大好きな本はたくさんあるのですが、いつも身近なところに置いて、パッと目に入るようにしておきたい本というと、やはりビジュアルも大事! 内容の素晴らしさはもちろんのこと、センスがものを言うブックデザイン含め、挿画の美しさが加わると、本はたった一冊で何冊分もの魅力を感じさせてくれる宝物になります。枕元といい、リビングルームのサイドテーブルといい、どこかしら常に手元にないと落ち着かない。表紙を目にするだけで気持ちが明るく華やいでくる、優しくも頼もしい親友のような本たち。人生をともに暮らしていく彼らを、3冊ご紹介させてください。「Paradise 花と生き物いっぱいのぬりえブック」がくれるカラフルな癒し塗り絵の本が女性を中心に大人気で、自律神経を整え、不眠にも効果的という事実を、この本と出会うまで知りませんでした。本書はその名の通り、まさにパラダイス! 色彩かなキノコや花々が躍る表紙のゴールドに、まず視線を奪われました。金子みすゞの詩とともに動植物、雪の結晶などが描かれているのですが、あまりに繊細なラインは、ぬりえというよりもはやアート。作者のタカヤママキコさんに、お話を伺いたくなりました。タカヤママキコ/イラストレーター。1983年広島県生まれ。多摩美術大学卒業。書籍、雑誌、ファッション、Web、スマホアプリなど、幅広い分野で活躍。ビームス、アーバンリサーチ、リーバイスなど、企業とのコラボレーションも多数。HPから、彼女のデザインしたTシャツやスマホケースが入手できます。―― 最初は大変かも…と思ったのですが、いざ塗ってみると本当に癒されますね。「ありがとうございます。インスタグラムでタグを付けて、写真をアップしてくださってる方がたくさんいらっしゃるんですけど、時々見てみると、みなさん、想像を絶する上手さで、私には無理だなと(笑)。色鉛筆だけでなく、パステルでふわ~っとぼかしたり、サインペンでクリアに塗ったり、いろんな画材で自由自在。すごく刺激を受けてます」―― 苦労した点、大事にされた点は?「私が育った広島の野山で触れあった自然や動植物を描いているのですが、中には虫とかミジンコも。女子に嫌われがちな虫も、可愛く描いたら好きになってくれるかな…と思って描きました。実家の近くに馬もいたし、道端や林にいるものを描きたかったんです」子供の頃は、山を探検したり、枝で編んだ釣竿で川魚を釣ったり、レンゲ畑で駆けっこしたり、虫を捕まえて観察していた、というタカヤマさん。本書には、彼女の日常を彩った景色やワンダーランドがつまっているからこそ、ホッと安らいで癒されるのですね。「好きな色、好きな塗り方で自由に塗って、植物や生き物たちに命を吹き込んであげてください。そして、あなただけのパラダイスを完成させてください」。彼女自身のふんわりピュアな雰囲気に、可愛いだけでなく、ちょっぴりポイズン(毒)な魅力も混じったオリジナリティあふれるマキコワールド。日々の忙しさや喧噪を忘れて、あなたもParadiseの世界で遊んでみませんか? 「ビロードのうさぎ」のせつなさに胸がキュンキュンある日、小さい男の子のもとに、ピンクサテンの耳が愛らしいビロードでできたおもちゃのうさぎがやってきます。うさぎは、子供部屋のおもちゃの棚で暮らし始めますが、ある時、「長い間に、子供の本当の友達になったおもちゃは“本物”になれる」という魔法のような話を耳にします。うさぎは男の子と、寝る時も庭で遊ぶ時もずっと一緒に過ごすようになり、男の子にとってかけがえのない存在となりますが、だんだん汚れていき…。1881年、ロンドン生まれの作家、マージェリィ・W・ビアンコの名作が、日本を代表する絵本作家の一人、酒井駒子さんの絵と抄訳で甦りました。酒井駒子/絵本作家。1966年兵庫県生まれ。東京芸術大学卒業。海外でも高い評価を得ている。「きつねのかみさま」(あまんきみこ/文、ポプラ社/刊)で2004年日本絵本賞、「金曜日の砂糖ちゃん」(偕成社/刊)で、2005年ブラチスラバ世界絵本原画展で金牌、「ぼく おかあさんのこと…」(文溪堂/刊)で2006年フランスのPITCHOU賞、オランダの銀の石筆賞など、受賞歴多数。ブロンズ新社HP 年、本書の発売イベントの一環で、憧れの酒井駒子さんのサイン会が、たまたま当時住んでいた六本木の青山ブックセンターであると知り、事前に購入しようと手に取り最後までパラパラと繰っていて、その場から動けなくなってしまったことがありました。童話とはいえ、心を揺さぶる衝撃の大きさと、とっくに大人になっているのにこんなにも動揺してしまう自分に驚き、本書を入手したのはそれからしばらく経ってから。というと何だか恐いみたいですが、そうではなく、どこかノスタルジーと憂いが漂う、絵の具の筆致が感じられる絵の魅力に、完全に惹き込まれてしまったからなのです。今ではお気に入りの毛布みたいに、身近にないと落ち着きません。一生見ていたい大切な絵本です。 「本と店主」の表紙の絵から清冽なイマジネーションが湧きあがる銀座の片隅にある“一冊の本を売る書店”というコンセプトの森岡書店の店主、森岡督行さんは文章の名手でもあり、今まで彼の著した「写真集 誰かに贈りたくなる108冊」(平凡社刊)や「東京旧市街地を歩く」(エクスナレッジ刊)を愛読してきました。新著「本と店主」は、森岡さんが人気のカフェや雑貨店などの店主12人に、彼らの“人生にかかわった本”について聞き出す対談インタビュー集。森岡さんらしい地に足の着いた日常感覚とメタフィジカルな魅力が交錯する内容も素敵ですが、本を描いた表紙の絵に一目惚れ。2015年12月、この絵を描いた画家の平松麻さんの個展が森岡書店で催されたので、お邪魔して、後日お話も伺いました。もともと本が大好きで、本の表紙に作品を使ってもらうことが夢だったとか。ブックデザインを担当したsmbetsmbの新保慶太さん、新保美沙子さんと相談しながら、表紙だけでなく、裏にも続く絵にしたかったので、新たに描き下ろしたそうです。平松麻/画家。1982年東京生まれ。この写真は、写真家・Eric(エリック)が、「麻ちゃんは中性的なところがあるから、半分は光、半分は影に」といって撮影したものだそう。―― 本が並ぶだけの静謐な絵なのにインパクトが強いです。麻さんにとって絵とは?「暮らしの中でいうと、野菜やパンのように生活必需品です。暮らしの中になくてはならない存在。絵の具の物質感、運筆を追う高揚感、作者が過ごした時間の積層、そういったものを近く感じていたいと思っています。種をまいて野菜や果実が育っていく過程と、わたしが経る絵の制作過程も重ねて考えることが多いです。芽が出て水をやったら茎が枝になって、枝分かれして実ができてくる。実が大きくなったら収穫して、展覧会という場所で観てもらう。実がなくなったら、次はまた、種植えから…。そんな制作姿勢が理想です」―― きれいに飾っておくものというより、生活の中で一緒に暮らしてほしい?「はい。だから、本の表紙に使われてすごく嬉しいのは、本はカバンの中に入れて持ち歩かれて、生活の一部になるでしょう? もちろん美しく飾って対峙する絵との時間も濃密だし、この本のように持ち運んだりする絵の在り方も濃密だと思っています。作品を求めてくださった方の中には、出張に絵を持っていってくださる方もいらっしゃって、本当に嬉しかったです」そんな平松さんの絵を起用した森岡さんにも、彼女の絵を選んだ理由を伺ってみました。「麻さんの絵は、キャンバスとか伝統的な画材でなく、フローリングの板とか、より生活に近い素材を用いているため、雑貨とか古物に近い趣があって、それは自分にとってとても魅力があります。自分の周りにもそういうものが多いので、調和しますし。それに、絵というのは普通、経年変化を嫌うものだと思うのですが、彼女の絵はともに時間を経ていくというか、それを楽しめる作品だと思います」お二人の感性がスパークした本書を手元に置いて、イマジネーションの幅を広げてみませんか? 生き生きとした絵がいつも語りかけてくれるので、前向きでいられますよ。・ 「Paradise 花と生き物いっぱいのぬりえブック」 ・ 「ビロードのうさぎ」 ・ 「本と店主」
2016年03月01日2016年2月に行っておきたい首都圏の美術展を5つ厳選しました。誰でも名前を知っている巨匠の作品展から、小さな美術館の個性的な企画まで、いましか見られない美術展を紹介します。■これは見逃せない! 巨匠の作品展・『フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展』美術の教科書などで誰もが目にしたことのあるフェルメールとレンブラント。実際に鑑賞する機会はそう多くはありませんよね。とくにフェルメールは、生涯に制作した作品数が50ほど。現存するものは約35点しかないのです。《水差しを持つ女》もこの展覧会が日本初公開。今回を逃したら次、日本でいつ見られるかわかりません。《水差しを持つ女》は若い女性の自室でのひとこまを描いた作品。金張りの水差しや部屋のしつらえから、オランダ黄金時代の市民生活の豊かさが伝わってきます。しかし、フェルメールの生活は決して豊かではなかったといいます。彼が愛用した「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる絵の具は、ラピスラズリが原料のたいへん貴重なものでした。フェルメールはこの絵の具に夢中になり、財産をつぎこんでしまったのです。フェルメールがこの作品を描いたのは30歳のころ。いまのわたしたちと同世代です。11人の子持ちでありながら、絵の具に財産を使いはたすとは…。しかし、そのおかげでわたしたちはこの作品に出会えるわけですね。ところで、フェルメールはデッサンが苦手だったという説があることを、ご存じですか? 彼はカメラ・オブスクラというピンホールカメラのような装置を使い、箱の内側に投影された像をなぞって下絵を描いたそう。小さい作品が多いのはそのためだといわれています。デッサン苦手説が事実だとしても、それでフェルメールの価値が損なわれるわけではありません。彼の作品に一瞬が永遠につづくような静寂を感じるのは、その作法にこそよるのかもしれませんね。会期:2016年1月14日(木)~3月31日(木)開館時間:10:00~20:00会場:森アーツセンターギャラリー・『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』ラファエル前派は、19世紀の英国で起こったムーブメントです。同時代の印象派が屋外で一瞬の光景をとらえる「ライブ感」を追求したのに対し、ラファエル前派は神話や伝説、文学作品に題材を求めました。展示作品をひとことで表現すれば、「ストーリーが感じられる作品」といえるでしょう。たとえば、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作の 《デカメロン》。イタリアの作家ジョバンニ・ボッカチオによる同名の小説に着想を得た作品です。ところが、この物語の登場人物は10人なのに、描かれているのは9人だけ。残るひとりは、この絵を見ているあなたというわけです。物語だけでなく、観衆まで作品に取りこんでしまう手法はさすがです。作品世界に流れるストーリーに想像をめぐらせる、豊かな時間を楽しんでください。会期:2015年12月22日(火)~2016年3月6日(日)開館時間:10:00~19:00会場:Bunkamuraザ・ミュージアム■春が待ち遠しくなる展覧会・冬季展『春に想う―梅・椿・桜・桃―』畠山記念館は、荏原製作所の創業者であり茶人としても知られる畠山一清が収集した、古美術品などを展示するために設立した美術館です。展示では春を象徴する花々をデザインした美術工芸品と、季節の茶道具を見ることができます。こちらの美術館では、展示室でお抹茶(干菓子つき・有料)をいただけるんです。春を思いながら、ほっとひと息つくのも粋ですね。会期:2016年1月16日(土)~年3月13日(日)開館時間:10:00~16:30会場:畠山記念館■童心に返って楽しむ 超絶技巧に舌を巻く 個性派の展覧会・特別展『なぞなぞ? ことばあそび!! 江戸の判じ絵と練馬の地口絵』「判じ絵」は絵から答えを導きだすなぞなぞ。「地口絵」は成句などをもじった言葉遊びを絵にしたものです。たとえば、「花よりほかに知る人もなし」→「腹よりほかに減るものもなし」といった具合。思わずぷっと噴きだしてしまうようなユニークな作品を、童心に返って楽しみませんか?会期:2016年1月30日(土)~3月21日(月・振休)開館時間:9:00~18:00会場:練馬区立石神井公園ふるさと文化館・『世界を驚かせた焼物 吉兆庵美術館蒐集 真葛香山展』1876年のフィラデルフィア万国博覧会に出品されて評判を呼び、海外で人気を博した真葛焼。海外向けとあって華やかな意匠が多いのですが、なかでも必見は「高浮彫」と呼ばれる超絶技巧。今回の目玉であり、香山晩年の最高傑作といわれる《真葛窯変釉蟹彫刻壷花活(まくずようへんゆうかにちょうこくつぼはないけ)》の、水盤に取りついたワタリガニのリアルな質感ときたら! いまにも動きだしそうで、ぞくぞくします。会期:2015年2月17日(水)~2月29日(月)開館時間:10:00~18:30会場:日本橋三越本店 新館7階ギャラリー歴史的名画に春を思わせる雅な美術工芸品、くすりと笑えるユニークな絵から世界を驚かせた焼物まで。早春の1日、感性を豊かにしてくれる展覧会にお出かけしませんか?
