先日もご紹介した建築業で働いているカルロスさんの生活のアイディアを紹介します。どこの国でもそうなのかもしれませんが、家を建て直すときは古いものが邪魔になります。全部のものを大切にしまい込むということは少ないようです。特に親の家を譲り受けて建て直すときなどは、いろいろと古いものが出て来たりしますよね。しかし、カルロスさんはそのような古いものを無料か、かなり低価格で受け取り、自宅で使っています。今回は超レトロなアイテムの再生法をご紹介いたします。■ 「古いドア」大邸宅の大きすぎるドアを小さくして使う!まず玄関のドアです。このドアはだいたい400年前のドアだそうです。そのため、高さが3m以上あり大きすぎるので、家を壊すときに払い下げになりました。ちなみにドアは比較的売りやすいもののひとつです。というのは、古いドアは乾燥しているので良いギターが作れるからです。ギターを作る人は、街を歩いて取り壊すことが決まった古い家などを訪ねて譲ってもらいます。古いドアから何百万円もするギターが作られこともあるのです。しかし、このドアはカルロスさんのおかげで、ドアとして生き続けることが決まりました。実は大きすぎるドアの真ん中部分を切ってもう一度繋げ、現状に合った大きさのドアに作り変えたのです。古いドアの問題は鍵のセキュリティですが、このように古いドアに鍵を付け替えています。古いドアの鍵は開けにくいというデメリットもありますがこれなら大丈夫です。■ 「古い照明器具」温かい光が溢れる家に!ランプを使ったことがない人には、これがびっくりするものだとは感じないかもしれません。こういうデザインの照明器具だと思った人も多いと思います。でも、これはオイルランプをリメイクしているのです。元々は電球のところに本当の「火」が付いていたのです。昔のものはデザインが素敵ですよね。私はろうそくも好きですし、普段、火を見る生活を好んでしていますが、やはり現実的に考えると電気を使った照明の方が安全です。カルロスは、しばらくはオイルを使って利用していたそうですが、とても気に入っていたので電化することにしたのだそうです。こちらはアンティークな照明器具。スペインなら病院などに使われていたようなタイプのデザインです。こちらは書斎の机に置くタイプの照明器具を絵画の照明に。ピラミッド型の照明をあえて逆さにつけました。モロッコ製のエスニックなデザインが素敵です。これは、屋根瓦です。スペインの屋根瓦はこんな形。屋根瓦にペイントして、壁に取り付け、内部に電球を設置して照明器具として使っています。■ 「テラスの洗面所」台は昔、おばあちゃんが使っていた(と思われる)ミシン台これはテラスの洗面所。テラスの掃除やちょっとした手洗いなどに使います。洗面の下の台は、なんとなく見たことがあるもの?若い方は見たことがないかもしれません。昭和博物館にあったような……。これは足踏みミシンの台です。足踏みミシンは、簡単に電気ミシンにできるんです。電気ミシンに作り変えてもらうと、台が不必要になるのですが、カルロスはデザインがとても気に入り、ミシンの台に大きな陶器の深鉢を置いて洗面所にしたのです。■ 「洗面台」寝室にあったサイドベッドテーブルを使用!バスルームにもいろいろな工夫が見られます。こちらの洗面所は、寝室にあるサイドテーブルに昔のホウロウの白いタライを乗せています。こちらの角度の方がわかりやすいですか?奥に見えるのは、トイレットペーパー。植木鉢を置くアイアンの三脚の上に陶器の深鉢を置いてトイレットペーパー置きに。アイアンの三脚は結構色々使えますよ。こちらは別のトイレにあったペーパーホルダー。モルテロというスペイン版すり鉢を置くための台なんです。下の部分はスパイスを入れる引き出し。本来はキッチンにあるものですが……。■ 建築家ならでは!レトロアイテムを取り入れた暮らし捨てる前にこれは何かに使えないかなと考えて、まったく別の使い方をしていく暮らし。素敵なものが次々生まれて、楽しくなりますね。改めて、古いものをもっと大切にしたいと思いました。
2018年11月17日11月15日発売の『住まいの設計12月号』では、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する連載の2回目が掲載しています。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は東京・北区で築18年、470.00平米(142坪)、鉄骨造5階建てのビルをリノベーションしたSTARの佐竹永太郎さん宅を取材しました。■ だ円形の「吹き抜け」と有機的な「螺旋階段」が美しい空間JR東十条駅から徒歩2分の場所にある5階建てのビルが、佐竹永太郎さんが代表を務める「STAR」の事務所兼自宅。ビルの入り口には明治16(1883)年製という趣のあるくぐり戸が設置されており、独特の世界観があります。この入り口には田中さんも驚いた様子でした。このビルは18年前にオーナーの依頼により佐竹さんが設計し、15年後に自身が買い取りリノベーション。1階はラウンジ、2階はオフィス、3階は倉庫、4・5階が自邸という構成になっています。さっそくエレベーターで4階に向かうと、中心に螺旋階段が設置されたLDKが。ソファに座って吹き抜けを見上げ、「螺旋階段って、もっと単調なイメージだったけど、こんな変わった形もできるんですね。計算は難しそうだけど」「はい、難しく計算すればできます(笑)」と、田中さん。建築談義に花を咲かせるふたりでした。■ 最上階のガーデンと寝室はまるでリゾートホテル!螺旋階段を上っていくと、寝室の外に広がる屋上ガーデン。「朝はまぶしくて自動的に目が覚めます」(佐竹さん)という寝室は、庭に面したホテルライクな空間になっていました。4・5階とも床暖を採用しているため、冬も快適に過ごせるそうだ。5階ホールの床にはアズサ、寝室には杉を採用している。「いろんな素材を使っているけど、ちゃんと調和している。個性派集団をうまくまとめる名監督みたいだな」(田中さん)。寝室からデッキテラスにそのまま出られるのも佐竹さんのこだわり。「駅前だけど、ここなら外からの視線を気にせずに過ごせますね。土があって、外の空気も感じられて…都会ではなかなかこういう空間を持てないですもんね」(田中さん)と、屋上ガーデンの開放感を満喫していました。■ 1階のラウンジは、能舞台の襖を設置したこだわりのおもてなし空間1階のラウンジは、バーカウンターのあるラグジュアリーなおもてなし空間だ。カウンターは大谷石、カウンターの天板にはアフリカンチークを使用。奥のミーティングスペースには、旧家の能舞台の襖が扉になっている豪華版です。「すごいな。設計事務所とは思えないですね。何でもやってくれそう(笑)」と、圧倒される田中さん。「“正しく古いものは、常に新しい” というのが僕の信念です。正しく時を重ねてきたものは、時を経ても古びない。そういうものの力を借りながら、オーダーメイドのスーツのように、住む人の体に馴染む空間をつくっていきたい」と佐竹さん。まるで、おしゃれカフェみたい!まさに、建築家の美意識を体現した住まいとなっていた佐竹さん邸。もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2018年12月号」をご覧ください!【取材協力】STAR(エスティエイアール)「クライアントの課題を美しいデザインで解決する」をミッションにデザインチームという独特の設計スタイルで活動。個性的なホテルや商業施設など企画より幅広く手掛ける。撮影山田耕司住まいの設計2018年12月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「だから選びました!ハウスメーカーで建てたこだわりの詰まった家」 【第二特集】「毎日緑に触れられる幸せ…ガーデンハウスで暮らそう!」
2018年11月15日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。300万円値引きをしてもらえるなら建築条件付きの家の契約をしようと決断し、土地仲介の営業Sさんに交渉しに来た鳥夫婦です。■ やり手の営業Sさんに会う久しぶりに仲介Y社の営業Sさんにお会いする。あの、コロコロ笑いながら、ソフトな語り口で、相手の心を開かせながら、キチッと落としどころに落とさせるSさんに……。3か月前のあの日……。Sさんの運転する車に乗せられ、設計R社に連れて行かれた日……。道中の会話で、Sさんには奥さんとお子さんがいらっしゃって、数年前に東京の外れの建売住宅を購入されたと聞きました。「不動産業のプロは、建売を選んだんだ」と印象に残ったのと同時に、ご家庭でのSさんを垣間見てしまいました。こんなに紳士で礼儀正しいSさんも、腹を出したままブーと寝屁したりするのだろうか?風呂前に裸になると、腰振りダンスしながら家人に近づいたりするのだろうか?(え?鳥夫だけ?)仕事でやり手なSさんそのままに、夜もキッチリ落とすのだろうか?あの日、そんなことを考えながら車に揺られていたなあ……。やだねえ、下世話な男性雑誌の表紙を見ては「ったく、しょうもないな」と苦笑しているくせに、自分も同類じゃん。などとつらつら思いながら、Y社の最寄駅で、鳥夫を待っていました。■ 鳥夫婦で最後の戦略会議さて、腰振りながら……ではなく普通に現れた鳥夫と、しばらく二人で周囲を散歩しながら、最後のすり合わせをしました。「いいか、鳥は女だから、感情的な役をやってくれ。いかにもR社のプランニングに残念な気持ちでいるか、土地は気に入っているのに、R社の家を買わないといけないことが悲しいか、訴えるんだ。でも鳥は空気を読めず、余計なことを口走る癖があるからな。基本的にはしゃべるな。俺がしゃべるから」「わかった!!」万が一、建築条件付きを外してもらえる可能性も考え、いきなり上物の値引き話にいくのはやめました。「土地はとても気に入っている」ということを強くアピールし、「もし条件を外してくれるとしたら、いくら土地代をアップされるか」を聞き出すシナリオに微修正。Sさんのご尽力で土地代80万円値引きをしてもらったとはいえ、すでに当初の予算より400万円オーバー。建築条件外しにより土地代1割アップしたとして、さらに340万追加。これで当初の予算より740万円オーバー。こうなると、もう諦めざるを得ないのですが……。■ Sさんとの交渉スタート!!そしてY社のビルの前に着きました。階段を上り、念のため携帯の録音アプリをONにして、Y社のドアを開けました。「ああー、どうもどうも、お久しぶりですねえ」Sさんは、相変わらずコロコロとした笑顔にソフトな語り口で迎えてくれました。コミュニケーションがそれほど得意ではない上に緊張MAXの鳥夫。人見知りで狂女予備軍の鳥。二人とも気の利いた挨拶や世間話のひとつもできず、Sさんのそつないアイスブレイクの会話に、ニヤニヤ相槌を打つばかり。ましてや緊張に耐え切れず上の空状態である今は、世間話をする余裕などありません。顔を紅潮させた鳥夫が、メモを片手に、すぐに本題を切り出しました。Sさんに新宿くん(※土地のこと)をご紹介いただいた頃は、家造りの知識のまったくないド素人だった鳥夫。あれから約3か月。鳥夫は、コンサルさんにに教わった知識のおかげで、Sさん相手に説得力のある話を展開していきました!(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年11月15日建築家・隈研吾とデザイナー大村真有美のデザインユニットがコラボレーションした「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」から、2018年秋冬の新作ジュエリーが登場。2018年10月30日(火)まで開催される、日本橋三越本店期間限定ショップにて先行発売される。その他、バーニーズ ニューヨーク銀座本店、西武渋谷店、阪急うめだ本店他、全国11店舗にて展開する。新国立競技場「杜のスタジアム」をはじめ、世界的な有名建築物を手がける隈研吾。そんな人気建築家が、プロダクト、アクセサリー、インテリアのデザインユニットとして活動するデザイナー大村真有美によるMA,YUとタッグ。「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」の新作ジュエリーは、建築物をモチーフにしたコンセプチュアルなデザインが特徴だ。白い森人々が集まる樹と人々が流れる道を持つ、白く輝く森をコンセプトにした「白い森」」シリーズ。ホワイトゴールドをベースに、折り紙のように織り込み、地金をプリーツ状にアレンジして光を反射する華やかなデザインを完成させた。ピアスやイヤリングは、アクセサリーがまるでレフ版のように力を発揮し、顔周りを明るく見せてくれる効果も。クリーンなデザインなので、洋服を選ばず、様々なシーンで活躍してくれそうだ。ロータス隈研吾の代表的建築「ロータス・ハウス」を着想源にした「ロータス」。同建築で印象的な規則的なチェッカーパターンは、ウォッチのベルトに落とし込まれた。表面にヘアラインのテクスチャを加え、ステンレス素材の光沢を軽減。半分透けたベルトは、肌なじみがよくすっと溶け込むように腕にフィットする。同デザインのリングとの相性は抜群。同じモチーフになっているので、重ねづけしてもうるさくならず品よく決まる。【詳細】「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」2018年秋冬ジュエリー取り扱い店舗:全国11店舗(仙台三越、高崎髙島屋、西武渋谷店、横浜ランドマークプラザ、新潟三越、阪急うめだ本店、バーニーズ ニューヨーク神戸店、鶴屋百貨店、バーニーズ ニューヨーク福岡店、バーニーズ ニューヨーク銀座本店、バーニーズ ニューヨーク横浜店)、日本橋三越本店期間限定ショップ・日本橋三越本店期間限定ショップ期間:2018年10月24日(水)~10月30日(火)住所:東京都中央区日本橋室町1丁目4-1 本館1F<アイテム例>・白い森ネックレス 36,000円+税~、ピアス 44,000円+税、ブローチ 30,000円+税、2wayピアス 40,000円+税・ロータス時計 53,000円+税、リング 46,000円+税/12,000円+税/14,000円+税【問い合わせ先】ヴァンドームヤマダTEL:03-3470-4061
2018年10月29日「ちっちゃな家」シリーズで有名な、建築家・杉浦伝宗さんの名言、狭小住宅の空間三原則「透ける」「抜ける」「兼ねる」前々回は「透ける」について、前回は「抜ける」についてご紹介しました。最後にご紹介するのは「兼ねる」です。■ 「空間の共有・共存」という昔からの知恵おそらく「兼ねる」については、皆さんも聞いただけで、なんとなく想像がつくかもしれません。限られた平米数の狭小住宅に、部屋を幾つも作るのは物理的に難しい……。そこで、部屋や空間に複数の用途・機能を持たせ省スペース化していこうというのが、この「兼ねる」です。思えば昔の日本で庶民の暮らしといえば、ちゃぶ台を置いた畳の部屋で食事をし、時にお客様を迎え、夜は布団を敷いて寝ていたことからも、「兼ねる」は日本人には腑に落ちやすいのではないでしょうか。polkadots / PIXTA(ピクスタ)■ 事例でより具体的に「兼ねる」をご紹介1.玄関を省略してLDKと兼ねる先日お亡くなりになった樹木希林さんのナレーションも印象的だった、昨年大ヒットしたドキュメンタリー映画『人生フルーツ』では、故・津端修一さんが自ら設計された玄関を省略してLDKと兼ねるご自宅を見ることができます。写真はイメージです家が1つの大きなワンルーム形式になっているだけでなく、玄関らしい玄関もなく、庭に面した掃出し窓からの出入りになっているのが印象的でした。2.廊下を省略して「洗面所」と「脱衣所」と兼ねる長い廊下は、狭小住宅にとって極力避けたいプランです。古い木造一戸建てをリノベーションした筆者の元・自宅ですが、奥に位置する洗濯機や浴室までの廊下の途中に、トイレや洗面脱衣を配置しました。洗濯機側からの見返し、左手のピンク色のタイルは浴室部分ただし、玄関からも丸見えなので、いざという時の目隠しドアに、隣接する納戸のドアを90度ふって兼用です!しかし、こういった「玄関がない」「廊下が脱衣になる」等のプランは、住むにあたり、それなりの覚悟が要求されます。ライフスタイルや家族の希望などを充分に検討シミュレーションして、決定してください。■ もっと身近で取り入れやすい事例も!洗面所やキッチンの一角に家事コーナーを作ったり、ワンルームでベッドをソファ代わりにする、というのも「兼ねる」ですよね。LDに大きめのダイニングテーブルを置き、子どもの勉強や家事、事務作業をするのだって立派な「兼ねる」です。プラナ / PIXTA(ピクスタ)さらに外へも目を向けて、庭やテラス、バルコニーや屋上との繋がりを感じさせるプランも、広い意味での「兼ねる」となります。■ 総論:3原則のもたらす大きなメリットいかがでしたか?「透ける」「抜ける」「兼ねる」は、改めて名言だと思いました。柔軟な発想と工夫・大胆な割り切りで、小さな家でも窮屈にならずに、楽しく住まうことができる……。また、資材や内装材が節約できるので、工事費の削減も狙えるかもしれません。杉浦さんも、小さな家でコンパクトに住まうことは、結果として冷暖房効率もよく、掃除にかける労働力が減る、つまり家事効率も上がると嬉しいメリットを挙げられていました。ぜひ今日からでも、この「透ける」「抜ける「兼ねる」の中から、皆さんの住まいに取り入れられる技を探してみてください!
