生理痛や肩こりもつらいけれど、頭痛にも頻繁に悩まされているという人、多いのではないでしょうか。その頭痛、もしかしたら天気の変化が起こす「天気痛」かもしれません。体内の気圧センサーが作動、自律神経の乱れで起こる頭痛がある季節の変わり目や梅雨や台⾵シーズンなど、気象の変化によって引き起こされる体調不良は⼀般的に「気象病」と呼ばれています。症状は、倦怠感や肩こり、めまい、頭痛、関節痛など。その中でも痛みを伴うものを「天気痛」といいます。「天気痛」の中で代表的なものは頭痛です。天気の変化に伴う頭痛は、温度や湿度、気圧が⼤きく変化すると耳の奥にある「内耳」と呼ばれる気圧センサーが作動し、自律神経が乱れて起こります。この頭痛は、たいてい片頭痛を持っている人に多いのが特徴です。他に、冷えやむくみがある人、乗り物酔いしやすい人も、天気の影響を受けやすい傾向にあります。知っておきたい、頭痛の種類と対処法頭痛は、命に別状はない⼀次性頭痛と、命に関わる⼼配のある⼆次性頭痛に分けられます。⼆次性頭痛は、くも膜下出血、脳出血、髄膜炎などの頭痛の症状が出るもので、すぐに病院を受診する必要があります。⼀次性頭痛は3つに分類され、それぞれの症状や治療方法が異なります。■片頭痛症状:ズキンズキンという脈動性の痛み対処法:暗くて静かな部屋で安静にする■緊張型頭痛症状:締め付けるような痛み対処法:ストレッチや体操、体を温める■三叉神経・自立神経性頭痛症状:針で刺すような痛み対象砲:規則正しい生活、体を温めるいずれの頭痛も自分でできる対処法がありますが、薬を用いるのも有効な方法です。鎮痛剤や筋弛緩剤、抗けいれん剤などのほか、漢方薬を用いて治療することができます。漢方薬を使う場合、例えば片頭痛なら呉茱萸湯、緊張型頭痛なら葛根湯など、症状だけでなく体質に合わせ、医師の診断のもとで処方されます。「頭痛くらいで」と思わず、医師に相談してQOL回復頭痛を我慢したり、頭痛のせいで約束をキャンセルしたりするのはつらいもの。人生の幸せ度が頭痛のために下がるのは悲しいことです。仕事に支障をきたすほどの頭痛や、外出をためらうほどの頭痛がある方は、かかりつけの医師に相談してみましょう。
2022年06月17日若いころから 、仕事や恋の大きなトラブルがあった際には、夜眠れないほど落ち込むことがありました。ただ、それらはあくまでも一過性のことで、トラブルが解決もしくは気持ちが切り替わりさえすれば乗り越えられてきました。しかし、40代後半となってからの私は、日常的にイライラし、落ち込み、夜に熟睡できない状態が恒常化するようになってしまいました。周りの人に理由もなく常にイライラ40代後半になってから、何げない人との会話にいちいちカチンときてイライラするようになりました。さらには自分の気持ちの中だけにはとどめ切れず、イライラが爆発してブチ切れたりすることも。例えば、買い物先の店員の言動や電車の中での他人のやり取り、テレビのニュースなどを見てもいちいちイライラして、時には「意味わかんないんだけど」とか「ばかじゃないの」と独り事を言うようなヤバイ状況になっていました。自分でもよくわからず、常にイラついていました。気付くと眉間にシワが寄っているので、どんどん見た目も老け込んできたようでした。このままではどんどん嫌な自分になっていくのでは……と心配になり、近所にある女性内科という更年期外来のようなクリニックで診察してもらいました。診断の結果は、更年期症状とのこと。「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」という漢方薬を処方されました。毎日服用しなくても、症状が気になったときだけ服用すれば良いとのことでしたが、しばらく続けて服用したところ、心なしか常にイライラと尖っていた気分が和らいだ気がします。気分が落ちているときがほとんど若いころも気分が落ち込むときはもちろんありました。しかし、40代後半になるにつれて決定的に変わってきたのは、ウキウキとした高揚感やドキドキとするときめき感がなくなり、明るい気分でいるときよりも、どよ~んとした気分でいることのほうが圧倒的に多くなったことです。これではダメだと思い、気分を上げる方法を模索していたところ、アロマテラピーに触れる機会がありました。アロマテラピストによると、アロマテラピーには、免疫力に関係するNK細胞活性値が上昇したり、女性ホルモンのエストロゲン濃度が増加したり、副交感神経の高まりによって心臓から血液を全身に送り届ける動脈の機能が改善したりなど、多くの効果があるとのことです。アロマテラピストの方に、気分が上がる精油はないかと尋ねたところ、ローズマリーやレモングラスなど柑橘系の香りが気分をリフレッシュさせ、元気にしてくれるということでした。それからは通勤時にも柑橘系のアロマミストを持ち歩くようになり、仕事の休憩時間などに自分にシュッとスプレーをすると、なんともさわやかな香りで脳が刺激され、頑張ることができるようになりました。中途覚醒型不眠の症状により、万年寝不足40代になってから、春や秋といった季節の変わり目に眠れなくなることが度々あります。眠くて仕方ないので夜は布団に入るとすぐに眠れるのですが、なぜか決まって2、3時間後に目が覚めてしまうのです。あまりにもぱっちりと目が覚めてしまうのでもう朝になったのかと時計を見ると、まだ夜中の2~3時ぐらい。その後トイレに行ってもう1度寝ようとしてもなかなか寝付けません。おそらく中途覚醒のタイプの不眠の症状ではないかなと思いました。更年期症状の漢方薬を処方される際、この不眠についても言及されていました。焦ると余計眠れなくなると聞くので、もう開き直って用事をこなそうと試みたこともありますが、夜中に体を動かしたり、頭をフル回転させたりすると、余計眠れなくなりました。いろいろと試した結果、そんなときはスマホやパソコンのブルーライトを浴びると余計眠れなくなるため、せいぜい静かに読書程度をするのが一番だとわかりました。また、鎮静作用、安眠作用のあるラベンダーの精油を枕に1滴垂らしたり、カモミールティーを飲んだりして寝るのもよかったです。まとめこれといった理由もなくどうしようもなくイライラしたり、落ち込んでいたり、なぜか疲れているのに夜中に起きてしまう日が続いたりと、40代後半になってから、いわゆる更年期の症状が顕著に現れてきました。そんなとき鏡を見ると、若いころと比べて醜くなった自分が映っているので余計に落ち込みます。でも、これを放置して嘆くのではなく、これは誰しもが経験する当然の現象であり、これを通り過ぎるとラクになると客観的に現状を見つめたことで少し気が軽くなりました。専門医に相談したり、アロマやハーブティーなどの民間療法で対処したりして、うまく乗り越えていきたいと思います。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)★関連記事:「きらわれてる? 怒られる…?」強い不安感に襲われる日々!もしかして更年期の症状なの?【体験談】★関連記事:「40代になって落ち込むことが増えた…」生活習慣を見直して気持ちが明るくなった理由【体験談】★ウーマンカレンダー更年期のお悩み記事をもっと読む著者/輝歩 (51歳)勤続約30年となる会社員を務める傍ら、ファイナンシャルプランナーとストレッチインストラクターの副業をこなすシングルマザー。
2021年11月28日更年期障害の症状には個人差があり、不調はさまざま。めまい、不眠、イライラ、うつ、ほてり(ホットフラッシュ)、動悸などなど。動悸の症状が出た友人は、心臓ということもあり不安になって速攻で病院へ。更年期うつの友人も、無気力でまったく外に出られなくなり、家族に連れられて病院へ。私もホットフラッシュの症状が出て、婦人科を受診。そのときの体験談を紹介します。熟睡できないほどのホットフラッシュやってきたのはホットフラッシュ。突然、頭・顔・首の辺りが急に熱くなり、じんわり汗が。時々だった症状が日に日に回数が多くなり、真冬でも常に扇子を手放せなくなり電車の中でパタパタ。ランチの途中でもパタパタ。しばらくはなんとか扇子で暑さをしのいでいたけれど、睡眠中にも突然やってきて目が覚めてしまい、ピークのときは2時間おきくらいにホットフラッシュがやってきて熟睡できない! 熟睡できなくなるので体調も崩しやすくなり、さすがに婦人科で受診することにしました。中国三千年の歴史を信じ漢方に期待!最初に処方されたのは、ホットフラッシュに良いとされている漢方薬「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)。漢方は徐々に効果が出てくるので、しばらく服用を続けました。が、なかなか治まらないホットフラッシュ。ならば漢方を替えてみようと「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)に。それでも、効いているのかいないのか、飲み続けて漢方の効き目を根気よく待つしかないのか? 中国三千年の歴史はいつ効くのか?ホルモン補充療法で症状が一気に改善。でも…更年期障害の治療には、漢方のほかに「ホルモン補充療法」が一般的だそうです。加齢とともに減った女性ホルモンを飲み薬や貼り薬で補充する方法です。更年期の動悸やうつで悩む友人のほとんどが、このホルモン補充療法をしたら「症状がまったくなくなったわよ!」と、太鼓判を押すほどに効果があるようです。漢方でなかなか改善が見られないため、医師にも「ホルモン補充療法をやってみますか?」と、すすめられました。でも、自分の中ではなんとなく体にホルモンを入れる怖さがありました。また女性ホルモンが足りなくなった体に自然と慣れていくことが、将来的に体へのダメージが出ないのではないかと思い、素人判断で「もう少し頑張ります」と先送りにしました。お肌つるつる、すべすべ!恐るべしプラセンタ注射そこで、漢方の次なる治療ですすめられたのが「プラセンタ注射」。プラセンタは美容皮膚科などで美容目的でも使われているものです。体にホルモンを入れるのは抵抗があると言っていたものの、美容に効く上に保険適用で美容皮膚科よりお安くできるなら一石二鳥と、二つ返事で「プラセンタ注射」のスタートです。現在、週に2回のペースで注射し、半年経過。ホットフラッシュの症状が若干和らいだような気がする、というより肌の調子が絶好調! 固太りだった体がなんとなく女性らしくふわふわになり、顔に限らずお手入れをしていない体全体の肌がしっとり潤う感じ。それでも、まだホットフラッシュを完全に封じ込めた訳ではないので、これでダメならホルモン補充療法を考えます。もちろんプラセンタ注射と同時進行で。まとめ恐るべしプラセンタ注射。病院に週2回も通うのは面倒ですが、ホットフラッシュの症状は和らいできた気がしますし、やめたら元の肌に戻るのが怖いのでせっせと通っております。ホルモン補充療法も検討しつつ、更年期を乗り切っていきたいと思います。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/天神尚子先生(三鷹レディースクリニック院長)【天神先生からのアドバイス】プラセンタ注射は美容外科や皮膚科、婦人科でもよく使われるようになり、患者さんによってはとても効果がある治療です。ただ、プラセンタ注射はヒトの胎盤から抽出されるもので、病原体侵入による感染リスクをすべて否定できているものではありません。また、プラセンタ注射をすると献血はできなくなるため、同意書を書く必要もあります。十分にリスクを理解した上でおこないましょう。★関連記事:「生理っていつ終わる?」生理痛と出血量の多さが不快…低用量ピルと黄体ホルモン剤で快適に閉経へ【体験談】★関連記事:「疲労感、イライラ…プレ更年期!?」 43歳、更年期検査を受けてみた!(前編)【体験談】★ウーマンカレンダー更年期のお悩み記事をもっと読む著者/井上 裕紀子(54歳)読モを経て、ファッション誌、情報誌などのフリーライターへ。しわ、肝斑、たるみ、更年期太りと苦しい戦いを続けつつも、その先にいったい何があるのか見えない迷える五十路女子。
2021年10月30日日常生活に支障が出るほどの疲れ、めまい、イライラやのぼせ、不眠などは“更年期症状”ではなく “更年期障害” と呼ばれます。病院を受診するにしても、受診の前にいろいろな対策があることを知っておけば治療はよりスムーズに進むでしょう。更年期障害の対策として主な方法を産婦人科医の駒形依子先生に聞きました。ホルモン補充療法でエストロゲンを補充更年期障害の治療というと、まずホルモン補充療法が思い浮かぶ方も多いでしょう。「ホルモン補充療法とは、更年期に急激に減少した女性ホルモンのエストロゲンを薬で補充する方法です。のぼせやほてり、発汗や動悸、うつやイライラ、関節痛や頭痛といった身体的、精神的症状の緩和が期待できます。また、肌や髪にツヤが出るなど美容面でも効果を実感する人が多いようです。使用期間の目安は5年ですが、効果の高さからやめられない方もいます。また、乳がんなどがんのリスクも報告されていますので、がん検診と並行して進める必要があります。メリットとデメリットをよく吟味してから治療をスタートすることをおすすめしています」(駒形先生)。漢方薬で体全体の調子を整える駒形先生のクリニックでは、更年期の女性に対して漢方を処方することも多いそうです。「漢方医学は、身体全体の状態を総合的に診て、崩れたバランスを正しく戻す治療をおこないます。一人ひとりの体質が重要で、同じ症状でもその人の体質によって処方される漢方薬の種類が異なるというのも大きな特徴です。身体全体の調子が整うことで、一つの症状だけでなくほかの症状が改善されることもあります。更年期障害の場合は、血の巡りを良くする漢方薬を処方しつつ、生活習慣のアドバイスをしていきます」(駒形先生)。整体・鍼灸・アロマセラピーで血流改善薬以外にも対策はあるのでしょうか。「更年期障害は下半身の血流が悪いことも原因です。骨盤や骨格の歪みを正して血流を良くするために、整体にかかるというのも方法です。同じように、鍼灸も体のツボを刺激して血流を促すという点では効果が期待できます。アロマセラピーは香りの癒やし効果が自律神経のバランスを整えてくれますし、下半身のマッサージなどに使用すれば血流改善につながります。セルフケアでもいいですが、たまにはサロンでマッサージしてもらうのもリラックスできて良いと思います」(駒形先生)。まとめ駒形先生によれば、ホルモン補充薬にしても、漢方薬にしても、薬は活用するもので頼らないほうが良いということでした。ひとまず薬でつらい症状を緩和できたら、そのままにするのではなく、不調の原因となっている生活習慣や環境などを改善することがむしろ大切なのだそうです。取材・文/mido(49歳)ライター歴25年。35歳で第1子、38歳で第2子出産。最近、たるみが加速して二重あごが悪化。身長153㎝なのにLサイズの服が少しきつくなってきて……人生最後のダイエットを計画中。★ウーマンカレンダー更年期のお悩み記事★関連記事:更年期のぽっこりおなかはなぜ?太る理由と対策とは【内臓脂肪編】★関連記事:「え? 更年期症状と自律神経失調症って同じ?」自律神経はどう整える?【医師監修】著者/監修/駒形 依子 先生東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力~女医が教える「人には聞けない不調」の治し方(KADOKAWA)』。
2021年09月27日ある日、何かにつかまらないと立っていられないほど体に力が入らなくなり、内科を受診しました。医師によると、睡眠不足から来る過労が原因とのこと。それは自分の生活を見直すきっかけにもなりました。ある日突然、体に力が入らなくなった!その日は朝起きたときから体調が変でした。いつもよりも体が重かったのです。しかし、仕事も家事も休むわけにはいかない……。簡単なお弁当を作り、体を引きずるようにして出勤しました。車通勤だったので、事故を起こさないかそれだけが気がかりでした。しかし、出勤しても体に力が入りません。平衡感覚がなくなって、何かにつかまっていないと立っていられないぐらいに。時間が過ぎるのがいつもよりも遅く感じました。その日に限って体を動かさなければならない仕事があったので上司に相談。午前中で早退して受診することにしました。内科を受診、睡眠導入剤と漢方薬を処方された何科を受診すべきかわかりませんでしたが、とりあえず内科を受診。体の具合を伝えたところ、睡眠時間から普段の1日の流れについて聞かれました。血液検査も受けて、1時間ほど待って検査結果が出ました。医師からの診断結果は過労と睡眠不足ということでした。40代半ばという更年期に差しかかりつつある年齢なので、自分では年齢にも関係あるかもしれないと思っていましたが、医師からは特に年齢に関する指摘はありませんでした。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)という漢方薬を処方され、頓服薬として睡眠導入剤も必要かどうか聞かれました。自分では薬に頼らなくてはいけないとまでは思っていたので「いらない」と答えたら、「今、しっかり寝ておかないと体力は回復しませんよ」と医師に説得されました。たしかにそのとおりだと思い、睡眠導入剤も処方してもらうことに。早めに床に就き、睡眠導入剤を服用して就寝しました。仕事に家事に…ストレスがいっぱい翌日は久しぶりにスッキリと目が覚めました。薬の作用が朝まで残っていないか心配でしたが、その影響はありませんでした。思えば、医師に睡眠時間を聞かれるまで自分の生活を振り返ることもありませんでした。改めて自分の生活を振り返ってみると、私の平均睡眠時間は3~4時間。仕事から帰ってきたあとにすぐ夕飯、食器洗い、夜のうちに洗濯機を回して就寝。ゆっくりテレビを見る時間もありません。布団に入ってからも、ちょっとした物音で目が覚めてしまったり、トイレに起きてそのまま寝付けなくなり朝を迎えたり。スッキリと眠れていないことが多かったのです。仕事と家のことに追われているうちにストレスがたまり、ぐっすりと眠れなくなっていることに気が付きました。内科の受診は自分の生活を見直す良いきっかけになりました。睡眠導入剤を使って寝たのは2回だけ。あとは意識して早めに寝るようにしました。家事も仕事も今までと変わらずありました。しかし、睡眠不足になってしまっていたのは、なんでも完璧にしてしまおうという性格が災いしていたと思います。できなかったとしてもしかたない。そうやって自分を許そうと思いました。睡眠導入剤は2回でやめましたが、処方された漢方薬は続けて飲みました。薬の効果があったのか、自分の生活様式を見直そうと思ったのがよかったのかわかりませんが、3カ月ほど続いていた3~4時間だった睡眠時間も、処方薬がなくなるころには6~7時間に増えていきました。まとめ以前は目が覚めても体がなかなか動きませんでしたが、睡眠時間が増えたことで疲れが取れ、朝から動けるようになりました。そしてイライラしたり、物事を悪く考えてしまうことも減ったように思います。そして、決して無理をしてはいけない、もっと自分を大事にしようと手を抜けるところは抜いていきました。当たり前ですが疲れた体を休めるのも、ストレスのたまった心身を和らげるのもまずは睡眠なんだと、今回のことで改めてそう思いました。気が付くとちょこまかと動いてしまう性格ですが、倒れてしまうと職場にも家族にも迷惑がかかります。そのためにも、いつもゆっくり寝てリラックスした時間を持ち、体を休めようと思いました。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)★関連記事:小指が動かない!50歳で始まった手指のこわばり対策【体験談】★関連記事:イライラ・疲労感…これって更年期?少しでもラクになるためにしたこと著者/おかひじき(47歳)「女は40を過ぎてはじめておもしろくなる」というココ・シャネルの言葉が大好きな男の子3人のシングルマザー。書くこと、食べること、写真を撮ることが大好き!
