、受験勉強開始。どうにか入れるところ、入りたいところがみつかり、合格もいただけました。入学してみれば、同じようなタイプの子、同じような特性のある子がチラホラいて、過ごしやすさもあり、特性ある子同士のトラブルもありつつ、楽しく過ごしてます。・目を見て話をすることが苦手だったので、面接の練習を校長先生やほかの先生に、本人がお願いし協力していただきました。また、人前で発表したりすることに慣れるため、集会広報委員になりました。全校生徒の前でも、司会進行や代表挨拶など、自分で考え周りの意見を聞きながら行動する力をつけたと思います。中学への進学、進路先はどこに決めた?トラブルや話し合いの内容など・小学校自閉症・情緒障害特別支援学級→私立中学校受験小学校からは『特別支援学級から中学受験をした子はいないので……』ということで、わが家が前例をつくる立場になりました。なんせ、学校からはずいぶん心配されました。あと、地元の公立中への進学のように情報を密につなげないもどかしさも持ってくださっていたよう。でも、小学校とはトラブルなく、私立中受験のことを応援していただいたと思っています。・小学校通常学級→大学付属中学校受験本人はいじめのこともあり女子校を希望していましたが、親としてはその先の進学のことも考えて共学の大学付属校を考えていたため、そのあたりのすり合わせでお互い妥協するまで少し時間がかかりました。・小学校通常学級+通級→公立中学校通常学級+通級6年の夏休みに発達検査を実施。結果と担任、通級担当の先生の報告書を中学校へ提出した。通っていた小学校から移動した先生が教頭になり、通級指導教室を新設したため、話がスムーズだった。・小学校自閉症・情緒障害特別支援学級→私立中学校受験小5になったタイミングで、主治医から、公立の中学校だと、配慮に限界があるので、手厚い支援を望むなら、私立の受験を考えるように勧められました。※必ずしも公立中学よりも私立中学が手厚いという訳ではありませんので注意が必要です。アンケートに寄せられたコメントをご紹介します。・小学校通常学級私立中入学後に学校とトラブルになったら困るので、オープンスクールや学校相談会で、必ずわが子は発達障害がありこのような特性があるが、入学していいか、入学後どのような受け入れになるか聞いていました。私立ですから、発達障害に対しあまりいい顔をされない学校もあり、そこは避けました。正直に学校側からも答えていただいていたことは、よかったと思います。・小学校通常学級+通級指導教室通級指導教室を継続するかどうかを迷いました。小6の時にご担当くださったベテランの先生の勧めで、中学校も継続することにしました。・小学校自閉症・情緒障害特別支援学級地元の公立中学には行かずに、公立中高一貫校を受験するつもりでいたが、子どもが高学年になって受験する気持ちが薄れてしまったために受験を断念。本人が地元公立中学を希望した。決めた進路先は子どもに合っていたと感じましたか?の質問では合っていたと感じるが約半数の55%、どちらともいえないが25%、合っていなかったと感じるが18%の結果となりました。Upload By 発達障害のキホン・合っていたと感じる(中学:自閉症・情緒障害特別支援学級在籍)中学生ともなると、新たな悩みも発生します。特別支援学級の担任や支援員さんと共有して共に歩んだ気がします。たくさん勉強させていただきました。・合っていなかったと感じる(中学:通常学級在籍)普通の中学は「小テスト、テスト、部活、行事」に日々追われて忙しいのが一般的。そういう生活がうちの子には合わなかった。中学進路先の支援や合理的配慮に満足しているかの質問に対しては、満足しているが19%、おおむね満足しているが38%と、半数以上の57%の方が満足している一方で、あまり満足していないが21%、不満があるが10%という結果になりました。成長をし、思春期を迎え勉強、交友関係など小学校時代とはまた違う悩みがでてきているようです。Upload By 発達障害のキホンアンケートに寄せられたコメントをご紹介します。・満足している(中学:自閉症・情緒障害特別支援学級在籍)中学では小学校の時に比べ、本人も成長しているので、小学校の時のような支援ではなく、本人に合わせた距離感、濃密さの支援であった。・おおむね満足している(中学:通常学級+通級指導教室在籍)年齢が上がるにつれ通級に行っている間にある授業に出られないことを嫌がるようになった。通級の内容自体は好きだが普段の授業が分からなくなることを気にしていた。・あまり満足していない(中学:通常学級在籍)緊張が強く人見知りもはげしかったため、おなじ小学校出身の子と、何名かは同じクラスになるように配慮してもらったが、場面緘黙については、あまり知られていなかったのか、理解がなく、皆と同じようにみんなの前で発言することを強制されたり、しんどい場面も多くあった。感覚の過敏さから、体育祭の応援合戦の練習はつらかったようだが、上級生が指導するため、合理的配慮はなかなか受けられずしんどい思いをしながら、参加せざるを得ない状況だった。コロナ禍のため、応援合戦が中止だった年は助かった。高校の進路、いつから考え始めた?受験エピソードや高校卒業後の進路についてなど【高校生のお子さんのいらっしゃる方へのアンケート】ここからは高校生以上のお子さんのいる保護者の方の回答とコメントをピックアップしてご紹介します。中学卒業後の進路については41%の方が「中2」と回答をしました。その次に中1・27%と続き、進路先の見学などに備えて早めに考えるご家庭が多いようです。Upload By 発達障害のキホン受験をしたお子さんが76%という結果になりました。中学受験をしたお子さんの結果が29%なので、高校受験はかなり多くの方が通る道のようです。Upload By 発達障害のキホン・通常学級+通級指導教室/進路について考え始めた時期:中2将来なりたい職業を考え、そこに辿り着くために必要な進学先を絞り、その中から見学し決めた。・通常学級+通級指導教室/進路について考え始めた時期:中2体調があまり良くなくて、通信制で考えていました。スクーリングは心配でしたが、本人がワクワクする視点で学校を決めてもらいました。心配な点は私が学校に掛け合って合理的配慮をお願いするからあなたは心配な部分は考えなくていいんだよ!って伝えました。不安な部分は知ってる方に聞いたり、学校に確認していきながら徐々に減らしていくことができました!・結果に対する恐怖が尋常ではなく、追い詰められると声を発してしまうので、中学校の先生のアドバイスで別室受験しました。・高校説明会で個別相談で本人の特性を伝えた上で相手の様子を見て預けても大丈夫そうな高校にした。推薦で早めに進学先を決めて準備期間を長く持てるようにした。・県立高校でも必ず面接があるので、中学で生徒全員に所作や話す内容をチェックしつつ徹底的に練習を行ってくれた。息子はなかなか合格点をもらえなかったが、できるまで何度も練習していたようだ。本番の面接は想定した質問と違っていて対応できず(本人談)結果はギリギリの点数だった。結果は合格でした。中学卒業後の進路先は普通科高校が49%と一番多い結果でした。そのあとに通信制高校+サポート校(13%)、特別支援学校高等部(11%)と続いています。通信制高校(7%)と通信制高校+サポート校(13%)を合わせると20%となり、進学先に通信制高校を選ぶ方も多かったです。Upload By 発達障害のキホン・中学/通常学級→普通科高校へ進学息子にあった学校であるかどうかを考慮した。実際に学校説明会などで希望校の先生がおられるブースで、息子の特性と障害があっても受験が認められるか、受験が認められ合格後入学した場合に、必要な配慮は受けられるかを尋ねた。3校の先生に同様の内容で質問をしたが、どの学校も障害は問題にならないこと、過去にも特性のある学生は何人もいて、問題なく学生生活を送れていることなどを説明してくれた(いずれも私立学校)・中学/自閉症・情緒障害特別支援学級→単位制高校へ進学私は、その先の進路を見据えて特別支援学校が良いと思いましたが、本人の希望で高等学校へ進学。全面本人の希望で挑めることは、この時期しかないのかも、と思い応援しました。・中学/自閉症・情緒障害特別支援学級→通信制高校+サポート校へ進学本人が中学でうまく行かなかった分、高校で友だちと過ごしたり、通信制の中でも通学型にこだわりいろいろ模索したが、送迎も考慮し、市内にできた2年目の通信制高校に決めた。中学卒業後の進路先について合っていたと感じる方が75%と一番多く、どちらともいえないが17%、合っていなかったと感じるが8%という結果になりました。Upload By 発達障害のキホン・合っていたと感じる(中学/通常学級→普通科高校へ進学)ほぼ毎週担任の先生から電話をいただいて学校での状況を教えてくれています。特性も理解してくれ、サポートのやり方も素晴らしく安心して通わせています。・合っていたと感じる(中学/通常学級+通級指導教室→高等専門学校へ進学)似たタイプのお子さんが多い!(見た目も似ている!笑初めて、入学式でわが子を見つけられないという事態に…笑)いま高専で卓球部をつくろうと頑張っています。仲間を集め、顧問を探し、必要な手続きのために学生組織に掛け合うなど、中学校まででは考えられない行動力を発揮しています。誰も彼のことをバカにしたり煽ったりしない、という環境がそうさせるのだと思います。精神的に安心で安全であることが、どれほど子どもの成長にとって大事なことか、眼前で証明されているようです。・どちらともいえない(中学/通常学級+通級指導教室→高等専門学校へ進学)何度か体験授業などに参加し、入学後2か月は登校できていたが友人とのトラブルがきっかけで登校できなくなり退学となった。そのため、あっていたかどうかは分からない。進路先の支援や合理的配慮については満足している(31%)、おおむね満足している(36%)を合計して67%の方が満足をしている結果となりました。あまり満足していないは12%、不満があるは7%となり、支援を受けることによっての対人関係などで不安を感じることもありそうです。Upload By 発達障害のキホン・満足している(中学/通常学級+通級指導教室→普通科高校へ進学)対人関係や気持ちの不安定さから、自傷行為が多かったが、高校で休憩場所を設定してくれたり、カウンセラーに定期的に面談したりできた。何か問題があってもすぐに対応してくれ信頼関係ができた。・あまり満足していない(中学/自閉症・情緒障害特別支援学級→普通科高校在籍)特別支援学級ではないので、みんなが自分のことを支援が必要な人と認識しておらず、困っていても誰に声かけたらいいか分からない様子でした。また、支援が必要な人と周囲に認識されることも怖くて合理的配慮が利用できない状況です。高校卒業後の進路については多岐に渡ります。その中でも一番多かったのが大学(46%)でした。その次に専門学校(22%)となり進学を選択する(する予定)の方は68%となりました。一方就労については合計して18%となり、内訳としては障害者雇用での就職(7%)が一番多い結果となりました。Upload By 発達障害のキホン小学校高学年の合理的配慮、発達障害でも受験は可能?特別支援学級だと内申点がつかないの?専門家が解説!Q:小学校高学年になってきて低学年の時と違う合理的配慮の必要性を感じています。宿題やグループ学習時の配慮などをしてもらっていますが本人も勉強や周りについていけないようでつらそうです。特別支援学級への転籍も考えたほうがよいのでしょうか。A:いきなり転籍を考えるのではなく、通級指導教室などの利用を行って、個別の学習でどの点を補完していくとよいのかをアセスメントしたうえで転籍の判断をされると良いと思います。転籍先の特別支援学級の人数やメンバー、個別のニーズにどれくらい合わせてもらえそうか、交流学級との授業との割合などによっても変わってきます。また、本人が特別支援学級を体験し、メリットを感じるかどうかも大切な要素になるでしょう。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))Q:中学受験を考えていますがどのような配慮をしてもらえるのでしょうか?今後高校受験もすることを考えると学校側の迷惑にならないか不安です。A:発達障害などの診断があれば合理的配慮を求めることで入試の際の個別的な配慮は可能になります。ただし受験前の在籍校での個別の教育支援計画の中に合理的配慮の事項が記載されていたり、テスト時などでの配慮の実績を求められることがあります。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))Q:中学では自閉症・情緒障害特別支援学級に通っています。特別支援学級だと内申点がつかないなどと聞きましたが高校受験が不利になってしまうのでしょうか。A:障害があることや特別支援学級在籍であることによって入試が不利になることはありません。自治体や教育委員会によっても違いますが、内申書に代わる評価を行っているところもありますので在籍校や地域の教育委員会、私立であれば受験先の学校に訊ねてみてください。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年05月17日小学校入学3日目から友だちトラブルで学校から電話が……現在10歳の息子は、8歳のときにASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けました。衝動性が高くじっとしていられない、話を聞くのが苦手、イライラしやすく攻撃的になるといった特性があります。就学前、私たちは息子の発達障害に気づいていませんでした。通常学級に入学し学校生活がスタートしましたが、入学3日目には友だちとのトラブルが起き、学校から連絡が……。その後も集団行動が難しい、お友だちとの関係がうまくいかないなどの課題が続き、先生方の提案で、通級指導教室へ通うことになり、入室のため知能検査を行い、医療へつながることで発達障害が分かりました。一方、放課後に通っていた学童では大きなトラブルもなく、穏やかに過ごせていました。クラスとの大きな違いは、自由度の高さだと感じています。学童では、帰る時間やおやつの時間、使ってよい物などの基本的なルールはあるものの、それ以外は自由に過ごすことができます。自分のペースで行動できる学童は、息子にとってストレスの少ない居場所だったようで、学童に行きたいから学校に行っているという状況でした。不登校と学区外の自閉症・情緒特別支援学級への転籍友だちとのトラブルが続くなか、2年生になった息子。新しい担任の先生と相性が合わず、不登校になりました。妻は四六時中息子と一緒にいることで追い詰められていったように思います。家族全体がどうすればいいのかと精神的に落ち込んでいた時期です。このまま学校へ行かない選択肢をとるよりも息子にあった環境をとのことで、主治医や担任の先生と相談のうえ、3年生から学区外の学校にある自閉症・情緒特別支援学級へ転籍することを決めました。Upload By ユーザー体験談息子に転籍の話をすると「転校したくない」とのこと。しかし、今のままではトラブルが予想されること、また特別支援学級から通常学級に戻ることもできることなどを説明し、実際に見学してみたら、幸いにも前向きになってくれました。転籍後、3年生のうちはひたすら先生方や校長先生と情報共有を重ね、4年生になる頃には楽しく過ごせるようになりました。遠方なので、夫婦で送り迎えをしており大変ですが、息子にとって転籍は正解だったと思います。