1979年に劇場公開されたサンリオ製作の実写人形アニメーションを新生させた映画『くるみ割り人形』が公開になる。本作の監督を務めたのは、アートディレクターの増田セバスチャン。幼少期にオリジナル版を観たという監督は“過去から未来への接続”をテーマに製作にあたったという。その他の画像本作は、人形アニメーション『くるみ割り人形』のネガフィルムを使用し、CGを全篇に加え、まったく新しい作品として3D化するもの。雪の夜に大切な“くるみ割り人形”をネズミの大群にさらわれてしまった少女クララが、ネズミを追って迷い込んだ“人形の国”で、大切なものを守るため、自らの“いのち”をかけて奮闘する姿を描いている。オリジナルの『くるみ割り人形』は、サンリオ社長の辻信太郎が脚本を手がけ、中村武雄監督と日本を代表する人形アニメーターのひとり、真賀里文子が5年の歳月をかけて作り上げたコマ撮りアニメーションだ。幼少期に出身地の松戸でオリジナル版を観たという増田監督は「作品を再解釈する際にまず考えたことは“過去から未来への接続”でした」という。「現在は日本のポップカルチャーが世界に発信されていますが、それは先人たちの偉業や礎があった上で可能なことで、その功績が脈々と受け継がれていると思うんですね。だから、まずそのことを若い人たちにも伝えたかったですし、現代の観客が僕と同じようにこの物語に影響を受けてクリエイターになってくれたら、という想いがありました」そのために監督は丁寧にフィルムを見直し、現代の観客が楽しめるようにテンポを調整しながら新たな映像と立体処理を加えていった。「旧作を見たときに、まるで舞台を見ているように感じたんです。だから3Dも迫力を追求するのではなくて、箱庭の中に首をつっこんでいるような感じにしたかった。僕の思う“カワイイ”は、自分が好きなものだけを集めて自分だけの小宇宙を作ること。だから、この映画も箱庭的な小宇宙の中でクララが旅をしているようにしたかったし、声優さんたちにも最初に『一緒に舞台を作るつもりでやってください』とお願いして、アフレコの時には一緒に演技もしてもらいました」そうして完成した2014年の『くるみ割り人形』は、コマ撮りアニメの手作り感と、増田監督にしか描けないファンタジックな世界が見事に融合した作品に仕上がった。「僕はファンタジーは“どこにでもある現実の扉”だと思うんですね。現実とファンタジーは表裏一体で、ファンタジーにくるむことで真実が見えることがある。意外だったのは、この映画を観て僕に真っ先に話しかけてくれるのは30、40代の男性なんですよ。僕がいつも使っている色は、子供の頃に見えていたはずの色を復活させているだけなんです。だから、若い女の子はもちろんなんですけど、大人の方にも映画を観てもらいたいですし、大人だからこそ見つけられるメッセージがこの映画にはあると思います」『くるみ割り人形』11月29日(土)全国ロードショー(3D/2D同時公開)
2014年11月21日「女って怖いなって」と口を開いた大島優子。直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が映画化した『紙の月』の台本を読んでの第一声だ。物語のキーパーソンとなる相川を演じた大島が、監督と作品を振り返った。その他の写真年の離れた大学生と恋に落ち、銀行の渉外係としての立場を利用して巨額の横領事件を引き起こすことになる主婦・梨花。自分が自分でなくなるような、もしくは体の奥底に眠っていた本当の自分を引きずり出す運命の恋。そんな恋愛について「まだ経験はありませんね。恋愛でそれほど左右されるタイプではないので。でもそんな恋に出会えるのなら、落ちてみたいかな」と笑う大島。本作では原作小説には登場しない、ドキリとするような言葉を屈託のない笑顔でぶつけ、梨花を無意識に誘導していく役に扮した。「原作だと銀行の中の描写はそれほど多くないんです。梨花の同級生や昔の恋人が彼女を語ることで梨花という存在を浮き彫りにしていく。一方、映画では梨花が実際に横領に手を染めていくプロセスを画にしたかったので、銀行の場面を増やしました。そのうえで、梨花の葛藤、“揺れ”みたいなものを外側から映し出す存在として、相川と、小林聡美さん演じる隅を登場させたわけです」と監督。「最初は梨花とリンクしているとは思っていなかった」という大島。「現場に入ってから、監督から相川はひょっとしたら梨花自身かもしれない、梨花の中の悪魔としてささやいて欲しいと言われまして。役作りの段階ではそのように考えていなかったので、少し焦りました(笑)。あくどくなく、無邪気、こういう子って現実にいるよなと思ってもらえるように、カラッとしたイメージで演じました」。そして作品は完成。大島が感じ取ったのは当初抱いた“怖さ”だけではなかった。「怖さと同時に美しいんですよね。毒を持てば持つほど。それが毒かどうかも分からなくなってくるし。自由を求める梨花の姿は見ていて気持ちがいいんです。でも男性の場合はどう思うのかな。興味がありますね(笑)」。『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー※取材・文・写真:望月ふみ
2014年11月14日デビュー作『カケラ』が国内外から高い評価を受けた新進監督の安藤桃子と、出演作ごとに圧倒的な存在感を放つ女優の安藤サクラ。実の姉妹であるふたりは“いつか一緒に映画を”との想いを互いに抱いていたという。その姉妹の想いがこのたび結実した。その他の写真安藤桃子監督の長編第二作にして主演に安藤サクラを迎えた『0.5ミリ』は、監督自身が書き下ろした同名小説の映画化。自身の介護経験に着想を得た物語は、当初から妹を想定して書き上げたという。「私がひとつなにか物語を創作しようとなるとき、いつも主人公はサクラなんです。実はデビュー作の『カケラ』もそう。ですから、小説の段階から“映画化したときの主人公はサクラで”と思っていました」(桃子)「そのことを姉から聞いて、小説はすぐに読みました。以前から姉は“次は一緒に映画を撮る”と決めていたので、それがついに実現できるのがうれしかったです。それにこの主人公は俳優としてもすごく憧れる主人公像。全力で“サワ”という人物を表現して、この作品で姉妹最強タッグを組みたいと強く思いました」(サクラ)安藤サクラ演じるのは、情の厚い介護ヘルパーの山岸サワ。“冥土の土産におじいちゃんと一緒に寝てもらえないか”との依頼を断りきれなかったばっかりに仕事もお金も家も失ってしまった彼女は生活のため、今度は困っている老人宅に居候する“おしかけヘルパー”となる。作品は、そんな彼女と老人たちの織り成す笑いあり涙ありの人情ドラマから、高齢化や格差といった現代日本の問題が透けて見えてくる。「姉はいろいろなところにアンテナを張っている。改めてすごい人だなと思いました」(サクラ)ただ、そういった社会風刺の効いたドラマである一方で、実に魅力的なヒロイン映画でもあるといいたい。196分の長さなど気にしないでほしい。なぜなら、おそらく山岸サワ=安藤サクラから目が離せなくなるから。今まで見たことがないチャーミングな安藤サクラがここに存在する。「私は生まれたときからサクラをずっと見てきた。彼女にはまだ隠された魅力がたくさんある。今回、その一端は引き出せたかなと思っています」(桃子)父・奥田瑛二、母・安藤和津という両親と同じようでいて重ならない、独自の道を歩み始めた安藤桃子とサクラの姉妹。今後のさらなる飛躍が期待されるふたりの互いの感性が存分に発揮された1作に注目したい。『0.5ミリ』公開中※取材・文・写真:水上賢治
2014年11月12日『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作『天才スピヴェット』が間もなく公開になる。本作は、ライフ・ラーセンの小説を映画化した作品だが、ジュネ監督は原作に深く共感し、じっくりと時間をかけて映画化したようだ。このほど原作者も登場する特別映像が公開になった。特別映像映画は、弟の死を機に家族がバラバラになってしまい「自分がいなくなればよかった」と考えている天才少年のスピヴェットが、権威ある科学賞の授賞式に出席するため、家族に内緒でアメリカを横断する様を描いている。これまで数々の奇抜な物語を描いてきたジュネ監督は本作では当初から“既存の物語”に基づいて作品を作ることを決めていたという。一方、『T・S・スピヴェット君傑作集』の著者ライフ・ラーセンは、ハリウッドの関係者に「映画化されるとしたら誰に監督してもらいたいですか?」という質問に5人の監督の名を挙げ、その中にジュネ監督の名前があったと振り返る。このほど公開された映像にはジュネ監督が小説を映画の脚本にしていく作業が丁寧に描かれ、監督とラーセンのメールのやりとりや、ふたりの対談が登場する。ふたりは生まれも年齢も異なるが、ジュネ監督はラーセンが書いた物語とスピヴェット少年の造形に圧倒的な“共感”をおぼえたようで、ラーセンもジュネ監督が作り出した映画について共感と満足感を得ているようだ。これまで“独自の作風”や“唯一無比”と称されることが多かったジュネ監督が、誰かが書いた物語を描くとどうなるのか? 公開が楽しみだ。『天才スピヴェット』11月15日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開(C)2013 Epithete Films - Tapioca Films - Filmarto - Gaumont - France 2 Cinema Jan THIJS (C) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
