くらし情報『「山崎賢人の芝居は技巧じゃないから凄い」行定勲監督が語る新作映画『劇場』』

「山崎賢人の芝居は技巧じゃないから凄い」行定勲監督が語る新作映画『劇場』

――思いがけない衝動だったわけですね。

そうですね。原作が又吉直樹さんの半自伝的なものであるのは間違いないと思うんですけど、だから、男と女の“どうしようもなさ”がひとつひとつ具体的なエピソードに落とし込まれている。

それを観ながら、嗚咽と言うか、俺もこの感情は全部分かるな~と思ったんです。俺もやってきたことだから。いや、いまもやっていることかもしれない。

――男と女の“どうしようもなさ”は行定さんがこれまでの作品でも描いてきたものですしね。

それこそ、誠実に向き合おうとしている男女のほぼふたりだけのミニマムな話の映画をいつか作ってみたいと思っていましたけど、僕がそれを、自分の恋愛で経験した記憶をたどりながらオリジナルの脚本で書いたとしても成立しないですよ。


話が小っちゃ過ぎるし、僕が思い描くような画にはならない。

でも、又吉さんの原作を読んだ瞬間に、これなら商業映画にできる!って正直思ったんです。

逆に言うと、又吉直樹の名前がなければ、こんなに小さくて地味な話は絶対に映画にできない。

男と女が六畳一間の部屋の中にいて、大したドラマもない中で淡々と進んでいくような映画は又吉さんがいなかったらできないことだし、オリジナルでもちょっと怖くて挑めない。

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