公益財団法人東京二期会と株式会社二期会21は、二期会創立70周年を迎えた本年、これを記念したオペラ・ガラ・コンサートを10月18日(火)に東京文化会館大ホールにて開催する。2020年春から長期化していた新型コロナ・ウイルスによる世界的なパンデミックを乗り越え、“新しい時代に本物のオペラの歌声を届けたい”という想いを込めて、今回のガラ・コンサートの開催を決定した。出演する歌手は、幸田浩子・佐々木典子・田崎尚美・種谷典子・宮地江奈(以上、ソプラノ)、池田香織・加納悦子(以上、メゾソプラノ)、樋口達哉・福井 敬・山本耕平(以上、テノール)、今井俊輔・宮本益光・与那城 敬(以上、バリトン)だ。東京二期会のみならず、日本のオペラ界を率いるスターたち。長きにわたってオペラ界の第一線で輝くベテランから、次代を担う新星まで、幅広い世代の第一線歌手がステージに並ぶ。なお、司会は宮本益光が務める。演奏曲は、二期会の上演史を飾ってきたモーツァルト、ヴェルディ、プッチーニ、ワーグナーなど、大作曲家の名曲ぞろいだ。誰もが知る「誰も寝てはならぬ」(『トゥーランドット』)をはじめ、耳馴染み深いアリアも多く、オペラ・ファン、クラシック音楽ファンだけではなく、オペラ名曲集を生演奏で聴ける機会として、オペラ初心者でも存分に楽しめる豪華なプログラムとなっている。指揮は、セントラル愛知交響楽団常任指揮者、仙台フィルハーモニー管弦楽団指揮者の角田鋼亮。学生時代より音楽スタッフとして東京二期会オペラ公演に貢献し、次代のホープと評される若きマエストロを、指揮者として迎える。管弦楽は、東京交響楽団。数々の東京二期会オペラ公演のほか、二期会創立60周年記念ガラ・コンサート、一昨年のスペシャル・ガラ・コンサート「希望よ、来たれ!」でも共演し、東京二期会と縁の深いオーケストラと今回もタッグを組む。東京二期会、日本を代表するオペラ歌手と若手筆頭株の指揮者、オペラを知り尽くしたオーケストラによる豪華な一夜を満喫しよう。
2022年10月07日古楽器奏者から指揮者に転じた例はアーノンクールやブリュッヘンをはじめ少なくないが、アンドリュー・マンゼのようにバロック・ヴァイオリンから転身後は古楽界と一線を画し、モダン・オーケストラ一筋というのは案外珍しいかもしれない。指揮者として、日本ではNHK交響楽団に2度登場している。そのマンゼが、2014年より首席指揮者を務めるNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団(以下NDRフィル)を率いて、11月に日本ツアーを行う。ハノーファーを本拠とする同団は、1998年から2009年まで大植英次が首席指揮者を務めたことでも知られ、その時以来の来日となる。「NDRフィルは放送局のオーケストラですので、地元での公演はすべてラジオで放送されます。また、ドイツ北部のさまざまな都市でも多くの公演を行っています。フレキシブルなオーケストラで、バロック音楽や映画音楽、ジャズなど幅広いジャンルの音楽を弾き分ける柔軟性を持っています。今回の日本ツアーではベートーヴェンとブラームスという王道的なレパートリーをお届けしますが、こうした慣れ親しんだ曲でも、私たちは毎公演、そのホールに集まってくださる聴衆の方々のために演奏をすることを何よりも大切にしています。私たち自身、聴衆から大きなインスピレーションを受けているのです」メインの演目の一つであるベートーヴェンの《英雄》は、2012年のN響客演の際にも取り上げたマンゼの得意とするレパートリー。「言うまでもなく、《英雄》は西洋音楽の流れを変えた画期的な交響曲です。冒頭の2つの和音は、ベートーヴェンがまるで『私の話を聴け!』と言っているかのようで、そこから驚くべき旅が始まります」また交響曲第7番については「強いリズム感と緊張感が曲全体を貫く、エネルギーそのものが表現されている曲」と彼は語る。モダン楽器を使用しつつ、歴史的奏法を取り入れた溌剌とした演奏が期待できよう。ゲルハルト・オピッツをソリストに迎える2曲のベートーヴェンのピアノ協奏曲については、「まったく性格の異なる曲」と話す。「第4番はピアノとオーケストラの間に交わされる親密な詩のようであり、他方で第5番は壮大な建築物のような曲です。オピッツさんとは初めてご一緒しますが、ドイツの正統的なピアニズムを受け継ぐとても気品のある演奏家だと思います。特に、自己顕示欲とは無縁で、音楽を深く追求するその姿勢には強く共感します。きっと楽器から直接観客に音楽が伝わるような、すばらしい演奏になることと思います」マンゼとNDRフィルにとってもコロナ禍以来初の海外ツアー。10年近くにわたって築き上げてきた信頼関係と、一つひとつの演奏会にかける彼らの強い思いが結実し、各公演とも「一期一会」の音楽体験となるにちがいない。(取材・文/後藤菜穂子)
2022年10月05日10月2日(日)、新国立劇場のオペラ2022/23シーズンがヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》新制作で幕を開けた。2011年にパリ・オペラ座で初演されたロラン・ペリー演出のプロダクション。古楽界の巨匠リナルド・アレッサンドリーニの指揮。見どころも聴きどころも満載だ。チェーザレ(カエサル、シーザー)やクレオパトラら歴史の有名人が登場する物語は、ヘンデルのオペラの中でも人気が高い。ペリーは現代のエジプト博物館の収蔵庫を舞台に、不思議な時空の歪みを作り出した。冒頭いきなり、棚の上の胸像たちが口をパクパクさせて合唱すると、搬入されてきたローマ時代のカエサル像のすぐ横で〝本物〟のチェーザレが歌い始める。紀元前の物語がここで起こっているのだ。映画で言えば『戦国自衛隊』を逆パターン(過去から現代へ)にして『ナイト ミュージアム』とミックスしたような設定。喜劇的な要素も多い台本とあって、演出は遊び心たっぷり。博物館の収蔵品にヘンデルの肖像画が混ざっていたり、クレオパトラと弟トローメオ(プトレマイオス14世)が運動会よろしく騎馬戦で戦ったり。随所でくすりと笑わせる。クレオパトラの腹心ニレーノの〝エジプト・ポーズ〟も、一度ツボにはまるとクセになる。アレッサンドリーニの、切れよく、鮮やかに変化する音楽で、4時間半の長丁場も短く感じる。パリでのこのプロダクション初演は古楽オーケストラによる演奏だったが、今回は東京フィル。モダン・ピッチで弦はノンヴィブラート。チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボの通奏低音チームが加わって「バロック感」をぐっと引き寄せる。26曲もあるアリアはすべてダ・カーポ・アリア(他にアリオーソが3曲)。ABAと繰り返す時の自由な装飾や変奏が聴きどころだ。歌手たちはそれを嬉々として巧みに歌い、「なるほど、そう来るか!」と、いろんな引き出しで楽しませる。アレッサンドリーニの存在も頼もしかったに違いない。歌手陣の水準はきわめて高い。カストラートのために書かれた役を女声とカウンターテナーに置き換えた、オリジナルに忠実な声部構成。題名役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドは将軍らしい凛々しいメゾソプラノ。妖艶なクレオパトラは「バロック大好き」という森谷真里。クレオパトラの心の変化を巧みに描いていく。終幕の二人の、ヴィブラートをコントロールしてずっとハモリっぱなしの二重唱にも舌を巻いた。金子美香のセストも秀逸。バイロイトでワーグナーを歌い、アレッサンドリーニでヘンデルを歌う。彼女だけでなく、古楽とモダンそれぞれの様式を軽やかに行き来できる歌手たちが揃った。コロナが感染拡大し始めた2020年4月に一度断念した公演。舞台からは念願の上演への熱も伝わってくる気がした。新国立劇場の《ジュリオ・チェーザレ》は、このあと10月5日(水)、8日(土)、10日(月祝)の残り3公演。(宮本明)
2022年10月05日ローランド株式会社は、スリムなデザインで部屋に調和するスタイリッシュなデジタルピアノ『F107』と、クラシックなピアノらしいデザインで、これからピアノを始める方にぴったりのデジタルピアノ『RP107』を、2022年10月28日(金)に発売します。■ここがポイント●上位モデルと同等の本格的な音源や鍵盤、Bluetooth(R)機能を備えながら、お手頃な価格のデジタルピアノ●スリムでスタイリッシュな『F107』と、クラシックなピアノらしい佇まいの『RP107』。選べる2つのデザイン●スマートフォンやタブレットとBluetooth(R)接続して、よりピアノを楽しめるオリジナルの無料アプリにも対応品名:デジタルピアノ『F107』価格:オープン価格発売日:2022年10月28日(金)初年度販売予定台数(国内/海外計):15,000台品名:デジタルピアノ『RP107』価格:オープン価格発売日:2022年10月28日(金)初年度販売予定台数(国内/海外計):20,000台(画像はプレスリリースより)【参考】※製品の詳細はこちら:『F107』『RP107』