2014年11月11日アイドルグループのももいろクローバーZが、『踊る大捜査線』シリーズなどで知られる本広克行監督が手がける映画・舞台『幕が上がる』で主演を務めることが5日、明らかになった。映画は2015年2月28日から公開され、舞台は同年5月公演を予定している。原作は、劇作家・平田オリザによる同名青春小説。弱小演劇部の少女たちが全国大会を目指し、本当の喜びと悲しみ、そして大切なことに気づいていく姿を描いている。主演には、本広監督と平田氏の「今、もっとも輝いている少女たちに演じてもらいたい」という考えが一致し、ももクロを抜てき。映画版の撮影は今年8月22日から静岡県富士宮市などで行われ、10月8日にクランクアップ。舞台版は映画版と同じく本広監督が演出を手がける。物語の舞台は、ある地方都市の県立冨士ケ丘高等学校。演劇部で作・演出を担当している高橋さおり(百田夏菜子)は演劇部として最後の1年を迎えるにあたり、看板女優で姫キャラの"ユッコ"こと橋爪裕子、部内のムードメーカー的存在の"がるる"こと西条美紀(高城れに)らと共に年に1度の大会に挑む。地区大会突破を目指していたが、東京の大学で舞台経験のある新任教師・吉岡美佐子(黒木華)の「何だ、小っちゃいな、目標。行こうよ、全国」の一言で少女たちの意識が変わり、男子よりも勉強よりも大切な日々が幕を開ける。演劇部のメンバーとして、ももクロの有安杏果は県内演劇部強豪校からの転校生・中西悦子、佐々木彩夏はさおりを慕う1年後輩の部員・加藤明美を演じるほか、演劇部顧問・溝口先生役にムロツヨシ、さおりの母役に清水ミチコ、国語教師の滝田先生役に志賀廣太郎といった俳優陣が脇を固める。「映画版は、脚本が完成し、キャスティングが決定した時には完成予想が見えていました」と語る本広監督。「このテンションを持続させながら、映画が完成したらすぐに舞台版の作業に一気に向かっていきたいです」と舞台への意気込みも語り、「自分が企画して監督した映画の集大成になることは間違いないと確信しています」と自信をのぞかせている。撮影前の7月から8月にかけて、平田氏による演劇のワークショップを実施。平田氏は「正直言って、ももクロさんが主演と決まったときには、期待と不安と半々でした」という思いがあったため、ワークショップを通じてももクロメンバーの演技力を向上させることと、作品のメインテーマである「演劇」について学んでもらう狙いがあった。最初は個々の癖も目立っていたが、見る見るうちに上達。平田氏も「おそらく、この作品を観た多くの観客の皆さんは、ももクロメンバーの"演技力"に驚くことでしょう。彼女たちは、このひと夏で、役者として驚異的な成長を遂げました」と太鼓判を押している。一方、百田はそのワークショップを「台本をもってここのセリフをこうしろじゃない。お芝居とはなんなのか、そこから教えてくれました! お芝居はこうでなくちゃダメとかない。アイドルがこうでなくちゃってのもない。その時、ジャンルを通り越してなにか新しいものが作れる気がしました!」と思い返す。撮影には「ただただ必死(笑)!」で挑み、モニターで演技を確認する機会は1度もなかったが、「自分の心でよし! と思ったときと、監督のOK! が重なる事が多くて、なんだか通じあってる気がしてうれしかったです!」と手応えも。「まだ途中の段階でもスタッフさんたちは映像を見るために集まるたびに興奮して帰ってきます(笑)! みんなニヤニヤしてて全然教えてくれません」とスタッフの反応を伝え、「大人ばっかりずるいよね~! なんてメンバーで話ながら、私たちも出来上がりをとっても楽しみにしてます! みなさんも楽しみにしててください!」と呼びかけている。(C)2015「幕が上がる」製作委員会
2014年11月05日作・演出家としての活動を舞台からスタートし、自身の劇団“ゴジゲン”の休止以降は、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『スイートプールサイド』など映画監督としての活躍が目立つ松居大悟。来年1月には橋本愛・蒼波純主演の映画『ワンダフルワールドエンド』も公開され、映像分野で順調な中、ゴジゲンを3年ぶりに復活させる。松居にその心境を、また橋本愛同席のもと、映画『ワンダフル~』についても聞いた。ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』チケット情報ゴジゲンの活動休止は、松居自身が「演劇(舞台)からちょっと距離を置きたいと思った」のと、劇団員の帰郷が主な理由。「その劇団員の目次(立樹)は島根で農家をやっているんですけど、眠れないと夜な夜な岩松了さんの戯曲を読んでるって聞いて。『それって超、演劇やりたいんじゃん!』と思って誘ってみたら、『やるか!』ってなったので、翌日に速攻劇場を押さえました」(松居)。タイトル『ごきげんさマイポレンド』の“マイポレンド”は、松居の照れが加わった“マイフレンド”のことらしい。彼らの実情が見える感動作かと思いきや、「面白いものにはしたくない」と挑発的な言葉が飛び出す。「面白くするって、何か理屈めいたものを作ることのような気がして。自分の頭の中でどんなに面白くてもそれを長期間、役者にやらせることの意味のなさというか。だから今、稽古場で役者に『生きてればいいんだよ!』って言ってポカンとされてるんですけど(笑)」(松居)。一方の映画『ワンダフルワールドエンド』は、注目のシンガーソングライター大森靖子の2曲のPVをもとに、追加撮影されたエピソードを加えて1本の劇映画にしたもの。橋本は、大森のインディーズ時代からのファンで、ライブにもよく足を運ぶそう。「大森さんのライブは決められたものをやる“発表会”じゃなくて、毎回『次は何をやってくれるんだろう』って気持ちになれるのが面白いです」(橋本)。「僕はあの歌詞が好きで。この映画の脚本も、曲を聴いて思いついた話をまず作ってみて、大森さんとやり取りしながら作っていきました。その過程でどんどんワケわかんないものに(笑)」(松居)。「何回読んでも全然わかんなかったので、『もういいや、わかんないままいこう』って(笑)。性格さえつかめていればいいから素直に入っていこうと思ってやりました」(橋本)。「もともと筋を通してくれる人だと思っていたけど、編集中に『マジで橋本愛に救われてるな』って何度も思いました(笑)」(松居)。橋本も「もちろん観に行きます!」と言うゴジゲン『ごきげんさ~』の休演日(11/17)には、『ワンダフル~』の上映イベントも開催。いわゆる男子の“こじらせ”が優しく昇華する松居ワールドは健在か否か?映像での活躍を経ての変化を確かめたい。演劇公演 ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』は、11月13日(木)~23日(日)まで下北沢 駅前劇場にて。また11月17日(月)同劇場にて映画『ワンダフルワールドエンド』先行上映会も実施。チケットはいずれも発売中。取材・文武田吏都
2014年10月30日『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督が新作『天才スピヴェット』を携え、開催中の第27回東京国際映画祭のために来日し、主演のカイル・キャトレットくん(10歳)と共に舞台あいさつに臨んだ。イベントにはゲストとして鈴木福くんも来場した。その他の写真芸術性の高い映像で支持を集めるジュネ監督が3Dに挑戦した本作。生まれながらの天才でありながら、家族にもなかなか理解されずに孤独を抱えた少年が、ある発明による科学賞の授賞式に出席するための旅路の中で、様々な出会いを通じて成長していく姿を描く。日本でも人気のジュネ作品をひと足早く観られるとあって会場は満席。ジュネ監督は「私のファンが日本にも“いくらか”いらっしゃるというのは知ってます。私はモンマルトルのカフェの近くに住んでいて、そのカフェに『アメリ』のポスターがあるんですが、日本人の女の子が来て写真を撮ろうとして『ちょっとどいてもらえますか?』とよく言われるので(笑)」とユーモアたっぷりに語る。今回、3Dで作品を製作したことについて「子供の頃、のぞくと映像が3Dになるオモチャを持ってて、それが大好きだったんです。今回の脚本を読むと3Dで撮るにピッタリの作品でした」と語った。そのジュネ監督から「絶対に現場で『疲れた』と言わず、アクションも全て自分でこなしたスター!」と紹介されたカイルくんは「コンニチハ、カイル・キャトレットです」と日本語であいさつし、さらに劇中のスピヴェットさながらに6カ国語で自己紹介を行ない天才の片鱗を見せつけた。福くんは「スピヴェットを意識した」というタキシード姿で登場。カイルくんの演技について「(演技は)初めてと聞いたんですが、たくさん出ているように見えるくらい素晴らしい演技だったし、アクションもかっこよかったです!」と絶賛する。カイルくんは10歳以下の武道選手権で3年連続優勝経験を持つが、この日はその腕前を披露!三節棍(※3本の棒が鎖などでつなげられた武器)と剣、そしてヌンチャクを使い分け、巧みな演舞を見せて会場をわかせた。一方の福くんは、最近、学校で流行っているというけん玉の腕前を見せたが、大勢の観客を前に「緊張して足が震えてます…」と苦笑い。大技にチャレンジするも惜しいところで失敗してしまったが、ジュネ監督はふたりの天才子役を称賛し「次はけん玉の少年とヌンチャクを使う少年のシナリオを書きます!」と語っていた。『天才スピヴェット』11月15日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