そして転籍とともに変化があったのは放課後の過ごし方です。転籍後も3年生の間は、元の学校のお友だちと繋がっていたいという本人の希望で、特別に許可を頂いて前の学校の学童を利用していました。しかし、親に学校へ迎えに来てもらっているので、そのまま家に帰りたいとなってしまうことが増え、次第に学童は利用しなくなりました。そして息子が荒れるようになったのです。予定がないことにイライラ?大声を出したり、暴力的に……学童へ行かなくなると放課後、予定のない時間が増えました。そんな時間を息子は「暇!」「誰か遊べ!」と言い、機嫌が悪くなるようになったのです。暇な時間が続くと、息子はだんだんと機嫌が悪くなり、大声を出したり、暴力的になってしまうことも出てきました。その段階で放課後等デイサービスを探しましたが、空きがなく利用することができません。私たちが住んでいる地域では、学童に入れるのが3年生まで。やがて4年生になると学童へ通えない上に周囲の子どもたちも塾や習い事で忙しくなり、一緒に遊べる友だちも激減しました。サッカーや発達障害に理解のあるプログラミング教室へ通っていましたが、習い事が始まるまでの時間で荒れてしまうのです。よくあるのはゲームかもしれませんが、実は息子はゲームによって暴力的な言動が現れた時期がありました。「もっとやりたい」とゲームを終えたあとも不満が爆発、学校に行かなくなることもあったのです。結果として、ゲームは完全にやめることにしました。ゲームをやめたことで、以前より落ち着いて自分をコントロールできるようになった印象はありますが、とはいえ、たまにお友だちの家でゲームをした日は、感情のコントロールが難しくなります。息子にとってゲームの影響は大き過ぎると感じています。そのため、ゲームなしで放課後を過ごせる方法を……と悩みました。そして見つけたのが発達障害の子どもに対応した訪問看護でした。発達障害の子ども向けの訪問看護Upload By ユーザー体験談訪問看護は、妻が通っているメンタルクリニックの主治医の先生から発達障害の子どもも医師の指示書があれば利用できることを教えてもらいました。息子のかかりつけ医に相談すると、家族以外の大人と過ごす時間を作るのもいいとのことで、週に2回、45分間、息子がやりたいことを中心とした関わりをしていただいています。よくやるのは工作などでしょうか。息子は訪問看護の時間をとても楽しみにしています。100%息子のことだけを見てくれる人と遊びながら褒められ、そのことで心が満たされるようです。落ち着いた様子を見せるようになりました。来てくださるスタッフは固定ではなく、4人ほどのローテーションで、年齢も性別もさまざまです。皆さん発達障害に対する理解があり、安心してお任せできています。また、出不精な息子にとっては、自分の家に来ていただけるという違いが大きいようです。※訪問看護は認知症以外の精神疾患も対象になります。精神科訪問看護を受けるためには、医師の精神科訪問看護指示書が必要です。厚生労働省|訪問看護息子の今後に向けて小学校卒業までは、現在のように平日は訪問看護やサッカー、プログラミング教室など何かしら予定がある状態を保ちつつ、予定までの時間をどう過ごすかを工夫していきたいと考えています。暇な時間には児童館に行ってみたり、自分で遊びを見つけて行動できるように促していきたいです。中学校以降のことはまだ明確には考えられていませんが、何かしらの部活動に所属し、放課後の居場所が持てるとよいと考えています。最終的な目標は、「自分のことを自分でできるようになり、一人で生きていけるようになること」です。そこに至るまでは時間がかかるとは思いますが、まずは困ったときに感情的にならずに「助けて」と言える力を育てていきたいです。エピソード提供/チノパンイラスト/志士ノまる(監修:新美先生より)転籍と放課後の過ごし方の変化について聞かせてくださり有難うございます。お住まいの学区の学校に特別支援学級がない場合など、転籍して別の学区の特別支援学級に通うこともあると思います。そうすると、通学や放課後の過ごし方にも影響があることもありますね。家族にお迎えに来てもらってまで学童に行くのが面倒になるという気持ちになるというのはあるあるですね。そうはいっても、家で暇になると、かえってイライラしてしまうというのも分かります。学校で頑張ってきた反動で、暇すぎてイライラしてしまうのかもしれません。このような場合、放課後等デイサービスの利用を検討することも多いかと思いますが、今回の場合は空きがなくて利用ができなかったのですね。そこでウルトラC!!訪問看護を利用されたのですね。このような訪問看護の利用のしかたもあるのかと目からうろこでした。訪問看護は、在宅で療養されている方に対して、医師の指示で訪問看護ステーションから看護師やリハビリ療法士が、ご自宅に訪問して医療的ケアやリハビリ等を行うサービスです。近年では発達障害や精神疾患のあるお子さんを対象とした訪問看護ステーションが、少しずつ増えてきています。まだここ最近増えてきたばかりなので、お住まいの地域によっては、対応している訪問看護ステーションがないところもあるかもしれません。また、あくまでも医師の指示が必要なので、お子さんの状態によって、主治医が適切と判断するかどうかにより、利用できないこともあります。今回のケースのような訪問看護の利用は、まだまだ一般的ではないかもしれません。発達障害の特性を理解して対応できる専門スタッフが、定期的に1対1で関わってもらえることで、お子さんの心理状態も安定してきたのですね。とても良かったです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年05月12日「発達障害当事者と非当事者の溝」とは?オールマイノリティプロジェクト代表 大島郁葉先生インタビュー発達障害の当事者が社会的孤立・孤独に陥らないフェアな社会の実現を目指すAll Minorities Project(オールマイノリティプロジェクト)。2025年5月17日より、ビジュアル展覧会「修復の練習」共催シンポジウムが開催されます。今回は、本プロジェクトの代表である千葉大学子どものこころの発達教育研究センター 大島郁葉先生のインタビューをお届けします。Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビ編集部(以下――)オールマイノリティプロジェクト 2025年ビジュアル展覧会「修復の練習」共催シンポジウムの開催、おめでとうございます!今回のテーマ「修復の練習:当事者と非当事者の溝を埋める」についてお伺いします。大島先生は研究者・支援者としての立場から、発達障害当事者の方と関わる機会が多いと思いますが、「発達障害当事者と非当事者の溝」とは、具体的にはどんなことがあげられるでしょうか?また、「修復の練習」という言葉に込められた思いを教えていただけますか?大島郁葉先生(以下大島先生):ご質問ありがとうございます。「発達障害当事者と非当事者の溝」とは、当事者性の差異について述べています。発達障害を頭で理解していることと、発達障害の方がその体験に基づきアイデンティティとして理解している感覚は、大きな温度差があるように思うからです。私は、当事者と非当事者の温度差があるという事実をお互いに認識したほうが、当事者の方とより率直な話し合いができるように思っています。また、非当事者がより謙虚な気持ちになって、当事者の体験に耳を傾けるきっかけにもなると思っています。「修復の練習」というタイトルは、本展示会のキュレーターである金澤韻さん(かなざわ こだま)さんが考案したものです。金澤韻さん(かなざわ こだま)さんプロフィール何か分かり合えないことがあって誤解を招いても修復可能性があるのだということを示したのだと思います。また、修復できなくてもそれはそれで構わないと私は思っています。多様性というのはそんなに楽しいものではなく、各々が努力を強いられることでもあるので、誰とでも無理してまで仲良くする必要はないし、距離をとったり、連絡を絶ったりする方法もあるのかなと思います。みんなで仲良くなろうという小学校教育の呪いのようなものを私たちは引きずらなくていいのかなと思っております。「修復の練習」シンポジウム、聴講のおすすめポイントは?――本シンポジウムには、精神科医の本田秀夫先生(信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室教授)、当事者研究者の仲田真理子先生(筑波大学人間系助教)、和田恵先生(福島大学人間発達文化類講師)が登壇されるとのことで、どんなお話が聞けるのか大変楽しみです。第0部「イントロダクション」、第1部「私たちの身近にある分断と修復」、第2部「社会の中の修復を取り巻く課題」、第3部「修復の練習」という構成になっていますが、聴講のポイントや、どのような方に聴講をおすすめするか教えていただけますか?大島先生:ありがとうございます。私は司会なのですが、仲田先生と和田先生は研究者でもありますが当事者の立場でもあるので、かなりリアルな話が聴けるのではないでしょうか。この中にも出てきますが、発達障害のある人が無理をしない生活や価値観とはどんなものか、どうすれば自分の自然体を受け入れられるか、何を大事にして、何を捨ててきたか、社会的な価値観とのせめぎ合い……といった、濃い体験談がありますので、ぜひどのパートも楽しみに聴いていただけますとうれしいです。京都の古民家を貸し切り、第一線で活躍するキュレーターによる現代美術展としての楽しみ方も――今回はシンポジウムの開催と共に、現地参加イベントとして京都の古民家で展覧会が行われるそうですね。展覧会の見どころや、特にこだわった点などがあれば教えてください。大島先生:今回は現代美術の第一線でご活躍されているキュレーターの方をお呼びして企画していただいたので、美術展としてのクオリティの高さは担保されていると思います。また、東京ばかりではなく、京都にしたのは、一軒家を貸し切りで展示スペースとすることができて、ゆっくりとしたスペースで展示が可能なこと、その他、魅力的な美術の展示が多方で行われていること、いつも東京である必要がないから、などの理由があります。この展覧会では、オールマイノリティプロジェクトで紹介してきた漫画の描きおろしなどもありますのでご覧いただけますと幸いです。Upload By 発達ナビ編集部――最後に、「発達ナビ」をご覧いただいている皆さまへメッセージをお願いします。大島先生:発達ナビをご覧の皆様は、当事者の方や、当事者のご家族の方も多くいらっしゃるかと思います。世の中には発達障害のままではまずいからこうしなさい、こういう学習方法があります、といった不安を煽る方法でトレーニングをさせたがる支援施設が割とあると思います。発達障害との付き合い方は、少なくともそのような欠陥モデルで捉えない支援者を見つけることが第一歩ではないかと思っています。よい支援者に巡り合い、よくよく自分の特性について理解し、どんな生活が皆さんや皆さんのご家族がたのしくて幸せになるか、ということを一緒に考えていけることを祈っております。「修復の練習」の対談は、そのような皆様の良いヒントになり得ると思いますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。おわりに発達障害当事者やその家族(マイノリティ)として、日々の生活の中で孤独や生きづらさを感じることがあるかもしれません。非当事者(マジョリティ)中心に形成されてきたこの社会で、発達障害当事者が心地よく生きていくためには何が大切なのか、本シンポジウムを通じて思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。【詳細】オールマイノリティプロジェクト2025年ビジュアル展覧会「修復の練習」共催シンポジウム開催日程:2025年5月17日(土)~2025年6月1日(日)・シンポジウム視聴方法:オンデマンド配信・ビジュアル展覧会「修復の練習」入場料:無料場所:The Terminal KYOTO(京都府京都市下京区新町通仏光寺下ル 岩戸山町424)(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年05月05日「マンガ発達障害の子どもと私たち」新章・アキラ編スタート!その他、放デイや勉強のつまずきなど4月に公開したさまざまなエピソードを紹介!大人気だった「マンガ発達障害の子どもと私たち」の新章・アキラ編がスタート!1歳半健診の「経過観察」を楽観視していた保護者の方が「自閉症」という言葉を知った出来事とは……?その他10か所に断られた放デイ探し奮闘記、勉強のつまずきに対する配慮や学校との連携、発達ナビでの「勉強のつまずき」アンケート結果などさまざまなエピソードを紹介しています。発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。新たにアキラ編がスタート!5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けたアキラくん。思い返すと1歳の頃から発語の遅れ、クレーン現象、呼んでも返事がない、ベビーカーの拒否などの兆候がありましたが、初めての子育てということもあり「そんなものなのかな」と気づかなかったとのことでした。しかし1歳半健診にて、周りの子の成長に驚き!保健師さんから「様子見ですね」と言われますが……「様子見」って一体どういうこと!?1歳半健診での「様子見」=「経過観察」を「様子を見ておけばいいのか」とそのままの言葉で受け取ってしまったM子さん。その後保健センターからの電話で受診を勧められましたが、診察の予約はなんと半年後!その間に少しでも言葉を増やそうと民間の知育教室(習い事)に通うことを決めましたが、アキラくんを見た先生から気になる言葉を聞きました。家に帰って調べてみるとそこには「自閉スペクトラム症」の文字が……!?就学前から探し始めた放課後等デイサービスでしたが、なんと候補だった10か所全てほぼ満員で門前払い状態!候補がすべて「空きがない」「いつ空くか分からないけれど待つしかない」という状態だったので、入学に合わせて放課後等デイサービスに通うことは断念せざるを得ませんでした。しかし学校に慣れた1年後、再び探し始め……。放課後等デイサービスを探すポイントなど、参考になりそうです。小学校に入学後宿題、学習の壁に直面したADHD(注意欠如多動症)の息子さん。スモールステップでできることを積み上げていこうと、できること、できないことを見極める作業は驚きの連続で……!?特につまずきのあった国語と算数をどのようにサポートしていったのかの具体的な手立てや、学校との連携の様子など、現在中学2年生になった息子さんの様子と共に振り返って頂きました。小学校1年生の6月頃、ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた娘さん。幼稚園時代は外でのびのびと遊んでいましたが、小学校へ入学するとすぐ「国語」で大きくつまずいてしまいます。文字を書こうとすると手が震えるようになった娘さんの様子を見て担任の先生に相談することにしました。宿題を減らそうと提案する先生に対して「みんなと違うことをしていいの?ズルになってしまう」と娘さんは泣き出してしまいます。そんな娘さんに先生がかけた言葉は……。発達ナビでは、会員のみなさまに『【勉強などのつまずきアンケート】どの科目でつまずいた?体育、算数、国語などへの取り組み、どう工夫した?』