2022年10月03日21世紀の今、西洋モダンオーケストラは世界で最も普遍的な「楽器」のひとつであることは、否定しようがない事実だ。とりわけ東アジア地域では、ことによると各地の民族伝統楽器よりも遙かにポピュラーなメディアかも。3年ぶりに海外オーケストラを招き開催されるアジアオーケストラウィーク2022の開幕を飾るのは、アジアにオーケストラ音楽の基礎を築いたフィリピンの団体だ。日本にも西洋音楽がもたらされた戦国時代頃にスペイン植民地となり、カトリック教文化が5世紀にわたり根付いた南の島々には、世紀単位の西洋音楽文化の積み上げがある。結果としてフィリピンはアジア地域に於ける西洋音楽演奏の最先端地域であり続け、アジア各地に多くの音楽家を出してきた。余り知られない事実かもしれないが、例えば「アジアで最も古いオーケストラ」とされる上海交響楽団の前身もフィリピン人バンドなのである。西洋音楽を文字通り血肉としてきたそんな国にあって、アメリカ統治下の1926年に設立されたマニラ交響楽団は現存する最古のオーケストラの一つだ。祭りの開幕に老舗が披露するのは、フィリピンの山田耕筰かはたまた古関裕而か、と称すべき国民的作曲家ルシオ・サン・ペドロの交響詩。盛期ロマン派の手法を用い、独立に至る歴史をコンパクトに描いたフィリピン版ミニ《我が祖国》である。そしてザルツブルクで学ぶマニラ生まれの15歳の天才チェリストの弾くエルガーは、この国の音楽文化の層の厚みをあらためて感じさせてくれるだろう。フィリピンから北上した沖縄にも、独自の魅力的な音楽文化が存在する。2000年に地元音楽家を中心に結成され、創設以来大友直人が率いる琉球交響楽団は、音楽的な成果を着実に上げている注目株だ。地域に密着した音楽のあり方を真剣に実践し、創作ばかりかホール運営でも先駆的活動を行った作曲家中村透の沖縄伝統楽器と西洋オーケストラのコラボ作品は、この団体の他には実質演奏不可能な本場モノ、聞き逃せない貴重な機会だ。トリを務めるのは、更に北上した朝鮮半島から「ソウルのN響」たるKBS交響楽団。世界に向け著名ソリストを排出する韓国音楽界の地力が、20世紀後半を代表する作曲家ユン・イサンの重厚深遠な交響曲第2番の楽譜に炸裂する。(音楽ジャーナリスト渡辺和)■アジア オーケストラ ウィーク 202210月5日(水) マニラ交響楽団10月6日(木) 琉球交響楽団10月7日(金) KBS交響楽団
2022年09月22日ミニマル・ミュージックの金字塔として伝説的に語られるフィリップ・グラスの『浜辺のアインシュタイン』が10月30日(日)、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで上演される。フィリップ・グラス「浜辺のアインシュタイン」(演奏会形式・抜粋版) チケット情報この『浜辺のアインシュタイン』という奇妙なタイトルの作品は、1976年、気鋭の演出家であったロバート・ウィルソンと作曲家のフィリップ・グラスにより、フランスのアヴィニョン演劇祭で初演されたオペラ作品である。当時、時代を象徴する存在であった科学者のアインシュタインをイメージした作品、とされるが、アインシュタイン自身も浜辺も作中には登場しない。明確な物語はなく、繰り返される歌唱と抽象化されたパフォーマンスが観るものを独特の酩酊感へと誘う、前衛的な表現に満ちたオペラである。日本初演は1992年10月。今年10月8日・9日には、神奈川県民ホールで一部の繰り返しを省略した4時間に及ぶオリジナル・バージョンが上演されるが、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールでは演奏会形式・抜粋版と銘打ち、よりグラスの音楽に特化した上演を行う。ここでグラスが創造した音楽は極度に切り詰められた音型の繰り返しや、無機質で早口な合唱など、従来のオペラの文法からまったくかけ離れたものである。背景を覆う電子オルガンの響きの中に、電子的に調整されたヴァイオリン、サクソフォン、フルートなどの音が重ねられていく色彩感は、むしろ現代のロックやテクノなど、ポピュラー音楽への広がりなども示すものかも知れない。今回、音楽監督を務めるのは電子オルガンも担当する中川賢一。以下、電子音響の有馬純寿をはじめとする13人が演奏と歌唱に臨む。『浜辺のアインシュタイン』の音楽について中川は「70年代の熱気をはらんだ、いわゆるグルーヴ感を持ったバンドサウンドのスタイル。今の時代のロックやクラブ系のコンサートの感覚で聴いても十分に刺激的」と語る。デジタルな音響が溢れる2020年代をすでに半世紀近く前に予見していたかのようなグラスの先進性は、この秋、新鮮な音楽体験となって私たちを揺さぶるに違いない。チケットは発売中。取材・文:逢坂聖也
2022年09月22日人気ピアニスト及川浩治の秋のリサイタルは、4回目となる「名曲の花束」だ[10月10日(月・祝)サントリーホール大ホール]。「ロマン派」をテーマにしたプログラムについて聞いた。「名曲の花束は、みなさんにピアノ曲というジャンルを超えた名曲の数々を聴いていただこうというシリーズです。タイトルを見たことがなくても、メロディを聴けばわかるような曲が入っているプログラム。今回は、同時代に活躍したシューマン、ショパン、リスト、メンデルスゾーンに、シューベルトを加えた初期ロマン派。そしてリストが高く評価した、娘婿でもあるワーグナー。そんな作曲家のつながりのあるプログラムです」プログラムは以下のとおり。●シューマン:トロイメライ●ショパン:ロマンス(ピアノ協奏曲第1番より第2楽章)●シューマン(リスト編):献呈/春の夜●リスト:荒野の狩/愛の夢第3番/死の舞踏●メンデルスゾーン(リスト編):歌の翼に●シューベルト(リスト編):魔王/アヴェ・マリア●リスト:ラ・カンパネラ●ワーグナー(リスト編):タンホイザー序曲「歌曲の編曲作品が多いんですね。シューマン/リスト編の〈献呈〉〈春の夜〉〈愛の夢〉〈歌の翼に〉〈魔王〉〈アヴェ・マリア〉。僕はもともと、ピアノは歌う楽器だと思っているんです。鍵盤を叩いたあとは音が減衰していくというピアノの弱点を乗り越えて、いかに歌わせることができるか。若い頃からそれをずっと模索してきました。歌が好きなんです。リストが編曲してくれてありがとう(笑)。編曲したということは、当時から広く愛されていた歌だったという証ですよね。じつは編曲ものは難しくて、自分にとってのチャレンジにもなります。たとえば〈アヴェ・マリア〉。有名なメロディなので簡単そうに聴こえるかもしれませんけれども、左手と右手の真ん中にメロディが書いてあるような編曲で、それを歌に聴こえるように弾くのはなかなか至難の業なんですよ」歌曲以外では、〈トロイメライ〉や〈ラ・カンパネラ〉などのピアノ曲はもちろん、協奏曲や〈死の舞踏〉などオーケストラ曲の作品も並ぶ。まさにジャンルを超えた、ピアノ1台によるガラ・コンサートのような選曲が楽しい。プログラムの最後に〈タンホイザー序曲〉を置いたのには理由がある。「なぜ最後に“序曲”を弾くのか。いま、コロナや戦争や、いろいろなことが起きていて、夢や希望を持っていないと、なかなかしんどい世の中です。ただ、残念ながら人間の歴史は疫病や戦争の歴史でもあります。その中で生まれてきたクラシック音楽には、苦しみを共有し、人を癒やす力があると思うのです。コンサートでそんな音楽に浸っていただいたあとは、それがこれからのみなさんの人生の序曲・序章になれば、という気持ちです。勇気や元気を感じていただければと思います」(宮本明)
2022年09月21日ディズニー・アニメーションや音楽、テーマパークの音楽をスクリーンに映し出される映像とともにオーケストラと歌のパフォーマンスで届ける「ディズニー・オン・クラシック~まほうの夜の音楽会2022」が9月10日より、全国37都市54公演開催される。9月8日に、オープニング公演となるJ:COMホール八王子にて公開リハーサルが行われた。オープニングは、今年20周年のアニバーサリーを迎える「ディズニー・オン・クラシック」のこれまでの歴史がスクリーンに映し出されるなか、東京ディズニーランド(R)「ディズニー・ファンティリュージョン!」より“フェアリー・ガーデン”で幕開け。3年ぶりとなる指揮者リチャード・カーシーが登場し、久々の来日を喜ぶと、「ディズニー・オン・クラシック」に出演経験がある5名と初出演の3名からなる計8名のヴォーカリストたちの歌声がコンサートを彩る。目玉となるのが、「20th セレブレーション・ルーレット」。アニメーションや実写映画から思い出が蘇る3曲がノミネートされている「プロデューサーズ・チョイス」と、ゲストからのリクエストが多かったテーマパークの楽曲から4曲がノミネートされている「パーク・セレクション」のなかから、リチャードがスイッチを押し、その場で演奏する曲が決まるというもの。「プロデューサーズ・チョイス」からは「フライ・トゥ・ユア・ハート/『ティンカー・ベル』」、「愛の導き/『ライオン・キング2 シンバズ・プライド』」、「みんなスター!