2014年10月27日ポール・グリーングラスが、『The Tunnels』を監督することになった。原作は、グレッグ・ミッチェルの著書。その他の情報『The Tunnels』は、1989年のベルリンの壁崩壊直前、西ベルリンに住む数人のドイツ人たちが、自分たちにとって大切な東側の人々を西側に逃げさせようとする物語。その過程で彼らは、アメリカのテレビ報道局の手助けを借りることになる。実話だが、これまで知られてこなかったヒューマンストーリーらしい。グリーングラスの最新作は、昨年の『キャプテン・フィリップス』。監督デビュー作『Bloody Sunday(原題)』をはじめ、『ユナイテッド93』『グリーン・ゾーン』など、政治色のある実話をスリル満点に映画化してきたグリーングラス監督は、この企画に適役と言えそうだ。文:猿渡由紀
2014年10月27日ジェームズ・ワン監督が、ホラー映画『死霊館』の続編でも監督を務めることに決まった。その他の情報ジェームズ・ワンが監督したオリジナルは、昨年、2000万ドルの予算で製作され、全世界で3億2000万ドルを売り上げる大ヒットとなった。ワン監督は、現在北米公開中のスピンオフ『Annabelle(原題)』でもプロデューサーを務めている。『死霊館2』は来年夏に撮影の予定で、北米公開は2016年。『ソウ』シリーズ、『インシディアス』など、ホラーのジャンルでヒットを生み出し続けているワン監督だが、次回公開作は『ワイルドスピード』の7作目。同作品は、今年夏公開予定だったが、昨年11月のポール・ウォーカーの事故死を受けて、来年4月公開に延期された。文:猿渡由紀
2014年10月23日日本を代表する鬼才漫画家・楳図かずおが27日に東京・新宿ピカデリーで行われた初監督作『マザー』の初日舞台あいさつに登壇した。映画は亡き母親をモチーフにした自伝的ホラーで「僕にとっては『14歳』から地続きになった、19年ぶりの新作。よくできた映画になった」と手応え十分だった。『マザー』初日舞台挨拶その他の写真本作は、鬼才漫画家・楳図と、彼の自叙伝を担当する女性編集者が、死んだはずの楳図の母の怨念が引き起こす怪奇現象に襲われるというホラー。楳図自身が脚本も手掛け、独特な作風に強い影響を与えたとされる実母との思い出を掘り下げた。舞台あいさつには楳図“監督”をはじめ、主人公である楳図を演じる歌舞伎役者の片岡愛之助、編集者を演じる元宝塚歌劇団雪組の舞羽美海、楳図の母親役を務めた真行寺君枝が出席した。初のホラー作品に挑んだ愛之助は「現場ではずっと笑いっぱなしで、まったくホラー感がなかった。『まことちゃん』世代なので、出演できて本当に嬉しい」と感激しきり。「歌舞伎と楳図先生の世界は、美の集大成という点で共通している。『グワシ!』は歌舞伎の見得と同じですし」と持論を展開し、「実は監督が、この映画でやり残したことがあると聞いている。ぜひ『マザー2』でそれが実現できたら」と続編に意欲を示した。宝塚退団後、初のヒロイン役に挑んだ舞羽は「映像作品は初心者。でも、監督がこと細かに描いてくださった絵コンテが演技の参考になった」。15年ぶりの映画出演を果たした真行寺は「若い頃に読んだ『へび少女』がトラウマになっている。今回は楳図先生へのリベンジのつもりで演技に臨んだ」と話していた。『マザー』公開中取材・文・写真:内田 涼
2014年09月27日新作映画『白ゆき姫殺人事件』の公開を控える中村義洋監督が3月21日、アップルストア銀座にて行われたトークセッションに出席。本作についてはもちろん、自身のキャリアやキャスティングの妙などについても語った。トークセッションの模様映画は、過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える“闇”に焦点を当てた湊かなえの同名小説を基にしたサスペンス。同僚の美人社員・三木典子を殺害した容疑で“疑惑の人”となった主人公・城野美姫(井上真央)を中心に、噂が噂を呼び、多くの関係者が翻ろうされる姿が描かれる。監督は本作の仕上がりに自信を持っているようで「ここ数年の“元気を与える”といった優しい言葉は置いといて、とにかくおもしろいものを作ろうと思った」と力強く語る。井上真央、綾野剛、菜々緒など旬のキャストが顔を揃えるが「みんな、これまでこういう役をやってないというおもしろさがあった」と監督自身も意外性を楽しんだよう。特に映画初出演の菜々緒については「オーディションなのに、いきなり『この役をやらせてもらうわけですけど』という感じで(笑)、据わってましたね、度胸が」と感嘆する。ちなみに中村監督自身、映画作りにおいて「名匠の方々も言ってますが『演出の8割はキャスティング!』と思ってるし、そこに時間をかけている」と明かす。堺雅人に鈴木福など、中村作品への複数の出演を経てからブレイクする例も数多く、この点については自身の“慧眼”に複雑な思いも?「堺雅人も『ジャージの二人』の時はまだまだで、プロデューサーから『もうちょっと名のある人に…』と言われたんですが公開の頃にNHK大河ドラマ『篤姫』の家定役が話題を呼んだ。被害妄想じゃないけど、『半沢直樹』なんて、堺雅人、香川照之、滝藤賢一も出てて『ゴールデンスランバー』でしょ(苦笑)!起用が早すぎるんです。損してる」と語り笑いを誘った。いまでこそ売れっ子監督として引っ張りだこだが、下積みと言える時代も長く、監督ではなく脚本家として過ごした時期も。「自分が監督するつもりで脚本を書くと『監督は誰にしましょうか?』という話になり、傷ついた(笑)。でも脚本生活が楽しくなって、それを極めようと思ったら、仕事がなくなったり、人生は望んだ通りにならないと学んだ」と語る。「小説の映像化の名人」と称される点についても言及。特に称賛を浴び、注目を集めるきっかけとなった出世作『アヒルと鴨のコインロッカー』について「原作を読んで、これに全てを捧げようと思った」と強い思いを語り、あくまで原作の素晴らしさがあってこその映画化の成功であると持論を口にした。『白ゆき姫殺人事件』3月29日(土)全国ロードショー
2014年03月22日松本人志の監督作第4弾『R100』が5日、全国で封切られ、東京・新宿バルト9で初日舞台あいさつが行われた。上映後の観客を前に、松本監督は「一人くらいこんなメチャクチャな監督がいてもいいのかなと思う」と独自の映画スタイルに自信を示し、「最後の最後は、常にビックリさせたいという気持ちがある。ドMがものすごいSと関わるとどうなるか……。海外でも上映中は受けに受けたが、最後のシーンでは皆ポカーンとなっていた」と結末への強いこだわりを語っていた。その他の写真舞台あいさつには松本監督をはじめ、大森南朋、大地真央、寺島しのぶ、佐藤江梨子、渡辺直美、渡部篤郎が登壇。映画は開けてはいけない扉を開き“謎のクラブ”へと入会してしまったドMな主人公・片山(大森)が、時と場所を選ばず派遣される個性豊かな“女王様”(大地、寺島、佐藤、渡辺ら)に翻弄される姿を描く。松本監督がプロの俳優を多数起用し、映画製作するのは初めてで「芸人だったらコントになってしまうシーンも、役者さんだと絶妙なバランスが生まれる。この経験は勉強になった」という。豪華な女優陣に関しては「ここにいる女王様とは、誰とも恋に落ちることがなく(笑)。ややこしい関係にならず良かった。撮影後、鞭が2つ足りないことが分かって、もしかして誰か目覚めちゃったんでしょうか!?」と笑いを誘っていた。主演を務める大森は「映画を観終わった皆さんが、僕をどんな目で見ているか気になりますが……(笑)。監督からお仕事いただき、嬉しかったですね。刺激的な時間を過ごすことができた」とドMな主人公という難役にも手応えは十分。「私にとっても挑戦だった」(大地)、「楽しい時間でした」(寺島)、「すごく知的な映画」(渡部)とキャスト陣も独特な“松本ワールド”に魅了されていた。現在開催中の第18回釜山国際映画祭「アジア映画の窓」部門への出品も決まっており、渡辺が劇中と同じボンデージ衣装で現地入りする予定。2014年の全米公開も決定している。『R100』公開中取材・文・写真:内田 涼
2013年10月05日山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキーが出演する映画『凶悪』が9月21日(土)から公開される前に本作を手がけた白石和彌監督がインタビューに応じた。その他の画像本作は、新潮45編集部編のノンフィクション『凶悪-ある死刑囚の告発-』を、白石監督が映画化したもの。“明潮24”編集部が死刑囚の告発をもとに取材を続け、ペンの力で警察を動かして凶悪な殺人事件の首謀者を逮捕するまでを描いたドラマだ。山田が事件の首謀者を追うジャーナリスト・藤井を、瀧が死刑囚・須藤を、そしてリリーが事件の首謀者である木村を演じる。実在の事件を映画化することは難しい。なぜなら映画作りの過程では、ショッキングな事実、痛ましい事実が映画的には“見せ場”になる可能性があるからだ。白石監督は「事件を“面白がることの是非”については悩みました」と振り返る。「事件を面白がることには違和感を感じていて、初めのうちは、事件を面白がって報道するマスコミに対して『そんなんでいいのか?』と問題提起するつもりもありました。でも、作業を進めていく中で、『自分も面白がっちゃっているな、同じことしてるな』と感じてしまった」その結果、本作の主人公・藤井は“事件の真相”を追い求めながら、同時に妻から“事件を面白がっているのでは?”と追いつめられる。正義のために、真実のために取材を始めた藤井は、いつしか事件に魅了されていく。そこで、本作はあえて“回想”という形式を捨て、過去と現在をシームレスに往復させながら次第に事件にのめり込んで行く藤井の脳内をそのまま映像化した。「回想をやっていくと“過去に何があったか?”