7月10日の参議院選挙(第24回参議院議員通常選挙)に向けて選挙活動が活発化していますが、今回は選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」となった初の選挙でもあります。そこで目を通しておきたいのが、『18歳選挙権で政治は変わるのか』(21世紀の政治を考える政策秘書有志の会著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。著者の「政策秘書有志の会」は、国会議員政策担当秘書資格試験の同期合格者(2001年度)を中心に、党派を超えて集った政策秘書経験者(現職含む)有志のグループ。歴史的な変革である「18歳選挙権制度」の施行を機に、「将来を担う若者たちに、政治にもっと関心を持ってもらいたい」という思いのもとで結成されたのだそうです。そんなこともあって重視されているのは、次の4つの基本方針。(1)政治的党派色を排除する(2)とにかくわかりやすく(3)当事者の視点から政治の現場の様子をできる限りリアルにお届けする(4)読後、満足感があり「よし、次の選挙は必ず投票に行こう!!」と思ってもらえるようにする■18歳で選挙権もらえると一体どんな得があるのかでも、選挙権の意義や重要性を強調されたところで、「18歳で選挙権をもらっても、なにか得になることはあるんだろうか?」という疑問を否定できない人もいることでしょう。しかも、もらえるのはたった1票です。1票の行使で、政治のなにが変わるのか?選挙に行ったところでなにも変わらないんじゃないか? そんな無力感を持っている人が多いように思えると、著者も述べています。しかし、実際には1票で政治は変わることがあります。たとえば、野田桂彦元総理が、1996年の衆議院選挙で落選したときの票差はわずか105票。野田氏がその後、この敗北をバネにして総理まで上り詰めたのは有名な話です。また、市議会議員や区議会議員などの地方選挙では、1票差で当落が決まるケースも少なくありません。だからこそ、もし自分が投じた候補者が僅差で当選したとしたら、自分の1票で決まったと強く実感できるはず。それこそが、選挙の醍醐味だということです。■若者の代表に240万人が投票したらどうなるのか今回の選挙権年齢の引き下げで、新たに有権者となる18歳、19歳の若者は約240万人だといわれています。著者によれば、これは非常にイメージしやすい数字だといいます。たとえば国政選挙で、「若者の代表」といえる候補者たちを擁立し、240万人がこの候補者に投票したとしたらどうなるでしょうか?衆議院選挙の場合、前回2013年の衆院選比例代表選挙で当選者を1人だけ出した社民党の得票総数は約125万5千票だったそうです。すると計算上では、新たに有権者となった若者の2人に1人が同じ候補に投票すれば、自分たちの代表を国会に送り込むことが可能だということになるわけです。■若者同士が連帯するとすぐにでも力を生み出せる!もちろん、若者の代表を1人や2人、国会に送ったとしても、その人たちが議員としてできることには限界もあるでしょう。法案は1人では提出できませんし、注目される本会議場で質問することもできないのですから。しかし、評価は分かれたとしても、1議員がパフォーマンスをすることによって、世間の注目を集めて問題提起することは十分に可能です。いいかたを変えれば、若者同士の横の連帯が、すぐにでも力を生み出せるということ。著者も、その価値を強調しています。そして、選挙権は行使したほうが得だと断定しています。それどころか、「行使しないデメリット」が大きいので、必ず行使すべきだとも。なぜなら年齢別の投票率を見ると、若者の投票率は低く、高齢者層のほうが圧倒的に高いから。若者が政治に無関心で、選挙権を行使しないままだと、これからもどんどん高齢者に有利で、若年層に不利な政策が決まってしまう可能性があるわけです。■少子化が進んでも若者に有利な政治を実現できる!たとえば、そのいい例が年金制度。現在の仕組みでは、私たちが納めた年金は自分たちのために積み立てられるわけではなく、そのまま高齢者の年金として使われることになっているのだそうです。だからこそ、選挙を通じて政府にしっかり物申しておかないと、今後、少子化がますます進行するなかで、若者はまったく優遇されなくなってしまうことも考えられるわけです。そこで若者同士が連帯し、若者自身の代表を送り込むという、新たな政治のビジョンを本気で構築し、声を上げていくことが重要。著者はそう強調します。いいかえれば、そのために選挙権があるということ。そしてこれは、若者に有利な政治を実現しようという目的だけでなく、今後の日本にも影響する問題だということです。*たしかに読みやすく、なにより書き手の誠実さが文脈から伝わってくる点が本書の魅力。「自分ひとりが投票しなかったとしても、別に変わらない」というような勘違いを払拭するためにも、ぜひ読んでいただきたいと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※21世紀の政治を考える政策秘書有志の会(2016)『18歳選挙権で政治は変わるのか』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月27日2016年4月1日から、障害者差別解消法という法律が施行されたことをご存知でしょうか?この法律では、行政や事業者へ障害者に対して不当な差別を禁止し、社会のなかのバリアを取り除くべく「合理的配慮」に努めるよう定めています。障害者が必要としている「合理的配慮」とは、いったいなんなのでしょうか?また、この法律ができたことで、障害者の人たちは暮らしやすくなるのでしょうか?そんな問いに答えてくださったのは、「きこえないママ×まちプロジェクト」代表で、自身も聴覚障害があるまつもとまつりさん。耳のきこえないママたちと、地域の人たちをつなぐ活動をしていらっしゃいます。以前、お子さんが夜中に熱性けいれんを起こしたときに自力で救急車を呼べず、近所の人に助けてもらったため、日ごろから地域の人たちとつながっている必要性を感じたのだとか。今回はまつもとさんに、「聴覚障害者」の視点に立ったお話をお伺いしました。■聴覚障害者は想像以上に不便に感じているまつもとさんは以前クレジットカードを落としてしまったとき、母親にカード会社に電話をかけてもらったことがあったのだそうです。ところがカード会社の人に、「本人でないとダメ」といわれてしまったというのです。「だから、わざわざ会社を休んでカード会社に行って手続きをしなければならなかったんですよ。普通の人だったら休憩時間にちょっと電話すれば済むことなのに」(まつもとさん)また、銀行のATMに不具合があっても備えつけの電話が使えないため、窓口に行って事情を話してもう一度列に並びなおさなければならなかったこともあるといいます。それだけならまだしも、障害者割引のある駐車場に入っても出るときにモニターに障害者手帳をかざさないといけないことがわからず、結局は正規料金を払わざるを得なかった……などと不便に感じていることは多々あるそうです。健常者にとっては当たり前にできることだからこそ、聴覚障害者が不便に感じていてもなかなか気づきにくいものなのかもしれません。■行政にはその人に合った配慮をしてほしい「きこえる」人たちは、「耳がきこえない」といわれると、「じゃあ手話で通訳できる人がいればいいのね」と思いがちではないでしょうか。「でも、聴覚障害者のなかには手話を知らない人もいるんです。だから『耳がきこえない=手話通訳の用意』と考えるのではなく、筆談で対応する、ゆっくり話す、流れの決まっている手続きであればフローチャートを用意して指差ししながら説明するなど、その人に合った配慮をしてほしいと思います」(まつもとさん)まず、「聴覚障害者はみんな手話を知っている」という思い込みをなくすことが必要なのですね。