2020年6月10日 06:00
「検査は1日15人まで」介護施設直面したコロナ集団感染の矛盾
「感染している可能性を考えて、個別の送迎が必要でした。送迎車にビニールシートを貼って、送迎が終わるごとに消毒する。この工程を合計100回以上繰り返しました」
利用者やその家族のため、一刻も早く検査結果を明らかにしたい。そんな思いから、検査を急いだ。当初は手間取ったものの、1日に取れる検体数はだんだん増えていった。その矢先、保健所からこんな要請がーー。
『たくさん陽性者が出ると入院先がなくなるので、検査は1日15人までにしてほしい』
塩田さんは耳を疑った。だが、保健所の要請は拒めない。
要請に従い少しずつ検査を進めると、保健所は「今日は陽性者2人」「今日は1人」と、さみだれ式に結果を発表した。
「すると、すでに業務はストップしていて、感染が広がることはないのに、『あの施設は、いまだに感染者を出し続けているのか』という印象を与えてしまったのです」
PCR検査がすべて終了したのは3月24日。利用者からは、「まだ再開しないのか」という声が多数届いていた。「いちばん多かったのは、『入浴サービスを再開してほしい』というものです。自宅では入浴できない利用者の方も多くいるんです」
この時点で、3月30日を目標に、入浴などの一部サービスに限定した業務の再開を目指したが……。