2021年09月01日更年期と思われる症状が現れ、日々の感情の起伏の波や疲労感に悩まされていました。状況を改善するためにおこなったことは、現状の自分を振り返り、悪習慣の改善と、運動や食事、睡眠にとって良いと思うことを実践することでした。さらに周囲に更年期症状への理解が得られるようになって、少しずつ状況が変化していった私の体験談をご紹介します。感情の波と疲労感に翻弄される日々もともとストレスをため込みやすい性格の私。40歳を目前に、感情の波がやたら激しいことと、疲労を感じやすくなっていました。パートの仕事も、体調不良から早退や欠勤することも度々あったのです。私の身に一体何が起こっているのだろうか……。調べてみると、私が抱えている悩みは更年期によくある症状と重なりました。更年期は閉経を挟んだ前後10年で、一般的には45歳からとされていることから、41歳の私の場合はプレ更年期にあたると婦人科で診断されました。ささいなことでイライラし、感情が抑えられないことはしょっちゅうでした。とにかく頭に血が上りやすく、導火線に火が付きあっという間に爆発する感じで、夫とすぐに喧嘩をしたり、子どもにきつくったりすることが増えて、家庭内もギクシャク。イライラから落ち着きを取り戻したときに、なぜあんなに荒れていたのかと自己嫌悪になっては繰り返すという負のスパイラルに陥ります。また一方で、気分が落ち込み、何もかも嫌になり、自暴自棄になることもありました。感情の振れ幅が大きく、コントロールが効かないのです。加えて、問題だったのが疲労感です。近所へ犬の散歩に出かけるだけでも、どっと疲れてしまい、横になった状態でしばらく動けなくなることもありました。とりあえず私は、今の自分の状態を知るために体調や心情を書き留めることにしました。仕事や家庭内の人間関係や気候の変化などによるストレスも悪化の要因になっていることがわかり、この振り返り作業は意味のあることでした。日常を観察すると、症状の有無や重さの波が見えてきたのです。生活の見直しと漢方薬でラクに更年期症状には、ホルモン補充療法や抗精神薬、漢方薬などの治療法があることを婦人科の医師から説明されました。漢方薬は心身の調和を図り、症状を改善する効果が期待できるそうです。婦人科で治療方法の話を聞いたときに、身体症状だけでなく、精神症状を抱える私には漢方薬が適しているのではと感じました。また、服用が長くなる可能性もあるため、副作用が少なくて安心な方法だと考え、処方してもらうことにしました。漢方薬の種類はたくさんありました。自分の症状や状態について、信頼できる漢方内科の先生に相談することで、自分の状態に合った漢方薬を処方してもらえました。初めは加味逍遙散(かみしょうようさん)を試しましたが、精神的な症状が強いことから、甘麦大草湯(かんばくたいそうとう)と真武湯(しんぶとう)の組み合わせが処方されました。漢方医の指示どおり必要なときに適宜飲むことで、心身の不調を緩和させることができ、気持ちも少しラクになりました。できることを実践し、周囲へ理解を求める更年期症状に限らず、食事・睡眠・運動は、健康に過ごすための三大要素だと感じています。食事は色彩りを良くすることで食材のバランスに気を配り、イソフラボンには女性ホルモンと似た作用があると知り、大豆製品を積極的に摂取するようになりました。また、睡眠は質も大切な要素だと感じます。香りはダイレクトに脳に届きやすいと聞き、リラックス効果のあるアロマを炊く、お風呂にゆっくり浸かって体を温める、寝具を寝心地の良いものにするなど、良質な睡眠のための環境づくりにこだわりました。運動はまったくする習慣がなかったのですが、手軽にできる散歩やヨガなど軽く体を動かすことから始めました。気分がスッキリする、仕事の生産性もアップするなどの相乗効果を感じたこともあり、無理なく続けられました。体に負荷をかけることにより、動悸や息切れ、体力不足の緩和につながっています。さらに自分のための時間を意識的に取ることを心がけました。好きなものを食べる、体をほぐす、あえて何もしない時間を作るなど、リラックスして心を開放する時間を持つのです。すると、心に余裕が出て、症状の波も以前と比べて緩やかになってきました。最後に、周囲からの更年期症状の理解が不可欠だと感じています。これまでは家事は自分の役目だと思っていました。家事を手伝ってもらうことに罪悪感があり、無理にでもやらなくてはとひとりで抱えていました。そこで、症状に波があり、家事をするのがつらいときがあることを夫や子どもに話して、私からも理解を求めました。そしてあるとき、食器の洗い物が片付けられていたのを見て、とても心がラクになったのを覚えています。夫と気持ちのぶつかり合いも次第に少なくなっていきました。家事は無理に自分ひとりでやるものではないのだと感じました。まとめ更年期症状による不調の波を緩和する術は、その人に適したものがあると思います。私は緩和するためにおこなった自分自身の振り返りが、悪習慣を見直すきっかけになり、つらいときには声をかけて助けてもらうほうがずっとラクだということに気が付きました。周囲の理解があると、手伝ってもらうことや心身を休めることに抵抗が少なくなりました。更年期をじょうずに乗り切るためにも、心のうちや症状のつらさについて、自分自身への理解を深めること、周囲のサポートを得ていくよう努めることは大切だと感じました。プレ更年期をきっかけに、健康や家族のありがたみを改めて実感しています。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)著者/はな(41歳)小学生の子どもがいる。料理をすること、ヨガや瞑想にハマっており、シニア犬とともにマイペースな暮らしを実践中。
2021年08月05日40代後半に突入し、体の疲れは感じるものの、心は30代のころより元気になってきたかな?と感じる今日このごろ。それは、生理前のPMS(月経前症候群)の症状が軽くなってきたからだ!と気が付きました。30代後半から、生理前の精神的なモヤモヤを感じ始めると憂鬱(ゆううつ)でしたが、今は「あれ、そういえば生理前だった、今月はPMSないな」と感じることが増えてきました。イライラ、クヨクヨに悩まされる日々30代後半のころの私は高齢の義父母との同居と2人の未就園児の子育てで、日々の生活に疲れを感じながらも、義父母からの小言なども気にせずにさらりと対応できていました。しかし、あるときから生理前になると、精神的なモヤモヤを感じるように。義父母からの小言にいちいち反応してしまい、口答えをしてはクヨクヨ落ち込んで、自分の精神状態が落ち着かないことに参ってしまいました。また生理前の、子どもへの怒り方が尋常ではなかったことから、PMSを疑うようになりました。低用量ピルから市販薬へ切り替えてPMSかを確かめたくて、ホルモン値を計ってほしいと婦人科を受診しました。現状を説明すると、ホルモン検査はしてもらえなかったのですがPMSの症状だと言われ、低用量ピルを処方されました。漢方も説明されすすめられましたが、即効性が欲しかったのでピルを選択。だんだん調子も回復していき、飲んでよかったなと心から思いました。でも、1つ気がかりなのは、血栓ができる可能性があるというピルの副作用でした。数カ月ごとに血液検査を受けなければならないのも面倒になってきて、飲み始めて1年後ピルをやめ、PMS治療の市販薬「プレフェミン」と「命の母」を飲み始めることにしました。ピルは毎日飲みますが、市販薬は自分がモヤモヤを感じ始めたときから、生理が始まるまでの間だけ飲みました。飲むことで、今の時期はPMSだからしょうがないねと自分を客観視できて、心を落ち着かせてくれるお守りのようでした。漢方薬でストレスが軽減!食事も見直し44歳になっても、毎月の症状に合わせ薬の量を調節しつつも、市販薬「プレフェミン」や「命の母」を毎月の生理前に飲んでいました。穏やかな性格の自分が、怒りの感情でいっぱいになるのに耐えられなかったからです。しかし、これらの薬を飲むようになってすでに7年が経過。このまま飲み続けて良いのだろうかと悩むようになりました。以前ほど子どもに手がかからなくなり余裕ができたため、もう1度自分の体に向き合おうと、45歳でPMS治療に特化した婦人科を受診。ホルモン値(プロゲステロン8ng/mL)から、PMSと診断され、漢方薬の「柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)」を処方されました。漢方薬は、最初は1日に3回飲みましたが、調子が良ければ1回に減らすことができるので薬を飲むストレスが減りました。実際に、今日は飲まなくても大丈夫だなと実感できたのには、びっくりしました。そのころ、書店で目にした『マンガでわかるココロの不調回復食べてうつぬけ』(主婦の友社/奥平智之著)を読んでからは、貧血がメンタルヘルスに関わっているということを知りました。そこで、若いころからの貧血を改善しようと鉄剤も処方してもらい、甘い物を減らして、マグネシウムや野菜スープ、たんぱく質などを増やすように自分の食事を整えていきました。まとめPMSと付き合い始めて約8年、漢方薬の服用と自分が満足できる栄養を体に与えることで、ようやくしんどい思いから卒業できそうな気がしています。家族を優先にして生活していたなかで不快な症状の改善を諦めず、自分の心や感覚を無視せずに向き合い、つらければつらいなりに病院に相談し薬を飲んだことで、最終的には自分に合う解決策が見つかったと思います。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)【駒形先生からのアドバイス】柴胡加竜骨牡蛎湯は胃もたれをする人がいますので、内服の際はきちんと診察を受けてください。
2021年03月13日お料理のスパイスから、体の不調の相談まで、台湾人には行きつけの漢方薬局があります。今回は、台湾で活躍するインスタグラマー・哈利(ハリー)さん行きつけの薬局〈六安堂國藥號(リョウアンタンゴウヤオハオ)〉を訪れました。行きつけの漢方薬局は、暮らしの相談相手でもある。薬の棚に生薬がぎっしり。人それぞれの処方がある。ハリーさんの買い物のルーティンは、新鮮な食材なら東三水街市場(ドンサンシュイジェシーチャン)と南門市場(ナンメンシーチャン)などの市場へ。漢方食材はなじみの漢方薬局と決まっている。「山椒、コショウなどの香辛料は、漢方薬局の方が質のいいものが手に入ります。漢方薬局のオーナーさんとの雑談でも勉強になりますし」とハリーさんは言う。疲れたときには十全大補湯。ケイヒ、シャクヤク、カンゾウなど10種類の生薬が入った漢方薬。疲労やだるさ、体の冷えなどに効果があるとされている。1包1日分、200元。免疫力を養う安迪湯。インフルエンザが流行する季節に体が強くなるように煎じて飲む人が多い。30分ほど煮出したらそのまま飲んで免疫力を養おう。1包1日分、50元。手軽な酸梅湯。青梅のジュースとして広く飲まれる漢方薬。食欲がなかったり、肉をたくさん食べたときなど、消化を促すために飲むといい。(こちらは別の薬局のもの)漢方薬局は台湾の街中にあるが、中でも有名なのが台北の迪化街(ディーファージェ)だ。20世紀の初頭から、台湾全土から乾物、漢方薬、布などを扱う商店が集まる商業エリアとして発展した。生薬は難易度が高いが、店先にスープキットも並んでいるので、日本人でも気軽に買い物ができる。台湾では日本のかかりつけ医のように、小さい頃から親しんでいる漢方薬局を持つ人が多い。また、大抵の家庭の冷蔵庫には漢方専門のパックが常備されている。体の調子に合わせて煎じたり、スープに入れたりと、自然に漢方薬を使っているのだ。特に有名なのは鶏肉を煮込んだスープ。各家庭ごとに味付けが異なっているという。もちろん、お茶でも漢方を取り入れる。菊花茶はその代表格で、そのままお湯を入れて飲んでもいいし、緑茶などとブレンドしても合う。目の疲れなどに作用があるとされている。こんなふうに漢方は、空気のように毎日の生活の中に流れて、みんなの健康をそっと支えてくれている。漢方は、台湾人にとってなくてはならない存在なのだ。〈六安堂國藥號(リョウアンタンゴウヤオハオ)〉開業40年以上。薬膳スープキットも販売。漢方クリニック併設。台北市中正區寧波西街9號02-2391-45679:00~21:00(クリニック14:00~19:00 )日休Navigator…哈利(ハリー)台湾で活躍するライフスタイル系のインスタグラマー。日々の暮らしの様々をアップ。料理教室を開くことも。Instagram:@intiwang※1元は029 3.66円です(2020年10月24日現在)。(Hanako WELLNESS 免疫力アップBOOK掲載/photo:Zi-chieh lin text:Phoebe wang coordination:Chen Tsuiwen translation:deby tsai)
2020年12月27日私は28歳での出産を機に少しずつ肩凝りを感じるようになりました。それまで肩凝りなどまったく関係のない人生でしたが、出産したころから時々肩に不快感を感じるようになり、年齢とともにだんだん本格的な肩凝りになってしまったのです。何をやってもなかなか改善することなくひどくなる一方だったのが、ドラックストアで薬剤師さんからもらったアドバイスによって、長年の肩凝りに終止符を打つことができたという体験談です。出産を機に肩凝りの不快感を知る私は妊娠するまで、運動不足になりがちな主婦向けにエアロビクスを用いた健康体操のトレーナーをしていたこともあり肩凝りとは無縁でした。そのため、レッスンに来る生徒さんたちの肩凝りの悩みを聞いても、実のところそのつらさを理解することはできませんでした。そんな私がなぜ産後間もなく肩凝りを感じるようになったのかは今でもわかりませんが、はじめのころは肩が突っ張るような症状だったので、レッスンでも取り入れていた肩周辺の筋肉をほぐす体操をすれば治るだろうと軽く考えていました。それに朝になるとその症状も消えていたので、特に悩みというほどのことではありませんでした。しかし、40歳になるころからは本当につらい肩凝りに襲われるようになったのです。肩に違和感を覚えるようになった出産後から、肩周辺の筋肉をほぐすなど血行を良くするような体操は自分なりにしていましたし、重労働など肩凝りを引き起こすような作業をした覚えもなく、なぜ肩凝りがひどくなったのかはわかりませんでした。肩凝り改善のために努力はしたけれど…40代に入るとひどい肩凝りが3日に1度ぐらい感じるようになりました。夕方になると肩がグーンと重くなり、力が入らなくなったり頭痛を伴ったりすることも。自分としては肩凝りに効く体操やストレッチを毎日おこなうようにしていましたが、だんだんそれだけでは解決できないのだと考えるようになり、ほかにも良いと言われることをいろいろ試してみました。人気の高い肩凝り用磁気ネックレスも試しましたが、私には特に肩凝りが緩和することもないまま、お守りのように肌身離さず毎日着けているだけという状態に。ほかにも小さな電気あんまのようなものも購入してみましたが、私には特に効果は感じられず……。また、肩凝りに良さそうな高価な枕も買いましたが、これといって症状が軽くなることはありませんでした。そんななかでも友人のすすめで首の周りをエアーでキュッと締め付けては緩めるといったストレッチ器具は、症状が出ているときに使用すると気持ち良く少しラクになるようにも感じましたが、やはり大きな変化はありませんでした。このように、どれも私にとってはっきり変化を感じられるものではなかったのです。最後に頼った漢方薬で肩凝りを克服私は子どものころから病院が苦手だったので、自力で肩凝りを改善する方法がないかとあがいていましたが、何を試してもなかなか改善されないため、もう病院に行くしかないと覚悟していました。そんなときに立ち寄ったドラッグストアで相談したところ、漢方薬を試してみてはどうかと薬剤師さんにすすめられたのです。症状のほかに血圧は正常か、冷え性ではないか、運動はしているか、夜はよく眠れているか、妊娠していないか、胃腸は丈夫かなどいろいろ聞かれました。私の場合、強いて言えば胃腸があまり強い方ではなかったのでそのことを伝えたところ、薬剤師さんからすすめられたのは「桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)」でした。桂枝加葛根湯は筋肉のこわばりを取り、痛みを和らげる効能があるという説明をしてもらいました。もし2~3カ月飲んでまったく変化を感じられないときは、ほかの漢方薬に変えたほうが良いかも知れないと言われましたが、3カ月ほど1日3回食前に飲み続けると肩凝りを感じる頻度が確実に減ってきたと自覚できるようになりました。また、肩凝りに伴う頭痛も減ったため、その後1年近く飲み続けたのです。現在は漢方薬を飲まなくてもひどい肩凝りに襲われることはほとんどなくなり、月に1回ぐらい軽い肩凝りを感じることがあっても翌日には治ってしまう程度なので特に気になっていません。まとめ私の場合は、薬剤師さんが選んでくれた漢方薬で長年の悩みだった肩凝りを克服することができてとてもラッキーでした。薬剤師さんによると、その人に合った漢方薬が見つからないと結果が思ったように出ず、あきらめてしまう人もいるとのこと。自分が肩凝りの苦しさを知らないときには、肩周りの体操をするなど血行を良い状態にすれば改善できると思い込んでいましたが、漢方薬を選んでもらったときに肩凝りの原因は人それぞれだということを知りました。そのため、ただ運動をすれば治るといった安易なことではなかったのだと、自分が肩凝りになってみて実感することができました。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
