*画像はイメージです:昨今は飲食業界などを中心に人手不足が進み、一部店舗では深夜営業の取りやめや、営業時間の短縮などを余儀なくされています。もちろん飲食だけではなく、サービスや製造業などありとあらゆる業界で人員確保が難しくなっており、1人にかかる仕事の負担が重くなっているようです。 ■環境が悪くなると職場に悪影響も職場の環境が悪くなると、必然的に退職者が出てしまうもの。また、辞めるまではいかなくとも、体調を崩し、休みがちになる社員もいることでしょう。本来なら当日欠勤などを繰り返せばペナルティの対象となり、場合によっては解雇を迫ることもできるはず。しかし、人員が少ないという理由で、「大目に見る」こともあるようです。そうなると、真面目に出勤している社員にとっては、自分にしわ寄せがくるうえ、どこか不公平感が拭い去れないだけに、面白くないもの。場合によっては「辞めさせたい」と思うかもしれません。そのようなことは可能なのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。 ■同僚から会社にクビを促すことはできる?「勤務態度の悪い社員について“勤務態度が悪いから解雇すべき”と会社に伝えること自体には、特に法律上の問題はないと思います。もっとも、解雇、つまり雇用契約を解消するかどうかは会社の判断ですし、“勤務態度が悪いこと”が事実であったとしても、“解雇すべき”と会社に伝えることによって、当該社員との間でトラブルが生じる可能性もあります。会社に伝えるのは、“当該社員の勤務態度”にとどめ、処分すべきであるとか、どのような処分をすべきであるとかは、言わないほうがよいでしょう。当該社員をどのように扱うかについては、会社の判断に委ねるほうが賢明ではないかと思います」(櫻町弁護士) 法律的には「会社にクビを促すこと」はできるようですが、実務的に見ると勤務態度の悪さを指摘するまでにとどめたほうが無難であるようです。 ■経営者が納得すれば雇用し続けられる?「契約当事者である会社(の経営者)に解雇する意思がない以上は、同僚とはいっても契約当事者ではない社員の希望が通らなくても、それはやむを得ないことだと思います。とは言いましても、いわゆる“問題社員”がおり、その社員によって他の社員の業務効率が悪化していたり、モラルが低下していたりという状況が生じていれば、経営者としても何らかの対処が必要になってくるでしょう。ですから、同僚が会社側に伝える場合には、問題社員の“勤務態度”に加えて、それによって“どのような弊害、悪影響が職場に生じているか”に言及することによって、会社側に“きちんと対処する必要がある”と認識させることが重要と思います」(櫻町弁護士) 契約当事者が同意しないかぎり、社員側から解雇を促すことはできないようです。もし同僚が欠勤を繰り返すなど、勤務態度が著しく悪く、「辞めてほしい」と考える場合は、経営者に勤務状況を報告し、「納得させる」しか道はないのですね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月19日*画像はイメージです:先日ある大食いタレントが、自身のブログで食べ放題の焼肉店から「出入り禁止」を告げられたことを明かし、賛否両論となりました。店としては食べ放題といえども1人に多くの肉を食べられては採算が取れないという判断からそのような行為に出たものと思われるだけに、理解を示す人もいるようです。一方で「食べ放題なんだからいくら食べてもいいじゃないか」「出入り禁止はやり過ぎ」など、批判の声も根強い状況です。このように食べ放題を謳う店舗が「よく食べるから」という理由で特定の客を「出入り禁止」にすることは許されるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解を伺いました。 ■食べ放題店での「出入り禁止」は合法?「“食べ放題”、“飲み放題”と並ぶこれら魅惑の言葉に、胸の高鳴りを禁じ得ないのは私だけでしょうか。さて早速解説ですが、“食べ放題”に限らず、そもそも飲食店に入店するのは、飲食物供給契約を締結することの申込みに当たると考えられます。お店には契約を締結する事由、言い換えるとどの客を立ち入らせ、どの客の立入を断るかの裁量があるので、特定の客を出入り禁止にすること自体が違法になることは考えられません。ただし、お店の社会的評価を考えると、少なくとも出禁にするためには、出禁にするだけの合理的な理由まで必要になると思われます。では、合理的な理由とはどういったものが考えられるでしょうか。たとえば、一定の属性に基づいて差別的な選択をしているような場合、例えば、特に理由もなく特定の宗教を信仰している人について一律に入店を断る場合や、人種や民族、性別等により入店を断るような場合には、合理的な理由なく入店を拒否するものと考えられ、入店拒絶行為が客に対して精神的損害を与えたとして、不法行為(民法709条)などの責任を生じさせる可能性があります。ここで、“食べすぎること”が合理的な理由にあたるかが問題になるところ、食べ放題は基本的に“フードファイターのようなプロまたはプロに準ずる大食いではない一般人”が来店することを前提に料金設定がされていると思われます。その意味では、今回のプロの大食い選手や、一般人の何倍も食べる相撲の力士などが来店して大量に食事をされると、採算が取れなくなってしまうため、そのような客をあらかじめ一律に断ることには合理的な理由があるといえそうです。そのため、食べ放題の店で一般人をはるかに超える量を食べる大食いの人をあらかじめ出禁にすることは合理的な制限として社会的にも許容されると言えそうです。なお、あらかじめプロのフードファイターなどについては入店をお断りする旨の告知をしていたにもかかわらず、それを秘して来店したような客に対しては、大食いでないことが飲食物提供契約の前提となっているため、錯誤無効(民法95条)や、客の言動次第では詐欺取消し(同96条1項)などを主張して、飲食物提供契約を解消し、その場で退店するよう求めることもできると考えられます。私は学生時代、昼食はカツ丼大盛りとラーメン、食後にアイスを食べてようやく腹八分でしたが、今ではすっかり胃袋も縮んでしまいました。とはいえ、特に金曜日の夜になると、ついつい飲み放題の看板に惹かれてしまったりします。食べると飲むが放題でも、油断をすれば健康だって壊し放題。“~放題”の文字に目がくらむことなく、健康第一で食べ放題ライフを楽しみましょう」(大達弁護士) 客の立ち入りについては店側の裁量に任せるため、特定の客を「出入り禁止」にしたとしても、違法にはなりえないとのこと。ただし、社会的通念上、「合理的な理由」が求められるようです。そして、大食い番組などに出演するフードファイターと呼ばれる人々や、力士など、食べ放題店で大量に飲食することが予想される人物を出入り禁止にすることは、「合理的な理由」に該当する可能性が高いとのこと。当然といえば当然ですが、やはり店側の都合も考えねばならないようですね。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*hungryworks / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月15日「嵐」の櫻井翔と有吉弘行が出演者、スタッフ、そして視聴者の力を借りて、登場するゲストの願望・疑問・悩みを様々な手段で解決・実現するバラエティ「櫻井・有吉THE夜会」。2月15日(木)今夜はゲストに女優の二階堂ふみを迎えてのオンエアとなる。モデルから女優へと活動の幅を広げ2011年公開の『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で映画初主演を果たした二階堂さん。園子温監督作の『ヒミズ』では国内外の映画賞で高く評価され大きな注目を浴びることに。その後も『オオカミ少女と黒王子』『SCOOP!』『何者』など数々の作品に出演。映画はもちろん「フランケンシュタインの恋」といったドラマにもヒロインとして起用され、現在放送中の大河ドラマ「西郷どん」にも出演と、今後さらなる活躍が期待されている女優である。そんな二階堂さんが今回は、ギャル文化が大好きで興味を持っている盛り髪を教わりに、盛り髪の聖地と言われる横浜の美容院へ。“詐欺メイク”でいま人気の芸人「ゆにばーす」はらを、自らの手で“大改造”。二階堂さんの手で奇跡の大変身を遂げたその姿にスタジオが驚きの声を上げる。演技だけでなくファッションやメイクなどにも精通した二階堂さんの一面は必見だ。二階堂さんは2月16日(金)より全国東宝系にて公開される映画『リバーズ・エッジ』で主演を務めている。同作は伝説的マンガ家・岡崎京子の代表作を、『GO』『ピンクとグレー』の行定勲監督が映画化するもの。「若草さん、今晩ヒマ? 僕の秘密の宝物、教えてあげる」。 若草ハルナは、彼氏の観音崎がいじめる山田を助けたことをきっかけに、夜の河原へ誘われ、放置された<死体>を目にする。「これを見ると勇気が出るんだ」と言う山田に絶句するハルナ。さらに、宝物として死体を共有しているという後輩でモデルのこずえが現れ、3人は友情とは違う歪んだ絆で結ばれていく。 ゲイであることを隠し街では売春をする山田、そんな山田に過激な愛情を募らせるカンナ、暴力の衝動を押さえられない観音崎、大量の食糧を口にしては吐くこずえ、観音崎と体の関係を重ねるハルナの友人ルミ。閉ざされた学校の淀んだ日常の中で、それぞれが爆発寸前の何かを膨らませていた。そんなある日、ハルナは新しい死体を見つけたと報せを山田から受ける――。二階堂さんがハルナ役を演じ、『銀魂』などの吉沢亮が山田役を演じるほか、森川葵、上杉柊平、SUMIREらも出演する。「櫻井・有吉THE夜会」は2月15日(木)22時~TBS系で放送。(笠緒)
2018年02月15日*画像はイメージです:月31日、会社経営者の男性がGoogleで自分の名前を検索すると振り込め詐欺事件の逮捕歴が出るとして、結果の削除を求めていた裁判で、最高裁が上告を受理しない決定をしたことが判明。これにより、一審・二審の請求棄却判決が確定。男性は敗訴することに。なお二審で東京地裁は棄却理由について、「振り込め詐欺に対する社会的関心は高く、事件で男性の果たした役割は決して小さくはない」と指摘。執行猶予から6年が経過している状態だとしても、逮捕情報を公開する必要性を否定できないとしました。 ■削除要求が認められたこともあったはずだが検索サイトに自分にとって不利益な情報が掲載された場合、男性のように、裁判所に削除を求め訴えるケースが増加。中には要求が認められたこともありました。削除要求が認められるか否かの基準は一体どこにあるのか。また、今回の判決について弁護士はどのような見解をもっているのでしょうか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 ■弁護士は今回の判決をどう見た?「犯罪報道の削除については、最決平成29年1月31日が基準を示しています。「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当」 この基準によれば、逮捕歴の削除が認められる余地がほぼないということになります。そのため、上告を認めなかったことも当然という結論になるかと思われます。もっとも、この結論がよいかというと、全くそんなことはなく、変える必要があると考えています。この決定は、実際上、「犯罪者はずっと晒しておけ」といっているに等しい内容であり、これは私刑を容認しているのと同義です。そのため、少なくとも一定程度の時間が経過しているものについては削除を認めることができるような基準を定立すること、少なくとも運用においてそのようなあてはめをするようなことを裁判所がしていくことが必要と考えます」(清水弁護士) 削除基準については明確なものがあるようですが、法律が現状に追いついているとはいえないようです。今後、時代にあった法律が定立されることを期待したいものです。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Snipergraphics / Shutterstock