/『ハイスクール・ミュージカル』」の3曲が、「パーク・セレクション」からは、「東京ディズニーランド キャッスルプロジェクション『ワンス・アポン・ア・タイム』(エディット・バージョン)」、「東京ディズニーシー『ファンタズミック!』より”イマジネーション”」、「東京ディズニーシー『レジェンド・オブ・ミシカ』より”レジェンド・オブ・ミシカ第6章フィール・ザ・ラブ”」、「東京ディズニーシー『ミステリアス・マスカレード』(エディット・バージョン)」の4曲がノミネートされている。この日は、ルーレットの結果、「みんなスター!/『ハイスクール・ミュージカル』」と「東京ディズニーシー『レジェンド・オブ・ミシカ』より”レジェンド・オブ・ミシカ第6章フィール・ザ・ラブ”」が演奏された。その後も、ゲストからのリクエストが多かった楽曲やオーケストラを堪能できる『メリー・ポピンズ』組曲など、納得のナンバーが続き第1部が終了した。休憩を挟んだ第2部は、公演日によって異なるふたつのメイン演目『塔の上のラプンツェル』か『ノートルダムの鐘』のどちらかが楽しめる。この日上演されたのは『ノートルダムの鐘』。スクリーンに映し出されるアニメーションと共に、カジモドやエスメラルダら登場人物たちのセリフや心情に合わせた楽曲が大迫力で届けられ、物語に没入すること必至だ。大興奮の演目が終了すると、アンコールでは名曲「星に願いを」をヴォーカリスト全員で歌い上げるなど、大満足の公演だった。「ディズニー・オン・クラシック~まほうの夜の音楽会2022」9月10日(土)~12月25日(日)取材・文:磯部正和■チケット情報
2022年09月14日1952年創立。今年70周年の東京二期会の秋からの新シーズンがプッチーニ《蝶々夫人》で幕を開ける。初日を2日後に控えた9月6日(火)のゲネプロ(最終の通しリハーサル)を取材した。栗山昌良演出の美しい舞台。幾度も再演を重ねている定評あるプロダクションは、二期会の大切な財産だ。96歳のレジェンドは、この再演でも直接指導に当たったという。しだれ桜や、背景画の役割も果たす金屏風。障子越しのやわらかな光。そして着物姿の歌手たちの細部まで練り込まれた所作や間。伝統的な日本の美がプッチーニの音楽と絶妙に結合している。そのプッチーニを鮮やかに描き出すのが指揮者アンドレア・バッティストーニだ。オペラ界のトップ指揮者として世界を駆け巡る現代の巨匠。キレキレの序奏からいきなりドラマに引き込まれる。よく歌う甘い旋律。終幕へ向かってどんどん切羽詰まっていく緊張感も緩みなく伝わってくる。それに応える歌手陣の水準は高い。この日は公演初日&3日目の出演陣によるゲネプロで、蝶々さん役(ソプラノ)は同役でゆるぎない高評価を得ている大村博美。ピンカートンの愛を信じ続ける強さから、裏切られた絶望と慟哭まで、声の表情で見事に表現する。ピンカートン役(テノール)は宮里直樹。深く考えずに現地妻を娶る第1幕の軽薄さと、第3幕で自らの犯した罪に後悔するさまを、こちらも巧みに歌い分けた。山下牧子が演じるスズキ役(メゾ・ソプラノ)の存在感もすごい。一方、公演2日目&4日目にも、日本を代表する蝶々さん役の一人である木下美穂子が出演。こちらも役と一体化した声の演技を聴かせてくれるはず。ピンカートンは城宏憲。彼も宮里も現在の日本のテノール界を牽引する中堅世代の旗手だが、声のキャラクターや歌のスタイルは異なるので、その違いを聴き比べるのも面白そうだ。二期会《蝶々夫人》は9月8日(木)9日(金)10日(土)11日(日)の全4公演。新国立劇場オペラパレスで。上演時間は第1幕後の休憩1回を含めて約2時間50分。*******なお、この日のゲネプロ前に記者会見があり、早くも2023/2024シーズンの公演ラインアップが以下のように発表された(演目名の後の※印は新制作上演)。[2023年10月]ヴェルディ《ドン・カルロ》※(イタリア語・全5幕版)アンドレア・バッティストーニ指揮/ロッテ・デ・ベア演出[2023年11月]ヘンツェ《午後の曳航》※アレホ・ペレス指揮/宮本亜門演出[2024年2月]ワーグナー《タンホイザー》アクセル・コーバー指揮/キース・ウォーナー演出[2024年5月]ヘンデル《デイダミア》※(二期会ニューウェーブ・オペラ劇場)鈴木秀美指揮/中村蓉演出[2024年7月]プッチーニ《蝶々夫人》 ダン・エッティンガー指揮/宮本亜門演出「新しいことを次々と 東京二期会」をスローガンに、創立100年を目指しての新たな一歩を踏み出す。(宮本明)
2022年09月08日≪TOKYO WIND SPECIAL 「東京佼成」&「シエナ」夢の競演!≫出演に際して~シエナ・ウインド・オーケストラのコンサートマスター・佐藤拓馬さんのコメント~10月1日(土)に東京文化会館大ホールで開催される、『TOKYO WIND SPECIAL 「東京佼成」&「シエナ」夢の競演!~リクエスト曲をド迫力の合同演奏で楽しむ特別な1日~』。今回が初開催となる同公演は、日本の吹奏楽団を代表する東京佼成ウインドオーケストラとシエナ・ウインド・オーケストラが同じステージで演奏するという、なんとも夢のような企画です。さらに演奏曲目は、公式サイトでの人気投票によって決まるところも魅力のひとつで、吹奏楽ファンにとっては必見の公演となること間違いなし! この度、シエナのコンサートマスターである佐藤拓馬さんに、出演にあたっての思い、そして選曲のポイントなどを伺いました。−−最近のシエナの活動のなかで力を入れていらっしゃることはありますか?コロナ禍で苦しい時期が続いていますが、以前から当団が進めている提携事業を積極的に継続しています。現在、文京区、文京シビックホール、尚美学園、上越教育大学、上越文化会館、名古屋音楽大学、富士市、富士ロゼシアターの8カ所と提携を結び、それぞれの地域に寄り添ったユニークな活動を展開しています。来年度には、さらにもう1カ所増える予定です。−−TWSの企画の話を聞いた時、どのようにお感じになりましたか?実は2020年にお互いの周年事業として合同のコンサートを企画していたのですが、残念ながらコロナの影響により実現しませんでした。今回は、そのリベンジとは言いませんが、ようやく一緒に演奏できるなという気持ちで、心が躍りましたね。−−今回、約20曲に及ぶリクエスト曲を選定するにあたっての、ポイントを教えてください。これまでリリースしてきたCDやDVDに収録した曲のほかに、コンサートで何度も取り上げてきた曲を中心に選びました。−−ズバリ、1位はどの曲だと思いますか?《アルメニアン・ダンス パートⅠ》ではないでしょうか。−−当日は大編成で演奏していただけるとのことですが、その魅力とは? また、合同ステージでお客様に特に注目していただきたいところはありますか?シエナサウンドによる吹奏楽オリジナル曲の響きを、たっぷりご堪能いただけると思います! また、合同ステージでは双方の団員たちが楽しんでいる様子をご覧になりながら、大迫力の演奏をお楽しみください。−−最後に、来場されるお客様へメッセージをお願いします!このような機会は滅多にないチャンスです! どうぞ、思う存分一緒に音楽を楽しみましょう! 会場でお待ちしています!(文・北山奏子)
2022年09月06日世界的ジャズ・ピアニスト、小曽根真とバロック音楽の旗手、鈴木優人。2人が初共演を果たすコンサート「小曽根真×鈴木優人×大阪フィルひかれあうジャズと古典-2台ピアノの午後」が9月17日(土)、大阪のフェスティバルホールで開催される。ライブ感に溢れる瑞々しい演奏で多くの指揮者、オーケストラと共演を重ね、今やクラシック界からもラブコールの絶えない小曽根。豊かな音楽語法を背景に指揮、鍵盤楽器演奏はもとより作曲や舞台演出など、縦横無尽の活躍を続ける鈴木。ともにボーダーレスな2つの才能が大阪フィルとともに繰り広げる、新鮮な魅力に満ちたステージだ。「小曽根真×鈴木優人×大阪フィル ひかれあうジャズと古典―2台ピアノの午後」チケット情報「鈴木さんはすごく音楽的な視野の広い人。先日、2人で初めてピアノを合わせたんですが、僕がブルースについて説明すると彼はごく自然にそれを自分の言語のように音にすることができるんです。こういう柔軟さは音楽家にとってとても大事なことで、鈴木さんは根本にバロックという確固たるものを持ちながら異なったジャンルの音楽に踏み出すことも恐れない。素晴らしい演奏家と出会えたなと思っています」。そう語るのは公演に先駆けて大阪を訪れた小曽根真。「2人でモーツァルトを弾いていると、どんどん新しいアイデアが生まれてくる。本番が楽しみ」と続ける。コンサートでは全曲を鈴木優人が指揮。小曽根がソロを務めるラヴェルの『ピアノ協奏曲』に始まり、モーツァルトの『2台のピアノのための協奏曲』では2人の才気が際立つ音の対話と、鈴木優人の弾き振りが楽しめる。そして後半に置かれたムソルグスキー(ラヴェル編曲)の『展覧会の絵』では鈴木&大阪フィルの魅力が存分に味わえるという構成だ。自在な才能と渡り合う色彩感豊かな“大フィルサウンド”も聴き逃せない。「ラヴェルの『ピアノ協奏曲』はこれ自体ジャズのテイストも感じさせる作品ですが、今回、僕はあえて自分の中のジャズを強調せず、楽譜通りのアプローチで臨むつもりです。そこから浮かび上がってくるものこそ僕の個性であり、クラシック音楽の魅力だと考えているから。でもそれとは対照的に、『2台のピアノのための協奏曲』では鈴木さんと2人で思いっきり自由にやろうと思っています。ちょっと他では聴けないような、わくわくするようなモーツァルトをお届けしたいですね」。すでに十分な手応えをうかがわせながら、小曽根真はそのように語った。チケットは発売中。
