元恋人の死と、突如現れた自分の子ども。常人の想像を超えるスタート【海のはじまり#1】
と未来の話もしていたはずなのに、突如相談一つなく大学を辞め、夏の前から姿を消した水季。
困惑する夏はすぐさま電話をかけます。そこで水季から発されたのは「学費が高いから就職することにした。ちょうどよかった。別れよ。夏君より好きな人ができた」という、すぐには受け入れ難い言葉の数々。
それを最後に今回の訃報まで、ずっと交流が途絶えていた二人ですが、数年越しに夏に降りかかってきたのはまたも衝撃の事実。
実は中絶したと思っていたあの病院の日、水季は中絶をしていなかったのです。
一人で子どもを産み、育てることを決意し、夏にうそをつき、夏の元を去っていたのでした。
夏と水季の最後の電話で言っていた「好きな人」は夏の元から離れるためのうそ。水季が「絶対幸せになるし、する」と言っていた、幸せにする相手は、好きな人ではなく、自分のお腹に宿った子どものこと。たくさんのうそを抱えながら水季はなぜ「産む」「夏に隠す」「一人で育てる」という選択をしたのでしょうか。
「相談してよ!」という夏の言葉にも「夏君に影響受けて考えが変わったことない」と反論していましたが、普段は自分の意思のままに生きる水季も、あの時ばかりは相談したら考えが変わったり、影響を受けたりしてしまうのが怖くて、夏から連絡が来るまで話すことは愚か、会うこともできなかったのかも知れません。