■私たちにもできるちょっとした配慮とは?聴覚障害のある人だって、スキルアップのための学びの場や職場の会議、町内会の話し合いに参加する機会を望んでいるもの。しかし、話の流れがわからない、資料を読んでいると知らないうちに話が進んでいる……など、ハードルが高くてなかなか参加しづらいのだとか。そんなとき、「きこえる」人たちが「きこえない」人たちのためにできることはなんでしょうか?たとえば講座に参加するときであれば、前もって資料をもらう、隣に座った人にはいま話しているところを指差ししてもらう、資料を読むのに夢中になっているとき、講師が話しはじめたら肩を叩いて教えてもらう。そういう、ちょっとした「配慮」をしてもらえたらだいぶ助かるとまつもとさんはいいます。「手話通訳になにからなにまで依頼することはできません。でも、『ちょっと配慮がほしい』という場面は日常的にたくさんあります。ちょっとしたことでも協力してもらえたら、とてもありがたいです」(まつもとさん)■障害者差別解消法だけで社会は変わるのか最後に、障害者差別解消法ができたことで障害者が生活しやすくなっていくかどうかについて意見をきいてみたところ、「5分5分」という答えが返ってきました。法律ができたことで、いままで「予算がない」という理由でやらなかったことに対して「やらなきゃいけない」という意識が芽生えることはあるかもしれない。しかし、だからといって具体的になにをすればよいか行政や事業者の人たちにはわからないだろうから、聴覚障害者自身がもっと「こうしてほしい」と声をあげなければいけないといいます。「行政などに直接声を伝えるのはなかなか難しい。だから、まずまわりの人たちに『こういう不便がある』ということを伝えたいと考えています。その話を聞いた人からアイデアを出てくるなど、なにかいい方向につながっていくと思うから」(まつもとさん)現在、聴覚障害で障害者手帳が交付されている人は全国で45万人。でも、手帳交付に至らない軽度の方も含めると、聴覚障害者は1,000万人以上いるといわれています。障害の程度に関係なく、不便に感じる人たちへの配慮が自然にできる社会になれば、障害者もそうでない人もお互いにもっと気持ちよく暮らせるのではないでしょうか。(取材・文/あさき みえ) 【取材協力】※まつもとまつり・・・「きこえないママ×まちプロジェクト」代表。3人の男児の母。横浜市戸塚区にある親子カフェ「こまちカフェ」を拠点に、「きこえないママ」と地域の人たちとの交流会を月1回(第2火曜日10:00~12:00)おこなっている。コミュニティFMラジオ「エフエム戸塚」の番組にゲスト出演経験もあり。 【参考】※ココロもカラダもぽっかぽか※こまちカフェ※障害を理由とする差別の解消の推進-内閣府※厚生統計要覧(平成27年度)-厚生労働省※難聴者の数は、どれくらい?という事で調べてみた-L.S.B.information
2016年06月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「待機児童」です。***条件を満たし、入所申請をしているにもかかわらず、保育所に入れない「待機児童」の数は2015年4月の段階で約4万5000人。キャンセル待ちの多さに諦めて、最初から申請していない家庭もあるので、潜在的な待機児童数を含めるとその数はもっと多くなるでしょう。待機児童問題は、保育所の数を増やすだけでは解決にはなりません。というのも、保育士さんの数が足りないんですね。保育士の資格を持ちながら現場を離れた「潜在保育士」の数は全国で約80万人。離職した大きな理由は、賃金の低さと言われています。保育士の賃金は、35歳平均で月額21.9万円。全産業の平均は33.3万円ですから、かなり下回っています。安倍総理は4月に一億総活躍社会の一環として、保育士の賃金を2%、月額約6000円アップを宣言。潜在保育士をなんとか呼び戻そうと対策を立てています。保育所が足りないのは、近隣の反対により建てられないというケースもあります。「子供の声がうるさい」といったクレームも聞きますが、それだけではなく、道が狭くて、子供の送り迎えの車や自転車が来ると住民の移動ができないという切実な理由も。街づくりやインフラ面から抜本的に変えなければいけません。また、保育所開設の規制緩和も必要でしょうね。企業内に保育施設がもっと開設できれば助かりますよね。待機児童問題は、すぐには解決しないでしょう。これから就職や転職を考えている方は、育児休業のあるなしだけでなく、バリエーションをチェックしてみてください。1年フルに休めなくても、時短で働ける時期を長く取れる方がありがたい場合もあります。今から約100年前に母性保護論争が起きました。女性解放運動家の平塚らいてうは「子供を産み育てることは国のためでもあるから、国が保護するべき」と主張。対して歌人の与謝野晶子は「女性は男性にも国にもよりかかるべきじゃない。自立して稼ぎなさい」と意見しました。子育てのお金は、国か個人、どちらが出すべきなのか。子供は誰のものなのか?100年前の論争の答えはまだ出ていないんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月22日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月19日昨今、児童虐待事件が多く報じられています。厚生労働省の発表によると、平成26年度、全国の児童相談所での児童虐待相談対応件数は8万8,931件。児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べると、7.6倍にも増えています。そこで児童相談所の現状について、東京都福祉保健局・児童相談センターの栗原さんにお話を伺ってみました。全国的に相談対応件数が増加傾向にあるなか、東京都では人員が足りているのでしょうか?■平成28年度に児童福祉司を18人増員この2ヶ月でも虐待相談件数は昨年度同期にくらべて増えており、人員については厳しい状況だとか。しかし今年度に入って児童福祉司を18人増員しており、他に警察官OBや保健師などの非常勤スタッフとも連携をとりながら対応しているそうです。また、この人員増はスタートしたばかりの段階のようです。今年4月、厚生労働省が虐待への対応を強化する「児童相談所強化プラン」を発表。児童福祉司や児童心理司、保健師などの専門職を今後4年間で合計1,120 人程度増員する目標を掲げています。■児童相談所は子どもの安全を最優先する今年3月には、相模原市の男子中学生が児童相談所に保護を訴えたものの認められず、自殺したニュースがありました。子ども自らが助けを求めた場合には、どのように保護の決定がなされるのでしょうか。「子どもから保護を求められた場合には、児童相談所で調査、話し合いをして、保護の要否を決めています。警察や小中学校等からの通告も、基本的に同じように対応します」とのこと。ただ児童相談所は、子どもの安全を最優先するため、子どもを親から引き離し、一時的に保護してから調査をすることもあるようです。また虐待通告があった場合は、原則48時間以内に子どもを直接目視することがルールとなっています。調査の際は2~3人で行動し、家庭を訪問する際にも複数の職員で聞き取りに行くそうです。■子どもの虐待を見てしまったときの対応私たち大人ができることは、虐待を発見したら通告すること。しかし外出先で子どもが虐待されているところを目撃した場合でも、「その親子のことがわからない」「証拠もない」「一瞬の出来事だったから」などの理由で、児童相談所への通告を迷う人も少なくないはず。このようなケースでも、通告をすれば対応してもらえるのでしょうか。「虐待かなと思ったら、児童相談所に連絡してください」と栗原さん。子どもに危険が差し迫っている状況などを目撃した場合には、警察に通報しましょう。