が映画のテーマになってしまう。そうじゃなくて“これからどうなっていくのか?”を見せなければいけない。だから回想ではなく、“藤井が取材して、頭の中でまとめていき、紡いでいった映像”として描きました。藤井の紡いでいった映像で事件を描けば、“面白がる是非”がより浮き彫りになっていくだろうな、とも思いました」ひとりの死刑囚の告白から始まるこの物語は、ひとりの記者を魅了し、いつしか観客をも虜にしていく。極めて凶悪な事件が起こるのはなぜか? そんな事件を人が覗き見たいと思うのはなぜか?「前作で釜山国際映画祭のコンペに参加して、出品されていた作品をほぼ全部見てきたんです。みんな新人だけど、自分と自分の周りと政治に対して切実なんですよ。社会に向き合ってない映画が海外ではむしろない。このままいくと、日本では社会と切り離された映画が増えていくんでしょうね。普通に物語、キャラクターを掘り下げていけば、自然と社会との関係を入れざるを得ない。昔は日本にもそういう社会と密接な映画がたくさんあったのに。僕はそういう映画をつくっていきたいと思っています。“絶滅危惧種”のあがきとして」。『凶悪』9月21日(土) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2013年09月20日『悪の教典』、『藁の楯 わらのたて』の三池崇史監督が、『ダークナイト・ライジング』で悪役・ベインを好演したトム・ハーディーが主演を務める、戦後日本を舞台にした映画『The Outsider』(原題)で初めてアメリカ作品のメガホンを取ることが明らかになった。米エンタメ情報サイト「deadline.com」が報じたもので、同作の主人公は、第2次世界大戦中に日本の捕虜となったアメリカ人兵士(トム・ハーディ)。戦後も日本に残ることになった彼が、ヤクザとしての生き方を学び、日本の裏社会をのし上がっていくさまを描いた作品だ。三池監督は1999年、Vシネマの監督としてデビュー。近年では幅広いジャンルの劇場公開用作品を多く手がけており、2007年には『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』がベネチア国際映画祭「コンペティション」部門に出品されたほか、2010年には『十三人の刺客』がトロント国際映画祭に出品、2011年には市川海老蔵主演の映画『一命』が、今年は映画『藁の楯 わらのたて』がそれぞれカンヌ国際映画祭「コンペティション」部門に出品されている。映画制作スタイルは、鮮烈なバイオレンス描写を伴うため、しばしば論争を巻き起こすものの、海外での評価は高く、その手腕を買われ今回アメリカ映画での監督に抜擢されたようだ。プロデューサーには映画『マトリックス』シリーズのジョエル・シルヴァー、『アンノウン』のアンドリュー・ローナとスティーヴ・リチャーズのコンビが務める。脚本は新人アンドリュー・ボールドウィンが手がけたものだが、もともとは『ランナウェイズ』、『ロード・オブ・ドッグタウン』などのアート・リンソンとジョン・リンソンの親子がオリジナルのアイディアとして提案していたものなんだとか。深作欣二監督の『仁義なき戦い』など、海外にもファンの多い日本の“Yakuza Movie”が本格的にハリウッドで、それも三池監督の手によって製作されるようになるとは映画ファンにとっては感慨深い作品となりそう。さらに、本作の舞台は日本になっているため、日本人俳優の出演も多くなると予想されており、そのキャスティングにも今後大きな注目の映画になりそうだ。(text:Mieko Nakaarai)■関連作品:藁の楯 わらのたて 2013年4月26日より新宿ピカデリーほか全国にて公開(C) 木内一裕/講談社 (C) 2013映画「藁の楯」製作委員会
2013年06月07日“若手女性監督たちに上映の場を”との声から始まった女性監督たちの製作・上映グループ“桃まつり”。参加監督が企画から製作、宣伝、公開までを手掛けてたどり着く彼女たちの上映会は、回を重ねるごとに反響を呼び、現在では女性映像作家たちが才能を開花させる場となっている。今回も百花繚乱、個性豊かな女性監督の作品が揃った。その他の写真今年のテーマは“なみだ”。『へんげ』の主演女優としての熱演が記憶に新しい森田亜紀が『先生を流産させる会』の宮田亜紀を迎えて作り上げた初監督作『雨の日はしおりちゃん家』や、女吸血鬼が成人童貞の純血を求める加藤麻矢監督の異色のヴァンパイア・ムービー『貧血』など、今回は例年以上に多様なラインナップだ。中でも注目したいのは昨年のぴあフィルムフェスティバルで『水槽』が入選した新鋭、加藤綾佳監督の『サヨナラ人魚』。年上の男性と密会を重ねる女の子を主人公にした作品は、不安定な女性の胸中を生々しく描き切る。そこから垣間見えるリアルな女性心理は、特に男性はドキリとさせられるに違いない。また、そこからは女性ならではの感性が立ち昇る。「女性の生々しい感情が出るのは恋愛だと考えている。そこを追究していきたい気持ちはある」と加藤監督は語る。一方、仙台短編映画祭プロジェクト作品『明日』で、その一編である『ちょうちょ』を発表した新進映像作家、朴美和監督の『いたいのいたいのとんでいけ』は、両親の仲を元に戻そうとする少女の心に寄り添ったドラマで心が揺さぶられる1作。どこかノスタルジックなタイトルと重なるように温かさと哀しみが全体に漂う作品は、言うなれば表には現れない裏に隠れた真意を鋭く射抜き、ひとりの孤独な少女を襲うさまざまな傷、心の中から溢れ出る悲痛な叫びを見事に映し出している。「絵空事ではない自分の身に寄せて考えられる作品をこれからも創っていきたい」と朴監督は力強く語っている。ほかにも、8ミリフィルム素材をもとにした実験的映像表現が新鮮な印象を残す小口容子監督の『愛のイバラ』、渡辺あい監督による現世とあの世の想いが交差する人間ドラマ『MAGMA』、日常から垣間見える人の生と死を見つめた糠塚まりや監督の『葬式の朝』、かかしとゾンビの恋を描いた岡田まり監督の異色作『東京ハロウィンナイト』など、多士済々。次なるステージを目指す才女たちがそれぞれの感性を爆発させる作品の数々に触れてほしい。『桃まつりpresents なみだ』公開中取材・文・写真:水上賢治
2013年05月13日6月公開の『華麗なるギャツビー』に主演したレオナルド・ディカプリオは、同映画を手がけたバズ・ラーマン監督によって、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の映画化作品に出演してほしいと熱望されているようだ。シェイクスピア原作の『ロミオ+ジュリエット』(’99)でレオナルドと初タッグを組んだラーマン監督は、またシェイクスピアの戯曲の映画化作品で彼と一緒に組みたいと熱望している。ラーマン監督は、5月1日(現地時間)にニューヨークで行われた同映画のプレミアで、「The Hollywood Reporter」誌の取材に答え、レオナルドとの再コラボの可能性について聞かれると、「『ハムレット』をやりたい。僕にとってギャツビーはアメリカのハムレットなんだ。次に撮る作品として、これしかないと思うんだよ」と語っている。レオナルドは5月8日に放送された朝の情報番組「Good Morning America」に出演し、「最初は僕は出演に躊躇していたんだ。『華麗なるギャツビー』は、読者が登場人物について、様々な解釈を持っているパワフルな小説だから。でもラーマン監督に“ノー”と言うのはほぼ不可能なんだよ」と語り、当初は出演に気が乗らなかったが、最終的に監督に説得されたというエピソードを明らかにした。『ハムレット』は、1900年からこれまでの間、映画化、テレビドラマ化されているが、第二次世界大戦後は7回しか映像化されていない。主演にはローレンス・オリヴィエ、リチャード・バートン、イアン・マッケラン、メル・ギブソン、イーサン・ホークら多彩な顔ぶれの俳優がハムレットに挑戦している。(C) Getty Images(text:Mieko Nakaarai)
2013年05月10日ティム・バートン監督の3Dアニメーション『フランケンウィニー』が15日(土)から日本公開される。1984年に製作された短編映画をなぜバートン監督は改めて“語りなおす”ことにしたのだろうか? 来日したタイミングで話を聞いた。その他の写真本作は、科学の大好きなヴィクター少年が、事故に遭った相棒の犬スパーキーを、授業で習った“電気の実験”を応用して甦らせることから始まる大騒動を描いた作品で、基になったのは監督がシェリー・デュヴァルらを起用して1984年に製作した短編映画だ。「短編を作った頃はアニメーターをしていたから、実写で短編をつくる機会を与えられてよろこんだけど、今回は前よりも“純粋”な気持ちで作品に向き合うことを心がけたよ」。そこでバートン監督は本作を実写ではなく、人形をひとコマずつ動かして撮影するストップモーション・アニメで描くことを選んだ。CG全盛の現在では少しずつ職人たちも減りつつある手法だが、バートン監督は以前から「この題材は実写よりもストップモーション・アニメに適していると考えていた」という。「私としてはすべての芸術形態が残ってくれればいいと思っているんだ。CGアニメも素晴らしいけど、手描きアニメもストップモーション・アニメも残ってほしい。数年前にディズニーは手描きアニメをやめると宣言したけど、その後に宣言を撤回してできた映画(『プリンセスと魔法のキス』)は本当に美しい映画だったしね」。さらに監督はこれをすべて“モノクロ”で描くことを選択した。それも単にカラー映像から“色を抜いた”モノクロではなく、モノクロ映画のライティングや画面の質感を追求した“真のモノクロ映像”だ。「撮影前に撮影監督としっかり話し合ったから、モノクロ映画のもつ影の使い方や“深み”が出せたと思う。この映画でモノクロを採用したのは、白黒で描くことで美しさやリアリティが増すと思ったからだよ」。ちなみに本作は短編から出発しているが、決して“リメイク”ではない。30年弱の時を経て監督も成長し、私生活では子を持つ親にもなった。そのことが本作に大きな影響を与えているようだ。「この映画は短編とは異なるものだと思ってもらっていい。確かに私は子どもの頃、周囲から少し変な目で観られて孤独を感じたし、その頃の感情を映画に盛り込んではいる。でも、この映画を作ったのはより“ピュア”に物語を語りたいと思ったからだ。それに、僕の親はヴィクターの両親のように僕を育てなかった。でも僕は親として自分の子どもを支援したいと思っている。だからこの映画は子どもたちにとっては特別なメッセージになっていると思うよ」。バートン監督がリメイクでも、リ・イマジネーションでもなく、キャリアの中で最も愛着のある物語を“語り直し”た『フランケンウィニー』。そこには、バートン監督の魅力の“根源”と“現在”がつまっているのではないだろうか。『フランケンウィニー』12月15日(土)全国公開