2020年10月01日かわいがっていた猫の突然の死は本当に悲しいできごとでした。それから1年近くたっても落ち込みが続き、イライラすることも増えていったのです。年齢的なことも考えると、これは単なるペットロスではなく更年期の影響もあるかも知れないと思うようになりました。そんな状態を乗り越える過程で経験した失敗や、最終的に漢方薬で乗り越えることができた体験を紹介します。落ち込みはペットロスだけではなかったはっきりいつからという境目はわかりませんが、「あれ? あれからずっとイライラしているなあ」と感じたのは46歳の秋ごろです。前年の秋に15年間家族の一員だった猫が急死したことから落ち込みが続くようになっていました。いわゆるペットロスだと思っていましたが、1年近くたっても落ち込みが続き、イライラすることも増えてきたのです。年齢的に見ても、これは更年期と関係があるのではないかと考えるようになり、ネットで調べてみると更年期には家族の死やペットロスがきっかけで、うつ状態になるケースもあるということを知りました。たしかにペットの死に対してだけでなく、いろいろなことに対して思考が後ろ向きになり、何かしているときでも急に気分が落ち込むことが増えてきたのです。そんな状態がとてもつらく、これが更年期の影響ならなんとかじょうずに乗り越えなければと思うようになりました。失敗からたどり着いた漢方薬更年期の影響で落ち込みが続いているならなんとか自分の力でしっかり乗り越えようと考えた結果、落ち込みを解決する方法をいろいろネットで検索していたときにスピリチュアルカウンセリングというものを知りました。そして、もしかすると後ろ向きになりやすいマインドが前向きになるのではないかと思い、早速受けてみることにしたのです。しかし、実際にカウンセリングを受けてみると、私にとっては雲をつかむような内容が理解できず、期待したほど私の心の安定にはつながらなかったのです。結局私にはあまり合わないと感じ、それ以上のカウンセリングは続けませんでした。その代わりに、小さいころから風邪のときに飲むなど慣れ親しんでいた漢方薬を飲んでみることにました。そこで今の状態に合う漢方薬はないかとドラッグストアの薬剤師さんに相談したところ、すすめてもらったのが「加味逍遥散(カミショウヨウサン)」という漢方薬でした。漢方薬を飲むことで心が安定してきた薬剤師さんにすすめられた「加味逍遥散」を飲み始めましたが、漢方薬のほとんどは速効性は期待できないと聞いていたので、大きな変化をすぐに期待していたわけではありません。しかし、以前はただペットを失って「悲しい」「むなしい」「イライラする」という状態でしたが、漢方薬を1カ月程飲み続けると気持ちが少し落ち着いてきました。漢方薬の効果もありますが、「小さいころから慣れ親しんでいる漢方薬を飲んでいるから大丈夫!」という気持ちになれたことが大きかったように思います。それからは徐々に落ち込みやイライラが軽くなっていきました。今では以前のようなイライラが少なくなり、自分自身が苦しむほどのもやもやもなく日々を過ごせています。まとめ大きな悲しみを抱えてしまうと、なかなか立ち直れないものなのだということを痛感しましたが、ペットロスだけでなく更年期の影響もあったと思います。私の場合は信頼できる漢方薬を飲むことで「これできっと治る」という思いを持てたことと漢方薬の効果が私の心を安定させてくれたようです。更年期の影響も含め、落ち込みの原因を自分なりに納得できたことで前向きな思いになることがもできたのもよかったと思います。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
2020年09月01日世界中医薬学会連合会認定・国際中医専門員のセミナー7月27日、大阪市中央区城見のツイン21MIDタワーにあるOBPアカデミアにおいて、セミナー「現役薬剤師直伝!漢方薬100%活用セミナー 【婦人科トラブル対策編】」が開催される。このセミナーは婦人科トラブルがある人、漢方に興味がある人、漢方を勉強したい人が対象で、受講料は一般価格が3,000円(税込)で、アカデミア・ライブラリー・ナイトプランの場合は2,100円(税込)となっている。講師は祥漢堂薬局に勤務する管理薬剤師で、世界中医薬学会連合会認定の国際中医専門員である田中和宏氏である。日常での漢方薬や漢方素材の活用にホルモンバランスが関わっているとされる生理痛、生理不順、生理前後の不調。しかし、これらの婦人科トラブルはホルモンバランスだけで説明することは難しい。女性は血の巡りが悪くなることで、これらの症状が起きやすく、頭痛、肩こり、精神面の不安など様々な症状も出るという。このセミナーでは、婦人科トラブルに使われることが多い漢方薬について、初心者にもわかりやすく解説。市販されている漢方薬が紹介されるため活用しやすい。試飲する時間も設けられ、自身の体質を知り、体感できるセミナーとなっている。日時: 7月27日(月) 19:00~20:30場所: OBPアカデミア大阪府大阪市中央区城見2-1-61ツイン21 MIDタワー9階費用: 一般価格 3,000円(税込)アカデミア・ライブラリー・ナイトプラン 2,100円(税込)定員: 10名(OBPアカデミアのサイトより引用)(画像はOBPアカデミアのサイトより)【参考】※現役薬剤師直伝!漢方薬100%活用セミナー 【婦人科トラブル対策編】 現役薬剤師が漢方初心者でもわかりやすく効果を解説。自身の体質を知り、婦人科トラブルを解決しましょう。 - OBPアカデミア 講座・セミナー・交流会
2020年07月17日梅雨の不調のケア法について東洋医学で考えるシリーズ、この第4回で最終回になります。これまで、梅雨のころに体内の水分のめぐりが悪化して起こるけんたい感や疲労感、めまい、頭痛、胃重感などの体調不良を、東洋医学では「湿邪(しつじゃ)」ととらえること、その原因や具体的な症状、セルフケア法、また「舌」の様子を見て状態を知るポイントなどをご紹介しました。本記事では、体の部位別に、ここに「水のめぐりが滞る」とどういう不調が現れるのか、またケアのための漢方薬について、ひき続き、漢方専門医・臨床内科専門医・消化器内視鏡専門医の吉田裕彦医師に教えてもらいましょう。【第1回】梅雨どきのめまいや頭痛、胃重は「湿邪」…「気象病」との違いを専門医に聞く【第2回】実は冷え対策がポイント…梅雨の「湿邪」の不調ケアを専門医が教える【第3回】舌で梅雨の不調「湿邪」をチェック…漢方専門医が教える体の「水(すい)」のめぐりが停滞している第1回と第2回で、「湿邪」とは、体のあちこちに余分な水がたまって起こる不調だということでしたが、具体的に、体では何が起こっているのでしょうか。はじめに吉田医師は、「東洋医学では、体をめぐる要素を『気・血(けつ)・水(すい)』という3つで考えます」と話し、次のように説明をします。「『気』とは心身のエネルギーのことで、『血(けつ)』とは血液、そして、『水(すい)』は、血液以外の体液や尿、分泌液を指します。『湿邪』は、この『水(すい)』のめぐりが停滞していると考えます。体内の水分代謝が悪化して免疫のシステムなどに影響している状態で、これを『水滞(すいたい)』、あるいは『水毒(すいどく)』と呼びます。梅雨が終わって自然に水滞が改善されても、毎年のように梅雨のシーズンになるとまた、同じ不調を訴える人、また、不調がしつこくなる、悪化する人は少なくありません。水滞を放置する、あるいは生活習慣や加齢、体質などから、慢性的に『水(すい)』のめぐりが良くない人も多く見受けられます」湿邪の具体的な不調のチェックについては、第1回の「梅雨どきのめまいや頭痛、胃重は「湿邪」…「気象病」との違いを専門医に聞く」で紹介しましたが、それらの不調を毎年くり返す、また一年中あるのはとてもつらいことです。根本的な対策をとることはできるのでしょうか。水がたまる部位別の不調をチェックここで吉田医師はまず、「水がたまる部位によって、次のような不調が現れると考えられます」と、具体的な症状を挙げます。・頭……頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、鼻水、全身のけんたい感、疲労感など・胸……動悸、咳、息切れなど・胃腸……胃重感、胃痛、吐き気、おう吐、下痢など・下腹部……頻尿、残尿感など・手足……むくみ、冷え、関節痛など思いあたる不調はどの部位でしょうか。あるいは、全身でしょうか。吉田医師は、「すべての部位に不調があると言う人も少なくありません」と言います。体の水分のめぐりを整える漢方薬を試す日常生活におけるそのセルフケア法についても、第1回の記事で教えてもらいましたが、吉田医師は今回、漢方薬を試す方法を紹介します。「水滞の体質や症状がある場合は、梅雨以外の時期でも、日ごろから、第1回でお話ししたケア法を実践してください。そのうえで、水分の代謝をアップして冷えをはじめとする複数の症状を改善するために、漢方薬を飲んでみるという方法があります」ここで吉田医師は、西洋医薬と漢方薬の違いについて、こう説明を加えます。「漢方薬は、1つの症状に1つの薬を選ぶ西洋医薬と違って、複数の症状に対して1つの薬で適応します。また、同じ症状に対しても、体力や気力の状態によって選ぶ薬が異なるという特徴があります。選ぶポイントは、まずは自分の複数の症状を把握したうえで、自分は体力や気力があるかないか、また中間ぐらいかを念頭に入れることです。市販薬では、パッケージにどういうタイプや症状に効くかが明記されているので、それをよく読んで、自分に合う薬を選びましょう」次に吉田医師に、梅雨の不調で「水滞」が原因となる「湿邪」の対策に適した漢方薬を挙げてもらいました。これらは市販もされています。・五苓散(ごれいさん)体力がある、ないに関わらずに用いられます。全身の水分代謝を改善する代表的な漢方薬です。のどが渇いて水を飲むけれど尿量が少ない、全身のむくみ、頭痛、頭重感、めまい、吐き気、下痢、急性胃腸炎、夏バテなど、また、二日酔いのむかつきに向きます。・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)体力が中等度以下の人に。「水(すい)」が頭や胸などに溜まっていると考えられる、おもに上半身の症状の、めまい、ふらつき、立ちくらみ、頭痛があり、耳鳴り、動悸、息切れ、ストレスが強い、イライラやウツウツする、神経過敏の場合などに向きます。・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)体力が中等度以下で冷え性、胃腸が弱い人に。「水(すい)」が頭に溜まっていると考えられる、おもに、めまい、立ちくらみ、頭痛、頭重感、副鼻腔炎、肩こり、吐き気などがある場合に向きます。・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)体力があまりない、もしくは虚弱の人に。「水(すい)」がおなかから足に溜まっていると考えられる、おもに下半身の症状の、むくみがあり、関節が痛む、腫れる、汗が多い、いわゆる水太り、肥満の場合に向きます。・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)体力が虚弱で冷え性、疲れやすい人に。「水(すい)」が全身に溜まっていると考えられる症状の、めまい、頭痛、頭重感、肩こり、耳鳴り、動悸、また、月経不順や月経痛、更年期障害、皮膚のシミなどがある場合に向きます。「女性の不調向きの処方」と言われる漢方薬のひとつで、「水(すい)」と「血(けつ)」のめぐりの改善に用いられます。最後に吉田医師は、漢方薬の選び方がわからない場合について、「薬局やドラッグストアに常駐の薬剤師に尋ねてください。可能なら、最初は漢方専門医がいる医療機関をインターネットで探して受診しましょう。自分では認識していない体質や不調がわかることもあるでしょう」今回は、「湿邪」「水滞」がどういうものか、体の部位別の水滞がもたらす症状、またその対策となる漢方薬の選択肢を知ることができました。4回に渡って紹介した梅雨のヘルスケア、自分の体質を見つめながら、日ごろから取り組んで行きたいものです。吉田先生、ありがとうございました。【第1回】梅雨どきのめまいや頭痛、胃重は「湿邪」…「気象病」との違いを専門医に聞く【第2回】実は冷え対策がポイント…梅雨の「湿邪」の不調ケアを専門医が教える【第3回】舌で梅雨の不調「湿邪」をチェック…漢方専門医が教える(構成・文品川 緑/ユンブル)
2019年07月22日今夏は心身ともに自分を癒し、美を磨く旅はいかが?「腸デトックス」に漢方薬膳コース、本格エステなど、目的や気分にぴったりの宿をご紹介します。リセットして体のリズムを整えるなら…〈天空の庭 天馬夢〉で「腸デトックス」。/茨城爽やかな風を感じながら、自分の心身に集中する数日間。周囲を自然に囲まれた〈天空の庭 天馬夢〉では、ゆったりと乗馬や散歩を楽しむだけでなく、「腸デトックス」で本来の体内時間を取り戻すことができる。秘訣は「食」や「動」の徹底管理。体が心地よいと感じる時刻に食事を摂り、交感神経が優勢になる午前に「呼吸ヨガ」、眠る前に毒素排出を促す「腸ヨガ」で体の調整を行う。毎日頑張るあなたの体、リセットを求めていませんか?〈天空の庭 天馬夢〉滞在中はファスティングも可能。ヨガや乗馬、エステはオプションで、目的別に各種プランも。腸内を整えるため、滞在は2泊から。茨城県高萩市大能733-20293-27-390048,000円~/2泊3日~(Hanako1161号掲載/photo : Nahoko Morimoto text : Rie Hayashi edit : Rio Hirai)おいしく楽しみながら健康的に美を目指すなら…〈奥三河・湯谷温泉 はづ木〉で漢方薬膳コースを。/愛知・奥三河部屋はすべて渓谷ビュー。無双窓や舟底天井、細かな細工の欄間など純日本建築の意匠を凝らした職人技の造りが素晴らしい。奥三河を流れる清流、宇連川の岸辺にたたずむ、客室わずか5部屋の小さなお宿。そこを目指して日本中はもとより海外からも人が訪れるのは、お湯や宿の雰囲気のよさはもちろん、夕食にふるまわれる漢方薬膳料理のおいしさにある。「漢方薬膳料理コース」より。1品目:食前酒。老酒に4種の漢方食材(霊芝、麦門冬、白人参、クコの実)を入れて飲む。本場中国の薬膳専門料理人が腕をふるうフルコースは、全12品。2品目:前菜。甘海老、クラゲ、牛ヒレ肉、インゲン、クルミ、きゅうり。疲労回復効果のある食材の組み合わせ。3品目:紅花入り海老の炒め物(その前に鶏の胸肉のスープが出る)。4品目:白身魚と漢方食材の蒸し物。5品目:ダチョウ肉の煮込み。6品目:真珠の粉入り卵白と貝柱の炒め物。7品目:チンゲン菜、金針菜、きくらげの炒め物。8品目:烏骨鶏のスープ。9品目:漢方トシシ入り炊き込みごはん。トシシは漢方食材の種子。10品目:白きくらげのデザートと羅漢果茶。食後には、ビタミンとミネラルが豊富でノンカフェインのたんぽぽコーヒーが。貴重で上質な漢方食材が30種類以上も使用され、お品書きには一皿一皿の効用が明記されている。それを見ているだけで元気がでてくるから不思議だ。薬膳という言葉からイメージされる漢方くささはみじんもなく、どの料理も中華料理としてハイレベルな完成度なのもすばらしい。夕食で満腹になっても翌朝の目覚めはすっきり。朝湯から上がれば、目の前で作ってくれる豆腐がこれまた美味な、薬膳朝食が迎えてくれる。〈奥三河・湯谷温泉 はづ木〉奥三河随一のパワースポットとして知られる鳳来寺山の麓にある宿。宿泊客は〈はづ別館〉など、系列館の温泉も利用できる。愛知県新城市豊岡字滝上45-10536-32-1211部屋数/5IN/13:00 OUT/11:001泊/17,000円~アクセス/JR豊橋駅で飯田線に乗り換え。湯谷温泉駅まで特急で45分。駅から徒歩で1~2分。(Hanako1147号掲載/photo : Kanako Nakamura text : Riko Saito)骨格や筋肉の矯正を期待するなら…〈上の杜〉で本格エステ。/大分・湯布院エステサロン〈喫茶去〉と温泉宿〈上の杜〉はどちらかのみの利用もOK。まず驚くのは、明治から昭和初期にかけて作られたアンティーク家具が並ぶ客室。由布院の骨董品店〈五体投地〉で仕入れたという美しい調度品は思わず見惚れてしまうほど。客室は1階にある3部屋のみで、温泉はミネラル豊富な泉質の岩風呂が貸切で堪能できる。源泉かけ流しの貸切岩風呂。美容効果の高い泉質でつるつる肌に。エステプランはフェイシャル・ボディ・トータルと自分に合う組み合わせで。2階にあるエステサロン〈喫茶去〉では医学に基づいた骨格や筋肉の矯正を行い、自家菜園の野菜、魚、玄米などの食事で体質改善。新鮮な野菜・果物・玄米を中心に、訪れる人に合わせた朝食を用意してくれる。エステティシャンの友成泰子さんが温泉・食事・エステを一人で切り盛りしているからこその、トータルで上質なサービスが楽しめる。〈上の杜〉/大分・湯布院大分県由布市湯布院町川上023-50977-84-2701IN15:00OUT10:001泊朝食付き9,000円〜(Hanako1168号掲載/photo:Kenji Nakata text:Mayu Sakazaki, Akiko Nokata)
