ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)が出版する書籍『シティ・ガイド』と『ファッション・アイ』に最新刊が登場。『シティ・ガイド』(書籍3,400円、モバイルアプリ1,000円/1都市)は、世界29都市の魅力的なアドレスを紹介するガイドブック。ルイ・ヴィトンらしいノマド的なスピリットを反映し、1998年の発刊以来、独自の視点で選んだ1万5,000を超える特別なスポットを掲載。書籍、デジタル版ともに多くのトラベラーにとって手放せない旅のパートナーとなっている。2018年版は、ロンドン、ニューヨーク、東京、香港、北京、ベルリン、ミラノ、シドニーに続き、パリの最新アドレスをアップデート。宮殿や博物館、チャーミングなブティックホテル、レストランや近所のビストロ、地元住民に人気の市場やエピスリー(食材店)、アンティークショップ、デザイナーたちが集まる聖地、そして秘密のスポットまで、旅心を刺激するありとあらゆるアドレスが紹介されている。各都市の魅力を伝えるのは、さまざまな分野で活躍するゲストたち。ユニークな目線でパリのスポットを案内するのは建築家ドミニク・ペロー(Dominique Perrault)。ロンドンはポップアートアーティストのカミーユ・ワララ(Camille Walala)、ニューヨークはキュレーターのナンシー・スペクター(Nancy Spector)、そして東京では、北野武が選んだ個性的なスポットによって、新たな“発見の旅”へと誘う。iPhoneとiPadで利用可能なモバイル版は各都市の全域を網羅し、数千のアドレスを定期的に更新。さらに、ルイ・ヴィトン初のコネクテッド機能付きウォッチ「タンブール・ホライゾン」にもアプリが搭載され、現在地周辺のおすすめスポットを表示するガイド機能によって、旅をさらに刺激的にナビゲートしてくれる。一方の『ファッション・アイ』(5,700円)は、2016年11月に創刊された著名ファッションフォトグラファーによるフォトブック。同書は、初公開、もしくは稀にしか公開されないアイコニックなフォトグラファーの作品を紹介したいという思いから誕生したフォトアルバムで、世界の主要都市や遥か彼方の地を、それぞれのフォトグラファーがパーソナルな視点で捉えた写真によって構成されている。今回は、既存の5冊に新しい5つのシリーズが追加された。モンテカルロは伝説的フォトグラファーのヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)、ニューヨークはカラー写真のパイオニアの1人として知られるソール・ライター(Saul Leiter)によるもの。ベルリンは、現在も第一線で活躍するドイツ人ファッションフォトグラファーのピーター・リンドバーグ(Peter Lindbergh)、ノルウェー出身のソルヴァ・スンツボ(Solve Sundsbo)はブリティッシュコロンビアの広大な土地を新鮮な角度から捉えている。そしてモロッコは、ヴォーグ誌の仕事でも知られるドキュメンタリー写真家のフィンセント・ファン・デ・ワインガールト(Vincent Van De Wijngaard)が撮影した。各アルバムでは、厳選された写真を大きなフォーマットで紹介するとともに、フォトグラファーの経歴とインタビュー、批評的エッセイなどを収録。一つの国や都市をファッションフォトグラファーの眼差しを通して浮かび上がらせる、クリエイティブと美の双方の観点から決定的な意味を持つフォトアルバムシリーズとなっている。
2017年11月23日ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の書籍『シティ・ガイド』と『ファッション・アイ』から、それぞれ新刊が登場する。世界29都市を網羅する『シティ・ガイド』ルイ・ヴィトンの『シティ・ガイド』は、印刷版、デジタル版ともに発売され、これまでも多くのトラベラーの手放せない旅のパートナーとしてあり続けてきたガイドブックだ。2018年版では、ロンドン、ニューヨーク、東京、香港、北京、ベルリン、ミラノ、シドニーなど29都市の15,000を超えるスポットを紹介。ページを開けば、宮殿、ブティックホテル、グルメなレストランやビストロ、地元住民に愛される市場、アンティークショップ、デザイナーが集まる聖地、博物館、有名なモニュメント、そして秘密のスポットに至るまで、すべてルイ・ヴィトン独自の視点で選んだ特別な場所を網羅できる。また、2018年はパリ版も全面的にアップデートし、最新のアドレスを追加。今まで以上に、旅心を刺激する1冊となった。各都市の魅力を伝えるのは、ジャーナリストや様々な分野で活躍するゲストたち。例えば、東京では北野武の案内で個性的な旅へと導かれる。なお、デジタル版はさらに強化され、iPhoneとiPadに対応するモバイルアプリは、各都市のガイドすべてと定期的にアップデートされる数千のアドレスを収録。さらに、ルイ・ヴィトン初のコネクテッド・ウォッチ「タンブール・ホライゾン」が登場し、ユーザーにあわせたカスタマイズができる機能もプラスした。ルイ・ヴィトンの旅の真髄(こころ)を称える『ファッション・アイ』1854年以来、ルイ・ヴィトンは旅の真髄(こころ)を称えてきた。2016年11月に登場した『ファッション・アイ(Fashion Eye)』と題したフォトアルバムは、それを形にした書籍。アーティストのエスプリに満ちたスケッチが描かれるシティ・ガイドやトラベルブックとは異なり、著名なファッションフォトグラファーたちがルイ・ヴィトンのエスプリを捉え、主要都市や遥か彼方の地をパーソナルな視点で表現する。今回は、5人のフォトグラファーが、新たな旅路へと誘う。モンテカルロはヘルムート・ニュートン、ニューヨークはソール・ライター、ベルリンはピーター・リンドバーグ、ブリティッシュコロンビアはソルヴァ・スンツボ、モロッコはフィンセント・ファン・デ・ワインガールト。1つの都市、地方、もしくは国が、1人のファッションフォトグラファーの眼差しを通すことで浮かび上がってくる。【詳細】『シティ・ガイド』<新刊> 3,400円+税 ※発売中『ファッション・アイ』<新刊> 5,700円+税 ※2017年11月中旬以降発売取り扱い:国内店舗ならびにオンライン【問い合わせ先】ルイ ・ヴィトン クライアントサービスTEL:0120-00-1854
2017年11月18日北野武監督の映画『アウトレイジ 最終章』が興行収入15億円、総観客動員数110万人を突破し、前作『アウトレイジ ビヨンド』(12)を超えてシリーズ最大のヒット作となったことが13日、明らかになった。『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続く完結編となる『アウトレイジ 最終章』。先月7日から全国287館で公開され、初日と2日目で25万人動員、興行収入は3.5億円を記録し、同日公開の他作品を抑えて『ビヨンド』以来2回目となる週末興行成績1位スタートを切った。公開から11日目で46.5万人、6.4億円。シリーズ1作目(最終興収7.5億円)を超えるヒット作となった『ビヨンド』の最終興収14.5億円を上回る122%の高水準が続き、その後の週末には台風直撃、平日は悪天候が続いたこともあったが着実に数字を伸ばしていった。配給元のワーナー・ブラザース映画によると、20代以上の男女の来場が多く、夕方から夜にかけての伸びが非常に良いとのこと。森昌行プロデューサーは、「『アウトレイジ ビヨンド』を"ビヨンドする"(超える)ことが大きな目標」と語っていた。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年11月13日●会議の末席で物語の構築をサポート映画『アウトレイジ 最終章』(公開中)に携わるスタッフたちの言葉を記録し、「アウトレイジ」シリーズ、及び北野武監督率いる北野組の魅力を探る短期集中連載「暴走の黒幕」(第1回:北野武第2回:森昌行プロデューサー第3回:音楽・鈴木慶一第4回:美術・磯田典宏)。最終回となる第5回は、『BROTHER』(01)から参加し、「アウトレイジ」シリーズ以降の北野映画でチーフ助監督を務めている稲葉博文氏。『アウトレイジ ビヨンド』(12)のラストをどのように締めくくるべきか。助監督として監督に伝えた「それだと『仁義なき戦い』ですよ」という一言がシリーズの方向性に影響を与え、大友の暴走は『最終章』で決着することとなる。北野監督が「優秀」と一目置く“右腕”が、メディア初のインタビュー取材で「北野組」と「監督・北野武」の魅力を語り尽くす。○口述の書き起こしから始まる助監督の仕事――先日、北野監督にスタッフとの接し方について話をうかがったのですが、その時に「うちの助監督は優秀だからね」とおっしゃっていました。とんでもないです。やめてください(笑)。――本当ですよ(笑)。具体的には、セリフを直してもうこともあると。お聞きになってると思うんですけど、監督は口述されるんですよ。これは本当にすごいことで。1本の作品を頭からすべて語っていくわけです。もちろんメモのようなものはいただいたりするんですが、僕が立ち会わせていただく打ち合わせでは、シーン1からすべてセリフも含めて説明されます。僕はそれを文字に起こして、齟齬があるセリフは少し直させていただいています。――まさに私のような仕事というか。言ってみればそういうことですね。聞き漏らせないので、録音もします。監督の説明が2時間ぐらいだったりすると、「今回の映画の尺はそのくらいなんだな」というのも何となく分かります。――音楽の鈴木慶一さんもおっしゃっていましたが、一堂に会しての打ち合わせなので、たまに監督のコメントが自分の担当分野についてのものなのか分からない時があると。各担当の方々もそうやって参加されているんですね。そうですね。僕も録音を後で聞き直したりしています。――具体的にどんな作業からスタートするんですか?「アウトレイジ」シリーズ、『龍三と七人の子分たち』(15)でチーフをやらせていただいています。企画が立ち上がって監督とプロデューサーが台本を作っていく過程で会議の末席に座らせてもらって、監督の話を聞いて物語の構築をサポートする役割です。1回目の打ち合わせでまとめた資料をもとに、2回目からは頭から確認していく流れです。月に1回ぐらいのペースで4~5回。そうやってシナリオを練っていきます。――北野組ならではの手法なんですか?他の映画ではあまりないと思います。――初めて担当された時、率直にどう思われましたか?北野組には『BROTHER』から参加させていただいているんですが、チーフになる前は僕の代わりをされている方がいて、そのやり方を引き継いでいます。――監督のやり方は変わってないということですね。そうですね。ただ、台本を作り上げずにその場でやっていくのが長きにわたって北野組で行われてきたことなので。僕は『BROTHER』からなんですが、その時からちゃんと台本は用意されていました。もちろん薄いんですが(笑)。――準備できることも限られていそうですね。不安になりませんか?そうですね。突然思いつかれたりすることに対応が求められる現場です。1週間で焦って準備したり(笑)。180度異なる方向転換でも、みんなついていきます。○スケジュール完了で「終わった」――音楽の鈴木さんは「引き算」の表現方法を学んだとおっしゃっていました。セリフも無駄なところはカットしていくそうですね。防波堤で軽トラが走っていくシーンがあるんですけど、軽トラの音が入ってないんですよ。これは監督が「外してくれ」と言ったから。防波堤を描く一枚画の中でいらないのは軽トラの音。つまり、音に限らず、要素として必要のないものは「画の中に存在するものでも省く」。それが北野監督のやり方です。普通なら、画の中にあるものはすべて入れたいと思いますよね。●『ビヨンド』ラストシーンで北野武に進言したこと――以前からそうなんですか?そうですね。撮り方もそうですが、常に「シンプル」を意識していらっしゃると思います。――「アウトレイジ」は北野映画で初のシリーズ。多少やりやすくなることも?ロケ場所が同じ場所になったりすると多少は楽になります。あとは「物差し」ができる。山王会の事務所がこのぐらいの広さだったら、花菱会の広さをどうすべきかとか。――北野監督は編集がいちばん楽しいとおっしゃっていました。別の作品なのですが、あるスタッフの方は試写を観てようやく自分の仕事が終わると。助監督としてはどのあたりで肩の荷が下りるんですか?どのあたりでしょうね(笑)。スケジュールを切っている立場からすると、それがすべて完了した時に「終わった」とは感じます。文字通りのクランクアップ。ただ、スケジュールは他の組よりわりと楽だと思います。みなさん空けてくださるので。そういう意味では恵まれています。――それでは助監督として一番のご苦労は?大変なこと……やっぱり天気ですね(笑)。晴れてくれればいいなといつも願っています。ただ、北野組はツイてるのでいつも晴れるんですよ。――確かに防波堤での釣りのシーンも好天。いいロケーションでしたね。防波堤は最終日の撮影でした。監督は晴れ男ですからね(笑)。とはいえ、雨が降ることも想定しないといけないので、そこの準備も含めると大変ではあります。――『ビヨンド』の時に『最終章』の構想は固まっていたそうですね。そうですね。撮影の中盤あたりから、だいたい次の作品の話がはじまります。でも僕は、「監督、まだ撮影終わってませんよ(笑)」という役割です。○「それだと『仁義なき戦い』ですよ。菅原文太と同じです」――監督はご自身を介護老人タイプとおっしゃっています(『全思考』幻冬舎文庫より)。これだけの作品を一緒に作っていくとどこかでお友だち感覚になるので、仕事上の付き合いであることを意識していると。僕もどちらかというと考え方は同じで。他の監督でもそうなんですが、シンクロすることは大事なんですが、一方で批評の目も大事だと思います。絶対的に他者の目でその作品に臨む。なあなあで監督を褒めて監督の望むことを100%やるのは実は正しくないのではないかと。僕等が加わったことで、その作品に何かしらの良い影響をもたらした時に、初めて僕らの存在価値が生まれる。どういう場所でもそうですが、「こういう考えもありますよ」と問いかけることができるのが僕の立場。それは忘れてはならないポイントです。みなさんプロの方々なので、基本的には北野組の求心力でまとまっているんですが、「一歩立ち止まって見る」という一貫した視点があります。――監督に問いかけたことで覚えていらっしゃることは?『ビヨンド』のラストシーンですね。もともと大友は、片岡の銃を受け取って葬儀会場に入っていく予定でした。僕からは、「それだと『仁義なき戦い』ですよ。菅原文太と同じです」と言わせていただいて。ロケハン先で『仁義なき戦い』を観てもらって、「こうなってます」と。――ロケハンで(笑)。どんな反応でしたか?「もう一度考えてみよう」みたいなことをおっしゃっていました。――北野監督を取材してあらためて思ったんですが、自分たちが小さい頃から観てきた方が目の前にいて、いつもなら仕事に徹することができても、そういう平常心を突き破ってくるような存在感があるというか。ただ、北野組に入ったらそんなこと言ってられないということですよね。そうですね。もちろん緊張しますよ。でも、それは置いといて(笑)。――でも、北野監督に進言するのは相当な勇気を伴いそうですね。なかなかシビレますよ(笑)。でも、監督は立場関係なく意見は聞いてくださるので。――あとはあまり怒らないとも。そうですね(笑)。基本的にはすべてスムーズです。●「アレどこにやった?」の理解力――『BROTHER』から加わると決まった時はどう思われましたか?学生時代から観ている映画監督ですし、北野組は前から参加したいと思っていたのでうれしかったです。学生時代から映画作りに関わって、いろいろな現場のお手伝いをしていたんですよね。その時にカメラマンさんに「好きな映画監督は誰なんだ」と言われて、亡くなられた監督を数名挙げたんですが、「そうじゃなくて、お前が仕事をしてみたいのは誰なんだ」と。そこで答えた方の一人が北野監督でした。――なぜ一緒に仕事をしてみたいと?それはもちろん、映画が面白いから。どうやって撮ってるんだろうとか。実際にこうして現場に入らせていただくようになって、その場その場で変わっていくのを目の当たりにした時は衝撃でしたね。今でも覚えているのは、加わって間もない頃。ものすごく前から大きなクレーンを準備していたんですよね。でも、監督が入ってきていきなり「それ、いらない」。もうね、「えっ!?」ですよ(笑)。それはすごく覚えていますね。衝撃的でした。もちろん上では話し合われていたことですけど、当時の僕はペーペーだったので。今の僕は監督の傍について、変更があってもその過程を把握しているから驚かないですけど、下の人間にとってみれば「なんでいらなくなったの?」と思うことはあると思います。今回の『最終章』でいうと、部下の2人が急きょ殺されることになったんですが、それも撮影中に決まったこと。事前に渡された台本には書かれていないことですから、当然驚きますよね。セリフも現場判断で変わって、変更があるセリフは紙に書いてキャストのみなさんに渡しています。○老夫婦のような関係を追い求めて――北野組初のシリーズものが完結。クランクアップはどのような雰囲気でしたか?通常だったらスタッフが声がけをして拍手みたいな感じですよね。花束を渡したり。それは普通にやりますよ。でも、昔から打ち上げはないんですよね。少なくとも僕が加わった時からありません。もちろん、メインスタッフと一緒に地方に行ったりした時にたまにお酒を飲むことはあります。監督も連れて行ってくださいます。これがね、緊張して酔うんですよ(笑)。そういう緊張感は作品を重ねても変わりません。――それでは最後に。助監督から見て、北野監督の魅力とは?とにかく処理能力がすごい。その上、映画以外の分野にも手を広げている守備範囲の広さというか。台本を作るときに口述で全部言ってみせるというのも、常人ではマネできません。助監督はみんなそうだと思うんですけど、監督が「アレどこにやった?」とかの「アレ」がだいたい分かる。それは老夫婦のような関係。そういうことは、助監督にとってとても大切なことだと思っています。つまり、「アレ」までには流れがあって、何が必要なのかというのを一緒にシンクロして理解している状態。それが監督と助監督の良好な関係性です。■プロフィール助監督 稲葉博文(いなば・ひろふみ)1973年2月16日生まれ。神奈川県出身。北野組には『BROTHER』(01)以降参加し、助監督としては『アウトレイジ』(10)『アウトレイジ ビヨンド』(12)『龍三と七人の子分たち』(15)に続き4作目。北野武以外にもこれまでに携わってきた監督は、廣木隆一、中田秀夫、三池崇史、滝田洋二郎、黒沢清、塩田明彦、万田邦敏、青山真治、冨永昌敬、水田伸生、瀬々敬久など多岐にわたる。近作は、『ミュージアム』(16/監督:大友啓史)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17/監督:廣木隆一)など。