2018年10月19日建築家と最初にした打ち合わせのとき、「寝室は一人一部屋欲しい」と夫への事前の相談なく唐突に伝え、実際、寝室は一人一部屋で設計を進めてもらいました。今回は、夫婦の寝室を別にした理由をお話しします。■ 夫婦のライフスタイルの違いが最大の理由karandaev / PIXTA(ピクスタ)仕事の都合で、ときどきですが、午前3時、4時に起き出して仕事に出かけることがある夫と、気分が乗ると深夜まで仕事に取り組むことがある私。もともと暮らしていた借家では、息子を真ん中に、まさに川の字で眠っていました。日付が変わる頃、息子を起こさぬようにそっと布団に入り、ようやく深い眠りに落ちるのが午前1〜2時。やっと眠れた……、そんなタイミングで夫のスマホのアラームが鳴り出して、そのまま眠れなくなる、ということも。Mills / PIXTA(ピクスタ)翌朝、寝不足でふらふらになりながら息子を送り出す、という日も少なくありませんでした。私は寝つきが悪い性質で、横になってから寝付くまでに時間がかかるタイプ。午前0時に布団に潜り込んでも、午前2〜3時まで眠れない、なんてこともよくあります。目を閉じると、頭の中に次から次へとさまざまなタスクが湧いてきて、眠れなくなってしまうのです。■ 40歳を過ぎて、質の高い睡眠をとることの大切さに気付いたVerasimon / PIXTA(ピクスタ)家を建てるきっかけの1つは、思春期を迎える息子の自室を作ること。ならば私にも、ゆったりと休息を取れる部屋があってもいいのではないかと思いついたわけです。建築家の前で「寝室は各自ひと部屋」と告げたら、夫は「それ、オレ知らないよ?」という顔。そりゃそうです。事前になんの相談もしなかったのですから。でも、夫自身、ヘルニアの手術の経験者で腰痛持ちで眠りが浅いこと、春先になると気持ちが塞ぎ込みがちで寝つきが悪くなるなど、加齢による不調が出始めていました。不惑を過ぎた私たちにとって「昨日のいびきがうるさかった」「寝言が面白かった」と笑うことよりも、質の高い睡眠をとることの方がずっと大切。だから別がいいのでは?と今ある現実をそのまま説明したら、納得できたようです。40代半ばに差し掛かって知った疲労や睡眠の悩みは、30代の頃には想像もできませんでした。■ 寝室を別にして1年半経ちましたさて。引き渡しからおよそ1年半が過ぎ、実際に一人で眠るようになってどうかといえば……、シングルベッドとはいえ、自分以外の人の寝返りによる振動や物音を感じずに眠り続けることができるのは、本当に幸せなことだと喜んでいます。目覚めたときのすっきり感に、大きな変化が生まれました。また、夜型で朝がてきめんに弱い私が、朝、気持ちよく起きられるようになったのは大きな収穫。禁煙したとき以上に、時間を有効に使えるようになりました。職業柄、自宅で仕事をする私にとって、仕事部屋としての書斎は必須でした。ですが、もしそういう環境が必要ではないご家庭で、書斎やママスペースのようなゆとりの空間としての個室を考えているのなら、それらを兼ねて、寝室を別々にするのもひとつの手ではないか……とも思います。■ 将来、介護が必要になったときのことも考えたまた、新築の注文住宅の取材をしていて、2階に主寝室を設けるお宅が非常に多いことに気づきました。40歳を過ぎて家を建てることになり、35年後の年齢を考えると、どうしても介護を意識せずにはいられません。どちらかが要介護になったときに、階段の上り下りが毎日、毎回、必要になることに不安があります。でも、我が家のように1階と2階に夫婦それぞれの寝室があれば、先に介護が必要になったほうが1階の部屋を使えばいいのです。1階にあるバスルームやキッチンまで、階段を使わずにアクセスできるのは、非常に大きなメリットだと感じました。あとは、2人同時に要介護にならないことを祈るばかりです(笑)。結局、夫婦の寝室を別にしたのは、大正解だと感じています。
2018年10月16日「ちっちゃな家」シリーズで有名な、建築家・杉浦伝宗さんの名言、狭小住宅の空間3原則「透ける・抜ける・兼ねる」前回は「透ける」についてお話しましたが、今回は「抜ける」ついてお話いたします。■ 狭小住宅テクニックの「抜ける」とは?杉浦さんが提唱した住宅の「抜ける」は、ファッションで言うところの「抜け感」とは異なります。ガチガチに決めず、カジュアルアイテム等で「すき」を作るのがファッションの抜け感狭小なのに広く見える住宅には、以下のこんな共通点がありませんか?それは、「取り払われた壁」「高い天井」「吹き抜け」「オープンなロフトや階段」などで、開放感のある空間になっている点です。つまり床壁天井等を上手に抜くと、風が抜ける・光が抜ける・そして視線が抜けるので、広く快適に住めるという事なんですね。■ 「抜ける」は3原則の中でもハードルが高い?しかし、この「抜ける」の場合は、「設計段階でないとダメでしょ」とか、「既にでき上がっている家や賃貸住宅では無理!」と思われるかもしれません。確かに床壁天井を抜いたり、階段に手を加えるのは、基本大規模な工事になってしまいます。ですが、うまく使って空間に「抜け」を作ることが可能、しかも知らない人はいないポピュラーなアイテムがあります。そう、それは鏡・ミラーを使うことです!■ その先も空間が続いて見える!「鏡」の有効活用法鏡は、左手の壁に大きく貼られていますこの場合、できればなるべく大きくシンプルな鏡を選び、床も映り込む位置に設置すると効果は抜群です。壁一面に大きな鏡を貼ったヨガやダンススタジオが、驚くほど広く見えることを思い出してください。つむぎ / PIXTA(ピクスタ)ただし、場所の検討は充分に行いましょう。鏡に映ったテレビとローテーブル落ち着かないと感じる人もいますし、もし多くの物が映り込んで、ごちゃつき感が倍になってしまっては本末転倒です。これは筆者の狭小平屋での導入例です。長方形の鏡を前の家では、姿見として縦長に使っていましたが、ふと思いついて窓の上に横長で当ててみたら、なんだかとても新鮮に見えたんです。しかも照明が映り込んで、光熱費ゼロで明るくなる(笑)というオマケが付いてきました。ペンダント照明、実際は2つなのに3つ分の明るさ(右が鏡に映ったもの)このように部屋とバランスが取れていて、インテリアにマッチすれば、サイズやフレームデザインは好みのものでも、充分その効果を狙えるでしょう。もう一つ「抜ける」のお手軽な取り入れ方を。大きめのテーブルの天板がガラスだと、視線が床壁に抜けて、圧迫感がありません。これは置くだけでできる、「抜ける」と「透ける」の合わせ技ですね。いかがでしたか?気になる技がありましたら、ぜひチャレンジしてみてくださいね。次回は3つ目の「兼ねる」です。
2018年10月12日『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』が2018年9月29日(土)、30日(日)に東京・新宿の〔ルミネゼロ〕で開催されました。住まいを自分好みに自由に作り上げたいという夢がある人、これから想像を膨らませていきたい人が気軽に第一歩を踏み出せる、クリエイティビティ溢れるイベントの様子をLIMIA編集部がレポートします♪今年も盛り上がりました!リノベーションの祭典マーケット内に設置された『リノベーション・エキスポ・ジャパン in 東京』のフォトブース。リノベーションの可能性や楽しさを、見て、知って、感じて欲しい。そんな想いがカタチとなったイベント『リノベーション・エキスポ・ジャパン』(運営:リノベーション協議会)。9月から11月にかけて、全国18エリアで開催されるうちの東京会場へLIMIA編集部が行ってきました!『リノベーション・エキスポ・ジャパン2018』の東京会場は新宿駅南口にある〔ルミネゼロ〕。エントランスからすぐのところに広がるマーケットにまず心が踊ります♪こちらは、「家をリノベしたら飾りたいなぁ」と想像を掻き立てられる照明がずらりと並んだ〔アンティークディーラーズクラブ〕。ひとつひとつに味があり、時間を忘れて選んでしまいます。そしてこちらはモノトーンアイテムにこだわった〔sisdesignMONOTONEMARKET〕。インテリアを損なわないブラック&ホワイトの雑貨が手に入るって嬉しいですよね!つい手に取ってしまうクールなアイテムばかり。この他にもマーケットにはアウトドアグッズのお店やアロマ&ビューティーのお店などがあり、賑わいを見せていました。未来の暮らし方を学べるトーク&セミナー『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』の注目コンテンツはトーク&セミナー。固定概念にとらわれない、自由なライフスタイルを体現するパネラーが登壇します。9月29日(土)の11:30の回は、吉祥寺の〔ダンディゾン〕のオーナー・引田ターセンさん、代々木八幡から始まった人気レストラン〔LIFE〕のオーナー・相場正一郎さんによるトークセッションでした。左から〔ダンディゾン〕の引田ターセンさん、〔LIFE〕の相場正一郎さん。オープン当初、スタイリッシュな佇まいが「本当にパン屋さん!?」と驚かれて話題となった〔ダンディゾン〕。一方の〔LIFE〕は、誰かのお宅に招かれたようなアットホームなレストランとして代々木八幡、参宮橋、藤沢、代官山で展開中。それぞれのお店の世界観も素敵ですが、両オーナーがリノベーションしたご自宅もこだわりが凝縮された空間で、リノベのお手本になります。ターセンさんは大手企業をリタイア後に奥様に「生活者としてフルリノベーションされた」というお話が印象的でした。また相場さんは東京の自宅以外に那須にロッジを構えていて、週末はそこで過ごすというデュアルライフを実践中。その形がゴールではなく、いまも自分にとってしっくりくる生活スタイルを模索しているのだそうです。リノベーションはそれなりにお金も手間もかかるから踏み切るのにエネルギーが必要ですが、お2人のお話を聞くうちに、「いきなり完成形を求めなくても、できる範囲からトライして、自分らしいライフスタイルを目指していけばいいのかもしれない」と思い至りました。自分の「好き」が見つかるギャラリー続いてはリノベの事例が展示されたギャラリーコーナーです。さらにスタンプコーナーにもなっていて、「誰と住む?」「暮らしの中心は?」「なにで飾る?」をテーマにした3つのゾーンごとに好きなスタンプを押すことができます。スタンプを押すのは、エントランスで手渡されたオリジナルトートバッグなんです!「壁面にこんなクローゼットが欲しいなぁ」「窓の外は海の見える景色がいい」などなど、スタンプの柄を選ぶうちに、自分が家に求めているものが見えてくるという楽しい仕掛け。こうして遊び感覚でアウトプットすることで、意外と自分の内側が見えてくるものですよね。“オリジナル”を持ち帰ろう!工作ワークショップワークショップも『リノベーション・エキスポ・ジャパン』の人気コンテンツのひとつです。子どもから大人まで楽しめる工作メニューが充実!お米のねんどで遊んだり、ねじブロックでオブジェを作ったり。エキスポに一緒にきてくれたお子さんの息抜きタイムにおすすめですよ。LIMIAスタッフが挑戦したのは大人向けワークショップ。〔AROMAVITA+〕によるオリジナル・アロマバスソルト作りです♪バスソルトって気分転換になるからいくつあってもいいですよね。それが自分好みの香りだとなおよし。まずは香りの方向性をチョイス。元気が出てシャキッとする系、リラックスできる系……。そして選んだ精油を岩塩に加えていきます。一箇所に集中しすぎないようにスポイトでまんべんなく垂らしていくのがポイントだそうです。精油が岩塩にゆきわたるように袋をシャカシャカと振ったら、瓶に移し替えて完成!好きなアロマで作ったオリジナルのバスソルトに感動です♪選んだ精油の種類を記録しておけば、後日自分でまた作ることができますよ。バスソルトって意外と簡単にできるんだな、と驚きました。リノベをゼロからはじめる人のための相談コーナーこちらは『リノベーション・エキスポ・ジャパン』のメインゾーン。「こんな家にしたい!」を叶えてくれるリノベーション会社による相談コーナーです。『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』には17社がブースを出店。工事を検討中の人にとっては、各社の強みや個性を一挙に知ることができるまたとないチャンス。「まだ物件も探していないけどリノベに興味がある」「そもそもリノベの良さをまだわかっていない」など、興味・関心の度合いに応じてプロが相談に乗ってくれるから安心です。すでに家を保有していても、新築に憧れを抱いていても、おしゃれな事例を見ているうちに「リノベしたい!」とがぜん気持ちが高まってきますよ!リノベーションあるあるです。ワークショップあり、マーケットあり、セミナーありと、会場で一日楽しく過ごせる『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』でした。『リノベーション・エキスポ・ジャパン』は11月中旬まで続きます。詳しい場所と日時はホームページでご確認ください。具体的にリノベをしてみたい人は、来年開催の『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』へもぜひ足を運んでみてくださいね。夢の住まいづくりを、長期的に計画していきましょう!リノベーション・エキスポ・ジャパン 2018
