【イベント】学習障害の当事者の講演から人権を考える「ボク、学習障害と生きてます~多様性を大切にする社会へ~」(長崎県)Upload By 発達ナビニュース学習障害の一つであるディスレクシア(読み書き障害)の当事者である南雲明彦さん(明蓬館高等学校共育コーディネーター)が講師を務める講演会が開催されます!ディスレクシアは、聞く、話す、読む、書くといった能力のうち、特定のものができない「学習障害」の中でも、読み書きに困難をともなうもの。南雲さんは21歳のときにディスレクシアと診断を受けました。かつては不登校、引きこもり、うつ病なども経験。同じような悩みがある人が一人で悩まなくてもいいようにと、自らの経験をもとにさまざまなメッセージを発信しています。夏休みも終盤の時期の開催。2学期の学校生活に向けて学習障害から見た多様性について理解を深めませんか?【演題】「ボク、学習障害と生きてます~多様性を大切にする社会へ~」南雲明彦氏【日時】2018年8月20日(月) 14:00~15:50【場所】長崎市民会館文化ホール(長崎県長崎市魚の町5番1号)【参加費】無料【申し込み】不要 ※一時保育(1歳〜就学前)をご希望の方は、8月10日(金)までに申し込み。定員になりしだい締め切り【問い合わせ】長崎市人権男女共同参画室TEL: 095-826-0026講座・講演会 | 長崎市【イベント】「えらぶ」先に思いをはせる美術展「えらぶん:のこすん:つなげるん」(福島県)Upload By 発達ナビニュース「えらぶ」に着目したユニークな展示会が、福島県猪苗代町のはじまりの美術館で開催中です!作家らの数々の選択を経てきた作品たちが、私たちの日常にも繰り返される大小さまざまな選択について、何を残し、未来に繋げているのかを投げかけます。はじまりの美術館は、「人のつながりから生まれる豊かさ」に視点を置き、「さまざまな人が集える場所」として多様なテーマの企画展やイベント、地域でのプロジェクトを実施している社会福祉法人が運営している美術館です。今回は、7組の作家が出展しています。たくさんのぬいぐるみを組み合わせて、動物など新たなものをつくり上げる藤浩志さんの作品は、可愛いだけでなく、ぬいぐるみと持ち主の歴史を感じさせるような独特な雰囲気を持ちます。パンダや仔馬など背中に乗ることができる作品もあります!また、展示に合わせて、さまざまな企画も用意されています。佐藤悠さんが1枚の紙に絵を描きながら、その場にいる全員で即興で物語をつくる「いちまいばなし」や、東京都世田谷区の就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の利用者の体験をもとにした「超・幻聴妄想かるた」のイベントや、来場者がかるたをつくるワークショップも行われます。ほかにも、出展者のトークイベントや地元住民による民話語りなどさまざま催しがあるので、ホームページを確認して足を運んでみてください。さらに、子どもたちの夏休みに合わせて8月の4日間を特別に夜8時まで開館。明治時代に建てられ、酒蔵、ダンスホール、縫製工場などを経て美術館として生まれ変わった蔵の建築が見せる夜の表情も魅力です。昼間とは違った雰囲気で作品を楽しめそうですね。【日時】2018年10月21日(日)まで(火曜日休館) 10:00〜18:00※8月10日(金)、17日(金)、18日(土)、24日(金)のみ20:00まで開館【会場】はじまりの美術館(福島県耶麻郡猪苗代町新町4873)【入場】一般500円、65歳以上250円、高校生以下・障害者手帳をお持ちの方および付き添い(1人まで)は無料【出展作家】乾久子、大路裕也、佐藤悠、根本将、ハーモニー、久松知子、藤浩志【問い合わせ】社会福祉法人安積愛育園 はじまりの美術館TEL/FAX 0242-62-3454えらぶん:のこすん:つなげるん | はじまりの美術館【ニュース】障害のある人を応援するリーダー育成研修が募集を開始!「夢へとつづく“3つの海外研修”世界へ。未来へ。」出典 : ダスキン愛の輪基金が実施する地域社会のリーダーとして貢献したいと願う障害のある若者を対象とした海外研修の参加者を2018年11月15日(木)まで募集しています!