精神的に被害を受けるモラハラと精神的DV。どちらも被害者の心を蝕ませる行為ですが、このふたつの細かな違いをご存知ですか?一見似ているふたつの精神的被害の違いや、モラハラ・精神的DVを行ってしまう人の特徴についてご紹介します。モラハラと精神的DVの違いとは?モラハラとはモラハラとは「モラル・ハラスメント」の略。その名のとおり「モラル(道徳)」を振りかざし、自分と世間一般の常識が正しく、相手が悪いといった考えかたから振るわれる精神的暴力がこれに当たります。世間一般の常識と比較しながら「こんなことも言われないとわからないのか」「だからおまえはダメなんだよ」といった発言をすることが多い傾向にあるようです。被害者が「悪いのは自分なんだ」「自分が間違っているんだ」という意識を刷り込まれ、被害者であることに気づきにくいのもモラハラの特徴です。精神的DVとは?DV(ドメスティック・バイオレンス)は、夫婦間や広義では近親者間の暴力全般のことを差しますが、そのなかでも精神的な被害を受けるものが精神的DVと呼ばれています。モラハラとの違いは、加害者が正しいと考えているのが単純に自分であること。 加害内容は言動だけに止まらず、夫婦の場合であれば「生活費を渡さない」「お金を勝手に使う」「家計管理を過度に束縛する」といった経済的なものも見られるようです。また、「交友関係を制限され、友人や実家家族に会いに行けない」「人前でバカにする」といった社会的なものも精神的DVのひとつです。モラハラからDVに発展するケースもモラハラの度合いが悪化し、DVに発展してしまうケースもあるようです。一般的なモラハラは外での態度には問題がないことが多く証明しづらいのも特徴ですが、暴力を振るわれた場合は、言い逃れのできない証拠になります。エスカレートしていく可能性も高いため、速やかに家を出る・警察に相談するといった対策をとりましょう。 どうしてモラハラ・精神的DVをしてしまうのかでは、なぜ加害者はモラハラ・精神的DVを行ってしまうのでしょうか。そうした行為を行ってしまう人の性格的な特徴と、それに至る原因を挙げてみます。モラハラ・精神的DVを行ってしまう人の特徴精神的DVは「自分が」、モラハラは「自分を含めた世間が」正しいとする思考によって行われます。原因となる性格には、極端なプライドの高さが挙げられるでしょう。男女を問わず、極端にプライドが高い人はささいなことで攻撃的になることが多いのではないでしょうか。また、異常に「自分だけが大好き」といった人や、自分の言動によって相手がどう感じるのかを想像できない、想像しようとしない人も多く見られるようです。モラハラ・精神的DVを行うに至る原因こうした性質・性格に至るには、生まれつきの気質以外にも原因があります。極端に過保護に育てられた結果、自己愛精神が肥大化してしまったケース。また、ネグレクトや虐待など、適切な愛情を親から受けられなかった場合も、極端な自己愛に陥ってしまう原因になる可能性が高いと言われています。本人には「自分が異常だ」という意識がないことがほとんどで、そのため改善は難しいとされています。周りの人間によって改善に向かう期待値が低く、適切な距離を取ったり、病院での治療を受けさせるといったことが必要になります。 まとめ離婚原因にもなりえるモラハラ・精神的DV。精神的被害は立証が難しいものではありますが、証拠を用意するなど手順を踏めば、慰謝料の請求も可能な被害です。精神的なダメージは回復までに長い時間を要するもの。今回ご紹介したような言動・行為がみられる場合は、「自分は被害者なんだ」という意識を持って対応を考えることをおすすめします。 参考:モラハラ夫・自己中夫の事例と見極め方心が傷つく言葉の暴力!モラハラと精神的dvの違いとは?dvとモラハラの違い
2018年06月22日精神科は行きにくい場所?出典 : 自分や家族が精神的なつらさを感じている、悩みや困りごとをずっと抱えているという方に精神科の受診をすすめると、「病院に行くほどではないから」と断られることがしばしばあります。精神科はもっと深刻な悩みや症状を抱えた人が行く場所ととらえている方や、子供が行く場所ではないのでは…と考えている方も多いのかもしれません。しかし、もしも何らかの病気や障害だった場合、早めに治療を始めれば症状が軽くなったり、対処法を知ることで生きやすくなったりします。自分や家族だけで悩んでいるだけだと、対応策が見つけられないことも多いものです。専門家の診察があってはじめて、状況を理解して良い方向へ進むことができるようになった人もたくさんいます。そこで今回は、どんな病気の人が精神科にかかっているのか、診察はどのように行うのかなどが理解できる本をご紹介します。これらの本を通して、精神科がどんなところかイメージできるようになると、受診しやすくなるかもしれません。「精神科ではどんな病気をみるの?」が分かる本出典 : 冊目にご紹介するのは、精神科医である斎藤環先生・山登敬之先生の共著である『世界一やさしい精神科の本』。「14歳の世渡り術」シリーズとして出版された単行本の文庫版になります。この本は、発達障害やひきこもり、摂食障害、うつ病、統合失調症といった精神科で診療を行うメジャーな病気や障害、症状について解説されたものです。もともと14歳の子どもたちを対象に書かれた本なので、難しい言葉が使われておらず、とても分かりやすい内容になっています。「発達障害って、そもそもどんな特性があるの?」「ADHDやアスペルガー症候群などと言われるけれど、どう違うの?」といった疑問の解決にも役立つ1冊となりそうです。「精神科医は何を考えながら診察をしているのか」が分かる本出典 : 精神科が対象としている病気や障害について理解ができたら、次に読んでみたいのが『精神科医はどのように話を聴くのか』という本です。精神科医である藤本修先生の著書で、「精神科医はどのようなことを考えながら診察をしているのか」について書かれています。精神科医というと、ただ話を聴いて薬を処方する、というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、その行為の裏にはさまざまな思慮が隠されています。同じ病気であっても、詳しく話を聴かないほうがいい場合もあれば、適切な治療をするためにしっかりと聞いたほうがいい場合もあります。また、病気によっては話を聴き過ぎると逆効果になってしまうこともあり、精神科医は場面ごとに見極めながら対応をしているのです。診察中の医師の考えがわかると、受診したときに何を話せばいいのか、医師がなぜそのような対応をするのかなどが理解しやすくなると思います。そうすると、精神科を受診することへのハードルが低くなるかもしれません。巻末には、藤本先生が提案する「聴き上手になるための10箇条」も掲載されています。子供が悩んでいるときにどう接したら良いのかなど、家族と会話をする上での参考書にもなる1冊です。「精神科って行きにくい…」と感じる人に読んで欲しい本出典 : 最後にご紹介するのは、『ラブという薬』。タレントや作家として活躍するいとうせいこうさんと、精神科医でありながらミュージシャンとしても活動している星野概念さんの対談を本にまとめたものです。帯に書かれている、「つらいことを無理に我慢するのではなく、つらいときはもっと気軽に精神科に行こうよ」というメッセージ。精神科ってすごく困っている状況じゃないと受診してはいけないのでは…と思われがちですが、そんなことはありません。実際にいとうさんは、仕事ができなくなるほど深刻な状態ではなかったけれど、診察を受けるようになって楽になったと本書の中で話しています。風邪をひいたら内科へ行くように、怪我をしたら外科へ行くように、心がつらいときは精神科を頼っていい。そのことが腑に落ちると、我慢しすぎていた「きつい現実」が、誰かを頼ってもいいんだという「少しゆるい現実」に変わっていきます。読み物としても非常に面白いので、精神科の本と難しく捉えずに、ぜひ気軽に読んでいただきたい1冊です。まとめ出典 : 「なんだかつらいけれど、これくらいのことで受診していいの?」「病院に行っても、大したことないって言われたらどうしよう…」そんなふうに悩んでいる方もおられるかもしれません。ですが、悩んでいるうちに問題がより深刻になってしまうことも少なくありません。精神科は、こわいところではありません。もし、受診しようかどうか悩んでいるのであれば、今回ご紹介したような本を少し読んでみてください。精神科を受診するためのハードルが、少し低く感じられるのではないかと思います。
2018年04月14日心療内科とは出典 : 心療内科とは、何かしらのストレスが招いた体の不調を診ることを専門とする診療科です。「内科」とついているところからも分かるように、頭痛やめまいなど体に表れた症状を主に診ます。精神疾患の中には、症状として頭痛や吐き気、めまいなどの体調不良が現れるものがあります。しかしその不調の原因が精神的なものと分からないまま対処しても、なかなか症状が改善しないことがあります。そんなとき、症状の原因となる精神的なストレスに、カウンセリングなどを通してケアも同時に行うのが心療内科です。そのため、本来は精神科の領域のものでも程度が軽いものは心療内科でも診てもらえます。心と体の関係を考えながら、体の不調をケアしてくれるのが心療内科なのです。精神科・内科と心療内科の違い出典 : 心療内科は1996年に政令で表示を許された、比較的新しい名称の診療科です。名前のイメージから、精神科や内科と混同する人も多いようです。それぞれの科によって、診療できる疾患や得意とする診断領域、治療のアプローチが異なることもあります。心療内科ともっとも混同しやすいのは精神科ではないでしょうか。心療内科は大きなくくりで言うと内科です。体に表れた症状を治す診療科ですが、原因がストレスにあるため、カウンセリングなどで精神的なケアも行います。体と心の両方にアプローチして治療をするのが心療内科なのです。一方、精神科は不安や落ち込み、イライラなど心に現れた症状に向き合います。対象となる病気は躁うつ病、アルコール依存症、統合失調症などです。とはいえ厳密にはっきりと線引きされているわけではなく、両方の看板を掲げる病院も少なくありません。うつ病など、本来は精神科の範囲にある病気でも症状や程度によっては心療内科で診ることもあり、心療内科で相談したら精神科を紹介されたというケースもあります。心療内科も内科も、体の不調を治療するという点では同じです。違うのは、心療内科は体だけでなく心も含めて治療をするということです。内科はさまざまな症状に対応してくれるイメージもあるため、原因のよく分からない不調はとりあえず内科へ行く人も多いでしょう。そのため内科の検査では異常が見つからず、心療内科を紹介されたというケースもあります。心療内科や精神科ではなく、「メンタルクリニック」「メンタルヘルス科」という看板を掲げる病院も多くあります。これらは病院によって診療内容のとらえ方が違います。「精神科」という名前に抵抗のある人が多いと考え、精神科でありながらあえて名前を変えているケースもあります。また心療内科と精神科の両方の診療をするため、メンタル全般を診るという意味合いで看板を掲げるケースもあります。【参考】みんなのメンタルヘルス|厚生労働省心療内科の専門領域は、ストレスが招く体の不調出典 : ストレスが招く体の不調には以下のようなものがあります。・頭痛・倦怠感・めまい・不眠・過呼吸・食欲減退、過食・吐き気・腹痛、胃痛・動悸・発汗・抜毛頭痛や吐き気など、身近な症状が多く並びます。このような不調の背景には、以下のような疾患が隠れている可能性があるのです。心療内科の対象となる病気や障害など出典 : 心療内科の対象になる病気をいくつか挙げました。症状の程度や原因によっては精神科など、他の診療科を勧められる可能性もあります。何らかの理由で学校や会社にいけない、あるいは行きたくても行けないのが不登校・出社拒否です。登校や出社をしたい気持ちはあるのに、体がそれを拒否して腹痛や頭痛といった症状が表れるというケースもあります。休んで家にいれば症状が落ち着くこともあり、休むための嘘だと思われてしまうこともあります。ですが、子どもの不登校や配偶者の出社拒否から、本人だけでなく周りの人までストレスで体調を崩してしまうことも少なくありません。そのため、早めのケアが重要となります。主な症状は吐き気や腹痛、倦怠感、動悸などです。うつ病の中でも、心の不調が体の不調に隠れてしまっているものが「仮面うつ病」と呼ばれています。うつ病によくある気分の落ち込んだ状態が見られず、頭痛やめまい、不眠といった症状が目立つため、内科で診断を受けても異常は見つからず、単に調子が悪いだけだと思い込んでしまうことも多くあります。腹痛や下痢、便秘といった腸の不調が見られる病気です。日常生活への支障は痛みによる不快感だけではありません。急におなかが痛くなってトイレへ駆け込む、出勤前にトイレから出られなくなる日が多いなど、学校や仕事に影響が出ることもあります。症状を訴える人は男性と比べると女性が約1.6倍多く、年齢では30代までの比較的若い人に多く見られます。【参考】機能性消化管疾患心療ガイドライン2014|日本消化器病学会自律神経とは、体のバランスを整える神経です。その自律神経のバランスが崩れているというのが自律神経失調症ですが、自律神経の働きは検査ではなかなか正確に測れません。そのため、何となく体調が悪いのに検査では異常の見つからない状態が長く続いているものを自律神経失調症と呼んでいます。症状は倦怠感、不眠、めまい、頭痛、動悸、食欲不振などさまざまです。寝込んで起き上がれないほどの症状になることは少なく、多くの人は「なんだか調子が悪い」という状態がずっと続きます。片頭痛は名前の通り頭の片側に起こる頭痛ですが、両側に起こることもあります。ストレスなどにより頭部の血管が収縮、その反動で血管が広がったときにズキンズキンという痛みが起こります。主な症状は頭痛ですが、ひどくなると吐き気をともなうこともあります。頭や体を動かすと痛みが増すこともあるので、光や音の刺激を避けて安静にすると症状が緩和されます。発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。広汎性発達障害、学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など、症状や特徴でいくつかの種類に分類されます。不登校やうつ(気分が落ち込んでいる)状態をきっかけに心療内科へ行ったところ、発達障害が判明したというケースもあります。発達障害の場合、環境とのミスマッチや人間関係がストレスとなったりすることも多く、発達障害の二次的な障害として、睡眠障害やうつ、不安障害などが併存するケースもあります。甲状腺の機能異常により起こるのがバセドウ病で、動悸や疲労感、発汗が主な症状です。脈拍も早くなり精神的にも落ち着かないため、「体が常に全力疾走をしている」と形容されることもあります。まぶたの筋肉が緊張することで常に目を見開いているように見えたり、眼球の周りの筋肉が肥大して眼球が突出することもありますが、バセドウ病が必ずしも眼球への変化をきたすとは限りません。突然息苦しさを感じ、呼吸が乱れ、息が入ってこないように感じるのが過換気症候群の特徴です。動悸や胸の圧迫感のほか、手足のしびれや筋肉のけいれんを感じることもあります。発症した場合、呼吸を遅くしたり止めたりすると症状は改善しますが、本人が呼吸をコントロールするのは難しいものです。紙袋などを口に当てて呼吸をするという対処法もありますが、医師の指示を仰ぐのが良いでしょう。【参考】過換気症候群|日本呼吸器学会突然息苦しさや動悸、冷や汗、恐怖感などを感じてパニック状態になり、そのせいで社会生活に支障の出ている状態をパニック障害と言います。電車やエレベーターなど閉鎖された空間では「逃げられない」と感じるため、外出ができず、学校や会社へ行くことができなくなることもあります。状況によってはだれもがパニック状態に陥る可能性はありますが、自宅でテレビを見ているときに突然、寝ているときに突然など、予期しないところで発作が起きるのが特徴です。食事をうけつけなくなる「拒食症」と、無謀な食べ方を繰り返す「過食症」。この両方を合わせて摂食障害と呼びます。食べては吐く、を繰り返すこともあり、その場合は体内のカリウムが下がって不整脈を起こすこともあります。拒食により栄養状態が悪くなり、月経が止まることもあります。拒食と過食、行動は正反対ですが根っこは同じです。拒食から過食へ、過食から拒食へと症状が変化することも少なくありません。「やせたい」という思いから治療を拒むケースもあるため、まずは治療の必要性を理解するところから始まります。生活習慣病と言われる糖尿病ですが、ストレスがホルモンバランスに影響して血糖値を上げることもあります。倦怠感やのどの渇きなどが症状として挙げられます。治療は一般の糖尿病と変わりませんが、運動や食事などの生活コントロールがうまくいかずにストレスをためることにならないよう、注意が必要です。40代以降に見られる、様々な体調不良や情緒面での不安定な状態を更年期障害と呼びます。ホルモンの影響を受けやすい女性に多いのですが、男性にも症状が表れます。症状は自律神経失調症に似ていて、動悸やめまい、疲労感、イライラ、不眠など様々です。ちょうど子どもが就職や結婚で親元を離れる時期と重なることも多く、環境の変化に心がついていけずにうつ状態となることもあります。皮膚に病気や傷がないのに円形に毛が抜けてしまうのが円形脱毛症です。痛みはなく、社会生活に直接の支障はありません。自覚症状がないのが特徴で、美容院で髪を切ってもらうときに指摘され気が付くということもあります。しかし容姿が変わることでショックを受けて、他人の視線が怖くなり外出を拒むなど、間接的に影響が出ることはあります。皮膚に症状が現れるため皮膚科を受診するのが一般的ではありますが、背景にはストレスがかかわっている場合もあります。その点から考えると心療内科で治療を受ける選択肢もあります。心療内科における治療の流れ出典 : 心療内科ではカウンセリングを含めた診察、検査を経てそれぞれの症状に合わせた治療を行います。まずは医師に現状を伝えます。病歴や症状、薬を飲んでいるかなどはもちろん、原因になりそうなストレスや家族との関係、生育歴などを話します。もし同じ病状で他の病院にかかっていた場合はそれも話しておくと良いでしょう。うまくまとめて話せないことも多いため、受診前に簡単に話す内容をまとめてメモしておくとスムーズです。話しているうちに人間関係や仕事の相談をしたくなる気持ちも出てくるかもしれません。ですが、心療内科の医師は体の不調の原因を探るために話を聞いています。悩みを聞いて答えを探してほしいという場合は、カウンセリングルームを利用するという方法もあります。じっくりと話を聞いてもらえますが、保険が適用されないため、1時間で1万円くらいの費用がかかることもあります。問診の後は体の不調の原因や程度を探るため、必要に応じて血液検査、心電図、MRIなどが行われます。心理状態や性格を知るために、心理検査(心理テスト)をすることもあります。簡単な質問に答える検査のほか、カードに描かれた模様を見て何に見えるかを答えるロールシャッハテストなど、あいまいな質問で深層心理を見る検査が行われることもあります。心療内科の対象となる病気は、原因にストレスなどがあると考えられます。そのため、生活習慣や考え方を変えることにより、症状が改善することもあります。内科的な治療としては薬物療法があります。病気やその症状に合わせて抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、自律神経調整薬といった薬が使われます。最終的には薬物を使わなくても安定して社会生活を送れるように、徐々に薬を減らしていきます。ほかには患者の無意識を探りストレスの原因をあぶり出す精神分析療法、行動を変えて不安を減らす行動療法、認知のゆがみ(思い込み)を正して心を軽くする認知療法といった心理療法が用いられることもあります。診療にはどのくらい費用がかかる?出典 : 心療内科へ行こうと思ったとき、気になるのは費用ではないでしょうか。内科と違って問診(カウンセリング)の分の時間もかかるので、高額なイメージはあるかもしれません。しかしカウンセリングルームとは違って保険が適用されますし、カウンセリングと言っても何十分も時間をとれるわけではないため、驚くような額にはなりません。保険適用で3割負担のため、初診で払う費用の目安は2500円~5000円程度です。症状によっては薬や検査代が別途かかることもあります。臨床心理士によるカウンセリングを行っている場合など、別途予約料が必要なところもあります。予約の要不要を含めて、行く前に病院のシステムを調べておくと安心です。心療内科では、子どもが不登校の場合など、本人以外だけで話を聞きたいという要望にも応えてくれます。ただし本人不在の場合は自費診療となるため、費用も高額になってしまいます。パニック障害など、心療内科の対象となる病気には、自己負担が1割となる「自立支援医療制度」が適用されるものもあります。利用には医師の診断書と市町村での申請が必要で、市町村や都市に指定された「指定自立支援医療機関」でなければ適用されません。治療に時間と費用がかかる場合は、制度の適用について医師に相談してみると良いでしょう。【参考】自立支援医療制度|厚生労働省まとめ出典 : 心療内科は、ストレスが原因と考えられる多様な症状に対応してくれます。費用もほかの診療科とそれほど変わらず、特に高額ではありません。症状の中には自覚しづらいものも多くあるので、気になる症状があれば、一人で抱え込まずに一度心療内科へ行ってみるのも良いでしょう。ストレスの内容や症状について話すことで、客観的に自分を見つめることもできます。あわせて普段からストレスをためないような生活を送ることも重要です。ストレスは多くの病気の引き金になります。学校や仕事、人間関係など、ストレスと無縁に生きることはできませんが、できる限りため込まず上手に発散できると良いですね。
2018年04月05日ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2018-19年秋冬ウィメンズコレクションが、発表された。フリーハンド、自由な精神、アートフルなどがキーワードとして挙がった今季は、固定概念から逸脱したような開放的な姿勢が印象的だ。ブランドが得意とする美しいジャカード。サテン、ポンジーなどクラシックなファブリックがテクニカルな糸によって再構築される。肌触りのよいカシミヤの中にはナイロン糸を、ラムウールの中にはキラキラと輝くルレックスを。現代技術を駆使した糸が交わることによって、テキスタイルそのものから新しい可能性を見出している。フォーマルな印象のテーラードやトレンチコート、知的な女性を映し出すロングドレス。これらはシルエットとデコレーションによって遊びを加えた。肩の位置から大きくドロップさせてアームを太くとったり、アームそのものにギャザーを入れて膨らませたり。毛足の長いフェザーをランダムに、そしてアシンメトリーに配して動きをつけたりしている。新鮮に映るのは、テーラードの中にメンズのスポーツウェアの要素が溶け込んでいること。パーカ、ウィンドブレーカー、スキューバウェアの一部などが仕立て服の中に溶け込み、優雅に交わっていく。コレクション全体にリズムをもたらしたプリントシリーズ。描かれた様々なモチーフは、すべてドリスのアトリエで手書きされたものだ。ペンやインク、ボールペンなどでなぐり書きのように描かれたペインティングは、アクセントになると同時に、ハンドクラフトのような温もりももたらしている。
