2017年8月10日 14:42
不倫のピリオド「思い出」があれば生きていける|12星座連載小説#134~双子座 11話~
『いいえ』
私の口は、私の意識と連動していないのかもしれない。でも、その時私は、ハッキリと口にした。
「分かった……」
義久さんとの会話が終わる。もう、彼の声が聞けなくなるんだ……。
最後に……最後に、伝えなくちゃ……!
『幸せでした』
「ありがとう」
プツッという音がして、そこで電話は切れた。後には「ツーツー」という電子音が聞こえるだけ。
『私……最低だ……!』
人目もはばからず、電話ボックスの中で泣き崩れる。
これほどまでに、自分を“汚い”と思ったことはない。
彼は最後まで優しくて、私のことを何一つ貶めるようなことを言わなかった。でも、私は最後まで狡くて……。
―――子供の頃を思う。
キラキラした綺麗な石が目の前にあった。おぼろげな記憶だけど、そこはパワーストーンのお店だったんだろう。
私は、欲しいもの全部を両手の中に収めて、パパに言った。
『これ全部!』
って。
パパは少し困った顔をして、
「しょうがないな……良いよ」
って言ってくれたっけ。
でも、その後、私はつまずいて……
綺麗な石を全部こぼしてしまったのよね。
石たちは、ばら蒔かれて、床の上で散り散りになって……私は泣いちゃった。