2018年10月10日暑い夏が過ぎ、クリエイティブな事をするのにちょうど良い季節が到来しました。中でもオススメなのが、手をつかって考えることができるDIY。でもDIYって、いざやろうとしても何からスタートすればいいか分からない、という方も多いと思います。自分自身で一からデザインするのも初めはすごく難しいし……。でも、モジュール化されたデザインでかつ気軽にDIYが体験できちゃうプロダクトがあるんです。その名も「モクタンカン」。今回はその「モクタンカン」がなぜDIY初心者にオススメなのか、どんなプロダクトなのかをご紹介します。■ クランプで固定するだけ!の簡単DIYモクタンカンの組み立て手順はいたってシンプル。あらかじめ用意したモクタンカン同士をクランプで固定していくだけのシンプルでカンタンな作業です。17ミリのラチェットレンチ1本で組み立てられるので、初心者にとってハードルとなりやすい工具などの準備がいりません。組み立てるものの大きさや細かさによって、組立作業にかかる時間がちがってきますが、それはDIYの醍醐味ですね。■ 工夫次第でなんでもできちゃう優れものこちらは、骨組みに布を張ったハンモックです。気持ち良いお昼寝ができそうですハンガーラックにだってなっちゃいます。これは実際のお店でも使用されています屋外映画のスクリーンにだってなります。企業のエントランスのインスタレーション等の棚につかわれることも。■ 環境にも優しいエコなプロダクトもともと日本は森林大国。国土面積の約7割が森林だと言われています。平成28年度の日本の木材自給率は34.8%。森林大国にしては低い値ですよね。この「モクタンカン」は、「きちんと管理された品質に保証を持てる国産材を、しっかりと流通させていく」というヴィジョンに基づき、北海道の下川フォレストファミリー株式会社という工場から産地直送された、安価で質の良い木材を利用したエコロジカルな商品なんです。DIYを始めてみたいという方や、なかなかちょうどいい家具がない、という方はトライしてみてくださいね。【モクタンカン】クランプ800円〜1,500円(税込)丸棒(トドマツ)L=800mm 1,800円(税込)、1800mm 3,200円(税込)原産国日本取材協力:A+Sa 株式会社アラキ+ササキアーキテクツ
2018年10月10日今回は建築業で働いているカルロスさんの家を訪問しました。カルロスさんは建築で使われる素材に対して深い愛情を持っている人です。建築素材だけではなく、家具や家にある小物類にいたるまで大切にしています。古くなって捨てられているとどうにかして使えないかをいつも考えています。そんなカルロスさんの家をご紹介いたします。■ スペインの典型的な家をリノベーションスペインの細い道。ここにある家はどれも少なくとも築150年です。カルロスさんの家は左側の列の2番目。家の下にあるトンネル状のアーチをくぐり抜けて行きます。ここではよく観光客が写真を撮影してるんですよ。くぐり抜けると、玄関が見えてきました。■ 玄関は2階に!下にある入り口ではなく、階段を登ると玄関です。階段にもタイルが貼り付けてあります。■ 好きなものを好きなように飾る!こちらが玄関です。玄関には額装された古い家の窓。存在感があり、どっしりして、そしてこの窓を何百年もの間に開け閉めしていた人たちの息遣いが感じられます。玄関を上にしたのは、日の当たる部屋を居間と台所にしたかったから。いつもいる場所や人を招待する場所は明るい方がいいですよね。■ 窓のある明るいキッチンキッチンは自然光の中でお料理したい。お風呂やトイレ、キッチンには窓がない場合がありますが、湿気のこもりやすいところこそ窓が必要です。キッチンの家具の台の部分はスペインでは石を使うのが普通です。大理石やブラジル産のグラーノと呼ばれる石などですが、カルロスの家の台所はイケアの板を使っています。木のぬくもりがあっていいですね。窓のあるキッチンはやはり和みますね。おまけにここは2階。そして興味深いことに坂の多い街は裏と表とでは高さが違うため、実は表通りからすると4階に当たるのです。そのためこの窓から誰かが覗き込むということもなく、時には鳥のさえずりを聞きながらお料理ができます。キッチンはオープンタイプでダイニングとリビング、応接室、すべてを兼ねた部屋が隣に繋がります。キッチンがオープンだと臭いや煙などがソファーを汚してしまうのではないかと心配する人もいるかもしれません。だからキッチンには窓が必要なのです。そして、ちょっとしたおつまみを作りながらゲストとおしゃべりができるキッチン。理想的です!あちらこちらに並べられたアート作品。■ 1階に降りると「プライベートスペース」こちらは階下にある寝室。寝室はふたつあります。書斎。日本的に言えば多分4畳半くらいの小さなスペース。でも、その方が集中できます。シャワーのスペースにも窓があります。窓にもお気に入りのものがたくさん。バスマットは丸めてカゴにのせています。バスマットのカゴの右側は古いお香を炊くもの。骨董品です。多分イスラム教の寺院で使っていたものでしょう。左側にある蓋つきのツボ。日本なら梅干しが入っているようなツボですが、これはトイレのゴミ箱です。床は磨いていない大理石。自然の石の温かさを重視しています。■ 好きなものが周りにある幸せキッチンのある階の上は屋根の一部を取り払ってルーフバルコニーにしています。お気に入りの骨董品や素材についての詳細は、またの機会に紹介します。
2018年10月06日今回訪れたのは、世田谷区にある築42年のマンションをリノベーションして暮らす、Aさんご夫婦のお宅です。旦那さまがグラフィックデザイナー、奥さまはグリーンコーディネーターというクリエイティブなご夫婦が設計を依頼したのは、建築家・松島潤平さん。こだわりを共有しながら作り上げたおうちは、2人の美意識が詰まったステキな空間に仕上がっていました。さらに、奥様から教えていただいた、インテリアを彩る「グリーンのコーデポイント」も必見です♪クリエイティブな夫婦が求めた理想の住まいスケルトンにした部分を残しながら、広々とした温もりのある空間に壁を取り払った広々とした空間に、温もりのある木材と、コンクリート、瑞々しいグリーンの質感が共存し、居心地のいい空間に仕上がっているA邸。ご夫婦ともども、以前から「自分の住むところを自分でデザインしたい」という思いがあったといいます。まずは、ご夫婦がリノベーションを決めたきっかけを伺いました。「いままで賃貸の部屋に住んできて、引越しの度に不満点を解消する部屋を選んでも『ここが嫌だ』と気になるところがどうしても出てきて。『賃貸だと満足のできる部屋には住めないな』という実感がありました。かなり前から中古マンションのリノベーションには興味があって、たまたまこのマンションが売りに出ていたのを見つけた時に、これならやりたいことが色々できるんじゃないかと思って購入を決めたんです」(ご主人)「ほしい条件がそろっているこの物件と出会えたのが大きかったです。壁を取り払ったワンルームの部屋にしたいと思っていて、もともとは3LDKの部屋でしたが、壁を取り払った後の想像がしやすい間取りでした。さらに、近所に住んでいたので、生活圏も一緒で、リノベーション後の暮らしのイメージもしやすかったんです。古いマンションですが、修繕工事もされていて、新耐震マンションだったのも決め手でしたね」(奥さま)インダストリアル系のインテリアが2人そろって好きだというAさんご夫婦。リノベーションにおいても、必要最低限の状態に、暮らしに必要なものを少しずつ足していける、機能的なお部屋が理想だったそうです。理想を叶えてくれる頼もしい相棒として、建築家に依頼ご主人が自ら作成した内装イメージイメージが明確にあったこともあり、ご主人はなんとお部屋の内装イメージを作成。そのイメージを元に、設計を建築家の松島潤平さんに依頼したそう。「中古マンションって、実はスケルトンにしてみないとわからないことが沢山あるんです。例えば、天井からハンモックや植物などを吊るせるようにしたいと思っても、工事を始めてみないと吊るせるのかわからないし、予算が変動する可能性もある。そういった場合のプランも松島さんに考えていただきました」(奥さま)Aさんの住むマンションは築42年。古いマンションをスケルトンにすると、ボルトが躯体壁面全体に等間隔に突き出ていたり、窓枠の処理が甘かったりと、思いがけないところの対処に迫られることも。そういった「開けてみないとわからない」中古マンションのリノベーションは、途中途中で臨機応変に対処する必要があったといいます。さらに、建築家ならではの提案に驚いたこともあるそう。「最初、来客用に部屋を作ることも考えていたんですけど、それだとあまり間取りが変わらないので、結局全て取り払うことにしました。でも寝る場所と生活スペースは気分を変えたかったりもする。そこで、壁と床の色を変えてゾーンを分けるという方法を提案してもらったんです。このアイデアは目からうろこでしたね」(ご主人)壁や床の色の塗り分けで「見えない壁」を作るという手法は、同じくキッチン部分にも生かされています。遊び心と機能性。あらゆるところに意匠が凝らされたおうちもともと水回りが1箇所に集約された間取りの物件を選んだこともあり、配置をそのままにリノベーション。清潔感のある真っ白な浴室は、既存のユニットバスを撤去したあとの空間をFRP防水材で塗りこめることで、コストを抑えながら、広さと高い防水性を確保しています。部屋の中心部にあるフラットな木の壁は、裏側にあるキッチンや浴室、トイレの水回り部分を目隠ししつつ、収納スペースとして活用。お部屋を美しく見せながら、機能性も追求しています。照明のスイッチは、一点ものの真空管アンプを制作している知人に特注で作ってもらったそう。フラットな木の壁と金属パーツとのコントラストが映えます。キッチンは料理好きのご主人仕様に!料理が得意だというご主人。カウンターテーブルがついたキッチンにもこだわりが詰まっています。「設計はプロである松島さんに任せながら、インテリア的な部分は全体的にかなりこだわりましたね。キッチンの壁には、ニューヨークの地下鉄構内に使われている『サブウェイタイル』を意識して選びました」(ご主人)コンロとオーブンは火力の強い業務用を導入。以外にも、お手頃価格なのだとか。料理好きだけでなく、インダストリアル好きにもたまらないキッチンです。インテリアもステキ!奥さま直伝、グリーンコーデのポイントお部屋を見渡すと、グリーンがいたるところにセンス良く置かれています。実際に仕事でオフィスやお部屋のグリーンコーディネートをしているという奥様に、センス良くグリーンを置くポイントや、植物の選び方についてアドバイスをしていただきました♪「まずは、『シンボルになるもの』『風景になるもの』『趣味性のあるもの』『機能性があるもの』といったふうに、植物に意味合いを持たせると選びやすくなります」(奥さま)例えば、棚に置かれたグリーンは「風景になるもの」。さらに、下に垂れるタイプのグリーンを使うことで縦のラインが生まれ、空間の印象をがらりと変える「機能性」もあわせ持っています。一方で、壁にかけられたグリーンは、「趣味性のあるもの」として、アートのような主張の強いグリーンを選んでいます。寝室のパーテーションに置かれた、全方向に広がる3つのグリーンは、目隠しの「機能性」が。「グリーンは置き場所によって、上に伸びるものがいい、下に伸びるものがいいと、適している品種が決まってきます。それを知っているだけでも、ひと部屋全体をコーディネートできますよ」(奥さま)難しい印象があるグリーンコーディネートも、グリーンにどういう役割を持って欲しいか、植物がどう成長するかを抑えれば挑戦できそうです!植物とくらしながら、一緒に成長していく。そんなグリーンのあるくらしを実現してみましょう。満足のいく住まいづくりは、自分の「好き」を大切に「スケルトンにしてみたら、いい意味でも悪い意味でも、想定外なことが沢山あった」というAさん宅のリノベーション。施工費も当初の想定費用から+100万円ほどかかったそうですが、しっかりと話し合いながら細かい部分も決めていったことで、納得の仕上がりに。「賃貸に住んでいた時に感じていた『この部分はちょっとな......』と気になる気持ちも完全に消滅して、ストレスフリーになりました(笑)」(ご主人)「この家、実は春には桜の花が楽しめるんです。これから20年住む家として、色々な使い方ができる家にすることができたので、気に入っています」(奥さま)自分たちの「好き」を大切にしながら、物件の状態や予算など、現実的な問題をうまくすり合わせて決めていく。そのバランス感覚が、理想の住まいを実現させたのかもしれません。世の中のノイズが建築を面白くする。建築家 松島潤平氏インタビュー松島潤平建築設計事務所ウェブサイト●取材協力松島潤平建築設計事務所●テキスト宇治田エリ●写真土佐麻理子
2018年10月03日フランス・パリを拠点に活動する気鋭の建築家・田根剛の展覧会「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building」が、東京オペラシティアートギャラリーで10月19日から12月24日まで開催。連携企画として「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research」を、乃木坂のTOTO ギャラリー・間で、10月18日から12月23日まで開催する。〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉東京 2012image: courtesy of DGT.フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家・田根 剛。20代の若さでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として「エストニア国立博物館」の国際設計競技に勝利し、選出から約10年の歳月を経た2016年秋に同プロジェクトが竣工を迎えるなど、国内外の注目がさらに高まっている。また、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」は幅広い層に知られるきっかけとなった。2017年のDGT.解散後はAtelier Tsuyoshi Tane Architectsをパリに設立し、活動の場をさらに広げている。本展は、「Archaeology of the Future— 未来の記憶」を共通のテーマにしながら、田根の密度の高いこれまでの活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を、ふたつの会場で紹介。東京オペラシティアートギャラリーでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」や「古墳スタジアム」といった代表作や、最新プロジェクトを大型の模型や映像などによって体感的に展示する。〈エストニア国立博物館〉タルトゥ 2006-16photo: Eesti Rahva Muuseum / image courtesy of DGT.