2018年03月11日精神科医って親しみやすさがない、そんなイメージを持っている人は少なくないだろう。今回取材をさせていただいたのは精神科医の星野 概念(ほしのがいねん)先生。精神科医でありながらミュージシャン、執筆活動などマルチに活躍する先生に、「こころ」への接し方をきく。それは同時にユニークな視点を交えたすべての人への生き方のアドバイスでもある。たとえ心の不調を感じても「自分は行くほどではない」「必要がない」そんな風に考えている人は少なくないだろう。また、カウンセリングを受けることに対して「どんなことを聞かれるのだろう」という不安や、「周囲の人間に病気の人という見方をされたくない」という気持ちから抵抗感を抱いている人もいるかもしれない。しかし、実際は様々な人がそれぞれの目的で利用しているということが分かる。「よく分かんないけど最近落ち込んでる」「イケてない」みたいなことをそのまま言ってもらうだけでも構わないんです。じゃあそのよく分かんないっていうのはなんなんですかね、今までの話聞かせてください、って聞いていきます。自分だけでその原因を考えててもわかんないんですよね。それに話すだけ、アウトプットするだけでも違うから僕は気軽に話せる場があればいいなって思う。カウンセリングルームだけじゃなくてたとえば近所のお寺とかでもいいと思う。昔だったら長屋みたいなところに頼れるおじさんがいて…とかあったかもしれないけど、今はそういう機会があまりないじゃないですか。だからカウンセリングは相談の場所として適しているのかなって。うまく話す必要はない。分からないことをそのまま言うだけでいい。そこから患者の心理を紐解いていくのが精神科医や心理学者といったプロなのだ。心に溜まったモヤモヤを自分のなかにしまっておくのは限界があるだろう。だからアウトプットするだけでも気持ちがスッキリしたり、言葉に出してみることでそのモヤモヤが整理されたりする。しかしだからといって星野先生は必ずしもカウンセリングに行くことを勧めているわけではない。自分のことを気軽に安心して話せる相手や場所があるならそれでいい、そういう人や場所を見つけておくことが大事だという。自分や周囲の人が心の不調に陥ったとき、どうすればよいかどう接すればよいのかが分かってきた。では一体、人の心理を紐解くプロは自身がそのような状況に陥った時どう対処するのだろうか。この質問に対して返ってきた答えは「自分を知ること」。自分のことを知っていればもし落ち込んだときでも、落ち込みが浅い段階でわかるし、自分が不調だって分かります。自分がイライラしたときにどういう表現や仕草、言葉遣いをするのか知っておくことが大事なんですよ。準備しておけば、ちょっと落ち込んだ時にすぐ対処ができるから、つまり対処の仕方が分かるような「自分の取扱説明書」を持っておくことが大事というか。例えばこういうお酒を飲むと幸せな気分になれるとか、人によっては場所かもしれないし、本や映画かもしれない。これをしたら気分がよかったっていう経験を調子がいいときに書き留めておくんです。それで不調になったときにそれ見返すと、「あ、あのときこれやったらよかったんだ自分」ってなると思います。自分は何をしている時が一番幸せなのか、どういうときにイライラしてしまうのか。考えて瞬時に答えられる人は意外と少ないだろう。自分のことなのだからよく知っていると思い込んでいても、実際は思うほど自分のことを知らないのかもしれない。自分を知ることとは一見シンプルに見えるが、難しく時間のかかる作業だ。そして他人の言動に気を取られすぎて、その瞬間に自分がどう感じているかをあまり意識していないということもあるかもしれない。他人に対しては敏感なのに自分に対しては鈍感になっていないだろうか。心の不調に陥りにくくなるために、私たちは普段からもっと自分に気づいてあげる必要がある。精神科医とミュージシャンの両立からみえてきたことマルチに活動する星野先生ならではの考え方と言えるかもしれない。自分の持っている素材でしか表現できないけれど、一つの職業に絞らずにやってきたことでいろいろな組み合わせが増えたのだ。だからこその独自の視点がある。もちろん何かの分野の権威になろうとするならば、一つのことに絞るべきかもしれない。しかし職業を絞らずにやりたいと思うことに全力を注げば、その人らしさを表し、ユニークなものへと変わっていく。楽しく上手に生きるために、引き出しのなかに自分の取扱説明書と相談できる場所を持っておくことが大事だ。引き出しにたくさんのものがあればいろいろな組み合わせを考えられる。人生にマニュアルはない。だから自分についてよく知っておく必要がある。自分で自分の感情や行動に意識を向け、新しい自分を発見したら、それを自分の引出しにしまって自由に取り出したり組み合わせたりできるようにしよう。それはきっと人生をより豊かなものにしてくれるはずだ。もし自分に悩み、どうしたらいいのかわからない時は、相談できる場所に行こう。***星野 概念
2017年11月13日厚労省が「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を決定出典 : 精神障害や発達障害のある人が働きやすい職場作りを促すべく、厚生労働省は今秋から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座の開催を決定しました。企業の経営者や管理職、人事部といった人材に限らず、広く一般従業員を対象にした講座です。実際に職場の同僚となる人たちに、精神・発達障害に関する知識や必要な配慮について学んでもらうことで、より身近で具体的な支援体制を作ることを目的としています。「今年度内に2万人の受講およびサポーターの養成を目指す」(厚生労働省)とのことです。毎年、厚生労働省が発表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、精神・発達障害者の雇用は2006年から年々増加しています。そのような中、厚生労働省は精神障害者の雇用義務化に伴ない、今年5月に民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率の段階的な引き上げを決めました。今まで以上に精神・発達障害者の雇用機会が増え、その人数も増えることが予想されています。一方で、厚生労働省が行った2013年の障害者雇用実態調査によれば、精神障害者の平均勤務年数は約4年。身体障害者のそれが約10年であることと比べても、職場の定着率は高いとは言えません。主な理由は「職場の人間関係」にあると考えられています。例えば、同調査では、精神障害があり、転職を経験した人のうち、半数以上は転職の理由を「個人的理由」だと回答しています。さらに具体的な理由を複数回答で選択してもらうと、「職場の雰囲気や人間関係」と答えた人が33.8%と最も多い結果となりました。こうした状況を受け、「職場の同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮をしていくことが重要であろうと考え、人事担当者や障害者雇用担当者を中心に行っていた従来のセミナーに加えて、一般の従業員の方を主な対象に、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者=精神・発達障害者しごとサポーターになっていただこうと考えました」(厚生労働省障害者雇用対策課)とのことです。厚生労働省は約4,300万円の予算を拠出し、今秋から随時、講座を開催していく予定です。誰が講座を受けられるのかこの講座は、企業の雇用者であれば、誰でも受講可能です。受講時間は2時間程度で、特に企業は受講や受講人数を義務付けられてはいません。有志による受講となっています。修了者には「精神・発達障害者しごとサポーター」として、パソコンにはることができるステッカー(写真)や首からかけるストラップなどの「精神・発達障害者しごとサポーターグッズ」の進呈が予定されています。Upload By 発達ナビニュース精神・発達障害者しごとサポーター養成講座では、具体的に「精神疾患(発達障害を含む)の種類」、「精神・発達障害の特性」、「共に働く上でのポイント(コミュニケーション方法)」を学びます。これらの内容について75分程度の講義で学んだ後、15分から45分程度の質疑応答を行う構成となっています。養成講座の講師は普段から、精神・発達障害のある方の就労支援をしているハローワークの職員が担当します。精神・発達障害者サポーターの役割は?出典 : ここで、改めて理解しておかねばならないのは、「精神・発達障害者しごとサポーター」は特別に何かの義務や責任を負う資格ではないということです。サポーターになったら、「○○をしなければならない」といったことは決まっていません。また、しごとサポーターは障害のある特定の同僚を一人で支援しなければならないといったものでもありません。確かに、精神・発達障害者しごとサポーターがいることで、職場で精神障害のある人や発達障害のある人が働く上で、周囲から正しい理解や配慮が受けられるようになり、より働きやすい職場に変わっていくことが期待されます。しかし、障害の有無にかかわらず、共に働くことができるような職場の実現のためには、精神・発達障害者しごとサポーターに特別な役割を求めるのではなく、講座を受けていない方も一緒に職場の雰囲気作りにかかわっていくことが大切です。精神・発達障害者サポーターに関する問い合わせ先企業に勤めている方であれば、勤務先や身近身近に精神・発達障害者で働いている方がいなくても、誰でも講座に参加できます。「ぜひ参加したい」と思われた方はお住まいの地域の都道府県労働局にお問い合わせください。講座は、厚生省があらかじめ指定した会場で行われるものだけでなく、講師が事業所を訪れて行う「出前講座」も用意されています。出前講座に関しても、問い合わせ先は地域の都道府県労働局となっています。養成講座では、精神・発達障害について学ぶだけでなく、精神・発達障害者を雇用する上での実際の困りごとについて質問したり、ハローワークの精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家に相談するきっかけを作ったりできます。以下のサイトで、養成講座に関する各地域の問い合わせ先を確認できます。より詳しい情報や、なにかわからないことがあれば、気軽に問い合わせてみましょう。障害者雇用対策施策紹介事業主の方へ|厚生労働省しごとサポーター養成講座リーフレット
2017年09月25日精神障害とは出典 : 日本語の「精神障害」という言葉には統一された定義がなく、診断基準や法律などの文脈によりそれぞれ意味が異なりますが、大きく分けて医療的意味(disorder)と福祉的意味(disability)の2つに分類できます。disorderもdisabilityも日本語では「障害」と訳されていますが、医療的意味の精神「障害(disorder)」と診断されたからといって、必ずしも福祉的な意味の精神「障害(disability)」があるとは限りません。例えば、軽い症状があり医療の介入が必要でも、服薬などにより障害がない人と同じように働くことができている場合、医療的意味の精神障害(disorder)であっても福祉的なサービスを必要とする精神障害(disability)があるわけではないといえます。また、福祉の対象としての障害disabilityは、環境を変えることにより軽減することもできます。以下それぞれの意味を説明します。医療的な側面からみた「精神障害(disorder)」の意味は、 狭義には、ある特定の生体機能の乱れや個人的苦痛があるが、その病態がはっきりと特定されていないものをいいます。ここで言う精神障害とは精神の不調一般を指すものと考えると分かりやすいかもしれません。参考文献:大野裕/著『精神医療・診断の手引き―DSM-IIIはなぜ作られ、DSM-5はなぜ批判されたか』2014年 金剛出版/刊福祉的な側面から見た精神障害は、精神の不調により継続的に 日常生活または社会生活に相当な制限を受ける方のことを指します。精神の不調そのものへのアプローチは医学的なものになりますが、精神の不調と密接に関係する日常生活や社会生活での困難は行政などによる福祉的なアプローチが必要になります。福祉的な意味で「障害」を捉えると、その障害(disability)から生じる困りごとは、周囲の環境が整っていないために起っている、ともいえるのです。参考文献: 野中猛/著 『心の病 回復への道 (岩波新書) 』 2012年 岩波書店/刊参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊行政における精神障害者と支援出典 : 行政における精神障害者の意味は、大きく分けて2つに分けられます。1.医療の介入を必要とする、いわゆる精神疾患がある者(医療的意味)2.精神疾患の影響で日常生活面で問題を抱える状態である者(福祉的意味)これらの精神障害者に医療面と福祉面それぞれからの支援を行うため、下記のような法律や制度が定められています。参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊◇精神保健福祉法(正式名称: 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)精神保健福祉法は、精神障害がある人の医療と保護や、社会復帰、自立の促進のための援助などにより、精神障害者のための福祉の整備や精神保健の向上を目的とした法律です。精神障害者保健福祉手帳制度や、措置入院、医療保護入院などの入院形態の規定、精神保健福祉センターの設置などが定められています。リンク:精神保健福祉法について|厚生労働省HP◇障害者基本法障害者基本法は、障害がある人の法律や制度についての基本的な考え方を示した法律です。障害があろうとなかろうと、全ての人が互いに尊重し合い共生する社会の実現のために、障害のある人の自立と社会参加を支援する法律や制度に関する基本的な計画(障害者基本計画)を立てることや差別の禁止、療育や職業、雇用、住宅における支援制度を整えることなどが定められています。また、障害者基本法第4条の「差別の禁止」をより具体的に規定した法律に、障害者差別解消法というものがあります。この法律では、障害があるという理由で障害者への商品やサービスの提供を拒否することを「不当な差別的扱い」とし、障害者から配慮を求める意思表明があった場合は過度な負担になりすぎない程度な個別の調整ー「合理的配慮」を行うことが義務付けられています。詳しくは以下の記事をご参照ください。◇障害者総合支援法(正式名称: 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)障害者総合支援法は、障害がある人が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を送ることを目的とし、障害福祉サービスの充実や地域生活支援事業、その他の必要な支援を行うことが規定されている法律です。全国の障害福祉サービス事業所の一覧です。是非ご活用ください。リンク:障害福祉サービス事業所情報|WAM NET HP参考:「障害者総合支援法」制定までの経緯と概要について|WAM NET HP精神障害にはどんな種類があるの?出典 : 精神障害にどんな障害が含まれるのかは診断基準や使用される文脈や制度によっても異なります。ここでは、国で採用している国際的な疾病分類『ICD-10』のなかで、いわゆる心の不調について記されている第五章「精神及び行動の障害」の分類を紹介します。障害者手帳や自立支援医療(精神通院医療)の申請の際に必要な診断書にICDの診断コードの記載が必要となるなど、現在の日本の行政における精神障害の概念として用いられることが多い分類です。ICDでは、身体疾患から精神障害にわたって網羅的な分類を設定し、「ICDコード」と呼ばれるコードを付与しています。以下の表は2003年改訂版ICD-10における「ICDコード」と中間分類項目の名称の対応リストです。F00-F09症状性を含む器質性精神障害F10-F19精神作用物質使用による精神及び行動の障害F20-F29統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害F30-F39気分[感情]障害F40-F48神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害F50-F59生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群F60-F69成人の人格及び行動の障害F70-F79知的障害〈精神遅滞〉F80-F89心理的発達の障害F90-F98小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(引用:第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99) |厚生労働省HP)以上の中間分類の概略などや、下位分類については以下のリンクで確認できます。参考:ICD-10(2013年版)準拠内容例示表|厚生労働省HP参考ページ:第5章 精神及び行動の障害 (F00-F99)|医療情報システム開発センターHP精神障害と知的障害・発達障害との関係は?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を意味します。発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで日常生活に様々な困難が生じ、それらが持続する状態を意味します。ICDやDSMなどの国際的な診断基準においては、知的障害も発達障害も、精神障害(mental disorder)の枠組みに入っています。精神障害は精神の不調一般を指す広い概念であるのに対し、知的障害と発達障害は範囲が限定されているのです。一方、行政や福祉などの場面においては、法律や支援サービスごとに対象となる範囲が異なります。例えば、上述の精神保健福祉法での「精神障害」には知的障害が入っていますが、この法律の手帳制度である精神障害者保健福祉手帳の対象者には知的障害は入りません。行政、福祉面ではそれぞれの法律やサービスごとに、自分が対象であるかどうか見極める必要があります。精神障害者保健福祉手帳出典 : 精神障害者保健福祉手帳とは、所持している人が一定程度の精神障害がある状態であることを認定するものです。精神障害のある方が自立し、社会参加を積極的に行えるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。取得することで様々なサービスや割引・給付が受けられるようになるほか、教育を受けたり就労するにあたり配慮や支援を受けやすくもなる、とても便利な制度です。詳しくは以下の記事をご参照ください。精神障害の等級出典 : 精神障害の程度を定める等級には、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級があります。精神障害者保健福祉手帳は1級、2級、3級の3つの区分があります。・1級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級....精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級....精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの出典:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準|厚生労働省HP精神の障害による障害の程度は、国民年金の場合は1級と2級、厚生年金の場合は1級から3級に加え障害手当金という等級もあります。・1級…日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級…日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの・障害手当金…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの詳しくは以下のリンクをご参照ください。参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP同じ「等級」という言葉から混同しがちですが、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物です。障害年金の等級も、重いものから1級、2級、3級とありますが、制度が異なるので認定基準も異なります。とはいえ、概ね手帳の等級と障害年金の等級は重なるようです。参考:治療や生活に役立つ情報|みんなのメンタルヘルスHP詳しくは以下の記事を御覧ください。以上の等級の他にも、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの種類や量を市町村が決定するための障害支援区分という基準もあります。精神障害のある人が受けられる福祉サービス出典 : ここでは、総合支援法に基づく障害福祉サービスの一部をご紹介いたします。◇行動援護その方が何らかの行動をする際に生じうる危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時における移動中の介護や排泄、食事などの介護、その他日常生活での行動の援助が行われます。精神障害による行動上の著しい困難があり、常時介護を必要とする場合に利用できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。参考:行動援護|独立行政法人福祉医療機構HP◇生活介護生活介護では、介護を常に必要としている方に対し、入浴や排泄、食事などの日常生活の援助や、創作的活動や生産活動の機会の提供、各種相談などを、主に日中において行います。参考:生活介護|独立行政法人福祉医療機構HP◇精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)家庭など、居住している場所にホームヘルパーを呼び、食事や入浴、その他日常生活の援助を受けることが出来ます。利用対象者は、原則として、精神障害者保健福祉手帳の保持者あるいは、障害者年金を受けている方で、かつ、日常生活に支障がある人です。◇施設入所支援施設入所支援では、主として夜間において、食事や排泄などの日常生活の援助や相談が行われます。日中の訓練などサービスも同じ施設で行われます。障害福祉サービスの内容|厚生労働省HP◇共同生活援助(グループホーム)共同生活援助とは主に夜間において少人数での共同生活を援助するサービスです。個別の支援計画を立てた上で、相談や入浴、排泄などの日常生活の援助を行います。共同生活援助|独立行政法人福祉医療機構HP◇短期入所(ショートステイ)在宅の精神障害者を対象に、介護者の事情で一時的に介護困難の場合利用することができます。夜間を含め施設で、入浴や食事などの日常生活の援助が行われます。利用が可能な期間は基本的に7日以内で、事情がある場合は必要最小限の範囲で延長可能です。