2016年02月24日蓮の花の形をした建物が印象的な「ArtScience Museum at Marina Bay Sands(アートサイエンス・ミュージアム)」は、国際巡回展示が観賞できるシンガポール初の博物館。期間限定で開催される興味深い展示は、常にチェックしておきたい。金曜日には、ファミリー向けのお得なサービスも。マリーナ・ベイを特徴づける個性的な建物マリーナ・ベイ・サンズの併設施設として2011年にオープンしたアートサイエンス・ミュージアム。「芸術科学」をテーマとする博物館としては、世界初と言われている。蓮の花の形が斬新なこの博物館は、建築家モシェ・サフディ氏の設計。マリーナ・ベイ・サンズの会長がこの形を「シンガポールの歓迎をする手」と称賛したように、そのユニークな建築物はシンガポールのアイコンの一つとなっている。10本の「指」の先には天窓が設けられ、壁面をランダムに照らす。この屋根からは、雨水が中央のアトリウムを通って35メートル下のプールに滴り落ちる仕組み。雨水は構内で再利用されており、環境に配慮した建築物としても有名。国際巡回展示を観賞できる場所このミュージアムはアート、デザイン、メディア、建築、テクノロジーをテーマとし、大小合わせて21ものギャラリーにて、最先端の展示を観賞することができる。常設展「ArtScience : A Journey Through Creativity」では、Curiosity(好奇心)、Inspiration(インスピレーション)、Expression(表現)の3つの展示スペースを通し、創造のプロセスへの旅を表現。アーティストの作品を生む原動力、どのようにスキルを身に付け、創り出し、それによって私たちの世界がどう変わるかを考える機会を与えられる。ここでは、常設展に加え、世界的に有名なコレクションの国際巡回展示を開催できるのが最大の特徴。過去には、「タイタニック:アーティファクト エキシビション」「ハリーポッター展」「ダリ:Mind of Genius」など、シンガポールで最も人気の高い展覧会が催されてきた。毎週家族にお得なイベントも毎週金曜日は、子供が無料になる「ファミリーフライデー」を開催。大人のチケット1枚購入につき、12歳未満の子供が4名まで無料で入場できる。また、毎月一回、木曜日には、通常営業の後に「ArtScienceレイト」を開催。通常展示が終わる19時から22時まで、この夜限りの最先端パフォーマンスを目撃しよう。バーもオープンし、アートに浸る大人の夜を過ごすことができる。・詳しいスケジュールと内容はこちらArtScience Museum(アートサイエンス・ミュージアム)・住所:6 Bayfront Ave, Singapore 018974・営業時間:10:00-19:00(最終入館は18:00)・電話:+65 6688 8888・入場料金:展示内容により異なる詳しくはこちら・アクセス方法:マリーナ・ベイ・サンズのベイサイド。ショッピングモールの目の前。MRTベイフロント駅より徒歩10分。©All Photos to Singapore Tourism Board
2015年09月27日白亜の壁が眩しいビクトリア様式の建造物が目を引く美術館「The Arts House(アート・ハウス)」は、シンガポールのアートシーンを語るのに欠かせない場所。国内最古の政府機関が入っていたこの建物は、2003年に美術館として生まれ変わった。併設のレストランやカフェもユニークなので合わせてチェックしよう。役割を変えながら歴史を刻むアート・ハウス1826年にスコットランドの商人ジョン・マックスウェルの個人邸宅であったアート・ハウス。現在でも白く美しく輝くコロニアル調の建物は、後に巨大ホーカーセンター「ラオ・パ・サ」の建築に携わったGeorge Coleman(ジョージ・コールマン)によってデザインされたもの。その後Court House(裁判所)として、1954年から1999年までは国会議事堂として利用され、2003年に現在のアート・ハウスに姿を変えた。邸宅であった時代の名残を思わせるインテリアや、議場の跡地を利用したコンサートホールは、アート・ハウスの歴史的意味を感じさせる。シンガポールのアートシーンを牽引するアートイベントの数々アート・ハウスでは、常設展示に加え、ショートフィルムの上映や、演奏会、ワークショップなど、芸術的なイベントが随時行われている。建物内の部屋やスペースは、アート団体や企業などのイベント向けに有償で貸し出され、更にはウェディングパーティーの会場として利用されることも。シンガポールの国の歴史や建築様式の変遷を学べると同時に、芸術を発信するクリエイティブな場所として国民に重宝されている。※最新のイベント情報はこちら。併設のカフェでアートを感じるアート・ハウスには、5つの個性的な飲食店が併設。本屋とカフェが融合した「earshot café(イヤーショット・カフェ)」は、ゆっくりとコーヒーを飲みながらアートに浸れる絶好の空間。ランチセットのハンバーガーが人気。本格ベトナム料理が楽しめる「Viet Lang」や、生バンドが楽しめるバー「barber shop by timbre」など、魅力的な飲食店ばかり。アート・ハウスは観光スポットで有名な「ラッフルズ卿上陸地点」のすぐ近く。観光の合間にふらっと訪れて、歴史的建築と最先端アートにゆっくりと触れてみてはいかがだろうか。©All photos to Singapore Tourism BoardThe Arts House・住所:1 Old Parliament Lane, Singapore 179429・営業時間:10:00-22:00※BOX OFFICE(チケット売り場)は10:00-20:00。日曜休み。チケット購入が必要なイベント開始の1時間前にオープンする。オンライン購入はこちら・電話:(+65) 6332 6900 / (+65) 6332 6919(BOX OFFICE)・入場料金:チケット購入が必要なイベント以外は無料・アクセス方法:MRT City Hall(シティ・ホール)駅から徒歩5分。
2015年09月17日パブロ・ピカソといえば、世界で最も有名なアーティストのひとり。誰もが知っている現代美術の巨匠です。しかし、そのピカソがじつにキュートな陶芸作品を大量に残していることは、彼の絵画作品ほどには知られていないのではないのでしょうか。『ピカソの陶芸』(パイ・インターナショナル刊)はその名のとおり、陶芸だけを200点以上収録したピカソの作品集。知らなかったピカソがいっぱいで新鮮です。監修者の岡村多佳夫先生にお話を伺いました。岡村多佳夫(おかむら・たかお)美術評論家。早稲田大学大学院博士課程修了。専門はスペイン美術史、近・現代美術史。「生誕100年記念ダリ回顧展」など美術展の監修を多く手がける。著書に『ピカソ──巨匠の作品と生涯』(角川文庫)など多数。2014年、長年勤めた大学を退任。現在、個人で美術史の寺子屋を開講すべく準備中。「陶器では、君は何もできない」──当然、ピカソの絵画は有名ですが、陶芸作品は意外に知られていませんね。「絵画って、いちいち細かい決まりがあって、わけわかんないところがあるでしょう」──えっ、わけわかんないって、どういうことでしょう!?「絵画というのは描くにあたって、構図であるとか、主題であるとか、考えないとならないことがいろいろあるわけです。陶芸は、そういう難しいことは考えないで済むから。割れ物だから壊れていくことが前提で、次から次へと自分が描きたいものを描いている。形がある程度でき上がっているところに、好き勝手にどんどん描けるわけです」──形ができ上がっている、というのは?「ピカソは南フランスのマドゥーラ工房で陶芸をやっていたんだけれど、基本はその窯元にある焼き物に絵付けをしていたんです。だから、共同制作ですね」──半分、他人の手が介入しているし、焼き上がってくるまでどうなるかわからない、コントロールしきれないところがあったんですね。「ガラスも同様、火を使う芸術ってそうで、自分が手出しできない部分があるんですね。リトグラフなんかの版画も、刷り師によって変わってしまうけれども」──本のなかにも、「陶器は版画のような機能を持つ。焼くことは刷ることだ。そのときに君が表現したものが何かを知る。刷り上がったとき、それはもはや彫ったものではない。陶器では、君は何もできない」というピカソの言葉が紹介されていました。陶器制作には、自分の想像を超えるおもしろさがあったんでしょうね。「落書きのようなものだよね。息抜きでもあったんだと思いますよ」──息抜きでさえ、制作なんですねえ。「なんか描いてないとダメなんですよ、あの人は。マラソンランナーなんかでもよく、走ってないと体調が悪くなるなんていうけど、それと同じじゃないかな? それに、制作が娯楽、趣味だったんだと思います。だから描き続け、つくり続ける。ピカソは多作で知られてるけれど、数があるのも不思議ではないんです」陶芸は自由に描くためのツール──本では、作品の合間にピカソの言葉が時折挟まれているのが印象的です。本全体のリズムもつくる役割も果していますが、そのなかのひとつに「ラファエロのように描くには4年かかった。子どものように描くのは一生かかった」という言葉があります。「ただ描くだけではなく、アートに昇華する訓練を幼少時からやっているから。ピカソは、絵画とは何かということをずっと探求していました。絵でも陶芸でも、そこに精神性は求めていない。だから彼は抽象画を描かなかったんです。絵画という平面のなかで三次元のものを描くにあたり、どうやって本物らしく見せるか、つまり、表現の方法を追求していた。それが、あるときはキュビスムになったわけです。あれは形と、そのまわりの空気をどう表現するかという命題だから。だからこそ、デヴィッド・ホックニー然り、フランシス・ベーコン然り、横尾忠則然り、画家の連中はピカソを特別視していった。絵画とは何であるかを見せつけているという意味で、ピカソは特別な存在なんです」──ゴッホのような精神性の特異さによる表現ではなく、あくまでも表現のうえでのバリエーションが評価されているんですね。「子どもは、たとえば人間を描くとき、顔から描き始めますよね。画用紙いっぱいに顔から描くから、頭でっかちで、体はおまけでくっついてるみたいになる。大人から見るとそれは変なバランスだけれども、子どもにとっては普通のこと。いちばん見えてくるものは顔であって、そう見えてるから、そう描いているだけなんです。けれど、絵画としてそれをやろうとすると、難しい。それで苦労してるわけ」──だって、すでに大人の見方や考え方をもっちゃってるわけですもんね。「そう。彼は美術学校で学んでもいたわけだから。だから、わかる・わかんないは、どうでもいいんです。ガラクタでもなんでも、くっつけちゃえば新しいものになる。そういうものを考えていくのが好きだったんですね。でも、絵画の場合はいろんな取り決めがあるから。どうしてもフレームという制限があって、そのなかで構図を考えていくものだから、その時点で子どものように無邪気には描けないわけです。陶芸はその点で、自由気ままに制作できるツールだったんでしょう」──なるほど。ピカソが陶芸に没頭していった理由がわかった気がします!国内でピカソの陶芸作品を所蔵しているのは、箱根の彫刻の森美術館。また、洋菓子店ヨックモックはコレクションをもっているので、青山本店の店内に飾ってあるのが見られます。子どものように無邪気に、感性のまま描いたピカソの陶芸。本で、実物で、解放的なピカソにふれてみてください。『ピカソの陶芸』監修・解説 岡村多佳夫発行 パイ・インターナショナル価格 ¥2,300(税別)ピカソが没頭した陶芸の作品を201点収録。ピカソの陶芸の世界をポップで楽しく、テンポよく眺められるのは中島基文氏のブックデザインによる。時折挟まれている生前のピカソの写真や言葉が内容に厚みを加えている。
