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サッカーで最も避けたいのはケガですが、時にはどうしても抗えないもの。子どもがもしも復帰に時間がかかるケガをしてしまったら、親としてしてあげられること、してはいけないことはどんなことがあるのでしょうか。日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターとしても長年選手のケガを見てきた大塚一寛先生(あげお愛友の里施設長)は「今、日本代表で活躍している選手のうち、あのケガがなかったら世界で活躍はできていなかっただろうという子が何人もいる」と話します。しないに越したことはないものの、ピンチをチャンスに変えるきっかけにもなりうるのがケガだと言います。気になるその理由について詳しくお話を伺いました。(取材・文:小林博子)写真は少年サッカーのイメージ親が変われば子どもも変わる!?サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>■ケガからの復帰の目安は?全治数週間など、ある程度の離脱を経た後の復帰時期の判断は難しいもの。プロ選手の場合は、専門の機械を使って大腿四頭筋の筋肉を調べ、解析数値が9割戻っていたら完全復帰の目安にしているそうです。小中学生の場合はそこまで専門的に調べることはほとんどないので、医師と相談の上、無理のない範囲からの復帰が基本に。調べる方法としては、例えば膝や足首のケガの場合は、片足ずつスクワットをして筋力とバランスの左右差がほとんどない事を確認できることを目安にすることなどがあります。なお、小学6年生や中学3年生などで、最後の大会が近いときなどは、多少無理をしてでもピッチに立ちたい、立たせてあげたいと思うもの。そんなとき、医師が選手の体を診て復帰OKと言えなくても、そこは相談......となることも多々あるのだとか。「"愚行の権利"というものがあり、医学的にダメなことでもそれを覆して当事者が決めることは権利として守られています。将来のことを考えると無理をさせたくはありませんが、親御さんと選手の気持ちを優先して相談にのることもあります」とのこと。難しい判断になりますが、自己責任の範囲内で復帰を早めるケースもあるようです。■ケガを糧に、より強く上手くなることだってできるサッカーでのケガでは、相手との接触で起こるものが占める割合はたったの3割。残り7割は非接触時に発生しています(関連記事:「実は5月6月の方がケガが多い」)。非接触時のケガは自分の弱い部分に負荷がかかってしまった時に起こるのが特徴。つまりウイークポイントをケガします。ケガにより体のウイークポイントを発見でき、その部位をリハビリで徹底的に鍛えることで、バランスを整えてより強靭な体にすることだってできるそう。大塚先生がケガからの復帰をサポートした選手の中には、現在日本代表や海外チームで世界を相手に大活躍している人が多数います。「あのときのケガがなかったら、あの選手は代表に選ばれたり、海外チームで活躍できるほどの今なかったかもしれない」と思える選手が何人もいると言います。ケガを糧により良い未来を実現することだってできると思うと、まさに「ケガの巧妙」。起こってしまったアクシデントを未来に繋げるための「今」にできることはどんなことなのでしょうか。■ウイークポイントをストロングポイントに変えられる選手とそうでない選手の違い大塚先生によると、ケガを糧によりパワーアップした選手に共通しているのは「常に質問をして、自分の体にしっかり向き合ってリハビリをアレンジできる」ことだそう。逆に、ケガからの復帰が予定より遅れたり、ケガをきっかけにパフォーマンスが落ちるのは「1日3セットやればいい」など、医師やトレーナーに言われたことを、自分なりに消化せず(創意工夫なく)そのまま実践してしまう選手だそうです。リハビリは自分の体の様子やコンディションに合わせて主体的にアレンジすることがその後を大きく左右します。「天気や湿度で洗濯物が乾く日とそうでない日があるように、人間の体も毎日調子が変わります。毎日同じ事を繰り返すのではなく、回数や内容はその日の体の様子を見て増減させるべき」と大塚先生。とはいえ、その判断は小学生には難しいのが事実。とくに男子は精神年齢が女子より低いため(5歳分違うというエビデンスがあるそう)、お父さんお母さんのサポートが絶対的に必要になります。ちなみにプロの世界では、選手のケガをケアするスペシャリストが複数人います。まずは医師が医学的なところを診て判断し、チームの理学療法士とアスレチックトレーナー、フィジカルトレーナーと連携を取り、段階に応じてさまざまなサポートをします。小学生の場合は、医師以外の3人分を保護者が担うと心得ましょう。大塚先生の診察を受ける小学生や中学生の選手は、診察やリハビリにお母さんやお父さんに一緒に来てもらって、トレーナーとしての目を養ってもらっているのだとか。■「未来日記」でモチベーションを言語化しよう前向きな気持ちは回復を早めるケガをして離脱している時は、メンタル面のサポートも重要になります。特にその時期は目標を失わないことを意識して欲しいそう。そのために大塚先生がおすすめしてくれたのは、「未来日記」を書くことです。長友佑都選手が19歳でケガをした時に書いた未来日記には、1年後にチームのレギュラーに、3年後に日本代表に、5年後に海外チームで活躍すると記されていたそう。見事に実現しています。