2018年02月14日*画像はイメージです:先日、インターネット上の掲示板に「妊娠中に突然夫から“性格の不一致で離婚したい”と告げられた。私は離婚したくないのだが、どうすればわからない」という相談の書き込みがありました。夫は浮気をしているようで、離婚を口にしていますが、現在は子どもがいて、妊娠もしているようです。子どもがいながら、「性格の不一致」と称して浮気を隠し離婚を迫るという行為に、「無責任だ」「妻はバカにされているのでは」批判の声が集中しています。 ■妊娠中に「性格の不一致」で離婚はあり?夫の行動については賛否両論ありますが、妻としては身籠った状態で離婚を告げられるのは、厳しいものがあるでしょう。将来のことを考えると、やはり離婚は避けたいもの。そもそもこのような「性格の不一致」による離婚は、認められるのでしょうか?また、「妊娠中」であることは、考慮されるのか。離婚問題に詳しい高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■離婚事由として認められる?「離婚事由として認められるのは、不貞行為や配偶者からの暴力その他“婚姻を継続し難い重大な事由”です。性格の不一致があるというだけでは“婚姻を継続し難い重大な事由”には該当しないため、離婚事由としては認められません。性格の不一致によって夫婦関係がもはや修復不可能な状態(長期間別居している、同居していても長期間会話や性交渉が一切ない等)にまで至っている場合に初めて離婚事由として認められるに過ぎません」(理崎弁護士) ■妊娠中であることは考慮する要素になる?「性格の不一致は原則として離婚事由とはならないため、妻が拒否している限り夫からの離婚請求は認められません。妻が離婚を拒否することは当然の権利行使なので、妻が離婚を拒否しているという事実をもって離婚事由が認められることにはなりません。なお、妊娠中であることが離婚を決める場合に考慮する要素となるか否かという点については妻が妊娠中であることは離婚を制限する事由として考慮されることになります」(理崎弁護士) 性格の不一致では夫婦関係が修復不可能な状態と認められない限り、離婚事由とはなりえないとのこと。一方が拒否している場合、離婚することは難しいようです。子を持つということは、親に責任が発生します。妊娠中の浮気や離婚は、やはり無責任な行為といわざるをえないでしょう。一時の感情だけでは、離婚することは難しいということも、結婚前にしっかりと把握しておくべきかもしれません。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月13日*画像はイメージです:意外と多い男女間での隠し事。とくに「人の過去」は、知られたくないことも多く、相手に告げず伏せておくこともあります。好きだからこそ、過去を隠匿しておきたいと考えるのは、自然なことかもしれません。 ■婚歴を隠すケースもそんな「隠したい過去」の1つが、離婚歴。「バツがついている人との結婚は嫌」という人も多く、初婚ということにしてつきあい、婚約するケースもあるのだそう。しかし、最近は情報化社会であるだけに、婚約後すぐに婚歴がバレてしまうことが多々あります。そのような場合、事実を知った側はショックを受けてしまい、最悪婚約破棄を考えることになるでしょう。そのような場合、破棄事由として認められるのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■婚約破棄できる?「未婚だと思っていた交際相手に離婚歴があったことが発覚した場合、騙されたと感じる人は少なくないと思います。婚約していた場合には、なおさらそのように感じてしまうのも無理はありません。しかし、婚約は婚姻の予約であり婚姻状態にはないことから、法律上は何らの規定もありません。この場合、婚約の破棄は無制限にできるのでしょうか。この点について、裁判所は、男女間の一般的な交際にとどまらず、いわゆる婚約をしているといえる場合には、婚約当事者に対して一定の法的保護を与えています。いかなる状態が婚約に該当するかについては一義的に決まるわけではないので、別の機会に譲りますが、具体的には、婚約が正当な理由なく破棄された場合には、慰謝料等の損害賠償を相手方に請求できることになります(最高裁昭和38年12月20日判決参照)。これは、裏を返すと、正当な理由がある場合には慰謝料等を支払うことなく婚約の破棄ができる、ということでもあると理解できます」(大達弁護士) ■正当な理由になるのか?「では、未婚だと偽っていた相手に離婚歴があったという事情は、婚約を破棄する上で“正当な理由”といえるでしょうか。この点について、直接判示した裁判例は見当たりませんが、今後婚姻をすることが社会通念上困難な状態であるといえる場合には、「正当な理由」があると考えられます。具体的には、不貞行為、重要な事実について虚偽がある、経済状態の極度な悪化、暴力・暴言、社会常識を相当程度に逸脱した言動などが挙げられます。今回のように、婚約相手に離婚歴があったという事情のみでは、今後婚姻をするのに支障が生じるほどの重要な事実について虚偽があったとは言い難いように思われます。例えば、前妻との間に子どもがおり、多額の養育費等を負担しているなどの事情がない限りは、婚約破棄の正当事由があるとは認められにくいのではないでしょうか。もっとも、交際や婚約の条件として、離婚歴のないことを相手方に明示しており、それに応じて離婚歴がないと宣言していたような場合には、重要な事実に虚偽があるといえ、婚約破棄について正当な理由があるとされる可能性もあるかもしれません」(大達弁護士) ■婚姻後だったら?「なお、婚姻後に離婚歴の存在が発覚した場合には、離婚歴を偽っていたことを捉え、詐欺による婚姻取り消し(民法747条1項)をするということも考えられますが、これは詐欺によって、婚姻に重要な事実の錯誤が生じることまで必要があるため、婚約破棄の場合と同様、離婚歴のないことが当事者にとって重要な事実であるといえる場合に限って、取り消しが認められる可能性があると思われます。仮にそのような場合であっても、離婚歴があることを知ったときから3ヶ月以内に婚姻の取り消しをする必要がありますので、注意が必要です(同条2項)。婚姻は人生の一大事。大切な伴侶には隠し事なくお付き合いをしたいもの。寒風吹きすさんでおでんの美味しい季節ですが、こんにゃくも婚約も愛情たっぷりの出汁の中でじっくりと育て、味のある二人になって欲しいものです」(大達弁護士) 婚歴を隠した人としては、なにか理由があったのでしょうが、伏せておいた事実はいずれ発覚するもの。打ち明けられた側が未婚にこだわりを持っていた場合は、法的に破棄事由として認められる可能性が高まりますので、やはり事前に説明したほうが良いかもしれません。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*【Tig.】Tokyo image groups / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月06日*画像はイメージです:先日、ある女性が掲示板に、「いつも行くメガネ屋の店長が帰りにさりげなく肩を揉んでくるのが不愉快」という内容の書き込みを行ったことが話題となりました。女性は「接客上肩を揉む必要はない」「下心があるのではないか」と感じているそう。この書き込みに対し、ネットユーザーからは「セクハラで訴えればいいのではないか」という声があがっています。 ■線引きが難しいセクハラセクハラについてはその線引きが難しく、たびたび議論になっています。一般的には「女性が不愉快と感じたら該当」という定義のようで、それと照らし合わせると、店長の行動は、セクハラになるものと思われます。しかし、店長が「無意識」や「スキンシップ」の可能性もあり、男性としてはそのような指摘にビックリしてしまうかもしれません。セクハラの線引きや境界線は法律的にどのようになっているのか。また、この店長の行動は該当するのか。パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。 ■セクハラの線引きは?「セクシュアルハラスメントという表現は、今日においては生活の色々な面で耳にしたり、あるいは目にしたりしますが、法律による規制がされているのは、職場(あるいはそれに準じる場所・機会)における行為であり、セクシュアルハラスメントという表現から一般的に想定されるものよりは、限定的であるといえます。具体的には、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(いわゆる“男女雇用機会均等法”)において、 「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」 と規定されています(同法11条1項)。そして、これを受けて、厚生労働省から“事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針”という告示が出されています。また、日本の裁判において初めて“セクシュアルハラスメント”という表現が使われたのは、静岡地裁沼津支部平成2年12月20日判決(判タ745号238頁)とされています。この裁判では、ホテルの女性従業員が男性上司の運転する車に同乗して帰宅中、当該上司が従業員に対して“モーテルに行こうよ。裸をみせてよ。”と言い、原告がこれをはっきりと断ったにもかかわらず、自動車をモーテルのある方向に向けて走らせ、あるモーテルの前で車をとめて、原告の腰の辺をさわり、“いい勉強になるから入ろう。”と、執拗に誘った。“執拗にキスをくりかえし、路側帯に車を停め、又執拗にキスをくり返した。”などの行為をし、こうした行為について、従業員から“オートロックで走行している自動車内にあって逃げ出せない状態の原告の意思を無視し、かつ、上司である立場を最大限利用して、脅迫のうえ行われたものであるから、刑法の強制わいせつ罪に該当する犯罪行為であり、かつ、セクシュアル・ハラスメントの典型行為でもあり、民法七〇九条の不法行為に該当する。”との主張がされました。