本展の冒頭、“gallery 1”では田根がどのプロジェクトにおいても実施するイメージとテキストを使ったリサーチの手法を、天井高6mの空間を使って展示。場所から連想される膨大なイメージを壁面に貼り、分類/調査を繰り返すことで思考を整理していくこの方法を田根は「Archaeological Reseach(考古学的リサーチ)」と呼んでいる。本展では、「記憶」という概念そのものを、リサーチする実験空間として体験できる。“gallery 2”では、「エストニア国立博物館」や「新国立競技場案 古墳スタジアム」をはじめ、現在進行中のプロジェクトなどを含む7つの作品を、展示室全体を使って空間的に展示。各プロジェクトは1/10から1/100のスケールの大型模型で紹介され、全長10mにおよぶ「エストニア国立博物館」は、身体的な空間体験を可能にする。いずれのプロジェクトにも「Archaeological Research」の過程で集められたさまざまな資料やオブジェクトが伴い、ひとつの建築ができあがるまでの思考をたどる手掛かりとなる。また「エストニア国立博物館」については、設計競技に提出された模型の実物が展示される他、短いながらも密度の高い2004年以降100作品以上の田根の全活動を、30mのコリドールを使ったタイムラインとして総鑑できる展示も登場する。そして「建築は未来の記憶をつくること」という田根の思想に共鳴したアーティストの藤井光が、各プロジェクトの映像制作で参加。歴史や記憶の生成に着眼し、現代社会の諸事項を再検証する作品で知られる藤井が、竣工プロジェクトおよびパリの田根のアトリエを訪問し、撮影を行った。「エストニア国立博物館」は、2画面の大型プロジェクションで展示。場所の記憶を継ぐ建築とそこに住まう人が、あらたな記憶を重ねながら未来をつくっていく姿を見ることができる。〈Archaeological Research〉 2018TOTO ギャラリー・間においては「Search & Research」に基づき、建築における思考と考察のプロセスが展開され、「Archaeological Research」の方法論を展観。ふたつの展覧会は、場所の記憶をさまざまな角度から分析することで新たな系をつくり、未来につながる建築へと展開させていく、田根の探求と実践のプロセスを総合的に提示しようとするものとなる。「記憶は現在を動かし、未来をつくる ——」 この信念にもとづいた田根の創造は、都市の担い手である私たち一人ひとりにとって建築の持つ力や使命、未来への可能性を考えるきっかけとなるだろう。【展覧会情報】田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building会期:10月19日〜12月24日会場:東京オペラシティ アートギャラリー住所:東京都新宿区西新宿3-20-2時間:11:00〜19:00、金・土11:00〜20:00(最終入場は閉館の30分前まで)休館日:月曜日(12月24日は開館)料金:一般1,200円(1,000円)、大・高生800円(600円)、中学生以下無料 ※()内は15名以上の団体料金、障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料、割引の併用および入場料の払い戻し不可 ※同時開催「収蔵品展064 異国で描く」、「project N 73 中村太一」の入場料を含む ※収蔵品展入場券200円(各種割引は無し)あり田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research会期:10月18日〜12月23日会場:TOTO ギャラリー ・ 間住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO 乃木坂ビル3F時間:11:00〜18:00休館日:月曜・祝日(11月3日、12月23日は開館)料金:入場無料
2018年09月28日建築家の仲條雪さんの実家について、子ども時代の思い出から、今だから話せるエピソード、実家を巣立つときの心境などをざっくばらんにお話を伺いました。仲條雪さんにとって実家とは?A. 街や暮らす人も含めて、帰る場所 「兄が2人いるのですが、父が私たちの部屋の壁をぶち抜いちゃったので、子ども部屋は広かった(笑)。ただ、築35年と老朽化していたし、梁も落ちて強度的にも怪しくなってきて……。そんな折、父から“おまえ、建ててみるか?”と言われたんです」私が子どもの頃、父・仲條正義がデザインした家具(写真上)に合わせて、スパンを決めました」という父親のアトリエは、前の家の居間の雰囲気を引き継ぐ設計。愛猫も居心地がよさそうだ建築ユニットJAMMSの建築家・仲條雪さんの作品「仲條パパの家」は、彼女の実家。「あまりこじゃれるな。とはいえ、少しはこじゃれろ。建築家が建てたような家はイヤだからな」——。これが父親からのオーダー。さながら禅問答のようなオーダーだったが、それもそのはず。お父上は日本を代表するグラフィックデザイナー・仲條正義さん。自分の父親とはいえ、一流クリエイターの希望に沿うのは大変そうですが……。「前の家では、父は居間でよく仕事をしていたので、新しい家でも父のアトリエはその居間と同じようなつくりにしました。ただ、母にやさしい家にしようと考えていたので、私や父が“こっちのほうがカッコイイ!”と突っ走らないように気をつけてましたね(苦笑)」しかし、雪さんは実家が完成したら、ひとり暮らしを始める。せっかく、思い入れのある家ができあがったのに、なぜ?「亡くなった母とは距離が近すぎて、私も大好きだったけど、母も私を頼りにしていて、このままじゃマズいって思って……。この家を建て替えるとき、いい機会だからと35歳でひとり暮らしを始めました。今は横浜に住んでいますが、実家には私の事務所を構えているし、父の顔を見に週1回は顔を出しています」仲條さんにとって、実家とはどんな存在なの?階段を挟み、雪さんの事務所の隣に父親のアトリエがある。部屋にいながらにして互いの存在を確認できる。「吊り戸棚がガラスで、父がよくのぞくので、クッションでふさいでいます(笑)」仲條さんにとって、実家とはどのような場所なのでしょうか?「前の家では、新盆になると庭先に出て、家族みんなで迎え火をするのが恒例。父が“ご先祖さまに飲ませてあげよう”と言って、それを口実に縁台でお酒を飲んだり(笑)。夏の夕方になると打ち水をして、庭に集まったり……っていうのが実家の原風景ですね」まさに古き良き昭和の趣のある雰囲気。今の実家でもその雰囲気を残している空間になっているとか。「でも、新盆には家族が集まって迎え火をしています。私にとっての実家は、街やそこに暮らす人たちも含めて、帰る場所。誰かに聞かなくてもどこに何の店があるか分かっていたり、話し込むわけじゃないけど“薄〜い”知り合いがいたり、ホッとしますね(笑)」pfofile1970年、東京都生まれ。’94年、日本大学理工学部建築学科卒業後、ワークショップに入社。木下道郎/ワークショップを経て、’02年、建築家・横関和也が主宰する建築ユニット JAMMSに参画photo seiji ito
2018年09月21日建築家・石井秀樹さんの自邸は、2年半かけて探し求めたという鎌倉の丘陵地の一角に建っています。建物は正方形の総2階。古都の落ち着いた雰囲気と緑を丸ごと味わえるようにと、LDKを配した2階は4面すべてガラス張りに。一方でバスルームや寝室などプライベート空間を集めた1階は外部に対して閉じていて、その対比が豊かな空間を生んでいます。■ 緑の眺望をぐるりと楽しむ4mのキッチンカウンター視線を遮る柱も壁もない、大空間の2階LDK。開口高は1.6mと低く抑え、建物を覆うように屋根がかかっているので、開放的でありながら屋根に包まれているような安心感も味わえます。最も美しい景色が広がる東側に向けて配置された家具のようなキッチン。その主役は、冷蔵庫やレンジフードなどをすべて下部に収容した長さ4mのカウンターです。食器をはじめ炊飯器や電子レンジなどの家電製品は背部の収納に収め、スッキリとした空間を保っています。キッチンとオープンにつながるリビングダイニングは、くつろげる畳敷きにローテーブルや低座椅子を組み合わせて。蓄熱床暖房のおかげで畳に座るとほんのり温かく、発熱ガラスを使った窓は結露に悩まされる心配もないそう。コンクリートのようなカウンタートップは、ベルギーの左官材「モールテックス」で継ぎ目のない仕上げに。オープンなキッチンで極力隠したいレンジフードは、イタリア製の昇降タイプを採用。カウンター内部に格納でき、使用時はスイッチを押すとせり上がってくるスグレモノです。■ 壁も扉もない!露天風呂のような十和田石のバスルーム緑が迫り来るような開放感あふれるガラス張りの2階から一転、寝室などプライベートな空間を配した1階は、外部に対しては閉じた箱。窓も極力小さくし、ほの暗い中で落ち着いた雰囲気を楽しめるようにしています。そんな1階で印象的なのが、テラスに面した壁も扉もない十和田石のバススペース。窓をフルオープンにすれば、まるで露天風呂のように気持ちのいい空間が生まれます。テラスからバススペースを見た様子。洗面カウンター左側の両開き戸で隠れた部分に、洗濯機を収納しています。玄関から通路を進んでいくと、左奥の白いカーテンの向こうに十和田石の浴槽が現れるドラマチックな間取りです。「バスルームは1日の中で使う時間は短いのに決まったスペースを取られてしまい、そのぶんほかの部屋が狭くなります。オープンな空間にすれば視線が抜けて空間全体に広がりが与えられるので、限られたスペースも有効に生かせると考えました」と石井さん。視線が気になる場合は、入浴時のみシャワーカーテンを閉めればOK。湿気もこもらず、掃除も簡単です。■ 黒いボックスを中心に回遊する機能的な動線1階の中心には、外壁の黒い焼杉板と呼応するように黒い壁で囲われた大きなボックスが配置されています。ボックスの周りに玄関や寝室、テラスに面したオープンなバスなどが配され、シームレスにつながる設計。床の高さや仕上げを替えることで、つながりつつ緩やかに空間に変化をつけています。中央の黒いボックスを囲んで右側に玄関、奥に寝室があり、左手に行くとバスルーム。さらにボックス内部にはトイレや洗面、靴収納なども備えられていて、ぐるぐる回りながら身支度ができます。床にはしっとりとした質感の敷瓦を採用。「住宅を設計する際は、いつも回遊性を念頭に置いています。外階段も設けてどこも行き止まりなく、ぐるりと動けるので、機能的で快適性も高まります」と石井さん。中央のボックス内部はウォークスルークロゼットで、ここも行き止まりなし。ボックスの玄関側には大容量の靴収納も設けています。ほの暗い1階と、開放的な2階。豊かな表情を楽しみながら、快適に暮らせる住まいです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ『住まいの設計2017年05.06月号』も参考にしてみてくださいね。設計/石井秀樹建築設計事務所撮影/飯貝拓司【巻頭特集】自分らしいキッチン&くつろぎのバスルーム北欧スタイル、アジアンリゾート、モダンテイスト…理想のキッチンやバスルームスタイルは、十人十色。今号は、住まい手の希望に設計者を叶えた、4つのキッチンと4つのバスルームをご紹介します。「使い勝手にこだわったプロ仕様の土間キッチン」や「開放感と非日常感を味わう至高のリラックス空間のバスルーム」など、きっとあなたの好きなスタイルが見つかるはずです。
2018年08月13日憧れのおうちは「開放感のある家」という方も多いはず。天井まで続く大きな窓、ウッドデッキや縁側、アウトサイドリビングなど憧れは尽きないもの。今回は、そんな願望を叶えた開放感たっぷりのステキなおうちを特集します♪お気に入りの一軒をぜひ見つけてみてください♡日本ならではの縁側で家族だんらんを現代の家にも一昔前までは縁側で家族だんらん、なんて風景がありましたが今では縁側のあるおうちも少なくなりなりましたよね。そんな縁側をモダンに取り入れたのがこのおうち。全面開放できる窓なので、開け放てばリビングと縁側が一体化するようなデザインです。ウッドデッキに囲まれた楓の木がシンボルツリーの役割を果たし、家族で集まりたくなるスペースに♪プロの設計士が自分の家を本気で設計したらこうなった。こだわりの”縁側モダン”〜『10年愛♡の家』Vol.5〜窓から見える絵画のような日本庭園がすぐそこにフローリングと窓のサッシの色を木質系に統一することで、サッシ枠の存在感が和らぎますね。そんな窓の先に見えるのがまるで絵画のように美しい和風庭園。こんなに景色をいつでも眺められるなんて、なんてステキなんでしょうか。和な空間に心が和みます。窓回りを愉しむコツ|サッシ色の選び方(室内)もはや外!自然とつながるアウトサイドリビング「これぞ開放感!」と言いたくなる、ウッドデッキを兼ね備えたおうちです。自然に囲まれた白くモダンな邸宅は全面開放の窓と大きなウッドデッキのおかげで、外とダイレクトにつながっています。天気のいい日には、リビングの窓を開け放って思わず外で過ごしたくなるステキな空間です♡思わず外で過ごしたくなる!おしゃれなウッドデッキ&アウトサイドリビングまとめ壁一面の窓から光がたっぷり注ぎこむこちらは、天井まで続く壁一面の窓ガラスから広いお庭が眺められるおうち。外からの光や風をたっぷりと取り込むことができます。黒のサッシがモダンで、空間の締め色としても一役買っています♪【話題】有名漫画家さんが建てた理想の「アトリエ兼平屋住宅」に潜入!!開け放たれた窓から今にもパンのいい香りが漂ってきそう♡こちらはパン屋さん。大きな県道に面した建物でなので、道路からでもお店の中が見えるように建物の正面と側面に窓を設置したそう。6枚のガラス扉で構成された正面入り口を開け放てば、今にも焼きたてのパンの香りが漂ってきそう♡お客さんも入りやすい明るい空間です。Boulangerie 粉桜おわりに今回は大きな窓のあるおうちを特集しました。光や風がたくさん入ってくるので開放感たっぷり!また、ウッドデッキやアウトサイドリビングで、お部屋と外がつながっていているのもとってもステキですよね。他にもLIMIAではさまざまなおうちが紹介されているので、憧れの一軒を見つけてみてくださいね!
