安くていい物件を探したい……。賃貸の部屋を探す人なら、誰しもそう願うのではないでしょうか。そんな方法はあるのでしょうか。「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏にお話を伺いました。■エレベーターがない+和室+古い=カスタマイズ賃貸の登場「安くていい物件?条件を変えてみればいいのです」と話す穂積さんはまず、共益費が安くなるパターンとその理由について紹介します。「賃料が安くなるパターンに、『エレベーターがない物件』があります。賃料には家賃に加えて共益費が別途必要です。共益費とは、ゴミの処理、廊下や玄関回り、照明など共有部分の使用に関する付加利用料のことですが、エレベーターの維持管理費もこれに含まれています。エレベーターがないということは、共益費にその維持管理費が必要ないわけですから、当然、エレベーターがある物件よりも安くなります。おおむね、類似条件のマンションより、3,000円~5,000円は安くなるでしょう。現在の法令では、エレベーターは6階以上の建物には必須ですから、エレベーターがないということは、5階建て以下の建物になります。近年は3~5階建ての物件にも設置されていることが多いので、エレベーターがない=築年数が経っていると想定できます。古いということはベランダがない、浴室では旧式(バランス釜)のガス設備を使っているなどということもありますが、壁紙や廊下、フロアなどの内装がリフォームされている物件も増えています。これらの情報をあらかじめ知っておくと探しやすいでしょう」(穂積さん)また、共益費の金額について穂積さんは、こう説明を加えます。「共益費は、建物1棟にかかる諸経費を居住戸数で割り、1戸あたりの金額を算出します。よって、1フロアーに1戸など戸数が少ない物件より、大型で入居者が多いマンションのほうが安くなる傾向にあります」次に、「和室タイプも安くなる」と穂積さん。「和室だけの物件はこのごろあまり人気がないので、相場より賃料が10~30%ほど低く設定されていることがあります。こちらも築年数が経っているというパターンですが、都会では駅近くや中心地に建つ物件も多く、うまく出合えたら、近隣の相場より20%ほど安く街中に住めるということもあります」(穂積さん)さらに、古い物件を利用した「カスタマイズ賃貸」というスタイルが今、話題を呼んでいます。「平成23年からUR都市機構が募集を始めてその呼称が広がったようです。賃貸住宅でも、入居者が自分の好みでDIYやリフォームをしてもよいという新しい賃貸のスタイルが登場しています。賃料は近隣の相場より安めで、そのうえ、退去時の原状回復の義務がありません。カスタマイズ賃貸は今、20代を中心に人気で、古さを生かしたカフェ風の空間を自分で作る、アートが似合う部屋にするなど、自分好みの空間で暮らせることが魅力につながっていると言います。築年数が古いがために空室が目立つ賃貸住宅で、本来、家主がリフォームするべきところを入居者にゆだね、賃料を下げて自由なライフスタイルを付加するという方法です。UR賃貸では『DIY賃貸』と呼んで募集をかけていますが、2012年9月現在、『DIYのためのプランニング&DIY施行期間』として、家賃3カ月が無料というサービスを展開しています。また、ウェブサイトで『カスタマイズ賃貸』と検索すると、多種多様な情報が出てきます。ただし、この潮流を受けて、新しい部屋でも、『壁紙をあなた好みにカスタマイズできますよ』というサービスを開始した物件もありますので、カスタマイズ賃貸=安いだけ、とは限らないということもあります」穂積さんは、次のアドバイスも加えます。「ほかに、『定期借家(ていきしゃっか)』と言って、期間限定の分譲賃貸住宅なら、同様の住宅にくらべて20%~30%ほど家賃が割安になることがあります」「安い物件を探していたら、たまたまカスタマイズ賃貸というスタイルに出会った」という人が増えてきました。余剰空室に安い予算でうまく楽しく暮らす方法。その動向に注目したいものです。監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(藤井空/ユンブル)
2012年09月27日「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザーで宅地建物取引主任者である穂積啓子氏に、賃貸住宅の壁のひび割れを発見した、もしくは地震などの自然災害によりできてしまった場合について、どのように対処すればよいのか事例を挙げて説明してもらいました。■<事例1>普通に暮らしていただけで壁にひびが……入居後、3ヵ月ほどして、普通に住んでいるだけなのに、壁にひび割れを発見!すぐに家主に伝えるつもりが、「日ごろから家主の管理の仕方に疑問を持っていた」、「仕事が忙しくて平日の昼間に家主に連絡できない」などの理由で、退去時の2年後に伝えたところ、家主から「壁のひび割れの修理代」を請求されました。穂積さん:壁のひび割れは、借り主が「普通に住んでいるだけ」では、起こりえない現象ですので、通常は、建物自体に原因があるか、近隣で解体工事やビルの新築工事など建築現場がある、地震や台風など天災があった、老朽化が進んでいるということが考えられます。家主が請求したということは、「借り主が故意に損傷を与えた」とみなしたことになるわけですが、上記の理由によって通常はありえないことで、家主の請求は認められず、ひび割れの原因を追及されるまでもなく、この家主の請求は無効であり、悪質な請求であるとみなされます。それ以前に、ひび割れの発生となると家主にとっては大変なことであり、すぐに建物を施工した業者や専門家を呼んで対処法を判断するものです。このケースの場合、借り主は弁護士に相談し、弁護士から家主への申し出によって請求は引き下げられたのですが、借り主の心理的負担に対する慰謝料請求について、借り主は「壁の損傷を見つけた時点ですぐに家主に届けをするべきだった」という点は反省されており、弁護士費用の請求にとどめられました■<事例2>賃料の減額は求められるのか?地震発生と同時に、部屋の一室に壁の端から斜めにひび割れができてしまい、精神的にもうその部屋を使用するのが難しい状態なのですが、すぐに家主に掛け合い、賃料の減額を求めたところ、「自然災害でできた損傷は負担できない」と言われました。穂積さん:「建物の一部の機能、効用が失われた状態」(建物の一部減失)であれば、通常の生活で使用できないため、賃料の減額を請求することができます。減額の金額は、減失した割合によって算出しますが、それには、借り主と家主のお互いの合意が必要となりますし、どれほどの減失かどうかは、専門家の意見を聞き、ひび割れの状況を確認してもらう必要があります。管理会社の担当者か家主と話し合うことになりますが、事前に、市区町村にある相談コーナーや消費生活センターに連絡をして「このような場合、一般的にどう対処しているか」という情報を集めておくと話が進めやすいのですが、合意に至らない場合は、「弁護士に依頼する」あるいは「自分自身で民事調停を起こす」、そこでも合意できなければ「訴訟または弁護士会の調停を利用する」などの方法があります。これらの話し合いが面倒という理由で、借り主は泣き寝入り、移転せざるをえないということが多いのですが、家主が敷金から修理代を差し引いて来たり、修理代を借り主に請求して来た場合は支払う必要はありません。平成16年に国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にはいろいろな事例が明記されています(これはウェブサイトで誰もが閲覧できますので、参考にしてください)。壁のひび割れだけではなく、ドアの傷から水回りの劣化など、住まいに異変があった場合はすぐに管理会社か家主に報告をし、さらに日付入りの写真を撮って渡しておくとよいでしょう。数ヶ月や数年経ってからであったり退去時の報告になると、「借り主が故意に起こした損傷」と受け取られ、敷金返金の際のトラブルに発展することもあります。管理会社や家主に報告することは、けっこう面倒ですよね……。「おたくが壊したのでは?」と疑われそうで、億劫になりますが、「建物を借りている以上、報告をして修繕に協力するのも借り主の一つの義務ですよ」と穂積さん。監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(藤井空/ユンブル)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月19日知らないうちに壁がひび割れている、台風でガラスが破損した……など、賃貸している部屋の欠陥に気付いた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザーで宅地建物取引主任者である穂積啓子氏にお話を伺いました。壁のひび割れについて、穂積さんは事例を挙げて対処法を説明します。■<事例1>普通に暮らしていただけで壁にひびが……入居後、3ヵ月ほどして、普通に住んでいるだけなのに、壁にひび割れを発見!すぐに家主に伝えるつもりが、「日ごろから家主の管理の仕方に疑問を持っていた」、「仕事が忙しくて平日の昼間に家主に連絡できない」などの理由で、退去時の2年後に伝えたところ、家主から「壁のひび割れの修理代」を請求されました。穂積さん:壁のひび割れは、借り主が「普通に住んでいるだけ」では、起こりえない現象ですので、通常は、建物自体に原因があるか、近隣で解体工事やビルの新築工事など建築現場がある、地震や台風など天災があった、老朽化が進んでいるということが考えられます。家主が請求したということは、「借り主が故意に損傷を与えた」とみなしたことになるわけですが、上記の理由によって通常はありえないことで、家主の請求は認められず、ひび割れの原因を追及されるまでもなく、この家主の請求は無効であり、悪質な請求であるとみなされます。それ以前に、ひび割れの発生となると家主にとっては大変なことであり、すぐに建物を施工した業者や専門家を呼んで対処法を判断するものです。このケースの場合、借り主は弁護士に相談し、弁護士から家主への申し出によって請求は引き下げられました。借り主の心理的負担に対する慰謝料請求について、借り主は「壁の損傷を見つけた時点ですぐに家主に届けをするべきだった」という点は反省されており、弁護士費用の請求にとどめられました。■<事例2>賃料の減額は求められるのか?地震発生と同時に、部屋の一室に壁の端から斜めにひび割れができてしまい、精神的にもうその部屋を使用するのが難しい状態なのですが、すぐに家主に掛け合い、賃料の減額を求めたところ、「自然災害でできた損傷は負担できない」と言われました。穂積さん:「建物の一部の機能、効用が失われた状態」(建物の一部減失)であれば、通常の生活で使用できないため、賃料の減額を請求することができます。減額の金額は、減失した割合によって算出しますが、それには、借り主と家主のお互いの合意が必要です。どれほどの減失かどうかは、専門家の意見を聞き、ひび割れの状況を確認してもらう必要があります。管理会社の担当者か家主と話し合うことになりますが、事前に、市区町村にある相談コーナーや消費生活センターに連絡をして「このような場合、一般的にどう対処しているか」という情報を集めておくと話が進めやすいでしょう。合意に至らない場合は、「弁護士に依頼する」あるいは「自分自身で民事調停を起こす」、そこでも合意できなければ「訴訟または弁護士会の調停を利用する」などの方法があります。これらの話し合いが面倒という理由で、借り主は泣き寝入り、移転せざるをえないということが多いのですが、家主が敷金から修理代を差し引いて来たり、修理代を借り主に請求して来た場合は支払う必要はありません。平成16年に国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にはいろいろな事例が明記されています(これはウェブサイトで誰もが閲覧できますので、参考にしてください)」。壁のひび割れだけではなく、ドアの傷から水回りの劣化など、住まいに異変があった場合はすぐに管理会社か家主に報告をし、さらに日付入りの写真を撮って渡しておくとよいでしょう。数ヶ月や数年経ってからであったり退去時の報告になると、「借り主が故意に起こした損傷」と受け取られ、敷金返金の際のトラブルに発展することもあります。管理会社や家主に報告することは、けっこう面倒ですよね……。「おたくが壊したのでは?」と疑われそうで、億劫になりますが、「建物を借りている以上、報告をして修繕に協力するのも借り主の一つの義務ですよ」(穂積さん)であるようです。監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(藤井空/ユンブル)