ただ頭の中に思い描くのではなく、活字にして言語化することで明確なモチベーションが目に見えるようになります。そうすることで、・ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンのバランスが整ってさまざまなメリットが。前向きなメンタルをキープしやすくなり、結果的にケガの回復もサポートしてくれます。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンの働き、作用(資料提供:大塚一寛先生)「先日、75歳の女性の外科手術をしたとき、その方は『治ったら孫とアイドルのコンサートで3時間飛び跳ねたい』と話してくれました。私はそれを聞いてこの人は絶対治ると確信したんですよ」と、大塚先生が話してくれたエピソードがありました。前向きにリハビリに取り組むことで、中脳からドーパミンが分泌されます。ドーパミンにはさまざまな作用がありますが、その1つに痛みを感じにくくする作用も。ストレスを感じた時に分泌されるノルアドレナリンとのバランスが大切で、それを保つのがセロトニンです。目標をもってリハビリに取り組む本人の意識と並行して、親の言葉がけもセロトニンの分泌には大切。褒めてあげる、見守ってあげることを意識するといいそうです。そうすることで、脳内物質がバランスよく分泌され、良好な回復につながります。「ちなみに、未来日記に書くのは真面目なことだけじゃなくて大丈夫です。レギュラーになってモテたいでもOKですよ」(大塚先生)■復帰はまずは強度の低い相手と復帰時は、下級生の練習に入れてもらうなど、強度やスピードを自分自身のレベルより下げた環境からスタートすると良いでしょう。前回の記事で5月6月にケガが多い理由を大塚先生から「新学期でサッカーのレベルが上がること」が原因と伺いましたが、復帰はその逆の理論で、やさしいレベルの中でのリスタートがおすすめとのことです。■自分自身への感謝の気持ちを持つつらいリハビリの日々を乗り越えれば、また楽しくサッカーができる日が来ます。その過程では「引退」や「退部」という文字が頭に浮かび、悩んでしまう瞬間もあるかもしれません。そんなときに親子で感じて欲しいことは「そんな悩みを持てること自体がすでに幸せだ」ということだと大塚先生は話します。「サッカーができる喜び、ケガをするほど思いっきりサッカーができたこと、復帰したら戻れるチームがあること......。すべてに感謝してみましょう。そして何よりも最も感謝すべきはこれまでサッカーを頑張ってきた自分にです。その気持ちがあれば、必ず復帰できます。前向きにひたむきに、そして主体的にリハビリに取り組んでください」今をときめく大谷翔平選手も、高校生時代のケガがきっかけで二刀流として活躍できるようになったことは有名な話です。誰だってケガはしたくないものですが、もしもしてしまったら、よりよい未来をつくるための試練として前向きに向き合えるようにサポートしてあげましょう。「あのケガがあったから、今がある」と言えるいつかのために、親子で乗り越えてください。大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、あげお友愛の里施設長。1996年からはJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。現在はVプレミアリーグの上尾メディックス(女子)のチームドクターも兼任。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』を務め、全カテゴリーの選手の健康管理(脳震盪・ヘディング・熱中症・整形外科的外傷など)に携わっている。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。親が変われば子どもも変わる!?サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>
2024年06月20日日々の生活に疲れやだるさを感じていませんか?ストレス社会で生活していく中で、心のバランスを整えてくれるのが「セロトニン」。別名「幸せホルモン」とも言われ、私たちが積極的に増やしていきたいホルモンの一つです。そこで、毎日の生活の中で、セロトニンを増やす方法についてご紹介します。 セロトニンとは脳の神経伝達物質である「セロトニン」は、ドーパミンやノルアドレナリンなどと同様に重要な神経伝達物質で心のバランスを整えてくれます。セロトニンが十分に分泌されていれば、幸福感・満足感を感じ、精神的にも安定します。しかし、セロトニンが減少するとイライラ・不安・うつ・睡眠障害・PMS(月経前症候群)などを引き起こしてしまう可能性があります。さらに、神経内分泌の研究によると、過剰のアルコール摂取は脳中のセロトニン機能に著しい障害をきたす(※1)とも言われています。セロトニンは夜になると「メラトニン」に変わり快適な睡眠に導いてくれます。セロトニンを分泌しやすい過ごし方や食事選びを実践することは、毎日をより幸福にすることに繋がります。セロトニンの増やし方太陽の光を浴びる朝、目覚めたらまず明るい日光を浴びましょう!太陽の光を浴びることで、セロトニンの働きが活性化します。また、セロトニンを増やすとともに、生活リズムを整えることにもつながります。リズムのある運動をする一定のリズムでできる運動を続けることで、セロトニンの分泌が増えることはよく知られています。