尾野真千子「なにくそと思ってがんばってきた。その積み重ねで強くなれたと思う」
「親孝行したくてね」。
「芝居がしたい」「売れっ子になりたい」。そんな思いだけで、高校卒業後、奈良から上京。映画界で知らない人はいない賞をとったからといって、最初から順風満帆な女優人生を歩んでいたわけではなかった。
財政的にピンチのときは、母がお小遣いや地元でとれた野菜を送ってくれて、それでなんとか生きていた時期があったという。
「そうやって支えられる中で、親が喜ぶ作品にどうにか出演できないものだろうかと考えるようになったし、出演したら喜んでもらえるし、だんだん家族孝行みたいになってくるんですよね。
たとえば母は、作品を観て何年か経ったころに『お母さん、あの作品好きやったわ』なんて感想をくれます。そういうのを聞くと、がんばってきて良かったなって思えます。
今も仕事をする原動力は、家族孝行をしたいっていう気持ち。お給料が入ったら家族のために何かできないかなと考えて、私は余ったお金で自由をもらう。そこは長い間、変わらないですね」
■「肝が据わりすぎた自分が怖い(笑)」
キャリアを積み重ねてきて、変わってきたこともある。駆け出しのころは、たまに行く現場での待ち時間、どこか居心地の悪さを感じたり、よそ者感を実感したりと、葛藤があったという。