今回は不動産取引における「片手」「両手」というものについてお話したいと思います。不動産取引で業者が客から受け取るお金は、賃貸借、売買いずれの場合も原則として契約締結に持ち込んだ場合の仲介手数料だけです。物件を何件も紹介し、交通費などの経費を使って現地案内を繰り返したお客様でも、他社で契約されてしまえば1円のお金も入ってきません。業界が抱える問題点のすべての根源が、ここにあるように思います。仲介手数料は、賃貸の場合は月額賃料の1か月分、売買の場合は売買代金の3%+6万円と決まっています。売り上げを増やして給料を上げるためにはなるべく金額の大きな物件を決めることがカギとなりますが、もう一つの手段として「両手」をねらうというものもあります。そもそも「両手」「片手」とは一体何のことを差すかご存じでしょうか。■ 売主と買主に別々の仲介会社がつく「片手」取引って?shimanto / PIXTA(ピクスタ)不動産取引において賃貸の場合は貸主と借主、売買の場合は売主と買主という2組の当事者があります。家を売りたい、貸したいと思っている人は自分で客を探すのが難しいため、媒介契約を結んで不動産業者に依頼します。一方、家を買いたい、借りたいと思っている人も不動産業者を訪れて物件を紹介してもらいます。ややこしくなるため、ここから先は売買に限定します(賃貸でも内容は変わりません)。甲さんの依頼を受けたA社が売却活動をした物件をB社が乙さんに紹介し、甲さんと乙さんの間に1,000万円で売買契約が成立したとします。この場合A社は甲さんから、B社は乙さんからそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰います。売主側と買主側の仲介会社が違うこのような取引を「片手」と呼びます。■ 売主と買主の仲介会社が同一の「両手」取引って?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)甲さんから売却依頼を受けたA社が、A社で物件探しをしている丙さんに紹介して甲さんと丙さんの間で売買契約が締結されたとします。この場合A社は売主の甲さんと買主の丙さんの両社からそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰うことができ、1件の取引で2倍の売り上げとなります。このような取引を不動産業界では「両手」と呼んでいます。当然のことながら営業はまず両手を狙います。物件を「物上げ」した場合まず自分の客に紹介できないか考え、次いで同じ店の他の営業に紹介可能な顧客を抱えていないか確認します。物件情報をオープンにするのはその後です。■ 「両手」取引はそんなに悪いことなの?maroke / PIXTA(ピクスタ)この両手取引が“評論家”の間で評判が悪く、「不動産業界における悪しき商習慣」の筆頭のようにまで言われています。私が不動産業界に転身した19年前、入社初日に読んだ業界誌で「両手取引では利害関係が異なる売主・買主の双方に対して責任が果たせない」と書かれていたことを今でも覚えています。売主は高く、買主は安く取引したいのが当たり前なので一つの会社で仲介するのは利益相反だと言うのです。両手取引の場合買主と売主の間に1社しか入らないため、買主の値引き要求(「指し値」という)があれば売主がそれを飲まされて損をするというのですが果たしてそうでしょうか。現実の取引では購入申し込み(買付け)が入ると片手であっても両手であっても仲介会社は何としてもその客で決めたいと思います。先ほどの事例でいえば、B社にとっては自社で紹介した物件で決まらなければお金になりませんし、A社にとってはこの申し込みが破談になればそれ以降に別の申し込みが入る保証はなく、それではやはりお金になりません。ですから指し値が無茶な内容でない限り、買い付けが入ればA社は売主を説得しようとします。これはA社の両手取引でも変わりません。売主の側にとっても早い段階で指し値に応じて売ってしまうことにメリットはあります。指し値を断って破談になればその後物件が売れ残る恐れがあり、そうなると値引きか売却中止しかないからです。そもそも売主は指し値が入ってくることを前提にして、相場に少し上乗せして値付けをしているものです。そして買主の希望する金額が納得できなければ断ればいい話です。お互いが意地になって50万円の差額がどうしても埋まらず、両手取引が成立しなかった経験が筆者にはあります。従って、両手取引で誰かが不利になる、という事は実際にはないのです。■ 「両手を狙って物件を囲い込む」というのは本当?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)「両手取引を狙うあまり、業者は物件情報を他社に流さず囲い込む」という指摘もよく見ます。囲い込みにより売却が遅れたり、それによる値引きで売主が不利益を被るというものです。両手取引はもちろん効率的ですが、特定の物件に狙ってできるほど客付けというのは簡単なものではありません。物上げした物件をピンポイントで気に入ってくれる客を自分で見つけるのは至難の技で、そんなことをしても買い客を逃すだけです。囲い込んだまま売れずに売却中止になる、あるいは一般媒介に切り替えられて他決するという最悪の事態を考えると、両手取引を狙って物件を囲い込むことにメリットはありません。何より営業マンというものは今月の数字をどうするかということしか考えない人間です。将来どうなるかわからない物件を抱え込むよりは、片手でいいから決めて今月の数字にしたい、と考える方が普通でしょう。あくまでも両手取引を目指す、という会社も中にはあるかもしれません。しかし私がこれまで在籍してきた会社はすべて「片手でいいから決めて、今月の数字を何とかしろ」という方針でした。囲い込みが業界内で常態化しているかのような指摘は、実態から乖離しているといえます。■ 薄っぺらい業界批判に惑わされず、不動産業界を正しく理解してほしいABC / PIXTA(ピクスタ)これまでも書いていますが、不動産というものは金額が高く、売るのが大変だからこそ、買い付けを取るためにあらゆる可能性にかけるのです。そのため他社が物件を内見するのは大歓迎され、予約を入れれば「ありがとうございます!頑張ってください!」と言われます。不動産やマンション管理についてのニュースはこまめに見るようにしていますが、実務について何も知らずに書いていると思われる、薄っぺらな内容の業界批判が多すぎるようです。不動産は契約にならなければお金にならず、それでいて契約を1件まとめるというのは大変だということをお分かりいただきたいと思います。(written by 鶴間 正二郎)
2018年09月27日今回は物件を購入する際の「値下げ交渉」についてお話します。不動産は高額の買い物であるために少しぐらい値切りたいというのは自然な感情ですが、効果的な交渉を行うためには取引の仕組みを知っておく必要があります。中古物件と新築物件では状況がまったく異なってくるため、それぞれのケースについて実体験に基づいてご説明します。■ 「中古物件」の値下げ交渉は常識の範囲内で行うことがポイント売主と買主の間に仲介会社が入る「中古物件」の場合、値下げ交渉は売り主側の仲介会社(物元、元付)と買主側に仲介会社(客付)の間で行われることになります。中間業者による中古物件の「値下げ交渉」についての仕組みをご紹介します。ABC / PIXTA(ピクスタ)値下げ交渉は「買い付け」を書くことが大前提値下げ交渉のタイミングとしては「お気に入りの物件が見つかった時」になりますが、実際の交渉は不動産購入申込書(買い付け)を物元業者に提出することから始まります。Good morning / PIXTA(ピクスタ)中古物件において値下げ交渉をするということは「ここまで価格を下げてくれれば『絶対に』買います」という意思表示であり、そのための証として買い付けは必須で、これを書かなければ物元業者は交渉に応じてくれません。申込書を提出しているのですから、交渉が成立した場合はそのまま契約準備に入らなければなりません。筆者は何回も値下げ交渉を行いましたが、値下げの余地について物元業者に事前に打診しても「買い付けを入れてくれれば、売主と交渉します」としか答えてもらえなかった記憶があります。また自分が物元の物件に問い合わせがあった際も同様の回答をしており、値下げの可否について事前に探りを入れるのは難しいと考えておいた方がいいでしょう。そもそも大幅な値下げはありえないTATSU / PIXTA(ピクスタ)物件探しに際して買主は仲介会社に希望条件を伝え、それに基づいて仲介会社は物件を紹介します。条件の中でも価格は最も重要な要素であるため仲介会社は細心の注意を払って紹介するものであり、大幅な値下げ要求というのはそもそもありえないはずです。そうでないのは仲介会社が買主の希望を無視した物件を紹介したか、買主の欲の皮が張ってしまったかのいずれかで、どちらにしてもあまり感じのいいものではありません。非常識な値下げ要求には仲介会社が応じないfreeangle / PIXTA(ピクスタ)筆者の場合は、950万円の物件に600万円で買い付けを出され、上司から「そんな買い付けを取ってどうするつもりだ」と怒られたことがあります。客はローンではなく現金で買うのだから下げて当然だろうと主張し、こちらが何度説明しても「銀行を通さない綺麗な金だから売主にとってもありがたい話のはずだ」と譲りません。とても売主にはかれるような話ではないため、最終的に担当者の判断で断りを入れました。売主は「指値」が入ることを前提に価格を設定しているfreeangle / PIXTA(ピクスタ)そうはいっても不動産は高い買い物であり、少しくらい値切りたいというのは自然な感情です。実際に買い付けを書く際にも販売価格そのままの金額を書くことは稀で、いくらか減額した金額を記入している事例が大半だったように思います。このように買主が希望した金額を指値(さしね)といいますが、たいていの売主は売却開始に際して指値が入ってくることを前提として価格を設定しているものです。「査定価格としては3,000万円ですが、指値が入ってくることを考えて3,300万円で市場に出しましょう」というような話を筆者は何回もしました。常識の範囲内の「指値」には応じてくれる可能性大xiangtao / PIXTA(ピクスタ)売主は指値が入ることを前提に価格を設定しているのですから、常識的な範囲の価格交渉には応じてくれる可能性は大であり、むしろ指値を入れないのは損であるといってもいいでしょう。どのくらいが常識の範囲内であるかということは仲介会社の営業マンが一番よくわかっています。■ 「新築マンション」の値下げ交渉は状況次第新築物件の場合は中古とは事情が異なってきます。筆者は新築の戸建は扱った経験がないため、マンションの事例についてご説明します。shimanto / PIXTA(ピクスタ)竣工前でモデルルームで販売しているような物件の場合は値下げ要求はまずできませんが、売れ残ってしまった完成物件の場合は交渉の余地があります。売れ残った部屋に関しては売主が区分所有者ということになって管理費や修繕積立金の負担も発生するため、業者は多少値下げしてでも売ってしまわないと負担が大変なことになるのです。特に棟内モデルルームで使用していた部屋や最後の一部屋というような場合は交渉に応じてくれる可能性大であり、積極的に申し入れましょう。Ushico / PIXTA(ピクスタ)この場合は業者の営業担当者と直接交渉することになり買い付けの提出は不要ですが、「下げてくれれば買います」と明確に意思表示すれば相手も応じてくれやすくなります。不動産は金額が大きいため、ちょっとした交渉でまとまった金額を節約することが可能です。しかしここで非常識な態度に出てしまうと信頼関係が損なわれ、交渉そのものが壊れてしまうことになります。値下げ交渉においてはくれぐれも「常識の範囲内」ということを大切にしてください。
2018年09月23日おそらく、人生のなかでもっとも高額な買い物であるマイホームの購入。誰もが、高額の買い物である不動産を「少しでも安く買いたい!」と思うはず。そこで、不動産業界で約30年間、実際の取引現場を見てきた筆者が考える、「不動産を購入する際の値引き交渉の方法」や、そのタイミング、やってはいけないことなどについて解説します!■ 誰が交渉するの?bee / PIXTA(ピクスタ)まず、買主が売主と直接交渉する機会はほぼありません。ほとんどの場合、売主と買主の間には「仲介業者」が介在しますので、値引き交渉は仲介業者を通して行うことになります。ただし、売主が不動産業者などの場合で、売主が「直に販売」をしているようなケースでは当然、買主と売主が直接交渉することになります。■ いつ交渉するの?xiangtao / PIXTA(ピクスタ)たくさんの物件情報を集め、いくつも現地を見学し、「お気に入りの物件が見つかったとき」こそが交渉するタイミングです。逆にこのタイミング以外で仲介業者が交渉を引き受けることはありません。値引き交渉をするうえで覚えておきたいのは、「買う意思を固めてから交渉を行う」ということです。物件の売主は、市場相場を事前に調べたうえで売り出し価格を決めていますので、その価格を交渉するためには「この価格になれば買う」という前提が必要なのです。■ どうやって交渉するの?xiangtao / PIXTA気に入った物件が見つかったら、いよいよ交渉開始です。まずは仲介業者に「少し安くなりませんか」とストレートに聞いてみましょう。仲介業者の担当者によって多少の差はありますが、一般的に営業マンは、顧客が気に入りそうな物件については、価格交渉ができそうな物件かどうかを事前に調べている場合が多いのです。価格交渉が難しい物件について、安易に価格交渉を引き受けてしまうと、その交渉が失敗した場合には取引が成立しない可能性が高くなるので、値引きができる物件かどうかを担当営業マンが事前に調べておくのは当然といえば当然です。例えば、担当営業マンが「この物件は一切値引き交渉できません」というならおそらくその言葉どおりでしょう。その場合は売り出し価格どおりで購入するかどうか検討してください。逆に、「○○万円までなら可能かもしれません」や、「○○万円までなら交渉してみましょう」と言ってきたら、担当営業マンは値引きができるかどうかの可能性を事前にある程度知っているかもしれません。その場合は思いきって交渉してもらいましょう!■ 交渉のコツxiangtao / PIXTA(ピクスタ)買主が値引き交渉する窓口となるのは仲介業者です。そして、仲介業者は契約が成立しなければ、物件を何件案内しても売り上げは「0円」です。なので、買主が契約する条件を「値引き」にするなら、仲介業者は一生懸命に交渉してくれるはずです。しかし、その値引き交渉の額があまりに高額だったりすると、仲介業者は交渉そのものを引き受けてくれなかったり、熱心に交渉してくれなかったりする場合もあります。大事なことは「値引きしてくれるなら購入する」という意思をはっきりと担当営業マンに伝えて、その値引き幅についてもしっかり担当営業マンと相談することです。値引き交渉のコツは、買主と仲介業者の担当営業マンが、見る方向と目的を同じにすることなのです。■ 値引き交渉でやってはいけないことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)個人、法人にかかわらず売主にとって自分の物件を値引きして売るということは重大な決断です。値引き交渉後に「やっぱりやめた」というのはできるだけ避けたいものです。その物件をきちんと確認・調べたうえ、購入の意思がしっかり固まってから交渉を始めるようにしましょう。また、ある物件の値引き交渉中に別物件の値引き交渉を同時に行うのもマナー違反なのでご注意を!■ 一番の注意点は…先に買われてしまうことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)値引き交渉をする場合、もっとも注意しなければならないことは、タイミングによってはせっかく気に入った物件が売り出し価格どおりで他の買主に先に買われてしまう可能性があるということです。物件の希少性、時期、値ごろ感、仲介業者の意見など、総合的に考えたうえで値引き交渉するかどうかを判断しましょう!
