西日本豪雨や大阪地震で批判を浴びた被災者の実名報道 違法ではないのか弁護士が解説
一般人の感受性・感覚に照らしてみた場合に「公開を欲しない」あるいは「心理的な負担、不安」を覚えるということが言えるか、判断が分かれ得るように思われます」
■損害賠償責任が生じないこともある
さらに、プライバシーにあたる場合であっても、それを公表されない法的利益よりも、公表する理由が優越するときには、公表は違法ではなく、プライバシー侵害による損害賠償責任は生じません。
この点について、例えば東京高裁平成17年5月18日判決・判時1907号50頁は、
「プライバシー権の侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するものである」
と述べています。
災害における死者・行方不明者の氏名等を報道する理由について考えてみた場合、消防等による捜索・救助体制の検討のために必要な情報である、あるいは、親族や知人友人などの「安否を確認したい」という要望に資するものである、といったことが考えられ、そうすると、公表されない利益よりも公表する理由が優越するという見方もできるでしょう(もっとも、前者については、報道機関による公表までは必要なく、関係機関のみで共有を図ればよいのではないか、という議論もあると思います)。