2017年6月14日 10:00
映画『無限の住人』8人の証言者たち - 「皆さまのもの」になるまで (20) 「社会の中の木村拓哉」を捨てた万次へ、最後の言葉 (8人目:三池崇史監督)
そして、どんなに長いセリフだろうが、抜けることはまずありません。
独眼でやっているわけですからね。朝から晩まで、飯を食う時だって片目は見えないわけですから。普通だったら、ストレスでダメになりますよ。でも、彼は「これが万次だから」と。
草履をはいたまま、全部の立ち回りをやる。靴を履いて足を守った方がいいに決まっています。ケガをしたら、翌日の撮影にも影響が出るんですよ? でも、「万次は靴を履いてないから」と。
まるでね、子どもみたいなんですよ。
楽したり、安全な方法は知恵を絞れば、いくらでもできるはず。むしろ、靴の方が動きやすくて良い画になるのかもしれない。でも、本人の中では「行けるところまで行きたい」と。最後までこのまま。普通では、ありえないですよ。草履でやり通した役者、日本映画初だと思いますよ。周りには石がゴロゴロ、足はズタズタ。
爪だって踏まれれば割れる。そんな環境、気合だけじゃ乗り切れないですよ。
もともとサーフィンやっているおかげか、自然との付き合い方、身の置き方を知っている。そこで自分に甘やかすと、「自然の中の万次」ではなく、「社会の中の木村拓哉」になっちゃうんですよね。周りがチヤホヤしようが、サーフィンの海は手加減ナシ。