を実施、64名から回答をいただきました。苦手な教科やそれに対する気づき、支援・合理的配慮の実施、そしてその後の変化までをたどった具体的なお話も満載です。ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』は皆さんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児している皆さんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。皆さんのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年05月04日保育園生活は順調!?保健センターからの経過観察の電話、言葉が増えない息子を知育教室に通わせ始め……私が「自閉症(ASD/自閉スペクトラム症)」という言葉を知った日発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。アキラ編第2話です。現在5歳のアキラくんは最近ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。1歳半健診のときに「経過観察」となったアキラくん。M子さんは「様子を見ておけばいいのか」と言葉通りに受け取ってしまいました。保育園入園後も言葉が増えないので知育教室に通わせることに決めましたが……。Upload By ユーザー体験談1歳半健診のときに経過観察となり、保健センターの人から「2歳くらいになったら電話します」と言われたアキラくん。その後、電話がかかってきましたが……Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談発語の遅れが気になって知育教室へ。私が成長だと思っていたわが子との意思の疎通は「クレーン現象」だったの?発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第3章アキラ編の第2話目はいかがだったでしょうか。アキラくんは5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けています。1歳半健診で「経過観察」となったアキラくん。保健センターからの電話で受診を勧められましたが、診察の予約はなんと半年後!その間に少しでも言葉を増やそうと民間の知育教室(習い事)に通うことを決めました。体験の時は楽しそうに過ごしていたアキラくんですが、いざ通い始めるとギャン泣きで大パニックに……。見かねた先生と面談をし、普段の生活の様子を伝えると「クレーン現象ですね」と言われます。帰宅後、クレーン現象をスマートフォンで調べてみると、発達障害、ASD(自閉スペクトラム症)の記事がたくさん出てきて……「もしかして息子はASD(自閉スペクトラム症)なの?」と気づかされます。晴天の霹靂からの次回第3話「受給者証って何?申請と療育のはじまり」。続きもぜひご覧ください。イラスト/星あかりエピソード参考/M子(井上先生コメント)保育園に入ってお子さんの発達の遅れが分かるようになり、保健センターからも受診を勧められるが予約は半年後になると知らされ、親御さんもどうして良いかわからない不安な時期を過ごされたと思います。自治体によっても気づきから診断や支援の開始までの時間は異なりますが、この不安な時期をどのように埋めるかが行政的な課題となっています。親御さんに対する子育ての悩みを相談できる場所や専門家はおられると思いますが、その情報が直接伝わりにくいということも課題です。最近では一部の地域ではありますがペアレントプログラムやペアレントトレーニングなどのプログラムが受けられるところが広がってきています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月27日就学・進路の大調査!発達特性のある子どもの就学先は?【未就学・小学校低学年編】2024年12月20日から2025年2月28日に、LITALICO発達ナビでは「就学・進学アンケート」を行い、発達障害のある子どもの保護者283名の声が寄せられました。アンケートへのたくさんのご回答、ありがとうございました。通常学級に通っている中で、特別な支援が必要だと考えられるお子さんの割合は2022年の文部科学省のデータで8.8%という結果も出ており特別支援の必要性も年々と高まっているのが現実です。参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する 調査結果について|文部科学省発達障害のあるお子さんは一般的に就学相談で以下のような就学先を選択します。Upload By 発達ナビ編集部このコラムでは発達障害や特性のあるお子さんの選んだ進路、トラブル、悩み、進路先の合理的配慮など……アンケートの回答と併せて「就学・進学」にまつわる質問や思いなどもご紹介いたします。今回は「未就学・小学校低学年編」のアンケート結果になります。実際の経験談やデータは、就学先の検討をされているご家庭の皆さんの参考にもなるはずです。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」コラムや会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:283名の回答を集計しました。(調査期間:2024年12月20日から2025年2月28日)※設問によっては283名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。就学・進学アンケート お子さんについてアンケートの結果、男の子が71%、女の子が27%と、男の子の保護者の方の回答が多い結果となりました。Upload By 発達ナビ編集部年齢については未就学児のお子さんが20%、小学生のお子さんが34%、中学生のお子さんが19%、高校生のお子さんが16%、18歳以上のお子さんが11%という結果になりました。Upload By 発達ナビ編集部診断名についてはASD(自閉スペクトラム症)が176名、それに続きADHD(注意欠如多動症)が105名となっています。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と知的障害(知的発達症)など併存していることがデータから読み取れます。Upload By 発達ナビ編集部障害者手帳は「療育手帳」「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類があります。持っていない方151人に対して、持っている方は129人という結果になりました。一番多いのは療育手帳で73人の方が所持しています。また、昔持っていたが返還した、という方も3名いらっしゃいました。Upload By 発達ナビ編集部就学相談、いつからした?就学に向けて不安なことは?【未就学児のお子さんのいらっしゃる方へのアンケート】ここからは未就学のお子さんのいる保護者の方の回答とコメントをピックアップしてご紹介します。就学先は、多くの未就学児の保護者の方が不安を感じたり、悩むのではないでしょうか。現在考えている在籍クラスについては自閉症・情緒障害特別支援学級が43%と一番多い結果となりました。続いて通常学級+通級指導教室(17%)、特別支援学校(17%)、通常学級(11%)、知的障害特別支援学級(9%)となっています。Upload By 発達ナビ編集部・年長4月から。・年長の5月に説明会→その後夏までに個別相談、見学、体験を済ませた。・年長時の6月頃に直接小学校に電話してアポ取りして訪問しました。・自閉症・情緒障害特別支援学級希望本人が2つの教室を行き来することに納得してくれるか不安。・知的障害特別支援学級希望小学校ではどこまで支援体制を整えてもらえるのか。・通常学級+通級指導教室希望全てが不安です。恐らく通常学級+通級指導教室になるのではと思いますが、自閉症・情緒障害特別支援学級のほうが良いのか、放課後等デイサービスもどうするか迷っています。就学相談エピソードや進路決定の決め手は?【小学校に通っているお子さんのいる保護者の回答/小学校1.2.3年生保護者のコメント】ここからは小学校に通っているお子さんのいる保護者の方の回答と、その中から小学校1.2.3年生のお子さんのいる保護者より寄せられたコメントをピックアップしてご紹介します。現在小学校在籍中のお子さんのいる保護者が選んだのは、自閉症・情緒障害特別支援学級(27%)が一番多い結果となりました。その後通常学級(24%)、通常学級+通級指導教室(21%)、知的障害特別支援学級(16%)、特別支援学校(8%)と続きます。就学相談を行い、通常学級、特別支援学級、特別支援学校とそれぞれ見学などを重ね、最終的に在籍クラスを決めた方が多いようです。Upload By 発達ナビ編集部・通常学級通級指導教室の希望を年長の夏頃に教頭先生に出していましたが、教頭先生が忘れていて空きがなく、通級指導教室に通えませんでした。ですが、通級指導教室に通うとなると送迎や授業を抜けなくてはいけなかったり大変だったので、その代わりに担任の先生や、スクールカウンセラーの方や担当医の先生、子育て相談員の方に相談に乗っていただき逆に助かりました。・自閉症・情緒障害特別支援学級夫婦で揃って面談に出向き、心配されること、不安なことを全て吐露してきた。春頃と秋頃に、子どもを連れて、小学校見学に行き、本人に、通常学級と特別支援学級、どちらがいいか尋ねた。・特別支援学校へ就学特別支援学級、特別支援学校どちらがよいか悩ましいと担任の先生にも言われており、保護者としてもどうしてよいのか分かりませんでした。教育委員会の就学相談会では子どもの描いた絵や文字なども見ながら、なるべく多面的に娘の進路を考えようとしてくださってると感じました。なので、特別支援学校判定が出た際、娘にとって一番良い選択肢だと納得できました。・通常学級に就学本人にとってどこが合っているのか悩みました。診断がないので特に支援は受けられないということもあり、思い切って通常学級にしました。・自閉症・情緒障害特別支援学級に就学本人がみんなと違うクラスで落ち込まないか悩みました。・知的障害特別支援学級に就学少しでもできることを増やして自信をつけてほしい、本人の気持ちを最優先にした。実際に決めた就学先については、合っていたと感じた方が67%と一番多い結果になりました。どちらともいえない方は26%、合っていなかったと感じた方は5%でした。合理的配慮などを受けることで安心して通うことができたり、交流学級での体験が良い経験になっていることもあるようです。Upload By 発達ナビ編集部・合っていたと感じる(通常学級)少人数学級なので小回りがきき、子どもがしんどくなった時に「先生、ちょっと休んできます」と申告すると、10分ほど別室で休憩ができたりするので。・合っていたと感じる(自閉症・情緒障害特別支援学級)年を経るごとに、自分の状態に合わせて通常学級と特別支援学級を行き来できるようになった。学校も友だちも勉強も好きでいてくれた。・どちらとも言えない(通常学級)通級指導教室に通っていないので、なんとも言えませんが子どもは子どもでちゃんと成長していっているので、通常学級を選んでよかったです。療育にも通っているので、そちらのサポートはかなり大事だと思っています。就学先の支援や合理的配慮に満足をしている(25%)、おおむね満足している(52%)という結果となり、合わせて77%の方が満足していると回答しています。あまり満足していない(15%)、不満がある(4%)は合計19%と全体の約1/5は課題があるとの結果に。お子さん一人ひとりに合った支援がより一層求められています。Upload By 発達ナビ編集部・満足している(自閉症・情緒障害特別支援学級)1クラス9人に先生2人なので目が行き届いていると感じる。体育の授業で自転車に乗れるようになるまで指導してくれたり、お買い物の仕方など生活に必要な技術を身につけさせてくれるので助かっている。・満足している(特別支援学校)非常に手厚いと感じています。一人ひとりにあった学習内容を考えてくださるので、ゆっくりではありますが確実に成長できていると感じます。・おおむね満足している(自閉症・情緒障害特別支援学級)学校でのことを話さないので、状況が伝わってこない。特別支援学級でのことは連絡帳や先生との話からある程度知れるが、通常学級でのことは分からない。・おおむね満足している(通常学級)担任の先生によって配慮や手厚さが異なる。学校にWISCの結果や配慮事項は共有をお願いしているものの、個人情報すぎて金庫に収納されているらしく、校長等の管理職から担任へ共有されていないことも。結局毎回同じものをお渡しし、説明している。【未就学のお子さんの保護者】就学についての悩みや入学後の合理的配慮について専門家が解説!Q:今後子どもの就学相談を控えています。障害のある子どもの就学先はどのように決定されるのでしょうか。A:就学先決定までの簡単なプロセスを紹介します。まず、アンケートにあるように、年長児になってから園の先生、就学先の学校などと就学に関する支援会議が持たれます。この間、いくつかの学校や学級を見学したり体験入級をしてみたりして情報を集めていきます。いろいろな先生の話を聞いたり、パートナー同士で意見交換をしながら現時点での選択肢を固めて、希望を提出します。自治体での就学支援委員会によって望ましい就学先が決定され、通知されます。もし親の意見と合わない場合は、教育委員会と相談することになります。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))Q:小学校入学後に合理的配慮を受けたいです。就学前に準備したほうがいいものや受けたほうがいい検査などを知りたいです。A:小学校での合理的配慮は主として通常学級で行われることが多いです。具体的にどのような場面で配慮が必要かは入学してからでないと分からない部分もありますが、園や保育所などで個別的な配慮を必要としている場面があれば同様の場面でどのような配慮が必要かを入学前に学校と話をしておいてもよいでしょう。配慮の内容によっては主治医からの診断書や意見書などがあったほうが良い場合もあります。検査などの具体的データがあると配慮も受けやすくなるので学校に相談してみて頂ければと思います。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年04月20日息子の発達、遅れてる!?5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断。兆候をことごとくスルーしてきた楽天的な私の体験発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。今回から新たにアキラ編がスタートします。M子さんのお子さん、現在5歳のアキラくんは最近ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。思い返すと1歳の頃から兆候はありましたが、保護者の方は初めての子育てということもあり「そんなものなのかな」と気づかず。一体どのような兆候があったのか、その後支援に繋がり診断を受けるまでをマンガで振り返ります。Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談発語の遅れ、クレーン現象、不安を感じやすい、指差ししない……今思うとこれって予兆だったの?