2018年08月07日屋上のあるおうちに憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか?敷地が狭いからなど、スペースが限られるおうちほど、屋上はよりよい暮らしを演出してくれるかもしれません。今回は、すてきな屋上のあるおうちをご紹介していきます♪憧れの屋上庭園をわが家にも!高級マンションやリゾートホテル、テレビドラマなどでもよく見かける「屋上」。開放的でおしゃれな空間がわが家にあったら……と憧れをもつ方も多いのではないでしょうか。今回は、すてきな屋上空間を実現したおうちをご紹介していきます♪至福のひととき……憩いの空間を実現リビングから伸びるハシゴ階段を登ると、そこには至福のひとときをゆったり過ごせる空間が。実はここ、ビールを楽しむために作った空間なんだとか!このように、下の階の屋根を利用して作られる「ルーフバルコニー」。ひとりでホッとくつろぐための空間を演出しています。木目調のお部屋に合わせて、バルコニーもウッドデッキに。周囲の自然や、バルコニーから降り注ぐ陽の光とも相まって、お部屋全体が開放的でナチュラルな印象になっていますね。屋上というと文字通り「最上階の屋根の上」という印象があるかと思いますが、このルーフバルコニーという形もまた、開放感があって魅力的ですね!▼詳しい記事はこちら▼住宅に屋上をつくった理由お庭がなくてもガーデニングをこちらのおうちは、敷地面積がわずか15坪のいわゆる「狭小住宅」。なので、敷地内にお庭がなかったんだとか。そこで、3階の上に屋上を作りました!屋上には、実は重量制限などの細かな建築基準が存在します。こちらの屋上は、屋上菜園にすることを見込んで、土の重さなどを計算したうえでの構造に。このように、屋上を作るためには用途や具体的なイメージをもつことが大切と言えそうですね!▼詳しい記事はこちら▼木造でも屋上庭園都心の住宅に自然を想設計工房さんの手がけた物件は「自然ととも生活できる家」をテーマに、こんな屋上空間が生まれました。芝生とウッドデッキのツートンで、お子さんの遊びからお洗濯などの家事まで、住・遊そろった使い勝手のよさそうなスペースになっていますね。とくに都心で、屋上やバルコニーの注意点としてあげられるのがプライバシーの問題。こちらのおうちは、鮮やかな赤い塀で目線をさえぎっているから安心です。お部屋の中央は吹き抜けになっていて、シンボルツリーが各階を貫いています。屋上から取り込んだ光がおうち全体に注ぎ込む構造になっているから、家じゅうどこにいても明るく開放感を得ることができそうです♪実は都心の住宅密集地に位置しているおうちなのですが、空間の使い方しだいで、これだけの開放感を手に入れられるんですね!▼詳しい記事はこちら▼上下に2つの庭を持つ家限られたスペースを最大限に活用する!今回は、「屋上」をテーマにさまざまなおうちの屋上をのぞいてみました。都心や住宅密集地では、生活スペースも限られるから、余暇の空間は手の届かない存在と感じがちです。でも、今回ご紹介したように「屋上」という空間によって、今あるスペースを最大限活用することで、自宅がより快適な場所にすることができるんですよ♪みなさんもぜひ、「屋上」という選択肢をもっと身近に感じてみてくださいね!▼屋上リフォームに関するハウツーはこちらから▼屋根に屋上・テラスを作りたい!屋根リフォームで実現できる?リフォームで自宅に夢の「屋上庭園」を!快適な空間を実現するためのポイント
2018年07月22日自然豊かな雑木林を見下ろす約106坪の傾斜地に建てられた、建築家・平真知子さんとドッグトレーナーの夫の家。玄関・室内間は床がフラットにつながり、イヌも夫妻も移動しやすい仕様です。夫妻とワンコ、さらに2羽のインコが仲良く暮らす憩いの空間をご紹介します。■ 時間帯に合わせ、1日中快適でいられる六角形の住まいそれまで集合住宅住まいだった夫妻が見つけた物件は、雑木林が眼下に広がる傾斜地。ドッグランもOKの余裕ある敷地に、地上2階&地下1階の家を建築しました。設計はもちろん建築家である妻。「採光と眺めを最大限得られるよう、六角形の家をプラン。1階は吹き抜けのダイニングを中心に配置し、その周りを生活空間やイヌのスペースが取り囲むデザインです」と妻。平さん夫婦の愛犬は、ピークという名のゴールデンレトリーバー(オス・2歳)。新居完成のタイミングで迎えた、念願の大型犬です。ピークの基本的な居場所は日当たりのいい南側。掃除のしやすいタイル敷きで、扉は必要に応じて開閉します。開口部は引き違い窓で、直接外に出られて便利!ダイニングと周囲の部屋との間には扉がなく、ピークは移動が自在。「イヌができるだけ広い空間で過ごせるよう配慮しました」(妻)。ピークの居場所からダイニングを横切ると玄関です。東側の玄関にはお散歩グッズを置き、こちらからも出入りOK。置き家具は最小限とし、ピークが動き回ってもぶつからないようにしています。タイル敷きの床はひんやりとして、暑い季節は「避暑地」として活躍!ピークの居場所の隣の窪みを利用したのがキッチン。壁に沿った扇型で、手が届きやすく使いやすそう。「ピークのご飯をつくり始めると、ピークが一歩ずつにじり寄ってきて、よだれをポトッと垂らします(笑)」(妻)。■ リビングにはインコが!空間に放つ「放鳥」が日課!南西側の部屋はリビング。キッチン、ダイニングとひとつながりで動線が快適そう。そのリビングの主が、セキセイインコのプルプル(5歳)とポン(3歳)。インコたちは夫妻が以前から飼っていた、いわばピークの先輩です。「インコも家族の近くが好きなので、鳥カゴをリビングに置くようにしました」(妻)。インコは1羽1つずつのカゴですが、カゴの手前部分で連結させ、自由に行き来できる工夫をしています。「DIYでつなぎました。運動量も増えていいようです」(夫)。地震対策のロープも止まり木として活躍!インコの適度な運動のため、1日1~2時間「放鳥」を行っています。「ピークの部屋や眺めの部屋などのスクリーンを下げ、目の届く範囲で放ちます。スクリーンはピークのちょっかい防止の目的も」と妻は話します。一方、北側は階段室で、壁面に沿って大容量の書棚を設置。踏み板に腰かけながら読書でき、書斎としても機能します。「ピークは大型犬なので隙間から落下しませんが、転げ落ちないよう踊り場を広く取り、さらに安全策として途中で折れ曲がる設計にしました」(妻)。■ 2階はドーナツ状のワンルーム。愛犬と楽しくかくれんぼも!2階は、中央の吹き抜け部分を囲むドーナツ状のワンルーム空間。寝室、水回り、室内物干し、休憩室兼ゲストルームで成り立っています。「ワンルームでぐるりと1周できる間取り。吹き抜けとの間は3面が壁なので、ピークが退屈気味のときはかくれんぼのように遊び、いい刺激になっているようです」(妻)。外観はこのとおり。地上1~2階は木造、地下1階はRC造の混構造で、地下部分は夫の仕事場になっています。大開口の前の広いデッキスペースは、ピークと体を使って遊ぶのにぴったりな場所。ここから雑木林を下り、1日2回、それぞれ1時間程度の散歩をするのが日課です。大型犬の足腰を鍛えるには坂道が最適で、勾配のきつい斜面のロケーションが大いに役立っています。散歩は、体力のある夫が担当しています。「ピークには恵まれた住まいなどの環境のもと、気持ちよく過ごしてほしいですね」(夫)。自然に囲まれたロケーションに多角形を配置し、間仕切りを最小限とすることで、ハッピーで健康的な暮らしを獲得した平さん夫妻とペットたちです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「住まいの設計2017年5.6月号」を参考にしてみてくださいね。設計/平真知子一級建築事務所撮影/飯貝拓司【巻頭特集】「美キッチン and 極楽バスルーム」/「“ネコと暮らす”ということ、“イヌと暮らす”ということ」豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン
2018年07月16日7月21日発売の『住まいの設計9月号』より、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する新連載がスタートします。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は東京・渋谷区で築40年、158.8㎡(48.12坪)、鉄骨造3階建ての建物をリノベーションしたPuddleの加藤匡毅さん宅を取材しました。■ 音楽を奏でるキッチン?渋谷の奥= “奥渋” と呼ばれるおしゃれエリアに、建築家・加藤匡毅さんの事務所兼自宅があります。「築40年ほどの鉄骨3階建ての空き家をリノベーションしました。改修前は壁がピンク色だったんですよ」と聞いて、「ピンク!?それはローセンスだわ~」と驚く田中さん。グレーに塗り替えられた外壁に緑が映える、モダンな外観に生まれ変わっています。1階が事務所で2・3階が住居になっており、2階LDKの中心には存在感のあるアイランドキッチンが配されています。キッチンの天板には、妻・奈香さんの要望により銅板を採用。「銅板は病院などでも使われていて、衛生的で用途にも合っています。味噌やレモンなどをこぼすと、すぐシミになりますけど(笑)」と奈香さん。下部は収納で、なんとスピーカーまで内蔵されています。■ 光と風がめぐるオープンなテラス2階への外階段を上がるとテラスがあります。緑いっぱいのテラスは「本当にカフェのテラスみたい。気持ちいいわ~」と田中さん。友人の引っ越しの際にもらってきたというテーブル& ベンチも絶妙にマッチしています。上の写真はキッチンからの眺め。「テラスにいると外を感じられるけど、一歩中に入ると、外からの視線はまったく気にせずにくつろげるところもいいですね」と田中さん。■ まるでリゾート?のようなサニタリー階段で緩やかに仕切られたリビング北側は、長男ソラくんの遊び場。「ここは、以前はキッチンでした。日本の家は北側に水回りを配置して南側で過ごすというのが一般的だったので。トップライトを設けて光を取り込んでいます」と加藤さん。その奥には、トイレ、洗面、バスルームが一体化した水回りを配置。トイレにもトップライトが設けられ、ブルーの壁が爽やかです。■ ガレージだった1階は街に開かれたオープンな設計事務所に「街に開いた設計事務所をつくり。同時にお店の奥で家族がちゃぶ台を囲む昔の商店のような暮らしを実験的にやってみたかった」と加藤さん。オフィスのキッチンスペースにはシアトルのメーカーにセミオーダーしたいとうエスプレッソマシンも。もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2018年9月号」をご覧ください!【取材協力】Puddle代表の加藤匡毅さんが、隈研吾建築都市設計事務所、IDÉE などを経て2012年に設立。「%Arabicaコーヒー」や「DANDELION CHOCOLATE」など、世界各地で話題のショップの設計を手掛ける。巻頭特集は「木の家、自然素材の家は居心地がいいんです。」。第二特集「わんこと暮らすなら、こんな家!」では犬も人も暮らしやすい家をたっぷりとご紹介します。また、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する新連載「アンガールズ・田中が行く!建築家の自邸探訪」がスタートします。
2018年07月13日岡山県倉敷市。約270坪の広大な敷地に建つO邸。建築家でありペット共生住宅の専門家として海外でも知られている、廣瀬慶二さんに設計を依頼しました。内部は贅沢なワンルームのようで、ネコが駆け回る場所と進入禁止空間とのメリハリもつけられています。大きな開口部の先にはネコが過ごせるパティオ、すなわちキャティオが。室内に張り巡らされたキャットウォークや棚に隠された迷路を、アビシニアンのココとマーシャンが優雅に歩き、瀕死状態で保護したルルも今では元気に走り回っています。■ ネコの家に人間が住まわせてもらっている家夏は日の出とともに起こしにくる彼女たちのトイレを片付け、朝食を食べさせたら出勤前にひと遊び。帰宅すると車の音に反応し、ドア前に整列してお出迎え。寝るときはもちろん一緒。足元、腕枕、お腹や背中に3匹が文字どおりOさんに寄り添って眠るのが至福の時なのです。20代の頃からいずれは猫と暮らしたいと考え、ペット共生住宅にも住んだものの、中途半端さは否めなかったといいます。以前から設計を担当した廣瀬慶二さんの著書を読んでいて、その中の「若い猫と暮らす際、年を取った猫がプライドを持って暮らせる家をつくりたい」という一文に惹かれたそう。廣瀬さんに伝えたのも「ネコ中心の家にしてほしい」とだけでした。棚からキャットウォーク、猫寝天井と縦横無尽に遊べる構成に昨年6月に入居し、キャティオでは短い秋を過ごしました。まもなく訪れる春のうららかな日のもと、彼女たちはここを駆け巡ったり、のんびりとひなたぼっこしたり、季節を告げる鳥や芽吹き始めた自然に包まれ、思い思いの時間を過ごします。それを眺めるOさんの幸せな笑顔まで目に浮かぶようです。■ 潜在能力を存分に発揮できるような猫のための設備キャティオをはじめ、爪研ぎ柱、キャットウォーク、猫寝天井、猫地窓。この家のネコのための設備は、数えあげたらキリがありません。なのに、わざとらしくないのです。廣瀬さんの言葉を借りるなら「家が猫々しくない」。でも機能はぎっしり。最近よくある既製品の家に付け足すようなやり方ではなく、そぎ落とすという方法論で構成されたO邸。自然素材が多用され、住宅の性能もよく考えらています。例えば棚の最下部に設けられたケージの窓を開け放つと、植栽のある庭から冷えた風が部屋を通り、東側の窓に抜けていきます。そして、キャティオに面した東向きの開口部は、切妻屋根が直射日光を遮りながら、心地よい光だけを運んでいます。さらに「動物行動学」の観点から、ペットとの共生のあり方を考え続けてきた建築家の廣瀬さんが目指したのは、ネコの潜在能力を引き出す家。「ネコには飼い主の知らない能力がまだまだ隠されている。それを発揮できる家をつくるのが、飼い主の義務です」。それはネコが全力で遊べる家。全力でジャンプして、全力で直線距離を走ることができて、全力で爪研ぎに立ち向かえる。それは土地面積に関係なく、縦方向に伸ばせば狭小住宅であっても可能だといいます。また室内飼いだとネコに悪いという気持ちが働いてしまいますが、それも間違いです。交通事故や病気の感染を避けるためにも、ネコは「完全室内飼育」にするべきだと廣瀬さんは語ります。「室内で引き起こす爪研ぎやマーキングといった問題行動も、こうした退屈させない空間を与えることで解消するのです」。■ 設計者が考える猫と楽しく暮らす工夫Point1. キャットウォークと爪研ぎ柱飛びつき背を伸ばして爪を研げる、サイザル麻を巻いた爪研ぎ柱。若いルルは勢いよくいちばん上まで登り、ガガガと爪を研ぎながら下りてきます。キャットウォークでは、歩いたり昼寝をしたり、隙間から下をのぞいたり。下からは人間が見上げてネコの姿を楽しみます。「キャットウォークは若いネコにとっては駆け巡る道、成猫の場合は居場所をつくるという考え方。それによって、成猫でも自然と動くようになります」(廣瀬さん)Point2. ネコ階段~吹き抜けの動線内部に猫用階段が仕込まれた棚。最下部の格子框開き戸は2か所だけガラス框の開き戸になっています。ここから風を取り入れられるようになっており、それが室内を通りロフトに設置された窓から抜ける風の流れを設計しています。こちらは、猫寝天井から3Dソフトを使って設計した棚内部。難解なルートも、スマートに移動できるのです。Point3. ロフトからの眺めとネコ穴キャットツリーやキャットウォークともつながるロフト。ルートの途中に何か所か穴を開けており、ショートカットも可能です。ネコは高いところに登って、外を眺めるのが好きなので、ロフト本棚上部の窓からも外の景色眺められるようにしています。こちらは物音がしたらのぞける、ロフトの玄関側に設置した猫地窓です。Point4. トレイの処理猫トイレと猫ダイニングを上下に重ねてコンパクトにしました。トイレのそばにはゴミシューターを設置、においがついたものを流すように捨てられ、上がってくるにおいはそばに設置された換気扇でかき消すことができます。■ いつだって好きな場所に行ける幸せバスルームはバリのリゾートホテルバスルームは、憧れだったバリのリゾートホテルのイメージで。シャワーブースとバスタブをセパレートして、タイルの一部に自然石を混ぜたり、仕上げまでリッチ。晴れた休日の昼下がりには、お湯につかりながらキャティオでまどろむネコたちと、坪庭から豊かな緑が同時に眺められ、贅沢なバスタイムに身も心も癒やされます。プライベートスペースはネコたちでも侵入禁止ウォークインクロゼット兼ワークスペースはキッチン、ホールとともにネコたちは進入禁止の場所。また、寝室とリビングもシフォンのカーテンで緩やかに仕切っています。「バリは好きだけどコテコテのリゾートというより、アンティークが似合うような洗練された感じに」というイメージ設計したそう。大きな敷地だからかなえられた平屋造り約45平米の広々キャティオ、大きな屋根部分はくり抜かれ、日光と雨が存分に入るように。細かい縦格子が目隠しの役目を果たし、風は通しても外からは見えず、ネコもキャティオからは出られない構造になっています。これだけ大きな敷地だからかなえられた平屋の造りになっています。いかがでしたか?気がすむまで散歩したり、高いところへ登ったり。室内で暮らすネコには楽しく過ごしてもらいたい。そんな姿を眺めることで、飼い主も幸せになれるO邸なのです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ『住まいの設計2017年5-6月』も参考にしてみてくださいね。設計/ファウナプラス・デザイン撮影西岡潔住まいの設計2017年5-6月号美キッチンand 極楽バスルーム【巻頭大特集】は、美キッチンand 極楽バスルーム。家づくりでもっともこだわりたいキッチン&バス。理想とする暮らしの美しいキッチンとうっとりするようなバスルームを紹介。【第2特集】は、ネコと暮らす”ということ、イヌと暮らす”ということ。ペットも人もしあわせに暮らしている家を紹介。その他にもリノベーション連載や地元で評判の工務店など、気になる情報がま満載です!
