「山崎賢人の芝居は技巧じゃないから凄い」行定勲監督が語る新作映画『劇場』
でもね、変わったらもっと嫌だよ」ってセリフはなかなか書けるものではありません。
あのセリフは原作にほぼ忠実ですけど、又吉さんはなぜ、あんなセリフが書けたと思いますか?
まあ、言われたんでしょうね、きっと(笑)。たぶん、言われたんだと思うな~、「変わっちゃ嫌だよ」って。でも、それを言われると、やっぱりキツいですよね。だから、みんなの胸に突き刺さる。
それこそ、僕が敬愛する某映画監督は、観た直後にメールをくれて。あんなに興奮してメールをくれたのは初めてですよ。
観終わった直後の気分で「男の愚かさが余すところなく描かれていた。
すべてが自分のことのようで、身につまされた」と書いてあった。
やっぱり、彼女が「変わっちゃ嫌だよ」って言う、そこでね。泣けてくるんです。
俺たちのように物を作っている人間は、結局、そう言ってくれる人がいない自分を保てないんだよねっていう話なんです。
――永田も自分の生き方や沙希に対する言動が間違っていることは分かっているんでしょうけど、変えられないんですよね。だから、いつまでこの生活や彼女との関係が持つんだろう? と思っている。
まあ、そうだと思う。でも、あれは作り手の心情でしょうね。