発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第3章アキラ編がスタートしました。アキラくんは5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けています。1歳を過ぎた頃から発語の遅れ、クレーン現象、呼んでも返事がない、ベビーカーの拒否などがありましたが、保護者の方は「初めての育児だし。こんなものかもしれない」と思います。しかし一歳半健診にて、周りの子の成長に驚き!でも「保育園に通っていたり上にきょうだいがいるのかも……」と思い、ヒアリングへ。ヒアリングも特に問題なしと思っていたのもつかの間、保健師さんから「経過観察」と判定されました。「でも、経過観察って母親が様子を見ておいてねって意味だよね?」と特に心配をしなかったM子さんでしたが、この後保育園に入り、だんだんとアキラくんの言葉の遅れが目立つようになってきて……。次回第2話「支援に繋がり、初めて『自閉症(ASD/自閉スペクトラム症)』という言葉を知った私」。続きもぜひご覧ください。イラスト/星あかりエピソード参考/M子(監修:井上先生より)初めての子育てでは、お子さんの気になる行動はあったとしても、それがASD(自閉スペクトラム症)の症状だとは思わなかったという方は少なくはありません。発達の遅れを心配して不安になることがあってもネットなどの情報でまだ大丈夫かなと安心したり、相談に行くのをためらったり親御さんの気持ちも揺れ動く時期だと思います。近くの子育て支援センターや児童発達支援センターなど身近なところがあれば勇気を出してお話を聞きに行ってみるのも良いでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月17日ドキュメンタリー作品『「秘境駅清掃にハマってる」JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』受賞インタビューUpload By 発達ナビ編集部2025年2月26日に、Yahoo!ニュース主催「ベスト エキスパート2025」が発表されました。ドキュメンタリークリエイター部門では、発達障害のある男性を追いかけたドキュメンタリー作品『「秘境駅清掃にハマってる」JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』を配信した映画監督・俳優・演出家の太田信吾さんが特別賞を受賞。今回は、太田さんにドキュメンタリー制作への思いをインタビューしました。発達障害のある男性による秘境駅の清掃を巡る物語。ドキュメンタリー制作への思いとは?―― この度は、Yahoo!ニュース主催「ベスト エキスパート2025」において、ドキュメンタリークリエイター部門 特別賞を受賞されたとのこと、おめでとうございます!太田さんの作品『「秘境駅清掃にハマってる」JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』について、どのようなきっかけでドキュメンタリーの制作を始められたのでしょうか?太田信吾さん(以下、太田さん):ありがとうございます。私は長野県千曲市出身なのですが、大学生の頃には早稲田大学の学内でサークルをつくり、長野県下でNo.1の高齢化率に直面する長野県天龍村で自治体とも連携をしながら村の課題を解決するためのボランティア活動に励んでいた時期がありました。当時、村内のいくつかの空き家をお借りして滞在をしていたのですが、2021年に学生時代にお世話になった方から電話があり「最近、君たちが滞在していた場所に面白い若者が来てるから会いに来てみたら?」と言われました。私は久しぶりにお世話になった方々に会いたいということもあり、村を訪れました。そこには見慣れない清掃器具や改造された清掃用品が多数置かれており、「誰だこの人は!?」と興味を惹かれました。清掃という仕事にあまりフォーカスが当たることは少ないと思うのですが、彼と接していると清掃は娯楽でもありメディテーションでもあり、コミュニケーションのツールでもあり……美化や環境整備という従来の意義だけではない可能性に気づかされ、この驚きを映像で伝えたいと思いました。――ドキュメンタリーで取り上げられていた髙橋祐太さんは、行動力にあふれ、積極的にいろいろな方とコミュニケーションをとりながら支援の輪を広げていく様子が、素晴らしいなと感じました。実際お会いしてみて、髙橋さんはどのような方でしたか?また、ドキュメンタリー制作を進める中で、気をつけた点や大切にされた点などを教えていただけますか?太田さん:良くも悪くも一つのことに集中し始めるとほかのことが見えなくなるタイプの方だなと思いました。自分自身も落ち着きがなく多動的で周囲が見えなくなることが多々あるので、シンパシーを感じました。ドキュメンタリーは他者がいてこそ成り立つものなので、あまりこちらのペースを押し付けすぎないようには気をつけました。彼のリズムを崩さないように。ニュースへの掲載が、多くの支援者や協働者が関わるきっかけに――作品では、清掃活動やイベント企画を行っている髙橋祐太さんの生き生きとした表情、心配しながらも清掃活動を見守るお母さまの姿がとても印象的でした。太田さんが作品の中で、特に心に残ったシーンはどのようなところでしょうか?太田さん:感謝状を受け取るところです。初めて、第三者にオフィシャルな形で評価をいただくことができた場面だからです。清掃の場所が秘境駅周辺ということもあり、なかなか人に気づかれず、評価をしてもらいづらい状況がありました。もちろん彼は好きでやっているだけで評価を得るためにやっていないのですが、「トレイルイベントを実現する」という目標のためにはやはり応援者が不可欠で、そのためにもこの感謝状やYahoo!ニュースへの掲載が大きな転換点となり、多くの支援者や協働者が関わるきっかけになったと感じています。――髙橋さんのように発達障害のある人が地域で暮らしていくときに、必要だと感じたことはありましたか?太田さん:周囲の方々の理解が必要だと思います。髙橋さんの場合は、危険が伴う場所で活動されているということもあり、活動に熱が入るがあまり安全面は疎かになりがちです。 そういった時に髙橋さんのお母さんのように理解があれば、GPSで状況を確認したり、こまめに連絡を取ったりと、安全を確認しながら彼のやりたいことを実現することが両立できると感じています。 またそれをネガティブなこととして捉えすぎないことでしょうか。個性としてそれを活かせるライフスタイルや環境をつくっていくことで、障害が魅力や個性になることは大いにあると思います。――ポータルサイト「発達ナビ」は、発達障害のあるお子さまの育児をされている保護者の方や、支援者の方に多くご覧いただいています。太田さんが本作を通じて伝えたいメッセージを教えてください。太田さん:ぜひ作品をご覧いただきご感想を寄せていただいたり、周囲の方々とのコミュニケーションを振り返る機会、自分の人生の目標を改めて考えるきっかけなどにしていただけたらうれしいです。小和田駅にいらっしゃる時にはタイミングが合えば髙橋さんとご案内させていただきます。『「秘境駅清掃にハマってる」JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』「ベスト エキスパート2025」の受賞者や授賞式の詳細については、以下の特設ページでご覧いただけます。太田さんの作品『「秘境駅清掃にハマってる」JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』も、ぜひチェックしてみてください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月20日知的障害特別支援学級に通う息子。放デイの先生から「自閉症・情緒障害特別支援学級では?」と言われ……現在7歳の息子は、おしゃべり好きで人なつっこいのですが、不安感が強めです。小学校入学後、7歳7か月でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。聴覚過敏や触覚過敏の特性もあります。息子はこども園の年少の頃から、半年に1回程度の頻度で新版K式発達検査を受けていました。その結果、全領域DQ82という数値が出ていました。この検査結果を活用することで、夫や両親への説明がしやすくなり、また園の先生との情報共有にも役立ちました。もちろん知的障害(知的発達症)の有無についても気になっていたため、WISCを受けることも検討しました。しかし、当時の息子は多動傾向があり、指示を理解することも難しそうだったため、検査を受けても判定不能になるのではないかと考え、見送りました。就学相談の結果、知的障害特別支援学級が望ましいとの答申を受け、現在は知的障害特別支援学級に所属しています。しかし、小学1年生の1学期半ばに放課後等デイサービスの先生から、「えっ、○○くんは知的障害特別支援学級なんですか?自閉症・情緒障害特別支援学級だと思っていました」と言われました。Upload By ユーザー体験談放デイの先生の言葉が頭の中でめぐり、(息子にとって本当に合っている場所は今のクラスじゃないの?)と、不安がじわじわと広がっていきました。これまでの選択が正しかったのか、自信が揺らぎ始め、(知能検査を受けなければ)と決意しました。知能検査の実施と結果小学1年生の夏の個別面談で、知的障害特別支援学級の担任の先生に相談したところ、「学校を通じての知能検査は、小学4年生頃を目処に行う予定です。それ以前に受けても正確な結果が出にくいことが多いので、今は見守っていきましょう」と言われました。私自身も、息子の学びの様子を見ていて今の知的障害特別支援学級が合っているように思えたため、(急がなくてもいいか……)と納得しました。しかし、その数か月後、放デイでWISCを受けられる機会が訪れました。放デイの運営会社が、ある大学と共同研究を行っており、そのモニター募集の一環として、作業療法士によるWISC検査が実施されることになったのです。息子は最初「えー、やだな~」と言っていましたが、検査を行う作業療法士さんが子どもの扱いに慣れた優しい方だったため、安心した様子で検査に臨みました。作業療法士さんによると、「何度か集中が途切れたり、離席して話し始めることもありましたが、声かけをすれば着席し、課題を再開できました」とのこと。問いに対する理解は十分だったそうです。そしてWISC結果、息子のIQは平均値の範囲内に収まっていることが分かりました。「息子には知的障害(知的発達症)がない……?では転籍しなければならないの?」私は驚きとともに、どうすればよいのか不安でいっぱいになりました。Upload By ユーザー体験談転籍する?勉強では相対評価に、現在良好な人間関係もリセット?秋の個別面談の際、知能検査の結果を担任の先生に伝えました。すると、先生から「自閉症・情緒障害特別支援学級への転籍も視野に入れながら考えましょう」との提案がありました。ただし、2年生での転籍は時期的に間に合わないため、3年次の転籍を視野に動く方針となりました。しかし、私は「本当に転籍すべきなのか」と強く迷っています。主に気になっているのは、「勉強」と「人間関係」です。私が息子の学びの場を考える際、大切にしている指標は以下の3点です。・勉強を負担感なく毎日続けられる場所か・毎日行きたい(行ってもいい)と思える場所か・つまずいたときに立ち止まったり、ゆっくり進んだりできる雰囲気があるか息子は不安感が強いため、「難しい」「しんどい」と感じたときに適切にサポートを受けられる環境が望ましいと考えています。そのため、担任の先生から「知能検査の結果からすると、通常学級か自閉症・情緒障害特別支援学級かを選ぶことになると思いますが、どうお考えですか?」と尋ねられたとき、私は「自閉症・情緒障害特別支援学級で検討したいです」と即答しました。Upload By ユーザー体験談また、転籍のメリットとして、息子の学力や得意なことを伸ばし、将来の選択肢が広がることを期待しています。しかし、同時に不安も大きく、特に「成績の付き方の変化」や「授業進度の違い」が気がかりです。息子の学校の自閉症・情緒障害学級では、成績は「相対評価」で、授業進度は通常学級と同じだそうです。息子は失敗することや負けることへの恐怖心が強いので、そうした変化を柔軟に受け入れられるのか……。また息子は現在の知的障害特別支援学級のクラスメイトや先生との関係が良好で、学校生活を楽しんでいます。一方、自閉症・情緒障害特別支援学級の担任はキビキビしたタイプの先生のようで、息子は「あの先生、苦手。よく大きな声出してるし、怖い」と話します。また、自閉症・情緒障害特別支援学級には「大きな怖い声を出す子がいる」「乱暴な子がいる」とも言っています。Upload By ユーザー体験談もちろん、クラスの雰囲気は年度によって変わるものですが、今の環境が安定しているだけに、「本当に転籍して大丈夫なのか」という気持ちは消えません。自閉症・情緒障害特別支援学級か、知的障害特別支援学級か——今後の選択に向けて息子はこの1年で忍耐力がつき、見通し不安も軽減されるなど成長が見られます。そのため、今後どの環境が最適かを慎重に見極める必要があります。知的障害特別支援学級であれ、自閉症・情緒障害特別支援学級であれ、息子に合った学びの場がどこなのか――私はこれからも考え続けていくことになりそうです。イラスト/マミヤエピソード参考/苗(監修:新美先生より)知的障害特別支援学級に在籍しているのに、知的障害(知的発達症)がないことが発覚したという悩ましい状況について聞かせていただきありがとうございます。このようなこと、実は結構よくあります。例えば自閉特性のため幼少期のコミュニケーション面の発達が特にゆっくりなお子さんでは、就学前の時点では知能検査が実施できなかったり、実施できても数値が低めに出ていたりして就学時は知的障害特別支援学級に在籍することになったのに、数年後コミュニケーション面が追い付いてきて検査に取り組みやすくなり、知能検査を実施、再検したら実は知的障害域ではなかったというようなことは起こり得るのです。知的障害特別支援学級は原則は知的障害(知的発達症)がある方のための学級なので、最新の知能指数が知的障害域でない場合、転籍を迫られるということも起きうることです。知的障害特別支援学級では、個人に合わせた学習をしていて必ずしも学年相応である必要はなく、自閉症・情緒障害特別支援学級では学習は原則、学年相応の学習指導要領に沿った学習をすることになっているので、知的障害特別支援学級から自閉症・情緒障害特別支援学級に転籍すると、お子さんによっては、学習がいきなり飛んでしまったり、難しくなってしまったりということがあるかもしれません。このような時に転籍をしない選択肢があるかどうかは、地域や学校によっても異なります。お子さんにとって転籍をしたほうがいいのかしないほうがいいのかについては、直近のこと、将来のことさまざまな視点から検討していく必要があり、知能検査の数値だけで決められるものじゃないですよね。