2012年09月19日国土交通省がまとめた、『平成20年度マンション総合調査』(によると、過去1年間のトラブルの発生状況は、「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が63.4%と最も多く、そのなかでも「生活音」(37.1%)が1位ということが判明しています。トラブルナンバー1は、つまり「騒音」だったのです。そこで、「快適で安全な女性の一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、詳しいお話を伺いました。■子どもの生活音が裁判で敗訴――統計では「騒音」トラブルが1位とのことですが、管理の現場ではどうなのでしょうか。穂積さん:「騒音」に関する相談は日々、寄せられます。最近の裁判の例として、2012年3月15日に東京地裁で、「上の部屋に住む男児が跳びはねてうるさい」として、階下の夫婦が騒音の差し止めなどを求めた訴訟がありました。裁判では、「我慢の限度を超えている」として、男児の父親に一定以上の騒音を出さないよう、また、夫婦が求めた慰謝料計60万円のほか、妻が頭痛で通院した治療費や騒音測定の費用も請求通り支払うように命じる判決を言い渡しています。このケースでは、業者に依頼して騒音を測定した結果に基づいて、「男児が跳びはねたり走り回ったりする音は生活実感としてかなり大きく聞こえ、相当の頻度であった」と指摘、配慮すべき義務を父親が怠った、と判断されました。これはほんの一例ですが、騒音問題は訴訟に発展するケースも少なくありません。――入居前に騒音トラブルを避けるポイントはありますか。穂積さん:騒音の起こりようには、建物の構造が大きく影響します。木造や鉄骨造(S造)の建物よりも、8階くらいまでの中低層のマンションに多い鉄筋コンクリート造(RC造)や、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の方が頑丈で遮音性が高くなります。室内の音だけでなく、廊下を歩く音、階段の昇り降りの音、話し声が響くかどうかも大きく違ってきます。引っ越しビギナーによくある失敗は、「内見のときは静かだった。こんなに隣の音が響くとは……」と、入居後に気付くというパターンです。騒音が気になる方は、 部屋を探す段階で、「閑静な部屋」という条件を掲げて意識してください。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物を選び、より静かな環境を望む場合は、上の階の音が気にならない最上階の角部屋がいいでしょう。――騒音で悩んだとき、どうすればいいでしょうか。穂積さん:隣や階上の住人だと原因が分かっていても、自分で苦情を言いに行くとトラブルになる可能性があるので、まずは管理人、管理会社、家主らに相談してください。おさまらない場合は、騒音を感じた日時、どのような音なのか、何分間続いたのか、ボイスレコーダーで録音するなどして、記録をとってください。相手は「生活の音だ」と主張することがあるので、それに備えて証拠を集め、家主らに伝えましょう。――小さい子どもがいて、こちらが隣近所への騒音になるのでは……と気になります。何かよい方法はありますか。穂積さん:階下が店舗など、入居者がない1・2階の角部屋を選びましょう。また、隣の部屋との壁側にたんすを置くなどのバリアをつくることで、音は緩和されます。階下に住民がいる場合、床素材は、フローリングは高音が響きやすく、カーペットや畳の方が響きにくいということも知っておいてください。子どもは歩幅が小さいので、親にとってはただ歩いているつもりでも、階下の人にはドタンバタンと走り回っているように聞こえるものです。音を吸収しやすい、できるだけ厚手、毛足の長いタイプのカーペットを敷く、床とカーペットの間に防音用のマットを敷くなどの対策を採ることもお勧めします。防音の方法はさまざまありますが、最も大切なことは、「引っ越し時のあいさつ」です。特に子どもやペットがいる場合はいっしょに、少なくとも上下階と両隣の人にあいさつをしておきましょう。騒音トラブルとは、「見知らぬ誰かが出す、得体のしれない音に対し、違和感や脅威、平穏な日常を妨げられることへ怒りや不安がわく」ことから発生します。日ごろからあいさつを交わす関係であれば、「どんな人たちがどのような暮らしをしているのか」が垣間見え、同じ音でもなぜか気にならない、多少は許してあげよう、という気持ちにもなるでしょう。――ありがとうございました。まずは騒音を感じにくい物件を探し、次に、隣近所との良好な関係づくりを心がける。騒音トラブルとは、これだけで相当に避けられるのではないでしょうか。監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月14日「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、「異臭のトラブル」の事例と対策法についてお話を伺いました。■異臭ベスト3は「腐敗臭」、「ペット臭」、「ゴミ臭」穂積さんはまず、こう説明します。「異臭騒ぎのベスト3は、腐敗臭、ペット臭、ゴミ臭です。臭いを感じたときは、家主か管理会社にすぐに連絡しましょう。家主は、臭いの元と考えられる住人と連絡が取れない場合は、緊急連絡先や連帯保証人に連絡を取って、立ち会いのもとで室内点検をします。お隣からペット臭がする、ゴミ屋敷状態では? など原因が分かる場合は、家主か管理会社に相談することで解決の糸口が見つかることがあります。ですが、家主に言いさえすれば臭いがなくなるというものではありません。ここがつらいところです」■臭いがした日時、様子を記録する「異臭で困るのは、原因が分からない場合です。対処のしようがないわけです」と穂積さん。事例を交えて解説してもらいました。【事例1】原因不明の薬品臭東京都心のマンション11階に住むAさんの話です。「週に2~3回、ベランダの配管付近から薬品の臭いがして、ベランダに出ると気分が悪くなります。洗濯物にその臭いがうつる、ドアを開けることもできないという状態だとか。管理人と営繕係の人が確認に来て、『ベランダの端にある排水管から異臭がするのでは。明らかに○○○(薬品名)の臭いですね。人体に影響はないはず』と、薬品の臭いを指摘したと言います。しかしその後、家主も管理人も、『どこかで誰かが薬品を流しているのでは』とおたおたするだけでほかの住人に確認もせず、なんら解決策をとらないまま『様子を見てほしい』の一点張り。どうしようもなく、窓を閉め切った生活を続けながら移転を考えていたある日、いつもは不在の隣人とばったり会ったので聞いてみると、『きゃーっ、それ私では!?鳩がベランダに集まって来るので、鳩よけの薬をまいているんです!』とのこと。配管は、その隣人側にあったので、臭いがうつっていただけでした。Aさんは隣人と日ごろから会話をする仲だったので、原因が分かってほっとし、隣人はすぐにその薬の使用を中止して大ごとにはならなかったとのこと。近ごろ、この鳩対策については、都会の中心でも大変な問題になっています。薬品臭に心当たりがある人はその可能性も模索してみてください」(穂積さん)。【事例2】床下収納の隙間から不明臭郊外のアパートに住むBさん。「数週間前から室内で腐敗臭がするけれど、大掃除を繰り返してもおさまりません。部屋中をくまなく調べた結果、床下収納の隙間から臭うと判明しました。ある日、隣の部屋の前で何やら同じ臭いがすることに気付きます。家主に相談したところ、『臭いの発生源からして、お隣が原因の可能性が高いですが、お隣と連絡が取れません。しばらくは芳香剤でしのいでください』と言われたとのこと。数日後、家主がお隣の連帯保証人の許可を得て室内に入ったところ、子猫の死骸があったと言います」これらの事例について、穂積さんはこう解説を加えます。「Aさんは、『管理会社を頼っていてもなんら解決できない。根本を解決するには自分で動くしかない』と自ら解決した例です。この姿勢は重要だと思います。Bさんの場合は臭いの発生源は分かっても、すぐの対処が不可能な例です。お隣がゴミ部屋にしたまま夜逃げした、などの例もあります。賃貸契約書には、『火災による延焼を防止する必要がある場合、その他緊急の必要がある場合においては、借主の承諾なく、物件内に立ち入ることができる』という旨の条項があります。家主がそれを実行した事例です。臭いの弊害を被ったまま解決できないのは堪え難いことでしょう。家主に相談すると同時に、自分で情報を集めて解決法を探ってみることも重要です。また、『臭いがした日時とその様子を記録』してください。客観的な事象が見えて来ることがあります。万が一、事件や事故が原因であったり、訴訟問題に発展した際の記録にもなります」(穂積さん)。すぐに解決できる原因から、事件事故までさまざまな原因が想定される異臭問題の場合、まずは家主か管理会社に相談し、なおかつ次の一手を自ら考える必要がありそうです。一方で、自分が臭いのもとにならないように暮らすことも重要だと言えるでしょう。監修:穂積啓子氏。「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月14日家賃の未払い、水漏れ、ペット、事件事故……マンションでの生活では、さまざまなトラブルがあると耳にします。では、最も多いトラブルとは何なのでしょうか。国土交通省がまとめた、『平成20年度マンション総合調査』(によると、過去1年間のトラブルの発生状況は、「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が63.4%と最も多く、そのなかでも「生活音」(37.1%)が1位ということが判明しています。トラブルナンバー1は、つまり「騒音」だったのです。そこで、「快適で安全な女性の一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、詳しいお話を伺いました。■子どもの生活音が裁判で敗訴――統計では「騒音」トラブルが1位とのことですが、管理の現場ではどうなのでしょうか。穂積さん:「騒音」に関する相談は日々、寄せられます。最近の裁判の例として、2012年3月15日に東京地裁で、「上の部屋に住む男児が跳びはねてうるさい」として、階下の夫婦が騒音の差し止めなどを求めた訴訟がありました。裁判では、「我慢の限度を超えている」として、男児の父親に一定以上の騒音を出さないよう、また、夫婦が求めた慰謝料計60万円のほか、妻が頭痛で通院した治療費や騒音測定の費用も請求通り支払うように命じる判決を言い渡しています。このケースでは、業者に依頼して騒音を測定した結果に基づいて、「男児が跳びはねたり走り回ったりする音は生活実感としてかなり大きく聞こえ、相当の頻度であった」と指摘、配慮すべき義務を父親が怠った、と判断されました。これはほんの一例ですが、騒音問題は訴訟に発展するケースも少なくありません。――入居前に騒音トラブルを避けるポイントはありますか。穂積さん:騒音の起こりようには、建物の構造が大きく影響します。木造や鉄骨造(S造)の建物よりも、8階くらいまでの中低層のマンションに多い鉄筋コンクリート造(RC造)や、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の方が頑丈で遮音性が高くなります。室内の音だけでなく、廊下を歩く音、階段の昇り降りの音、話し声が響くかどうかも大きく違ってきます。引っ越しビギナーによくある失敗は、「内見のときは静かだった。こんなに隣の音が響くとは……」と、入居後に気付くというパターンです。騒音が気になる方は、 部屋を探す段階で、「閑静な部屋」という条件を掲げて意識してください。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物を選び、より静かな環境を望む場合は、上の階の音が気にならない最上階の角部屋がいいでしょう。――騒音で悩んだとき、どうすればいいでしょうか。穂積さん:隣や階上の住人だと原因が分かっていても、自分で苦情を言いに行くとトラブルになる可能性があるので、まずは管理人、管理会社、家主らに相談してください。おさまらない場合は、騒音を感じた日時、どのような音なのか、何分間続いたのか、ボイスレコーダーで録音するなどして、記録をとってください。相手は「生活の音だ」と主張することがあるので、それに備えて証拠を集め、家主らに伝えましょう。――小さい子どもがいて、こちらが隣近所への騒音になるのでは……と気になります。何かよい方法はありますか。穂積さん:階下が店舗など、入居者がない1・2階の角部屋を選びましょう。また、隣の部屋との壁側にたんすを置くなどのバリアをつくることで、音は緩和されます。階下に住民がいる場合、床素材は、フローリングは高音が響きやすく、カーペットや畳の方が響きにくいということも知っておいてください。子どもは歩幅が小さいので、親にとってはただ歩いているつもりでも、階下の人にはドタンバタンと走り回っているように聞こえるものです。音を吸収しやすい、できるだけ厚手、毛足の長いタイプのカーペットを敷く、床とカーペットの間に防音用のマットを敷くなどの対策を採ることもお勧めします。防音の方法はさまざまありますが、最も大切なことは、「引っ越し時のあいさつ」です。特に子どもやペットがいる場合はいっしょに、少なくとも上下階と両隣の人にあいさつをしておきましょう。騒音トラブルとは、「見知らぬ誰かが出す、得体のしれない音に対し、違和感や脅威、平穏な日常を妨げられることへ怒りや不安がわく」ことから発生します。日ごろからあいさつを交わす関係であれば、「どんな人たちがどのような暮らしをしているのか」が垣間見え、同じ音でもなぜか気にならない、多少は許してあげよう、という気持ちにもなるでしょう。――ありがとうございました。まずは騒音を感じにくい物件を探し、次に、隣近所との良好な関係づくりを心がける。騒音トラブルとは、これだけで相当に避けられるのではないでしょうか。監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)