2015年09月03日残暑とはいえ、あまりに暑かった日々を思うと、どう過ごしていたのやら、意識すら混濁していたような記憶しかありません。リフレッシュして秋を迎えるためにも、本当に必要なこと以外は無理して集中せず、まどろみのひとときを楽しみませんか?ふわ~っとした浮遊感のある画集や写真集が、そのひとときを魂レベルで究極の癒しにしてくれます。視覚から入る夢の扉を開けると、そこは天空で、天使たちが雲をつき飛ばしあったりして遊んでいて…。真夏の夜の夢ならぬ、夏の終わりの白日夢へようこそ!画集「Silent Landscape」が誘う見果てぬ夢の先へ黒坂麻衣さんが描く鹿や馬、人や静物の絵画を、本の装丁や広告、ポストカードやハンカチなど、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか? 色彩が半透明のヴェールに包まれているような、ミルクが混ざったような、白っぽい淡い陰影。写実的なようで、どこにも無い幻想的な世界にも見える美しい絵は、心を穏やかに解き放ってくれます。画集のページを繰っていくと、映画のワンシーンみたいな夢がどんどん降り積もっていくのです。こんな絵を描く人はどんな人なのだろう? 麻衣さんにお話を伺いました。黒坂麻衣(くろさか・まい)画家・イラストレーター。1986年青森生まれ。多摩美術大学卒業。2013年ADC賞入選。2014年JAGDA入選。2013年「Silent Landscape」(浅草橋天才算数塾刊)出版。島本理生著「匿名者のためのスピカ」(祥伝社)装画など。―― 絵は子どもの頃から描いていたのですか?「一人で本を読んでいるような物静かな子どもだったんですが、小学校低学年の頃から、絵を描いていると友達が寄ってきてくれて、自分はあまりしゃべらないのに、絵がコミュニケーションツールになっていたんですね。絵が人とつないでくれるのが嬉しくて、今思うと、それで絵描きになったのかもしれません」青森で生まれ、3歳から7、8歳頃までを北海道で暮らした麻衣さんは、雪景色から連想する白とグレーの色彩に魅了され、それが描く時の根底にあると語ります。「自分の心がホッとする世界。たびたび思い出します。雪景色が恋しい。自分にとってはユートピアなのかな。昔見た風景に近いようなモチーフを自然と選んでたりしますね」そのせいかピュアで清冽なだけでなく、胸がキュンとなる郷愁や孤独感がどの作品にも漂っていて、それが麻衣さんの絵の強烈な魅力になっています。学生時代からの愛読書「カラマーゾフの兄弟」に登場する、天使のようなアリョーシャに惹かれ、聖なる存在と俗なる存在の間で葛藤する姿に自身を重ねたことがある、と麻衣さん。彼女が、実は夢からすごくインスパイアされている、と伺って驚きました。「私は夢に助けてもらってる気がする。河合隼雄さんの本で読んだのですが、起きている間は、建前でものを言わなきゃいけない世界だけれど、夜見る夢で調節してくれるのだとか。私、子供の時にさみしかったこととか傷ついたことが夢に出てくるんですね。すごくいい夢を見ることもあるし、夢に導いてもらったり、けっこう夢を信じています」描くことでまず自分が癒されたい、という麻衣さんの祈りにも似た絵は、私たちをも癒し、優しいまどろみへと誘います。9月5日~27日、浅草HATCHIでアーティストの大塚咲さんと二人展が開催されるとか。生の絵画に触れる絶好の機会です。詳細はHPでご確認を。写真集「幻夢」が連れて行ってくれる桃源郷の究極の癒し“一冊の本を売る店” というコンセプトで、2015年5月にオープンしたばかりの森岡書店銀座店での湯沢薫さんの個展「幻夢」を見た時の衝撃は忘れられません。初めて見る写真展なのに、デジャヴみたいな懐かしさと、自分を取り巻く空気が一瞬にして変容し、どこかへ連れ去られるような未知の刺激に、同時に襲われたのです。ドキドキしました。湯沢薫(ゆざわ・かおり)アーティスト。1971年生まれ。18歳からファッションモデルとして活躍。1997年渡米し、San Francisco Art Instituteで、写真、装丁、実験映画を学ぶ。帰国後は国内外の展覧会に参加し、写真、立体、絵画、音楽など、様々な手法で制作活動をおこなっている。2015年「幻夢」(HeHe刊)出版。学校に馴染めず、小・中学校とイジメられっ子で地獄を味わい、バレリーナを夢見ながらも、ファッションモデルとして活躍した後、サンフランシスコ・アート・インスティチュートに留学して、初めて自分の居場所を見つけたという薫さん。写真、絵画、立体、音楽と多才に活動する彼女が、最近、ファッションブランドaoとのコラボレーションで洋服をデザイン。洋服とともに作品が展示されたaoを訪れ、インタビューをお願いしました。―― サンフランシスコで、初めて自分らしい呼吸ができたんですね。「そう! 学校ってこんなにおもしろいんだって初めて思えたの。先生もすっごい変で、特に実験映画の先生は光を好きなあまり、8ミリで覗いてるうちに興奮してきて椅子がクルクル回り出して、そのまま走ってどっかへ行っちゃったり(笑)。すごく自由。でも、作品へのクリティークは厳しいんだけど、そこで初めて受け容れられて。お前はアーティストなんだから、アーティストとして生きなさい、と言ってくれて」それまでは、モデルゆえに「どうせ趣味なんでしょ」という先入観を持たれるから、普通の人の3倍がんばらないといけないと思っていたのが、渡米後はそういうバイアスがなくなったのだそう。「今でも、くじけそうになるとその時のことを思い出します」と薫さん。彼女の写真の撮り方は“シャーマン”そのもの。心に降りてきたイメージ、目の前に漠然と現れた風景を探す旅に出て、同じ風景を見つけたら撮影。時には、夢中で撮影していて崖から落ちてしまったことも。「カメラを持ってると、サルみたいにどこでも登ってっちゃう。カメラを持ってると登れちゃうんです。撮り終わるとスイッチが切れて、気がついたらすごい上まで登っちゃってて、どうやって下りよう…みたいな(笑)」そんな命がけの撮影も含め、5年ほどかけて編まれた写真集が「幻夢」。空想の世界で遊ぶことを教えてくれた亡き父の葬儀場のカーテンからスタートし、生と死の意味を探り、道に迷い、通り抜けると光が射し、花が咲き乱れ、霧が立ち込め、バレリーナの妖精が踊っていたり、目が覚めるとニュートラルな世界が広がり、別れてしまった恋人の面影が浮かんだり、最後は海で新しい旅立ちへ…と、ストーリーが展開していきます。「人生いろいろあるけど、キレイごとばかりじゃない。でも、必ず光がある。いい未来が待ってるんだよ、っていうのが裏のメッセージ。かなり前向きです」と、薫さんは微笑みます。彼女の写真に触れて、空想の世界でまどろんでみませんか? 暑かったトンネルを抜ければ、そこはオアシス。新しい季節は、リフレッシュしたあなたのものです。・黒坂麻衣さん 公式サイト ・湯沢薫さん HeHe ※文中のイベントは2015年のものとなります。
2015年09月02日© Bangkok Art and Culture Centre気軽にタイのアートシーン最先端に触れるなら「バンコク・アート&カルチャー・センター(BACC)」へ。ここは2008年、13年の構想を経てオープンしたアートスポット。真っ白な外観と、らせん状の内部がニューヨークのグッゲンハイム美術館を思わせる特長的な建物。館内にはタイのコンテンポラリーアートがインタラクティブな形で展示されている。ギャラリースペースに加えてショップ、ライブラリー、カフェも併設。美術企画展のほか、音楽や詩、演劇パフォーマンス、映画や文学に関するセミナー、キッズ向けワークショップも行われ、タイのアート好きが集まる。© Bangkok Art and Culture Centre館内は2つのエリアに分かれていて、企画展が開催されるメインギャラリーは上層階の7階、8階、9階に位置。1階には250席のイベントホールと、一休みにぴったりなおしゃれなカフェ「Gallery Drip Coffee」。広くはないが、バリスタが一杯ずつ丁寧にいれてくれ、美術鑑賞の合間はもちろん、近隣でショッピングに訪れた観光客の涼み処としても人気。2階に市民ギャラリーとショップ、3階にもまたショップがあり、4階、5階にはスタジオやミーティングルーム等がある。複数あるショップにはタイをモチーフにしたものや若手作家が手掛けたグッズもあるので、ユニークなお土産が見つかるかも!© TRIPPING!エスカレーターでメインギャラリーまで上ると、象徴的ならせん状のギャラリーと吹き抜けが眼下に広がり、定番のフォトスポットでパシャリ。ぶらり訪れてみるのも良いが、展示の内容は幅広いので、情報を事前にチェックしておくのも良い。さらに地下のアートライブラリーでは、アート関連本や企画展のプログラムを閲覧することが可能。ファミリーには嬉しいキッズコーナーもある。© TRIPPING!マーブンクローン・センター(MBK)、サイアム・ディスカバリー・センター、サイアムスクエアのある交差点の一角にあり、BTSナショナルスタジアム駅直結、サイアム駅CENからも徒歩約5分とアクセスも便利。入館無料なので、ちょっと時間が空いたら気軽に立ち寄ってみて。© Bangkok Art and Culture Centreバンコク・アート&カルチャー・センター(Bangkok Art and Culture Centre (BACC))・住所:939 Rama1 Road, Wangmai, Pathumwan, Bangkok 10330・利用時間:10:00~21:00(月休)・利用料金:無料
2015年07月30日フリーダ・カーロという画家を知っていますか? 1907年メキシコ生まれ。6歳の時に小児マヒを患って右足は短いまま、18歳で電車とバスの衝突事故に遭い、バスの折れた鉄柱が下腹部を貫通。脊椎、鎖骨、右足、骨盤の骨折で一時は医者にも見放され、生還しても47歳で亡くなるまで後遺症に苦しみ、それでも情熱的に描き続けたフリーダのことを。死後50年を経て、フリーダ・カーロ博物館からの依頼で彼女の遺品を撮影することになったのが、原爆で亡くなった人々の衣服を撮影した写真集「ひろしま」などで著名な世界的写真家、石内都さんでした。石内さんをテーマに映画を撮りたいと念願していた小谷忠典監督が、メキシコで石内さんに同行してカメラを回し、さらにメキシコの歴史や文化にも分け入って撮影した映画が、この魅力的で貴重な「フリーダ・カーロの遺品」です。遺品なのに、まるでフリーダが生きているかのよう! 偉大な画家というより、一人の女性としてフリーダを甦らせた石内さんは、普遍的な“女の人生”を私たちに突きつけます。女性として芸術家として、共通点を持つこの二人を、生と死の境を越えて活写した小谷監督にお話を伺いました。自分の傷に気づかせてくれた石内さんをテーマに、映画を撮りたい学生の頃から石内さんのファンで、いつか彼女の映画を撮りたいと思っていた小谷監督がインスパイアされたのが、石内さんが身体の傷を撮った写真集「scars」でした。「10年位前、結婚したいと思ったバツイチの女性に子どもがいて、その子の父親になりたいと思った時、引っかかるものがあったんです。それが何かはわからなかったけれど、石内さんの写真を見た時、自分の傷に気づかされて。自分には、父親がアルコール依存症という問題がずっとあったのですが、そのことと向き合わないと進めないんだなと」父親の理想像を追い求め、実際の父親とぶつかっていた自分が、石内さんの写真を見たことによって理想が崩れ、父親を一人の人間として受け容れられるようになったとか。その変化は非常に大きく、後に小谷監督は、自身の家族を撮った映画「LINE」のパンフレットで石内さんにコメントを依頼します。今回、彼女をテーマに映画を撮りたいと連絡した時は、たまたま石内さんがメキシコに旅立つ2週間前だったとか。「まさか、メキシコへ行ってフリーダを撮ることになるとは、全然思ってなかったです。こんなすごいプロジェクトを見過ごすわけにはいかないでしょう! とプロデューサーを説得し、石内さんの到着した2、3日後、どうにかメキシコに降り立ちました」フリーダ個人の奥にあるメキシコの歴史や文化を投影青く塗られた壁が印象的な、通称“青い家”。フリーダ・カーロの生家であり、夫の画家ディエゴ・リベラと結婚生活を送り、最期の時を迎えた場所、フリーダ・カーロ博物館の陽光の当たる中庭や、風通しのよさそうな明るい室内で、石内さんが撮影しています。何万点もある遺品の中から、即決で選び、撮らないものは「アディオース!」と除けていく姿勢の軽々と楽しげなこと。そのキュレーションの見事なこと。「石内さんも、最初はフリーダ個人を捉えていたんですけれど、遺されたものの中にある色彩とか質感、ディテールから、フリーダ個人より、もっと奥にあるメキシコの歴史とか文化に、どんどん着眼されていったんです。ただの記録では映画にする意味がないので、そういった石内さんの目には見えない仕事も可視化するというか、映像で伝えたいなあという思いがあったので、翌年、もう一度メキシコを訪れたんです」フリーダの母親の出身地オアハカで死者の祭りを撮影し、フリーダが日常的に愛用した伝統衣装テワナドレスを作る刺繍家の女性たちを取材するなど、映像に民俗色豊かな色彩感と文化の奥行が加わりました。テワナドレスは母から子へと受け継がれるとか。女性の手仕事も脈々と受け継がれ、「着物と同じね」と石内さんが撮影中に共感するシーンも。フリーダの強さは日常をちゃんと送っている生命力の強さ「フリーダは衣装持ちですが、その中でもテワナドレスは圧倒的に多い。痛みをあれだけ抱えた人だったので、衣装に守られているという感覚があったんじゃないでしょうか」1937年ヴォーグに載った時に着ていたグリーンのブラウスが、お洒落で驚きました。「自分をアピールするために、戦略的だったとは思うんですけれど、それだけじゃなく本当に大事にしていたんでしょうね。ただ、彼女はセルフプロデュースが本当に上手い人だと思います。本人は身長150cm足らずなのに、あれだけ大きく見せるというか、強く見せるというのは、衣装の力が大きいと思いますね」フリーダは、洗練された独自の感覚でテワナドレスを注文していたので、現地の刺繍家たちからは、あれは伝統本来のものではない、と言われているようです。「センスいいですよね。石内さんも着物を着崩して着るんですけれど、本当にかっこいいと思います」石内さんが淡々と撮影した写真は、光や風と柔らかく重なり合って、まるで家族の遺品をファミリーで見ているような親密な日常感に繋がってくるから不思議です。「石内さんもおっしゃってましたが、フリーダはいろいろセンセーショナルな物語を抱えていましたけれど、彼女の強さはそういうものじゃなく、あれだけの障害を抱えながら、ちゃんと日常生活を送っていた強さだと。映画でも、フリーダの日常の生命力を描きたいと思っていました。彼女は衝撃的な絵を描いていますが、タッチとか見るとすごく繊細で可愛らしかったりするんですよね。実物を見ると、よりそれは感じました」そんなフリーダの遺品を、あちらのスタッフが「こんなところで撮るの?」と驚くほど、石内さんはカジュアルに撮影していたとか。「ものを撮ってる感覚ではなく、身体としてものを撮れる人だから、フリーダ像を一回とっぱらって、もう一回、普遍的な女性というものを立ち上げるんだという意識は、最初から持っていたと思うんです」と小谷監督。撮影中も、「フリーダ、そうだったの」と話しかけながら撮影していたという石内さん。メキシコに行く前から話しかけていたそう。「フリーダ、呼んでくれてありがとう」と。そんな女性二人の息吹が伝わってくる「フリーダ・カーロの遺品」、自分に投影して観てみませんか? きっと新しい発見があり、生きる勇気が湧いてくるはずです。ドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 ― 石内都、織るように』2015年8月からシアターイメージフォーラムほか 全国順次公開監督・撮影:小谷忠典 出演:石内都 予告編: 小谷忠典(こたに・ただすけ)1977年大阪出身。絵画を専攻していた芸術大学を卒業後、ビュジュアルアーツ専門学校大阪に入学し、映画製作を学ぶ。『子守唄』(2002)が京都国際学生映画祭にて準グラン プリを受賞。『いいこ。』(2005)が第28回ぴあフィルムフェスティバルにて招待上映。初劇場公開作品『LINE』(2008)から、フィクションやドキュメンタリーの境界にとらわれない、意欲的な作品を製作している。最新作『ドキュメンタリー映画100万回生きたねこ』(2012)では国内での劇場公開だけでなく、第17回釜山国際映画祭でプレミア上映後、第30回トリノ国際映画祭、 第9回ドバイ国際映画祭、第15回ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、サラヤ国際ドキュメンタリー映画祭、ハンブルグ映画祭等、ヨーロッパを中心とした海外映画祭で多数招待された。映画写真 ©ノンデライコ2015