2018年08月21日住まいを購入しようと様々な情報を集めたとき、よく目にする情報があります。「不動産の買い時」についての情報です。不動産価格の相場の話、住宅ローンの金利の話、行政が定める税制の話、など様々な観点から多くの考察がなされています。しかし、不動産業界の中で働く者として皆さんに申し上げたいことがあります。それは「誰にでも当てはまる不動産の買い時」など存在しない、ということです。■ 不動産業者はいつでも「今が買い時です」と言うG-item / PIXTA(ピクスタ)世の中には「今が買い時です!」と強調した情報がたくさんあります。それこそ住まいの見学のために不動産業者を訪れれば、必ず「今が買い時だ」と言われるでしょう。業者からすればビジネスなわけですから「今が買い時だ」と言うのは当然です。もちろん「買い時」であると強調するための事実に嘘はありません。例えば、現在の住宅ローンの金利は稀にみる低さです。商品によっては年金利1.0%を下回るものが珍しくない時代です。金利が低いうちに住まいを購入すること自体は合理的だと思います。freeangle / PIXTA(ピクスタ)しかし、ここで肝心なことが一つあります。それは、不動産業者はいつ、どんな時代でも「今が買い時だ」というトークをやめないということです。買い時アピールができる情報を何か見つけてきます。金利の話でいくと、金利が上がり始めることがあれば、「もっと上がる前の今が買い時です」というトークを展開するでしょう。また、多くの不動産関連の税の優遇制度には適用期限があります。これを「この税制は今年度で終わりなので、適用できる今が買い時です」というトークに活かすこともできるのです。■ 「買い時」は外部環境で決まるものではない。sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)前述したような「買い時トーク」は筆者自身も使っていました。特に不動産の知識や経験が浅かった頃です。繰り返しますが、この時提供した情報に嘘はありません。住まいを購入する際、こういった情報を参考にすることはプラスに働きます。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)大切なことは、金利や相場、税制などといった情報は、あくまでその時の「住まいをとりまく外部環境」を説明しているだけ、ということを理解することです。こういった外部環境は、とても不安定で不確実なものです。時代によってあっさり変化する可能性があります。そういった情報は、あくまで知識・参考としてのもので自分自身の住まいの買い時を決める決定打にはならない、と私は思っています。■ 「買い時」を決めるのは自分自身kou / PIXTA(ピクスタ)では、どのように自分自身の買い時を見つけるのか。答えはいたってシンプルで、「自分が住まいを欲しい理由」を突き詰めることです。例えば「子どもが産まれて部屋が手狭になったらから住まいを探す」として、買い時を「子どもが幼稚園に入るまで」と決める、などです。子どもが幼稚園・小学校と進めば、転園・転校のリスクが伴い、人間関係の構築に時間がかかる可能性があるからです。maroke / PIXTA(ピクスタ)こういった内容は外部環境に左右されません。たとえ20年後に相場が大幅によくなる、といった情報があったとしても、子どものために住まいを買うのであれば、20年後では意味がありません。他にも「定年までにローンを完済したいから、30歳までに購入する」とか「両親の介護のために半年以内に購入する」などがあるかもしれません。筆者も今は「買い時」をお客様に説明するとき、できるだけお客様の事情に寄り添ってアドバイスするようにしています。住まいの買い時は、誰にでも当てはまるような外部環境の情報でなく、自分自身の事情によって、自分自身で決めることが大切なのです。
2018年08月12日不動産業というものは生活全般に関わるものです。そのため世の中の動きの影響をもろに受けることもあれば、お客様の動きから世の中の意外な流れに気付かされたりすることもあります。今回は世の中の動きが仕事に影響した意外な事例を3つご紹介します。■ 1.若者の車離れがマンションの一般会計を直撃ニングル / PIXTA(ピクスタ)若者の車離れが進行しているといわれています。車を持とうとしないどころか車そのものに興味を持たない、更には教習所に通うのは金と時間がかかるから免許も取らないという、車好きの筆者にとっては信じられないような世の中になっています。これは自動車業界にとって深刻な問題となっていますが、実はマンションの管理組合にとっても重大な問題なのです。YNS / PIXTA(ピクスタ)マンション内の駐車場使用料は管理組合にとって管理費に次ぐ収入の柱であり、空き区画が増えることはその分だけ一般会計の収支が悪化することにつながります。マンションの駐車場はおおむね稼働率7割~8割くらいを想定しています。郊外のマンションの場合まだまだ問題になっていないようですが、筆者が担当していた都心部のマンションでは5割以下になってしまったところが多く、一般会計が大幅赤字になって繰越金が年々減少し、対応に苦慮したものです。■ 2.若者のテレビ離れも相当なものがあるUshico / PIXTA(ピクスタ)車離れほど話題になっていないようですが、若者のテレビ離れも相当なものがあるようです。駅前の不動産会社に勤務していた時、地元のケーブルテレビと提携して「引っ越し時に無料でチャンネル調整をやります」というキャンペーンを展開したことがあります。kou / PIXTA(ピクスタ)お客様と日時を打ち合わせたうえで訪問してテレビのチャンネル調整をするというものですが、その際にしれっとケーブルテレビの新サービスを紹介するのが真の目的です。ケーブルテレビ会社から紹介料がもらえることもあって積極的に告知しましたが、1Kタイプを契約した人の約半数が「テレビを持っていないので別にいいです」と言ってきたのは驚きでした。■ 3.リーマンショックが半年後に筆者の歩合給を直撃オカキ / PIXTA(ピクスタ)最後に、世の中の動きが仕事に影響した事例といえば、やはりリーマンショックです。アメリカの歴史上最大規模の企業倒産であるリーマンブラザーズの経営破綻が発生したのは2008年9月15日でした。筆者はその頃賃貸マンションの仕事をしていましたが、9月という比較的ヒマな時期であったこともあり、クビになった社員が段ボールを抱えて次々とビルから出てくるニュース映像をそれこそ他人事のように見ていたものです。しかしこれをきっかけとして発生したリーマンショックと呼ばれる世界規模の金融危機が直ちに日本を直撃し、さらに半年後には筆者の歩合給を直撃しました。maruco / PIXTA(ピクスタ)賃貸マンションの営業といえば1~3月がとにかく忙しく、特に3月は賃料の高いファミリータイプのマンションが法人契約の借り上げ社宅としてガンガン動くため、1年で最も大切な月になります。生命の危険を感じるほど忙しくなるのが常ですが、その分だけ歩合給も相当な額になります。しかし景気が悪くなれば企業はまず福利厚生に関する支出を削減します。2009年の3月はファミリータイプの法人契約がほぼなくなり、そのためとても3月とは思えない売上になってしまいました。チンク / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか。マンション管理という仕事は景気変動の影響を受けにくいといわれていますが、電気料金の値上げや消費税増税が組合会計を直撃し、それが管理委託費の減額要求に結び付いたこともあります。生活と直結している仕事であるためいつも気が抜けませんでした。
2018年08月01日サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会がいよいよ開幕しました。本日は、日本が初戦の相手、コロンビアと熱戦を繰り広げています。多くの国民が関心を持つ世界的スポーツイベントであり、W杯はサッカーだけにとどまらず様々なジャンルに影響を及ぼします。今回はW杯が不動産業に対して及ぼした意外な影響を、筆者の実体験からご紹介します。■ W杯の日本戦が始まると、水道の使用量が大きく変化する!「ある意外なものの変化を通じて人々の行動がつかめる」という話があります。1952年から1954年までNHKで放送されたラジオドラマの「君の名は」は、主人公の真知子と春樹が再会しそうになると不都合が起き、「会えそうで会えない」という事態が何度も繰り返される物語から、空前の人気となりました。そのため「番組の放送時間になると銭湯の女湯から人が消えた」というエピソードが今でも伝わっています。ヨウコ / PIXTA(ピクスタ)サッカーW杯も同様の人気イベントであり、多くの人が同時にテレビを見たことにより、試合中に水道の使用量が大きく変化したことがテレビで取り上げられたことがあります。ヨウコ / PIXTA(ピクスタ)大勢の人が同時に水道を使用すると水圧が落ちて水の出方が悪くなり、それによってトラブルが起きる恐れもあり、東京都水道局では使用量や水圧の変化を24時間体制で監視し、水圧や給水量をたえず調整しています。さわだゆたか / PIXTA(ピクスタ)W杯の日本戦の際は試合開始とともに水道の使用量が急速に低下し、ハーフタイムに入ると一気に増加したそうです。恐らくみんな一斉にトイレにでも行ったのでしょう。後半開始とともに使用量は再び減少し、試合終了とともに急増しました。■ 日本戦の間に客に電話をするのはご法度!?筆者が不動産業界に転身したのは1997年の12月で、W杯フランス大会に日本が初出場を決めた直後になります。jannoon028 / PIXTA(ピクスタ)それ以降、現地案内のアポイントをとるために連日顧客に電話をかけまくっていましたが、初戦のアルゼンチン戦の当日は試合時間が近づくと、誰に電話しても烈火のごとく怒られました。「サッカーを観てるんだから、こんな時間に電話なんてしてくるな!」と少しでも食い下がれば関係を絶たれかねないくらいの勢いで、こうなってはもう仕事になりません。これは2戦目だったクロアチア戦の時も同様で、恐らくこの二日間で「W杯の日本戦の間は客に電話をしてはいけない」という意識が業界で共有されたと思います。2002年の日韓大会には、日本代表の試合中は電話をしていなくても特に何も言われませんでした。SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)当時の不動産業界において、18時から21時半くらいまでは客に電話をかける以外のことは許されませんでしたので、これは異例のことなのです(現在どうなのかはよくわかりません)。■ 2014年のブラジル大会では理事会が異常に短時間で終わった!前回のブラジル大会の際、筆者はマンション管理会社のフロントでしたが、この時は理事会が日本戦のキックオフと重なってしまったという事例がありました。CORA / PIXTA(ピクスタ)偶数月の第二日曜日の10時というのが定例となっている管理組合があり、4月の理事会においても「それでは次回もいつも通りということで」と機械的に日程を設定したのですが、その日が初戦のコートジボアール戦のキックオフと重なっていたのです。気付いたのが直前であったのでもはや変更できず、そのまま実施するしかありませんでした。誰も来ないんじゃないかと心配しましたがかろうじて過半数の出席があり、「ともかく手短にやりましょう」と議事を進めましたが、本来ならこじれる話もサクサク進み、通常では2時間かかる理事会が30分で終了しました。■ 今回のW杯では不動産の営業への影響は少なそうおこ茶 / PIXTA(ピクスタ)今後のロシアW杯の日本戦のキックオフは、2戦目のセネガル戦が6月25日(月)0時、3戦目のポーランド戦が6月28日(木)23時ということで、不動産の営業に対する影響はそれほどなさそうです。今回の日本代表は厳しい戦いが予想されていますが、前評判を見事にひっくり返して、8年前の再現となることを願っています。