2022年09月05日ブレゲ(Breguet)は、2022年新作レディース腕時計「クラシック 8068」を発売。ストラップを付け替えて楽しむ新作「クラシック 8068」ブレゲの洗練されたデザインを代表する腕時計「クラシック」に、ストラップを簡単に付け替えられる新作レディースモデル「クラシック 8068」が新たに仲間入り。工具を使わず、ストラップ裏面のプッシャーを押すだけでストラップを取り外すことができるため、気分や着こなしに合わせて様々なスタイルを気軽に楽しめるのが魅力だ。色鮮やかなアリゲーターストラップが付属それぞれのモデルには、サテン風仕上げのシックなブラックのストラップに加え、2色のアリゲーターストラップを付属。ホワイトゴールド・モデルにはティールブルーとビザンティンパープル、ローズゴールド・モデルにはピーコックブルーとラズベリーピンクのアリゲーターストラップがセットになっており、鮮やかな色彩とのフレッシュな組み合わせを楽しむことができる。繊細なギヨシェ彫りダイヤル&ダイヤモンドのリュウズ加えて、モダンで洗練された雰囲気の“ニュールック”デザインにも注目だ。元々はブルーサファイアがあしらわれていたリュウズには、カボションカットのダイヤモンドをあしらい澄んだ輝きをプラス。艶やかな光沢感のマザーオブパールダイヤルには、職人が手作業で施した繊細なギヨシェ彫りの装飾があしらわれている。また、ブレゲ特有のアラビア数字のインデックスや、12時位置に配された楕円モチーフのブランドロゴも印象的だ。自動巻きムーブメント「キャリバー537/3」「クラシック 8068」を駆動する自動巻きムーブメントは、191個の部品から成る「キャリバー537/3」。プラチナ製のローターには、バーリーコーン模様のギヨシェ彫りが手作業で施されている。ケース裏面からは、サファイア・ケースバックを通じて、様々な部品に施された面取りやコート・ド・ジュネーブ模様といった、ブレゲならではの繊細な仕上げを眺めることができる。【詳細】ブレゲ「クラシック 8068」発売日:2022年8月25日(木)※入荷状況に関しては、要問い合わせ。販売店舗:直営ブレゲブティック(銀座、阪急うめだ本店、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店)、全国正規代理店・18K ホワイトゴールド 3,553,000円・18K ローズゴールド 3,553,000円■仕様ケース: 18K ホワイトゴールド、または18K ローズゴールドケース径:30mmケース厚:7.7mmダイヤル:マザーオブパール、手彫りギヨシェ模様ムーブメント:自動巻機能:時、分、秒ひげゼンマイ:シリコン製ひらひげ脱進機:シリコン製インラインレバー脱進機防水:3気圧 (30m)キャリバー:537/3振動数:3.5 Hz(毎時25.200振動)パワーリザーブ:45時間部品数:191ストラップ:ブラックのサテン風仕上げファブリック製ストラップ、カラーアリゲーターストラップ 2本付き【問い合わせ先】ブレゲブティック銀座TEL:03-6254-7211住所:東京都中央区銀座 7-9-18 ニコラス・G・ハイエックセンター3階
2022年09月03日ピアニスト横山幸雄が2013年にスタートした「ベートーヴェン・プラス」のシリーズ8回目[9月18日(日)東京オペラシティコンサートホール]。ベートーヴェンを軸に、他の作曲家とのさまざまな接点を探る旅だ。午前中から夕方まで続くボリュームたっぷりのコンサート。今回は「変奏曲」をテーマに弾く。「ベートーヴェンのソナタをおおむね時系列に並べて弾いてきました。前回で全32曲を弾き終えて、でもまだ《ディアベリ変奏曲》が残っている。それで今回は変奏曲がテーマというわけです」《ディアベリ変奏曲》とJ.S.バッハの《ゴルトベルク変奏曲》を軸に、ベートーヴェンからは《エロイカ変奏曲》や、ソナタの中に変奏の楽章を持つ第23番《熱情》と第32番、さらにハイドンとモーツァルトの変奏曲を一挙に弾く。「《ディアベリ》と《ゴルトベルク》を組み合わせるのは、プログラムとしてはとてもきれいなのですが、とてつもなく大変で、発表するのをためらったぐらいです」《ディアベリ》と《ゴルトベルク》は変奏曲の歴史の金字塔。そこに《エロイカ変奏曲》も加えて変遷を語る。「《ゴルトベルク》は、バロックの時代にバッハが一人でやり遂げてしまった、芸術的な変奏曲の完成品なんですね。彼の前後にそういう作品はなく、ハイドンやモーツァルトの時代には、即興演奏の一つとして変奏が存在していた。若い頃のベートーヴェンもそういう変奏曲をたくさん作っていますが、ソナタのような真剣勝負の芸術作品としては捉えていなかった。それが《エロイカ変奏曲》で芸術作品としての変奏曲の可能性を切り開いたんです。ベートーヴェンのエネルギーが変奏曲の世界を大きく広げた。そしてあまりにも巨大な《ディアベリ》に到達する。そんな歴史がわかる、非常に良いプログラムだとは思うのですが、弾くのがめちゃくちゃ大変(笑)。これまでのシリーズの中で、間違いなく最も過酷なプログラムです」当初は作曲家生誕250年の2020年で完結予定だったシリーズ。ソナタもディアベリも弾き終え、もしかしてこれで終了?「そういうつもりではないです。終わりにしなくちゃいけない理由もない。ベートーヴェンと何かを関係づける形を見いだしながら、しばらく続けていきたいと思っています」となればゴールは没後200年の2027年か。ともあれ、横山幸雄とともに辿る「ベートーヴェン+音楽史」の旅はまだまだ続く。ご安心を。(宮本明)
2022年08月24日NHK Eテレの音楽番組「ららら♪クラシック」(2012年4月~2021年3月)のわかりやすさと楽しさはそのままに、司会の高橋克典による案内のもと、一流音楽家の生演奏を体感できる「ららら♪クラシックコンサート」。今回は「クラシック界 期待のヴィルトゥオーソ~国際コンクールの受賞者たち~」と題し、ワールドワイドに活躍する日本の若手演奏家6名による贅沢な競演をお聴きいただけます。出演者のひとり、2015年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクールにて第3位(1位なし)、最優秀リサイタル賞、最優秀新曲演奏賞を受賞した日本の若手を代表するピアニスト、實川風(じつかわ かおる)さんにお話を伺いました。――今回演奏されるチャイコフスキーの『ドゥムカ』とは、ずいぶん長い付き合いなのだとか。中学3年生の時に先生が勧めてくれたのがきっかけで弾くようになりました。――ロン・ティボーでもプログラムに入れておられましたが、どんな曲なのでしょうか?この曲のドゥムカは「哀歌」という意味なのですが、さらにサブタイトルに「ロシアの農村風景」とあります。僕のイメージでは厳しい冬の農村から物語が始まります。極寒の季節に家の中でウオッカを飲むおじさんの歌……悲しさや、やるせなさがそこはかとなく広がっていきます。中間部はテンポを上げて、お酒の力で元気になった人々が無骨なダンスを踊り始める。そんなシーンに続いて猛吹雪が吹いてきたり、さまざまな情景が目の前に広がっていきます。オペラやバレエ音楽を切り取ったような世界が、8分くらいの間に次々と展開していく。コンクールだったりコンサートだったり、演奏するたびに新しい風景が見える曲です。――ピアノの魅力について教えてください。一人で、同時に色々な音楽の要素を表現できるところでしょうか。メロディーを弾きつつベースのラインも作り、内声のタイミングや呼吸もコントロールしながら、一人で音楽の世界を描き出せるのが魅力ですね。反面、そこがこの楽器の難しいところでもあるのですが……。僕はオーケストラが好きなので、一人ではできないことへの憧れがあるのですが、ピアノソロの素晴らしさは「この人はどういう人で何をしてくれるのか」という、“ピアニスト一人だからこそ到達できる音の世界”にあると思います。――本公演への思いをお聞かせください。やはり生のコンサートで、自分が思い入れを強く持っている曲を会場全体と共有できる時間は特別です。お客様とひとつの空間で音楽の持つ可能性を体験できたら、ということをいつも心がけています。作曲家の音符を理屈だけではなく、“ひとつの体験”として全身が満たされるような時間にできたら理想ではないかなと思っています。(文・坂井孝著)