2019年06月18日目の前がぐるぐると回ったり、ふわふわして気持ちが悪かったりと、突然に原因がわからないめまいに襲われることがあります。めまいは東洋医学が得意な分野とも言われますが、漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田裕彦医師に尋ねると、「原因は、持病がなければ、睡眠不足やストレス、疲労、ホルモンのバランスの乱れ、寒暖差や気圧の低下など多様に考えられます。近ごろは漢方薬による治療を希望する患者さんも増えています」ということです。そこで、めまいの原因や適する漢方薬についてなど、詳しく聞いてみました。【関連記事】めまいやイライラがつらい…もしかしてプレ更年期?ぐるぐる回るめまいの原因は耳の異常まず、ぐるぐるする、ふらふらするといっためまいの種類について、吉田医師は次のように説明をします。「めまいには大きく分けて、『目がかすむ』『ぐるぐるまわっている感じがして吐き気もある』といった回転性のタイプと、『ふわふわした感じがする』といった乗り物酔いを重くしたような浮遊感を覚えるタイプの2つがあります。患者さんの訴えが比較的多い『ぐるぐる回っている』という前者のタイプは、耳の異常が原因と考えられています」次に、「脳の病気などではない場合、もっとも多くみられるのは、『良性発作性頭位(とうい)めまい症』です」と話す吉田医師は、その症状についてこう解説をします。「『頭位性』とは、頭の位置による症状という意味です。寝返りを打ったときや、床や高い位置の物を取ろうとして頭を動かしたときなど、頭の位置を変えたときに回転性のめまいが起こります。一度のめまいは数秒から数分ほどと短時間ですが、断続的に起こることが多い症状です。吐き気やおう吐が伴うことがあり、眼球の動きに異常が見られることもあります。原因は、内耳(ないじ。耳の最深部にある平衡感覚、聴覚をつかさどる部分)の一部分に収まっている耳石(じせき。カルシウムの粒)がはがれて、後半規管と呼ぶ別の部位に入ったことによります」デスクワーカーはめまいが生じやすい次に、なぜ耳石が移動するのかについて吉田医師は、「同じ姿勢を続けること、例えばパソコンやスマホの操作が長時間続く、座業で終日座っている、肩や首から上をあまり動かすことがない、といった生活習慣が挙げられます」と指摘をします。疲労が溜まっているとき、睡眠不足や寒暖差が激しいときなどにめまいを起こすことがありますが、それは関係するのでしょうか。「大いに関係します。疲労やストレス、睡眠不足、寒暖差では自律神経のバランスが乱れがちです。すると、血圧や体温、心拍数の変動が大きくなって、めまいや立ちくらみ、ふらつきがすることはよくあります。また、女性は月経や更年期に関連するホルモンのバランスで、頭痛や胃腸の不調とともに、めまいが生じることもあるでしょう」と吉田医師。さらに吉田医師は、重いめまいの症状について、こう説明を加えます。「『メニエール病』と呼ばれる病気が知られています。突然に回転性のめまいが生じ、吐き気やおう吐、また、耳が圧迫される感覚や耳鳴り、聞こえにくいなどを伴います。1~6時間ほど続くことがあり、日常生活や仕事に差し支えることが多いでしょう。内耳の水分代謝の異常で水が溜まっていることが原因になります」めまいは、原因も種類も多種多様ということです。自分のめまいのタイプを知ることが重要と言えるでしょう。水分代謝が停滞し、気の巡りが滞るさらに吉田医師は、漢方医学によるめまいのとらえ方について、次のように説明を続けます。「漢方医学では、ヒトの体は、『気・血・水(き・けつ・すい)』という3つの要素で構成されているととらえます。回転性のめまいの原因として、内耳に水が溜まるのは、胃腸に不調があって胃で水分が溜まっている、また尿の量が少なくて体液の巡りが滞っているなどで、体の『水(すい)』の代謝が低下していると考えます。それが原因で心身のエネルギーである『気』の巡りをさまたげてめまいが生じます。浮遊感があるめまいでは、自律神経やホルモンバランスの乱れによって水分代謝の低下から気の停滞が考えられます」めまいを訴える人が多い時期については、「回転性も浮遊性も、気温の急激な変化がある春先や、気圧が大きく変動する梅雨の時期に患者さんが増える傾向にあります」と吉田医師。漢方薬は「めまいのタイプ・体力・ほかの症状」を考えて選ぶつらいめまいの症状をなんとか改善したいとき、「漢方薬を試すという選択肢があります」と言う吉田医師は、その選び方について次のようにアドバイスをします。「漢方薬は、まずは、『めまいのタイプ』を見つめて判断し、次に『自分の体力の状態』、さらに、『めまいに伴うほかの症状』の3つの柱を考え合わせて選びましょう。漢方薬の特徴は西洋薬と異なり、生薬を組み合わせているため、複数の原因があってもひとつの薬で対応します。また、飲めばすぐさま症状が治まるものではなく、服用を継続しながら体質を改善して症状を軽減します。睡眠不足やストレス、偏った食事などの生活習慣を見直しながら取り組みましょう」ここで吉田医師に、めまいの種類別に適した漢方薬を挙げてもらいましょう。<ぐるぐる回るめまい>・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)症状:めまいやふらつき感、立ちくらみが一定の時間を置いて起こったりやんだりする。体力はあまりない。普段から水分をとりすぎている。冷えを感じやすい。動悸(どうき)、息切れがあり、神経質なタイプに。・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)症状:目の前がぐるぐる回るようなめまい、立ちくらみ、頭重感、胃重感、下痢、便秘がある。体力は普通より弱い。冷えがある。胃腸が弱いタイプに。<ふらつきめまい>・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)上記に同じ・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)症状:めまい、気分がふさぐ、のどや食道に異物感がある、動悸がする。体力は普通ぐらい。体を動かす機会が少ない、ストレスがたまりがちなタイプに。・五苓散(ごれいさん)症状:景色が流れるようなめまい、むくみ、吐き気や嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、胃痛、頭痛、気分がふさぐ、夏バテに。体力には関係なく服用できる。水を飲むわりにはのどが乾くタイプに。・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)症状:月経周期、更年期障害に伴うめまい、立ちくらみ、むくみ、頭重感、冷えが強い、疲れやすく、体力が虚弱。足腰の冷え症、腰痛、シミ、耳鳴りもあるタイプに。<のぼせめまい>・漢方薬:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)症状:めまい、頭痛、肩こり、便秘がちで、高血圧、冷えが強い。比較的体力がある。月経不順や月経痛、更年期障害、皮膚炎などがあるタイプに。・漢方薬:釣藤散(ちょうとうさん)症状:慢性的な頭痛を伴うめまいで、普段から血圧が高く、のぼせがある。体力は普通ぐらい。肩こり、イライラ、些細なことが気になって頭が張るような感覚に悩むタイプに。めまいには感覚によって種類があり、漢方では「水(すい)」と「気」の停滞が原因ととらえるということです。また、漢方薬の特徴は、めまいを改善しながら、頭痛や胃痛、むくみ、イライラなど、ほかの症状を見つめて全体を整えていくことにあると言います。参考になさってください。(取材・文品川 緑 / ユンブル)
2019年06月01日「肌の調子が悪い……」「なんとなくだるい……」「生理不順が続く……」女性の身体に起こりがちな不調を改善するのに効果的とされる漢方。病院や漢方薬局などで処方してもらう薬である漢方ですが、実際に処方してもらうとなると、どんなふうにカウンセリングなどをしてもらえるのかわからない……という方は多いですよね。漢方薬局ではどんなことを聞かれるの?漢方ってどれぐらい飲めばいいの?漢方薬局にまつわる疑問を解決します!漢方薬局ってどんなところ?出典:byBirth漢方薬局は、読んで字の通り漢方を処方してくれる薬局。漢方専門の薬剤師がカウンセリングなどでじっくりと患者さんの話を聞き、悩みや体質に合った薬を処方してくれます。問診や舌の状態などを薬剤師が診て、患者さん本人に合わせた漢方を丁寧に探してくれるのが漢方薬局の特徴。「漢方を試してみたいけれど、なにから試していいのかわからない……」という方は、まず漢方薬局に足を踏み入れてみることをおすすめします。漢方薬局でのカウンセリングの主な流れ出典:byBirth漢方薬局の薬剤師さんは、まず患者さんから「カウンセリング」として丁寧に身体の不調や健康状態を聞き出していきます。時間は大体60分~90分程。カウンセリングから漢方の選定まで含めても、それほど時間はかかりません。予約をしていけばよりスムーズに話を聞いてもらえるかと思いますが、予約なしでもカウンセリングを受けることはできます。カウンセリングや舌の状態を診る「舌診」のほか、血圧などを図ったりすることもあります。血流の具合などを測ったりもするので、ちょっぴり緊張するかも。総合的なカウンセリングを行うことで、患者さんそれぞれにピッタリの漢方薬を選ぶことができます。もちろん、普段飲んでいる薬やサプリメントなどとの飲み合わせも確認してもらいましょう。身体的な悩みだけでなく、精神的な悩みやライフスタイルなどについても丁寧に話を聞いてもらえるので、安心して身を委ねることができます。薬剤師さんとのお話をまずじっくりと楽しんで、日頃の悩みや不安を解消していくことが、漢方を生活の中で活用する第一歩になるのです。漢方を試してみる前に!知っておきたい基礎知識漢方の価格帯出典:byBirth日頃風邪をひいた時などに処方してもらう処方薬と異なり、漢方は日頃服用する機会が少ないので、その価格が気になりますよね。漢方薬には、薬の種類によって金額の差があります。粉の場合はだいたい300~700円程度。予算が決まっている場合は、前もって薬剤師さんに伝えておくようにしましょう。きちんと考慮して漢方を処方してくれます。漢方薬は保険対象外になります。ですが、場合によっては医療費控除の対象にも。申請を行えば控除が受けられる場合があるので、領収書はとっておきましょう。どれぐらい飲み続けたらいい?出典:byBirth薬を試す時に気になるのが、どれぐらい飲み続ければ効果が表れるか。漢方の場合、即効性よりもじんわりと身体に優しく効いてくるイメージが強いため、余計にどれぐらい飲み続ければいいかわからない……という人は少なくないよう。ですが実は、漢方にも色々な種類があり、優しい効き目のものもあれば、即効性の高いものもあるのです。平均的に考えると、薬を飲み始めてから10日から2週間くらいで体調が整ってくるという場合が多いそう。ですので、初めて漢方を処方してもらう際には、とりあえず2週間分程度を処方してもらうのがおすすめです。初心者さんにおすすめなのは?出典:byBirthコツさえつかめば意外と毎日飲みやすい漢方ですが、やっぱり初心者さんには飲みにくいと感じることもありますよね。苦い粉薬が苦手な方におすすめなのは、煎じて飲む漢方茶です。最近はティーバッグでマイボトルなどでも作れるものも多く取り揃えられていて、1日分あたり400円~800円程度で値段もリーズナブル。ハーブティーなどと同じように香りも豊かで飲みやすく、種類も色々あるので選ぶのも楽しいですよ。お仕事や家事の合間のティーブレイクに、漢方茶をチョイスしてみるのも素敵ですね。漢方薬局に行ってみようなにかと不調に見舞われやすい女性のライフスタイルを支えるツールとして、漢方はとても頼れる存在です。一般的に病院で処方されるような薬とは少し違うので、とっつきにくいイメージもあるかもしれませんが、少しお勉強さえすれば、日本人の身体にとても優しい薬として働いてくれます。心身の不調があっても病院に行くほどではない場合、誰かに相談するのもおっくうでそのままにしてしまう、なんてことも少なくないですよね。そんな時にも、漢方薬局の薬剤師さんに話を聞いてもらうだけで、気分が軽くなることもあります。最近は漢方薬局に薬膳料理のレストランが併設されているお店や、漢方について学べるセミナーなどを開催しているお店もありますので、漢方に興味がある方はまず漢方薬局に足を踏み入れてみることをおすすめします。まずは試しやすい漢方茶からでも大丈夫。毎日の生活に気軽に漢方を取り入れてみましょう。
2019年04月28日自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダケア戦略術」。前回は「更年期症状の予防と治療」について、お届けしました。今回は、「更年期症状に効果的な漢方薬」について女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。長く飲み続けられる漢方薬は、更年期の強い味方更年期の症状には、女性ホルモン剤による治療が有効なことについて、前回「更年期症状の予防と治療」を書きました。更年期のつらい症状に対応するのは、女性ホルモン剤だけではありません。漢方薬も、女性の強い味方です。更年期の治療にとてもよく使われています。image via shutterstock卵巣機能の低下によって、減ってしまった女性ホルモンを持ち上げるために、女性ホルモンを補充する方法のほうが確かに近道で、即効性があります。けれどもひとつの方法だけでなく、いろいろな方法を組み合わせて、自分に合った更年期治療を見つけていくのも、更年期以降の長い人生と健康を考えるうえでも大切です。長く飲み続けられる漢方薬は、強い味方になってくれると思います。もちろん、女性ホルモン剤と併用することも可能です。また、女性ホルモン剤が使えない人(乳がんの経験がある人、血栓症のリスクが高い人)にも、漢方薬が更年期治療の第一選択になります。まずは自分に合った漢方薬を医師に処方してもらうことが大事image via shutterstock漢方薬は、長い間服用しないと効かない、効果が表れるまでに時間がかかる、という印象を持つ人もいますが、そうでもありません。自分の体質に合った漢方薬を正しく選べれば、1包でも効果を実感できることも少なくありません。一方で、漢方薬もお薬ですので、副作用はあります。自己判断で合わない漢方薬を飲んでしまうと、人によっては胃があれたり、むくみが出たり、下痢をしたりすることもあります。同じ症状でも、体質によって処方される薬は違います。たとえば、AさんとBさんに頭痛という同じ症状があっても、Aさんに処方される漢方薬と、Bさんに処方される漢方薬は、違う薬、ということもよくあります。それは、AさんとBさんの体質が違うからです。それとは逆に、Cさんは肩こり、Dさんは便秘という違う症状があるのに、処方された漢方薬は同じお薬だった、ということもあります。このように漢方薬は、人によって合うお薬が違うので、できるだけ、医師や漢方薬剤師の診断で、処方してもらうことをおすすめします。保険診療を行っている医師に処方してもらえば、漢方薬は健康保険が使えます。体質改善のための漢方薬と、急な症状のための漢方薬がありますimage via shutterstock更年期の対策として漢方薬を使うなら、できれば、体質改善のための漢方薬を“ベースの漢方薬”として、それに今のつらい症状を早く改善する“ワンポイントの漢方薬”を加えていくといいと思います。漢方薬は、いくつかのお薬を組み合わせて飲むことも可能です。たとえば、更年期のたくさんの症状を改善するためには、冷え症などの体質改善が大切。その場合、“ベースの漢方薬”で体質改善を目ざします。さらに、風邪をひきやすく、風邪の初期症状に気づいたときに飲む“ワンポイント漢方薬”もあると便利です。「あれ?風邪かな?」くらいのときにすぐに1包飲むと、30分程度で症状がスーッと引きます。医師や漢方薬剤師に相談して、自分に合った漢方薬を組み合わせて処方してもらうといいでしょう。飲み方は、1日2~3回、食前、または食間の空腹時に飲みます。