相続財産管理人は、相続する人がいない財産を管理します。あまり聞き慣れない言葉ですが、どんなときに関与することになり、どんな仕事をするのでしょうか?本記事では、相続財産管理人を置くべきパターンや就任までの大まかな流れを説明します。相続財産管理人って誰?どんな制度?相続があっても、相続財産管理人が必ず置かれるわけではありません。相続財産管理人が関与するのは、比較的特殊なケースです。相続人がいない・全員放棄の財産を管理する相続財産管理人が関与するのは、相続人が1人もいないか、相続人全員が相続放棄して財産を引き継ぐ人がいない場合で、必要性がある場合にのみ選任してもらえます。死亡した人が土地や建物、預貯金などの財産を持っていないなら、相続手続き自体必要ないので選任も不要です。誰がなる?申立時には候補者を推薦できますが、候補者が選ばれるとは限りません。家庭裁判所の名簿に掲載されている弁護士などの専門家が選ばれるのが一般的です。相続財産管理人を置くべきケース相続財産管理人が必要な場合としては、次のようなパターンが考えられます。(1) 特別縁故者が存在同一生計だった人や療養看護に努めた人など、特別の間柄だった人(特別縁故者)がいる場合です。特別縁故者が財産分与請求の申立をすれば、遺産の一部や全部をもらえる可能性がありますが、この請求の前提として相続財産管理人が必要です。(2) 借金を残している死亡した人が誰かからお金を借りていたら、お金を貸した人(債権者)は遺産から返済を受ける権利があります。もし相続人が1人もいなければ、債権者は「お金を返してくれ」と言う相手がいません。このような場合、相続財産管理人が付けば、遺産から返済してもらえます。(3) 全員が相続放棄した相続放棄した人も、新たに相続人になった人が遺産を管理可能になるまでは、遺産の管理を継続しなければなりません。すべての相続人が相続放棄した場合には管理義務を逃れられないので、負担をなくすためには相続財産管理人を選任してもらう必要があります。(4) 国や地方公共団体による用地買収死亡した人の土地を引き継ぐ人がおらずそのままになっているとき、国や地方公共団体が用地買収のために相続財産管理人選任を申し立てることもあります。役割と権限相続財産管理人の主な役割は、死亡した人の財産の清算です。たとえば、借金の支払いをしたり、預金の払い戻しをしたりします。清算完了後、残った財産は国のものになるので、これを国庫に帰属させる手続きも行います。どんなことができる?相続財産管理人は、自らの判断で保存行為(財産の現状を維持する行為)や管理行為(物の性質を変えない範囲で利用・改良する行為)を行う権限を持ちます。一方、処分行為を行う場合には権限外行為となり、裁判所の許可を受けなければなりません(※下表参照)。申立件数は増加している下のグラフは、平成21年から平成30年までの10年間に新規で受け付けられた相続財産管理人事件数です。グラフを見てわかるとおり、近年事件数は右肩上がりで増えています。亡くなるときに家族や親戚がいない人が増えていることが考えられ、この傾向は今後続くものと思われます。相続財産管理人選任申立方法は?おひとりさまの残した土地や建物、預貯金などがそのままになっている場合には、利害関係人などが申し立てれば、相続財産管理人を選任してもらえます。就任までの流れと必要書類を知っておきましょう。[adsense_middle]就任までの流れ相続財産管理人が就任するまでの流れは、大まかには次のとおりです。1. 申立書を提出死亡した人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書と必要書類を出します。2. 審理出された書類にもとづき、申立を認めるか却下するかの審理が行われます。3. 審判審理の結果、相続財産管理人を置くべきとなったときには、裁判所が適当な人物を選び、審判を出します。4. 公告相続財産管理人が選任されたら、裁判所は遅滞なくこれを公告するものとされています。準備すべき書類次のような書類を揃えて提出します。家事審判申立書戸籍謄本相続放棄申述受理証明書住民票除票(または戸籍附票)遺産に関する資料候補者の住民票等家事審判申立書裁判所のホームページにあるものをダウンロード・印刷して記入します。財産目録も添付します。戸籍謄本死亡した人の出生から死亡までのもののほか、相続人がいないことがわかる戸籍・除籍・改製原戸籍謄本すべてが必要になります。なお、法定相続証明制度を利用し、法定相続情報一覧図の写しを提出してもかまいません。法定相続情報証明制度とは、あらかじめ戸籍謄本の束を法務局に提出しておき、法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図を提出する方法です。相続放棄申述受理証明書相続放棄により相続人がゼロになったケースでは、相続放棄申述受理証明書を添付します。住民票除票(または戸籍附票)死亡した人の最後の住所を証明するものが必要です。住民票はマイナンバーの記載のないものを提出します。遺産に関する資料遺産としてどんなものがあるのかがわかる資料が必要です。不動産がある場合には登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金がある場合には残高証明書等を添付します。候補者の住民票等候補者を指定する場合には、候補者の住所がわかるものを出します。住民票はマイナンバーの記載がないものが必要です。申立は自分でできる?申立の際には、戸籍謄本の収集に労力がかかります。第3順位までの相続人が1人もいないということを証明するためには、かなりの数の戸籍が必要になることがあります。忙しくて時間がない場合や手続きに自信がない場合には、弁護士や司法書士に依頼するとよいでしょう。相続財産管理人選任にかかる費用は?相続財産管理人の選任手続きには費用がかかります。実際に申立をする場合には、費用を上回るメリットがあるかどうかを検討しましょう。申立時の印紙代や切手代は?相続財産管理人選任事件で必要な収入印紙は800円分、切手は裁判所によって異なりますが数千円程度です。さらに、選任後は官報公告が行われるので、公告料金4,230円も納める必要があります。予納金も必要。相場はどれくらい?申立の際の印紙や切手はそれほど高額ではありません。しかし、相続財産管理人の報酬に充てる予納金も納める必要があり、これが高額です。金額は事案によって異なりますが、数十万円から100万円程度になります。相続財産管理人の報酬は相続財産から支払われべきものなので、清算後余剰があれば予納金は戻ってきますが、財産状況によっては戻ってこないこともあります。お金をかけても手続きするメリットがあるかを考えてから申立しましょう。おひとりさまは遺言を書いておく相続財産管理人選任の手続きは、面倒な上に費用がかかります。自分が死んだ後財産を引き継ぐ人がいないおひとりさまは、遺言を書いておくと、周囲の人に迷惑をかけずに済みます。遺言を書くときには、自筆証書遺言や公正証書遺言の形にし、法律的に無効にならないようにしておきましょう。相続財産管理人に関するまとめ身近で身寄りがない人が残した財産があり、自分に利害関係があれば、相続財産管理人の選任申立てを検討してみましょう。もし自分が特別縁故者の立場なら、財産を受け取れる可能性もあります。ただし、費用がかかるので、どれくらいのメリットがあるかを考えておかなければなりません。身寄りがいないおひとりさまは、周囲への負担がかからないよう、誰に財産を譲るかの遺言を書いておくことも考えましょう。
2020年01月31日家族が亡くなることはあまり考えたくないものですが、いつかは起こるのが相続です。身近で誰かが亡くなったとき、自分は財産をもらえるのか、もらえるとしたらいくらくらいになるのかは気になるでしょう。本記事では相続人や相続割合について、法律上のルールがどうなっているのかを説明します。遺産をもらう人はいったい誰?死亡した人は物を所有できません。死亡した人の物、すなわち遺産を誰が引き継いで所有するかは法律で決まっています。法定相続人は配偶者と血族の一部死亡した人(被相続人)の権利や義務を引き継ぐ人は民法で決まっており、法定相続人と呼ばれます。法定相続人になれるのは、親族のうち、配偶者(夫・妻)、子供、父母、兄弟姉妹です。ただし、配偶者以外には次の表のとおり優先順位があります。夫・妻以外の親族は、血族(血のつながっている人)で、義母や義父、義兄弟は含まれません。一方、養子縁組していれば、血はつながっていなくても法律上は血族と同じ扱いになります。離婚しても親子の関係は変わらないので、前妻の子は一緒に暮らしていなくても相続人です。生物学上の親子関係があっても、認知していなければ法律上親子ではないので、お互いに相続人にはなりません。子供と兄弟姉妹には代襲がある子供の方が被相続人よりも先に死亡していることがあります。このようなケースでは、死亡した子供の子供、つまり被相続人の孫が子供の立場を引き継ぎます。このうように下の世代へと相続する資格が引き継がれることを代襲相続といい、第1順位と第3順位で起こります。第1順位では子供が死亡していれば孫、孫が死亡していればひ孫と、どこまでも下の世代へと続きます。一方、第3順位の方は、兄弟姉妹が死亡していてもその子供(甥・姪)までで代襲は終わりです。父母とも亡くなっていれば祖父母父親と母親の両方が死亡している場合に、祖父母のうちの誰かが生きていれば相続人になります。第2順位は、直系尊属のうち最も近い世代の人ということです。相続できる財産の割合は?民法では、相続できる財産の割合も定められています。相続人の組み合わせで割合が変わる相続人は複数いる場合がほとんどです。そのため、誰がどれだけ財産をもらうかという割合も決まっており、これを法定相続分といいます。相続人の組み合わせとしては、配偶者のみ、配偶者と血族、血族のみの3パターンがありますが、それぞれについて次の表のような割合になります。同順位の人が複数いる場合相続分は、同順位の相続人全員での割合です。【例1】妻、長男、次男が相続人→妻1/2、長男1/4、次男1/4【例2】夫、父、母が相続人→夫2/3、父1/6、母1/6代襲相続人がいる場合子供が死亡して孫が代襲するケースでは、死亡した子供の相続分を孫が引き継ぎます。たとえば、死亡した子供の相続分が4分の1で孫が2人いれば、孫1人あたり8分の1となります。実際にもらえる割合は遺産分割協議で決まる民法上のルールにもとづき、具体的な遺産の分割方法は相続人同士が話し合いで決めることになります。遺産を分けるためには話し合いが不可欠相続割合は法律で決まっていますが、死亡した人が残した財産が自動的に分割されるわけではありません。そもそも、遺産の中には土地や建物など簡単に分けられないものが多いという問題があります。遺産を分けるためには、実際には相続人の話し合い(遺産分割協議)が必要です。分け方を決める際に、各相続人は法定相続分をもらう権利を主張できます。生きている間の贈与や貢献度も関係してくる相続人の中に、生前に被相続人から多額の贈与を受けている人がいたり、被相続人の財産形成に貢献している人がいる場合には、そのまま分けるとかえって不公平です。そのため、多額の贈与を受けている場合には「特別受益」、財産形成への貢献がある場合には「寄与分」として相続割合の修正が行われます。民法のルールと違う分け方をしてもいい遺産分割協議では、相続人全員が納得していれば、民法のルールと違った割合で遺産を分けてもかまいません。ただし、必ず全員同意がしていなければならず、一部の人だけで決めても無効です。分け方で争いになったら裁判所で解決相続人間の協議がまとまらないことがあります。遺産の分け方で争いになったら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所の関与のもと調停の場で話し合うことができます。調停でも話がまとまらない場合、裁判官が遺産分割審判という形で分け方を決めますが、審判では法定相続分どおりになるのが通常です。審判になった場合、分けにくい不動産は競売でお金に換えなければならない可能性もあります。法定相続人がいないケースではどうなる?相続人になれるのは、夫・妻と、子供や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹や甥・姪です。それ以外の家族や親族は原則として財産をもらえません。ただし、特別縁故者が財産をもらえることがあります。[adsense_middle]相続する人がいない財産は国のものになる相続人が一人もいないときには、死亡した人の財産は誰のものにもならず、国庫に帰属します。ただし、自動的に国のものになるのではなく、相続人の不存在を確認したり、亡くなった人に対して債権を持っている人に申し出てもらったりする手続きを踏まなければなりません。家族でなくても財産分与を受けられることがある相続人は1人もいないけれど、被相続人と特別の関係にあった人(特別縁故者)がいるというケースがあります。特別縁故者がいる場合、その人が財産をもらえることがあります。特別縁故者とは、被相続人との間で次の要件をみたす人です。生計を同じくしていた人療養看護に努めた人その他特別の関係にあった人特別縁故者が相続財産をもらうには、特別縁故者自らが家庭裁判所に相続財産分与の申立てをする必要があります。申立て後、裁判所が特別縁故者と認めてくれた場合には、財産の一部や全部をもらえます。法定相続人がいても遺言が優先ここまで相続割合について民法上のルールを説明してきました。しかし、被相続人が遺言を残していれば、民法上のルールどおりにはならない点に注意しておきましょう。法定相続人でも財産をもらえないことがある被相続人が自筆証書遺言、公正証書遺言などの法律上有効な遺言を書いていた場合、遺言に従って財産が引き継がれます。親族ではない第三者に財産を譲る遺言が書かれていれば、その第三者が財産を引き継ぐことになります。また、遺言では相続割合の指定もできるので、法定相続分ではない割合が指定されていれば、遺言どおりになります。遺留分は確保されている相続人のうち兄弟姉妹以外の人には、遺留分と言って最低限の取り分があります。遺留分の割合は次のとおりです。遺留分がある場合でも、自動的に遺留分が確保されるわけではありません。遺言により自分がもらえるはずの財産をもらうことになった人に対し、遺留分を返還するよう請求する手続きが必要です。なお、2019年6月30日以前に死亡したケースでは遺留分を現物で返してもらうのが原則ですが、法改正により2019年7月1日以降に死亡したケースについては、遺留分を金銭で返してもらうのが原則となっています。相続割合に関するまとめ民法上相続割合は決まっているので、この割合にもとづき話し合いで遺産を分ける必要があります。ただし、相続人全員が納得していれば、民法上のルールどおりで分けなくてもかまいません。遺言があれば遺言どおりに財産の引き継ぎが行われるので、民法上の相続割合は関係がなくなります。遺言があっても兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があることも認識しておきましょう。
2020年01月25日相続に関するご相談の中で非常に多いのが、どこまでが相続財産の対象となるのかという質問です。相続財産は非常に広い範囲まで対象となりますが、一方で対象から外れる財産もあるため一般の方にはわかりにくいのかもしれません。また、遺産分割の対象と相続税の課税対象となる遺産も微妙に違ってくるため、これから相続手続きをする人は概要についてきちんと理解しておくことが大切です。そこで本記事では、相続財産の対象や種類、相続税の課税関係について詳しく解説します。相続財産の基本的な範囲相続が発生したときに遺産分割の対象となる財産は非常にたくさんありますが、基本的には金銭に限らず物など経済的に価値があるものすべての財産が対象になると考えた方が無難です。代表的な財産についてまとめてみました。現金普通預金、定期預金不動産(自宅、投資用物件など)株式仮想通過金自動車美術品骨董品貴金属基本的に金銭に見積もることができるすべての財産が遺産分割の対象となります。マイナスの財産も対象遺産分割をする際に忘れてはならないのが、借金などのマイナスの財産の相続です。相続が発生すると皆さんプラスの財産についてはしっかりと調査されているのですが、マイナスの財産に関することが頭から抜けてしまっているケースがあるため注意しなければなりません。亡くなった方がしていた借金については、本人が亡くなっても消滅するわけではなく相続人に対して引き継がれることとなります。具体的には次のようなマイナスの財産があります。未払いのクレジットカード自動車ローン住宅ローン(団体信用生命保険に加入していればチャラになる)医療費の支払いその他のローンキャッシング個人間の貸し借りマイナスの財産を配分する時の注意点遺産分割の話し合いではプラスの財産をどう分けるかだけではなく、マイナスの財産についても誰が責任を持つのか一緒に話し合うことになります。ただし、ここで注意しなければならないのはマイナスの財産についてはあくまで相続人間でしか対抗できないということです。例えばプラスの財産であれば、相続人全員で話し合って合意していればどのような割合で誰が相続しようが何ら問題はありません。ところがマイナスの財産についてはちょっと違います。例えば長男と次男がいて、1億円の預金と1億円の借金があったとして、遺産分割で預金と借金を全部長男が相続して次男は何も相続しないということで合意したとします。その後長男が1億円の預金で1億円の借金を全額返済すればよいのですが、万が一使い込んでしまい返済ができなくなってしまうと、債権者は長男だけでなく次男にも法定相続分の1/2については請求できるのです。借金の相続についてはあくまで相続人間の内輪での決め事に過ぎず、債権者にとっては「そんなの知るか」ということになるため、速やかに借金が完済されなければ、たとえ1円も相続していない相続人であっても、債権者から法定相続分に対応した分の借金返済を迫られるので気をつけましょう。借金の相続から逃れる方法何も相続しない人で相続財産に借金がある場合については、上記のように借金の返済だけ債権者から迫られる可能性があります。そこで、債権者からの請求を逃れる方法として相続放棄という手続きが有効です。相続放棄とはあらゆるすべての財産についての相続権を放棄して、最初から相続人ではなかった状態にするという手続きのことで、一切の財産を相続できなくなる代わりに借金の返済についても義務を免れます。そのため何も財産を相続しない場合で相続財産に多額の借金がある場合については、できるだけ相続放棄の手続きをしておいた方がいいでしょう。相続放棄は家庭裁判所に申し立てすることで比較的簡単にできます。取り扱いを間違いやすい遺産について以下の財産は、遺産分割の対象から外れると誤解されているケースが多いため注意が必要です。軽自動車軽自動車の相続についてカーディーラーなどに相談すると、「相続人さん単独で名義変更できるので遺産分割の対象ではないですよ」と案内されることがあるようですが、実はこれ間違いです。確かに軽自動車の名義変更は相続人全員の署名捺印等の必要がないため、やろうと思えば相続人のうち誰か1人が書類を書いて勝手に出しても名義変更ができます。ただこれはあくまで手続き上の問題であって、法的には軽自動車についても遺産分割の対象です。勝手に名義を変えてしまうと他の相続人との間でトラブルになる可能性があるほか、あとで相続放棄をしようとしてもできなくなってしまうため十分注意しましょう。税金関係所得税や住民税、固定資産税など未払いのままになっている故人あての税金についても相続の対象となるため相続人が納税しなければなりません。ただ、マイナスの財産としてプラスの財産から差し引くことは可能です。祭祀関係の財産仏壇や仏具、お墓や墓石などの財産のことを祭祀財産といい、遺産分割とは別で考えることとなります。具体的には祭祀継承者を決めてその人が相続することになるのですが、決め方については遺言書に指定されていればその内容に従い、指定がなければ相続人で話し合って決めるなどその地域の慣習などをもとに決めていきます。ちなみに祭祀財産には相続税はかかりません。生命保険は相続税の課税対象?遺産分割と相続税申告において取り扱いが異なるのが生命保険です。生命保険は誤解したまま手続きを進めていると、相続税の申告漏れが発生する可能性もありますので注意しなければなりません。生命保険の保険金は、保険契約において受取人に指定している人固有の財産という扱いを受けるので、遺産分割の対象からは外して話し合うことになります。そのためか保険金には相続税が課税されないと思い込んでいる人がいるのですが、実は保険金は相続税の課税対象なんです。[adsense_middle]保険料を誰が負担していたか生命保険に対して課税される税金は3種類あります。契約の仕方によって異なりますので、生命保険を受け取る際には注意が必要です。ポイントは、誰が保険料を負担していて誰が保険金を受け取るかということです。保険料を自分で支払って保険金も自分で受け取る場合については、支払った保険料と受け取った保険金の差額に対して所得税が課税されます。保険料の負担者、被保険者(保険をかけられる人)、受取人がすべて別人の場合、保険料の負担者から受取人に対して保険金相当額の贈与があったとみなされて、保険金に対して贈与税が課税されます。