(※2)ウォーキング・ジョギング・階段を上る・腹式呼吸・深呼吸・よく噛むなど日常生活で意識すればセロトニンを増やすとされています。(※3)このような運動を5分以上、長期間継続して行うとさらに効果的であると言われています。家族や友人、動物と接触する機会を増やすリラックスできる家族や友人と共に楽しい時間を過ごすことでストレス解消になり、セロトニンが増えます。積極的に人と触れ合う機会を作っていきましょう。また、動物と接することでも同様の効果は得られるといわれています。トリプトファンやビタミンB6が豊富な食材を摂るセロトニンの主な成分は、トリプトファンとビタミンB6などです。トリプトファンは体内で合成することができない必須アミノ酸であるため、毎日の食事の中で、意識して摂るように心がけましょう。ビタミンB6はアミノ酸の代謝に欠かせない栄養素で、トリプトファンからセロトニンの合成を促進してくれます。それぞれ様々な食品に含まれているので毎日バランスよくとり入れましょう。〈トリプトファンを多く含む食品〉牛乳・チーズ・ヨーグルト・豆腐・納豆・バナナ〈ビタミンB6を多く含む食品〉さんま・にんにく・とうがらし・生姜日常のちょっとしたことで幸せホルモン「セロトニン」を増やすことができます。セロトニンの原料はタンパク質。朝起きたら日光を浴び、朝食でタンパク質やビタミン・ミネラルが豊富な食事を食べることがとても大切。ぜひ、セロトニンを大切にし、明るく、ハッピーな生活を送りましょう! 【参考・参照】(※1)日本医療・健康情報研究所女性はアルコールにより脳のダメージを受けやすい〈〉(最終閲覧日:2017/12/13)(※2)オムロン「リズム運動」でメンタル強化を〈〉(最終閲覧日:2020/05/19)(※3)ジョン・J・レイティー他「脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方」NHK出版 2014年 【執筆者】森延陽子/管理栄養士特定保健指導を中心に年間600人の個別面談や集団面談を実施し、6ヶ月の支援に携わる。その後、スポーツ栄養指導やセミナー講師、女性美容・健康雑誌へのレシピ掲載を経験。現在はあすけん栄養士としてコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。
2020年05月24日ラフティヨガは日本では「笑いヨガ」ともいわれ、笑うことでイライラ減少や免疫力アップなど心身ともに健康に導くヨガです。幸せホルモンのセロトニンも分泌されるので心も穏やかでハッピーな気分に。ストレスの多い現代人に特におすすめのヨガです。ラフティヨガとは?ラフティヨガとは1995年にインドで発祥した比較的新しい流派のヨガで、日本では"笑いヨガ"ともいわれています。グループに分かれ様々な笑いを誘う動作と共に、とにかくたくさん笑います。客観的に見るとグループで大声で笑い合うなんて怪しい!と思うかもしれませんが、笑いヨガは優れた健康効果があるとされています。子どもから高齢者まで老若男女問わず行えるのも笑いヨガの特徴で、ストレスの多い現代社会を生きる人には特におすすめのヨガといえます。ラフティヨガに期待できる効果ラフティヨガは笑うことで物理的にたくさんの酸素を取り入れます。体内に取り込まれる酸素量が増えることで副交感神経が優位な状態になります。副交感神経が優位な状態になると、イライラ減少、免疫力アップ、血流が増えて冷え症改善、質の良い睡眠など様々な健康に良い効果が得られます。その他、気分が乗らない時でもラフティヨガを行うことで脳が楽しいと錯覚して、幸せホルモンのセロトニンという物質が分泌されます。セロトニンが分泌されることで心が穏やかに、ハッピーに、精神を安定させてくれてる効果があります。普段の生活でもメリットが普段の生活でストレスが溜まり、ちょっとしたことでイライラ…鏡を見ると眉間にシワができ、くすんだ怖い顔。なんて事ありませんか?そんな時こそラフティヨガを行って欲しいです。笑顔になれない気分の時こそラフティヨガで笑い合うことで幸せホルモンが分泌されます。するとそれまでのイライラは何だったの?と思うくらいハッピーな気持ちに包まれているのに気づくと思います。たくさん笑って体内の酸素量が増えることで血流が増し、副交感神経が優位になります。副交感神経はリラックスしている時に優位に働く神経なので、イライラ、ギスギスが顔に出ている方も穏やかで明るい顔になれるでしょう。また、日常生活で小さなことで笑いが出たり遊び心がくすぐられたりと、子どものような無邪気な心で毎日を過ごせるようになります。ラフティヨガのやり方スタンダードなラフティヨガは「ミルクセーキ」というラフティヨガのエクササイズで、両手にミルクの入ったコップを持っていることを想定して行います。続いて「えーー?!」と言いながら片方のコップにミルクを注ぎ、もう一度「えーー?!」と言いながら反対のコップに注ぎ返し、飲んで大声でワハハと笑います。何ともない動きですが、それが笑いを誘いグループ内の方とも笑いが伝染し、更に笑いを呼びます。ラフティヨガは基本的に数人のグループで行いますが、一人で行うことも可能です。ラフティヨガでハッピーな生活を笑うことでイライラ減少や免疫力アップ、そしてセロトニンの分泌で身も心も嬉しい効果ができるラフティヨガ。普段ストレスが溜まっている方や最近笑っていないなと感じている方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?Hikaruヨガインストラクター
