【『VIVANT』感想9話】父と息子の絶望の人生を繋ぐ林遣都の演技
それにしても、なぜノゴーン・ベキは乃木の重さを正確に当てる能力を知ったその時に、黒須の殺害未遂時の銃弾の残数で、別班としての任務を放棄していない息子の真意に気づきながら乃木を息子として組織に迎え入れたのか。
そして乃木自身も、父に勘付かれていると察しつつ、なぜテントのために巨額の資金調達を申し出たのか。
あくまで推測ではあるけれども、ベキは愛する息子に祖国への恨みも水に流し、子供達に飢えのない安全な居場所を作ろうとしている父としての一時がほしかったのかもしれない。
そして乃木もまた、ただ立派な父を慕い、父のためにその優れた能力を発揮する孝行息子として生きる一時が欲しかったのかもしれない。
息子が別班、つまり敵としてここに来たと気づき、息子は父に気づかれたことを気づき、タイムリミットは遠くないと察した二人が、それぞれに「そうありたかった人生」を演じたのではないかと思うのだ。
父が失った息子を想い、全ての子が脅かされずに生きられる楽園を作ろうと決めたとき、その失われた息子は、力と武器がなければこの世界を生き抜けないと決意していた。
なんと皮肉なことかと思う。
乃木が「美しき我が国」