保険料負担者と被保険者が同じで受取人だけ別人の場合は、保険金に対して相続税が課税されます。また、保険料負担者と被保険者、受取人がすべて別人の場合において保険料負担者が死亡した場合は、解約返戻金相当額に対して相続税が課税される点にも注意が必要です。このように生命保険は課税される税金が3種類あるため、保険金を受け取る前に自分はどの税金を支払う必要があるのかよく確認しましょう。生命保険の非課税限度額生命保険で受け取る保険金については、500万円×法定相続人の人数分の非課税枠がありますので、受け取った保険金がその金額以下であれば相続税は非課税です。そのため、生命保険を使って相続税対策をするのであれば、非課税となる金額を予め計算したうえでその金額におさまるよう保険契約を調整するとよいでしょう。生命保険で愛人と相続税でもめる!?世の中には生命保険の受取人を家族とは関係のない愛人に指定している人も少なくありません。受取人は相続人以外でも指定はできますので、保険契約としては何ら問題はりませんが相続税申告の際にかなりの確率でトラブルとなります。というのも、保険金を受け取る愛人からしてみると自分がいくら受け取っているのか相続人に知られたくないはずです。ところが相続税を計算するためには、愛人が受け取った保険金も含めて計算しなければならないため、愛人から保険金の金額を聞き出さなければなりません。また、愛人は相続人ではないものの保険金を受け取ることで相続税を納税しなければならなくなるのですが、そのことを理解できていない人が非常に多いです。相続税申告は本来納税する人が全員で申告するのですが、愛人がそれを拒否することが多く、相続税を正しく計算できないというトラブルが起きてしまいます。この場合は仕方がないので相続人と愛人で別々の申告書を作成して相続税申告をするしかないのですが、申告書の金額がずれるケースが非常に多いので税務調査の対象になる確率がかなり上がると考えた方がよいでしょう。遺産から控除対象となる葬儀費用の種類についてプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額が相続税の課税対象になるとお話しましたが、この時に控除できるマイナス財産の中に葬儀費用も含めることができます。ただ、葬儀に関連した費用であればなんでも認められるわけではありません。葬儀費用に含まれるもの次の費用については葬儀費用として相続税の申告の時にプラスの財産から控除することが可能です。火葬にかかる費用埋葬にかかる費用遺体の回送、運搬費用お通夜、告別式の費用葬儀費用に含まれないもの次の費用については葬儀費用には認められないため、プラスの財産から控除することができません。香典返し法事にかかる費用墓地やお墓の購入費用ポイントはお墓の購入費用です。お墓は生前に本人が購入すれば相続税を非課税にできますが、死後になってしまうと購入費用をプラスの財産から差し引けなくなりますので注意しましょう。相続財産に関するまとめ今回ご紹介したように遺産分割の対象となる財産と相続税の課税対象となる財産は微妙に異なりますので、認識を間違えないよう注意が必要です。遺産分割や相続税申告をする際には、話し合いや手続きを進める前に相続財産に漏れがないかを入念に確認することが重要で、慌てて先に進めると後で新たな財産が見つかってトラブルになります。まずは徹底的に財産調査を行ったうえで財産の仕分けをして、そこから協議に入るとよいでしょう。
2020年01月20日相続が発生したら相続税の確定申告が必要となりますが、実はすべての人に確定申告の義務があるわけではありません。また、一定の財産を相続する場合は相続税のみならず所得税の確定申告が必要になる場合もあるため注意が必要です。そこで本記事では、相続においていくらから確定申告が必要となるのか、また相続税、所得税が課税されるケースについて詳しく解説します。最近ご相談が多い、2019年の法改正によって変更になった部分についても触れていきますので、ぜひ最後まで読んでいただくことをおすすめします。相続したら確定申告は必要?相続が発生したとしても、すべての方が確定申告をしなければならないというわけではありません。確定申告の必要があるのは、相続税又は所得税が課税される場合です。相続税申告が不要なケース相続税は課税遺産総額が相続税の基礎控除額を超えた場合に課税されるため、基礎控除額を下回る場合は相続税の確定申告は必要ありません。ただし、相続税がかからない=相続税の確定申告が不要、と認識している人が時々いますが、これは大きな間違いなので注意が必要です。たとえ相続税が課税されない場合でも確定申告は必要なケースがあり、申告せずに放置していると無申告加算税や延滞税が課税される危険もあります。特例を使って評価額の金額を減らす場合相続税の計算をする際には、配偶者が相続する財産について1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い方まで上限として相続税が非課税となる配偶者の税額軽減や、亡くなった方が住んでいた自宅の土地の評価額が80%オフになる小規模宅地等の特例といった特例制度を使うことができます。これらの特例を適用することで相続税の基礎控除以下におさまり、結果として相続税が非課税となる場合については、たとえ相続税はかからないとしても特例を適用させるために必ず確定申告をしなければならないのです。特例を適用しないまま申告期限が過ぎてしまうと、特例を適用できなくなる恐れがあるため十分注意しましょう。原則として所得税の申告は不要だが、、、相続発生時に課税される税金は原則として相続税なので、所得税についてはほとんどのケースで課税されません。ところが、次のケースについては相続であっても所得税の対象となるため所得税の確定申告をする必要が出てきます。家賃収入がある場合相続財産にアパートなどの賃貸物件が含まれている場合、亡くなる日までの家賃収入は故人の所得となりますが、その後の家賃収入については相続人の所得となるため、相続税ではなく所得税の課税対象となり確定申告が必要になります。相続人が1人だったり、遺産分割の話し合いで揉めていなかったりすればよいのですが、もしも協議が難航しているとその間の家賃収入をどのように申告するのかが問題となります。相続が発生してから遺産分割協議がまとまるまでの家賃収入は、原則として民法で規定されている法定相続分に従って家賃収入を按分して相続人各自で確定申告を行うことになるのです。後で遺産分割協議が決定して法定相続の比率とは違う比率で分割したとしても、すでに行っている所得税の確定申告の修正を行う必要はありません。その場合は遺産分割協議の後に発生した家賃収入について所得税申告をすれば大丈夫です。生命保険に加入している場合亡くなった方に生命保険をかけている場合で、契約者と保険金の受取人が同じ人の場合は保険料と保険金の差額に対して所得税が課税されます。ちなみに生命保険は契約形態によって同じ保険金だとしても課税される税金が次のように異なります。基本的に契約者が保険料を負担していると仮定した場合です。保険料を負担した人と保険金を受け取る人が同一であれば所得税、別人であれば相続税または贈与税が課税されます。[adsense_middle]生命保険加入の落とし穴税金対策で生命保険に加入する人が増えていますが、実は間違った方法で契約している人が多く、そのせいで本来は課税されるはずのなかった相続税が課税されるケースも増えているため注意が必要です。例えば子供のために親が生命保険に加入するケースがよくあります。契約者:子供保険料負担者:母被保険者:子供受取人:子供このような契約の場合、保険料を負担しているのは母親なので表面上は生前贈与対策になっているように見えますが、実はそうではありません。仮に生命保険が満期を迎えて受取人に保険金が支払われた場合、支払われた保険金に対して贈与税が一気に課税されるのです。仮に1,000万円の保険金が支払われた場合、177万円の贈与税が発生するため非常に大きな痛手となります。保険料負担者が死亡した場合もっと深刻なのは保険料負担者が途中で死亡した場合です。保険料を負担していた人が死亡すると、それまで保険料を支払って加入していた保険契約を解約した場合に支払われる解約返戻金相当額に対して相続税が課税されてしまいます。贈与税の場合とは違い、実際に解約するのでなければ現金は増えないのに税金だけ課税されることになるのです。親にこっそり負担して貰ってもバレる保険料負担者については、多くの場合で保険料を口座引き落としにしていることで税務署にバレます。贈与税の基礎控除である年間110万円の範囲で保険料を負担し続けたとしても、肝心の保険料を贈与を受けた人以外の口座から自動引き落としにしてしまうと、たとえ贈与契約書があったとしても贈与税が課税される可能性が極めて高いです。そのため、贈与を受けたお金で保険料を支払う場合は、贈与したお金を受け取った人の口座に入金してそこから自動引き落としで支払う必要があります。2019年民法改正によって遺産に所得税が課税されるケースとは2019年7月に民法改正によって、従来まで課税されるはずのなかった所得税が課税される危険性が出てきました。次にご紹介するケースに該当すると、相続なのに所得税がバッチリ課税されてしまい確定申告が必要になります。ただ、回避策についても合わせて解説しますので、今後相続を控えている人は是非最後まで読んで参考にしてください。相続は遺産分割か遺言書相続が発生した場合、手続きの流れとしては遺産分割協議をする場合と遺言書がある場合との2種類に分かれます。基本的に一定の条件を満たしている遺言書が見つかった場合は、遺言書の内容に従って遺産を分けるため遺産分割協議をする必要はありません。反対に遺言書がない相続については、相続人全員で話し合って遺産を分け合うことになります。2019年の改正で影響を受けるのは、遺言書がある相続のケースです。遺留分を害する遺言書の場合遺言書は本人の好きなように分け方を指定することができるので、場合によっては子が2人いるのに「すべての財産を長女に相続させる」といった強引な遺言書が見つかることも少なくありません。例えば長女と次女の2人が相続人だとした場合に次女がそのまま受けるのであれば特段問題はありません。ところが、もしも次女が納得いかないと怒った場合、次女には遺留分という民法で保護されている最低限の取り分(法定相続分の半分)があるため、たとえ遺言書が全額長女を指定していたとしても1/4については遺留分として長女に請求することができるのです。ここでポイントとなるのが、遺留分を請求する時のやり方です。遺留分を戻す時の配分仮に相続財産が預金1億円、土地1億円の合計2億円だとした場合、次女の遺留分である5,000万円はどこから渡すことになると思いますか?手っ取り早く考えるのであれば、預金1億円から5,000万円とって渡すのがシンプルに見えますが、実は法改正前はそのようなやり方が原則としてできず、預金2,500万円、土地2,500万円という配分にしなければならなかったのです。土地が共有状態にこのようなやり方をすると預金は問題ありませんが、土地については1つの土地を3/4と1/4という割合で長女と次女が共有することになってしまいます。そうなると将来的に長女が土地を売却したいと思っても、次女が賛成してくれないと売却ができなくなってしまい大きな不都合が生じていたのです。よって、2019年7月の法改正によって次のように改正されました。遺留分は金銭で精算2019年の法改正によって遺留分はすべて金銭で支払うこととなりました。よって先ほどの事例で言うと、長女から次女に5,000万円の金銭を渡せば土地を共有する必要はなくなったのです。非常によい改正なのですが、実は税金の話でいうと所得税が課税される可能性が出てきてしまったのです。所得税という税金が課税されるわけ先ほどの事例のように相続財産の中に多額の預金があればよいのですが、相続は預金残高がわずかで不動産の割合が多いというケースがよくあります。そうなると遺留分を金銭で支払うといっても、5,000万円という大金が準備できないという問題に直面する可能性があるのです。みなさんならこの場合どう解決しますか?おそらくほとんどの方が、不動産から5,000万円分を次女に渡して解決しようと考えるでしょう。ところが、残念ながら2019年7月の法改正後は上記のケースで次女に不動産から5,000万円分を渡してしまうと、長女の側に所得税が課税されてしまうのです。所得税課税のメカニズムもともと長女には次女に5,000万円を払わなければならない債務を負っています。これに対して長女が一定の土地の持分を渡すことで5,000万円の債務から逃れられることから、税務上は長女が次女に土地を5,000万円で売却したと考えて土地の売却益に対して所得税が課税されるのです。そもそも遺留分で渡すお金がないから土地を渡しているのに、そこに対して所得税を課税してくるとはなんとも酷な気もしますが残念ながらどうにもなりません。所得税を回避する方法万が一上記のケースで課税されると、所得税15%のみならず住民税についても5%課税されてしまいます(長期譲渡所得の場合)。この状況を回避するためには、遺言書が見つかった場合でも遺言書をなかったことにして遺産分割協議をすることが有効です。遺産分割協議をした上で、土地5,000万円を次女に割り振れば所得税が課税されることはありません。あくまで遺留分の精算として次女に渡した場合に所得税が課税されるので、遺産分割協議に切り替えてしまうことで最悪の状況は回避できます。相続における所得税の確定申告の必要書類やむなく所得税が課税されてしまう方については、会社員の方で年末調整をしている場合でも翌年2月中旬から3月中旬にかけて確定申告をしなければなりません。特に今回ご紹介した所得税は、譲渡所得税といい所得総額に総合課税されるのではなく分離して課税されるため計算方法が異なります。必要書類として準備が必要なものは主に以下の通りです。確定申告書譲渡所得の内訳書戸籍の附票遺言書など購入時の金額がわかるもの[adsense_middle]故人の確定申告(準確定申告)も必要ここまでは相続人の申告について解説してきましたが、実は亡くなられた方本人の死亡を知った翌日から起算して4ヶ月以内に相続人が代わって確定申告をしなければなりません。この申告のことを準確定申告といい、通常の確定申告と同じように青色申告をすることも可能です。準確定申告によって亡くなられた方のその年の所得について申告をするのですが、とにかく期限が4ヶ月と短いため葬儀や法事に忙殺されていると期限を過ぎてしまう恐れがあります。そのため、準確定申告についてはできれば相続税申告と合わせて税理士に任せてしまった方が得策です。相続における確定申告に関するまとめ今回は相続における確定申告について解説してきました。相続といえば相続税がかかることは知っていても、今回ご紹介した事例のように所得税が課税されるケースがあるとは知らなかった方が多いのではないでしょうか。何も考えずに手続きだけ先に進めてしまうと、気がついたときには所得税が課税されてしまっている可能性がありますので十分注意が必要です。生命保険のケースも遺留分の法改正のケースも、事前に所得税が課税される仕組みを理解して対策をとればそこまで大きな問題ではないので、今回の記事を参考にしていただき是非対策をとられることをおすすめします。
2020年01月19日日本の高齢化が進む中、将来の相続について考える方も増えているのではないでしょうか。相続対策を考えるにあたって非常に重要な位置づけとなるのが相続税です。相続税はすべての人に課税される税金ではなく、基礎控除額を上回った場合にだけ課税されます。そこで本記事では、相続税の基礎控除の計算方法や相続税申告に関連する基礎知識について詳しく掘り下げていきたいと思います。相続税とは?相続税とは相続等によって取得する財産に対して課税される税金で、亡くなられた方が持っていたあらゆる財産について課税の対象となります。具体的には、土地や建物などの不動産や現金、貯金、株式、投資信託、仮想通過、金、ゴルフ会員権など資産としてプラスになるものはもちろんですが、故人が残した借金についても相続の対象となるため注意が必要です。マイナスの財産を忘れる人が多い相続が発生した人から相談を受けた際に、「遺産はそんなに多くないので、調べるのは簡単です」という人がいます。ですが、プラスとなる資産については比較的楽に調べてまとめることができるのですが、借金については書類がちゃんと残っていないと相続人でも気が付かないことがよくあります。マイナスの財産を見落とすと、本来払う必要のない相続税を支払ってしまうこともあり得るのです。また、あまりにも借金の方が多く残っている場合については、相続するのではなくて相続をしないという手続きである相続放棄をした方がよいケースもあります。相続放棄は相続が開始してから3ヶ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをしなければならず、そういった手続きをしないまま3ヶ月以上経過してしまうと相続によって借金を背負うことになってしまうため注意しましょう。相続税の基礎控除額とは?相続税の基礎控除の額とは、相続税が課税される金額から差し引くことができる金額のことで、原則としてすべての相続人について適用ができる相続税の控除制度の1つです。冒頭で相続税はすべての人に対して課税される税金ではないと言いましたが、これは相続する資産の合計が基礎控除の金額を超えなければ相続税が課税されないことによります。相続税申告が必要なケース基礎控除以下の資産を相続するのであれば相続税は非課税ですが、相続税申告もしなくていいのかというと必ずそうとは限りません。相続税がかからない場合でも配偶者の相続税負担が軽くなる配偶者の税額軽減や、亡くなられた人が住んでいた家の建っている土地の評価額が80%オフになる小規模宅地等の特例といった各種特例制度を使うことで基礎控除額を下回るという場合については、たとえ相続税がかからなかったとしても、相続税申告だけはしなければならないのです。このことを知らずに「うちは相続税がかからないから」と高を括っていると、相続税申告期限が過ぎてしまい、おまけに特例も使えなくなるといった状況に陥る可能性がありますので注意しましょう。相続税の基礎控除の計算方法相続税の基礎控除額は次の計算式に当てはめて算出します。相続税の基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数例えば、妻と子供3人が相続人となる場合、基礎控除の金額は4,800万円となります。[adsense_middle]改正でどのくらい控除される金額が減ったの?ちなみに、平成27年に法改正がされるまでについては以下の計算式でした。改正前の相続税の基礎控除の金額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数先ほどと同じ条件で計算すると8,000万円となり、法改正によって基礎控除の金額がかなり縮小されたことがわかります。これによって、今までは課税される資産が基礎控除の範囲に納まっていたために相続税とは縁がなかったご家庭についても、半分近くまで基礎控除が減額されたことによって課税されるようになったのです。計算に含められる法定相続人の人数とは計算式を見ると分かる通り、相続税の基礎控除の金額は法定相続人の人数1人あたり600万円増えます。法定相続人は民法で優先順位が次のように決まっています。配偶者相続人亡くなった人の配偶者が存命の場合は、必ず法定相続人となります。血族相続人配偶者以外の親族については、次の優先順位に従って法定相続人となります。第一順位:子、(代襲相続の場合は孫)第二順位:直系尊属(父母、祖父母)第三順位:兄弟姉妹(※欠格や廃除があった場合は変わります。)このように法定相続人となる人と優先順位は民法によって決められているのですが、相続税の節税対策を考える人の中には、ある方法で基礎控除を増やそうとする人がいるのです。養子縁組で基礎控除を増やす第一順位の子というのは、亡くなられた人と血のつながりがある実子だけでなく養子縁組して実子になった子についても該当します。普通養子縁組は最寄りの役所で比較的簡単に手続きができることから、子がいるにもかかわらず孫と養子縁組して法定相続人を増やすという技を使う人がいるのです。確かに法定相続人が増えれば基礎控除も増えるのですが、これには大きなリスクがあるため注意が必要です。計算に含める養子には制限がある基礎控除の計算で法定相続人に含めて計算できる養子には、次のような制限が規定されています。実子がいる場合は1人まで実子がいない場合は2人までですので、最大でも2人までしか効果がないので、そのためだけに養子縁組することは決してオススメできません。バレると節税できない税務署側は基本的に節税目的の養子縁組を認めていません。そのため先ほどの制限の範囲内の養子だとしても、例えば遺産分割において養子に一切財産を相続させないなど、養子縁組をした理由に疑問が生じるような状況が発生すると、「節税目的で養子縁組してますよね」という指摘を受けることとなり、税務署長の権限で養子の人数を1人残らず基礎控除の計算式から除外されてしまう可能性があるのです。このことは相続税法第63条に規定されており、不当減少養子といいます。