「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」は、1981年に国連で決議された「国際障害者年」にちなんで、障害者の社会への参加と平等の実現を目指して発足したそうです。今回は、年代や目的別に3つの研修で参加者を募っています。海外の障害者の生活を学んだり、当事者団体・支援団体などと交流したりすることがメインで、応募者が希望し、計画した内容で研修先を選べるコースもあります。9月に東京、大阪、福岡で説明会があるので、将来、社会で活躍したいという夢のある人はぜひ応募してみてくださいね。ジュニアリーダー育成グループ研修(視覚障がい者ユースグループプログラム)【対象】視覚に障害があり、2019年4月1日時点で15歳以上17歳までの人【行き先】イギリス(予定)【期間】2019年の夏休み8日間程度【募集人数】3〜5人(1グループとして派遣)【選考方法】書類選考、グループ面接審査、健康診断など【費用】一定額を財団が支給【内容】視覚障害者の生活・文化・教育・就労などを総合的に支える当事者団体、国際的な舞台で活躍する視覚障害者や研修生との同世代交流。希望のテーマで最長1年間 個人研修※障害の種別は問いません【対象】希望のテーマで研修計画を立案・作成し、それを実行できる方・18歳以上40歳までの人・研修地で必要な語学力が証明できる人・愛の輪運動に賛同し、積極的に取り組める人【行き先】応募者が研修を希望し、実行委員会が認める諸国【期間】3ヶ月以上1年以内【募集人数】4人程度【選考方法】書類選考、面接審査、語学審査、健康診断など【費用】上限400万円を財団が支給【内容】自らの「夢」を実現するため、応募者が希望し、計画する研修先を選びます。障害者団体、ボランティア団体、学校などの教育機関、リハビリテーション関連機関、研究機関、その他、行政機関、企業などグループで短期間学ぶ ミドルグループ研修(障害者権利条約の国内実施に取り組みたい方)※障害の種別は問いません【対象】・25歳から45歳くらいの人・グループ応募できる人・障害者の自立支援活動などに従事した経験が概ね5年以上ある人・愛の輪運動に賛同し、積極的に取り組める人【行き先】アメリカのほか、実行委員会が認める諸国【期間】1〜2週間程度【募集人数】研修生(障害当事者)3人以上、介助者、支援者、通訳などスタッフ含めて8人程度の1グループ【選考方法】書類選考、面接審査、健康診断など【費用】上限400万円を財団が支給【内容】グループの「夢」を実現するため、応募者が希望し、計画する研修先を選びます。障害者団体、ボランティア団体、学校等の教育機関、リハビリテーション関連機関、研究機関、その他の行政機関、企業など■海外研修説明会大阪会場【日時】2018年9月7日(金) 18:00〜20:00【会場】株式会社ダスキン 本社ビル 10階会議室(大阪府吹田市豊津町1-33)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み東京会場【日時】2018年9月14日(金) 18:00〜20:002018年9月15日(土) 13:00〜15:00【会場】株式会社ダスキン 東京オフィス 会議室(東京都新宿区西新宿2丁目6-1 新宿住友ビル23階)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み福岡会場【日時】2018年9月29日(土) 13:00〜15:00【会場】博多バスターミナル 9階第6ホール会議室(福岡市博多区博多駅中央街2-1)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み【問い合わせ】公益財団法人ダスキン愛の輪基金TEL: 06-6821-5270FAX: 06-6821-5271夢へとつづく“3つの海外研修”世界へ。未来へ。| ダスキン愛の輪基金海外研修説明会のご案内 | 2019年度(第39期) ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業【ニュース】今年は大阪でも開催!第3回ダウン症支援セミナー「ダウン症成人期の支援を考える」出典 : 年に始まった支援者のための「ダウン症支援セミナー」が今年も開催されます!