2022年08月23日仲道郁代のライフワークであるベートーヴェン。その解釈と演奏はますます独自の深みを増している。作曲家没後200年の2027年に向けての横浜みなとみらいホールでの「ピアノ・ソナタ全曲演奏会」は、全32曲を4期(8回)に分けて弾き切るシリーズ。第II期の第3回[12月3日(土)]と第4回[2023年4月8日(土)]について聞いた。番号順に、つまりおおむね成立年代順に弾いていくのではなく、今回の全曲シリーズでは各回ごとにテーマを設け、さまざまな切り口でプログラムを組んだ。「ベートーヴェンの思考のかけらが、時を経て、さまざまな作品に現れる。その共通点をみなさまとともに感じることができればと思っています」全体のラインナップを見て気づくのは、何度か同じ曲を演奏すること。第II期で言えば、12月の第17番《テンペスト》や第23番《熱情》、4月の第8番《悲愴》は、他の回でも演奏する。「32曲のソナタの中にある、ベートーヴェンのいくつもの顔を浮き彫りにするためです。同じ曲でも切り取り方によって私の捉え方も変わると思いますし、お聴きになった印象も変わるのではないかと思います。ベートーヴェンの音楽はそれぐらい豊かな表情を内包している。一面だけの音楽ではないのですね」第3回は「テンペスト~飛翔する幻想」をテーマに、第6番、第17番《テンペスト》、第23番《熱情》、第22番、第28番を弾く。「第28番は、ロマン派の幻想曲の大もとになっている形式です。それだけではなくて、同時期の連作歌曲集《遥かなる恋人に》に込めた思い、ものすごくロマンティックな想念がこの中にもあるんですね。《テンペスト》のストーリー性、《熱情》の幻想的な情熱、第6番の演劇的なコメディのようなやりとりの気配。〝幻想〟がさまざまな形で飛翔しているというのがこのプログラムです」第4回「悲愴~はるかなる憧れ」は第3番、第18番、第8番《悲愴》、《エリーゼのために》、第31番。「悲愴と憧れという、相反する言葉ですが、《悲愴》の持つ、辛さ、悲しみの先に、前へと進もうとするエネルギーを捉えることができるプログラムです」第4回の公演前には、仲道が所有するベートーヴェン時代のピアノを弾きながらのプレトーク&コンサートも。(レプリカでなく)1816年製のオリジナルのブロードウッド。これは2公演セット券購入者限定の特典だ。見逃せない。(宮本明)
2022年08月21日リーボック(Reebok)は、新作のユニセックススニーカー「クラシック レザー メイク イット ユアーズ(Classic Leather Make It Yours)」を、2022年8月19日(金)にリーボックストア 渋谷などにて販売する。リーボック「クラシックレザー」に新作モデル新作スニーカー「クラシック レザー メイク イット ユアーズ」は、1980年代に登場した、リーボックを代表するランニングモデル「クラシックレザー」をベースに採用。オリジナルのヘリテージを受け継ぎながら、新しいデザインや素材、大胆なカラーリングでアップデートした。「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”シフト”」ラインナップするのは、「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”シフト”」と「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”オージー”」の2型。「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”シフト”」は、アッパーサイドに2本のステッチを施したデザインが魅力だ。「クラシック レザー」を象徴するクロスチェックとサイドストライプもアップデートし、新たなスタイルを完成させた。カラーは、大胆なブルー×レッドに加え、ベーシックなブラック、ホワイト、グレー、ウィメンズ用のキュートなピンク×ホワイトの5色を展開する。「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”オージー”」一方「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”オージー”」は、アッパーに上品なスエードと涼し気なメッシュを採用し、新たな表情に。クラシックなレッド、ブルー、ホワイトの配色で、リーボックのDNAを感じさせる1足となっている。【詳細】リーボック「クラシック レザー メイク イット ユアーズ」発売日:2022年8月19日(金)取扱店舗:リーボックストア 渋谷、リーボック フィットハブ(ららぽーと EXPOCITY、博多キャナルシティオーパ)、リーボック クラシックストア(原宿、HEP FIVE、あべの HOOP、立川立飛、横浜ビブレ、名古屋みなとアクルス)、ABC-MART GRAND STAGE 各店、リーボック オンラインショップ、ZOZOTOWN、Rakuten、Rakuten Fashion、PayPay モール(Yahoo!)、Locondo、Magaseek※店舗によって取り扱い品番、サイズが異なる。アイテム:「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”シフト”」11,000円カラー:ブルー×レッド、ブラック、ホワイト、グレー、ピンク×ホワイト<ウィメンズ>サイズ:22.5~30.0cm ※29.5cmは展開なし※ピンク×ホワイトは、22.0~26.0cm「クラシック レザー メイク イット ユアーズ”オージー”」11,000円カラー:ブルー×レッド×ホワイトサイズ:22.5~30.0cm ※29.5cmは展開なし【問い合わせ先】リーボック アディダスお客様窓口TEL:0570-033-033(電話受付 平日9:30~18:00)
2022年08月21日森麻季は、日本を代表するスター・ソプラノだ。透明感あふれる美声と端麗な容姿で圧倒的な人気を誇る。その森麻季が企画し、今年で12回を数える人気のコンサートシリーズが「愛と平和への祈りを込めて」。きっかけは9.11や東日本大震災だった。「9.11や3.11に衝撃を受け、同時に『音楽の力』に気付きました、それで、音楽をだけでなくメッセージを届けるコンサートをやりたいと思ったのです。今もコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などいろんな出来事が起こって、皆さん先が見えない不安を抱えている。そんな時代に音楽によって悲しみや苦しみが浄化され、ホッとする時間を持っていただけたらと願って始めました」。今回は、世界的なハーピストのグサヴィエ・ド・メストレを共演者に迎える豪華版。オペラアリアから日本歌曲、ハープ独奏まで多彩なプログラムだ。「独奏ハープとコンサートをやるのは初めてです。メストレさんはオペラも大好きで、曲をハープに起こした時のイメージをはっきり持っていらっしゃるので、今回はメストレさんの意見を入れたプログラムになっています。ロッシーニの《オテロ》の「柳の歌」は初めて歌うのですが、これはメストレさんが私の声に合った曲だと太鼓判を押してくださいました」。SNSでは普段の生活も積極的に発信。ペットや息子さんたちとの生活が綴られ、スターの素顔が覗ける。「家事はやりはじめるときりがないので、楽しんでやるように心がけています。お料理やお裁縫は達成感もありますし、仕事とのバランスで良いメリハリになっていますね。息子は中学2年生と小学4年生です。子供がいなかったらもっと自分のことに没頭して海外でキャリアを築けたかもしれませんが、子供のおかげで別の幸せをもらえています。歌を歌う時も、作品に込められたいろいろな思いや行間にあるもの、さまざまな『愛』の形を理解できるようになったかなと」。10月には、究極の「愛」のオペラである《椿姫》に主演する。「声が充実し、以前は気づかなったことを楽譜から読み取れるようになった」とのこと。こちらも楽しみだ。コロナ禍では仕事のない時期も経験。コンサートが再開され、「ホールで音楽をお客様と共有することのありがたさ」を噛み締め、「1回1回のコンサートに全力を尽くす気持ちが以前より大きくなりました」という。森麻季の新たな充実に注目したい。(音楽物書き・加藤浩子)