また近くの児童相談所がわからなくても、児童相談所全国共通ダイヤル「189」があります。「189」にかけると、近くの児童相談所につながります。たとえば駅で虐待を受けたと思われる子どもを見て、通告をしたとします。こうした場合は児童相談所職員がその駅に行き、できる範囲で特定のための調査を行うそうです。特定が難しい場合でも、「わからないから」と調査されないことはないのです。たとえ情報が少なくても、虐待かなと思ったら通告することが大切。■通告しても「通告者の秘密は守られる」通告は匿名でも行うことが可能です。ただし児童相談所の担当者が、再度詳しく話を聞くことができるように、できれば連絡先を伝えましょう。児童相談所は決して通告者の情報を外に漏らすようなことはないため、安心して教えてほしいといいます。また虐待であるか、そうでないかを判断できずに通告を悩むことがあるかもしれません。わかりやすい例が、同じマンションに住む赤ちゃんが普段とは違い、とても激しく泣き続けているとき。保護者の怒鳴り声がしたとしても、それが虐待からなのかはっきりしないこともあるでしょう。しかし小さい子どもは、自分から助けを求めることができません。誰かが通告をすれば、48時間以内に専門家によって子どもの安全確認が行わるのです。「他の誰かがしてくれるかも」と見てみぬふりをせず、虐待のサインを見つけたら専門機関に連絡をするようにしましょう。*親からの虐待により、子どもが命を落とす事件もあとを絶ちません。大切なのは、地域社会全体で子どもたちを見守ること。「虐待かな」と思ったら通告するだけでなく、外で出会う親子に温かい目を向ける、困っている親子がいたら声を掛けるなど、自分ができることをしていきましょう。それが子どもを救うことにつながるのですから。(文/椎名恵麻) 【取材協力】※東京都児童相談センター・児童相談所-東京都福祉保健局 【参考】※児童虐待の定義と現状-厚生労働省※児童相談所強化プラン-厚生労働省
2016年06月02日日常的に多くの社会問題が取り上げられているだけに、その深刻さが実感しにくくなっていませんか?そこで今回はOECD(経済協力開発機構)やWHO、その他の機関及び国が出した統計をもとに国際比較し、世界基準で見ても深刻な日本の問題を10種ピックアップしていきます。■1:自殺率日本の自殺者数は平成10年に3万人を超え、以後は他の先進国と比較しても高い水準を保ち続けています。WHOの統計によると、自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)では世界9位となっており、アメリカの41位、イギリスの95位に比べても大変高いことがわかります。対策のひとつとして、自殺の原因とされる精神疾患の予防が挙げられます。■2:貧困問題日本はGDPを見る限りにおいては裕福な国ですが、相対的貧困率(国内での格差)を確認すると違った現状が見えてきます。OECDの統計によると、ワースト1位のメキシコ(18.5%)3位のアメリカ(17%)に次ぐ4位(15%)となっているのです。ひと昔前までは「総中流」といわれていたのにもかかわらず、いまでは所得格差やワーキングプアの問題が見過ごせないものになっています。■3:労働環境海外メディア『Alltime10s』の制作した動画で、日本の労働環境はワースト9位に選ばれました。海外の掲示板等を見ていても、強いのは「日本の労働環境は悪い」というイメージ。それは、「過労死」という言葉が英語で「Karoushi」と表現されているところからも見て取れます。しかしOECDの統計によると、日本の平均労働時間は世界15位。OECD加盟国の平均値も下回っています。このイメージと現実のギャップは、サービス残業等の数字で表せない問題から出てきているのでしょう。■4:女性の社会進出度国際経済フォーラムによる2015年版ジェンダー・ギャップ・インデックス(男女格差指数・経済や政治等の項目に分け、各部門で男女格差を数値化して評価したもの)によると、日本は総合101位になると発表されました。これは先進国のなかでもっとも低い評価です。特に女性の政治参加、女性管理職の低さが目立ちます。■5:少子高齢化問題2016年現在、日本の特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数 )は世界184位。高齢化率は先進国のなかでも断トツの1位であり、少子高齢化がいかに深刻であるかがわかります。このままいけば日本の人口は2060年には48万人になるとされ、早急な対策が求められます。■6:報道の自由度国境なき記者団が発表した世界の報道の自由度ランキングによると、日本のメディアは72位。2010年の民主党時代には11位でしたが、大きく下落しており、先進国のなかでも共産主義の中国を除けば最下位になります。いま一度、メディアのあり方をメディア側・視聴者共に考える必要があるでしょう。■7:環境問題CO2の排出量において日本は世界5位と高い位置にいますが、トップを走る中国の7,954.5トン、アメリカの5,287.23トンに比べると1,186トンと少なくなっています。一方で環境省の調査によると、日本の一人当たりの年間ゴミの排出量は320キロ。フランスの180キロ、ドイツの140キロとくらべても高くなっています。また、ごみ焼却所の数は1,243と世界1位。アメリカの351、フランスの188とくらべてもダントツです。ゴミを多く燃やしているということは有害部室が多く出るということ。そのためダイオキシンの発生率は日本が1位です。■8:マイノリティの受け入れアメリカの調査会社・ギャラップ社の「Gallup World Poll」が世界140ヶ国に行った調査で、日本はマイノリティに対する寛容度が29位という結果になりました。この調査で言うマイノリティとは、民族的少数派・移民・性的マイノリティのことを指し、調査は少数派に対し「あなたの住んでいる場所はあなたが住むのに適しているのか」と質問しイエス・ノーで応えるもの。日本は他の先進国よりも低く、平均値も下回ります。また、お隣の韓国が28位と、日本よりも高い位置にいます。日本はもっと、誰でも快適に住めるような環境をつくるべきなのでしょう。■9:社会保障厚生労働省によると、日本の社会支出(失業や生活保護等に使用される国の支出)のGDP比は増加傾向にありますが、一貫してOECDの平均よりも低いとのことです。少子高齢化によって、これからさらに国の支援が必要な人は増えていきます。その際の財源はどうなるのか、そもそも国はどこまで支援すべきなのかなどについて、しっかり考えておかなければいけません。■10:投票率日本は多くの問題を抱えていますが、なかでも投票率の低さは大きな問題です。世の中には多くの問題があり、それに関心がある人が多いはずなのに、政治に対する興味が薄いのは不思議です。日本の投票率は平成26年度時点で52.66%。20代だけ見ると32.58%と大変低くなっています。スウェーデンの85%、アイスランド83%とくらべても低いことがわかります。政治に興味を持つことや、政治に関心をもってもらうよう政治家が努力することの重要性を認識しなければいけません。*以上のように、日本は世界基準でみても深刻な問題が多くあります。しかし、「もっとも安全な国」で1位になるなど、いいところがあるのも事実。 世界における日本の立ち位置を見なおして、いいところを伸ばしながら問題を解決していければいいですね。(文/堀江くらは)