また、福岡地裁平成4年4月16日判決(判タ783号60頁)では、セクシュアルハラスメントという表現は用いられていないものの、「被告丙が、被告会社の職場又は被告会社の社外ではあるが職務に関連する場において、原告又は職場の関係者に対し、原告の個人的な性生活や性向を窺わせる事項について発言を行い、その結果、原告を職場に居づらくさせる状況を作り出し、しかも、右状況の出現について意図していたか、又は少なくとも予見していた場合には、それは、原告の人格を損なってその感情を害し、原告にとって働きやすい職場環境のなかで働く利益を害するものであるから、同被告は原告に対して民法七〇九条の不法行為責任を負う」と述べ、職場における性的な言動が不法行為となり得るという裁判所の判断が示されました。したがって、「メガネ屋の男性店長がやたらと肩をもんでくる」という行為は、職場における関係を前提としたものではありませんので、上記のような意味でのセクシュアルハラスメントには該当しないものといえるのではないかと思います。もっとも、「意思に反して身体に触られる」という行為については、乳房や臀部等の「触られたら性的に羞恥心を感じるのが通常」といえる部位に触られた場合、「性的自由の侵害」として行為者に民事上の損害賠償責任が発生する可能性があります。ただ、本件の場合は、「肩」であり、「触られたら性的に羞恥心を感じるのが通常」とは言い難い部位を数回揉まれたということですが、よほど長時間にわたってしつこく揉まれる、頻繁に行われるといった、社会通念上許容できる限度を超えていると認めらるような事情がない場合には、損害賠償責任が認められる可能性は低いのではないかと思われます」(櫻町弁護士) セクハラについては事案・状況・場所などを総合的に判断し、該当するか否かが決まるよう。上司など立場の強いものからのセクハラは、なかなか人に相談できず、エスカレートすることもあります。仮に「相談できる人がいない」「困っている」という場合は、弁護士に相談してみるのも、1つの手段です。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*aijiro / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月05日*画像はイメージです:月5日、福島県須賀川市の東北自動車道で、茨城県石岡市に住む80歳の男性が運転する乗用車が逆走。青森県弘前市に住む40代の男性が運転する大型トラックと衝突する事故が発生しました。このような高速道路の逆走事故は昨今頻発しており、昨年12月には、勤続24年のベテランバス運転士が、客にミスを指摘されたことをきっかけに、高速道路を逆走した事案も起きています。高齢者でなく、その道のプロでも、パニックに陥ると、逆走してしまうことがあるよう。運転免許証を持つ誰もが、経験する可能性を持っているといえます。 ■どんな罪になる?高速道路を逆走した場合どのような罪になるのでしょうか。まず、逆走したのみで事故に至らなかった場合ですが、道交法第十七条違反となり、9,000円以下の罰金と違反点数2点となります。車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。(道交法第十七条)現行の法律では「高速道路を逆走すること」について直接的に罰する法律はなく、改正すべきではないか、という声があがっています。 ■事故を起こした場合は?高速道路を逆走し、事故を起こした場合はどうなるのでしょうか?この場合は、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の「危険運転致死傷罪」となる可能性があります。この場合、1年以上20年以下の懲役。かなり重い罪が科せられます。また、民事での損害賠償金についても、高速道路の逆走が原因である場合は、100%加害者の責任となり、高額化します。普通に運転していれば逆走はありえませんが、走り慣れていない場所や、何らかのトラブルによって知らぬ間にそのような状態になってしまう可能性は、ゼロではありません。逆走をしないよう、十分注意して高速道路を走りましょう。 *記事監修弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*たわばう / PIXTA(ピクスタ)
2018年02月03日郵便や配送物は、「正しく届けられて当たり前」と考えている人がほとんどでしょう。しかし、人間が関わる以上、誤配送されることもあります。他人宛の荷物が自分に届いた場合、速やかに業者に返さねばなりません。ところが、中には「これ自分も欲しかったんだよな。バレなければいいか」と、着服したくなってしまう人もいるはず。仮にそのような行為に出た場合、どのような罪になるのでしょうか? Q.誤送された荷物を返さずに着服……どのような罪になる?*画像はイメージです:遺失物横領罪になる可能性があります。刑法253条と254条に以下のような条文があります。第二百五十三条業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。(遺失物等横領)第二百五十四条遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。(準用) 他人の郵便物や荷物を自分のものにしてしまう、勝手に捨てるなどすることは、上記の法律に抵触する犯罪行為になります。法律に詳しい人なら「わかっていること」ではあるのですが、故意でなく「忙しくて誤送された荷物を放置してしまう」ことはよくあることかもしれません。このような場合、故意でないことを証明せねばなりませんが、「言い訳なのではないか」と取られることもあり、なかなか難しいようです。不要な前科をつけない意味でも、誤送された荷物は速やかに業者に返すようにしましょう。 *記事監修弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月27日*画像はイメージです:ショッピングモールなどに併設されていることが多いフードコート。広いスペースにテーブルとイスが設置され、そのまわりを複数の飲食店が取り囲む形式で、客は好きな店舗の食事を味わうことができます。飲食店の利用を前提に設置されているフードコートですが、最近は「ただ座って水を飲むだけ」というケースや、自分で飲食物を持ち込む人もいるようです。このような場合、施設側は場所から立ち去るよう求めたいところ。また、営業妨害を主張したくなります。そのようなことが可能なのか、星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。 ■フードコートで飲食店を利用しない場合どうなる?「刑事上の責任までは問われず犯罪になる可能性は低いものの、民事上の責任を負う可能性はあり、かつ、退席を求められた場合は、退席する義務があると考えられます。フードコートもしくはフードコートが入っているショッピングモールの利用規約上、明文がなくとも、持ち込み利用または飲食店非利用の席占拠は、禁止されていると解釈できることが多いと思います。したがって、正規の使用方法でない席を長時間占拠し続けることは、民事上、営業損害等の賠償責任に問われる可能性があります。ショッピングモール側から退席を求められた場合は、退席する義務があると解釈されます」(星野弁護士) ■刑事責任は問えない可能性が高い「ショッピングモールのような誰もが出入り自由な公開の店舗にあっては、たとえ結果的にショッピングモール内のサービス利用や物品購入をしなかったとしても、それが建物施設管理者の意思に反する立ち入りとはいえず、窃盗等の違法行為をする目的での立ち入りでない限り、建造物侵入罪に問われることはありません。したがって、フードコートエリアで飲食せずに居座っていたり、飲食物持ち込みをしていても、刑事責任に問われる可能性は極めて低いと思います。もっとも、長時間にわたって不正使用し、ショッピングモール側から退去を求められたにもかかわらず、退席しなかったような悪質なケースでは、建造物不退去罪が成立する可能性はあります」(星野弁護士) フードコートで店舗を利用しない行為は、刑事責任に問われる可能性は低いものの、「正規の使用方法」ではないため、賠償責任が発生する上、退席要求にも応じる義務が発生するそうです。「場所だけ利用したい」という気持ちは理解できますが、フードコートは「店舗の利用が前提」のスペース。そのことを、忘れないようにしましょう。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*風待人 / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月21日*画像はイメージです:昨今、一部の開錠業者による詐欺事件が頻発しています。多くの業者ではそのようなことはないでしょうが、報告されている詐欺の手口の典型例は、HPなどに掲載されている料金を見て電話すると、実際に派遣された作業員から「この鍵を開けるためには追加料金が必要」「出張費が別途かかる」などと説明され、10倍近い値段を請求されるというものです。キッパリと「そんな金額は払えない」というべきですが、一刻も早く解錠したいという感情があることや、「支払いを拒否するなら警察を呼ぶ」などと脅されることで、お金を支払ってしまうようです。このような事件は増加傾向にあり、報道によると2014年度に100件程度だった相談件数が、2016年度には300件弱まで増加しているようです。被害に遭わないためにはどうしたら良いのか。また、実際に詐欺業者に直面した場合どのような対応を取るべきなのか。星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に解説していただきました。 ■費用明細・請求書の交付を求めて毅然とした対応を「ウェブサイトや事前に口頭で伝えられた金額よりも高額を請求されても、実際に作業してもらってしまっているし、早く家に入りたいし等の理由があったり、“ディンプルキーで開錠に手間がかかったため”、“深夜割増料金を加算したため”などと一応説明されたりすると、不本意ながらも支払ってしまうことがあり得ます。しかし、鍵のトラブルに限らず詐欺的商法すべてに共通するのですが、本当に詐欺である場合、一度お金を支払ってしまったらそのお金は取り戻せないと考えたほうがいいでしょう。請求金額が事前の説明と異なる場合、まずはウェブサイトの料金表を示す、電話口で伝えられた金額を作業員に言い、費用明細や請求書を交付するよう求めるなどするとよいでしょう。インターネット上では、“依頼する前に複数の業者を比較したほうがよい”、“開錠業者の仲介業者を選ばないようにする”、“一人ではなく誰かに立ち会ってもらうようにする”などの対策方法が示されており、これらも有効な手段の一つだと思います。ただ、鍵を紛失して家に入りたい状況の場合、近くにホテルや知人の家もなく、時間も遅くて管理会社にも連絡がつかない場合が多いでしょうから、誰かに立ち合いを依頼したり、その時間に来てくれる業者をゆっくり探したりする暇がないかもしれません。このように誰にも頼れない状況のとき(そして、ホテルに泊まるのではなくどうしても家に入りたいとき)は、毅然と費用明細や請求書の交付を求め、事前の説明と異なる金額の支払いを拒むしかないでしょう。開錠業者は“支払わないなら警察を呼ぶぞ!”