例年の東京都に加え、今年は大阪府でも開催され、参加者を募集しています。ダウン症がある成人のための支援プログラムに取り組んでいる方々を講師に招いて、支援のあり方を考えるセミナーです。日本ダウン症協会(JDS)が主催していて、今回で6回目を迎えます。対象は、保護者を除き、ダウン症のある人と関わり、支える専門家や学生などとなっています。東京会場は7月いっぱいで応募が締め切りとなりましたが、大阪会場では参加者を応募しています。地域、社会で生きていく成人のダウン症の人たちにどんな支援ができるか、事例や最近の動向を学びながら、これからの支援のあり方を考えてみませんか?東京会場※定員に達したため応募を締め切りました【日時】2018年8月19日(日) 10:00〜16:00【会場】東京日本橋タワー31階、受付場所7階 (東京都中央区日本橋二丁目7番1号)【講師】竹内千仙先生(東京都立北療育医療センター内科医長)、橋本創一先生(東京学芸大学教授)、菅野敦先生(東京学芸大学教授)大阪会場【日時】2018年9月2日(日)13:30〜17:00【会場】大阪医科大学、受付場所 看護学部講堂C-23(大阪府高槻市大学町2番7号)【講師】橋本創一先生(東京学芸大学教授)、菅野敦先生(東京学芸大学教授)【参加費】各会場4,000円【申し込み】ホームページからのウェブ申し込みのみ【締め切り】大阪 2018年8月19日(日)※定員になり次第締め切り【問い合わせ先】公益財団法人 日本ダウン症協会TEL: 03-6907-1824Eメール: info@jdss.or.jp | 公益財団法人日本ダウン症協会
2018年08月03日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。年齢を重ねるほど、素直な恋愛ができなくなっていった私——。「婚活」という言葉を知りながらも、結婚に対して前向きになれませんでした。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 21家庭を持つ責任と、結婚の重み結婚することが女性の幸せである、好きな男性と結ばれて出産し子育てをすることが素晴らしい……。友人の結婚式に出席したり、子ども連れの夫婦を見たりすると、“幸せ” なのは頭で理解できるけれど、いざ自分に置き換えてみると一歩踏み出せない。どこか他人ごととして遠くから眺めている状態が、アラサー近くになっても続いていました。その理由は、小さい頃から繰り広げられていた、“荒れた家庭” が目に焼き付いているからです。高校を退学した兄の担任の先生に深く頭を下げる両親、夜中に帰ってきて騒ぎ立てる兄、精神障害者となった兄に安定剤を飲ませるためにタイマーをかけている母、仕事で疲れているのに休日は兄の病院の送り迎えをする父——。兄のことが疎ましいわけではなく、大事な家族のひとりだと思っています。でも、それらの光景は、私にとって良いイメージではありません。表立っていないだけで、家庭環境に苦労している家族も多いかもしれませんが、私が小学生、中学生だった幼い頃の我が家はとにかく悲惨でした。大人になった今は、自分の家庭は少しだけ稀だっただけ。そう、解釈できているのですが……。本当に、一生寄り添えるパートナーって?私は、両親をとても尊敬しています。元気な自分を保つことができたのは、両親がいつも力を合わせて家庭を守ろうとしていたからでした。もし、あの幼い時に、両親の意見が合わずに離婚していたら、もっと自分の居場所を無くしていたと思いますが、両親はいつも前向きでした。「心音は自分の人生を明るく生きなさい。お兄ちゃんは、お母さんとお父さんの子どもです。何を言われても、怖くなんかないよ。だってお母さんのお腹から出てきたんだから」と、私が想像しているよりも大きな愛で兄を育てていました。そんな両親を見ていると、果たして自分にそんな責任を負えるのか? 何があっても、一緒に助け合えるパートナーが見つかるのかと不安ばかり募ります。学生の時のように、自然体でありのまま恋愛できれば良いのですが、年齢を重ねるほど “傷つきたくない” 気持ちが大きく膨らんでいくばかりだったのです。