2015年07月24日昨今の日本美術ブームをうけて、江戸のポップアートと称される「浮世絵」に注目が集まっています。2014年に開催された「大浮世絵展」は、3館(江戸東京博物館、名古屋市博物館、山口県立美術館)で来場者数約38万人という大盛況ぶり。また葛飾北斎(かつしかほくさい)や娘の葛飾応為(かつしかおうい)を描く、杉浦日向子原作の漫画「百日紅」(さるすべり)が映画化されるなど、どうも“浮世絵”がキテいる感じなのです。そこで浮世絵専門美術館の太田記念美術館で、浮世絵の魅力や楽しみ方、一万四千点もの所蔵作品から大人女子に観て欲しい浮世絵を教えていただきました。江戸市民が生み育てた芸術だから大人女子が共感する部分も多い浮世絵は、江戸市民が生み育てた芸術。だから描かれた題材に親近感や共感が持てることが魅力のひとつだと言います。浮世絵には、様々な江戸が表現されていますが、なかでも多いのは美人画、風景画、役者絵の3つの題材です。美人画には、美人の変遷がわかる楽しみがあります。髪型はもちろん、顔の造作やたたずまいが時代によってまったく違うのが面白い。また吉原の花魁を描いたものだけではなく、真剣にお化粧をする町娘、浴衣で夕涼みする色っぽい芸者、旬ものをおいしそうに食べる遊女、など江戸市民の日常を描いた作品も多いのです。今と変わらぬ江戸女の日常を観ているとなんだか親しみが湧いてきます。美人画を画期的な手法で表現したのが喜田川歌麿(きたがわうたまろ)です。彼は、胸元から上をクローズアップする手法(大首絵)をはじめて美人画に用いた浮世絵師。表情には心の機微まで表現された美人画は、庶民の心をつかみ爆発的に売れたと言われています。「百日紅」で北斎宅の居候として出てくる溪斎英泉(けいさいえいせん)。「百日紅」では葛飾応為に絵が下手と揶揄されたこともある英泉ですが、美人画の名手として名を馳せます。ちょっとあだっぽい美女がお得意。高価な紅を重ねづけて玉虫色に光らせる笹紅に、眉をつくっている女性の姿を観ていると、ふわっと白粉の香りが立ち上ってきそうです。今の風景と重ねる面白さ風景画で江戸へタイムトリップ美人画や役者絵より後に人気となった風景画。地名が記されているので、今の風景と重ねる楽しさがあります。歌川広重が描く江戸の名所絵を観ていると、赤坂は桐畑だったこと、浅草寺や日本橋は今と同じく賑わっていたこと、江戸ではどこでも富士が見えたことなど、発見だらけ。大きく変わった町並みや光景と重ねながら、江戸の町へタイムトリップができちゃいます。描き損じの絵に囲まれた家で暮らし、ゴミ屋敷になるたび引っ越しを繰り返したとされる葛飾北斎(かつしかほくさい)。そんな暮らしから生まれたとは思えぬ、ダイナミックで斬新な構図の「冨嶽三十六景」シリーズ。特に波と富士山の色と形のバランスがすばらしい「神奈川沖浪裏」は、ひと目見たら忘れられない作品です。北斎の風景画と並び称される歌川広重(うたがわひろしげ)。力強い筆致の北斎に対して、抒情的な表現が持ち味です。なかでも雨、雪、夜景を描いた作品には、秀作が多いといわれます。「名所江戸百景 日本橋雪晴」は、雪が降った翌日の晴れ渡る江戸市中が描かれた作品。真っ白な富士を愛でながら雪かきする江戸市民の姿が浮かんできます。一枚の浮世絵を通して江戸の人々との対話を楽しみたい役者絵は、江戸市民のアイドルだった歌舞伎役者が描かれたもの。昔から市川団十郎は目が大きく、松本幸四郎は彫の深い顔立ちなど、今に続く名跡の顔や雰囲気が似ている点を探しだすのが面白い。ほかにも愛らしい動物、恐ろしい妖怪、事件や風俗が描かれた浮世絵からは、江戸市民が何に興味を持ち、どんなことを楽しんだのかがわかります。絵を通して彼らと対話している気分になってきます。赤穂浪士の仇討は「仮名手本忠臣蔵」として歌舞伎や人形浄瑠璃で演じられ、その物語は江戸の人々を熱狂させました。この作品の役者絵は数多いのですが、役者を蛙に描き変えた奇才・歌川国芳(うたがわくによし)の「蝦蟇手本ひやうきんぐら」は観ておきたい一枚。ユーモアセンスや批評眼に優れた国芳は、動物などを人に見立てた作品が多く、大の猫好きだったので猫の浮世絵が数多くあります。明治初期の作品ですが、四代目・歌川国政(うたがわくにまさ)「しん板猫のそばや」は、猫が蕎麦屋で楽しむ様子を描いた浮世絵。かけともりが八十文であること、膳の上で食べていること、当時の蕎麦屋が見える一枚ですね。ご紹介した浮世絵ですが、雑誌や書籍ですでに観たことがある作品かもしれません。しかし絵の迫力、摺り色の妙、彫の細やかさ、は印刷物ではなかなか伝わりにくいもの。また浮世絵は退色もしやすいため、保存状態のいい本物の作品に触れて欲しいと思います。今キテいる、江戸のポップアート“浮世絵”を観に行きませんか。取材協力/太田記念美術館東京都渋谷区神宮前1-10-10 03-5777-8600(ハローダイヤル)開館時間:10時30分~17時30分(入館は17時まで) 一万四千枚の所蔵作品を持ち、常にオリジナリティの高い展示を仕掛けている太田記念美術館。大盗賊や悪女、侠客を題材にした「江戸の悪」展(2015/6/2~6/26)や「浮世絵の戦争画」(2015/7/1~7/26)が近日開催予定。
2015年06月22日六本木の街を舞台にした一夜限りのアートの饗宴「六本木アートナイト2015」が、4月25日(土)10時~26日(日)18時まで開催中だ。2013 年、2014 年に続きアーティスティックディレクターを務める日比野克彦氏、新設されたメディアアートディレクターを務める株式会社ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏が担い、『ハルはアケボノ ひかルつながルさんかすル』をテーマに展開。メインプログラムには、齋藤氏主導でLEDを実装した光る大型トラックによる《アートトラックプロジェクト ハル号 アケボノ号》を実施するほか、参加者が加わってはじめて成立するアートとして、スマホを活用した参加・体験型プログラムも盛り込まれる。本イベントのアーティスティックディレクターの日比野氏によるワークショップは、26日(日)朝から昼にかけてテレビ朝日umuで実施される。日比野克彦と一緒に朝食をとり、語らいながら、集った各々が、昨晩見た夢を思い出す。子どもから大人までどんな方でも参加できる。参加料は、500円。最後には、みんなの絵を写真に撮ってひとつの映像につなぎあわせる。どんなアートができあがるのか楽しみだ。また今回、初の試みとして作品ガイドツアー「六本木アートナイトをもっと楽しむツアー」が開催されることとなった。ただし一般的なガイドツアーとは異なり、ACOPという独自のアート鑑賞法を踏まえ、平野智紀によって事前トレーニングを積んだボランティアガイドが案内するというユニークな内容。そこに集まった参加者との対話を通して、展示作品や六本木の街の魅力が紐解かれる。それは偶然か必然か、これもまたサイトスペシフィックなひとつのアートの形かも?アート作品のみならず、デザイン、音楽、映像、パフォーマンスに至る、さまざまなクリエイティビティとアートが広がる一夜限りのアートナイト。街中で展開される非日常との出合いを、あなたは今年どんな風に体験する?(text:Miwa Ogata)
2015年04月26日六本木アートナイト実行委員会は4月25日~26日、「六本木アートナイト2015」を東京都・六本木周辺で開催する。「六本木アートナイト」は、"生活の中でアートを楽しむ"という新しいライフスタイルの提案と、東京における街づくりの先駆的なモデル創出を目的とした一夜限りのアートイベントで、2009年から実施している。6回目となる今回は、「ハルはアケボノ ひかルつながルさんかすル」をテーマに、メディアアートに焦点を当てた内容で展開する。メインプログラムでは、アートプロジェクト「アートトラックプロジェクト ハル号 アケボノ号」を展開。メディアアートディレクターの齋藤精一氏主導で、LEDの実装を施した大型トラック「ハル号」「アケボノ号」が登場し、参加者とのコミュニケーションを創出するとともにパフォーマンスを繰り広げる。「ハル号」は、人格を持った働く車という設定で、常に東京・六本木に関するデータを収集する。「提灯アレイ・ディスプレイ」を搭載し、収集したデータをビジュライズするという。"フレンドリーな性格"で、気軽に写真撮影にも応じるとのこと。「アケボノ号」は巨大なミラーボールを搭載したアートトラック。六本木ヒルズアリーナを基地とするが、国立新美術館や東京ミッドタウンにも出没する。また、同イベントでは毎年、六本木の街なかの店舗やストリート、公園などに作品を展示している。今年は、第15回文化庁メディア芸術祭アート部門にて新人賞を受賞したドローイングマシン「SENSELESS DRAWING BOT」や、多数の巨大な花がゆっくりと稼働する機械彫刻作品「Bloom」が登場する。街なかで行うパフォーマンスとしては、アートトラックと10組のダンスアーティストによる「ダンス・トラック・プロジェクト」や、完全無音のダンスを披露する「サイレントダンスプログラム」、スイッチを押すと"何か"が起こる「六本木アートナイトスイッチ」、移動型ステージショー「ズンマチャンゴのかけら箱」を予定している。そのほかにも、アートな夜の楽しみ方を提案する「ハルはアケボノカフェ」や、テクノロジー・アートのカンファレンス「六本木ダークナイト」、ストローやゼムクリップ、写真を使ったワークショップのほか、外部企業や施設による同時開催プログラムも実施する。開催日時は4月25日10時~4月26日18時で、メインとなるインスタレーションやイベントが集積する時間帯は4月25日の18時22分(日没)~4月26日の4時56分(日の出)となる。なお、各イベントの開催時間は内容によって異なる。開催場所は、六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペースとなる。
2015年04月22日4月25日から26日にかけて、六本木の街を舞台にしたアートフェスティバル「六本木アートナイト2015」が開催される。メインプロジェクト「アートトラックプロジェクト」は、ライゾマティクスの斎藤精一が手掛けたもの。このうち、“ハル号”は東京ミッドタウン・キャノピー・スクエアに常駐する。“もしも都市が生きていたら一体何を話すのか”というテーマを元に、東京の様々なデーターを集約し、そのリアルタイムな状況を提灯ディスプレイに表示。更に、来場者がスマートフォンで文字やパターンを入力すると、その情報がトラックに表示されるというインタラクティブな作品を完成させた。一方、巨大なミラーボールが搭載された“アケボノ号”は、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンを回遊。六本木ヒルズアリーナに設置された巨大ジャングルジムを基点に、ライトを使ったライブパフォーマンスやダンスを行う。その他にも「街なかインスタレーション」として、六本木の街なかにある店舗や公園、道路などに作品が設置される。菅野創、山口崇洋は文化庁メディア芸術祭アート部門で新人賞を受賞したドローイングマシーン「SENSELESS DRAWING BOT」を展示。一方、山岡潤一はコンピューターグラフィックによる幾何学形状の描画を物理的に再現した「Morphing Cube」を出展する。その他、非日常的な一夜を作ることを目標する「街なかパフォーマンス」も開催される。アートトラックの荷台スペースを特設ステージとした「ダンス・トラック・プロジェクト」や、公園で行われるサイレントダンス「サイレントダンスプログラム」、スイッチを押すことによって上演される3から30秒の演劇「ズンマチャンゴのかけら箱」などが実演される。更に「街なかミーティング」では参加者体験型のアートプログラムを展開。「第三回六本木夜楽会」ではアーティストや作家などが、街の飲食店で台本なしのトークセッションを繰り広げる。一方、日比野克彦が企画するワークショップ「昨日みた夢は何ですか?」では、日比野克彦と参加者が一緒に朝食をとりながら、昨晩見た夢を絵に描いていく。【イベント情報】六本木アートナイト会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21デザインサイト(DESIGN SIGHT)、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース日時:2015年4月25日10時から26日18時まで入場料:無料(一部を除く)