2018年06月25日建築家の長坂常と江戸小紋職人の廣瀬雄一のコラボレーションによる展覧会「亜空間として形成する伊勢型紙 江戸小紋の世界」が、表参道のEYE OF GYREで7月17日から8月26日まで開催。19世紀後半、欧米社会に押し寄せたジャポニスムの波から1世紀半を超えて、今また日本の文化に熱い視線が寄せられている。その潮流の中、アール・ヌーボーにも、そしてリバティ・プリントにも影響を与えた伊勢型紙の世界を、100周年を迎える廣瀬染工場の伝統的技術によって染め上げられた反物や着物を展示することによって、現代に甦らせようとする試みが今回の企画だ。さらに、江戸小紋の世界観にインスパイアされた建築家長坂常が、廣瀬染工場の4代目、廣瀬雄一とコラボレーションすることによって、実験的な反物や着物の製作に関わり、江戸小紋のあり方を今一度捉え直す機会ともなっている。デザインには伝統的幾何学的なものから、花鳥風月を象徴化したもの、江戸の人々の現実感覚や遊び心を映し出したものまで無数のバリエーションがある。幕末にシーボルトが浮世絵とともに膨大な型紙を持ち帰ったとの逸話もあり、そして、グラフィカルなこともあって、19世紀のヨーロッパの工芸、デザインに少なからず影響を与えたといわれている。実際の型紙は単なるデザインとは異なり、デザインが染めに生かされるためには、紙、道具、工程のひとつひとつにわたって職人の長い経験の上に培われた、知識を超えた身体的な感覚としての「技」が刷り込まれている。江戸小紋の二次元空間に包摂されているミクロの多元的な世界観を、ブルーボトルコーヒーの店舗などを手がける長坂常とのチャレンジングなコラボレーションによって、通常の物理法則が通じない時空連続体ともいわれている「亜空間」を創出することを試みる。7月19日には長坂常と廣瀬雄一の2人によるトークセッションを開催する予定。時間は19時から20時まで。【イベント情報】亜空間として形成する伊勢型紙 江戸小紋の世界会期:7月17日~8月26日会場:EYE OF GYRE住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE3F
2018年06月22日不動産検索サイトや不動産販売の広告などでよく目にする「建築条件付き土地」。その意味についてなんとなく知っている人は多いと思いますが、その中身をしっかりと理解している人は少ないのでは?建築条件付き土地の中身を理解するために、少し変わった角度から建築条件付き売地を考えてみます。実は「売主のタイプ」の違いによって、その建築条件付き土地の性質や「メリット・デメリット」に違いが出る場合があるのです。以下ではその「売主のタイプ」を大きく2種類に分け、その違いを解説します。■ 売主タイプ1.昔ながらの不動産業者HAKU / PIXTA(ピクスタ)このタイプの売主はその多くが、建築条件付き土地の販売を建売住宅販売の一形態と考えている傾向があります。宅地建物取引業法では、建築確認(許可)等を取得していなければ土地建物一体での売買契約は禁止されています。しかし、土地の販売期間短縮や販売経費削減をしたい、さらに土地売却益だけでなく建設工事でも利益を得たい売主が、建築確認等を取得したり現実に建設工事に着手しなくても土地建物をセットで販売(請負)したいと考えた場合に、土地の売買契約に建物請負契約締結の条件を付した「建築条件付き土地」という方法を選択するのです。つまり、本来は土地建物一体での販売をしたいのに法の制限によりそれができないため、やむを得ず建築条件付き土地売買という形態をとっている場合が多いのです(もちろん違うケースもあります)。■ 売主タイプ2.ハウスメーカーなどの建設業者HAKU / PIXTA(ピクスタ)このタイプの売主はその多くが、土地売買契約より建設工事請負契約にその比重を置いています。つまり土地を販売する目的自体が「建物を売るため」なのです。そのため、このタイプの売主は土地販売時にかなり踏み込んだ建物の打ち合わせを行います。土地の販売自体が主たる目的ではないため、購入希望者の建物ニーズが自社商品と合わない場合はその時点で土地購入を積極的に勧めません。建設工事請負契約が円滑に進まない可能性がある顧客と土地売買契約を結ぶメリットがないのです。■ 売主タイプ1のメリット・デメリット売主タイプ1の建築条件付き土地の場合、先述のようにその売主は土地売却益だけではなく建設工事請負による利益を期待している場合がほとんどです。そのため、見込んでいた利益が土地売却だけで得られるなら、この建築条件を外せるケースも多く見受けられます。「土地は気に入ったけど、建物ニーズが合わない」「この土地にどうしても別のハウスメーカーで建てたい」などの場合、その交渉を受け付けてくれやすいのはこのタイプの売主なのです。また、不動産業者が売主のため、上下水道などの供給施設がすでに整備されている土地も多く、権利関係(差し押さえ等)や隣地境界トラブルも整理されている土地が多いのもメリットといえるでしょう。Graphs / PIXTA(ピクスタ)ただ、もちろんデメリットもあります。上記のように建築条件を外す交渉がうまくいっても、その売買条件変更にともなう価格のアップを要求される場合が多いのです。それで結局予算オーバーとなるケースも見られます。だからといってその価格が割高であるという意味ではありません。建築条件付き土地の場合、その価格設定は条件なしの土地と比べ若干低めに設定している場合も多いのです。■ 売主タイプ2のメリット・デメリット売主タイプ2の建築条件付き土地のメリットですが、この売主はそもそも建物を売るのが主たる目的なので、土地の検討当初からその土地に最適な参考プランや推奨仕様など、かなり充実したものを用意している場合が多くみられます。そのため、自分で建設業者を見つけて別々に発注するよりも割安で良質な住宅が手に入る場合があります。タカス / PIXTA(ピクスタ)デメリットは、このタイプの建築条件を外すことはほぼできないということです。建物を売るのが目的なので条件外しの交渉さえ受け付けてもらえないでしょう。どうしてもその土地を購入したい場合はその指定された建物を購入(請負契約)するしか選択肢は無いのです。ただし、土地売買契約後の打ち合わせによって請負契約が不調に終わる場合は土地売買契約も解除されます。いかがでしたか?ここで取り上げた以外にも様々な売主さんはいますが、建築条件付き土地を検討される場合は「売主のタイプ」を知り、そのメリット・デメリットを知ったうえで購入を判断する材料のひとつにしてください!【参考】※東京都都市整備局不動産取引の手引き
2018年06月15日設計者・建築士は、設計提案を施主様に行うため、まずヒアリングを行います。私の設計事務所では、そのお施主様の思いを形に結びつけるため、独自にヒアリングシートを作成してお話を伺っています。今回はいかにヒアリングが大事かについてご紹介。ヒアリングでは、施主様が要望を設計者にお伝えしたいと思っているでしょうし、私たちはそれを聞いて十分に理解しようと考えているのです。■ 施主はヒアリングにどんなふうに臨めばいい?ヒアリングシート私たち設計者にとってヒアリングという機会は、提案をよりよくするためのものであります。もっと言うと、プレゼンのなかに、提案、そしてヒアリングが含まれていると言っても過言ではないです。そのくらい私は、ヒアリングを大事に考えています。では、お施主様としては、ヒアリングにどんなふうにのぞめばいいのか。どう伝えるのがいいのか。あまりかまえる必要はありませんが、こうしたほうがコミュニケーションを取りやすいですよということを簡単に2つほどご紹介したいと思います。■ 1.あるだけ要望をすべて吐き出してみよう!これはまず、お願いしていますし、できるだけお施主様が考えていることすべてを吐き出していただくように、私も努力しています。そして、施主様には何でも言っていただいています。Rina / PIXTA(ピクスタ)そのなかで私たちは、要望と、その奥にかくされた、施主様の欲している本質を読み解き、それらから形にするヒントを得ようとしています。このようにする理由は、要望の組み合わせ次第でこれは無理だろうと思えた矛盾が、実現する可能性がでてきたりもするからです。それは提案において核になる可能性を多く秘めていたりもします。いろいろな要望が出たあと、私はお施主様にそのなかで優先順位をつけてもらい、要望の整理をします。そうすると、フィルターにかかるように、提案へむけた方針が見えてきます。■ 2.イメージや好きの共有をするために施主様がどんなイメージをもっているのか、そして何が好きなのか。これらを共有することが設計提案をするうえで私は大切にしています。ではその共有をどのように行えばいいのか。node / PIXTA(ピクスタ)例えば、雑誌の切り抜きなどでもいいでしょう。ネットで集めた画像をスマホで見せてもいいかもしれません。言葉のほかに視覚的な情報を相互で確認できることは、要望と提案のずれを少なくします。以前までは、住宅雑誌やその一部をコピーしたファイリングなどを持ってきた方が多かったです。しかし現在では、スマホから、ダウンロードした画像データを見せてくれたり、SNSツールを活用したサイトから収集した画像を見せていただいたりなど、情報共有の手段がより多彩になってきています。イメージをわかりやすく伝達する手段ができたことで、よりお施主のイメージが私たち設計者に伝わるようになりました。これはとても便利ですね!これらのやりとりは、家づくりに対し、設計者と施主様が同じ方向を見て進んでいくためのものでもあります。お互いの信頼感にもつながりますし、意志の疎通がよりスムーズになることは間違いないです。shimi / PIXTA(ピクスタ)それは、家という完成形をともに描くための大事な関係性の構築となっていくことでしょう。このプロセスを経て、私は設計者として、施主様の求めていることや敷地、法規など様々な情報を体のなかに染み渡らせて設計提案へと望みます。あとはおまかせください!と言った感じです!!
2018年05月28日建築家との家づくりが始まりました。しかし、8か月間も家賃と住宅ローンの二重払いが発生し、なぜこのようなことになったのか。契約から引き渡しまでの具体的なスケジュールなどを確認したところ、その理由が見えてきました。■ 契約から引き渡しまでの具体的なスケジュール実は、住宅ローンと家賃の両方を払わなくてはならない期間が丸々8か月ありました。一体どうしてこんなことになったのか、当時の手帳や契約書などを元に、実際のスケジュールを振り返ってみました。2016年2月土地の契約2016年6月建築家と建築士業務委託契約2016年7月下旬確認申請を提出2016年10月確認申請の審査がおりる2016年11月下旬基礎工事開始2016年12月上旬上棟2017年4月下旬引き渡し改めて建築家との契約書を確認してみたところ、設計業務は2016年2月〜7月、工事管理業務は2016年8〜12月に行う、とあります。契約書にはガントチャートに落とし込んだスケジュールが添付されています。そこには、2016年2月…基本設計2016年3月…本見積もり・実施図面作成2016年7月末…確認申請提出7月末2016年8月上旬…着工2016年12月末…竣工とありました。これが建築家が立てていた当初の予定です。建築家、工務店それぞれと契約を交わした時点で、少なくとも3か月は家賃と住宅ローンの二重払いが発生することがわかっていました。また、工期が冬にかかるため積雪などで1か月程度遅れる可能性があることも覚悟していました。「二重払い、4か月くらいなら我慢できるしなんとかなる」と考えていました。ところが、その予想の倍の8か月もの間、家賃と住宅ローンの両方を払い続けることになるとは。思いもよらない大誤算でした。■ 落とし穴のその原因は確認申請と道路にあったそもそも確認申請とは?建物の建築には、さまざまな法律による規定があり、それらに適合していないと新たな建物を建てることはできません。これから建てようとしている建物=私たちの家が法律を遵守し、条件に適っているかどうかを確認するのが「建築確認申請」。構造耐力、最高や通風、防火や耐火、安全性、建物内の環境など建物本体に関わる規定のほか、用途、斜線制限といった高さ、容積率や建ぺい率といった大きさの制限、敷地と道路の関係といった建物と地域、周囲に関わる規定について審査されます。我が家の前には、未舗装の道路が通っています。時期はまだ未定ですが少し道幅を広げて舗装する計画があると、土地の購入時に不動産会社の担当者から聞いていましたし、それを見越して売り主さんが隣家との境界を仕切ってくれていました。未来の道幅は当初から図面に反映されていて、私たちも納得した上で土地を購入しています。それを踏まえて作成した確認申請の書類を提出したところ、役所から、図面に反映されている道路の件でもう一度土地の測量をしたいという申し出が。その測量を終えないと、確認申請の審査をすることができないという状況になってしまったのです。確認申請の書類は、建築家が8月の第1週目に提出してくれました。その後、役所の測量が終えるまでに約1か月。改めて確認申請の審査が行われ、さらに1か月。確認済証に記載の日付は10月31日。通常約1か月で審査を終えるところ、我が家の場合、3か月もかかってしまったのです。■ ローンの支払い開始日の確認を!私たちが利用した住宅ローンは、引き渡しの時に住宅ローンの支払いが発生するごく一般的な住宅ローンですが、6か月以内の引き渡しが必須。つまり、土地の契約から6か月を経過するとローンの返済がスタートするというものでした。確認申請で足止めされた上、さらに、予定していたクロスを発注したらメーカー在庫切れだったり、現場での打ち合わせで変更になったことなどが重なって、工期自体も1か月近く長くかかったため、2016年9月から竣工した2017年4月までの8か月間、住宅ローンと家賃の両方を支払うことになってしまいました。貯金を切り崩し、家計を切り詰めてやりくりしましたが、正直しんどかったです。土地と住宅を同時に取得するのはさまざまな面でメリットがありますが、ローンの内容によって、土地の売買契約から竣工までに時間がかかるようならそれなりのお金の準備が必要だということを痛感しました。我が家の場合、覚悟していた以上に大きな金額になり、「大変だ」「なんでこんな目に遭うんだろう」「お金がなくてしんどい」を順繰りに何度も何度も思い続けていましたが、喉元過ぎれば熱さを忘れるという単純さ(笑)。完成した完成度の高い素敵な家を見たら嬉しくて、すっかりゴキゲンに。私たち好みの家を見て、いろいろあったけれどやっぱり建築家に依頼してよかったと、大きな満足感を得ることができました。■ 審査が終わるまでの間にできることを確認申請の審査は概ね1か月で終わると言われていますが、そうは問屋が卸さないこともあるんですね。そして、審査が終わらなければ、具体的に家づくりは進めることは許されません。遅々として進まぬ家づくり。審査の間にできたことは地盤調査と地鎮祭だけと意気消沈していましたが、下を向いていても前へ進むことはできません。この間に、私たちが選ばねばならないシステムキッチンとユニットバスを見極めるため、ショールームへ出かけることにしたのです。次回は、選んで良かった設備、失敗したと感じている設備について、書いていきたいと思います。※【住宅ライターの家づくり】過去の記事を読む
