コロナで日常が壊れた保育所 余裕のない日々で、保育者が学んだことは…【きしもとたかひろ連載コラム】
あらかじめ切り口が付いていて[あけくち]と表記されているものもある。どちらも力加減を間違えれば中身の醤油が飛んでしまうので慎重に開封する。たまに失敗する。
祖父は、[あけくち]があってもハサミを出してきて丁寧に切るような人だった。手がヌルヌルして開けられないからハサミで、とかではなく決まり事のように初めからだ。
チャック付きのお菓子もハサミで切るものだから、手で開けた方が切り口が揃わなくて次に開けやすいのに…と僕は思っていた。
いつも忘れ物をする僕に「しっかりせんかい」と叱り、20歳の誕生日には[忘れ物をしないこと]を目標にさせられた。僕は一年間その目標を忘れて過ごした。
真面目で几帳面な祖父は花を育てるのも好きで、僕が始めて一人暮らしを始めた時にゼラニウムの鉢をプレゼントしてくれた。そして僕はその花をあっさりと枯らしてしまった。
ある時「じいちゃんみたいにできへんわ」と溢したことがある。ガサツで忘れ物ばかりして靴下すぐ片方なくなるし花もすぐに枯らしてしまう。
昼までぐうたらしてるし、じいちゃんみたいに丁寧に生きられない。そんな自分が少し嫌だなあって思ったりしていた。
すると「わしがお前くらいの頃もそんなんやったわ」