2017年11月13日音楽家の坂本龍一が、第30回東京国際映画祭のSAMURAI(サムライ)賞に選出され1日、東京・TOHOシネマズ六本木で行われた授賞式に出席した。第27回東京国際映画祭より新設されたSAMURAI賞は、比類なき感性で"サムライ"のごとく、常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称える賞。今年は、『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞作曲賞、『ラストエンペラー』でアカデミー賞作曲賞を受賞するなど、映画音楽家としても世界で名を馳せる坂本龍一が選出された。同映画祭の久松猛朗フェスティバル・ディレクターからトロフィーを受け取った坂本は、「刀の絵が描いてある」と"刀"デザインを発見。「映画に関わった最初の作品『戦場のメリークリスマス』では、役者として刀で居合いをするシーンがあり、撮影の前に居合道場に通って刀の使い方を習ったのを思い出しました」と懐かしそうに話した。また、「撮影現場でも刀を振り回して刀が曲がっちゃったり」と続け、「こういうのを持つと切りたくなっちゃうんですよね、人間って」と、やんちゃにトロフィーを刀のようにして振り回す動きも。「そんな思い出が頭をよぎって思わず振り回したくなっちゃった」と笑い、「侍という名に私がふさわしいか、大いに疑問がありますが、ありがとうございます」とネーミングと自身のギャップにやや戸惑いつつ、受賞を喜んだ。授賞式に続いて、特別招待作品として出品された坂本龍一のドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto: CODA』(11月4日公開)の舞台挨拶も行われ、坂本とスティーブン・ノムラ・シブル監督が出席した。なお、SAMURAI賞の第1回受賞者は北野武とティム・バートン、第2回受賞者は山田洋次とジョン・ウー。第3回受賞者はマーティン・スコセッシと黒沢清となっている。
2017年11月01日北野武監督作の映画『アウトレイジ 最終章』が観客動員数100万人を突破したことを記念して、スペシャルクイズ企画「『アウトレイジ 最終章』全国共通センター試験」の告知映像が31日、公開された。『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続く完結編となる本作。シリーズ史上最高動員数、週末興行成績ナンバー1の大ヒットスタートを記録し、公開4週目に入っても週末動員ランキングでトップ10内に位置している。観客は20代男女が中心だが本作がシリーズ初見など幅広い層が劇場に足を運び、リピーター率も高いという。「『アウトレイジ 最終章』全国共通センター試験」は大ヒットへの感謝の気持ちを込めて企画されたもの。告知映像は「なめとんか!」「バカヤロー!」「やってみろコラ!」などおなじみの怒号で構成され、「済州島で大友と揉めた花菱会・花田が提案した和解金の値段は?」「市川が日本に入国した際のパスポートの偽名は?」「出所祝いパーティーの主人公である、花菱会の幹部の名前は?」などの問題文が表示されている。マニアックな全7問のクイズは、公式HPを通じて回答することが可能。全問正解者から抽選で、サイン入りポスターなどのグッズが当たる。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年10月31日●事故後『キッズ・リターン』の色に変化映画『アウトレイジ 最終章』(公開中)に携わるスタッフたちの言葉を記録し、「アウトレイジ」シリーズ、及び北野武監督率いる北野組の魅力を探る短期集中連載「暴走の黒幕」(第1回:北野武第2回:森昌行プロデューサー第3回:音楽・鈴木慶一)。第4回は『みんな~やってるか!』(95)以降、北野映画の世界観を担ってきた美術・磯田典宏氏。セリフや編集、音楽に対する「引き算」的思考。徹底して無駄を省く中でメッセージ性を際立たせる北野イズムは、『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続いて完結する3部作の美術にどのように落とし込まれているのか。監督を"異業種"時代から支え続け、『BROTHER』(01)では異国の架け橋にもなって「引き算」を貫いた磯田氏。「まぁ、いいか」の逃げ道を選ばず、「片目つぶって、やっちゃえ」の覚悟には美術部の矜持が光る。○キアヌ・リーブス共演『JM』で「これでいいのか?」――北野監督作は『みんな~やってるか!』から参加されたそうですね。そうです。その前に、監督が出演した『教祖誕生』(93)を担当したことがきっかけです。『みんな~やってるか!』はシチュエーションがとにかく多かったので、助手さんをシーンごとに担当を割り当てて、その全体を統括するのが私の役目でした。「時代劇とSFはこの人で、ハエ男はこの人」みたいに。――「監督から具体的なオーダーはない」ということが複数の方の取材から分かりました。当時はいかがでしたか?『みんな~やってるか!』の撮影中、『JM』(95)というキアヌ・リーブス主演のハリウッド映画に出演されるため監督が一度抜けたことがありました。帰ってきて、美術に関して若干のイメージ変更があったのは、ハリウッドの影響を多少受けた部分もあったのではないかと思います。『JM』はほとんどがスタジオセット。日本の貧相なセットと比較すると「これでいいのか?」と思われたんでしょう。そのような経緯でイメージ変更していったような記憶があります。当時、監督は「自分は異業種」と感じていらっしゃった頃ではないかと。監督以外のメインスタッフは、映画でそれなりに実績があるスタッフばかり。そういう人たちが用意してくれたものに対して、「文句を言うべきではない」という思いもあったのではないかと。あれだけギャグ満載の映画なので、作り込んでいくのは相当な時間がかかります。コメディ要素が強いからこそセットは中途半端なものではなくて、よりリアルに作り込まないと面白くなりません。ハエ男は当時の特撮技術でどれだけのことができるのかも踏まえて、こだわり抜きました。――これまで14作を共にされていますが、どのあたりから監督が「異業種」ではなくなったと感じていらっしゃいますか?『みんな~やってるか!』が終わって、監督は事故に遭ってしまいました。その時のリハビリで絵を描きはじめて、イラストからはじまってどんどん大きいサイズになっていって。そうやって絵を描き続けていくと、「色」にこだわりが出てくる。『みんな~やってるか!』の時は完全にわれわれにお任せというか、相談ではなくて「これでいきます」という報告みたいなやりとりでした。事故後、『キッズ・リターン』(96)は「色」へのこだわりが出た作品です。「こういう色を使いたい」みたいな、具体的な注文もありました。――北野映画には、そうしたご自身の体験が映し出されているわけですね。その後も数々の作品を経て、『アウトレイジ』ではどのようなオーダーがあったのでしょうか。もう7年も前ですからね(笑)。登場人物たちは黒系統の衣裳なので、寄り画の時に違いが出るように気をつけました。北野映画にはたくさんのヤクザが登場しますが、必ずその事務所も出てきます。組長のデスクがあれば、その背景には代紋があって。飾りも含めて、過去の映画作品などを徹底的に調べ上げて、「これまでにないもの」を目指しました。監督と美術の関係は監督からの一方的な指示ではなく、美術パートが美術設定をしていきます。関西と関東で衣裳のトーンを変えて、それにともなってバックグラウンドをどれぐらいの色に持っていこうとか。例えば寄りの画でも、「花菱会のヤクザ」というのが伝わらないといけない。すべてセットでまかないきれないので、ロケセットで内部を加工することも想定したりするので衣裳合わせのやりとりもとても重要です。○たけし絵画をすべて使った『アキレスと亀』――『ビヨンド』『最終章』で登場する張会長(金田時男)の大豪邸。彼の権力の象徴しているような画力がありました。あれ、結婚式場なんです。――えっ!? そうなんですか。張会長が韓国のフィクサーでそれなりの権力を持っているとなると、相当な広い空間を贅沢に使うというのが課題になりました。それをセットで作るとなると難しいので、撮影が可能な大豪邸、並行して結婚式場のような施設も相当な数を見ました。あの長いテーブルと細長い部屋で会長の権力を象徴的に見せたかったんです。●"引き算"の許可が必要だった『BROTHER』――北野監督はどのタイミングで現場を確認されるんですか?事前に監督と製作部が話し合って、各担当はその監督イメージをもとに候補案を上げます。監督抜きのメインスタッフで話し合ってから、ロケハンに。大豪邸で芝居に使えそうなのがどこなのか。美術のアイデアを固めたら、監督抜きで撮影や照明も含めて見に行って、最終的には「A案、B案のどちらか」みたいに絞り込み、それから監督とのロケハン。監督には私が用意したイメージスケッチを片手に現場に立ってもらいます。一連の流れは結構時間をかけてますね。披露宴会場だけを見せるわけにもいかないですから。イメージスケッチを元にそこで監督のやりたい芝居も何となく見えてきます。これまでの14本の中で印象的だったのは『アキレスと亀』(08)。監督自身が描いた絵を全部使ってあるんですよ。少年期から年代ごとに3つの画廊が出てくるんですが、監督からは「各時代の違いを出したい」というお話があって、全部任せてくださいました。各時代に合った絵の額縁を業者さんに相談して、監督からもその都度リクエストが出て。もっとも効果的なものが何なのかをじっくり監督と話し合えたのは面白かったです。それから、監督が描かれた完成形の絵とは別に途中経過の絵も用意する必要がありました。監督は自分で描くとおっしゃっていたんですが、当然作る時間がない。最終的には美術部で用意することになりました。あの作品は美術装飾的にも面白い仕事でしたね。――北野組の現場では、監督のインスピレーション次第で変更になることもあると聞きました。美術周りでそのようなことはありましたか?急きょ変更になったことで思い出されるのは、『みんな~やってるか!』の銀行強盗。銀行の中で全員警察官のシーンがありますよね。あれ、当初は予定されてなかったんです。たしか、撮影当日だったかな。監督から「全員を警察官にしたい」というアイデアがあって、警察の衣裳装具が間に合うかの勝負でした。そういう、突然のひらめき。「すぐに撮りたい」ということではなくて、「こういうことをやりたいけど、今日中に間に合うならばやりたい」みたいに気を使っていただいています。――「アウトレイジ」では?比較的スムーズでした。『ビヨンド』の花菱会は神戸でロケをやっていて、実際の建物を使っています。『最終章』の事務所はすべてセット。セットを組んだ後、芝居の都合によっての変更案は監督からいくつかありました。――大友がマシンガンで蜂の巣にするシーンがありますが、あれもセットですか?あれは実際にあるホテルです。本当はスタジオで撮った方がもっといろいろなことができるんです。消え物といわれるテーブルの上のオードブルは床に落ちるとシミになるので水っぽいものは使えません。ロケセットでは、そういう制約も出てきます。○ハリウッドスタッフ「なぜ省くのか?」――音楽の鈴木慶一さんは監督との仕事の中で「引き算」を学んだとおっしゃっていました。不自然なもの、無駄を省いていくのは今回のシリーズでも踏襲されていると思うのですが、美術において「引き算」的なやりとりはありましたか?『HANA-BI』(98)は、たしかにどんどん引いていきましたね。引き算の美術。キャラクターの個性を出すには、いろいろなものを飾っていく、つまり足していくと出やすくなるし、引いていくことによって出にくくなる。引いていった場合、個性として見せたいポイントに何を置くのかが重要になるわけです。『BROTHER』もそうです。逆に『龍三と七人の子分たち』(15)はコテコテ(笑)。龍三のキャラクターを強く出すためには必要だったんです。それぞれの世界観にもよりますが、やっぱり全体的に見ても「引き算」的なやり方だと思います。必要以上に物を飾らない。『BROTHER』の時、ハリウッドで向こうのデコレーターに「とりあえず飾ってくれ」とお願いをしましたが、加えて「引き算」があることはあらかじめ言っておかないと対応してくれません。「なぜ省くのか?」となるわけです。つまり、置かれた物をいじる許可が必要なんです。――日米合作では、そういう違いもあるんですね。そうですね。プロダクションデザイナーという肩書きで現場に立つ以上、責任もあるし権利もある。私の一言ですべてが変わることもあるんですが、向こうは各ポジションでの責任がある。「飾り終えたもの」を確認してOKだったら、もうそれは動かせないんですよ。撮影中にやむを得ず動かさなきゃいけないとなった時に、そこに置いた人から「動かす」許可をもらうことが必要なんです。でもその人は現場にいない。僕らは触れられないから、現場担当者からデコレーターに電話してもらいます。「なぜ動かすのか?」「前もって決めてたじゃないか?」みたいにこじれるわけですが(笑)。ハリウッドは、そういうシステムみたいです。最終的には北野組のやり方に従っていただきましたけどね。「もう、しょうがないね」ということなんでしょうね。●「歩いたら終わり」「やっちゃえ」の境界線――どのような流れで日米のスタッフが結集したんですか?まずは、ユニオン(ハリウッドにおける俳優やスタッフなどの労働組合)を通して助手さんを手配します。美術部は面接をして、アートディレクターとセットデザイナーを何人か。合作映画は注目度が高いから、みんな参加したがるわけですよ。そうやってみなさん実績を作って、後の仕事をとっていく。1999年当時、北野組はヨーロッパの方では有名でしたが、ハリウッドではそこまでじゃなかったと思います。面接で対象となるのは、最低でも5人。こちらからお願いしていたのは「日本人を2人、残りを外国人」だったんですが、これは通訳的な人材も必要だったから。ところが、現地スタッフは「仕事に集中したい」「私は通訳じゃない」と言うわけです。そういう流れで、全員外国人のスタッフを起用することになりました。ユニオンには各作品の撮影案内が貼り出されています。各スタッフは、それを見て自分が参加したい作品に応募します。面接は、1人につきだいたい1時間。『GODZILLA』、『スターウォーズ』、『ターミネーター』など、有名作品を手掛けてきたスタッフもいました。その中で、2人が『キッズ・リターン』を観てきて、きちんと分析していたんですよね。赤と青のジャージを着ているけど、それはどういう意味なのかとか、すごく熱心に質問されました。ただし、プライベートな質問は一切禁じられています。――それだけの文化の違いがあるわけですが、また合作映画をやりたいというお気持ちは?やりたいですね。しがらみが一切なくて、本人が自ら選んで来ているわけですから。逆にプロデューサーからは「できなかったらクビにして構わない」と。一方で、仕事ができなかったら僕のこともクビにすると宣告されていました。