2012年12月14日山田孝之が主演する映画『ミロクローゼ』が現在、公開されている。本作を手がけたのは『狂わせたいの』『カラー・オブ・ライフ』など独自の世界観と映像美学で新作を発表し続ける石橋義正監督。満を持して発表された本作も、唯一無比のポップ・アート作品に仕上がった。その他の写真本作には3人の主人公が登場する。ひとりは“偉大なミロクローゼ”に恋をしてしまった平凡な男オブレネリプレネリギャー、もうひとりがヘナチョコ男どもの恋の悩みを一刀両断していく青春相談員・熊谷ベッソン、そして愛する女性ユリの行方を追って旅をする片目の浪人・タモン。映画は山田がひとりで三役を演じる。「今回はガラにもなくラブストーリーなんですよ」と笑う石橋監督は「実は20代前半に作品を作り始めた頃は純粋なラブストーリーも作っていたので、原点に帰った部分もあるんです。最近の若い人の傾向を見ていると“積極的に恋をしていない”ことがもどかしいしもったいない。みんなが恋をして、それがすべての始まりにつながればと思う」という。そのために石橋監督は様々な人物の恋模様を描く脚本を執筆していたが、ある時に「ひとりの俳優が複数の役を演じることで、1本の映画を見終わったときにひとりの人間像を思い浮かべるようになれば」というアイデアを思いつく。しかし、まったくタイプの違う役を完璧に演じられる若い俳優はそう多くない。そこで白羽の矢がたったのが山田孝之だ。「人からとてもいい俳優さんだと聞きまして『クローズZERO』を観たんです。そしたらひと目で好きになってしまいました。山田さんは役者さんとして表に立つというより“作品を作る”という考え方のある人。作品のために全力を尽くしてくれるので、こちらも安心してできました」。映画はアクション、ダンス、不条理劇、アニメーションなど様々な要素を交差させながら、様々な愛の物語が綴られていく。そのインパクトは絶大ながら展開は予測不可能。エンドロールが終わる瞬間まで気が抜けない作品だ。「起承転結あってうまく台本が書かれたものも面白いんですけど『ああ、面白い台本だったな』としか思えない。最近の日本のエンターテイメント映画はテレビ見てるのとあまり変わらないので、どこかで新しいものをつくっていこうという動きがないと文化は続かない気がします」。先の展開が予想できない、しかし予想外にストレートな恋愛ドラマが描かれる映画『ミロクローゼ』。石橋監督が「映画である以上、映画でしかできないことをやった」と語る映像世界をスクリーンで堪能してほしい。『ミロクローゼ』公開中
2012年11月29日独特のセンスあふれる笑いで高い人気を誇る芸人・バカリズム。そんな彼が“ほぼ”監督・脚本・主演を務めた映画『バカリズム THE MOVIE』。これまでまともに鑑賞した映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』くらいという彼が、どのようにして“ほぼ”監督を務めたのか?この夏の劇場公開に続くDVD発売を機に話を聞いた。その他の画像バラエティ番組の企画としてスタートした本作。番組では映画のメイキングの過程(と言いつつほとんど映画に関係ない小道具のカチンコ作りやライオンが吠えるオープニングロゴの製作に費やされている)を追いかけており、その後5本の短編からなるオムニバス映画が製作された。だが映画について話を聞こうにも「映画を撮っているという感覚は全くと言っていいほどなかったです。台本作りも撮影も普段のコントを作っているときとほとんど同じだった」と語るように彼自身に“映画ならでは”の昂揚感や“待望の監督”といった感慨は全くなかったようだ。現場でメガホンを手にすることも監督用のイスに座ることもなく「信頼するスタッフさんにお任せしていました。だから“ほぼ”なんです」と笑う。「日本映画学校卒業」という経歴からも映画を志していたと思われがちだが、これも答えはNO。「筆記試験がなくて共学だったから(笑)。でも願書を出す段階では芸人になりたいという気持ちは芽生えてました。ウンナンさんもここの出身で、すごく好きな芸人さんだったので。入っても周りにはお笑いを目指してる人なんて全然いなくて、そんな中で漫才の発表会があって、そこで上位になると事務所に入れるんですよ。オーディション受けたり養成所に通うよりもライバルが少ない中で目立った方がいいなと思って」とあっけらかんと明かす。現在のバラエティでの活躍ぶりについてはもはや説明不要だろう。一方で俳優としての需要も急上昇中。先日放送された『世にも奇妙な物語』の一篇『来世不動産』には原作と脚本、出演の三役で参加。自身がこれまでに強くインスパイアされた存在として「藤子F不二雄先生の大人向けのSF短編」を挙げるが、まさにその影響を感じさせる奇妙な世界観を作り上げた。今回の映画のようなコメディだけでなく、こうしたドラマの監督をするつもりは?そう尋ねると「どうでしょう?『来世不動産』も自分の中ではコントなんです。物語となるとメッセージを伝えなきゃいけないと思うけど、自分の中では『笑わせたい』という気持ちしかないんです。ただ『バカリズム THE MOVIE』はこれからも毎年やっていきたいです」と笑顔を見せた。『バカリズム THE MOVIE』発売中6720円(DVD2枚組+CD1枚)発売・販売元:アニプレックス(C)2012「バカリズム THE MOVIE」製作委員会取材・文・撮影:黒豆直樹
2012年11月27日映画館のない中目黒に生まれた無料の移動式映画館「中目黒シネマズ」。2013年1月からの本格始動に向け、11月24日(土)にプレイベントとしてウディ・アレン監督の傑作『アニー・ホール』(’78)が上映された。上映後には映画文筆家の松崎健夫と映画解説者・中井圭による作品解説トークショーが行われ、熱い“ウディ・アレン”論を繰り広げた。中目黒の街全体を映画館として、月に1度、無料で誰でも映画を鑑賞できるスペースを提供する映画プロジェクト「中目黒シネマズ」。今後は、同じく中目黒で定期開催される、食と体験のプロジェクト「中目黒マルシェ」と連動していく構想もあるという。壁一面を覆う巨大スクリーン、そして通常の映画館の客席とは違い、アンティークなソファや椅子、また前方にはラグを敷いた床に座て鑑賞するゆったりとしたスタイル。今回の本映画祭で上映されたのは、名作中の名作『アニー・ホール』。中井さんは「『中目黒シネマズ』プレ開催第一回目の作品選定に大変悩みましたが、『アニー・ホール』が一番ふさわしく、みなさんに面白いと思っていただけて本当に良かった」と安堵の表情。一方の松崎さんは「当時、『アニー・ホール』は斬新だと言われていました。ネクタイやパンツなど、アニーが着ている男っぽい服など、ちょうどウーマンリブが活発になり始めた頃ですね。ファッションの面でも『アニー・ホール』は影響を与えていたんです」とウディ・アレン作品の時代を掴むアンテナの鋭さに改めて賞賛を送る。さらに「『アニー・ホール』では、イングマール・ベルイマン監督の『野いちご』(’62)にオマージュを捧げているんですね。冒頭では突然観客に話しかけ、敬愛する監督の作品を取り入れ、それはとても当時斬新でした。取り込んで自分のものにし、そして新しく見えるものに変えているんです」と解説し、知られざる映画秘話についても言及。監督がどんな映画に影響を受けたのか考えながら作品を観るというのも映画鑑賞の楽しみの一つではあるが、「ウディ・アレンが好きな日本映画は『羅生門』(’50)、『七人の侍』(’54)、『蜘蛛巣城』(’57)」と松崎さん。日本人として大変誇らしいこの事実に、中井さんも「ウディ・アレンが影響を受けていると思って、次は黒澤映画を観る。映画は数珠繋ぎですね」と深々とうなずいていた。今回のプレイベントに寄せられた意見・リクエスト・アドバイスを反映させ、12月下旬には第2回目のプレイベントを開催予定、そして2013年1月より本格的にプロジェクトのスタートを迎える「中目黒シネマズ」。新たな映画鑑賞スペースの誕生に、多くの注目が集まっている。(photo:Horiba Toshiaki)「中目黒シネマズ」公式サイト:公式Facebook:公式Twitter:■関連作品:恋のロンドン狂騒曲 2012年12月1日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開© 2010 Mediapro, Versátil Cinema & Gravier Production, Inc.