2018年05月26日栃木・宇都宮市で社会人の子ども2人と暮らすHさんは、長年暮らした家の建て替えを決意しました。南側に隣地の建物が迫り、東から北に抜ける道路は散歩者も多いため、以前は2階にLDKを設けていたそうです。しかし今回の建て替えでは、1階をLDKに。「より緑や土が身近に感じられる暮らしを望みました」とHさん。■ 暮らしのなかに自然の恵み取り込みたいなら断然!コートハウス1階でも十分に光と風を得てのびのびと暮らせるよう、設計した遊空間設計室・高野保光さんは外壁を閉じ気味にして中庭を設置しました。そして、中庭を囲むように建物をコの字型に配置することで、光と風、プライバシーを獲得。さらに自然豊かな植栽で、暮らしに四季折々の楽しみを与えました。植栽は人気の造園家・荻野寿也さんによるものです。荻野さんは中庭に自然の造形を再現し、外構に周囲と一体感ある植栽を施して原風景を思わせる仕上げとしました。Hさんも植栽の普段のメンテナンスは雑草を抜くくらいで、落ち葉も樹木のあるがままの姿として、掃除しすぎず地面に散らしているそうです。東側は壁を南方向に伸ばし、その内側に中庭をつくっています。北側の道路側には、家族3人分の駐車スペースを確保しています。アプローチの敷石には、耐久性に優れた栃木産の芦野石が使われました。玄関ドアを開けると視線が中庭に抜け、来客にサプライズを与えます。玄関土間から見えるのは、こんな中庭の風景です。■ 空間のレイアウトで暮らしやすさをサポートHさんが1階をおもな生活空間としたのは、先々キッチンへの荷物運びなどの負担を軽くする目的もあったそう。より移動しやすいよう、玄関・リビング・DKは、中庭に沿いながらつながるレイアウトになっています。なかでも、大きめのテーブルを配したダイニングは、リビング、和室ともつながる中心的な存在です。リビングは通常の1.3倍ほどの天井高があり、北側の高所窓からは、ケヤキの街路樹が借景のようにとらえられます。壁の裏側から上る階段は、踊り場からリビング脇を通り、階下と視線をつなぐ役割も果たしています。また、リビングから数段下がった位置には、自宅で仕事をするHさん用の小空間を設置しました。これは、来客時の対応をスムーズにするための配慮です。中庭を介し3方向の部屋は向き合い、内部ではひとつながりになっているため、コミュニケーションが取りやすいという利点もあります。和室からは手水(ちょうず)鉢が目に入り、対面には玄関近くのリビングが見えます。ダイニングの中庭側には、くつろげる濡れ縁があります。和室の地窓は、通風の役割も果たしています。茶室風の和室は、中庭に加え、低い位置から外庭も楽しめます。■ 2階には中庭を見下ろす贅沢なインナーテラスが!2階はプライベートルームと水回りで構成されています。さらに高野さんは、開放感をたっぷりと味わいながらくつろげるようにと、床に深岩石を敷き詰めた広いインナーテラスを設計しました。テラスは中庭を上階から囲み、太陽のまぶしさや雨、外からの視線なども気にすることなく空や緑が楽しめる、贅沢な空間となっています。2階に2つある寝室は共にテラスと接していて、リラックスできるつくりです。庭には、アオハダ、ヤマボウシなどの高木、低木、下草がバランスよく植えられています。「毎朝、ダイニングの窓のロールスクリーンをさっと開け、四季折々の風景を見るのが何よりの楽しみです」とHさん。宇都宮市には、緑化率や植栽の種類などに関する緑地協定があるそう。そうした約束ごとを守りながら完成した、かぎりなく自然体の暮らしを楽しんでいるようです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「住まいの設計2017年1・2月号」も参考にしてみてくださいね。設計 遊空間設計室撮影 桑田瑞穂【巻頭特集】「ハウスメーカーで建てる家」「平屋ハウスで暮らそう」豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン品質だけじゃない!デザインも個性的なテイスト別ハウスメーカーで建てる家を紹介。
2018年05月25日土地の購入も含めた家づくりでは、家にかけられる予算には限りがあります。提示されたプランそのものはとても気に入っていて、ウォークインクローゼット分のおよそ4坪を減らす以外は変更したくありません。このプランを実現するためには、予算のことも考え、何かを諦めなくてはなりません。家づくりのプロである建築家と工務店にすべてを委ねることを決めたとはいえ、家に関する希望は全くないわけではなく、むしろ、設計料がプラスになってもいいから建築家に依頼した理由は、家という空間をより快適にしたいという強い思いと希望がありました。そのためにも、優先順位をちゃんとつけて、本当に必要なものを吟味して選ぼうと決めました。その結果、様々な意見も聞きつつ、自分たちの家づくりに何が必要かを考えることが、この先の自分たちの人生を考えるいいきっかけにもなったのです。※【住宅ライターの家づくり】過去の記事を読む■ 1.真っ先に諦めたのは、憧れの薪ストーブ建築家が作ってくださった模型をよく見ると、階段の脇に薪ストーブが設置されています。実は、私が真っ先に希望して真っ先に諦めたのは、薪ストーブでした。冬の夜、揺らめく炎を眺めながら過ごす時間。ストーブの上にストウブのピコ・ココットをおけば煮込み料理もできたりして。憧れますよね〜。憧れの薪ストーブ。設置にかかる費用を聞いて、現実に引き戻されました。chikaphotograph / PIXTA(ピクスタ)薪ストーブ本体+煙突、炉壁や炉台の工事などを含めかかる費用は総額およそ100万円、と工務店が教えてくれました。家自体は薪ストーブの設置を前提にして設計されていましたが、100万円かぁ(遠い目)。冬の寒い日、炎のゆらめきを眺めながら、ストウブのピコ・ココットや、OIGEN(及源)のクックトップで煮込み料理したいなぁと思っていたけれど、100万円かぁ(遠い目)。薪ストーブは、本当に必要なのか?私たちは今から建てる家での暮らしは、おそらく死ぬまで続きます。自分たちが一体いつまで生きているのか皆目見当がつかないけれど、少なくともあと20年、60歳を超えるくらいまでは生きていたい。そのとき私たちは、果たして薪を割っているだろうかと自問自答したわけです。答えは、否。そして、薪ストーブは後から設置することができます。やっぱり欲しい、と思ったらそのときから100万円貯めて設置すればいい、という結論に達しました。■ 2.壁と床。どっちを優先する?次に諦めたのは、塗り壁。壁と天秤にかけたのが、床でした。床は無垢の杉材を希望。同じ杉でも、建築家が手がけたほかの家を見て一目惚れした幅広の杉板にするか、地元産の杉材にするかで、差額は数十万円。その差額と、塗り壁とクロスの差額が同じくらいだったのです。漆喰、珪藻土、ホタテパウダー。たくさんのお宅を取材してきて、さまざまな素材の塗り壁を見てきました。素朴ながら温もりがあって、部屋の中の空気が清々しいのを体感して知っていました。塗り壁、素敵だな〜と思いましたが、リビングの壁と天井の面積が広く、そこだけ施工したとしても結構な金額になります。クロスは、張り替えのタイミングで塗り壁に変えることもできます。でも、床は、よほどのことがない限り、張り替えることはないでしょう。左官の仕事を間近で見たいという気持ちもありましたが、建築家が「塗り壁のように見えるクロス、今はたくさんあります。オススメのものがあるのでそれにしましょう」と提案してくれたおかげで、諦めがつきました。地域の気候をよく知る工務店からも、この地域の気候を考えてクロスにしたほうがいいというアドバイスがありました。これまでたくさんの家を手がけてきた建築家や工務店がそう言うなら間違いないだろうと、納得できました。いがぐり / PIXTA(ピクスタ)これは後日談なのですが、新居に遊びにきてくれた旧友と家談義をしたときのこと。彼女の家の1階部分はすべて、漆喰の壁なのだそう。この地域は三方を山に囲まれた盆地で、雨と霧が多い土地柄。梅雨時の湿度の高さには辟易するほどです。調湿作用があると聞いて選んだけれど、梅雨時はずっと湿度が高いから吸った湿気を吐き出すタイミングがないように感じているとのこと。「私は今になってクロスにすればよかったと思っているから、逆に羨ましい」と話してくれました。郷に入っては郷に従え、ですね。■ 3.キッチンを造作するか、システムキッチンにするかそしてもう1つ。キッチンを造作することも諦めました。オールステンレスの無骨なキッチンに憧れていた私。当初の予定では、業務用のキッチンをベースにキッチンを造作することを考えました。そこで、地元にある厨房機器の専門商社で働く友人にカタログをもらい、真剣に検討することにしたのです。チンク / PIXTA(ピクスタ)その友人に言われたのが「音が結構うるさいよ」。蛇口から流れる水がシンクを叩く音の防音などは、全く考慮されていないとのこと。そういう細かなところに、住宅用と業務用の違いがあることを知りました。そこで、私がキッチン(特にシンク)に求めることをリストアップしました。シンクが大きいこと排水カゴが浅型でステンレスであることガスで料理すること魚を焼いたあとの匂いが残らないことシンクの大きさにこだわったのは、東京に暮らしていたときに買って気に入って使っていた野田琺瑯の丸型洗い桶が借家のシンクには入らず、10年以上に渡りスイカを冷やす以外の用途に使えなかったからです。また、毎年味噌を仕込むのに使う、同じく野田琺瑯のラウンドストッカー(21cm)を楽々洗えるくらいの大きさがほしかったのです。chikaphotograph / PIXTA(ピクスタ)工務店が勧めてくれたのは、クリナップのシステムキッチンでした。「悪くないと思うんだけどな〜」と言われ、早速ショールームへ。造作にするとしても、ヒントになることがあるはずだと考えたからです。引き出しを開けたり閉めたり。ワークトップに手を置いて高さを確認してみたり、水を流してみたり。水道から流れ出す水の音を小さくする工夫もありました。いろいろ試しながらショールームのスタッフのお話を聞いていくうちに、システムキッチンもいいじゃない、と素直に思えました。よく考えられた機能がふんだんに盛り込まれているのに、この価格。デザインもそんなに悪くない。私には、もう造作にこだわる理由が見つかりませんでした。こうして振り返ってみると、諦めなくちゃいけない場面でこそ、建築家や工務店の意見がすごく役立ちました。その上で、取捨選択していくのは自分たち。これからの自分たちに何が必要かを考えることは、この先の自分たちの人生を考えるいいきっかけになりました。(つづく)※【住宅ライターの家づくり】過去の記事を読む
2018年04月24日/ランニングコストって?ランニングコストとは、経営学用語の1つで一般的に企業などにおいて設備や建物、機会を維持するために必要となるコストのことをいいます。「建物」にかかるランニングコストには、保全費、管理費、修繕費、水道光熱費、冷暖房にかかる費用などがあります。また上記でいうところの「建物」のほかに、イニシャルコストというものがあります。イニシャルコストは建築時費用のことを指し、ランニングコストは建築後費用を指します。2種類のランニングコスト建物を建てるときをイニシャルコストといい、建てた後をランニングコストといいました。ランニングコストはつまるところ維持費や管理費ともいえます。不動産を得る不動産投資の世界では、このランニングコストを2つに分けることができます。固定資産税・都市計画税建物は建てた後の方がコスト面に負担が掛かります。この2つは不動産を所有しているだけでも掛かる税金で、毎年発生します。管理修繕費不動産投資物件(主にアパートやマンション)の運用を行うには、当然に「管理」が必要です。空室率の低い投資物件は、この管理面がしっかりと行き届いています。管理費用には以下の2種類(その他を除く)があります。これらを行う業者が「不動産管理会社」です。PM(プロパティマネジメント)費PM費とは、入居者管理費のことをいいます。主な仕事内容に、賃料の集金、滞納の催促、入退去手続、募集、苦情の受付・対処、リフォームの手配などがあります。BM(ビルマネジメント・ビルメンテナンス)費BM費とは、建物管理費のことをいいます。主な仕事内容に、共用部の清掃(エントランス・ゴミ置き場・廊下など)、エレベーターの維持管理、法定消防点検、受水槽の点検などがあります。その他また上記2つ以外にも、以下のような管理費用があります。入居者募集費用入居者を募集するのに掛かる費用としては、仲介手数料や宣伝広告費などが考えられます。共用部の水道光熱費共用廊下やエントランスホールの電気などの費用もかかります。リフォーム費建物は人間と同じく歳を取ります。老築化が進めば室内をリフォームし、空室率を上げる必要があります。税金(不動産所得)不動産によって得た所得を「不動産所得」といい、これにも税金が課せられます。不動産所得は【総収入-諸経費】なので、最後に掛かるコストと考えてよいでしょう。まとめ不動産投資で掛かるランニングコストは、まとめると以下3つです。固定資産税・都市計画税管理費用等(PMフィー、BMフィー)不動産所得税など建築時にも膨大な費用は要しますが、実はそれよりもランニングコストの費用の方が掛かります。しっかりと計画を立てる必要がありそうです。
2018年03月11日建築模型に特化した国内唯一のミュージアム、天王洲アイルの建築倉庫ミュージアムにて、リニューアル後初の企画展「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-」が、5月26日から7月16日まで開催。ル・コルビュジエ、キャピタル全体図のスケッチ、平面図と遠近法図、説明文つき、チャンディガール1950~1965年 1951年7月24日 所蔵 ル・コルビュジエ財団近代を代表する巨匠建築家として知られる、ル・コルビュジエ。そしてその活動は、彼が提唱した「近代建築5原則」が示す通り、合理主義的な考えと技術革新を伴って発展していく世界のイメージに根ざし、一つの普遍的論理が広く世界で通用するという信念に基づくと考えられてきた。しかし、彼が場所の環境や風景、また風土や文化など、計画にかかわるコンテクストに多くの注意や関心を払っていたことはあまり知られていない。特に、インドのチャンディガールをはじめとする晩年の作品群では、こうした関心が、彼の建築・都市デザインの直接的なインスピレーションの源となって、より複雑な全体の生成に寄与している。本展は、ル・コルビュジエの手によるチャンディガールでの作品群を例にとり、ヨーロッパから遠く離れたインドという異質の環境下における、彼のクリエイションとその土地ならではのエレメントとの関係を考察する。展示では、貴重な建築資料や模型、建築家自身の手によるオリジナルスケッチや油彩画、リトグラフなどの美術作品に加えて、写真家ホンマタカシがチャンディガールで撮影した写真や映像作品を紹介する。ル・コルビュジエ「牡牛 XVIII」1959年、所蔵 大成建設株式会社チャンディガールで、民主主義とインドの気候とを総合的にモニュメント化する言語を模索していったコルビュジエ。その結果、とりわけキャピトル・コンプレックスは、初期のデザインを支配していた一元的に普遍を志向する堅苦しい幾何学から解放され、幾何学的要素とピクチャレスクな要素が混在することより複雑な総体として結実した。今回は、その主要な構成要素の一部をなす議事堂内部を巨大模型で再現する。また、絵画を中心とした芸術作品を多く残した芸術家としても知られるコルビュジエの油彩画「牡牛 XVIII」(1959年)を展示。最晩年に制作され、彼の創作活動を対立概念間の運動として総括するリトグラフの詩画集「二つの間に」(1964年)も展示し、併せて本展のために新たに翻訳されたル・コルビュジエの詩文(田中未来訳)を紹介する。Takashi Homma「High Court 1」2013 Lambda print © Takashi Homma Courtesy of TARO NASUチャンディガールでの計画最初期から、キャピトル・コンプレックスの建物群の配置と全体のスケール感は、後背に広がるヒマラヤ山脈との関係性と共にコルビュジエが特に注意を払って検討したとされる。今回100分の1のスケールで新たに製作されたキャピトル・コンプレックスの三つの建物である「高等裁判所」、「議事堂」、「合同庁舎」が、実際の位置間隔と同様に展示室床に配置される。来館者はその中を自由に歩き回り、コルビュジエが意図したキャピトル・コンプレックスの密度感や建築物同士の距離感を体感することができる。また、写真家ホンマタカシがインドに足を運び撮影した「チャンディガール」シリーズより、初公開作品を含む写真と映像作品を展示。本作はチャンディガールを通り抜ける風や匂い、空間へ差し込む光を念頭において構成される。チャンディガールという計画都市全体がある意味一つの構造物であり、それぞれの建築が都市に包み込まれているスケール感がさりげなく示され、そこに暮らす人々の生活やそこに流れる時間が切り取られており、チャンディガールが現在も生き続ける都市であることを実感することができる。それはまさしくコルビュジエが注目した、建築とそれを取り囲む気候との関係を写しとろうとするものであり、本作によって、模型だけでは伝えきれないチャンディガールという都市のリアリティを補う。建築模型を広く一般に公開する“ミュージアム”であるだけでなく、模型専門の“保存”機能をもつ、新しいかたちの本ミュージアムならではの7部構成の本展。多種にわたる展示によって、コルビュジエがそこで見聞きし、感じ、考え、そして表現しようとしたものを感じ取ることができると同時に、それらを通して、コルビュジエ作品に宿る、近代思想をも超えようとする精神を垣間見る機会を提供する。【展覧会概要】ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト-(Le Corbusier / Chandigarh -Creation and Context-)会期:2018年5月26日(土)〜7月16日(月・祝)会場:建築倉庫ミュージアム住所:東京都品川区東品川2-6-10時間:11:00~19:00(最終入館18時)休館日:月曜日(祝日の場合、翌火曜休館)入場料:一般 3,000円、大学生/専門学校生 2,000円、高校生以下 1,000円