2022年08月16日ピアニスト河村尚子が、「シューベルト プロジェクト」の第2夜を開く[9月13日(火)紀尾井ホール]。シューベルト晩年のソナタ4曲を2回に分けたリサイタル。今年3月に続く今回は第20、21番の傑作2曲を軸に3曲の小品を組み合わせた。「晩年のソナタは音楽的にもドラマ的にも充実していますし、インテンシヴな瞬間がある、メッセージとしてすごい強い音楽です。病気に悩まされた晩年の苦しみや孤独が伝わってくるのを感じます。愛に憧れて、でも応えてもらえなかったシューベルト。孤独を感じることは誰にもありますが、シューベルトのように、それを音で表現した、〝孤独な音楽〟というのは多くありません。それが聴衆の心を摑むのだと思います」シューベルトを〝歌曲王〟のイメージで考えると、つい旋律に目が向くが、それだけではないという。「ものすごく挑戦的な和声を使っていたりするんですね。とても穏やかだったところで、えっ、こんな和声を使うの?という、突然すごく落胆するような表現をする。そこがスパイスになっているのがシューベルトの聴きどころだと思います。旋律の美しさだけではないのです」2018年から2年間、全4回のリサイタルで集中的にベートーヴェンと向き合った。その経験から、あらためて見えてきたシューベルト像もある。「晩年のシューベルトが、ベートーヴェンの作品から受けた刺激を、より意識するようになりました。たとえば調性。シューベルトの第20番はベートーヴェンの作品101(第28番)と同じイ長調。第21番と《ハンマークラヴィーア》(第29番)は変ロ長調です。3月の第1夜で弾いた第18番はピアノ協奏曲第4番と同じト長調で、始まり方もそっくり。シューベルトが、『ベートーヴェンは素晴らしい。でもここに僕がいるんだ!」とアピールしているのを感じます。あとは弾き方ですね。アーティキュレーションとかペダルとか。ロマン派に振り分けがちですが、より古典的な要素を持っているのを感じるようになりました」取材では、「シューベルトのことを話せてうれしい」と作曲家への愛を丁寧に語ってくれた。シューベルトに必要なのは、自然な声で歌える範囲の表現と、弦楽合奏をイミテーションしながら作る広がりのある音色だという。6年後の2028年には生誕200年を迎えるシューベルト。そのカウントダウンを彼女のコンサートから!第1夜を聴き逃した人もまだ間に合う。(宮本明)
2022年08月08日マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)のバッグ「クラシック Q(CLASSIC Q)」が復刻。2022年8月3日(水)より、全国のマーク ジェイコブスストアほかにて発売される。“名品バッグ”「クラシック Q」が復刻!「クラシック Q」は、2007年に「マーク BY マーク ジェイコブス(MARC BY MARC JACOBS)」で誕生し、その唯一無二のデザインで不動の人気を誇った名品バッグ。ブランドの最も大事なDNAである“ミリタリー”からインスパイアされたオーバーサイズのロゴプレートと、プリーツを施したフェミニンなフォルムが特徴のシリーズだ。今回は、そんな「クラシック Q」シリーズのバッグが生誕15周年を記念してついに復刻。シボ感にこだわったレザーからハードウェア、パターンまで、全て当時の作りを再現して用意する。ラインナップには、コンパクトなサイズ感の「THE KARLIE」、トップがジップ仕様になっている「THE MINI NATASHA」、ハンドルとショルダーストラップが付いた2WAY仕様の「THE LIL UKITA」、A4サイズの資料が入る大容量の「THE HILLIER HOBO」の4モデルが揃う。【詳細】マーク ジェイコブス 「クラシック Q」バッグ発売日:2022年8月3日(水)取扱店舗:全国のマーク ジェイコブスストア、公式オンラインストア価格:・RE-EDITION KARLIE BAG 44,000円・RE-EDITION NATASHA BAG 56,100円・RE-EDITION LIL UKITA BAG 78,100円・RE-EDITION HILLIER HOBO BAG 74,800円【問い合わせ先】マーク ジェイコブス カスタマーセンターTEL:03-4335-1711
2022年08月06日第二回となる豪華音楽祭。DUO ACROSS(広田勇樹/矢野雄太)が毎年様々なトップアーティストを招聘し、色々な角度から楽しめる贅沢な室内学プログラム。最終日8/19(金)公演では須田祥子、小林美樹を迎える。どんなサウンドになるかご期待ください。チケットぴあにて絶賛発売中。▼第2回浜の町音楽祭/Grand Finale!極上の室内楽須田祥子、小林美樹を迎えて[日時]8/19(金)[開演]19:00[開場]18:00[場所]あいれふホール(福岡)[料金]3,000円[出演]小林美樹、須田祥子、広田勇樹、矢野雄太[プログラム]ベートーベン:弦楽三重奏曲 ト長調 Op.9-1ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番 イ長調 Op.26他
2022年08月04日日本を代表するアーティストたちが結集して全国を縦断する「クラシック・キャラバン2022~クラシック音楽が世界をつなぐ~」が、昨年に続いて開催される。9月から12月まで全国13地域で21公演。都内で発表会見があり、出演者代表の田中祐子(指揮)、仲道郁代(ピアノ)、福井敬(テノール)と、「プロジェクト・アンバサダー」に任命された俳優・宮崎美子らが出席した。オーケストラや合唱も出演する、大ホール向けの「華麗なるガラ・コンサート」と、室内楽アンサンブルが中心となる小ホール向けの「煌めくガラ・コンサート」で構成されるが、それぞれの内容は公演ごとにヴァリエーション豊か。各音楽事業者が手を携えて、オリジナリティ溢れる公演が各地で繰り広げられる。「昨年、地元・愛知での公演を両親と一緒に客席で聴いた感動は言葉にできない。家族や友人をコロナで失った方もいて、いろいろなことを忘れることはできないかもしれないが、その瞬間だけは、お客様、出演者、スタッフとともに集中して音楽に没頭したい」(田中)「昨年今年とクラシック業界をあげてこれだけのことをして、では私たちが来年どう歩んでいくのかということも考えなければ。華やかな公演の次に、世の中にとってクラシック音楽が本当の意味で何なのかを提示すること、それを全員で考える機会になればいい」(仲道)「音楽界のオールスター戦が北海道から沖縄まで全国で。これをずっと、社会とコラボレーションしながら続けて行けたら、最高に素晴らしい芸術的なエンタテインメントが出来上がっていくだろうと期待している」(福井)「日頃クラシックになじみのない方にもアピールして、幅広い層の皆さんに足を運んでいただけるように発信するお手伝いする役割。責任は重いと思っている。音楽との初めての出会いが幸せなものになりますように」(宮崎)文化庁が支援する、コロナ禍からの文化芸術活動再興事業。聴衆のためであるのはもちろんだが、コロナ禍で窮地に立たされた演奏家や関係スタッフに仕事の機会を創出する目的もある。昨年の全国のクラシック公演数は、コロナ前の2019年比85%と回復傾向にあるものの、集客数は、なんと同35~40%と落ち込んだまま。ここはわれわれ音楽ファンも手を取り合って、再興の輪に加わりたいところだ。豪華な「饗演」に身を委ねることでそれができ、耳と心の消毒にもなるのだから、言うことはない。(宮本明)
2022年08月03日~ららら♪クラシックコンサートVol.14「クラシック界 期待のヴィルトゥオーゾ」出演に際して~NHK Eテレの音楽番組「ららら♪クラシック」のわかりやすさと楽しさはそのままに、司会の高橋克典が案内役を務め、一流の音楽家による生演奏が聴ける「ららら♪クラシックコンサート」。第14回目となる今回は、「クラシック界 期待のヴィルトゥオーソ~国際コンクールの受賞者たち~」と題し、国際コンクールで入賞を果たした世界に飛翔する日本の若手演奏家6名がアンサンブルの妙技を繰り広げます。出演者のひとり、昨年のジュネーブ国際コンクール(チェロ部門)での優勝が大きな話題となったチェリスト、上野通明さんにお話を聞きました。――チェロを始めたきっかけを教えてください。小さい頃、家族でヨーヨー・マが演奏するバッハの《無伴奏チェロ組曲》のビデオを観たことを今でも鮮明に覚えています。その印象がとても強く、小学校の卒業文集で将来の夢は“チェリスト”と書いていたみたいで、当時から一生チェロを弾いていたいという思いがあったのだと思います。――昨年のジュネーブ国際音楽コンクールについて、セミ・ファイナルで披露した1時間にも及ぶプログラムは全て初めて取り組む作品だったのだとか。デュッセルドルフで師事している、ピーター・ウィスペルウェイ先生と相談しながら決めましたが、当初先生からはリスクが大きいのではないか、と言われました。しかし、コンクールの要項に「奏者のオリジナリティーを求める」という一文があったのです。そこで、個性を発揮するには自分のやりたいことを素直にやるほうが良いと思いました。――コンクール優勝前と後で何か変わったことはありますか?普段あまり自信がないほうなので、前よりも多少自信がついた気がしますが、大きくは変わってないように思います。コンクールをあまり意識しすぎなかったのが良い結果に繋がったのかもしれません。――公演にあたっての意気込み、またお客様へメッセージをお願いします!今回ご一緒する皆さまは素晴らしい方々ばかりですので、共演できるのをとても楽しみにしています。また、音楽は文字通り “音を楽しむ” ものだと思います。お客様には僕らが作り出す会場の雰囲気や音の色彩感を感じながら、音楽に身を委ねていただけたら嬉しいです。(文・北山奏子)