グループホームなどの夜間のサービスは、自立訓練や就労移行支援、地域活動支援センターなどの昼間のサービスと組み合わせて利用するのが一般的です。◇相談支援相談支援にはサービス利用支援、継続サービス利用支援、地域移行支援、地域定着支援の4種類あります。障害福祉サービスを利用するには、「サービス等利用計画」を立てる必要があります。この計画を作成するのを支援するのがサービス利用支援で、利用したサービスが効果的かどうかの見直しを行う継続サービス利用支援です。地域移行支援では施設や病院から地域への移行の支援を行い、地域定着支援では地域生活の継続のための支援が行われます。その他の福祉サービスは以下のサイトをご参照ください。参考:サービス一覧/サービス紹介|WAM NET HP障害年金出典 : 障害年金とは、病気やケガにより生活や仕事が制限されている方が受け取れる年金のことで、国から委託を受けている日本年金機構により運営されている制度です。障害年金を受ける条件は、その障害の原因となった病気やけがについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金あるいは厚生年金に加入していることです。初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金、厚生年金に加入していた方は障害厚生年金が受け取ることが出来ます。詳しくは以下の記事をご参照ください。生活保護の障害者加算出典 : 生活保護制度とは、資産や能力など全てを活用しても生活が困難な方を対象としたもので、健康で文化的な最低限度の生活ができるような保護を行い、自立を奨励する制度のことです。障害の程度にもよりますが、精神障害者の方が生活保護を受給した場合、受給費に加算される可能性があります(障害者加算)。加算額は、現在住んでいる場所と障害の程度で決められます。Upload By 発達障害のキホン◇現在住んでいる場所現在住んでいる場所は、在宅の場合と入院や社会福祉施設・介護施設に入所している場合に分けられ、在宅の場合はご自身がお住まいの場所がどの級地に当たるのか調べる必要があります。以下のリンクにて全国の級地区分が調べられます。リンク:級地区分(H.29.4.1)|厚生労働省HP◇障害の程度障害の程度は原則、国民年金法(昭和34年政令第184号)別表に定められる等級により決まるとされていますが、この等級は精神障害者手帳における等級と重なるとされています。参考:精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について|厚生労働省法令等データベースサービスHP参考:国民年金・厚生年金保険障害認定基準平成28年6月1日改正|日本年金機構HP参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP参考:国民年金・厚生年金保健精神の障害に係る等級判定がガイドライン|日本年金機構HP精神障害者の雇用・就労支援出典 : 日本において、全ての事業主は一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇う義務があります。この「障害者」は今まで身体障害者と知的障害者に限られていましたが、平成28年改正障害者雇用促進法により、2018年4月からは精神障害者(発達障害を含む)も加わることになりました。障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要 |厚生労働省HP現在の法定雇用率は以下の通りです。民間企業:2%国、地方公共団体等:2.3%都道府県等の教育委員会:2.2%障害者の法定雇用率が引き上げになります|厚生労働省HP◇就労移行支援事業者就労移行支援は障害がある方の就労をサポートする障害福祉サービスです。就労を希望している障害・難病がある方に対して、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアを行います。企業などでの就労または開業を希望する方で、就労が可能であると見込まれる65歳未満の方が対象です。利用期間は原則2年となっています。◇公共職業安定所(ハローワーク)公共職業安定所とは、職業紹介や就労支援のサービスを行う無料で利用できる行政機関です。障害者を対象とした求人情報の提供が受けられます。仕事の探し方など、就職に関する様々な相談に乗ってもらえるだけでなく、職業訓練の仲介なども行っているので、お気軽に御相談ください。全国ハローワークの所在案内|厚生労働省HP◇障害者就業・生活支援センター就業や、それに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者を対象に、相談や職場・家庭訪問などを行い支援する機関です。就労支援の面では就職に向けた準備支援や、求職活動支援、職場定着支援から関係機関との連絡調整などをし、生活支援の面では生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、関係機関との連絡調整などをします。参考:障害者就業・生活支援センター事業について|厚生労働省HP◇地域障害者職業センター各都道府県に設置されています。障害者の就労を支援するために、ハローワークや病院、福祉施設などの関係機関との連携を行いながら、地域に密着した職業リハビリテーションを行う施設です。具体的には、職業能力などの評価や支援計画の作成、就職活動の相談、短期間の作業体験や事業所見学などが行われます。参考:地域障害者職業センターの精神障害者総合雇用支援のご案内|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP◇障害者職業能力開発校障害者職業能力開発校は、一般の職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度障害者などにを対象し、その障害に対応した訓練を実施しています。参考:障害者を対象とした職業訓練|厚生労働省HP◇ジョブコーチ支援実施機関職場適応援助者(ジョブコーチ)が、利用者の職場に訪問し、職場への適応・定着を支援します。障害者本人への支援だけでなく、障害者を雇用する事業主や障害者の家族に対する助言などの支援も行います。地域障害者職業センターや、障害者の就労支援をする社会福祉法人や、障害者を雇用する企業に在籍していることがあります。参考:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|厚生労働省HP◇就労継続支援A型事業者就労移行支援を利用したが企業への一般就労に結びつかなった等の理由があり、ある程度の支援があれば就労することができる方を対象としたサービスです。施設と利用者で雇用契約を結び、働くことができます。利用期間に制限はありません。◇就労継続支援B型事業者就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験がありますが、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。利用期間に制限はありません。ケースごとの以上の施設を利用する際の流れなどについては以下のサイトをご参照ください。参考:障害者が就職・定着するまでの標準的な支援|厚生労働省HP精神科訪問看護/精神科デイ・ケア(通院以外の治療)出典 : ここでは、通院・入院以外の治療である精神科訪問看護と精神科デイ・ケアを紹介いたします。いずれも在宅での生活を支えるサービスで、自立支援医療(精神科通院医療)制度を利用すると医療費が原則1割負担になります。◇精神科訪問看護自宅などの居住している場所で保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などにより行われる療養上の世話または必要な診療の補助を行うことを指します。具体的には病状の観察と情報収集や日常生活の維持、対人、家族関係の調整や精神症状の悪化の予防、社会資源活用の補助等が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。訪問看護について|厚生労働省HP◇精神科デイ・ケア精神科デイ・ケアは、社会で生活するために必要な能力の回復を目的として、グループでの治療をおこなうものです。利用時間や利用開始時間に応じてデイ・ケア、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイトケアなどの種類があります。統合失調症やうつ病などの疾患別プログラムや、高齢者や思春期、青年期などの年代別プログラム、家事能力や復職支援などの目的別プログラムなど、様々な内容があります。施設により内容が異なります。保健所で行っている場合は費用がかかりませんが、その他の場合はかかります。とはいえ、自立支援医療(精神通院医療)を利用すれば、自己負担額は減ります。参考:精神科デイ・ケア等について|厚生労働省HP精神障害について悩んだときは出典 : ◇精神保健福祉センター…各都道府県及び政令指定都市に設置されている精神保健や精神障害者の福祉に関する機関です。こころの悩み全般に専門家がこたえてくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで全国の精神保健福祉センターを検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP◇いのちの電話 …一般社団法人いのちの電話連盟では、無料でインターネット相談や電話相談を実施しております。詳しくは以下のリンクをご参照ください。リンク:いのちの電話の相談方法|一般社団法人いのちの電話連盟HP◇地域生活支援センター …身体障害者、知的障害者、精神障害者及びその他の障害者の自立と社会参加や家族の精神的サポートを行うための支援施設で、医療とは異なる視点で解決策を考えてくれます。◇勤労者の相談窓口 …勤務先の保健師や産業医や、産業保健推進センターの相談事業が利用できます。産業保健推進センターでは精神科医や心理士が専門的な相談に乗ってくれます。◇保健室、保健管理センター、教育センター …教育の場でのいじめなどの問題に個別対応してもらえます。◇家族会 …家族会とは、精神疾患に苦しむ身内がいる家族が集まり、悩みを共有したり情報交換をする会です。大きく分けて、病院を基盤とするものや、地域を基盤とするもの、ほかにもたくさんの種類の家族会が存在します。孤立感をなくすという意味でも、参加には価値があります。◇患者会 …同じ病気や障害に苦しむ人たちが集まり、情報交換や交流などの活動を行います。悩みの共有や症状への対処法などを伝えあえる場は、精神的な支えにもなります。参考:Q. 精神科の医療機関以外に、こころの問題の相談に乗ってくれる場所はあるのですか?|日本精神神経学会HP◇こころもメンテしよう厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)を受けて開設された10代、20代向けのメンタルサポートサイトです。こころもメンテしよう|厚生労働省HP◇みんなのメンタルヘルス総合サイト厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)や「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」のとりまとめ(平成22年5月)を受け開設された一般市民向けのサイトです。病気や症状の説明や、医療機関、相談窓口、各種支援サービスなどの紹介がされています。みんなのメンタルヘルス|厚生労働省HP◇こころの耳厚生労働省の委託事業として一般社団法人日本産業カウンセラー協会が開設した働く方向けのメンタルヘルスサイトです。ストレスチェックやこころの病克服体験記、ストレス対処法まで詳しく、分かりやすく紹介されています。ページ下部にある「コンテンツ一覧」から探すとわかりやすいです。こころの耳◇日本精神神経学会公式HP一般の方向けのページでは、一部の精神疾患についての解説や、市民公開講座などの募集がされています。一般の方へ|日本精神神経学会HP◇悩み別相談窓口などの支援情報検索サイト以下のリンクでは、悩み別に相談窓口などの支援情報を検索出来ますのでご活用ください。支援情報検索サイト|厚生労働省HP悩みや状況を選ぶ|いのちと暮らしの相談ナビHPまとめ出典 : 精神障害にかかってしまうと、自ら支援を求めたり、探したりすることはとても難しく思ってしまうこともあるのではないでしょうか?しかし、福祉サービスなどの支援制度を知り、活用すれば、より生きやすくなるかもしれません。ご自身で探すことが難しい場合は、精神保健福祉センターなどの相談窓口に連絡してみることをおすすめします。自分だけでは分からなかった解決策が見えてくるかもしれません。
2017年06月30日精神疾患とは?出典 : 精神疾患とは、広義に解釈すると、 なんらかの脳の働きの変化により心理的な問題が生じ、感情や行動などに著しいかたよりがみられる状態のことです。ですが、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は、普遍的かつ確立された定義がありません。使われる場面や診断基準、医師によっても定義や概念にばらつきがあり、いまもなお見解の違いで議論が行われることもあります。この記事では、こころや脳のはたらき、または発達の過程における問題により引き起こされる、思考、行動、感情のコントロールにおける医療の介入が必要な状態について、ひとまず「精神疾患」という言葉を用いて説明していきます。精神疾患についての詳しい定義やどのような種類があるかについては以下の記事をご覧ください。精神疾患の代表的な症状出典 : 精神疾患には様々な種類の疾患があり、疾患ごとに症状も大きく異なります。また症状の種類も多種多様です。とはいえ、抑うつや不安などに代表されるように、精神疾患の症状のほとんどは一般の人でも経験するよくあるものです。疾患であるかどうかを決めるのは、症状の組み合わせと症状の程度、そして症状が続いている期間です。しかし、精神疾患ごとに、それぞれ症状の組み合わせも程度も、判断の目安となる期間も異なります。以下において、精神疾患の代表的な症状を紹介いたしますが、あくまでも参考程度にとどめていただき、もし少しでも不安になった場合は専門機関に相談するようにしましょう。・抑うつ気分:つらい・悲しい・憂鬱・むなしいなどの気持ちになり、気力がでない状態です。・幻覚:実際には刺激や対象が無いのに、それについて生じている知覚のこと。幻聴が代表的ですが、幻視、体感幻覚などもあり、幻聴にもさまざまな種類があります。・妄想:根拠が無い非合理で訂正不能な思いこみ。本人は妄想とは認識しにくいものです。・離人:自分が自分であるという実感がしない、あるいは外界と自分との間に奇妙な隔たりを感じてしまう状態です。・強迫:止めたい気持ちがありながらも、一方でそれをやらなければ気が済まないようにも感じ、同じ思考や行為を繰り返してしまうことを指します。精神疾患をチェックする方法はあるの?出典 : 全ての精神疾患をご自身でチェックする方法はありませんが、うつ病などの個々の病気を評価する尺度はあるので、以下に紹介いたします。ここで注意していただきたいのは、以下に紹介するチェックリストは、何点以上なら病気であると判断するものではないということです。あくまでも、その傾向があるということを示すだけなので、チェック結果の意味づけについては医師と話し合う必要があります。チェックして少しでも不安に思った場合は結果をもって医療機関に相談しましょう。以下のリンクでは、厚生労働省がストレスチェックを実施する際に推奨する「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づいて制作されたテストが簡単に行えます。職場でのストレスレベルを約5分程度で測定することができます。リンク:5分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳HPCES-Dは一般人がご自身でのうつ病を発見する目的で米国国立精神保健研究所により開発された自己評価尺度です。質問項目は20問で所要時間は10-15分、対象年齢は15歳からとなっています。リンク:CES-Dによるうつ病症状の簡易チェック|せせらぎメンタルクリニックHP精神疾患かな?と思ったら、どの病院の何科に行けばいいの?出典 : まず患者本人およびその家族から、主訴(何に困っているのか)、現病歴、既往歴(以前かかっていた病気のこと)、家族歴、生活史、家庭環境や職場環境などを聞き出します。次に、集めた情報や診察室で観察される症状から、患者さんが伝統的精神疾患の分類のどれに属するのか総合的に診断を決めていきます。おおむね以上のような流れで進みますが、医師により異なる手順をとる場合もあります。精神疾患をみる診療科は精神科や精神神経科、心療内科や神経内科など、かなり名称にばらつきがあります。◇精神疾患が心配なら精神科、精神神経科、神経科これらの科は、名前が異なりますが診ている病気は精神疾患で共通しています。◇心理的な問題が関与している身体症状を解消したいなら心療内科心療内科は、心理的な問題が原因で、胃潰瘍などの身体的な症状が出ている場合(いわゆる心身症)を対象としています。とはいえ、軽いうつ病などの一部のこころの病気を診ている場合もあるので、もし通いたい心療内科がある場合は、事前に電話して、自分が抱える悩みが対象かどうか調べる必要があります。◇認知症やてんかんが疑われるなら神経内科も神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉の病気を主な対象としています。認知症やてんかんなどは精神科だけでなく神経内科でも診ています。一部の神経内科では、こころの病気を診ている場合もあるので、気になる場合は電話して聞いてみる必要があります。一般的には看板ごとに以上のような住み分けがされていますが、診療科名からどのような病気を対象としているのか確かめにくいこともあるので、あらかじめ電話やHPで確認するとよいでしょう。参考HP:医療機関の探し方、選び方|厚生労働省HP精神疾患かな?と思った時に、病院を選ぶポイント出典 : どの医療機関を受診するか迷ったときのポイントを紹介いたします。医療機関により、どのような病気を専門としているか異なるので、まず、その医療機関が何を専門としているのか調べる必要があります。以下のリンクでは診療科目や診療日、診療時間、どのような疾患を治療しているかなどの全国の医療機関の詳細を検索できます。是非ご活用ください。医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について|厚生労働省HP精神科医にも、統合失調症に詳しい医師や発達障害の治療に慣れている医師など、それぞれ得意分野があります。受診前に、電話やインターネットのHPなどで問い合わせたり、どのような分野を得意としている医師が在籍しているのか調べたりすることをおすすめします。医療機関の専門性の他に、どのような治療プログラムがあるのかも調べることをおすすめします。医師の診察とは別に、カウンセリング、作業療法、その他様々な治療プログラムを行っている場合があります。また、その医療機関がどのようなスタッフを配置しているのかも医療機関の性質を知る上で参考になります。カウンセリングを通じて心理的な問題を解決に導く臨床心理士 、デイケアなどで心身のリハビリテーションに携わる作業療法士 、言語機能の回復や発達に関わる言語聴覚士、これらの多職種や外部機関との連携をとり社会復帰をサポートする精神保健福祉士など、精神医療に携わる職種は多岐にわたります。自分やご家族には今後どのようなサポートが必要なのか見極め、状況にあった医療機関を選びましょう。作業療法士ってどんな仕事?|日本作業療法士協会HP精神疾患は通院治療が必要な期間が長くなることが多いので、通いやすさを十分考慮する必要があります。駅から遠かったり、受診可能な時間が自分の生活と合わなかったりすると、どうしても通いづらくて治療中断してしまう可能性もあるので、自分が通い続けられる場所かよく調べる必要があります。診察・治療を担当する医師との相性は特に大切です。実際に医師と話してみて、ご自身がどのように感じるのかで相性の良し悪しを判断しましょう。医師に対して不信感を持ったまま診療を続けるより、信頼関係を構築できる医師を見つける方が、治療もうまくいきます。どうしても相性が悪いなと思ったり、医師の説明に納得が行かない場合は、セカンドオピニオンを求めてみるのもひとつの方法です。その場合、紹介状は必ずしも必要ではありませんが、新たに受診してみようとする医療機関に対し、セカンドオピニオン目的での診察を受けてくれるかどうか予め尋ねた方が良いでしょう。最初にかかった医療機関に全てお任せするのではなく、 医療を使いこなすという姿勢 が大切です。どの病院のどの診療科に行けばいいのか迷ったり、そもそも受診すべきか迷ったりすることもあるのではないでしょうか?そんな時は、お近くの精神保健福祉センターや保健所に連絡すると、専門家が相談に乗ってくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで、全国の精神保健福祉センター、保健所を検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP保健所一覧|全国保健所長会HP夜間休日精神科救急医療機関案内窓口|厚生労働省HP精神疾患の治療法出典 : 精神疾患の治療法は、大きく分けて身体的治療と心理的治療の2つに分かれます。以下、それぞれについて紹介いたします。代表的なものが、薬物を用いた薬物療法です。他に、高照度光刺激療法、修正型電気けいれん療法、経頭蓋磁気刺激法(けいとうがいじきしげきほう)などの身体に物理的に働きかける療法を指します。身体療法とは対照的に、心理的な手段を用いて患者の心身に働きかけるもので、さまざまな理論・アプローチがあります。たとえば、行動をよりよい方向に改善していく行動療法、患者のかたよって硬直した思考パターンを変えていく認知療法、無意識の葛藤や防衛を分析していく精神分析療法、クライエントの訴えを受容することに徹する来談者中心療法などが代表的です。それらの技法をさまざまに取り入れた折衷的な方法が、日本における「カウンセリング」の主流となっています。その他にも自律訓練法、箱庭療法、遊戯療法、森田療法などがあります。医療機関で精神科医が行う面接や心理的治療を「精神療法」、心理士が行うセラピーを「心理療法」と呼ぶことが一般的です。参考:メンタルヘルス関係|こころの耳HP日本精神神経学会では、精神科の入院が適応となる状態を以下のように記しています。・幻覚妄想状態・著しい興奮状態・躁状態・重症な自殺念慮・長く続いている重症うつ状態などです。(引用:Q.入院が必要となるのは、どのような時でしょうか?|日本精神神経学会HP)入院した場合、身体的治療や狭義の心理的治療に加えて、生活、社会機能の改善を目的に、集団精神療法やレクリエーション療法、作業療法、家族への心理教育プログラムなどがおこなわれます。精神疾患に苦しむ人への対応の仕方出典 : こころの不調に悩む方と接するときに基本となるのは、 話を真摯に聞くことです。