また、「できちゃった婚」のように、もし、予想しないタイミングで子どもができたらどうやって責任をとったら良いのかわからない、一生のパートナーと確信していない人とは絶対に子どもは作れない。家庭や出産に対して、“幸せ” のイメージより先に “恐れ” が先行している状態に、世間とのズレを自分でも感じていました。男性を避け、「女性専用」を選ぶほどだった大人の恋愛になれば、学生の頃とは違い、明確な告白がなくても良い雰囲気になって関係をスタートすることもあると思います。しかし、曖昧にスタートさせようとする男性に対して、どこまで本気なのか試したり、わざと怒らせるようなことを言ったりして「石橋を叩いて渡る」領域を超えて、叩きすぎて壊してしまうことも多々ありました。そんな、“疲れる恋愛” しかしていなかった私は、「恋愛はめんどくさいし、疲れるだけ」「そんなことなら自分の時間を大切に過ごしていたほうがいい」と深く恋愛をすることを忘れていったのです。両親からも、「心音は、結婚しないかもしれないね」「正解はないから、自由に生きなさい」と私の心情を知ってか知らずか、結婚をすすめることはありませんでした。恋愛に対してひねくれていた私は、男性が言い寄ってきても、「どうせまたこの人もすぐにいなくなる」「好きって言うけど、本当は一瞬だけでしょ?」と勝手に不信感をもって斜めから見ていた気がします。女子大を卒業した後は、気づけば男性がどんどん苦手になっていました。電車やバス、ジムなどはなるべく「女性専用」を選んだり、休日も女友だちと過ごすことが多かったり。または、本当は嬉しいはずなのに、デートで男性に荷物をもってもらうことすら抵抗がありましたし、帰りも家まで送っていくと言われても、「大丈夫、ひとりで帰れるから」と突き放すこともあったのです。私のプライベートを知る親しい人からは、「心音ちゃんって、もしかして男性嫌い?」と核心をついた質問をされることもありました。“嫌いではないけれど、避けてしまう” 自分でも分からないこの男性への接し方は、答えがあるなら教えてほしいと願うばかりでした。心の奥に入ってきた、たった一人の男性そんな男性への不信が強くなるアラサー手前のこと。出会ってすぐに、好意を示してくれた男性がいました。「彼氏はいないの?」「このままずっと一緒にいたい」と。軽い気持ちで声をかけてくるだけの男性に違いないと思った私は、冷たくあしらって社交辞令ですませていました。この人も、きっとすぐにいなくなるだろう。「好き」と簡単に言ってくる男性が信用できなかったので「彼氏はいないけど、もう恋愛をするつもりはない」とまで言って、突き放していた矢先——。なんとその男性は、彼氏彼女を飛び越えて「君を妻にしたい」とプロポーズしてきたのです。©martin-dm/Gettyimages©fizkes/Gettyimages©Mixmike/Gettyimages©flukyfluky/Gettyimages
2018年07月28日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。精神障害者となった兄を献身的に世話してきた両親は、長い年月をかけて現実を受け入れ、ようやく前向きに人生を歩みだしました。いっぽうで私は、人間関係に悩むようになっていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 20人と人との “距離”ってなんだろう……?精神を病んだ兄に全てを注いできた両親ですが、祖父母の言葉でありのままの現実を受け入れることができ、心にゆとりを持ち始めました。そのことをとても嬉しく思った私ですが、私自身は人間関係に悩むようになっていました。地元にいる時は、自分の意図と関係なく作られる人間関係も、地元を離れると良くも悪くも関係づくりは「自由」です。仕事で出会った人、飲み会で出会った人、友人の紹介で出会った人——。自分のことを正直に話す必要もなければ、相手のことを深く知ることも「自由」。その場限りの人間関係に対して、兄の話をすることは基本的にはなく、「兄弟っているの?」と家族の話題になれば、笑顔で「ひとりっ子だよ〜」と言ったり、「兄がいるけど遠くに住んでいて、まったく会っていない」と言ったりして適当に流していました。