2015年03月11日六本木アートナイト実行委員会は、4月25日~26日に開催される「六本木アートナイト2015」のメインビジュアルと主要プログラムを決定したと発表した。六本木の街を舞台とした"ひと晩限り"のアートの祭典「六本木アートナイト 2015」。今回発表されたメインビジュアルと主要プログラムは、アーティスティックディレクター・日比野克彦氏、および今年から新設されたメディアアートディレクターを務めるライゾマティクス・齋藤精一氏と協議して決定したものだという。開催テーマ「ハルはアケボノひかルつながルさんかすル」を象徴するメインプログラムとして、LEDをで光る大型トラックによる「アートトラックプロジェクト ハル号 アケボノ号」を齋藤氏主導で制作。各トラックは巨大なミラーボールと提灯アレイが搭載。さまざまなデータがビジュアライズされ、その周辺では音楽ライブや観客参加型のイベントが繰り広げられる。また、街なかの店舗や公園などに作品を点在させる「街なかインスタレーション」に関して、今年はメディアアートを取り入れた多様なインスタレーション作品を設置。ダムタイプ各所でパフォーマンスを行う「街なかパフォーマンス」も実施する。インスタレーションおよびパフォーマンスには、今回から設けられた公募枠「オープン・コール・プロジェクト」で採用したプログラムも含まれている。そのほか、各界の著名人と一般参加者が同じテーブルを囲む少人数クロストーク「第三回 六本木夜楽会」などの参加者が加わってはじめて成立するアートプログラム「街なかミーティング」に加え、各美術館(六本木ヒルズ、森ビル、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館)における企画展の夜間公開や関連トークイベントなど、非常に多数の催しが一挙に展開される予定だ。
2015年03月11日シャネル銀座ビル4階に位置し、昨年末で10周年を迎えたシャネル・ネクサス・ホール。若手音楽家をサポートするクラシック音楽のコンサートや、意欲的な展覧会を開催しています。2015年は、「ボヤージュ(旅)」をテーマにした展覧会が企画されています。新年の幕開けを飾るにふさわしい展覧会は、20世紀を代表する写真家の一人である、1923年フランス・リヨン生まれのマルク リブーが、約60年前に秘境アラスカを旅して撮影した貴重な作品によるものです。リブーの「アラスカ」シリーズは日本初公開となります。写真ににじみ出るリブー独特の詩情が魅力ここは……雪原? 展覧会場に足を踏み入れた瞬間、白一色でデザインされた見事に潔い空間が、決して広くはないのに果てしなく続く雪原のように見え、テンションが上がります。アンリ カルティエ=ブレッソンやロバート キャパとともに、写真家集団マグナムの一員として活躍したマルク リブー。彼は1958年、ジャーナリストのクリスチャン ベルジョノーと「パリ・マッチ」誌特派員として、目的地アラスカを目指しデトロイトを出発しました。フェアバンクスとコッツビューに1週間ずつ滞在した後、2ヶ月かけて終着地メキシコへ南下する旅を敢行します。そんな今回の展示作品は、「写真を撮ることは旅すること」と語っていたリブーらしい、アラスカ縦断中の驚きに満ちた旅の記録であり、写真史に残る名作です。走行中は、絶えず車のフロントガラスから氷を削り取らなければならず、パンクしたら凍え死ぬといわれていた過酷なアラスカ・ハイウェイ約2500キロの道程。その広大な未開の風景を、白いキャンバスに描かれる点描のようにレンズで切り取り、現地に暮らすエスキモーの生活を生き生きと活写しています。零下34度の中、氷に穴を開けて魚を釣る姿や、凍結した馬の死体が横たわる写真など、目を奪われずにはいられません。それはリブーの視点が、フォトジャーナリストとしてだけでなく、ヒューマニストとしても卓越しているからでしょう。同時に、リブーの美意識が反映された白と黒の絶妙なバランス、幾何学的なグラフィックとしての斬新さは非常に現代的であり、私たちをみることへの情熱で釘づけにします。「リブーの写真を“芸術作品”に昇華させているのは、そのイメージに色濃くにじみ出る独特の詩情である」とは、本展覧会のキュレーターである佐藤正子さんの言葉。その詩情をぜひ、展覧会場を訪れて実際に体感してみてはいかがでしょう?ココ シャネルの美意識とメセナ精神を踏襲する展覧会写真のみならず、空間全体もそこに漂う空気感も含め、透徹した美意識がすべてに行き届いた、こんなにも完成度の高い写真展が日本で楽しめるとは驚きです。(しかも無料で!)今さらながら、ピカソ、コクトー、ストラヴィンスキーら若き芸術家たちを支援し、革新的であることを追及し続けたシャネル女史のエスプリが、現在も脈々と受け継がれているのを感じ、白銀の世界が熱気で満たされる思いでした。リブーご本人は、高齢のため来日なさいませんでしたが、息子さんで建築家のテオ リブー氏がオープニングに際して挨拶し、「私はアラスカで、生涯一番寒い日々を過ごした」「世界の暴力より美しいものを撮りたい」というお父様の言葉を紹介。フランスの連続銃撃テロの直後だけに、「父がもし若かったら、レピュブリック広場に駆けつけて、デモに参加したでしょう」「リブーは自由な人々の味方です」と語り、やはり熱い想いを感じました。本展覧会は、2015年4月18日(土)~5月10日(日)、國際写真フェスティバル京都グラフィーの公式展覧会として、京都に巡回されます。京都展にもぜひ訪れたいと思います。
2015年01月21日旅先での楽しみ方は人それぞれだが、今回おすすめしたいのが現地で楽しめるアートスポットだ。近年、経済成長の著しい東南アジアではシンガポールを筆頭にアートも盛り上がりを見せており世界も注目!センスの光るギャラリーやファミリーでも楽しめるミュージアムなど五感で楽しむアートスポットはいかが?■歴史も学べる!正統派ミュージアム編1. National Museum of Singapore in シンガポール国内最古&最大の博物館として街の中心で華やかな存在感の国立博物館。シンガポールの歴史が分かるヒストリーギャラリーは見どころ満載だ!記事を読む>2. Islamic Arts Museum Malaysia in マレーシア・クアラルンプール国教はイスラム教で人口の6割がイスラム教を信仰しているマレーシア。日本ではあまり触れる機会のないイスラムの文化に触れてみるのはいかがだろうか?記事を読む>■体感型ミュージアムで遊ぼうMade In Penang Interactive Museum in マレーシア・ペナン2013年秋にオープンした新名所!巨大壁画のトリックアートは、ペナンの風景や文化などを取り入れた作品が多くとてもユニーク!記事を読む>■気軽に楽しめるカフェ&ギャラリー編1. GOJA in タイ・バンコクいまバンコクで注目のギャラリーカフェ。アートギャラリー兼カフェなのでコーヒーを飲みながら気軽にアート鑑賞できるのが魅力だ。記事を読む>2. Soul Cafe in マレーシア・ペナン定期的に行われる写真展やアート展を楽しみながら、コーヒーや食事が出来るフォトグラファーカフェ。カメラのレンズ型カップなどオーナーのこだわりにも注目!記事を読む>3. Dia.Lo.Gue Artspace in インドネシア・ジャカルタKemangと呼ばれるお洒落エリアにあるアートギャラリー。インドネシアや日本、他各国から集めた、ギフトショップも併設されておりゆっくり楽しめる!記事を読む>■移動途中にも楽しめる!街中編Marking Georgetown その1 in マレーシア・ペナンユネスコ世界文化遺産であるジョージタウンの歴史遺産への理解と関心を深めてもらうために昔の人々の生活の様子をユニークに表現したワイヤーアート『Marking Georgetown』!記事を読む>Marking Georgetown その2 in マレーシア・ペナン『Marking Georgetown』第二弾!カフェなども多いので休憩しながらゆっくり散策するのがおすすめ!記事を読む>グラフィティアートを楽しむ旅! in インドネシア・ジョグジャカルタジョグジャカルタの現代アートの街としても有名!世界的に著名なアーティストを産み出している街ということもあり、街中でグラフィティアートが楽しめる!記事を読む>
2014年12月08日城下町・松本にあり、1300年前から親しまれてきたのが浅間温泉。古くは江戸時代、松本城主たちが愛し、明治になると竹久夢二、与謝野晶子など文豪たちも足しげく通った名湯です。長野県内でもトップクラスの湧出量を誇り、柔らかく肌になじむ泉質は多くの温泉ファンに好まれています。その浅間温泉の中でもひときわ現代性と日本ならではの伝統の意匠ある空間を持ち、デザイナーズ旅館として高い評価を受けているのが、「星野リゾート 界 松本」。新旧のアートに触れた後、ゆっくりとくつろぐのなら、こんなスタイルのある宿こそがふさわしいものです。伝統の技を各所に感じる館内「界 松本」のコンセプトは歴史と芸術に深く結びついた松本の歴史をたどるかのように、館内で新鮮さとクラシカルな美しさを秘めたアートワークを表現すること。それも職人たちの手仕事の技が光る本物を見せる。そんな宿の情熱が見え隠れします。ドームのような外観からガラスのアプローチを抜けた先にあるエントランスホールはまるで教会のような荘厳さ。その先には吹き抜けの廊下がドラマチックにゲストを出迎えてくれます。丁寧な細工が施された透け感が美しい組子障子は匠の技術あってのもの。陰影ある表情を持つのは天然土壁。波のような浮き上がりが力強い。このほか、伝統的な江戸の墨流しを用いた和紙、繊細な金箔をはりつけた細工、作家・川原信子氏によるカリグラフィーアートなどパブリックスペース、客室のあらゆる場所にこだわりが。伝統とモダンがとけあい、ときに共鳴しあってどこにもない「界 松本」ならではの華やかな美学へと昇華し、みごとです。 松本文化を表した星野リゾート 界 松本の「ご当地部屋」>>続きを読む 松本の文化を表したご当地部屋「オーディオクラフトルーム」「界」ブランドではその土地の魅力を極めてゲストに提供する「ご当地部屋」というコンセプトルームを設けています。もの作りが盛んな松本を象徴して「界 松本」では「オーディオクラフトルーム」を用意。工房アンダンテを主宰する木工作家・吉田直樹氏による音楽をテーマにした作品を室内に展示。クラシック、ジャズなど心をリラックスする音の世界を表現し、音楽を愛するゲストに好評。この部屋に泊まりたくて訪れる愛好家も多く、人気です。「オーディオクラフトルーム」制作クラフト作家 吉田直樹氏コメント「星野リゾート 界 松本」との出会いは今年の「クラフトフェアまつもと2014」でのことでした。そこからお話しがあり、「オーディオクラフトルーム」のための作品を依頼されました。最初はやはり、いろいろと考えましたね。客室というプライベートな場所でどんなものがゲストのみなさんの心の琴線に触れ、音楽を楽しんでいただけるのかと。そこで、ジャズとクラシックをテーマにした作品を選んでみました。やはり部屋の中ではリラックスしてもらうのが一番ですからね。松本は「サイトウキネン・フェスティバル」などアートと共に音楽とも深い絆のある街。「界 松本」にも音楽愛好家のゲストの方も多く、 この「オーディオクラフトルーム」はとても喜んでいただけているようで、本当に嬉しいです。私の作品は音と灯りと木のぬくもりが生み出す優しく、温かな空間が特徴です。どうぞ、作品に触れてみて、柔らかい木の肌触りを感じとっていただきたいです。また、バイオリンなどに用いる本物の木を使ったオリジナルスピーカーも「ご当地部屋」のために製作中です。チェックインすると室内には好みの音楽が流れている。そんな余韻のある「ご当地部屋」になればと思っています。 宿泊中は松本文化ならではの体験を >>続きを読む カンクラフトワークショップを体験「星野リゾート 界 松本」でもうひとつ体験したいのがゲストのためのクラフトワークショップ。松本でシンプルな美しい手作り家具を製作するKancraft(カンクラフト)直伝で技術を取得したホテルスタッフが指導。小さなカッティングボードやコースターなど気軽に作れる作品に挑戦。これが思わず集中してしまうほど楽しく、自分だけのクラフト作品に旅の思い出を刻んでいきます。夜にはエントランスロビーにてコンサート堪能教会のような荘厳な雰囲気のエントランスロビーでは毎夜、地元のアーティストによるゲストのためのコンサートを開催。フルート、ピアノ、サックスなど日によって異なる内容で、身近に楽器の音色、ライブな音楽の高揚感を味わえると好評。空間を活かし、高い天井に共鳴する響きは感動をおぼえるほどにドラマチックで「界 松本」での夜にふさわしい時間を演出してくれます。 特集「アートを旅する街、松本」
