2017年8月10日 14:42
不倫のピリオド「思い出」があれば生きていける|12星座連載小説#134~双子座 11話~
どんな時も、どんな状況でも。
……そう、小狡い女だったのだ。
だけど……、
「もう、良いんだよ」
『えっ……』
「短い間だったけど、二人は愛し合っていて幸せだった。その事実があれば、また強く生きていけるんじゃないかな」
『………』
「人生は、一瞬の星の輝きみたいなものでさ、忘れられないくらいに大きく光った思い出は、その後の人生も照らしてくれるものなんだって、僕は思う」
『……ううっ……』
嗚咽が漏れる。彼が“最後の言葉”を口にするのが怖い。
「だから、僕たちの輝かしい思い出を忘れなければ、強く生きていけるはずだよ……」
彼は、“私のために”終わらせようとしてくれているのだ―――
「これから二人が別々になったとしても」
最後の選択。
ここで私が「Yes」と言えば、これで終わり。「No」と言えば……
『待ってても良い……ですか……?』
一番狡い選択をした。
選択を先延ばしにしたのだ。
「…………」
二人の無言の時間は、刹那のようで永遠にも感じられる。この瞬間、まるで時が止まったかのように。
行き交うサラリーマンたちだけが、時計の針のようにせわしなく時を刻んでいる。
「覚悟……できてる?」