たしか……美術予算をオーバーしたら即クビだったかな? セットデザイナーとの打ち合わせで僕のプランを伝えて、大道具さんも決まっているからそのまま予算内にできるのかを調整してもらいます。映画のためにプロダクションの1フロアーが貸し切ってあって、撮影が進むにつれて予算が膨らんでいくと呼ばれてチェックされます。美術はお金かかりますからね。考え方次第で結果が違うのはよくある話なんですけど。全部が全部100%の力でやるとお金が足りなくなるのは日本でも同じこと。ただし、「ここぞ」という時には装飾、美術にお金をかけるタイミングが絶対に来る。片目つぶって、やっちゃえみたいな(笑)。○「監督が歩いたら終わり」の緊張感――「アウトレイジ」シリーズでもそんな場面はありましたか?張会長の長テーブルでしょうね。僕が最初に考えていた長さに、さらに2メートル足しましたから(笑)。最初は「これでなんとか行けるだろう」からスタートするんですよね。大道具との打ち合わせでも常に考えていて、何度も下見をする。「予算オーバーするかもしれない」という危機感があっても、ここで2メートル足すことによって効果的になるのであれば思い切りも必要。椅子と床の敷物を増やしたりとか、別の問題も出てくるんですけどね。ただ、ここでの「まぁ、いいか」は後々自分が後悔することになる。後悔するくらいだったら、別のセットで節約したり、調整すればいいわけです。大切なのは、「張会長をどれだけ大きく見せられるか」「空間をどのように切り取るか」です。――決められた予算内でやりくりするのは、日米問わず同じということですね。ただ、美術的には「ここはこだわらないと」というポイントが必ずある。「お金がないからしょうがない」で諦めてしまうこともありますが、結果的に映画を観た時に残念な気持ちになる。もうちょっと考えられることがあったんじゃないかな、と。美術はいちばんお金を使うところでもありますから、「金食い虫」なんて言われることもありますけどね(笑)。――監督はあまり感想や評価などを口にしないとも聞きましたが、美術に対してはいかがですか?たしかにありません(笑)。昔、監督と一緒にロケハンした時のことなんですが、車から降りた時に「ここですよ」と案内した時の反応。それがヒントでした。監督がどんどん歩いていくと画角を狭くしているということなので、監督の中では納得していない。当然、われわれは納得してもらえる場所を探すつもりではあるんですが、監督はそこで何とかしようと整理する。一時期言われていたのは、「監督が歩いたら終わり」でした(笑)。――車から降りた時が運命の瞬間なわけですね。そうそう。「監督、違う方を見てます!」とかハラハラしたのを覚えています(笑)。■プロフィール磯田典宏北野武監督作品には『みんな~やってるか!』(94)以降、14作目の参加。『のぼうの城』(11/監督:犬童一心、樋口真嗣)で日本アカデミー賞最優秀美術賞、『Dolls [ドールズ]』(02)、『座頭市』(03)で同賞優秀美術賞を受賞。近作は、『想いのこし』(14/監督:平川雄一朗)、『おかあさんの木』(15/監督:磯村一路)、『四月は君の嘘』(16/監督:新城毅彦)、『ReLIFE リライフ』(17/監督:古澤健)、『ピーチガール』(17/監督:神徳幸治)など。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年10月27日ネハン ミハラ ヤスヒロ(Nehanne MIHARA YASUHIRO)が、俳優・早乙女 太一をフィーチャーしたショートムービーとともに2018年春夏コレクションを発表した。ネハン ミハラ ヤスヒロは、2017年春夏コレクションよりデビューしたミハラ ヤスヒロの新ライン。“日本人である私たち自身が、日本の歴史、日本の伝統を学び再認識することを大切にしたい”という想いのもと誕生した。日本の伝統を表現するため、今季のイメージビジュアルとして起用された早乙女太一は、2003年に北野武監督の映画『座頭市』に出演をきっかけに「100年に1人の天才女形」として脚光を浴び、2008年には16歳で新歌舞伎座史上最年少記録の初座長を務めた、まさに日本の伝統を体現するにふさわしい人物。そのことから、ネハン ミハラ ヤスヒロとは相通ずる部分があったのだろう。2シーズン目となる2018年春夏コレクションは、“粋”な着こなしを表現できるウエアをデザインソースとした。“粋”とは、江戸時代に生まれた、身なりだけでなく振る舞いなどにも用いられる日本人ならではの美的観念だ。その“粋”という和のスピリットを、古来からの作業着である「ボロ」や「作務衣」、「羽織」など使い込まれた作業着に吹き込み、上品なスタイルへと昇華する。ブランド最大の特徴である、大麻布「麻世妙」は引き続き採用し、今季はブランドのもうひとつの特徴である「染め」にも重きを置いた。黒をより黒く染める「深黒(しんくろ)」技術を持つ老舗の染師、京都紋付の真黒を用いている。
2017年10月24日北野武監督作の映画『アウトレイジ 最終章』が公開2週目で観客動員100万人目前、興行収入10億円を突破したことを受け、「大ヒット御礼! 怒号39(サンキュー)連発! スペシャル映像」が20日、YouTubeなどで公開された。ヤクザの抗争を描いた『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続く完結編。7日から全国287館で公開され、初日と2日目で25万人を動員、興行収入は3.5億円を記録。同日公開の他作品を抑えて週末興行成績の1位に躍り出た。その後も好調で、シリーズ最大ヒット作『ビヨンド』(最終興収14.5億円)を超える勢いが続いている。来場者への感謝と、さらなる集客を目的とした今回の映像。劇場でしか観ることのできない未公開の名場面を中心に構成され、ビートたけし演じる大友が「結構楽しんだみたいじゃないですか」とニヤけるシーンにはじまり、「バカヤロー」「コノヤロー」「ぶち殺したれ!」「なめとんか!」「アホー!」「なにがおかしいんじゃい!」「指の1本ぐらい詰めてこいよ」「迷惑もハローワークもあるかい!」など緊迫感漂う怒号が39連発で収められている。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年10月20日●『最終章』でも「この音いらない」映画『アウトレイジ 最終章』(公開中)のスタッフたちの言葉を記録し、「アウトレイジ」シリーズ、及び北野武監督率いる北野組の魅力を探る短期集中連載「暴走の黒幕」(第1回:北野武 第2回:森昌行P)。第3回は『座頭市』(03)以降、北野映画の"音"を担う音楽家・鈴木慶一に迫る。はちみつぱい、ムーンライダーズ、THE BEATNIKSなど音楽界のレジェンドともいわれる鈴木は、『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)、『アウトレイジ 最終章』の3部作で「恐怖」の新境地へとたどり着いていた。北野監督との出会いは80年代までさかのぼる。『ひょうきんスペシャル』(フジテレビ系)の侍コントに山賊役で出演。奇しくも時代劇つながりでもある『座頭市』で日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞し、「恐怖」の扉はゆっくりと開かれた。北野監督の"引き算"によって導き出された楽曲がサントラへと集約された時。鈴木は「なんだ、これは」と自ら驚愕しつつ、音楽家としての喜びも噛みしめる。○イメージは「哀しいよね」の雑談から――ついに「アウトレイジ」シリーズが完結を迎えました。鈴木さんの耳には、どのように伝わっていたんですか?世の中には「3部作」といわれるものが沢山あるので、なんとなく3作目で終わるのかなと思ってましたね。台本を頂いて、そこに「最終章」と書いてあったので「あ、終わるんだ」と。『ビヨンド』の時には何も聞いていなかったんですよ。1作目のラストで大友が刑務所で刺されたから、「これで終わり」と思いました。でも、『ビヨンド』で生きていた(笑)。次から次へと出演者が死んでいって、『ビヨンド』では大友が間違いなく生き残った。だから、次も作るのかなという予感はしていました(笑)。――ということは『最終章』よりも、『ビヨンド』の話が来た時の方が衝撃は大きかったんですね。そうですね(笑)。――そんな中で迎えた『最終章』。シリーズが終わるということに加えて、裏社会に生きる男たちの哀しみを象徴したようなメインテーマ曲でした。確かに「哀しさ」は共通認識ですね。北野監督や森昌行プロデューサーをはじめ、スタッフの間では「哀しいよね」みたいな雑談がありました。――毎作品、そのようにテーマを設定して楽曲制作に入るんですか?特に具体的な指示はないんですよ。あったとしても、例えば『龍三と七人の子分たち』(15)では「タンゴでいきたい」ぐらい。いつもイメージの元となる一言は頂いて、それに即した3~4曲を作ります。ただ、監督の耳は別のところに向いていることもあって。監督の言葉をヒントに作った数パターンの曲でも、選ばれるのは最初の一言と違っていたりもします。でも、それがいいんですよ。具体的な音を聴いてイメージされるので。――「哀しみ」といっても、かなり抽象的ですね。「哀しみ」の感じ方は人それぞれですからね。言葉にできない。だから、監督もイメージを伝えるのは難しいと思うんですよ。当然、こちらも。ではどうすればいいのか。実際に作った曲を聴いてもらうしかない。3作で共通しているのは、メインテーマがオープニングタイトル周りに使われることです。まずはそれを数曲作ることから取り掛かります。そのうちの1曲を別の場所に使ったり、結局は使わなかったりすることもあって、また作り直す時もあります。最初に台本を読んでラッシュを観る。その中で、いろいろなパターンをイメージします。こちらの考えを数種類で提示して、そのうち監督の中でヒットすれば決まる。そこから発展させています。――監督の心に響いた時は分かるものなんですか?わかりますよ。「いいね」って。――ずいぶんとあっさりですね(笑)。そうですね。1作目は今から7年前になりますが、確認の仕方も技術的にかなり進歩しました。最初はCDプレイヤーを渡して、モニターで流す映像に合わせていました。今はPCを持ち込んで、映像に貼り付けたものを流してチェックしてもらっています。そして、その場で「この音いらないかな」で間引いて消したり、伸ばしたり、繰り返したり。そうやって最終テイクに近いものを早い段階から聴いていただいています。○監督立ち会いの確認「ヒリヒリします」――北野作品は5作目ですが、監督のイメージしていることも掴みやすくなりましたか?過剰なメロディやリズムは必要ない。トゥーマッチなものは不要なんです。ドラムとベースで作るリズムを寸断してしまったりとか。あとは音響効果の柴崎(憲治)さんが、車の走る音を低音でいれたりするので、ベースもいらなくなるんですよね。通常、ベースでリズム的なノリを出すんですけど、結局はなくなるから最初から入れなくなりました(笑)。――柴崎さんとは『座頭市』(03)以降、5作品でタッグを組まれていますね。私は音楽的なところから外れて音響効果さんの領域も作ってしまうので、柴崎さんとのやり取りがとても重要なんです。作品を重ねるにつれて、柴崎さんも「この人、ここまでノイズのような音を作ってきたのか」と思われているんじゃないかな(笑)。効果音が完成するのは、制作過程での終盤です。映画は、最終ダビングでセリフと効果音と音楽を重ね合わせて、1つのサラウンドミックスを完成させるイメージ。具体的に効果音をハメていくのはそこなんです。最後の最後。そこで修正が発生するので、PCを持ち込んでその場で手直しをする必要があります。●「おしゃべりではない音楽」とは――北野作品以外では、あまりない手法なんですか?ないですね。他の映画の場合は、「これでどうでしょう」に「いいですね」みたいなやりとり。ダビングの時に当ててみて、あとは音量で調節したりしています。北野映画の場合は、音量ではなくて「この音いらない」なんです。音を除くためには、オリジナルのマルチトラックのデータ(パートごとに個別の音が収録されたもの)を持ち込まないといけない。多くの映画の場合はシステムミックスといって、リズムはリズムでバラバラに渡して「抜きたいところは抜いてください」。それを音響効果さんに任せたりすることもありますが、北野映画の場合は私やエンジニアがいて、柴崎さんともやりとりする。試行錯誤しつつ、音楽のOKが出たとしても最終的な音響効果さんとのやりとりで変更が出る場合もあるからです。最終確認にはもちろん監督も立ち会われます。30分ぐらいの1ロールを見て、修正点の指示があって、1時間ぐらいの休憩時間中にみんなでバーっと直す。ヒリヒリします。監督が私の隣に座っていて、緊張感ありますね(笑)。そうやって最終段階で急速にブラッシュアップされるのが北野映画です。――先月発売された『最終章』のサントラには、そのような苦労の末に生み出された楽曲が収録されているわけですね。サントラの収録曲で、映画に使われたのは17曲。アウトテイクが11曲です。もっとあるけど、似たような曲のアウトテイクなので。ピアノが入っているだけのようなものは省きました。本編とアウトテイクを聴き比べて「この曲が使われたのか!」みたいに楽しんでほしいですね。これまで通り、オープニングに流れるメインテーマのアレンジバージョンがエンドロールに使われています。実はメインテーマにはもっとメロディがあったんです。エンドロールに使われた曲になりましたが、「♪パパ~ン」の後にすごく隙間があるでしょ? あれは最初、繋がっていたんですよ。でも、念のためにすごく隙間がある別パターンの曲を作って聴き比べてもらいました。これは『ビヨンド』のエンディングテーマのトランペットもそうだけど、すごく間がある。同じ手法ではあるんだけど、監督はそっちを選ばれた。要するに、メロディが少ないもの。より抽象的ですし、「おしゃべりではない音楽」とでもいいましょうか。――無音にすることは勇気がいることですよね。本当にそうです。音楽を作っている身としては、無音になることが一番恐いわけで(笑)。次に出る音がどのような映像と重なるのかも重要ですから。無音とはいえ、「音」はつながっているわけですよ。そういった無音の間が湿り気のなさを演出しています。「アウトレイジ」の登場人物たちは、たまたまヤクザになってしまった人もいるでしょう。立場上、誰かを殺さなきゃいけなくなるし、どこかで責任をとらなきゃいけないところがある。何よりも大事なのは義理と人情。そういった哀しさに満ちています。打ち合わせでみんなが「哀しいよね」と言っていたのはこれで。ドライな感じを出すためには、「音を引いた方がいい」ということが分かりました。監督の言うとおりなんです。○『ひょうきんスペシャル』共演の縁――北野監督から音楽について感想を言われたことはありますか?そういう話をどこかでされているみたいですが、私に直接はないんですよ。不安ではあるんですが(笑)。確認するために映像を見ながら、監督は同時にいろいろなことを考えています。セリフ、音楽、音響効果、編集。「この車の音違うな」とか、そんな一言があるとそれが何のことを指しているのか考えます。音楽について言っているのか、音響効果について言っているのか、セリフに対して言っているのか。それを同時にしゃべる方なので。スタジオでバーっといろいろなコメントがあって、それを「俺の担当部分かな?」と気にしながら直しています(笑)。――そこで監督が話したことは何かに記録しているんですか?レコーダーに録音してあります(笑)。――最初の『座頭市』の頃からですか?いや。『ビヨンド』から録音するようになった。「監督すみません、録音していいですか」と確認して。でも、その時に言ったことでも、後日変わることもありますからね。あまり意味はないのかもしれないけど(笑)。――なぜ、『ビヨンド』から録音しようと思ったんですか?何に対しての意見やアイデアなのかをはっきりさせるために。1作目の『アウトレイジ』の時は、音楽を聴いていただいて、監督がいろいろなことをおっしゃって帰られた後に、スタッフみんなで集まって、「あのことは何に対して言っていたのか」を確認し合っていたんですよ。そんなことがあったから、録音しといた方がいいかなと。ただ、『最終章』で聞き返すことはなかったですね。ただ、セーフティーのためです(笑)。●完成したサントラ「とんでもないものを作ってしまった」――『ほぼ日刊イトイ新聞』の取材で、北野監督との出会いについて話されていましたね。『ひょうきんスペシャル』の出演が初対面だったそうですね。それ以降、ご一緒することはありませんでした。『座頭市』の時に、(オフィス北野)の森(昌行)社長が「『ひょうきんスペシャル』に出ていた鈴木さんです」と紹介してくれたんですが、「そうだった?」と言われました(笑)。『チキン・ハート』(02)という映画の音楽を担当したことがあって、その監督がかつて北野組で助監督をされていた清水浩さんだったんですが、プロデューサーでもある森社長からお声掛けいただいて、そこからオフィス北野とのおつき合いが始まりました。