2016年05月27日男性が抱える問題や悩みを研究する「男性学」。この学問の第一人者である武蔵大学社会学部の田中俊之助教が、著書『男が働かない、いいじゃないか! 』を出版した。「定時に帰ってもいいですか」「育児休業を取ってもいいですか」などの目次が並び、子育てに取り組む共働き夫婦にも響きそうな内容だ。ブックファースト新宿店はこのほど、本の出版に合わせたトークイベントを開催。著者である田中さんと、コラムニストやラジオパーソナリティーなど多様な分野で活躍するジェーン・スーさんが対談した。○「働く」との距離が近すぎる田中さん(以下敬省略): 今回「男が働かなくてもいいじゃないか」と書いて、どういう意味なのかと思う人がいると思いますが、「男性の仕事中心の生き方を見直しましょうよ」ということです。ジェーン・スーさん(以下敬省略): 「女が家に入らなくてもいいじゃないか」ということはだいぶ言われてきていますが、確かに「男が働かなくてもいいじゃないか」ということにいまだにドキッとする人が8割だと思うのですよね。この考えを履き違えると、じゃぁ労働しないでどうやって食べていくのかという話になると思いますが、そういう話ではないですよね。田中: 日本の男性は「働く」ということと距離が近すぎるという問題意識があります。「近すぎて何が悪いの」という点については、組織で働いている人にとって会社との距離、会社と自分が一体化しすぎてしまって客観視できないということがあげられると思います。例えば東芝の不正会計問題をみても、社長が「不正会計をしろ」といっても「おかしい」と思う社員がいてもよかったですよね。きっと社員も会社のためになると思い、やってしまったと思うのですが、会社との距離があればもう少し異論を唱えたり反論したりできるはずです。社員と会社の距離が近すぎることは、会社にとってもデメリットがあるんですよ。○男性にとってのラスボスは「会社にいつづけること」ジェーン・スー: 私は新卒で入った会社に8~9年ほどいたのですが、とにかく仕事をしない男性がいっぱいいました。明らかに仕事をしない人って、女性と比べて男性が多い。なぜかと考えたところ、働かない女性は辞めていたんですね。女性には、仕事を中断する選択肢があるのだということに、その時私は気づいていませんでした。結婚して夫の転勤についていって、仕事を休んでのんびりしますっていうのが女性は許されますが、男性はそれが言えません。会社で昇進することももちろんゴールの1つですが、彼らにとっての最終的なゴール、ラスボスは「どこまでゲーム場にい続けられるか」、つまり会社にいつづけることができるかになっている。男性は充実感を持ってよりよい仕事をしていくことを求めるより、その場でこぼれないことを最優先にしながら、誤解を恐れずに言うと、「仕事に夢中になっているふりをしなければいけない」のだと思いましたね。田中: 今の男性には「降りる」という選択肢がないです。男性だということで、学校を卒業したら「40年間フルタイムで働いてください」となってしまっていること自体が「僕らの人生何なんだろう」ということになってきますよね。ジェーン・スー: 一回働き始めたら途中で辞められないプレッシャーや、誰かを食べさせて1人前っていうプレッシャーは、私自身、感じたことがありません。「こんな会社辞めてやる」と言って、会社を辞めることもできたし、キャリアを重ねていくということを考えずに全く違う仕事に転職できたのは、ある種、私が女性だったからというのもあるのだろうなと思います。田中: 一生懸命働くことを否定はしていないんですよ。でも、趣味はありません、友達はいませんというのは定年になったら何もなくなってしまう。そこから20年間生きていくのに。そこに備えてくださいということだけではなくて、会社以外の人生があってもいいと思うんですよ。せっかく生きているんだから、楽しめればいいですよね。男性の仕事中心の生き方を見直そうというのは、ここ最近通るようになった話です。それまでは大きな話をしなければならなかった。政治経済、社会の動きを新聞でチェックしながら追っていく。そういうのが男性にとって大事なことになっていて、「生活」というのがごっそり抜け落ちているということなんだろうなって思います。ジェーン・スー: 残念ながら悪い意味で、明日はどうなるかわからない時代ですよね。前みたいに終身雇用制が固定されていたような会社だったら、辞めずにとどまり続けるのは手だよ、という考えが通用したと思いますが、今は全然そんなことない。今は稼ぐ会社ほど人を切るので、そういう意味では保証なんか何もなくなったのだから、好きなことをやったらいいと思います。田中: 状況が悪いことが、男性にとってはチャンスかもしれない。○男性と女性の問題は裏表田中: スーさんと私で認識が共通しているのは、男性の問題と女性の問題は裏表だということですよね。ジェーン・スー: 今の社会は「男社会」というよりは、「一部の男性にとってことごとく有利な社会」でしかない。実は、(男は稼いで養うべきという)今のシステムからこぼれ落ちてしまう男性たちと、私たちは仲良くしていかないと、社会システムは絶対に変わらない。田中: 「男は稼いで養う」というのが上の句で、下の句は「女は早く家庭に入り専業主婦として子どもを育てたほうが幸せになれる」となってしまっている。女性がそれを男性に期待することが、本当は自分の生き方もワンパターンにはめてしまうということなんですよね。男性にしても、女性は家庭に入って子どもをうんだほうがいいんじゃないのと言い放った途端に、40年間フルタイムで働くということになってしまう。ジェーン・スー: 多様性を認めるということが今一番大事で、働きまくってもOK、そんなに働かなくてもOK、それは性別ではなくて「私」が決めるということですよね。○「男は働き、女は家を守る」という概念にとらわれてはいないかトークセッションの最後に投げかけられた参加者からの「育児」の質問に、田中さんは以下のように答えた。田中: 僕は去年結婚して、生後2カ月の子どもがいます。今は大学が春休みなので、3食全部作って、子どもをお風呂に入れて、ほぼ何でも家事をやりながら働いています。自分がほぼ2カ月、育休状態にいて思うことは、子どもは育つが、妻の方はかなりケアが必要だということです。女性は産後2カ月くらいまで、体力的にも元の体に戻らないし、メンタル的にも不安定です。そんな中で男性が育休をとらずに、さらにそんな状態の女性が赤ちゃんの面倒を見ながら夫にもご飯を作るなんて、怖いなと思いました。女性の我慢によって成り立っていることが多いなと。このことについて、育休を認めないとか言っている会社の上司はどう考えているのかなと思います。「夫も妻も働きながら共に子育てをする」という考えが定着しつつある一方で、「男は外で働き、女は家庭を守る」といった思想が、実は自分の中に根付いていないだろうか。男性も女性もそんな考えから解放されたら、少し楽になれるのかもしれない。
2016年03月31日欧米セレブにとって社会活動やボランティアは、通常業務のようなもの。売名行為的な寄付で済ませる人も多いけれど、国際的な人権問題や社会貢献をはじめ、がん予防、いじめ撲滅などに取り組むセレブの志には学びたいこと多々です。■主張することにはまず自ら取り組む!アンジェリーナ・ジョリー『トゥームレイダー』のカンボジア撮影をきっかけに国際貢献に興味を抱き、自ら国連に「手伝わせて」と電話したアンジー。国連難民高等弁務官事務所の特使として難民を支援するほか、多くの社会活動に従事。夫ブラッド・ピットと共に設立したジョリー=ピット基金は、自然災害の被災者はじめ世界中の弱者を救済するために多額の寄付を行っている。また3年前には乳がんと卵巣がんの予防のための手術を受けたことを公表。世界中で女性特有のがんに対する認知度が高まった。■映画製作と人道危機国支援を同時に叶えるベン・アフレックニューヨーク・タイムズ紙の記事で知ったコンゴの人権問題に興味を抱いたのが2007年。実際に現地に足を運び、NGO団体職員や、人権をないがしろにされた被害者たちにインタビューするなどして独自に内戦を研究。報道番組のレポーターを務め、ドキュメンタリー映画の製作などで実態を世の中に伝えた。今やコンゴ問題のスペシャリストとして当局にも認められ、アメリカ議会などで同国の人権危機打開を訴え続けている。■世界に笑いと平和を届けたいエレン・デジェネレス人気絶頂期にレズビアンであることをカミングアウトし、LGBT界の代表的存在となった大物司会者エレン。LGBTの権利拡張や、AIDS/HIV予防、DV被害者の支援、イジメ撲滅、恵まれない子供や身体障害者への差別撤廃と多数のチャリティや人道的活動に大金を寄付しながら、スピーカーとして積極的に活動。またネルソン・マンデラへの尊敬の念から恵まれない少女の寄宿学校を南アに建設している。教えてくれた人:山縣みどりさん映画ライター。小誌エンターテインメントページのほか、『ELLE』『GQ』など、多数の媒体で映画評やインタビュー記事を執筆。※『anan』2016年3月30日号より。文・山縣みどり(C)aflo