また、本人は節税対策目的で養子縁組したとしても、法律的には正式な法定相続人であり遺産を相続することができるため、場合によっては養子縁組したことによって遺産分割が大揉めになってしまうこともあります。よって、養子縁組は絶対に節税対策で使わないようにしましょう。相続税の申告期限について相続税は死亡を知った日の翌日から考えて10ヶ月で申告期限となります。例えば2020年1月10日に亡くなられた場合、その日のうちに相続人が死亡を知ったとすると相続税の申告の期限は2020年11月10日となります。ちなみに、最終日が土日祝日にかかる場合については翌平日扱いになり、仮に2020年11月10日が土曜日であれば2020年11月12日月曜日が申告の期限です。死亡を知った日の翌日からスタート相続税の申告期限で間違いやすいのが、どこから申告の期限のカウントダウンがスタートするのかという点です。死亡を知った日であり、死亡した日ではないので、例えば相続人が海外に住んでいて親が死亡したにも関わらずなかなか連絡が取れず、最終的に1カ月後に死亡の事実を知った場合についてはそこから10ヶ月のカウントダウンがスタートします。期限はあっという間にやってくる期限まで10ヶ月もあると思うかもしれませんが、実際のところそんなに余裕のあるスケジュールではありません。というのも、家族の誰かが亡くなると相続手続きは二の次でまずは葬儀の手配、火葬場の手配、埋葬の手配などやらなければならないことがほかにたくさんあります。その後もおおむね四十九日の法要が終わるくらいまでは、相続手続きに着手することすら難しいでしょう。遺産分割協議を先に終わらせる必要がある相続税申告の流れの中で最も障壁となるのが遺産分割協議です。相続税はたとえ同じ金額の資産だったとしても、誰が、どのように、いくら相続するのかによって課税される相続税の税額が違ってきます。しかも、相続税は原則として相続人全員で相続税を計算したうえで、それぞれが相続する割合に従って按分して税金を納めるので、遺産分割協議が終わらないと相続税が計算できず相続税申告もできないのです。とはいえ遺産分割協議は揉めることが多く、調停や裁判になると何年、何十年という長期間にわたることもあります。どうしても相続税申告に間に合わない場合遺産分割協議が終わらないからといって相続税の申告期限を延長してくれるわけではありません。たとえ相続人の間でひどく揉めているような場合でも、相続税の申告期限は絶対に守らなければならず、期限に1日でも遅れてしまうと次のようなペナルティが課せられます。無申告加算税:自主的に申告した場合は5%、税務調査が入ってから申告した場合は15%延滞税:2019年は年2.6%(税率は年によって異なります。)さらに、先ほどご紹介した配偶者控除や小規模宅地の特例なども使えなくなってしまいます。[adsense_middle]未分割申告をする遺産分割が終わらないまま申告期限が迫ってきてしまった場合については、未分割申告という方法で相続税申告をする必要があります。未分割申告とは、遺産分割の協議がまとまらないので、とりあえず民法で決められている法定相続分に合わせて相続したと仮定して相続税を計算し申告するやり方です。未分割申告をするには相続税申告書を提出するにあたって、申告後3年以内の分割見込書という書類も一緒に添付して申告します。未分割申告で申告しておけば、無申告加算税や延滞税は課税されません。ただし、未分割申告の場合は配偶者控除や小規模宅地等の特例といった相続税を低く抑える特例制度が使えないため注意が必要です。これらの軽減制度は本来相続税を大幅に減額することができる制度なので、一切適用できないとなるとかなりの金額の相続税を一旦納税しなければならなくなります。ですので、できることなら申告期限までに遺産分割を終わらせて、特例を適用したうえで通常の相続税を納税したほうがよいでしょう。更正の請求で相続税が戻ってくる未分割申告をすると高額な相続税が発生しますが、遺産分割が終わってから分割内容に合わせてもう一度相続税申告をすることで、多く納税しすぎている分の税金を返してもらうことが可能です。この手続のことを更正の請求といいます。申告をやり直すことを修正申告という人がいますが、修正申告は申告漏れなど少なく納税しているものを正すことで、税金を払いすぎている場合にするのは更正の請求というのです。実は相続税申告をした人の中には、計算ミスや評価額の判断ミスなどによって通常よりも多く相続税を納めすぎてしまっている人が結構います。そのため、相続税の取り扱い件数が多い税理士の中には、相続税の還付である更正の請求をメインとするセカンドオピニオンを大々的に宣伝してやっているケースもあるくらいです。遺言書があると相続税申告がスムーズ遺産分割が終わらないせいで未分割申告をせざるをえないケースが多いですが、遺言書が残されていればそのような心配も無くなります。というのも、法律に従った遺言書が残されていれば遺言書に書いてある通りに遺産分割をすればよいので、遺産分割の協議を相続人全員でする必要がなくなるのです。相続税申告をする際の添付書類についても、遺産分割協議書は不要になり家庭裁判所で検認した遺言書をもって代用することができます。遺言書というと相続発生後の揉め事を防ぐというイメージがあるかもしれませんが、相続税申告においても手続きがとてもスムーズになるので効果的です。相続税の基礎控除に関するまとめ相続税の基礎控除額の計算方法はとても簡単ですが、法定相続人となる人が誰なのかを勘違いしていると大変です。相続人が1人違うと600万円も変わってきてしまうので、計算する際にはまず誰が法定相続人なのかを入念に確認してからにしましょう。また、相続税の申告期限は10ヶ月しかありませんので、相続が開始したらできるだけ早く手続きに着手することをお勧めします。万が一期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが重いので十分注意が必要です。特に不動産や株式など評価額の計算が必要となる資産を相続する場合については、個人の方が自分で相続税申告をするには荷が重すぎるので、できる限り税理士に依頼してやってもらった方がよいでしょう。
2020年01月17日「相続で争うのは、お金持ちだけだと思っていませんか。相続トラブルのうち、およそ半数は1,000万円以下の遺産を巡るものだといわれています。そして、親族同士がもめる“争族”は、他人同士の争いよりも激しくなることも多いんです」そう語るのは、これまで約3,600もの家庭の相談を受けてきた遺言・相続の専門家の江幡吉昭さん。銀行勤務時代に顧客の相続争いを経験したことから専門家の必要性を痛感。遺言・遺産問題の総合サイト「遺言相続.com」を運営している。「司法統計のデータでも、遺産の分割を巡る争いは、平成20〜27年の7年で23%も増加しています。うちのきょうだいは仲がよいので大丈夫と思っている家族ほど、争いに発展することも多いのです」(以下、「」内は江幡さん)それまで問題なくやってきた親族が、遺産相続をきっかけに“争族”になることは多いという。しかも、意外な理由で……。江幡さんが“争族”の実例を教えてくれた。【争族1】いじわるな姉に“養子縁組”で復讐地主の長男の嫁として、夫の両親の介護を1人でやりながら30年も耐えてきた香織さん(仮名・55)。義理の父母は優しくしてくれるけど、夫の姉には「嫁だから実家のことはやって当たり前」と虐げられてきた。堪忍袋の緒が切れたのは、義母の三回忌の法事の席。夫の姉から「母が死んだのはお前のせいだ。父の財産も狙っている」と親戚中の前で罵倒された。「積年の恨みを晴らすため、香織さんは義父が亡くなる半年前、公証人を病室に呼んで、義父と養子縁組をしたんです。もちろん夫の姉には知らせませんでした」養子と実子の相続権は同じ。つまり、養子縁組したことで、夫のぶんとあわせ、香織さんの夫婦は義父の遺産の3分の2を相続できることに。一方の夫の姉は、2分の1の遺産を見込んでいたところ、3分の1に減ってしまった。「当然、夫の姉は怒りましたが、後の祭りです。香織さんの執念が勝ちました」【争族2】仲がよかった父に相続の対象外にされて「亡くなる直前に遺言書が作られ、争いになることも多いんです」82歳で亡くなった父と、前妻の息子・太郎さん(仮名・52)は仲が良く、入院中もお見舞いに行っていた。死後、共通の趣味であるサックスを譲ってもらう約束まで交わしていたのだが……。亡くなる直前に書いたという公正証書遺言に「遺産はすべて後妻の家族に相続させる」と書かれていたのだ。「遺言書や契約書などの法的な根拠を保証することができる公証人ですが、人によって対応の違いがあることは知られていません。遺言の作成には、本人の意思表示が必要ですが、これは「うん」とうなずけば、意思表示とみなすような公証人もいる。特に、依頼者(この場合は後妻家族)の弁護士や司法書士と公証人の仲がよい場合、意思確認がおろそかにされる傾向があるのです」遺言を不審に思った太郎さんは、遺留分だけは相続できるよう、請求することにした。「親は子どもたちにとって太陽のような存在です。太陽がなくなると、惑星の動きがバラバラになるように、親の喪失によって、家族の関係が一気に変わってしまうのです」“争族”が始まるタイミングは“四十九日”が多いという。葬儀や死亡後の手続きが落ち着いて、親族全員が集う初めてのタイミングだからだ。
2019年12月12日育児に対する関心が高まるいっぽうで、育児放棄や虐待、不妊治療、養子縁組制度など、子どもに関する問題が山積み状態であるのも事実。そんななか、注目作としてご紹介するのは、それらの問題に直面した母親たちの苦悩と葛藤を描いた映画『夕陽のあと』。今回は主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。写真・黒川ひろみ(貫地谷しほり)女優の貫地谷しほりさん!【映画、ときどき私】 vol. 275貫地谷さんが演じたのは、貧困に陥ってしまったがゆえに一度は母親であることを放棄した主人公の佐藤茜。本作では、“生みの母”である茜と、茜の子どもを里子として受け入れた“育ての母”である日野五月という2人の女性を中心に描かれています。そこで、役を通して感じた思いや現在の心境などについて語っていただきました。―まずは、今回の茜をどのような女性としてとらえて役作りをされましたか?貫地谷さん茜は周りに相談できる人がいなくて、ひとりで抱え込んでしまい、あのような選択をせざるを得なかった女性なので、とてもつらい役だなと思いました。だからこそ、恵まれた環境で両親に愛されて育ち、母親でもない私には、彼女の背景は到底想像しえないものだとも感じました。それでも、ニュースを見たり、本を読んだりすると、茜のような経験をしている女性がこの社会に実在していることがわかります。だからこそ、その人たちの気持ちを「わからない」と言ってしまうのではなく、なぜ彼女たちがそういう気持ちに至ったのかを理解しようとしました。とはいえ、この映画を観る大多数の人は、つらい不妊治療を続けてやっと出会った子どもを奪われそうになっている五月のほうに感情移入すると思います。それでも、その裏側でこういう思いをしている女性がいること、そしてひとりの社会人として、茜のような女性たちの声がはじかれてしまうことだけは避けたいということを考えていました。自分の思いだけで寄り添うことが難しかった―そういう意味でも演じるのは苦しい役どころでもあったと思いますが、一番葛藤したシーンはありますか?貫地谷さん胸から母乳を絞り出すシーンですね。本当は愛する子どもといたいし、その子に飲ませるために体がミルクを作っているのに、それをあげることができないなんて切ないと思いました。―確かに、同じ女性としては心が痛むシーンのひとつでした。ただ、今回は「もし私だったら」という気持ちは捨てて現場にいたそうですが、そうしようと思った理由は何ですか?貫地谷さん私は自分の意見を持たないのも罪だと思っているんですが、でも「自分だったら」という思いがあると、そこに善悪が発生してしまうような気がしていたからです。特に、私は茜とかけ離れた環境にいるということもあったので、これしか選択することができなかった女性に私の思いだけで寄り添うことに難しさも感じていました。自分でもどういう感情が出てくるのかわからなかったですが、茜という人物を頭で考えすぎて仕立て上げたくないという気持ちもあったと思います。―そのなかで印象に残っているセリフはありましたか?貫地谷さんある男性に居酒屋で説得されている場面で、「一度失敗した母親にはチャンスがないの?」というようなセリフを茜が言いますが、この言葉は母親に限らず、私自身にも思い当たるところがあったので胸がえぐれるような気持ちになりました。いまは、いろんな思いを抱えている人も多いので、私と同じように感じる観客の方もきっといらっしゃると思います。―特にいまの社会は一度失敗した人を受け入れにくいところもあると思いますが、そういったことに対する考え方も変わりましたか?貫地谷さん確かに、いまは失敗するとなかなか立ち直れない風潮もありますが、そういうときに大事なのは想像力を持つこと。根深い問題でもあるのでひと言では片づけられないですが、「自分はこう思うけど、相手はどう思っているんだろう」と考えることによって、もしかしたら少しいい一歩が踏み出せるかもしれないとは感じています。子どもは大人を見ているものなので、私たちが勇気を持って進んでいくことが教育という意味でも、それぞれの人生においても大切なことだと思いました。この映画が社会を変える一歩になって欲しい―そんなふうにさまざまな感情がご自分のなかにも沸き上がったと思いますが、この作品に参加したことで発見したこともありましたか?貫地谷さん茜のような人も含めて、どうすればいろいろな人が社会で一緒に気持ちよく生きていけるか、ということをより考えるようになりました。完璧に寄り添うことはできなくても、考えることはできますし、考えること自体、役者の仕事とも言えます。映画やドラマには人を動かすパワーがありますし、エンタテインメントでもあります。と同時に、観終わって「実は茜は身近にいるかもしれない」と思うことも、社会を変える一歩になるはずなので、この映画が考えるきっかけになればうれしいですね。私自身、いろいろな作品からいつもパワーをもらっています。―ananwebの読者たちも、同じ女性としてこの作品からは感じることが多いと思います。貫地谷さんいまは、「本当にこんなことが現実で起こっているの?」みたいなニュースがたくさんありますが、すべてが現実で、実際に隣の人や私自身もそうなる可能性があると思っています。そのなかで、物事を白黒だけで決めつけるのではなく、本当はそこで何か起きているのかということを考えることが、優しい毎日を過ごすための一歩かなと気がつきました。私がこの作品を通して感じたように、みなさんにもそういう気持ちや他人事にしないという思いを共有できたらうれしいです。―撮影期間中に楽しかったことはありましたか?貫地谷さん本編には使われていませんが、感情が高ぶって泣くシーンがけっこうあったので、毎日つらかったですが、そんななかでうれしかったのは、スーパーで買った普通のお刺身がとにかくおいしかったことですね(笑)。ブリや聞いたことのない名前の白身魚など、本当にどれもおいしかったです!そうやって撮影の帰り道に買い物をしてご飯を作っているときが、唯一何も考えなくていい時間だったので、楽しいひとときでもありました。きちんと生活することを意識している―ananwebでは2年前にも取材させていただいており、そのときに「30代は仕事においてもプライベートにおいても、もっと冒険して、自分の好きなものを突き詰めていきたい」とおっしゃっていましたが、最近冒険したことはありますか?貫地谷さん冒険ではないですが、自分が何をしたいのかというのを考えてみたところ、その答えは「きちんと生活すること」でした。なので、いまはきちんと生活をして、その一部に仕事があるような感覚です。あとはナレーションの仕事が増えてきたこともあって、ニュースや世間で起きていることにも関心を持ち、どういうふうに向き合うかを考えることも日常になっています。でも、そろそろ冒険もしなきゃいけないなとは思っていますけどね。―では、いましたい冒険とは?貫地谷さんずっと苦手意識があるんですが、挑戦してみたいのは色っぽいお芝居とかですね。恥ずかしさもありますし、できるかどうかは別として、そろそろオファーが来てもいいんじゃないかなとは思っています(笑)。―ぜひ新たな貫地谷さんも拝見したいです。ちなみに、先ほどのきちんと生活するの「きちんと」とはどういう意味ですか?貫地谷さん「ひとつひとつをおろそかにしない」ということですね。食事もそうですけど、「まあいいや」で済ませないようには心がけています。最近は休みの日にアロマを作りに行ったりもしていますが、それによって自律神経の数値が改善されたりするんですよね。香りだけでこんなに変わるんだというのは発見でもあったので、取り入れるようにしています。―現在33歳になられましたが、30代になってよかったと感じる瞬間はどんなときですか?貫地谷さん何か問題が起きたときに、なぜ起きたかを考えられる冷静さが少し出てきたことですね。20代のころは何かあると、「わー、ありえない!どうしよう!」みたいな感じになったり、なかなか他人の意見を受け入れられなかったりするところもありましたが、いまはちゃんと物事に向き合える精神状態でいられるので、前よりは穏やかになっているような気がしています。何でもとりあえず試してみること―以前よりも、心に余裕ができてきたということですか?貫地谷さんそうですね。なので、腑に落ちないことでもとりあえず試してみるというか、「減るもんじゃないし、やってみるか!」みたいに思えるようになったところもあります(笑)。―そういう心がけは大事だと思います。では、美しさを保つために意識していることがあれば教えてください。貫地谷さん最近は食べるもので体も変わるんだなというのを感じているところです。気がつくと糖質オンパレードになっていることもありますし、つい最近もご飯2合といろいろなおかずを一気に食べ過ぎてじんましんが出てしまったことがあって……(苦笑)。そういったことも踏まえて、いまはバランスや必要な栄養素なども考えるように心がけています。インタビューを終えてみて……。気さくで優しいオーラに包まれている貫地谷さん。満面の笑顔もステキですが、年々大人の色気も増してきている印象なので、今後新たな一面が見られることを楽しみにしたいと思います。まずは、本作での心を揺さぶる貫地谷さんの熱演に注目してください。誰の心にも訴えかける普遍的な人間ドラマ!母の愛や親子の絆、そして家族の在り方を改めて考えさせられる本作。そして、取り返しのつかない過ちを犯したとき、それをどう乗り越え、どうやって周りが支えていくのかという現代社会の抱える問いにもひとりひとりが向き合ってみては?ストーリー鹿児島県にある小さな島に、東京からやってきた茜。食堂でテキパキと働き、島の人々からも人気があったが、自分のことを語ることはなく、謎に包まれていた。いっぽう、島で生まれ育った五月。不妊治療を断念するというつらい過去があったが、いまは夫と里子の豊和とともに幸せに暮らしていた。特別養子縁組の申請を控え、“本当の母親”になれることに喜びを感じていた五月だが、行方不明だった豊和の生みの親の所在が判明。その背後には、ネットカフェで起きた乳児置き去り事件があることを知るのだった……。胸が痛くなる予告編はこちら!作品情報『夕陽のあと』11月8日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!配給:コピアポア・フィルム©2019長島大陸映画実行委員会スタイリスト:番場直美ヘアメイク:北一騎ワンピース¥48,000(ラシュモン/ストローラーPR TEL:03-3499-5377)イヤリング¥10,000(アンスリード/アンスリード 青山店 TEL:03-3409-5503)シューズはスタイリスト私物
2019年11月07日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】父とともに遺言状の作成を行っているE子さん。遺言状は自筆である必要があるので、父に書かせているが、資産家の父は財産が多岐にわたっているうえ、一筆でも間違えば、訂正印を押して、何文字直したまで記載しなければならない。手元がおぼつかない父はイライラが募り、もう書きたくないと言いだした【新ルール】財産目録は自筆じゃなくてもOKに「遺言書は、日付、署名、押印がなければ認められず、すべて手書きでなければいけませんでしたが、今年1月から『財産目録』に限り、自筆でなくても認められるようになりました」(外岡さん)遺言作成の手間が大幅に軽減したことになる。「パソコンやワープロを使って作成した文書や、不動産登記事項証明書、通帳のコピーも目録として使用してもよいことに。ただし各ページに署名押印する必要はあります」(外岡さん)日本は現在、亡くなる人が年間で130万人を超えている。「つまり、その数だけ『相続』事案は発生しています。高齢者同士の相続が増えたことや、配偶者保護の必要性が出たことなどから、今回40年ぶりに相続法が改正されたのです」(松下さん)配偶者居住権や、生前贈与の持ち戻し免除が認められるようになったのも、超高齢社会で残された配偶者が困窮しないための措置だ。妻にとって、有利なことが多い今回の法改正。知らなければ、大きな損。逆に知ってさえいれば、大きく得ができるのだ!