2019年09月13日待ちに待っていた、わが子の誕生。会えるのを楽しみにしていたから子育ての準備も万端! …だったはずなのに、なぜか毎日泣きたくなる。つらくてつらくて仕方がない…。そんな自分に情けなくなって、さらに落ち込む…。赤ちゃんの誕生は誰だってうれしいものですよね。できることはやってあげたいし、惜しみない愛情を注いであげたいと思うのに、気持ちが追い付いていかない…。今回は、生まれたばかりの子どもを前に、ママが落ち込んだり悲しくなったりしてしまうのはどうしてなのか? 解消法も合わせてお話ししていきましょう。■無事に出産! うれしいはずなのに、毎日つらい…なぜ?待望のわが子誕生に明るく楽しい子育てライフが待っているかと思いきや、現実はとまどうことばかり。いろいろ試してみるけれど、一向に泣き止まないわが子を前にして涙がこぼれてくる。泣き声を聞くのがつらくて、耳をふさいでしまう。赤ちゃんと過ごす1日に無性に息苦しさを感じてしまう…。初めてのお子さんであればなおさら「わが子はきちんと発育している?」「何か問題はない?」など、不安になってしまうものです。例えば、子どもが少し吐いただけでも「大きな病気なのかもしれない」と心配になり、あわてて病院に駆け込む… といったことを、何度も繰り返してしまうママも少なくないでしょう。どうしたらいいか分からず、毎日不安を抱えた状態になってしまうのは「人の命を預かっている」といった重責感からかもしれません。自分以外の命を背負う初めての子育ては、想像以上のプレッシャーをママに与えているのではないでしょうか。■理由のわからない「気分の落ち込み」原因は…プレッシャーづくしな日々にさらされるのと同時に、ママの気分が落ち込みやすくなる原因の一つに、脳内の神経伝達物質「セロトニン」などの減少が関係しているといわれています。セロトニンは、太陽を浴びることで体のなかに分泌される物質。そのメカニズムはまだ解明されていない部分も多いのですが、「やるぞ!」という意欲や人の感情に関する情報の伝達に関係していたり、睡眠や覚醒、ホルモン分泌のリズムを調整するなどの役割があるといわれています。そのため、日照時間が短くなっていく秋から冬にかけては、脳内のセロトニンなどが減少し、今まで楽しめていたことが楽しめなくなったり、気分が落ち込むといった人が増えるとか。それを予防するため、朝早く起き、積極的に外で太陽の光を浴びると良いといわれています。ただ、子育て中のママは赤ちゃんの生活リズムに合わせているため、毎日朝早く外に出て、太陽の光をあびるというのもなかなか難しいですね。冬の寒い季節はなおさらです。さらに、赤ちゃんはまだママと会話ができず、大人同士のようなコミュニケーションをとるのは難しいでしょう。意思疎通のとれる相手と話す機会が少ない日々が続くと、ママはどんどん閉塞感がつのっていきます。そうした環境が重なり、「つらくて悲しい」「何をしていても落ち込む」といった感情を引き起こしているのかもしれません。■いざという時、頼りにならない「夫と実母」では、子育てで気分が落ち込んでしまう時には、どうしたら良いのでしょうか。日々の閉塞感、子育てのプレッシャーをやわらげるには、まずは意思疎通のできる相手をもみつけ会話をしましょう。まずは「大人と話す機会」を意識的につくるといった行動が大きな意味を持ちます。身近にいる大人、と聞いてすぐに思い浮かぶのは「夫」ではないでしょうか。気兼ねなく話せる存在ではありますが、夫の場合、仕事が忙しく頼りにならないこともあるでしょう。そうなると実母などが身近な存在ですが、相手によっては「そんなこと当たり前なんだからもっと我慢しなさい」「みんなやっていることなんだからワガママいわないの」と一蹴されて、会話にならないことも…。子育ての話題を出しても「気持ちを理解してもらえない」と一層さみしい気持ちになってしまい、かえって悪影響となることもあります。■落ち込んだら「近すぎない大人との二言、三言」大人同士の会話を楽しむには、かえって近すぎない相手のほうが良い場合があります。例えば、普段の暮らしのなかで、大人と会話をするのはどういったシチュエーションでしょうか。・宅急便の配達業者さんに「寒いのにご苦労様です、いつもありがとうございます」と感謝を伝える。・公園へ散歩に行ったついでに、子どもを遊ばせているママに「この公園、小さい子がたくさんいますよね」と話しかける。・週に何度か訪れるスーパーの店員さんに「すみません、○○が欲しいんですがありますか?」と聞いてみる。スーパーの店員さんに声をかけるのは会話とはいえないかもしれませんが、これも立派に「大人と言葉を交わす」行為に入ります。赤ちゃんを連れていると「かわいいわね」と声をかけられることはありませんか? そんな時は「6カ月になりました」などと会話をふくらませてみても良いと思います。世間話、天気の話、地域の話など、あたりさわりのない会話をするだけで十分です。赤ちゃんといると「相手が何を思っているのか分からない不安」が生じるもの。そんな時、二言、三言でも意思疎通のできる大人と話をすることで、育児への不安がスッと消えることがあります。ぜひ試してみてください。いつもより少し積極的になって大人との会話を楽しんでみれば、赤ちゃんと2人きりの世界に閉じ込められているような閉塞感はだんだんと消えていくのではないでしょうか。参考資料:・ 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」 ・ 厚生労働省「こころの耳」 ・ 全国地域生活支援機構 ・ 日本生活習慣病予防協会