2018年06月19日家を「借りる」と「買う」どちらが得か?という議論が、不動産業界には……いえ、世の中には昔からありますよね。この問題、筆者が不動産業界に入った19年前から(恐らくもっと以前からあったでしょう)盛んに議論されていましたが、いまだに結論が出たという話を聞きません。TATSU / PIXTA(ピクスタ)■ 「借りる」「買う」どちらが得か?問題のカラクリkou / PIXTA(ピクスタ)この問題のベースとなっているのは「“家賃”を払い続けるのと“住宅ローン“を払うのとどちらが得か?」ということで、大抵の場合、それぞれ発生する費用の合計をシミュレーションして比較しています。まだ紙の媒体が不動産情報の中心だった時代の話です。同じ出版社で賃貸向けと売買向け、2つの情報誌を出していましたが……、KAORU / PIXTA(ピクスタ)賃貸の情報誌では「借りる方が少しだけ得」、一方、売買の情報誌では「買った方が少しだけ得」というまったく異なる結論を出していました。一生の間に必要となる住宅関連の支出の合計は簡単にシミュレーションできるようなものではなく、前提条件を少し変えればまったく違う結論となります。つまり、立場が変われば結論も変わるのです。■ 設備やインテリアのグレードに大きな差はある?freeangle / PIXTA(ピクスタ)入居者が頻繁に入れ替わることを前提とした賃貸住宅に対し、分譲住宅は入居者が永住することが前提となります。そのため設備や内装等についていえば、分譲の方が長持ちする仕様となっていることが多かったように思います。特にクロスについては、ランクが全然違いました。賃貸の場合、入れ替わる度に何らかのリフォーム工事が入りますし、何かあれば退去した時交換すればいい、という意識がどこかにあるのかもしれません。■ 分譲マンションで発生する費用って?hug++ / PIXTA(ピクスタ)分譲マンションの場合、毎月発生する住宅ローン返済、管理費、修繕積立金等の他、故障等による設備の修理は当然のことながら全額自己負担です。分譲マンションには専有部と共有部があり、雑把に分けると玄関の内側で起こったことについては自己負担です。厄介なのは配管やインターホンといった、専有部と共有部両方にまたがる部分のトラブルで、原因がどちらにあるかによって負担額も変わってきます。専有部と共有部の細かい区分けについては管理規約に必ず記載がありますので、購入前にチェックしておくとよいでしょう。■ 賃貸住宅は、実は家主にとって厳しい時代にABC / PIXTA(ピクスタ)賃貸住宅の場合、賃料と共益費を毎月払いますが、消耗品関係を除き設備の故障については原則として家主負担となっています。また退去時における原状回復に際しても、「国土交通省ガイドライン」や「東京都住宅紛争防止条例(東京ルール)」により、自然損耗や経年劣化については借主は負担しなくてよいとされています。そのため、退去に伴うリフォーム工事についてもその大半を負担しなくてはならないなど、家主にとって厳しい時代となってきたように感じます。■ 賃貸住宅はまだまだ高齢者に厳しいのが現実foly / PIXTA(ピクスタ)賃貸住宅を語る上で、どうしても避けて通れない問題があります。賃貸物件の営業をやっていた時代に痛感しましたが、「高齢者に非常に厳しい」というのが日本の不動産業界の現状です。高齢者の場合、現役世代と違って収入が限られるということと、室内で万一のことが起きる可能性がある、ということが原因として挙げられます。高齢者を受け入れる物件はかなり限れられますし、仮にOKという場合でも内容のいい親族が保証人となり、かつ近くに住んでいなければならない、などといった厳しい条件が付きます。freeangle / PIXTA(ピクスタ)そして既にリタイアされた方の場合、年金だけが収入とみなされます(預金残高は考慮されないことが多い)。年金の金額だけで借りられるレベルの部屋というものは、高齢者が暮らしやすいようなものとは決して言えないでしょう。家は「買う」「借りる」どちらが得か、という問題は、おそらく今後も永久に決着はつかないでしょう。しかし「どちらがいいか」ともし聞かれたら、「リタイアするまでに、どこかで買っておいた方がいい」というのが筆者の結論です。(written by 鶴間正二郎)
2018年04月13日共有持分・共有名義とは?共有持分とは、複数の人が1つの不動産を共同で所有している時に、それぞれの人がその不動産について持っている所有権の割合のことをいいます。たとえば夫婦で1つの不動産を2分の1ずつ共有している場合は、夫と妻それぞれが持っている所有権の割合(2分の1ずつ)のことをさします。そしてこの割合を登記所に登記しなければなりません(持分登記)。登記とは、第三者に「これは私の所有権だ!」と主張することです。さて共有持分といったワードを聞くと、セットのように「共有名義」といった言葉を耳にすると思います。共有名義とは、その不動産の所有権を持っている人のことをいいます。たとえば3000万円の住宅をあなた(妻)と旦那さん(夫)で購入するとしましょう(共有名義はあなたと旦那さんになります)。出資額で持分割合が決まりますので、2,000万円分を旦那さんが、残りの1,000万円をあなたが出したとしましょう。するとこの住宅の持分割合は、旦那さん:3分の2あなた:3分の1となります。共有持分のメリットとデメリットは?「これから結婚して新居で夫婦生活を始めるんだ」といったご夫婦は、上記のように不動産を共有の持分とすることもできるわけですね。または年収や貯金を考慮すると2人でお金を出す方が良いかもしれない、といった人も少なくはありません。しかし「共有名義・持分にするとなんだか面倒なことにならないかな?」と懸念を抱いてしまうもの。まずはデメリットについてみてみましょう。デメリット夫(共有者)の承諾がないと、売却できない!ご夫婦2人の持分なので、当然にご自身の判断だけでは不動産を売却することはできません。旦那さんの承諾がないと売却できないわけですが、ここで夫婦喧嘩が起きることも・・・・。離婚した場合、売却を視野に考えたくはありませんが、夫婦喧嘩の火が広がって離婚することとなった場合、売却の可能性が高まります。住宅購入の資金に余裕がないから住宅ローンを組んだり、共有名義での購入を検討したはずです。つまり、片方がいなくなればその分を補填しなければならず、それは現実的に難しいので結果的に売却せざるをえなくなるわけです。夫(共有者)が他界した場合、相続の対象となる不動産は相続の対象となります。多くの場合、配偶者であるあなたかもしくは子どもが相続の対象となります。しかしほかに相続人がいたりすれば、遺産分割の対象となり、話は少し面倒になります。贈与税の対象となるもし旦那さんの方が先にお仕事を辞めた場合、住宅ローンが残っていればその分はあなたが支払うことになります。この場合名義人はあなたのみとなるので、旦那さんからあなたに不動産が贈与されたこととなり、贈与税が課せられます。逆もしかりです。メリットデメリットでは少々暗い話を考慮する必要がありましたが、メリットは明るい話です。なんと税制において2つもトクするのです!住宅ローン控除を二重に受けられる住宅ローン控除は、購入価格の一定割合を所得税から税額控除できる制度で、年末の住宅ローン残高の1%が税控除できます。住宅ローン控除は夫婦それぞれが、自身の住宅ローンの残高に対して利用できます。しかし夫(共有者)が病気などで仕事を辞めざるをえなくて収入が無くなるようなことや将来的にあなたが出産などで仕事を辞めるなど、ライフスタイルの変化も考えられます。この場合、住宅ローン控除は使えなくなる可能性があるので要検討です。売却時の特別控除を二重に受けられる不動産を売却するときには、なんと3,000万円が控除されます(居住用財産の買換えの特例)。通常だと3,000万円しか控除できませんが、不動産を夫婦2人の名義で購入した場合は、これが6,000万円となります。不動産を売却した時に利益が出れば、税金がかかります。この際にかかる税金6,000万円分のは支払わなくて済むといった制度です。まとめいかがでしたか。共有持分にする場合、片方が病気になって収入減がなくなるなどといったことを考慮しなければなりません。しかし将来(さき)のことは分かりません。デメリットなどを考慮して不動産を選ぶよりも、購入資金や住宅ローンの支払いに少しでも余裕が持てる物件を選ぶことが肝心だといえるでしょう。
2018年03月04日不動産管理委託契約とは不動産管理委託契約とは、不動産オーナー(管理組合や個人投資家など)が管理会社(マンション管理会社など)にその物件の管理をお願いする契約のことをいいます。主にマンション管理を委託する契約のことです。マンション管理会社がマンション管理法に定める「マンション管理業者」である場合は、以下の業務を行う義務があります。マンション管理会社は、管理委託契約の締結前に一定の重要事項を説明しなければならない(マンション管理適正化法第72条)。マンション管理会社は、管理委託契約を締結するときに、一定の事項を記載した書面(通常は管理委託契約書)を遅滞なく交付しなければならない(マンション管理適正化法第73条)。不動産オーナーである大家さんは、不動産は所有していますがその資産を運用する知識に関してはうとい場合があります。自分で運用するよりも、その道のプロである管理会社に運用をお願いした方が運営はうまくいくとみて、管理会社に委託をお願いするわけですね。運用とは具体的に何をするのでしょうか。たとえば共用部分などの管理・修繕マンションやアパートといった集合住宅は、ほかの人も住んでいます。階段や廊下などといった共用部分は居住者全員が利用するので、管理が大変です。また不動産も人と同じように年をとります。古くなってきたら外観などを補修しなければなりません。これには膨大なお金が掛かるので、あらかじめ計画を立てる必要があります。入居者の募集また一番の問題は、高い収益を得るにも空室率をなるべく低くしなければなりません。しかし大家さんは不動産に限っては素人です。空室率が低くなるよう、なんならゼロになるよう運営するためにもプロの手ほどきが必要です。このように、マンション1つを運営するだけでも大変な労力と戦略が必要となります。それを一手に担うのが管理会社で、そしてその契約である管理委託契約には2種類があります。2種類の管理委託契約一般管理契約一般管理契約とは、契約の対象となる不動産の大家さんが行うはずの管理業務を管理会社が「代行」する契約のことをいいます。具体的な業務内容として、入居の際の「賃貸契約」や「入金管理」など入居者との事務手続きや、マンションの共用部分であるエレベーターなどの整備・保守、清掃作業などが挙げられます。併せて、一般管理契約を選択した場合のメリットとデメリットもみてみましょう。メリット:高い収益性が見込める賃貸契約の内容(賃料、礼金・敷金など)や条件を、大家さんが取り決めることができるため、比較的高い収益が見込めます。デメリット:空室率を考慮した入居募集と広告にリスクがあります上記メリットで先述したように、一般管理委託契約は大家さんと入居希望者が直接契約を結ぶ契約です。メリットでは高い収益性があると挙げましたが、それはあくまでも「入居希望者が契約書にハンコを押せば」です。入居希望者が入居するまでにその広告をうつ必要があり、管理会社によってはこの費用が高額なところもあります。広告をうっても入居者が決まらず、それによって空室率が高くなれば、当然家賃も入りません。サブリース契約(一括借り上げ管理契約)サブリース契約とは、不動産管理会社が大家さんから物件を借り上げて、その管理会社が入居者と賃貸契約を直接結ぶ契約形式のことをいいます。一般管理委託契約とはどう違うのでしょうか。メリットとデメリットについてみてみましょう。メリット:安定して家賃収入が得られる「一般管理契約」との最大の違いは、家賃滞納や空き部屋が生じた場合でも「家賃収入」の保証があることです。サブリース契約は、「保証賃料(管理会社が査定した相場賃料の90~95%の率をかけた料金が一般的)」が管理会社から大家さんにオーナーに払われることになります。また入居者との契約も、大家さんと入居希望者ではなく、管理会社と入居希望者との直接契約を行なうことになります。そのため、大家さんと管理会社による確認の手間や時間を省くことができます。デメリット:高い収益が見込めない一般管理委託契約と比べると高い収益性が見込めません。家賃収入が最大化しないのがデメリットです。また管理会社との契約や広告の確認の手間や時間が省けることをメリットとして挙げましたが、裏を返せば入居者を選定することができないことを意味します。特に気にしないという大家さんもいますが、モラルの低い入居希望者が入居する確率も高まるといえます。しかしサブリース契約を受ける管理会社も、トラブルは避けたいため、入居審査は厳しめに行うところも多いのでそんなに気にする必要もないと思われます。まとめいかがでしたか。今回は管理委託契約の種類についてみてきました。一見、安定的に収益が入るサブリース契約の方が良いように思われます。しかし、サブリース契約には落とし穴も多く、あまり良い印象を持たれていないのが実状です。サブリース契約の注意点については、また別記事でご紹介しますのでお見逃しなく!