どんな漢方薬がどんな更年期の症状に効きますか?image via shutterstockプレ更年期や更年期に体質改善のベースとなる漢方薬のなかで代表的なものは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、温経湯(うんけいとう)、葛根湯(かっこんとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)などがよく使われます。・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血のめぐりの悪い人で、頭痛、頭が重い、めまい、肩こり、貧血、目の下のクマほかの症状に。・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、下腹部が張りやすく、骨格がしっかりした人で、のぼせ(ホットフラッシュなど)、めまい、頭痛、肩こり、便秘ほかの症状に。・加味逍遥散(かみしょうようさん)は、体力がなく、疲れやすい人で、イライラ、不眠、憂うつ、肩こり、のぼせ(ホットフラッシュなど)、めまいほかの症状に。・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、比較的体力があり、のぼせて便秘しがちな人で、めまい、多汗、のぼせ(ホットフラッシュなど)、肩こり、腰痛、不安、憂うつほかの症状に。・温経湯(うんけいとう)は、手足がほてり、口が乾く人で、多汗、動悸、湿疹、足腰の冷えほかの症状に。・葛根湯(かっこんとう)は、比較的体力がある人の、冷え、頭痛、鼻炎などの症状に。風邪の初期症状に即効性があります。・八味地黄丸(はちみじおうがん)は、疲れが激しく、手足に冷え、ほてり(ホットフラッシュなど)がある人で、めまい、立ちくらみなど自律神経系の症状、口の乾きほかの症状に。これらの漢方薬は、自分の体質にピッタリ合うと、更年期によく起こる症状、ほてり、のぼせ、多汗、冷え、動悸、めまい、頭痛、不眠、憂うつ、イライラ、肩こり、だるいなども同時に改善してくれることがあります。婦人科で更年期の不調を治療しているクリニックなら、漢方薬をよく処方していますので、どの漢方薬が合うか、相談してみるといいと思います。増田美加・女性医療ジャーナリスト予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページカラダ戦略術をもっとみるあなたの更年期症状をチェック。更年期の正体とは?今年のインフル予防策に!? 箸や楊枝に使われる「クロモジ」に注目カラダ戦略全記事はこちら
2019年02月12日今年もやってきました、花粉の季節。日本気象協会によると、今年は2月中旬を目安に日本各地でスギやヒノキの花粉が飛び始めるそうです。花粉といえば、鼻水や鼻づまり、目や肌のかゆみなど不快な症状で辛いですよね。特に女性は一生懸命メイクをしても目的地に着く頃には、メイクどころではないほど悲惨な顔になっていることも……。そこで、おすすめなのが、根本からケアをしていく漢方薬。ですが、「いざ飲もう!」と思っても意外と何を飲んだらいいのかわからない方も多いはず。今日は、医薬品登録販売者でもある筆者が、花粉による悲惨顔を克服するための漢方薬を体調別にご紹介します。漢方が考える花粉症の原因とは?花粉症は、私たちの体が外的な刺激である花粉から、自分の体を守るために過剰に働くことで、鼻水やかゆみといった不快な反応を起こしている状態だと考えています。言い換えれば体のバランスが整っていて、きちんと免疫のチカラが備わっていれば、どんなに花粉が飛ぼうと、先ほどのような不快な反応は起きないというわけなのです。漢方はこの点に着目しているので、症状を和らげる一時的な薬を飲むだけではなく、体のバランスを整え免疫力を上げてくれるような漢方薬が主役になっています。漢方入門!「気・血・水」について漢方の世界では、私たちの体は「気・血・水」の三要素がバランスを取り合って構成されていると考えています。「気」とは、目には見えないけれど私たちの生命活動を支えるエネルギーそのもの。「血」とは、字の通り、血液を指し、体内の老廃物を回収し、栄養や酸素を運ぶもの。そして「水」とは、血液以外の全ての体液を指し、体を潤わせ、発汗などによって体温調節を行うものです。このうち「気」と「水」の働きが花粉症と深く関わっているのです。体調別!漢方薬の選び方漢方薬には、一般的に煎じ薬や顆粒剤やカプセル剤など種類がありますが、一番おすすめなのが購入しやすく、お湯に溶かすだけで服用できる顆粒タイプの漢方薬です。日本だと耳にしたことある方もいるであろうツムラやクラシエ、コタローというメーカーによって発売されています。今日は、「気」と「水」の働き低下によって傾きがちな体調別に漢方薬をご紹介しますね。今の自分の体調に当てはめてチェックしてみましょう!日頃からむくみやすい!冷たい飲み物が好き!という方先ほどご紹介した「水」の働きは、冷たい飲み物の常飲などにより、「水」が体内で停滞するとむくみとなり、花粉症においてはサラサラとした鼻水が出たり、鼻づまりを起こしやすくします。こういったタイプの方は、「小青竜湯」という漢方薬をチェックしてみましょう。体が細めなタイプの人からガッチリしたタイプの人まで体質に関わらず飲めるとされていて、花粉症といえばまず小青竜湯!というほど定番の漢方薬となっています。※ただし、麻黄という生薬が入っているので、小児や高齢者は気をつける必要があります。一年中冷えに悩む方!体内の冷えもまた「水」の停滞を招きます。そこで花粉による悩みを根本から養生するためにも、まずは体内を温めてあげることも必要です。例えば、春に近づき気温が暖かくなってきたにも関わらず、1日を通して寒気を感じる場合には「麻黄附子細辛湯」をチェックしてみましょう。この漢方薬はカゼを引いても熱があまり出ないような体力がない方に対して優しく体を温めてくれますよ。生活習慣が乱れがち!いつも疲れを感じる!長時間労働、そして乱れた食生活によって体が常に疲れていると感じる方は、そもそもの「気」が足りてない可能性があります。そこで、花粉悩みが始まる前に、体質改善として、「補中益気湯」をチェックしてみましょう。気疲れによって塞ぎ込んでしまった時の元気づけにもなりますよ。花粉症克服には毎日の生活習慣も大切!漢方薬と聞くと、「高い・効果が見えない・長く飲まなければならない」などといったイメージがあると思いますが、実際にはそれぞれの漢方薬にも注意しなければならない副作用があるほど、きちんと自分の体質やその時々の体調に合わせて選べば効果を感じられるものなのです。また漢方薬は、薬剤師や登録販売者が常駐するドラッグストアでも購入できるだけでなく、厚生労働省が規定する条件を満たしたオンラインショップで購入することができます。気になる価格は、例えば今回紹介したツムラ19番の小青竜湯は10日分で2,400(税別)なので、1日分に換算すると240円(税別)となります。とはいえ、花粉は一年間続くものではないので、花粉のピークである2月中旬から4月いっぱいにかけて服用してみてはいかがでしょうか。花粉に悩む友人たちを見ると、本当に花粉は辛そうだなと思うので、ぜひとも漢方薬を賢く活用してみることをおすすめします。もちろん漢方薬は副作用が少ないと言われていますが、薬に変わりはないので、薬だけに頼らず。毎日の生活のなかで、体を冷やさずに、疲れをきちんとリセットできるような生活習慣も合わせて心掛けてくださいね。©tjasam/Gettyimages©hoozone/Gettyimages©Paul Bradbury/Gettyimages
2019年02月04日寒さが厳しくなるにつれて、冷えて指先が痛い、手足の感覚が鈍くなる、下痢をしやすい、肩こりが激しい、頭が重いなどの悩む声を耳にします。漢方専門医で臨床内科専門医の吉田裕彦医師は、「冷えは万病のもとと言われますが、西洋医学では、『冷え』という病気や診断は存在しません。しかし、漢方医学では冷えにともなう不調や体質を見つめて治療をします」と話します。詳しく聞いてみました。【靴下は履いたほうがいい?】臨床内科専門医に聞く、冷え対策のウソホント漢方では「冷え体質」の改善を目指す冷えは病気なのか、症状のひとつなのか、どうなのでしょうか。吉田医師はまず、西洋医学での「冷え」の考え方について、こう説明をします。「体が冷えやすい体質の人を『冷え性』、その症状のひとつを『冷え症』と言います。冷える原因としては、自律神経のバランスの乱れや低血圧、貧血、またほかの病気が挙げられます。一方で、冷えは、月経不順や月経前症候群(PMS)、月経痛など月経に関する病気、更年期障害、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、関節リウマチ、腰痛、肩こり、頻尿、過敏性腸症候群、下痢、慢性疲労、不眠など、多種の病気を悪化させる、引き起こすなどと影響を及ぼします。西洋医学ではこれらをそれぞれに治療するように薬を処方しますが、冷えそのものを改善する、例えば体を温めるといった薬はありません」では、東洋医学では、冷えをどのように考えるのでしょうか。「まず、体を構成する要素の『気・血・水(き・けつ・すい)』がバランスを保つことで、健康を維持すると考えます。『気』とは生命活動のエネルギーを表す元気のもとで、『血(けつ)』はおもに血液を、『水(すい)』は水分やリンパ液など血液以外の体液全般を表します。冷えは、これらのいずれか、もしくは複数のめぐりの異常で起こるとされます。そこに原因を見いだして、冷え性そのもののケアを目指します」と吉田医師。冷えやすい体質を改善しようとするのが東洋医学の特徴だということです。全身、指先、おなかのタイプ別に冷えを和らげる次に、「冷えには、その場所や冷え方などによっていくつかのタイプがあり、それぞれ特徴や用いる漢方薬が異なります。手足など末端が冷える、腰から下が冷える場合は血流や気のめぐりの悪化、おなかなど内臓が冷える場合は水分の停滞、全身が冷えるときは気や基礎代謝の低下が考えられます」と解説する吉田医師に、冷えのタイプ別に漢方薬を挙げてもらいました。(1)全身が強く冷える……気虚(ききょ)東洋医学では、元気のもとである「気」のめぐりが悪化してエネルギーが不足している状態を「気虚」と呼びます。そのために基礎代謝が低下し、熱が産まれにくくて冷えが生じていると考えます。体力があまりなくて疲れやすい、風邪をひきやすい、食欲がない、胃腸が弱い、寒がりなどの症状をともないます。・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)「中」は胃腸を表わし、これを補って「気」を増やしてめぐりを促し、全身のパワーを高めるように働きかけます。体力がなく、元気がない、疲れやすい、胃腸の働きがよくないなどのときに向きます。・人参養栄湯(にんじんようえいとう)「気」と「血(けつ)」の両方を補い、滋養強壮作用や血流を改善する生薬が配合されています。体力が低下しているときに向き、冷え、貧血、寝汗、不安感、不眠、咳(せき)や痰(たん)など呼吸器の症状などがある場合に用います。(2)手足の指先など末端が冷える……瘀血(おけつ)東洋医学では、血流が悪化して血液が滞りがちな状態を「瘀血」と表現します。そのために熱が運ばれにくくなって手や足など体の末端が冷たくなり、便秘気味、月経痛、頭痛や肩こり、肌のくすみやシミ、肌あれなどをともないます。・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)「血(けつ)」の不足を補って、全身の血流を促して体を温めるように作用します。やせ気味かやせて体力がない冷え性の女性に向き、月経トラブルや更年期障害など婦人科系の諸症状を和らげます。特に足腰の冷え、頭痛、めまい、疲れやすい、貧血、めまい、立ちくらみ、耳鳴りなどをともなうときに用います。・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)「血(けつ)」の滞りを改善する代表的な漢方薬で、比較的体力がある女性の不定愁訴に用います。頭や顔がのぼせて腰や足が冷える「冷えのぼせ」のタイプに適し、月経痛や月経不順などの月経トラブル、肩こり、頭痛、めまい、肌荒れやシミができやすい、しもやけなどをともなうときに向きます。・加味逍遙散(かみしょうようさん)「気」を全身にめぐらせるとともに、「血(けつ)」を補うことで「気・血・水」のバランスを整えるように働きます。こちらは体力があまりない女性の不定愁訴、更年期障害に用いられる代表的な漢方薬です。頭や顔がのぼせるのに下半身は冷える、イライラ、頭痛、肩こり、疲れやすい、めまい、不安感、不眠など多様な心身の不調に対応します。(3)おなかなど内臓が冷える……水毒(すいどく)「水(すい)」のめぐりの乱れで、体内の水分量が多い、また偏っているために水分がたまる状態を「水毒」と呼びます。水分がたまっている部分、おもに胃やおなかのあたりが冷える「内臓冷え」と言えます。頭痛や顔のほてり、むくみ、下痢をしやすい、トイレが近いなどの症状をともないます。・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)(2)の瘀血でも紹介しましたが、「血(けつ)」のめぐりの悪化にともなって低下した水分代謝を改善します。余分にたまった水分がもとで冷える内臓冷えの解消を目指します。・苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)「気」の不足を補って、たまった「水(すい)」をとり除き、水分代謝の改善に働きます。体力があまりなくて、おなかや腰から下の冷えが強い、めまい、ふらつき、腰痛、神経痛などがあるときに向きます。・五苓散(ごれいさん)おなかなど内臓にたまった「水(すい)」を取り除く代表的な漢方薬です。体力に関係なく用いられ、のどや口が渇く、むくみ、頭痛、めまい、吐き気、胃もたれ、胃痛などをともなうときに、また、夏バテや二日酔いに向きます。最後に吉田医師は、「どれを選べばいいか迷ったときは、薬局に常駐の薬剤師に相談しましょう。また日常の仕事や生活に差し支える場合は、冷えをまねくほかの病気が隠れている可能性もあるので、早めに内科を受診してください」とアドバイスを加えます。冷える体質そのものを改善できるのならば、漢方薬を試してみたくなります。自分はどこが冷えるのか、体力はどれぐらいなのか、また冷えにともなう症状をチェックして、合うタイプを選びとりたいものです。(取材・文岩田なつき/ ユンブル)