と言ってくるかもしれませんが、その場合は、はっきりと事前に受けた説明と異なる不当請求であることを説明し、民事上の問題であるとして警察官にはお引き取りいただくほかありませんね」(木川弁護士) ■開錠費用の相場とは「ウェブサイトでは費用が数千円程度とうたっている業者もあるようですが、実際に人を派遣し、しかも時間が深夜であった場合には作業員にも割増手当が払われるわけですから、数千円程度では済まないと考えなければなりませんね。価格競争ですし、錠の複雑さにもよりますので、正当な相場がいくらかとは一概に言えませんが、たとえば建物明渡しの強制執行では少なくとも2~3万円程度の開錠業者費用がかかります。ですから、数千円程度の費用と謳う業者に依頼する場合にはよくサイトを確認し、追加費用がいくらかかるのかを確かめておくべきでしょうね。どうしても家に入らなければならないという弱みに付け込み、高額な費用を請求する業者には腹が立つでしょうが、消費者庁や消費生活センターに苦情を入れてもお金が戻ってくるわけではありません。開錠業者に依頼せざるを得ない状況になった場合、安い業者に飛びつかず可能な限り信頼できそうな業者を探すことに加え、不当請求を受けたときには毅然とした対応を取るという自衛手段を講じなければなりませんね」(木川弁護士) 人の弱みにつけ込む詐欺業者がいることは残念ですが、そのような企業がある以上、自己防衛をせねばなりません。追加料金を請求された場合は支払いを拒むなど、毅然とした態度をとるようにしましょう。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中【画像】イメージです*dorry / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月20日年末年始休み、義父母の家に顔を出したという既婚者の方は多いのではないでしょうか。戸籍上は親子でも、やはり所詮は他人であるだけに、「行くのが苦痛で仕方ない」と感じる人も少なくないようです。場合によっては、「気を遣いたくない」と、行くことを拒否している人もいるよう。配偶者が納得していればいいのですが、両親との良好な関係を希望する場合は「どうして上手くやれないのか」と苛立ってしまいます。仮にこのことが原因で離婚を思い立った場合、正当な事由として認められるのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 Q.配偶者が義父母の家に行こうとしないのが不満で離婚したい…離婚事由として認められる?*画像はイメージです:義父母の家に行かないことによって夫婦関係が修復不可能になった場合は、認められる可能性があります「まず、離婚事由があるかどうかは、夫婦関係がうまくいっているかどうかで判断されます。そのため、義父母との関係性は、離婚事由の有無の判断には基本的には関係ありません。ただし、夫が妻、妻が夫の両親の実家に行かないことによって、夫婦関係が悪化し、もはや修復することが難しい程度に至っている場合には、離婚事由が認められる可能性はあります。なお、過去には、配偶者と他方配偶者の両親の仲が悪いのに、他方配偶者は関係改善の努力をせず、むしろ、両親に同調していたようなケースでは離婚請求が認められた事例もあります」(理崎弁護士) 義父母の家に行くことを拒んだとしても、夫婦関係が良好であれば、離婚に至ることはありません。仮に「義父母の家に行くのが嫌」という場合は、配偶者と話し合い、理解を得るようにしましょう。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*naka / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月13日「嵐」の櫻井翔と有吉弘行が出演者、スタッフ、そして視聴者の力を借りて、ゲストの願望・疑問・悩みを様々な手段で解決・実現する「櫻井・有吉THE夜会」。2018年1月4日(木)今年最初の放送は豪華ゲストを迎えての2時間スペシャルでのオンエアとなる。1月スタートの日曜劇場「99.9-刑事専門弁護士- SEASON II」からは主演の「嵐」松本潤と共演の香川照之、木村文乃らメインキャスト3人がゲストに登場。トークでは松本さんに関する“アヤシイ疑惑”を有吉さんが徹底追及。“完璧男”松本さんのまさかの弱点とは!?さらに香川さんが“アノ衣装”で登場、話題の「Eテレ」昆虫番組のリベンジをしたいと熱弁してスタジオを騒然とさせるほか、木村さんは以前食べて感動したという「瞬間蒸し野菜」の作り方をどうしても知りたいと懇願、「瞬間蒸し野菜」を考案したお店のシェフがスタジオに登場、木村さんに秘伝のレシピを伝授する。松本さん、香川さん、木村さんが出演する「99.9-刑事専門弁護士- SEASON II」は1月14日(日)21時~TBS系で放送開始。松本さんが超型破りな若手弁護士役を演じて話題となった前シリーズの人気を受けて日曜劇場では異例のシリーズ化となった同作。木村さんは今シリーズからの参加となり、ある事件がきっかけで裁判官を退官した元裁判官の弁護士・尾崎舞子を演じる。同じく1月スタートの「きみが心に棲ついた」でドラマ初主演を果たす女優の吉岡里帆と、番組初登場となるニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手もゲスト出演。2人はそれぞれ知られざる私生活などをスタジオトーク。毎食“腹3分”の超節制生活を送る吉岡さんが約200日ぶりに食欲を解放、1ポンドの巨大ステーキを爆食い。さらに吉岡さんの意外な“口ぐせ”も明らかに。そして田中さんは「いま大好きなことベストテン」を発表するほか、ニューヨークでの私生活や、妻・里田まいの“スゴ過ぎる手料理”、現在1歳11か月となる息子の仰天エピソードも激白してくれる。吉岡さん初主演作となる「きみが心に棲みついた」は1月16日(火)22時~こちらもTBS系で放送開始。自己評価が極めて低いために、他人の前で挙動不審になってしまう主人公・小川今日子(通称:キョドコ)が、対照的な魅力を持つ2人の男性の間で揺れ動く様を描いていく作品となり、桐谷健太、向井理、石橋杏奈、ムロツヨシらも出演する。「櫻井・有吉THE夜会」2時間SPは1月4日(木)21時~TBS系で放送。(笠緒)
2018年01月04日*画像はイメージです:日本の正月に欠かせない食材、餅。その歴史は古く、縄文時代から食べられていたといわれています。日本人に最も愛された食べ物と言っても、過言ではないかもしれません。現在も親しまれる餅ですが、人間の生命を奪うことも。正月には、高齢者を中心に喉に詰まらせ、窒息死する事案が毎年発生しています。このような場合、責任は誰が負うのでしょうか。そして、損害賠償を請求可否についても気になるところです。 ■責任は誰に?まず、実際に餅を製造した会社に責任を追及することが考えられます。この場合、消費者と製造業者との間に直接の契約関係はないので、民法709条の不法行為責任を追及することになります。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(民法第709条不法行為による損害賠償)餅を喉につまらせた原因が製造会社の過失や故意によるものであれば、当然被害者側は損害賠償できることになります。さらに、一般消費者である被害者側が製造業者の過失等を立証することは困難であることから、製造物責任法により、商品に欠陥があることを立証することで足りることになります。「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。」(製造物責任法第3条)なお、販売業者に対して責任を追及する場合には、消費者と直接の契約関係にあることから、販売業者の債務不履行責任を追及することになります。 ■損害賠償請求するのは難しい?理論上は損害賠償が可能ですが、実際のところは難しいといわざるをえません。餅が日本で古来から受け継がれてきた食材であり、特有の粘り気があって噛み切りにくく喉に詰まる危険性があることは一般に広く周知されていることから、そのような餅を製造した製造業者に、製品に「欠陥」があるとして責任追及することは困難ではないかと思われます。同じような事例として「こんにゃくゼリー」による窒息事故があります。こちらの場合、餅と比較すると危険度が認知されていなかったことから損害賠償が認められる余地もありそうですが、結果的には「食品自体に危険性はなく警告表示も不十分ではない」として、訴えは棄却されています。 餅の喉つまりによる窒息死については、製造会社に明らかな過失等がない限り、自己責任となってしまう可能性が高いといえます。楽しい正月が悲劇の日にならないよう、餅を食べるときは十分気をつけましょう。 *記事監修弁護士: 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*プロモリンク / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月01日12月の電車は、忘年会帰りの酔っぱらいによる喧嘩やホームから線路への転落、線路内人立ち入りなど、様々なトラブルが発生します。さらに踏切付近でも酔った人間が線路内に立ち入り、列車の運行を妨げることも。いずれも人身事故に至る危険性があるうえ、運行ダイヤを大きく乱す迷惑行為。このような行為に及んだ場合、鉄道営業法第37条によって、厳しく処分されます。「停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス」(鉄道営業法第37条)それは誰もが理解していると思われますが、同じ線路内立ち入りでも、新幹線となると、罪がかなり重くなるというのです。本当でしょうか?Q.新幹線の線路内立ち入りは在来線より罪が重くなるって本当?*画像はイメージです:本当です。新幹線は在来線よりもかなり速いスピードで走る鉄道であり、安全性を確保する必要性が高いことから、鉄道営業法では十分な安全確保体制が構築できないとして、昭和39年に「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法(新幹線特例法)」が施行されています。したがって、同じ線路内立ち入りであっても、新幹線の場合は新幹線特例法第3条第2号が適用されます。「次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。二新幹線鉄道の線路内にみだりに立ち入つた者」鉄道営業法では「十円以下の罰金」となっていますが、現在は2万円以下とされています(罰金等臨時措置法第2条第1項)。一方で、新幹線特例法の場合は1年以下の懲役又は5万円以下の罰金とされており、鉄道営業法と比して、かなり厳しいものであることがわかります。在来線、新幹線とも線路への立ち入りは危険かつ迷惑行為。絶対に行わないようにしてください。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*ケイアール / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月30日昨今、身の覚えのない商品が家に届き、代引引換を迫られるという「送りつけ商法」が横行しています。11月には組織的に送りつけ商法を行っていたグループが千葉県で摘発されましたが、それでもまだ同じような事案が全国各地で発生しているようです。このような「送りつけ商法」は、被害に遭遇する可能性が誰しもにあります。