2012年11月27日映画『悪の教典』の観客動員数が11月25日(日)で100万人を突破!同日、主演の伊藤英明と三池崇史監督が都内劇場で行われた大ヒット御礼舞台挨拶に登壇した。11月10日(土)の映画公開時にはローマ国際映画祭への出席のため2人はイタリアへ渡っており、公開後に国内で舞台挨拶が行われるのはこの日が初めてとなった。大歓声を受けて登場した伊藤さんは「ようやくみなさんの前で舞台挨拶ができます!」と晴れ晴れとした表情で語る。貴志祐介の小説を映画化した本作は、“ハスミン”の愛称で生徒に親しまれる人気高校教師・蓮実が担任を受け持つクラスの生徒40名を虐殺していくという過激な物語。その内容ゆえに賛否もあり先日、「AKB48」のメンバーを招待して行われた上映会では大島優子が上映後に退席し「私はこの映画は嫌いです」とのコメントを残して物議を醸していた。その場にいた三池監督は「AKBのメンバーに『ビックリした』というコメントをもらう予定だった。大島さんは仕事だからガマンして最後まで観てくれたけど、メーターが振り切れちゃった。それで出てきたのが正直なコメントでビックリしましたが(笑)、好き嫌いで分けてもらえるそんな映画があってもいい。作り手としてはありがたい」と語った。伊藤さんも周囲の反応について「5段階評価で1か5…いや0か5(笑)。でも映画なんだからそれでいい」と理解を示した。この日、2人が着ていたのはローマ国際映画祭で着用したタキシード。改めて海外の反応について三池監督は「何も(賞は)もらえなかったけど、すごく盛り上がっていい時間を過ごせました」と笑顔。特に観客の反応が高かったシーンとして「山田孝之が死んだ瞬間、拍手が起こりました。世界的に見ても山田孝之は死んでいい男だということで(笑)。あの短い出番の中で『こいつはどうしようもないやつだ』と思ってもらえたのは嬉しかったです」と明かし、伊藤さんも「『イェー!』と声が上がってましたね」とふり返った。また撮影に関して伊藤さん個人として大変だったシーンを尋ねると虐殺のシーンではなく、自宅での懸垂のシーンを挙げた。「ちゃんと衣裳合わせをしたはずなのに、なぜか裸でやることになってた」と笑いながら明かすが、三池監督は「懸垂のシーンは“はみ出したりして”大変だった」と爆弾発言!実はこのシーンのため、伊藤さんは俳優人生で初めて前貼り(局部を覆う道具)を着用したそう。「ひとりで着けられずにマネージャーに着けてもらったんです。頭はシーンに集中してるのにやってることは情けなかった…」と苦笑交じりで明かし、会場は笑いに包まれた。『悪の教典』は全国東宝系にて公開中。「悪の教典―序章―」『悪の教典』特集■関連作品:悪の教典 2012年11月10日より全国東宝系にて公開© 2012「悪の教典」製作委員会
2012年11月26日新し映画の未来を切り開く若手監督を、毎回2人ずつフューチャーする上映イベント「CINEASTE 3.0」が、11月3日(土・祝)、渋谷の新名所・渋谷ヒカリエにて開催され、上映後には『NINIFUNI』の真利子哲也監督と『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の瀬田なつき監督が登壇しトークショーを行った。近年、国内外の映画業界を揺るがすデジタル化。『アーティスト』などで描かれたトーキーへの移行期、そしてモノクロからカラー、それに次ぐ大きな転換期とされる“第三の革命”と言われ、往年のベテラン監督たちが嘆く一方で、そこを楽しみながら新たな試みに挑戦している映画監督たちもまた存在する。撮影機材の急速な進歩やインターネットメディアやSNSなどの台頭に順応し、まったく新しいスタイルでの制作、発信を模索する、そんな新鋭の若手監督たちにフォーカスしたイベント「CINEASTE 3.0」。リアルから“生”の形で人々へと発信し、果てはUSTREAMなどのオンライン映像メディアなどバーチャルな部分でのアプローチするソーシャルなスタイルを貫く上映イベントだ。この日、記念すべき第1回のゲストとして真利子監督と瀬田監督、さらにMCとして注目の映画評論家・渡邊大輔が登壇。360度をぐるりと観客に囲まれる一風変わったスタイルに、どこか緊張気味の2人。しかし、学年は違うが元々2人は東京芸術大学で学んだ身とあって、「(お互いの)名前は知ってました」とハモり会場を沸かせた。さらに「商業映画として作ったわけではない」、「主人公が似ている」、「(上映時間も)40分前後」、「ガス・ヴァン=サントから影響を受けた」と、この日上映された『NINIFUNI』(真利子監督)と『5windows』(瀬田監督)の共通点を挙げ、「どこか似てるんですよね」と意気投合。『NINIFUNI』について真利子監督は、「ただただ“自分が面白いと思ったものだけを撮る”というコンセプトだった」と言い、渡辺さんから「真利子さんの映画はとにかく肉体を全面で使うんですよね。初監督作品でもそうだし、今回の『NINIFUNI』でも、売れる前の『ももいろクローバー』(※早見あかり脱退前)が全力で踊ってますよね(笑)」と投げかけられると、「本当にそのシーンはかなり力入れて撮りましたね。音楽のためのダンスとはまた違うっていうのが大変でした。まあ、ただ『ももクロ』が好きなんですよね。見た瞬間にこの娘たちだ!っていう直観がありました。昔からいまと変わらない元気な子たちでした」と撮影当時をふり返った。一方の瀬田監督の作品も同様に、フワリと跳ねたり、飛んだりという体を使ったシーンが多いこともあり、渡辺さんから「ミュージカル映画に挑戦したりは?」と水を向けれらたが、「ミュージカルはお金がかかってしまう…(苦笑)」とインディペンデント映画ならではの苦悩を語り会場も苦笑い。この日の観客は映画業界を目指す若い世代の人々が多く、監督独自の「こだわり」について語る場面では、「この映画は、赤い京急線が走る川沿いで撮ったんですが…あまりカッコよくない町でした。でも、カッコよく撮りたいと思って、その川をセーヌ川のように撮ったり、原色が目立つコンビニの看板なんかはできるだけ入れないようにしました」とプロのこだわりを披露。しかし、インディペンデント映画に付きものの“ゲリラ撮影”で撮っていたようで、「(撮影中、)いろんな所から怒られました。猥雑な歓楽街ということもあったので、スタッフの1人がそっち関係の方に“ご挨拶”に行ったりしました…(笑)」と語り会場を驚かせていた。その後も、8ミリとデジタルフィルムの違いや映画編集の好き嫌い、映画を始めたきっかけなどなど会話は尽きることなく大きな盛り上がりを見せたが、最後に真利子監督は「でも、僕はただ面白いものだけを作っていく、追っていく、それだけだと思います」と語り、理論ではなく楽しむことだと映画業界を目指す若者たちに“真髄”を伝授し、その様子に瀬田監督も大きく頷いていた。これから、まだまだこのイベントは続くとのこと、渋谷から始まる新しい映画のうねり(=CINEASTE 3.0)をあなたも感じてみては?「CINEASTE 3.0」公式サイト■関連作品:NINIFUNI 2012年2月、ユーロスペースほか全国にて公開© ジャンゴフィルム、真利子哲也
2012年11月05日女優・玄里が映画の匠の素顔に迫る!対談インタビュー第2弾に登場してくれたのは、最新作『のぼうの城』が間もなく公開される犬童一心監督。『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』などのほろ苦い愛のドラマから大ベストセラーを映画化した『ゼロの焦点』まで、多彩なジャンルの映画を手がけてきた監督が、今回は樋口真嗣監督と異例のW監督というスタイルで時代劇に挑んだ。足掛け9年で完成に至った本作について、映画少年だった頃からの変わらぬこだわりを聞かせてくれた。犬童:玄里さんは映画監督になることに興味があるの?玄里:いえ、私は女優として映画に関わっていきたいんですけど、実は私の弟は監督志望でいま韓国の大学で映画の勉強をしているんです。私も時々シナリオを一緒に考えたりしています。犬童:韓国の方がいまオリジナルの映画が作りやすい、日本とは全然違う。『のぼうの城』は和田竜さんが書いたオリジナルのシナリオがあったんだけど、映画化まで9年もかかって。日本はオリジナルの映画を作るのがすごい難しいんだよね。玄里:今回の『のぼうの城』は規模の大きさから9年もかかったのですか?犬童:それは大きいね。シナリオを小説にしてベストセラーになってやっと映画化にこぎつけた。玄里:監督の映画監督になるまでのルーツに興味があるのですが、最初から映画監督になろうと思ってCMを撮り始めたんですか?犬童:僕は17歳のときから8ミリで自主映画を作っていて、大学のときにはインディーズの世界ではある程度名が知られていたんだけど、仲間たちがそのままフリーで映画業界に進んでいったときに僕は就職しないと貧乏になると思って広告業界に行ったの。そこで6年くらいCMの制作の仕事をやってた。30歳を過ぎてCMディレクターになってからまた自分の作品を作るようになったんだ。大学の後輩だった山村浩二君(『カフカ 田舎医者』)と2人で作ったアニメーションが賞を獲って、その賞金で次の映画を作った。それを観た市川準監督が映画のシナリオを書かないか?って誘ってくれて、映画の世界に来たの。玄里:シナリオも書かれてたんですね。犬童:シナリオは仕方なく書いてたんだけどね(笑)。嫌いではないんだけど、やっぱり才能のあるシナリオライターさんに書いてもらった方がいいから。『のぼう』の和田さんとか『ジョゼ~』の渡辺あやさんとか、本当に才能がある脚本家が書いてくれたシナリオを撮る方がずっとおもしろい。玄里:渡辺さんと言うと、私は『メゾン・ド・ヒミコ』も本当に大好きで、必ず胸にガツンとくる台詞がありますよね。「触りたいものがないんでしょ?」とか。『ジョゼ~』も『メゾン~』もマイノリティというか弱者に対する視線がすごく優しいなと思って、それからずっと犬童監督の作品を観ているんです!犬童:かつて岩井俊二監督がサイトで「シナリオどんとこい」というシナリオを募って批評する企画をやってて、そこに一本のシナリオが送られてきて。『のぼうの城』も一緒に手がけた久保田(修プロデューサー)さんが読んで、それまで応募されたすごい数のシナリオを読んでたんだけど、初めて「このシナリオ読んでもらえないか」と僕のところに送ってきたのが、渡辺さんのシナリオだった。