2019年02月03日風邪をひいて、咳(せき)が出はじめると、なかなか止まらない、夜間にひどくなるなどで苦しくなります。セルフケアとして漢方薬を服用する人も増えているようですが、西洋薬とはどう違うのでしょうか。漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田裕彦院長によると、「咳が出る状態そのものが必ずしも健康を害しているというわけではありません。しかし、長引くと体に多くの不調をもたらします。咳やたんの種類、体力によって適した漢方薬で咳の改善ができるので、試してみるのもひとつの方法です」ということです。そこで、漢方薬での咳のケア法について聞いてみました。【受験シーズン突入!】内科医が風邪対策に実践している方法8つ咳はのどから入る異物を押し出すための防御反応はじめに吉田医師は、咳が出る原因について、次のように説明をします。「咳が出るのは、チリやホコリ、花粉、食べ物や飲み物、ウイルスや細菌などの異物がのどから気道、肺に入るのを防ぐためです。異物がのどや気道、気管支の粘膜を刺激すると、防御反応として異物を含んだ空気を一気に外へ押し出そうとして咳が出ます。これを医学的には、『咳反射』と呼びます。その役割がある咳を、むやみに止めてはいけませんが、風邪や気管支炎など病気の場合は、ウイルスや細菌と闘うために頻発して、一度出るとなかなか止まらずに苦痛を伴うでしょう。体力が消耗し、眠れない、のどや胸が痛くて負担が強い、激しい場合はろっ骨が折れることもあります。苦しさやつらさをがまんすると、違うトラブルを併発することもあるため、タイミングを見て治療をしましょう」漢方では、水(すい)のバランスを整えて咳を改善する次に吉田医師は、咳を改善する方法や考え方として、西洋医薬と漢方薬の違いについてこう説明を続けます。「西洋医薬の場合、鎮咳薬(ちんがいやく)を用います。鎮咳薬とは、咳反射を抑える薬で、いわゆる咳止めのことです。一方、東洋医学では、咳がひどい場合は、体をめぐる水分が少なくなっていると考えます。体は『気・血(けつ)・水(すい)』という3つの要素で構成されていて、それらがバランスを取り合って健康を維持するととらえますが、咳がひどく苦しいときは、『水(すい)』のめぐりが悪化して、『気・血(けつ)・水(すい)』のバランスが乱れているわけです。そのため、咳を抑えるには、体の内側から『水(すい)』を補う漢方薬を用いるとよいでしょう」体力、咳の状態、伴う症状の3つを考えて選ぶここで吉田医師に、「風邪で咳がひどいときに試したい漢方薬」について具体的に挙げてもらいました。「選ぶポイントは3つです。まず、自分の『体力はどうなのか』で、体力がある方かまあまあか、弱い方なのか。次に、『咳の状態』を見つめましょう。から咳なのか、激しい咳なのか、たんが出るならどんな様子か、のどが腫れているのか、痛みはあるかなどです。さらに、『伴う症状』も考えます。咳以外に、熱はあるか、頭痛はするか、鼻はどうか、胃腸はどうか、関節痛はあるか、アレルギー性の鼻炎はあるのか。これらを考え合わせて選びましょう。次の薬は、体力がある人向きから順に並べています」●麻黄湯(まおうとう)体力があり、咳、気管支炎、寒気のある発熱、頭痛、鼻水、鼻づまり、ふしぶしが痛む(関節痛)などがあり、汗が出ていない場合の風邪のひきはじめに向きます。●麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)体力が中等度以上で、強く咳こむ風邪、のどが乾く、気管支炎、気管支ぜんそく、よく汗が出る場合に向きます。●五虎湯(ごことう)体力は中等度以上で、せきが強く出る、黄色くて粘度があってたんがからむ咳が出る場合の風邪、気管支炎、気管支ぜんそく、痔の痛みにも向きます。●小青竜湯(しょうせいりゅうとう)体力が中等度、またはやや虚弱で、水っぽいたんをともなう咳、さらさらとした鼻水、鼻づまり、体が冷えやすい、むくみやすい、胃腸が弱い場合の風邪、気管支炎、気管支ぜんぞく、アレルギー性鼻炎、花粉症に向きます。●麦門冬湯(ばくもんどうとう)体力が中等度以下で、コンコンとする咳、から咳、たんがきれにくい、のどが乾燥している、強く咳こむ、こみあげる咳の場合の気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声に向きます。体に水分を与えてのどの粘膜を潤すように作用します。●桔梗湯(ききょうとう)体力に関わらず使用できます。扁桃(へんとう)炎でのどが腫れて痛く、ときに咳が出る場合に。内服薬のほか、トローチのタイプもあります。●銀翹散(ぎんぎょうさん)体力に関わらず使用できます。風邪のひきはじめでのどが痛いとき、咳、のどが渇くとき、熱っぽいとき、頭痛がするときに向きます。さらに吉田医師は、咳への対策について次のアドバイスを加えます。「咳は湿度が高いと、出にくくなります。乾燥が気になる室内では、加湿器や濡れタオルを干すなどして加湿しましょう。また、なるべくホコリを吸わないように日ごろから部屋の掃除を心がけることや、のどを潤すために、水分補給を十分にする、濡れマスクをする、蒸気を吸う、のど飴をなめる、ガムを噛(か)むなどで咳が出る前や軽症の段階でこまめにケアを心がけましょう。漢方薬の選びかたがわからない場合は、遠慮なく、薬局に常駐の薬剤師に尋ねてください。咳が長く続く、激しくて胸や背中が痛い、いつもの風邪とは違う異変を感じる場合は、風邪がこじれているか、何らかの病気が隠れていることもあります。早めに内科や耳鼻咽喉科を受診してください」咳は、異物が体に入るのを防ぐ反応だということです。それを理解したうえで、咳の状態と自分の体格や体調、風邪の様子を見つめ、自分に合った漢方薬を選びたいものです。(取材・文藤原 椋 / ユンブル)
2019年01月20日頭痛は、ズキズキする、重だるい、肩こりやめまいをともなうなど、原因や体調によって症状の現れ方が違います。漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長によると、「原因がほかの疾患ではない場合の慢性頭痛では、痛み方や頭痛にともなう不調や体質を見つめてケアする必要があります。肩こりやめまい、冷えなど複数の症状がともなうならば、漢方薬を試すという選択肢もあります」ということです。そこで、漢方薬でのケア法について聞いてみました。「気・血(けつ)・水(すい)」に注目するはじめに吉田医師は、漢方医学での頭痛の原因について、次の説明をします。「自律神経のバランスが乱れると疲れやストレスが溜まり、頭痛やめまいなどの不調、体温調節がうまくいかないなどの多様な症状が現れます。自律神経のバランスの乱れは、漢方医学では体を構成する要素の『気・血・水(き・けつ・すい)』のいずれか、もしくはすべてのめぐりの停滞だととらえることがあります。『気』とは生命活動のエネルギーを表す元気のもとであり、『血(けつ)』はおもに血液を、『水(すい)』は水分やリンパ液など血液以外の体液全般を表します。心身の健康はこの3つの要素がバランスよく循環して保たれ、循環が悪くなると心身に不調が現れると考えます。頭痛や肩こり、めまい、冷えもそのひとつで、複数の不調が影響を及ぼし合うと診てケアをしていきます」漢方薬は心身の全体の状態を見つめて選ぶ次に、漢方薬の特徴について吉田医師は、こう説明を続けます。「西洋医薬の場合、頭痛をケアするにはまず、痛み止めを用います。同時に吐き気やめまいがあるときはそれぞれ別の適した薬を処方します。頭痛では、くり返しますが、肩こりや首のこり、また、めまいや立ちくらみなどの不調がともなうことがあり、その原因がよくわからない慢性頭痛のほか、風邪、疲労、月経トラブル、冷えなどの場合があります。漢方薬は西洋医薬とは違い、頭痛という主な症状だけでなく、自分の体力や体格、またほかの症状など、そのときの心身の全体の状態から考えてひとつの薬を選びます。」ドラッグストアで漢方薬のパッケージをあれこれ見ていると、たしかに体格やほかの症状についても説明が記されています。ここで吉田医師に、頭痛のケアのための漢方薬を具体的に教えてもらいましょう。●呉茱萸湯(ごしゅゆとう)体力が中等度以下で、肩こり、冷え、吐き気やおう吐、手足の冷え、胃もたれなどをともなう頭痛や、ズキズキとした頭痛の場合に向きます。「気」や「血(けつ)」の滞りをケアし、元気がなくて冷えやすい体を改善して頭痛を抑える、おなかをあたためて胃腸の働きを整えます。●葛根湯(かっこんとう)風邪のひき始めに用いられることで知られますが、体力が中等度以上で胃腸は丈夫な場合で、肩や首がこり、うなじや背中の筋肉が緊張しやすいときの慢性頭痛に用います。また、鼻炎、鼻づまりにも向きます。「気」や「血(けつ)」の不足、「水(すい)」の停滞をケアし、体を温めて、症状を緩和します。●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)体力が中等度以下で、めまい、疲れやすい、冷え、耳鳴り、動悸(き)などをともなう頭痛に向きます。月経不順や困難にも対応し、一般に「女性のトラブルに向く漢方薬」として知られています。「血(けつ)」のめぐりをよくし、全身の血流を促します。●苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)体力が中等度以下で、めまいや立ちくらみ、ストレスや憂うつ感をともなう頭痛があるときに向きます。「気」の不足を補い、たまった「水(すい)」をとり除き、気力、体力をアップ、水分代謝に働きます。●五苓散(ごれいさん)体力は関係なく用いられ、頭痛のほかにめまい、吐き気、胃もたれ、胃痛、むくみ、口の渇き、尿量の減少、夏バテなどをともなうときに向きます。体にたまった「水(すい)」を取り除き、むくみやすい、二日酔いなど、体に水分をためやすい場合に用います。最後に吉田医師は、「どれを選べばいいかわからない場合は、薬局に常駐の薬剤師に相談しましょう。また自分の体質や体格がわからないとき、さらに頭痛や頭重感、肩こり、めまいなどの症状が激しく、日常の仕事や生活に差し支える場合は早めに内科を受診してください。何らかの病気が隠れている可能性もあります」とアドバイスを加えます。漢方薬の特徴は、頭が痛いことだけを考えるのではなく、体質とほかの症状など心身の全体の状態を見つめて改善を試みるということです。その点を理解し、自分に合ったタイプを選びとりたいものです。(取材・文藤原 椋/ユンブル)
2019年01月18日「風邪には葛根湯」と決めつけていませんか?漢方薬は飲む人のタイプで合う薬が変わります。うまく選べばインフルエンザにも対応できる漢方薬の新たな魅力を、医師の新見正則先生がKampo Academiaのセミナーで話した内容をもとに紹介します。西洋医が漢方にハマったわけオックスフォード大学で博士号を取得し、元は「サイエンス至上主義者」の外科医だったという新見先生。それが漢方外来を立ち上げるまでになったのは、臨床の現場で「西洋医学では治らない人がいる」ことを痛感したことがきっかけでした。「新しい引き出しを探そうと暗中模索していたとき、漢方に出会いました。西洋医学で治らない人に漢方を使うと、7割の患者さんは治療に満足し、納得してくれる。それなら、保険診療ができる漢方を道具として使わない手はないと思ったんです」(新見先生)また、漢方薬=中国の伝統薬というイメージがあるけれど、日本で流通する漢方薬は「和漢」という日本独自の医学に基づいており、中国の伝統的な医学である中医学とは異なるとのこと。材料として使われる素材も「食べ物の延長で、ほぼ安全」と新見先生。それでいて体調不良を改善したり、認知症が緩和したりとさまざまなメリットがあるのだから、使わないのはもったいないと話します。漢方は風邪やインフルエンザにも効く「漢方薬というと慢性病に有効で、急性の病気には効かないと思っている人が多いけれど、風邪やインフルエンザにも有効」だという新見先生。「風邪をひいたかな?」と思ったら、すぐに飲むことが大切だそう。「自分の経験でいうと、うまく効くときの典型的例はこんな感じです。少しぞくぞくして、なんとなく風邪っぽいと感じたら、葛根湯をお湯に溶かして飲んで、布団に入ります。汗が出ないときは、2時間後にもう一服。そうするとなんとなく汗ばんできて(微似汗)、翌日にはスッキリします。この“微似汗”、少しだけしっとり汗をかく感じが大事です。多量の発汗は体力を奪ってしまい、風邪がスッキリ治りません」(新見先生)「風邪には葛根湯」だけじゃないじわーっと汗をかく“微似汗”の状態を作るには、自分の体にあった漢方薬を選ぶことが大切。風邪に効く漢方薬には、主に下記の4種類があります。麻黄湯……風邪の初期に汗を出して治療する。インフルエンザのような高熱と関節痛の特効薬。たくさん飲むと胃に障ることがある。葛根湯……汗が出ない初期の風邪に効く。麻黄附子細辛湯……華奢な人や元気な高齢者の風邪薬。チクッとする喉の痛みや全身倦怠感を伴うときにも。香蘇散……高齢者や胃腸虚弱な人の風邪の初期に使用する。「漢方では、飲める・飲めないを『がっちりタイプ(実証)』と『弱々しいタイプ(虚証)』と分けて考えます。麻黄が飲めれば、胃が丈夫ながっちりタイプです。我が家を例にすると、14歳の娘はがっちりタイプの超実証なので、風邪をひいた当日は麻黄湯を飲ませます。私は実証なので、葛根湯。妻はすこし虚証なので、麻黄附子細辛湯。母は本当の虚証なので、香蘇散が合います」(新見先生)「風邪には葛根湯」というイメージがありましたが、タイプによって選ぶべき漢方薬が変わってくるとは知りませんでした。新見先生いわく、漢方薬を上手に使うと、本当に気持ちよく風邪やインフルエンザに対処できるのだそう。自己判断が難しいときは漢方外来の力を借りて、ぜひ自分に合った漢方薬を選んでみてください。新見正則先生1959年京都府生まれ。85年、慶應義塾大学医学部卒業。93年から98年まで、英国オックスフォード大学医学部博士課程に留学、移植免疫学の博士号を取得する。98年より帝京大学に勤務し、現在は公益財団法人愛誠病院顧問、帝京大学医学部外科准教授、帝京大学大学院 医学研究科移植免疫学指導教授、帝京大学大学院医学研究科東洋医学指導教授。2002年に本邦初の保険診療によるセカンドオピニオン外来を開設したセカンドオピニオンのパイオニア。2010年より愛誠病院漢方センター長。取材・文/田邉愛理、image via shutterstock
2018年11月22日以前、「ストレスや不安で眠れない…漢方薬という選択肢はあり?」という記事を配信したところ、好評を博しました。その際に、「カリカリして怒りが強くて眠れないとき」はどうすればいいですか、という質問が複数、寄せられました。そこで今回は、「カッカとして目がさえる」などで寝不足が続くという場合に試したい漢方薬について、前回同様、漢方専門医で臨床内科専門医、また消化器内視鏡専門医でもある吉田裕彦医師に聞いてみました。「気」の巡りが滞り、過剰になって眠れないはじめに吉田医師は、眠れないときは、「例えば、寝る前のスマホやパソコンの長時間の操作や生活リズム、また周囲の騒音、寝具の状態など睡眠前後や寝室に関する環境を見直して、その要因を取りのぞくことを優先するべきです。しかし、怒りでカッカとする、イライラが止まらないなどで眠れない場合はそれではおさまらず、ストレスが脳に大きく影響していると考えられます。その場合は、簡単に解消するのは難しいでしょう」と話します。日々、ストレスとつき合いながら暮らしていかなければならない現実にあって、よりよい眠りを得るヒントとして吉田医師は、「漢方の考え方を参考にしてみてはどうでしょうか」と、次のようにアドバイスをします。「漢方では、人間の心身の活動は『気(き)、血(けつ)、水(すい)』の働きのバランスで成り立っていると考えます。『気』とは元気や気力の気で、『血(けつ)』は血液など栄養を与えるもの、『水(すい)』は水分など潤いをもたらすものとイメージしてください。ヒトは、『気(き)、血(けつ)、水(すい)』の働きが充足しているときは、昼間の活動的に動き回る『陽』の状態から、心身が十分に休養できる『陰』の状態に自然に移って、健やかな眠りを得ることができるでしょう。怒りやイライラで眠れない状態は、おもに『気』のめぐりが滞って熱が頭に昇り、疲れをもたらしていると考えます。それが『血(けつ)』や『水(すい)』の状態に複雑に影響するわけです」西洋医薬の睡眠薬とは違った働きでしょうか。「そうです。漢方薬は、心身のバランスを整えて、健やかに眠れる心と体にするように働きます。また、外から受けるストレスをなくすというより、ストレスを受けても、バランスを保てる心身を目指そうというとらえ方になります。漢方薬の場合は種類によって、怒りやイライラにともなう不眠の改善とともに、便秘や胃重感など胃腸の不調や、顔や頭がカッとするのぼせ、また頭痛や肩こり、動悸(き)、更年期の症状などの改善が期待できます」と吉田医師。カッカに対応するいくつかのタイプから、体力や症状別に選ぶ次に、どのような漢方薬が挙げられるのか、吉田医師は次のように説明を続けます。「漢方薬は、体力や体格、関連するほかの症状も含めて、適切な処方が選択されます。市販薬から選ぶ場合、パッケージに対象となる人の傾向が記載されているので、必ずそれを参考にしてください。代表的なものを以下に挙げました。怒りやイライラがある不眠症の場合で、体力やほかの症状に注目して、自分に合う種類を選びましょう」黄連解毒湯(おうれんげどくとう)体力は中等度以上、のぼせがあって顔色に赤みがある、イライラして落ち着かない。めまい、動悸、更年期障害、湿疹など皮膚(ふ)炎、皮膚のかゆみ、口内炎ができやすいなどに。「気」の停滞により体の上部に熱がこもり、「水(すい)」と「血(けつ)」のめぐりも悪化し、湿疹や皮膚炎や口内炎もその症状とみます。紫胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうことぼれいとう)体力は中等度以上、ストレスや更年期障害からイライラして緊張が強い、不安感や落ち込みがある、便秘がち、動悸がある、血圧が高めなどの場合に。頭が興奮しているため、「気」のめぐりを改善して気分を安定するように働きます。抑肝散加陳皮半夏(よくさんかんかちんぴはんげ)体力は中等度、神経が高ぶり、興奮しやすい、些細なことでも怒りやすい、イライラが強い、また、ストレスで胃腸が弱い傾向があるなどに。不足している「血(けつ)」を補って、「気」と「血(けつ)」のバランスを整える、自律神経を安定するように働きかけます。三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)体力中等度以上で、のぼせ気味で顔色に赤みがあり、精神不安、みぞおちがつかえて胃が重い、便秘がち、高血圧にともなうのぼせ、肩こり、耳なり、頭重、鼻血、更年期障害、月経困難などに。体の熱や炎症をとり、イライラを鎮めるように働きます。さらに吉田医師は、「どれが自分に合っているか迷うようなら、薬局に常駐する薬剤師に遠慮なく相談しましょう。わからないままに自己判断で選ぶと、飲むだけ無駄ということもあります。また、2週間程度服用して改善が実感できない場合は、漫然と続けずに、漢方薬を扱うクリニックや不眠を専門とするクリニックを受診してください。ウエブサイトなどで検索すると見つけやすいでしょう」怒りやイライラで眠れない理由は、心身に熱がこもって、脳や精神の活動が停滞しているからであり、そのようなときには、「気・血(けつ)・水(すい)」のめぐりを整えて熱を抑え、不眠の改善に働く漢方薬を試してみては、ということです。参考になさってください。(取材・文ふくいみちこ・品川 緑 / ユンブル)