小学生、中学生と幼いときの私は、兄に対して「自業自得だ」と酷く不満を感じていましたが、年齢を重ねるにつれて精神的にも少しずつ大人になり、兄のことを責める気持ちは消えていました。しかし、障害を持つ兄の話題をあえて膨らませる必要はないと思っています。それは今でも変わりません。これらの言動は、相手に対して変な心配をかけないための返答であり、“良い嘘” だと感じていただけると幸いです。心の壁が顕著に出るのは、恋愛だった兄の話を具体的に知っている人は、私の周りに今でも少ないです。本当に気心しれた数人のみ。……良くも悪くも、悩んでいたり落ち込んでいたりする姿を極力見せないようにしてきたおかげで、「いつも笑顔で元気な子」「悩みがなさそう」というイメージで生きてこれたと思っています。仕事の人間関係や女友だちの間柄では、そこまで深く悩むことがなかった私ですが、顕著に心の壁が出てしまう時がありました。それは、大学を卒業しても克服しきれなかった、恋愛——。飲み会やデートはたまにすることはあっても、生涯を一緒に歩むことができる男性をイメージすることは、20代後半になってもできませんでした。学生時代の彼以降、何人かとは恋愛関係にありましたが、今振り返っても “作り物の私”。仕事の合間に時々会って、デート。笑顔で写真を撮っては、「また会おうね」と元気にメッセージを送るだけ。彼から距離を詰められると、「最近は忙しいから」「今週は、予定があるから」など、会う頻度をわざと減らすこともありました。「なんか心音って、心を開いてくれないよね」数年一緒にいた彼からは、同棲の話が出たこともありますが「私は、まだ結婚は考えていない」「一緒に住むのは、まだいいや」「自分の時間を大切にしたい」と、言われたら相手が傷つくであろう言葉をわざと言っている自分に薄々気づきながら、素直に恋愛することを避けていました。「なんでそんなに強がるの?」「もう少し、心を開いてほしい」「悩みがあるなら言ってよ」と言われるほど、私の心は殻に閉じこもっていったのです。その時は、ただ強がることしかできなかったけれど、わざと突き放していた本当の理由は、すべてを知られるのが怖かったから。私が兄の立場だったら、家族にこんなふうに思われるのはとても苦痛です。そんな気持ちを抱いてしまうのはよくないことだと思うけれど、相手がどんな反応を見せるのか……。もしかしたら、嫌われるかもしれない。オブラートに包んではっきりとは言わなくても、距離を置かれるかもしれない。自分には、背負いきれないと思われるかもしれない——。誰からもそんなことを言われていないのに、なぜか私は勝手に不安を感じていました。加えて、悩みや弱い部分を知られたら、自分を保てなくなるのではないか? と崩れる精神状態を恐れて、ある一定の人間関係より深くなる瞬間を感じると、突き放す癖が治らなくなっていきました。結婚や子育てのイメージ世の中では、「婚活」がブームになりましたが、幼い頃から兄の世話で苦労していた両親を見ていた私は、「家庭=大変」というイメージがどうしても拭いきれませんでした。もちろん、最愛の人と結ばれて子どもができて、新しい家族とともに幸せな家庭を作ることは、素晴らしいと頭では理解しています。理屈では消化できていても、心がついていかなかったのです。ずっと、ずっと——。©gilaxia/Gettyimages©ljubaphoto/Gettyimages©fizkes/Gettyimages
2018年07月26日子どもからお年寄りまで、地域の人が集う「ごちゃまぜの場所」。その真ん中にいるのは…?Upload By 発達ナビ施設インタビュー石川県白山市に、お年寄りも子どもも、障害のある人もない人も、町のみんなが集うごちゃまぜの場所があります。そして、その場所の真ん中にいるのは、障害のある人たちやお年寄りです。「社会の中で弱者と言われる障害者や高齢者。でも、彼らを弱者にしているのは周囲の環境の方なのでは?」という考えから、彼らを真ん中に、だれもが行きかうごちゃまぜの拠点としてつくられたのが、佛子園が運営する「B’s」です。もともとここには、旧学校の校舎を改造してつくられた、障害がある子どもの入所施設がありました。