2019年01月10日冬になると「なんだか気分が落ち込む…」と悩んでいる人はいませんか?筆者もそのひとり。イヤなこと延々と考えたり、わけもないのに落ち込んだり。なにもする気が起きない日でも、仕事や家事があるから、お母さんは朝ゆっくり寝ていることも、休むこともできませんよね。実は季節と気分の落ち込みには、深い関係あるのです。冬に気分が落ち込むのはなぜ?「幸せホルモンと呼ばれているセロトニンは、ストレスが溜まると分泌されるノルアドレナリンの過剰な働きを抑え、気持ちを安定させてくれます。日照時間が短くなる冬は、セロトニンの分泌が乱れて気分が落ち込みやすくなるんですよ」。そう話してくれたのは、ストレスケアカウンセラーの菊地若奈さん。セロトニンは、ウォーキングなどリズミカルな運動することで作られますが、現実問題「運動している時間がない!」というのが子育て中のお母さんの本音ではないでしょうか?そこで菊地さんに、時間がなくても取り入れやすい、気分が上がる方法3つを教えてもらいました。1.楽しいと思える目標を持つ「ストレスに負けないようにするには目標を持つことが大切です」と菊地さん。目標を持っている人は目の前の小さなストレスに感情を支配されにくいそう。些細なことを気にし過ぎて、そればかり考えてしまうときは、日常を楽しくする目標を持つことが大切です。目標と聞くと「達成できなかったら自分を責めて余計落ち込みそう」と思ってしまいますが、日常を楽しくする目的なので、“1日1杯おいしいコーヒーを飲む”でもいいですし、“1週間に1回おいしいパンを食べる”など、自分が楽しい・嬉しいと感じることでいいのです。もちろん達成できなくても自分を責める必要はありません。2.1日1カ所掃除をする掃除をすると、きれいになった達成感を得ることができます。人は達成感を得ると、「嬉しい」「楽しい」と感じられます。年末は大掃除シーズンなので、掃除をする機会も増えますよね。気分が落ち込んでいるとなかなか掃除をする気になりませんが、「今日は引き出し1段分」「洗面ボウルだけ」と、無理がない量を小分けにしてスモールステップにすると掃除のハードルが下がりますよ。3.自分で自分をほめる「家事をしても誰からもほめられない」そう考えると、虚しくなり、落ち込んでしまいますよね。誰だってほめられると嬉しい気持ちになりますが、自分で自分をほめても、人からほめられるのと同じ効果を得られるんです。「仕事をがんばってる私、えらい!」「毎日こんなに大変なのによくやっている!」と、自分で自分のことをほめてみましょう。声に出してほめるのが恥ずかしいときは、心の中で思うだけでもOK!ふっと心が軽くなるはずです。気分をあげるカギはドーパミン紹介した3つの方法は、「嬉しい・楽しいと感じる」「目標を達成する」「ほめられる」という、どれも快感ホルモンのドーパミンを分泌させる方法です。日照時間が少ない冬は、セロトニンの分泌が乱れないように生活習慣を整えるのはもちろん大切ですが、ドーパミンを増やすよう工夫して気分を上げるのもひとつの手ですね。試してみた結果…菊地さんから教えてもらったことを、早速実践してみました。まずは、1番簡単に試せる“自分で自分をほめること”。ほめるだけなんて簡単だろうと思っていたら、「まわりと比べると自分なんて全然頑張っていない、なにをほめていいのか分からない」と、ネガティブな思考になってしまいました。とりあえず考えるのはやめにして「いつも頑張ってえらい」と口に出してみると、なんだかほっとした気分に。続けていくと「気持ちが落ち込んでいるときに、普通に生活していること自体が頑張っていることなんだ」と、自分で自分を認めてあげるだけで、気持ちがラクになりました。気分が落ちて、目標を達成したり掃除をするのも無理という人は、まずは自分で自分をほめて気分を上げてから目標を持つのがおすすめ。ときどき「ちょっとお母さんのことほめてくれない?」と息子にお願いすると、嬉しいことにたくさんほめてくれます。子どもにほめられると、不思議と子どものこともほめてあげたくなっちゃうんです。最近子どものことも自分のこともほめてないなという人は、親子でほめあって気持ちを軽くしてみてはいかがでしょう。<取材協力>ストレスケアカウンセラー菊地若奈さん<文・写真:フリーランス記者三浦麻耶>
2018年12月23日幸せホルモンといわれる「セロトニン」、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。その効果は、美容にも大きく影響しています。セロトニンの効果と分泌されるタイミング、セロトニンの分泌を増やす方法などを紹介します。■心のバランスを整えるセロトニンセロトニンは、心のバランスを整える作用のある伝達物質です。不足するとうつ病や不眠症になるなど、心の安定に大きく関係していることから「幸せホルモン」と呼ばれています。セロトニンは、腸に約90%、血液中に約8%、脳内に約2%が分布されているそうです。そのため、心の安定だけでなく、身体のさまざまな部分に作用しています。腸内では、消化を助ける働きをします。分泌が多過ぎると下痢になり、分泌が少ないと便秘に。また、血中では止血や血管の収縮作用があり、肩こりや偏頭痛の原因のひとつといわれています。脳内のセロトニンは、体内時計の調整に作用し、活発な状態にキープします。喜びや快楽を司る「ドーパミン」と、恐怖や興奮を司る「ノルアドレナリン」の暴走を抑えて衝動行動や依存症を抑制し、精神の安定を保ちます。