仮に身に覚えがない荷物が送られてきた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。Q.身に覚えがない商品が送られてきたらどのように対処すればいい?*画像はイメージです:知らない商品であれば、受け取らないことをおすすめします。「商品を注文していないのであれば売買契約は成立しません。知らない商品であれば、受け取らないのが一番良い方法だと思います。間違って受け取ってしまった場合には、送り返してしまうと良いでしょう。法律上は商品を受け取った日から14日経過すれば処分しても問題ないことになっていますが(特定商取引法59条)、トラブルになる可能性がありますので、やはり送り返すのが無難です。後日のトラブルに備えて、商品を受け取ったときの伝票・商品を送り返したときの伝票は保管しておきましょう。当然ですが、お金を支払う必要はありません。いったんお金を支払ったら取り返すのは困難です。請求書がしつこく届くような場合には、開封せず“受取拒絶”と朱書・捺印してポストに入れて送り返しましょう。また、こうした送りつけは、自分の個人情報が入ったリストが悪質業者に流れていることが原因だと考えられます。事前の対策としては、アンケート等で自分の個人情報を無闇に記入しないことだと思います」(冨本弁護士) いきなり「代引きです」と商品を持ってこられると動揺してしまいがちですが、自分が注文指定ない商品であれば、売買契約は成立しないとのこと。受け取らず、返してしまいましょう。また、受け取ってしまった場合は、伝票などを残したうえで、送り返しましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月22日11月、愛知県内の焼肉店で、肉を焼いていた客のコンロからダクトに火が燃え広がり、店を全焼させるという事故が発生し、飲食店関係者を中心に、衝撃を与えました。今回の火災では、客が食べ放題の制限時間内に肉を食べきろうと大量の肉をコンロで焼いていたことが火災の原因であるとみられています。この場合、責任は誰が負うことになるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。Q.客が出火原因の火事…責任は誰が取る?*画像はイメージです:客に重大な過失がある場合には客の責任になります。「客のほうに重大な過失がある場合には客に責任があります(失火の責任に関する法律)。仮に客のほうに重大な過失があったとしても、お店のほうがダクトの清掃や定期点検を怠っていたような場合にはお店のほうにも過失がありますので、客の責任はその分軽くなります(民法722条2項)」(冨本弁護士) やはり今回の客による肉の焼きすぎによる出火のように、客側の重大過失によって火災へと発展した場合は、当事者が責任を負うことになるのですね。ただし、店側にも落ち度があった場合は、その罪が軽減されることもあるようです。いずれにしても、自分で起こした火災は、当然ながら自身で責任を取ることになります。焼肉店などでの火の取扱いは、十分気をつけましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*naka / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月20日先日、千葉県柏市に住む女性が知人男性に3日間で83通のメールを送ったとして、ストーカー規制法違反の疑いで逮捕される事件が発生し、話題になりました。一体何通メールを送ると「ストーカー規制法違反」になるのか。明確な基準はあるのか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。Q.メールを何通送ると「ストーカー規制法違反」になる?*画像はイメージです:明確な基準はありません。「具体的に何通送れば逮捕ということはありません。法律上は、“拒まれたにもかかわらず、連続して…電子メールの送信等をすること”が“つきまとい等”とされており、これを反復した場合にストーカー行為とされます。これに当てはまるといえるのであればよく、具体的に何通送ったのかということで分水嶺とされるわけではありません」(清水弁護士) 自分の愛を受け入れてほしいという気持ちから、メールを送り続けたくなってしまうのでしょうが、拒まれたにもかかわらず大量に送信してしまうと、ストーカーと認定されてしまうようです。感情をコントロールすることはなかなか難しいと思いますが、相手に拒絶された場合は、諦める方向で考えたほうが良さそうですね。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*naka / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月18日*画像はイメージです:大企業では、社員に対し様々な福利厚生が用意されています。その内容は住居や保険、保養所・寮・クラブ活動など、多岐に亘ります。一方、中小企業は費用を福利厚生にかけることが難しいため、内容はどうしても限られてしまいます。零細企業になると「まったく用意されていない」というケースもあります。そのような企業に勤務する者にとっては、非常に納得のいかない事態。そもそも「福利厚生がまったくない」のは許されるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。 ■「福利厚生がまったくない」のは許される?「結論からいうと、法律で義務づけられている福利厚生もないというのは許されません。福利厚生とは、事業主が労働者のために提供する給料以外のサービスのことをいいます。福利厚生には、雇用保険制度への加入など事業者に法律上の義務がある法定福利厚生と、食堂や社員寮の充実といった事業者に法律上の義務がない法定外福利厚生があります。法定福利厚生については、事業主に法律上の義務があるわけですから、ないというのは許されません」(冨本弁護士) ■法定福利厚生の種類は?「法定福利厚生には、以下のようなものがあります。(1)雇用保険制度への加入雇用保険は、国が失業した労働者に、必要な給付を行ったり、再就職の手助けをしたりするための制度です。事業主は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある人を雇い入れた場合、雇用保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(雇用保険法第5条・6条)。保険料は労働者と事業主の双方が負担します。 (2)労災保険制度への加入労災保険は、仕事が原因で怪我をしたり、病気にかかったり、死亡したり、あるいは通勤途中で事故にあったりした労働者に対し、国が事業主に代わって補償する制度です。事業主は、労働者(パートやアルバイトも含みます。)を1人でも雇い入れていれば労災保険制度に加入しなければなりません(労働者災害補償保険法第3条)。保険料は事業主の全額負担です。 (3)健康保険制度への加入健康保険は、労災以外で怪我をしたり、病気にかかったり、死亡したりしたり、出産したりした、労働者やその家族に対し、国が一定の給付をする制度です。一定の業種で常時5人以上労働者を雇い入れている場合、事業主は、健康保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(健康保険法第3条第3項)。保険料は、事業主と労働者の折半です。 (4)厚生年金保険制度への加入厚生年金保険は、労働者が高齢・障害で働けなくなった場合、あるいは労働者が死亡した場合に、労働者やその家族に対し、国が一定の給付をする制度です。一定の業種で常時5人以上労働者を雇い入れている場合、事業主は、健康保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(厚生年金法第6条第1項)。保険料は、事業主と労働者の折半です」(冨本弁護士) ■法定福利厚生がないとどうなるの?「法定福利厚生がないことによって、労働者は、本来もらえるはずの保険給付がもらえなくなる場合があります。この場合、事業主は、労働者から、その分の額を損害として賠償請求されてしまいます」(冨本弁護士) 福利厚生には法律上の義務がある法定福利厚生と、法定外福利厚生があり、法定福利厚生を用意していない企業については、労働者から損害賠償可能性があるとのこと。自分の会社が法定福利厚生に入っていないという場合は、弁護士に損害賠償請求を含めて相談してみましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*polkadot / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月09日先日、Twitter上で老人に痴漢された女性が老人に回し蹴りをしたことがツイートされ、賛否両論となりました。「痴漢なのだから致し方ない」という声や「過剰防衛なのではないか」という声があがっているようです。このような行為は正当防衛として認められるのか。そして、正当防衛と過剰防衛の違いは、どこにあるのか?星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。 Q.痴漢に回し蹴り……これは正当防衛になる?*画像はイメージです:過剰と評価される可能性もあります「正当防衛は、防衛行為が「やむを得ずにした行為」(刑法36条)であることが条文上の要件です。これは、防衛行為として、必要性、相当性があることを意味し、具体的な事情を総合考慮して決定されます。他の手段がなかったことまでは必須ではありませんが、回し蹴りまでする必要性があったかどうか、は考慮されます。痴漢の犯人が老人で、周りに人もいた状況であれば、回し蹴りせずとも犯行を中止させることは容易だったのではないかと想像できます。今回の事件の場合具体的状況がわかりませんが、一般論としては、老人の痴漢犯人に対する回し蹴りは、防衛行為としては過剰であったと評価される可能性も十分あるでしょう」(星野弁護士) 防衛行為が「やむを得ずにした行為」であれば正当防衛になりますが、今回のように「回し蹴りまでする必要性があったかどうか」などを総合的に判断し、「正当か過剰か」判断されるようです。自分に危機が迫っている場合は防衛せなばなりませんし、一方でやりすぎてもいけない。非常に難しい境界線といえるのではないでしょうか。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月30日*画像はイメージです:一度は愛し合った夫婦が再び袂を分かつ離婚。別れる際、財産分与や親権など、当事者の間で様々な話し合いが行われます。また、物の所有権を巡る争いも発生。「これは俺の金で買ったものだ」「いや、私だ」などと、互いが権利を主張する場合があります。そんな所有権を巡る争いには様々なものがありますが、意外と多いとされるのがペット。愛していれば「自分が引き取りたい」と考えるのは当然でしょう。仮にペットの所有権を互いが主張した場合どうなるのか。また、養育費などは発生するのか。あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士に見解を伺いました。 ■当事者の話し合いが最優先「離婚の際の財産分与は、まずは当事者間の話し合いで決まります。当事者だけの話し合いで決まらないときには、家庭裁判所で行われる調停での話し合いによって決まります。これらの話し合いであれば、ペットをどのように扱うか、自由に決めることができます。“養育費”をもらうことにしたり、月に1 回会うといった“面会交流”の取り決めをすることもできます」(高野倉弁護士) ■話し合いで決まらない場合は?「問題は、こうした話し合いで決まらなかったときです。調停でも話し合いがまとまらないときは、審判という手続に進みます。審判では、判決と同じように、裁判官が結論を決めます。柔軟な内容とするには限界があります。従って、ペットの“養育費”や“面会交流”というものが認められる可能性はまずないといえます。法律上の明確な根拠がないからです。離婚の際、ペットは“物”として扱われます。ドイツの民法では“動物は物ではない”と明記されていますが、日本の民法にはそのような規定はありません。不動産や自動車と同じように扱われます」(高野倉弁護士) ■親権や養育費は法律上考えられない「物に過ぎないので、親権や養育費は法律上考えられません。ただし、財産分与においては、法律上、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」(民法768条3項)とされているので、様々なことが考慮されます。例えば、離婚の際に自動車を財産分与するときは、どちらがより必要としているのかといった事情も考慮して、どちらの所有にするのかを決めます。ペットの場合、どちらに懐いているのか、どちらが飼育に適した環境かということも考慮された上で、どちらの所有にするのか決めると思われます。ただし、それは裁判官の裁量として考慮されているだけです。養育費や面会交流のように、権利として認められているわけではありません。あくまで、ペットを引き続き飼うことになった当事者が、責任をもって世話をする、ということになります。財産分与で自動車を受け取った当事者が、ガソリン代を支払い、税金を支払い、メンテナンスを行う、ということと同じです。なお、例外として、結婚前から飼っていたペットは、もとの飼い主のものになります。“特有財産”といって、そもそも財産分与の対象になりません。ペットがいる場合には、できるだけ話し合いでまとめた方がよいといえます。それ以前に、せっかくペットがいるのであれば、ペットと過ごす時間を通じてパートナーとも時間を共有し、良好な夫婦関係を築いていくのが最善です」(高野倉弁護士) ペットがいる場合は、予め話し合っておくことがベストであるよう。お互いが権利を主張しどうしようもなくなった場合は、やはり弁護士の力を借りたほうがよさそうですね。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*absolutimages / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月29日*画像はイメージです:システム業界などでは、以前勤めていた会社から「ちょっとわからないことがあるんだけど……」と電話がかかってくることが稀にあるようです。中には、自分が構築したシステムに重大なバグや設計ミスが発覚することもあるのだとか。そのようなとき、会社側から「責任をとってほしい」「改修作業をしてほしい」などと、持ちかけられることもあるようです。労働者側としては落ち度があったとはいえ、既に雇用契約は切れているうえ、新しい仕事もあり、応じたくはありません。このような場合、労働者は賠償責任や改修作業に応じるべきなのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■賠償責任の有無や改修作業に応じる義務は?「改修作業に応じる義務はないですが、担当者に落ち度があれば損害賠償請求に応じる義務がある場合もあるのではと考えます。通常、会社と担当者との間では労働契約(雇用契約)があるのではと考えられます。労働契約(雇用契約)の場合は、労働者は使用者の指揮命令に従って労務を提供する義務を、会社の方は賃金を支払う義務を負います(民法623条)。したがって、労働契約の期間中であれば、担当者は、改修作業を行わなければいけません。しかし、担当者が退社して、労働契約が終了しているとなると、担当者は、労務を提供する義務を負いません」(冨本弁護士) ■請負の場合は応じる義務が発生「なお、会社と担当者との法律関係が、労働契約(雇用契約)でなく、請負契約ということであれば、担当者は改修作業に応じる義務があります。請負であれば、請負人は仕事を完成させる義務を、会社の方は報酬を支払う義務を負います(民法632条)。また、請負の場合、納品されたものに欠陥があれば、会社としては、請負人に対しその修理をするよう請求できます(民法634条1項)。したがって、請負であればですが、担当者が開発したシステムに重大なバグが存在し、会社から回収作業を求められた場合、担当者としては応じる義務があります」(冨本弁護士) ■「落ち度」が認められれば損害賠償を負う場合もあるが……「会社と担当者の関係が労働契約(雇用契約)の場合でも、担当者に落ち度があれば、たとえ労働契約が終了した後といえども、損害賠償責任を負う場合があります。ただし、会社は労働者を指揮監督していたわけですから、損害の公平な分担という考え方から、会社の労働者に対する損害賠償請求については、裁判上かなり制限され、軽い落ち度であれば認められないこともあります。法律上は以上のようになると考えますが、改修作業がそれ程難しくないのであれば、退職した担当者としては、制限されているとはいえ賠償責任を負わないようにするために改修に協力し、会社の方も、退社した担当者に協力してもらう以上、相応の対価を支払うのが現実的であるかと考えます」(冨本弁護士) 担当者に「落ち度」があると判断された場合は、損害賠償責任を負うケースもあるようです。改修作業については、請負契約でなければ、原則応じる必要はないとのこと。法的には以上ですが、ブラック企業などは強行な損害賠償や無償による改修作業を求めてくることも考えられます。その場合は、弁護士とともに然るべき措置を取りましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです* stefanphotozemun / Shutterstock
2017年11月23日*画像はイメージです:先日、ある有名人が「自分の住所をネットに書き込まれた」として、警察に被害届を提出したものの、受理されなかったことを告白し、話題となりました。昨今SNSや掲示板などで個人の住所や電話番号が第三者によって書き込まれることは稀にあるだけに、「他人事とは思えない」という声があがっています。本当に住所などの個人情報をネットに書き込むことは違法ではないのでしょうか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 ■刑法上違法とはいえない「刑法上、違法というためには、当然、刑法に違反していることが必要です。刑法には色々な罪が定められていますが、刑法に定められている罪以外のものについては、罪とされることがないのが原則です。この原則は罪刑法定主義と呼ばれます。氏名や住所を公開することは、どの刑法上の罪にも当たりません。このようなことをされると、“名誉毀損だ”と主張する方が多いように感じますが、名誉毀損は社会的評価の低下がなければ成立しません。氏名や住所が公開されても、社会的評価が低下することはないため、名誉毀損が成立することはありません。今回、警察が被害届を受理しなかったのは、このような理由と考えられ、極めて当然の対応ということになります」(清水弁護士) ■民事上は不法行為となる余地がある「しかし、氏名や住所はプライバシーとして保護される余地があります。承諾なくプライバシーを公開すれば、プライバシー侵害となり、これは民事上、不法行為ということになります。したがって、この例でも、氏名や住所を公開した人物に対して、プライバシー侵害として損害賠償請求をする余地があります。ただし、住所や氏名が開示されただけということだと、賠償額としては高くはならないと思われます。なお、損害賠償請求は、その公開した人物に対してすることが必要です。しかしインターネット上に公開された場合、公開した人が誰かということが分からない場合が多いのではないかと思います。この場合、発信者情報開示請求という手続きを経てからでないと、損害賠償請求をすることができません。したがって、公開した人の責任追及をしようとしても、少々大変かもしれません」(清水弁護士) 刑法に反していないため警察が被害届を受理しない行為は「当然のこと」なのだそう。しかし、書き込んだ人物を特定することができれば、民事上の不法行為に問うことができる可能性は高いようです。インターネット上に他人の個人情報を書き込むのはやめましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月19日*画像はイメージです:交通違反などが原因で、パトカーから止まるよう指示されることは、多々あります。そんなときほとんどの人は指示に従うことでしょう。しかし、なかには逃げたいと思う人もいるはず。交通違反以外に「やましいこと」がある場合などは、実際に逃走するケースもあるようです。 ■死亡事故を起こすケースも稀に発生するのが、パトカーから逃げようとして事故を起こし、運転者が亡くなってしまうケース。この場合、逃走するほうに非があるのはわかるのですが、追い立てたパトカー側にも責任を問う声があります。このような場合、運転者の遺族としては警察に補償を求めたいところ。また、仮に何の罪もない通行中の一般人を巻き込んだ事故となれば、こちらの家族も治療費や補償を警察に求めていきたいところでしょう。警察に補償を求めることはできるのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■警察に補償を求めることはできる?「警察官などの公務員の違法な行為によって損害を受けた場合には、その公務員が所属する国又は公共団体に対して、国家賠償法による損害賠償請求をすることが考えられます(国家賠償法1条1項)。パトカーに追跡されていた車が事故を起こしたようなケースでは、その追跡行為が違法である場合に限り、その警察を設置している公共団体に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることができます。そして、どのような場合に警察官の追跡行為が違法となるかについて、最高裁判所は、「およそ警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問し、また、現行犯人を現認した場合には速やかにその検挙又は逮捕に当たる職責を負う(警察法2条、同65条、警察官職務執行法2条1項)」として職責を認定しています。そのうえで「職責を遂行するために被疑者を追跡することはもとよりなしうるところ」として、追跡行為自体の正当性を認めています。