2012年09月14日生ゴミの臭い、何かが腐ったような臭い、トイレの臭い、何か分からないけれど不快な臭いといった「異臭」の数々。自分が発生源ではない、どこか別の部屋から臭ってくる場合、どう対処すればいいのでしょうか。「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、「異臭のトラブル」の事例と対策法についてお話を伺いました。■異臭ベスト3は「腐敗臭」、「ペット臭」、「ゴミ臭」穂積さんはまず、こう説明します。「異臭騒ぎのベスト3は、腐敗臭、ペット臭、ゴミ臭です。臭いを感じたときは、家主か管理会社にすぐに連絡しましょう。家主は、臭いの元と考えられる住人と連絡が取れない場合は、緊急連絡先や連帯保証人に連絡を取って、立ち会いのもとで室内点検をします。お隣からペット臭がする、ゴミ屋敷状態では? など原因が分かる場合は、家主か管理会社に相談することで解決の糸口が見つかることがあります。ですが、家主に言いさえすれば臭いがなくなるというものではありません。ここがつらいところです」■臭いがした日時、様子を記録する「異臭で困るのは、原因が分からない場合です。対処のしようがないわけです」と穂積さん。事例を交えて解説してもらいました。【事例1】原因不明の薬品臭東京都心のマンション11階に住むAさんの話です。「週に2~3回、ベランダの配管付近から薬品の臭いがして、ベランダに出ると気分が悪くなります。洗濯物にその臭いがうつる、ドアを開けることもできないという状態だとか。管理人と営繕係の人が確認に来て、『ベランダの端にある排水管から異臭がするのでは。明らかに○○(薬品名)の臭いですね。人体に影響はないはず』と、薬品の臭いを指摘したと言います。しかしその後、家主も管理人も、『どこかで誰かが薬品を流しているのでは』とおたおたするだけでほかの住人に確認もせず、なんら解決策をとらないまま『様子を見てほしい』の一点張り。どうしようもなく、窓を閉め切った生活を続けながら移転を考えていたある日、いつもは不在の隣人とばったり会ったので聞いてみると、『きゃーっ、それ私では!?鳩がベランダに集まって来るので、鳩よけの薬をまいているんです!』とのこと。配管は、その隣人側にあったので、臭いがうつっていただけでした。Aさんは隣人と日ごろから会話をする仲だったので、原因が分かってほっとし、隣人はすぐにその薬の使用を中止して大ごとにはならなかったとのこと。近ごろ、この鳩対策については、都会の中心でも大変な問題になっています。薬品臭に心当たりがある人はその可能性も模索してみてください」(穂積さん)。【事例2】床下収納の隙間から不明臭郊外のアパートに住むBさん。「数週間前から室内で腐敗臭がするけれど、大掃除を繰り返してもおさまりません。部屋中をくまなく調べた結果、床下収納の隙間から臭うと判明しました。ある日、隣の部屋の前で何やら同じ臭いがすることに気付きます。家主に相談したところ、『臭いの発生源からして、お隣が原因の可能性が高いですが、お隣と連絡が取れません。しばらくは芳香剤でしのいでください』と言われたとのこと。数日後、家主がお隣の連帯保証人の許可を得て室内に入ったところ、子猫の死骸があったと言います」これらの事例について、穂積さんはこう解説を加えます。「Aさんは、『管理会社を頼っていてもなんら解決できない。根本を解決するには自分で動くしかない』と自ら解決した例です。この姿勢は重要だと思います。Bさんの場合は臭いの発生源は分かっても、すぐの対処が不可能な例です。お隣がゴミ部屋にしたまま夜逃げした、などの例もあります。賃貸契約書には、『火災による延焼を防止する必要がある場合、その他緊急の必要がある場合においては、借主の承諾なく、物件内に立ち入ることができる』という旨の条項があります。家主がそれを実行した事例です。臭いの弊害を被ったまま解決できないのは堪え難いことでしょう。家主に相談すると同時に、自分で情報を集めて解決法を探ってみることも重要です。また、『臭いがした日時とその様子を記録』してください。客観的な事象が見えて来ることがあります。万が一、事件や事故が原因であったり、訴訟問題に発展した際の記録にもなります」(穂積さん)。すぐに解決できる原因から、事件事故までさまざまな原因が想定される異臭問題の場合、まずは家主か管理会社に相談し、なおかつ次の一手を自ら考える必要がありそうです。一方で、自分が臭いのもとにならないように暮らすことも重要だと言えるでしょう。監修:穂積啓子氏。「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)
2012年09月14日マンションやアパートを探すときに、「ブラック物件」という言葉を聞いたことはありませんか。いったい、どのような部屋をそう呼ぶのでしょうか。『不動産屋は見た!』(東京書籍)というコミックエッセイで、ブラック物件について説明する主人公のモデルとなった不動産アドバイザー・穂積啓子氏に詳しいお話を聞いてみました。■事件、事故が起こった部屋のこと穂積さんは、ブラック物件についてこう説明します。「ブラック物件とは、事件、事故(自殺、殺人事件、無理心中、放火、孤立死、暴力団事務所、カルト教団などがあって、入居しようとする人が、心理的に嫌悪する可能性がある物件のことを指します。法律用語では『心理的瑕疵(かし)物件』と言います。心理的瑕疵(かし)とは、建物の構造や見た目には問題はなく、環境も良好だとしても、住み心地の良さを欠くという点で不動産に心理的な欠陥があると考えるわけです。このようなブラック物件になった場合、貸主(家主側)は、新しくその部屋を借りようとする人(借り主)に、事前に『それを告知する義務がある』と宅地建物取引業法と民法で定められています。告知義務がある期間は、自殺や殺傷事件の場合は10年間と言われています」言われています、という表現について、穂積さんは、「法律では、告知の期間については決められておらず、これまでの裁判で『10年』という判例があるため、通例的にそうなっています。実際のところ、事件の内容や個人の感覚、事故に関する周辺住民の記憶、当時の報道内容、事故後の物件の使用状況、物件の種類・タイプなど、事例ごとにさまざまのようです」と話します。■誰かが一度住めば、告知義務はなくなるこの告知については、大家にとって「抜け道がある」と穂積さんは言います。「誰かが一度住んで出て行った場合、その後の入居者には、10年未満であっても告知しないでよい、という事例があります。この解釈を悪用する貸主は多く、実際には貸していないのに書面上で身内の名前を使って一度は貸したことにする、という手口です。露呈した場合は違法にあたります」現在、これらの物件が急増しているとして、社会問題にもなっています」では、どのようにしてブラック物件を見抜くことができるのでしょうか。「近隣の相場より格安な部屋を見つけた場合、その理由を必ず業者に聞いてください。また、ブラック物件と知らずに入居した場合、発覚するのは、『近所のうわさで事実を知った』というパターンが多いのです。ですから、近隣のレストランなどお店に入って話を聞いてみるなど、下調べをしておきましょう。また、それらしき情報を耳にしたら、すぐに仲介した不動産業者に真実を確かめて、対応が悪ければ地域の消費者センターに連絡してください」(穂積さん)穂積さんは、次のようなアドバイスも加えます。「一方で、ブラック物件になると、家主は事件や事故に巻き込まれることになり、家賃収入も途絶えて大変困るわけです。ブラック物件は日本中で増えており、いまや、社会問題にもなっています。そこで、あらかじめ告知した上で、おはらいなどを施してから家賃や保証金など条件を改定して借り主を募る家主もいます。また、UR賃貸住宅や公営住宅では、心理的瑕疵(かし)物件であることを公表して家賃を安くしている場合があります」入居してから気付いたのでは遅い、これらの事実。家賃が安めの部屋に遭遇したら、すぐにラッキーだと舞い上がったり即答をせずに、いったん情報を集めるように心がけたいものです。監修:穂積啓子氏。「女性の安全な暮らし」をテーマとして、大阪市中央区を拠点に活動する不動産アドバイザー。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)
2012年06月26日マンションやアパートなどに入居すると、水道代は家主や管理会社、管理組合から請求されることがあります。「それゆえに、水道代から部屋での悪事が露見することがあるんですよ」と話すのは、「女性の安全な暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザーの穂積啓子さん。詳しいお話を聞いてみました。■水漏れでない場合は、悪事かも?穂積さんは、水道代で悪事が露見した例をこう話します。「ある高級賃貸マンションのオーナーから、『2カ月前に入居した一人暮らしの会社員さん、水道代が月に5万円を超えているのだけど……』と連絡がありました。『単身者の一般住居』として契約、入居された方です。水漏れにしても使用量が多すぎます。何かあるのでは、と心配しつつ、その方の部屋をお訪ねして、『水漏れでは?部屋の点検をさせてください』とドア越しにお聞きしました。が、ご本人からは、『自分で点検します』、『業者に見てもらったけど大丈夫だった』という返事ばかりで、われわれの点検依頼には応じていただけませんでした。それとは別に、隣近所から、『深夜に騒ぎ声がする』などの苦情もありました。すると3カ月後、その部屋に警察が踏み込んだのです。部屋で、違法の風俗店を営業していたというわけです。トラブルがあったお客が通報したそうです。入居時の『会社員』としての申告は正しかったのですが、夜と週末に、その部屋で副業をしていたとのことでした。ほかに、『不法入国の外国人を複数、住まわせていた』、『レンタルルームや、ホテルのデイサービスのような営業をしていた』、『また貸しをしていた』という事例もあります」一般住居の場合、水道代の半分以上は、トイレと風呂での使用によるというデータがあります。「そうです。ですから、半端ではない水道使用量となったときは、トイレと風呂をそれだけ使用していると考えられます。共同住宅において、水道代を管理会社や家主が入居者に請求する場合、当然、家主側は各入居者の水道使用量と水道代を把握しています。ある入居者が、今月だけその量が跳ね上がっていたり、また、ほかの居住者の平均的使用量に比べて格段に多かったりする場合は、たいてい、『なぜこんなに使っているのかな』という疑問がわきます」(穂積さん)■同せいを始めたら、家主は水道代で気付く水道代が急に上がっている入居者に対しては、「まずは、『トイレの水漏れ』を疑います。入居者が知らないうちに水が漏れているということが時々あるからです。ですから、家主側は入居者に対してその都度、水漏れ点検の依頼など、確認をするようにします。水漏れでない場合は、複数か長期の来客があった、または入居者が増えたのだなと予想します。入居者が1人、2週間だけ増えたとしても、水道代は跳ね上がりますから」と穂積さんは説明を加えます。「何かあるな」と危ぶむのはどういうときですか。「点検の依頼をしたとき、居住者が挙動不審だったり、かたくなに部屋に入ることを拒むなどの反応がある場合は、契約違反になることをされている場合が多いです。例えば、賃貸マンションで単身者入居の契約をしていたけれど、『同せいを始めた』というケースは多いですね。この場合、入居時の契約内容に違反することになりますから、家主か管理会社に通知してください」(穂積さん)同居者ができた場合、家主に伝える必要性について、穂積さんはこう説明します。「例えば、火災が起こったときの事後処理にかかわる、指名手配犯や不法滞留外国人を隠ぺいしているなどということも考えられるわけです。よって、入居者が増える場合は、入居時に誰もが審査を受けるのと同様に、住民票、身分証明書の写し、緊急連絡先などを家主に提示する必要があります。単身者専用住宅でない限り、移転を促されたり家賃がアップすることはありませんので、安全に快適に暮らすためにも、ぜひ通知をしてください」では、身に覚えがない高い水道代を請求された場合はどうすればいいのでしょうか。「すぐに管理会社や家主に連絡してください。業者や水道局が点検に来て、水漏れだと判明した場合は、修理代と、漏れた分の水道代が免除になる場合もあります」(穂積さん)水道代ひとつで、生活の様子や状態が判明するのです、恐るべし、水道代。監修:穂積啓子氏。「女性の安全な暮らし」をテーマとして、大阪市中央区を拠点に活動する不動産アドバイザー。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(藤井空/ユンブル)
