不倫のピリオド「思い出」があれば生きていける|12星座連載小説#134~双子座 11話~
結局、それで貰えず終い。
パパが店員さんに、申し訳なさそうにしていて、私がこぼした石を一生懸命拾い集めていた。
欲しいもの全てを、手の中に収めることなんてできないんだ―――
私は、知っていたはずだった。それなのに、またつまずいて、こぼしてしまった……。
喜久さんは、あの時のパパみたいに、今、拾い集めてくれているのだ。私はただ泣いているだけ。
狡い。本当に狡い女―――
まるで風見鶏のようにくるくると。
その時の風向きに合わせて、自分をコロコロ変える。
そんな自分が、心底嫌になる。
変わらなければ、ずっとこのまま。そんなの……みっともない。
涙を手で拭って、電話ボックスを出る。一歩一歩足を動かして、会社へと向かう。
彼との……義久さんとの出会いに意味を持たせたい。そうでなかったとしたら、寂しすぎる……。
「思い出があれば、強く生きていける」
彼の最後の言葉が耳にこびりついている。
―――サラリーマンの波は、もう引いていた。
【今回の主役】
江崎友梨 双子座25歳 アナウンサー
23歳の時にアナウンサーとしてTV局に入社。有名大学出身だが1年浪人している。ハイソサエティな世界に憧れを抱いており、自分を磨く努力も怠らない。