奥様はコマガール (41) 結婚してから一番変わったこと
あのころの自分を思えば、まさに劇的な変化だ。
結婚という二文字は、未熟で自由気ままな独身男に一家の主たる自覚を芽生えさせるのか、昨年の夏ぐらいから僕の中に少しずつ、だけど着実に自分だけの家族、すなわち「子供のいる家庭の風景」を求める気持ちが湧いてきた。
平たく言えば、最近の僕は子供が欲しくてたまらないわけだ。
ただし、欲しいからといってすぐに授かれるほど簡単ではなく、また後先考えないで無鉄砲に子供を作ってしまうのもどうかと思うため、現段階ではなるべく冷静かつ慎重に考えている。
いずれにせよ、新米夫婦にとってはデリケートな問題である。
そうなってくると、人間とは一方的な想いだけがますます膨らんでいくもので、最近の僕の頭の中は子供に対する渇望と羨望にすっかり支配されている。
かつてはあれだけ興味がなかった子供の造形にも胸がときめくようになり、それはすなわち、他人の子供のことも心の底から「かわいい」と思えるようになったということだ。たとえば電車の中で子供たちがはしゃいでいる光景に出くわすと、思わず目尻を下げて相好を崩してしまう。
たとえば近所の幼稚園の小さなグラウンドで大勢の子供たちが遊んでいる光景を見かけると、思わず立ち止まって柵越しに眺めてしまう。