2012年03月18日手ごろな家賃で、広々としたキッチン、ダイニング、お風呂も夢じゃない!?東京や大阪など都会の不動産業界で今、若い世代を中心に話題になっているのがルームシェアやシェアハウスだと言います。シェアする人たちの部屋を紹介する本や、ルームシェア専門の不動産屋も注目を集めています。そこで、ルームシェアに関するアンケート調査を実施し、さらに、「女性の安全な暮らし」をモットーに大阪市中央区を拠点に活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、暮らしの注意点についてうかがいました。調査期間:2011/12/09~2011/12/14アンケート対象:マイナビニュース会員有効回答数 1,000件(ウェブログイン式)■「家賃を折半できる」、「看病し合える」一方で、「けんかが絶えない」、「プライベートがない」「ルームシェアをしたいと思いますか?」という問いに対し、「はい」という回答は193票(19.3%)、それに対し、「ルームシェアをしたことはありますか?」という問いに、「ある」と回答した人は58票(5.8%)でした。では、現実のシェア生活とはどのようなものなのかを聞いてみましょう。「毎日のたわいないおしゃべりは楽しく、またお互いに料理をしたり、体調の悪いときには看病をしあった。なにより、心強かった」(24歳/女性)、「協力して家事などができる。家賃の折半ができるので安い」(31歳/男性)というプラス評価と、「仲が良かった友人とのルームシェアだったのに、何度もけんかして、腹が立つこともあった。また、お風呂に入りたいときに入れなかったりと生活の時間がずれる」(27歳/女性)、「プライベートがあまりない。自分のいびきが気になる」(22歳/女性)とマイナス評価の意見に分かれました。広い部屋に安く住めたり、寂しくなかったりなどのメリットがある一方、自由な時間が減った、プライバシーがなくなったというデメリットを挙げる人が多くいます。■振り分け間取りを選んで、ルールを決めること前述の不動産アドバイザーの穂積さんは、ルームシェアの実際についてこう話します。「基本的には部屋は個人別々で、台所、トイレ、お風呂などは共有、家賃、光熱費などは折半というのが一般的なスタイルです。家賃の節約、安心感など、さまざまな目的でシェアを希望される方が増えていますが、食べ物の恨み、キッチンやベランダなど共有場所の取り合い、掃除好きか苦手かなど、小さなもめごとが原因で大きなトラブルに発展するケースも多々あります」なんでも、トラブルの元は、「排水溝にたまった髪の毛の掃除をどちらがするか、エアコンをどっちが多く使っているか、ゴミ出しをどちらが多く担っているか、お金にきちんとしているか細かいか、アバウトかなど、日常生活のあらゆる場面にあります」と穂積さん。では、トラブルを避けるためにはどうすればいいのでしょうか。「まず、部屋を選ぶときに、『振り分け間取りを選ぶ』ことが重要です。お互いの部屋を通ることなく、キッチンやトイレに行ける間取りのことです。一定のプライバシーを保つために重要でしょう。また、暮らし始める前に二人で『シェアのルール』を決めて、紙に書き出してお互いに持っておいたり、目立つ場所に張り出しておくことが大切です。管理会社や大家さん、つまり第三者にも渡しておくとよい緊張感が生まれ、安心できるでしょう。守らなければ1,000円を共同貯金箱に入れるなど、ペナルティールールを加えると、より効果的です。さらに、どちらかが相手に無断で出て行ってしまい、後の家賃や水道光熱費の支払いに困ったというケースも多々あります。それらのトラブルに備え、あらかじめ、10万円ほどをお互いの親や家族に渡しておくなどの方法をお勧めしています。ルームシェアでは、価値観やこれまでの生活環境が違う人と暮らすのだからもめることもある、ということをしっかりと認識しておきましょう」(穂積さん)また、ルームシェアの増加の一因について、穂積さんは、「不動産不況下、空き部屋ばかりの古いマンションや大型の家を誰にどのように貸そうか、と考えたところ、外国のシェアハウスのまねをして首都圏郊外で試してみるとウケた、という実情があります。そういう社会的背景があることを知った上で、賢く、自分にとって有益な借り方を考えましょう」と説明します。楽しく有益なルームシェアライフを送るためにも、事前にトラブルの元を想定しておくという心構えが必要といえそうです。監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)
2012年02月01日新しい部屋に移転が決まった。さあ、引っ越し!でもその前に、これまでの部屋を家主に明け渡すという一大作業が……。退去時、敷金の返金や部屋の修理代、鍵の取り換え代、ハウスクリーニング代などについてのトラブルは日常茶飯事だといいます。そこで、「女性の安全な暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、「退去時に多いトラブル・ベスト3」をお聞きし、その現状と対策についてうかがいました。■トラブル1・退去する日の予告日に注意主に20~35歳の世代に一番多い退去時のトラブルナンバー1について、穂積さんは次のように説明します。「何と言っても、『家主への退去日の通知』に関することです。借主は、退去する日について事前に、契約書に記されている『退去の予告期限』までに、家主か管理会社(貸主)に通知しなければなりません。住居の場合は、『退去通告は1カ月前までに』というのが一般的ですが、注意しなくてはならないのが、契約書によって、『月の途中での解約は認めない』などと記載されている場合です。例えば、5月2日に退去する場合でも、5月31日まで家賃が発生してしまうということです。たまに、今日連絡して明日解約できると思っている人もいます。そうなると1カ月以上分の家賃が発生してしまいます。また、家主側から、『6カ月以上前に通知をすること』というような契約書が渡されていたら、その申し出は消費者契約法に違反することもありますので、地域の消費生活センターに問い合わせるなど、対処をしてください。引っ越しを決めたら、まずは契約書を見て、『退去や解約予告の通知日』について正しく把握してから移転プランを立てるのが得策です」■トラブル2・原状回復について2番目に多いトラブルとは、「借主が、退去をするときに、『入居時の状態に戻す=原状回復を行う義務がある』という取り決めの解釈についてです」と言う穂積さん。続けて、こう説明します。「借主は原状回復をどこまでするか、という点が疑問に感じるかと思います。普通に暮らしていて、年月とともに当然生じる自然損耗や汚損は、借主が負担する必要はありません。国土交通省(旧建設省)や地方自治体などでガイドラインが定められています。例えば、次の事項などは、家主側が負担するべきものです。・日照による自然損耗(そんもう)、経年や通常使用による汚損(おそん)や破損、劣化したクロスや壁紙、畳、フローリング、ふすまなどの張り替え・同様の理由で劣化、毀損(きそん)した風呂釜、給湯器、キッチン設備などの交換・画びょうなどで空いた軽微な穴の補修・鍵の取り換えただし、これらの汚損が、『借主の不注意で著しく汚損した場合』は、借主が原状回復させる義務があります。料金明細を出された上で、敷金から差し引かれることになります。退去時に家主や管理会社が立ち会って室内を点検しますが、そのときに『どう考えても自然損耗であるのに、一方的に借主側の責任と言われ、高圧的な態度で確認書類に署名をさせられた』などと、泣き寝入りしてしまうケースもあると聞きます。そんな事態を避けるためには、次のような入居時の心構えこそがトラブル予防につながります。・入居時から1週間以内に、部屋全体、それに壁紙、インドア、バスルーム、トイレ、フローリングやカーペットなどの細部の写真を撮っておきましょう。特に、経年劣化している柱や窓のサン、通常の掃除ではとれない水まわりの汚れ、カビ、フローリングの小さな穴などには要注意です。汚れなどがあれば、家主と管理会社に写真を送っておきましょう。・キッチンやバスルーム、トイレなど水まわりは要チェック。水の出方が悪い、おかしいなど違和感がある場合は、「こんなものか」と見過ごさないで、すぐに家主側に連絡をします。合わせて、何年何月何日にそのことを告げたこと、家主の返答内容などの記録をしておきましょう。・入居中でも、部屋に異変があれば、同様にすぐに家主側に知らせて記録をしておきましょう。・何らかの違和感を覚えることがあれば、家族や上司に伝えておきましょう。その上で、退去時の室内点検には、家族や上司に頼んでいっしょに立ち会ってもらいましょう。第三者による冷静な判断があると、比較的トラブルは避けることができます。・必ず自分で立ち会い、汚れなどについては自ら理由を説明しましょう。家主と時間的都合が合わず、家主から『こちらで見て後で連絡する』と言われることがありますが、これはトラブルのもとです。経年劣化であれば、その旨を主張するようにしてください。いずれにしても、納得がいかない高額の請求をされた場合は、泣き寝入りをせずに、弁護士や司法書士、消費生活センターなどに相談をしてください」■トラブル3・敷金返納について入居時に預けた敷金はいつ、いくら戻ってくるのか、これが一番不安な点です。穂積さんは次のように話します。「トラブルになりやすいのは、『鍵の交換代』と『ハウスクリーニング代』を請求された、ということです。この2つは、家主側が負担すべきものです。国土交通省のガイドラインでは、借主に負担を負わせる特約については、借主側が負担すべき理由があってそれを認識していること、借主が義務負担の意志表示をしていることの要件を満たしていなければならないことになっています。契約書に明記されていたとしても、2001年4月以降の契約であれば、消費者契約法により、ハウスクリーニングの特約(特別な条件の約束事項)が認められる可能性はほとんどないでしょう。請求された場合はそれらを説明し、『支払う義務はない』と伝えるとよいでしょう。ただし、これらは、普通に掃除をしていた場合に主張できることです。汚部屋にしていた、結露もカビも何年も放ったままだったなど、借主の過度の怠慢や過失、または故意による汚損については、ハウスクリーニング代ほか、弁償の義務は発生します。例えば、タバコのヤニ汚れは、通常はクリーニングで除去できるものですので、家主側の負担です。ですが、畳やカーペット、クロスに焦げ跡をつけたとなると借主の不注意とみなされ、借主の負担とするのが通常です。敷金が戻ってくる時期は、通常、『退去日から2~3週間以内に明細書が届き、双方が合意に達すれば、1カ月で送金』となります。退去時にその日にちの確認をする、3週間たっても明細が届かない、1カ月たっても支払いがないなどの場合は、必ず、電話で問い合わせをしましょう。『催促されないと払わない』という家主はとても多いのです。放っておくと払われないことになりかねません」最後に穂積さんは、こうアドバイスします。「契約前に仲介業者から受ける『重要事項説明』の内容をきちんと聞き、さらに契約書をよく読み、特約に何が書いてあるのか確認してください。退去予告、原状回復、敷金の返還などの記述について重々確認し、内容が納得できなければ、そのような物件とは契約しないようにするのが一番のトラブル回避となるでしょう。また、『契約書をなくした』という人も多いのですが、これは論外。確認はおろか、家主にはずさんだと判断されます。大切に保管しておきましょう」何を隠そう、筆者もつい先日の退去時に、ハウスクリーニング代を52,500円も敷金から引かれてしまったばかり。これらの知識、情報を持ち得なかったので、泣く泣く払ってしまいました。悔しい!こういうことにならないように、最後までしっかり考えて、大切な契約に臨みたいものです。参考行政法人国民生活センター賃貸住宅の退去時に伴う原状回復に関するトラブル東京都賃貸住宅トラブル防止ガイドライン大阪府賃貸退去時のトラブル―原状回復問題―監修:穂積啓子氏。「女性の安全な暮らし」をテーマとして、大阪市中央区を拠点に活動する不動産アドバイザー。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(藤井空/ユンブル)【関連リンク】【コラム】検証!部屋探し術。ゼロゼロ物件のここに注意【コラム】家賃1万円で意外と快適!?社員寮の実態を調べてみた【コラム】一人暮らしの部屋探し!何を一番重視する?