2014年11月28日松本はご存知、松本城をかかえた城下町。北アルプスなどの山脈を背景におおらかさと歴史を重ねあわせた情緒が魅力。伝統を守りながらも現代アートなど新しいものへの関心も盛んで、クラシックな街並みと奥深いカルチャーライフが訪れるわたしたちを魅了します。その松本の観光スポットのメインとなるのが中町通り。なまこ壁の土蔵が続き、人気の高いクラフトショップ、伝統工芸、カフェ、アンティークショップが集まり、ゆっくりと散策を楽しむのがおすすめです。松本文化クラフトワークに触れる宗教学者であり美をこよなく愛した柳宗悦(やなぎ むねよし)が提唱したアート運動が民藝(みんげい)。有名作家ではなく職人たちが作る生活用品にこそ美が宿るという考えで一大ムーヴメントを巻き起こし、中町通りを中心に古美術、民芸・工芸品を扱う老舗が松本のクラフトワーク文化を担ってきました。その中心が「ちきりや工芸品」。松本の民藝運動の中心的存在、丸山太郎が初代オーナーの民芸店。松本に来たらまず訪れたい場所のひとつといえます。カラリと扉を開けると店内には透明感ある色鮮やかなガラス製品、温かみのある陶器、世界各地のクラフト雑貨などがギッシリ。見ているだけで飽きないバラエティに富んだ品ぞろえに心が躍ります。手にとって見るとプライスも驚くほどリーズナブル。普段使いしてこそのクラフトものだということをそっと教えてくれているようでうれしくなります。雰囲気の良いクラフトワークショップ中町通りにはそれは魅力あふれる店が多いのですが、どれもそれぞれ個性的。ここはぜひ、ゆっくり時間をとって探索したいもの。「アール・ド・ヴィーヴル」とはフランス語で「暮らしの中の美学」という意味ですが中町通りでそんな上質で美しいライフスタイルを彩る日用雑貨を扱うのが「陶片木」(とうへんぼく)。唐津焼きに魅了された店主が始めたクラフトワークを中心とした店舗は、この店のために松本に通う人たちもいるほど長く愛され続けています。外観は伝統的な日本家屋。元は印刷所だったという「陶片木」の店舗には、雑貨・小物好きを夢中にさせる全国から集められた手仕事の逸品がそろいます。美しいモノたちは美しい場所で。そんな店主の想いを感じる空間はゆっくりと時を刻むよう。人気のバターナイフ、すり鉢など店主みずからデザインした製品は造り手から使い手へと手渡される現代の民藝アートワークそのもの。しみじみと愛おしい存在です。 ちょっと一息と立ち寄ったカフェに…>>続きを読む ちょっと一息と立ち寄ったカフェに有名な…クラフトカルチャー散策の途中でちょっとブレイク。そんなときに立ち寄りたい人気の店をはじめ、中町通りには老舗的なレストランやカフェといった食べる楽しみも豊富。昭和8年創業。中町通りというよりも松本市を代表する洋食の老舗レストラン。観光客だけではなく地元の人たちに愛され、店内はいつもにぎわっています。こっくりと煮込まれたデミグラスソースのハヤシライス、素朴な美味しさのオムライスなど名物メニューは今も健在。そして最後に忘れずにオーダーしたいのは自家製プリン。店内には開業当時の写真や、松本出身のアーティスト草間彌生の作品が飾られ、レトロな食器などにも松本らしいクラフトテイストを感じさせます。松本市美術館で現代アートに触れる民藝、クラフトワークだけでなく松本のもうひとつの魅力といえば現代アートに触れること。なかでも松本市出身で世界的な現代美術の第一人者として知られるアーティスト草間彌生の常設展示のある松本市美術館はファン必見。松本、東京での個展を経て単身渡米、ニューヨークを中心に活動し、にわかに注目を浴びたファンキーで破壊力ある草間ワールドを体感する展示・演出はとにかく圧巻。アートとは感じることである。そんなメッセージがダイレクトに伝わってくる作品群です。松本市美術館には常設展以外にもはずせないチェックポイントがいくつかあります。まず目に飛び込んでくるのが草間彌生の野外彫刻「幻の華」。その横には草間氏によるドット柄が施された自動販売機も。ファンならここで記念写真撮影はマストです。ミュージアムショップにも草間アイテムがそろい、限定販売は美術館オリジナルのてぬぐい。また、JR松本駅と松本市美術館などを周遊する「クサマバス《水玉乱舞》号」が運行。これを利用して訪れるのも楽しいのでお忘れなく。市街地より少し足を延ばしてディープな松本の歴史に触れる「美しいものが美しい」。松本での民藝運動の立役者であった故丸山太郎が残した言葉こそが今の松本に継承される文化的美意識を象徴しています。その丸山が昭和37年に創館したのが松本民藝館。コレクターとしての優れた眼を持った氏が選び抜いた日本だけでなく世界各地からの陶磁器、テキスタイル、家具などが美しい古民家の空間に展示。生活と暮らしに密着した様式の中に宿る本質的な美しさには時空を超えた力強さが見え隠れします。そして松本アートの旅をさらに奥深く楽しむのなら宿泊選びも大切。おすすめは職人技の伝統美とセンスある現代アートを融合させたモダンなムードのデザイナーズ旅館として話題の「星野リゾート 界 松本」。秀逸な料理と温泉もあわせて満喫できる麗しき美食の湯宿として人気です。 中町通りで見つけた、ステキなお土産をアノ人が紹介>>続きを読む お土産選び基本の鉄則は、(1)使えるもの(2)美味しいもの(3)その土地ならではのもの。今回ご紹介する「松本」のお土産は、基本を押さえつつ、さらに「これぞ!」というものを集めてみました。「思わず笑顔がこぼれる」「印象に残る」「食卓での会話が弾む」。そんなテーマから選んだ、とっておきのお土産をご紹介します。■「松本民藝館」でみつけた、思わず笑顔がこぼれる小さな壺手のひらサイズの小さな壺。思わず「可愛らしい~」と笑顔がこぼれそう。特に女性に喜ばれそうなお土産で、季節の植物を飾ったり、楊枝を刺したりと、その人なりの工夫で、色々と使えそうです。値段も 1つ 300 円とお手頃です。■季節感を伝え、相手の印象にも残る「開運堂」の栗菓子松本で100年以上続く老舗店「開運堂」で秋の味覚、栗菓子を見つけました。店名も「開運堂」と縁起のよい響きですね。季節感を伝え、しかもその土地でしか買うことのできない味は相手の心にインパクトを与えてくれます。■食卓で会話が弾む「陶片木」のアイデアあふれるお土産海外や全国からファンが訪れる名店「陶片木」でみつけた「バターナイフ」と「椅子型の箸置き」。「バターナイフ」は使った後に、バターがついていてもそのままテーブルにポンと置ける工夫がされています。ユニークでしかも使い勝手のよいお土産は、食卓でのちょっとした話題になり、会話も弾みそうです。 特集「アートを旅する街、松本」
2014年11月28日2015年4月25・26日、六本木の街を舞台に一夜限りのアートフェスティバル「六本木アートナイト2015」が開催される。このイベントでは六本木ヒルズや東京ミッドタウン、サントリー美術館など、街に点在する様々な施設にアート作品を展示。インスタレーションを中心に、音楽、映像、パフォーマンスなど様々な作品を見ることが出来、中には観客参加型のアートも出品される。昨年に引き続きアーティスティックディレクターを務めるのは、現代美術家の日比野克彦。さらに、メディアアートディレクターとして、ライゾマティクスの齋藤精一を招聘し、アートナイトの新たな形を模索していく。なお、今回初の試みとして、一般から作品を募集する「オープン・コール・プロジェクト」を開催。応募されたプログラムのうち、優秀な作品は2次審査へと進むことになり、審査委員会の前で企画者自らがプレゼンテーションを行うことになる。この様子は一般に公開され、以降もこうしたプレプログラムを本番までに実施していく予定だ。【イベント情報】六本木アートナイト会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21デザインサイト(DESIGN SIGHT)、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース日時:2015年4月25日10時から26日18時まで入場料:無料(一部を除く)
2014年11月21日武蔵野美術大学は15日~24日、東京都小平市との連携で行っているアートプロジェクト「小平アートサイト2014 GATE-アートとつながる-」を開催する。○美術を身近に感じていない人に美術を体感してもらうプロジェクト同プロジェクトは、同学の彫刻学科研究室と学生生活課が主体となり、美術を身近に感じていない人に美術を体感してもらいながら、地域の交流を深めていくことを目的として、毎年開催されている催し。今年で28回目の開催となる同プロジェクトのテーマは、「GATE-アートとつながる-」。学生のために、大学の門をくぐり抜け外へ発信できる場をつくり、自分自身を向上させる制作をしてもらいたいという思いと、普段美術と関わりのない地域の人が、美術に興味を持つきっかけとなる入り口として来場してもらいたいという思いを込めて、同学の学生が考えたテーマだという。東京都小平市内の公園や地域センター、公民館など市民の生活の場で作品を展示し、さらにパフォーマンス・イベントやスタンプラリーなど、地域住民と積極的に交流するためにさまざまなイベントを開催する。また、今回初の試みとして、大道芸人を招いて学生の彫刻作品の中に紛れるパフォーマンスを行う。会期は15日~24日、9時~17時。会場は東京都小平市・小平市立中央公園、鷹の台公園、上水公園、美大前緑地、玉川上水緑道(会期中無休)。屋内会場は小川1丁目地域センター(休館第1、3火曜日)、コンカフェ くるみの木(火曜日定休日)。オープニングパーティーは15日17時より小平市立中央公園で開催。小平市在中のジロー今村さんを中心としたパフォーマンス・イベントは15日、16日、22日、23日、24日に小平市立中央公園で開催。また、出品者によるパフォーマンスイベントも開催する。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科3年・市岡一恵さんの作品「プレゼント」は、立体作品展示、および立体作品を舞台装置とした親子向け朗読劇。開催日時は15日、16日、22日、23日の13時~、15時~に開催(1回約15分)。場所は小平市中央公園・地下通路出て右手の林。武蔵野美術大学デザイン情報学科3年・福田恵理さんと、日本大学芸術学部演劇学科3年・櫻井美穂さんの作品「落下」は、フェミニズムと姉弟の関係に関する、劇場外の演劇。開催日時は15日、16日の15時30分~、16時30分~(1回約30分)。場所は小平市中央公園・噴水横広場。
2014年11月13日ベルリンのアートシーンが最も盛り上がる季節がある。それは「ベルリン・アートウィーク」が開催される秋。期間中には街の至る所で展示が行われ、アートに多くの注目が集まる1週間となる。今年で3回目となる本イベントは9月16日から21日まで開かれ、ベルリンの街はアート一色に染まった。ベルリン・アートウィークの枠組みでは、時期を合わせてアートに関連する様々なイベントが開かれる。開催されるのは美術館での展覧会や、美術作品の販売を行うアートフェアなど。開催時期が重なり、短期間で多くの展示を見ることが出来るため、今ではベルリンの秋の恒例イベントになっている。国際的に重要な美術館が参加しており、多くの素晴らしい展示を見ることができる。例えば、市内中心部にある美術館「アカデミー・デア・クンスト(Akademie der Kunste)」での展覧会。本イベントの開幕を祝う式典が行われた美術館では、インスタレーションや映像、そしてパファーマンスなど様々な作品を見せる展示「Schwindel der Wirklichkeit (リアリティのめまい)」が開催された。会場にはオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)の鏡を使った作品やトマス・デマンド(Thomas Demand)の写真作品などが並ぶ。その一方で変わった作品も展示されている。それは会場の監視員が来場者に展覧会の意義を尋ねるティノ・セガール(Tino Sehgal)のパフォーマンス作品。観客は作品を眺めるだけでなく、美術作品にかかわり、それについて考えを巡らすことにもなる。このように普通の展示には見られないような作品もあり、訪れる人々を驚かせていた。ベルリン・アートウィークの中心となっているのは「abc」と呼ばれる個性的なアートフェア。一般的には作品の販売が重視され、参加ギャラリーは売りやすい小作品を見せることが多い。だがabcではアーティストの紹介に力を入れており、ギャラリーは一区画に1人のアーティストを紹介する決まりだ。そのため展示の質は保たれ、素晴らしい作品を見ることが出来るのだ。abcで特に驚かされたのは、ベルリンのギャラリー「スプルゥース・マーガース(Spruth Magers Berlin London)」が見せた作品。特徴的なパフォーマンスで知られるヨーン・ボック(John Bock)が会場に屋台を用意して、来場者に手作りのトーストを提供していた。また、それを載せる紙皿には彼のドローイングが描かれており、来場者は作品も無料で入手できる。アートフェアは作品を売り買いする場だが、ここでは来場者がアートを楽しめる場所にもなっていた。このように美術館での素晴らしい展示や、個性的なアートフェアが人々を魅了するが、それらばかりがイベントを盛り上げるわけではない。公式には参加していないギャラリーも、多くの来場者を目当てに時期を合わせて展示を行う。こうしてベルリンの至る所では無数のアートに関連したイベントが開催され、世界中からコレクターや美術関係者が集まるのだ。まさに芸術の秋。もしベルリンのアートを楽しむのであれば、最も盛り上がる秋を逃す手はないだろう。