2018年03月08日華やかな一方で多忙なイメージがある建築の世界。その第一線で働くママ・パパたちは、子育てと仕事をどうやって両立しているのか。そのリアルな実態がわかるエッセイ集『子育てしながら建築を仕事にする(学芸出版社)』が刊行されました。そこで、編著者で「キュープラザ二子玉川」の商環境デザインを手がけた3歳児ママ・成瀬友梨さんをはじめ、建築家パパの三井祐介さんと豊田啓介さんも参加したトークイベントに潜入! さらに後日、成瀬さんにインタビューし、両立するための工夫や職場の環境づくり、働くママにとって過ごしやすい家づくりなどのアドバイスをいただきました。 ■「あきらめること」から始まる仕事と育児本でもトークイベントでも、多くのママ・パパが語っているのが「あきらめる」ことの大切さ。建築家は自分ですべての事柄を決定し、ディテールにとことんこだわる仕事ですが、育児が始まるとそうはいきません。「仕事をしていると子どもが気になるし、子どもといると仕事が気になる。葛藤もありますが、最近は鈍感力が身についてきました。例えば、忙しくても早く帰って家族と夕飯を食べたり、ビールを飲んですぐに寝ちゃったり。やってみると、結果はそう変わらなかったりするんですよね。すべてを自分がコントロールすることをあきらめることで、人が育つという面もあります(豊田さん)」。「私は、建築家の仕事と並行して7年間続けてきた大学助教の仕事を、辞める決断をしました。学生に対応する時間が足りなくなり、子どもと過ごす時間もボーッとすることが多く、体力気力の限界になってしまったんです。今やっている仕事も、細かいところには目をつぶってスタッフに任せている部分が多い。歯がゆい気持ちもありますが、今は我慢の時だと思っています(成瀬さん)」。育児も同様で、すべてを夫婦だけでやろうとするのではなく、あきらめが肝心。ベビーシッターや病児保育を利用したり、近所の知り合いやママ友に保育園の送迎を頼んだりと、周囲に頼ることが大切だと話してくれました。■「スケジュール管理」と「得意分野」で分担 本に登場する夫婦は、育児・家事の協力体制が完璧! それぞれの仕事や家族の行事など、あらゆる予定をスケジュール管理アプリで共有し、互いに助け合っています。「妻も仕事がかなり忙しいうえ、高齢の両親のサポートもある。だから、掃除や料理は僕がやることが多いんですが、家事は得意なので全然苦ではありません。妻は、買うと高いからと夜中に教材を自作したり、科学の実験装置を作ったりと、子どもの自発的な学習を促すための時間を惜しまない。お互いが得意なことを、自然と分担している感じです(三井さん)」「私は保育園への送り迎えや食事の用意、夫は掃除・洗濯・ゴミ出しなどを担当しています。私が出張の場合、夫は子どもにごはんを作って食べさせ、寝かしつけまでこなしてくれるので、本当にありがたい。2歳くらいまでまでは熱を出すことも多かったので、区の病児保育にはずいぶんお世話になりました(成瀬さん)」ほかにも、ルンバや食洗機・食材宅配サービスを活用したり、ファミリーサポートやベビーシッターを頼んだりと、両立するための方法は家族によってさまざま。試行錯誤しながら、自分たちに合ったスタイルを模索しているようです。■「クリエイティブな時間=1人時間」を確保する方法子どもが生まれるまでは1日中建築のことを考えていた建築家たちにとって、クリエイティブな時間をどう確保するかも重要な課題。仕事と子育てに追われる日々の中で、それぞれ工夫をしているようです。「子どもを寝かしつけた後で夜中まで本を読んだり考えごとをしたり、もう一度事務所に戻って作業をすることもあります。また、他業種の人に会ったり、面白そうなイベントに参加したりと、自分の世界を広げることも大事。どうしても夜の外出が多くなってしまうんですが、夫は快く送り出してくれます(成瀬さん)」「夕食はできるだけ家族そろって食べたいので、子どもを寝かしつけた後に1人で外出して、時間を確保することが多いですね、近所に3、4軒ある行きつけのバーで、ビールを飲みながら思考をめぐらせたり図面をチェックしたり。深夜1時ごろに帰宅して就寝、翌朝7時に起きるというサイクルです(豊田さん)」何かと忙しい子育て期に「自分だけの時間」を確保するのは難しいもの。お互いの仕事を尊重し合うこと、そして夫婦が同等に子育てスキルを身につけることが大切だと感じました。 ■ママ建築家・成瀬友梨さんにインタビュー! 働くママが子育てしやすい家とは?――まず、この本を出版しようと思ったきっかけを教えてください。成瀬さん:私は東京大学工学部建築学科の助教として学生の指導をしていたんですが、女子学生から「子育てと建築の仕事を両立する将来が想像できない。大変そうで、とても真似できない」と言われることが多かったんです。才能ある若者たちが「仕事か、子育てか、どちらかを選ばないといけない」と考えているとしたら、本当にもったいない。そこで、実際に両立している人々を紹介することで「自分にもできる!」ということを伝え、背中を押したいと考えたのがきっかけです。実際に、本が出来上がってみると、建築家に限らず、これから子どもを持とうとしている方や子育て中の方、会社のマネジメント層にも役立つ本になったと実感しています。――確かに建築家に限らず、子育てしながら働くことは「大変」というイメージが強いですよね。成瀬さん:実際に経験してみると、自分の時間が減ってしまうのは大変なのですが、豊かになったことの方がずっと多いんですよ。以前は、仕事に夢中で休日も常にインプットの時間でしたが、子どもがいると強制的にペースダウンするので、季節による太陽の光や緑の変化に敏感になりました。週末には公園で思いっきり遊んだり、保育園の友達家族と昼間からお酒を飲んだりと、世界が広がっていくのも楽しい。子どもができてからバリアフリーの大切さに気づくことができ、世の中には本当に多様な人がいることも知りました。――この本に出てくる建築家の皆さんは、会社の理解のもとで周囲と協力しながら仕事をしている印象を受けました。働くママが職場で協力を得るためのコツを、ぜひ教えてください。成瀬さん:子育てだけが大変なのではなく、それぞれにさまざまな事情があると認識することが、大前提だと思います。そのうえで、ほかの人が困っていたらいつでも相談にのる、協力する、というスタンスでいることが一番大事なのではないでしょうか。――子どもがいると、家に対する考え方も変わってきます。建築家の目線から見て、子育てしやすい家とはどんな家だと思われますか?成瀬さん:子どもが元気に動き回れるように、広くてのびのびした家がいいでしょうね。実利的には、玄関が広いのが一番。子どもが小さいうちは、ベビーカーや三輪車などいろいろと置くものがありますし、宅配便の荷物をちょっと置いておくのにも便利です。玄関で子どもの支度をすることも多いので、狭いと苦労するかもしれませんね。また、玄関が広いと全体の印象として余裕があるように見える、という効果もあります。――最後に、働くママ・パパへのメッセージをお願いします。成瀬さん:子育てを終えた方からは「子育ては大変だけど、さみしいくらいあっという間に過ぎてしまうもの」とよく言われます。その言葉を信じて、楽しんでいけたら素敵ですよね。私も怪獣のような子どもを抱えていますが、仕事も家庭も欲張りに生きていきたい。完璧じゃなくていいから毎日を大切にしていきたいと思っています。参考図書: 「子育てしながら建築を仕事にする」 (学芸出版社)著・編集 成瀬友梨ゼネコン、アトリエ、組織事務所、ハウスメーカー、個人事務所等、異なる立場で子育て中の現役男女各8名の体験談を集めたエッセイ集。仕事と子育ての両立に奮闘しながら、欲張りに楽しむリアルな姿が見えてくる。成瀬友梨 プロフィール1979年愛知県生まれ。2007年東京大学大学院博士課程単位取得退学。同年に成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。と2010年〜2017年東京大学助教。地域・ライフスタイル・コミュニケーションという観点から建築を考え、シェアをキーワードに設計を行う。主な編著書に『シェアをデザインする』『シェア空間の設計手法』等。
2018年02月27日家づくりのプロである建築家さんが、テーマに沿って、過去に手掛けた住まいの事例とノウハウを解説するシリーズです。今回のテーマは、「働くママのこだわりキッチン」です。今回は、株式会社井川建築設計事務所(茨城県稲敷市)の井川一幸さんに、事例をご紹介いただきます。\t株式会社井川建築設計事務所 \t建築家・井川一幸\t◆作品名:見晴台の家◆依頼者について:5人家族旦那様(30代後半)/奥様(30代後半)/お子様(9歳、7歳、4歳)※すべて建物完成時の情報◆所在地:茨城県高台からの眺望にこだわった省エネ住宅依頼者の方からは、どのような要望がありましたか?依頼主自ら数年がかりで探した高台の土地に、眺望を楽しむため、2階にリビングを配置することが1番の要望でした。また、家族スペースと個々のスペースが程よい距離感を保てるようなプランニングが求められました。そして、高断熱や高性能など品質に対するご希望もありました。この作品のポイントはどのような点ですか?眺望を活かすため、階段を上がると、景色が抜ける右側にリビングとプレイデッキを配置し、左側にはダイニング、キッチン、その他の水まわりを配置しました。2階に床段差を付けることで、それぞれ違った景色が楽しめる家族スペースになるように設計しました。リビングとプレイデッキは床がフラットにつながり、内外の一体感を感じられるようにしました。また、景観を楽しむために北向きの配置としたため、南側からの採光を確保するなど環境面にも配慮しました。また、遮熱性や耐候性に優れた屋根材や外壁材を採用し、高断熱化・高気密化することにより、建物としての省エネ効果を高める工夫をしました。さらに、長期的なランニングコストを抑える効果もあるため、省エネでエコな住宅になっています。働くママに嬉しいキッチンは「家事動線」がポイントキッチンに対しては、具体的にどのような要望がありましたか?「買ってきた食材・ストック品などは、キッチンではなくパントリーに直接置け、十分な収納量と取り出しも容易にできる配置に」「冷蔵庫などは見えなくしたいが、遠すぎないように」「清掃のしやすさを考慮したキッチンに」という要望がありました。また、設備的には炊飯機能があるガスコンロ、大容量の食洗機、手元が隠せるカウンター収納などを希望されていました。要望やこだわりをどのように実現されたのですか?全体的なプランニングから、家事動線を考慮しました。共働きのご夫婦にとって、朝の準備時間はとても忙しいので、キッチンまわりで家事を完結できるようにしました。そして、パントリーはキッチンの動線上に配置し、冷蔵庫もパントリー内に置けるようにしました。また、バックヤードデッキを設けることで、生ごみなどのストックを外部に置けるような工夫もしました。ガスコンロは多機能機種を選択し、ガスの使い道としては、LDKに設置した温水式床暖房、さらに各所の給湯などを考慮し、エコワン(電気ガス併用のハイブリッド給湯機)を採用するなど、省エネにも考慮しました。このキッチンで取り入れた、働くママならではの観点・ポイントを教えてください。上記にもある通り、家事動線がポイントです。料理をしていてもリビング、ダイニングを見渡せる配置、水まわりやパントリーを動線上に配置することにより、家事の時短が可能となります。働くママは「家事もしたいし、子供の勉強も見てあげたい」。両方の希望を叶えるプランが働くママのキッチンでは大切です。特に、きょうだいの性別や年齢差に合わせ、子供のよりどころとなるスペースが家事をしながらでもママの目の届くところに、自然に配置することが重要となってくるのだと思います。働くママにおすすめするキッチンとは?これから家づくりを考えている働くママに、キッチンづくりのポイントを教えてください。働くママにとって、家事の時短や負担軽減を可能とするためには、キッチンの形状を含め、家全体の配置、プランニングが大変重要です。理想の形状、収納などは家族それぞれ違いますので、自分に合った形状でないと、使い勝手が悪く時短ができない“効率が悪いキッチン”になってしまいます。想定できる理想のキッチンを事前に把握してから設計することで、全体のバランスが取れたプランニングが可能になるでしょう。建築家情報事務所名:株式会社井川建築設計事務所建築家名:井川一幸HP:事務所所在地:茨城県稲敷市対応エリア:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、茨城県、群馬県
2018年02月15日京都府乙訓郡大山崎町に、ひっそりと佇む「聴竹居(ちょうちくきょ)」。これは、1928(昭和3)年に、建築家・藤井厚二の自邸として建てられた名作住宅だ。和洋の生活様式の統合とともに、日本の気候風土との調和を目指した昭和初期の「日本の住宅」として、先駆性、歴史的・文化的価値が高く評価され、昨年、国の重要文化財に指定されている。『木造モダニズム建築の傑作聴竹居発見と再生の22年』発売情報“実験住宅”と称した家を何棟も建て、住み心地を検証し続けた藤井厚二の最後の作品でもある「聴竹居」は、細部にわたって凝らされた意匠のみならず、さまざまな住居としての創意工夫が施されている。現在は一般公開もされ、地元住民を中心とした維持・保存活動が行われている「聴竹居」は、「環境共生住宅の原点」といわれ、日本の住宅の理想形を実現した建築と認められながらも、長らく知る人ぞ知る存在であった。そんな「聴竹居」は、どのようにして発見され、再生されたのか。その歩みを綴った1冊『木造モダニズム建築の傑作聴竹居発見と再生の22年』が3月17日(土)に発売される。本書から「聴竹居」の魅力を通して、地域に根ざした建築物の価値とその歴史や文化を見直し、古い建物を未来へ引きついでいくことの大切さを感じることができるだろう。■『木造モダニズム建築の傑作聴竹居発見と再生の22年』松隈章2018年3月17日(土)発売1300円+税ISBN978-4-8356-3848-5ぴあ株式会社四六変型版並製本256ページ
2018年02月13日