悩める状況は現在進行形のようなので、また機会があったらどのように決めていったのかについても聞かせていただければありがたいです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月19日当時1歳、おとの障害に気づくUpload By ほかかほ1歳頃のおとは、目が合わず、模倣せず、一緒に遊びたがらず、こだわりが強く、指差しせず、クレーン現象で要求を伝え、親への愛着が見られないなど、ASD(自閉スペクトラム症)によく見られる特徴を網羅していました。1歳3か月で歩き出すようになると、多動と衝動性も目立つようになってきました。道で手を繋いでいても、私の手を振りほどいて気になる物のほうへ突っ走って行くので、当時外を歩くのは命がけ。家の中でも家具や家電に登ったり倒したり、破壊行動や危険行動が止まりませんでした。私は当時、転勤帯同で周りに頼れる人もいなかったことから、おとを連れて近所の児童館や子育て支援センターによく行っていました。そこでもおとはドアを開閉し続けたり、フラフラになりながら階段昇降をし続けたりと、不思議なこだわり行動を繰り返していました。また読み聞かせ・体操・リトミック・キャラクターショーなど、参加したあらゆるイベントでその場から脱走。まともに参加できたことが一度もありませんでした。当時のおとは、とにかくその場に短時間でも留まっていることができなかった思い出です。このようなおとの特性が強く表れた行動に、転勤帯同の孤独も重なり、私は心身ともに追い詰められていきました。転機となった1歳半健診Upload By ほかかほ私の父はアスペルガー症候群(※)の診断を受けており、また私は大学生の時に心理学を専攻していたことから、元々発達障害について何も知らないという状態ではありませんでした。そのためおとが1歳前半の頃は、日ごろの様子から「おとは発達障害だろう」と認識しており、1歳半健診で発達の相談をしようと心に決めていました。当日1歳半健診の会場で暴れ、泣きわめき、嘔吐したおとを保健師さんが心配し、自宅での健診を提案して下さいましたが、私は「発達相談を受けたい」と強く希望しました。すると保健師さんがすぐに発達相談会場に通してくださり、その相談会場にいた医師から「息子さんは早く医療につながったほうがいいと思います」と言われました。この1歳半健診を契機に、発達外来のある病院への受診に繋がります。※以前は、言葉や知的の発達に遅れがない場合「アスペルガー症候群」という名称が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。適切な支援につながるUpload By ほかかほ1歳半健診で紹介された病院での診察と発達検査を経て、療育やOT(作業療法)、発達障害者支援センターなど各機関にスムーズに繋げていただき、適切な支援を受けられるようになりました。後にさらに転勤帯同して気づくのですが、当時これほどスムーズに適切な支援につながったことはとてもラッキーな出来事だったと思っています。その後も夫の転勤帯同の度に、各地で福祉・医療現場の皆さまに支援をしていただきました。小学校に入学してからは学校の先生方にも支えていただき、今に至ります。適切な支援を受けたおかげでおとはとても成長し、私も相談先や休息の時間を確保でき、追い詰められていた気持ちは消失していきました。おとの現在の様子Upload By ほかかほ現在のおとは小学3年生。昨年の秋に転勤に伴う転校をし、転校前と同様、公立小学校の特別支援学級に通っています。おとは未就学児時代と比べて格段に成長しました。長年私を悩ませた多動はほぼなくなり、破壊行動は一切せず、親への愛着が生まれ、愛情表現を毎日してくれるようになりました。おとは学校の先生を信頼しており、授業を楽しみにし、苦手なことも素直に頑張っています。そして、いつもニコニコ楽しそうにしています。しかしおとは知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)。脳の機能障害であり、治ることはありません。現在おとが抱える問題は「言語」と「他者との関わり」の2点が主だと思っています。「言語」は知的障害(知的発達症)もあるため、複雑な会話、自分の心情・出来事・状況を詳細に語ること、また複雑なストーリーを理解・表現することが難しいです。本人もうまく伝えることができず、もどかしく、しくしく泣く時があります。「他者との関わり」は、おとは大人にはよく話しかけるのですが、同年代の子どもに対する関心がほとんどなく、自分からはほぼ話しかけません。お友だちから話しかけられても無視してしまうことが多く、転校前はそれが原因でお友だちとのトラブルに発展したことも何度かありました。この主な2つの問題以外にもおとは、完璧主義・こだわりの強さ・偏食などさまざまな問題を抱えています。しかしおとは毎日ニコニコして課題に素直に挑戦し、頑張っています。今私にできることは、毎日おとと向き合い、おとが適切な支援を受けられるようにし、自立に向けてスモールステップで一緒にコツコツ課題に取り組んでいくことだと思っています。そしておとを見習い、毎日笑顔で素直な気持ちでいること。そんな私たちのこれまでの、これからの経験がもしも誰かのお役に立てたならとてもうれしいです。今後もコラムをお読みいただけましたら幸いです。執筆/かほ(監修:室伏先生より)かほさん、おとさんのお困りに気づかれてから、医療に繋がり、支援を受けられるようになるまでの経緯を、かほさんのお気持ちを交えながら詳しくお伝えいただき、ありがとうございました。医療や福祉に繋がって、さまざまな情報や支援を得ることはとても大切なことですよね。地域にもよりますが、医療機関の受診がなくても療育を受けられる場合もあり、療育を受けていらっしゃるお子さんの中でも、医療に繋がっている方、発達の相談については医療機関を受診をしたことがない方がいらっしゃると思います。療育手帳の取得にも必ずしも医療機関の受診は必要はなく(療育手帳の発行でも児童相談所での検査や面談等は必要。精神障害者保健福祉手帳の発行には受診が必要です)、発達検査については発達支援施設でも受けられる場合があります。医療機関を受診された場合のメリットの一つとして、診断を受けることがあります。発達支援施設では、そのお子さんの得意なことや苦手なこと、特性についてお伝えすることはできても、診断することができるのは医師のみです。診断を受けることで、お子さんの困りごとや気になる行動について、親御さんの理解が進み関わりやすくなることもありますし、園・学校の先生、発達支援施設の支援者などとお子さんの特性や支援の仕方を共有しやすくなります。ほかには、睡眠や癇癪、多動などのお困りについて、薬物治療を受けることで、お子さんが過ごしやすくなり、発達、生活能力が伸びることもあります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月10日育児と仕事、服薬メリデメ、進路と働き方、合理的配慮など……発達障害のお子さんを育てる保護者の方にとって気になる問題は?発達障害のお子さんを育てる保護者の方にとって気になる問題を読者体験談コラムでチェック!2月は、子ども2人が発達障害・仕事復帰への道は?「育児と仕事の両立」についてのコラムや、小1でのADHD(注意欠如多動症)診断時から高1までの服薬生活を振り返った「服薬のメリットデメリット」について、通信制高校に通う場面緘黙の娘さんの卒業後の進路問題「高校卒業後の進路・働き方」、もしかしたら娘はLD・SLD(限局性学習症)なのでは?と感じてから診断・合理的配慮を受けるまでを綴った「学校で受けている5つの合理的配慮」についてなど、さまざまなエピソードをコミックエッセイ仕立てで紹介しています。子どもが小学生になったら「仕事復帰」、願いは叶わずーー。現在高校3年生の娘さん、高校1年生の息子さんは、二人とも小学校1年生でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。行き渋りや早退、学校トラブルなどがある子どもたちへの対応を優先すると、平日仕事をすることはどうしても難しいと感じ、仕事復帰を断念しました。しかし、放課後等デイサービスがきっかけで生活に変化が……!?仕事と育児の両立で悩んでいる保護者の方にぜひ読んで頂きたいコラムです。コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセ……これらのお薬の名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?小学1年生でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けた息子さん。服薬も同様に小学1年生から始めました。さまざまな薬を試す中で副作用に悩んだ日々や得られた効果、その後高校生になった息子さんの服薬についての課題や飲み忘れ対策など、服薬について知りたい方にとって参考になりそうな情報が満載です。※服薬については個人差が大きいので、使用の際は必ず医師に相談し、医師の判断に従ってください場面緘黙の娘、高校卒業後の進路はどうする!?現在24歳の娘さん、4歳の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断されています。こだわりが強く、場面緘黙があり、怒りの感情を抑えることが苦手です。小・中学校は学区の学校の通常学級に所属し、週1で情緒障害等通級指導学級(現在の通級指導教室)に通いました。高校は特別支援をしてくれ、通学もできる通信制高校に入学。その後迷ったのは、高校卒業後の進路のことでした。のちのち支援に繋がりやすいことを優先しようと考え、就労移行支援事業所に通うことを選びましたが……気になっている方も多い、将来の就労についてのコラムです。おしゃべりは上手なのに「あ」が読めない……!娘さんが小学校に入学して間もない5月末、国語の音読の宿題に取り組んでいたとき、「あいうえお」の「あ」を読めないことに気づいたハツネさん。「もしかしたらLD・SLD(限局性学習症)なのでは?」と感じ診断・支援のために奮闘をします。LD・SLD(限局性学習症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)と4種の確定診断が出たことで合理的配慮を受けることに。一体どんな配慮を受けているのでしょうか?ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』は皆さんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児している皆さんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。皆さんのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年03月08日LITALICO発達特性検査はどうやって作った?LITALICO発達特性検査は、発達が気になるお子さまと保護者のための、オンライン完結の検査サービスです。保護者の方がスマートフォンやパソコンから、お子さまに関する150問程度の質問に回答することで、発達特性や困りごと、よく見られる姿やその背景要因、お子さまに合ったサポートの方向性などを知ることができます。受検される保護者の方にとって、「LITALICO発達特性検査は信頼できる検査なのか」は大きな関心事の一つだと思います。そもそも検査がどのように作られているのか、信頼性をどう判断したらいいか、よく分からないという方も多いと思います。そこで今回は、LITALICO発達特性検査の開発プロセスや、品質をどうやって高めていったのかなどについてお話を伺います。※LITALICO発達特性検査は 医学的診断を行なうものではなく、お子さまの発達特性やその背景、適切なサポートの方向性などの情報を提供するためのものです佐藤先生:公認心理師、臨床心理士の立場から関わらせていただいた佐藤秀樹です。今回のプロジェクトでは、検査での質問項目や、質問の仕方、選択肢が適切かどうかなど、検査の妥当性や信頼性の質を担保する観点からアドバイスをしています。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部野田さん:作業療法士としてのお子さまの支援経験を活かし、LITALICOで研究開発をしています。LITALICO発達特性検査では、プロダクトマネジメントや尺度の研究開発、コンテンツのディレクションなどに関わりました。今回は、実際にどのような手順を踏んで開発していったか、開発するうえで大事にしたことなども、佐藤先生と一緒に分かりやすくお話しできればと思います。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部野田さん:LITALICO発達特性検査は「質問紙法の尺度を用いた検査サービス」です。そもそも、尺度や質問紙といった用語も馴染みがないかもしれませんが、質問紙法は、分かりやすく言うと質問項目の文章と、回答の選択肢で構成されたアンケート形式のことで、対象となる方、つまり受検者は、自ら質問文を読んでそれに回答します。その回答を判断するための基準も含めて「尺度」と呼んでいます。今回、質問紙の開発を進める中で、2つの点で品質の担保がより重要であると感じるようになりました。検査を製品として販売する以上、誤解を与えるような品質なものであってはならないということ。そして、このLITALICO発達特性検査がオンラインのソフトウェアという形であり、人の解釈を介さない検査であるため、尺度自体の品質がより重要になってくるという点です。そこで、実際にどのように尺度を開発し、品質を担保するかというところで、佐藤先生にご相談し、コンサルテーションをお願いしたという経緯です。尺度や質問項目をつくるのは一見簡単そうに見えますが、高い専門性がある方のアドバイスがないと、どうしても内容が偏ってしまったり、間違った方向に進んでしまうという危険性があると感じています。LITALICO発達特性検査は、COSMINという国際的な基準に基づいて開発しています。それは、COSMINに関して日本語版の翻訳に携わるなど、心理尺度の品質保証についての知見がある佐藤先生のお力を借りることができたからです。佐藤先生:LITALICOについては以前から、「発達障害のある方の支援や就労支援を、幅広い年代に画一的なサービスを提供するのではなく、ニーズに応じて関わっている企業」として知っていました。しかも「質問紙の妥当性を評価し、検査の質をどう高めて担保するか」という、私としても関心が高い分野だったので、関われてとても光栄でした。サービス自体は簡便に。内容や結果は妥当で信頼できるものを野田さん:検査をどうやって作っていったのか、一般の方には開発フローがイメージしにくいかなと思います。佐藤先生:一般的な尺度開発として広く行われている方法は、研究者のチームが中心となって、質問項目をたくさん準備するところから始まります。まず、検査でどんなことを知りたいのか(つまり測りたいのか)を検討したうえで質問項目を多めに集めて、質問紙の案を作ります。次にチーム内での話し合いや予備調査を行ないます。その結果をふまえて問題のある項目を見つけて修正するといった工程を経て、項目数を絞った素案を作ります。その後に、検査対象の方に実際に回答していただき、その数量的な結果をもとに、妥当性と信頼性を検討し、優れた項目だけをピックアップして質問紙を完成させるというプロセスです。野田さん:今回の開発で特徴的なのが、こうした一般的なプロセスよりも踏み込んで丁寧に行なった「内容的妥当性」の担保だったと思います。