――北野監督との最初のタッグとなった『座頭市』は、第27回アカデミー賞の最優秀音楽賞、第36回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀音楽賞を受賞。何か変化はありましたか?世間の評価が高まろうと、自分が次に担当する映画にどんな音楽をつけるのかが最重要で。どれだけ高く評価されたとしても、音楽というのは因果な職業なんです。次の仕事で「この人ダメだ」と言われたら、もう「ダメな人」になっちゃう。目前の映画に対してどんな音楽をつけるのか。それで手一杯だね。――なるほど。これまでバイオレンス系のヤクザ映画を担当されたことはなかったと思いますが、率直にどう思われましたか?うーん……わたしは普段からスプラッター系やホラー系ばかりを観ているので(笑)。ハッピーエンドの映画はあまり観ないんですよね。それは慣れているんですが、日本のヤクザ映画は若い時以降はあまり観てなかったので、新鮮な気持ちでした。残酷なシーンがいっぱい出てきますけど、全然平気なんですよ。痛そうだなと思うくらい(笑)。○北野武と出会って変化したこと――こうして結末を迎えたわけですが、あらためてシリーズの魅力は?バイオレンスなんだけど、脚本が非常に込み入っていていろいろな人が出てくる。覇権争いの中で、最終的に誰が残るのか。結局、インテリヤクザが残ったりして、経済が絡み合ってるよね。調子に乗ると死んじゃうし。それから、大友という人は『座頭市』の盲目の剣士・市と近いと思う。市があの宿場町に来なかったら、あんなことにはならなかった。――そうですね。大友と関わると、結果的に死んでしまう人がほとんどですからね。そうそう(笑)。殺されたり、企んでいたことが暴かれて破滅したり。大友という人がいることによって、起きなくてもいいことが起きる。でも、そこが面白いところですよね。3作目に臨む時、台本を読んで思ったのは、登場人物を思い出さなきゃいけない(笑)。誰が死んで、誰が生き残ったのか。あとは組も沢山出てきますからね。――大友じゃないですが、北野監督と出会って音楽面で変化、影響はありましたか?それはマイナスするということ。引き算。監督はひたすらマイナスしていく。私が個人的にソロで作る時も、極力過剰にならないようにしています。もちろん、過剰なものを意識する時もありますけど。常に過剰なものを作っていた気がするので、それが変わったかな。マイナスしていくことは、さっきも言ったけど恐いことなんです。ここにこんなに空間があっていいものだろうかと。例えば、湖に車が落ちるシーンありますよね? 西田(敏行)さんが「寿司でええんや」みたいにぼやいているとこ。そこはベースしか入ってない。もうちょっといろいろな音が入っていたんですけど、どんどん抜いていって、残ったのは低音のベース。サントラ盤のマスタリングで「なんだ、これは」って毎回思うんだよね。3作目のサントラは本当にアバンギャルドになってしまった。映画で使われた17曲を聴いても、「なんだこれは?」となってしまう(笑)。――確かに、1曲だけ聴いてもなかなかその場面が思い浮かびません。うん。ディテールにこだわったものが積み重なって映画になる。音楽もそうなんだけど、音楽は音だけなんだよね。音で空間を作って想像を働かせる。もともと音楽の中でもそういうことをやります。それがセリフや柴崎さんの音と絡み合って1つの作品になる。サントラではその一部分を聴けるわけで、だからものすごいアバンギャルドなんです。――ほかの映画と何かが違うと感じるのは、音楽の独特の手法も関係しているんですかね。そうだね。音楽ではない音楽。映画を作るときは共同作業なので夢中になって気づかないんだけど、サントラを作っている時にハッと気づく(笑)。これは恐ろしいものができてしまったなと(笑)。『ビヨンド』も頭のところなんて、ギターのフィードバックしか入ってないので。マイナスした結果、そうなった。でも、それこそがサントラなんですよね。――恐ろしいサントラが完成してしまったわけですね(笑)。そうそうそう(笑)。マスタリングの最終作業で、曲順を並べ変えてバランスをとって、レベルを一定にして。そんな時にハッと気づく。とんでもないものを作ってしまったと(笑)。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会■プロフィール鈴木慶一1951年8月28日生まれ。東京都出身。1972年にロックバンド・はちみつぱいを結成。1975年には、ロックバンド・ムーンライダーズを結成し、アルバム『火の玉ボーイ』(76)でデビューした。以後、30年以上にわたって精力的に活動するが、2011年に無期限活動休止を発表。2013年7月、新バンド・Controversial Sparkを結成。北野作品では『座頭市』(03)、「アウトレイジ」シリーズ、『龍三と七人の子分たち』(15)で音楽を担当している。
2017年10月20日ベネチア国際映画祭でも大喝采を浴びた北野武監督最新作『アウトレイジ最終章』(10月7日全国公開)。前作から5年の時を経て、ついにファイナルを迎える。裏社会に生きる男たちの中で、警視庁の刑事という役柄で登場するのが松重豊(54)だ。前作に続いての出演となる。 「出演者は、僕ですらどちらかというと若手の部類に入るほど。生きるか死ぬかを懸けた抗争の中で、諸先輩方のその覚悟の見せ方が半端じゃないと思いました。極限状態に追い込まれた芝居をどのシーンでも繰り広げているので、その緊張感をスクリーンで見届けていただきたいです」(松重・以下同) 松重演じるマル暴の刑事・繁田だが、前作『アウトレイジビヨンド』の台本では、当初、殉職する予定だったと衝撃の事実が語られた! 「台本上では死んでいたんだけど、撮っていくうちに現場で『繁田は生き残るかな』ってなった。そのあと監督とお会いしたとき、『繁田は次は県警本部長になっていると思うな』とおっしゃるから、あ、出世するんだと思っていたら、最終章も平のままだったんですよ。全然出世していないと思って(笑)」 作品の中で繁田はある決断を下すのだが、「僕には納得のいく流れでした」と語る。そのシーンの撮影中にはこんな出来事が。 「飲み屋から出てずっと歩くシーンでした。監督は隠れているから周りの人は何の作品を撮っているかわからない。店を出てカメラから見えなくなるまで歩いていったら『孤独のグルメだ』って言われて。いや違うよ、そもそも『孤独のグルメ』、こんなに大人数のスタッフで撮影していないしって思いましたけど(笑)」 この日は別人とも思える白髪姿で現れた松重。役作りのためだという。 「今度出る映画で白髪にしてくださいと言われて若いころから染めていたのを20年ぶりぐらいにやめてみたら、真っ白だった。はぁ、じじいなんだなって思ったけど、これならイメージの違う役がやれるかなと思いました。これからは、年寄りキャラとしておじいちゃん役などやっていけたらいいなと思います」 188センチの長身・強面といつもの厳つい雰囲気から一転、終始穏やかな表情と軽妙な語り口。ずっと話を聞いていたくなる人だ。
2017年10月16日笑福亭鶴瓶と「ViVi」モデル・emmaが司会を担当して、友人や関係者への徹底取材によってゲストの素顔に迫るバラエティー「A-Studio」。その10月13日(金)今夜放送回に新ドラマ「監獄のお姫さま」から女優の菅野美穂がゲスト出演。様々な話題でトークを展開する。菅野さんは北野武監督作品『Dolls』や月9ドラマ「愛し君へ」、人気コミックをドラマ化した「働きマン」「キイナ~不可能犯罪捜査官~」、西原理恵子のコミックを映画化した『パーマネント野ばら』などで数々の作品で主演。2013年に俳優の堺雅人と結婚、2015年には第1子男児を出産すると翌年から女優に復帰。昨年秋放送のTBS系「砂の塔~知りすぎた隣人」で演じたタワマン主婦・高野亜紀が大きな話題を呼んだのに続き、遊川和彦が映画監督デビューを飾った『恋妻家宮本』では容姿端麗だが毒舌な主婦役を。さらにNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」と「ひよっこ」への出演など、精力的な活動ぶりをみせている。子育てと女優業を両立させている菅野さんだが、番組の予告映像では子育てに「余裕がなさすぎて、おむつを変えるときに息を止めていた」ことや、「いつまで手がかかるものなのか」といった質問を鶴瓶さんにする場面などが流されており、出産後の子育てトークなどが幅広く展開されるオンエアになりそう。そんな菅野さんがこの秋出演する「監獄のお姫さま」は、人気脚本家・宮藤官九郎が満を持して手掛ける“おばちゃん犯罪エンターテインメント”。物語は5人の女がある大企業のイケメン社長を誘拐するところから始まる。当初、何が目的なのか、5人はどういう関係なのか、全てが謎に包まれたまま。しかし、次第に明らかになる社長の過去。彼は愛人を殺した殺人犯だった。社長誘拐計画は、その殺人の真相を暴き、まだ刑務所にいる前社長の娘の冤罪を晴らすためのものだったのだ。それでも復讐は彼女たちが計画した通りに進まない。様々なハプニングが起こり、そのたびにパニックに陥る5人の女。それぞれの得意分野を活かして、なんとか軌道修正を図っていくが…。小泉今日子が主演し、満島ひかり、夏帆、坂井真紀、森下愛子といった豪華女優陣が顔を揃える本作。本作で菅野さんは所得隠しと巨額の脱税で収監された勝田千夏という女性を演じる。火曜ドラマ「監獄のお姫さま」は10月17日(火)22時~TBS系で放送開始。初回15分拡大。「A-Studio」は10月13日(金)23時15分~TBS系にて放送。(笠緒)
2017年10月13日10月12日(木)、韓国にて第22回釜山国際映画祭(BIFF)が開幕!日本から、大ヒット中の『ナラタージュ』のヒロイン・有村架純や行定勲監督、『彼女がその名を知らない鳥たち』の蒼井優、阿部サダヲ、白石和彌監督、『リングサイド・ストーリー』から佐藤江梨子、瑛太、武正晴監督らが開幕式のレッドカーペットとオープニングセレモニーに登場した。今年は、あいにくの雨の中の開幕となった釜山国際映画祭。「Gala Presentation(ガラ プレゼンテーション)部門」に正式招待されている『ナラタージュ』は、2006年版「この恋愛小説がすごい!」1位に輝いた、島本理生による禁断の純愛物語を行定監督が映画化。「嵐」の松本潤がオーラを封印して主人公の高校教師・葉山を好演。ヒロイン・工藤泉役を務めた有村さんの体当たりの演技も話題を呼んでいる。今回の釜山は、有村さんにとって初めての国際映画祭。肩を大胆に露出した「ジョルジオ・アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のブラックのドレスを着こなし登場した。事前には「海外の方にも、映画『ナラタージュ』が、どのように届いて下さるか、不安もありながら、でも、少しでも何か残って下さることを期待している」と語っていたが、やや緊張の面持ちながらも笑顔で手を振り、写真撮影に応じていた。行定監督は、本映画祭は実に11回目。「かつて『GO』『春の雪』『クローズド・ノート』という恋愛映画を熱狂的に受け入れてくれた釜山の観客が、私の恋愛映画の集大成である『ナラタージュ』をどんな風に観てくれるかが楽しみ」と事前に語っており、10月13日(金)に行われる公式上映にも揃って参加する。また、「A Window on Asian Cinema(アジア映画の窓)」部門に出品されている『彼女がその名を知らない鳥たち』は、「究極の愛とは何か」と大人の女性たちに問い、読者を虜にした沼田まほかるの人気ミステリー小説を映画化。韓国でも非常に人気の高い蒼井さんが、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の艶やかな衣装をまとい、阿部さん、白石監督と共にレッドカーペットに登場すると、会場からはひと際大きな歓声が巻き起こっていた。4回目の本映画祭の参加となる蒼井さんは、映画祭特有の豪華絢爛な雰囲気を楽しんでいる様子。「初めて参加させていただいたときに、主催の方に『釜山国際映画祭は他の海外の映画祭よりかは小規模で予算的に掛けられるわけではないけど、他に負けないのは観客の皆さんです。そこに誇りを持ってます』と言われたのが印象的でした」とふり返っており、「また観客の皆様にこの作品を観ていただけるだけで本当に嬉しいです」と感慨深げにコメント。阿部さんは初めての国際映画祭への参加となったが、 少し緊張しながらも終始、笑顔で蒼井さんと白石監督に促されながらレッドカーペットを優雅に闊歩。「こんな正装姿は初めてで、本当に楽しみです!服を汚せないから緊張するな~」と喜びいっぱい。さらに「韓国映画に登場する人物は(自身が演じた)陣治っぽい、汚い印象があるキャラクターが多いので、絶対受け入れられると思います」と、期待を込めてメッセージを贈り、白石監督は「観客の皆様に単純に楽しんで欲しいです」とコメント。さらに、同じく「アジア映画の窓」上映がワールドプレミアとなる『リングサイド・ストーリー』は、『百円の恋』が大絶賛された武監督の最新作で同じスタッフ陣が再結集。ヒモ同然のダメ男を演じた瑛太さん、その彼氏を健気に支える彼女を演じた佐藤さんもレッドカーペットに登場。2人とも釜山国際映画祭への参加は初めてとなる。花柄をポイントにした真っ白なパンツスーツで登場した佐藤さん。抜群のプロポーションと華やかさに、韓国だけでなく世界のメディアが魅了されていた様子。一方、真逆なカラーのブラックジャケットでレッドカーペットを颯爽と歩く瑛太さんは、韓国でも大人気で、女性ファンから握手や写真を求められていた。そして、蝶ネクタイの武監督は、W主演を両手に花にして威風堂々とレッドカーペットを歩き、「監督冥利につきる」という表情を浮かべながら釜山のオープニングを満喫。瑛太さん扮する売れない俳優・村上ヒデオの夢は、10年同棲している彼女・江ノ島カナコを「カンヌ国際映画祭」に連れていくことだったが、映画のキャッチコピー通り、カンヌならぬ釜山のレッドカーペットを揃って歩くことで“夢”は叶ったともいえそう。今年は、日本からの参加作品が例年になく多数の中、同作が邦画としてはトップバッターを飾る。「ガラ・プレゼンテーション部門」では、『ナラタージュ』ほか是枝裕和監督×福山雅治『三度目の殺人』、中山美穂×キム・ジェウク『蝶の眠り』もダーレン・アロノフスキー監督×ジェニファー・ローレンス『マザー!』とともに招待作品として上映。「アジア映画の窓」部門には、黒沢清監督の『散歩する侵略者』、河瀬直美監督の『光』、北野武監督の『アウトレイジ最終章』、吉田大八監督の『羊の木』(ワールドプレミア)『美しい星』、廣木隆一監督の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、米林宏昌監督の『メアリと魔女の花』、岸善幸『あゝ、荒野』など、世界的監督の作品から話題作がずらり。「オープン・シネマ部門」での『君の膵臓を食べたい』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』なども注目を集めている。「釜山国際映画祭2017」は10月21日(土)まで開催。(text:cinemacafe.net)■関連作品:彼女がその名を知らない鳥たち 2017年10月、全国にて公開(C) 2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会
