【知って得する!保険の基本】教育資金準備計画の死角
ここまで沈黙を守っていた父が突如として正論を吐いた。
「学生納付猶予制度」とは
「そんな本末転倒なことになっているはずがない。何か猶予制度のようなものがあるはずだ。どこかに書いていないか?」
由里子は父のほうを見、日本年金機構からの書類を改めて見直した。
確かに「学生納付猶予制度」という記述がある。
「でもこれ、私も対象なの?」
由里子は半信半疑な面持ちで書類を見直した。
「よく読んでみなさい。大事なことなんだから。」
父も横から書類をのぞきこんでいる。
「<学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される『学生納付特例制度』が設けられています。 本人の所得が一定以下の学生が対象となります。なお、家族の方の所得の多寡は問いません。>って書いてあるわ!もしかして、私も対象かも!」
由里子ががぜん元気を取り戻し、はずんだ声で言う。
「本当なの?」
と母が心配そうに書類を手元にひっぱりよせながらつぶやく。
「うまい話には必ず落とし穴があるものよ。よく読まないといけないわ。ここに書いてある、
<老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付済期間等が25年以上必要ですが、学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この25年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。
ただし、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。>
このあたりがちょっと気になるわね。」
由里子も母の手元から書類をひっぱり寄せながら、
「どれどれ、そういえば……
<将来、満額の老齢基礎年金を受け取るために、10年間のうちに保険料を納付(追納)することができる仕組みとなっています。>
ここのところも気になるわ。大学を卒業した後、10年以内に大学時代に猶予された保険料を納めないといけないということ?」
「それは違うと思う。『追納することができる』ということだから、義務ではないはずだよ。」
父が由里子の手元の書類を見ながら言った。
「じゃあ、この、『老齢基礎年金の受給資格期間に含まれるけど、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれない』というところは?」
「老齢年金をもらうには、25年以上保険料を納めた実績が必要だけど、学生納付特例制度を使って保険料を納めなかった期間も、その実績に含めてくれる、でも、保険料を納めたことにはならないよ、という意味だろう。