このほかにも、記憶力や学習効果にも影響しているといわれています。セロトニンが不足すると、感情を抑制できず不安定になるため、些細なことで落ち込んだり、怒りやすくなるようです。また、セロトニンの不足は睡眠ホルモン・メラトニンの不足にもつながり、眠りが浅くなったり眠れなくなったりします。逆に、強いストレスによる疲労を癒すため、いくら寝ても眠い過眠の症状が出ることも。さらにセロトニンは、食欲にも関連しています。不足すると太りやすくなるともいわれているのです。睡眠不足は、食欲増進ホルモン「グレリン」の分泌を促し、食欲抑制ホルモン「レプチン」を抑制します。また、睡眠不足やストレスによる食欲は、手っ取り早く栄養を補給するため脂肪分や糖分を強く欲します。 ■セロトニンが不足する3つの原因と増やし方セロトニンは、体内で合成される物質のひとつ。しかし、過度なストレスや生活習慣の乱れが長期的に続くと、セロトニンの合成が追いつかなくなり、不足してしまいます。セロトニンが不足する主な原因は、「慢性的な運動不足」「太陽の光を浴びない」「栄養の偏り」の3つ。これらの原因をなくしていくことで、セロトニン不足を防ぐことができます。<セロトニンの増やし方>●生活リズムを整えるセロトニンは日中に分泌されるため、昼間に活動する生活習慣に整えることで分泌を促進。太陽の光を浴びると、セロトニン神経が活発化し、作用が正常化する利点もあります。●バランスのとれた食事を心がけるセロトニンの材料となる必須アミノ酸「トリプトファン」と、分泌を促すビタミンB6を積極的に摂取しましょう。トリプトファンが豊富な食べ物は、バナナ、乳製品、ナッツ類、納豆などの大豆食品、そば、赤身魚など。ビタミンB6は、サンマやニンニクに多く含まれます。●リズム運動をするリズム運動には、セロトニンの分泌を促す作用があり、セロトニン神経を鍛えることもできます。●思いきり笑い、思いきり泣く笑うことやスキンシップをとることは、ストレスを和らげる効果があります。また、泣くことにもストレスを軽減する効果があります。■セロトニンの3つの美容効果セロトニンが充分に満たされていると、主に3つの美容効果が期待できます。1.肌がキレイになる腸内環境が整うことと睡眠が充分に取れることで、肌がキレイになります2.痩せやすくなるストレスや睡眠不足による過食が抑えられます3.笑顔が増える精神が安定することで、幸福感を感じやすくなり笑顔が増えますキレイな女性に近づくためには、セロトニンが不可欠。心の病気を防ぐためだけでなく、いつまでもキレイでいるためにセロトニンを増やす生活を心がけましょう。
2016年06月02日京都大学は12月14日、セロトニン受容体1A遺伝子(HTR1A)の遺伝子型によってサラブレッド馬の扱いやすさに違いがあることがわかったと発表した。同成果は、同大学 文学研究科 堀裕亮 博士、藤田和生 教授および野生動物研究センター 村山美穂 教授らの研究グループによるもので、11月19日付の英科学誌「Animal Genetics」速報版に掲載された。今回の研究は、JRA 日高育成牧場で2011年~2013年に飼育され、乗り馴らしを受けたサラブレッド1歳馬167頭を対象に行われた。研究では「新しい物体・ヒトへの不安」、「新しい環境への慣れにくさ」、「大きな物体への恐怖」、「反抗的な態度」、「体を触られることへの不安」といった5つのカテゴリーの17項目について、3名の牧場職員が評定・得点化。また、これらの馬から血液を採取し、DNAを抽出してHTR1Aのタンパク質をコードする領域の配列を調べた。この結果、標的となった領域のうち、709番目の塩基に一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)があり、709番目の塩基がグアニン(G)の場合とアデニン(A)の場合の2種類の対立遺伝子があることがわかった。これについて、扱いやすさとの関連を分析したところ、Aの対立遺伝子をもつ個体はもたない個体に比べて、扱いにくいことがわかった。またこの効果はオスよりもメスでより顕著に見られたという。同研究グループによると、同研究の再現性が確かめられれば、遺伝子型から個体の性質を予測し、それに合わせた飼育管理方法の開発や、乗馬・セラピーホースなどとしての適性の評価などにも応用が期待されるとしている。
2015年12月14日朝日を浴びることで幸せ元気ホルモン「セロトニン」の分泌が始まります。このセロトニン、実はダイエットホルモンでもあり、セロトニンが多い人は活動的で痩せているんです。朝日を浴びるだけで痩せられるなんてラッキーですよね。今回は、そんなセロトニンとダイエットの関係についてご紹介いたします。■生体リズムを知る「昼に活動し、夜は眠る」というリズムを「サーカディアン・リズム(概日リズム)」といい、規則正しい生活を繰り返すことで健康が保たれます。日中、太陽の光を浴びると多くのセロトニンが作られ、それと同量のメラトニン(眠りのホルモン)が作られます。つまり、規則正しい生活をすることで、元気で痩せやすく、夜は自然と眠れる体質になれるというわけです。■「光」がセロトニン分泌のスイッチ健康を維持し、痩せやすい体質になるために重要なセロトニン。光を浴びると多くのセロトニンが作られると先程述べたとおり、「視交叉上核」という目の奥の神経核が光を感知することで、セロトニン分泌のスイッチが入ります。夜勤の仕事をされている方は、必ずしも朝日である必要はありません。意識的に光を浴びて、セロトニンのスイッチを入れるようにしましょう。