その人が今どんな気持ちでいるのか、何に悩んでいるのかじっくりと時間をかけて話を聞きます。自分の価値観を押し付けたり、否定したりせず、ただただ聞き手に徹します。こころの不調に悩んでいるときは、ただ自分の気持ちを聞いてもらい、共感してもらうことで、いくらかでも癒やされるものです。その際、気をつけるべきなのは、本人の苦しみを完全にわかっていると思い込んでしまうことです。本人が味わっている苦しみを、その人と全く同じように感じることは不可能です。「わたしはあなたのことをわかっている」という思い込みは、一方的な価値観の押し付けにつながりやすく、本人を傷つけてしまうこともあります。本人が抱えている問題を完全に理解することはできないことを心に留めつつ 回復してほしいと願っていること、そして、その人が悩んでいる問題は、その人自身の弱さや性格によるものではなく、もしかしたら医学的な問題であり専門家による治療が必要かもしれないこと を伝えます。適切な援助を受けることがどれほど有益なのか具体的に伝え、信頼できる支援者を探す手伝いをすることが大切です。精神疾患に苦しむ方が受けられる経済的な支援出典 : 精神疾患にかかった場合、障害者手帳の交付や医療費助成などの支援を受けられます。自立支援医療(精神通院医療)とは精神疾患がある方で、かつ、通院による継続的な治療が必要な場合、その通院医療にかかわる医療費負担が原則1割になる制度です。詳しくは、以下のリンクをご参照ください。自立支援医療(精神通院医療)について|厚生労働省HPこの制度は、負担の上限金額を超えた高額な医療費を支払った際に、その超過分の払い戻しを受けることのできる健康保険制度です。以下のハンドブックの12-15ページをご参照ください。精神障がい者と家族に役立つ社会資源ハンドブック|厚生労働省HP重度の心身の障害がある方が、保険証を使って病院に受診した場合、自己負担金が助成される制度です。各自治体ごとに、対象となる障害やその度合い、支援内容がかなり異なります。また、この助成を受けるにあたり注意点が2つあります。1点目は平成27年8月1日以降に新たに障害者の診断を受けた場合には、助成の対象とならないことです。2点目は、所得制限が定められているため、生計を同じくしている人の所得が一定額以上の場合には助成の対象外となることです。詳しくはお近くの市役所などにご相談ください。精神障害者保健福祉手帳を取得した場合、等級にもよりますが所得税や住民税、贈与税などの控除や生活保護の障害者加算、各種手当てが受けられます。詳しくは以下の記事をご参照ください。「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働く上で、あるいは日常生活を送る上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。障害年金の障害認定基準は障害者手帳の障害認定基準と異なります。そのため障害者手帳で1級でも、障害年金では異なる場合があります。詳しくは以下の記事をご参照ください。精神疾患に苦しむ方が受けられる生活面の支援出典 : その方が何らかの行動をする際に生じうる危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時における移動中の介護や排泄、食事などの介護、その他日常生活での行動の援助が行われます。精神障害による行動上著しい困難があり、常時介護を必要とする場合に利用できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。参考:行動援護|独立行政法人福祉医療機構HP生活介護では、介護を常に必要としている方に対し、入浴や排泄、食事などの日常生活の援助や、創作的活動や生産活動の機会の提供、各種相談などを、主に日中において行います。参考:生活介護|独立行政法人福祉医療機構HP家庭など、居住している場所にホームヘルパーを呼び、食事や入浴、その他日常生活の援助を受けることができます。利用対象者は、原則として精神障害者保健福祉手帳の保持者、あるいは障害者年金を受けている方で、かつ、日常生活に支障がある人です。施設入所支援では、主として夜間において、食事や排泄などの日常生活の援助や相談が行われます。日中の訓練などサービスも同じ施設で行われます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。障害福祉サービスの内容|厚生労働省HP共同生活援助とは主に夜間において少人数での共同生活を援助するサービスです。個別の支援計画を立てた上で、相談や入浴、排泄などの日常生活の援助を行います。詳しくは以下のサイトをご参照ください。共同生活援助|独立行政法人福祉医療機構HP在宅の精神障害者を対象に、介護者の事情で一時的に介護困難の場合利用することができます。夜間を含め施設で、入浴や食事などの日常生活の援助が行われます。利用が可能な期間は基本的に7日以内で、事情がある場合は必要最小限の範囲で延長可能です。グループホームなどの夜間のサービスは、自立訓練や就労移行支援、地域活動支援センターなどの昼間のサービスと組み合わせて利用するのが一般的です。精神科訪問看護/精神科デイ・ケア(通院以外の治療)出典 : いずれも在宅での生活を支えるサービスで、上記の自立支援医療(精神科通院医療)の対象です。自宅などの居住している場所で保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などにより行われる療養上の世話または必要な診療の補助を行うことを指します。具体的には病状の観察と情報収集や日常生活の維持、対人、家族関係の調整や精神症状の悪化の予防、社会資源活用の補助等が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。参考:訪問看護について|厚生労働省HP精神科デイ・ケアは、社会で生活するために必要な能力の回復を目的として、グループでの治療をおこなうものです。利用時間や利用開始時間に応じてデイ・ケア、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイトケアなどの種類があります。統合失調症やうつ病などの疾患別プログラムや、高齢者や思春期、青年期などの年代別プログラム、家事能力や復職支援などの目的別プログラムなど、様々な内容があります。施設により内容が異なります。保健所や精神保健福祉センターで行っている場合は費用はかかりませんが、医療機関の場合はかかります。とはいえ、自立支援医療(精神通院医療)を利用すれば、自己負担額は減ります。参考:精神科デイ・ケア等について|厚生労働省HP精神疾患に苦しむ方が受けられる社会復帰の支援出典 : 地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上などのため、一定の支援が必要な方を対象に、入浴・排泄・食事などの日常生活を営むために必要な訓練や相談などの支援を行います。たとえば、入所施設を退所した方や病院を退院した方、特別支援学校を卒業した方などが例に挙げられます。自立訓練(生活訓練)対象者のうち、就労移行訓練などの日中のサービスを利用している方が対象です。地域での生活に向けて一定期間、住まいの場を提供して帰宅後における生活能力などの維持・向上のための訓練その他支援を行います。一般企業などへ就職を希望する方に、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練を行います。詳しくは、以下の記事をご参照ください。一般企業などでの就労が難しい人に働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のための必要な訓練を行います。雇用型のA型と、非雇用型のB型があります。創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流などを行う通所施設です。まとめ出典 : 精神疾患の症状ははっきり目に見えるものではありません。症状のつらさだけでなく、周囲の方からの理解を得ることができずにつらい思いをされている方も多いのではないでしょうか?もし、長らく精神の不調に苦しまれているのなら、一度医療機関や相談機関に話を聞きに行くことをおすすめします。自身にどのような傾向があるか知り、その対処法を知ることで、自分だけでは気づけなかった突破口が見つかるかもしれません。良い専門家に出会うかどうかで、生活が変わります。自分の苦しさを理解してくれる相性の良い専門家に出会うまで、諦めずに探してみることをおすすめします。難しいことですが、気長に少しずつ、出来ることから着実に、ときには人の手を借りながら問題を一つひとつ解決していく心持ちが必要なのかもしれません。こころの不調は回復に時間がかかることが多いので、支える側の負担も無視できないものとなります。本人と良好な関係を保ち、その方と共に生きていくためには一人で抱え込まないことが大切です。家庭の中だけで解決しようとせず、少し勇気を出して、医療機関や支援サービス、経済的支援や相談窓口などを積極的に活用することをおすすめします。
2017年05月18日精神疾患とは?精神障害とは何が違うの?出典 : 精神疾患とは、広義に解釈するとなんらかの脳の働きの変化により心理的な問題が生じ、感情や行動などに著しいかたよりがみられる状態のことです。この意味合いで、一般に「心の病」や「精神病」、「精神障害」などと呼ばれるものを、より医学的に言いあらわすときに使われることが多い用語です。ですが、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は、普遍的かつ確立された定義がありません。使われる場面や診断基準、医師によっても定義や概念にばらつきがあり、いまもなお見解の違いで議論が行われることもあります。精神疾患がどのような概念を指すのか、つかわれる場面ごとの定義を見ていきましょう。精神疾患という言葉は、mental diseaseの直訳として使われます。精神医学の診断に使われるDSMなどではmental disorderの訳として「精神疾患」が使われることもあります。mental disorderは一般に精神障害とも訳されることがあるため、しばしば混乱を招きます。これらの用語にはどのような違いがあるのでしょうか?◇精神疾患(mental disease) は精神の病を指す医学用語医学における疾患(disease)とは、特定の原因、病態、症状、経過予後などが明確に結びついている場合を指します。しかし、多くの精神の病は原因を特定するのが難しいため、原因が不明な場合でも、病態・症状・経過・予後が特有なものであれば、疾患単位として精神疾患(mental disease)と呼ばれます。例えば統合失調症は、原因は不明ながらも代表的な精神疾患と位置づけられています。ところが、精神的な健康を保てない状態の中には、病態が不明確で疾患とは言い切れないものもあります。そのような場合、より広義な概念である精神障害という言葉が使われることがあります。例えば「適応障害」などです。◇精神障害(mental disorder)は症状や機能的な乱れがある状態像を指す障害(disorder) は、ある特定の生体機能の乱れや個人的苦痛があるが,疾患 (disease)と呼ぶには、その病態がはっきりと特定されていないものをいいます。そもそもdisorderとは、「調子の乱れ」といった意味であり,これに「障害」(差し障りや害がある)という重い訳語が当てられたことが混乱を招いているとも言えますが、ここではそのことを踏まえつつも、行政用語でもある精神障害という言葉を使います。◇『DSM』の日本語版ではmental diseaseを精神疾患と訳している精神医学の診断に使われることの多い診断基準『DSM』では、その第4版であるDSM-Ⅳからこのmental disorderの訳語として「精神疾患」があてられました。しかしDSMでdisorderとして紹介されているものには、狭義の精神疾患だけでなく発達障害や知的障害など疾患とはいえないものや病態が不明瞭なものも含まれています。そのため、時に精神疾患・精神障害の概念についてのあいまいさや誤解のもととなることもあり、この訳語については専門家の間でも議論が分かれています。このように、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は統一された定義がなく、使い分けについても厳密ではない場合があります。翻訳の場合は元の用語が何だったかによっても微妙にニュアンスが変わってきます。そのため、その用語がどのような意図を持っていて、どのような概念を指しているかは、その都度注意深く判断する必要があります。参考:精神看護学2精神障害をもつ人の看護/岩﨑弥生、 渡邉博幸編集/メヂカルフレンド社行政における「精神疾患」の定義も明確なものはありません。医療・福祉に関連する法律や行政は、我が国も加盟するWHOが作成したICD-10(『国際疾病分類』第10版)に準拠することが多く、『ICD-10(国際疾病分類第10版)』の第5章「精神と行動の障害」に該当するものを精神疾患としています。参考:第2回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録|厚生労働省HP参考:みんなのメンタルヘルスしかし厚生労働省・文部科学省など担当省庁ごとや、法律などの文脈により定義や概念が異なる場合もあります。精神疾患に含まれる具体的な疾患・障害もそれぞれで異なる場合があり、『ICD-10』の第5章と完全に一致しているわけではありません。また「精神疾患」と「精神障害」の明確な区別もされていない状況です。例えば、精神障害者保健福祉手帳は、第5章には該当しないてんかんとアルツハイマーが交付対象である一方、第5章に該当する薬物依存や知的障害は交付対象ではありません。厚生労働省の患者調査などの統計結果でも、「ここでの精神疾患には、ICD-10で「精神及び行動の障害」に分類されるもののほか、てんかん・アルツハイマー病を含みます。」とされています。「疾患」とは、狭義には原因や経過などが明らかになっている場合を指します。しかし、精神疾患の場合、多くは未だ原因などが解明されてないため、診察などでは精神の病一般という意味で、「精神疾患」「精神障害」のどちらも用いられることが多いようです。このような状況においては、なにが精神疾患でなにがそうでないかということの線引きを正確にすることはできません。この記事では、心や脳のはたらき、または発達の過程における問題により引き起こされる、思考、行動、感情のコントロールにおける医療の介入が必要な状態全般について、「精神疾患」という言葉を用いて説明していきます。精神疾患の種類(分類)出典 : 精神疾患にはどのような種類があるのでしょうか?精神疾患の分類する方法には、大きくわけて2つあります。こころの病を原因から分類する病因論に基づく伝統的診断と、症状から分類する操作的診断です。それぞれの診断方法ごとに分類・名称が異なります。参考:操作的診断基準(精神疾患の)両者にはそれぞれ長所もあれば短所もあるので、現在日本では多くの医師が伝統的診断と操作的診断を併用しています。以下において、それぞれの診断方法における精神疾患の分類と種類を紹介いたします。■伝統的診断における分類19世紀後半、ドイツの医学者クレぺリンは他の身体疾患と同様に、精神疾患を原因別に外因性精神疾患、心因性精神疾患、内因性精神疾患の3つに分類しました。とはいえ、心因性と内因性の区別は極めて曖昧で、明確な区別は難しいとされています。◇外因性精神疾患脳器質的な病変、ないし身体の病変によって生じるもの例:脳腫瘍、脳外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、感染症(神経梅毒など)、内分泌疾患など◇心因性精神疾患心理的な内面の葛藤あるいはその人をとりまく環境からくるもの例:解離性障害、強迫性障害、ストレス関連障害など◇内因性精神疾患脳の機能異常に基づくが、明白な原因が同定されていない、何らかの遺伝的な素因が関与していることが想定される疾患例:統合失調症、双極性障害などちなみに、クレぺリンは統合失調症と躁うつ病(双極性障害)を二大精神病としました。参考書籍:『精神病』/笠原嘉著/岩波書店/1998年伝統的診断のメリットとして、精神症状に苦しむ本人やそのご家族に病気について説明する際、原因から説明すると理解してもらいやすい点が挙げられます。一方、デメリットとしては、診断する医師により診断名が異なりやすいことがあります。また、診断名が異なるということは、その病気の研究が進まないなどの問題もあります。■比較的新しい操作的診断基準に基づく分類現在普及しているアメリカ精神医学会のDSM-5などは、原因的な面は考慮せず、症状だけから分類した診断基準(操作的診断基準)です。この操作的診断基準を用いた診断のメリットは、基準が細かく明確であることから医師間で診断名の食い違いが少ないことや、福祉職、法律家などの多職種における共有言語となることなどが挙げられます。同じ基準で協力者を集めることにより、疾患の研究が進むことも期待されます。一方、デメリットとしては、症状のみによる診断名であり、疾患の本質が考慮されていないこと、医師から患者や家族への説明がわかりにくくなる、診断基準の改訂により診断名が変わることもある、などの問題点があるとされています。また、もともと操作的診断基準は患者ではなく医療機関側の都合からつくられたこともあり、個々の患者のための診断、治療に有用ではないという批判もあります。なお、現在ある診断基準はどれも暫定的で不完全なものなので、脳科学の進歩などにより確定的な診断基準が完成されることが期待されています。◇DSM-5の分類ここでは、DSM-5における精神疾患の分類(種類)を紹介いたします。・神経発達症群/神経発達障害群・統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群・双極性障害および関連障害群・抑うつ障害群・不安症群/不安障害群・強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群・心的外傷およびストレス因関連障害群・解離症群/解離性障害群・身体症状症および関連症群・食行動障害および摂食障害群・排泄症群・睡眠-覚醒障害群・性機能不全群・性別違和・秩序破壊的・衝動制御・素行症群・物質関連障害および嗜癖性障害群・神経認知障害群・パーソナリティ障害群・パラフィリア障害群・その他の精神疾患群・医薬品誘発性運動症群およびその他の医薬品有害作用・臨床的関与の対象となることのある他の状態DSM-5に関しては、以下のリンクをご参照ください。精神疾患の症状は?出典 : 精神疾患の症状には様々な種類がありますが、そのほとんどは精神疾患でない一般の人でも経験するよくあるものです。ちょっとした気分の落ち込みや漠然とした不安感を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?疾患であるかどうか医師の診断によって決まるのは、症状の組み合わせと症状の程度、そして症状が続いている期間です。また疾患名ごとにそれぞれの度合いや組み合わせは異なります。以下において、精神疾患の代表的な症状の一部を紹介します。症状それ自体は健康な人にも生じうるものであって、これがあるから精神疾患だ、ということではありません。あくまでも参考程度にとどめていただき、もし少しでも不安になった場合は専門機関に相談するようにしましょう。・抑うつ気分:つらい・悲しい・憂鬱・むなしいなどの気持ちになり、気力がでない状態。・幻覚:実際には刺激や対象が無いのに、それについて生じている知覚のこと。幻聴が代表的だが、幻視、体感幻覚などもあり、幻聴にもさまざまな種類がある。・妄想:根拠が無い非合理で訂正不能な思いこみ。本人は妄想とは認識しにくい。・離人:自分が自分であるという実感がしない、あるいは外界と自分との間に奇妙な隔たりを感じてしまう状態。・強迫:止めたい気持ちがありながらも、一方でそれをやらなければ気が済まないようにも感じ、同じ思考や行為を繰り返してしまうこと。精神疾患をチェックする方法はあるの?出典 : 全ての精神疾患をご自身でチェックする方法はありませんが、うつ病などの個々の病気を評価する尺度はあるので、以下にいくつか紹介いたします。以下に紹介するチェックリストは、何点以上なら病気であると判断するものではないので注意が必要です。あくまでも、その傾向があるということを示すだけなので、チェック結果の意味づけは医師と話し合う必要があります。チェックをして不安に思った場合は、自分で即断せず、チェック結果を持って医療機関に相談しましょう。■CES-D うつ病(抑うつ状態)自己評価尺度CES-Dは一般人がご自身でのうつ病を発見する目的で米国国立精神保健研究所により開発された自己評価尺度です。質問項目は20問で所要時間は10-15分、対象年齢は15歳からとなっています。(以下のリンクをご参照ください)によるうつ病症状の簡易チェック|せせらぎメンタルクリニックHP■ストレスセルフチェック以下のリンクでは厚生労働省がストレスチェックを実施する際に推奨する「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基いて制作されたテストが簡単に行えます。職場でのストレスレベルを約5分程度で測定することができます。(以下の厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づいて、制作された「5分でできる職場のストレスチェック」をご参照ください)「5分でできる職場のストレスセルフチェック」|こころの耳HP精神疾患の原因は?遺伝との関係はあるの?出典 : 病因論にかわって出てきた精神疾患が生ずる様々なメカニズムのうち、ほとんどの精神疾患にあてはまるといわれているのが、ストレス脆弱(ぜいじゃく)性モデルです。すなわち「その人の病気へのなりやすさ(脆弱性)と、病気の発症を促す要因(ストレス)の組み合わせにより、精神疾患は発症する」という仮説です。ここでいう脆弱性とは、遺伝などの先天的な要素と、どのような環境でどのように対応してきたかという後天的な要素により決まるといわれています。一方、ストレスには家庭や職場、学校における人間関係だけでなく、戦争、災害、親族の死などがありますが、個人により何にどの程度ストレスを感じるかは異なります。思春期という、身体が急激に変化する時期は思春期であること自体がストレス因にもなりえます。同じストレスを受けた場合でも、精神疾患を発症する人としない人がいるのは、その人がもつストレスへの脆弱性が低いか高いかによると考えられます。参考書籍:『新・精神保健福祉士養成講座〈1〉精神医学』/日本精神保健福祉士養成校協会 編/中央法規/2009年◇遺伝のしくみ遺伝には、親から病気の遺伝子を受け継ぐ場合と、親から正常な遺伝子を受け継ぎながら子どもの代で遺伝子に変異が起こる場合(突然変異)があります。また、ひとことに「遺伝」といっても、突然変異によるもの、メンデルの遺伝法則に従って遺伝する単一の遺伝子の異常と、複数の遺伝子が作用した上に環境要因も加わり発症する多因子遺伝に分けられます。精神疾患のなかでも遺伝が関与するものは、多因子遺伝によるものと考えられています。◇遺伝だけが発症を左右するわけではない脆弱性(病気のなりやすさ)には遺伝も関係しますが、環境も大きな要因の一つです。精神疾患のなかでも遺伝の影響が強い統合失調症でさえ、遺伝だけが発症の原因というわけではありません。実際、双生児を対象にして、「一方が統合失調症を発症した場合にもう一方が発症する確率」を調べた研究では、遺伝子が完全に一致する一卵性双生児でも48%、遺伝子が通常の兄弟と同じ程度に異なる二卵性双生児の場合は17%という結果が出ています。参考:『分裂病の起源』ゴッテスマン/著内沼幸雄・南光進一郎/監訳この結果は、遺伝の影響だけが発症原因ではないことを意味すると同時に、その人を取り囲む環境が発症に関係する場合もあることを示しています。自分の病気の原因を探し求めても、解決につながるとは限りません。仮に、遺伝や、親の育て方などの環境が関与していることがわかったとしても、それが今更変えられないものであるなら、そこにとらわれていても解決にはつながらないのです。過去ではなく未来に向かい、今何ができるのかを考えることが必要なのかもしれません。まとめ出典 : ◇ご自身がこころの不調に悩んでいらっしゃる方へ精神疾患の経過は人によって様々です。もし仮に一般的に重い病気とされているものに罹っていたとしても、必ずしも自分も同じ道を辿るわけではありません。今はネットなどで色々な情報を調べることは出来ますが、悲観的になりすぎないことが必要です。ご自身が精神的な不調に長らく苦しまれているのなら、少し勇気をだして一度医療機関を受診することをおすすめします。自分だけでは分からなかった解決策が見えてくるかもしれません。◇ご家族がこころの不調に悩んでいらっしゃる方へ家族がこころの不調で悩んでいると、周りの人、とりわけご家族は責任感を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。しかし、精神疾患の原因は複合的なもので、決して一つではありません。たとえ家庭内に少し問題があったとしても、それだけが唯一の原因ではないのです。ご自身を責め過ぎず、疲れを感じた場合は休むことも必要です。一人で抱え込まないためにも、医療機関や福祉サービス、家族会などに救いの手を求めましょう。