2022年07月28日現代音楽マニアの占有にする手はない。10月8日(土)9日(日)神奈川県民ホールで上演される、ミニマル・ミュージックの巨匠フィリップ・グラス作曲《浜辺のアインシュタイン》は2025年の開館50周年記念オペラ・シリーズ第1弾。記者会見が開かれ、演出を手がける振付家の平原慎太郎や指揮のキハラ良尚らが出席した。《浜辺のアインシュタイン》はグラスと演出家ロバート・ウィルソンの共作で、1976年に初演されて現代の舞台芸術に大変革をもたらした伝説の作品。物理学者アインシュタインがテーマではあるが、登場人物に明確な役柄はなく筋書きもない。歌詞は数字と音名(ドレミ)だけ。休憩なしの4時間ノンストップ上演(今回はその意図に配慮しつつ休憩が入る)。連続する時間・空間・動きの解釈は聴衆に委ねられる。しかしその破天荒さだけに目を奪われてはいけない。演出の平原は言う。「(上演時間とか反復とか物語がないとか)外側の〝枠〟の情報ではなく、作品が生まれた時代背景を追求し、現在の日本に沿わせて制作したい。アメリカン・モダン──アメリカが自分たちの文化をどう獲得するに至ったのか。当時はベトナム戦争や女性解放の時代。秩序と混沌が繰り返されるかのように、それが今また繰り返されている。現在の日本の状況に合ったもの、希望のある作品にしたい」モティーフを執拗に反復するミニマル・ミュージックは、もともと無調音楽に対するアンチテーゼだから、じつは調的で聴きやすい。80年代以降のテクノやトランスなど、クラブ・ミュージックもその影響を受けているぐらいだ。指揮のキハラも「音の洪水に包まれるような印象。ディスコなど、ロックの要素も大きい音楽」と紹介した。前衛オペラの金字塔ではあるけれど、聴衆に現代音楽の専門的な知識などは必要ない。公演キャッチは「これはオペラか?ダンスか?演劇か?」。それらの総合アートでもあるし、どの入口から入っても楽しめるとも言える。いわば多様性の元祖。台詞を担当する俳優の松雪泰子と田中要次や、バレエ・ダンサー中村祥子、ヴァイオリニスト辻彩奈(アインシュタインはヴァイオリンを弾いた)など、多彩な出演者を得て、刺激的な舞台になるのは間違いない。器楽の編成は電子オルガン2、フルート3、バスクラリネット、サクソフォン2。合唱(独唱含む)は東京混声合唱団。宣材イラストを『AKIRA』の大友克洋が描き下ろしている。(宮本明)
2022年07月26日1973年結成のアメリカの弦楽四重奏団クロノス・クァルテットが、この秋、19年ぶり11回目の来日を果たす。オンライン会見に芸術監督のデイヴィッド・ハリントン(ヴァイオリン)が出席した。現代音楽が彼らの領域。1,000曲を超える委嘱作品も生み、文字どおり弦楽四重奏の新たな地平を拓き続けてきた。今回は彼らの代表的名曲も披露して、あらためてクロノスの軌跡を示してくれるのがうれしい。ジョージ・クラムの《ブラック・エンジェルズ》(1973)、スティーヴ・ライヒの《ディファレント・トレインズ》(1988)と《トリプル・クァルテット》(1999)。すでに20世紀の弦楽四重奏の重要なレガシーとなっているが、いまなお先鋭さを失うことはない。これぞクロノスという刺激を味わい尽くせるはずだ。「《ブラック・エンジェルズ》は私たちの活動が始まるきっかけになった作品です。ライヒの音楽は私たちの支柱のひとつ。彼はアメリカ社会の難しい課題を直視しつつ、音楽の原点に戻ることを忘れません」(ハリントン=以下同)そしてもちろん、「いま」の視点がないはずがない。クロノスが現在最も注力しているプロジェクトが、50 for the Future(未来のための50曲)だ。若い世代のための新たなレパートリーの創出。男女25人ずつ50人の作曲家に新作を委嘱した。スコアを無料公開し、世界各地で若いカルテットへの指導も行なっている。今回は50人中唯一の日本人・望月京(みさと)の《ボイズ》など10作品が演奏され、東京公演には日本の若手タレイア・クァルテットも出演する。「50人の作曲家が、こんなにも多種多様で素晴らしい音楽を作り出す。私たちみんなが音楽の一員であることを再認識させてくれるプロジェクトです」また、テリー・ライリーの《サン・リングズ》(2002)日本初演も注目。なんとNASAの委嘱により、宇宙探査船ボイジャーが記録した宇宙の音にインスパイアされた作品。日本の合唱団との共演というのも見逃せない。「初めて音を聴いた時、ここまでできるのかと、一瞬戸惑いました。人間の持つ可能性の大きさを思います。この作品を日本で演奏することは、私たちの活動のハイライトのひとつです」クロノス・クァルテット来日公演は、9月24日(土)京都、28日(水)東京、30日(金)さいたま、10月1日(土)横浜、2日(日)盛岡(全公演とも別プログラム)。(宮本明)
2022年07月14日ヴァイオリンの石田泰尚が5月から続けている「熱狂の夜」。最終回は、自らがコンサートマスターを務める神奈川フィルハーモニーとの協奏曲の一夜だ[9月6日(火)ミューザ川崎シンフォニーホール]。指揮は川瀬賢太郎。2曲の現代アメリカ作品を並べたプロがクールだ。ジャズ・トランペッターのウィントン・マルサリスのヴァイオリン協奏曲(2015)は、昨年2月に今回と同じメンバーで日本初演されたばかり。「持ってきたのは川瀬ちゃん。これ、絶対石田さんに合ってますと勧めてくれました。45分ぐらいかかる大作ですが、たぶんあっという間。絶対に面白いはずです。あらかじめ予習してくる必要なんかありません。クラシックがあったりタンゴがあったり、ブルースが出てきたり。いろんな要素があって楽しいんですけど、ただ、ちょっと難しすぎない?っていうぐらい、超絶技巧がすさまじくて。聴きどころは曲の冒頭。僕の弾くラの音から始まるんですけど、すごく静かに、p×3つぐらいから入るのが印象的です。ミューザの客席をそこでいきなり引き込むことができるかどうか、今から楽しみですね。あとは、打楽器とのコラボみたいなカデンツァも見ものです。打楽器奏者がオーケストラの前に移動してきて、2人で演奏します」一方のミニマル・ミュージックの大家フィリップ・グラスのヴァイオリン協奏曲第1番(1987)も、2006年に神奈川フィルと弾いている(下野竜也指揮)。「ミニマル・ミュージックはそれまで全然接点がなかった。グラスの存在も知りませんでした。かっこいいけど、同じことを繰り返すのを同じように弾いても、ヘタしたらつまらなくなる。お客さんも飽きるでしょうしね。テクニック的にはマルサリスほどではないんですけど、そういうことが意外に難しいんじゃないかと思います」神奈川フィルでのコンマス歴はすでに20年を超える。2014年から今年春まで常任指揮者を務めた川瀬とも気心の知れた仲だ。互いの信頼も厚い。「彼はフレンドリーで、団員とも壁がないので、みんな話しやすかったと思います。それは彼の良さなんじゃないかな。そして、どんな曲でもすごく勉強してきますよね。音楽と真摯に向き合っている」最終夜だけに気合も入ると意気込む。「でも、とにかく楽しみたい。5回全部聴きに来てくれるお客さんもいっぱいいるので、全部聴いてよかったと思えるような夜にできればうれしいですね」(取材・文:宮本明)
2022年07月08日二期会の創立70周年記念公演《パルジファル》(ワーグナー)は、宮本亞門のワーグナー初挑戦(ラン歌劇場との共同制作)のジャパン・プレミエ、バイロイト音楽祭でも評価を得ているドイツ・オペラの名匠セバスティアン・ヴァイグレの指揮と、注目ポイントが山盛りだ。題名役を歌うのが日本のエース・テノール福井敬。「私の演じるパルジファルは〝聖なる愚者〟です。ワーグナーのオペラのほとんどは、理想的な男性像の、強いヒーローが主役ですから、かなり特殊な主人公です。最初は自分の名前すら知らない、本当に無垢な、人としてゼロの存在。そのゼロ=透明さを表現するのが難しいところです」純粋無垢なパルジファルが、さまざまな「智」を獲得しながら人として成長し、最後には救済者となる。「人間として覚醒する瞬間を経て、成長の前後の表現の変化が見どころになると思います。どう演じるのか、自分でもまだわかりません。自分だけで意図的に作るのではなく、これからの稽古の中で、他の役の作るドラマとともに出来上がっていくことになるわけです」「面白いのは、オペラのテノールにはこういう〝覚醒〟を体験する役が結構多いんです。《愛の妙薬》のネモリーノ、《魔笛》のタミーノ……。〝男の子〟が、愛を知って〝男〟として成長する。それがワーグナーにもちゃんと受け継がれているのですね」10年前、二期会創立60周年の《パルジファル》でも同役を演じた。「10年経って、ワーグナーの意図を、より明確に感じられるようになった気がします。ワーグナーの作品にはいつも、相対するものとして神と人間が登場するのですが、それはワーグナーが、人間の多様性を、より深く描き切ろうとしたから。だからこそ、演じる私たちが人間という存在をよくわかっていないと、なかなか表現できません」上演はダブル・キャスト。もう一方の組でパルジファルを演じるのは、若手のホープ伊藤達人だ。「いいですよ!いい声で、元気で溌剌としていて。人間的にもチャーミングで、パルジファルにぴったりじゃないですかね。すごく期待しています。もちろん私も、彼のような若い人たちに、何かを見せられたらなと思いながらやっています。自分自身も、先輩方からそうやって授けられてきたのですから。でもね、若い人にはついていくのがやっとですよ(笑)」「彼だけでなく、どの役をとっても、みんな個性が違うので面白いですよ。たぶんそれぞれの組で、まったく違う《パルジファル》になっていくんじゃないかなという期待があります。音楽の〝色〟まで変わってくると思うので、できたら、ぜひ両組ご覧いただいて、同じオペラでもこんなに違うんだというところも楽しんでいただければと思います」二期会《パルジファル》は、7月13日(水)、14日(木)、16日(土)、17日(日)の4公演。初日のみ17時開演、ほかは14時開演(上演時間は休憩を含めて約5時間)。東京文化会館大ホールで。
