雪村さんもそれに気付いたようで、すっと表情を変えた。私が仕事復帰した日、自動販売機の前で見せたあの悪魔のような表情だ。
「そうよ、私が人を雇って高杉さんの家を荒らすように指示したの」
「自分のやったことが分かってるのか!? 汐里は怪我をしたんだぞ」
「あれは事故よ! ちょっと脅かすつもりだったのに、この女が反撃するから」
あくまで人のせいにするつもりなんだね。さすがにここまでくると、恨まれていた理由が気になった。
「どうしてそんなことを?」
「だってむかつくんだもん。あんたばっかりみんなにチヤホヤされて」
「チヤホヤって……」
「私はこれまでいつだって1番だったの。高校でも大学でも前の職場でも、みんなの中心にいたのは私!」
「……」
「それなのに、ここではみんながあんたを頼って大事にしてる。あんたばっかり良い思いをして、許せなかったの!」
良い思いばかり? そんなわけないじゃない。
辛いことも大変なことも乗り越えて、今の自分を築き上げたの。
そんなことも知らないで、自分勝手な怒りをぶつけてくるなんて呆れてしまう。あまりに幼稚な理由に言葉を失っていると、新実さんが口を開いた。