2017年04月25日精神障害者保健福祉手帳とは?出典 : 精神障害者保健福祉手帳とは、所持している人が一定程度の精神障害がある状態であることを認定するものです。精神障害のある方が自立し、社会参加を積極的に行えるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。精神障害者保健福祉手帳は1995年10月に制定されました。療育手帳、身体障害者手帳より比較的新しくつくられた制度です。各都道府県と政令指定都市によって発行され、平成24年度末の統計で69.5万人を超える人が交付を受けています。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神障害者保健福祉手帳の交付者数l 内閣府精神障害者保健福祉手帳は、療育手帳や身体障害者手帳と比べて受けられる制度の条件が厳しかったり、サービス自体が限られている場合があったりすることで、取得するべきかどうか悩んでいる方も少なくはないようです。しかし、精神障害者保健福祉手帳制度は、取得することで様々なサービスや割引・給付が受けられるようになるほか、教育を受けたり就労するにあたり配慮や支援を受けやすくもなる、とても便利な制度です。高機能自閉症などの発達障害である場合、知能指数が判定基準を上回るために療育手帳の交付が認められない場合があります。その際にも、自閉症の症状による日常生活の困難度合いが大きかったり、二次障害としての精神障害が現れていたりするときは、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。精神障害者保健福祉手帳交付の対象となる疾患出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を交付対象としています。対象となる精神疾患には、次のようなものが含まれます。・統合失調症・非定型精神病・そううつ病・てんかん・中毒精神病・精神遅滞を除く器質精神病・高次脳機能障害・精神神経症状をともなう発達障害発達障害に関しては、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において精神疾患のカテゴリーに含まれていることもあり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっています。しかし、二次障害による精神症状の有無など、交付判定に細かい基準が設けられているため、詳しいことはお住まいの市区町村に相談することをおすすめします。また精神障害者保健福祉手帳を受けるためには、精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過していることが必要になります。『ICD-10精神科診断ガイドブック』 2013年 中山書店/刊精神障害者保健福祉手帳の区分と判定基準は?出典 : 精神障害者保健福祉手帳の区分は3つに分けられており、1等級から3等級まであります。・1級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね障害年金1級に相当)・2級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね障害年金1級に相当)・3級....精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね障害年金3級に相当)みんなのメンタルヘルスl厚生労働省実際に日常生活などにおいてどのような問題を抱えている場合に、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となるのか、詳しい判定基準を紹介します。◇1級:精神障害によって、常に誰かの援助がなければ生活を送ることが難しいと感じられる状態です。例えば外出や食事の用意、入浴などの身の回りのことを一人では行うことができません。◇2級:誰かの助けがなくても一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援、小規模作業所などに参加して単純な仕事をしたりすることはできます。しかし、予想外の出来事の発生など、少なからず本人がストレスを感じる状況に直面した場合には対処しきれない傾向があります。日常生活では食事をバランス良く用意するなどの家事をこなすために、誰かのアドバイスや助けを必要とし、部屋の片づけや身の回りをきれいに保つことを一人で行うことを難しいと感じる傾向があります。◇3級:一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や、小規模作業所などに参加したりすることができます。それに加えて一定の配慮がある職場では、一般就労ができる場合もあります。しかし、本人が過大なストレスを感じる状況に直面してしまった場合に一人で問題を解決することが難しい傾向があります。これらの判定基準はあくまで目安です。申し込みをしてから各都道府県・政令指定都市と市の精神保健センターでの審査があり、そこで何級に当てはまるかが初めて決まります。例えば判定基準が2級に当てはまっている上に、医師から2級相当の症状があると診断された場合でも、2級の精神障害者保健福祉手帳を取得できるとは限りません。その後の精神保健センターでの審査で3級と認定されてしまう場合も少なからず発生してしまう場合があります。不安な場合はかかりつけの医師や自治体に相談しましょう。精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について精神障害者保健福祉手帳のメリット①保育・教育・就労面の援助出典 : 精神障害者保健福祉手帳を所持していることにより、様々なサービスへの申請や利用のやりとりを円滑にすることできます。保育、教育、就労面での援助を受ける上で、精神障害者保健福祉手帳はいわゆる“パスポート”のようなものだと言えるでしょう。◇保育園への入園自治体によっては、子ども本人や保護者が精神障害者保健福祉手帳を持っている場合や、精神障害者保健福祉手帳を持っていて介護が必要な家族がいる場合に、入園の優先順位が高くなり、入園しやすくなることがあります。◇特別支援学校への入学特別支援学校への入学を希望する場合、出願の際に子どもの障害の程度を証明するものとして、精神障害者保健福祉手帳の写しの提出が必要になる場合があります。精神障害者保健福祉手帳の所持者は、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などの支給対象となる場合があります。加えて、就労移行支援を利用したい場合に、障害があることを示す資料として提示することができます。就労移行支援を利用することができれば、スタッフによる支援を受けながら、精神障害による症状や困難も踏まえて自分に合った仕事をさがすことができます。また、精神障害者保健福祉手帳の所持者は、一般枠での雇用枠だけでなく、障害者雇用枠への求人応募ができるなど、就労の可能性が広がります。精神障害者保健福祉手帳のメリット②各種サービス・割引を受けられる出典 : 精神障害者保健福祉手帳の提示で様々なサービスが受けられます。以下に代表的な割引やサービスをご紹介します。精神障害があり、日常生活を送る上で支障がある方への支援を行っている事業です。市区町村が地元の事業所と協力して提供しているサービスとして、ホームヘルプサービスなどがあります。ホームヘルプサービスとは精神障害があり支援を希望している家庭にホームヘルパーが伺い、掃除、洗濯、調理などの家事援助をしたり、買い物の付き添いなどの身体介護および通院などの付き添いの外出介護などを行ったりするサービスです。これらのサービスを受けるために必ず精神障害者保健福祉手帳を持っている必要はありませんが、所持していることで、申請を比較的スムーズに行えるようになる傾向があります。しかし、申請方法やサービスは市区町村によって異なる場合があるため、お住まいの自治体に問い合わせることをおすすめします。精神障害者居宅生活支援事業の実施についてl 厚生労働省居宅生活支援やその他のサービスについてl 大阪府松原市精神障害者保健福祉手帳の所持に加え、ある一定の条件を満たしている場合は、以下の各種サービスで利用料の割引・減免が受けられる場合があります。◇NHK放送....受信料の全額又は半額が免除されます。◇公共交通機関の運賃割引・減免....バス、電車、タクシーなどの公共交通機関は精神障害者保健福祉手帳を提示することにより割引、減免になる場合があります。しかしJRや航空運賃の割引の適用を受けることはできなかったり、自治体によって制度が異なるため注意が必要です。◇携帯電話の割引....docomo、au、softbankなど携帯会社による料金の割引制度があります。ハートフレンド割引l Softbankスマイルハート割引l au KDDIハーティ割引l docomo◇公共料金の割引・減免....水道代などの公共料金の基本料金が減免される場合があります。条件や割引金額は自治体によって異なる場合があるため、確認することをおすすめします。水道料金等の減免l 横浜市健康福祉局精神障害者保健福祉手帳の区分によっては、医療機関等で診療を受けた際の医療費の一部が助成対象となる場合があります。現在、主に該当する人は1級の精神障害者保健福祉手帳を所持している方です。災害発生時に1人で避難することが難しい障害のある方に対して、身の安全を確保するための「災害時要援護者支援制度」を実施している自治体が数多くあります。精神障害者保健福祉手帳の区分などの条件を満たせば、この制度の対象者となることができます。遊園地やプール、映画館などのレジャー施設には、精神障害者福祉保健手帳を持っていると無料になったり割引が受けられる施設があります。また、利用がスムーズになるよう配慮やサービスを受けられる場合があります。上記のサービス以外にも自治体によって様々な支援策があるため調べてみるのもよいでしょう。障害者手帳で行こう!l 一般社団法人シンシン精神障害者保健福祉手帳のメリット③税の減免・控除や給付に役立つ出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、金銭面でのサポートを受けるためにも有効です。精神障害者保健福祉手帳を持っている人が対象になりうる主な制度をご紹介します。精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人で障害の程度が1級と表示されている人は特別障害者、2級または3級と表示されている人はそれ以外の障害者として障害者控除の適用を受けることができます。年末調整や確定申告時に忘れずに申告しましょう。◇所得税の控除納税者本人が障害者であるときは、障害者控除として27万円(特別障害者のときは40万円)が所得金額から差し引かれます。控除対象配偶者又は扶養親族が障害者のときは、1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)の障害者控除等を受けられます。控除対象配偶者又は扶養親族が特別障害者で、納税者またはその配偶者もしくは納税者と生計をともにする親族のいずれかと常に同居しているときは、障害者控除として1人当たり75万円が所得金額から差し引かれます。◇住民税の控除住民税の場合、障害者控除は26万円(特別障害者に該当する場合は30万円)を控除することができます。◇相続税の障害者控除相続人が障害者である場合は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者のときは20万円)が障害者控除として相続税額から差し引かれます。◇自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が使用する車について、本人が1級の手帳を持っているなどの一定の条件を満たす場合は、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けることができます。◇預貯金が非課税の対象となる(マル優、特別マル優)精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が銀行などの350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税の適用を受けることができます。これをマル優、特別マル優と呼び、預け入れ等の際に金融機関の窓口などに確認書類として手帳を提示して確認を受ける必要があります。◇特別障害者手当精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に対して手当が給付されます。主に特別障害者の負担の軽減や、福祉の向上を図ることを目的にしています。重度の精神障害者保健福祉手帳を持っている人については、特別障害者手当受給申請時の診断書の提出を省略できる場合があります。特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害がある在宅の20歳以上の方に支給されます。目安としてはおおむね身体障害者手帳1、2級程度及び重度の精神障害が重複している方、もしくはそれと同等の疾病・精神障害のある方です。支給額は月額26,830円ですが、病院又は診療所に継続して3ヶ月を超えて入院されている方、施設等に入所されている方は支給されません。また、所得制限があり、申請者の所得が所得限度額を超える場合や、受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額以上であるときは、手当は支給されません。特別障害者手当l 厚生労働省精神障害者保健福祉手帳の交付によるデメリットはあるの?出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、療育手帳、身体障害者手帳より受けられるサービスや支援策が少なく限られている場合があります。また、周囲の理解が得られないかもしれないという不安から、精神障害者保健福祉手帳を所持していることを知られたくないと考える人や、取得することをためらう人も少なくないようです。ですが、精神障害者保健福祉手帳を所持していることを職場や身近な人に伝えなくても、受けられるサービスはたくさんあります。精神障害者保健福祉手帳は2年おきに更新し続けることにより、一生を通して様々な割引やサービスを受けることができますが、手帳を取得してから特にこれらのメリットを感じないと判断する場合、更新時に返還することもできます。手帳の返還手続きを行ったのちは、登録されている生年月日や交付番号は削除されるなどの多くの配慮がなされています。そのため、精神障害者保健福祉手帳を取得するデメリットは、実際のサービス利用等に関しては比較的小さく、周囲の理解が得られないなどの心理的・社会的な懸念によるものが中心となると言えます。不安な人は、手帳を所持していることをどこまで周囲に伝えるかを、身近な人やカウンセラーなどに相談してみると良いでしょう。精神障害者保健福祉手帳の申請方法は?出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、病院で精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過して、初めて申請することができます。病名変更や転院がある場合には医師にご相談ください。提出された書類を審査し、2ヶ月程度で発行されます。診断書記述料は病院によってそれぞれですが、一定の金額を助成してくれる制度がある自治体もあるため確認してみるとよいでしょう。障害者手帳交付診断料支給要綱l 秋田県横手市Upload By 発達障害のキホンステップ1:区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、説明を受けて必要書類の様式をもらいます。Upload By 発達障害のキホンステップ2:申請に必要な書類を揃えて役所の窓口に行き、申請します。必要書類の一つ、障害者手帳用診断書には2つの条件があるため注意してください。・医療機関での初診日から6ヶ月以降に作成されていること・作成日が申請日から3ヶ月以内のもの年金証書の写しの提出が必要になるのは、精神障害による障害年金もしくは特別障害給付金を受給している場合に限ります本人の写真は縦4cm×横3cm、脱帽・上半身で撮影します。申請した日から1年以内に撮影したものに限ります。裏面には氏名・生年月日を記入する必要があります。平成28年1月よりマイナンバー制度が開始したため、個人番号(マイナンバー)や身元確認のできる書類が必要となりました。身体障害者手帳には個人番号(マイナンバー)は表示されません。精神障害者保健福祉手帳l 東京都福祉保健局精神障害者保健福祉手帳制度の注意点出典 : 精神障害者保健福祉手帳は取得後も定期的に更新が必要です。更新は2年ごとにあり、有効期限の3ヶ月前から申請できます。その際には新規申請のときと同様の必要書類と、現在交付されている手帳の写しが必要となります。また有効期限内に精神障害の状態が悪化したり、障害年金の等級が変更となったりした場合には、障害等級の変更を申請することができます。精神障害者保健福祉手帳l 山口県岩国市まとめ出典 : 精神障害者保健福祉手帳は所持している人が、一定程度の精神障害がある状態にあることを認定するものです。精神障害を抱えている人が自立し、社会活動に積極的に参加できる暮らしやすい社会を実現するために、手帳を持っている方々には様々な支援策がもうけられています。精神障害者保健福祉手帳は1級から3級まで区分が分かれており、受けられる支援は区分や自治体によっても異なります。療育手帳や身体障害者手帳と比べて支援がまだ不十分な面もありますが、早期に精神障害者保健福祉手帳の交付を受けることで、いち早く適切な支援が受けやすくなります。外出がしやすくなったり、生活がしやすくなったり、金銭面での割引や給付などの社会の援助やサービスが受けられることも魅力です。記事を読んで興味や必要を感じたら、お住まいの福祉事業窓口に相談しに行ってみてください。
2016年11月20日『クモを精神的に追い込む』というタイトルで投稿された1本の動画。【動画はこちら→】クモといえばその外見から人間が精神的なダメージを受けることはありそうですが、逆に追い込むとはいったいどういうことなのでしょうか?コガネさん(@Koganerium)がTwitterに投稿した動画には、 ディスプレイに紛れ込んだ1匹の小さなクモが、容赦なく追い込まれてしまう姿が記録されています!----------画面上に迷い込んでしまったクモ。黒い点を捕獲対象だと思っているのか、動くポインタを追いかけています。方向を変えてもしっかりと追尾。と、コガネさん、ここで点をやめて円を描き始めました!もちろんクモはきっちり追いかけます。閉じ込め完了……。周囲をふさがれパニックに陥ったのか、じたばたするクモ。しかし、追い込みはこれだけではありません。次の瞬間……ああぁぁぁぁーーーーーー!!!!!円の外を一気に黒で塗りつぶし、クモは完全に孤立。その動きからも思考停止状態であることが伺えます。この容赦ない結末に対して、「やめてあげてーー!!」「容赦なくて笑えるw」「クモを捕まえたいときに使おう」などのコメントが寄せられています。クモとの心理戦がおこなわれた一連の様子は、関連記事の『【おもしろクモ動画】ディスプレイに紛れ込んだクモを精神的に追い込む容赦ない結末』からご覧ください♪クモを怖がっていた人も、こんな姿を見てしまうとかわいく思えるのではないでしょうか!●文/パピマミ編集部