佐藤先生:内容的妥当性は、「質問紙の内容が妥当かどうか」ということです。「質問の仕方が適切であるか」「検査で測定したい状態がきちんと測定できているか」といった観点が必要になるため、専門家でも判断するのはとても難しい部分です。また、内容的妥当性は専門家だけでなくユーザーの方の立場からも判断しなければいけないので、これまでの質問紙開発では内容的妥当性が十分に担保できていないものもあったと思います。LITALICO発達特性検査の開発では、たくさんの保護者の方や専門家の方にご協力いただき、質問項目、質問の仕方、回答の選択肢が的を射ているのかなどについて繰り返し評価をして、尺度を開発できたというのが大きな強みだと思います。野田さん:LITALICO発達特性検査は、保護者の方がオンラインで回答する検査サービスということもあって、サービス自体は簡便に受けられるけれども、その内容や結果については妥当で信頼できるものであるべき、という点から、品質の担保に関してはできる限りのプロセスを踏んでいます。COSMINを基準に尺度開発を行ったこと、特に専門家だけではなく検査対象となる保護者の方への認知的インタビュー(※)を繰り返し行なうことで内容的妥当性を担保することができたことは、今回の開発の大きな特徴だと思います。LITALICOの尺度開発チームによる質問項目の素案を作成後、妥当な質問項目になっているか、その質問項目で検査で調べたい内容がきちんと測れるか、質問の文章が適切かなどについて、専門家と保護者の視点でそれぞれ改善を繰り返しています。専門家はデルファイ法(※)、保護者の方には認知的インタビュー※という手法で実施しています。時間も手間もかかる方法で、なかなか採り入れるのが難しいのですが、検査の品質を保つための重要なステップだと考えました。そのため、内容的妥当性を担保するために、保護者と専門家それぞれの認知的インタビューを1年以上かけて行なっています。※認知的インタビュー:「質問がきちんと理解できて意図された通りに解釈されているかどうか」を評価するために、参加者に尺度の内容について自身の考えや解釈を聞くインタビュー方法※デルファイ法:複数の専門家が質問項目をチェックし、意見に基づいて修正するプロセスを繰り返すことで、質問項目を精査していく方法Upload By LITALICO発達特性検査 編集部佐藤先生:内容的妥当性や信頼性が重要であるということ、このようなプロセスを踏むことが望ましいということは専門家も理解していて、これらを完全に無視した尺度開発というのはないと思います。ただ、認知的インタビューやデルファイ法は繰り返し実施する必要があるため、コストも時間もかかります。そのため、開発者としてはやりたいけれども、実際にはなかなか難しいというのが本音だと思います。調査にご協力いただける専門家や対象者を募集し、場所を確保するだけでも大変なことです。LITALICO発達特性検査の開発では、何より、ユーザーの方から直接話を聞き、一緒にプロダクトを作っています。同意が得られるまできちんと説明し、調査を繰り返し行なったということに頭が下がります。ーー佐藤先生がご存じの中でも、しっかりプロセスを踏んだ開発だったということでしょうか?佐藤先生:私の知っている中ではベストですね!野田さん:たくさんの保護者、専門家のみなさまにご協力いただいてなんとか実現できたところです。佐藤先生:一般的な予備的調査だと、1回だけ意見を聞いて、それを質問紙に反映するということも多いと思いますが、今回の開発では、同じ方にも質問紙の改定案をその都度見ていただいて、意見をもとに修正する、というのを繰り返し行ったというのが大きな(品質担保上の)強みだと思います。野田さん:インタビューして「ここは〇〇だった」という前回の意見をもとに改善して、そのアップデートしたものを見ていただいて合意を取って、そのうえで気になった点について意見をいただき、さらに直すというプロセスを数回繰り返しています。このような形で品質を重視する開発は、前例として多くなかったということもあって、方法論もあまり確立されていない部分もありました。その点は、佐藤先生に具体的なアドバイスをいただきながら進めていったところです。その中で、COSMINの基準についても、佐藤先生に教えていただいて採り入れることができました。佐藤先生:これまで、こういった尺度開発の手続きは、研究者独自のやり方で進めていることが多かったと思うんですよね。妥当性や信頼性の質に関しても、専門家がそれぞれ自分の判断で質を高めようとしていた部分が多いのですが、COSMINはそれらの手続きや質の評価を可視化するためにチェックリストを作成しています。COSMINチェックリストは検査の項目、尺度の質を評価する際の国際的な基準です。基準はさまざまな専門家や当事者の声も採り入れて設定され、妥当性や信頼性などの特性ごとにたくさんの項目があります。今回の検査は、COSMINの基準を満たすように開発されているので、国際的な基準に沿った開発になっていると言えます。その点で、内容的妥当性の質の担保がよくできているのがこの検査の強みだと思いますね。ーーこうした質の担保ができないと、どうなってしまうのでしょうか?佐藤先生:回答はしたけれども理解しにくい質問だったり、自身の経験や考えとは的外れな質問などが含まれている可能性があるので、回答者にとって負担になってしまうリスクがあります。また、受検するたびにばらついた結果が出てしまい、検査結果が安定しない恐れもあります。こうした問題は、検査の妥当性や信頼性を損ねる要因となります。野田さん:そういったことがないように、COSMINの基準をクリアできているか、というのをチェックしていくということです。どのようなプロセスを経たらいいか、どの程度のユーザー数でテストすればいいか、といったさまざまな論点について、基準をもとに開発で満たすように進めていったということですね。もし、クリアできていない場合、佐藤先生にアドバイスいただいてプロセス自体を改善し、なるべく高い基準を満たすように開発できたというのは大きかったです。佐藤先生:お子さまの状態像は一人ひとり異なりますし、支援者の専門分野が多様になると、その分さまざまな意見が出てきます。そのため、実際には認知的インタビューでの意見を完全に集約させて尺度に反映するのは難しいこともあります。こうした研究上の限界点はどうしても出てきますので、COSMINの基準を完全には満たせない項目が含まれてしまうことも少なくありません。その中でも、今回のプロダクトは厳しい基準をできるだけいい評価でクリアできるように開発されていると思います。野田さん:内容的妥当性の担保方法に関する知見があまり広まっていなかったこともあり、COSMINを基準に作成しようと決めるまでは、今回のようなインタビュー研究をこの規模で行なうことは計画されていませんでした。佐藤先生のCOSMINに基づいたコンサルテーションがなければ、このレベルで内容的妥当性を担保することは難しかったと思います。心理尺度や質問紙という形式の検査自体の強みと限界Upload By LITALICO発達特性検査 編集部佐藤先生:広くたくさんの方に簡便に回答していただきやすいのが質問紙法という検査形式の強みだと思います。例えば、発達検査の中には対面式の検査もありますが、お子さまや保護者の方と支援者が対面で検査をして所見をまとめるとなると時間もかかりますし、検査を実施できる専門機関や専門家の数も必要になってきます。特に地方にお住まいの方にとってはシビアな問題です。質問紙の場合、受検者に配布した質問紙の説明文を読んで回答していただくので、より気軽に受検できますよね。ただし、回答者の主観的な判断に基づいての回答になることについては、少し注意が必要です。回答だけをもとに、原因を確定したり診断したりすることはできません。それが限界点になりますね。野田さん:おっしゃる通りで、ユーザーとしては「検査」というと「診断」が出るということを期待される方も多いと思うのですが、LITALICO発達特性検査は医学的診断を行なうものではありません。しかし、診断がなくとも特性や困りとそれらの背景という観点で測定して、すぐにデジタルである程度個別化された情報を届けられるということが、このプロダクトの特徴だと佐藤先生のお話を伺って改めて感じました。検査結果レポートでは、診断の有無にかかわらず理解や支援の助けになる情報を、監修者の先生方と厳選しています。実際に自分のお子さまについて、なぜお子さまが困っているのか分からない、どうサポートしたらいいか分からないという場合に、お子さまの状況を把握するため受検していただくといいのかな、と思っています。そして状況に変化があるかを追っていくための確認としても使っていただけるようになるといいな、と。佐藤先生:そうですね。アンケート形式はとても回答しやすいと思いますし、いつでもどこでも回答できるというのはメリットです。この検査を糸口にして、より専門的な支援サービスを受けることを検討するなど、最初の一歩になりやすいツールだというのが強みだと思いますね。野田さん:逆に言うと、お子さまを支援したり、環境を作ったりするときに、検査だけで完結することはもちろん無理で、専門家を始め、周囲の関わる人たちが一緒に協業していかないと難しい部分は確実にありますね。また、ほかの検査の代わりに受検するというよりは、この検査のメリットを活かすことで、早期かつ簡便に、ある程度適切な情報や個別化された情報を得ていただいて、適切な支援や相談できる場所とつながる、より詳しい情報を調べるという形で使っていただけるといいなと思います。今回、認知的インタビューで保護者の方の意見を聞く中で、困りが一元的ではなくて、本当に多面的なんだなということが印象的でした。それは「質問紙で必要十分なのだろうか」「この形で本当にいいのだろうか」と制作の過程で問いなおすきっかけになりました。その意味でもインタビュー研究という形で尺度の質を確認していく、実際にユーザーの方にお話を聞くことが重要なんだなということを痛感しました。これが質問紙開発以外のプロダクト作りにおいても、ユーザーインタビューを積極的に行なうことにもつながったと思います。やはり、多様な困りに対して一つの形で答えていくしかないというのが質問紙という形式の限界でもあります。強みと限界があるうえで、既存の検査や人を介した直接的な支援と相反するものではなく、両立して使っていただけるものになったかな、というのが個人的に感じているところです。配慮や工夫を重ね、品質を高めた検査。多くの方に使ってほしいーー佐藤先生は、具体的にどのような方に使っていただきたいとお考えでしょうか?佐藤先生:お子さまの状態を知りたいという保護者の方はもちろんですが、私としては、この検査の結果をコミュニケーションのツールに使ってほしいという想いがあります。今回のプロダクトは、家庭の中でお話しする材料になりますし、あるいは学校だったり、支援機関の方と話し合う際の材料になるものだと思います。検査結果レポートの内容も大変充実しているので、そこがこの検査のすごくいいところですね。自分だけで抱え込まないで、いろいろな方とシェアをしてよりよい方向を検討するための第一段階のステップとして、すごく優れたツールだと思います。不安な気持ちと知りたい気持ち、いろいろな悩みを持たれて受検される方が多いと思うのですが、得るものもたくさんある検査だと思います。多くの方に安心してご利用いただけると、私としてもすごくうれしいですね。取材・編集:発達特性検査編集部撮影:タムラケンジ(記事の後編では、開発の過程で保護者や研究者の方の意見がどのように反映され、LITALICO発達特性検査がブラッシュアップされたのか、より詳しく伺いました。合わせてお読みください)
2025年03月06日子どもが小学生になったら「仕事復帰」。願いは叶わず私は妊娠中の悪阻がひどかったこともあり妊娠中に退職してからは、復職せず子育てに専念してきました。子どもたちが2人とも小学校に上がったら「仕事復帰するぞ!」と目標を掲げていましたが、2人ともに発達障害と診断されました。現在高校3年生の娘、高校1年生の息子は、二人とも小学校1年生でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。行き渋りや早退、学校トラブルなどがある子どもたちへの対応を優先すると、平日私が仕事をすることはどうしても難しいと感じました。夫からは「お金は何とかするから、できるだけ子どもたちを優先させて欲しい」と言われていたため、私は子どもの対応を最優先する生活を選びました。夫も会社に家族のことを相談、残業を減らして私や子どもたちへの支援に積極的に参加してくれました。そんな私が仕事復帰するまでと、それに対する子どもたちの反応についてお話します。息子の癇癪で学校呼び出し。娘は母子登校、帰宅後パニックになることも娘が小学校3年生、息子が1年生になったら仕事に復帰しよう……そう思っていましたが、その頃は働くことなど考えることができないほど、子育てで精一杯の毎日を過ごしていました。息子は癇癪があり、物を投げたり叫んだりして、授業を中断することが多々ありました。通常学級に所属していたため、担任の先生一人では対応できず、教頭先生が息子に個別で対応をしてくださいました。それでも私のところに早退の連絡が入り、学校に駆けつけることも……。Upload By ユーザー体験談娘は、小学校への行き渋りがあり、娘のペースで母子登校する時期がありました。登校してしまえば何とか学校生活を送ってくるのですが、心への負荷が強いようで、帰宅後にはパニックが起こり大変苦労しました。Upload By ユーザー体験談当時の私は必死でした。学校との面談も多く行い、学校とは連携を密にしていました。放課後等デイサービスがきっかけで私の生活に変化が!先生やスクールカウンセラーさんとも相談する中で、生活リズムをつけるために放課後等デイサービスを利用するのがいいのではないかという話がでました。基本的に家に居たがる傾向が強い子どもたちでしたので、行ってくれるか不安でしたが、放課後等デイサービスは学校よりも自由度が高いスケジュールの中で動いていくので、子どもたちにとって、過ごしやすい空間だったようです。予想に反して、スムーズに慣れていってくれました。そして見事に生活リズムがつき、その結果、私の時間に余裕ができたのです。隙間時間に、何かできないかな……と考えた時に、諦めていた「仕事」のことが浮かびました。仕事復帰したい!という気持ちが芽生えると、止まりませんでした。職場に「子どもたちに障害がある」と伝えるも、理解されていない……?私が働きたいと思った理由は、私が「○ちゃんのお母さん」と呼ばれる存在ではなく、一般社会に私個人として繋がりが欲しいと思ったからです。実際に今仕事をしていているのですが、職場で「△さん!おはよう」と言われると、不思議と元気が出ます。私自身が元気で気持ちにゆとりがあると、子どもたちにも優しく接することができます。「働くこと=お金を得る」ことだけでなく、私自身の気持ちの安定のためにも、社会で働くことは必要でした。Upload By ユーザー体験談私は看護師の資格を持っています。まずは短時間のパートを探して就職しました。「子どもたちに障害がある」ことは職場にも伝えました。ですが、職場仲間にはあまり理解されていなかったように感じています。子どもの癇癪やパニックで仕事を休む……となると、みんな不思議そうな顔をしていました。子どもが大きくなるにつれて、「中学生でもまだ親の手助けが必要なの?」