2011年12月13日ひとり暮らしを始めたい、通勤に便利な沿線に引っ越しをしたいと思っても、敷金礼金の初期費用を考えるとそう簡単には実行できません。そこで、敷金ゼロ円、礼金ゼロ円のいわゆる「ゼロゼロ物件」をチェックすることも多いのではないでしょうか。でも、敷金礼金が数十万円になる物件が多い中、なぜゼロゼロが成立するのでしょうか。もしやトラブルでも……と身構えてしまうこともあります。ここで、「女性の安全な暮らし」をモットーに大阪市中央区を拠点に活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、ゼロゼロ物件選びの注意点についてうかがいました。■敷金礼金以外の加算費用に注意――なぜ敷金や礼金がゼロの物件があるのでしょうか。穂積さん「これが今、流行している背景のひとつには、借り手市場ということがあげられます。バブル期にどんどんアパートやマンションが建設されたのは周知の事実ですが、不況になった今でも不労収入(家賃収入)で安定した生活を送りたいとあこがれる人が多く、マンションの建設数は増えています。そのため、特に設備などが古いマンションは空き室率が高い状態です。そこで、敷金礼金をゼロにしてでも早く誰かに部屋を貸して、空き室を減らしたいと考える大家さんが増えたのです」――ではゼロゼロ物件は借り手にとって、お得な物件ということですか。穂積さん「いいえ、必ずしもそうとは言えません。ゼロゼロ物件には気を付けないといけないこともあります。例えば、敷金礼金がゼロでも、敷金礼金以外の費用が請求されるところにゼロゼロ物件のカラクリがあります。敷金、礼金はゼロでも、契約時には仲介手数料、前家賃、日割り家賃、火災保険料、共益費も必要です。本来は大家さんが負担すべき鍵の交換費用数万円を借り主が負担したり、短期で退去した場合、家賃の1~2カ月分を違約金として請求される場合などがあります。礼金は本来、部屋を退去するときに、経年による破損や汚損(おそん)部分の原状回復費用にあてられるものですが、ゼロゼロ物件の場合、退去するときは部屋の原状回復費用を実費で請求されることも多いので、想定外の出費がかかることがあるんです。さらに、ゼロゼロ物件では保証人のほかに、保証会社に入ることを条件にしている場合もあります。その保証料は会社によって異なりますが、初回に家賃と共益費の50%、1年ごとの契約更新料が10,000円~20,000円というシステムが一般的です」■契約前に「重要事項説明」をチェック――ゼロゼロ物件を借りるときの注意点を教えてください。穂積さん「不動産仲介業者は、借り主に対して賃貸借契約締結前に『重要事項説明』を行うことが法律で義務付けられています。この内容は書面によるもので、契約条件のほかに、原状回復費用の負担区分、登記簿事項、違約金条項、部屋の用途、居住人数、ペットは可かどうかまで、こと細かに書かれています。特に敷金礼金がゼロの物件では、『退去するときの原状回復を誰がするか』を必ずチェックし、それについて納得してから契約をするようにしてください。もし、それらの取り決めについて触れていなかったり、表現があいまいだったりした場合、また、これ以外でも納得がいかないときには契約を考え直すことが大切だと思います」(穂積さん)。――ゼロゼロ物件の大家さんは、入居者をどう見ているのでしょう。穂積さん「ゼロゼロ物件は初期費用が通常よりも少なくて済むので、『家賃は絶対に滞納しない』、『部屋を壊さずキレイに使う自信がある』という入居者には魅力的なシステムです。ただし大家さんからすると、敷金は家賃を滞納されたときに補てんする役割でもあります。ゼロゼロで部屋を貸す場合はその預かり金となる敷金を受け取れないため、『この人は毎月きちんと家賃を支払ってくれるだろうか』と滞納されることを常に心配しなくてはなりません。ネットなどでよくうわさになるゼロゼロ物件のトラブルとして、『家賃を3日滞納したら、勝手に鍵を替えられて部屋を追い出された』という話がありますが、これは人道的には許されることではないでしょう。しかし、貸し主側の立場からすれば、家賃滞納は迷惑行為です。『家賃を滞納する入居者』に対しては、即刻督促をすることになります。ゼロゼロ物件を借りるにしても、財布が苦しいときなど、いざというときのために1~2カ月分の家賃代金くらいは貯蓄しておいたほうが安心でしょう」と穂積さんは続けます。ゼロゼロだからといって、貯金もゼロゼロではいざというときに困るというわけです。預金通帳のけた数のゼロを増やすことも大切かもしれません。監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(下関崇子/ユンブル)【関連リンク】【コラム】検証!部屋探し術。管理がよい物件を選ぶポイントとは【コラム】全然気にしないならアリ!?「事故物件」の探し方【コラム】フリーターですが、家買えますか?
2011年10月28日物騒な事件が多いこのごろ、ひとり暮らしを始めるのでできるだけ管理のよい物件を見つけたい……。引っ越しビギナーにとって、部屋探しに不安はつきものです。そこで、大阪市中央区で「女性の安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏にアドバイスをお願いしました。■共用部分を見れば管理状態が分かる「管理が行き届いた物件を見抜くポイント」について、穂積さんは、「建物の内側と外側の両面をチェックする視点を持つようにしてください。すると、家主や管理会社の姿勢が透けて見えることがあります」と話します。仲介をする不動産屋さんに新しい部屋を案内してもらうときには、営業の人と部屋に直行することになりますが、その際に、「部屋ばかりに気を取られる人が多いようですが、実は外観やその周囲をぬかりなくチェックすると、その物件の管理状態を感じ取ることができます」と穂積さん。なぜなら、「部屋に到達するまでには、玄関や集合ポスト、エレベーター、廊下などの共用部分を通りますから、意識を高く持ってそのあたりからチェックをしていきます」と穂積さん。また、「共用部分のありかたは共益費に反映されるということを知っておいてください」とも。一般的に、賃貸マンションやアパートでの毎月の住居費は、「家賃+共益費」を支払うことになります。共益費は、ごみ処理、清掃、エレベーターの保守点検、照明のつけかえなど、共用部分の管理代に適用されます。「不動産屋さんに仲介してもらうにあたっては、家賃、共益費、所在地、広さ、階数、間取りなど、部屋の概要について明記された書類が手渡されます。そこに家賃だけの表示がある場合は、共益費は家賃に含まれているということです。不明な場合は、『共益費はどうなっていますか?』と不動産屋さんに確認しておくとよいでしょう」と穂積さん。■最大ポイントは、きちんと清掃されているかどうかマンションやアパートなどの共同住宅にとって、「共用部分」とは、次の場所を指します。・建物の玄関とその周囲・集合ポスト・エレベーターホール・エレベーター・廊下・階段・壁や天井・ごみ置き場・自転車置き場・植え込みや庭などさらに、・部屋の玄関扉・ベランダも共用部分になります。「共用部分をチェックする最大のポイントは、『きちんと清掃されているかどうか』です。築年数が新しい古いにかかわらず、管理状態というのは、共用部分の清潔感に反映されることが多々あります。例えば、集合ポストが壊れている、チラシが散乱している、落書きがある、タバコの吸い殻のポイ捨てがある、掲示板に期間切れ告知の張り紙がある、廊下がほこりだらけ、天井や壁に雨漏りのしみ、自転車置き場やごみ置き場が乱雑、電球が切れている、エレベーターの押しボタンが破損しているなど、清潔感に乏しいと感じる場合は、きちんと管理されていない、入居者もルーズな人が多いと想定することができます」(穂積さん)また、「管理がずさんそうである場合は、入居後に、家主や管理会社、近隣とのトラブルが発生する確率が高いと判断したほうが無難でしょう」とアドバイスをします。■共用部分からは、家主の防犯意識も見てとれるもう一つの視点として、「共用部分には、家主や管理会社の防犯意識が反映される」とか。「外から人が立ち入りやすい、階段の踊り場や廊下に人が隠れやすい、自分の部屋の玄関が外から見て死角になっている、ベランダから侵入されやすい、道路に面していて外からのぞかれやすい、そんなことはないか、建物のつくりをチェックしてください。仲介のためにお客さまを現地へ案内するとき、特に部屋探しのビギナーさんの場合は、これら防犯への意識が低いことが多いんです」と穂積さんは注意を促します。■道路や線路に面していないかさらに、騒音についてもチェックが必要だと言います。「ベランダが大きな道路や線路に面している場合は、必ず、車や電車の騒音が響くと考えてください。同時に、部屋を内見するときにはベランダを開け放って、どの程度の音がするのかを十分に確認してください。入居後に、『あんなに車の音が響くとは知らなかった!』という不快な思いをする場合がありますから。もっと言うと、大型車や電車が通るたびに振動で部屋が揺れたり、自動車や電車が放つ電波でパソコンや携帯電話に弊害をもたらすことがあります。必ずその部屋から、携帯電話や無線LANが正しく使えるかどうかを確認してください。そういう立地で優良な物件の場合は、二重窓になっています。窓を開けると音は響きますが、閉めるとほぼ音がしないというパターンも多くあります。それで許容範囲かどうか、自分で確かめるようにしましょう」と穂積さんは念を押します。■1階がコンビニ、飲食店などの場合は防犯に注意1階が飲食店、コンビニ、何かのショップ、という物件には、「どのような業種で、営業時間は何時(いつ)までで、お客さんはどういう人たちなのかをチェックしてください。コンビニは便利だと考えがちですが、24時間、電気が明々とついていて窓越しの光で不眠に陥る、深夜に人の出入りが多くてかえって物騒だということがあります。店の前や駐車場に車やバイクが集まるので頻繁にエンジン音がしたり、大声で話をされて騒々しいことも。特に深夜の物音、話し声は階上によく響くんです。それらが自分の生活にどう影響しそうなのかを想像してみることが大切です」(穂積さん)飲食店が入居する物件は、ゴキブリなどの害虫が排水管を通って階上の部屋に侵入することがあります。また、店に出入りするお客さんの様子などを知るために、あらかじめ店を利用してみるなど、「なにごとも入念な下見が重要」だと言います。また、不動産屋さんに案内される際には、店から物件まで車で移動することが多いものですが、「街の様子は、昼と夜ではまったく違い、昼には気付かなかった風俗店が夜から明け方まで開店しているということもあります。入居を決める前には物件から駅まで歩き、周囲を散策してください。昼だけでなく、自分の通勤時間帯、特に遅く帰るときなどを想定し、必ず夜も歩いてください。時間によって変化する街の様子が分かります。自転車での移動が多い人は、後日に自転車で走ってみてください。また、できるだけ、引っ越し後の生活をシミュレーションしておくと意外なメリット、デメリットを発見できる」と穂積さんは強調します。お話を聞くうちに、共用部分には、家主や管理会社がその建物を大事にしているかどうかが反映され、そのことは自分の生活に直接的な影響を受けるのだと気付きました。次の部屋探しのときには、間取りや設備など見た目だけではなく、心豊かな生活が送れるかどうかを想像しながらチェックしようと思います。監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(海野愛子/ユンブル)【関連リンク】【コラム】女子の一人暮らしは危険だらけ!マンションでチカンが潜む場所は【コラム】マンションライフのトラブルナンバーワンとは?【コラム】部屋から下着がなくなる……犯人はあのヒトだった!