2018年03月03日まずは確認したい「不動産特定共同事業法」とは不動産特定共同事業法(以下、不特法)とは、投資家から資金を募って不動産を小口化したうえで、それを元に売買・賃貸し、その収益を投資額に応じて配当として投資家に分配する不動産事業のことをいいます。不特法は、事業主の適正な運営や投資家の利益の保護を図るために、この事業に対して「許可制」を設けているのが特徴的といえます。また不動産特定共同事業には主に2種類あります。出資者が所有権を持つことのできる「任意組合型」出資者は配当を受ける権利を持つが、所有権自体は事業者が持つ「匿名組合型」いずれにせよ、投資家が利益を得るには当然ながら事業主が重要となってきます。この事業主について説明していきます。法改正前の不動産特定共同事業を行うには?法改正前の不動産特定共同事業を行うには、主務大臣の許可を受ける必要があり、以下3つの条件が必要でした。宅建業の免許事務所ごとの業務管理者配置(自ら不動産特定共同事業の許可を得るために)資本金1億円以上が必要宅建業(大家業などの自ら賃貸業以外のこと)の免許が無いとなると、不動産会社でなければ事業主になることはできません。また仮に宅建免許を取得できたとしても、資本金1億円以上が必要ですので、多くの不動産会社はこれを行うことができずにいました。つまり分配利益を得る投資家の数は、そう多くはなかったといえます。これらの制度問題を解消するべく、本年度に法改正が行われました。不特法改正の背景と期待される効果とは現在、空き家の増加問題が社会的な問題として顕著となっています。また老築化の一途を辿る不動産を再生化し、市場に売り戻すことなどが喫緊の課題として認知されています。さらに当事業を行うには資本金1億円以上が必要であり、これでは中小企業である不動産会社が参入できず、結果、地方では良質な不動産ストックの形成が比較的難しいという問題がありました。これらの社会的背景を解消するために、不特法の改正が行われました。不特法を改正することで期待される効果は、以下のとおりです。空き家(空き店舗)の再生に伴う投資傾向の増加良質な不動産ストックの形成地方などの中小不動産企業事業参入不特法改正のポイントから、具体的にどのような効果(投資家にとってのメリット)が期待できるのかみてみましょう。新設:小規模不特定共同事業とは先述したように、従来の不動産特定共同事業は資本金1億円以上のある企業でないと当事業を行うことはできず、この条件によって、地方などの中小企業が参入しづらいといった問題がありました。これを解消すべく、今回の改正で小規模不特定事業を新設しました。業者が応募に必要となる要件を確認してみましょう。宅建業法の免許を受けており、資本金が1000万円以上で、かつ負債額が資産額の10%以下であり、主務大臣等による登録を受けた者(許可制から登録制に緩和)であること、などこれにより、不動産小口化商品で出資者を募ることのできる不動産会社が増えることが期待できます。つまりこれは、投資家目線でいえば「投資先がかなり増えた」「投資参入壁が低くなった」といえますまとめいかがでしたか。今までは資本金額や許可制などの厳しい条件があり、宅建業者は当事業に参入しにくく、また投資家もその影響で参戦しづらい状況でした。しかし今回の改正で、宅建業者の当事業への参入壁が低くなり、地方の業者でも参入しやすくなりました。伴って投資家が参入できる枠もかなり増えることが期待できます。
2018年01月28日指定流通機構(レインズ)とは指定流通機構(通称、レインズ)とは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構のことをいいます。不動産業者は、この指定流通機構に登録されたすべての物件を閲覧することができ、これにより買主に最適な物件を早急に見つけることが可能です。このような不動産流通の円滑化を目的に、全国に4法人(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)の不動産流通機構が設立されています。指定流通機構の役割とは指定流通機構は不動産物件の情報を一元化しているコンピュータネットワークシステムですが、その役割は何でしょうか。不動産流通機構の役割として、以下の3つが挙げられます。不動産情報の交換不動産業者が売主の依頼により媒介契約を受けた場合、指定流通機構に物件情報などを登録する必要があります(一般媒介契約の場合は依頼者の任意)。上述したように指定流通機構は、登録された物件情報すべてを不動産業者が閲覧できるようにしています。こうすることで、迅速に買主を見つけることが可能となります。指定流通機構は、不動産流通の円滑化が促進される働きを担っているといえるでしょう。成約情報の集約登録した物件の売買契約が成立した場合、不動産業者は以下の項目を指定流通機構に通知する必要があります。『登録番号、売買契約の年月日、取引価格』不動産業者がいつまでも成約済みの物件情報を掲載していては紛らわしいので、成約したらすぐにその旨を指定流通機構に通知する義務があるのですね。ところで、物件価格はどのようにして決められているかご存知ですか。実は物件の販売価格などは、不動産業者が対象物件の近隣の成約価格(実際に販売された価格)を基にして決めています。指定流通機構は、この成約された物件情報を集約することで、不動産業者が次の取引を適切に行えるよう、その環境を提供しているのです。取引情報の提供近年インターネットが普及したことから、私たち消費者は不動産取引情報をスマートフォンなどで収集するようになりました。私たちは不動産に関しては素人なので、相場関係が分かりません。これでは不動産取引時に情報弱者となるといった懸念から、指定流通機構は不動産取引情報提供サイト「RMI(レインズ・マーケット・インフォメーション)」を公開しています。このサイトでは、指定流通機構が保有している成約物件の情報を、私たち消費者でも閲覧できるようになっています。こうすることで、私たち自身の目で取引の相場価格を把握することができ、安心して取引を行うことができます。まとめ不動産業界には、取引流通の円滑化や購入者の利益保護を図るべく、物件情報などを指定流通機構に一元化していることが分かりましたね。不動産業者は不動産取引のプロではありますが、常に正確な情報を提供しているとはいえません(しないと犯罪ですが、私たち素人ではわからない情報もあり隠そうとします)。不動産取引を行う際には、ぜひご自身の目で指定流通機構のRMIで取引相場を確認するようにしてみましょう。
2018年01月23日礼金・敷金とは賃貸住宅の契約を行うとき、不動産広告などに賃料とはまた別に「敷金」「礼金」といった項目を目にすると思います。敷金とは「敷金」とは、部屋を借りるための保証金といった性質があり、そのため退去時には返金されるのが特徴的です。「敷金」には2つの目的があります。家賃滞納分の担保大家さんは、借主が家賃を滞納したら困ります。仮に家賃を滞納したとしても、一時的に敷金から補填することで収支計画の帳尻を合わせます。原状回復などの修繕費用また大家さんは、借主が不注意で建具や設備を破損した場合にその修繕費用として、敷金から差し引くようにしています。仮にそのような事態が起きなかったとしても、退去時のクリーニング代として引かれます(多くの場合、タイルが傷ついていたりするので差し引かれる)。敷金が返還されないといったトラブルが相次ぎ、業界がこの改善に取り組んでいます。礼金とは「敷金」の特徴や目的は分かりました。では、不動産広告でセットのように表記される「礼金」とはどのようなものなのでしょうか。「礼金」とは、部屋を貸してくれる大家さんに対しての『お礼を示すお金』のことをいいます。ここで疑問に思われた方も多いかと思います。「なぜ客側であるコチラがお礼を渡さないといけないの?」と・・・・。ごもっともです。私もそう思いました。実は、これには古い慣習が関係していたのです。礼金の慣習とは礼金の慣習が始まったのは、高度成長期頃のことです。上京する若者が身寄りの無い都会で生活するにあたって、困った際に頼りになったのが、やはり下宿やアパートの大家さんだったのです。そこで親御さんが「息子(娘)を頼みます」といった意味で、大家さんに対して前もってのお礼として渡したのが始まりであるといわれています。またこんな話もあります。戦後はとにかく住宅不足で、「貴重な生活処を提供してくれたお礼」といった意味で、借主が大家にお金を包んだのが由来なんて説もあります。現在になっては借り手市場ではありますが、当時は供給側が少なかった影響があってか、次第に地域でこの慣習が定着したということですね。礼金ありの物件が多い理由礼金は大家さんへの謝礼金なので、大家さんが礼金の「あり・なし」を決めます。しかし最近では大家さんと借主をつなぐ不動産仲介会社がこの礼金を手数料として扱っているケースも増えているようです。仕組みはこうです。礼金は「取引物件の家賃1か月分までしかとれない」と定められています(宅地建物取引業法、以下、宅建業法)。そしてこれは、仲介会社が何社いても「1か月分までが上限」です。つまり、自分のところ以外にも他に大家さんと仲介する会社がいれば、取り分が減るということです。実際に仲介会社は、賃貸契約1つ取るだけでもかなりの労力と時間をかけており、割に合わないのです。(実際に私も現場を体験したことがあるので分かるのですが、割に合いません・・・・。)そこで仲介会社はこう考えたのです。「大家さん、広告を出せば早くに入居者が決まりますよ!しかし広告費を出すのもなんでしょうから、礼金から出されてはいかがでしょう?」上手い話ですね。広告費は上記同様(宅建業法上)、依頼主の依頼によってその報酬を受け取ってはならないとされています。しかも場合によっては、広告費より家賃1か月分の礼金の方がウマイかもしれません。こうすることで、仲介会社が別にいたとしても、契約を取れば家賃1か月分は確実に入ってくる仕組みが成り立ちます。下手したら大家さんですら「礼金は大家さんの取り分」であることを知らず、「礼金は仲介会社へのお礼金」と勘違いされている方も・・・・しかも現在では不動産広告の料金が上がっているので、仲介会社はなるべく広告にお金をかけたくないのです。そのためか「礼金あり」としている業者が、平成26年度では43.0%、平成27年度では47.5%とその数約半数となっています(国土交通省(平成27年度)「住宅市場動向調査報告書」より)。礼金は交渉できる?ここまで読まれた方は、もしかするとこの制度にうんざりしているのではないでしょうか。ともすれば、「礼金あり」の物件を「礼金なし」に交渉したいという方もいらっしゃるはず。礼金の交渉は可能で、大家さんにしましょう。しかし大家さんと直接話せることは少ないので、不動産会社に間を取り持ってもらいましょう。そこで大家さんに、上記で挙げた「礼金の仕組み」について知っているか確認を取ることをお勧めします。礼金を不動産会社に渡すぐらいなら、礼金をもらわなくても信用できる借主なら安心だ」と思う大家さんもいるはずです。太っ腹な大家さんもいる中、最近では敷金・礼金がゼロの『ゼロゼロ物件』も存在しますね。これについてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
2018年01月13日身近な法律家「司法書士」とは司法書士とは、一般的に不動産売買時や会社設立時に必要となる『不動産登記』を行うスペシャリストといった認識があります。司法書士の主要業務には、大きく分けて以下の5つが挙げられます。登記業務(不動産、会社設立など)成年後見に関する業務相続・遺言に関する業務債務整理に関する業務裁判業務私たち一般消費者が司法書士と関わる機会は少ないのですが、実は人生で重要な場面でお世話になっているのです。たとえば「1.登記業務」なんかは、その最たる例といえるでしょう。司法書士が私たちの生活をどのようにして支えてくれているのか、具体的にみていきましょう。司法書士の役割とは登記とは上記1で挙げた登記業務(不動産)は、私たちの生活を支えてくれている良い例といえるでしょう。不動産登記とは、土地や建物の「物理的な状況」や、その不動産が誰から誰に移ったかなどといった「権利の変更」を、法務局の登記簿に記録し、国民に広く知らせる制度のことをいいます。司法書士は上記でいうところの「権利の変更」に関する登記申請を、私たちの変わりに行ってくれます。なぜ代わりに申請してくれるのでしょうか。それは「登記の必要性」に答えがあります。登記の必要性とはそもそも登記とはなんぞや!?って感じですよね。登記とは、第三者に対して「これは私の権利だ!」と主張することのできる権利(対抗力)のことをいいます。たとえばあなたが、不動産をAさんから購入するとしましょう。しかしAさんは、あなたの他の人にもその不動産を売却したとしましょう(二重売買といい、実際にこのようなケースは多くあります)。これでは所有者が2人になってしまい、争いが起きてしまいますよね。この場合あなたならどのようにして権利を主張しますか?向こうも当然、自分が先だ!と主張してきます。こうなっては争いになってしまいますよね。法律に無知な私たちはどうすればよいのでしょうか。争いを避けながらも「これは私が先だ!」と主張するためにも、登記を行う必要があります。上記のように、民法など人との争いには法律が絡んできます。ご存知のように法律は複雑なため、私たちのような素人では到底太刀打ちできません。しかも一生に一度しか買い物をしない不動産なんて、なおさらですよね。そこで法律のプロである司法書士に、自身の財産を守ってもらうように登記申請を依頼するのですね。直接依頼しなくても良いから気楽!しかも、司法書士への依頼は“不動産屋さん”がやってくれます。不動産購入の費用の中に「司法書士への依頼報酬(約5万円ほど)」があるのですが、自分の財産を守ってくれるための費用と思えば、安いものですよね。まとめ司法書士は、私たちの財産を他人から守ってくれる身近な法律家です。直接関わることは少ないですが、いざという時には最も頼りになる存在です。これからマイホームを購入される方は、物件の引き渡し時に司法書士の先生と立ち会うこととなるでしょう。有事の際にはぜひ、その先生に頼ってみてはいかがでしょうか。しかし「なんだか敷居が高いな・・・・」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、不動産屋さんに相談してみるのもひとつの手です。不動産や金融に関する相談はもちろん、案件によっては司法書士の先生に繋いでくれるので、気軽に相談してみましょう。