「警察官がかかる目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合」については、その「追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要する」として、逃走態様や交通状況等の事情から判断して追跡が不相当と言える場合には違法性を認めるとしました(昭和61年2月27日判決)。これは、パトカーに追跡されていた車に同乗していた者や、事故に巻き込まれた一般人のような第三者が損害賠償請求する場合だけでなく、パトカーに追跡されていた車を運転していた本人が損害賠償請求をする場合にも、警察官の追跡行為が違法となるのはどのような場合かについての判断基準となっています。この判例を受け、実際の裁判例を見てみると、損害賠償請求が認められたものとしては、警察官が、暴走行為をするバイクを停車させるために幅寄せ等の行為をした結果、バイクが標識と衝突し、運転者が死亡、同乗者が重傷を負った事例において、幅寄せ行為等に警察官の過失が認められ、追跡方法が違法であると判断され、損害賠償請求が一部認容されたものがあります。(徳島地裁平成7年4月28日判決)」(大達弁護士) ■損害賠償が認められる可能性は低い?「その他、警察官の呼びかけを無視して逃走をしているような場合で、警察官の追跡行為が違法とされた目立った例は見当たりません。警察官の追跡行為が違法とされる可能性がある例として考えられるのは、下記の条件をすべて満たすような限定的な場面と思われます。・逃走運転者の人物や住所が警察に知れていて、後に逮捕や検挙、任意の取り調べが容易でその場での追跡が不必要である・追跡原因となった違法事由や嫌疑が軽微なものである・追跡行為によって事故等が起こる具体的な危険性が生じている上記の条件をすべて満たしつつ、漫然と追跡し続けた結果として事故が発生したような場合でない限り、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められる可能性は低いと考えられます。なお、事故に巻き込まれた第三者は、事故を起こした運転者やその保険会社に対して、損害賠償請求をすることができ、それによって損害はある程度填補され得ます(自動車損害賠償保障法3条、民法709条)」(大達弁護士) 警察による追跡行為が違法とされる例は限定的のようです。補償を求めることができるケースもありますが、無用なトラブルを避けるためにも、やましいところがないのであれば、パトカーに呼び止められた場合には、素直に応じることが無難なようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*curvabezier / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月18日*画像はイメージです:昨今大手企業の不正行為が相次いで発覚しています。いずれも日本を代表する企業であるだけに、その影響は計り知れないものがあります。一連の不正は、会社内で「当たり前」のような状態となっていた模様。それを見かねた一部の勇気ある社員が内部告発をしたことで、不正が明るみに出たようです。 ■意外と知られていない「内部告発」の方法自分の働いている会社の不正を告発することは、自らの首を絞めかねない行為。ほとんどの人が「見て見ぬふり」をしてしまうことでしょう。しかし、正義感などから、やはり「内部告発に踏み切るべきだ」と考える人もいるはず。この場合、周りの社員にバレないよう、密かに行動する必要があることは、皆さんご存知のとおりです。その一方で、「どこに、どうやって」告発をすれば良いのかは、あまり知られていません。仮に企業の不正を内部告発する場合、どのように進めれば良いのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に解説していただきました。 ■内部告発はどのように行う?「最近も、性能データ数値、リコール件数、決算資料等の改ざん・ごまかしなどの企業の不正に関する報道が相次いでいます。従業員からの内部告発によって企業の不正や不祥事が明るみに出ることがありますが、原則として内部告発は実名で行うことになっているため、告発による不利益や報復をおそれてしまう方も多いかもしれません。そこで、実際に内部告発をしたいと思った場合にはどうすればよいかについて、制度を含めて簡単にお伝えしたいと思います」(木川弁護士) ■公益通報者保護制度(内部通報者保護制度)の存在「公益通報者保護法上の公益通報は、労働者が、不正目的ではなく、会社や役員・従業員等について生じている(まさに生じようとしている場合も含む)法令違反(コンプライアンス違反)行為を会社や外部に通報することです。公益通報者保護法や裁判例上、通報した人に対して降格・異動・解雇等の不利益行為を行ってはならないとされており、企業内の不祥事を発見した従業員が通報しやすくなっています」(木川弁護士) ■実際に内部告発をするときはどうしたらよいか「とはいえ、実際には不祥事が組織ぐるみで行われている場合などでは通報者に対する退職勧奨や不利益取扱いが行われてきたこともあります。法律は当事者間で紛争になってから守ってくれるものですので、事実上、不利益な扱いを受けない保証はありません。公益通報者保護法違反に対する罰則がないことも問題視されています。そこで、通報を検討している方が取り得る方法は2つあり、1つは匿名で通報をすることです。匿名通報は公益通報者保護法上の保護の対象になりませんが、理由のない不利益取扱いを受けた場合は裁判で争うことが可能できます。上司や会社を信用できない場合に様子見として会社上層部または外部に通報してみるのもいいかもしれません。そして、もう1つはその会社に見切りをつけて堂々と実名で通報を行うことです。昔とは違い、不正は明るみになりやすくなっていますのでその会社でキャリアを積んでも水の泡になる可能性が大いにあります。そのような会社は、残業代が払われないなど既に自分が被害を被っている場合がありますので、タイミングとコストを考慮して通報を行うのがよいでしょう。どこに、どのタイミングで通報するかについて迷われた場合は、第三者委員会や弁護士会の公益通報相談窓口へ相談するとよいです。結局、公益通報を行うこと自体によるメリットがない上、公益通報者保護法違反に罰則もなく、しかも、むしろ不利益取扱いを受けるリスクを背負うだけという点がネックだと思います。法改正もさることながら、どうしても社内での自浄作用が働かない場合には通報も選択肢の1つとして考えるような法令遵守行為が礼賛されるような社会になることを願います」(木川弁護士) 現状内部告発を行う場合は、会社からの不利益取扱いなどを受ける可能性があるようです。自分を守るためにも、告発の前に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです* NOBUHIRO ASADA / Shutterstock
2017年11月13日*画像はイメージです:電車に乗っていて、誰のものかわからない財布が座席に落ちていた。その場合、多くの人々は車掌や降りた駅の駅員に届けることでしょう。しかし、中には自分の中で「悪魔」が登場し、その財布を持ち去ってしまう人もいるかもしれません。そのようなことは、当然犯罪になります。このようなことをした場合、一体どのような罪に問われる可能性があるのか。パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に解説していただきました。 ■電車内にあった財布を盗むとどんな罪になる?「電車内にあった財布を拾って自分のものにしたという場合には、「窃盗罪」(刑法235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)、または「遺失物(占有離脱物)横領罪」(刑法254条。1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)の成否が問題になります。窃盗罪と遺失物等横領罪、この2つの犯罪の違いは、勝手に自分のものにした他人の所有物(今回のケースでは財布)が、第三者(所有者とは限らない)の占有下にあったかどうかによって決まります。つまり、その所有物が第三者の占有下にあった場合は窃盗罪となり、誰の占有下にもなかった場合は遺失物横領罪となります。今回のケースでいうと、電車の座席に財布があり、所有者と思われる人が近くにいない(既に下車してしまった)といった状況であれば、その財布を占有下においている人が誰もいないので、勝手に自分のものにすれば「遺失物横領罪」が成立することになるでしょう。ちなみに、かなり古い判例ですが、大審院大正15年11月2日判決・大刑集5巻491頁は、列車内に乗客が置き忘れていった物(毛布1枚)につき、(列車内にあるからといって)乗務鉄道係員がそれを占有しているということにはならないから、それを自分のものにした被告人の行為は(窃盗罪ではなく)「遺失物横領罪」にあたるというべき、と判示しています」(櫻町弁護士) ■ケースによって微妙なものも存在なお、「誰かの占有下にあったかどうか」の判断は、ケースによって微妙なものもあります。まずは、バス待ちの行列に並んでいた人が、近くにあった台の上に写真機を置いたのを忘れ、行列が進むに従って写真機から離れていってしまい、置き忘れに気づいて引き返したときには、写真機は既に持ち去られていたというケースを紹介します。このケースでは、行列が動き始めてから引き返すまでの時間が約5分にすぎず、置き忘れた場所と引き返した地点との距離も20m弱にすぎなかったといった事情から、写真機はいまだ持主の占有下にあったとして、窃盗罪の成立が認められました(最高裁判所昭和32年11月8日判決・刑集11巻12号3061頁)。一方、スーパーマーケットの6階エスカレーター脇に設定されていたベンチ上に札入れを置き忘れ、そのまま地下1階食料品売場まで行き、約10分後に思い出して札入れを取りに戻ったが、既に札入れは持ち去られていたというケースでは別の判決が下されています。「公衆の自由に出入りできる開店中のスーパーマーケットの6階のベンチの上に本件札入れを置き忘れたままその場を立ち去って地下1階に移動してしまい、付近には手荷物らしき物もなく、本件札入れだけが約10分間も右ベンチ上に放置された状態にあった」といった事情から、札入れは既に持主の占有下にはなかったとして、遺失物横領罪の成立が認められています(東京高等裁判所平成3年4月1日判決・判時 1400号128頁)。いずれにしても、他人が置き忘れたような物を見つけたら、きちんと届けることが大切ですね」(櫻町弁護士) 財布が落ちている状況などによって、問われる罪が変わるそうです。とはいえ、いずれの場合も犯罪であることには変わりありません。財布に限らず物が落ちていたら近くの駅員や交番に届けましょう。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Andrei Korzhyts / Shutterstock