2016年03月27日『はてな匿名ダイアリー』に投稿された「保育園落ちた日本死ね!!!」というエントリーをきっかけに、いま待機児童をはじめとする育児の問題が噴出しています。待機児童を抱える女性たちが「落ちたのは私だ」というデモを起こすなど、社会現象になりつつあります。厚生労働省の発表によると、2015年4月1日の時点での保育所全体の定員は234万人。保育所を利用する児童数は2,266,813人で前年から47,232人増加しており、特に3歳未満は31,184人増えています。一方で待機児童数は21,371人。ピークだった2010年の26,275人より4年連続で減少しているものの、まだ多くの子どもが保育園に入れていないという悲惨な状況です。また、NPO社会保障経済研究所代表の石川和男氏は、潜在的に保育園に入りたくても入れない子どもが360万人もいると試算しています。この数字からも、「女性が活躍しやすい社会」という政府の方針とは程遠い現実が見て取れますよね。この待機児童問題について、私たちはどんなことを知っておくべきなのか?幼稚園・保育園の口コミサイト『園ナビ』を運営する株式会社うるるの脇村瞬太氏に背景と対策を教えていただきました。■実は待機児童問題は都市部だけではなかった!そもそもの話として、高度成長時代より子どもの数が減っているのに、なぜ待機児童が生まれてしまうのでしょうか?脇村氏は、貧困世帯の増加が原因だと語ります。「都市部ほど深刻に見えますが、全国的に貧困が拡大してきて、共働きでないと食べていけない世帯が増えていて、さまざまな問題が同時に表面化してきています」(脇村氏)実際、前述の厚労省の調査でも、待機児童数一位は東京都の8,672人ですが、第二位は沖縄県の2,160人。熊本県が678人で福岡県の315人の倍以上。待機児童は、必ずしも都市部だけの問題ではないのです。また、脇村氏は「生活保護の受給者が過去最高(2015年7月、215万5,278人)となっているように、幼稚園の保育料が払えない世帯が増えています。潜在的な数が300万人以上というのも、家から近くて月謝が安いという、望んでいる園に入れない層が多いことを示しているのだと思います」とコメント。つまり、「月謝の安い保育園を」と思ってなかなか保育園が見つけられない世帯もいる、ということ。「保育園の情報は、各自治体から出ている情報がすべてなんです。だから、昔からやっている環境のいい園のことは、どの親御さんも知っていて、みんな入れたい。そこから漏れた世帯が、“保活”をすることになるわけです」(脇村氏)いま、高い月謝を払える人達は少ない。それで、保育園難民となってしまうというわけですね。■1月から複数の保育園に内金を入れておくべしそれでは、少しでも条件のよい保育園に入れるためのポイントはあるのでしょうか。「決まった答えがないのが、待機児童問題の難しいところなのですが、いちばん大事なのはご自身の就業環境や親との住んでいる場所の近さなど、なにが加点要素でなにが条件として良くないのか把握しておくこと。その上で、4月のタイミングで入園させるのに、前年の秋にあった認可保育園の応募の結果が出るのが2月ですが、そこから動いては遅い。1月の段階で、内金を入れておく園をいくつか持っておくことも必要コストのうちです」(脇村氏)預ける場所がなくて露頭に迷わないよう、複数の選択肢を早めに用意することが待機児童にならずに済む最低条件といえそう。さらに脇村氏は「みんなが希望する園に入るのは現実的に無理でしょう。ご自身の選べる中でベストは何なのか、情報を集めて検討することも大事です」といいます。妊娠中から保育園を探しはじめる女性も多いです。「子どもがほしい」と思った段階で保育園探しをしておいてもいいかもしれませんね。*ちなみに『園ナビ』によるインターネット調査では、園の情報収集を92.3%が母親が担当しており、父親の関与はわずか3.4%。園を決める決定権も母親が83.7%で父親が14.3%と、女性の側に負担が偏っていることが浮き彫りになっています。同調査では93.1%が「園選びに不安に感じた」と答えていますが、まずは世帯内で話し合い、心配ごとを共有するといったことも必要になってくるのではないでしょうか。(文/ふじいりょう) 【参考】※園ナビ※「待機児童」数、実は360万人超?多様な保育サービス事業者の参入を!-アゴラ
2016年03月22日社会人になってからする留学は、目的が明確です。社会人が留学するメリットについて紹介します。■目的が明確社会人留学は、学生時代と違って目的が明確になってきます。「海外の取引先とコミュニケーションを取るのに語学を身につけたい」「TOEICで900点を目指したい」と学びたい分野が明瞭な社会人は、より実践力があり、目的にフォーカスして勉強に集中できます。■金銭的余裕がある学生時代と比べ社会人は金銭的に余裕があります。社会人留学なら、あらかじめ自分の予算に合ったプランを立てることができます。また、予算が少ないなかでもやりくりするマネジメント力を備えています。金銭的な面で現地で窮地に陥ることは少ないでしょう。滞在先もホームステイだけでなく、自分でアパートを借りてひとり暮らしをしたり、現地の人とシェアハウスに滞在したり、自由に選択できます。■帰国後のキャリアップにつながる社会人留学は、帰国後のビジョンを見据えて留学する人が多いです。英語力が身につけられれば、外資系の企業への転職にも有利になります。語学力+αのスキルを習得できれば、日本で専門性を生かせる仕事に就くこともできます。特に20代後半から30代は、結婚や出産などで仕事を退職したり転職する人が多いもの。実力次第で“留学経験”は再就職の強みにもなるかもしれません。■グローバルな人間になれる留学の最大のメリットは、さまざまな人種の人々に出会えることです。初めて留学した人は多種多様な人種が住んでいることにカルチャーショックを受けるかもしれません。しかし、語学学校や専門学校では日本人以外の人種の人々と触れ合うことができます。留学時代に大変だったことや、ツラいことをともに経験した友人たちは一生の宝になるでしょう。帰国後も連絡を取り合えば、互いの国へ行ききもできます。ビジネス面でもコネクションを広げることができます。「学生時代に留学しておけばよかった…」と思っている方も、今からでも決して遅くはありません。留学に年齢制限はありません。ご高齢でシニア留学する方も多数いらっしゃいます。大切なのは、明確なビジョンとやる気。特に社会人留学は、退職・休職などのリスクを背負って行くわけですから、何かしらの成果を得て帰国したいものです。近年、社会人のみのプログラムなども組まれていますし、語学+αのコースも多数あります。学びたい分野を定めたコースでは、各国から同じ目的を持った学生たちが集まります。よい刺激を受けながら、勉強に集中できます。年齢や仕事のことを考えるとオトナになってからの留学はハードルが高いと思いがちですが、逆にこれまで培ってきた経験が海外生活でも生かされ、将来的には仕事のキャリアップにもつながるかもしれません。年齢で諦めることは決してなく、ぜひ今だからこそ海外へ飛び立ってみてはいかがでしょうか?