と聞かれたこともあります。確かに定型発達のお子さんだと中学生になると友だちと出かけたり、一人で買い物にいったりすることは普通だと思います。でもわが家は……と落ち込むこともありました。ですが、今の職場は休みが取りやすいこともあり、5年以上勤続できています。働く私への子どもの反応また、娘は、クラスのお友だちに「私のお母さんは看護師なんだよ。頑張ってるんだよ」と自慢したようです。母の背中をみて、成長してくれると嬉しいなぁと感じました。Upload By ユーザー体験談上司からは「常勤にならないか」との話も出ていますが、子どもたちのことを考えると、緊急時に動きやすいほうが、ありがたいと思いパートを続けています。子どもたちも成長し、娘は大学進学が決まりました。息子は高校卒業後は専門学校で自分の夢を叶えるため勉強を続ける予定です。障害者手帳を持っているので、将来はグループホームへの入所も検討しています。まだフルタイムでは働くことは難しいですが、少しでも外で働くことは私にとって欠かせないものになっています。子どもたちがこのまま手を離れていったら私の働き方も変わるかもしれませんが、しばらくは家庭と仕事のバランスを取りながら、生活していきたいと思っています。イラスト/星あかり※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:室伏先生より)復職されるまでの経緯やお気持ちを詳しく共有してくださり、ありがとうございました。今はお仕事をする余裕がないけれど、本心ではお仕事をしたいと思っているご家族にとって、この記事は大きな希望の光になったのではないでしょうか。お子さまが安心して通える放課後等デイサービスを見つけられ、お母さまも活き活きとお仕事に取り組めるようになったとのこと、とても素晴らしいことだと思います。育児のためにやむを得ず退職や休職を選ばざるを得ないご家庭も少なくないと思います。放課後等デイサービスは、ご家族の負担を軽減してくれる大切なサービスですが、通える日数が限られているお子さまや、ニーズに合った施設を見つけることが難しい場合もあると伺います。放課後等デイサービスに限らず、発達障害児支援のさらなる充実により、ご家族の負担が少しでも軽減されることを願っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年02月14日2024年4月リリース!「LITALICO発達特性検査」の特徴や、お子さまのサポートに活かすヒントをまとめてご紹介新しい年が始まりました。春の就学や新学期に向けて、「もっとお子さまに合ったサポートがしたい」「園や学校、医療機関との連携を深めながら、合理的配慮についても相談したい」とお考えの保護者の方も多いのではないでしょうか?LITALICO発達特性検査は、お子さまの発達特性や困りごと、よく見られる姿やその背景要因、お子さまに合ったサポートの方向性などが分かる、オンライン完結の検査サービスです。このコラムでは、LITALICO発達特性検査の企画段階から参画し、多動・不注意/情緒・行動/感覚/運動(くせ)の検査結果テキストの監修を担当した公認心理師の井上雅彦先生のインタビューを中心に、LITALICO発達特性検査で分かることや、検査結果の活用のヒントなどを解説した記事をまとめてご紹介します。Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達特性検査では、お子さまの特性を、7の大分類と18の小分類に分けて測定します。本検査をご利用いただくことで、お子さまがどのような困りごとがあり、なぜ困っているのかを多面的に理解することができます。この記事では、LITALICO発達特性検査について、その特徴や対象となるお子さまについて、検査で分かること、受検方法などを分かりやすく解説しています。LITALICO発達特性検査に企画段階から携わっている公認心理師の井上雅彦先生は、「診断の有無にかかわらず、子どもの特性を理解し、対応方法や関わりの具体的な方法を提案できるツールが必要だと感じていた」と話します。この記事では、LITALICO発達特性検査ができた背景や、この検査で解決したい親子の抱える課題について、ご紹介しています。お子さま本人にとって障害となる困りごとや子育ての課題を解決するためには、お子さま本人の特性を理解し、その特性や困りごとに応じた対応方法を保護者の方や、園や学校などの周りの人が理解することが、とても重要です。この記事では、特性を検査するとはどういう意味を持っているのか、また、特性を検査することで、どのようにお子さま・ご家族の困りごとや課題をサポートしていけるのかについて解説しています。環境調整とは、お子さまが困りごとや困難さを感じる環境を整えることを指します。ストレスや困難が生じやすい環境を、お子さまに合わせて調整することで、心理的・行動的な困難を減らしていきやすくなります。また、お子さまの特性に適した環境を整えることで、課題や困りごとが軽減できるケースも多くあります。この記事では、お子さまのための環境調整のコツや、LITALICO発達特性検査の検査結果の活用方法を解説しています。園や学校はお子さまにとって、長い時間を集団で過ごす場所になります。しかしながら、集団での行動や学習、自立活動など、家庭とは異なる状況や困難が現れたり、家庭と同じようなサポートが難しかったりという場面も……。そのため、本人に合った環境やサポートの方法を、先生方と保護者が連携してつくっていくことがとても重要です。この記事では、LITALICO発達特性検査の検査結果を活用し、園や学校とスムーズに連携するためのポイントをご紹介します。子育てや福祉に関する窓口、教育相談の窓口などの相談機関は、ヒアリングや相談内容をもとに、保護者の方にアドバイスをする、適切な支援制度を紹介する、医療的な支援に繋ぐといった機能を持っています。その際に、重要になってくるのが保護者の方からの情報です。どのようなことに困っているのか、お子さまにどのような様子や行動の傾向がみられるか、保護者の方がどのくらい困難を感じているかなどを分かりやすく伝えることで、相談の具体性や、その先のサポートの適切さが上がります。この記事では、相談機関との連携の際に、どのように検査結果を活用できるかについて解説しています。発達が気になるお子さまの専門科としては、発達外来や児童精神科、小児神経科などがあります。医療機関での問診は時間が限られていることもあるため、事前にお子さまについての情報や、相談したいことなどをまとめておくとスムーズです。この記事では、医療機関との連携の際の検査結果活用方法についてご紹介しています。「検査結果を受けて、まずは何をすればいいの?」「サポートを試してもうまくいかない場合はどうすれば?」など、検査結果の活用についての疑問にお答えします。お子さまの対応や特性理解に活かすためのヒントを見つけてみてください。「LITALICO発達特性検査」で春からの新生活に備えてみませんか?LITALICO発達特性検査は、お子さまの発達特性や困りごと、よく見られる姿やその背景要因、お子さまに合ったサポートの方向性等を知ることのできるオンライン検査サービスです。お子さまの特性理解とサポートのためのツールとして、ぜひご活用ください。【受検方法】:保護者の方がオンラインにて150問程度の質問に回答いただく形式です【検査時間】:約30分(検査結果は回答完了後、すぐに確認いただけます)【検査価格】:2,970円(税込)※受検1回分の価格【対象年齢】:本検査の対象年齢は3歳~18歳です※就学猶予、原級留置(留年)で高校入学、進級が遅れた場合等は、19歳も受検することが可能です※本検査はお子さまの発達特性やその背景要因、適切なサポートの方向性に関する情報を提供するためのものであり、医学的診断を目的としたものではありません
2025年01月04日すでに診断やほかの検査を受けている場合、検査をする意味はあるの?公認心理師の井上雅彦です。LITALICO発達特性検査では、検査結果テキストの監修を担当しています。また、臨床の現場では発達検査などを実施する立場でもあります。LITALICO発達特性検査を受検されるかどうか、迷っている保護者の方の中には、すでにお子さまが医療機関や相談機関とつながっていて、これまでに診断を受けている場合や、発達検査や知能検査など、なんらかの検査を受けたことがある方もいらっしゃると思います。私はそのような場合も、LITALICO発達特性検査の受検は意味があると考えています。診断や、ほかの心理検査とは別のものとして、検査結果で得られるものが異なり、そして、医療機関や相談機関と連携し、併せて活用していただくことで、より意味が増してくるツールがLITALICO発達特性検査だからです。今回はそのことをテーマにお話しします。診断を受けている場合のLITALICO発達特性検査LITALICO発達特性検査は診断の有無にかかわらず、お子さまがサポートを受けやすくすることを目的としています。その前提のうえではありますが、すでに医療機関とつながっている場合には、LITALICO発達特性検査を併せて使っていただくことで、より具体的な支援に役に立つと思っています。一般的に医療機関での診察時間というのは、限られた短い時間であることが多いです。そうすると、その時間内に日々の具体的な困りに対する対応方法を一つひとつ医師と相談して解決法を探っていくというのは難しいかもしれません。また、医療の観点からのアドバイスを得たい場合もあると思いますので、ある程度相談したいことや、保護者の方が課題だと思っていることを整理しておくというのが、とても役に立つと思うのです。そのような場合に、あらかじめ整理したり、お子さまに合いそうなサポートの方法を試してみたりしておくツールとしてLITALICO発達特性検査を使うといいと思います。また、診断や特性自体は変わらなくても、お子さまの環境や年齢などによるライフステージの変化によって困りごとや特性の現れ方は変化することもあります。そのような場合に、この検査はお子さまの具体的な状態を把握するためにも大きな意味があると思います。ほかの検査を受けている場合のLITALICO発達特性検査検査と言っても、WISCや田中ビネーなどの知能検査や、Vineland(ヴァインランド)などの適応能力を調べるための検査、本人の不安やうつ傾向を調べる検査など、種類はたくさんあり、目的もそれぞれ異なっています。これらの検査はそれぞれ測定したいものがあって、それを数値で表すものです。例えば、知能検査では、認知機能の偏りについて測定し、IQ(知能指数)という数値で表します。この数値は、全体と比較してどの水準にあるかを示すことで公的な支援に繋げやすくするという役割があります。また認知機能の中でもどの領域に凸凹があるかというのを数値にすることで本人の困難さをより具体的に示すことを目的としています。検査結果として数値やグラフで示される検査が多く、保護者の方がもらえる検査結果レポートも、検査を実施する機関によって異なりますが、簡易なものが多いです。検査を実施した心理士などによるアドバイスが示される場合もあると思います。しかし、文量的にレポートだけで保護者の方がさまざまな場面で生じている困難の背景を理解し、日々のお子さまへの具体的な対応に役立てるということは難しいかもしれないですね。一方、LITALICO発達特性検査は、オンラインで保護者の方が受検して、日々のサポートに活かすことを目的にした検査です。その点で、レポートはお子さまへの特性理解を踏まえた対応をすることを目的とした作りになっていて、検査で分かったお子さまの特性に合うようなサポート方法のヒントが提示されます。また、検査で分かる領域も、まずはお子さまの特性や苦手を広く測れるように、7つの大分類、18の小分類を扱っています。生活と関連が深い睡眠の課題や、発達に特性のあるお子さまに現れることが多い行動や情緒の課題なども検査項目に含まれています。LITALICO発達特性検査はこうした広い領域を広くカバーするものであり、そのお子さまの特性や苦手なことの背景要因から具体的な対処法まで保護者の方にとって理解しやすい内容で説明されています。このことでお子さまの全体的な発達特性と一緒に対処法を理解することができます。ほかの検査と併用する場合、例えば、それぞれの検査結果をみて、「ああ、この検査の数値で表れている部分は、こういう背景要因があったからなんだ。ではサポートの方法を変えてみよう」などと理解を深めるきっかけにしていただきやすいと思います。また「以前受けた検査では苦手だった部分が、サポートの方法でカバーできている」という点も見つかるかもしれません。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部医療機関や相談機関の指示を仰がずに受検しても大丈夫?LITALICO発達特性検査は、検査という名前ではありますが、保護者の方がお子さまの困りごとや支援方法を把握するためのツールです。したがって、ほかの検査を受けている場合やかかっている医療機関がある場合にも、気軽に受検していただいて問題はないと考えています。もちろん気になる場合は、受検前に相談していただいてもいいと思います。中には、「すでに受けている診断や検査と矛盾する結果が出たらどうしよう」と悩まれる方がいるかもしれません。LITALICO発達特性検査は保護者の方の主観で回答する検査ですので、ほかの検査や医師の見立てとは異なる可能性もあると思います。もし、これまでの結果や見立てと違うという場合には、その点が医療機関や相談機関で相談されるいい視点になると思います。例えば、それぞれが課題に感じている点、それほど課題ではないと思っている点が違う場合は、詳しく相談したりすり合わせていくとスムーズです。課題の出る状況や場面が限定的な場合は、それを見つけること自体が環境調整のヒントになることもあります。検査結果は情報の一つとして捉えていただき、決めつけずにフラットな見方をしていただくと、前向きな話し合いやアセスメントがしやすくなります。また、そうした相談の際には、保護者の方が事前に相談の優先順位と要点を整理しておくと、短い相談の時間を有効に使えると思います。お子さまの困りごとは環境や状況、お子さま自身の発達やスキル獲得などによっても変化するので、お子さまの特性や困りごとをどのように把握してどのようにサポートしていくかという視点で、協力体制をつくれるといいですよね。受診・受検から時間がたった場合の「点検」にもUpload By LITALICO発達特性検査 編集部診断のある方でも、服薬治療がない場合には、頻繁な通院をしないというケースもありますし、頻繁に検査をしたり、診断を受け直すという方はそれほど多くないと思います。心理検査も、現状では費用やリソースの観点から、なかなか頻繁には受けられないかもしれません。そうなると、例えば、5歳児健診の時に診断や心理検査を受けて、それからしばらく間が空いているという場合もあると思います。また、発語の課題があって未就学の一時期に専門機関と繋がっていたけれども、その後言葉が出るようになったなどで、一度支援から離れているという方もいるかもしれません。特性のあるお子さまにとって、成長に伴って環境や状況が変わることで新たな課題や困りごとが現れるということは、珍しいことではないのです。例えば、限局性学習症に含まれる学習面での苦手は、その現れ方が一人ひとり違うので、例えば算数の筆算だけが苦手だとか、その学習をする年齢になってはじめて現れる困りごともあります。