2011年09月29日東京で飲み会に参加すると、周囲の人たちがなにやらケッタイな大阪弁になって行きます……。そう、ワタシは生まれも育ちも大阪。どうやら大阪弁は周りに伝染するようです、それも中途半端に。ということで、『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(中経出版)の著者で、大阪弁に詳しい、阪神タイガース私設応援団・猛虎魂会(もうこたましいかい)会長・阪神ファン研究家の朝日奈ゆかさんに正しい大阪弁を教えていただきました。■基礎編――あいさつ、人の名前の呼び方「まずは基本のキですが、みなさん、あいさつに関してだけは、ことばの意味や受け応えについて正しく理解しておきましょう。特に返答を間違うと相手が困ります」と朝日奈さん。<あいさつ>「まいど、おおきに」→訳「こんにちは、ありがとう」使い方「取引先で、オフィスで、学校で、街で、友人知人とのあいさつの定番です。『Hello!』の意味なので、初めて会った人でも『まいど』は使えます。別れ際にも使います。電話、メールの出だしや結語としても使用OK。手紙では、『拝啓』や『敬具』の代わりにもなります。また、商談でたとえ取引が成立しなくても、特に何も買ってもらわなくても、『おおきに』と言いましょう。相手に対する感謝の意であり、イヤミではありません。阪神の外国人選手・マートンが、ヒーローインタビューで最後にこれを言って大ウケ、翌日のスポーツ新聞の大見出しになっていました。外国人や関西以外の人が一番まねしやすいフレーズです。大きな声で元気に、照れずに言うのがコツです」(朝日奈さん)「もうかってまっか?」、「ぼちぼちでんなぁ」→訳「元気ですか?」、「はい、元気です」使い方「『まいど、おおきに』に続いて使うあいさつで、『How do you do? I’m fine, thank you.』の意味です。『もうかってまっか?』と聞かれて、『それがこのごろ赤字続きで……』とか、『経費節減でどうのこうの』とか、『今日の売り上げは100万円です』だとか、細かい事情を話さないようにしましょう。『ぼちぼちでんなぁ』は、たとえもうかって笑いが止まらないときでも、赤貧のドン底であっても、こう答えるのが大阪弁の妙です。ただし、中級以上になると、『えらいもうかって、カネ余って困ってまんねん』とか『1円ものうなってしもて、きつねうどんも食べれまへんわ』とか、ツッコミで返す人もいますが、これはウケねらいです。ウケるには、『相手の意表をつく』のがポイントとなります。ほかのバージョンとして、相手が女性の場合、『もうかってまっか?』の代わりに、『べっぴんさんですなあ』が使えます。言われた女性は、『ぼちぼちですわ』と答えます。本気にすると、相手が困ります」(朝日奈さん)<名前の呼び方>「~はん」、「~っさん」、「~っつあん」、「~やん」のパターンがあります。朝日奈さんのコメントとともに呼称の例を紹介します。吉田さん→吉田はん、岩田さん→岩田はん、玲子さん→玲子はん、真弓さん→真弓はんなど「『はん』は敬称です。京都弁でも使用しますが、京都弁の『~はん』はニュアンスは柔らかいですが、人との親密さにおいて距離があります。大阪弁はコテコテの呼び方で相手との距離を近く感じさせます」吉田さん→よっさん、森さん→もっさん、林さん→はやっさん、靖さん→やっさんなど「『音便化』です。『前の音が○○のとき、音便となる』という文法はありません。呼びやすい人を呼んでください」金本さん→かねもっつぁん、谷口さん→たにぐっつぁん、小松さん→こまっつぁん、大仏さん→だいぶっつぁん、応用で、関本さん→せっきゃんなど「『音便化』の応用です。上方落語の登場人物に多い呼称です。親しい人を呼ぶときに使います。取引先の人には、2~3回会ってから呼ぶと親しくなれるかもしれません。呼称でなくても、『ごちそうさま→ごっつぁん』という言い回しもあります」藤川さん→ふじやん、清水さん→しみやん、久仁子さん→くにやん、茂君→しげやんなど「『やん』は、家族、親戚、友人、ご近所さんら、親しい人に使いましょう。ポチ→ポチやんなど、ペットにもOK」朝日奈さんからのアドバイス「語尾の変化にルールはありません。大阪人は、小さいときから誰かれとなくこう呼びあって、自分もどれかで呼ばれたことがあって、これらの語尾に慣れているだけです。取りあえず、周囲の人の名前をかたっぱしから、呼びやすい形で呼んでみましょう」■語尾がポイント――がな、でっせ、や朝日奈さん「大阪弁は語尾に特徴があります。語尾を理解すると、大阪弁を使うことがおもしろくなります。まずは例文を復唱しましょう。語尾変化がつかめてくるはずです。発音、イントネーションは、大阪の芸人が出演するバラエティ番組などを見て、まねてください」●「がな」明石家さんまさんをはじめ、関西出身の芸人が『でんがな・まんがな』とよく使っていますが、実はていねい語です。『です』→『でんねん』→『でんがな』、『ます』→『まんねん』→『まんがな』と、変形していったわけです。例文「そうでんがな」(そうです)、「ええがな」(良いですねえ)、「知りまへんがな」(知らないです)「これ、なんぼしまんねん」(これ、いくらですか)「100万円でんねん」(100万円です)「そら、高いもんでんがな」(ええっ、それは高いですね)「ちゃいまんがな、冗談でんがな」(違いますよ、冗談です)●「でっせ」、「や」おおまかには、「~です」という意味です。親しい人の間で使いますが、特に「や」は、大阪弁のいたるところで使う語尾です。例文「お客さんでっせ」(お客さんですよ)、「これ、お得でっせ」(これ、お得ですよ)、「怒らんとってや」(怒らないでね)、「勉強しぃや」(勉強してね)、「ほな、そうしときや」(では、そうしてね)、「こけなや」(ころばないでね)■阪神タイガース応援編ではここで、朝日奈さんに、阪神ファンが阪神タイガースを応援するときに使用する大阪弁を、標準語訳つきで紹介していただきましょう。日常の会話でも使っている人はいますが、レベルは中級以上です。「うわっ、こらもうアカン、いてこまされた!」(ああ、もうだめ、絶対絶命です)「おのれ、何さらしとんねん。誰の金でくわしてもろてるとおもとんのじゃ」(君、何をしているのですか。誰にお給料をもらっていると思っているのですか)「往生際(おうじょうぎわ)の悪いことすな!」(あきらめの悪いことをしないで)「びびらしたろか」(おどろかしますよ)「どこ目ぇつけとるんじゃ、われ、前みんかい、前!」(どこを見ているのですか、君、前を見なさい、前を)「えらいぎょうさん、点とられとるがな、どないなっとんねん」(たくさん点をとられています、いったいどうなっているのでしょうか)「アホなことすな!」(バカなことをしないで)「もうワシのことはほっといてんか」(もう、僕のことは放っておいてください)「ほりこまんかい!」(ホームランを打ってください)「どないせえっちゅうねん」(どうしろと言うのですか)「ようやっと、ツキが回ってきたで~」(ようやく、運が巡ってきました)「優勝や言うとんで、仕事どころとちゃうやろ!」(優勝するらしいですよ。仕事をしている場合ではありません)「しんぼうせんかい!」(がまんしなさい)「阪神電車に乗って、はよいね!」(阪神電車に乗って、早く帰りなさい)「弱いもん(阪神のこと)いじめたおしてなんやおもろいか?」(弱いものいじめをして、何がおもしろいのですか)「えらい強うてすんませんな~」(大変強くてすみませんね)朝日奈さんは、「よい子のみなさん、おもしろいからといってむやみにまねをしないようにしましょう。大人のみなさん、これらの応援(?)は、阪神ファンが阪神タイガースに向かって言うことばです。他球団ファンが言うと、阪神ファンにボコボコにされる恐れがあります。子どもの悪口を言ってもいいのは親だけ、というのと同じ理屈です」と注意します。最後に、勉強法についてこう言います。「ここに記した太字を何度も繰り返し音読し、コテコテの大阪弁を話す友人をつかまえては、日々、会話をしてください。そして、大阪に来る、遊ぶ、暮らす、甲子園球場に阪神の試合を見に行く、特にライトスタンド(1塁側外野席)の真ん中あたりに座ってネイティブ大阪弁を学び、使いまくることが大阪弁習得の一番の近道です」(朝日奈さん)甲子園球場では、使い間違っても、周囲にいる見知らぬ大阪の人たちが「なんでやねん、ちゃいまっせ」(なんということでしょう。まちがっていますよ)とツッコミしつつ、正しい大阪弁を教えてくれることでしょう。監修:朝日奈ゆか氏。『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(猛虎魂会中経出版1,000円)の著者で、阪神ファン研究家としてメディアなどで活躍中。編集者。文筆家。株式会社ユンブル代表取締役。(海野愛子/ユンブル)【関連リンク】【コラム】えっ!これ方言!?【コラム】飲み会でいちばん会話が盛り上がるのは「○○県出身者」!?【コラム】「ベニーランド」「十万石饅頭」…ローカルCM-1グランプリ
2011年08月05日平穏無事な日々の暮らし……、でも、生活のトラブルとはある日突然にやってくるもの。いつ巻き込まれるかは分かりません。国土交通省がまとめた、『平成20年度マンション総合調査』(によると、過去1年間のトラブルの発生状況は、「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が63.4%と最も多く、次いで「建物の不具合に係るもの」が36.8%、「費用負担に係るもの」が32.0%とあります。「特にトラブルは発生していない」は22.3%に過ぎず、実に8割近くの人に1年の間で何らかのトラブルが起こっているという結果です。そして、一番多く発生した「居住者間の行為、マナー」の具体的なトラブルの内容は、「生活音」。これがなんと37.1%も占めています。マンションのトラブルナンバーワンは、「騒音」だったのです。ここで、「快適で安全な女性の一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、「マンションの騒音トラブル」についてお話をうかがいました。■苦情は管理会社や管理人さんに相談を――そもそも、生活に音はつきもので、どこまでが生活音でどこからが騒音なのかは人それぞれの感覚によることが多いように思いますが……。穂積さん「そうですね。生活音は人によって感じ方もいろいろですし、近隣の住人との人間関係の悪化が原因で、その住人が出す音に対しては特に神経質に反応してしまう場合もあります」――騒音に対する苦情を伝えたいけれど、相手ともめ事にならないようにするには、どうすればいいでしょうか。穂積さん「苦情を相手に直接伝えるとトラブルとなりやすいので、まずは建物の管理会社や管理人さんに相談してください。彼らのほうで掲示板に張り紙をするとか、誰からの苦情だとは告げないでさりげなく注意をするなど、対処をしてくれるはずです。まずは騒音の元となっている人に対して、間接的に『騒音が発生している』ということを伝えることですね」■騒音が発生したら、詳細を記録して録音する――それでも改善されないと感じる場合、どうすればいいでしょうか。穂積さん「3日~1週間ほど様子を見て、まだ騒音がおさまらないようなら、騒音の詳細を記録してください。『日時』、『音の内容』、『継続時間』、『音量の程度』などを具体的にメモします。ボイスレコーダーなどで録音するのが一番いいですね。管理会社への報告や、警察へ通報するようなことに発展した場合の証拠になります。また、騒音を起こしている人にすれば、近所の住人が記録をしていると知った場合、騒音発生の抑制になるかもしれません」――実際に訴訟になることもあるのですか。穂積さん「もちろん、ありますよ。平穏な生活や安眠を妨害する騒音トラブルがこじれることはよくあります。ですが、お互いさまの音や一過性の音である場合がほとんどなので、われわれのもとに寄せられる苦情の数の割には裁判に発展することはそう多くはないようです。過去に、上の階の住人の生活音に耐えられず、上の階の住人に対して、フローリングの床をじゅうたんに変更することを求めた裁判では、『受忍限度内である』として請求を退けた判例が多数あります。もちろん、慰謝料が認定されたケースもあります」――受忍限度とはどういう意味ですか。穂積さん「受忍限度とは、社会生活をする上で、一般的に我慢することを求められる限界点です。家庭で起こる騒音に関する法律上の規制基準はありませんが、条例で規制基準を定めている自治体もあります。規制の基準がない場合では、被害の内容や程度を中心に、トラブルのケースごとに受忍限度を判断せざるを得ないのです。受忍限度内かどうかを判断する要素では、被害の内容が最も重視されます。生命や健康といった体に被害を及ぼす場合は、原則として受忍限度を超えて違法であると判断されます」■トラブルを防ぐカギは「ご近所コミュニケーション」――こうしたトラブルを予防する方法はありますか。穂積さん「例えば、家族や友人、好きな人、ペットが何かをしている音は特に気にならないものですよね。ここに解決の糸口があります。引っ越しの際に、両隣と上下階、管理人さんたちにあいさつをするだけでその後のトラブルを避けることができます。日ごろから、廊下などですれ違ったら声を掛け合うなど、コミュニケーションをとっておくことがなにより大事なのです。お隣さんは五人家族だな、幼い子どもがいるな、早寝早起きなんだな、など、どんな人たちがどのような暮らしをしているのかが見えると、なぜか気にならない。度が過ぎても謝罪があれば許す、という考え方に向くようになるでしょう。特に、マンションやアパートの場合は、『共同住宅』です。共同で一つの建物に暮らしていると認識して、近隣の人たちとできるだけ仲良くしておくことがトラブル回避の最大ポイントです」生活音と騒音の差は紙一重。人によってとらえ方が違うからこそ、トラブルのもとになるようです。くつろぐための場所である家や部屋が、トラブル続きで心休まらないのは本末転倒。日々の暮らしを快適に過ごすためにも、トラブルは避けたいものです。監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)【関連リンク】【コラム】部屋から下着がなくなる……犯人はあのヒトだった!【コラム】女子の一人暮らしは危険だらけ!マンションでチカンが潜む場所は【コラム】知られざるタワーマンション生活!高層階住民の声を集めてみた