2022年07月04日新国立劇場の2021/22オペラ・シーズンの最後を飾るのは、ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》。エクサンプロヴァンス音楽祭、ポーランド国立歌劇場との共同制作で、大野和士芸術監督が指揮する。開幕直前の最終の舞台リハーサルを取材した。19世紀末の象徴主義の劇作家メーテルリンクの原作に基づく。謎めいた美しいメリザンドと二人の王子(ペレアス、ゴロー)の三角関係。愛と嫉妬が悲劇の結末を招く。このオペラに、いわゆるアリアはない。つまり物語の時間を止めて感情を吐露したり、延々と輝かしい高音を誇示したりする箇所がなく、すべての言葉は、切れ目なく流れる音楽の一部となっている。演劇とオペラ両方のフィールドで活躍するケイティ・ミッチェルの演出は、リアルだがファンタジック、具体的なのに象徴的。すべてがメリザンドの夢だったという設定は、あまり現実的でないこの物語を〝夢の出来事〟と割り切れて合点がいく。メリザンドは夢の中の自分(黙役の俳優が演じる)の生死に関わりさえする。随所に埋め込まれている仕掛け(象徴?)も面白い。音楽が始まる前の〝鼻血〟を皮切りにいろいろ出てきて、「これはどんな意味?」「何の伏線?」と脳をフル回転させてくれる。メリザンドが塔の上から長い髪を垂らす有名な場面は、(この演出では塔は出てこないが)〝官能〟を超えてかなりエロチックだ。歌手陣はきわめて高水準。ペレアス役はベルナール・リヒター。ハイ・バリトンが歌うことの多い役だが、彼のように低い音符でも柔軟な響きを失わないテノールは役のキャラクターにもふさわしい。メリザンド役のカレン・ヴルシュも美しい。2016年デュトワ&NHK交響楽団の演奏会形式上演での同役も鮮烈だった彼女。理論物理学の修士資格を持つ異色の理系歌手だ。ゴロー役のロラン・ナウリは、その二人の題名役を凌駕する存在感。さらに、大野が直接電話して口説き落としたというジュヌヴィエーヴ役の浜田理恵は、歌唱だけでなく、本来出番がない場面での黙役の演技でも重要な役割が与えられている。全5幕を3幕+2幕に分けた2部構成。「幕」よりも「場」ごとに頻繁に場面が変わる。その場と場を、大野と東京フィルハーモニーの幻想的な響きがつなぐ。上演時間は休憩を含めて約3時間半。新国立劇場《ペレアスとメリザンド》は7月2日(土)から17日(日)まで全5公演。東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。(宮本明)
2022年07月01日バレンシアガ(BALENCIAGA)の2022年フォールコレクションから、「ル カゴール」「ネオ クラシック」の新作ウィメンズバッグが登場。「ル カゴール」にバケットバッグが仲間入り2021年ウィンターコレクションに誕生した「ル カゴール」ラインには、バケットバッグスタイルの新作が仲間入り。ハードなメタルパーツを随所にあしらったデザインや、外装ポーチ&ハート型ミラーなどのレザーチャームといった「ル カゴール」の特徴はそのままに、バケットバッグのシルエットを採用した。“上下を逆さま”にした「ネオ クラシック」の新作トート2020年ウィンターコレクションより人気を博している「ネオ クラシック」には、横長のトートバッグが新登場。「ネオ クラシック」を象徴する台形型シルエットを“上下逆さま”にすることで、より一層エッジの効いたスタイルに仕上げている。「バレンシアガ 大丸札幌」がオープンなお、前述の新作バッグは、2022年6月11日(土)にオープンした新ストア「バレンシアガ 大丸札幌」でも販売。店内にはその他にも、ウィメンズ・メンズのプレタポルテ、シューズ、バッグ、ジュエリー、アイウェア、アクセサリーを含むフルコレクションが揃う。内装には、建物の内部構造や経年劣化にフィーチャーし、意図的に未完成のままにしたり、部分的に分解したりする「Raw Architecture」のコンセプトを反映。コンクリートやエイジド加工の金属格子などを使用した、無骨でユニークな空間に仕上がっている。【詳細】バレンシアガ 2022年フォールコレクション 新作バッグ・ル カゴール XS バケットバッグ 205,700円・ル カゴール S バケットバッグ 242,000円・ネオ クラシック M アップサイドダウン イーストウエスト トートバッグ 238,700円・ネオ クラシック L アップサイドダウン イーストウエスト トートバッグ 268,400円※ネオ クラシック アップサイドダウン イーストウエスト トートバッグは7月上旬以降展開予定。■店舗情報「バレンシアガ 大丸札幌」オープン日:2022年6月11日(土)住所:北海道札幌市中央区北5条西4丁目7 2F【問い合わせ先】バレンシアガ クライアントサービスTEL:0120-992-136Courtesy of Balenciaga
2022年06月17日昨年のショパン国際ピアノ・コンクール。反田恭平、小林愛実の日本人入賞コンビに負けない注目を集めたのが、第3位の1996年生まれのスペインのピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシアだ。5月に初来日を果たした。ライヴ配信されたショパン・コンクールでは、楽しくてたまらないという彼の表情が印象的だった。時に口ずさみながら弾く。「もちろんプレッシャーはあったよ。コンクールだからね。でも日程が進むにつれて、だんだん楽しめるようになって、最後は会場を盛り上げようという気持ちだったんだ。ピアニストだって、楽しんでいいでしょう?口ずさんでしまうのは本能で……。音楽には必ず歌がある。ピアノというのはそれを再現する手段でしかない。歌を聴いてもらうことが何よりうれしいことなんだ」ファイナルの協奏曲は、多くの参加者が選ぶ第1番でなく、第2番だった。「審査員も客席も、1番ばかり聴き続けているわけだから、たまに2番を聴いたほうが新鮮だと思って(笑)。実際、あの作品にはフレッシュなものを感じるんだ」コンクール効果というか、今の彼は世界中どこへ行ってもショパンを弾くことを求められる。「大好きなショパンを皆さんと分かち合うのはうれしいことだけど、バロックも現代曲も大好き。もう少しバランスよくいろんな曲を弾きたいかな」今年は秋にも日本に戻ってきて、ベートーヴェンの協奏曲第5番《皇帝》を弾く。「ベートーヴェンとの関係はラヴ・ヘイト。愛しているけど嫌い、みたいなね。彼自身も自分の中にそんな葛藤があったんじゃないかな。とにかく深い音楽だよね。ベートーヴェンほど、人間の精神面に深く入っていく作曲家はいない。だからピアニストはみんな、ベートーヴェンを弾くのに時間をかけるんだと思うよ。2週間ですぐに弾けるような作品はない。その意味で難しい作曲家だね。《皇帝》は、彼の5曲の協奏曲の中で一番まばゆい作品だと思う。でも同時に、いい意味で無邪気さがある。新しい世界を見て驚いている子供のような感覚。その一方で人間の誇りみたいなものもあって、そんな相反するキャラクターによって、すごくいい曲になっているんじゃないかな。聴衆も、それぞれに異なる受け取り方ができるでしょう?演奏するのも《皇帝》が一番楽しいよ」1日先も1分先も、常に新しい自分でいたいというマルティン。秋にはまた新しい彼に出会えるはずだ。■マルティン・ガルシア・ガルシア(p)11/5(土)・6(日) サントリーホール 大ホール(東京都)
2022年06月16日ポータークラシック(PORTER CLASSIC)は、ディズニー「ミッキーマウス」のオリジナルTシャツを、2022年6月11日(土)よりポータークラシック 銀座本店にて販売する。”洋服作りをする”ミッキーマウスTシャツポータークラシックとディズニーによるスペシャルコレクション「ディズニーミッキーマウス/ポータークラシックお針子コレクション」から、夏に向けてTシャツがお目見え。Tシャツには、洋服作りに挑戦するミッキーマウスをスケッチ風に描き、シンプルでありながらも存在感のあるデザインに仕上げた。なお、このミッキーマウスは、ポータークラシックのために描き起こされた完全オリジナルのものとなっている。サイズは、XSからXXLまで、全6サイズを用意。家族やカップルとお揃いで着用するのもおすすめだ。【詳細】「ミッキーマウス Tシャツ」13,200円 ※銀座本店限定発売日:2022年6月11日(土)12:00~取扱店舗:ポータークラシック 銀座本店サイズ:XS、S、M、L、XL、XXL【問い合わせ先】ポータークラシック 銀座本店TEL:03-3571-0099
2022年06月13日