2019年11月02日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】C子さんの夫は認知症を発症し、遺言状を書くことはできない。夫が亡くなった場合、評価額2,000万円の自宅だけが遺される。遺産は、C子さんに1,000万円、折り合いが悪く没交渉になっている娘に1,000万円という計算になるが、娘からは遺産分割のため、自宅の売却を求められる可能性が高い。このまま、住み慣れた家に住み続けたいが……【新ルール】’20年4月から夫の死後も居住権を主張できる「夫の死後、土地を妻と子どもたちで遺産分割する場合、所有権を子どもたちが取得すれば、年老いた妻が家を追い出される可能性があります。『高齢の配偶者の自宅を確保する』ために、改正相続法では『配偶者居住権』が新設され、’20年4月から施行されることになりました」(外岡さん)自宅の権利が「所有権」と「居住権」に分けられ、妻が居住権を相続すれば、所有権の有無にかかわらず、妻は自宅に住み続けることができるようになる。居住権の価値の算出は、築年数や耐用年数などから複雑な計算をする必要があるが、価値を仮に1,000万円とした場合、C子さんは居住権1,000万円、娘は“居住権のない所有権”1,000万円を相続することになる。居住権は売ることはできないが、C子さんはなくなるまで、自宅に住み続けられるのだ。「さらに、『配偶者短期居住権』というのも新設されます。遺産分割協議成立まで一定期間(早期に成立した場合は最低6カ月)、妻は家賃を払うことなく自宅に住み続けられることに」(松下さん)
2019年11月01日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さんが解説!【ケース】夫が亡くなり、葬儀をしないといけないのに、B子さんと息子には貯金がない。夫の口座には葬儀費用ぐらいありそうだけど、口座が凍結されてしまって……【新ルール】150万円まで故人の口座からお金をおろせる「被相続人(夫)が亡くなると、金融機関の預貯金は凍結されて、遺産分割の協議が終わるまで、引き出せなくなってしまいます。しかし『葬儀のお金がない』というのは重大な問題です。そこで、今年7月から、相続人が適切な手続きを行えば、被相続人の預貯金を引き出せるようになりました」(松下さん)引き出せる限度額は、被相続人の預貯金残高の「3分の1」に、相続人の法定相続分(妻=2分の1、子=2分の1をきょうだいの数で割った額)をかけた金額。仮に夫が600万円の貯金を遺した場合、B子さんは6分の1にあたる100万円まで引き出せる。「ただし、1金融機関での払い戻しの上限は『150万円まで』と定められています。『用途』は限定されていません。なかには、被相続人の負の遺産、つまり借金を返済するという目的で払い戻す人も。いずれにせよ、何に使ったのか記録を残しましょう。葬儀費用など故人のためではなく、自分のために使った場合は、相続額から引き出した金額分が引かれることになります」(松下さん)
2019年11月01日今日は、育児がつらくて、育児放棄してしまいたくなったときに考えたいことについてお話しします。 慣れない育児の中、・産後うつのせいなのか不安でたまらない・自分の時間を子どもに奪われている気がしてしまう・子どもがちっとも寝てくれず泣いてばかりでイライラする・毎日の育児がうまくいかず気が滅入る・鬱々として虐待してしまいそうな自分がいるなど、このような状況が続き、子どもをかわいいと思えず、さらには、子どもを愛せない自分に嫌気がさして自己嫌悪になってしまうママは多いものです。 でも、自分を責める前にちょっと考えてほしいことがあります。 子どもを愛することができる人ばかりではないちょっと前に友人が「うなぎっておいしい?」と聞いてきたことがあります。わたし自身はうなぎが大好きですので「おいしいと思うよ」と答えました。「おいしくて有名だというお店に食べに行ったが、それでもおいしいと思えなかった」と友人はどうにも納得がいかないようでした。 友人は、“うなぎはおいしいと思うべきで、おいしいと思えない状況はおかしいのではないか”と思っている様子です。この話を聞くと、うなぎをおいしいと思わない人がいてもなんら不思議ではないと思う方がほとんどではないでしょうか。でも、これが「自分の子どもを愛せない」となるとちょっと状況が変わる感じがしてしまいますよね。まるで、人としての失格の烙印を押されてしまうように感じてしまう方もいるかもしれません。でも、産んですぐに子どもを愛せないことは、悪いことでも間違っていることでもありません。それはあなたのひとつの考え方であり、感性であり、人からあなた自身を否定されるものではないのです。 ましてや、出産後でホルモンバランスが崩れ、自分の体に変調がある中、大変な育児をしているのです。疲れがたまっていて、他のものに力や愛をそそげなくてもなんら不思議ではありません。まず、「子どもを愛せない」ということで自分自身を責めるのはやめましょう。そのように責めてしまうことも、自分を疲れさせてしまう一因になってしまいます。 “育児がうまくいっていない”という状況はない子どもを愛せないと思ってしまっているとき、心身ともに疲れきってしまっていることが多くあります。前述したように、ホルモンバランスの崩れや日々の育児で疲れやすい状況にあるママであればなおさらです。真面目で一生懸命なママほどストレスがたまりがち。そして自分を責めてしまいがちです。「一生懸命やっているのになんで!?」「どうしてわたしはうまくいかないの!」と思ったときは、ちょっと立ち止まって、思い出してほしいことがあります。“育児に正解はない“ということです。育児がうまくいっていないという状況はこの世の中には存在しないのです。世界に一人だけの赤ちゃんがいて、世界に一人だけのママ。その組み合わせの子育ては世界でたった一つです。正解はこれから赤ちゃんとママで作っていくものです。こうしなければならない、ああしなければならない、という考え方から自分を解放してあげてください。 ちょっとだけ自分の時間をつくろうとはいえ、まだ自力で生きていけない赤ちゃんを放っておくわけにはいきません。イライラして虐待や育児放棄をしてしまいたくなったら、各地域にある子育て支援センターや祖父母などの頼れる人にお願いして、一人の時間をつくってリフレッシュしてみましょう。育児放棄をしたくなるくらいがんばっているママほど、子育て支援センターなどに頼るのに罪悪感を持ってしまいがちですが、つらいときこそ、餅は餅屋です。リフレッシュして心身の疲れがちょっと取れたら、赤ちゃんに優しく接する余裕も出てくるはずです。 24時間拘束され、大きくなればさらに異なった難問にぶつかる、それが育児です。どんなに偉大に見えるママも、それぞれが手探り状態でおこなっているのです。自分を責めずに休憩をうまくとりながら、肩の力を脱いて赤ちゃんに向き合ってください。 著者:ライター カトウ ヒロコメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。また、フリーのWEBプロデューサー&ライターとして活動中。
2019年10月04日親が土地や不動産などの財産を持っていて、もしその親が亡くなってしまった場合は相続が発生する形となります。しかし相続では自動的に手続きが行われるわけではないため、自分たちできちんと段取りを踏んで手続きを行っていかなければ損をしてしまうケースも考えられます。また一生のうちに多く経験することではないので、やり方がわからないという方も多いかと思います。今回の記事では、相続が起こってからどうすればいいのかを順番を追って紹介していきます。相続が発生した場合、まず何からしなければいけないの?今回のケースではお父様が亡くなって(この記事では、以降亡くなった人を被相続人といいます)、お母様と子供2人が相続人というケース、つまり被相続人と相続人が3人の場合という事例で紹介していきます。死亡届の提出お父様が亡くなって、まず最初にしなければいけないことは死亡届の提出です。こちらは市区町村役場へ、死亡の事実を知ったときから7日以内に行わなければならないことになっています。遺言書があるかどうかの確認同時に遺言書があるのかどうかについても確認しましょう。遺言書があると財産の分配に影響してくる場合があります。なお、今回のケースでは遺言書はなかったものとして紹介していきます。相続税の申告と不動産などの名義変更その後、行っていく手続きとしては相続税の申告と不動産などの名義変更といったところになります。なお。相続税の申告については、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内という期限があります。一方不動産などの名義変更には期限は特に定めはありません。土地、建物などの不動産の分割の方法死亡届の提出と遺言書の確認を行ったら、次に被相続人の財産を相続人の間で分割する話し合いをしていかなければなりません。その際、現金でしたら単純に金額を分配していけばいいのですが、土地や建物などの不動産の場合そういうわけにもいきません。それでは土地、建物などの不動産の分割にはどのような方法が考えられるのでしょうか?ここでは分割方法について紹介していきます。土地、家屋などの固定資産の分割方法の種類現物分割相続財産が土地だけで建物がない場合は、単純に土地の面積を相続人の人数で割って分割する方法が考えられます。これを現物分割といいます。代償分割相続財産が土地だけではなく建物も一体となっている場合は、1人の相続人が相続するというケースがあります。このケースでは他の相続人に対して代わりの財産を分配することで公平に財産を分配できる形になります。これを代償分割といいます。換価分割換価分割とは親から引き継いだ土地や建物などの不動産をそのまま引き継ぐのではなく、売却して現金に換金してから財産を分配する方法をいいます。以上が土地、建物などの分割方法の種類になります。なお、分割方法ではありませんが、これとは別に相続人複数で土地、建物などを共有するという相続の方法もあります。計算は煩雑になってしまいますが、賃貸用マンションを相続して共有名義にするといったケースもあります。協議の内容に沿った遺産分割相続人の間で話し合いがまとまった後は、遺産分割協議書という書類を作成し遺産分割の内容を書面に残します。口約束でのトラブルが防げるのはもちろんですが、この遺産分割協議書が存在することで、第三者に対してもどのような内容で財産を分配したのかを示すことができます。参考:なかなかまとまらない遺産分割協議上記のように遺産分割協議がスムーズにまとまれば良いのですが、相続人の人数が多くなってくると遠方に住んでいるケースなどもあり、なかなかスムーズに話し合いが進まないといった状況も考えられます。遺産分割協議が相続において一番の難関であると思います。そのため、被相続人が亡くなってすぐに遺産の分割の話し合いというのはなかなか難しい面もありますが、なんとか相続人同士で協力し合って早めに話し合いの場を持つことをおすすめします。相続税の申告と相続税の納付の手続き相続人の各人にどのように財産の分配をするのかを決定したら、その内容に基づいて相続税の申告準備を進めていく形となります。相続税の申告と相続税の納付の期限は同じで、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内という期限になります。こちらは期限を過ぎると罰則があるため、遅れないように申告と納付を行わなければなりません。ここでは相続税の申告と納付の手続きの流れについて紹介していきます。[adsense_middle]相続税の計算方法相続税は現金、預金や土地、建物といった不動産、その他の財産の価値を集計して計算していきます。集計した金額からは次の控除額を差し引くことができます。相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×相続人の人数今回のケースでは父が亡くなって、母と子供2人が相続人という形になるため、相続人の人数が3人になります。上記の控除額の計算式にあてはめると、相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で4,800万円という形になります。なお相続税の基礎控除額が下がってしまったため、今後相続税を申告、納付する世帯が増えてくると思われます。相続税を納めるほどの額の財産はないという人も、念のため財産の価額を確認することをおすすめします。相続財産が基礎控除額を上回ってしまったら?上記のようにおおよその計算をして、もし財産の価額が基礎控除額を上回りそうだとなった場合は、相続税の計算をして申告と納付をしていく形になります。しかし現金や預金などの財産は金額が表示されているため、誰が計算しても同じ金額になりますが、建物や土地などは誰が計算しても同じ金額とはなりません。理由として、不動産の評価金額の計算方法が専門家によって異なる場合があるためです。このことから、専門家でも不動産などの財産の評価は難しいということがわかります。そのため相続税の計算や申告は相続を専門に行っている会計事務所などに依頼することをおすすめします。なお相続の経験があまりない会計事務所もあるため、ご注意ください。もちろん依頼する分、費用がかかってきますが、結果的には時間と手間を節約できることがメリットだと思われます。相続税申告の必要書類相続税の申告が必要というケースでは、どんな書類が必要となってくるのでしょうか?ここでは相続税の申告に必要と思われる書類を紹介していきます。被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越しが多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票(特例を使って申告する場合、確認のために必要となります)不動産の固定資産評価証明書相続人全員のマイナンバー相続人全員の身分証明書(マイナンバーカードであればひとつで大丈夫です)基本的には上記の書類が必要です。書類については会計事務所によって取り扱いが異なることもあります。会計事務所などに依頼する場合は、依頼している会計事務所などに確認していただければと思います。相続税の納付相続税申告書が出来上がれば、相続税の金額も計算されていることと思います。なお、相続税の納付については現金で納付することとされています。そのため現金や預金などの財産が多ければ、相続税の納付も相続財産から行うことができます。しかし不動産などの財産が多い場合は、評価額によっては現金や預金で用意できないケースもあります。そのため、相続税を納付するために不動産を一部売却するといった事態が起こる可能性も確認いただければと思います。財産の名義変更の手続き相続税の申告と納付を無事済ませたら、その流れでそのまま財産の名義変更をすることをおすすめします。名義変更には期限はありませんが、名義変更を放置するとデメリットが生じる可能性があります。ここでは名義変更の手続きに必要な書類及び、名義変更を放置した場合のデメリットについて記述します。[adsense_middle]名義変更の必要書類被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越が多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、お早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票不動産の固定資産評価証明書本人確認書類こちらの必要書類についても、専門家に依頼する場合は、念のため専門家に確認いただければと思います。名義変更にかかる費用不動産の名義変更とは、手続きとしては不動産の名義を被相続人の名義から相続人の名義に変更するという手続きになります。また登記の申請には登録免許税という税金が別途かかる形となります。登録免許税の金額登録免許税の金額は、相続の場合、固定資産評価額の1,000分の4と定められています。例えば不動産の固定資産評価額が1,000万円の場合は、4万円といった形になります。このように自分で登記をする場合は上記のような書類が必要となりますが、相続税申告とほぼ同様の書類が必要となるため、相続税の申告まで進んでいる段階であれば書類を集めることは難しいことではありません。しかし自分で不動産登記を行うとなると思わぬ手間がかかってしまったり、時間も思いの外かかってしまうといった可能性が高いです。そのため不動産登記についても、相続税申告のときと同様、専門家に依頼することをおすすめします。不動産登記申請の専門家は司法書士です。依頼している会計事務所に提携している司法書士がいる場合は、相続税申告の際、名義変更の登記申請の必要書類ができている形になるため、専門家への費用が抑えられる可能性もあります。詳細については、会計事務所に相談して提携している司法書士がいるかどうかなどを確認することをおすすめします。名義変更を放置した場合に考えられるデメリット1.相続人各人の環境の変化遺産分割協議をした時点では、話がまとまっていたとしても他の相続人が不慮の事故などで亡くなってしまった場合など、思わぬ展開になることがあります。例えば今回は母と子供2人の相続人3人のケースを考えてきましたが、仮に子供の一方をAとして、Aに奥さんがいたとします。このAが不慮の事故で亡くなった場合は、相続の権利がAの奥さんに引き継がれます。名義変更を放置していると、本来遺産分割協議ではもう一方の子供Bに財産が引き継がれることになっていたとしても、Aの奥さんにも財産を相続する権利があるため、Aの奥さんが財産の分配に反対した場合は再度話し合いをしなければならないといった事態が起こります。このようなケースになってしまうと、遺産分割協議のとおりに相続することができないといった可能性が出てきてしまいます。2.書類の収集が煩雑化してしまう場合がある1のケースのように財産の引継ぎで揉めることはなくても、相続人の人数が増えてしまった場合はどのような問題が生じるでしょうか?例えば今回のケースでは母と子供A、子供Bは全員近所に住んでいたとします。しかし、子供Aが不慮の事故で亡くなってしまい、奥さんと、新たに子供Aと同居していない孫C、孫Dがいたとします。孫C、孫Dが近所に住んでいなかった場合は、それだけで書類のやりとりが煩雑になってしまいます。この上、孫C、孫Dが財産の分配に反対してきたとしたら、余計に手続きが煩雑化してしまいます。このようなケースになってしまうと話し合いの場を持つことも困難でしょう。名義変更は早めに行うべき以上のように、引き継ぐはずだった財産が引き継げなくなってしまう可能性も出てきてしまうのです。このように相続人各人の環境は永遠に不変のものであるとは言い切れません。権利を確定する意味でも、名義変更などの手続きはいつでもできるといって放置せず、なるべく早めに行う必要があると言えます。土地を相続する方法に関するまとめここまで紹介してきたように相続の発生は、人の一生が終了してしまうという重大な出来事であるため冷静に対処することが難しいですが、まずは落ち着いて被相続人の死亡届と遺言書の有無を確認しましょう。その後、相続税の申告を専門家に依頼することと、相続財産に土地や建物などの不動産があれば名義変更を専門家に依頼すれば、まずは一安心ではないでしょうか。流れとしては、被相続人の死亡届、遺言書の有無の確認相続税の申告、納付財産の名義変更といった形です。なお2、3は同時に進めていくことも可能です。詳細は専門家に確認していただくことをおすすめします。本記事が少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
2019年09月07日かつて高い資産価値を誇っていたはずの不動産も、近年では少子化による「家余り」で売るに売れない「負動産」になるケースが増えているという。「不動産」ならぬ「負動産」とはなんだろう。「一般的に負動産とは、『持っているだけで資産的にマイナスになる不動産』のことを指します。もっともイメージしやすいのは、地方にある戸建ての空き家でしょうか。もともと住んでいた親は亡くなったものの、売却もできず子どもが固定資産税を払い続けているような状態は、負動産の典型例です。また、それに限らず『いまよりも価値が下がっていく不動産』も、大きな枠で負動産に該当すると私は考えています」そう語るのは、負動産問題の専門家で、相続・不動産コンサルタントの藤戸康雄さん。すでに国内にある「所有者不明」の土地は九州の面積を超す広さに達しているが、藤戸さんは「今後はさらに、マンションも含めた負動産が大幅に増加していくでしょう」と警鐘を鳴らす。「すでに都心でも、木が鬱蒼と生い茂った空き家を目にするようになりました。相続争いなどの問題もあるのでしょうが、もし所有者や相続人たちが『場所がいいから、売ろうと思えば高く売れる』と思っているのなら大間違いです。需要自体が減っているなか、不動産業者もいつ空き家状況が解消するかわからない物件より、いま売りに出ている土地や家を優先して扱います。都心でさえすでに『その気になればいつでも売れる』などという時代ではなくなっているのです」地方となればなおさらだ。もはや、不動産はプラスの資産になるどころか、売ることも貸すこともできず、固定資産税などのお金だけがかかっていく「負動産」になりうる時代。そこで藤戸さんが、負動産のリスクを減らす心得を伝授!■相続前に負動産リスクを軽減するために【心得1】親が健在なうちに家族会議を開くべし!「親が健在なうちに死後のことを話すのははばかれるかもしれませんが、仮に親に何かあってからでは的確な判断ができなくなるため、のちにきょうだい同士が相続でもめる原因に。ましてや認知症になってからでは遺言書の作成も困難になります」(藤戸さん・以下同)一般的に「健康寿命」は男女とも75歳が目安とされているので、いち早く話し合いの場を設けて!【心得2】登記をあげて権利関係者を把握すべし!自分の実家が親より前の世代から所有されていた場合は、実家の登記簿謄本を調べて権利関係者を把握しておこう。「父親が祖父から実家を譲り受けていたけれど、名義は祖父のままだった、ということは珍しくありません。すると、相続人は父のきょうだいやその子に及ぶこともあり、全部で20人も!ということも」スムーズな相続のためにも、まずは管轄の法務局で登記簿謄本を取得しよう。【心得3】隣家との境界や建物の現況を調べるべし!とくに実家が過疎地の空き家という場合、もっとも有効な対策となるのがお隣さんの存在。「たとえ無料でも土地を引き取ってもらったほうが、税金や維持管理費から解放されることになります。ただし、反対側にも家がある場合は、境界線を確定させないと思わぬトラブルのもとに。ほかにも、シロアリに食われていないかなど物理的な確認もしておきましょう」測量、調査は土地家屋調査士へ。【心得4】相続放棄の可能性も視野に入れておくべし!「後々の面倒を避けたければ、不動産を含むすべての相続財産を放棄してしまうというのもひとつの手です。マンションなら、その後の管理責任は管理組合に移行されるのが通常です。戸建ての場合は家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行う必要があり、かつ100万円程度の『予納金』が発生する場合もありますが、負動産を管理し続ける手間とコストを考えれば、十分に検討の余地はあるでしょう」■相続後の“負け幅”を小さくするために【心得5】民泊での活用を検討してみるべし!訪日外国人が訪れるエリアに実家があるという人は、「民泊」で固定資産税や公共料金ぶんを賄うという選択も。「民泊とは旅行者が一般の民家に宿泊することや、そのサービスの通称です。海外からの旅行者の宿泊需要を満たす必要性が高く評価され、昨年には『住宅宿泊事業法(民泊新法)』が施行されました。都道府県知事への届け出や、専門業者への委託などが必要ですが、検討してみては」【心得6】DIY賃貸で借り手のハードルを下げるべし!DIY賃貸とは、借り主が費用を負担することで自分好みの内装工事を施して入居する賃貸物件のこと。「誰も住まなくなった空き家をリフォームして賃貸にするには高額な費用がかかりますが、DIY賃貸ならその必要はありません。また、自ら内装を手がけて借りるくらいの借り主ですから家賃滞納のリスクも低くなります」相続絡みの紛争で塩漬けになっている都心の空き家などにはもってこいだ。「何より優先してほしいのは、実家の所有者である親が元気なうちの家族会議です。仮に、実家が明らかな負動産なのであれば、相続人全員で相続を放棄するという選択肢もありえるでしょう。もっとも、戸建ては相続放棄をしても管理責任から逃れるためには相続財産管理人選任の申し立てが必要です。その費用として高額な予納金が発生することもありますが、少なくとも固定資産税や維持管理費を支払い続ける義務からは解放されます。また、親に多少の現金があるのなら、葬儀費用を除いたお金で一時払いの生命保険に加入してもらっておくというのもひとつの手段です。相続放棄をしていても保険金は受け取れますので、そのなかから予納金を工面することができますから」ほかにも、実家の名義人である父親が亡くなったときに、母親がそのまま家を相続するのか、それとも売却して現金化するのかなど、込み入った話をするのであれば、少しでも親が若いに越したことはない。「さらに、父親が亡くなった後、高齢になった母親が認知症になってしまえば成年後見人をつけなければいけなくなり、相続問題はより難航します。そのためにも、親が元気なうちに合意しておくことが大切なのです」こうした家族会議と並行して、権利関係者や物件の現況をしっかり把握しておくことも忘れずに。隣家との境界線が曖昧だったり、建物自体がシロアリの被害に遭っていたりすれば、負動産の“負け幅”が想定以上に広がりかねないからだ。すでに親が亡くなり負動産を相続してしまった人も、負動産のリスクを減らす心得を参考に“負け幅”を小さくする方法を検討してほしい。「列島総負動産時代」はすぐそこ。早めの備えで、負け戦から逃げ切ろう!