2014年10月10日青山通りと表参道をつなぐ約300mの通称“青参道”で、今年もエリア型アートフェア「青参道アートフェア」が、東京がアートやデザインのイベントで賑わうデザインウィーク中の10月23日(木)~10月26日(日)の日程で開催となる。原宿・表参道・青山のショップを巡るこのアートフェアは、アートで通りが賑わうこと、そして若手現代アーティストの作品を「購入する」楽しみを知ってもらうことを目的としており、敷居は低く、クオリティは高く、毎回注目の若手アーティストが多数登場する。今年は、約30店舗が参加し、40組以上のアーティスが出展する。今日多くの人の生活に欠かせない「写真」にフォーカスして開催される。MAPを見ながら散歩がてらに、お気に入りのフォトアートを手に入れてみてはいかが?(text:Miwa Ogata)
2014年10月07日まさに芸術の秋たけなわ。お家でまったり聴く音楽もいいけれど、本格的なコンサートホールで生音に触れるひとときは、やはり格別なもの。コンサートの帰りにお酒をたしなみながら余韻にひたるもの素敵な時間です。新宿のおとなり、初台に位置する東京オペラシティの周囲には、おしゃれなレストランなども多く、気軽にコンサートを楽しめる雰囲気が魅力です。今回は、秋の始まりにぴったりな、今注目のおすすめ3公演をご紹介します。ファジル・サイ×須川展也の共演による世界初演「鬼才!天才!ファジル・サイ!」というキャッチコピーで知られる、トルコ生まれのピアニストで作曲家、ファジル・サイと、今年、デビュー30周年を迎え、クラシカル・サクソフォン奏者として世界の第一線で活躍する須川展也のデュオ・コンサート。曲目は、第1部がサイのソロで、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ第11番(トルコ行進曲付き)」そして、「ピアノ・ソナタ第14番」。世界的なセンセーションを巻き起こした彼の「トルコ行進曲」はとても印象的で、まさに渾身の名演奏!第2部が共演で、感動的なフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」、小粋なミヨーの「スカラムーシュ」。そして、完成したばかりのサイ作曲「組曲~アルト・サクソフォンとピアノのための Op.55」の世界初演。音楽史の新たなページが開かれる瞬間に、是非立ち合われてはいかがでしょうか。 刺激的で美しい!アンサンブル・ノマドが演奏する現代曲 >>続きを読む アンサンブル・ノマドが演奏する現代曲が刺激的で美しい!クラシックのみならず現代作品を得意とし、世界中で活躍するアンサンブル・ノマドは、ギタリストの佐藤紀雄氏が芸術監督を務める日本を代表する超絶技巧集団。今回、第51回定期演奏会は「再生へ vol.2 死と願望の歌」と題して、ニュージーランドの現代音楽作曲家、ジャック・ボディの3作品を演奏します。タイトル曲でもある「死と願望の歌」は、作曲家で音楽民族学者でもあるボディが、世界各国からプラント・ハンターのように、絶滅しつつある音楽を救い出しアレンジで甦らせたドラマティックな作品。その中に登場する「カルメン」の「ハバネラ」などを、来日アーティストであるカウンター・テナーのシャオがなまめかしく妖艶に、そしてマオリ族の歌をソプラノのメレが歌うなど、女性讃歌ともいえる曲だそう。いつも洒落た趣向が凝らされ、すぐ満席になってしまうエキサイティングなステージからは、目も耳も離せそうにありません。世界最高峰「レ・ヴァン・フランセ」の管楽に酔いしれる“フルート”のエマニュエル・パユ、“オーボエ”のフランソワ・ルルー、“クラリネット”のポール・メイエ、“ホルン”のラドヴァン・ヴラトコヴィチ、“バソン”のジルベール・オダン、“ピアノ”のエリック・ル・サージュという、世界最強のスーパースターたちによる“夢のアンサンブル”「レ・ヴァン・フランセ」の来日公演です。曲目は、ベートーヴェンのエンタテインメント作品として傑作のひとつである「ピアノと管楽のための五重奏」、色彩豊かで変化に富む軽妙洒脱なプーランクの「六重奏」など。名曲の数々を至上最高の名演奏で、どうぞ心ゆくまで堪能なさってください。いつもより少しだけオシャレをして、心に染み入る音楽やエキサイティングな舞台を満喫しましょう!・ 10月11日(土)アンサンブル・ノマド 第51回定期演奏会~再生へVol.2 : 死と願望の歌とダンス~ ・ 10月16日(木)サクソフォンの新たな地平1~ファジル・サイ委嘱作品世界初演 ファジル・サイ 須川展也 ・ 10月22日(水)世界最強のスーパースター軍団! 夢の管楽アンサンブルレ・ヴァン・フランセ
2014年10月04日ブレないつもりでいても人の言葉に気持ちが揺らいだり、がんばったことが裏目に出て自分が心もとなく思えたりする時、意志的な主人公の映画を観るとシャキッとしますよね。単純に、映画と自分を比較はしないかもしれませんが、劇中の女性の潔い生き方や毅然とした態度から刺激を受けることってありませんか? そんな凛とした佇まいの魅力に満ち、100年以上をも遡った時代に、強い意志を持ち続けていた女性たちが主人公の映画を3本、ご紹介いたします。アナ・ムグラリスがカッコいい「シャネル&ストラヴィンスキー」20世紀最大のファッション・デザイナー、ココ・シャネルは、生きていたら今年131歳。カール・ラガーフェルドに引き継がれた今も圧倒的な人気を誇ると同時に、シャネル自身が生き方のアイコンとして、現代の女性たちに影響を与え続けている存在です。「アメリ」のオドレイ・トトゥが若きシャネルを演じた「ココ・アヴァン・シャネル」、名女優、シャーリー・マクレーンが演じる「ココ・シャネル」、本物のシャネルが登場する「シャネル シャネル」など、彼女はいくつもの映画で描かれています。その中でもおすすめなのは、芸術支援に力を注いだシャネルが作曲家ストラヴィンスキーと恋に落ちる、この映画です。シャネルのCFモデルも務めた主演のアナ・ムグラリスは美しいの一言!印象的なのは、ストラヴィンスキーの生活をバックアップしてあげて、彼にお礼を言われるシーン。口角をちょっと上げただけでサッと踵を返して立ち去るのですが、このシーンだけで、シャネルならこうだろうな! と実感させる凄みがあります。恩着せがましさの一切ないクールさにしびれました。 サウンドトラックが全世界で300万枚以上のセールス >>続きを読む 言葉でなくピアノで伝える「ピアノ・レッスン」の主人公船から運ばれたピアノが海辺に置かれる印象的な冒頭シーンから始まるこの映画の主人公は、6歳の時に自分の意志で話すことをやめた女性。言葉でなくピアノで自己表現をする謎めいた主人公をホリー・ハンターが好演。 ピアノを通じて、ハーヴェイ・カイテルが演じる現地の男性と、愛と官能の世界へ・・・とめくるめく内容です。 どこにもないようなストーリーなのに、「自分が体験したいと思う映画を作ったの。物語にすっと入れて、夢中で見終えてしまうような…」と語るジェーン・カンピオン監督の術中にまんまとはまってしまいます。ハッピーエンディングに驚いてしまうくらい不思議な映画ですが、独特な味わいの映像とともに、サウンドトラックを全世界で300万枚以上セールスしたという、マイケル・ナイマンの音楽も筆舌に尽くしがたい魅力があります。 イサム・ノグチを芸術家に育てた女性の人生を描く >>続きを読む イサム・ノグチを芸術家に育てたシングル・マザー「レオニー」キャッチコピーは「お母さん、私はこの子を連れて日本という国に行きます。」世界的に有名な天才彫刻家、イサム・ノグチは、ある2人の出会いによってこの世に生を受けます。その2人とは、20世紀初頭のアメリカで売り出し中の詩人、野口米次郎(ヨネ)と、その翻訳を手伝う作家志望のインテリ女性、レオニー・ギルモア。未婚のまま出産をし、100年前の日本で戦争や人種差別、偏見に艱難辛苦の日々を送る母子。そんな中でも、レオニーは幼少からイサムの芸術性を見抜き、成長した彼がコロンビア大学医学部で学ぶのをやめさせてまで、芸術家への道を歩ませます。一人の男を愛したという運命を潔く受け容れるレオニーの生き方は、日米合作という大作をまとめあげた松井久子監督の生き方にも通じ、世界中でロングラン中。主演は「マッチポイント」などで著名な英国女優、エミリー・モーティマーと中村獅童。美しい陰影が特徴的な撮影監督は「エディット・ピアフ」でセザール賞受賞の永田鉄男、余韻を残す絶妙な音楽は「ネバーランド」でアカデミー賞受賞のヤン・A・カチュマレクと、キャスト、スタッフともに恵まれた傑作。迷える女性に光を与えてくれるエンタテインメントです。・ 「シャネル&ストラヴィンスキー」 ・ 「ピアノ・レッスン」 ・ 「レオニー」
2014年09月25日写真集が与えてくれる愉しみを、何にたとえたらいいだろう。一生行くことがかなわない旅路の想像を絶する風景も、頭の中の妄想の果てしない場面も、死も生も、喜びも悲しみも、千変万化の変容とともに手の中で見ることができる…その得も言われぬ至福を。日常生活の中のティータイムのような洒落たひととき、世界中を旅できて、見知らぬ辺境に遊び、人間の深淵に迫り、人生の疲れすら癒してくれる写真集は、なくてはならない美の壺です。昨年、発刊された写真集の中から、お気に入りの3冊を紹介します。愛ある眼差しを一瞬に込めたドアノーの世界初公開作品「パリ市庁舎前のキス」という写真が有名で、東京都写真美術館入口の壁面に飾られるなど、どこかで目にした方も多いかもしれません。日常の小さなドラマを絶妙に写し取り、“パリの写真といえばドアノー”というイメージさえある、フランスを代表するヒューマニズムの写真家ドアノーは、時代を超えて今なお、多くの人々に愛され続けています。彼が、第2次世界大戦中、疎開していたのがパリから340キロ南西のサン・ソヴァン村。戦後、数年経って、疎開先だったモテイヨン家の娘の結婚式に呼ばれ、プライベートで撮影したのがこの写真集です。未発表作品を世界に先駆けて日本で発刊! ドアノーと一家の親密さが根底にある祝福のドラマがつづられ、新郎が新婦に向ける真っ直ぐな視線の瞬間を捉えた表紙には、愛があふれていて思わずドキドキ。古い映画を観るような魅力的な1冊です。写真と文章で描かれる名舞台「上海バンスキング」の表と裏演出家、俳優、美術家でもある串田和美氏と1998年に結婚した写真家の明緒さんは、夫が主宰していた劇団「オンシアター自由劇場」が上演して大ブームとなった「上海バンスキング」を観ていませんでした。周囲から再演を乞われ、それこそ、故・中村勘三郎さんが土下座までしたというその舞台を初めて観たのは、2010年、封印されて16年を経た再演の時でした。“遅れてきた観客”である彼女が、再演時の様子を写真と文章でつづったが写真集「わたしの上海バンスキング」。ジャズシーンが鮮烈で、音楽と演劇を行き来するこの舞台のように「写真と文章が行き来する本にしたかった」と本書発表時のトークで語っておられたのが印象的でした。貴重な美しい写真とともに、串田氏との出会いなども描かれ、そちらもドラマティックです。死とぎりぎりの息遣いが生の根源を描く「BRETH」池谷氏の写真を最初に観た時の衝撃は忘れられません。水の中のどこまでも静謐な世界。でも、水中では生きられない人間の凄絶さ、死に隣接しながらも、コポコポという呼吸の水泡とともに飛翔する生への希求、剥き出しの人間の根源のようなものが透けて見えて、息苦しくも強烈な解放感に満たされました。それはどこかしびれるような快感でした。撮影現場であるスキューバダイビング訓練用のプールでは、2分間、絶対不動の姿勢がとられていたとか。趣味で世界中の海に潜ってきた池谷氏らしい方法論。撮影に6年間を費やしたという写真集「BRETH」には、水中でも、水なしでも生きられない無防備な人間の姿が、驚くほど清冽に活写されています。生きることを問い直させられる写真集です。写真集を繰ることで訪れることのできる、脳内の旅もすごく楽しいですよ。お気に入りの1冊を見つけて、ぜひ、あなただけの見果てぬ旅に出てみませんか?紹介した写真集・ ドアノーの贈りもの 田舎の結婚式 ・ わたしの上海バンスキング ・ BRETH
2014年08月04日立命館大学は、同大学の文学部教授である北岡明佳のアート作品がレディー・ガガの最新アルバム『アートポップ』の盤面やトレイ下部分に採用されたと発表した。このたび採用された錯視の作品は、2008年に北岡教授が考案した「ガンガゼ」というもの。放射状に描かれたウニのトゲのような静止画で、錯視の効果で浮き出てくるようにガクガクと動いて見えるのが特徴だという。最新アルバム『アートポップ』への作品提供は、同アルバムのアートワークを担当したジェフ・クーンズらから依頼を受け、実現した。北岡教授は「錯視のデザインに注目してもらえて光栄に感じている。錯視はまだあまり知られていない分野。これを機に、錯視の面白さが世界中の多くの人に伝わると嬉しい」と喜びを語っている。