2016年11月13日うつ病(大うつ病性障害)とは?出典 : うつ病とは、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなることが特徴の精神疾患です。これらの症状がただの気分の落ち込みではなく病的なうつ状態であることを意味しています。人間は誰しも、身の回りで起きる出来事によって気分の落ち込みを感じたり、やる気がなくなってしまったりすることがあります。しかし何もないのに気分が落ち込み、感情を自分自身でコントロールできないときはうつ病を発症している場合があります。軽症を含めると日本の人口のうちの15人に1人がうつ病を発症したことがあると考えられており、現代社会では珍しい疾患ではありません。しかしながら、うつ病は自然治癒が難しく、治療が必要な障害という認識が重要となります。うつ病は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の診断基準においては、双極性障害(そううつ病)とはっきり区別するため、大うつ病性障害という診断名に分類されています。本記事では、一般に普及しているうつ病という表記で説明していきます。うつ病の症状出典 : うつ病の症状には精神症状と身体症状に大きく分けられます。それぞれ代表的なものを中心に紹介します。■持続的な抑うつ気分:うつ病の代表的な症状です。症状として、気分がひどく落ち込む、憂うつ、ひどく不安になる、落ち着かない、イライラするなどの抑うつ気分が持続的に生じます。症状の多くは朝方が最もひどく、夕方になると少し良くなるという傾向があります。症状が進むにつれて、罪悪感などを感じ自分を責めてしまうようになり、悪化すると自殺願望を起こしてしまう場合もあります。■意欲の低下:何事にもやる気をなくしてしまいひきこもりがちになったり、趣味などに対してこれまでと同じような興味がもてなくなります。意欲の低下が進行すると日常生活に支障が出るようになり、外出や家族以外の交流をしなくなる傾向があります。■思考・行動の抑制・抑止:物事に集中することができなくなり、注意力・判断力が低下し、決断したり行動したりすることが難しくなります。これにより、・感情の動きが小さくなる・自己評価の低下・自分を責めてしまう・不安・焦燥感・妄想・自殺願望などの症状が現れやすくなります。■全身のだるさ・疲れやすさ:激しい運動をしていないのに、全身がだるく感じられ、疲れやすくなります。この疲労感は休憩しても回復せず、慢性化することが特徴です。■睡眠障害:うつ病のほとんどの人が睡眠障害になります。代表的な症状としては、不眠(眠ってもすぐに目が覚めるなど)が全体の8割、過眠(眠っても眠り足りない)が2割を占めます。特に、いつもより早く目が覚める人が多いようです。■食欲低下とそれに伴う体重低下:食欲低下もほとんどのうつ病がある人が経験します。味覚が分からなくなることで、食事の楽しさを感じることができなくなるなどの症状を発症します。食欲低下に伴い、人によっては体重が大幅に減少することがあります。こちらではうつ病を体験された方の経験を紹介します。うつ病で休職中の会社員です。私の経験では脳がつかれる感覚がすごくわかります。睡眠でも疲れが取れないようなら軽いうつの可能性もあるかもしれません。精神科にかかるのでしたらしっかりと医師に相談するのがいいと思います。かりにうつ病でも必ず治りますし早い段階で治療を開始するのはいいことだと思います。人によっていろいろな症状から現れます。まず不眠になる人や、憂鬱感が酷くなる人、拒食、不安、出社拒否、酷い倦怠感など、うつ病になるきっかけは個人によって違います。これらの症状が一度に出る人もいますし、「ただ泣きたくなる」とだけ言う人もいたりしますよ。上記のように、うつ病の症状は人により大きく異なります。長期間気持ちの落ち込みが続き、日常生活に支障をきたす場合は、一度うつ病を可能性を考えてみましょう。そして、うつ病かもしれないと思った場合は、早めに医療機関を受診しましょう。うつ病に伴う身体症状l ヤンセンファーマ株式会社うつ病症状チェックシートl シオノギ製薬ライフステージごとのうつ病出典 : ■学童期(6~12歳):子どもがうつ病を抱えてしまう可能性は低いですが、まれに発症する場合があります。学童期のうつ病では頭痛や腹痛、吐き気・嘔吐、チック症、おねしょが特徴となります。また、ひねくれたり、反抗的な態度を起こしてしまったりする問題行動が現れることもあります。■思春期・青年期(11~20歳):思春期や青年期は精神的な葛藤を抱えやすく、うつ病の症状も成人とあまり変わりません。身体とこころの成長バランスが崩れやすいので、突然の発症・症状の進行が一気に進むことがたまにあります。また、登校拒否やひきこもりの状態、アルコールや薬物に手を出してしまうなどの問題行動を起こすこともあります。■青年期・壮年期(21~64歳):青年期・壮年期は、仕事や人間関係、夫婦・親子関係など、生活のあらゆる場面でプレッシャーを感じやすいため、比較的うつ病にかかりやすくなる時期です。そうした背景もあり、うつ病の平均発症年齢は20歳台となっています。またホルモンバランスの崩れにより、更年期障害の症状としてうつを発症することもあります。女性の場合は、女性ホルモンの増加、妊娠、出産をはじめとする女性特有のうつ病があります。■老年期:老年期になると、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、アルツハイマー病などの疾患からうつ病を合併することが多くあります。その他にも退職や家族・友人との死別などの喪失体験から来る精神的ストレスも、発症の原因となります。老年期のうつ病は、身体の不調などの身体症状が前面に出ることが特徴ですが、妄想などがみられることもあります。発達障害の二次障害としてのうつ病出典 : (注意・多動性障害)、アスペルガー症候群や広汎性発達障害(PDD)などの発達障害がある人は、うつ病が合併する確率が比較的高い傾向があります。そのときは、“人間不信的行動”という二次障害としてうつ病を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思うようになり、また、そんな自分のことを周りは誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じられなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。発達障害がある人は、自身が発達障害であることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。その結果、人間不信になり、身の回りの環境に対してストレスを感じてしまい、知らない間にうつ病を発症しているということも少なくないのです。二次障害にうつ病が多い理由とはl 朝日新聞デジタルうつ病の原因出典 : うつ病の発症には、主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病は性格や遺伝の問題であるとされていました。しかし近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると言われていますが、まだはっきりと解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。■性格:主にきまじめな性格や、社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。性格がうつ病の原因となる理由として、きまじめな性格により身の回りに起こる出来事をより重く受け止めてしまう傾向があることが挙げられます。深く考えすぎてしまうために、その出来事がストレスとなったり、対処しきれなくなるまで抱え込んでしまうのです。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは、主に生物学的要因によると言われています。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説があります。うつ病の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。(1)その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される。ほとんど一日中、ほとんどの毎日の抑うつ気分注:子供や青年では易怒的な気分もありうる。(2)ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべてまたはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヶ月で体重の5パーセント以上の変化)、またほとんど毎日の食欲の減退または増加。注:子どもの場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。(4)ほとんど毎日の不眠または過眠(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単におちつきがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退(7)過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある、単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企殺、または自殺するためのはっきりとした計画B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を起こしている。C.そのエピソードは物質の生物学的作用、またはほかの医学的疾患によるものではない。注:基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される注:重大な喪失(例:親しいものとの死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、損失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常な反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、損失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。D.抑うつエピソードは、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、またはほかの特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害およびほかの精神病床がイ軍によってはうまく説明されない。E.躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。注:躁病様または、軽躁病エピソードのすべてが物質誘発性のものである場合、またはほかの医学的疾患の生理学的作用に起因するものである場合は、この除外は適応されない。診断名を記録する際、各用語は以下の順に記載する:うつ病、単一または反復エピソード、重症度/精神病性/寛解の特定用語、そしてその後に現在のエピソードに当てはまる、以下に列挙するコードのない特定用語が来る。不安性の苦痛を伴う、混合性の特徴を伴う、メランコリアの特徴を伴う、非定型の特徴を伴う、気分に一致する精神病性の特徴を伴う、緊張病を伴う、周期発症、季節型などに分類される。うつ病に関する相談先出典 : うつ病かもしれないと思ったり、不安を感じる場合は専門機関などに相談することをお勧めします。■精神福祉保健センター:心の健康相談や医療機関への受診に関する相談、社会復帰相談や精神疾患の相談などを行っています。心の問題や病気で悩んでいる方そのや家族向けに無料で相談を受け付けているほか、電話にてこころの健康相談も行っています。全国精神保健福祉センター一覧l 八千代病院■保健所うつ病の治療や社会復帰に関する相談に、医師などの専門医がアドバイスを行います。お住まいの地区の保健所へ電話し、場合によっては家庭訪問を行うこともあります。■日本産業カウンセラー協会働く人のホットラインという無料電話相談をおこなっています。相談料金は無料です。職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みなどを相談することができ有料のカウンセリングも受けることができます。相談・カウンセリングをご希望の方へl 日本産業カウンセラー協会■U2plus:認知行動療法をベースにした無料のうつ病コミュニティです。無料のうつ病コミュニティl U2plus■いのちの電話自殺予防を目的として、日本いのちの電話連盟が運営しています。各都道府県ごと設置され、相談員が応対します。一般社団法人日本いのちの電話またうつ病の診断の際には、主に精神科や精神神経科で受診が一般的です。また、心療内科やメンタルヘルス科、メンタルクリニックなどの医療機関でも受診することができます。よく分からない場合は事前に電話やインターネットなどで確認することをおすすめします。うつ病の診断・治療の流れ出典 : 診断の際には、まず軽い問診を行います。うつ病を発症している可能性があると判断されると、身体検査から心理検査の流れで症状の程度などを検査し、うつ病かどうかを特定し定期ます。1.問診:うつ病の診断基準と照らし合わせ、どのような症状があるのか、どのような人なのかを聞いていきます。必要に応じて家族や周りの人にも質問し、さまざまな角度から本人と向き合っていきます。2.身体検査:その後身体の状態と他の合併症の有無を確認するために、必要に応じて身体検査を行います。代表的なものとして、尿検査、血液検査、画像検査(頭部CT・MRI)、心電図検査、脳波検査などが挙げられます。3.心理検査:心理検査は、うつ病の重症度を数値化するときに用います。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)という質問表に従って質問が行われます。質問にはそれぞれ3~5個の答えが用意されいて、その中で一番当てはまるものを選択します。検査には15~20分ほどの時間を要し、重症度を5段階に分類します。うつ病は一人ひとりの症状に合わせて薬物治療、精神療法や電気けいれん療法などを行っていきます。■薬物療法:薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられたり、不安を抑える「抗不安薬」が処方されたりすることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、十分な量を十分な期間服用することが重要であるとされています。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20パーセントの患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50パーセントに上がります。薬物療法は継続することが大切であり、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性は2倍になるという研究結果がでています。しかし、治療法には個人差があり薬物療法に関してはことさら注意が必要です。■精神療法:現在様々な精神療法が開発されていますが、うつ病に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握していきます。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていくことで治療を進めます。また対人関係療法は、うつ病を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。■修正型電気けいれん療法(m-ECT):頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。うつ病l 慶應義塾大学病院出典 : うつ病の治療には時間がかかることも多く、場合によってはそれなりのお金もかかってしまいます。医療費については、個人の症状に合わせて治療が行われるため、一概には言えませんが、うつ病で初診の際にかかる費用は、診療費と薬代を合わせ、大体1万円前後というのが平均的です。ということは、保険を使わず自費負担の場合は、その全額を支払うことになります。保険を使った場合には、健康保険(健保)では本人は2割負担(2003年4月より3割負担(3~69歳))なので2000円前後、健保家族と国民健康保険(国保)では3割負担なので3000円前後を支払うことになります。平均的な通院ペースは2週間おきで、薬も2週間分処方されることが多いようです。2回目以降(再診)は、初診の頃より、薬の処方量が増えることも多く、その分薬代はかかりますが、初診料はかかりませんので、合計の支払金額は若干安くなるようです。このような治療費の負担を抑えるために、経済的な支援をおこなう制度があります。■自立支援医療制度:障害のある患者さんに必要な医療を確保し、継続して治療を受けられるように支援することを目的として定められたものです。医療費の自己負担額が原則として1割に減額されると同時に、所得に応じて1ヵ月あたりに支払う金額に上限が設けられます。■健康保険の傷病手当金(健康保険加入者向け):病気・ケガのために勤務先を連続して3日間休んだ場合、4日目以降から支給されます。支給金額は日割給与(標準の報酬日額)の100分の60であり、最長1年半間受け取ることができます。受給条件や受け取れる金額は場合により異なる場合があるので加入している保険組合に確認しましょう。また、国民健康保険の場合は任意支給となり、傷病手当金制度がない場合がほとんどです。■精神障害者保健福祉手帳:税制上の優遇措置をはじめ、さまざまな支援サービスを受けることができます。交通機関の運賃や公共施設の料金が割引となるサービスもあります。■精神障害労災:これは労働者災害補償保険法に基づく制度で、仕事中にケガや病気、後遺症もしくは死亡した等の場合、本人や遺族に対して一定の保険給付を行う制度です。うつ病になった時の、本人・周囲の人々の対応法出典 : うつ病の治療には十分な休養と休息を取ることが、最も重要となります。早く治そうと焦らず、規則正しい生活を送りましょう。栄養バランスのとれた食事、適度な運動・睡眠時間を取ることが望ましいです。また、うつ病を抱えている人は自分自身では気持ちをコントロールすることをすることを難しいと感じ、自身が思うように行動することができていない場合が多いです。そんな中、周囲の人がうつ病を抱えている人に”頑張れ”などの声をかけたとき、更にその人を追いつめてしまう恐れがあります。そのため、うつ病を抱えている人に対しては励ますより、少し休んでみるなどの提案を行い、その人がリラックスできる環境づくりをすることをおすすめします。まとめ出典 : うつ病は日本において、15人に1人が発症したことがあるといわれている、決して珍しくはない疾患です。一度うつ病を経験すると、ストレスのもととなる要因が多い現代社会において、他のストレス要因も敏感に感じ取るようになり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため、悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れず、ずっと暗いまま自分をコントロールできないなど、不安を抱えている場合はうつ病を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年11月12日このコーナーは、美輪明宏さんの公式サイト「美輪明宏 麗人だより」の中で一番人気のコーナー「本日の処方箋」から出張していただきました。美輪明宏さんからあなたへのメッセージをお届けします。 ~精神性を重んじることからスタートする〜新しい自分として再出発を図るなら、何よりも一番“心の持ち方”が重要になります。バブル迄の物欲や食欲や性欲などの“欲求”を満たすことで豊かさを感じるのではなく、今の時代は精神的な豊かさを重んじることに価値観を置ける自分になる事です。精神性を重んじるということは、日常生活で美意識を持って多くの文化や芸術に触れ、義理や人情を持ち、他人に対して優しく、その人の立場に立って考えられる思いやりがあり、「ボロは着てても心は錦」の諺通り、自分自身に恥ずかしくない清々しい行いが出来ることです。あえて一言で表現するなら“粋でいなせな生き態”でいること。多くのものがどんよりと飽和状態にある現在、これまでの数字や機能性・効率性損得だけを追求するのではなく、より貴い精神性を重んじることに価値を置けるよう自分の心持ちを向上させていきましょう。※美輪明宏公式サイト「美輪明宏 麗人だより」より
2016年10月07日発達障害の診療のための医療機関にはどんなものがある?それぞれが担う役割は?出典 : これまでの記事では、発達障害のための医療機関が少ない原因や、医療機関でできる支援についてお話させていただきました。今回は医療機関の種類をご紹介していきます。発達障害の診療に携わる医療機関には様々な種類がありますが、その分け方も色々あるのです。医療機関の種類というと、もちろん小児科や精神科などの診療科による分類が思い浮かぶのですが、今回の記事では別の切り口で分けてみたいと思います。いくつかの医療機関は日本の、時には世界の発達障害研究を担っていく役割を持っています。こうした先進的な医療機関にかかると厳密な手続きを経た診断が受けられたり、他では利用できない治療法が使えたりすることもあります。日本の、世界の発達障害支援の質の向上に貢献できる可能性があるというメリットもあります。一方でこうした機関の医療者は診療以外の業務が多く多忙です。また機関の数も限られるので、通院時間が長くなるなどアクセスも良くないことが多いでしょう。また研究途上の新しい治療には、確かめられていないリスクも伴います。良くも悪くもハイリスク、ハイリターンな選択です。その他に、地域の中核的な発達障害診療を担っている医療機関もあります。小児や障害者の病院、療育センターに附属している診療所などがこうした役割を担っていることが多いでしょう。こうした機関の専門性は高く、既存の診療技術に限って言えば、研究機関と比べても遜色がないことが大半です。また入院治療の機能を持っていることもあります。一方でこうした医療機関は比較的広域(都道府県単位)などから患者がきていることが多く、地元に密着した支援機関や学校の情報などはやや医療者に集まりにくくなります。また地域への医療サービス提供の責任を負っているので、新規患者優先、診断と投薬優先になりがちです。発達障害専門の小児科や児童精神科のクリニックなどを中心とした地域密着の医療機関も増えてきました。こうした医療機関は医師によっては、非常に高い専門性を持っていることもありますし、アクセスも良く比較的患者数も少なく、丁寧な診療が可能であることもあります。また何よりも地元の情報が集まりやすいことがメリットです。ただし地域によっては医療機関の不足のため、こうしたクリニックが中核的医療機関の役割を担わざるを得なくなっていることもあります。また最近では、地域のかかりつけ医、つまり一般の小児科医や内科医の役割にも注目が集まっています。こうした医療機関は、発熱やワクチン接種などの日常の身体的な問題に対応できるのはもちろんですが、典型的な事例の診断や専門的な医療機関での診断後のフォローアップなどが期待されています。平成28年度からは厚生労働省によるかかりつけ医向けの発達障害の診療研修も開始されました。こうした医療機関は極めてアクセスがよく、また発達障害の特性を知ってもらった上で、身体医療が受けられるという大きなメリットがあります。医療以外の支援者に恵まれている場合、医療の役割は限られるので、必要な時にかかりつけ医に相談するというスタイルでも、充分に対応が可能である場合があります。年齢の高い方の場合、成人の精神科医療機関も受診先の候補になります。現状では全ての精神科医療機関が発達障害の診療に対応できるわけではありませんが、着実にそうした機関は増えています。こうした医療機関のメリットはアクセスの良好さと、何よりも併存する他の精神疾患への対応への熟練度と手立ての豊富さです。ただし構造的に成人精神科の診察時間は短いことが多いので、それに合わせた受診の工夫を考えておく必要があります。医療機関に迷ったら、身近な支援者に相談を出典 : こうした分類は医療機関の看板に書いてあるわけではないので、利用者の方からは見分けにくいかもしれません。受診の前に保健センターなどの身近な支援者や、先輩の親御さん、ペアレント・メンターなどに受診先を相談するのはよい方法です。最後に、多くの種類の医療機関があるので、専門機関のいいとこ取りをしたい、かけ持ちをしたいという気持ちはとてもよくわかります。しかし極めて恵まれた一部の地域(ほんとにそんなのところが日本にあるのでしょうか……?)を除けば、現状ではそれはマナー違反であると考えるべきでしょう。必要な人が、少しでも早く、少なくとも正しい診断と診断書、時には薬物療法にたどり付けるような気遣いができる、余裕が持てるとよいですね。