2017年10月13日●「何を撮るべきか」混迷期の3作を経て映画『アウトレイジ 最終章』(公開中)に携わるスタッフたちの言葉を記録し、「アウトレイジ」シリーズ、及び北野武監督率いる北野組の魅力を探る短期集中連載「暴走の黒幕」。第2回は『その男、凶暴につき』(89)以降、全ての北野作品のプロデューサーを務めている森昌行氏(第1回:北野武監督)。『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続いて完結する3部作は、どのような経緯で生まれたのか。出演者と番組スタッフの関係から、やがては18作もの映画を生み出す監督とプロデューサーの関係に。北野監督と森氏は30年以上のつき合いがある中で自然と距離を取り始め、「友人」ではなく「同志」となることを選んだ。北野武の作家性を「振り子」と表現する森氏。北野映画の“黒幕”ともいえるプロデューサーは、摩擦や抵抗、重力の中で揺れ動く振り子を冷静に見つめながら、自らの喉元に刃を突きつけるがごとく決断を下していた。○「本当に撮りたいものが分からない」――作家性の強い作品からの転換が『アウトレイジ』だったと聞いています。そもそも、『アウトレイジ』はどのような経緯で生まれたなのでしょうか?敢えてプロデューサー的な発言に徹しての発言をしようと思いますが(笑)、もちろん今でも作家性は最重要視していますし、だからこそ映画祭に行くわけで。単純にエンターテイメント性を追求する映画であれば、職業監督になってしまいますよね。『座頭市』(03)以外はオリジナルで、やっぱりそこにはこだわっています。『座頭市』の後が、『TAKESHIS’』(05)、『監督・ばんざい!』(07)、『アキレスと亀』(08)。作家性といえばこれらもまさしく作家性の強い3作なのですが、もちろん評価は観る人によって変わると思います。プロデューサーというものは、ビジネスサイドとクリエイティブサイドのブリッジの役割と位置づけています。クリエイティブ面においては、この3作は私にとって決して不満足なものではなかったのですが、ビジネス的な側面から言うと、正直言って興行的な成功には至らなかった。――そうだったんですね。監督はムッとするかも知れませんし、「俺の知ったこっちゃない」と言われるかもしれないんですけど(笑)。リクープメント(費用の回収)が果たせていない。いわゆる、ビジネス面においては、正直言うと合格点が貰える状態じゃなかった。「監督・北野武の混迷期」というか。「何を撮るべきか」という、一種の模索を展開していた時期だったと思います。要するに本当に撮りたいものが分からない中で、それを探りながら作ったのがあの3作。ただし、本人がそれを3部作と言いはじめたのは、2作目の『監督・ばんざい!』が終わったあたりからで、それを聞いて「3本で終わるんだ」「何か出口が見えたんだな」と何となく予感しました。――映画作りの中で方向性が見えたと。『アキレスと亀』の主人公は、絵の才能がないのに、あると信じ込んでいた。少年期から始まって、暗中模索しながら苦しむ姿が描かれていました。あれはまさしく北野武自身でもあったのかなと。その姿こそが「出口」。成功を求めることが目的ではなくていいんじゃないか。つまり、好きなことをやっている今こそ、好きなことをやって生きていこうとしているそのことこそが許されるとしたら、それは最高の贅沢ではないかということに気づいた。つまり、生きていてなおかつやることがあるということをもってよしとするべし。いちばん大事なことは商業的な成功や、有名になること以上に、自分のやりたいことができている幸せを実感すべきじゃないか。そういう1つの結論にたどり着いたのではないでしょうか。たけしさんにそのまま同じことが言えるとは思いませんが、映画を撮れる、続けられることが「監督・北野武」にとってはいちばん重要なことなんです。混迷期の中で何を撮るべきかを探ってきた北野武自身がそこにたどりついたのではないか。これが私の推察です。そこで改めてたけしさんからアイデアがたくさん出たんですが、私としてはそこでこそ「バイオレンス・エンターテイメント」を提案したわけです。――どのような狙いがあったんですか?北野映画の出発点は『その男、凶暴につき』(89)。そして、代表作といわれるのは『ソナチネ』(93)や『HANA-BI』(98)で、ヤクザとか暴力のバイオレンス・アクションが少なからずある作品を通して北野武は1つのスタイルを確立していきました。ただ、十八番のバイオレンス・アクションを作って貰うといっても、『その男、凶暴につき』や『ソナチネ』に回帰することではありません。監督はありとあらゆるチャレンジをしてきました。しかも、『座頭市』を除いてすべてオリジナルにこだわった作品です。『キッズ・リターン』(96)や『あの夏、いちばん静かな海』(91)のように、オリジナルの様々な作風を経て築き上げられるバイオレンス・エンターテイメントは、おそらくそれまでとは別のものになるんじゃないかと。その期待感を込めて、バイオレンス・エンターテイメントを、得意のヤクザ映画という範疇に求めたわけです。ただし、監督にお願いしたのは、『ソナチネ』を作ることが目的じゃない。だから、過去作に出演してきた北野組の印象が強い役者を外すことからスタートしました。――キャスティングが重要なわけですね。たけしさんには「役者の演技を褒められても映画の価値に繋がらない」という頑なな姿勢が、初期に見られました。でもそれは逆に言うと、役者に任せられなかったということ。撮りたいものを実現するために役者に芝居されちゃかなわないという一種の、作家性たるゆえんみたいなところでのこだわりがあったと思うんですね。そこに戻らず、役者然とした人を起用してみようと、今さら北野映画が遠慮する必要もない。「『ソナチネ』のような映画を作るのではない」というのも含め、キャスティングを全面的に変えることもお願いしつつ、バイオレンス・エンターテイメントを提案したのが『アウトレイジ』でした。●「なんとかしないと」で生まれた『ビヨンド』――プロデューサーの立場がよく分かるエピソードですね。4本もリクープメントできない作品を続けてしまうと、監督が滅びてしまう。つまり、もうチャンスが与えられない。監督生命が、ひょっとしたらそこで絶たれてしまうんじゃないか。そんな危機感がありました。出資社には3本も、宣伝費が回収できるかどうかというようなギリギリの状態でも続けさせて貰えたんです。本当は2作で「待った」をかけるべきだったのかもしれない。『座頭市』後が『TAKESHIS’』。あれは「フラクタル」というたけしさんがもともと持っていたアイデアの映画化だったんですが、その脚本を衣裳担当のヨウジヤマモトさんにお見せした時に、ヨウジさんがこうおっしゃったんです。「やっぱり、アーティスティックな人はこういう作品を経ないと次のステップに行けないものなんでしょうね」。つまり混迷期を乗り越えるためには、作品を撮り続けることでしか、出口は見えない。あの3作は、出資者の方々に耐えて貰った3部作でもありました。従って4作目でもそれを繰り返すことは、「待ったなし」の崖っぷちなんですよ。いくらメディアが「世界のキタノ」と持ち上げても、あるいは映画祭に出ていようとも、ビジネスという面においての成功者ではなくなってしまう。むしろ、敗者です。これだと監督生命が絶たれてしまいます。だからこそ、エンターテイメント作品を撮るのは必然。絶対にヒットさせなければならなかったんです。もう1つつけ加えると、『アウトレイジ』はもともと3部作として構成されたものではもちろんないわけで。1作で終わる予定でした。ところが、『アウトレイジ』を公開してそれまでの3作よりは客が入ったんですが、観客動員数は『BROTHER』(01)と同じぐらいの80万人ぐらいで100万人に届かなかった。ということは、リクープメントが難しいということ。興行が終わって数字を見た瞬間に、「なんとかしないと本当に監督業が続行できなくなってしまう」という危機感があったので、『アウトレイジ』のDVDを発売する直前に監督に「2作目作りませんか?」と提案しました。これを聞いた監督は、大ヒットしたおかげだと当然思いますよね。――これは書いても大丈夫ですか(笑)?大丈夫です(笑)。これは、プロデューサーとしての発言ですから。監督を騙したわけじゃなくて、興行成績の話なので。つまり、スマッシュヒットには違いないんです。決して失敗したわけではないので。1作しか作るつもりはなかったので、大友は最後に刺されるわけですよ。あそこで映画は終わった。ただ、私が申し上げたのは、「大友の死体は映ってませんよ」と(笑)。――たしかにそうですね。見事に騙されてしまいました(笑)。大友が生きていたというスタートでも、十分成り立つんじゃないか。それで考えて貰えるのであれば、良い方向に行くはず。きっと監督も思うところがあったんでしょう。「それはそれでありだね」と、わりとすんなり受け入れてくださった。そして、DVDの発売前に『アウトレイジ2』の制作決定情報をリリースしました。一種ヒット感の醸成ですね。するとDVDの売り上げに火がつき、なおかつ『アウトレイジ ビヨンド』にまでその影響力が及んで、『アウトレイジ』を超えるヒットになりました。それこそ、”ビヨンド”したわけです。監督の中では「第3作も」となるわけですが、そこは踏みとどまって貰いました。――舵取りが細かいですね。シリーズ物の一種の宿命で、3作目は落ちるんじゃないかと。ただ何となく続けていけば、人々の関心はどんどん離れていく。そうではなくて、違う方向に一旦振った方がよろしいのでは伝えました。監督からは、いろいろ提案があったのですが。かつてたけしさんがWEBだけで公開した『ヤクザ名球会』という短編小説があって、それをベースに『龍三と七人の子分たち』(15)が生まれました。同じヤクザ映画でも「新」「旧」の話で、半グレの若造と元ヤクザの老人が戦う。そちらをやったらどうでしょうと監督にお話して納得して貰いました。でも、監督としてはそれを終えると、やっぱり「アウトレイジ」に決着をつけたいと。私は『ビヨンド』で終わっても全然問題なかった。ものすごい余韻を残した終わり方ですよね。いろいろな想像をかき立てる、北野映画らしい終わり方でした。でも、監督は大友のその後を描いて「けじめ」をつけたくなった。一種の終止符を打つという意味での「最終章」だったわけです。そうして「アウトレイジ」は、結果的に3部作のシリーズになりました。それは監督にとって都合の悪い話ではなくて、あくまでプロデューサー的な視点があってご提案申し上げたこと。監督はそれを受け入れてくださった。お互いウソをついたわけではなく、このような事情をそんなに多くの言葉を交わさず理解し合って、監督は監督の解釈をされて制作に入りました。○オリジナルで勝負する気概――まずは監督からのアイデアがあって、それに対してプロデューサーの立場から意見する。これまでの北野映画はそうやって作られてきたんですか?できれば監督がおっしゃるものをすべて叶えたいんですが、ビジネス行為である以上、ビジネスパートナーたちの同意を得ることが重要です。この作品であればなにゆえに勝算ありかというビジネススキームが、今のプロデューサーには当然求められますから。だから、保険をかける意味で原作ものが増えていると思うんですよね。ただ、うちはオリジナルで勝負しています。一からプレゼンしないといけないわけですから、それなりの説得力がないといけない。そういう意味においては私が提案したものは比較的同意の得やすい、短く説明して同意が得られるものです。そういう流れの中でものを作らざるを得ないわけです。――白竜さんがジャパンプレミアの舞台挨拶で感極まっていらっしゃるのが印象的で。監督から「北野組やってよかったね」と言われたことへの感謝の気持ちが滲み出ていました。そうですね。「アウトレイジ」シリーズを経て、『ソナチネ』とは違う色がつきました。『アウトレイジ』のキャスティングにおいて、かつて『ソナチネ』や『BROTHER』に出演した寺島進の名前が出たこともありました。私が監督にお願いしたのは、「寺島を出すのであれば、反目で出してください」と。たけしさんと相対する勢力に置くのであれば、それは新しいかもしれない。でも、たけしさん側だったら『BROTHER』に勝てない。『BROTHER』では、兄貴と慕っていたわけですから。そのインパクトを思い出させることはあっても、それ以上のインパクトは得られない。だから、寺島の起用はあきらめて頂きました。白竜さんは『その男、凶暴につき』に出て頂きましたが「アウトレイジ」とは全く異なる殺し屋(というキャラクター)。大杉(漣)さんもたくさん出ていただいてきた方ではありますが、『最終章』では見事な反目として大変なことになってしまいます(笑)。●次作でプロデューサーから外れる極論――監督とプロデューサーの関係性は、作品を重ねるごとに変わっていったんですか?私は「常に新規」のつもりです。前がどうだったからとか、それは監督としての思いが継続していても、作り手たちは「これが最後かもしれない」という気持ちで臨まないといけません。「次があるさ」的な発想でものを作るのは、クリエイティブじゃない。だから、私たちにとっては毎回が新規。たとえば今回の『最終章』においても、いろいろな面を再考します。もちろん、別の作品に繋がることもあると思いますが、作り手には「新しい映画を作る」という重みを忘れないでほしいと思っています。――先ほど、混迷期を経てのシリーズとおっしゃっていましたが、「アウトレイジ」シリーズは監督にとって何期になるとお考えですか?エンターテイメント色、観客ありきという点においては、『ソナチネ』の時代にはなかったスタンスです。ただ、もともとエンターテイナーですからね。それをそのまま素直に表現する人ではなかったという意味では、やっぱり何か吹っ切れたんじゃないかと私は思います。やっぱり客が入らないと、始まらないよねと。監督特有の頑固さは今でもありますけど、人の意見を聞かない方ではないですし、やっぱりプラスアルファの方向でみんなが出すアイデアについては、採用するかどうかはともかくとして、ちゃんと聞き耳を傾け、良いものは採用して採り入れるようになりましたから。18本もの映画を通して、作家としてのたけしさんの変化ともいえると思います。○あえて埋めない距離感――最初は番組スタッフと出演者の関係で飲みに行ったりもしていたそうですが、徐々に距離を置くようになったと聞きました。仕事上のつき合いだけでも、同志になれると。今でもその関係性は変わらないんですか?変わらないですね。ますます一緒に動かなくなりました(笑)。オフィス北野ができて30年になりますが、ずっと変わりません。その前からのつき合いもありますが、そこの距離感が埋まることはないと思います。――それはたけしさんだけですか?一種の教訓みたいになっています。同志の付き合いは、「酒を酌み交わしてこそ」ということではない。誰であれ、私はそう思っています。仕事の話をするときは、仕事のスタンス。それはどれだけ親しくても関係ありませんよね。私は、たけしさんという人と仕事においてはパートナシップは守り続けると思いますけど、それ以外のことはあまり考えないようにしています。だから続けられてるんじゃないでしょうかね。そこを一緒くたにしてしまうと、会話も成り立たなくなる。「こう言ったじゃないか」「いいってことにしようよ」と変なところで予定調和が生まれる。基本的にマネージメントする立場では「ノー」ではなく「イエス」ではあるんです。本人がやりたいことをどう実現させるか。あるいは、どういうステージを作るかというのは基本だとは思うんですが、決して「イエスマン」になってはいけない。だから、すべてにおいて「ウェルカム」ではダメなんです。もちろん、才能に対する尊敬の念はありますけども、人間同士ですからね。やっぱりすべてに肯定的ではお互いのためにならない。たけしさんは仕事に対してはハッキリものを言う方で、なあなあを許さない方。適当な説明をしていると、「ごまかすな」とお叱りを受けます。そんなことは通用しない方なので。「アウトレイジ」は結果として3作になって、本人は「『アウトレイジ リボーン』もできる」とか言ってますけど、それは冗談として(笑)。プロデューサーの立場から区切っていくことが私の仕事です。○振り子の先を見据える観察眼――過去のインタビュー(キネ旬ムック フィルムメーカーズ『北野武 TAKESHI KITANO』98年)では、監督の世界観の幅を「振り子」と表現されていましたが、これから監督としての北野武にどのようなことを期待されていますか? 「アウトレイジ」が終わる寂しさも感じつつ、今後も楽しみです。本人は「バイオレンスをやったから、次は違うもの(恋愛映画)を撮りたい」と言ってますけど、「バイオレンス」と「愛」は実は振り子の関係で、また「バイオレンス」を描く時の表現の幅にも繋がる。今でも私の中での「監督・北野武」は振り子の人です。ただし、私が「振り子」と図式化した時点で、本人にとっては嫌悪感も抱く時期なのかなと思っています。ですから、振り子に変わる、なんというか「違う宇宙を作りたい」ぐらいの気持ちでいるんじゃないかと。「掴ませない」というのは、たけしさんが昔から言っていることなんです。「例え掴まれても、俺は逃げ切る」と。だから、逃げ切った先に、どのような景色が広がっているのか、もちろん私にも読めません。ただ、再び混迷期に入るとは思ってないです。たぶん何かを掴みとって、答えを出してくれるんじゃないか。ただ、今日言っていることと、明日言っていることが違う人ですからね(笑)。そういう意味では、宇宙がいくつもある人なんです。その掴みきれない面白さというか。今まで映画に限らずいろいろな話をしてきたんですが、そこの流れにはないものを、私としては期待しています。ただし、もちろん実現可能な範囲という条件で。プロデューサーという人種の限界のようなものがあるんですよね。ビジネスサイドに片足つっこんでますから。単なるパートナーであれば、「やっちゃえ! やっちゃえ!」なんですけどね。そうはいかない。ものすごい極論ですけど、次に何かをやるとういときに、私がプロデューサーであるべきかどうかまで含めて、考えることもあるかもしれないですね。――それも新たな挑戦領域ということですね。そうです。私はそこにこだわるわけじゃないですから。次なる宇宙のためには、そんなことがあってもおかしくないんじゃないでしょうか。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年10月13日『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)に続く完結編となる北野武監督の映画『アウトレイジ 最終章』が、シリーズ最大のヒットを予感させる好スタートを切った。同作は7日から全国287館で公開され、初日と2日目で25万人を動員。興行収入は3.5億円を記録し、同日公開の他作品を抑えて週末興行成績の1位に躍り出た。北野監督作としては、『ビヨンド』以来2回目の1位スタートだ。また、平日やレディースデーも引き続き好調で、公開から11日までの成績は46.5万人を動員し、興行収入は6.4億円に。1作目を超えるヒット作となった『ビヨンド』(最終興収14.5億円)の122%という高水準が続いている。配給元のワーナー・ブラザース映画は「夕方から夜の伸びが非常に良く、20代以上の男女の来場が目立っている。エンターテイメント作としての高い認知と『最終章』への期待から、全国で幅広い観客層にご鑑賞頂いている」と分析。一方の北野監督は「そりゃ"最終章"は観るだろう!」、森昌行プロデューサーは「アウトレイジ ビヨンド』を"ビヨンドする"(超える)ことが大きな目標でしたが、何とか出来そうな勢いは感じています」とコメント。手応えを感じつつ、さらなるヒットに期待を寄せている。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
