【『ラストマン』感想5話】福山雅治と大泉洋、それぞれの演技があぶりだす過去の陰影
最後に、犯人の青嶌(高梨臨)が連行された後にテーブルに残された料理を心太朗は淡々と食べる。佐久良(吉田羊)に語った「食べ物に罪はないから」という言葉と「しょせん人殺しが作った飯だよ」という二つの言葉が、引き裂かれた父への愛情を滲ませて切なかった。
普段は人に振り回されて愛嬌たっぷりに右往左往している大泉洋が、やさぐれて煤(すす)けた表情の瞬間に、淡い煙のように哀切と色気を放つ。印象に残る一瞬である。
3話目では、芸能人の不倫によるイメージの低下と殺人罪を天秤にかけた結果、捜査が混迷している。
4話目では痴漢や盗撮といった性犯罪に対する性別間の認識の差を丁寧にすくい上げて描いていた。
そして今回の事件では、SNSの中で過剰な承認欲求と利益が人を狂わせる様子を描いている。
従来の価値観が変動して、動機と罪と罰のバランスが崩れている現状を今作はじっと見据えて描いている。
絶対的な価値が見えづらいからこそ、闇の中から迷わず本質をつかみ取る盲目の男に、私たちは惹かれてやまないのだろう。
だが常に他者の本質を見抜いてしまう人生は、生きづらくはないだろうかと思う。
実はバツイチだとあっけらかんと語った皆実の、かつてのパートナーはどんな人物だったのだろうと思った。