2016年10月05日『100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減』(髙橋幸枝著、飛鳥新社)は、数えで100歳になるという精神科医が語る人生訓。といっても、単に「100歳だから」という数字の問題だけではありません。高等女学校卒業後に海軍省のタイピストとして勤務したのち、中国・北京で日本人牧師の秘書として勤務。そうした経緯を経て医学部受験を決意し、勤務医としての経験を積んだあと、1966年に「秦野病院」を開院し、院長に就任したという人物なのです。そのぶん、私たちに学べることが多々あるということ。そしてタイトルにもあるように、人生について考えるうえで著者が重視しているのは「匙(さじ)加減」です。■人生は匙加減を見極めることが大事どんなことにも適度な塩梅、つまり「匙加減」というものが存在すると著者はいいます。それは人生にも当てはめることができるもので、つまりそれらをひとつずつ見極め、把握していくことこそが、「生きる」という営みだというのです。そもそも匙加減とは繊細なもので、そこには難しさがつきまとうことになるそうです。そればかりか、人それぞれ微妙に異なってもくるため、二重に複雑になるということ。だから「匙加減をうまく見極めようと思ってもお手本などはないだけに、誰かを真似ることはできない。けれども、自分の軸が1本しっかり貫かれていたなら、言動も一貫してくるものだ」と著者は主張します。■昔のがん告知はかなり苦労があったところで近年は、日本人の2人に1人が、がんで逝く時代となっています。そうであるだけに、ますます大切になっているのは、がん患者さんへの心のケアです。ましてや著者が若かったころは、治療法がまだ少なかったこともあり、「がん=死」というイメージが強かったといいます。そのためか、「がん告知」はいまよりデリケートな問題だったのだそうです。著者が医師の仲間に聞いた話によれば、昔は「患者さんご本人に、がん告知をしない」のが常識だったというのです。そこで医師は患者さんのご家族と綿密に打ち合わせをして、「いかに本人にがんであることを悟らせないか」、心を砕いていたのだそうです。もちろんいまでは、患者さんご本人にきちんとがんの種類などについて説明し、治療方針を決めることが常識になっています。とはいえそれは、がんの治療法が進歩したことの裏返し。昔とくらべれば「ありがたい」というだけのことです。ただし、いくら「時代が変わって医療が進歩した」と説得されたとしても、「がん」と診断されれば、不安や恐怖を伴う大きなストレスになったとしてもそれは当然のこと。そこで著者が引き合いに出しているのは、知人についてのエピソードです。■がんと仲よく生きれば気持ちも楽!その人は「がんの治療を10年続けてきたけど、大きくもならず、特別変わりないので、薬も治療もやめた」と話してくれたというのです。著者は「私はがん治療が専門ではありませんが」と前置きしたうえで、その知人の気持ちは勇気ある素晴らしいものだと感じたのだそうです。がんに無闇に抗わないことで、がんが静かになるかもしれないということ。事実、その知人は、まさにそんな状態なのでしょう。がんと仲よく生きることも大切ですし、そうすることで患者さんの気持ちも楽になるということです。著者の専門分野である精神科の治療においては、「苦しみをよく聞いてあげること」がなにより大切なのだといいます。たしかにそれは、医学的には正しい態度なのでしょう。しかし、そのことを認めたうえで、著者は実際には「苦しみをよく聞いてあげる」だけでは足りないと指摘してもいます。なぜなら、ひとつひとつ異なる問題すべてを「こういう場合はこうしましょう」というようなマニュアルで解決できるはずがないから。■心の匙加減は百人百様なので難しいそこで、「匙加減」を意識することが大切だというわけです。ご存知の方も多いと思いますが、「匙加減」とは、もともと薬の「分量」を測るときに用いた言葉が転じて、あらゆる場面で使われるようになったもの。細かな配慮や集中力などが求められるということで、だから「心の匙加減ほど、難しいものはない」もの。100歳を超えるいまも、「心は百人百様である」と痛感しているのだそうです。*柔らかな言葉で綴られているものの、そこに深みを感じずにはいられないのは、根底に100歳の人生の重みがあるからなのでしょう。人生に迷ったとき、ふとページを開いてみるといいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※髙橋幸枝(2016)『100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減』飛鳥新社
2016年09月26日米歌手ローリン・ヒルが、精神統一を理由にアトランタ公演に2時間も遅れて登場した。フージーズの創立メンバーとしても知られるローリンは、6日に同市内のチャステイン・パーク野外音楽堂のステージにやっと姿を現したものの、わずか40分しかパフォーマンスを披露しなかった。その2日後となる8日、その理由について自身のフェイスブックで「私は何も気にしないから遅刻するわけではないの。ファンのみんなには愛と尊敬心しか抱いていないわ。でもあの時、私のエネルギーを統一することが困難だったの。言葉では説明できないような他人のために提供できるエネルギーをね」と説明した。続けて、「私にはオンとオフのスイッチがあるわけではないわ。私はオープンで十分に静養を取れていて、感受性豊かで、できるだけ正直に自分を表現できる自由がある時こそ最高の自分でいられるわ。私が遅れてしまった全てのパフォーマンスの穴埋めとして、私が全てをステージに注ぎ込んで契約している2時間以上パフォーマンスをしたことは数えきれないほどあるわ」とコメント。「それは私が芸術過程をとても気にしていて、完璧にしようとしているから、それが作れるようなスペースを作ろうとしているからなんだけど、ツアーのような移動の多い時には特に簡単なことではないの。うまくできる日もあればそうでない日もあるのよ。でも私がパフォーマンスに注ぎ込む活力は、それを実践することにどれだけの労力が必要かと完全には理解できないかもしれない観衆のみなさんにもいつも喜ばれているわ」とつづった。またローリンは、ショーの後にもただローリンのエネルギーを感じたいがために会場に残っていたファンがたくさんいたことを指摘し、ファンは自身が提供しようとしているつながりを理解してくれているとした上で完全なショーをできなかったことを謝罪し、その埋め合わせをする予定であると伝えた。(C)BANG Media International
2016年05月10日こんにちは、ママカウンセラーの赤井理香です。今回は、精神科医の和田秀樹さんの著書から、感情的になりやすい人の特徴と感情的な人への接し方についてお伝えします。●感情的になる人は自分の思い込みにこだわる人本書の中で、感情的になりやすい人は、ものごとをまともに受け止める傾向があると伝えています。感情的になる人の特徴として、以下のように述べています。**********よく言えば真面目なのですが、悪く言えば「硬い」とか「融通が利かない」 ところがあります。だから相手のことばや態度に悪意を感じると、それをまともに受け止めて「なんだ、こいつは!」とか「わたしがなにをしたっていうの!」と腹を立てます。ちょっとした皮肉や嫌味でも、受け流すことができなくてカチンと来ます。相手の挑発に乗りやすいのです。**********なぜ、相手の嫌な態度をまともに受け止めてしまうのかという理由について、「こうなるはずだ」という思い込みが強すぎるのが原因と述べています。「わたしの考えに賛成してくれるはずだ」「わたしは間違っていない」「ここはこうするしかない」という思い込みが強いほど、予想と違うことを言われたときに、自分への悪意として受け止めてしまいがちだそうです。では、そんな思い込みが強くて感情的になりやすい人には、どう接すればよいのでしょうか?次に、感情的になりやすい人への接し方についてお伝えします。●感情的になる人の言葉を“あっさり受け入れる”本書の中で、理屈が正しくてもいい結果にはならないと伝えています。「自分の方が正しい」「相手は自分を下に見ている」といった、白黒にこだわる思考や、どちらが上か優位性に対するこだわりが、感情的な相手との関係を悪化させます。**********つまり、感情というのは押されれば押し返そうとします。相手が強く出てくれば、こちらも負けまいと強く出てしまいます。**********強く押すと押し返されるのが“感情”なので、押し返そうとせずに“あっさり受け入れる” ことで、相手は拍子抜けし、感情を悪化させないで済むのですね。●「それもそうだね」と一呼吸おく本書の中で、本心を伝えながらも、相手とリラックスした関係を築くのに有効な受け止め方を紹介しています。**********「それもそうだね」とか、「なるほどなあ」「そういう考え方もあるね」といった柔らかい受け止め方をします。こういう態度はものすごく大切なことです。自分の意見はあくまで1つの見方。他人の意見もまた1つの見方。その場で決着をつける必要はありません。**********自分の感情と違ったとしても、相手の感情も「それもそうだね」と、受け入れることで、敵味方、正しい正しくないと言った、二元論の考え方にとらわれることなく、リラックスした関係につながる のですね。筆者も、感情の渦に巻き込まれそうになったときには、「そうだね」と、一呼吸おくことを心がけようと思います。----------感情的な人の特徴と接し方を知って、自分が“感情的”にならず、“穏やか”でいられるようにしたいですね。【参考文献】・『感情的にならない本』和田秀樹・著●ライター/赤井理香(働くママ応援家)
2016年03月20日「産後うつ」をご存知ですか?産後2週間くらいから、気分の落ち込みやうつ症状、食欲減退などが起こってくるもので、該当者は産婦の6人に1人とも、5人に1人ともいわれる深刻な問題です。女性ホルモンの変化が影響しているという説もありますが、はっきりした原因はまだわかっていません。しかしこのほど、その産後うつの原因究明のカギになるかもしれない研究が学術誌上で発表されました。キーワードは「睡眠」。今回は、睡眠とうつ症状の関連についての最新研究結果をご紹介します。■3つの睡眠パターンで心の健康値を測定研究は、アメリカの医学に関する研究機関「ジョンズ・ホプキンス・メディスン」が行ったもの。健康な男女62人をランダムに3つに分け、それぞれ(1)就寝後、朝までに計8回こま切れに起こされる(2)通常よりも遅い時間に就寝する(3)通常通りの睡眠という3通りの睡眠パターンで3泊してもらいました。そして、毎晩ベッドに入る前に専用の質問票に答えてもらう形式で、期間中に心の健康がどのような経過をたどるかを観察。質問票では、喜びや積極性などのプラスの感情、怒りやいらだちなどのマイナスの感情を数値化し、増減を計測します。つまり、(1)睡眠がこま切れに中断した場合と(2)睡眠時間が短い場合で、それぞれ(3)通常の睡眠に比べてプラス感情とマイナス感情がどのくらい増えたり減ったりするかを調べたのです。■こま切れ睡眠のグループがとくに悪化!1泊目が終わったあと、(1)と(2)のグループの参加者たちの心の健康状態は同等でした。マイナス感情がプラス感情を上回った状態で、それぞれの感情の割合もほぼ同じ。変化は、2泊目が終わったあとに現れました。(2)睡眠時間が短いグループでは、参加者たちのプラス感情が1泊目より12ポイント減ったのに対し、(1)こま切れに起こされるグループでは31ポイント減と、著しく大きな落ち込みを見せたのです。さらに3泊目が終わった後の調査では、(1)のグループのプラス感情の減りはもっと大きなものになっていました。プラス感情の減退、抑うつ症状は不眠症によくみられる反応。つまり、健康な人でも状況や生活パターンによって疑似不眠症に陥ることが確認されたのです。「眠りがこまかく中断されると、人はノンレム睡眠に達することができません。ノンレム睡眠は入眠後90分程度で現れる深く安定した睡眠で、心の健康状態を回復させる役割を担っています。(1)のグループでは、十分なノンレム睡眠が得られないために、眠っているあいだにプラス感情を回復することができないのです」筆頭著者であるジョンズ・ホプキンス大学のパトリック・ファイナン博士は、そう分析します。■出産直後のママは疑似不眠症になる?では、こま切れに睡眠が中断する人とは、具体的にはどういう人でしょうか?ファイナン博士によれば、それはナースコールのために待機している看護師や介護ヘルパー、そして赤ちゃんを持つママだというのです。生まれたばかりの赤ちゃんは、1~2時間おきにおっぱいを欲しがって泣きます。おむつもすぐにぬれてしまうので、1日に15回替えることも珍しくありません。新生児のママは、夜通し赤ちゃんの泣き声で1~2時間おきに起こされることになるわけで、まさにこの実験でいうこま切れに睡眠が中断する人そのもの。いつ疑似不眠症に陥ってもおかしくないのです。*このように、こま切れの睡眠がプラス感情をすり減らし、心の健康に著しい悪影響を与えることが研究で示されました。プラス感情には、積極性や喜びといった感情だけでなく、思いやりや親切心など人とのかかわりに関するものも含まれます。生まれたばかりの赤ちゃんのお世話をしている人は世界中にたくさんいます。でも、多くの人がしているからといって、決して「簡単なこと、誰でもできること」ではないのです。そこには大変な困難があり、健康を脅かしているケースもあります。産後うつと睡眠のはっきりした関連や治療法は今後の研究を待たなければなりませんが、出産という大仕事を終えたばかりのママたちがとても危険な睡眠パターンに陥っていることは間違いありません。このことをママ自身だけでなく、ぜひパパや周囲の人々にも知っておいてほしいと思います。(文/よりみちこ)【参考】※Sleep interruptions worse for mood than overall reduced amount of sleep, study finds―ScienceDaily
2015年11月07日誕生月だけで性格や運勢がわかる占い、多いですよね。Twitterでもよく話題になっています。ところが、誕生月からわかるのは、精神的なものだけではないのです!なんと、このたび健康上のリスクがわかってしまうことが判明。しかも、ちゃんとした研究で明らかになりました。自分がかかりやすい病気は気になりますが、ちょっと信憑性が気になりますよね。さっそく、研究内容を見ていきましょう。■170万人の病気データ分析で関連性発見この研究は、コロンビア大学メディカル・センターで准教授を務めるニコラス・タトネッティ博士が中心となって行われ、医学専門誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』に発表されました。研究チームは、ニューヨークの大学付属病院で1985~2013年の28年間に治療を受けた170万人分のデータを調査。そこから出てきた1,688種類の病気を、コンピューターのアルゴリズムを使って分析しました。途中で、1,600種類以上の病気は誕生月とは関係がないと判断され、除外。しかし、9種類の心臓病を含む55種類の病気に関しては、偶然では片付けられない確率で、誕生月と関連性があることがわかりました。調査結果によると、病気のリスクがもっとも低いのは5月生まれの人。一方、もっとも高いのは10月生まれの人となりました。■デンマークでも似たような研究結果が病気と誕生月の関連性に気付いたのは、タトネッティ博士がこれ以前に行っていた、ADHD(注意欠陥・多動性障害)や喘息のリスクと生まれた季節との関連性の研究がきっかけ。ただ、今回の研究でも、ADHDや喘息と生まれた月には高い関連性が見られました。データによると、喘息にかかるリスクが一番高いのは、7~10月生まれ。また、ニューヨークで11月に生まれた人は、ADHDに対してもっとも高いリスクを示しました。興味深いことに、デンマークの同様の研究でも同じような結果が出ています。デンマークで肺の病気にかかるリスクがもっとも高いのは、5~8月生まれ。この季節は、ニューヨークの7~10月の日照量と似ている時期に当たるそうです。ADHDの場合、11月生まれの人がもっとも関連性が高く、ニューヨークと同様の結果になりました。さらに、誕生月と9種類の心臓病との関係も調べたところ、3月生まれは心房細動(不整脈)、うっ血性心不全、僧帽弁逆流症に対するリスクが一番高いことがわかりました。■どの月生まれでも余計な心配は無用!でも、3月生まれや10月生まれだからといって、心配する必要はないようです。これらは、あくまで傾向。研究チームによると、誕生月による病気のリスクは、食べ物やエクササイズなどの生活習慣と比べると全体としてそれほど大きくはない、ということです。研究チームは今後、こうしたデータ分析をアメリカ国内外の他の都市に拡大して行い、季節の移り変わりや環境によって結果がどう変わるかを比較したいとしています。誕生月によってかかる病気がなぜ違うかを突き止めることにより、誕生月によるリスクのギャップを埋めることを目指しているのです。同じ誕生月でも、生活習慣は一人一人違います。データが全ての人にあてはまるわけではありません。どの月生まれでも、健康的な生活習慣を心がけましょう。(文/松丸さとみ)【参考】※Data Scientists Find Connections Between Birth Month and Health-Columbia University Medical Center
2015年06月15日ノエビアグループはこのほど、神戸女学院大学大学院人間科学研究科と東京大学大学院新領域創成科学研究科との共同研究において、特定のアミノ酸を配合した飲料が「精神的ストレス」を軽減する作用を示したことを明らかにした。同社ではこれまで、抗ストレス効果のある製品の開発と研究を進めてきた。分岐鎖アミノ酸は、「身体的ストレス」からの回復促進効果が報告されているが、今回は「精神的ストレス」に対して、アミノ酸を配合した飲料がどのような効果を持つのか検証した。研究には、分岐鎖アミノ酸BCAA(ロイシン・イソロイシン・バリン)を主体とする8種類のアミノ酸類を配合した「アミノ酸配合飲料」と、アミノ酸が含まれない「プラセボ飲料(偽薬)」を使用。被験者と実験者ともにいずれか区別できない条件で、単回摂取による「精神的ストレス」軽減を目的とした実験を2種類行った。実験1では、成人女性8人に2種類の試験飲料を異なる日に摂取してもらい、コンピューターを用いた作業負荷として視覚探索課題「ATMT」(パソコン画面に表示される数字などを、順番に正しく、できるだけ早く押す課題)による精神負荷試験を実施した。脳波や唾液中ストレスマーカーなどにより、課題前後のストレス状態を評価した。課題終了後、「プラセボ飲料(偽薬)」摂取時の脳波は、脳がリラックスしている状態を示す指標(閉眼時脳波α波/β波比)に低下が見られた。一方、「アミノ酸配合飲料」摂取時は、その低下の程度が軽減されていたという。実験2では、成人女性25人に、2種類の試験飲料を異なる日に摂取してもらい、「内田-クレペリン検査」(一桁の数字の足し算を一定時間行う検査)による単純計算作業の精神ストレス負荷試験(前半15分、休憩5分、後15分)を実施。唾液中ストレスマーカーにより、同試験の前・中・後のストレス状態を評価した。その結果、「プラセボ飲料(偽薬)」摂取時の作業前半終了直後に採取した唾液は、ストレスホルモン「コルチゾール」の濃度が上昇していた。一方、「アミノ酸配合飲料」摂取時は低下。作業の後半終了後には、いずれの飲料でも低減していたが、比較すると「アミノ酸配合飲料」摂取時の方が有意に低い値であったという。これらの結果により、「アミノ酸配合飲料」を単回摂取すると、コンピューター作業や単純計算作業による精神ストレスが軽減できることが明らかになった。同社ではこの試験結果を、5月14日~18日に行われた「第69回日本栄養・食糧学会大会(第12回アジア栄養学会議(ACN2015)合同開催)」にて発表している。
2015年05月26日独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)はこのほど、同センター神経研究所病態生化学研究部の堀啓室長、星野幹雄部長らの研究グループが、さまざまな精神疾患に広く関わる「AUTS2」遺伝子の働きを世界で初めて明らかにしたことを発表した。AUTS2遺伝子は、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、薬物依存などのさまざまな精神疾患に関連し、てんかんの発症にも関わることがわかっている。これまで、この遺伝子がコードする「AUTS2タンパク質」が神経細胞の細胞核に存在し、何らかの作用をしているのではないかと考えられていた。しかし、その働きについてはほとんどわかっていなかったという。同研究グループは、AUTS2タンパク質が神経細胞の細胞核だけでなく、細胞質領域、特に神経細胞突起部分にも多く存在することを見いだした。また、この神経細胞の細胞質において、「Rac1」や「Cdc42」(※2)という分子の活性を調節し、神経細胞内の「アクチン構造」(※3)を変化させていることが明らかに。さらに、その働きによって、AUTS2が神経細胞内のアクチン構造を自在に操り、神経細胞の動きや形態変化を制御することによって、脳神経系の発達に関与していることが示された。今後は、さまざまな精神疾患に共通する根本的な病理の解明や新たな治療法の開発につながることが期待されるという。※1 AUTS2遺伝子:ヒト第7染色体上の120万塩基にもおよぶ広い領域に存在する遺伝子。2002年に自閉症スペクトラム障害との関連が指摘されたが、その後、ADHD、知的障害、統合失調症、薬物依存、などの幅広い精神疾患と関わることがわかってきた。AUTS2遺伝子領域は比較的もろく、破壊されやすいとされている。この遺伝子のコードするAUTS2タンパク質には、これといった分子モチーフが無く、その働きは長らく謎のままであった。今回、AUTS2タンパク質の細胞質における働きを明らかにしたが、このタンパク質が細胞核においても何らかの役割を果たしている可能性があると考えられている。※2 Rac1、Cdc42:どちらも「低分子量Gタンパク質」というカテゴーリーに属する細胞内タンパク質。これらのタンパク質は、普段は不活性型(GDP結合型)だが、細胞内で必要に応じて活性型(GTP結合型)に変化する。Rac1やCdc42は特定の活性化因子(「グアニンヌクレオチド交換因子」)によって活性化される。図における「P-Rex1」「Elmo2/Dock180」「ITSN1/2」などはこの活性化因子に相当する。※3 アクチンタンパク質:アクチンタンパク質は細胞内に浮かぶ小分子。これが多数重合し特定のアクチン構造を形成すると、細胞を内側から支える細胞骨格として働く。Rac1が活性化されると、細胞内局所において「ラメリポディア」という網目状アクチン構造が誘導される。Cdc42が活性化されると、細胞内局所で「フィロポディア」という糸状アクチン構造が構築される。これらのアクチン構造がダイナミックに変化することによって、細胞はその形を変えたり移動したりする。