また、成長に応じて求められる態度やスキルが変化してくることもあるかもしれません。小学校までは許容されていた行動が、中学や高校では認められないという場合もあるかもしれません。人間関係やコミュニケーションや学習など、年齢によって複雑になっていき、そこで課題が出てくるというケースは多いと考えられます。そうすると、特性は変わらないのだけれども、困りごとが変わってきた、対応方法も変えた方がよさそう、という場面は結構あると思うのです。そのような時に、ぜひLITALICO発達特性検査を受検していただいて、変化がないかをみたり、対応方法を変えるきっかけにしていただくといいのではないかと思います。受検してみて、以前受けた診断や心理検査の結果と違うなと感じたり、家庭では対応が難しいと感じたら、その点を相談するために、ぜひ医療機関や相談機関と連携してみてください。医療・専門機関との間を繋ぐ共有ツールとしてすでに診断を受けられている場合、医療機関や専門機関で相談する機会もあるでしょうし、保護者の方もご自身でいろいろと知識を得て、日々のお子さまへのサポートを工夫されていると思います。検査結果のレポートを見て、「私のやり方で合っていた」「私の見立てと同じ」と感じる方もいるでしょう。そういった場合、自信を持って支援を進めていただく根拠になるかもしれないですね。また、背景要因としてまとめられているテキストを使ってよりお子さまの理解を深めたり、今まで試していない方法を見つけて、ヒントにしていただくのもいいと思います。もう一つ、LITALICO特性検査は保護者の方が感じていることの言語化ツールでもあります。ぜひ、医療機関や専門機関、あるいは園・学校・支援者・家族など、周りの方にも、課題に感じていることやお子さまの特性、その背景要因を周りの方と共有するためにも使っていただけることを願っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年12月18日ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)のある高校3年生の息子の小学校時代現在高校3年生の息子は、6歳でASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。息子は、小学校入学時から自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍し、学年や科目によって通常学級にも通うスタイルで、学校生活を送っています。通った地域の小学校は、通級指導教室の受け入れを行うなど支援が手厚い学校でした。この環境があったからこそ、息子は自分のペースで学び、成長することができたと思っています。小学校4年生の時に引越ししましたが、転校はせずにそのまま学区外通学を選択しました。私は毎日車で送迎、大変でしたが、「ここに通わせて良かった」と思えるほど学校の支援体制や先生方の理解が深かったのです。そして小学校6年生になり、中学への進路を考える時期になりました。私の住んでいる地域では小・中連携の取り組みが積極的に行われていたため、中学進学を見据えた事前見学や面談が多く、学校側からのフォローが非常に手厚かったです。こちらでは、中学校進学への準備や学校生活など、わが家の体験をお話したいと思います。苦手な板書や書き取りはほぼ免除、デジタル教材の活用。「困ったらすぐ相談しましょう」といってくれた中学校中学進学を控え、地域の中学校で行われた事前の見学や面談では、校長先生自らが対応してくださいました。これを聞けて助かったと感じたのは、授業や部活動、試験に関する具体的な話でした。例えば、教科ごとに先生が変わること、定期試験があること、体育などで着替えがあった場合の男女の分け方など、細かな点もすべて丁寧に説明していただき、息子も私たち家族も安心して新しい環境に入ることができたと思います。また息子は療育手帳が取得できなかったため、将来は高等特別支援学校に進むことが難しく、高校では一般入試を受ける必要がありました。そこに向けた相談もできたのは大きかったです。校長先生から「やってみて、もし困ったらすぐ相談してください。息子さんの過ごしやすいように変えていきましょう」と言っていただけたため、入学後も相談しやすい環境を作ってくださったと思っています。Upload By ユーザー体験談中学校生活では連絡帳を活用し、授業の受け方や席の配置、クラスの中でのトラブル対策など、状況に応じて調整が行われました。学習面でもIT化が進んでおり、苦手な板書や書き取りはほぼ免除され、デジタル教材を活用したことで理解度は高まったと思います。Upload By ユーザー体験談ただし、試験中、集中力が持続しないという面は解決できず、成績には課題が残りましたが、担任の先生が席の向きやタイマーの位置など工夫を凝らしてくださり、助けられました。また、勉強に自信がついてきた息子は数学検定に挑戦、無事合格をもらい喜んでいる姿を見て、私も嬉しかったです。このように順調だった中学校生活ですが、一つ大変だったなと思うことは電車通学のことでした。中学校で電車通学を開始。トラブルと自信の芽生え中学進学に伴い、息子は電車通学を始めました。事前に駅でのリハーサルを何度も行い、駅員さんに挨拶をして困ったときの対処をお願いするなど、私も念入りに準備を重ねました。Upload By ユーザー体験談電車通学は、単に学校への移動手段にとどまらず、息子にとって大きな成長の機会となりました。乗り遅れや忘れ物などのトラブルが起こった時、パニックにならず駅員さんに聞くなどして冷静に対処することができるようになり、息子は少しずつ自信をつけることができました。また、電車という他人と同じ空間を共有する場に一人でいるという経験を積むことで、少しずつ「他人を意識する」という感覚が育まれたようです。この変化は、家庭ではなかなか得られないものでした。Upload By ユーザー体験談やはり親としては一人で電車移動する子どものことは心配でしたが、チャレンジしてよかったと思っています。高校生活の終わりも間近。「自立」に向けた1歩を前にして現在、息子は定時制高校の3年生です。精神障害者保健福祉手帳を取得したので、卒業後は就労移行支援を経て社会に出ていく準備を進める予定です。生活面ではグループホームの利用を考えていて、少しずつ自立に向けたステップを踏み始めています。息子がここまで成長できたのは、周囲の支援のおかげだと思っています。感謝しかありません。小さい頃から比べるとできることも増え、大きく成長した息子ですが、それでも息子が周囲の人に興味を持ち始めたのはつい最近のことです。これからの課題は多いと思いますが、本人のペースで少しずつ「自立」に向けた歩みを進めていければと思います。イラスト/ネコ山エピソード参考/まつ(監修:鈴木先生より)小学校でも中学校でも社会性を身につけることは大事であり、誰に相談したらいいかが決まっていれば安心です。最近は小中連携した一貫校スタイルが公立でも見受けられるようになってきました。小学校での問題点などがそのまま同じ中学校へ引き継がれるため環境の変化に弱いASDの患者さんにはいいことなのです。また、6歳からADHDの治療はできるので、集中できないこと、忘れ物があること、時間処理の問題などは投薬である程度コントロールが可能です。ただ、高校生になると小児科では診てくれなくなり、精神科でもADHD治療のできるクリニックは限られてしまいます。今後は高校卒業後の就労支援がどの程度できるかで将来像が変わってきます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年12月15日小学校1年生の冬、発達障害と診断されましたUpload By もっつんタクが発達障害だと診断されたのは、小学校1年生の冬のことでした。授業中に静かに座っていられないなどの多動性と、道路に飛び出したりする衝動性が酷くて困っていました。病院に行って診察してもらうのは、私にとってとてもハードルの高いことでしたが、突発的な他害などが問題となったことが、病院で診察を受ける後押しになりました。スクールカウンセラーの先生に小学校で知能検査「WISC」を行っていただき、紹介状を書いていただいて診察へ向かいました。最初に行った病院では「親の躾の問題」とも言われ、タクの問題行動は私の接し方が悪いから?と、とても悩み落ち込みました。ですが、すごく親身になってくれたスクールカウンセラーの先生のおかげで別の病院で再度診察を受けることになりました。そして次に行った病院の小児神経科で、タクは正式にADHD(注意欠如多動症)だと診断されました。また、ASD(自閉スペクトラム症)の特性も強く持っているとのことでした。診断された時は「あぁ、やっぱり」と強く納得したのを覚えています。ついに服薬開始。先生の説明を聞く息子の反応は…Upload By もっつんこの頃のタクは道路で急に走り出したり、お友だちに対しての危険行為があったので早急に対策が必要でした。先生から提案されたのは薬の服用。ひとまず他害行為を落ち着かせるために、気持ちが落ち着く作用があるというお薬として、「インチュニブ」を処方されました。処方にあたって担当の先生はとても丁寧に、タクに向かって説明してくれました。「教室で急に走りたくなったり友だちを叩いてしまったりで、怒られてつらいよね。本当はやっちゃダメだって分かってるんでしょう?」「これは君の中の『ガマンしたい』という気持ちを手伝ってくれるお薬。これを飲んでも良い子になれるわけじゃないよ、ちゃんと自分でもガマンの心を応援してあげないといけないよ」と話す先生に、タクは「分かった!」と返事をしていました。子ども目線で話してくれる先生に感動しつつ、帰宅後も改めて薬を飲む意味を説明しました。少しでも他害や問題行動が減って、落ち着いた学校生活をおくれますようにと願いを込めて服薬開始したのを覚えています。服薬は本人の気持ちを応援してくれるサポーターUpload By もっつん幸いなことにタクの場合は副作用も現れずにスムーズに服用できていました。しかし効果もあまり感じられず、突発的なトラブルは発生していました。定期診察時に相談すると「神経系の薬は人によって合う合わないがある」と改めて説明を受けて、ほかの薬も試してみることにしました。そしてほかの薬を経て、タクがたどり着いたのは「コンサータ」という薬でした。1度の診察で処方できる量が限られているので、1か月に1回以上は通院する必要があり、薬局でも毎回登録カードと身分証明書が必要です。ほかの薬に比べて取り扱いが大変な印象があるコンサータでしたが、これはタクに合っていたようでした。本人も体感で分かるほどに「今やらなきゃいけない事に集中できる」と周りの雑音や誘惑に振り回されることが減りました。ちなみに母親である私自身もADHDがあり、コンサータを服薬しています。注意散漫になりがちな場面で、もう少し頑張れそうという気持ちが湧いて1つの事に集中できるようになったかなと思います。ただ、服薬はメリットばかりではないので、体調変化など気になることがあれば主治医の先生にご相談するようにしています。服薬しないと学校にも行けないの?と不安になる日々もあったけどUpload By もっつん合う薬に出合えてからは、タクは学校での問題行動が減ってきたようでした。特別支援学級の先生や補助の先生が手厚くサポートしてくださったおかげで友だち関係も改善されていきました。しかし平穏な時間はずっとは続かず、また少しずつ荒れていきました。仕事中の私に小学校から電話があり「タクくんが帰りたいと言っています、落ち着かない様子です」「今日はお薬飲み忘れでしょうか?持ってきてもらえますか?」という内容でした。何度もそんな事が続き、仕事を早退して迎えに行くこともありました。タクが学校で落ち着かないのにはいくつか理由がありましたが、原因の一つに薬の飲み忘れがありました。飲み忘れた日はやはり多動の特性が強く出ていて、友だちと衝突してしまうこともあったようです。忙しい日々で服薬について毎回確認できていなかったことに責任を感じつつ、「周りの子は落ち着いて登校できているのに、わが子は服薬しないと学校生活がままならない……」と必要以上に落ち込むことがありました。なんでこんなにトラブル起こすの?お願いだからトラブル起こさないで!とやり場のない感情で悩みは深まっていきました。タクの薬の飲み忘れについて改めて話すと、「最近調子が良いから、飲まなくても大丈夫だと思った」と言われたことがありました。しかし飲み忘れた日は結局気持ちも行動も落ち着かずに、失敗して怒られるという悪循環を断ち切らなければいけません。そこで、飲み忘れ防止のために工夫をしていきました。日付入りのピルケースに薬を準備したり、服薬チェック用のマグネットをつくったり。その甲斐もあってか飲み忘れることは減っていきました。薬は一生飲み続ける?Upload By もっつんこうして服薬を続けてきたタクですが、現在は中学3年生(特別支援学級に在籍)になりました。今の薬との付き合い方はとてもうまくいっていると思います。時々飲み忘れて登校してしまうこともありますが、明らかに授業中の集中力に差があるので補助の先生がすぐに気づいてくださり、自分で予備に持ち歩いている分で対応するなどしています。そしてタク本人の希望もあり、週末などは休薬日を設けています。特に放課後等デイサービスの友だちと遊ぶ日は「今日は飲まない」と言っています。気が合う友だちと思いっきり遊びたいという気持ちもよく分かるので、学校や放課後等デイサービスの先生と連携をとりながら対応しています。今まで服薬させながらの子育てを長くやってきて、この先も飲み続けるんだろうなぁ……と漠然と考えていた私でしたが、先日の定期診察の時に驚く事がありました。「来年は高校生になるから、受験が終わったら薬を減らしていこうね」と主治医の先生に言われたのです。びっくりして思わず「ええっ?」と聞き返してしまいました。この年頃になると内面もちゃんと成長していることが多く、最初から中学3年くらいで服薬は終わりにするつもりで処方してきたとのことでした。そして、注意欠如は残っていますが、多動性の部分がかなりなくなっていることが決め手だそうです。長い間、服薬してきたので不安な気持ちもありますが、信頼している先生とご相談しながら見守っていきたいと考えています。これから高校進学という大きなイベントを控えたわが家ですが、タクのことを信じて乗り越えていきたいと思っています。執筆/もっつん(監修:藤井先生より)ADHD(注意欠如多動症)の薬には、コンサータ、ビバンセ、アトモキセチン、インチュニブの4種類があります。お薬の形状、効果が出るまでの時間など薬によって違います。今回処方された、インチュニブは食欲不振やチックなどの副作用もないため使いやすいですが、効果が出るまで数週間要します。コンサータは飲んだら12時間効果が持続するため、集団生活での多動・衝動性には効果を認めます。服薬終了のタイミングは、お子さんの様子を見ながら検討していきます。もっつんさんが、大人になってからコンサータを飲まれているように、高校進学前に薬を服用終了しなくてはならないというわけでもありません。薬を飲むメリット、デメリット(副作用)などを主治医の先生と相談しましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月27日子育て楽じゃありません
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