2017年12月21日建築基準法とは建物を建てる際の敷地や構造、設備及び用途に関する守るべき最低基準を定めている法律のことをいいます。1950年に制定された建築基準法は、国民の生命、健康および財産を保護すべく、都市計画法、宅地造成等規正法、消防法などさまざまな法律の規制を受けます。このことから、建築基準法は建物を建築するうえで最も基本となる法律とされています。そのため、着工前の「建築確認」や工事中の「中間検査」、工事完成後の「完了検査」、違法建築物の「是正勧告」などについての規定も定められています。また建築基準法は以下の2種類に大別することができます。建物自体の安全性や構造・防災・衛生などについて定めた「単体規定」都市の防災や環境向上などの観点から定めた「集団規定」1の単体規定では、具体的には居室の採光(床面積の7分の1以上)や換気(20分の1以上の開口部を設ける)、トイレ、電気設備など、個々の建物を建築する際の基準がまとめられており、全国一律に規定されます。一方、2の集団規定では、敷地と道路に関する基準(接道義務など)、建物の用途や形態に関する基準(建ぺい率や容積率、高さ制限、各種斜線制限など)、都市再生特別地区等、防火地域、景観地区などが集団規定に当たります。また集団規定は、都市計画区域及び準都市計画区域に限ってその規定が適用されます。建築前に確認したい代表的な法令とは建物の建築には、実に多くの法令が絡んでいます。その代表例が、上記で述べた「建築基準法」といえます。建物建築時の基準となるこの法律ですが、そもそもほかの法令も理解していないと、これを理解することは難しいといえるでしょう。数ある法令の中でも、建築基準法と密接に絡んでいる都市計画法について確認してみましょう。都市計画法都市計画法とは、都市の将来あるべき姿(人口、土地の利用方法、主要施設等)を想定する都市計画に基づき、必要な事項を定めている法律のことをいいます。都市計画法では、計画的に街づくりを行う「都市計画区域」と、都市計画区域外の区域で放置すれば、将来、都市としての整備や開発、保全に支障が生じるおそれのある区域であるとして指定される「準都市計画区域」があります。また都市計画区域内では、積極的に市街化する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」とに線引きします。この市街化区域内では、異なる地域が混在しないよう、その地域ごとの用途や使用目的に合った建築物が建つよう、地域ごとに細かく分けられます(例:住宅地と工業地を分ける、など)。これを「用途規制」といいます。建物を建てるには、建築基準法に適しているかどうかを確認する前に、まず都市計画法に適しているかどうかを確認しなければならないといえるでしょう。
2017年11月30日女優の北川景子が主演を務める、13日スタートの日本テレビ系ドラマ『家売るオンナ』(毎週水曜22:00~23:00 ※初回は10分拡大)の舞台である不動産会社が手がける物件が4日、東京・新宿駅前に登場した。このドラマは、北川演じる不動産のスーパー営業ウーマン・三軒家万智が、客とその家族が抱える問題に土足で踏み込んで解決することで、必ず家を買わせてしまうという痛快ストーリー。「私に売れない家はありません!」というセリフとともに、家を売りまくっていく。今回登場したのは、この万智が勤める中堅不動産会社・テーコー不動産が手がける物件で、4日に「建設中」として出現し、きょう5日に売り物件としての全ぼうの姿が明らかになった。新宿アルタ向かいという都会のど真ん中に、場違いな一軒家が登場したことで、道行く人たちの注目を集めている。7月7日の夜まで同所に設置予定。この物件をずっと見ていると、なにか発見があるという。
2016年07月05日『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』(齋藤智明著、宝島社)とはユニークなタイトルです。花沢不動産といえば、アニメ『サザエさん』にも頻繁に登場する磯野家のご近所。娘の花子はカツオの小学校のクラスメートで、「アハハ!」という豪快な笑い声と「磯野くーーん!」と呼ぶダミ声が印象的な女の子。将来はカツオと結婚して花沢不動産を継ぐという夢を持っています。花沢不動産もたびたび登場しますが、たしかにいつも店内にお客はゼロ。それなのに、社長で花子の父・金太郎はカツオにお寿司やうなぎをご馳走するなど、むしろ羽振りがよさそう。こうした“お客がいないのに潰れない”不動産屋、身近でもけっこう目にしますよね。そんな不動産屋あるあるについて、自らも不動産会社で働く著者が著したのが本書。そのなかから、タイトルにもなっている“客のいない花沢不動産の羽振りがいい不思議”の項に注目してみましょう。■花沢不動産のメイン業務は「賃貸管理」著者によれば、不動産会社にはデベロッパーとも呼ばれる「開発型」や不動産の有効活用に関する提案を行う「コンサル型」など、12もの業態があるそう。各社、このうちいくつかの業務を行い利益をあげるわけですが、花沢不動産の場合、「賃貸仲介型」と、大家さんから賃貸物件をあずかり管理する「賃貸管理型」の業務をメインに行っているようだ、と著者。「賃貸仲介型」は、文字通り賃貸物件を探している人々に物件を仲介し、仲介手数料を得る業態。窓にはびっしりと広告が貼られ、わたしたちが部屋を借りようと思ったときに訪ねる場所です。しかし、花沢不動産には、そんなお客さんがいたことはありませんよね。そこで重要になってくるのが「賃貸管理型」業務です。■賃貸管理型は縁の下の力持ち的な存在!「賃貸管理型」は、大家さんから直接物件の管理を任され、庭や建物の共用部分を定期的に掃除したり、家賃を集めたり、事故やクレームの対応をしたりと日々の建物の管理をします。部屋を借りようと思って名前の通った不動産会社の店舗を訪ねると、営業マンが適当な物件をみつくろい、その場で電話をかけて「○○アパートの××号室は案内可能ですか?」と確認しますが、その相手こそ、この賃貸管理型不動産屋。花沢不動産のような賃貸管理型の不動産屋は、そうした内見に備え、普段から空き物件を訪ねて換気をしたり、室内のほこりをきれいに掃除したりとメンテナンスを怠りません。隠れた苦労が多い賃貸管理型の不動産会社は、まさに縁の下の力持ちといえそうです。■花沢不動産のお客さんは地域の大家さん借り手が部屋を気に入れば契約成立。ここからやっと、賃貸管理型不動産会社のもうけが発生します。まず契約時。借り手は物件を仲介した不動産会社に仲介手数料を支払いますが、物件管理型の不動産会社は大家さんから仲介手数料を受け取ります。さらに、物件を管理すると定期的な収入が見込めます。まず、家賃の集金代行手数料。相場は家賃の3~5%で、かりに5%とすると家賃10万円×0.05=5,000円。部屋数100室、家賃平均10万円の物件を管理すれば、これだけで毎月50万円の収入になります。このほか、入居者から鍵交換手数料、保証会社をつければ保証委託契約の手数料、火災保険加入手数料などなど。2年ごとに訪れる賃貸契約の更新時手数料は、貸し手と借り手双方からダブルで受け取っているのだそう。花沢不動産の主なお客さんは、地域の大家さんたちだったのです。店内にお客がいなくても経営が安定しているのは、大家さんたちをしっかりとつなぎ止めているからなんですね。*このほか本書では、なかなか知ることのできない不動産業界の裏事情がたっぷり紹介されています。興味深いのは、良心的な不動産会社を見分ける方法。たとえば、賃貸物件を借りたときに支払う「賃貸仲介手数料」、“仲介手数料1ヶ月分”という表示を見かけますが、じつは規定額は家賃の0.5ヶ月分で、利用者の承諾があれば1ヶ月分まで受け取れるというルールなのだといいます。つまり、知らないうちに必要以上の金額を支払っている可能性があるのです。逆に“仲介手数料0円”の場合も、礼金を2ヶ月分としてその半額を大家さんから受け取るケースがあるとか。いずれにしても、良心的な対応を期待できる会社ではありません。雑学としてだけでなく、実用的な知識も満載。物件を借りたり買ったりする前にも読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※齋藤智明(2016)『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』宝島社
2016年04月03日●サービス誕生の背景にある、不動産市場の課題テクノロジーの力によって不動産業界に革新的な変化をもたらそうという「リアルエステート・テック(不動産テック)」という言葉が、金融業界で盛り上がる「フィンテック(金融テック)」と並んで昨年から話題になるようになってきた。不動産テックとは、これまで不動産会社が管理してきた中古物件の様々な情報をオープン化し、インターネットを通じて一般消費者が自身の物件価値の把握や売買のために有効活用することができるようにしようという動きで、今回取材したヤフーとソニー不動産が共同で運営する「おうちダイレクト」をはじめ、不動産情報サイトのHOME’Sが開始した「PRICE MAP」、求人サービスで知られるリブセンスが開始した「イエシル」など、既に様々なサービスが生まれている。こうした不動産テックは従来の不動産取引にあるどのような課題を解決し、何を目指しているのか。不動産の個人売買プラットフォーム「おうちダイレクト」をソニー不動産と共同で運営する、ヤフー 不動産本部で「Yahoo!不動産」のサービスマネージャーを務める山口隆志氏に話を伺った。2015年11月にサービスインした「おうちダイレクト」は、マンション所有者が自分自身で物件価格を決定して売り出し、購入検討者と直接対話しながら物件を売却することができるサービスだ。売買交渉のサポートや重要事項説明、売買契約や引き渡し時の手続きといった法令で定められている不動産取引業務は、ソニー不動産がサポートするという。そして、マンション所有者が自分の物件価値を把握するために、過去の売買履歴を基にしたビッグデータと、ソニーとソニー不動産が共同開発した機械学習ソリューションによって、物件の資産価値を独自のアルゴリズムで推定する「不動産価格推定エンジン」を提供している。実際に売り出すことができるマンションは現在のところ東京都23区内に限られているが、不動産価格推定エンジンのデータベースの量は既に1都3県の約5万棟のマンションに及ぶ。山口氏は、このサービスを生み出した背景について、現在の不動産市場が抱える課題を挙げている。それは、“一度購入した新築物件に一生住み続ける”というライフスタイルそのものに対する疑問だ。「本来であれば、子どもの成長などライフスタイルの変化に合わせて住み替えていくという選択肢があってもいいはず。しかし、日本では自分の所有する不動産をどのように活用していくのかという点に対するリテラシーが少ないのが現状だ」と山口氏は説明する。実際に、日本の住宅流通戸数に占める中古物件の割合は、約14.7%。これは、米国と比べると8分の1程度と非常に少ない数字だ。「日本では人口が減少し、空き家が増加しているのにも関わらず、その住戸活用が米国に比べて進んでいない。都市部における新築マンション建設が土地の枯渇などを背景に限界に達しようとしている中で、このままの状況では不動産市場そのものが減速してしまうという懸念がある」(山口氏)ではなぜ、私たちは購入したマンションを手放すことができないのか。最も大きなネックは、住み替えに掛かる膨大なコストだ。