2019年09月04日相続について親子間で話し合うのは難しいと感じている人は少なくないようです。自分たちの「貯蓄」や「資産運用」の考え方が親と違うために、もめごとになったり、親の相続資産を自分たちに与えてもらえないのではないかという不安を解消するために知っておくべきことをご紹介します。■ 1.相続トラブルは資産がない家の方が多い相続に関して「うちは資産がないから争いにもならないし、相続税も支払わなくても大丈夫」と思っている人はいませんか?意外に思うかもしれませんが、そのような家庭の方が相続トラブルは起こりやすいのです。1-1なぜトラブルが起こるのかST8818 / PIXTA(ピクスタ)両親のうち父親が亡くなった場合に、資産は自宅と土地とわずかな銀行預金だけで、母親が自宅に死ぬまで住み続けたいと思っているというケースは多くあります。そのような場合、資産がない家庭だと不動産を現金化できないため、法定相続分通りに遺産を分割しにくくなります。また、民法が改正され、今年から「配偶者居住権」という法律が新たに加わりました。これは、「相続開始時に被相続人所有の建物に居住する配偶者が、相続開始後、終身その建物を無償で使用することができる」という権利です。法定相続分通りに遺産分割しても、母親が自宅に住んでいるのであれば、相続した子どもが売却や賃貸で収益を得ようとしても、現実的には難しくなります。このような理由から資産が少ない家庭の方が相続トラブルになりやすいのです。いくら遺産が少なくて兄弟の仲がよくても、お金を目の前にして不公平感を感じると、相続が「争続」になるケースはどこの家庭にも潜んでいます。1-2相続について話し合っておいた方がよいケースは?Tony / PIXTA(ピクスタ)相続について話し合っておいた方がよいのは次の3つのケースです。相続税がかかることがあらかじめ分かっている場合相続税はかからないが、子どもが複数いて、今親が住んでいる家など親の資産を、子どもが均等に分けるのが難しいと予想される場合子どもが相続を受けたくないと思っているものを、親が資産として持っている場合。老朽化した賃貸住宅を親が所有していて、相続を受けても賃貸経営を続けていくことが難しい、売却しても、かえってコストがかかってしまうなどのケースです。相続の相談は切り出しにくいかもしれませんが、お盆で帰省するときや、家族で集まる機会があるときに、話しておくべきです。■ 2.どのように資産を分けたらいいのかHiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)相続の場合、遺言書があれば、それが一番優先されると思っている人が多いようですが、実は違います。一般的には、「相続人の合意>遺言書>法定相続分」となり、相続人の合意が一番優先され、別の分け方ができるのです。2-1一番良いのは相続人の話し合いでの合意すべての相続人が話し合い、合意するのが一番良い相続の方法です。そのために、すべての相続人に「相続財産」「法律の定め」「自分の気持ち」を隠さずにすべて正直に話すこと家と土地は、なるべく一人の所有者となるようにすべきことを心がけましょう。最初から正直に話さないと、法定相続分と大幅に割合が異なり、自分が多くもらうことになったときに、ほかの相続人から 「なんとなくあやしい」「何か隠し事をしているのでは」 という不信感がめばえてしまい、ここから争いに発展するのです。また、固定資産税の支払いや、 不動産の維持費の支払いなどが複雑となるため、不動産などの共有名義は避けましょう。不動産をもらう人が、もらわなかった相続人に現金で支払うなどすることで解決できます。2-2生前贈与を検討した方がいい場合もMills / PIXTA(ピクスタ)親の老後の生活資金が確保できている、親が亡くなった後に子どもへの金銭的(現金)な相続をする準備ができている家庭なら、「生前贈与」を考えてもよいでしょう。子どもが自分たちの住宅を購入する際に、親から子どもが住宅を購入する時点で親に生前贈与をしてもらっておくことで、住宅取得資金等の非課税制度や相続時精算課税など、優遇税制の対象になる場合もあるからです。また、住宅購入資金の融資額やその利息分の削減ができるので、資金面で楽になります。■ 3.まとめsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)相続が発生する前に親に対してストレートに相続について相談すると、自分の子どもに「あなたはもうすぐ死ぬくらいの歳だ」と言われたようなものと感じ、不快に思われることもあると思います。「もっと年をとったとき今の家に住み続けたいか」など、将来の意向を聞く、相続セミナーに誘ってみるなどの方法で、相続に関して注意を促しましょう。帰省の機会が多い今の季節に、相続のことを話し合うチャンスづくりをしておきましょう。
2019年08月16日財産を相続する際に、遺族間で揉めてしまう場合があります。子どもの1人が実家の敷地に住宅を建てている場合は特にその可能性が高くなります。相続で揉めないために、親が元気なうちにやっておくことがあります。父親:死亡母親:実家の敷地の土地所有者子どもA:実家の敷地に自分名義で家を建てた、かつ母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有する子どもB:母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有するという場合どんなことをすれば、トラブルを未然に防ぐことができるか考えてみましょう。■ 1.なぜトラブルが起こるのかmidori / PIXTA(ピクスタ)両親のうちの片方が亡くなる「一次相続」で、生存している母親が土地を相続する場合は、子ども同士のトラブルは起こりませんが、その後、母親が亡くなったときの「二次相続」で、遺産分割を巡り兄弟姉妹間のトラブルに発展する可能性があります。Aは母親名義であった土地に家を建てているので、土地を自分名義にしたいと思うのが自然ですが、母親の相続財産が土地しかないとき、法定相続に従うと土地はAとBの共有名義になります。土地を子どもAとBが共有する形で相続すると、やがて困ったことが起こります。子どもAにとっては、自分の家が建っている土地を自由にできません。子どもBにとっても、土地を売却して換金するにはAの承諾が必要ですし、そもそもAの家が建っている土地に買い手は現れないでしょう。Bにとって固定資産税がかかるだけの不要な財産となってしまいます。■ 2.トラブル回避のための予防策はhoriphoto / PIXTA(ピクスタ)トラブル回避のためには、母親が元気なうちに行動を起こす必要があります。親が亡くなったとき、兄弟姉妹間のトラブルがなく、円滑に遺産分割が進み、遺族が納得して相続する方法について、生前に親が子どもに提案するのがベストです。親の意識が足りない場合は子どものほうから働きかけましょう。2-1 事前に母親から子どもA、Bに意思を伝えるbee / PIXTA(ピクスタ)事前の親子間の合意形成をすれば、トラブルを未然に防げます。母親から、AとBに対して、事前に「家を建てているAに、将来自分の土地を相続させたい」という自分の考えを明確に伝え、互いに納得してもらいましょう。AとBには母親の財産を均等に相続する権利があるものの、相続時に当事者間で合意できれば、実際にはどのような分け方をしても構わないからです。しかし、生前の合意には法的拘束力がありません。実際に母親が亡くなった後に、Bが自分の権利を主張しはじめた場合は、トラブルになります。2-2子どもBに土地と同じ価値の財産を準備するAとBには、母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利があるため、AとBに相続させる財産をあらかじめ特定しておく方法があります。そのために、母親は生前に遺言を書いておくべきです。Aに相続させたい土地の価値と同様の財産をBが相続できるように遺言に書いておくのです。2-3母親が遺言で子どもBの相続する権利を縮小させるテラス / PIXTA(ピクスタ)Aに相続させたい土地の価値と同等の財産を、Bに準備できない場合でも、母親が遺言を書けば、Aが土地を相続できる権利を取得させることはできます。しかし、「遺留分」という法律のために権利をまったくなくすことはできません。この家族構成の場合、Bの遺留分は母親の財産の4分の1となります。そのため母親が、最低限全財産の4分の1を子どもBに相続させ、土地1,000万円を含めその他の財産をAに相続させる内容の遺言を書けば、土地を確実にAに渡すことができます。ただし、母親が亡くなったあとのAとBの関係が悪化する可能性があることは否めません。2-4どの方法でも話がまとまらない場合は、代償分割を母親が亡くなった後、AとBが協議をして、代償分割という方法を使えば、Aが土地を相続することが可能です。代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産などの現物の資産を相続し、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払うことで遺産を分け合う方法です。たとえば、1,000万円の土地をAが相続し、あとでAからBに500万円の代償金を支払います。こうすることで、結果的にはAとBが公平に相続したことになります。母親が元気なうちに話がまとまらない場合はこの方法を選択するのもよいでしょう。■ 3.まとめpixelcat / PIXTA(ピクスタ)土地を取得するための費用がかからないと、実家の敷地に住宅を建てる人は将来的に兄弟と揉める可能性があります。親が元気なうちは、土地を親から無償で借りる形になり、問題はありませんが、親が死亡した後にトラブルが起きる可能性があります。残された子どもたちにわだかまりが残らないように、家族全員で相続について話し合うようにすることをおすすめします。宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター吉井希宥美
2019年08月10日育児放棄や虐待によって罪のない子どもたちが巻き込まれる事件を目にすることが日本でも増えていますが、今回ご紹介するのは、中東の子どもたちの過酷な現状を描いた話題作です。その作品とは……。全世界が絶賛する『存在のない子供たち』!【映画、ときどき私】 vol. 246中東の貧民窟に生まれた12歳の少年ゼインは、学校にも通わずに朝から晩まで両親に働かされていた。両親が出生届を出さなかったために、法的には社会に存在すらしていないゼイン。唯一の支えは妹のサハルの存在だけだった。ところが、サハルが11歳で強制結婚させられてしまい、怒りと悲しみからゼインは家出をしてしまう。そこでは厳しい現実が待ち受けていたが、ゼインは「僕を産んだ罪」を理由に、自分の両親を訴えることを決意するのだった……。中東が抱える貧困と移民の問題に真っ向から挑み、高く評価されている本作ですが、今回は全身全霊を捧げたこちらの方に、あふれる思いについてお話いただきました。レバノンが生んだ美しき才能ナディーン・ラバキー監督!2007年には、『キャラメル』で監督・脚本・主演を務め、一躍注目を集めたラバキー監督。女優としても幅広く活動しており、本作ではゼインの弁護士役として出演もしています。そこで、自身が目撃した現実やいまの思いについて語っていただきました。―まずは、多くの難民を受け入れてきたレバノンの現在の状況から教えてください。監督レバノンは文化的にも、国民の気質的にも、誰に対しても温かく歓迎するところがあるので、これまでに150万人以上の難民を受け入れてきましたが、これはいろいろな意味で大きな挑戦でもありました。そのなかで私たちはベストを尽くしてはいますが、本来この責任は世界でわかち合わなければいけないもの。難民条約にサインしたにも関わらず、多くの国がその責任を果たしていません。それゆえに、ヨルダンやトルコなど近隣諸国が難民の60%以上を受け入れており、経済的にも社会的にも大きな影響を受けています。世界で考えたら、本来はもっとできることがあるはずですが、これが現状です。―では、本作のストーリーは監督が実際に見たものが描かれているのでしょうか?監督レバノンでは苦しんでいる人々を当然のように目にする状況にあります。食べ物が足りないとか、戸籍がないために世間から“見えざる者”になってしまっている人や違法滞在者など、本当につらい現実です。水も電気もなく、まるで下水道のなかにいるかのような耐え難い環境で暮らしている人たちも多く、収容所やキャンプでは寒さが原因で亡くなる方もいるほど。いまでは難民だけでなく、レバノン人にとっても非常に厳しい状況が続いています。そして、そのなかでもっとも心を痛めているのが、子どもたちについてです。犠牲を払っている子どもたちの“声”を届けたかった―その思いがこの作品を作るきっかけとなりましたか?監督彼らが寒さに震えていたり、お腹を空かせていたり、学校に通えなかったり、子どもなのに仕事をしなければいけなかったり、つらい思いをしている姿を見るたびに、「私たち大人がいかに彼らを失望させているのか」「いかにシステムが欠落しているのか」を感じています。子どもたちが一番もろい存在のはずなのに、一番大きな代価を彼らに払わせてしまっているのです。その結果、自分の誕生日も知らず、無言のままに重荷を背負わされ、毎日虐待されるつらい生活が普通の人生だと考えている子どもはたくさんいます。そして、彼らは存在を知られることなく生まれ、存在を知られないまま亡くなっていくのです。私はそういった現実を見ているうちに、「何かしなければいけない」という責任を感じましたし、この映画を作ることを義務だと思うようになりました。つまり、子どもたちは声なき者だからこそ、この作品は彼らの“声”として届けたかったのです。―今回は主人公のゼインを演じた少年が本物のシリア難民であることをはじめ、全員がプロの役者ではないそうですが、どのように選びましたか?監督本作は3年間かけてリサーチをしてから脚本を書いたので、私自身が見たものからインスピレーションを受けており、事実が基になっています。キャスティングについても、現実世界で同じような境遇にある人を探すという方法で、彼らを見つけることができました。たとえば、ゼインの外見は、栄養不足が原因で実年齢よりも体つきが小さい子どもたちをたくさん見てきたということを反映させています。キャラクターのイメージとしては、家族のために早く大人にならなければいけなかった環境にあったため、聡明さと路上で生きるタフさを持つ、大人のような子ども。それが頭のなかで描いていたゼイン像でしたが、想像していた通りの少年と出会ったときは奇跡のようでした。―彼らの実人生が役に影響を与えた部分もありましたか?監督通常の映画であれば、脚本や監督のイメージに役を合わせていくものですが、今回は彼らの個性をベースにして、私たちがそこに合わせていくような作り方を意識しました。そもそも彼らの生活や人物像というのは私が想像で作り上げてはいけないものだし、そんな権利は自分にはないと感じていたからです。それほど現実にはリアルな苦しみと困窮があるわけだから、なるべく真実を捉えたいと考えていました。彼ら自身の経験や感情を私たちが描こうとしている物語やキャラクターを寄せていったので、スタッフも演者たちも現実とフィクションがわからなくなって混乱することもあったくらいです。演者が自分の経験をアドリブで語ることもあった―そのなかで忘れられない出来事もありましたか?監督実際、彼らが本能的に自分の経験を話すようなアドリブも多くありました。たとえば、子どもから訴えられたゼインの母親が「あなたは私のような状況に置かれたことがないからそんなことが言えるんだ」と弁護士役の私に向かって言うシーン。そのなかで、母親役の女性が「お金がなくて子どもに砂糖と水しか与えられない経験をしたことがないでしょう?」と訴えるのですが、これは彼女自身の経験です。彼女は映画のなかに出てくるスラム街に住んでいる人ですが、あの瞬間はゼインの母親としてではなく、自らの思いを語っていたのです。ほかのみんなも同様のことをしてくれました。―だからこそ、俳優では演じられないようなリアルな表情には思わず言葉を失いました。監督自らの現実と演じている役が入れ替わってしまうこともありましたが、彼らの言葉はすごく重要だったので、そういったものが自然に起きるようなオープンな現場は意識していたところです。つまり、彼らが「どんなことを言っても大丈夫なんだ」と自由でいられる環境をしっかり用意したいと思いました。それによって、彼らも“翼”を持つことができたのではないかと感じています。―とはいえ、撮影中に問題が起きたことも多かったのではないでしょうか?監督確かに、演者が翌日来ないかもしれないといった我々ではコントロールできない部分でのリスクはつねに負い続けていた作品だったと思います。というのも、戸籍や証明書を持っていないような人も多かったので。実際、ゼインを助けるエチオピア移民のラヒルを演じた女性が、拘束されたシーンを撮ったあとに逮捕されてしまったことがありました。そのときは、ラヒルの子ども役を演じていた赤ちゃんの両親も逮捕されてしまい、その先がどうなるのかわからない状況に陥ってしまったこともあったほどです。この方法でしか作ることができなかった作品―そんななかで、どのようにして作品を完成まで導いていったのでしょうか?監督そもそも大きなリスクがある作品だとわかっていたので、私たちは完全にインディペンデントで製作することにしていました。私の夫であるハーレドもプロデューサーとして入っていますが、ここまで大変だと知っていたら彼もやらなかったかもしれないですね……。まずは製作する場所も何もないところからスタートしなければいけなかったのですが、予定していた刑務所が閉鎖してしまうことになったり、せっかく見つけた子役たちもいま撮らなければ大きくなってしまうこともあったりしたので、すぐに撮影を開始しなければいけませんでした。ただ、子どもも大人も演技についてはまったくの未経験。「アクション!」といって求めているものをすぐに演じてくれるわけではなかったので、彼らとも時間を過ごす必要がありました。製作期間中はカメラマンも編集者もみな同じアパートで作業してくれました。編集などを含め完成までに2年。本当に小さな現場でしたが、これ以外の方法でこの作品を作ることはできなかったと思います。―撮影自体も困難が伴ったと思いますが、身の危険を感じることはありませんでしたか?監督もちろん、とても危険な場所ではありましたが、危害を加えられるというよりも、公害のような環境の問題のほうが大きいと感じました。というのも、貧困地域では雨が降ると、下水から水が溢れてきて、水浸しになってしまうからです。そのため、不衛生で臭いもすごいし、空気さえも汚染されているのがわかるほどだったので、私も熱を出してしまったことありました。しかも、当時私は2人目の子どもを出産したばかり。撮影の合間には授乳のために家に帰らなければいけなかったので大変でしたが、どんなに危険な状況でも、私たちは大きな目的があったし、使命感もあったので、それが続ける強さに繋がっていたと思っています。―まさに意志を貫く強さを監督から感じます。それを支えているものは何ですか?監督彼らは同じ状況に置かれたままなのに、「私は家族と幸せになっていいんだろうか」という罪悪感をいまだ抱いている部分もあり、心理的な負荷はまだ乗り越えられてはいません。「自分にはやらなければいけないミッションがあるんだ」という感覚があるからだと思います。人が存在しているのには、それぞれに理由があると考えています。私は恵まれていることに何かを変えることができるかもしれない自分なりの貢献方法や理由を見つけることができたと思っています。「ひとりひとりが物事を変えることができる」という考え方は甘いと言われるかもしれませんが、私は心からみなが自分なりにできることがあると信じているのです。その変化というものは、たとえ大きくなくても、他人の人生や命に影響を与えられることができると思っています。そんなふうに自分の目標や夢、そして存在理由を感じられることが、私にとっては毎朝起きる力になっているのです。日本でも同じ思いを感じている人はいるはず―それでは最後に、これから観る方に向けてメッセージをお願いします。監督状況は違っていても、同じような思いをしているような人は世界中にいるはずなので、ただ遠い国の話という風には感じないと思っています。実際、こういった問題はレバノンだけではなく、アメリカでも子どもの7人に1人のはお腹を空かせているような状況ですし、コミュニティのなかで端に追いやられてつらい思いをしている人は文化や国に関係なく、日本にもいるはずです。だからこそ、きっとみなさんの心に触れる作品だと思っていますし、人類はこのまま子どもたちに対する不公平さに目をつぶっていくことはできないと、私は信じています。目をそらしてはいけない現実がそこにはあるそれぞれの人物が放つ存在感と物語の持つ強さに圧倒され、激しく心を揺さぶられる本作。現代社会が抱える問題を描きつつ、「自分にできることは何か」「生きるとは」「愛されるとは」といった普遍的な思いがあなたのなかにも生まれるはず。映画の持つ力を目の当たりにすることができるいま観るべき1本です。胸を引き裂く予告編はこちら!作品情報『存在のない子供たち』7月20日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開配給:キノフィルムズ©2018MoozFilms/©Fares Sokhon
2019年07月19日40年ぶりに「相続」に関する法律が改正され、一部を除き今月から施行されている。相続は「富裕層の問題」と思いがち。だが、裁判所に持ち込まれた相続事件の、実に3分の1が遺産1,000万円以下(’17年・最高裁判所)。“争続”を避けるため、早めの準備が必要だ。ただ小さな思い違いで、取り返しのつかない事態を招くことも。そこで経済ジャーナリストの荻原博子さんが、相続の落とし穴を解説してくれた――。【1】息子の妻も寄与分を請求できるこれまで、いくら介護を支えても息子の妻などに相続権はありませんでしたが、今後は貢献に応じた「特別寄与料」が請求できます。これが大きく報道されたため、期待する方も多いでしょうが、特別寄与料が法定相続人1人分より多いとは思えません。相続財産の1割程度と考えておきましょう。【2】自筆遺言書を法務局で保管自筆遺言書には紛失や隠匿、偽造などの不安がありましたが、法務局保管であれば安心でしょう。ただ死亡届を出したら自動的に、「遺言状があるよ」と連絡が入るわけではありません。家族が遺言書の存在を知らなければ、預けただけで開封されない可能性も。遺言書の存在や保管場所を、必ず家族に伝えておきましょう。【3】仏具は相続対象ではないが……相続税はすべての財産にかかるのではなく、墓地や墓石、仏壇仏具などは相続税がかかりません。以前は、これを“抜け道”として、純金製の仏具や骨とう価値の高い仏像などを子孫に残す方もいましたが、今ではNG。税務署に税逃れと判断されます。【4】借地なら「借地権」を相続借地に故人名義の家がある場合、土地は他人のものだから相続には関係ないと思う方が多いでしょう。しかし、借地には「借地権」があり、相続財産に含まれます。借地権は、借地年数にもよりますが土地の相続税評価額の6~7割が一般的。都心だと地価が数億円、借地権も億単位というケースもあります。早めに専門家にご相談を。【5】賃貸住まいに思わぬ費用が故人が賃貸住まいなら、荷物をすべて撤去し、借りる前の状態に原状回復して、賃貸契約を解除するまで賃貸料が必要です。家財の処分を遺品整理業者に依頼すると、広さによりますが2DKで10万~25万円かかります。【6】相続税は10カ月以内に現金で相続税がかかるのは、相続財産が、3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えた場合です。法定相続人が妻と子2人なら、4,800万円が判定ライン。まずは、相続財産を計算してみましょう。相続税を払う方は、故人の死後10カ月以内に現金払いが原則。自宅など換金しづらい財産が多い方は、生命保険の活用も一手です。生命保険の死亡保険金は、現金で支給されるうえ、500万円×法定相続人の数以内は相続税がかからないからです。「相続財産は持ち家だけ」という家族が、“争続”に発展することも少なくありません。親が元気なうちに、相続の話を始めたいものです。