素晴らしかった島根に住んでる主婦の人が初めて書いたものだって言うからとても驚いた。この人はすごい、本物だって思ったの。その頃、大島弓子さんの「つるばらつるばら」という漫画をシナリオにするつもりだったから、それをあやちゃんに書いてもらうことにしたの。出来上がったシナリオが最初からすごく良くて。『ジョゼ』や『メゾン』も絶対にいいものになるという感触があったんだよね。その後『メゾン~』も完成まで5年くらいかかったんだけどね。玄里:『ジョゼ』や『メゾン』とは打って変わって『のぼうの城』は時代劇に挑んでますが、監督自身、どんなジャンルの映画が好きなんですか?犬童:ジャンルは特に…、映画であれば。ジャンルではなくて、“映画になってるか”どうかなんだよね。僕は小学生の頃からビリー・ワイルダーの映画に惹かれてた。『ワン・ツー・スリー』というコメディを観てすごく映画が好きになった。笑えて、スピーディで、くだらなくて楽しくて。それでいろんな映画を観るようになった。たぶん異常に映画を観てる子供で、野球か映画か好きなことしかしないみたいな(笑)。でもあるとき、小林信彦さんという小説家の方がある雑誌で「ビリー・ワイルダーは一流の脚本家だけど、一流の映画監督ではないんじゃないか」ということを書いていて。確かになあと思うところがあって、映画の奥深さ、謎に気付いた。高校生のときに読んで以来、ずっと映画を観るときはそれが頭の中にあるんだよね。面白さだけでなく、出来が悪くても“映画を観たなー”というものの方が自分の中で大事になって。もちろん『のぼうの城』みたいな映画はおもしろくて楽しくなきゃいけないから、そういう部分に一生懸命気を配ったんだけど、それと同時に“映画になってるか?”というのがすごく気になる。ここは間違いなく映画だという瞬間を作れているのかってね。玄里:たしか、以前に監督がホラー映画を撮りたいと仰ってたと思うんですが、それは本当ですか?犬童:そう、僕はホラーや怪奇映画が大好きで、そういった映画の作り方そのものが好き。実は『ジョゼ~』も『メゾン~』も『金髪の草原』もホラーや怪奇映画の作りがベースになってる。3つとも屋敷に変わった人が住んでいて、そこに普通の人が訪ねて来て、ドラマが生まれ、そこから出て行くまでの話なんだ。玄里:なるほど、お化け屋敷みたいな?犬童:そうそう、屋敷に住んでる人というのは一種のドラキュラみたいな存在で、本人のビジュアルや屋敷の美術がキャラクターを表現する。ドラキュラ映画のように作っていく。僕の中では『のぼうの城』は久しぶりの屋敷映画なんだ。玄里:『のぼうの城』についても聞きたいんですけど、先日観させていただいて、とにかく冒頭から目を引き付ける画が多いんです。大波を背に高笑いする秀吉役の市村正親さんを見て「狂ってるなぁ」とゾクゾクしたし、のぼうさまを探すため 大馬を乗りこなして村を駆けずり回る佐藤浩市さんの馬術に感嘆しました。歴史ものとファンタジーって実は紙一重なんだよなあと気づかせてくれる作品でしたね。そしてまさに萬斎さんありきの映画だなと感じました。今回、樋口監督と共同作業をされてますが、一緒に監督をやる中でケンカはなかったですか(笑)?犬童:それはよく言われるんだけど、僕たちの間でケンカは全く考えられないね。相談もしないけど、普通にひとりで映画を撮っていくのと同じように2人でやっていった感じだよね。たぶん誰にでもできるものじゃないと思うんだけど、何かを決めなきゃいけないときに、漫才の掛け合いみたいにやる。例えば、ぐっさん(山口智充)の衣裳をもっとワイルドにするってなったら、僕が毛皮を着せたいと言うと、さらに樋口さんが角をつけた方がいいんじゃないて言いだす、さらに顔に傷もつけようかあってなると樋口さんが甲冑全体が銀色がいいなとか言い出したりするわけ。そうやって発展して一つの魅力的なキャラクターが生まれていく。お互いのやりたいことを両方とも重ね合わせていくから、良い事が多いんだ。玄里:「銀色にしたい」と言われたときに“銀色はないよ”って思ったりはしないんですか…?犬童:思わないね。僕は最初から樋口監督をアーティストだと思ってるから、樋口さんが言った以上はそれを受け入れるし、それがすごくいいアイディアだと思うから。映画がそこでワンテンション上がるんだ。でも大概の監督はそうじゃないから、俺が、俺がだからね。僕と樋口監督だからできたんじゃないかな。玄里:長年連れ添うと夫婦って似てくるって言いますけど、モントリオール映画祭で樋口監督と一緒に兜を被っている写真を見て、すごく似ていらっしゃると思いました!犬童:連れ添う前から似てるの!玄里:そうなんですね(笑)!犬童:僕が痩せて一時期似てなかったんだけど、リバウンドでまた最近似てきたんだよね(笑)。その言葉通り、写真撮影の際にはお決まりといった調子で樋口監督と揃って仲良く兜を被り、少年の顔になった犬童監督。ぜひ、『のぼうの城』に込めた“映画の瞬間”をお楽しみあれ。■関連作品:のぼうの城 2012年11月2日より全国にて公開© 2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ
2012年10月29日映画『二十四の瞳』や『楢山節考』など、数々の名作を世に送り出し、黒澤明と共に日本映画界の一時代を築いた映画監督、木下惠介。その木下監督の生誕100年を記念して、戦後の銀座を舞台にしたコメディ映画『お嬢さん乾杯』が2013年の初春新派公演で初めて舞台化される。10月18日、都内で会見が行われ、出演の水谷八重子、波乃久里子、瀬戸摩純、歌舞伎俳優の市川月乃助が登場した。1949年に公開された『お嬢さん乾杯』は、没落華族の令嬢と戦後成金の青年との不似合なふたりの恋を明るく軽快に描いた上品なコメディで、女優・原節子が唯一出演した木下作品としても知られている。また、今年5月に惜しくも世を去った新藤兼人監督が、映画脚本家としての地位を確立した作品でもある。今回の新派では成金実業家の青年・圭三を市川、没落華族の令嬢役で原節子が演じた泰子を瀬戸が演じる。また、本作が上演される来年は、新派にとっても創始から125年目を迎える節目の年でもある。劇団新派の要として長年劇団を支えてきた水谷と波乃は「来年も今年の続きとして、そのまんま走り続けていきたいです。『麥秋』『東京物語』(いずれも小津安二郎の名作を山田洋次が舞台初演出・脚本を手掛けた)に続いて戦後の昭和の姿を表現するという新しいジャンルを確立できれば嬉しいです」(水谷)、「その時代を感じさせるような劇団として、いい作品にできればと思います」(波乃)とそれぞれコメントした。物語の中心となる男女を演じる市川と瀬戸は「新派はまだ4度目ですが、新派125年の節目の公演に出させていただけて光栄です」(市川)、「劇団一丸となり必ず良い作品にしたいと思います」(瀬戸)と意気込みを見せていた。公演は2013年1月2日(水)から23日(水)まで東京・三越劇場で上演。チケットは11月30日(金)より一般発売開始。
2012年10月22日開幕中の第25回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されている『イエロー』のニック・カサヴェテス監督と、私生活でのパートナーであり本作では監督との共同脚本、主演を務めたヘザー・ウォールクィストが10月21日(日)、揃って公式記者会見に臨んだ。安定剤を服用することで何とか自我を保っている女教師・メアリー。彼女が疎遠だった家族と向き合うことで過去と対峙していく姿を、ポップで斬新な彼女の心象風景、妄想ワールドと共に描き出す。2人は前日に到着したばかりだが、「今日は原宿に行ってきました」とカサヴェテス監督。初来日となるヘザーも「事前にグーグルで東京について散々、検索して来たので、それを実行に移すわ。明日はショッピングに行くつもり」と笑顔を見せた。2人での脚本執筆のスタイルについて聞かれると、カサヴェテスは「とってもシンプルさ。女性というのは一番エライものなので、彼女が『こう書きなさい』と言ったものを僕がせっせと入力していくんだ。彼女はキャラクターに関して素晴らしい感覚を持っている。『こんな人物でこういう展開』と繰り返し話してくれるんだけど、そのうちに僕の方が『もうほっといて、書いたものを読んでくれ』となるんだけど、書いたものを見せると『全然ダメ!』と言われて書き直す。その繰り返しだよ」と自虐的に語った。ヘザーによると「脚本の完成から1年半後にようやく撮影がスタートした」とのことだが、その後も苦労は絶えなかったそう。「撮影を開始して1週間でお金が底をついて中断。1年後に再開というのを繰り返したわ。本当に多くのプロデューサーが名を連ねているけど、誰が欠けても完成しえなかったと思うわ」と感慨を込めて語った。カサヴェテスも「完成したこと自体が奇跡。金がなくて撮影が中断という恥ずかしい事態に陥ったけど、ヘザーは『オクラホマに行けば何とかなるわ!』と言ってくれた。絶対に完成させるんだという強い意志を持って、オクラホマに行ったら少しずつ人が集まってくれて、お金も増えていったんだ。若い人に何より伝えたいのは、頑固に自分の考えを貫き通して、作品として完成させることが重要だってことだね」と言葉に力を込めた。ヘザーはこのカサヴェテスの言葉に「オクラホマにはカジノがあちこちにあるの。その件については彼に直接聞いた方がいいわ」とニヤリ。カサヴェテスは「ギャンブルが製作の過程にあったというわけではないんだけど…」とちょっぴり動揺した様子で語り、会場は笑いに包まれた。ビッグバジェットの作品から今回のような低予算のインディペンデント作品まで幅広く手がけるカサヴェテス監督だが、改めてインディペンデント映画の製作について「映画作りは僕にとって純粋な喜びであり、崇高な行為。スタジオ作品も撮ってきて楽しかったし高い報酬も手にしたけど、インディペンテント作品の製作はフィルムメーカーにとって一番楽しいことであり、観客にとっても同じだと思う。似たり寄ったりの作品を観続けるのではなく、(ヘザーのような)素晴らしい女優のパフォーマンスを見られるわけだからね」と語る。今後については「将来を予測するのは苦手」と苦笑しつつ、「作品づくりの一番の判断材料は自分がどれだけ関心を持てるか。インディペンデントの映画づくりにプロセスもスタジオ作品のそれもどちらも好きです。そこに愛情を感じられるかが重要。今回のように強く愛着を感じられるものを見つけて2~3年をかけて作れたら嬉しいね」とさらなる意欲を口にしていた。第25回東京国際映画祭は10月28日(日)までTOHOシネマズ六本木ほかにて開催中。特集「東京国際映画祭のススメ2012」■関連作品:イエロー© medient 2012第25回東京国際映画祭 [映画祭] 2012年10月20日から10月28日まで東京にて開催