例えば、売却するために必要な手数料や税金などは、100万円以上掛かる場合があり、それに住宅ローンの残債、新居への引越し費用を加えると、コストは三重構造になる。加えて、不動産会社の査定に基づく肝心の物件売却価格は、提示されても情報不足のためにその良し悪しを判断することができず、結果的にこうしたコストを吸収できない場合が多い。山口氏によると、「おうちダイレクト」はこうした不動産売却時にマンション所有者が感じる不透明感や、コストファットになる構造をテクノロジーによって解決しようと生み出されたのだという。「もちろん、普通の人は複雑な手続きを代行してくれる不動産会社へ売却することが当たり前だろう。しかし、私たちは従来の方法での売却に(コスト負担などの点で)抵抗があった消費者に新しい選択肢を提供することによって、不動産売買のマーケット全体が拡大し、中古物件の市場そのものが活性化するのではないかと考えている。売買プロセスを見直し、ユーザー自身がDIY的に売却することができる環境を作ることで、売却する人にとっては住み替えるコストの最適化が期待できる。そうすれば、“住み替えたいけれど、動けない”という人々が動き出すのではないか」(山口氏)しかし、山口氏はこの個人が不動産物件を売却するというスタイルは、従来の不動産業界のエコシステムを駆逐する存在にはならないとしている。あくまでも、これまでどおり“住み続けるか”、“高いコストを掛けて住み替えるか”という2択の間で沈黙していた潜在顧客を呼び覚ますための、有力な“第3の選択肢”を生み出すことを目的としているという。「このサービスが、従来の不動産売買に取って代わりメジャーな存在になるとは考えていない。しかし、大きな選択肢のひとつになるのではないかと考えている」(山口氏)●反響は大きいものの、物件数の増加には啓蒙・啓発が課題このような考えを背景にスタートした「おうちダイレクト」だが、その滑り出しはスロースタートだ。サービス開始時は売り出せる物件の対象地域が都内6区に限られていたという事情があるものの、実際に公開されている売却物件数は十分とは言えない。この点について、山口氏は「多いか少ないかと言われたら、もう少し頑張らなくてはいけない数字。満足はしていない。しかし、自分の所有物件の価値を検索する機能の利用者は昨年12月時点で目標を達成しており、問合せも多い。潜在顧客の取り込みには成功しているのではないか」と評価する。なお、今後掲載する予定の審査中物件も控えているという。それでは、今後どのような戦略で物件数や利用者を増やしていくのか。1月14日に開始した売り出し物件の対象エリア拡大に加え、“自分自身で所有している不動産を売却する”という考え方そのものの啓蒙・啓発、そして実際の手続きのサポートが課題だという。山口氏によると、昨年12月と今年1月にはマンション売却を検討している人を対象にしたセミナーを実施。従来の売却方法と個人売却がどのように違うのか、実際にどのようにサービスを活用するのかなどについて説明を行い、質疑応答や個別相談も実施したのだという。「“自分で物件を売るとはどういうことか”という点の理解を深めてもらい、サービスに対するハードルを下げていきたい」(山口氏)また、これまでは不動産会社に任せていた物件広告の制作、書類の用意、売却時のリフォームやクリーニングなどをサポートするようなサービスも検討しているとのこと。そして、現在は1都3県に限定している不動産価格推定エンジンのデータベース量の拡大にも意欲的だ。「目指しているのは、世の中の全ての不動産情報をオープン化すること。自分の住宅の価値がどのような要素で決まっているのかを米国並みにクリアにすることで、不動産取引の透明性を確保したい。また、自分の住宅に対する投資(リフォームや修繕など)を物件価値に反映できるようにすることで、投資対効果を明確にしたい」(山口氏)。○社会の課題に対して、ひとつの選択肢を提示したいこのように、ヤフーとソニー不動産が物件の個人売買に本気で乗り出し、他社も様々なサービスを生み出して不動産テックを盛り上げている背景には、「2020年までに中古住宅流通市場やリフォーム市場を倍増させる」という国の政策がある。山口氏も、新築マンションの着工件数が減少していることなどを踏まえて、「中古住宅市場が活性化するポテンシャルは十分にある」と語り、今後も「おうちダイレクト」のサービス拡充に取り組んでいきたい考えだ。「市場における勝者になるつもりはない。社会の課題に対してひとつの選択肢を提示するという意識で取り組んでいる。今後も、従来の不動産取引に対する疑問を解決するような挑戦は、様々な企業から生まれてくる。テクノロジー業界だけでなく不動産業界からも色々なチャレンジを生み出されれば、消費者の選択肢は更に増えるのではないか」(山口氏)そして、物件の個人売買が不動産所有者にとって有力な選択肢となるために、同社ではユーザーの声を踏まえて、物件の歴史や地域の情報を網羅したデータベースの網羅性の確保などサービスの改善に取り組み、売買事例を増やしていきたい考えだ。「まずは利便性を追求し、個人売買に対する不安を解消していくことによって、サービスに対する門戸を広げていきたい。キャズムを超えるまでは、サービス開発に徹底的に投資をして、本気で取り組む。数年後には、個人が物件を売却する“個売”が不動産所有者にとって有力な選択肢となる時代を生み出していきたい」(山口氏)
2016年02月09日『今すぐ妻に不動産投資をさせなさい』(菅原久美子著、KADOKAWA)の著者は、秋田で生活する主婦であると同時に、ソプラノ歌手、そして株式会社の代表として全国で講演活動をしているという人物。そのちょっと変わった経歴から、お金持ちなんだろうと思われることもあるといいますが、それは違うのだとか。収入が安定しないソプラノ歌手としての活動を続けながら、なんとかして定期的に収入を得ることができないかと思考錯誤した結果なのだそうです。そして、そんな流れのなかで知ったのが、本書で明らかにしている不動産投資だということ。きょうはそのなかから、第3章「奥さん名義で物件を持つ」に焦点をあててみたいと思います。■副業禁止の会社では不動産投資NG会社から得る収入とは別の収入を得たいと考えるサラリーマンは少なくないはず。だからこそ、不動産投資に注目が集まっているという側面もあるでしょう。しかし注意しなければならないのは、就業規定で副業が禁止されている会社では、不動産投資をすることができないという事実。「大きな会社ならバレない」という考え方も、著者によれば甘い認識のようです。■不動産投資「5棟10室の壁」とは不動産投資の場合、「5棟10室の壁」と呼ばれる制限があるそうです。家を貸す場合の棟数が5棟以上、あるいはアパートやマンションなど、部屋を貸す場合の客数が10室以上である場合は、事業として不動産賃貸業を行っているとみなされるのだということ。事業規模になると税制面も変わりますし、副業禁止規定のある会社の場合、規定に触れてしまうわけです。だからこそ不動産投資をはじめる前に、自分の会社は副業を禁止していないか確認する必要があるのです。■副業禁止でも不動産投資をする方法では会社が就業規則で副業を禁止していた場合、サラリーマンは不動産投資を諦めなければならないのでしょうか? ルールを破らずに不動産投資を行う方法はないのでしょうか?この問いについて、著者は決定的な答えを明らかにしています。それは、家庭のなかに、不動産投資ができる人がもうひとりいるということ。いうまでもなく奥さんです。たとえば著者の場合はご主人が地方公務員で、母親から譲り受けた1棟のアパートを持っているのだそうです。しかし公務員ですから、当然ながら副業は禁止されています。また、戸数を増やしたいと考えていたといいますが、そのアパート以外に物件を買おうとすれば、それは事業規模になってしまうことになります。当時検討していたのは、2・3・4棟目にあたる3棟一括アパートだったそうです。戸数が18室もあるので、その時点で「5棟10室の壁」はとっくに越えていることになるのです。つまりご主人の名義で不動産を増やすわけにはいかなかったため、次の物件を買うため、妻である著者の名義で購入することになったというわけです。このように、もしご主人の会社が副業禁止だったとしても、あるいは不動産投資自体を禁止していたとしても、奥さんがするぶんにはなんの問題もないということ。たとえ規模が大きくなって「5棟10室の壁」を越えてしまったとしても、会社になにかをいわれる心配はないというのです。そこで著者は、いずれ物件を増やしていきたいのなら、最初から奥さん名義で不動産投資をはじめたほうが賢明だと主張しています。■無収入主婦が融資を受けられる理由ところで奥さんが物件購入すれば「5棟10室の壁」越えられるとはいえ、奥さんが融資を受けられなければスタートラインには立てません。しかし、そもそも主婦である著者はその時点で、銀行家からの融資は受けられないはず。でも、だからといって不動産を諦める必要はなし。なぜなら、ここでサラリーマンであるご主人にバトンタッチすればいいから。奥さんが銀行融資を受けるには、ご主人がサラリーマンであることが重要。大抵のサラリーマンは、安定した収入があることで銀行から評価を受けることができるということ。つまりこうすれば、無収入の主婦でも融資を受けることができるというわけです。*本書には他にも、主婦が不動産投資を成功させるためのメソッドが数多く紹介されています。なにより著者の経験を軸としたものなので、説得力も抜群。収入を増やしたい方は、ぜひ手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史)【参考】※菅原久美子(2015)『今すぐ妻に不動産投資をさせなさい』KADOKAWA
2016年02月04日不動産投資に関する書籍は多く、しかしその多くはメリットばかりを強調する傾向にあります。でも現実的にはリスクも大きいものであるだけに、石橋はしっかり叩いて渡りたいところ。そこでおすすめしたいのが、『失敗事例に学ぶ! 「不動産投資」成功の教科書』(ふどうさんぽ著、御井屋蒼大監修、日本実業出版社)です。著者の「ふどうさんぽ」とは、不動産投資家を目指す、あるいはすでに不動産を所有しているメンバーと、不動産投資に関する情報交換をするサークル。メンバーは1,000人を超え、中心メンバーは億を超える資産を持つ経験値の高い人達ばかりなのだとか。つまり本書では、豊富な経験に基づいた、さまざまな失敗事例が紹介されているわけです。しかし、それらを理解するためには、まず基本を知ることが重要。そこで、不動産投資の基本をおさらいしてみましょう。■「利益を得られる物件」を購入するべし不動産投資は、「購入して、保有(運用・管理)して、売却する」という3つの基礎構造によって成り立っているもの。購入手順はマイホームを買うときと同じで、物件を探してもらい、それに見合った物件が見つかれば紹介を受け、気に入れば購入、となります。しかし、ここで重要なのは「利益を得られる物件を購入しなければならない」ということ。「利益を得られる物件」を自分でイメージでき、具体的に条件を書き出すことができなければ、不動産仲介業者に自分の希望を伝えることは不可能。また購入時に銀行から融資を受けることも考えると、「利益が得られて、融資が受けられる」物件であることが必須となるわけです。たとえば相場で5,000万円の物件を、誤って6,000万円で買ってしまったとします。この物件で年間100万円のキャッシュフローが得られるとすると、10年間に1,000万円のプラスとなります。しかし10年間でローンの残高が4,000万円まで減ったものの、売却したら経年変化もあって3,000万円でしか売れなかったとなれば、キャッシュフローのプラス分1,000万円とキャピタルロスのマイナス分1,000万円で、差し引きトントンになってしまうことになります。もちろんオーナーは10年にわたり、不動産投資家としてきちんと働いてきたはず。ところが、最初に相場より高い物件を買ってしまったため、その労働すべてがチャラになってしまうということ。でもトントンならまだマシで、マイナスになってしまうこともあるのだとか。そんな場合は10年間タダ働きだったということになるだけでなく、「働いてお金をロスする」という意味不明の結果になってしまうのです。■必ず相場よりも安い物件を購入するべしこの例からもわかるように、「相場より高く買う」という失敗は、絶対に避けなければいけないと著者は強調しています。大切なのは、まず購入時に正確な相場を学び、必ず相場より安く、無理なら相場と同等の金額で購入すること。そしてそのためには、誠実で信頼できる不動産仲介業者から紹介してもらうべきだといいます。■物件の「売却額」も自分で算定するべしまた売却の際にも不動産仲介業者に協力してもらいますが、キャピタルゲインをいくら得られるかを計算し、売却額を自分で算定することが必要。相場を知るのはもちろんのこと、ローン残高を考えて、「これより下回ったらトータルでいくらの損になるのか」を知らなければならないということ。また、売買のタイミングも自分で知るべき。建物が劣化して使えなくなってから売るのか、使えなくなった建物を壊して土地だけ売るのか、減価償却が終わったタイミングで売るのかなどによって、利益が変わるのです。こうしたことをすべて考えたうえで、「どのような条件で手放したいか」を伝え、それに見合った広告を出してもらい、買い手を紹介されて売却となるわけです。そして購入時の金額と売却するときの差益がプラスであればキャピタルゲインとなり、マイナスならキャピタルロスとなるということ。もちろん世間の経済状況にも左右されるでしょうが、しっかり勉強し、必要ならコンサルティングなどプロのアドバイスに耳を傾けることが大切。そうすれば、好景気でも安く購入することや、不況でも利益を出して売却することが可能だと著者はいいます。*こうした基本をベースに、以後の章では数多くの失敗事例が具体的に紹介されています。「不動産屋さんと会話がかみあわなかった」というようなコミュニケーションの問題から、「部屋のなかで孤独死が発生してしまった」というようなシリアスな話までさまざま。不動産投資に関心があるなら、手にとってみればきっと役に立つ内容だと思います。(文/書評家・印南敦史)【参考】※ふどうさんぽ(2015)『失敗事例に学ぶ! 「不動産投資」成功の教科書』日本実業出版社