2019年07月19日親子の関係は、必ずしも良好とは限りません。昨今は、親が子を虐待し続け、別々に暮らさねばならない、などということも多々あります。 父親と関係を絶っていたBさん30代男性のBさんも、子供時代親から虐待を受け、児童相談所に駆け込み、別々に生活をしてきました。父親不在で辛いこともあったそうですが、研鑽を続け、平穏な生活を手に入れたそうです。父親については、やはり許せないものがあるそうで、全く会っていませんでしたが、ある日「亡くなった」という連絡を受けます。「会いたい」と言っているのは知っていましたが、面会する気はなかったとのことです。 借金の請求が連絡から数日後、Bさんのもとに信じられない通知が。父親に800万円の借金があり、法的に息子であるBさんに支払い責任があるというのです。会ってもおらず、むしろ恨みすらある父親の借金など払いたくない。Bさんは「こんなことが許されるのか?」と憤っているそうです。返済しなければならないのでしょうか?あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。 返済しなければならないのか?高野倉弁護士:「支払を請求されることはあり得ます。請求に法的根拠もあります。ただし、支払を免れる方法があります。たとえ音信不通で親子としての実体がなかったとしても、法律上の親子関係は残ります。戸籍や住民票が別であっても、親子は親子です。親が亡くなれば子どもが相続人になります(民法887条1項)。子どもは、親から不動産や預金のようなプラスの財産だけでなく借金(債務)というマイナスの財産も相続します。もし、借金を支払いたくないのであれば相続放棄(民法938条)をします。相続放棄をすると、『相続放棄をした人は、そもそも相続人ではなかった』と扱われます(民法939条)。そもそも相続人ではないので、プラスの財産もマイナスの財産も相続しません。法的な支払義務はなくなります。なお、相続放棄には3つの注意点があります」 相続放棄の注意点①高野倉弁護士:「第一に、手続をする期間が限られていることです。相続放棄は、自分が相続人になる相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に手続きする必要があります(民法915条1項)。この期間のことを熟慮期間といいます。この男性の場合、被相続人(亡くなった方)が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所で相続放棄をする必要があります。音信不通で亡くなったことすら知らないまま3ヶ月が経ってしまった場合でも、「亡くなった」と知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続をすればよいことになります。ただし、自分が相続人になったことは知っていても、「どうせ財産などないだろう」と思って放置していた場合で、生前、音信不通であったなど「財産などない」と信じるのもやむを得ない事情があるときは、3ヶ月を経過した後でも相続放棄を認めた裁判例があります」 相続放棄の注意点②高野倉弁護士:「第二に、家庭裁判所で手続をする必要がある、ということです。請求をしてきた人に対して「相続放棄しました」と返答することが「相続放棄」だと誤解している人がいます。遺産分割協議をして取り分が0だったから債務は支払わなくてよい(相続放棄した)と誤解している人もいます。相続放棄は、家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続を行って、この申述が受理されて初めて、成立します。ここにいう「受理」は、単に書類を受付してもらったという意味ではありません。相続放棄を認めるべきか裁判所が審査をして、「相続放棄の申述を受理する」という審判(裁判の一種)を行うことをいいます。ただし、審判とはいっても、裁判所に出頭を求められることはありません」 相続放棄の注意点③高野倉弁護士:「第三に、「借金についてだけ相続放棄する」ということはできません。相続放棄をした場合、たとえプラスの財産がたくさんあったり、自宅として使っている不動産が含まれていたりしたとしても、一切相続できません。相続財産のいいとこ取りはできないのです。もし、マイナスの財産がそれなりになるけれども、プラスの財産もありそうだという場合には、限定承認という手続をする方法もあります。相続財産を清算してプラスが残ればそれを相続できますし、マイナスが上回ってしまったとしても、相続財産の範囲内で支払えばよいとされます。ただ、限定承認の手続はあまり使い勝手がよくないので、あまり利用されていないようです」 まとめ高野倉弁護士:「借金の請求を拒絶するには、相続放棄をすることが最も確実で簡単な方法です。借金ばかりでプラスの財産はなさそうという場合はもちろん、自分のことを虐待した人の財産なんてほしくないという場合にも、相続放棄がよいでしょう。相続放棄は、有給休暇の取得と同じで、理由は問われません」相続について理解頂けたでしょうか?期間や条件など、相続について様々な知識が必要になります。悩みがある場合は、詳しい弁護士に相談してみましょう。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています) 【借金も相続対象!】相続放棄で気をつけたいポイント3つはシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。【借金も相続対象!】相続放棄で気をつけたいポイント3つはシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2019年06月10日ご両親が亡くなるなど、相続はいつか必ず経験するものです。人生の中で何度も経験するものではありませんので、何から手を付けてよいか分からなくなってしまうものです。いざというときに慌てないように、まずは相続手続きの全体の流れを解説していきます。■ 1.相続の開始(相続人の死亡)makaron* / PIXTA(ピクスタ)1-1死亡届の提出(相続発生後7日以内)相続は人の死亡で開始します。人が亡くなった場合、まず死亡届を役所に提出しなければなりません。届け出をする役場は、亡くなった方の本籍地、死亡地、届け出をする方の所在地を管轄するいずれかの市区町村役場です。1-2「死体埋火葬許可証」がないとお葬式はできないmakaron* / PIXTA(ピクスタ)死亡届を出す際「死亡診断書」「死体検案書」のどちらかが必要になります。死亡診断書は病院で亡くなった場合または死亡理由が明らかな場合に医師が作成します。死亡検案書はそれ以外の場合に死亡の事実が確認された後に作成されます。これらが役所に受理されると「死体埋火葬許可証」が発行され、はじめてお葬式を行うことができます。■ 2. 遺言書などの確認(目安:初七日)CORA / PIXTA(ピクスタ)死亡の手続きが一通り終了したら、お葬式の手配をするのと同時に遺言書を遺品の中から探します。亡くなった人が住んでいた家のほか、貸金庫を借りていた場合などは、その中に保管されているケースが多いようです。2-1遺言書には3種類ある遺言書には、亡くなった人が自ら書いた自筆証書遺言のほか、公証役場にて作成する公正証書遺言や秘密証書遺言というものがあります。いずれも最新の日付のものが有効となります。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所にて「検認手続き」が必要になるため、勝手に開封しないようにしましょう。2-2保険、年金関係の確認をする遺言書を探すのに加えて社会保険や生命保険などの保険関係や年金関係の手続きも確認します。関係機関の窓口を尋ねるか電話で問い合わせをし、亡くなった事実を伝え、その後どのような手続きをすべきかを確認します。■ 3.相続財産、相続人の調査(目安:四十九日)相続財産と相続人の調査を合わせて行います。これらを行うことは、適切な遺産分割を行うため、または相続税申告を行うために必ず行います。遺産の額や内容が分からないと正確な相続税の申告ができず、過少申告してしまうと加算税を課されることになります。3-1相続財産の調査kai / PIXTA(ピクスタ)相続財産の調査対象となるのは、不動産、預貯金、株式、投資信託、公社債、生命保険金のほか現金、ゴルフ場の会員権、骨董品などの動産などが該当します。宝石などの貴金属も相続財産です。3-2相続人の特定相続人の特定は、被相続人の現在の戸籍(除籍)謄本を取得することから始まります。これですべての相続人が分からない場合、死亡時からさかのぼって出生したときの戸籍までを順番に取得します。本籍の移動が伴う場合、複数の役所で謄本を取得する必要があります。「婚姻」「離婚」「養子縁組」などの身分事項から前妻との間に子供がいないか、養子や養親がいないかなどを確認し、知らない相続人がいたら、その相続人が被相続人の死亡時に生存していることを確認します。すでに亡くなっていた場合は相続関係が変わってきますので注意が必要です。■ 4.相続放棄をする(目安:相続後3~4か月)akiyoko / PIXTA(ピクスタ)相続において、プラスの遺産だけ引き継ぐことはできません。相続とは亡くなった人の財産をまるごと引き継ぐという制度です。相続放棄をしないまま期限が過ぎると、相続することを承認したとみなされます(=単純承認)。4-1手続きを放置すると単純承認とみなされる相続した財産を処分(消費、売却など)したときも単純承認したとみなされます。一度単純承認したとみなされると、期限が過ぎる前であっても以後放棄することはできません。相続放棄には家庭裁判所での手続きが必要です。この手続きは3か月を目途に行いましょう。4-2放棄により相続人が変わる夫が亡くなった場合、妻と子の相続放棄によって、夫の父と母に相続権が移ります。このことがあまり知られていないため、トラブルになることが多くあります。妻と子が相続放棄する場合、手続きをする前から意思表示しておかないと、父母や兄弟に迷惑がかかりますのでよく話し合っておきましょう。相続放棄による相続権の移動は、法定相続人の相続範囲である兄弟姉妹までとなっています。■ 5.遺産分割協議(目安:相続後4~10か月)Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人(亡くなった人)の遺産の分け方を決める「話し合い」のことです。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。話し合いで決まった内容を書面におこしたものが「遺産分割協議書」です。5-1協議はなるべく早く行うトラブルを起こさず協議を終えるには、できるだけスピーディーに行うことがポイントです。様々な書類には、全相続人の実印が必要だからです。例えば、株などは換金のタイミングを逃せば大損する可能性があり、賃貸不動産を所有していた場合は、相続が発生した翌日から遺産分割協議が成立するまでの賃貸収入は、相続人全員に法定相続分での配分を求められるケースが多く、厄介です。5-2協議はやり直しがきかない遺産分割はやり直しができません。そのため、一歩間違うと、税金を余分に支払ったり、身内でトラブルになったりしかねません。さらに、法律改正が近年行われ、税金の計算はさらに複雑になっています。相続人だけでなく、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家を交えて行うのも1つの手です。■ 6.不動産や預貯金などの解約・名義変更(目安:相続後4~10か月)Graphs / PIXTA(ピクスタ)不動産がある場合は遺産分割協議書にのっとり、名義変更を行います。単独の名義もあれば、複数の人の共有名義になることもあります。貯金や証券の名義変更も一緒に行いましょう。6-1預貯金の名義変更被相続人が死亡すると、被相続人名義の口座は凍結されて入出金が一切できなくなってしまいます。この凍結は自動的に解除されることはありません。相続人等の預貯金を相続した人が解除の手続きを行わない限り、そのお金は使えませんので手続きを行いましょう。必要書類がたくさんあるので、予め問い合わせておくのがベターです。6-2不動産の名義は単独にするのがおすすめ不動産を売却する際には、共有者(相続人の相続人等)全員の遺産分割協議が必要です。法律上は、自分の持ち分だけ売却することも可能ですが、現実的にはかなり難しくなります。そのため、不動産の共有名義はあまりおすすめできません。■ 7.相続税の申告(目安:相続後4~10か月)相続財産が一定額を超える場合は、相続税の申告と納付を行います。納付が必要な場合は相続が発生してから10か月以内に行う必要があります。相続税の申告が必要なのは、納付すべき相続税の金額がある相続人です。相続税の特例を利用して相続税がかからない場合でも、特例を利用するために相続税の申告は必要なケースがあるので注意が必要です。7-1相続財産は「時価」で評価相続財産の「評価額」を算定する際の原則は時価主義と言われるものです。取得後の価値の上下は考慮されません。ゴルフ会員権を500万円で購入後、相続発生時に100万円になっていたら、評価額は100万円とみなされます。7-2土地の評価方法では時価ではない不動産の場合は「路線価方式」という計算方法で算定されます。間違いやすいのですが、実勢価格や、公示価格、固定資産税の評価額とは異なります。目安としては「実勢価格の8割程度」と言われることが多いようです。また「小規模宅地」や「貸家建付地」などの特例があり、実勢価格に比べて相続の評価額が安くなるので、相続税対策に不動産を購入する人が多くいます。■ 8.まとめこのように相続には細かなタイムスケジュールが設定されているため、期限を過ぎてしまうと取り返しがつかなくなってしまううえ、かなり多くの手続きが必要となります。揃えておく書類もたくさんあります。これらの流れをフローチャートにして、1つ1つチェックしていくとよいでしょう。流れをしっかりと押さえて、相続が発生したときに慌てないようにしましょう。
2019年06月07日相続が発生したときに、心配になるのが相続税ではないでしょうか?相続税は、場合によっては大きな負担になることがありますが、財産を相続しても相続税がかからないこともあります。今回は、相続税発生の有無を分ける基礎控除の額について説明します。基礎控除額の計算方法を理解しておき、生前の相続対策などに役立てていただければ幸いです。相続税の基礎控除は相続人の数で変わる!相続税発生の基準となるのが、基礎控除です。相続税の基礎控除の意味や基礎控除の金額を計算する方法を知っておきましょう。相続税がかかるケースとは相続税は、相続や遺贈により財産を取得した人に課税される税金です。相続税がかかるかどうかは、相続の規模によって変わります。亡くなった人(被相続人)が残した財産が一定規模以上の場合、その相続で財産を取得した人に相続税がかかるしくみです。相続税の基礎控除とはその相続が、相続税がかかる規模かどうかを判断する基準となるのが基礎控除です。基礎控除は、相続税だけでなく贈与税や所得税にもありますが、課税対象から無条件で差し引きできる金額になります。相続税は、相続税の課税対象となる財産の合計額(課税価格の合計額)から基礎控除額を差し引きした課税遺産総額をもとに計算します。課税価格の合計額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除額は、相続税の非課税枠ということになります。相続税の基礎控除の計算式相続税の基礎控除は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続税の基礎控除は、2015年1月に改正により引き下げられました。2014年12月以前に発生した相続については、次の計算式で計算します。(旧)基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数相続税の基礎控除の早見表相続税の基礎控除額は、相続人数によって変わります。たとえば、相続人が1人の場合、相続税の基礎控除額は3,600万円ですから、被相続人の残した財産の額が3,600万円を超える場合には相続税がかかります。一方、財産の額が3,600万円を超えない場合、すなわち3,600万円以下の場合には、相続税はかかりません。相続税の基礎控除額を超えているなら早急に遺産分割が必要被相続人の残した財産が相続税の基礎控除額を超えている場合には、相続開始を知った時から10か月以内に相続税の申告が必要です。相続税の申告をする前提として、遺産分割を終わらせなければなりません。基礎控除額を超えており相続税がかかるケースでは、速やかに遺産分割協議を終わらせるようにしましょう。10か月以内に遺産分割が終わらない場合でも、法定相続人が法定相続分で財産を取得したものとして、期限内の申告が必要になります。相続税の基礎控除の「法定相続人」とは?相続税の基礎控除は法定相続人の数によって変わりますが、ここでいう「法定相続人」には民法上の法定相続人すべてが含まれるわけではありません。相続税における法定相続人のカウントの仕方を知っておきましょう。法定相続人に含まれる養子の数には制限がある民法上、養子には実子と同様の相続権があります。子は第1順位の相続人ですから、養子を増やせば法定相続人を増やすことができます。しかし、相続税の基礎控除を計算するときには、養子を全員法定相続人としてカウントできるわけではありません。養子については、次のようなルールがあります。被相続人に実子がいる場合…養子は1人までしか法定相続人に含めることができません。被相続人に実子がいない場合…養子は2人までしか法定相続人に含めることができません。養子を実子とみなす場合相続税の基礎控除の計算においては、次の場合には養子であっても実子とみなします。特別養子縁組により養子となった場合配偶者の連れ子を養子にした場合代襲相続人でもある養子(孫を養子にしており、子が亡くなっている場合)相続放棄した相続人も法定相続人に含める民法上、相続放棄すれば最初から相続人でなかった扱いになり、法定相続人ではなくなります。しかし、相続税の基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人としてカウントします。相続放棄をした人がいても、基礎控除額が減ってしまうことはありません。生命保険金がある場合の相続税の基礎控除は?財産を相続するのではなく、生命保険金として受け取った場合には、一部が非課税になることをご存じでしょうか?相続の際に、生命保険金がある場合の相続税の計算方法や基礎控除との関係を知っておきましょう。生命保険金を受け取っても相続税がかかることがある被相続人が亡くなったことにより、生命保険金(死亡保険金)を受け取ることがあります。生命保険金は、民法上の相続または遺贈により取得した財産ではありません。しかし、生命保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。生命保険金には非課税枠がある相続税の計算において、生命保険金には基礎控除とは別の非課税枠が設けられています。生命保険金の非課税枠は、次の計算式で計算します。500万円×法定相続人の数たとえば、法定相続人が3人の場合、生命保険金は1,500万円まで非課税です。相続人が受け取った生命保険金が1,000万円の場合には、全額非課税になります。もし相続人が受け取った生命保険金が2,000万円なら、500万円のみが課税対象になります。生命保険に加入すれば、相続税の課税対象になる財産を減らすことができます。相続税対策として、財産を現金や預金で残すのではなく、生命保険に加入することは、有効な方法の1つです。生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」とは?相続税において、生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」には、民法上の法定相続人全員が含まれるわけではありません。養子の数について制限があり、相続放棄をした人も「法定相続人」の数に含めることは、基礎控除の場合と同様です。非課税になるのは相続人が受け取った生命保険金だけ生命保険金について、非課税の恩恵が受けられるのは、相続人が受け取ったもののみになります。相続人以外が受け取った生命保険金は、非課税にはなりません。相続放棄をした人が受け取った生命保険金も、非課税枠には含めないことになっています。たとえば、相続放棄をした人が1,000万円の生命保険金を受け取った場合、法定相続人の人数に関係なく、1,000万円全額が課税対象になります。生命保険金がある場合の計算例相続税がかかるかどうかは、課税対象になる財産から生命保険金の非課税分を差し引きした金額が、基礎控除額以下であるかどうかで判断します。たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。被相続人の残した財産額が6000万円で、そのうち相続人が受け取った生命保険金が2,000万円の場合、生命保険金については1,500万円が非課税になりますから、相続税の課税対象になる財産額(課税価格の合計額)は4,500万円です。つまり、このケースでは課税価格の合計額は基礎控除額以下であるため、相続税はかからないことになります。基礎控除の計算方法まとめ相続財産の額が基礎控除額を超えていれば、相続税がかかります。基礎控除額は法定相続人の数によって変わりますが、法定相続人の数はほぼ変えることができません。相続対策としては、相続財産の額を減らすことが有効です。生前贈与をしたり、生命保険に加入したりすることで、課税対象になる相続財産の額を減らせることがあります。相続税が心配なら、あらかじめ対策をしておきましょう。