2017年10月13日「ネプチューン」「くりぃむしちゅー」「チュートリアル」の3組7人の芸人がMCを担当、毎回登場するゲストとのトークや企画を展開する「しゃべくり007」の2時間スペシャルが、北野武、新垣結衣など豪華なゲストを迎え、10月9日(月・祝)今夜放送される。今回のゲストは全国公開中の映画『アウトレイジ 最終章』から北野武、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、白竜、光石研。10月21日(土)より全国東宝系にて公開される映画『ミックス。』から新垣結衣。卓球の五輪代表でもある石川佳純、人気のお笑い芸人・ブルゾンちえみwithB。『アウトレイジ』キャストらはそのコワモテぶりからは意外な“ホッコリ”プライベート写真を公開。チェロを弾く白竜さん、愛犬と愛猫にメロメロの大杉さんなど、映画とは正反対なキャストたちの普段の姿が続々紹介される。また石川さんが新垣さんの秘密に迫ったり、ブルゾンさんのバックでそのイケメンぶりと肉体美を見せつけている「withB」の想像を超える“おバカ”ぶりが明かされ、ブルゾンさんが「withBオーディション」開催を宣言。さらに2人だけで禁断のネタ披露。スタジオが騒然とした渾身のリズムネタをお楽しみに。今回7名のキャスト陣がゲストで登場した『アウトレイジ 最終章』は、北野監督の18作目にしてシリーズ最新作となる。関東「山王会」vs関西「花菱会」の巨大抗争後、大友は韓国に渡り、日韓を牛耳る“フィクサー”張会長の下にいた。そこに、韓国出張中の「花菱会」花田がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。これをきっかけに、韓国“フィクサー”vs関西「花菱会」が一触即発の様相となる中、「花菱会」では内紛が勃発。そして、大友が日本に戻ってくる…という展開。また新垣さんが瑛太とW主演を務めた映画『ミックス。』は、不器用でどこか欠点だらけの登場人物たちが、卓球の男女混合のミックスダブルスを通じて小さな“奇跡”を起こす、恋と人生の再生物語。新垣さん、瑛太さんのほか、瀬戸康史、永野芽郁、森崎博之、中村アン、鈴木福、谷花音、田中美佐子、遠藤憲一らが共演する。『アウトレイジ 最終章』は現在全国公開中。『ミックス。』は10月21日(土)より全国東宝系にて公開。「しゃべくり007」2時間SPは10月9日(月・祝)21時~日本テレビ系で放送。(笠緒)
2017年10月09日●音楽・鈴木慶一に頼んだ「失礼なこと」「全員悪人」の『アウトレイジ』(10)、「一番悪い奴は誰だ?」の『アウトレイジ ビヨンド』(12)。そして、北野武監督にとって18作目にしてシリーズ完結作となる映画『アウトレイジ 最終章』のキャッチコピーは「全員暴走」。日本の二大勢力だった関東・山王組と関西・花菱会の抗争後、韓国の済州島に渡った元大友組の組長・大友(ビートたけし)。日韓を牛耳るフィクサー・張会長(金田時男)のもとで平穏な日々を過ごしていたが、花菱会の花田(ピエール瀧)がトラブルを起こし、「全員暴走」の渦中へと巻き込まれていく。人気シリーズの登場人物たちを暴走させていく一方、『アウトレイジ 最終章』は18作という北野組の歴史、そして暴走とは対極にある監督論が支柱となっている。短期集中連載「暴走の黒幕」では、本作に携わったスタッフたちの言葉を記録し、シリーズと北野組の魅力を探る。第1回は監督・脚本・編集の北野武(70)。アイデアノートから生まれた描写を、"引き算"と"リアル"の音と掛け合わせて"みんな"に委ね、最後は"俺"が自由に決める。○"引き算"の選択――音楽を担当された鈴木慶一さんは、監督との仕事を通じて「引き算」を学んだと。メインテーマで数秒無音の箇所がありますが、制作者としては「恐怖もあった」とおっしゃっていました。鈴木さんが怒ってなきゃいいけど。失礼なこと言ってるんだよね。音楽を聴いて、映像を思い出す映画ってあるじゃない? そうならないようにしてくれって(笑)。「これは音かな?」でいいと。『菊次郎の夏』(99)なんかは、あの曲を聴くとすぐに映画を思い出す。『ソナチネ』(93)の曲が何かに使われてても、映画を思い出すじゃない? そうじゃなくて、ただの「音」がよかった。だから、すごく失礼なの(笑)。――サントラを聴いても、どの場面なのかすぐに分からないですよね(笑)。うん、雑音に近くてすごくよかったね。――メインテーマの「無音」はテレビでいえば「放送事故」にもなると思うんですが、鈴木さんにはどのようにオーダーされたんですか?ある程度編集が終わると、タイムカウンターが下に出るから、「何秒から何秒までの間で音楽を付けて」と伝えて、「その後は雑音で」みたいに。音楽家としては面白くなかっただろうね(笑)。腕の見せどころがないというのは、つらいんじゃないかな。――鈴木さんは、表現の幅が広がったとおっしゃっていました。ただ、監督からの感想を聞いてないから不安だとも(笑)。バイオレンス映画なので、心地良いメロディーラインとリズムは必要なかったんだよね。マシンガン撃ちまくる時に良い曲がかかっちゃうと、「遊び」になっちゃうから。もっと、「ガッシャン!」「ドッカン!」でいい。なんだか分からない音。何て言うんだろ。ソフィスティケートって言うのかな。キレイに観せるような画の映画ではないから。「この野郎!」「バカ野郎!」と言ってるだけの映画。キレイな音楽は店内で流れる音楽ぐらい。だから、雑音でいいんだよね。――「アウトレイジ」シリーズだからこそ、その「雑音」が必要だったと。映画によっては、「ここでキレイな曲」というのはあってもいいけど。「アウトレイジ」は「音」が気になると、映像にも影響してしまう。相乗効果にならないんだよ。例えば、昔だったら勧善懲悪もので善良なヤツが車で乗りつけてきたら、そこでキレイな音楽かけてもいいんだろうけど。○本物の銃声にこだわるワケ――先ほどのマシンガンのシーンにもつながるのですが、「アウトレイジ」シリーズの銃声はすべて本物と聞きました。『BROTHER』(01)の時に録音したものが使われているそうですね。アメリカで『BROTHER』を撮影した時でも、拳銃には実弾が入ってない。火薬も3分の2とか、半分とか指定があるので、実際に撃ってみても銃を撃ってる実感がない。その音がリアルじゃないからね。それで音を録り直すことになった。音効さんも凝る人だからね。トカレフとかワルサーとか全部弾詰めて、それを撃った音を録音したんだよね。――観客は実弾の音を無意識に聞いているわけですね。うん。(ガンエフェクト師の)納富(貴久男)さんと拳銃の音を聴き比べて。マニアックな人は、みんな音を聞けば分かるんだよね。結局は弾入ってないし、相手が死ぬわけじゃないんだけど、どこかで凝りたいじゃない? 音まで偽物だとつまらないよね。だから、リアルにできるものはした方がいいと思って。●スタッフの意見を聞く「俺のやり方」――それが臨場感に繋がっているんですね。こうしてシリーズを完走されたわけですが、今後の作品作りにおいてどのような影響がありそうですか?「アウトレイジ」というか、バイオレンスには結局慣れてしまったのかな。他のラーメンが売れなければ、また売れてた担々麺やればいいんだみたいなところがあって。でも、ずーっとその専門店は嫌だし。だから、「アウトレイジ」は一応3部作で終わったけど、『アウトレイジ リボーン』みたいに続けることもできる(笑)。もしやるんだったら、すごいビッグな俳優ばかりでやるけど。それはそれで面白いと思うんだよね。うまい役者の掛け合い。ただね、世界的な傾向もあって。やっぱり時代がテロとかで落ち着かない時にこういう映画はあまり向かないとも思うんだよね。ベネチアなんかでも評判良いんだけど、それは「変わりモノ」としての扱いだと思う。だから、次はあまりやったことのない、男と女の話にしようかな、なんて考えてる。○"北野ノート"に書かれていた描写――楽しみにしています。いつもアイデアをノートに書き留めているそうですね(ロッキング・オン刊行『物語』より)。「アウトレイジ」のアイデアノートには、どのようなキーワードがあったのでしょうか。相手を痛めつける描写。たとえば、水野(椎名桔平『アウトレイジ』に登場)が菜箸を耳に指したりとか。今回やろうと思ってボツにしたけど(大杉)漣さんにハチミツをかけて、山の中に置いといて虫だらけにしちゃうとか(笑)。あとは、ピアノ線引いといて首ハネるとか、いろいろそういうことを考えてる。基本的に、最終章で花菱会の会長は神山(繁)さんの予定だったの。でも、神山さんが亡くなられて(今年1月に急逝)。だから、全然関係のない娘婿を会長にしちゃうのは、わりかし前から書いてあった。直参で体張ったヤツが相変わらず頭(かしら)で、会長の座に急に関係のない野村(大杉漣)が就いて揉め出す。あとは、大友が刑事を撃ち殺して張会長(金田時男)のシマの済州島に逃げるというのは『ビヨンド』の時に決まってて。張会長は、『ビヨンド』ではあまり出番がなかったけど、最終章ではまだ使えると思ってね。大友が日本に帰って、それから復讐戦が始まる。『ビヨンド』と『最終章』の脚本は、だいたい同時にできてたんだよね。――『最終章』は、大友が釣りを楽しんでいるシーンから始まります。個人的には「大友さん、やっと平穏な日々を過ごすことができたんだ……」と感慨深いものがありました。それからいつものように面倒なことに巻き込まれていくわけですが(笑)。うん(笑)。花菱会の花田(ピエール瀧)が済州島に遊びに来て暴れて。最初は放っとくつもりだったんだけど、今度は日本で張会長が狙われはじめたからそうはいかなくなって、大友の中では「これはやんなきゃいけないな」という感じだよね。――まずは暴力描写が浮かんで「アウトレイジ」シリーズが誕生したように、『ソナチネ』もエレベーターでの襲撃や、浜辺での相撲のシーンを最初に思いついたそうですね。うん。今回でいえば、マイクロバスの中での銃撃シーンは難しかったなぁ。あれ、「誰撃ったっけ?」みたいなシーンだよね。誰が動いて、誰が撃たれたのか。画像が暗くてね。だいたい台本通りになってるんだけど、パッと見た瞬間に誰が誰を撃ったのか分からない(笑)。――わずか数秒の出来事でしたね。大杉漣さんと松重豊さんが怒り狂うシーンがツボでした。何度観ても笑ってしまいます(笑)。お笑いっていうのは、自分に関係がなければ、ものすごい怒ってる人がいると笑っちゃうからね(笑)。自分に危害さえなければ絶対面白いんだよね。ところがその矛先が自分に向くと、恐怖で逃げたくなる。ヤクザが喧嘩して殴り合っているのはついつい見てしまう。でも、「何見てんだ! この野郎!」って言われたらみんな逃げる(笑)。そういうものだね。○北野組スタッフとの距離感――『全思考』(幻冬舎文庫)には、「俺は介護老人タイプ」「怒ったり、命令したりはしない。まずスタッフに聞く」「スタッフの能力を最大限に引き出すには、これがいちばん」とあったのですが、これは今も変わらずですか?やりたいことは、ほとんど決まってるんだよね。もちろん、もっといい意見があれば採用するんだけどね。「ああ、わかった。じゃあ、そうするよ」と言いながら、俺のやり方でやる。でも、今は半々ぐらいかな。結局、カメラマンとか照明の技術的な話もあるから、「これはできませんよ」となると、それに変わる方法を聞いて「こういうのはどうでしょう?」と言われれば、「じゃあ、それで」みたいに。そんな感じで相手の意見を聞いてる。助監(督)なんか優秀だから、言葉を直してもらったりもするけどね。「ちょっと、言葉尻ヘンです」って言われることもあってね。●なぜ編集が一番楽しいのか?――スタッフとの接し方は、作品を重ねるごとにそうなっていったんですか?最初の頃は「俺に何か言うんじゃねえ」みたいな感じでやってたけど、もう18本も一緒にやってるとね。お友だち状態になっちゃってるから、「たけしさんをみんなで支えなきゃ」という感じにできるだけなるようにしてる、それで手を抜きたい(笑)。「あー、調子悪い」ってボヤきながら何もしないで、「リハーサルも見ないから勝手にやってくれ!」と言いながら、横目でチラッと見たり(笑)。そうなるといいね。――先日のジャパンプレミアのときにも、台本を渡せばみんなが見事に演じてくれるとおっしゃっていたのも、同じようなことですかね(笑)。うん。役者さんたちは、まぁスタッフもそうなんだけど「良いところ」を見せたがるんだよね。だから、渡した台本以上の演技をしようとして努力する。照明さんでも夜の撮影の時に、違う機材を持って来て、「どうですかこれ?」「明かりが柔らかくなりましたよね?」って。「こういうこと考えてたの?」と聞くと、「もう、大変でしたよ(笑)」。そういうふうに勝手に自分たちで良いものを作ろうとしてくれる。最近は、ありがたいですよ。西田(敏行)さんも塩見(三省)さんも、思った以上に役を作ってきてくれる。時々、作りすぎて間違えちゃう人もいるけどね(笑)。――映画作り以外においても、そのような接し方を心掛けていらっしゃるんですか?お笑いなんかの方では、仕事の話じゃないんだけど。真面目な話なんかしなくて、くだらねぇことばっかり言ってて、それがいつの間にかネタになったり、次の仕事のアイデアになったり。生活自体が、映画を作ったり、ライブをやったり、いろんなところに繋がってるんだよね。「晩飯」がライブで、「朝飯」が映画みたいな。そうやって生活の中に入り込んじゃってる。あまり、客観的に見ることがないんだよね。だから、いろいろな仕事をやってるんだろうね。これが疲れねーんだよなぁ(笑)。「あー! この仕事疲れた」と思うのは、たぶん時間が長い時だけ。あとは何とも思わない。――どんな仕事でもですか?うん、だいたい。まぁ、体張ってケガする可能性があるのは別だけど。もう歳だからね。――火薬田ドンとか(笑)。うん。アレなんか、結構間抜けでくだらないことが一番神経使うよね。ケガしちゃいけないから。一番真剣な演技が、一番楽だったりね。ただ真剣にしゃべればいいじゃない? 不思議なもんだよなぁ。○一番の楽しみは撮り終わってから――同じく『全思考』(幻冬舎文庫)には、「いちばん面白いのは編集」とありました。どのようなところに魅力を感じていらっしゃるんですか?子供の頃、プラモデルのキットを買うと、解説書と部品が入ってたでしょ? あれが映画でいうところの「ラッシュ」(未編集映像)。「ラッシュ」を買ってきて、それを編集することがうれしいんだよね。俺らはその部品を撮るところからやってるから、だから「早く撮っちゃえ!」と。それを編集で組み立ててるわけだから、それは面白いよね。でもね、部品の「タイヤ」がないことに気づいたりするわけよ。「タイヤがないぞ!」となれば、その代わりにハンドルをくっつけたりなんかして(笑)。わかりゃしないよそんなもんって(笑)。そんなことが結構ある。「あっ、いけね!」となっても、「どうやってごまかそうか」というのも面白い。その前のシーンから「引っ張ってきちゃえ!」みたいなこととか、編集で強調したいところを無理やりトリミングしてもうちょっと大きくならないかなとか。今は(撮影した映像を)デジタル(データにして編集)して、それをまたフィルムに直すんだよ。見切れてるところも、少しだけずらしたり。やっぱり編集がいちばん面白いよね。――撮り終わってからの方が楽しみということですね(笑)。そうそう。こいつのセリフ気に入らないから取っちゃえ! とかね(笑)。カットして、こっちのセリフから始めちゃおうとかね。自由にできる。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会■プロフィール北野武1947年1月18日生まれ。東京都出身。身長168センチ。O型。主演も務めた『その男、凶暴につき』(89)で映画監督デビュー。その後も、『3-4x10月』(90)、『あの夏、いちばん静かな海。』(91)、『ソナチネ』(93)、『みんな~やってるか!』(95)、『キッズ・リターン』(96)を世に送り、『HANA-BI』(98)は、第54回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。『菊次郎の夏』(99)、『BROTHER』(01)、『Dolls[ドールズ]』(02)に続いて、初の時代劇に挑んだ『座頭市』(03)は第60回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。芸術家としての自己を投影した『TAKESHIS’』(05)、『監督・ばんざい!』(07)、『アキレスと亀』(08)の後、『アウトレイジ』(10)と続編の『アウトレイジ ビヨンド』(12)、『龍三と七人の子分たち』(15)。『アウトレイジ 最終章』は、18本目の監督作となる。
