2017年8月10日 14:42
不倫のピリオド「思い出」があれば生きていける|12星座連載小説#134~双子座 11話~
『二人が結びつくようなことって、もうないのかな……?』
「あるかもしれないけど……」
ある……! 可能性はあるんだ……!
「でも、とても苦しい道なんじゃないかな……」
『苦しい道……』
「うん、例えば……“仕事がない中で、数千万円の借金を背負いながら二人一緒に生きていく”とかね」
―――それを聞いて、私の意識の中の何かがパチリと音を立てて入れ替わった。
仮に、数千万円の借金があったとしても、二人に仕事があれば何とか返済しながら生きていくことはできる。
あるいは仕事がなくても、借金さえなければ色んな生き方はあるだろう。
でも、“借金”と“干される”の両方が揃ったら―――
「だから、難しいと思うよ」
私は、それ以上何も言えなかった。自分の人生全てを投げ捨ててまで、添い遂げたいというモチベーションは……、悲しいけど、私にはない。これが私の限界。これが私の“人間性”なのだと、そこで悟った。
「そういうわけだから……じゃあ、これで……」
『待って!』
今さら、何を言うことがあるのだろう。
何も言うことなんて、ないのに……。
受話器を持つ手が震えている。私はこれまで自分が“損”をするような選択は、一切してこなかった。