2018年10月01日以前は気にならなかったパートナーの言動にカッとなる、オフィスで同僚の態度にイライラして大きな声を出しそうに……など、自分の感情をもてあますことはありませんか。「イライラがおさまらず、エスカレートするようなら、漢方薬を試してみるのもひとつの方法です」と話すのは、漢方専門医で臨床内科専門医、また消化器内視鏡専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長。イライラの対策について聞いてみました。ホルモンや自律神経の影響で精神不調に体の不調もさることながら、感情が不安定だと、オフィスや家庭での人間関係をはじめ、さまざまな面で人と衝突しやすくなります。吉田医師は、「患者さんの中には、仕事上のミスが増える、パートナーとのケンカが尾をひく、友人にやつあたりをするなどのトラブルが重なって、ますますイライラが募るという悪循環を経験する人が多くいらっしゃいます」と言い、女性に多い不調の傾向を次のように指摘します。「女性は月経や更年期によるホルモンの分泌、また自律神経バランスがもたらす心身の状態の変化によって、さまざまな不調が現れることがあります。月経不順を含む困難症、腹痛や腰痛、微熱、倦怠(けんたい)感、めまい、のぼせ、耳鳴り、のどのつかえ、イライラ、不眠といった症状がみられます。それらの不調によって、30代後半になれば、『もう更年期かも』と悩む女性もとても増えています」特に30歳前後の女性のストレスについて、吉田医師はこう説明を加えます。「職場では責任のあるポジションにつきはじめる、同時に家事と子育ての真っ最中、シングルであれば妊娠、出産のタイミングをはかるなど、生活の多くの面からストレスが重なりやすい時期です。ストレスが過度になると自律神経のバランスが乱れ、更年期とよく似た症状とともにイライラや怒りっぽくなる、また精神不安が生じやすくなるでしょう。さらに、基礎代謝が低下しはじめる時期であり、20代前半と同じ食事をしても体重が増えやすくなり、不自然なダイエットを始める人もみられます。それが体調を悪化させ、ストレスとなって気持ちの不安定さにつながるケースもあります」漢方薬の助けを借りながら、生活のリズムを整えるイライラの悪循環に陥ると辛い日々になります。吉田医師はその対策について、次のようにアドバイスをします。「まず、自律神経のバランスの乱れを整える生活を送りましょう。1日3食、栄養のバランスがよい食事をとる、早めに布団に入って質のよい睡眠をとる、適度な運動をする、気分転換になる趣味をもつ、朝、昼、夕方は活動的に、寝る前数時間は静かに過ごすなど、毎日ではなくても、できるだけそうした習慣を実践するようにしましょう。ただし、人間関係に大きく支障が出たり、仕事や家事が思うようにできなくなったり、眠れない日が3日以上続くなど、日常生活に影響するときは、漢方薬を試してみるのもいいでしょう。漢方薬は体質によっていくつかの種類があります。自分の体質を見つめ、それぞれの薬の特徴を知って、症状に合ったタイプを検討してみてください」ここで吉田医師は、イライラ対策の漢方薬として、市販されている種類を次のように挙げます。・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)東洋医学では、ヒトの体は「気(き)、血(けつ)、水(すい)」のバランスが健康を保つととらえます。ストレスで怒りっぽくなる、イライラしやすいというのは、「血」の不足や、「気」と「血」のバランスの乱れ、また「気」のめぐりが悪くなった状態と考えます。抑肝散加陳皮半夏は、自律神経や血液量を調節しながら、「気」や「血」をよくめぐらせる働きがあるとされています。体力が中等度で、些細なことにカッとなる、ものにあたるなどイライラが強い場合に用いられます。胃腸の働きを整える成分も含まれているため、ストレスが胃腸の不調に現れやすい人、胃腸の弱い人でも服用しやすいでしょう。・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)漢方では、月経は「気」の力を用いて全身から「血」を集めて生ずると考えます。「気」や「血」が正常に流れていない場合に、便秘や下腹部痛、のぼぜ、イライラや不安感が起こるとされます。桃核承気湯は、体力が中等度以上で、月経前、月経中にこうした症状を覚えるときに用いられます。・加味逍遥散(かみしょうようさん)女性にとっては、「血」が心身の基本であるとされ、更年期に現れる症状は、「血」の不足によって起こるととらえます。「血」と「気」は同じ量があることでバランスを保つと考えますが、月経の回数を重ねると、ストレスなどによって、「血」の量は減っていきます。「血」が消耗すると「気」が余り、余った「気」は熱に変わり、上半身や脳に昇って、のぼせやイライラの症状を生じるとされます。加味逍遥散は、体力は中等度以下で、疲れやすい、肩がこりやすい、冷え症といった更年期の症状がある人に向き、「気」を下げ、熱を抑えて症状を改善するように働きます。自律神経のバランスの調整や全身の血流促進が期待されます。薬の使用にあたって吉田医師は、こうアドバイスをします。「漫然と使用を続けることはせず、試用期間は2週間程度を目安としてください。日常生活のリズムを整えることも同時に行うようにしましょう。それでもイライラに悩まされる、人との衝突が多いなどの悩みが改善されないようなら、早めに婦人科や心療内科、内科などを受診しましょう」イラっとする、カッとなる、コントロールできない感情の起伏の大きさに自己嫌悪。そんなとき、漢方薬という選択があるとのことです。悩んでいるよりも、まずは試して様子を見てはいかがでしょうか。(取材・文ふくいみちこ・藤井 空 / ユンブル)
2018年07月29日仕事に家庭にと悩みが増えるこのごろ、布団に入ってもなかなか寝つけないことはありませんか。ストレスや不安感で眠れないことが続くときの改善策のひとつとして、漢方薬があるということを耳にしました。漢方専門医で臨床内科専門医、消化器内視鏡専門医でもある吉田裕彦医師に聞くと、「漢方では、体の不調と精神の状態は深く関係しているととらえます。ストレスや生活習慣を改善したうえで漢方薬を適切に選ぶと、良い眠りを取り戻すことが期待できるでしょう」と話します。そこで、漢方薬をどう選べばよいかについて詳しく聞いてみました。ストレスや不安で脳が興奮すると眠りの質が悪くなる——厚生労働省発表の平成27年「国民健康・栄養調査」によると、「20歳代~30歳代の約3割の女性が、睡眠の質に何らかの不満をもっている」という報告があります。睡眠の質が悪いとは、具体的にどういったことなのでしょうか。吉田医師不眠の状態はさまざまで、医学的には、「寝つきが悪い入眠障害」、「途中で何度も目が覚めて寝つけなくなる中途覚醒」、「早く目が覚めてそれからは眠れない早朝覚醒」、「少しの物音でも目が覚めるなど熟睡ができない熟眠障害」に分けて考えています。複数の症状がある人もいます。——なぜそういった症状が出るのでしょうか。引き金となる要因はありますか。吉田医師自律神経の働きが強く影響します。自律神経は昼は積極的に活動して夜は休息するように働きますが、昼夜逆転などで生活時間が不規則になる、また、栄養のバランスが整った食事がとれておらず時間も不規則だ、運動が十分ではない、お酒をたくさん飲むなど、日常の過ごし方、食生活のありようが乱れがちになると睡眠の質は低下します。さらに、悩みがある、ストレスや不安感が強いとき、あるいは寝る直前までパソコンやスマートフォンを操作しているなどだと、布団に入っても脳の興奮状態が続いて自律神経が休息モードに切り替わりにくいため、質のよい睡眠を妨げることになります。——楽しいイベントの前にはワクワクして眠れないこともあります。睡眠にはいろいろな精神の状態が関わっているということでしょうか。吉田医師東洋医学では、日中は「陽」、夜半は「陰」の状態にあるのが自然であり、この調和がとれているときはスムーズに眠りにつけると考えます。このバランスが崩れると、心身が休まらない、不眠の症状が現れることがあります。不眠は、生活全体のバランス、また、体と精神の調和の乱れを知らせるサインの一つと考えて注意をしましょう。疲れの度合い、冷えやのぼせなどの体調を加味して選ぶ——漢方薬を選ぶとき、具体的にどのように考えればよいのでしょうか。吉田医師自分の体質や体格と精神の状態を考え合わせましょう。ストレスや不安が強くて眠れないときはまず、自分の精神の状態を見つめてください。「イライラして気になることが頭から離れない」、「ささいなことなのにクヨクヨと心配になる」、「ちょっとした怒りがぶり返して落ち着かない」、「疲れてクタクタなのに目がさえる」などのどれに近いかを探ります。複数の場合もあるでしょう。また、睡眠には一定の体力が必要ですので、疲れが激しい場合もよい眠りが得られにくくなります。自分の日ごろの体力の程度と不調の具合、例えば、疲労度や疲れに伴う症状のめまいやふらつき、冷えやのぼせがあるかなどを考慮しましょう。実際には、次のような漢方薬があります。加味帰脾湯(かみきひとう)・体格や体質:体力は中等度以下、食欲がない、虚弱体質、血色が悪い・症状:疲労感が強い、貧血、イライラする、不安が強くて眠れないなど桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)・体格や体質:体力は中等度以下、やせ気味で顔色がよくない・症状:疲れやすくてクタクタ、ささいなことがクヨクヨと気になる、興奮して眠れないなど柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・体格や体質:体格がよく、体力は中等度以上・症状:ささいなことでイライラする、便秘がある、動悸(どうき)がある、不安感や緊張感が強くて眠れないなど抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)・体格や体質:体力は中等度、やや胃腸が弱い・症状:怒りっぽい、神経が高ぶる、神経質、イライラが強くて眠れないなど黄連解毒湯(おうれんげどくとう)・体格や体質:体力は中等度以上、のぼせやすい、顔色に赤みがある・症状:ささいなことでイライラする、落ち着かないなどで眠れない、胃炎がある、めまい、動悸(どうき)、湿疹、皮ふ炎、皮ふのかゆみ更年期障害など加味逍遙散(かみしょうようさん)・体格や体質:体力は中等度以下、虚弱体質、のぼせやすい、冷え性、・症状:疲れやすく、イライラして眠れない、便秘がある、月経困難、更年期障害など——自分の症状が複数の薬の特徴にあてはまるなどで、迷ったときはどうすればいいでしょうか。吉田医師目安となるポイントを挙げましたが、パッケージに記述されている特徴を読んでもよく理解できないこともあるでしょう。そんなときは必ず、薬局に常駐する薬剤師に相談してください。また、自分の体質がわからない、精神の状態も複雑で選べない、それに市販の薬を2週間ほど服用しても睡眠の質が改善されないときは、内科か心療内科、精神科を受診しましょう。何らかの病気が隠れている場合もあります。——不眠を改善するために、漢方薬という選択肢があるということがわかりました。ありがとうございました。眠れないときには、部屋の状態や寝具などの環境にばかり目が向きがちでしたが、毎日の過ごし方や精神、体の状態と睡眠の質が深く関わっていることを改めて知りました。ストレスやイライラ、不安感はどうしようもないなどと諦めずに、生活習慣を見直しながら、ときに漢方薬の力を借りてよい眠りを手に入れたいものです。(取材・文ふくいみちこ×ユンブル)
2018年02月21日source:病院でお薬を処方されるときに、「授乳中は飲んだ薬が赤ちゃんに影響するから、しばらく母乳をやめてください」と言われることがあります。具体的にどのお薬がどのくらい影響するのでしょうか。本当に授乳中は一切お薬を飲んではいけないのでしょうか。助産師である筆者が、これまでの経験と書籍を確認し、安心して授乳を続けるにはどのようにしたらよいのかをお伝えします。▼お薬を飲むとどのくらい母乳に影響が出てしまう?じつは母乳にお薬が移行するのはママが飲んだ量の1%程度にすぎず、ほとんど影響がない量しか分泌しないことが分かっています(※1)。赤ちゃんが予定日よりかなり早く生まれた場合は、薬を処理することができないことがあるため、内服を控えたほうがよいこともあります。しかしこれは生まれた直後だけであって、体重が増えていけば薬の影響は少なくなり、離乳食を食べるころになれば、ママが内服しながら授乳しても影響はほぼありません。関連記事:風邪でも休めないママに!簡単&美味しい「薬膳スープ」レシピ▼日常的なお薬は大丈夫source:日常的に内服する可能性がある、風邪薬・痛み止め・胃薬のようなお薬は、授乳中でも差し支えないと考えてよいようです。でも、授乳中は控えたほうが良いお薬もあります。具体的には(1)抗がん剤(2)放射線物質(3)精神神経疾患用の薬(長期間内に内服する場合)です。関連記事:【妊婦さんのギモン】医薬品・漢方・サプリとの付き合い方~医薬品編~ ▼「母乳を続けたい」と伝えることが大切 お薬を処方されるときには「母乳育児を続けたい」とお伝えすることをおすすめします。薬が必要な場合は、赤ちゃんに影響の少ないお薬に変えてくれることもあります。しかし残念なことに、「授乳中に安全な薬はないから授乳をやめるように」と、母乳に理解を示してくれない医師も存在します。そのように言われたときは、病院を変えることも選択肢のひとつ。母乳に理解のある先生は必ずいらっしゃいます。小児科医の水野克己先生が、書籍で書かれていた言葉(※1)を引用します。ほとんどの薬は授乳しても差し支えないと考えられます。とはいえ、わが国の医療現場では「授乳中のお母さんに対してほとんどの薬は処方してはならない」という考えがまだ根強いのが現状です。母乳を続けながら治療をしたいという気持ちを医師に率直に話し、相談してみてください。※1 水野 克己『これでナットク母乳育児』 – へるす出版つまり、抗がん剤など一部を除き、授乳が続けられないようなお薬はほとんどないのです。 ▼授乳中のお薬を調べられるように 影響がないといわれても、先生によって言うことが違うと不安になるのは当然です。そんなときに、ママが自分で調べられる方法をご紹介いたします。【母乳と薬の相談先】 (1)大分県医師会作成「母乳と薬ハンドブック」ダウンロードすると薬名が出てきます。なかには、「市販では安全性が△と書いてあっても、実は◎」のようなお薬が多数あります。 (2)LactMed(英文です。薬剤名を英文入力すると、レベル1~5で安全性を判断します) (3)国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」電話で薬の安全性について相談にのってくれます。(月曜~金曜10~12:00のみ) なにより、母乳育児中はママの健康が不可欠です。お薬を控えて体調がすぐれない日々を過ごすよりも、早く治して元気に育児してくださいね。 【参考・画像】※1 水野 克己『これでナットク母乳育児』 – へるす出版※ 妊娠と薬情報センター – 国立成育医療研究センター※ White bear studio、 fizkes / Shutterstock