2012年10月22日ティム・バートン監督の最新映画『フランケンウィニー』の映画公開を記念し、Q-pot.のデザイナーが限定アイテムをデザイン。ビックロユニクロ新宿東口店、ユニクロ銀座店、ユニクロオンラインストアのみの限定販売となっており、12月初旬に販売開始となる。独特な世界観で映画ファンを魅了するティム・バートン監督の最新映画『フランケンウィニー』。監督が1984年に制作した短編アニメを、新たに3Dで長編化。ディズニー史上最も奇妙な「フランケンウィニー」の映画公開を記念して、「Frankenweenie Tシャツ」と「Frankenweenie パーカ」を日本とアメリカで限定販売する。「遊び心」と創造性に溢れた東京ファッションシーンを牽引するお菓子をモチーフにしたアクセサリーブランドQ-pot.のデザイナー ワカマツ タダアキがデザインを施し、今までにないディズニーの世界観を表現する。また、ティム・バートン監督本人が書き下ろしたメンズグラフィックTシャツの発売も決定。監督は、グラフィックTシャツを制作するにあたり、「ユニクロとの特別企画により、新作映画『フランケンウィニー』の原画スケッチと映画シーンを使用したインスパイヤード・コレクションをお楽しみ下さい。」とコメント。ティム・バートン監督ファンや、ディズニーファンにはたまらないアイテム展開となっている。【FrankenweenieTシャツ】サイズ:ウィメンズS/M/L/XL価格:¥1,500柄数:7色柄【Frankenweenieパーカ】サイズ:ウィメンズS/M/L/XL価格:¥2,900柄数:2色柄ビックロユニクロ新宿東口店、ユニクロ銀座店、ユニクロオンラインストアにて12月発売開始【FrankenweenieグラフィックTシャツ】サイズ:メンズS/M/L/XL価格:¥1,500柄数:23柄ユニクロオンラインストアにて12月発売開始ユニクロ公式サイト:ディズニー映画『フランケンウィニー』2012年12月15日(土)3D/2D同時公開映画特設サイト:元の記事を読む
2012年10月06日山田洋次監督の最新作『東京家族』の特別試写会が4日(木)に京都四條南座で行われ、舞台あいさつに山田監督が登壇した。その他の写真本作は、1953年の小津安二郎監督作『東京物語』へオマージュを捧げた作品で、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らをキャストに迎え、現代の家族の絆を描く。京都四條南座では、8月18日より山田監督の監督生活50周年を記念したイベントが連日行われており、『男はつらいよ』シリーズや『幸福の黄色いハンカチ』など全80作品を上映。イベント期間中の4日(木)に行なわれた『東京家族』の特別試写会には、3年ぶりの山田監督作を心待ちにしていた約500人の観客が集まり、山田監督が舞台あいさつを行った。山田監督は、「今日は、皆様がどういう風にこの映画を感じるか、判決を待つ被告のような気持ちでおります」とコメントし、さらに先日、世界の映画監督が投票で決める映画史上最も優れた作品に、本作のベースである小津監督の『東京物語』が選ばれたことについて、「2位の『市民ケーン』を抜いて1位になったと、世界中で話題になりました。時を越え、国を越えても、家族というものはやっかいなもんだという悩みを、世界中の人が共有できる、そういうところが評価されたのでしょうか」と話した。『東京家族』2013年1月19日(土)全国ロードショー
2012年10月05日劇団「THE SHAMPOO HAT」を率いる赤堀雅秋監督自らが作・演出・主演を務めた同名戯曲を改稿して映画化した『その夜の侍』。映画の公開を記念し、「第四回下北沢映画祭」の開催中、22日にトークショーが行われ、赤堀監督と映画『モテキ』の大根仁監督、本作に出演する新井浩文が登壇した。その他の写真本作は、五年前のひき逃げ事件で死んだ妻・久子(坂井真紀)への思い出から抜け出せず、犯人への復讐を計画することで自分を保っている主人公・健一(堺雅人)と、ひき逃げ犯人の木島(山田孝之)、彼らを取り巻く周囲の人々が抱える孤独や葛藤を描いた人間ドラマ。赤堀監督と大根監督の出会いは、深夜ドラマシリーズ『演技者。』内で赤堀監督の原作戯曲『アメリカ』を大根監督が演出したことがきっかけだったという。赤堀監督にとって大根監督は“一番意見を聞くのが怖い人”というイメージだったそうだが、どうにか合格点をもらったようで、トークショーでは安堵の表情を見せていた。一方、大根監督は、「初監督だから失礼になるけれども、観たときに老練な感じと言うか…赤堀君は演劇と言う場で積んできたものがでかい。技術的なものとか、スタッフワークというのは知らずに入ったかもしれないけど、赤堀君がもともと演劇の場で培ってきた脚本力とか演出力とかに、スタッフや役者が引っ張られてよい作品になっているなあと。異業種監督の作品には全く見えない。むしろ出来過ぎと言う感じがしました」と絶賛。さらに、近年のメジャー作品とマイナー作品の興行収入や動員の格差問題について絡めて、「ものすごくお客さまが入っている作品と、良質な作品なのに全く入らないというのがある。その中間をいき、この現状を打破できるよい邦画として、ちゃんとヒットする作品になってほしい」とエールをおくっていた。また、『モテキ』にも出演し、本作では健一の妻の兄役を務める新井は、「監督のやりきった感じが伝わってきて、参加できてよかったと思った。自分自身でも手ごたえを感じた」と感無量の様子。赤堀監督も、「自分で言うのもなんなんですけど…凄く武骨でエネルギッシュで、とてもおもしろい、よい映画だなと、客観視して思える作品になっているので、ぜひ観てください!」と、本作をPRしていた。『その夜の侍』11月17日(土)より全国ロードショー
2012年09月25日ダグ・リーマン監督が、推理小説家オレン・スタインハウアー原作の「ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ」(ハヤカワ文庫NV刊)を映画化することとなった。マット・デイモン主演の『ボーン』シリーズや『Mr.&Mrs.スミス』などを手がけてきたヒットメーカーのリーマン監督だが、今回の同スパイ小説の映画化で監督とプロデューサーを兼任する契約を結んだという。本作は、CIA諜報員ミロ・ウィーバーが世界的な犯罪に挑む中で、雇われ暗殺者を追っていくうちに深みに陥ってしまうというスリラー作品だ。同原作の原題が、ジョニー・デップ、アンジェリーナ・ジョリー共演作『ツーリスト』の原題と同じ「ザ・ツーリスト」であることから、映画化では別のタイトルが採用されることになる模様。リーマン監督は現在、日本のライトノベルを原作に、トム・クルーズ主演で贈る『All You Need Is Kill』(原題)の撮影中だ。
2012年09月12日現在開幕中の第69回ベネチア国際映画祭で日本から唯一のコンペティション部門正式出品を果たした『アウトレイジ ビヨンド』を引っさげ、北野武監督が単身現地入り!9月3日(現地時間)の記者会見、さらに夕方に行われたレッドカーペット・イベントに出席し、海外ファンたちからの歓声に応えた。前作『アウトレイジ』で描かれた、関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年後。一度は決着がついたはずだったが、ヤクザ壊滅を図る警察が動き始め、“死んだはずの男”大友(ビートたけし)は利用される羽目に。騙し合いと裏切りの火種がまたもやくすぶり始め、関東勢VS関西勢(花菱会)の巨大な抗争へと発展していく――。世界各国の報道陣が集まった記者会見では、やはり震災後に撮られた作品とあってその影響についての質問が飛び交ったが、「震災でたしかに映画の撮影は一年延びた。震災後の一年間は、逆に自分は怒りを感じている部分があった。世の中、絆とか愛とか表面的なものばかりでイライラした。こういうときこそヤクザ映画を撮ってやろうとやる気が起きた」と相変わらずの毒の効いたコメントで返した北野監督。さらに、本作は“観客”のために作ったものだとも明かし、「暴力描写を褒めてくれるマニアックな人々がいるのは嬉しいことだけれども、今回の映画はエンターテインメントだと割りきって自分なりのエンターテインメント性を追求した。そうすると、自分にとっては、家庭、女、女房、子供とかは排除する結果になり、馬鹿な男の話になった。その方が楽しんでもらえるかなと思った。けれども、いつでもお客さんの入らない映画を作る準備もしているよ(笑)」と冗談を交えるなど、衰えぬ“世界のキタノ”のインパクトを与える会見となった。さらに、夕方から行われたレッドカーペットでは、会場に「北野武映画の神様」と漢字で書いた横断幕をもつ熱狂的なファンの姿(写真上)も見られ、会見とは打って変わって北野監督は和やかな様子でファンから求められる握手やサインに応じていた。また、その後には本作の上映も行われ、「ブラボー!」という称賛の声と共に満席の会場では総立ちの観客から拍手喝采が贈られた。『アウトレイジビヨンド』は10月6日(土)より新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国にて公開。第69回ヴェネチア国際映画祭は9月8日(現地時間)までイタリア・ベネチアにて開催。授賞式は同日最終日に行われる。(photo:KAZUKO WAKAYAMA)■関連作品:アウトレイジビヨンド 2012年10月6日より新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012 「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
2012年09月04日