2016年02月18日ギャグやスポ根など、マンガのジャンルはさまざまですが、社会問題をテーマに扱うマンガも数多く存在します。おもしろく読めて、社会問題に対する知識も身につけられると、まさに一石二鳥。作品から得た知識が、会社のオジサマたちとの会話にも役立つかもしれません。今回は、マンガ好きの筆者が女子に読んでもらいたい社会派の作品を紹介します。■『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館)有名人がらみの不正受給問題などで話題となった、生活保護をテーマにしています。主人公・義経えみるは新人公務員。専門的な知識も足りないまま、ケースワーカーとして区の福祉事務所職員で働きはじめます。そこでは、さまざまな事情を抱える生活保護受給者の姿を目の当たりにします。四苦八苦しながらも、生活に困窮する人たちと向きあおうとする、えみる。“住民と最も深く関わる公務員”といっても過言ではない「福祉事務所職員」の奮闘を描きます。■『いちえふ〜福島第一原子力発電所労働記』(講談社)東日本大震災によって被害を受けた福島第一原子力発電所(通称・1F)での業務に携わった作者のリアルな体験記。原発作業員がどんな業務に従事しているのか? 業務以外の時間はどうやって過ごしているのか? など、「フクシマ」の現実をくわしく知ることができます。ニュースや新聞では知らされない、原子力発電所の敷地内のようすについての描写があり、とてもわかりやすいです。文字だけではわかりにくい事柄だけに、マンガのよさを改めて感じさせられる作品となっています。■『レッド』(講談社)連合赤軍およびその母体となった2つの新左翼団体をモデルとした物語。フィクションでありながらも、実際に起きた事件がかなり忠実に描かれています。1960、70年代の若者たちは、どのように政治と関わっていたのか? そしてなぜ、浅間山荘事件につながる一連の異常な行動に走ってしまったのか? これからの若者の政治運動を考える上でも参考になる作品です。現在は、第2部「レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ」が連載されています。 テーマや絵のタッチなど、まずは気になったものを手にとってみることをオススメします。
2016年01月31日大学の先輩だった彼氏が、春から社会人になってしまう。初めて年上の社会人彼氏ができて、付き合い方が分からない・・・自分に社会人の経験がないと、環境が違う社会人彼氏との付き合い方って難しくて、悩んでしまいますよね。今回は、そんな「社会人彼氏と、どうしたらうまく付き合える?」というお悩みにお答えするべく、実際にうまくやっている学生彼女&社会人彼氏カップルに取材してきました!■1.平日は無理に約束しない「平日は、先輩や上司から突然飲みに誘われたりする。どうしても無理って日に断れるように、普段はなるべく付き合いたいから、平日の約束は難しいかな。それを彼女が理解してくれてから、うまく付き合えてる」(IT/26歳)「まだ新入社員だから、急な仕事が入ったりすることもあるし、仕事が読めないと彼が言うので、平日に約束するのは諦めました。その代わり、休日を大切にするようになったし、私も平日はバイトや友達との約束を入れられるので、メリハリがあって良いと思います」(学生/21歳)平日・休日の区別があまりない学生と、平日は仕事が9割以上を占める社会人との付き合いで、一番大事だと声が上がったのがこれ。大事な記念日や誕生日に早く仕事を切り上げるためには、何でもない日に頑張ることが社会人の鉄則。それを学生の彼女が理解して付き合うと、社会人彼氏ともうまく付き合えるようです。■2.次に会う約束を会っている間にとりつける「正直、平日は仕事のことしか考えられない。だから、次のデートの約束も一緒にいる間に決めちゃいます。平日に『次、いつ会える?』って聞かれても、考えられないので」(教育/23歳)「平日は、なかなか連絡がとれない彼。だから、会っている間に次の予定を立てることにしました。それだけで平日連絡がとれなくても落ち込んだりすることもなくなったし、次に会える日のことを考えて頑張れるようになりました」(学生/20歳)平日は、仕事以外のことを考える余裕がないという男性は多いもの。彼女のことは彼女と一緒にいる時間にしか考えられないということを察した学生彼女、すごいです。会っている間に予定を立ててしまえば、しばらく連絡がつかないということも、そのまま音信不通になってしまったなんてことも防げます。■3.記念日をどう過ごすかを1ヶ月前には提案する「記念日なんてスッカリ忘れてて、気づいたときには直前!土曜日だったので、良さそうなお店はかなり埋まってて、冷や汗をかいたことがあります。それ以来、彼女の誕生日以外の記念日の予定を計画するのは彼女の役割になりました」(メーカー/22歳)「最初の年のクリスマス、彼が計画してくれるものだと思っていたら、12月に入って何もしていなかったことが発覚。次の年から、彼に任せず、私が提案すると心に誓いました」(学生/21歳)毎日、日々の仕事に追われる社会人彼氏に、1か月2か月先の記念日を思い出して計画するのを期待するのは難しいでしょう。直前になって、『どこも予約できない!』と騒ぐのではなく、1か月前に学生彼女の方から提案したり、こっそり計画を進めることが上手に付き合うコツのようです。■4.仕事で身につけるグッズをプレゼントする「『今日は、勝負の日!』という気合を入れたい日には、誕生日に彼女がくれたブランドもののネクタイをつけるようにしてる。仕事を頑張れるようにって考えてくれたのがうれしくて、そのネクタイをつけない日でも、朝ネクタイを見かけると彼女のことを考えたりする」(金融/23歳)「土日もたまに出勤するくらい、仕事ばかりしている彼氏。ほしいものを聞いても何もないっていうから、仕事用のカバンを買ってあげた。平日たまに一緒にご飯に行くと、毎回『使ってるよ、ありがとう』って言ってくれるから、かなり高くて悩んだけど、買ってよかったなと思えます」(学生/23歳)社会人になると、好きな恰好ができるのは休日だけ。ほしいものも自然と減るし、どんなに気に入っているものでも身に着けるタイミングは激減します。だからこそ、仕事で身に着けられるものをプレゼントされると、彼女のことを思い出して『頑張らなきゃ!』と思えるという社会人彼氏の声が多く聞かれました。学生彼女も、『ふと、自分のことを思い出してくれたら』と思うらしく、お互いの気持ちをつなぐ物として大切なアイテムになるそうです。■おわりにいかがでしたか?環境が違うだけで付き合いがうまくいかなくなるなんて、とても悲しいこと。経験したことのない社会人生活を想像するのは難しいですが、毎日を一生懸命頑張っている社会人彼氏のことを想って行動すると、素敵な付き合いができますよ。ここで紹介したのは、ちょっとした工夫でできることばかりです。大好きな彼を応援しながら、上手に付き合ってくださいね!(下村さき/ライター)(ハウコレ編集部)
2016年01月04日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「沖縄基地問題」です。***米軍の普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題が長引いています。ここで改めて沖縄の基地問題をおさらいしましょうか。1972年に沖縄が日本に返還されるころ、ベトナム戦争でアメリカは疲弊し、日本から撤退を考えていました。それを引き留めたのは日本。軍隊を持たないかわりに、米軍に日本を守ってほしかったため。「思いやり予算」をつけ、米軍の経済的負担を軽くしたことは「日米同盟」の回ですでにお話ししましたね。ところが1995年、12歳の少女が米兵から集団暴行を受けるという悲惨な事件が起きます。基地内の犯行だったため、日本は米兵を裁くことができませんでした。8万5000人が集まる抗議集会が開かれ、基地撤退を求める大きな運動になっていきます。翌年、街中にある普天間飛行場を5分の1に縮小して辺野古に移転するという計画を橋本内閣が決定。けれど、海をコンクリートで埋め立てて造るという、基地が半永久的にあることを前提とした計画に反対の声が上がります。基地がなくなると、沖縄の経済が落ち込むのではないかと心配する人もいますが、基地経済に依存しているのは沖縄全体の4・9%(平成23年度)。年々減ってきているんです。基地のかわりに商業施設ができれば、経済は上向きになるかもしれません。実は沖縄県は経済格差が激しくて、年収1000万円以上の人がいる割合が全国で10位なのに総所得は最下位なんです。今年6月に行われた琉球新報と沖縄テレビ放送の世論調査では、県内移設に反対する県民は約83%でした。夏に米軍海兵隊の広報官を取材したところ、基地は必ずしも沖縄県内でなければいけない理由はないと話していました。そうしたらどこに?難しい問題です。もし沖縄に遊びに行く機会があったら、街中に基地がある現状をぜひ見てきてください。県を縦断する道路が基地を避けて迂回しなければいけなくて、いつも渋滞。休みなく飛行機が飛び交い、窓ガラスがガタガタ揺れてものすごい騒音なんです。