2017年10月08日北野武監督が裏社会の男たちの抗争を描く『アウトレイジ』シリーズの最新作『アウトレイジ 最終章』の初日舞台挨拶が10月7日(土)に都内で行われ、北野監督をはじめ、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、金田時男が出席した。人気シリーズの5年ぶりの最新作にして、最終章となる本作。関東「山王会」と関西「花菱会」の巨大抗争後、韓国に渡った大友(ビートたけし)が帰国。権力争いの真っ只中に突っ込んで行く姿を描く。シリーズへ初参加を果たした大森さんは「夢にまで見た『アウトレイジ』。いつ出番が回ってくるのかと。『アウトレイジ』『ビヨンド』と出番がなかったぞ、どうしようと思っていた」と念願だったことを告白。「ついに最終章でお呼びいただきまして、非常に感動しました」と喜びをかみしめた。「すべてのシーンに思い出がある」という西田さんは、「塩見三省とのシーンを初日に撮ったんですが」と共演者の塩見さんについて言及。「塩見は脳出血の後遺症があって、歩行も自由じゃなかった。私も頚椎を亜脱臼して、歩行が定かじゃなかった。2人とも4人くらいの人に抱えられながら対峙するシーンを撮った」と、病と戦いながらの撮影だったそう。西田さんは「監督が“大丈夫、大丈夫。ホンを変えちゃおうか”と、優しい言葉をかけてくださった。監督に恩を感じた」と北野監督の気遣いを思い出してしみじみ。北野監督は「体の悪さ具合が、撮ったときにものすごい迫力になって。これは活かさなきゃと思った」と西田さんと塩見さんの渾身の演技に心を打たれたことを明かしていた。いよいよ最終章を迎えた本シリーズ。北野監督は「恋愛ものを撮って、ちょっと俯瞰的、客観的にバイオレンス映画を見直して、次にやるときは、日本のオールスターズで(バイオレンス映画を)やりたい。全員、車代くらいで出てもらう」とさらなる意欲を吐露。完成作について「うまいまとまり方をしている。自分で編集していても、映像的にも“これはいいなぁ”と思うかなりの自信作」と晴れやかな表情を見せていた。『アウトレイジ 最終章』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2017年10月07日公開初日を迎えた映画『アウトレイジ 最終章』の舞台あいさつが7日、東京・新宿ピカデリーで行われ、北野武監督、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、金田時男が出席した。北野武監督をはじめ、西田敏行らキャスト陣が勢揃いして行われた初日の舞台あいさつ。西田が「本日は小説『アナログ』(9月に発売されたビートたけしの長編小説)の販売促進会にお出でいただきましてありがとうございます」とあいさつして会場の笑いを誘い、「毎回すべてのシーンで思い出がありますが、初日の時に塩見三省さんと2人の絡みがあって、塩見さんも脳出血の後遺症があって歩行が自由じゃなかったし、私も頚椎を亜脱臼して歩行が定かではない状況で、2人を4人の人に抱えながら対峙しました」と振り返り、塩見は「その時に監督が気を遣ってくれて、優しい言葉を掛けてくださって恩を感じました」と北野監督に感謝。『アウトレイジ』シリーズ初登場となった大森南朋は「もう夢にまで見た『アウトレイジ』にいつ出番が回ってくるのかと思いましたよ。最終章でお呼びいただいて非常に感動しました」と出演を喜び、北野作品の魅力について「今この現代でここまでヤクザをしっかりと描いている映画はないと思います」と熱く語った。最後にあいさつした北野監督は「今回は西田さんがケガをしたり塩見さんも病気になったりしましたが、最初撮った時にモノ凄い迫力で、これは生かさなければいけないなと思いました。それを見た自分が首を動かすなど、この3人は一体なんなんだと。病気グループになっちゃったよ」と笑わせるも、「上手いまとめ具合だと思っています。私の場合、評論家と喧嘩して人気がありませんが、あまり文句言う奴もいないし、自分で編集していて映像的な面でもいいなと、かなりの自信作です」と胸を張った。続けて「次の映画で恋愛ものとか息抜きではないですが、客観的にバイオレンスの映画を見直して、次やる時は日本の役者オールスターでやろうと思います。全員"車代"だけで。仲代達矢さんには500円で出てもらおうという作戦でいきますよ」と笑いを交えながらも次回作の構想を明かしていた。
2017年10月07日テレビで思い切りバカなことをやり倒す偉大なお笑い芸人「ビートたけし」として、また世界から評価される映画監督、そして文化人として大人気の、北野武さん。10月7日より公開される18作目の監督作品『アウトレイジ 最終章』は、ヤクザの世界を描いた物語の第3弾。笑いと映画、両方で頂点を極めた武さんならではの、独特な世界観が拡がる作品です。――『アウトレイジ』は、毎回誰かが衝撃的な方法で殺されるのが、ある種観どころになっています。今回の予告編でも、とてつもないシーンが公開されていました。どれも残酷なのに、どこかにたけしさんの作るコントに通じる笑いがあるような気が…。北野:そうだね。2作目のときの、加瀬亮くんが、バッティングセンターで椅子に固定された状態で野球のボールを延々投げつけられて死ぬのなんて、おいら実際、昔『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』でやったやつだからね。ていうか、この映画に出てくる殺され方、だいたいみんなコントでやってんじゃない?(笑)――描き方が、おもしろいか、シリアスかってことですか?北野:命にかかわらないレベルで「痛い!」で終わればコントで、本当に死んでしまえば…って、死んだって描けば、殺人になるってこと。違いはそれだけなんだよ。あのね、お笑いって悪魔のようなもので、シリアスな部分には、必ず笑いが忍び寄るんだよ。分かりやすいところで言うと、例えば結婚式でブーケトスでスカートが脱げちゃったり、ケーキが落っこちちゃったり。あるいは葬式で、足がしびれて倒れたり、とか。厳粛さと笑いって、隣り合わせなんだ。――場が厳粛であればあるほど、実は笑いが忍び寄っている?北野:うん。それは死に対しても同じことで、ヤクザ映画だったら、「てめぇ、殺すぞ、この野郎!」って銃口を突きつけて、引き金を引いたら、カチャッ、カチャッ。「あれ?弾がない!」って、完全にコントだよね。笑いは常に、緊迫感とか緊張感を壊してやろうと狙ってるわけだ。――ということは、殺人場面で笑うのは不謹慎?と思っていたんですが、笑っていいんですね。北野:うん、いいのいいの。――ちなみに、北野組というのは厳粛な雰囲気なんですか?北野:うちの場合はね、俺はすごく穏やかなんだけど、スタッフが怖い(笑)。なかにはすごい迫力ある人もいるから、初めて来た役者さんとか、震え上がるみたい。で、俺が「いいよいいよ、適当で」って場を和ませたりするんだけど、なかなか緊張はほぐれない(笑)。――そういえば、『アウトレイジ』は顔のアップが多いので、顔の緊迫感も半端ないです。北野:実は、この映画に出てる人ってみんな、他の作品ではヤクザ役をやっていない人ばっかり。そういう役者がヤクザを演じて、どアップで凄むからこそ怖いし、インパクトがあるんじゃない?俺が描いているのはいわゆる現代ヤクザだから、わかりやすいヤクザ顔より、普通の顔のほうがいいわけ。今回で言うと、西田敏行さんなんて、『釣りバカ日誌』で見せている顔と全然違うじゃない。だからおもしろい。でも、もちろん顔だけで選んでるわけじゃないよ?雰囲気も大事。岸部一徳さんの場合は、とあるセリフを言わせたいっていうその1点で、出てもらったの。結果、すごく良かった。――ネタバレになるので言えませんが、落差に驚きました。北野:へへっ、そうでしょ。『アウトレイジ 最終章』関西の〈花菱会〉と、国際的フィクサー〈張グループ〉が一触即発状態に。済州島にいた大友(ビートたけし)は、決着をつけるべく帰国する。怒号と銃声が唸るバイオレンス映画の最終章。監督、脚本、編集は北野武。共演に西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、岸部一徳ら。10/7より全国ロードショー(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会きたの・たけし1947年生まれ、東京都出身。’80年代より日本のお笑い界を牽引、俳優などでも活躍するエンターテイナー。また映画監督としては、海外でも評価が高い。※『anan』2017年10月11日号より。写真・矢吹健巳(W)(by anan編集部)
2017年10月07日作る映画は世界から愛される、名監督・北野武さん。でもその一方で、ひたすら笑いに真摯。偉くなりたいと願うその理由が、素敵です。映画の最初は4コママンガ。そこから場面を繋げていく。――毎週テレビのレギュラーを何本も抱え、生放送もありますよね。そのスケジュールの中で、どうやって映画を作っているんですか?北野:基本的に、テレビのレギュラーを1週間やったら、次の1週間は映画、またテレビ…って感じ。撮影と編集で3~4か月くらいかな。――脚本執筆にかかる時間は?北野:今回は、構想は2作目のときにすでに浮かんでいたから、台本としてまとめるのは、1週間か10日くらいでパッと作って。――ストーリーはどうやって考えるんですか?北野:ノートがあってね、そこにまず4コママンガみたいなものを描いて、台詞を書き加えつつ、こんなこと、こんなこと、こんなこと、で、終わりってまとめて、そこに枝葉をつけていくの。その枝葉の部分に、具体的な映像のアイデアを描いていって…。思いついた映像を、次のシーンにどう繋げていくかが勝負なんだよな。物理的に具現化できないシーンとかもあるし、その兼ね合いが難しい。――映画の分だけ、そういったノートがあるんですか?北野:そのはずなんだけど、だいたいいつの間にかどっか行っちゃうんだ。たまに出てくるから見返すと、「お、おもしれぇこと書いてたんだな」とか思うんだけどね。――しかし、笑いと映画、頭の中は簡単に切り替わるもの?北野:うーん、映画は台本ができちゃえば、あとは現場に行くだけだから、テレビやりながらでも全然…っていうか、テレビって、本当に仕事かな?って思うんだよね。だってただ座ってりゃいいんだもん。大したことしてないよ。――そんな!だってテレビでは、どの番組でも常に笑いを取りにいくじゃないですか。北野:笑いを商売にしているやつが、現場で「どうしよう?」なんて考えてたら、相当才能ねぇよ(笑)。最近はお笑いの学校を卒業して芸人になるやつがいっぱいいるけど、そもそもお笑いなんて普通の道じゃないんだから、学校で学ぶもんじゃないっていうの。――その中には、たけしさんに憧れてお笑い界に入ってくる人もたくさんいるのでは…。北野:だから、憧れてるうちはダメだよ。憧れるっていうのは、そいつを超せないってこと。俺を嫌いってやつのほうがいいと思うよ。「たけしのはお笑いじゃない、こういうのがお笑いだ」ってやらないと意味がない。それは映画においても同じことで、誰かに憧れて映画を作るのもダメ。俺は黒澤明監督は、敵わないし、すげえなって思うし、認めているけれど、憧れてはいない。それとは違う映画を作ろうと思ってる。すべてはオリジナリティとひらめきで、それをどう具現化するかが大事なわけ。――初監督作品である’89年に公開された『その男、凶暴につき』は、スケジュールの関係で深作欣二監督が降板したことで、急遽メガホンをとったと伺っています。戸惑いはなかったんですか?北野:もともとテレビでコントの演出をやってたからね。カメラ6台を使いながら、引きで撮って、手元撮って、ここでスイッチングして…って、自分で指示を出していたわけだから。映画はカメラが1台しかなかったから、逆に楽だったよ。モニターを見てああだこうだ言うのも同じだし。これがデカいスクリーンになるのかって、それだけしか考えてなかったね。1本目を撮ったときに、助監督に、「俺、10本撮るわ」って言ったの。でもなかなか当たらなくて、4作目の『ソナチネ』でもコケて、その頃から、世間は全然俺の映画を理解しねぇんだなって思いがどんどん強くなっていって。外国ではいくつか賞を貰ってたんだけど、全然日本ではそれを発表してくれないし。そんなこんなであの時期には、交通事故まで起こしちゃうしさ。今に至っても、日本アカデミー賞から、一度だって選ばれたことないもんね。まあ映画業界なんて閉鎖的だからさ、アメリカのアカデミー賞もそういうところが問題になって、いろんな国の人を会員にするとか言ってるけど。――誘われたらどうします?北野:行かないよ、そんなもん(笑)。――じゃあノミネートされたら?北野:『アウトレイジ 最終章』で?それはもちろん行くよ、紋つき着て、下はフルチンで(笑)。とにかく、笑わせるために行きたいね。――映画より、笑い、ですか?北野:俺が映画賞が欲しかったり、偉い人になりたいって思うのは、全部人を笑わせるためだからね。だって、ただのおじさんが転んでもおもしろくないけど、偉い人が転べばそれだけでおもしろいじゃない。俺がすごく偉くなって、「たけし、食い逃げ」とか、「たけし、万引」とか、おもしろいじゃん。ラブホテルから裸で逃げてくるとかね。そういうもののために、偉くなりたいし、映画を頑張ってるの(笑)。俺はお笑いは、芸術だと思ってるからさ。『アウトレイジ 最終章』関西の〈花菱会〉と、国際的フィクサー〈張グループ〉が一触即発状態に。済州島にいた大友(ビートたけし)は、決着をつけるべく帰国する。怒号と銃声が唸るバイオレンス映画の最終章。監督、脚本、編集は北野武。共演に西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、岸部一徳ら。10/7より全国ロードショー(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会きたの・たけし1947年生まれ、東京都出身。’80年代より日本のお笑い界を牽引、俳優などでも活躍するエンターテイナー。また映画監督としては、海外でも評価が高い。※『anan』2017年10月11日号より。写真・矢吹健巳(W)(by anan編集部)
2017年10月07日ビートたけし(70)さんが、10月4日のテレビ東京系列で生放送の「おはよう、たけしですみません。」を無断で欠席しました。本来午前7:30からの同番組でいなければいけない人の不在に浅草キッドの水道橋博士(55)は『マジで色々な意味で申し訳ありません』と謝罪。また爆笑問題の太田光は『いるははずの人がいないじゃん』と不愉快な心情を吐露 しました。普段トラブルも笑いに変えることができる二人の憤りに場の雰囲気も開始直後は終始冷めきっていました。番組の右上のテロップには「たけしさんが来てません・・・起きて!」の文字も書かれ、番組内では水道橋博士がたけしさんの運転手に電話すると、「自宅にいると思います。テレビを見ていると思います。」などと淡々とした様子で返され、さらに場の雰囲気は張り詰めて いました。番組終盤にはたけしさんかと思われる人と電話が通じ、「滑舌悪くなりすぎていません?」と切り出すと、「どーも、北野武です」とモノマネ芸人と松村邦洋さんであることが発覚。なんとか生放送を終えましたが、明日以降、たけしさんがスタジオに現れるのかが心配されています。この一連の騒動にネットでは応援の声 が相次いでいます。●無断欠席のビートたけしに応援の声続々?『台本通りだね、番組みたくなった』『どこまで自由にできるか、TVへのチャレンジ』『面白い。変な時事ネタを堅苦しく一時間見させられるよりネタを挟みながら飽きないものもいい』『限定番組なんですね。ずっとやって欲しい』『なつかしい、オールナイトニッポンと何も変わらない!』『本当にたいした人だ』『来ない方が面白いのが面白い』もう70歳を迎えたたけしさん。しかしいつまでも自由におかしくやり遂げる方法に時代を超えて愛される人物 になっているようです。信頼関係があるからこその三人のやり取りに思わず視聴者も心奪われました。●ライター/ぶるーす(芸能ライター)
