尾野真千子「なにくそと思ってがんばってきた。その積み重ねで強くなれたと思う」
「1〜2シーンの出番しかない状況だと、溶け込めていない気がするし、周りは親切にしてくださっても、自分のなかで『1シーンだけ』という思いが強いから、早く帰りたい……って思ってました。芝居中はそういうことを考えないんですけど、芝居に入る前後は気持ちが揺れていましたね」
主演でも、そうでなくても、たくさんの作品に出演することで、自信というベールを1枚ずつ積み重ねてきた。
「今はとりあえず突っ込んでこう、と(笑)。肝が据わりすぎて、自分でも怖いと感じることがあります。だんだん変わってきましたよ」
最後はそっと優しく付け加えるように言う声は、しなやかな強さを感じさせる。当時よりもかなり分厚くなった自信のベールが、尾野さんをふわりと覆っている。
「今は自分が現場にいる意味を発生させたい。極論、1シーンの出演であっても、どうにかそこに尾野真千子がいた痕跡を残したい」。
穏やかに語りながらも、言葉には力があふれていた。ときに見る者の心をえぐる演技をする尾野さんという女優の芯にふれた気がした。
「ホント、なにくそなんですよね。ずっとなにくそと思ってがんばってきて、それが重なって、今強くなった自分があるんじゃないかな」