2014年12月19日男の子よりも女の子のほうが精神的な成長は早い。だから女子からすれば、同年代の男子は子どもっぽく見えちゃうんだよね。そういうわけで年上の男性に魅力を感じる女子もいっぱいいる。でも、年齢は若くても、精神的には大人っぽい男子がいたら、そっちでもよくない?全体の中から見たら数は少ないけれど、精神的に大人な男子もいないわけじゃないんだ。今回は、精神的に大人な男子をゲットするための方法を教えちゃうよ。■1.大人な男子かどうかアプローチする方法を知ってても、そもそも相手の男子が大人かどうかわからなきゃダメだよね。だから、まずは精神的に大人な男子ってどんな男子なのかを知っておこう。大人でステキな男子は、知らない女子からグイグイ来られても全然なびいたりしないんだ。外見がカワイイ女子でも、内面が美人な女子でも関係ない。そういうことじゃなく、そもそも大人はよく知らない人には興味を持たないんだ。だから、初めて会ったときにあまり興味を持ってもらえなかったとしてもヘコまないでだいじょうぶ。それは相手の男子が精神的に大人だってことだから、むしろ喜んでいいんだよ。■2.トラブったらチャンスほかにも、相手の男子が精神的に大人かどうかを見分けられるシチュエーションがあるよ。それはズバリ、トラブル発生時。たとえば、同じサークルの男子が遅刻したとする。待たされたみんなはイライラしてて、雰囲気も悪くなってきた。そんなとき、遅刻した彼の態度をよく見てみよう。彼はちゃんとみんなに謝ったり、遅れた理由を説明したりしてるかな。言い訳がましくなく、誠意をもって話せているなら彼は精神的に大人だよ。もし、ふてくされたり逆ギレしたりするようだったら、残念ながらまだ精神的に大人になりきれていないみたい。トラブルにあうのはだれだってイヤだけど、そんなときこそ本当の大人かどうかが試されるんだね。■3.一気にキョリをつめない相手の男子が精神的に大人だってことがわかったとするよね。これで安心してアプローチしていけることになったけど、だからといって一気に親しくしようとしてはいけないよ。なぜって、大人の男子にいきなりキョリをつめようとすると、逆に相手からキョリをとられてしまうから。これは、相手の立場になってみるとよくわかるよ。相手からすれば、あなたはよく知らない人だよね。だから、いい人か悪い人かもわからないから、いつでも逃げられるようにキョリを離しておきたいって思うんだ。「ウチは悪い人じゃない。こんなに彼のこと好きなのに。大事にしたいのに」って思うかな?でもそれは、あなたにしかわからないこと。自分がいい人だってことをいきなり他人に信じさせることはできないの。でも、あきらめないでいいよ。いきなりは難しくても、少しずつなら信じてもらうこともできるからね。精神的に大人な男子と仲良くなるには、いきなりじゃなくてゆっくり少しずつ。■4.わざと遅くはしないゆっくり少しずつとは言ったけど、でも、わざと遅くする必要はないんだよ。たとえば、やたらベタベタ触って好き好き言うのはNGだけど、だからといって「あなたには興味ありません」みたいなそっけない顔なんかしないでいいってこと。お店で座るときにわざと彼と離れて座るとかしないで普通に座っていいし、親切にされたとき「いいです」「だいじょぶです」なんて遠慮せず素直に「ありがとう」って言っていいんだ。急接近でもなく、かといって離れてくのでもない、ゆっくり少しずつのバランス感覚を身につけていこうね。■羽林由鶴さんからのメッセージ精神的に大人な男子をゲットする方法、だんだんわかってきたかな。精神的に大人な男子と相性がいいのは、精神的に大人な女子。だから、メイクやファッションを大人っぽくしなきゃダメってことじゃない。自分の好きなオシャレをしててだいじょうぶだよ。同じように、男子だって見た目がおじさんでもチャラくても関係なく精神的に大人な人がいるんだ。よく考えてみたら意外とあなたの身近にも大人な男子がいるかもしれないよ。ライバルたちが見逃してる掘り出し物を見つけて、幸せな恋愛ライフを送っていこう。(羽林由鶴/ハウコレ)
2014年11月05日シミができるのは紫外線が最も多い原因だと思われているけれど、実は精神的ストレスも想像以上に強力な老化作用をもたらすって知っていましたか?ストレスが増えると体内では活性酸素が大量に発生します。この活性酸素はDNAを傷つけ、老化のもとになると言われています。シミ、シワはもとより、がん、動脈硬化、糖尿病などの引き金になることもよく知られていますね。実は、ある製薬会社が20~60歳の女性135人を対象に、精神的ストレスとお肌のシミの状態を調査したところ、さらに詳しい関係がわかってきました。ストレス度合いを「低」「中」「高」の3段階に分類してシミの面積と比較分析したところ、ストレスが「高」のコは、「低」のコに比べ、シミの面積が約3倍広くなっていたとか。しかも、年齢が若いコほど、その現象は顕著に表れていたそうで、一方、年齢が高くなるほど、シミに加えてシワも増えていたとの結果が。また、精神的ストレスによるシミは、額に多く発生していたことがわかっています。不思議な話ではありますが・・・。面白いことに、同調査では、精神的ストレスと血中ビタミン濃度との関係も調べていて、ビタミンB群(B2 、B6、ナイアシン)が血中に多いコは、シミの出来方が少ないこともわかっています。ちなみに、ビタミンCやビタミンEの血中濃度が高いコは、強いストレス下にあっても、シワの発生が抑えられるそうなのでストレスに負けないよう、ビタミンB、C、Eを日ごろから意識して摂取したいものです。そして、できるだけ楽しいことを考えたり見たりするよう工夫して、精神的ストレスをけ散らしてしまうのが、高い化粧品を使ってケアするより、よっぽど効果的かもしれませんね。(ビューティ&ダイエット編集部)
2012年06月03日世界的に有名なバレリーナのシルヴィ・ギエムが10月20日に会見を開き、『HOPEJAPANTOUR』に込めた思いを語った。シルヴィ・ギエムのチケット情報会見でギエムは「3月11日、私はロンドンでリハーサル中に東日本大震災のニュースを聞きました。日本にはたくさんの友人達がいますが、何もできない自分への葛藤から、日本への支援へと動き出しました」と今回の来日意図を説明。また、日本では封印した、ギエムの代名詞とも言える『ボレロ』をガラ公演と岩手・福島公演に選んだ理由についても触れ、「私にとって特別な日本ツアーになります。大好きな作品だし、精神的にもポジティブで、パワーを与えられる作品だからこそ選びました。今までは肉体的な『ボレロ』でしたが、今回は感情的な『ボレロ』になったかもしれない」と話した。また、同じく日本を愛した振付家の故モーリス・ベジャールについても「彼が生きていたら、来日して同じこと考えていただろう」と述べ、「ひとりの人間として、今後も(日本に対し)深い支援をしていきたいと思っています。これからも関係者と手を携えて、被災者への精神的な支えになりたい」とコメントした。ギエムの日本に対する熱く希望に満ちた『HOPEJAPANTOURシルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011』は、10月22日(土)より東京文化会館大ホールにて開幕。その後、被災地の岩手、福島で特別プログラムを上演し、愛知、兵庫、広島、福岡と全国を回る。なお、11月17日(木)から20日(日)まで、18世紀、ルイ15世統治下で軍人、外交官、スパイとして活躍し、人生の前半を男性、後半を女性として生きたと言われる「エオンの騎士」を題材にした新作『シルヴィ・ギエム&ロベール・ルパージュ&ラッセル・マリファント「エオンナガタ」』も東京・ゆうぽうとホールにて上演。ギエム、ルパージュ、マリファントの天才3人が火花を散らし、数奇な運命を表現する舞台。チケットは両公演とも発売中。
2011年10月21日「ストレスや精神的不安をリフレッシュする方法の一つに、ウォーキングがあります」というのは糖尿病専門医で大阪府内科医会会長の福田正博先生。『専門医が教える糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)の著書があり、ウォーキングと疾病についての研究を続けておられる先生に、ウォーキングが心身に与える影響について話をお聞きしました。■緊張した心身には、有酸素運動を精神的な不安があるとき、少し走ったり階段を上ったりしただけで息がハアハアと上がることはありませんか。福田先生は、「心臓の鼓動が大きい、速い、のどが詰まった感じがする。そんなときは自覚がなくても、ストレスがかかっている兆候です」と話します。また、福田先生は、「不安や緊張が続く状態では、もともとの病気が悪化し、また病気を発症する可能性が高くなります。このような状況のときこそ、心身をケアするために、ウォーキング、ヨガ、ピラティス、ラジオ体操など、手軽にいつでも実行できる有酸素運動を行いましょう。なかでも、年齢、世代を問わずに日常的な動作で継続できるという点で、ウォーキングをおすすめします」と言います。有酸素運動とは、十分な呼吸をしながら酸素を体に取り入れて行う運動のこと。福田先生は、「『ウォーキングをすると、自律神経の働きも整い、気分的な落ち込みを防ぐ』ということが分かっています。私の臨床例から、継続することでストレスに強くなるという結果もあります」と伝えます。■「1回5分のこまぎれウォーキング」でOKウォーキングというと、「1日1万歩」、「1回20分以上」を歩かないと効果がないなどとよく言われますが、精神的不安などで部屋にひきこもりがちな人はどうすればいいのでしょうか。福田先生は、「まず、『1日1万歩を歩かないと効果がない』というのは間違いです。5分歩いただけでも脂肪が燃えることが分かっているんです。不安な心でじっとしていると血流が悪くなるばかりなので、短時間のこまぎれウォーキングでも屋内ウォーキングでも、可能な範囲で歩いて、『血行がよくなったな』と感じることが大切です」とアドバイスをします。■いつでもどこででもできる屋内ウォーキング屋外でウォーキングができる状況ではない場合や、雪、雨、寒すぎる、暑すぎるときに実践したい「屋内ウォーキング」の方法を、福田先生に伝授していただきました。1.その場ゆっくりウォーキング精神的疲労が強い人、体調が悪い人は猫背になっています。まず、背筋を伸ばしてまっすぐに立ち、その場で深呼吸をしながらウォーキングを行います。そして、手を振って足を上げ、太ももと床が平行になった状態で2秒キープし、静かにゆっくりと足を下ろします。これを左右20回ずつ、その日の体力に応じて2~3セットを行います。2.ステップウォーキング背筋を伸ばしてまっすぐに立ち、前、後、右、左、後、左、前、とできる範囲で軽いステップを踏みます。スペースがある場合は、3歩前へ、3歩後ろへ、2歩左へ、2歩右へなど、いろいろとアレンジしてください。1分を1セットとして、2~5セットを行います。3.階段ウォーキング階段があれば、ゆっくりと体力に応じて昇り降りをします。一番下の段だけを利用する方法もあります。踏み台昇降の要領で、片足ずつ段に上がり、両足が上がったらまた片方ずつ降ります。これはけっこう体力を使います。2分もすると息が上がってくることも。体力に応じて、1分を1セットとして2~5セット。4.寝て自転車こぎウォーキング床にあおむけになり、自転車をこぐ要領で足を左右交互に上に押し出します。腕は体の脇に置いて力を抜き、足首とひざは90度にします。左右20~50回を1セットとして2~5セット。これはひざや腰に負担が少なく、リハビリに用いられる運動の一つです。5.ヒップウォーキング床に座り、足を前に出して腕を振りながらお尻で前へ5歩、後ろへ5歩、移動します。場所がなければ、1~2歩ずつの前進と後進を繰り返します。これは腹筋や骨盤まわりの筋肉をも使い、運動不足でとどこおりがちなそけい部(足のつけ根)のリンパの流れを促します。「これらは、全部をする必要はありません。気分に応じて体力次第で、できる方法からはじめてください。けっこう、筋肉に効いているのが分かるはずです」と福田先生。また、屋内ウォーキングを行うときの注意点として、福田先生は次のことを述べます。●1セットをしたら、手足を揺らすなどして1分~3分の休憩をはさむ●壁や周囲の物に手足をぶつけないように●フローリングの部屋では、厚めの靴下をはくなどして足をガードする●すべらないように足の裏にストッパーがついているソックスがおすすめ●階下や近所の迷惑にならないよう、足の上げ下げは静かに行う。それでこそ、筋肉に働きかける効果がある●運動前後はできるだけストレッチを行う不安で頭を抱えているよりも、少しでも歩くほうが心も体も健全な方向へ動いていく。体に酸素を取り込んで全身の血流を促すウォーキングは心身の疲労回復に適していて、屋内でもすぐに始められる方法がある――。周囲のストレスフルな人たちにもすすめながら、文字通り、1歩ずつ前進したいと思います。監修:福田正博氏。大阪府内科医会会長。「ふくだクリニック」(大阪市西淀川区。院長。名医として数々のメディアで紹介され、著書の『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(アスキー新書780円)、『専門医が教える糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書756円)が話題です。(阪河朝美/ユンブル)【関連リンク】【コラム】専門医の教え。重要なのは「順番」食べ順変えるだけダイエット!【コラム】健康を守る!地震発生後に気をつけること【コラム】ピラティス式。プチパニックを癒やすための5つの方法
2011年04月01日ちょっとしたことでイライラし、何かとすぐに落ち込んで……。もっと精神的に強かったらいいのに、と思うことはありませんか?私はあります。小さいことに一喜一憂せず、常に仏のような穏やかな気持ちでいられたら、もっとラクに生きられるはず。「ああ、強くなりたい」、そんな思いを胸に、都内にある真言宗のお寺『天光寺』にて修行の体験をしてきました。温室育ちの私は果たして、修行によって何か変われるのでしょうか。天光寺は、東京の奥地である西多摩郡という立地。朝早くから電車を乗り継ぎ、バスに揺られて約2時間。バスを降りてからさらに山道を登ってようやくたどり着きました。苦手な早起きに、バス酔い、山登り、慣れない登山による靴ずれ、この時点ですでに"修行"が始まっているような……。到着し、まずは行着(ぎょうぎ)と呼ばれる服装に着替え、さらにけさ懸けを身につけます。本日ご指導いただく僧侶の相賀聖覚(あいが・しょうかく)さんの前に正座。そして、あいさつやお経の練習をたっぷり行います。たとえば、"朝のあいさつ"は「おはようございます、本日も一日よろしくお願い致します」と、普段出したこともないくらいの大声で何度も言います。同じフレーズを何十回も言うため、途中で集中が途切れて足をモゾモゾさせていたら、「集中できませんか?」と諭されました。……いや、その、集中力がないもので、すみません。このとき、「もっと大きな声で、語尾までしっかり発音して、おなかから声を出して!」と腹式呼吸や発声法も学び、まるで演劇部のよう。腹式呼吸は、長い時間お経を読んだり、瞑想(めいそう)をしたり、あらゆる修行を進める上で大事なのだとか。体験修行で学ぶお経の中で、最も大事でよく使うのは「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」。これは、真言宗をひらいた空海(=弘法大師)に、お力をくださいませ、と祈るような意味があるのだそう。昼食を終えたあとは、"光明真言(お経の一つ)を1,000回唱える修行"、"瞑想の作法"、"写経"を少しずつ学びました。写経では、書く前に"家内安全"、"良縁成就"などの願い事を思い浮かべ、無心になってひたすら書き写します。お坊さんいわく、「余計なことを考えるなど雑念が入ると、それがすべて字に現れます。写経することのみに集中し、字は強く、濃く書いてください」とのこと。そしていよいよ修行の真骨頂、滝に打たれる時間です。滝行(たきぎょう)の前には、"お百度参り"を必ず行います。お百度参りとは、弘法大師像と、石の間の、約20mの区間を全力で走って往復し、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱える……というのを30分ほど繰り返す儀式のこと。体育や部活でやる"シャトルラン"に近いです。運動部出身としては、ここで音をあげるわけにはいきません。ときおり、お坊さんたちから「もっと速く走ってください!!」とはっぱをかける声が飛んできて、ますます部活を思い出します。お百度参りははだしで全力疾走するため、すっかり張り切ってしまった私の足の裏の皮は、終わるころには無残にむけまくっていました。足裏の生傷に嘆く暇もなく、滝へ参ります。この滝にはつい最近、小島よしおさんも訪れたのだそう。滝へ向かう途中、お坊さんたちが「iPhoneを買ったんですけど、使いこなせてなくて」と、俗世間っぽい会話を楽しんでおり、ぐっと親近感が増しました。滝に入る前に、塩や酒を全身にかけて身を清め、近くの川でくんだ水を頭からかぶります。この日は、だいぶ暖かくなってきた6月半ば。とはいえ、川の水は鬼のような冷たさで、この時点ですでに軽く泣きそうです。グスッ。そしていよいよ、滝の中へ……。「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と繰り返し唱えながら、ゆっくりと入水。滝の下にたどり着き、水が体に当たると……「ぶは……!?べっ!あばぶ……!!!$%#%!&$☆※÷!」(心の中の声)「無理!!寒い!!冷たい!!と言いたいのにそれすら言えないほど寒い!!!」もう、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」を唱えるどころじゃありません。「な」の字すら言えないこの寒さ。全身の震えが止まらず、ゼエゼエゼエゼエ!と息をすることすらままならず。お坊さんは涼しい顔で「心を無にして、もう少し滝の奥の方まで行ってみましょう。滝からいいパワーをもらい、自分の中の悪いものを浄化させましょう」と言いますが、それどころじゃありません。結局、数秒滝に当たり、やっぱり無理、と外に出て、もう一度滝に挑み、やっぱり無理、と外に出て、と出たり入ったりを繰り返して、途中でギブアップ……。本当は、数十秒は滝に打たれ、さらにその場に座って瞑想を数分しなければならないのですが、とてもじゃないけどそんなことできる気がしませんでした。「……これ、真冬にやる人もいるんですよね?」と聞くと、お坊さんは「ええ、もちろん真冬でもやりますよ」とニッコリ。おそろしい話です。滝に打たれた経験は、今まで生きてきた中で、最大級の苦しみでした。ただ、あの苦行を思えば、今までの人生でのつらかった出来事はちっぽけなものに見えてきます。今後も、滝に打たれる以上の苦しいことは、きっとめったなことでは起こらないでしょう。そういう意味では、少し、強くなれたのかもしれません。今回、私は日帰りで体験修行をさせていただきましたが、二泊三日でみっちり修行するコースも用意されています。「うつや引きこもりで悩む人や、自分を変えたいと思っている人が修行にいらっしゃいます。来たときとは、見違えるように変化する人もいますよ」(僧侶・相賀さん)とのこと。日々、何かにくすぶっている方は、思い切って滝に打たれに行ってみてはいかがでしょうか。苦行の先に、新しい世界が見えてくる……かも。(朝井麻由美/プレスラボ)※モテたい、良い人だと思われたい、と煩悩だらけのコブス横丁に、新たな風が吹きました。(編集部:梅田)【関連リンク】【コラム】仏道に入りたいのですが、どうしたらいいですか?【Q&A】神社とお寺の違いって?【まとめ】仕事力を鍛える新着&ランキングページ
2010年07月13日説明も音楽も一切なしの“観察映画”を確立させ、各国の映画祭で喝采を浴びた想田和弘監督が、タブーとされてきた精神科にカメラを入れ、いまの日本人の精神のありようを映し出した『精神』。本作が6月13日(土)に公開初日を迎え、想田監督に加え、本作の舞台である精神科診療所「こらーる岡山」の山本昌知医師、そして参議院議員の川田龍平氏による舞台挨拶が行われた。公開前より、昨年の釜山国際映画祭やドバイ国際映画祭など各国の映画祭で4冠を達成し、そのテーマ性から国内でも高い注目を集めていた本作。初回上映前には、200人以上の観客が長蛇の列を作り、一番乗りの観客に至っては約2時間前から並ぶほど。その後も客足は途絶えず、4回全席満席の盛況スタートとなった。想田監督は「感謝申し上げたいのは、出てくださった患者さん。精神障害や精神疾患というものに対しての差別や生きにくい社会があります。今回はあえてモザイクをかけないで撮影しましたが、不安もある中で最終的に納得して、みんなに見てもらおうという気持ちにまでなってくれました」と感謝の挨拶。自身の経験が本作のテーマと向き合う原点となったことを明かし、「この映画が、議論や話し合いのきっかけになってほしい」と思いを伝えた。はるばる岡山から駆けつけた山本先生は、この盛況ぶりに感激の表情。「常として、当事者の人にはそれぞれ自分たちを理解してほしいと思っているけど、うまく伝わらなくてもどかしいと思っていました。決定するのは患者さん、私たちはそれをどう助けるかだけ。この映画はごく一部、全部と思わないでほしい。みなさん、“らしさ”を尊重して生きていってください」と現場からのメッセージを観客に贈った。自身もHIV訴訟でカミングアウトするという経験がある川田議員は、映画に登場する当事者たちに対し、「出るということは、伝えたいことがあるということ。そこを汲み取ってほしい」と共鳴のコメント。「周りの人が受け入れてくれるかどうかもあるが、まずは自分で作る自分の差別があるのではないか。一方通行のコミュニケーションは伝わらない。いま、私は参議院議員の仕事をしていますが、一方的な法もあります。もっといまの社会に関心を持ってもらい、自分のこととして見ていけばいいと思う」と力強い言葉で現状を語った。さらに、上映終了後には渋谷区の美竹公園にて、青空の下、山本先生による“公開生き方相談”が開催。なかなか相談の場が限られる中で、当事者、介護ヘルパー、精神医療医学を勉強する学生など、様々な相談者が殺到し、約1時間で16人もの相談に答えた。中には、涙を流す人の姿も。『精神』はシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開中。■関連作品:精神 2009年6月13日よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開© 2008 Laboratory X, Inc.■関連記事:新たなタブーに挑んだ想田和弘監督のトークショー付き『精神』試写会に10組20名様ご招待タブーに切り込む!“精神”から日本社会を照らす想田和弘監督最新作がベルリン出品
2009年06月16日