基地は沖縄だけの問題ではないということを意識するのも大切なことだと思います。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年12月25日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年12月21日トレンド総研は、 現在、大学、大学院、短期大学に通っている就活生300名を対象に「就活生の社会問題への意識・理解に関する調査」を実施した。調査期間は8月6日~12日。○文理で意識・関心に大きな差まず、社会問題を「政治・行政」「経済」「社会制度」「資源・エネルギー」「環境」「災害・事故」「犯罪・治安」「外交・国際社会」の8つのテーマに分け、意識・関心が高いのはどんなテーマなのかを調べた。その結果、テーマに対する意識・関心については、理系と文系の大学生の間で大きな差が見られた。理系の大学生の意識・関心が高いテーマは、「環境」(68%)、「資源・エネルギー」(65%)、「災害・事故」(57%)であったが、文系の学生は「政治・行政」(76%)、「社会制度」(73%)、「経済」(68%)となっている。特に、「エネルギー・環境問題」については、両者の差が顕著で、理系の大学生にとっては上位2テーマだった「環境」(理系:第1位・68%、文系:第7位・61%)と「資源・エネルギー」(理系:第2位・65%、文系:第8位・59%)は、文系では意識・関心が高いテーマの中で下位2つとなった。社会問題に対して、大学生はどのように情報収集をしているのか尋ねたところ、最も多かった回答は「インターネット」(78%)だった。幅広くパソコンやスマートフォンを利用している就活生においては、「テレビ」(72%)、「新聞」(62%)といったメディアよりも、インターネットの影響力が上回ることが分かった。○環境問題では「地球温暖化」に関心あり続いて、社会問題の中でも、エネルギー・環境問題にフォーカスして調査を行った。大学生の関心度が最も高い環境問題のテーマは「地球温暖化」(68%)で、2位の「大気汚染」(43%)の1.5倍以上となっている。エネルギー問題については、各テーマの関心度は総じて高かった。中でも、特に関心を示した人が多かったのは、「原子力発電のニーズとリスク」(75%)、「太陽光発電などの再生可能エネルギー」(73%)、「二酸化炭素の排出量と温暖化リスク」(72%)といったテーマだった。エネルギー・環境問題に関する10個の情報に対して、それぞれを正しく理解できているか調べたところ、最も正答率が低かったのが原子力発電所の稼働停止に関する設問で、正答率は46%だった。次いで正答率が低かったのは、電気料金の値上がりと再生可能エネルギーに関する設問(49%)となっている。
2015年09月08日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマはテレビなどでもよく耳にする言葉、「格差社会」。***格差社会になって何が問題かというと、ひとつにはそれが原因でテロや紛争が起こり得るということです。貧困によって安定した生活を送れない。先進国の一部に富が集中し、一方で虐げられる人が出てしまう。そんな現状に不満が渦巻いているのです。私たち日本人にとっても無関係ではありません。たとえば、いまとても安く衣料品が手に入りますよね。優良企業の手厚い指導のもとで作られている場合もありますが、開発途上国の安い労働力を利用して成り立っている場合もあります。私たちの豊かな生活は、何に支えられているのか?世界に意識を向けることは大切です。民主主義は、人権を保障され、各々がそれぞれの努力によって幸せを追求できる社会です。ところが、生まれながらに貧しくて教育が受けられない。教育が受けられないから、高収入を得る仕事につけない…というふうに格差が固定化してしまう悪循環に陥ってしまうことも。格差があること自体は、「お金持ちになろう」「偉い学者になろう」と頑張るモチベーションになるかもしれません。だから、格差はあってもいいのだけれど、教育や仕事を得る“機会”は平等に与えられる社会でないといけないのだと思います。いま日本では、子供の貧困が問題になっています。一日の食費が300円という子もいます。親が働いているのに貧しいというケースが多い。表面的には衣食住がまかなえているので、「貧困」という自覚はないんです。でも、貧困はじわじわと襲いかかってきます。余裕のある人たちがサポートできるようになるといいのですが。他人事ではありませんね。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年7月8日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年07月05日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。第6回となる今回は、いつの世も絶えない「政治献金」の問題についてです。***ロッキード事件やリクルート事件をはじめ、「政治と金の問題」、企業と政治家の癒着は昔から取り沙汰されていますよね。日本には、アメリカのように“個人が政治家に寄附をする”という習慣はあまりなく、企業が献金(寄附)をするというのが主流です。そうなると、お金でバックアップしてくれた特定の企業には、その企業にとって有利な政策を通してお返しをする、というような“利益誘導型”の政治が起こりやすくなってしまうんですね。現在は「政治資金規正法」という法律で、企業が政治家に対して直接お金を渡すことは禁じられています。ただ、政治団体を通じて寄附をすることはできるんです。そもそも国会議員ってどれくらいのお給料をもらっていると思います?年間約2000万円の給与に加え、交通費や通信費として1年に1200万円の手当が出ます。さらに、3人の秘書を公費で雇うことが許されています。政治活動にはそれでもお金が足りないというので、不正な金の受け渡しを防ぐために、国民 1人当たり250円ずつ「政党助成金」というものを支払っています。それは総額にすると320億円(!)あり、各政党の議席数に合わせて振り分けられているんです。3月には安倍総理が、国の補助金を交付することが決まっていた複数の企業から事前に寄附を受けていたことが発覚しました。これは補助金をもらうための賄賂のようなものになるのでは、と問題になりかけたんですね。ところが、総理の「交付対象に決まっていたとは知らなかった」という一言で、あっさり許されてしまったんです。法律で規制されているものの、法案自体、当の政治家本人たちが作っているのでどうしても自分たちに甘い部分が出てきてしまうんですよね…。だから政治家の金に関する規制法案は、政治家本人ではなく、国会の外で作る必要があります。さらに、企業に監査法人が入って会計を厳しく調査するのと同じように、政治家にも、公平にチェックをする第三者を入れるというのが必要だと思います。そういう新たな仕 組みを作らないと、献金問題は改善されないのかもしれませんね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年6月17日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年06月15日2015年の1~3月期にフジテレビで放送された『問題のあるレストラン』は、とても意欲的なドラマだった。男性中心の社会で虐げられ、辱められてきた女性が直面する、セクハラ、パワハラ、モラハラといった問題を、きちんと真正面から告発しながらも、魅力的なキャラと、繊細な会話や描写の積み重ねで、あくまでエンタメとして成立させていた手腕は見事である。これまでフェミニズムが草の根で啓蒙してきたジェンダーをめぐる問題を、決して説教臭くない軽やかなエンタメに落とし込んだ作品が、近年増えてきたように思う。『問題のあるレストラン』が扱った問題意識や人物設定とどことなく通底するものを感じる、鳥飼茜の『地獄のガールフレンド』も、そんな漫画のひとつだ。○「誰かのために生きている」女性への卑屈な感情この作品は、立場も属性も違う3人の女性が、それぞれの事情から一軒家でルームシェア生活をスタートさせるところから始まる。今よりもっと稼ぎたいから家事を分担してほしいのに、"今の収入バランスで自由だけ欲しがるのはワガママ"と言い放つ無理解な夫に見切りをつけ、シングルマザーの道を選んだイラストレーターの加南。20歳で既婚男性との不倫を経験して以来、男に頼らず「誰にも迷惑をかけない」ことを信条に生きてきた、セカンドバージンのバリキャリ女性の悠里。そして、いかにも男ウケする容姿と天性のモテ力を持ち、いつも彼氏を切らしたことのないファッションデザイナーの奈央。彼女たちの姿から浮き彫りになるのは、選んだ道や置かれた立場が違うだけで分断されてしまう女の人生だ。たとえば悠里は、「花の独身じゃん」「時間なんて自由に使えるんだから」という理由で、育児のために時短勤務をしている同僚女性の仕事を、他の男性から押し付けられる。このとき彼女は、仕事を押し付けた男性ではなく、つい時短勤務の女性にいらだちを向けてしまう。