2016年01月27日多国間不動産トランザクション事業及び多国間不動産ブロックチェーン事業を展開する世界は8日、仮想通貨ビットコインを活用した不動産決済支援サービスを開始したと発表した。サービス提供の第一弾として2015年12月6日、香港人投資家が日本の不動産を決済する際、世界の決済支援サービスを利用したという(※同社調べ)。サービス提供第一弾では、日本デジタルマネー協会の協力のもと、ビットコイン取引所である「coincheck」を運営するレジュプレスと、同じくビットコイン取引所「Pegapay」を運営するヴァロンの2社を選定し、決済が行われたとしている。ビットコインを活用した決済は土日祝日でも着金確認ができ、手数料数円と、「従来の海外送金と比較して圧倒的なコストダウンが可能になる」(世界)。ビットコインはブロックチェーンの高度なセキュリティ技術が活用され、取引の際にカード番号や個人情報を入力する必要がない。また決済コストが安価で、土日祝祭日でも着金確認が可能といったメリットがある。世界によると、2014年9月末時点の投資額は330億円以上となっているという。2014年6月、世界最大オンライン旅行会社がホテル予約でビットコインの利用を開始。同年7月には大手コンピューター会社が公式ホームページを通じた自社製品の販売で、ビットコインによる決済受け付けを開始するなど、「世界的な商業流通量はまだ小規模であるものの、実際に製品やサービスの支払いに使用されている」(世界)。世界は、2012年1月設立。資本金4,500万円。2015年ジグソーなどを引受先とする第三者割当増資を実施。多国間不動産トランザクション事業及び多国間不動産ブロックチェーンサービス事業を展開。世界が運営する中国・香港・台湾投資家向け不動産情報サービスの利用者は50,000人以上(2015年12月時点)。2014年販売支援実績額は約10億円。2015年3月に台湾最大の金融ポータルcnYESと業務提携し、台湾人をはじめとした中華圏100万人以上へ不動産情報を提供している。世界は今後、不動産のクロスボーダー取引活発化と仮想通貨普及の流れに合わせ、「中華圏の投資家に向け同サービスを拡充、拡大していく」としている。
2015年12月08日ヤフーとソニー不動産は11月5日、新しい不動産売買プラットフォーム「おうちダイレクト」の提供を開始した。同プラットフォームは、1都3県(東京都/神奈川県/埼玉県/千葉県)の約5万棟のマンションに関する情報をデータベース化し、マンションの所有者と購入検討者を従来よりもダイレクトに結びつけるサービス。マンション所有者は、不動産仲介会社を介さず「自分のマンションを、自分が決めた価格で、自分で売り出す」ことができ、売却方法の選択肢を広げることが可能。マンション購入検討者は、まだ売り出されていないマンションについての「購入希望の意思表明」や、売り出し中のマンション所有者に対する「物件に関する質問」を直接できるようになり、より能動的に物件購入を検討することができる。これにより、マンション所有者による物件の売り出しから、購入検討者による物件見学の申込みまでがWebサイト上で完結。その後の物件見学から売買代金の決済・物件の引渡しまでのオフラインにおける不動産取引実務は、ソニー不動産がサポートしていく。また、同プラットフォームにおいて、マンション所有者は、自分の住戸の推定成約価格(以下、システム推定価格)を把握することが可能。このシステム推定価格は、ソニーR&Dのディープラーニング(深層学習)技術を核とし、ソニー不動産が持つ不動産査定のノウハウや不動産取引の知識を導入して共同開発した機械学習ソリューション「不動産価格推定エンジン」によって算出される。同エンジンでは、さまざまな不動産関連情報を元にデータを解析し、不動産売買における成約価格を統計的に推定。その推定精度は、MER(Median Error Rate : 誤差率の中央値)で6.08%(1都3県)、5.39%(東京都23区)となる。加えて、簡単な情報入力と所有者確認手続きのみで、不動産仲介会社に相談することなく自分の住戸の物件情報を「Yahoo!不動産」に無料で掲載し、購入希望者を募ることが可能に。物件掲載時の売り出し価格については、システム推定価格を参考にしながら、所有者が自由に設定できる。なお、サービスを開始時は、東京都心6区(千代田区/中央区/港区/渋谷区/品川区/江東区)のマンションを売り出しの対象とし、その後サービスエリアを随時拡大していく予定だ。一方、マンション購入検討者は、データベース化されたすべてのマンションについて、売り出し中の住戸がそのマンション内にない場合であっても、「買いたいリクエスト」を出すことで購入検討中という意思表明できる。さらに、リクエストをしておくと、そのマンションのタイプごとのシステム推定価格を知ることができるほか、そのマンションの住戸が売り出されたときに通知が届くようになる。同プラットフォームは、マンション所有者向けPC版の提供を11月5日に開始し、11月16日に購入検討者向けPC版サービスを、2016年1月下旬にスマートフォン版サービスの提供を開始する。
2015年11月06日七十七銀行は23日、住宅ローンニーズを持っている顧客の利便性向上を図るため、不動産会社のタブレット端末を利用した住宅ローンの仮審査申込みの受付を30日に開始すると発表した。○凸版印刷が開発したペーパーレスで住宅ローンの仮審査申込みが可能なサービスを利用受付に際しては、凸版印刷が開発したペーパーレスで住宅ローンの仮審査申込みが可能なサービス「Smart Entry Tab(スマートエントリー・タブ)」(以下同サービス)を利用する。なお、同サービスにより、不動産会社のタブレット端末を利用して住宅ローンの仮審査申込みを受付ける地方銀行は、七十七銀行が初めてだという。顧客は、同サービスを導入している不動産会社のタブレット端末に、必要な情報を入力することにより、七十七銀行に対してペーパーレスで住宅ローンの仮審査の申込みができる。申込みできる不動産会社は、東急リバブルの仙台市内の4店舗(仙台センター、仙台駅前センター、長町南センター、泉中央センター)。七十七銀行によると「従来、不動産会社の店頭、あるいは銀行の店頭で行っていた仮審査の申込みが、タブレットを利用することで、物件を見たその現場で行うことができるので審査までの時間を短縮できます。また、タブレットの読み取り機能を利用することで、運転免許証などの情報が自動入力されるので、お客様の手間を省くことができます。現在は、東急リバブルさんの仙台市内の4店舗で行っておりますが、このサービスを導入する不動産会社は、順次拡大していく予定」としている。○顧客のメリットタブレット端末の読み取り機能により、運転免許証や名刺等から該当項目が自動入力されるため、顧客の記入負担が軽減される不動産会社の店頭や、物件現地において仮審査の申込みを行うことができるため、審査の迅速化を図ることができる申込内容は、不動産会社のタブレット端末を通じて、すべてクラウド上にデータ暗号化され保管されるため、FAX誤送信や書類紛失のリスクが軽減され、情報セキュリティの強化を図ることができる○申込みのフロー七十七銀行は、今後とも顧客の幅広いニーズに応えることができるよう努めていくとしている。
2015年10月26日ソニーとソニー不動産は8日、独自の機械学習技術を応用した「不動産価格推定エンジン」を開発したと発表した。○業界最高水準の精度を実現同技術は、両社が共同開発した機械学習ソリューション。ソニーR&Dのディープラーニング(深層学習)技術を核とし、ソニー不動産が持つ不動産査定のノウハウや不動産取引に特有の知識を導入している。様々な不動産関連情報を元に、独自のアルゴリズムに基づいてデータを解析し、不動産売買における成約価格を統計的に推定する。ソニー不動産広報は「不動産の査定は経験により差が出る場合がある。そこでソニーの機械学習技術を転用できないかと考えた」と話している。東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県のすべての中古マンションの推定成約価格を算出することができ、常に最新のデータを日々自動で学習する。推定精度はMER(Median Error Rate:誤差率の中央値)で5.48%と、業界最高水準の精度という。今後は、売却・購入コンサルティングサービスの利用者に対し、同エンジンで算出される推定成約価格を提供する新たなサービスを提供していく。また他のサービスとの連携も予定している。機械学習技術とは、人が持つ学習能力をコンピュータで実現しようとする技術。またディープラーニング(深層学習)技術は、近年急速に発展している機械学習技術の一つで、人間の脳の構造を模した計算モデルを用いる点に特徴がある。
2015年10月09日フォレスト出版はこのほど、書籍『空き家を買って、不動産投資で儲ける!』を発売した。著者は収益不動産経営コンサルタント・全国古家再生協議会顧問の三木章裕氏。価格は1,500円(税抜)。○少額で誰でも簡単に始められる不動産投資法を紹介今、空き家が社会問題になっている。行政では、廃屋化する空き家が危険建築物として倒壊する恐れや、犯罪の温床になるということで対策を進めているが、実際に深刻な問題に直面しているのは、空き家を所有している家主だ。再建築不可物件など様々な理由から空き家が増え続けているのが現状だが、実はこうした物件が今、不動産投資物件として生まれ変わっており、家主の中には「空き家不動産投資」で成功している人も出てきているという。同書は、少額で誰でも簡単に始められる、新しい不動産投資法を紹介。投資の方法から資産づくりの指南、不動産投資をするための心得まで、初めて投資をする人にも分かりやすく説明している。著者はもともと、大阪で不動産業を営んでいたが、バブル崩壊で借金返済に追われ、物件を購入していた立場から、物件を紹介する事業を開始。巨額の借金返済という厳しい経験を通じて、クライアントに寄り添った失敗しない資産づくりを指導しているという。著者の三木章裕氏は1962年大阪生まれ。甲南大学経営学部卒、大阪学院大学大学院商学研究科卒。現在、収益不動産経営コンサルタント・全国古家再生推進協議会顧問としてクライアントの資産づくりをサポートしている。
2015年09月03日野村不動産アーバンネットは5日、不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象とした「住宅購入に関する意識調査(第9回)」の結果を発表した。それによると、不動産について「買い時だと思う」「どちらかと言えば買い時だと思う」との回答が46.2%となり、前回調査(2015年1月)と比べると7.3ポイント減少、3年半ぶりに50%を下回る結果となった。買い時だと思う理由については、「住宅ローンの金利が低水準」64.4%(前回比9ポイント減)、「今後、10%への消費税引き上げが予定されている」40.2%(前回比1.3ポイント減)に続き、「今後、不動産価格が上がると思われる」が39.6%となった。買い時だと思わない理由は、「不動産価格が高くなった」が最も多く64.9%と前回比で16.9ポイント増加した。○不動産の価格は「東京オリンピックまでは上がる」という意見も不動産の価格については、「上がると思う」が39.6%と前回調査と同結果となった。上がると思う理由については、「東京オリンピックまでは上がる」「景気が上向きになってきている」という意見に加え、「海外からの投資が増加しているため」という意見が目立った。一方、不動産の価格は「下がると思う」の回答は18.9%と前回調査から2.1ポイント上昇した。住宅ローン金利については、「ほとんど変わらないと思う(低金利が続く)」が最も多く42.1%(前回比6.8ポイント減)、「金利は上がっていくと思う」は40.2%(前回比9.4ポイント増)、という結果となった。2017年4月に予定されている10%への消費税の増税によって、住宅購入計画に影響を受けるかの質問には、65.2%が「影響を受ける」と回答し、そのうち43.0%が「消費税が上がる前に購入するようにしたい」と回答した。調査期間は7月10~16日、調査方法はインターネット、有効回答は1,363人。