2018年02月13日風邪の対策に漢方薬を試そうと思い、漢方専門医で臨床内科専門医、また消化器内視鏡専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長に、「風邪の場合は葛根湯を飲めばいいのですよね」と聞いてみたところ、「そうとは限りません。風邪対策の漢方薬は複数存在します。どんな人、どんな症状でもいつでも葛根湯が効果的と考えるのは間違いです。症状や体格、体質によって自分に合った薬を選ぶ必要があります」という返答がありました。では、どのようにして適切な漢方薬を選べばよいのでしょうか。詳しいお話を聞いてみました。葛根湯は体格ががっちりめで体力がある人に吉田医師はまず、漢方薬の選び方について次のように説明します。「風邪に限らずどの症状でも、漢方では自分の体質や体格に合うものを考えます。体力や気力の状態、体型ががっちりしているか細身であるか、顔色は良いか悪いか、冷えやすいか熱しやすいかといったこと、そして、風邪なら咳が激しい、鼻水がつらい、おなかの調子が悪い、微熱があるなどの症状を考え合わせて選びましょう。葛根湯の場合は体格がややがっちりしていて体力がある人に向くので、例えば、スリムで日ごろから血色が良くなく、疲れやすい人でなかなか風邪が治りにくい場合は、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、またそういった人が鼻水の症状がきつい場合は小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を試すなどと考えていきます」風邪対策と言えば葛根湯と思いがちなのはCMなどによる影響かもしれません。漢方薬の選択肢は、体質や体格、症状によって複数あるということです。では次に、具体的な漢方薬が向く体格や体質、症状の特徴を吉田医師に挙げてもらいました。<葛根湯(かっこんとう)>・体格や体質:中肉中背、ややがっちり体型、比較的体力がある、食欲がある。・症状:寒気を伴う風邪のひきはじめ、首や肩のこりがひどい、うなじや背中がはる、頭痛がする。・働き:体を温める作用があり、症状を和らげる。<補中益気湯(ほちゅうえっきとう)>・体格や体質:体力、気力があまりない、ストレスが多く疲れやすい、日頃から胃腸が弱い。・症状:下痢や胃痛を伴う風邪。・働き:「中」は胃腸を指し、胃腸の働きを整えて気力を生み出し、抵抗力をつけるように働く。<小青竜湯(しょうせいりゅうとう)>・体格や体質:細身で体力や気力があまりない、血色が悪くて日ごろから水分代謝が悪く胃腸が弱い、体が冷えぎみ、むくみやすい。・症状:水っぽいタンが出るせき、鼻水、花粉症などアレルギー性鼻炎。・働き:葛根湯より体を温める作用が強く、水分を排出するように働く。<麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)>・体格や体質:女性、中年以上に見られやすい、体力がなくて細めの体型、病後、日ごろから手足が冷えやすい。・症状:鼻づまり、頭痛、吐き気、咳、のどが痛い、熱はない風邪。・働き:体を温める作用が葛根湯より強く、発汗を促す。<麦門冬湯(ばくもんどうとう)>・体格や体質:体力があまりない、日ごろから、皮膚が乾燥し下痢をしていない。・症状:のどがからからと乾く、から咳がある、痰(たん)が切れない、咳がひどい風邪。・働き:乾燥を防ぐために、粘膜や気道を潤すように働く。<柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)>・体格や体質:やせ型で体力がなくて疲れやすい、日ごろから、食欲があまりなく、寝汗をかきやすい。・症状:こじらせて長引いている、風邪の中期から後期で、胸やわき腹が苦しく、胃に不快感がある、頭痛がある、寝汗や汗をかきやすい。・働き:胸の症状と消化器症状、頭痛や発汗を和らげるように働く。<麻黄湯(まおうとう)>・体格や体質:がっちりした体型、メタボリック・シンドロームや肥満、肥満気味で、日ごろから食欲がおう盛、汗をかきやすい。・症状:風邪のひきはじめで、悪寒がある。鼻が出て熱があり、体のふしぶしが痛むが汗が出ない。・働き:体を温め、発熱作用を促すように働く。抗インフルエンザ薬とともに使用されることもある。CMや情報源が不明のウェブ記事をうのみにしない適した漢方薬を選ぶには、普段から自分の体調の傾向や弱み、例えば、疲れやすい、ストレスに弱い、睡眠不足がこたえる、むくみやすい、おなかをこわしやすいなどに関心をもっておくことが重要であるようです。吉田医師は、セルフケアの際に医師から見た注意について次のようにアドバイスをします。「体調の変化に気づきやすくなると、早めに手当てを始めることができます。ただし、自分の体力や体調への過信、また、CMや情報源が不明のウェブ記事をうのみにしないようにしましょう。市販薬のパッケージには、向く体格や体質、症状についての記述があります。よく読んで参考にしましょう。迷ったときには必ず、薬剤師に聞いてください。また、服用しても症状が治まらない、症状が3日以上続いている、だんだん症状がひどくなるなどと異変を感じたときは早めに内科を受診しましょう」漢方薬を選ぶことは自分の体の声に耳を傾ける行為でもあるようです。万病のもとといわれる風邪を長引かせないように、そのときどきの症状をよく見つめ、薬剤師や医師に相談しながら適切な薬を選びたいものです。(取材・文ふくいみちこ × ユンブル)
2018年02月04日出典:妊娠中は初期、中期、末期とそれぞれの段階があります。特に妊娠初期であれば赤ちゃんの中枢神経や心臓、消化器や四肢などの重要な器官の形成に関わってくる時期ですので、医薬品の影響を受けやすい時期であると言われています(※1)。それでは、妊娠中は全ての医薬品を飲んではいけないのか、漢方薬やサプリメントはどうなのか、よくわからない部分もあるかと思います。そこで今回は【漢方編】として、漢方薬との基本的な“向き合い方”をご紹介します。「西洋の医薬品」とは性質が異なる漢方薬医薬品は大きく分けて、西洋の薬と東洋の薬(漢方薬)に分けられます。西洋のお薬はいわゆる錠剤のものが多く、“何かしらの病気に対して治癒や緩和を目指すもの”です。一方、漢方薬は“体のバランスを整え自然治癒力を高めていく”ということが目的です(※2)。ちなみに、世の中では漢方薬と、漢方薬にも入っていることがある生薬(高麗人参など)を用いた“健康食品”とがそれぞれ存在します。それぞれの違いですが、“漢方薬”は薬機法(旧薬事法)に基づいて厚生労働大臣が認可する“日本薬局方”(医薬品の製法や効果・効能などを示した規格書)に記載されているもののみを指します(※3)。一方、日本薬局方に掲載されていない製品は全てが“健康食品”で、パッケージなどに“●●が治る”、“●●に効く”といった効果・効能を記載することはできません。ですが、漢方薬であっても副作用が全く無いわけではありません。基本的には自己判断で服薬せず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。以下ではその注意点について触れていきます。 妊娠中は必ず医師・薬剤師に相談を出典:例えば、ほとんどの方がつらい思いをする妊娠悪阻。漢方薬では、“半夏加茯苓湯”や“二陳湯”、“半夏厚朴湯”や“人参湯”などさまざまな薬が用いられています。また切迫流産などであれば“当帰芍薬散”、便秘で悩む場合は“小建中湯”や“桂枝加芍薬湯”など、使用する漢方薬は多岐に渡ります。一方、「少し便秘かな?」と思って“大黄”という成分を飲んでしまうと下痢になってしまい、切迫流産など危険因子を助長する可能性も否定できません(※4)。薬局で購入できる漢方薬も多々ありますが、妊娠中は必ず現在の気になっているところを医師に相談して処方してもらうようにして下さい。※本サイトにおける医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。 【参考・画像】※1 坂井建雄・河原克雅(2012)『カラー図解人体の正常構造と機能全10巻縮刷版生殖器妊娠・分娩<改訂第2版>』p454-455日本医事新報社※2 漢方薬とは – 漢方薬師堂※3 「日本薬局方」ホームページ – 厚生労働省※4 妊娠中の漢方治療 – 堀産婦人科※ Africa Studio、Milkovasa / Shutterstock
2017年10月02日「美容漢方薬局SINSEIDO」株式会社新成堂ホールディングスが運営では、独自の『LHJメソッド』を指導する人気のバストアップセミナーを開催する。講師は、リンパケアトレーナーとしても実績をもつ木村有泉氏。同薬局の代表だ。セミナーでは、1日15分ほどのセルフケアをするだけでバストアップが可能な『LHJ(エルエイチジェイ)メソッド』を指導する。『LHJメソッド』の仕組み『LHJメソッド』では、筋肉や筋膜を緩めることによって、細胞間液の循環と、筋膜の癒着の改善を促す。これにより、新陳代謝がよくなり、痩せやすい体質へと改善。筋トレの効果も増すという。実際のケアは、腕をゆすったり、バストをなでたりするだけで、難しいものではない。セミナーでは、『LHJメソッド』のレッスンに加え、リンパケアや腹膜リリースに関する勉強会もおこなわれる予定だ。セミナー概要日時: 2017年2月28日(火)11:00~15:00会場: 美容漢方薬局SINSEIDO参加費: 16,200円(税込み)(プレスリリースより抜粋)セミナーの予約、問い合わせはLHJメソッドのホームページにておこなう。講師の木村氏はメソッドの効果を体現。57歳の現在、バスト84cm、ウエスト58cm、ヒップ86cmという脅威のプロポーションを維持している。(画像はプレスリリースより)【参考】※1日15分のセルフケアでバストUPに期待/腕をゆるゆる揺すったり、バストを撫でるだけの簡単メソッド/渋谷の「美容漢方薬局SINSEIDO」で開催の人気セミナー『LHJメソッド』
2017年02月10日便秘を解消するために、「漢方薬を試してみたい。西洋医薬の下剤はきつそうだから」という声をよく耳にします。ドラッグストアには漢方薬がずらっと並んでいますが、どう選べばいいのでしょうか。また、漢方薬はくせにならない、副作用がないとも聞きますが、実のところはどうなのでしょうか。臨床内科専門医で、西洋医学と東洋医学の両面から治療を行う正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に、詳しいお話を聞きました。便秘は、「気・血(けつ)・水(すい)」のめぐりが滞っているはじめに、便秘の症状について、正木医師は次の状態を指摘します。□ 3日以上排便がない□ 毎日排便があっても、便が硬くて量が少ない□ 残便感がある□ 排便に苦痛を感じる「毎日お通じがあったとしても、状態によっては便秘になります」と正木医師。続いて、東洋医学による便秘のとらえかたについて、こう説明をします。「東洋医学では、ヒトの体は、心身の生命エネルギーである『気(き)』・主に血液を意味する『血(けつ)』・血液以外の体液を指す『水(すい)』という3つの要素が互いに連動しているととらえます。便秘は、これらのうちのどれか、あるいは全部の働きが滞ることで排泄が順調ではないと考えます。対策には、まずは食事の内容や睡眠はどうか、運動不足ではないか、体は冷えていないか、ストレスを溜めていないかなど、生活習慣を見直すようにしてください」漢方薬は、体格、体力、疲労度、血圧など体質別に選ぶ次に、漢方薬を試したい場合の選び方について、正木医師に教えてもらいましょう。「体格や体質を漢方では『証(しょう)』と呼びますが、これが重要になります。ですからまず、その患者さんが、やせ型か標準かぽっちゃり型か、体力はあるのか、疲れているのか、ストレスは大きいか、血圧はどうなのか、また、ほかに病気はないかなどを診ます。次に、便秘は一時的なものか、慢性的なのか、慢性的なら残便感や腹痛はあるのか、便秘と下痢をくり返すのかなどの症状を聞き、『証』と合わせて適切だと判断した薬を処方します。下剤のような働きがあるタイプ、体質の改善を行いながら便通を整えるタイプなどを選ぶことになります」自分で市販の漢方薬を選ぶときには、「証、つまり体質に適した漢方を選ぶようにしましょう」と話す正木医師は、次の「主な体質とそれに合う代表的な漢方薬」を4つ挙げます。(1)疲れにくく、強壮なタイプ―「実証(じっしょう)」と呼ぶ・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)おなかに指でつまめる皮下脂肪が多く、肥満、尿量が少ない、むくみ、肩こりなどの症状がある場合に。体内の水分の循環を改善します。・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)体力があり、イライラする、ストレスがある、高血圧、のぼせ、めまい、頭痛、肩こりなどの症状がある場合に。(2)疲れやすくやせ気味で、胃腸が弱いなど虚弱傾向があるタイプ―「虚証(きょしょう)」と呼ぶ・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)おなかが弱い、便秘のときに腹痛がある、残便感がある、ストレスを感じやすい場合に。便秘と下痢を繰り返す症状や、過敏性腸症候群に使われることがあります。乱れた「気」や「血」のバランスを整えます。(3)体力、気力、体型などがバランスのとれた標準タイプ―「中間証(ちゅうかんしょう)」と呼ぶ・麻子仁丸(ましにんがん)慢性的に排便が少ない、コロコロとした乾燥した便が続く場合に。水分不足な便に潤いを与えてやわらかくし、自然に排出しやすくします。・潤腸湯(じゅんちょうとう)コロコロとした乾燥した便が続く、のどの渇きや皮ふの乾燥、ほてりなどで水分不足が考えられる場合に。(4)いずれのタイプにも当てはまる・大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)慢性的な便秘の改善に、いずれの「証」のタイプにも使われます。下剤として働くので、「虚証」の人は少量から始めましょう。習慣的に服用すると効きにくくなる漢方薬はくせになりにくいと聞きますが、本当でしょうか。「飲み続けないと便秘が改善しなくなると言う意味でしたら、漢方薬も薬ですから、飲みかたや頻度、期間によっては、そうなる可能性はあります。また、2週間以上の長期的、継続的に服用すると、薬の刺激に体が慣れて腸の機能が低下し、効きにくくなります。西洋医薬と同じことが言えます」と正木医師。では、漢方薬は副作用が少ないというイメージがありますが、それはどうでしょうか。正木医師は次の注意を促します。「それも誤解です。穏やかにゆっくりと働くという特徴はありますが、薬である以上は多種の成分が含まれていて、個人の体質、体調にすべての漢方薬が合うわけではありません。胃の不快感、腹痛、下痢、食欲不振のほか、体質、体調によって複数の症状が現れる可能性はあります。説明書に記載の用法と用量に沿って服用しましょう。1〜2週間ほど服用しても効果がない、症状が改善せずに日常生活に支障をきたす場合は、消化器内科や胃腸科、内科などの医療機関を受診してください」漢方薬を選ぶにあたっては、まずは自分の体質、そして便秘の原因と症状、体調を見極めようということです。また、連用や常用を避け、副作用もあることを認識しておきましょう。生活習慣を見直しながら、薬に依存しないように注意することも必要だということです。参考にしてください。(取材・文海野愛子/ユンブル)
2016年12月12日「漢方薬は副作用がないから安心」「授乳中で薬は飲めないけど、葛根湯(かっこんとう)なら大丈夫」といった声を聞くことがあります。しかし、漢方薬も薬である以上、まったく副作用がないわけではないのだとか。薬局で買って飲む前に知っておきたい基礎知識を紹介します。■漢方=中国の医学じゃない!?漢方の歴史は古代中国で始まりましたが、5~6世紀頃に日本に伝わり、以来、独自の発展を遂げてきたと言われています。漢方は中国の医学ととらえている人も多いようですが、中国医学をもとにした日本独自の医学なのです。ちなみに、漢方という呼び名は、西洋医学の「蘭学」と区別するためにつけられのだそう。漢方薬は、植物や動物などの自然素材を原料にした複数の生薬(しょうやく)を組み合わせてつくられたもの。化学合成された成分が主体の西洋薬に比べて、一般的に作用が穏やかなものが多く、体にもやさしいと言われています。 ■体質に合わないと、副作用が出ることもただし、漢方薬にも副作用がないわけではありません。ひとりひとりの個人差を重視するのが漢方の考え方ですが、個人の体質や病気の状態に合わない使い方をすると、副作用が起こることもあると言われています。たとえば、一般的によく知られている漢方薬に、葛根湯があります。葛根湯には、免疫力を高め、発熱や炎症を和らげる作用があると言われていますが、胃腸が弱い人が飲むと、胃の調子が悪くなる場合もあるそう。漢方薬による主な副作用には、このほか、吐き気、下痢、発疹、じんましん、動悸などがあります。副作用は少ないか、出たとしても軽い症状であることがほとんどですが、漢方薬の一部には、重篤な副作用が出るものもあるようです。したがって、市販薬を含め、漢方薬を使うときは、薬剤師や医師に相談した上で服用するのが安心。また、漢方薬を服用して、体に異常や不快な症状があらわれたときは、すぐに医師の診察を受けましょう。■漢方は、女性特有の不調や慢性疾患に向いている漢方薬は、冷え性や肩こり、生理前の不快な症状(PMS)、生理痛、更年期症状など、病院に行くほどではないけれど、なんとなく不調という場合に、特に向いているとされています。また、赤ちゃんや母乳に影響を与える心配が少ないことから、妊娠中の便秘や、授乳中に起こる乳腺炎の治療に漢方薬が使われることも多いようです。生理や妊娠・出産の影響で不調を感じやすい女性やママにとって、漢方薬は強い味方になってくれそうですね。ただし、妊娠中や授乳中に飲んではいけない漢方薬もあるので、必ず薬剤師や医師に相談した上で服用するようにしましょう。ポピュラーな漢方薬は一般のドラッグストアでも市販されていますが、漢方専門の薬剤師がいる薬局に行くと、ひとりひとりの体質に合った漢方薬を調合してもらえます。また、漢方に詳しい医師が、西洋医学と漢方医学の双方の観点から診察した上で、漢方薬を積極的に処方してくれる病院も。健康管理に漢方を取り入れてみたい人は、最寄りの漢方専門の薬局や医療施設を探してみてはいかがでしょうか。
2016年06月05日