彼女にとって、母や嫁といった女性は、「誰かのために生きている」という使命感や正義感を振りかざしているようでうとましく、「誰のためにも生きてない」自分が蔑まれているようにすら感じてしまうというのだ。一方、シングルマザーの加南にとっては、まさにこの「誰かのために生きている」というレッテル貼りこそが、理不尽な抑圧となっている。共働きをするために子供を保育園に預けたのに、対応を求められるのはいつも「お母さん」ばかり。子供がいるのに離婚するなんて、子供がいるのに男と付き合うなんて、すべては「お母さんの都合」(=ワガママ)だと責められてしまう。「私たち女は/誰も彼も大変てことにしてなきゃいられない/『自分だけ楽しい道を選んで』と反感を買ってしまわないように」こうして女性は、自分と違う属性や、自分が選ばなかった道に進んだ女性を、むやみに羨んだり妬んだり、牽制し合ったりして、"女の敵は女"と分断させられる。分断"させている"社会や仕組みのほうに、問題の矛先はなかなか向けられない。○"男から求められる"ことの甘美な誘惑とその闇とはもうひとつ、この作品で考えさせられるのが、性的客体として求められることを欲してしまう、女性の欲望のあり方だ。"なぜ女性向けの風俗店は一向に実現しないのか"について3人が話し合う場面で、加南は、女性の性欲が「『さわらしてもらう』ってトコに全然トキメキがない」「『やむを得ずさわりさわられ』っていうのにトキめく」という本音を語る。つまり、主体的に欲しているのは自分なのに、"男から求められている"という受け身の状況にしか欲情できない、というわけだ。恋愛や性行為をめぐっては、"男性は支配的にリードし、女性は受動的にそれを受け入れるものだ"という、作られた性役割規範が蔓延している。そうしておけばコミュニケーションコストがかからなくて済む、という振る舞いの問題ならまだしも、やっかいなのは、男女ともにこれを欲望レベルで内面化してしまっていることだ。若さや容姿でジャッジされることにさんざん不快な思いをしてきたはずの加南も、「かわいがられたいって気持ちが捨てられたら…/たしかに楽そうではあるかな…女の人生」と、"男に欲される快感"を捨てきれずに揺らいでいるさまが見てとれる。中でも、男から愛されることを人一倍、自己肯定の拠り所にしてきた奈央にとって、男に求められないオバサンになるのは、何より恐ろしいことだ。焦った彼女は、自分より年上のオジサンと合コンをして、「若くて魅力的な女のコ」扱いされることで自我を保とうとする。しかし、まだ育児中の妻を家に残して自分に手を出そうとする身勝手さを批判すると、男は手の平を返したように奈央を「ドブス」と罵倒してきたのだ。「ホントのことを言う私は/男の人にとってドブスなんだ」時折しも、峰なゆかの『アラサーちゃん』では、ゆるふわちゃんが自分に対して勝手な幻想を抱く文系くんと付き合うことになり、自我崩壊して闇落ちする展開が話題となった。『問題のあるレストラン』では、男性に迎合して生きる道を選んできた"きらきら巻き髪量産型女子"の川奈藍里が、同僚男性からストーカー行為を受けて殴られ、目を覚ます場面が描かれた。ゆるふわちゃんと、川奈藍里と、本作の出口奈央は、年齢こそ違うものの、パラレルワールドを生きる同一人物に見えてくる。自分ではない誰かに自我を預け、欲望をコントロールされるのがいかに危険かということが、今、多くの女性の中で実感として共有されはじめているのだろう。『地獄のガールフレンド』は、生き方の違う女性同士のルームシェアを通して、あなたの隣の女性は本当に敵なのか、手を取り合い"シェア"することはできないのかと、そっと共闘を呼びかけているのかもしれない。ただし、意味深な1巻の最後のコマを含め、タイトルの「地獄」が意味するところは今後の続きが気になるところだ。(C)鳥飼 茜/祥伝社フィールコミックス<著者プロフィール<福田フクスケ編集者・フリーライター。『GetNavi』(学研)でテレビ評論の連載を持つかたわら、『週刊SPA!』(扶桑社)の記事ライター、松尾スズキ著『現代、野蛮人入門』(角川SSC新書)の編集など、地に足の着かない活動をあたふたと展開。福田フクスケのnoteにて、ドラマレビューや、恋愛・ジェンダーについてのコラムを更新中です。
2015年05月20日「社会貢献していますか?」 この質問にどれだけの人がイエスと答えられるでしょう。社会貢献なんて堅苦しいし、自分とは別世界のことに感じる人は少なくないでしょう。実はわたしも、その一人。そもそも自分が社会に貢献するなんて10年早い、と思っていましたが、ちょっと違うのかもしれません。今回は「聴くこと」が社会貢献になるというお話。聴くだけで良いんです。子どもの声を拾っていますか?TOYMAIL(トイメイル)という親と子をつなぐ動物型の伝言ツールをご存知でしょうか?セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが世界の子どもたちの状況をよくする第一歩として、聴くことの大切さを訴える「HEAR(ヒアー)」プロジェクトの一環で発売している商品です。TOYMAILに向かって子どもが話すと、親のスマートフォンにメッセージが入り、メッセージを受け取れる仕組みです。「子どもの声を、聴いていますか?」というキャッチフレーズとともに、こちらの動画では親が子どもの声を聴くことの大切さが描かれています。何気ないメッセージに、子どもの本音が垣間見えて、思わずクスッとさせられます。その一方で、世界で一番大切な我が子の声なのに、日常の忙しさにかまけて、しっかり聴くことがなかったという、親の反省も聞こえてきそうです。社会貢献を本当に邪魔する敵とは?親でさえも聞き逃してしまうこともある、子どもの声。わたしたちの周りにも、悲鳴を上げている子どもはきっとたくさんいます。ただ周囲に関心を持ち、他人の声に耳を傾けることが、とても難しいことも事実。聴くのは面倒だし、聴いてしまえばもっと面倒なことに巻き込まれるかもしれないから、耳を塞いだ方が賢明なのかもしれません。でもそれは賢明なのではなくて、ただのエゴであることを、誰もが知っています。そしてエゴの先には孤独が待っていることも、わたしたちは薄々気づいています。隣の子どもの声を聴くことだって、社会貢献になります。そう社会貢献のチャンスは、わたしたちの身近にゴロゴロ転がっているのです。社会貢献を邪魔するのは、海外まで助けに行けないからではなく、実はわたしたち自身のエゴなのでしょう。まずは一歩を踏み出そう聴くというのは、本当に難しいことです。表層の言葉だけでは、人の真意はわからないことが多いもの。でも難しいことを言い訳にして、上辺だけの人間関係を続けることに、そろそろみなさんも飽きているのでは?まずは、身近にいる大切な人の声に耳を傾けてみませんか?恋人や家族、子どものことがわからなくなってしまった時こそ、気持ちをリセットして聴いてみましょう。大切な人を幸せにすること。それも立派な社会貢献のひとつ。ね、今日から始められると思いませんか?※参考:「HEAR」プロジェクト公式HP、動画「HEARプロジェクト 子どもの声を、聴いてますか。」
2015年01月30日イオングループは、1977年から「イオン社会福祉基金」を設立するなど、さまざまな環境・社会貢献活動を実施しているが、そのグループ内企業、イオン九州はさらに地域密着型の社会貢献活動に取り組んでいるという。同社は独自の基金「イオン九州社会貢献基金」を1997年に設立。これは、より地域に密着した活動をしたいという社員の声から設立にすることになったものだという。また、イオン九州は、資金提供や物品提供といった援助活動だけではなく、社員自らが地域に関わるボランティア活動を重視しているという。そのうちの一環が、サンタクロースに扮した社員がクリスマスに福祉施設を訪問する活動。これは、毎年クリスマスに社員が行っていた活動が恒例化したもので、2014年は79カ所の施設を訪問したという。同社代表取締役社長 柴田祐司は、社会福祉活動について、「地域と企業の関わりを考える時、わたしたちがもっとも大切にしているのは、単なる経済的、便利的貢献ではなく、地域のみなさまから必要とされる暮らしに根差した存在になることであり、社会福祉活動もそうした取り組みの中から生まれたものであります」とコメント。また、活動当初から携わってきた社員は「当初は小さかった活動も、実際に地域の方々や子どもたちが喜んでくれている姿に触れ、自然に、自主的に活動が大きく広がっていきました。資金提供だけでなく、こうして実際に地域の福祉施設を訪問することでしか得られない大切なこと。これからも九州のみなさまのお役に立てるよう、活動を継続していきたいです」と話す。一方、数年にわたりサンタクロースの訪問を受けてきた福岡療育センター いちばん星センター長 堤孝子さんは、「今年で4回目だったのですが、子どもたちがとても楽しみにしており『サンタさんにどこから来たの?』とたずねたり、早々と来年のプレゼントをお願いしたりと、大変ほほえましい、楽しい時間を過ごすことのできる貴重な時間になっています。今後も引き続きこの活動を継続してほしいです」と、活動の意義を語った。
2014年12月26日