でも、目覚めたら必ずカーテンを開けて太陽の光を浴びましょう。それだけで清々しい気分になりますよ。■モナリザ症候群“モナリザ症候群”という言葉を聞いたことがありますか?モナリザ症候群とは、交感神経の働きが低下している状態をいいます。不規則な生活を続けていると、自律神経のバランスが崩れ、特に交感神経の働きが鈍くなります。交感神経優位の時に代謝が上がりやすいのですが、モナリザ症候群になると交感神経が優位にならないために、基礎代謝が低い状態が継続してしまいます。その結果、エネルギーを節約するモードの時間が長くなり、体脂肪を溜めやすい体質になり、平均的な食事量でもどんどん太っていくのです。普通に食べて太るなんて、許せないですよね。■夜働く方へのアドバイスしかし、「夜勤で昼寝ている私はどうすればいいの?」というご意見もあると思います。そういう方は、今の生活を基準にして24時間を規則正しく過ごしましょう。「お肌のゴールデンタイムは午後10時~午前2時」とよく言われていますが、この説は実は誤り。若返りホルモンである成長ホルモンを例にとれば、就寝時間に関わらず、入眠後30分から1時間半内のノンレム睡眠(夢を見ない深い眠りの時間帯)時に多く分泌されます。昼夜逆転生活になってしまう方は、6~7時間睡眠に対して、何時に起きて行動を開始すれば規則正しく過ごせるかを考えて就寝時間を決めましょう。だらだらした時間の使い方がよくないのです。■最後にお金をかけるよりも、「運動」と「早寝早起き」をする方が、遥かにダイエット効果が高いです。でも、なかなか早寝早起きって難しいですよね。では最後に、思わず早寝早起きしたくなる情報をご紹介します。「お金持ち脳」が今、密かなブームになっています。お金持ちの思考(習慣)を真似ることで自身もお金持ちになれる、という考え方です。お金持ちの習慣のひとつに「朝方」があります。将来私はお金持ちになるぞ~(または玉の輿にのるぞ)とお考えの貴女。是非、早寝早起き習慣から始めてみませんか?人生が少しずつ変わっていくと思います。(林田玲子/ハウコレ)
2015年04月03日北海道大学(北大)は5月21日、「光遺伝学」を用いて、セロトニン神経活動の選択的・可逆的操作を光照射のON-OFFで行うことが可能な遺伝子改変マウスを作製し、そのマウスの脳内に光を当てて正中縫線核のセロトニン神経の活動を増加させると、マウスが不安様行動を示すことを見出したと発表した。同成果は、同大大学院医学研究科薬理学講座神経薬理学分野の大村優 助教、同 吉岡充弘 教授、慶應義塾大学の田中謙二 特任准教授、名古屋大学の常松友美氏、同 山中章弘 教授らによるもの。詳細は国際神経精神薬理学誌「International Journal of Neuropsychopharmacology」に掲載された。脳内のセロトニン神経の活動と不安の関係は四半世紀以上にわたって議論が続けられているが、まだ決着はついていない。その理由として、これまではセロトニン神経だけを選択的に操作することやセロトニン神経の活動を簡単に増減させることができず、間接的な証拠しか得ることができなかったためである。脳内のセロトニンが減少するとうつ病になったりするため、セロトニンの増やすためのセロトニン再取り込み阻害薬が抗不安薬・抗うつ薬として処方されるが、その副作用として、まれに逆に不安が高まってしまうことが知られている。今回の研究では、なぜ不安が高まるのかの解明に向け、光遺伝学を用いて、脳のセロトニン神経活動の選択的・可逆的操作を青色の光ファイバを照射させることで、1分程度でセロトニン神経の活動だけを選択的に増加させることが可能な遺伝子改変マウスを作製し、実験を行った。その結果、光をあて、セロトニン神経の活動を一過性に増加させた場合、マウスが不安様行動を示すことを確認したほか、この行動に、脳の正中縫線核が関与していることを見出したという。この成果について研究グループでは、あくまでセロトニンの一過性の効果を観察したものであり、セロトニン再取り込み阻害薬の長期服用による不安緩和は繰り返し示されてきていることから、これら2つの事象は分けて考える必要があると指摘する一方で、将来、脳内のセロトニン神経活動と不安の関係についての議論を決着させるための一歩となるとしているほか、セロトニン再取り込み阻害薬の副作用が生じる原因や、副作用の予防法などに向けた足がかりとなることが期待されるとしている。
2014年05月21日理化学研究所(理研)は1月8日、スウェーデン・カロリンスカ研究所との共同研究により、新しいタイプの抗うつ薬として注目される「ケタミン」が、「セロトニン1B受容体」の活性を"やる気"に関わる2つの脳領域で上昇させることを、サルを対象としたPET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層画像法)によって明らかにしたと発表した。成果は、理研 ライフサイエンス技術基盤研究センター 生体機能評価研究チームの尾上浩隆チームリーダー(イメージング機能研究チームのグループディレクター兼任)、同・山中創特別研究員らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間1月8日付けで米オンライン科学雑誌「Translational Psychiatry」に掲載された。うつ病の原因の1つとして現在考えられているのが、強いストレスなどにより脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の濃度が低下してしまうというものである。