2011年06月21日26歳のある女性が証言します。「最近、部屋に誰かが入ってきているような気配があるのよ。冷蔵庫からビールが無くなっている感じがして」ええっーそれはタイヘン!「同じような経験があるけど、気のせい?」と思っているあなた、すぐに対処しないとなりません。留守の間に見知らぬ誰かが侵入して少しずつ下着やモノを盗んでいるなんて事件は日常的に起こっているのですから……。写真:(C)朝日奈ゆか、東條さち子『不動産屋は見た!』(東京書籍)より■頻繁に起こっている女性の部屋への侵入事件昨年末、新聞やウェブサイトに、「下着ドロの正体は大手住宅メーカー社員合鍵を悪用」というニュースが流れました。さらに、産経新聞によると「衝撃事件の核心」というテーマで特集記事を組んでおり、それには、「犯人の不動産会社社員はアパートの全部屋を開けることができるマスターキーを持ち、女性の部屋を狙って7年も前から同じ手口で犯行を繰り返していた」とあります。では、「部屋に不審者が!?」と感じたときにはどうすればいいのでしょうか。防犯は可能なのでしょうか。「女性の安全な暮らし」をテーマに大阪市中央区を中心に活躍する不動産アドバイザーの穂積啓子さんにお話を聞きました。「実は、この手の犯罪は意外に多いのですよ。女性が新しく入居するということが決まると、盗撮カメラを取り付けた、盗聴器を忍ばせていたというパターンもよくあります」と、事件が頻繁に起こるわりには最近は注目もされなくなっている、ということを懸念します。実際、先のニュースでは、「この事件は氷山の一角。不動産会社の社員による合鍵を使った犯罪は全国的に後を絶たない」と書かれていました。■犯人は大家だった!大家の息子だった!「衝撃的な犯人像は、ほかにこんな例があります」と穂積氏は続けます。「下着がなくなるのを不審に思った入居者が、自分で部屋に隠しカメラを取り付けて撮影したところ、写っていた犯人はなんと、大家だった、という事件もありました。大家さんはマンションの最上階に住んでいることが多く、その気になれば、入居者の出入りや行動パターンを把握しやすいのです。会社員の場合、平日は朝から晩まで留守にするでしょう。そう、見られているのですよ」ううっ、大家が留守中に合鍵を使って侵入するなんて。「大家の息子が犯人だった、という例も多々あります。この場合、親である大家さんはうすうす気づいていたそうです。息子が合鍵を使って何かよからぬことをしているのじゃないか、と。それでも注意も告発もできず、事件にいたったというパターンですよ」(穂積さん)そんなことがあっていいのでしょうか……。当然、どこの大家さんも合鍵を持っています。その家族が手にすることもあるでしょう。防ぎようがないではないですか。■犯人は前の住人だった……犯人のパターンはほかにもあります。「入居者が変わるときに、鍵を取り換えるのが当然のルールですが、それをしない家主もいます。ということは、前の住人がその鍵でいつでも入れる、ということでしょう。自分の次の入居者が若い女性の一人暮らしだと知って侵入した、という事件もあります。それに、引っ越し前にその情報が入れば、部屋に盗撮カメラを仕込んでおくことは簡単でしょう」と穂積さん。「前の住人の彼氏が犯人だった、ということもありましたよ。前の住人さんが彼氏に合鍵を渡していたのですよね。別れたあとも」(穂積さん)別れた相手が合鍵を処分したかどうか。なかなか確認できせんね。後々トラブルの元になることがあるそうです。■あなたの部屋の合鍵は、誰かが必ず持っている不動産屋、管理会社、大家、前の住人。これらの人たちはみな、合鍵を持っています。それに、穂積さんは「マンションやアパートなど集合住宅というのは、すべての住戸の鍵を開けることができるマスターキーというものが存在するのです。今やこういう犯罪が起こるたびに報道されていますが、まだそのことを知らない人は多いようですね」と説明します。「つまり、集合住宅に住んでいる限り、ほかの誰かもあなたの部屋の鍵を持っているということです。まずは、それを知っておいてください」(穂積さん)はい、今後はキモに銘じます。でも、防犯の手だてはあるのでしょうか。「入居のときに必ず、『鍵は取り換えたかどうか』を確認してください。これで前の住人とその関係者の侵入は防げます。また、『ほか合鍵はどなたが何本持っていらっしゃるのでしょうか』という確認も必要です。これまで、暗黙の了解でお客さんには合鍵の存在を告げない管理会社がほとんどでした。が、今やもう、こんなに危ない事件が頻発する時代です。鍵の所在確認はあたりまえですよ」合鍵がどこに所在するのかという確認は、大家や管理会社に「防犯意識の高い人だな」という印象を与えるでしょう。けん制の効果があるかもしれません。過去には、管理会社の幹部が合鍵を使って女子大生の部屋に侵入し、性的暴行を加えた上に殺してしまったという事件もあり、大ニュースになりました。「仕事上の立場を利用した卑劣極まりない行為です。許せません。不動産屋、管理会社、大家も信用できないということです」とわれわれ一般入居者の意見を代弁する穂積氏。「少しでも『誰かに侵入されているのでは』と感じたら、家族や友人、上司ら信用できる人か、警察に相談してください。放置しておくと下着ドロではすまない事態に発展しますよ!」と続けます。何より、自分から家族以外の人に合鍵を渡したりしないこと。彼氏はもとより、友達や職場の人でも同様です。いつ自分の身に起こりえるか分からない悪質な事件。もし遭遇してしまっても、びびっている場合ではありません。自分の身は自分で守ろうという防犯意識を今一度、高めようではありませんか。(品川緑/ユンブル)【関連リンク】【コラム】男性の皆さん、女性の「チラ見え下着」ってどう?【コラム】「自分に気があるのかも」と勘違いしてしまった異性の行動【コラム】これってうちだけ!?わが家のちょっとおかしな習慣
2011年06月02日今年もプロ野球シーズンがスタートしました。ワタシは30年来の大の阪神タイガースファンです。阪神ファンといえば、プロ12球団のなかでも、「熱狂的」、「熱い応援」、「野球場にせっせと足を運ぶファン」として名高い存在。他球団ファンからよーく聞かれることは、「阪神ファンはなんで足しげく甲子園球場に通い詰めるわけ?」「その情熱はどこから来るの!?」という2つ。ん?阪神ファンにとってはフツーの行動なのですが、他球団ファンにはなさそうな特別な目的があります。写真:(C)大東照男『阪神タイガースファン名言珍言集』(猛虎魂会中経出版)より■阪神ファンは、阪神ファンを見に行くワタシにとっての春の風物詩は、まだ寒風が吹きすさぶ甲子園球場(兵庫県西宮市)へと出向いてオープン戦からじっくりと観戦をすることです。選手はもちろん、監督やコーチの様子をスタンドから「オーナー目線」でチェックするのですが、阪神ファンにはそんな人はン万人といるのであります。阪神ファンは何のために、甲子園のスタンドへと向かうのでしょうか。ここで、『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(猛虎魂会・中経出版)の著者で、「阪神ファン研究家」なる肩書の朝日奈ゆかさんにお話をうかがいます。朝日奈さんは、阪神の私設応援団・猛虎魂会(もうこたましいかい)の会長で、ついでに(?)編集プロダクション・株式会社ユンブルの社長でもあります。朝日奈さんは、「阪神ファンが甲子園球場に足を運ぶ理由」について、こう語ります。「ずばり、阪神ファンを見に行くのです。試合よりファンのほうがオモシロイことが多いのですよ。阪神ファン100人超に取材とアンケート調査を実施したところ、観戦以外に、『甲子園球場に集まる阪神ファンを見に行く』と答えた人が9割近くもいました」9割!それはもう、ほぼみなさん、ということですね。「ほかには、『おもしろいヤジを聞きに行く』、『なんかおもしろいことを探しに行く』という意見が続きました。わが意を得たり、でしたよ」と、朝日奈さんはなぜか自慢げに話します。■周囲のファンを笑かそうとする阪神ファンファンのヤジについて世間ではあれこれ言われていますが、朝日奈さんいわく、「ヤジにもいろいろありますが、阪神ファンのそれは、周囲のファンへのサービス精神である場合が多いのです。ヘタなお笑い芸よりずっとおもしろいと言われていますね(笑)。ウケねらい満開で、笑わせたい一心で叫ぶんですよ」そうそう、選手のエラーや怠慢プレーを見逃さず、すかさず突っ込みを入れるそのことばの数々は、「うまいこと言うな~」と周囲の共感を呼び、スタンドの笑いへと消化されていくのであります。では、試合展開がつまらないとき、阪神ファンはどうしているのでしょうか。「退屈でしょうがないときこそ、何かオモシロイことを探していますわね。むしろ、そういう展開のほうがあっちこっちからおもしろいヤジやぼやきが聞こえてきて笑えます。阪神という媒体を通し、周囲の見知らぬおもしろそうな人たちと文句を言い合って発散したい、このせちがらい世の中、せめて甲子園球場では浮世のことを忘れて目いっぱい楽しみたい、という想いが結集するのでしょう」と朝日奈さん。阪神という球団は、昔からそういう独特な媒体としての役割を担ってきました。■熱い想いの正体は、ファンにだけ流れる「阪神ホルモン」阪神電鉄の甲子園駅を降りたとたん、いや、すでに自宅から、色とりどりの応援ユニホームやハッピ、自作の川柳や歌詞を刺しゅうしたド派手な虎の衣装で甲子園球場に乗り込む人はとても多いのですが、大阪では何ら違和感はありません。いつぞや、外国人の友人が阪神ファンを見て「コスプレか?」と言っていましたが、ノン、あれは阪神ファンの「自ら今日を楽しもうとするココロ、抑えきれない期待の表れ」(朝日奈さん)なのです。阪神ファンに共通する熱い想いの正体について、朝日奈さんは「阪神ファン固有の『阪神ホルモン』なる物質が脳から噴出するわけです。阪神を応援する想いの深さに比例して、年月に比例して、その濃度は濃くなります。一度噴出したらもう逃れられないような興奮のホルモンです」と説明します。阪神ホルモン……。阪神ファンを興奮させる特有の快感物質をそう呼ぶとか、朝日奈さんが名づけたそうです。なんと言い得て妙なことばでしょう!■チケット代の3倍は楽しんでモトをとるさらに、関西人の生来のちゃっかり体質に注目し、「試合は勝とうが負けようが、根底には『チケット代の3倍は楽しんで、モトとったろ』という関西気質がありますね」と分析する朝日奈さん。これはおもしろい。「ケチではないのですよ、モトさえとれたらいくらでも払う。自分でモトとるし」という精神だと言います。阪神はその昔、ダメ虎と呼ばれる弱い暗黒時代が長かったので、ファンは「球団や試合内容に頼らずにモトをとる」という強じんな自衛の精神力を身につけていったのです。球場を後にするときには、試合結果にかかわらず、「今日も応援したったわ。あーオモシロかった。阪神ファンのおかげやで~」と言える一日をつくりたい。それこそ、阪神ファンが甲子園球場に足を運ぶ最大の理由なのです。(品川緑/ユンブル)監修:朝日奈ゆか氏。『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(猛虎魂会中経出版1000円)の著者で、阪神ファン研究家としてメディアなどで活躍中。株式会社ユンブル代表取締役。【関連リンク】【コラム】今年の阪神が厳しいのは球団の責任大や!【コラム】備えあれば憂いなし!地震の学習館で防災体験をしてきた【コラム】東京じゃないのに東京と名乗る施設の謎を徹底調査!