2019年05月16日親が亡くなったときなどに、財産を相続するケースは多いでしょう。財産を相続できるだけならよいですが、相続税の負担は心配なはずです。相続税がどれくらいになるのかを計算するため、相続税の税率を知りたいという人も多いと思います。今回は、相続税の税率や計算方法について説明しますので、参考にしてください。相続税の税率とは?まず、大前提として知っておいていただきたいのは、相続税は、所得税のように所得の額に税率をかけて計算するものではないということです。相続税の税率を知っても、相続税は計算できません。相続税にも税率と呼ばれているものはありますが、相続税の税率は計算の過程で使うものです。相続税の計算方法は、やや複雑です。以下、相続税計算方法について説明しますので、大まかな流れを理解しておいてください。相続税の計算方法相続税は、次のような流れで計算します。手順1. 「課税価格の合計額」を出すまずは、「課税価格の合計額」を出します。「課税価格の合計額」とは、相続税のかかる財産の額を合計したものから、相続税のかからない非課税財産(仏壇・仏具など)及び被相続人の債務・葬式費用を差し引きしたものです。相続税のかかる財産とは、以下のものになります。ア本来の相続財産民法上の相続または遺贈により取得した財産です。イみなし相続財産生命保険金や死亡退職金になります。ただし、生命保険金も死亡退職金も、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。ウ相続開始前3年以内の生前贈与財産相続の際に財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内にも生前贈与を受けていた場合、その生前贈与財産も相続税の課税対象になります。エ相続時精算課税による生前贈与財産相続時精算課税を選択して生前贈与された財産は、相続税の課税対象になります。つまり、「課税価格の合計額」は次のようになります。課税価格の合計額=ア+イ+ウ+エ-(非課税財産+債務+葬式費用)手順2. 「課税遺産総額」を出す相続税には、手順1で算出した「課税価格の合計額」から必ず差し引きできる「基礎控除額」があります。相続税の「基礎控除額」は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数「課税遺産総額」とは、「課税価格の合計額」から基礎控除額を控除したものです。この「課税遺産総額」に対して相続税がかかることになります。「課税価格の合計額」が「基礎控除額」よりも少ない場合には、「課税遺産総額」はマイナスになりますから、相続税はかかりません。課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額手順3. 各相続人の「仮の相続税額」を出す手順2で算出した「課税遺産総額」を法定相続人が法定相続分で取得する形で仮に分けます。その上で、各相続人の取得額に対応する「仮の相続税額」を出します。各相続人の「仮の相続税額」は、財産の取得額に税率をかけて計算します(下記「相続税の税率表」参照)。手順4. 「相続税の総額」を出す手順3で計算した各相続人の仮の相続税額を合計し、「相続税の総額」を出します。手順5. 財産を取得した人の「実際の相続税額」を出す手順4で計算した「相続税の総額」を、実際に財産を取得した人(相続人及び受遺者)に取得額に応じて割り振る形で、「実際の相続税額」を出します。相続税の税率の意味相続税は、相続した財産額に税率をかけて出すものではありません。1つの相続が発生すると、財産をどう分けるかに関係なく、「相続税の総額」が決まります。「相続税の総額」を取得額に応じて按分することでそれぞれの人の実際の相続税額が決まります。相続税は「相続税の総額」を按分して出す相続税を出すときには、相続した財産額が基準になるのではなく、「相続税の総額」が基準になります。たとえば、親が亡くなったときに1,000万円を相続したとしても、それだけでは相続税額がいくらになるかはわかりません。相続税の金額を求めるには、その相続の「相続税の総額」を知る必要があります。自分が相続した財産額だけでなく、相続の全体像を知らなければ、相続税の額は出せないのです。税率は相続税の計算の過程で便宜上使うもの相続税の税率は、相続税算出の基礎になる「相続税の総額」を算出する過程で使います。「相続税の総額」は、各相続人の「仮の相続税額」を合計したものです。相続税の税率は、「仮の相続税額」を出すときに使います。なお、ここで税率を使って算出された「仮の相続税額」は、「実際の相続税額」とは異なります。相続税の税率表「仮の相続税額」を出すときに使う相続税の税率表(速算表)は、次のとおりです。なお、下記の表は平成27年1月1日以降の相続・遺贈に関して適用するものです。平成26年12月31日以前の相続・遺贈については別の表を使いますが、今回は省略します。「仮の相続税額」を出すときには、課税遺産総額を法定相続分に応じて分けたときの取得金額を上記の速算表にあてはめ、次の計算式で計算します。仮の相続税額=法定相続分に応じた取得金額×税率ー控除額相続税の税率表のどこにあてはめるかは、法定相続分に応じた取得金額によって決まります。ちなみに、現金や株など相続した財産の種類によって税率が変わることはありません。相続税の税率表は、計算の便宜のための速算表です。控除額というのも、あくまで計算のために使う金額なので、特に意味はありません。仮の相続税は子供でも税率は同じ「仮の相続税」を出すために、相続税の税率表にあてはめるときには、年齢は関係ありません。子供であっても、法定相続分に応じた取得金額のところにあてはめます。相続税の計算例上の手順2までで算出した課税遺産総額が9,000万円と仮定します。法定相続人が、被相続人の妻、長男、次男の計3名の場合、法定相続分は妻2分の1、長男及び次男は各4分の1ですから、法定相続分に応じた取得金額は次のようになります。妻:9,000万円×1/2=4,500万円長男:9,000万円×1/4=2,250万円次男:9,000万円×1/4=2,250万円この金額を上記の速算表にあてはめて、各相続人の「仮の相続税額」を出すと、次のようになります(手順3)。妻:4,500万円×20%-200万円=700万円長男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円次男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円仮の相続税額をもとに計算した「相続税の総額」は、次のとおりです(手順4)。700万円+287万5,000円+287万5,000円=1,275万円なお、実際にも法定相続分どおりに遺産分割した場合、1,275万円を法定相続分で分けることになりますから、各相続人の実際の相続税額は次のようになります(手順5)。妻:1,275万円×1/2=637万5,000円長男:1,275万円×1/4=318万7,500円次男:1,275万円×1/4=318万7,5000円※妻については配偶者の税額軽減が受けられるため、相続税の負担は0円となります。上の計算結果を見ればわかるとおり、「実際の相続税額」は、税率表を使って出した「仮の相続税額」とは異なります。相続税の税率表を使っても、実際の相続税の額を出せるわけではありませんので、注意しておきましょう。相続税の税率や計算方法まとめ相続税の金額は、相続した財産に税率をかけても出せません。相続税の金額を把握したい場合には、手順を踏んで計算する必要があります。相続税の計算は複雑ですから、よくわからない場合には税理士に相談しましょう。
2019年05月08日ある日突然、長年慣れ親しんだ「自宅」に住めなくなるとしたら……。相続が発生するとそんな事態が実際に起こる場合があります。今回は、相続でなぜ「住まいを失う」場合があるのか、そして住まいを失わないために知っておきたい「配偶者居住権」についてお話しします。■ 相続が発生して「住まいを失う」場合とは?相続が発生することによって住まいを失う理由はさまざまです。cba / PIXTA(ピクスタ)例えば、相続税を支払うために自宅を売却するケースや、収入を得ていた配偶者(夫や妻)が亡くなってしまったため生活費が不足して自宅を売却し換金するケースなどが主なものですが、なかには相続トラブルによって自宅の処分を余儀なくされるケースもあります。下記にその例を挙げてみましょう。ケース1:夫が亡くなり、相続人が妻と子一人の場合で、自宅評価額2,000万円、預貯金3,000万この場合、妻と子の相続分はそれぞれ1/2となり、妻2,500万円、子2,500万円となります。妻が夫名義の自宅にそのまま住み続けていくためには自宅の所有権を得る必要があります。妻が相続する遺産の内訳を、自宅2,000万円、預貯金500万円とすれば妻はそのまま自宅に住み続けられますが、受け取れる預貯金が500万円では将来の生活費不足が心配になります。freeangle / PIXTA(ピクスタ)もちろん相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で受け取る遺産の内訳を変えることもできますし、そもそも「遺産相続の割合」を変えることもできますが、親子間であってもさまざまな理由で話し合いがうまくいかない場合も少なくありません。遺産分割の協議がうまくいかない場合は結局、妻は将来の生活費のために自宅を売却しなければならない状況に陥ってしまいます。EKAKI / PIXTA(ピクスタ)ケース2:夫が亡くなり、相続人が妻と子二人の場合で、自宅評価額3,000万円、預貯金1,000万この場合、妻の相続分は1/2、子の相続分はそれぞれ1/4となり、妻2,000万円、子はそれぞれ1,000万円ずつとなります。妻は自宅への居住を希望しましたが、子二人が現金での相続を主張したため、妻は自宅の売却を余儀なくされ、妻と子二人はそれぞれ現金で遺産を相続することになりました。この場合も相続人同士の話し合いで法定相続によらない遺産の分割協議が可能ですが、相続人が増えることでその関係者(相続人の配偶者や家族等)も増えていきますので、トラブルになるケースも増えていきます。このような事態を回避・抑制するために生み出されたのが配偶者居住権なのです。■ 配偶者居住権とは?ray / PIXTA(ピクスタ)法務省HPの「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」によると、配偶者居住権とは「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」としています。分かりやすい例でいうと、夫が亡くなったときに妻が一緒に住んでいた「夫名義の家」については、最長で妻が亡くなるまでの間、妻にその家を使用する権利を法律で認める、ということです。新設される権利なのでイメージしづらいですが、建物の権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割協議の際や遺言書などによって、「配偶者が配偶者居住権を取得」し、「配偶者以外の相続人が負担付きの所有権」を取得することができる、といえば少し分かりやすいかもしれません。ABC / PIXTA配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは違い、売買したり、自由に貸し出したりすることは出来ませんが、その分評価額を低く抑えることができます。先述した「ケース1」であれば、自宅評価額が2,000万円なので、これを「配偶者居住権1,000万円」と「負担付きの所有権1,000万円」に分けて妻と子がそれぞれ相続すれば、妻は自宅に住み続けられるうえに、預貯金3,000万円のうち1,500万円を受け取ることができ、その後の生活の安定を得ることができるようになるのです。■ 配偶者居住権を利用する場合の注意点残された配偶者の住居確保や生活安定を図るために新設される配偶者居住権ですが、利用する際には注意が必要です。まず、この改正民法が施行されるのは2020年の4月1日なので、現在は配偶者居住権を取得したり行使したりできません。また、配偶者居住権は遺産分割における選択肢の一つとして、若しくは被相続人(夫など)の遺言等によって配偶者(妻など)に配偶者居住権を取得させることができるようにするものであって、自然に備わるものではないことにも注意が必要です。※1Graphs / PIXTA(ピクスタ)配偶者居住権は残された配偶者が住まいを失わないための選択肢としては有用ですが、もちろん万能ではありません。相続が発生した場合においてトラブル回避のためにもっとも重要なのは、これまでも、そしてこれからも相続人同士の丁寧な話し合いに他ならないのです。【参考】※法務省民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)注※1配偶者居住権とともに新設される配偶者短期居住権(少なくとも6か月間の居住を保障)については配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していることで当然に成立するとされています。
2019年04月21日これから先、親が死亡したときの相続手続きが心配という人も多いのではないでしょうか?相続手続きを避けて通ることはできません。いつかは訪れるそのときのために、相続手続きの流れをしっておくことは大切です。ここでは、相続手続きの基本的な流れや注意点について説明しますので、参考にしてください。相続発生後に必要になる手続きの流れと手順とは?まずは、相続手続きの全体像を押さえておきましょう。相続手続きの基本的な流れ相続が起こった後の手続きの流れは、大まかには次のとおりです。1. 相続人・相続財産調査まず、相続人と相続財産を確定します。法定相続人として、把握している以外の人が出てくることもありますから、戸籍を取り寄せて調べます。相続財産については、何がどれだけあるかを明らかにし、遺産目録を作成しておくと良いでしょう。2. 遺産分割協議法定相続人全員で相続財産を分けるための話し合い(遺産分割協議)を行います。遺産分割協議で分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。なお、亡くなった人(被相続人)が遺言書を残している場合には、遺言書に従って相続が行われますから、遺産分割協議は不要です。各財産を相続する人は、遺言書でわかりますから、すぐに3の各財産の相続手続きに入ることができます。3. 各財産の相続手続き遺産分割協議(または遺言書)にもとづき、不動産、預貯金、株式などの各財産を、被相続人名義から相続人名義に変更します。場合によっては必要になる相続手続き相続においては、次のような手続きが必要になることもあります。相続放棄の手続き相続放棄とは、相続しない旨の意思表示です。相続放棄をすれば、最初から相続人でなかった扱いになります。財産よりも借金が多く、相続したくないような場合には、相続放棄することも可能です。相続放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で行わなければなりません。期限を過ぎてしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。相続放棄について、詳しくは以下の記事をご参照ください。相続税の申告・納税手続き相続財産の額によっては、相続税がかかることがあります。この場合には、相続開始を知ったときから10か月以内に相続税の申告・納税手続きが必要です。相続財産の合計額が、次の計算式で算出される相続税の基礎控除額を超える場合には、相続した人に相続税が課税されます。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続手続きで重要なのは遺産分割の手続き相続手続きのカギとも言えるのが、遺産分割になります。遺産分割とは相続財産分与の手続き遺産分割とは、相続財産(遺産)を各相続人に分与する手続きです。遺言書が残されている場合を除き、遺産分割が終わるまでは、遺産は相続人全員の共有ですから、相続人の1人が勝手に処分することもできません。遺産分割が終わらなければ、相続手続きが進められないことになります。遺産分割で争いになったら調停や審判を申し立て遺産分割は、相続人全員による遺産分割協議で分けるのが原則です。遺産分割するときには、基本的に法定相続分に応じて分けます。しかし、不動産のように分けにくいものもある上に、相続人同士の利害関係が対立し、もめてしまうことはよくあります。遺産分割協議で遺産の分け方が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが可能です。この場合には、裁判所で決着をつけることになります。財産別の相続手続きを知っておこう遺産分割(または遺言)で誰が何を相続するかが決まったら、いよいよ相続手続きです。主な財産の相続手続きの概略を知っておきましょう。不動産の相続手続き土地や建物、マンションなどの不動産の相続手続き(相続登記)は、法務局で行います。相続登記をすれば、不動産の名義が被相続人から相続人へと変更されます。相続登記の手続きをするときには、登記申請書と添付書類を法務局の窓口に提出します。添付書類としては、戸籍謄本のほか、遺産分割協議書、遺言による場合には遺言書、住民票、印鑑証明書などが必要です。不動産の相続手続きは自分ですることもできますが、相続のパターンにより必要書類が変わるなど、手続きは複雑です。不動産の相続手続きを自力でできない場合には、司法書士に依頼しましょう。預金の相続手続き銀行預金や郵便貯金(ゆうちょ)などの相続手続きは、金融機関ごとに行います。相続手続きの必要書類は各銀行で違います。遺産分割協議書によるか、遺言書によるかでも必要書類は変わりますので、事前に問い合わせてから用意しましょう。遺産分割協議書による場合、通常必要になるのは、各金融機関で用意されている相続手続依頼書兼同意書、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書です。株式の相続手続き上場株式の場合には証券会社で、非上場株式の場合には発行会社に問い合わせて、相続による名義変更の手続きをします。相続手続きに必要なものは、預金の場合と同様です。自動車の相続手続き自動車の相続手続きとしては、陸運局(運輸支局または自動車検査登録事務所)での移転登録申請が必要です。廃車にする場合や売却する場合でも、先に相続人名義に変更しなければなりません。相続手続きの注意点相続手続きをするときに注意しておくのは、次のような点になります。相続手続きで必要な書類は多い相続手続きをするときには、戸籍謄本を収集しなければなりません。相続手続きに必要な戸籍謄本は膨大な数にのぼることもあり、自分で集めようと思うとかなりの時間がかかってしまうことがあります。相続手続きでかかる時間や手間を考えると、専門家に依頼した方が安心です。何もかも自分でやろうとすれば手続きが進まないことがありますから、早い段階で弁護士などに相談しましょう。相続手続きには期限があるものもある相続手続きには、相続放棄や相続税申告のように期限があるものがあります。期限を過ぎてしまうと不利益を受けることになりますから、十分注意しておきましょう。なお、遺産分割や相続登記には、期限はありません。しかし、遺産分割が終わらないと法定相続で相続税の申告を行わなければならなかったり、相続登記をせずに放置していると次の相続が発生して手続きが複雑化したりします。相続手続きをせずに放置していても、デメリットが増えるだけです。相続発生後は、各種の手続きを速やかに終わらせるようにしましょう。相続手続きは弁護士等に依頼した方がいい?相続手続きは自分ですることもできますが、弁護士等の専門家に依頼することもできます。専門家に依頼するメリットを知っておきましょう。相続手続きを自分ですると時間がかかる相続手続きを自分ですることもできますが、慣れない人がやると、時間や手間がかかってしまいます。相続手続きをスムーズに終わらせるためには、専門家に任せるのがおすすめです。相続手続きを専門家に依頼した方がいいケース相続財産として不動産がある場合には、司法書士に依頼して相続登記の手続きをしてもらうとよいでしょう。司法書士には、相続登記の前提として、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成も依頼できます。遺産分割協議書の作成は、行政書士にも依頼することができます。相続人間で争いになることが予想されるなら、弁護士に相続手続きを依頼した方がよいでしょう。弁護士に依頼すれば、遺産分割協議の代理人になって他の相続人と交渉してもらえます。遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立ててもらうことも可能です。なお、相続税の申告がある場合には、税理士に手続きを依頼しましょう。相続の手続きまとめ相続手続きをするには、相続人や相続財産をはっきりさせてから、遺産分割協議をする必要があります。遺産分割協議が終われば、各財産の名義変更を行って、相続手続き完了です。遺産分割協議では相続人同士が争いになってしまうことがあります。相続手続きの際には必要書類も多くなるので、最初から弁護士等に依頼して手間を省くことも考えましょう。