2013年11月07日機械で大量生産されたものではなく、ひとの手によって生み出されたものには、独特の風合いがあり、愛着もいっそうわくもの。そういったものは見るだけで、温かい気持ちになれますね。鹿児島睦さんは、福岡で陶器やファブリック、版画などを中心に制作している作家。動物のオブジェや愛らしいイラストの絵皿など、朗らかな魅力に溢れた作風で知られています。10月12日から10月27日まで青山で開かれる鹿児島さんの展覧会に出かけてみてはいかがでしょうか。今回の展覧会のテーマは、“図案”。鹿児島さんは、サラサラと魔法のように筆をすすめて、器に絵付けし、いつか彼が作り出すであろう道具の“図案”のような、楽しげな風景が思い浮かぶ模様やイラストを描くそう。それは、作品としてコレクションするのではなく、道具として愛着を持ち、日常を楽しんでもらうためのデザインとしての図案です。その“図案”をテーマにしたこの展覧会では、紙や木版などを用いた作品や、会場の壁一面に描かれる壁画などの空間演出で、素材や用途に限定されない、鹿児島睦さん自身の画力から生まれる世界観を味わえそうです。会場には、京都・西陣の唐紙工房「かみ添」とのコラボレーションで生まれた「唐紙摺り」や、色ごとにひと版ひと版、柄をのせてゆく木版プリントなどを展示。唐紙の作品や、 木版プリントで作られた新作のスカーフやハンカチは購入可能なので、そのハンドメイドならではの素朴な風合いを味わって。また、プリントに用いられた木版も展示されるので、工程を想像するのも楽しそう。10月26、27日の二日間は、心がほっとするような素朴で優しさが感じられる、ハンドメイドのうつわたちの展示即売もあります。ぜひ日々の暮らしを温かく彩ってくれるお気に入りのアイテムを見つけたいですね。青山へのお買い物やお散歩の途中に、足を運んでみてはいかがでしょうか。心がほっこりするような時間が過ごせそうです。【展覧会概要】タイトル:MAKOTO KAGOSHIMA EXHIBITION 2013 鹿児島睦の図案展会場:doinel会期:2013年10月12日(土)~2013年10月27日(日) 12:00~20:00 水曜定休・doinel 公式サイト
2013年10月11日「お茶する?」と言えば、カフェなどでコーヒーや紅茶を飲むことさしますが、本来「お茶」と言えば、「茶道」つまり16世紀末に広まった「茶湯」のこと。16世紀には、茶を飲むという行為や茶を点てるプロセス自体を美として捉える「茶湯」が流行、侘び、寂びといった独特の美意識が成立し、お茶を飲むという生活習慣を超えた「芸術としての茶」が完成しました。最近は、和のおけいこごとなども流行りなので、何となく「茶湯」に憧れを感じている人はいるかもしれませんが、いざ経験するとなるとなかなか敷居が高そうに感じるのも事実。一方、現代アートというのも、新しく始まった芸術でありながら、どうやって楽しめばいいんだろうと、疑問に感じている人もいるはず。hpgrp GALLERY TOKYOが、そんな二つの芸術を集めた「茶湯(ちゃのゆ)」と「現代アート」のコラボレーション展、「一品更屋展」を行うそう。本企画を行う一品更屋は、日本独自の総合芸術としての茶湯(ちゃのゆ)を現代的に解釈しなおし、展示会やイベントなどを通して広める「現代茶湯」の活動を行う更屋蔦左衛門さんと尾木原暁子さんによるユニット。最近では、彼らを中心に16世紀の茶湯が持つ革新性を再度見直し、現代美術との対比、融合から新たな日本の美のあり方を探る「現代茶湯」の活動が活発化しているんだそう。「茶湯」も進化しているのですね。本展覧会ではギャラリー自体を「現代の茶室」と見立て、参加作家が手がけた茶道具、中国茶器、ティーセットと現代美術作品を垣根なく混在させ「茶文化とアート」の共通点や差異、接合点などを明らかになるというから、これまでの「茶湯」「現代アート」に対するイメージが変わりそうです。参加作家は、村山まりあさん、宮原夢画さん、川久保ジョイさん、箕浦徹哉さん、井上絵美子さん、秋濱克大さん、大中和典さん、尾崎迅さん、熊谷峻さんら9人。会期中には、彼らによる茶会も開催されるので、現代の生活の中に生きる「茶湯」を体験してみてはいかがでしょうか。新しい発見があるかも。慌ただしい日常生活に追われる中、ほっと一息「お茶」や「アート」と向き合う瞬間があるのはいいものです。「お茶」や「アート」をライフスタイルに取り入れるヒントを見つけに、足を運んでみてはいかが?・一品更屋プロデュース 「一品更屋展」会期:2013 年6月27日 ~7月21日参加作家:村山まりあ、宮原夢画、川久保ジョイ、 箕浦徹哉、井上絵美子、秋濱克大、大中和典、尾崎迅、熊谷峻会場:hpgrp GALLERY TOKYO茶会開催日程:7月7日(土) 小堀芙由子(茶湯) 、13日(土) 松村宗亮(茶湯) 、15日(月/祝) 浦川園実(中国茶) 公式サイト
2013年06月29日星空を見ると、その広大な宇宙に想いを馳せて、ゆったりと大きな気持ちになりますよね。でも、たくさんの人工の光に満ちた日本では、なかなかきれいな夜空は見られません。そこで、世界でも有数の美しい夜空を、東京にいながらにして感じてみてはいかがでしょうか。善き羊飼いの教会(2012年2月)Maki Yanagimachi/Earth&Sky Ltd.そんな満天の夜空を感じられるのは、現在開催中の『星空を世界遺産に~ニュージーランド テカポ展~』。新宿にあるコニカミノルタプラザ(ギャラリーB、C)で行われているこの展示では、ニュージーランド南東部にあるテカポという小さな村の夜空を紹介しています。テカポではいくつかの奇跡的な偶然のおかげで、無数に輝く星を見ることができます。それは、一年中安定した晴天率を誇ること、空気の透明度が高いこと、そして周囲100kmに大きな街がないため人工の光が入ってこないこと。そんなテカポの星空の写真が見られるこの展示。会場に足を運べば、幻想的な星空の写真の数々に、一気に星の瞬く世界へ引き込まれます。天の川の中に光る南十字星や、大小マゼラン雲など、日本では見ることのできない南半球の星空に、きっと興味をそそられるでしょう。ギャラリーBの正面には、壁一面に大きく引き伸ばした巨大な写真がありました。信じられないぐらいの星の数に圧倒されるほど。その前に立てば、まるでテカポの星空の下にいるような気分を味わえます。写真撮影も可能なので、テカポに行った気分で1枚いかが?隣のギャラリーCでは、テカポからリアルタイムで空の模様が届けられています。ニュージーランドとの時差は、+3時間。午後3時ぐらいに足を運べば、だんだん日が沈み、夜空が色づいて、徐々に暗がりになるに連れて星がまたたく様子を楽しむことができるそう。今、この瞬間、遠く離れたテカポの下でこんな空が広がっていると思うと、広い空間を超え、一気に遠くまで連れ去られるような気がします。これはなかなかできない体験。ぜひ実際に味わってみることをオススメします。現地が曇や雨模様のようなときは、保存されている夜空の様子を見せてくれるので、いつでもテカポの美しい空を楽しむことができます。けれども、中にはわざわざ電話で現地の天気を確かめて、足を運ぶ人がいるとか。それも納得できるほどの、すばらしい体験です。このテカポの星空を世界遺産にしようという試みが現在進行中なんだとか。その歩みがパネルで紹介されていました。これまで星空が世界遺産に登録されたことはないだけに、登録されれば地球で唯一の星空の世界遺産となるそうです。こんな美しい星空が世界遺産として大切に残されればステキですね。その素晴らしさは写真でもしっかり感じられるはず。ギャラリーAでも『地球の夜 ~星と空と文化遺産~』が行われており、星空でいっぱいのコニカミノルタプラザに足を運んで、夢のようなひとときを味わってみては?・コニカミノルタプラザ 公式サイト
2013年06月18日化粧品の製造販売を行うネオナチュラルは、水田と稲を使いアートを表現する「田んぼアート田植え体験会」を開催する。開催場所は岐阜県郡山市の同社母袋(もたい)有機農場。日時は5月26日の10時10分から15時30分。なお、荒天の場合は6月2日に延期予定とのこと。同社では、農業経験がほとんどない都市部の人や子供たちに、田植えを経験することで食べ物がどのように生産されるのか、その大切さを楽しみながら学びつつ、農村のエコロジーな生活を体感してもらう目的で体験会を開催する。コシヒカリと古代米(ムラサキ米)を利用し、手植えや機械植えの田んぼアートを経験できるほか、田植機の操縦体験も可能。秋の稲刈りの際にも同様のイベントを行い、参加者には収穫した有機米を配布する予定とのこと。募集は4月15日から、同社のサイトにて行う。参加費は大人1,500円、中学生以下は無料。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2013年04月12日いよいよ3月! 冬の間に知らず知らずのうちに縮こまっていた背筋を伸ばして、春に向けて気持ちも一新させたいところ。春用の新しい服やメイクを用意したら、次は脳内も春仕様にリフレッシュ。でもどうやって?VOCA展2013 VOCA賞 鈴木 紗也香「あの日の眠りは確かに熱を帯びていた」 油彩、アクリル、布、カンバス 「白い糸のような点々はシャンデリア風インテリアをイメージ。赤い壁が手前にあり、その奥に黄色い壁の部屋が描かれています。内から外界だけでなく、いろいろな世界が見えるという思いを表現につなげました」(鈴木紗也香さん)3月中旬頃から順次、桜の開花に合わせて各地で桜まつりが開催されるので、春の空気を感じながらお出かけしてみましょう。桜が全開していてもいなくても、そのときどきのはかない美しさに心が癒されるはず。さらに強力な脳内リフレッシュにおすすめなのが、美術館での現代アート鑑賞です。VOCA展2013 VOCA奨励賞 柴田 麻衣 「Lakeside」 オイルバー、アクリル、パネル 普段はあまりなじみがないかもしれない「現代美術」だけど、凝り固まってしまった脳をほぐして活性化させるためにはうってつけなのです。上野の森美術館では3月15日(金)から3月30日(土)までの16日間、『VOCA展2013 現代美術の展望-新しい平面の作家たち』と題して、現代アートの若手作家の登竜門として著名な美術展が開催されます。VOCA展2013 VOCA奨励賞 平子 雄一 「Lost in Thought」 アクリル、カンバス 「VOCA展」は、現代アートのなかでも特に“平面”の領域で、国際的にも通用するような将来性のある若い作家を支援することを目的に、1994年より毎年開催している美術展で、今年で20周年を迎えます。現在では映画監督としても活躍する蜷川実花さん(2006年大原美術館賞)、CM、広告、衣装、空間デザインと幅広い活動をしているアーティストの清川あさみさん(2010 年佳作賞)など、今をときめく作家たちも過去に出品しています。VOCA展2013 VOCA佳作賞 大崎のぶゆき 「shining mountain/climbing the world#03-01,02,03」液晶ディスプレイ、ビデオ(HD8 分) 選考委員長 高階秀爾さんは、「今回のVOCA 展は、例年以上に充実した内容で見応えのあるものであった。VOCA 賞を得た鈴木紗也香は、屋外、室内、窓、画中画など複雑な空間の重なりを洗練された色彩感覚に基いて自律的画面構成にまとめあげた卓抜な表現力が高い評価を得た。奨励賞の平子雄一は自然をモティーフとした濃密な画面に強い内面感情を表出し、柴田麻衣は幻想的味わいをも湛えた完成度の高い画面を見せた」とコメント。VOCA展2013 VOCA佳作賞 吉田 晋之介 「雨」 油彩、カンバス 今年は桜の開花が例年より少し早めと予測されています。上野恩賜公園で桜の姿や香りや桜まつりの雰囲気を堪能したあと、上野の森美術館で最新の現代アートを鑑賞する。五感を刺激してふだん使わない脳の領域を活性化させ、新年度にふさわしい新しい自分にバージョンアップするのにぴったりの、初春の休日におすすめのお散歩コースです!VOCA展2013 大原美術館賞 佐藤 翠「Reflections of a closet」 アクリル、綿布 お問い合わせ:上野の森美術館 tel.03-3833-4191 公式サイト 【開催概要】 名 称 :「VOCA展2013 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」主 催: 「VOCA展」実行委員会、公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館協 賛 :第一生命保険株式会社会 場: 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)会 期: 2013年3月15日(金)~3月30日(土)(16日間/会期中無休)開館時間: 10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで入 場 料: 一般・大学生:¥500、高校生以下:無料
2013年03月04日