2011年05月20日東北地方太平洋沖地震が起こった3月11日の夜、「東京都と警視庁のまとめを集計すると、帰宅できずに施設で一夜を明かした東京都内の帰宅困難者は12万人以上にのぼった」と報道されました(共同通信)。とはいえ、徒歩で帰宅しようとすると、歩道が満員電車状態、道路は車の渋滞と危険な状況です。さらには、余震の影響で物が落下しけがをしてしまう、火災に巻き込まれてしまうという可能性もなくはありません。そこで、内閣府が発行している『震災時の帰宅行動、そのときあなたはどうする?』(にもとづき、「事前にできること」、「震災が起きたとき」、「帰宅する場合の注意」についてお伝えします。■事前にできること・職場や避難所に1泊以上を想定する人の平均的な歩行速度は時速4~5キロメートルです。仮に10キロメートルを歩く場合、スムーズに支障なくいけたとしても、2時間あまりかかります。震災のときに、実際に約20キロメートルを徒歩で帰宅した人は、「道路の寸断、建物の倒壊、余震、緊張感などでいつもの2倍の時間がかかった」といいます。このような事態を想定しておく必要があります。そこで、大地震で交通機関が途絶えたとき、自宅が職場や学校から遠く離れている場合には、職場や学校に1泊以上とどまり、翌日以降に徒歩で帰宅をすることを想定しておきましょう。「『翌日帰宅』は、大量の人が徒歩で帰宅をすることによる混乱を抑えるのに大変効果的な方法です」と複数の政府関係機関がすすめています。また、事前に、職場や学校に1泊以上できるための食料、飲料水などがあるかを確認し、また、それらは自分でも災害時に備えて用意しておきましょう。電池式の携帯電話用充電器も備蓄します。さらに、安全なスペース、たとえば会議室、応接室、教室、仮眠室、ホールで眠れそうかどうかも確認しておくとよいでしょう。・徒歩帰宅を想定して地図をつくっておく今回の東北地方太平洋沖地震の場合、家と会社・学校までの道のりが分からないという人も多くいました。可能であれば、一度地図を片手に歩いてみましょう。その過程で発見した休憩ポイント、トイレなどを書き加えた「お手製の徒歩帰宅マップ」をつくっておくと、いざというときの貴重な情報となりますし、精神的にも安心です。ただ、災害時は道路や建物などに支障が起きている場合があります。それに備えて、2~3パターンの帰路マップがあるとさらに心強いでしょう。また、職場には、スニーカーなど歩きやすい靴を置いておくこともおすすめします。・家族と安否確認の方法を決めておく災害用伝言ダイヤル171、携帯電話各社提供の災害伝言板サービスなど、安否確認の手段をあらかじめ家族で決めておくことも重要です。家族が無事であることが分かれば、いざというときも慌てる必要はありません。■実際に震災が起きたとき自分の身の安全を確保することが第一です。身の安全を確保したらすぐに、決めておいた安否確認手段で家族と連絡をとります。自分が大丈夫であると伝えることで家族も安心し、その後の行動について考えを巡らせることもできるでしょう。帰宅にあたっては、事前に考えておいた「災害下の状況で自宅まで徒歩で帰ることができるのか」、「1泊するのか」を判断しましょう。また、東北地方太平洋沖地震では、「富士山が噴火する」、「夜中に関東に大きな地震がある」など根拠のない話も出回りました。まずは確かな情報の入手を心がけましょう。■帰宅する場合の注意・事前準備をフル活用事前につくっておいた徒歩帰宅マップをもとに帰宅しますが、会社以外の場所にいるなど想定していなかった事態もありえます。もし、そういう場合でも、道順や休憩ポイントなどをあらかじめ確認してから行動しましょう。また、余震のおそれも大いにあります。できるだけ周囲の人と声を掛け合って同じ方面の人とともに行動するほうが安全です。このとき、家族と事前に決めておいた安否確認の方法で「会社から家まで、決めておいた道を歩いて帰る」、「違う場所にいるが、こういう道順で歩くことにする」など、大まかにでもいいので、帰路を伝えておきましょう。・都心のトイレ不足は深刻都心から放射状に広がる幹線道路では、大量の徒歩帰宅者のため、情報・食料・水・トイレなどの不足が見込まれます。特に、トイレは大幅に不足する可能性があり、地震発生後6時間までの都心の充足率は50%未満、断水になるとさらに深刻な事態が予測されています。出発する前や、行けるときは必ずトイレに行くようにしてください。最後に、「徒歩帰宅グッズ」として、「歩きやすい靴」、「ぺットボトル飲料水(水筒)」、「チョコ・キャラメル等(携帯食料)」、「リュックサック」、「地図(帰宅マップ)」に加え、「携帯トイレ」などのリストが、この内閣府のパンフレットに掲載されています。ぜひ、一読してみて万全の対策をしておきましょう。参照:内閣府『震災時の帰宅行動、そのときあなたはどうする?』朝日奈ゆか/ユンブル)【関連リンク】【コラム】学生が考える、被災地外の人間にできる何気ないこと【コラム】地震・・・ペットのために出来ること【コラム】インターネットのようにリアルな食べ物をケーブルで転送するFoodtubes
2011年03月23日1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災のとき、約100名の被災者の皆さんに、避難時の知恵などについてアンケートをとりました。あれから16年たつ今も、教訓として役に立つこの声。「いちばん困ったこと」、「いちばん怖かったこと」から見える備えをご紹介します。■「いちばん困ったことは?」1.眼鏡・コンタクトレンズ圧倒的多数の意見が「眼鏡」でした。「就寝中のことなので、飛び起きたときにはどこに置いたのか記憶がすっ飛んでいた」、など、多くの方が「眼鏡、眼鏡……」と暗闇のなかで手探りをしていたと証言しています。コンタクトレンズも同様でした。阪神・淡路大震災は暗闇の時間帯に起こったため、「避難時に、よく見えないことが原因で負傷した」という人も多くいらっしゃいました。また、めがね店の多くは商品を破損していてなかなか再開せず、その後の生活にもとても困ったとのことでした。2.靴一瞬で家具やモノが散乱したため、玄関まで歩くにも足の裏をケガする人が続出。「枕元には、靴やスリッパを置いて寝ること」、「余震が続くときは、最低、靴下を履いて寝る! はだしではとても逃げられないですよ」という声が多数あがりました。3.電気大災害のときは一瞬で停電になることがあるため、寝室やベッドのすぐそばに懐中電灯を常備しておきましょう。ホテルなど宿泊施設のベッドサイドには必ず設置してありますね。「懐中電灯の電池の間に紙片をはさんでおくと、いざというときの電池切れを防げます」、「懐中電灯はあっても、点灯しない人が多かった。電池は季節ごとに点検をすべきです!」という教えも重要です。4.通信1995年当時は、現在ほど通信網が発達しておらず、地域によっては1週間以上も固定電話がつながらないケースが続出しました。「電話が命綱と思っていたが、あてにならない。過信しないように」、「電話が通じないので、倒れた家に張り紙をしておいたら家族と会えた」など、通信手段が途絶えたときの心の混乱ぶりを訴える人が多くいました。そして、「災害のときには電話はつながらないものだ、とあらかじめ思っておくほうが精神的にいいよ」という考え方に行き着きました。このほか、中高年の方では「入れ歯」も目立ちました。「入れ歯をなくすと食べ物を飲み込まないといけなくなる。内臓にも支障をきたす」との声が相次ぎました。余震が続くときは、「ケースに入れた眼鏡、入れ歯、靴やスリッパ、携帯電話と電池式充電器、懐中電灯を一つの箱に入れて枕元に置いておく。これらはすぐに取り出せるようにしておくことが重要」とのこと。精神的にも安心です。■いちばん怖かったことは?「いちばん怖かったのは、部屋のモノが自分に襲いかかっているように見えたこと」と口々に言う体験者のみなさん。なかでも、切実なアドバイスは、「照明が落ちた場合は建物が倒壊する可能性があるので一目散に逃げて」ということです。本棚や食器棚、ピアノなど大きな家具のそばで寝てはいけないのは当然ですが、照明については気づいていない人が多いのではないでしょうか。地震が起こったときは、揺れが収まってから、照明のねじを締める、電球の破損のチェックなど、安定性の確認とメンテナンスを行ってください! 何より、「照明の下で寝たらアカンで!」という被災者の声を心に刻んでおきたいものです。■いちばん役立ったことは?1.目の前の見知らぬ人との声の掛け合い「誰もが不安と孤独のなかにいる。ちょっと声をかけてもらうだけでも気分が前向きになるものです」との証言を多数得ました。今回の東北地方太平洋沖地震は日中の出来事であり、家族は各自の職場、学校、自宅、外出先とばらばらに過ごしていることが多かったと思います。そんなとき、頼りになるのは目の前にいる人。知らない人であっても、気後れすることなく、「大丈夫ですか?」とか「すみません、助けてください」と声をかけあいましょう。災害の現場でありがたいのは、人の温かさ、誰かの声なのです。「声をかける」、「訪問する」、「メールする」。未曾有の大災害時、誰かとつながっている感覚こそが気力の礎となるのでしょう。2.笛笛は、小中学生の防犯グッズとしても使用されており、危険が迫ったときに生存を知らせる道具として重宝されます。防犯ブザーは電池がなくなる、いざというときに鳴らなかったなどというトラブルもあるので、笛のほうがよいのです。余震が続くときにはぜひ、携帯してください。官公庁発表の「地震緊急時マニュアル」などにも、笛の携帯がすすめられています。また、鈴も役に立ちます。「キーホルダーや携帯のストラップについていた鈴が役に立った」という声も複数ありました。いかがでしょうか?まとめると、「眼鏡、靴やスリッパ、入れ歯、携帯電話と電池式充電器、懐中電灯はそばにおく」「照明の下で寝たらアカン」「笛、鈴はいざというときに持っておく」どれも大切な教訓ですが、買い占めなどが報道される今、「目の前の見知らぬ人との声の掛け合い」こそがもっとも必要なのではないでしょうか。(朝日奈ゆか/ユンブル)【関連リンク】【コラム】スイミーは実在した。地震の影響か海外で『スイミー現象』【コラム】東北地方太平洋沖地震まとめ【コラム】東北地方太平洋沖地震による不正行為や便乗行為にご注意下さい。
2011年03月20日「チカンは犯罪!」、「チカンはアカン!」などの看板を見ると、電車や路上でのことと思いがち。でも、警察庁発表の『平成18年度犯罪統計書』によると、「チカン事件の約2割は住居と駐車場、駐輪場で発生。また約4割が20時から翌2時の間に起こっている」そうです。こ、こわい……。そこで、大阪市中央区で「女性の安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、「マンション内に出没するチカン」についてお話をうかがいました。■ポイント1駐輪場と駐車場「先ほどの犯罪統計書でもそうですが、なんといっても気をつけないといけないのが駐輪場と駐車場!特に駐輪場では、自転車にカギをかけようとしゃがんでいるときに、背後から襲われます。駐輪場や駐車場は、壁や塀に囲まれていて見通しが悪いでしょ。チカンが潜むにはもってこいの場所なのよ」と穂積氏。なるほど、簡単に隠れることができる場所はアブナイ。それに、しゃがむというのは、逃げられない、かつヒトの気配を感じにくい姿勢です。自転車を置くときには周囲をよく見回しましょう!「駐車場では、いきなり車のドアが開いて引っ張り込まれ、襲われるというケースが多々あります」とも。人が乗っている車には近づかない方が賢明ですね。■ポイント2オートロックの入り口「玄関のオートロックを開けるとき、背後から着いてきて一緒に入ろうとする人がいますよね。あれ、襲われやすいです。ほかの住人の顔を知らないことも多いし、警戒しすぎるくらいがちょうどいい。勇気を出して『住人の方ですか』と声をかけてください。『はい』と言われたら、『こんにちは~、このごろ物騒で、すみませーん』と笑顔でコミュニケーションをとればいいのです」(同)また、「オートロックだからと過信して、ゴミ出しやメールボックスへ行くなど、ちょっとした外出には部屋のカギをかけない人が多いでしょう。最低、カギはかけてくださいよっ」と語気を強める穂積氏。隣の人は何をするヒトかわからない時代、同フロアの住人が犯人だったという大事件もありました……。■ポイント3階段の踊り場「階段の踊り場は、犯罪の舞台です。階段を上るときにあとをつけられたり、待ち伏せされたり、連れ込まれたりして、踊り場で襲われるケースも」という穂積さんの指摘どおり、警察のWebサイトなどでも「気をつけるべき場所」として指摘されていることが多いのです。■ポイント4エレベーター「密室はもっともキケンな場所で、マンションやビルではエレベーターがそれにあたります。後ろから押し込まれて、襲われるという事例が多数発生していますから。防犯カメラが付いていても、常に監視しているとは限りません。油断は大敵です」(同)特にエレベーターの扉に窓ガラスといった透明な部分がない古いタイプはキケンです。見知らぬ人とふたりで乗らない、あとから不審そうな人が乗ってきたら次の階でサッと降りるなどして、素早く対応しましょう。■ポイント5廊下「廊下でメールを打ちながらの移動もNGです。背後から抱き着かれたり、部屋や踊り場に引っ張っていかれたりして襲われることも。大げさなようですが、周囲ににらみを利かせながら歩くくらいがちょうどいいのです」と穂積氏。携帯電話の画面を見ているときは、「集中しているのと視線が下がることで不審者に気づきにくいものですよ」と注意を呼びかけます。■ポイント6家の玄関「自分の部屋に入るとき、ここは特にアブナイ。カギを開けているときに背後から押し込まれて、襲われます」と声を大にする同氏。みなさんもご存じのとおり、女子に限らず、幼児や小学生が被害に遭う悪質な事件が多く発生しています。見知らぬ人が近くにいるときは、絶対にカギを開けないようにしましょう!■ポイント7メールボックス「郵便物や新聞があふれたメールボックス、自室の郵便受けをチェックしてください。留守や一人暮らしが知れて『狙いやすい部屋だ』と目をつけられます。これは、襲われる機会をつくってしまうようなものです」ここは、泥棒が侵入するときにもチェックするとか。忘れていた! ではすまされない、気を抜けないポイントです。2010年1月29日付けの「京都新聞」で、こんな記事を見つけました。「京都市左京区のマンションのエレベーター内で、住人の大学4年の女子学生(21)の左肩に手をかけ、キスをしようとした28歳男性を強制わいせつ未遂と建造物侵入の疑いで逮捕した」。結局、マンションでは、部屋に入ってカギを閉めるまで、「襲われる危険性がある」場所ばかり。「安心できる場所などどこにもないと考えてください。マンションでは、すべての場所にチカンが潜むことができるのだと想定しておくぐらいが、防犯意識を高めることになるのです!」と同氏。防犯の第一歩は、「私は大丈夫」と過信しないこと。逆に、「私も狙われるかも」という意識を高めることがなにより大事です。襲われてから「あのときああしていれば……」と後悔しても遅い!毅然(きぜん)とした態度で自分の身を守りましょう!監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。(岩田なつき/ユンブル)【関連リンク】【コラム】一人暮らしはココが大変!生活全般編【コラム】一人暮らしでのトホホエピソードお金問題編【コラム】一人暮らしでのビビリエピソード防犯編
2011年03月01日