その考えに基づき、現在では脳内のセロトニン濃度を高める薬として、セロトニンの再取り込みを阻害する薬が抗うつ薬として広く使用されている。ただし、薬を毎日服用しても治療効果が現れるまでに数週間以上の時間を要し、さらに吐き気や神経過敏などの副作用も見られることから、うつ病患者の回復を遅らせたり、自殺のリスクを高めてしまったりする要因にもなるという課題があった。近年の研究から、麻酔・鎮痛などに使用されているケタミンが、低用量の投与で2時間以内に抗うつ作用、つまり即効性を示し、さらにその効果が数日間も持続すること、つまり持続性があることが報告されるようになり、既存の抗うつ薬では効果が低いうつ病の患者にも治療効果が認められたことから、新しいタイプの抗うつ薬として期待されている。脳内の主要な興奮性神経伝達物質として知られている「グルタミン酸」は、記憶や学習などの脳機能に深く関わっている。ケタミンは、そのグルタミン酸受容体の1つであり、イオンチャネルタイプの「NMDA型」受容体に作用する仕組みを持つ(もう1つの受容体「AMPA型」もイオンチャネルタイプ)。ただし、これまでのところ、ケタミンのうつ病に対する作用メカニズムについては、マウスなどのげっ歯類を用いた研究が行われているのみで、実は不明な部分が多かった。特に、霊長類を対象とした研究はほとんど行われていない状態で、ヒトに近い哺乳動物におけるケタミンのセロトニン神経系への影響は不明なままである。セロトニンによる神経伝達は、ニューロン(神経細胞)同士を接続する「シナプス」に存在する「セロトニン受容体」を介して行われる。セロトニン受容体は複数種あり、セロトニン1B受容体もその1種で、うつ病に関係することが知られていた。そこで研究チームは今回、セロトニン1B受容体に特異的に結合するPETプローブ「[11C]AZ10419369」(PETで測定するためのγ線を放出する質量11の放射性同位体炭素で標識した薬剤(分子))を新たに合成し、ケタミンがセロトニン神経系に及ぼす影響を調べることにしたというわけだ。研究チームは、[11C]AZ10419369を用いて4頭のアカゲザルで脳のPET撮影を実施。その結果、ケタミンの投与により、前脳にある「側坐核」と大脳基底核の一部である「腹側淡蒼球」において、4頭のアカゲザルそれぞれにおける[11C]AZ10419369のセロトニン1B受容体への結合上昇が見られ、脳の2つの領域でセロトニン1B受容体の活性が有意に上昇していることが発見された(画像1・2)。この2つの脳領域は、"やる気"つまりモチベーションを作り出す領域であり、うつ病に関連が深いと考えられている神経回路の一部だ。なお、4頭のアカゲザルそれぞれにおける[11C]AZ10419369のセロトニン1B受容体への結合上昇の度合いは、右脳・左脳の両方に同等に見られた形だ。そのため画像1と2は、中央点線左側に上昇度合いを右脳・左脳で平均した解析結果画像と標準化したアカゲザルの脳のMR画像を重ねたものを示し、解剖的な位置をわかりやすくするため、中央の点線右側にMR画像だけが示されている。次に、この2つの脳領域でのセロトニン1B受容体が、ケタミンの抗うつ作用と関係しているかどうかが調べられた。これまでのマウスやラットを用いた実験から、グルタミン酸受容体のもう1つのタイプであるAMPA型受容体の機能(ニューロンを脱分極して興奮させるなど)を阻害する「NBQX」を前投与すると、ケタミンの抗うつ作用が失われることがわかっている。側坐核と腹側淡蒼球において、ケタミン投与によりセロトニン1B受容体の活性が有意に上昇することから、NBQXを前投与したアカゲザルにおいて、ケタミン投与の効果に変化が生じるかどうかが調べられた。すると活性の上昇は遮断され、コントロールと同程度の活性しか認められなかったのである(画像3)。以上の結果から、この2つの脳領域におけるケタミンのセロトニン1B受容体への作用が、ケタミンの抗うつ作用のメカニズムに重要な役割を持っていると考えられたということだ(画像4)。なお、ケタミンがNMDA型グルタミン酸受容体に作用した後に、AMPA型グルタミン酸受容体に作用することは知られていたが、今回の研究により、ケタミンが側坐核と腹側淡蒼球においてセロトニン1B受容体の活性を上昇させる、という新たなメカニズムが想定されることとなった。また、ケタミンはグルタミン酸性シナプスに作用するだけではなく、セロトニン神経性シナプスに作用することが示唆されたのである。ケタミンは新しいタイプの抗うつ薬として可能性があることが期待されているところだが、大きな欠点としては薬物依存性がある点が挙げられる。そのため、日本ではうつ病患者への投与は認可されていないのが現状である。しかし、ケタミンの抗うつ作用とセロトニン1B受容体の関連性が示されたことから、今回の成果が即効性と持続性を持つ新しいタイプの抗うつ薬の開発に応用されることが期待できると研究グループではコメント。また、今回用いられた脳内のセロトニン1B受容体のPETによるイメージングは、うつ病の画像診断にも応用できる可能性があるという、副産物的な応用も開発された形だ。さまざまな疾患に応じたPETプローブの開発と、それを使った分子イメージング手法による疾患関連分子の動態解析は、創薬・診断技術開発の基盤となるライフサイエンス技術として、今後の発展が期待されるとしている。
2014年01月08日