2017年10月04日女優の相武紗季(32)が4日、自身のツイッターとインスタグラムを更新し、第1子を出産したことを報告した。相武は「先日、第一子が誕生しました」と報告。「出産の大変さは想像をはるかに超えていましたが母子ともに元気で、支えてくださった皆様に感謝でいっぱいです」と喜びをつづった。この報告に、ファンから「紗季ちゃんおめでとう!!」「ご出産おめでとうございます」「母子共に健康で何よりです」「元気ですくすくと育ちますように」「子育て、頑張ってください!!」などと祝福やエールが続々と寄せられている。相武は昨年5月3日に一般男性と結婚。今年5月9日に、ツイッターとインスタグラムで「この度、新しい命を授かることができました」と妊娠を発表していた。
2017年10月04日「アートたけし展」が、松坂屋名古屋店にて2017年9月30日(土)から11月18日(土)まで開催される。漫才師として一時代を築き、「コマネチ!」など伝説のギャグを次々と生み出してきたお笑い芸人「ビートたけし」。今では、俳優として、『アウトレイジ』などを手掛ける映画監督としても名を馳せ、「世界のキタノ」とも呼ばれる存在だ。漫才、お笑い、コメンテーター、司会者、俳優、映画監督、作家、歌手など、枚挙に暇もない程の様々な顔をもつ彼の出発点。それは、脳内に浮かぶ様々な一枚のビジュアルだという。「映画を撮るときは、まず1枚の絵もしくは写真が頭に浮かんで、そこからストーリーを作っていく」という北野の制作秘話は有名。また、「コマネチ!」も、あのポーズ=北野武の脳内に浮かんだ1枚のビジュアルといえる。本展覧会では、北野武の最も素に近い世界=「絵画」約100点を一堂に会する。 彼自らが手を動かし、ただただ「楽しいなぁ!」と夢中になり、無心で表現した世界が繰り広げられる。また、同展は、北野の希望により展示はノンコンセプト、作品はノンタイトル。「ビート」でも「キタノ」でもない第三の“たけし”、「アートたけし」の作品の数々を堪能できることだろう。【詳細】会期:2017年9月30日(土)~11月18日(土) 50日間(会期中無休)開場時間:10:00~19:30(最終日は18:00閉館、 入館は閉館30分前まで)会場:松坂屋名古屋店南館7階 松坂屋美術館住所:愛知県名古屋市中区栄3-16-1入館料:一般 1,200円、 高・大学生 800円、 小・中学生 500円(税込)※未就学児童無料
2017年10月01日10月7日公開の映画『アウトレイジ 最終章』のジャパンプレミアが25日、都内で行われ、北野武監督、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、池内博之、金田時男、岸部一徳が出席した。北野武監督18作目となる本作は、裏社会の男たちの抗争を描いて国内外で人気を博している『アウトレイジ』シリーズのラストを飾る作品。そんな本作のジャパンプレミアに、北野監督とキャスト陣が勢揃いし、試写会前に舞台あいさつが行われた。本作が『アウトレイジ』シリーズ最後となる理由について北野監督は「長続きすれば出来たんですけど、深作欣二さんの『仁義なき戦い』シリーズになってしまう。死んだ人が出てきてしまう訳にいかないんです」と笑いを交えて説明するも、「これで一応一区切りにはなっていますが、何年か経ったら、日本の役者のオールスターでとんでもないような映画を撮ってみようと思っています」と『アウトレイジ』シリーズに続くバイオレンス映画に意欲。次回作は「小説(『アナログ』)を書いたら当たってしまったので、純愛映画をやろうと思っています」と明かしながら、「失敗すると思うので、バイオレンスの映画に戻ろうと画策しています」と話していた。その北野監督から「アドリブには困りました」と冷やかされた西田は、頚椎亜脱臼と胆のう炎摘出手術のために4カ月間入院した後に本作の収録に臨んだという。「塩見くんも脳出血で倒れ、色々と障害を抱えながらお互いリハビリをしての撮影でした。本当に2人とも初日はみんなに抱えながらの撮影で、その時は何ともいえない喜びでしたね」と塩見との撮影に感慨深げ。4年ぶりの公の場となった塩見は、時折脳出血の後遺症を感じさせながらも「北野監督とは前作に続いて仕事ができ、私にとっては最高の喜びであり、最高の時間でした。『アウトレイジ 最終章』はグッとくる映画です」と力強くアピールしていた。映画『アウトレイジ 最終章』は、10月7日より全国公開。
2017年09月26日『アウトレイジ 最終章』のジャパンプレミアが9月25日(月)、都内で行われ、北野武監督をはじめ、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、池内博之、金田時男、岸部一徳という“顔面世界遺産”総勢13名が集結した。裏社会の男たちの抗争を描いた究極のバイオレンス・エンターテインメント『アウトレイジ』シリーズの最新作。第74回ベネチア国際映画祭のクロージング作品として、最終日の9月9日(現地時間)に行われた授賞式後、ワールドプレミアされ、喝采を浴びたばかりだ。北野監督は「長続きさせようと思えばできたのですが、ここで一回締め」とシリーズ完結への思いをコメント。次回作は自身の小説を原作にした“純愛映画”を準備中だといい、「ヨーロッパ行くと『たけしはバイオレンス映画に最近興味はないのか?』って言われるんだけど、(次回作は)失敗すると思うので、またバイオレンスに戻ろうと画策している」と不敵な笑みを浮かべていた。関東「山王会」vs関西「花菱会」の巨大抗争後、裏社会のフィクサーである張会長を頼り、韓国に渡った大友(ビートたけし)は、「花菱会」幹部が引き起こしたトラブルをきっかけに、起死回生の一手を打ち、すべての因縁に決着をつけるべく日本へと舞い戻る。ついに幕を開ける「張グループ」「花菱会」「山王会」「警察」による全面戦争の結末は?新たにシリーズ参戦を飾った大森さんは、「ずっと監督のファンでしたので、夢かなって最高の時間だった」といまも興奮しきり。「第1作に加瀬亮くんが出ていて、ずっと嫉妬がありまして…。第2作のビヨンド(『アウトレイジ ビヨンド』)には桐谷健太くんと新井浩文くんが出ていて、嫉妬を通り越して、恨みつらみがあった(笑)」とふりかえった。西田さんは頸椎亜脱臼で約4か月にわたる入院生活を経て、本作の撮影に参加しており「(撮影)初日は皆に抱えられながらでしたが、北野監督に気遣いいただき、花菱会を盛り立てていただいた」と感無量の面持ち。2014年に脳出血で倒れ、昨年復帰した塩見さんは「前作に続き、北野監督と仕事できたことは私にとって最高の喜びであり、最高の時間でした。グッとくる映画です!」と力強く語っていた。『アウトレイジ 最終章』は10月7日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年09月25日裏社会の男たちの抗争を描いた究極のバイオレンス・エンターテインメント『アウトレイジ』シリーズの最新作で、北野武監督18作目となる『アウトレイジ 最終章』が、前作から5年の月日を経て来月公開される。この度公開に先駆け、シリーズをわずか“3分”でおさらいできる、公開記念<特別映像>が到着した。今回公開されたのは、お馴染みの名セリフや名シーン、名キャラクターも満載!『アウトレイジ』の世界をダイジェストでおさらいできる特別映像。シリーズを観たことがない方はお手軽に“入門”として、シリーズのファンの方は、これで改めて復習することができる。“全員悪人”を合言葉に、裏社会の男たちの仁義なき抗争を描いた究極のバイオレンス・エンターテインメント「アウトレイジ」。映像では、2010年公開の第1作『アウトレイジ』、2012年公開の第2作『アウトレイジ ビヨンド』を、ナレーションと共に超濃縮ダイジェストでふり返り!シリーズを象徴する「バカヤロー」「コノヤロー」といった怒号の応酬に加え、「貧乏くじばっかりだよ…」「野球やろうか?」など名セリフを生んだ数々の名シーンも盛り込まれ、思わず見入ってしまう映像に仕上がっている。『アウトレイジ 最終章』は10月7日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2017年09月21日沼田まほかるの同名人気ミステリー小説を、蒼井優&阿部サダヲのW主演で映画化した『彼女がその名を知らない鳥たち』。9月13日(現地時間)、現在カナダ・トロントにて開催中の第42回トロント国際映画祭にて、本作のワールド・プレミアが開催され、白石和彌監督が登壇した。アカデミー賞に向けた賞レースの始まりを告げる、北米最大規模の映画の祭典として名高い「トロント国際映画祭」。本作は、コンテンポラリー・ワールドシネマ部門(Contemporary World Cinema)という「世界的な視野と注目すべきストーリー性を持つ作品」をセレクションする部門に選出されている。本作の世界初お披露目の舞台となったワールド・プレミアには白石監督が登壇。注目の作品をいち早く観ようと集まった観客で埋めつくされた会場では、泣いている観客も多数みられた。万雷の拍手が鳴り響くなか、現地の観客から日本語で「この映画は凄い、オメデトウ」と声をかけられると、白石監督は「ありがとうございます。嬉しいです」と感無量の様子で挨拶した。Q&Aコーナーでは、多くの質問に1つ1つ丁寧に答えていた白石監督は、「個人的には特に(阿部さん演じる)陣治に感情移入をしました。陣治の愛の証明の仕方は誰にでもできるものではないし、心が張り裂けそうな気持ちになりました」とコメント。本作のテーマは「陣治の愛」かと問われると、「それもそうですし、大切なものは常に隣にある。日本の芸能スキャンダルはいま“不倫”が全盛時代を迎えていて、そのニュースが多い中で、真実の愛はフラフラっと来たいい男よりも、僕みたいなブサイクな男にあるんじゃないかと(笑)。それがひとつの大きなテーマです」とも語った。また、対する十和子役については「原作を最初に読んだときに蒼井さんが思い浮かびました。ほかの人にはオファーしておらず、蒼井優さんじゃなければ成立しなかったと思います」と告白し、「十和子の大事なシーンを撮っているときに、蒼井優さんに『どういう表情していいかわからない』と言われたんです。彼女の人生を想像したとき、『僕は凄い素敵だと思う、豊かな人生が待っているんじゃないかな』と、そう話したら、少しだけ泣きながらも、何とも言えないいい表情をしていた。素晴らしい女優です」とべた褒め。主演の蒼井さん、阿部さんの2人をそう絶賛しながらふり返る監督に、時間ギリギリまで質問が飛び交う大盛況ぶり。終了後には、会場の外で観客を出迎えた白石監督が「とても感動した!ありがとう!」とサイン攻め、握手攻めにあう光景も見られるなど、共感度0%、不快度100%の“まぎれもない愛の物語”が、トロントでセンセーションを巻き起こしていた。日本が誇る実力確かな豪華俳優陣の熱演と、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石監督が初めて挑んだ本格的な大人のラブストーリー。本映画祭の最高賞となる観客賞(People’s Choice Award)は、期間中に作品を観た一般の観客の投票によって決定するが、過去に観客賞に輝いたのは『ラ・ラ・ランド』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』など、アカデミー賞作品賞をはじめ数々の賞を総ナメにし、日本でも大ヒットを記録した作品ばかり。邦画作品では北野武監督『座頭市』(’03)が同賞を受賞しており、邦画作品として14年ぶりの受賞の快挙となるか、今後の動向にも要注目。トロント国際映画祭は9月17日(現地時間)まで開催される。『彼女がその名を知らない鳥たち』は10月28日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:彼女がその名を知らない鳥たち 2017年10月、全国にて公開(C) 2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会
2017年09月14日北野武監督の映画『アウトレイジ 最終章』(10月7日公開)が9日(日本時間10日未明)、第74回ベネチア国際映画祭を締めくくる「クロージング作品」として、世界最速で上映された。上映前後には記者会見が行われ、約150媒体ものマスコミが詰めかけた。北野監督と森昌行プロデューサーが登壇した上映前の公式会見。作品の表現について話が及ぶと、「実は拳銃と一方的な暴力を除けば、現代社会の普通の企業の構造にかなり似ていて、私が演じた大友というヤクザも、古いタイプのサラリーマンであって、今の世の中では犠牲になる、というような話に言い換えることも出来ます」と説明。さらに、「エンターテインメントとしてのバイオレンス映画として考えると、古いヤクザの抗争を描くのは面白いなと思います」と独自の解釈を交え、「『アウトレイジ ビヨンド』という2番目の映画の脚本を書いた時に、3本で絶対終わるというような脚本を同時に書いていったんです」と制作秘話も明かした。また、「ダメな監督と言われたり、体を壊したこともあり、日本のエンターテインメントでは"もう終わった人"というような記事を書かれたり噂もあったり、一番自分のキャリアの中で落ち込んでいた時代があった。でもその後、ベネチア国際映画祭で立派な賞をいただいたことで、一気にエンターテイナーとしての地位に戻ることができた」という告白も。「自分のキャリアの中では、ベネチアは絶対に欠かせない自分の芸能生活の1つのエポック、事件で、いつも感謝しています」と同映画祭への思いを伝えた。その後のレッドカーペットでは、映画祭最終日にも関わらず多くの観客が集まった。熱狂の中で迎え入れられた北野監督は、自らファンのもとに駆け寄り、写真撮影やサインに応じてベネチアの人々との交流を楽しんでいた。クロージング上映後、観客は2階席に座る北野監督に向けてスタンディングオベーション。北野監督はその歓声に応えるように立ち上がって笑顔で手を振り、立ち去った後の数分間も拍手喝采が場内に響きわたっていたという。その後の会見では、「やっぱり映画って初公開するっていうのはどこの映画祭でも緊張する」と本音を吐露し、「(監督の)ファンクラブがあって、顔見知りがいたり、そういう安心もあって、ありがたいけどプレッシャーにもなっている。自分の中では賞をもらったのがここベネチアでもあるし、この映画祭はちょっと違った意味はある」と感慨深げ。前日に約60人の海外メディア記者を相手に受けた取材を「かなりみんな好意的なのでほっとした」と振り返り、「映画祭に呼ばれるくらいの価値はあるんじゃないかなと自負している」と手応えをうかがわせていた。(C)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会(C)Kazuko Wakayama
2017年09月12日是枝裕和監督の『三度目の殺人』がコンペティション部門に出品され、北野武監督の『アウトレイジ 最終章』がクロージング上映された第74回ヴェネチア国際映画祭。このほど、メキシコが生んだ映像の魔術師ギレルモ・デル・トロ監督が放つファンタジー・ロマンス『The Shape of Water』(原題)が、最高賞にあたる金獅子賞を獲得したことがわかった。舞台は1962年、アメリカと旧ソビエトの冷戦時代。清掃員として、政府の極秘研究所に勤めるイライザ(サリー・ホーキンス)は孤独な生活を送っていた。だが、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と一緒に“極秘の実験”を見てしまったことで、彼女の生活は一変する。人間ではない不思議な生き物との、言葉を超えた愛。それを支える優しい隣人らの助けを借りてイライザと“彼”の愛はどこへ向かうのか…。本作は、『パシフィック・リム』『パンズ・ラビリンス』などの世界的ヒット作で知られる、メキシコの巨匠デル・トロ監督によるファンタジー・ロマンス。ひとりの孤独な女性と、水の中で生きる不思議な生物との超越した“愛”を描き、公式上映の際には映画祭の会場は興奮のるつぼに!イタリア現地時間9月9日、日本時間10日未明に行われた授賞式で、見事、金獅子賞の栄冠に輝いた。メキシコ人監督の金獅子賞受賞は、史上初。孤独だが、慈愛に満ちた女性イライザを演じたのは、『ブルージャスミン』『パディントン2』のサリー・ホーキンス。彼女を支える優しい隣人には『扉をたたく人』のリチャード・ジェンキンス、イライザと恋に落ちる生き物に息吹を与えるのは『パンズ・ラビリンス』でもデル・トロ監督とタッグを組んだダグ・ジョーンズ。また、冷徹な政府の調査官に『ノクターナル・アニマルズ』のマイケル・シャノン、そして、イライザの頼もしい同僚に『ドリーム』のオクタヴィア・スペンサーと本年度アカデミー賞ノミネート俳優が扮し、観る者を未知の世界にタイムスリップさせる。類まれなる美しさをたたえた映像世界で描かれた、空想をも超える純愛と覚醒に、世界が喝采を贈った本作。ファンタジー映画の新たなる金字塔として、早くもアカデミー賞ノミネート確実との声も上がっている本作に、引き続き注目していて。『The Shape of Water』(原題)は2018年、日本公開。(text:cinemacafe.net)
2017年09月11日