2017年11月06日*画像はイメージです:高速道路での煽り運転は、全国で数件発生が報告されているほか、Twitterなどでは「自分もやられたことがある」と被害を訴える声が少なくありません。仮にそのようなことを受けた場合、どのように対処すれば良いのか。また、相手を煽り運転の被害を警察に訴える場合はどうすれば良いのか。弁護士の目線から、どのように対処すれば良いのか、エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■煽り運転にも様々な種類がある「“煽り運転”と一言で表現しても、その態様には、進路妨害、幅寄せ、クラクション、パッシング、異常接近、追い回しなど、様々な態様のものがあります。そして、その中でも、刑事罰の対象になるものとならないものがあるので、刑事罰の対象となるものに関して解説しようと思います。まず、道路交通法上、煽り運転そのものを処罰するものとして、道路交通法において、急ブレーキの禁止(24条)車間距離の不保持(26条)無理な進路変更(26条の2第2項)駐停車禁止場所における停車(44条)不必要なクラクション(54条2項)高速道路上における停車(75条の8第1項)が規定されています。以下、各行為の罰則をまとめると、・危険を回避する必要がないにもかかわらず急ブレーキをした場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の3)・車間距離を保持しなかった場合には、高速道路の場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の4)、それ以外の場合には5万円以下の罰金(120条1項2号)・無理な進路変更をした場合には、5万円以下の罰金(120条1項2号)・高速道路以外の駐停車禁止場所における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1号)・不必要なクラクションを鳴らした場合には、2万円以下の罰金又は科料(121条1項6号)・高速道路上における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1項2号)となっています。また、幅寄せ行為については、暴行罪(刑法208条)に当たるとした裁判例もあります。(※1)さらに、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」をして、人を負傷させた場合には15年以下の懲役。人を死亡させた場合には、1年以上の有期懲役が科されることになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号危険運転致死傷罪)。これら煽り行為をされたことを証明するためには、ドライブレコーダーなどによって動画を残しておくことが一番有力だと思われます。ただし、運転者が運転しながらスマートフォンなどによって録画をするのは、事故を起こす危険があり、運転者の遵守事項(道路交通法71条5号の5)に違反する危険性もありますので、自動車の運転中には、運転者は動画を撮らないようにしましょう」(大達弁護士) ■窓を開けずドアロックをして身を守るでは、煽り運転や煽り行為をされたときには、どのように対処したらいいのでしょうか?「煽り行為をされた場合には、まず自身の身を守るようにしてください。煽り運転者は先に行かせるか、進路妨害をされたら減速して安全な場所に停車した上で、扉を開けられないようにしっかりドアロックをかけ、煽り運転者から求められても窓も決して開けず、速やかに110番をして警察に連絡しましょう。自動車は便利な乗り物ですが、一歩間違えば凶器となりかねません。煽り運転をしないことはもちろん、されたとしても冷静に対応し、充実したカーライフを楽しんでくださいね」(大達弁護士) ドライブレコーダーを用意し録画すること、危険が発生した場合はドアロックで外に出ず、速やかに通報。これが有効ということですね。 ※1:東京高等裁判所昭和50年4月15日判決など*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*TTstudio / Shutterstock
2017年11月03日*画像はイメージです:月17日、CD585枚を山中に廃棄したとして、福岡県内に住む30代の男性が逮捕されたことが判明。このような不法投棄は紛れもない犯罪ですが、罪の重さや定義などは、いまいちよくわからないのも事実。そこでピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。に、CD投棄事件と絡めて解説していただきました。 ■不法投棄の罪の重さは?「不法投棄は、“廃棄物の処理及び清掃に関する法律”により、不法投棄者は五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金(法人の場合は三億円以下の罰金)に処せられる場合があります。ここで不法投棄とは、同法で定められた処分場以外の場所に廃棄物を投棄することです。もっとも、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき、とされています。CDが、直ちに廃棄物に当たるか否かは、そのCDの状態等によって、ということにはなりますが、よほどの新品ではない限り、通常は廃棄物にあたるものと思います。そうでければ、不法投棄しないでしょう」(森川弁護士) 不法投棄者は個人の場合5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合3億円以下の罰金に処される場合があるそうです。重罪ですね。不法投棄は絶対にしないようにしてください。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月30日*画像はイメージです:夫婦は様々なことを共有するもので、隠し事などはないと思われがちですが、実際は色々とあるものではないでしょう。言いたくない「過去」や「嘘」など、好きであるがゆえの隠し事ならまだいいのですが、中には結婚前に知り合った愛人と続いているなど、許せないものもありますね。 ■ある夫婦の隠し事が話題に最近そんな「夫婦の隠し事」で話題になっているのが、ネット掲示板上のある女性の書き込み。夫が独身時代稼いだ300万円を元手に株式運用し1,500万円儲けるなどしていたようで、5,000万円口座にあることがわかったというのです。そして、夫は30万円を振り込んだのみで、生活費に回してくれないそう。掲示板ではこの妻が夫を「ケチ」と表現し、「外車に乗りたい」「タワーマンションに住みたい」などと書き込んだたため、「浪費したいだけだろ」などと猛批判を浴びています。しかし、本来夫の貯金が5,000万円規模ならば、財産分与してもいいのではないかとも思ってしまいます。一体法律上どうなっているのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■財産分与を主張することはできる?「離婚時に財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が得た財産です。婚姻中に得た財産については、夫婦共有財産と推定されることになります(民法762条2項)。これに対して、婚姻前から持っていた財産(独身時代の預貯金等)や結婚後であっても相続によって得た財産は、夫婦が協力して得た財産とはいえないため、「特有財産」となり、財産分与の対象とはなりません(民法762条1項)。夫が独身時代に稼いだお金は「特有財産」になります。そして、そのお金を使って、結婚後に株で大金を儲けていたとしても、元手が「特有財産」である以上は、それを運用して得たお金も「特有財産」であることは変わりがありません。そのため、夫が独身時代に稼いだお金を使って結婚後に株で大金を儲けたとしても、儲けたお金は財産分与の対象にはなりません」(理崎弁護士) ■結婚後の場合は?独身時代のお金を元手にしていれば財産分与の対象とはならないことがわかりました。では、結婚後である場合はどうなのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に聞いてみると……。「結婚後に稼いだお金は、原則として夫婦共有財産となります。そのため、そのお金を元手にお金が増えた場合には、増えたお金についても、基本的には夫婦共有財産となり、離婚時の財産分与の対象となります。もっとも、毎月のお小遣いなど夫婦共同生活とは関係のないお金を運用して稼いだお金については、特有財産となり財産分与の対象とはなりません」(理崎弁護士) 夫婦だからすべてのお金を財産分与できるというわけではないようです。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月28日危険性が叫ばれていながら、逮捕者が耐えない薬物事件。最近も二世タレントがホテルで使用したとして逮捕され、芸能界に衝撃が走りました。この事件については親の監督責任を指摘する声と、「もう成人なのだから親に責任はないのではないか」との意見で、賛否両論となっているよう。離れて暮らしている場合はともかく、同居の場合、責任は発生するのではないでしょうか?あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士に見解を伺いました。Q.親と同居している息子が覚せい剤を使用…親が罪に問われることはある?*画像はイメージです:同居者が処罰されるのは「共犯」である場合に限られます。共犯とされる可能性がある場面はいくつかあるものの、相応の関与がなければ処罰されません。「覚せい剤は、所持、譲渡、譲り受け、使用などが禁止されています。覚せい剤を所持又は使用していた人の同居者は、所持・使用に関与していたのであれば、共犯として処罰されます。同居者が共同して覚せい剤を保管していたのであれば、“共謀”して“所持”していた共犯者として処罰されます。どの程度の関与があれば共謀があったといえるかは事件毎の事情によって異なります。覚せい剤が自宅に持ち込まれることを知ってあえて許可していた場合(保管場所を提供した場合)には、共謀して所持していたと認定され、処罰される可能性が高いと思われます。他方、保管されていることすら知らなかった場合には、共謀していないと認定され、処罰されることもないでしょう。また、“共謀”といえる程の関与はしていないとしても、覚せい剤の所持や使用を手助け(法律用語でいう“幇助”)したという程度に関与した場合には、共犯(幇助犯)として処罰されます。どの程度の手助けが“幇助”といえるのかは、やはり事件毎の事情によって異なります。覚せい剤を秘密裏に使うために便利な部屋(完全防音の地下室など)をあてがったという場合、それだけでは幇助とはいえません。その部屋が専ら覚せい剤を使用するために使われると認識していたような場合には、所持や使用の幇助が認められる可能性があります。裁判になれば、検察官は、同居者も覚せい剤があると知りながら保管していたことや保管場所・使用場所を提供していたことなどを立証する必要があります。その場合、同居者であることだけを立証して、“同居者なのだから、当然、保管されていることや使用されていることは知っていたはずだ”と主張するだけでは、共謀や幇助を立証できたことになりません」(高野倉弁護士) 親と同居していたとしても、共謀や幇助が立証されない限り、子どもの覚せい剤使用によって親が逮捕されることはないようですね。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月27日