「上の子は“ママに会いたい”と」無痛分娩“医療ミス”の悲痛
父親の安東雄志さん(70)が語る。
「娘は、事故の前年に長女を授かったばかり。“もうすぐ2人目が生まれる”と幸せそうでした。胎内にいた第2子(女の子)は緊急帝王切開で取り出され、助かりました。上の子は今年4歳。物心がつき、時々“ママに会いたい”と泣きやみません」
千惠さんはなぜ亡くなったのか。そこには日本の産科・麻酔科医療が抱える問題が凝縮されている。
千惠さんは腰を痛めていたため、陣痛時の痛みが4分の1程度に軽減される無痛分娩を希望。
実家から車で約30分の産婦人科医院「老木レディスクリニック2」(老木正彰院長・大阪府和泉市)を選んだ。
無痛分娩を手掛けるのは全国の医療施設の約3割で、その6割近くが、老木レディスクリニックのような診療所だ。安東さんによると、千惠さんが同クリニックを選んだ理由は、実家に近いことと、「クリニックのホームページの記載を信用したため」という。当時のホームページは、産婦人科医の老木院長のほかに麻酔科の医師2名、小児科医1名と非常勤の医師が数名いると記載し、「複数の専門医による高度な医療体制や最新の設備をはじめ、緊急時も高度医療機関と連携できる体制を整えています」