2015年08月06日不動産投資には「難しそう」というイメージがありますし、実際問題、興味があったとしてもなかなか一歩を踏み出せないもの。しかし、『不動産投資は地方に一棟買うことからはじめなさい!!』(竹居百合子著、総合法令出版)の著者は、そうは考えていないようです。■仕事の空き時間で不動産投資2006年から不動産投資をはじめ、今年で10年目になるという人物。現在の所有不動産はアパート・マンション8棟、戸数は100戸、家賃収入は6,800万円ほど。8月末には、総資産は6億4,500万円になる予定だというから驚き。しかも注目すべきは、著者が「特別な人」ではないという事実。2年前に独立するまでは23年間サラリーマン生活を送り、仕事の空き時間を利用して不動産投資をしてきたというのです。そんなことが本当に可能なのかと思いたくもなりますが、物件の選び方を間違えず、しっかり管理すれば、不動産投資は失敗する可能性がとても低いのだそうです。■成功するためのシンプルな法則ちなみに、不動産投資で成功するためのシンプルな法則は、次の3つ。(1)稼げる物件を探す(2)融資の審査をうまく通す(3)きちんと管理する本当にこれだけだけれど、この3つのことをするために、多くの人は時間を浪費しているのが実態。でも、「不動産投資は時間がなくてもできる」という認識を持つことが大切なのだそうです。■足りない時間をうまく使うコツとはいえ、「でも時間がない」という人は少なくないはず。そこで著者がオススメしているのは、お昼休みをうまく使うこと。意外にも思えますが、著者もお昼休み1時間のうち30分で不動産会社や管理会社、銀行と連絡をとってきたのだといいます。管理業はそれぞれのプロに任せ、大家である自分自身は、管理会社、修繕会社、清掃会社などをマネジメントするだけ。このやり方で、不動産投資をはじめて3年半で資産が億を超え、その後も徐々に増やすことができたのだとか。■不動産投資で最初にすべきことただし本書は、無責任に「いいこと」ばかりを並べ立てているわけではありません。つまり、たしかにお昼休みの30分を利用するだけで、一生困らないお金をつくれるけれど、「その前にすべき大切なこと」があるともはっきり述べているのです。それは、まとまった金額の頭金、つまり自己資金を用意すること。なぜなら銀行からは通常、物件価格の1~3割にあたる頭金を要求されるから。頭金ゼロ、全額融資の「フルローン」で買う人もいますが、初心者にとってこれは非常に危険な投資なのだそうです。だからこそ、安全に不動産投資をするなら、まずは自己資金を貯めることが大事だということ。たとえば3,000万円の物件を購入するなら、最低でも500万円くらいの頭金は必要だと考えるべきだといいます。*考え方が現実的で、説明も具体的なので、読んでみれば不動産投資が必ずしも手の届かないものではないことがわかるはず。将来のために、考えてみるのもいいかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※竹居百合子(2015)『不動産投資は地方に一棟買うことからはじめなさい!!』総合法令出版
2015年07月20日リクルート住まいカンパニー(SUUMO)と日本マイクロソフトは5月25日、Web上の地図技術を活用した新しい住宅・不動産情報検索サービスとして「Bing不動産」の提供を開始した。「Bing不動産」は、マイクロソフトがグローバルで展開している地図プラットフォーム「BingMaps」の技術と、SUUMOが保有する、住宅・不動産の購入・賃貸の物件情報を統合し、地図上により詳しく豊かな表現で物件情報を表現することで、ユーザーが視覚的・直感的に物件を検索できるサービス。「Bing不動産」の主な特徴としては、「地図を起点とする物件探しが可能」「多様な絞り込み/物件一覧・比較機能の提供」「オーバーレイ機能の提供」「検索連動」がある。「Bing不動産」は、物件探しに関わる多くの作業を単一のユーザーインタフェース上で完結することを基本的な設計思想とし、物件に関するさまざまな情報を地図上に提供する。例えば、物件所在地の周辺にあるさまざまな施設の場所(コンビニ、バス停、駅、郵便局など)が地図上に配置し、視覚的で直感的な情報が提供されるため、ユーザーは物件周辺の環境をより具体的なイメージを持って確認することができる。また、物件を探す際に有益な付加情報を、地図上にオーバーレイで重ねて表示することができ、サービス開始時点では、「用途地域」「地価公示価格」のオーバーレイ表示が利用可能。さらに、両社は地図を主体とした特徴を生かして、新たな物件探しの手法を提案していく予定で、第1弾として、物件検討の主要な意思決定者が複数いる場合に、さまざまな条件付けから両者の"落としどころ"となりそうな候補物件を提示する機能「パワーバランス検索」(仮称)を2015年後半に実装する予定。
2015年05月26日中国では、不動産市場が低迷するなか、不動産企業の事業環境や資金繰りの悪化が懸念されてきましたが、足元の不動産市場では、大都市を中心に持ち直しの兆しが見え始めています。中国国家統計局が発表した3月の主要70都市の新築住宅価格をみると、前年同月比で、中小都市や内陸部では下落が続いていますが、北京や天津などの大都市では上昇しました。上昇した都市の数は、2月の2都市から大幅に増加し、3月は12都市となりました。この背景として、不動産市場の低迷が、政府による成長率目標の達成の妨げになると懸念され、当局が昨年9月と今年3月末に、規制緩和による不動産市場のてこ入れ策を講じたことが挙げられます。具体的には、投資目的とみなして厳しい規制を課してきた2軒目の住宅購入における住宅ローンの頭金要件の緩和、住宅ローン金利の引き下げ、転売時の免税対象の拡大などです。これらの規制緩和は、緩やかながら今後不動産需要の回復を促すとみられ、物件在庫の減少などを通じて不動産企業の収益の改善に繋がると考えられます。これに加えて、中央銀行は、昨年11月以降、利下げや預金準備率の引き下げといった金融緩和策を段階的に実施しており、4月20日にも預金準備率を1%程度引き下げました。これにより流動性が向上し、金利低下圧力が高まることを受け、借入需要の増加を通じた不動産需要の拡大に加え、企業の資金調達(銀行借入れや社債発行など)コストの低下に繋がると考えられ、不動産企業にとって収益および資金調達環境の両面において改善が見込まれます。依然として不動産価格の下落が続く中小都市を中心に事業を展開する不動産企業にとっては厳しい状況が続く可能性がありますが、住宅価格の上昇や物件在庫の減少がみられる大都市を中心に事業を展開する不動産企業の事業環境は改善が予想されます。(※上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。)(2015年4月30日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、マーケットの旬な話題が楽に読める「楽読」からの転載です。→「楽読」※1 当資料は、日興アセットマネジメントが市況等についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。※2 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
2015年04月30日不動産ビックデータを所有するスタイルアクトはこのほど、マンション入居時に引越し会社を利用した人に対し、引越し会社の満足度調査を実施し、結果を公表した。同調査は3月16日~23日、同社運営サイト「住まいサーフィン」の登録会員へのアンケートにて実施。有効回答数は、490(ランキング対象はサンプル数が20件以上の会社)だった。○総合満足度ランキング、1位は日本通運に引越し会社の総合満足度1位は「日本通運」(76.6ポイント)となった。2位は「アリさんマークの引越社」(74.3ポイント)、3位は「アート引越しセンター」(72.8ポイント)が続く。○引越し費用、ファミリーのベーシックプランの目安は12万強引越し費用は、移動距離や荷物の量、プラン、時期など様々な要因で変化する。ベーシックプランで2人以上での引越しの平均費用は、移動距離が「同一市区町村内(~15km未満)」だと平均12万200円、「同一都道府県内(~50km未満)」では12万5500円、「同一地方内」は13万4400円となった。移動距離50km以上と未満で費用差が大きくなる傾向がうかがわれる。また、家族2人以上で同一市区町村内へ引越しした場合、「梱包のみおまかせ」すると25~30万円程度まで費用が跳ね上がる。「梱包も荷ほどきもおまかせ」すると、ベーシックプラン(平均12万円)の約4倍、40~45万円程度になる結果となった。ちなみに同一都道府県内への引越しも「梱包のみおまかせ」で30~35万円、「梱包も荷ほどきもおまかせ」は50万円以上と費用は大幅に増加しており、移動距離よりプランのほうが費用への影響が大きい。○3~4月のオンシーズンは、費用が35%増しに時期による費用比較では、3~4月のいわゆる引越しのオンシーズンは14万4,500円と、それ以外の時期(平均10万6,000円)より35%割高となった。特に3月の費用は15万3,500円となっている。引越し時期の制約が無ければ、この時期を外して引越しすると費用を安く抑えられる。
2015年04月23日不動産広告でよく見かける“徒歩●●分”の表示。あれ、どこまで当たっているんでしょうか?気になったことはありませんか?実は、あの表示には素人では絶対に気付かないような落とし穴があるのです!今回は衝撃の事実をお伝えします。■“徒歩1分=80メートル”が決まった経緯まず、徒歩●●分の数字の根拠は、1963年(昭和38年)に公正取引委員会が承認した「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」が基本になっています。その内容ですが、ザックリ書くと“1分=80メートル”というもの。80メートルは“健康な女性がハイヒールのサンダルを履いて歩いた時の平均速度”と俗に言われています。最初、不動産業界が提案したのは“1分=100メートル”でした。少しでも、徒歩●●分の数字を小さくした方が、お客の歓心をひけるので、なるべく1分当たりで歩ける数字を大きくしたかったのですね。でも、さすがにこれは無理。“1分=100メートル”は男性でもかなりのスピードです。そのため、公正取引委員会が改めて計測しました。どんな方法だと思いますか?それは、東大を出たばかりの若い公正取引委員会の男性職員が、軽く女装して(かかとの高い靴を履いて)、庁舎の廊下を歩いて、時間と距離を測る、という方法。さらに、その男性は普段はせっかちな性格だったそうです。計測の時は、女性やお年寄りを意識して、なるべく普段よりゆっくり歩いたそうですが……。こうして“分速80メートル”基準は生まれました。大切なポイントなので、もう一度書きます。“軽く女装した” “せっかちな若い男性” “庁舎の平坦な廊下”……。いろんな意味で、ツッコミ所が満載ですが、こうして“徒歩1分=80メートル”という基準は生まれました。■不動産広告“徒歩●●分”表示の意外な盲点“徒歩●●分”表示に関して、大事なポイントがもう一つあります。それは、距離だけ計算すればOKで、実際の障害物は関係ないということ。道路にそった距離を“分速80メートル”で機械的に割ればよいことになっています。途中に信号があっても、坂道でも人混みでも、開かずの踏切があっても関係ありません。たとえば渋谷駅を降りて、センター街の店に行くとき。あなたは普段と同じスピードで歩けますか。ハチ公前、スクランブル交差点、センター街……。そんな時でも不動産表示は、単に駅からの道路距離を“80”で割っておしまいです。徒歩1分=80メートルは、本来は不動産広告に関する規制です。たとえばレストランの案内などでは、実際にお店の人が歩いて計測した数字も使われることもあるでしょう。しかし、それは逆に言えば無規制なので、お客を呼ぶために駅から近い数字が使われることもあるかもしれません。これから徒歩●●分の表示を見たときは、“実際にかかる時間でなく、単に距離(時間×80メートル)”が元になっている可能性が高いです。さらに“規制がかからない場合は、近い方に表示されている可能性がある”ことを念頭において行動したほうがいいでしょう。最後に、時間に関するイタリアのことわざを一つ紹介します。時間は人間のために作られている、人間が時間のために作られているわけではない。人生は時間そのものです。大切に使ってくださいね。(文/シール坊)
2015年04月21日