2019年04月16日親や親戚が亡くなったときに頭を悩ませがちなのが相続。相続では財産だけでなく、借金も引き継いでしまいます。相続したくないなら、相続放棄ができますので、手続きをとるようにしましょう。本記事では、相続放棄の手続き方法や注意点についてご説明します。相続放棄とは?相続する権利は放棄できることを知っておこう相続人になっていても、相続しなくてすむようにしたいなら、相続放棄が必要です。相続放棄にはどういう意味があるのかを知っておきましょう。相続人になっていても相続放棄ができる人が亡くなったときには、民法上の相続人(法定相続人)が財産を相続します。けれど、相続人であれば必ず相続しなければならないわけではなく、相続する権利自体を放棄できる、相続放棄という制度があります。相続放棄をすれば、その相続に関しては、初めから相続人でなかったものとみなされます。たとえば、親が亡くなれば子供は通常相続人となりますが、相続放棄をすれば親の相続とは無関係になります。負の遺産があれば相続放棄することにメリットがある相続放棄をした方がいいのは、被相続人が借金を残している場合になります。相続では、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金(負債)というマイナスの財産も引き継ぐからです。プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多ければ、一般には相続放棄した方がメリットになります。相続放棄はどこでする?やり方は?手続き方法と流れを押さえておこう相続放棄をするには、法律上定められた手続きをとる必要があります。何もせず放置していれば相続放棄はできなくなってしまいますから注意しておきましょう。相続放棄は家庭裁判所に対して行う相続放棄を行う場所は、家庭裁判所です。相続放棄をするには、相続開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければなりません。相続放棄の申述と言っても、口頭で行うわけではなく、相続放棄申述書とその他の必要書類を提出して、書面で手続きすることになります。相続放棄の必要書類相続放棄する際には、次のような書類が必要になります。相続放棄申述書裁判所で用意されている書式に必要事項を記入します。書き方については、記入例を参考にしましょう。申述書には相続放棄の理由も記載しますが、関わりたくないという理由でもかまいません。被相続人の資産や負債の概略も記載します。被相続人の住民票除票または戸籍附票被相続人の最後の住所地がわかるものとして、住民票の除票または戸籍附票を用意します。戸籍謄本自らが相続人であることがわかる戸籍謄本一式を用意します。相続放棄の申立費用相続放棄申述の手数料として800円がかかるので、800円分の収入印紙を購入して申述書に貼っておきます。また、裁判所からの連絡用に使う郵便切手を事前に提出しなければならないので、切手の組み合わせや金額を裁判所に確認してから提出します。相続放棄の申立方法相続放棄の申述をする場合には、次のような方法があります。書類を裁判所の窓口に提出する方法相続放棄の必要書類一式を揃えて、家庭裁判所の家事事件受付係に提出します。提出時に申述書の控も一緒に差し出すと、控に受付印を押して戻してもらえます。その後は、裁判所からの連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを郵送でする方法必要書類一式を家庭裁判所に郵送します。控と返信用封筒を同封しておけば、受付印を押したものを返送してもらえます。郵送の場合にも、書類提出後は、裁判所の連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを代理でしてもらう方法相続放棄の手続きを本人以外がやる場合、代理人になれるのは弁護士になります。相続放棄申述書の作成は司法書士にも依頼できますが、司法書士に代理人になってもらうことはできません。相続放棄申述書提出後の流れ相続放棄申述書を提出した後の流れは、次のようになります。家庭裁判所から照会がある相続放棄の意思に間違いがないかどうかの確認のため、申述人宛に家裁から照会書が郵送されてきます。照会書と一緒に同封されているに回答書に必要事項を記入し、家裁に返送します。相続放棄申述受理通知書が届く家裁からの照会の後、相続放棄申述が正式に受理され、申述人宛に相続放棄申述受理通知書が郵送で届きます。債権者に通知書を見せるかコピーを渡すかすれば、被相続人の借金の支払いを逃れられるのが通常です。相続放棄申述受理証明書の請求債権者から相続放棄申述受理証明書を要求された場合、相続放棄申述受理通知書を紛失した場合などには、家庭裁判所に証明書の交付申請をします。相続放棄する場合の注意点相続放棄の手続きをするときには、次のような点に注意しておきましょう。相続放棄すれば財産も相続できない相続放棄をすれば借金を引き継がずにすみますが、財産を相続することもできません。相続放棄後に新たな財産がでてきても、一度行った相続放棄を撤回することはできないので、慎重に行う必要があります。相続放棄には期限がある相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内の期間(熟慮期間)に行わなければなりません。熟慮期間を過ぎてしまうと、相続放棄はできなくなってしまいます。なお、当初の熟慮期間内であれば、期間伸長の申立ができます。相続財産がどれくらいあるか不明で、3か月以内に調査が終わりそうにない場合には、期間伸長の手続きをしておいた方がよいでしょう。相続放棄できないケースもある熟慮期間内であっても、相続放棄ができなくなるケースがあります。たとえば、相続人が相続財産の一部や全部を処分した場合には、法定単純承認といって相続を承認したことになってしまい、相続放棄はできません。相続放棄をする可能性があるなら、相続財産には手を付けないようにしましょう。相続放棄をすれば他の相続人に影響がある相続放棄をすると、他の相続人に影響を及ぼすことにも注意しておきましょう。相続放棄により、他の相続人の負担が増えたり、新たに相続人になる人が出てきて相続放棄が必要な人の範囲が広がったりすることがあります。たとえば、被相続人に借金があり、相続人が妻と子1人であるケースで、妻が相続放棄をすれば子だけで借金を負担しなければなりません。また、同じケースで妻も子も相続放棄をした場合、第2順位の相続人(直系尊属)が相続人となるため、第2順位の相続人も相続放棄が必要になってしまいます。第2順位の相続人がおらず、第3順位の相続人(兄弟姉妹)がいる場合も同様です。離婚していても子供は相続放棄が必要親が亡くなると子供は相続人になります。父母が離婚していても、親子関係は変わりません。離婚により離れた父親が借金を残して亡くなった場合でも、息子や娘は相続放棄しない限り借金の支払いを請求されることになります。未成年者の相続放棄には特別代理人が必要なことがある未成年の子が相続放棄をする場合、親権者との間に利益相反が起これば、親権者が法定代理人として相続放棄の手続きをすることができません。利益相反が起こる場合とは、次のようなケースです。親も子も相続人で、子だけが相続放棄をするケース複数の子がいる場合で、一部の子だけが相続放棄をするケース上記のようなケースでは、子のために特別代理人が必要です。相続放棄をする前に、家庭裁判所に申し立てをし、特別代理人を選任してもらわなければなりません。なお、親も子も相続放棄をする場合には、特別代理人は不要で、親が子の相続放棄の手続きができます。まとめ相続放棄は、通常は相続開始から3か月以内に行わなければなりません。うっかりしていると、相続放棄ができなくなってしまうことがありますので十分注意しておきましょう。なお、3か月を経過していても、当初被相続人に借金があることが全くわからなかった場合には、相続放棄できる可能性があります。3か月過ぎているとあきらめる前に、弁護士等に相談するのがおすすめです。
2019年04月12日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」また、要介護だった義理の親が亡くなったとき、息子の妻(あるいは娘の夫)がどれだけ介護で貢献したとしても、嫁(婿)には相続の権利はなく、財産を得ることはできなかった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「義父母が『どうにか嫁にも財産を残したい』と思ったら、これまでは養子縁組で息子の嫁を『娘』にするか、あるいは遺言書で財産を残すしか方法はなかったので、ほかの親族から『なぜ私よりもあの人に多く遺産を渡すのか』と、“争族”の火種になりやすく、積極的に残そうという人はあまりいませんでした」そんな“介護をした人”の貢献が金銭面で報われるようになる制度も施行される。だが、「相続」についてはわからないことも多い。そこでトラブルになりがちなケースと、最近増えている相談事例を竹内さんと曽根さんが解説してくれた。【Q1】ビットコインなど仮想通貨は相続財産になるの?「仮想通貨は金融商品なので、相続財産に含まれます。資産はほかに、不動産(土地、建物)、預貯金、株式や投資信託、車、貴金属、ゴルフ会員権などが含まれます。生命保険の死亡保険金(保険料負担者である夫が死んで妻が受取人の場合)は相続財産として課税の対象になります」(曽根さん)【Q2】エンディングノートは遺言書の代わりになるの?「故人の意思が反映されていても、法律の形式でないと遺言書とはみなされません。ただし、財産の洗い出しや銀行口座の暗証番号、ID・パスワードを書き残してもらうために活用できるので、記録しておくことは有効です」(竹内さん)【Q3】老親に「相続」の話を切り出すときの注意点は?「相続が繊細な問題であるだけに親に切り出せないという人が多いのが現実です。そんなときは親が主役となる老後のテーマとして『介護になったらどうしたいのか』『お葬式やお墓はどうしたいのか』といった話をしながら、財産について確認すると自然な流れで話が引き出せるかもしれません。ほかのきょうだいがいれば一緒に話し合いをすると、“争族”を防げるでしょう」(曽根さん)【Q4】認知症になった親の財産はどうやって分けるの?「明確に認知症と診断されると、遺言書を作成することはできません。ただし、意思疎通できる能力があり、意思確認ができれば作れる場合もあります。有効な遺言書がなければ、相続人同士が遺産分割協議で決めることになります」(曽根さん)【Q5】遺産分割協議書に使う印鑑は「認め印」でいいの?「『実印』が必要です。実印とは、住民登録をしている自治体に登録した印鑑のことをいい、実印として用いるためには市役所など自治体の窓口で『印鑑登録』を行ったうえで『印鑑証明書』を発行してもらいます。遺産分割協議を経て故人の銀行口座を解約するためには実印と印鑑証明書が必要なケースが多いので、用意しておくと確実です」(竹内さん)
2019年03月17日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」’16年厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、主たる介護者は「配偶者」が25.2%と最も多く、次いで「子」(21.8%)、「子の配偶者」(9.7%)となっている。要介護だった義理の親が亡くなったとき、息子の妻(あるいは娘の夫)がどれだけ介護で貢献したとしても、嫁(婿)には相続の権利はなく、財産を得ることはできなかった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「義父母が『どうにか嫁にも財産を残したい』と思ったら、これまでは養子縁組で息子の嫁を『娘』にするか、あるいは遺言書で財産を残すしか方法はなかったので、ほかの親族から『なぜ私よりもあの人に多く遺産を渡すのか』と、“争族”の火種になりやすく、積極的に残そうという人はあまりいませんでした」そんな“介護をした人”の貢献が金銭面で報われるようになるのが、今年7月1日から施行される「特別の寄与の制度」。たとえば、長男の妻が「私は義母の介護を頑張ってきたので、お金をください」と、権利を主張すれば、夫やそのきょうだいたち(相続人)は真剣に向き合う義務が生じる。たとえば、母が亡くなったとき、遺産の預貯金3,000万円は長男と長女で2分の1ずつ相続するところ、母の介護をしたのは、主に長男の妻だったとすると、妻は、長男と長女に「寄与料」を請求することができる。「寄与料の金額の目安などまだ詳細は決まっていませんが、妻が寄与料を請求して、相続人である長男と長女が拒否をしたら、家庭裁判所に持ち込み話し合いで決めることができます」(曽根さん・以下同)介護にかかわった労力を金額に換算するのは難しく、まだ算定方法は決まっていないが、「介護にかけた時間×都道府県が定めた最低賃金」を計算して請求することが有力視されている。曽根さんの試算では「少なくとも数百万円程度は請求できるのではないか」とみているそうだ。「妻側が請求する金額によっては、ひと悶着起こることもありえます。介護を行う際には、相続人同士でルールを決めて、情報を共有することが大事です。また、現在介護をしている人は、かかった時間や、通院などで病院に付き添った際に立て替えたお金などを介護ノートにこまめに記録として残しておくようにしましょう」介護の様子をスマホの写真に撮って家族で情報共有するなど、便利なツールを使いこなそう。
2019年03月16日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」残された家族が相続をめぐって争わないために、「遺言書」を書いておきたいが、「家族が仲よしだから」「面倒だから家族に任せる」などと書かない人が多い。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「夫が亡くなって妻と子どもたちが相続するときには、妻を中心に意見がまとまりやすいのですが、子ども同士で親の財産を相続するときは、ささいなことでもトラブルになりがちです。それを防ぐためにも、遺言書を残すなどの対策が必要になります」一般的によく利用される遺言には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つがあり、公証役場に足を運んで、口述しながら公証人が作成する「公正証書遺言」は、遺産の規模によって金額は異なるが、専門家のアドバイスを受けてから作成して、そのまま預かってもらうと20万円程度の費用がかかってしまう。これに対して「自筆証書遺言」は、作成代はゼロだが、財産目録のすべてを直筆で書くうえ、自分で保管しなければならないので、偽造や破棄、隠蔽などの恐れがあり、「遺言を書いても執行されないで、遺品回収業者がタンスの引出しから見つけた」などという話もあるほど。今年1月13日からこの「自筆証書遺言」のハードルが下げられた。「遺言書の添付する財産目録だけは手書きで作成しなくてもよくなり、パソコンの作成や、通帳のコピーも添付できるようになりました。1枚ずつ署名と押印は必要ですが、高齢者たちにとって作成の手間が大幅に省けるようになったのは大きいです」(曽根さん・以下同)父親の遺産を子どもたちで相続する際、「法定相続分どおりに分けるのは不公平だ」と、考える場合がある。たとえば、《長年同居して父の身の回りの世話をし続けてきた長女夫婦に自宅3,000万円と預貯金1,000万円を残して、遠方に住む長男は生命保険金の受取人に指名しておきたい》、というときには、遺言書が必要になってくる。「特にきょうだい同士で離れて暮らす家族は『親をそそのかして自分の都合のいいように遺言を書かせた』といって、離れて暮らすきょうだいからクレームがつくことも。親の看取り方を話し合う過程で、亡くなったあとの話をするなど、ふだんからきょうだい間で話し合っておくといいでしょう」また「自筆証書遺言」を、法務局で預かる制度が来年7月10日からスタートする。財産を残す人の意思を確実に反映するためにも併せて活用したい。
2019年03月16日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」大改正の目玉の1つが、来年4月にスタートする『配偶者居住権の創設』。夫が亡くなり、妻と息子2人が財産を相続する場合、現行の制度では、妻が自宅に住み続けたいと願ってしまうと、生活が成り立たなくなったり、反対に追い出されたりしてしまうことさえあった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんが解説する。「たとえば、3,000万円の自宅と預貯金3,000万円を残して夫が亡くなったとします。相続する割合(法定相続分)は妻が2分の1、2人の子どもで2分の1になるので、妻が『これまでどおりに自宅に住み続けたい』と望み、3,000万円の自宅を相続してしまうと、預貯金は子どもたちが相続することになります。すると妻は預貯金が受け取れず、手元の現金が不足することで生活が成り立たなくなるケースがあったので、夫に先立たれた妻が安心して生活できるように『配偶者居住権』が来年4月1日から施行されます」(曽根さん・以下同)施行後は自宅を「居住権」と「負担付き所有権」に分ける。居住権と所有権をそれぞれ50%と仮定すると、妻の居住権が1,500万円となるので、預貯金は妻と子どもたちでそれぞれ1,500万円ずつ配分され、妻も現金を得ることができる。「所有権の配分は相続人の間で決めます。居住権については、現時点では妻の年齢が若いほど高くなる評価方法が検討されています。高齢の妻ほど、居住権の金額が少なくなるということは、それだけ受け取れる現金が増えるので、居住権の活用は、終の住処と考える70歳以上の妻にとってメリットが大きくなるといえます」ただし注意点も。「配偶者居住権」を選択すると、妻が死ぬまで自宅で住み続けられるが、その一方で、売却しづらくなるのだ。「たとえば妻が後日『自宅を売却したお金で介護施設に入りたい』と言い出したら、所有権を持つ子どもの同意がないと簡単には売却できません。また毎年、自宅にかかる固定資産税は所有者に請求がいきますので、子どもたちが『所有権』を取得したら子どもたちが支払うことになります」「配偶者居住権」を選択したことで新たに生じる負担を確認するとともに、「いつまで自宅に住み続けるか」といったことも含め、家族で話し合っておくことが大切だ。
2019年03月15日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」「相続法」40年ぶり大改正のポイントは次のとおり。「施行年月日」「名称」「内容」をチェックしよう。■2019年1月13日【自筆証書遺言の方式緩和】遺言書に添付する財産目録は手書きに限られていたが、パソコンでの作成やコピーの添付が認められることになった。■2019年7月1日【婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置】婚姻期間が20年以上の夫婦は、夫(妻)から生前贈与をされても、その金額は相続税にカウントされない。【預貯金の払戻し制度の創設】亡くなった後、故人の預金口座からお金を引き出すことはできなかったが、一定額のお金を引き出せるようになる。【特別の寄与の制度の創設】妻(夫)が義父母の介護をしていたら、義父母が亡くなった後、妻(夫)は法定相続人に対して、金銭を請求できる。【遺留分制度の見直し】相続財産が主に不動産しかない場合、相続人がほかの相続人から遺留分を請求されると、不動産を分けるしかなかったが、改正後は現金で解決できるようになる。■2020年4月1日【配偶者居住権の創設】妻が自宅を相続すると、現金などを受け取れなくなる恐れがあったが、ほかの財産も受け取れるようになる。■2020年7月10日【法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設】自分で書いた自筆証書遺言を法務局で預かってもらえるようになる。「昔は長男が家督を継ぐのが当たり前だと思っていたので、ほかのきょうだいから異論は出にくい状況でしたが、今は核家族化が進み、相続に関する情報もあふれているので、次男、三男、女のきょうだいでも権利を主張するようになった。今回の改正を最大限活用するためにも、最新情報をチェックして、事前に備えておきましょう」(竹内さん)
2019年03月15日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」大改正の目玉の1つが、来年4月にスタートする『配偶者居住権の創設』。「たとえば親子が不仲で、夫の死後に子どもたちが法定相続分どおりの金額を要求したら、妻は子どもが相続する分の現金を別途調達しなければならず、自宅を売却したお金で渡す、ということもありました。その不安を解消するため、住む権利である『居住権』が新設されます」(竹内さん・以下同)また相続財産が自宅など不動産がメインの場合、分割の仕方をめぐってトラブルになりやすい。自分以外の相続人から最低限の遺産を手にできる「遺留分」を請求されると、土地の所有権を分ける場合もあった。今年7月1日に「遺留分制度の見直し」が施行されると、土地を相続した人が、遺留分を請求した相続人に現金で渡すという選択肢も明文化される。ほかに、相続税の面で妻の負担が軽減される改正も。「結婚20年以上の夫婦については、夫から妻へ生前贈与された自宅を相続税の課税対象に含まない『婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置』が設けられます。ただし、婚姻期間には事実婚は含まれないので注意が必要です」’16年厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、主たる介護者は「配偶者」が25.2%と最も多く、次いで「子」(21.8%)、「子の配偶者」(9.7%)となっている。義理の両親の介護を無償でしてきた夫の妻は一定数いるが、どれだけ尽くしても法定相続人になれないため、相続で財産を受け取ることはできなかった。「特別の寄与の制度の創設」で、妻が相続人に金銭を請求できるようになる。さらに、葬式等を取り仕切る際に知っておきたいのが、「預貯金の払戻し制度の創設」。家族の死後、故人の銀行口座は凍結され、現金の出し入れがいっさいできなくなる。葬儀費用の支払いなどでまとまった現金をすぐに用意するのが困難なケースも少なくない。「現行の相続法では、相続人の間で遺産分けについて話し合いをする『遺産分割協議』が終了し、相続人全員の署名と実印が押された『遺産分割協議書』などを持って各金融機関で手続きをしてからでないと、故人の口座から現金を引き出すことはできません。亡くなった時点で銀行口座に残っているお金は相続財産になるので、仮に引き出すことができたとしても、後日もめることもあります。『預貯金の払戻し制度』が始まることで、遺産分割協議の前でもほかの相続人の同意なく単独で、故人の預金口座から一定額を引き出すことができるようになります」家庭裁判所の判断がなくても「一定額」であれば引き出せる。その金額は、預貯金額の3分の1に法定相続分の割合を乗じた数(ただし、同一の金融機関に対して150万円が限度)となる。やはり残された家族が相続をめぐって争わないために、「遺言書」を書いておきたいが、「家族が仲よしだから」「面倒だから家族に任せる」などと書かない人が多い。今年1月に始まった「自筆証書遺言の方式緩和」は、遺言書作成のハードルが引き下げられた。「遺言書の本文と同様に、添付する『財産目録』は手書きに限られていましたが、パソコンでの作成や、貯金通帳のコピーなどの添付が認められるようになりました」また、自分で書いた遺言も、自分で保管しなければならず、後に「遺品を整理していたときに仏壇の引出しから見つかった」などと、故人の思いが反映されないことがあった。「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」がスタートすれば、市区町村にある法務局が自筆証書遺言を預かってくれるようになる。紛失や改ざん、破棄などのトラブルも防止できる。「昔は長男が家督を継ぐのが当たり前だと思っていたので、ほかのきょうだいから異論は出にくい状況でしたが、今は核家族化が進み、相続に関する情報もあふれているので、次男、三男、女のきょうだいでも権利を主張するようになった。今回の改正を最大限活用するためにも、最新情報をチェックして、事前に備えておきましょう」
2019年03月15日