地域との交流もほとんどなかったその場所を、地域の人たちが訪れる賑やかな町の拠点に変えたのです。B’sは、放課後等デイサービスをはじめ、就労継続支援や生活介護の事業所、介護サービスの事業所、ショートステイ、グループホーム、保育園、クリニックなど複数の施設から成り立っています。高齢者通向けデイサービスも同じ敷地内にある、共生型の福祉施設です。誰でも利用できる温泉や飲食店なども併設しています。洒落た雰囲気の敷地に足を踏み入れると、大きな木の遊具が目に飛び込んできます。天気のいい日には、放課後等デイサービス・B’sこどもLaboに通う子やB’s保育園の園児、そして近所の子ども達が、木の遊具のある庭で混ざって遊ぶ姿が見られるといいます。Upload By 発達ナビ施設インタビュー庭を囲むようにして、放課後等デイサービス、料理教室やカフェ、フラワーショップ、リハビリ機能も併せ持つ整形外科、保育園が並びます。建物に入ると、天然温泉、手打ちそばやここで醸造するビールを楽しめるレストラン、カラオケ、全身マッサージを受けられるリラクゼーションまで。2Fには、最新の機器がそろうスポーツ施設や住民自治室、就労継続支援・生活介護の事業所、ショートステイができる場所もあります。庭の遊具のひとつに、大きな滑り台があります。「滑り台は下から登っちゃいけないって叱られがちでしょ。ここは規則でがんじがらめにして叱ったりしたくない。だから、叱らなくてもいいように、滑っても登ってもいいような幅の広い滑り台をつくった」という、B’sを運営する佛子園代表の速水さん。「地域の子ども達にも来てもらいたいから、お母さんたち向けに”日陰”も意識してつくったんですよ。子ども達を遊ばせながら、お母さんたちが日陰でおしゃべりができるでしょう」。そういう時間・空間が必要だと言う、速水さん。子ども達のそばにいる保護者のニーズもくみとり、しっかりと設計に反映する。地域の人たちが来たいと思える仕掛けを随所にちりばめています。中核となるこの施設の周りには、障害のある人が暮らすグループホーム・B’s Homesも点在しています。Upload By 発達ナビ施設インタビュー「高齢者向けデイサービスの施設は、通常、安全管理のために死角がないようにつくるでしょう。でも、それじゃあお年寄りは端っこに座ります。人は、死角がないと落ち着かないもんです」。B’sでは、その死角に椅子を配置し、人と人との会話が生まれるようにしています。ごちゃまぜの、遊び場のような、たまり場のような、生活の場がつくりたいからーー。温泉は、町民は無料。毎月2,300人ほどが入りにきます。地域の高齢者は、温泉に入るときに自分の名前の書いてある札をうらがえします。わざわざ家まで見守りにかずとも、温泉に入りに来てもらうことで、地域の高齢者の安否確認ができる仕組みです。もちろん、放課後等デイサービスに通う子ども達も自由に温泉に入れます。B’sの中は、さまざまな人たちが行きかい、だれが事業所スタッフなのか、誰が放課後等デイサービスに通う子なのか、ふらりと訪れた地域の人なのかわからない、「ごちゃまぜ」の場所です。’s | 佛子園「ぼくはね、ここで働いているんだ」就労支援で働く若者が、誇らしげに話しかけてきたUpload By 発達ナビ施設インタビュー「ぼくはね、作業所で働いてるんだ。こどもLabo(放課後等デイサービス)の卒業生だよ」住民自治室を見学していると、一人の若者が話しかけてきました。学生時代から通いなれた放課後等デイサービスのある施設で、今は仕事をしている。仕事が終わったら、ふらりとデイサービスに顔を出して、高校生の利用者たちとおしゃべりを。「ここはぼくの居場所なんだ」という誇りが、充実した表情から感じられます。B’sを支えるのは、障害のある人たちが働いたり訓練をしたりする、就労継続支援の事業所や生活介護の事業所です。就労継続支援の作業スペースでの業務のみでなく、蕎麦屋の厨房やハンバーガーカフェの店員、保育補助、フラワーショップ、スポーツ施設のインストラクターや受付、パソコンでの事務作業や絵本・パンフ作成など、担う業務はさまざま。他にも、地域清掃やホテルのベッドメイク、近隣の高齢者宅への配食など施設の外に出ての作業もあります。配食では、障害のあるスタッフも高齢者のもとに食事を届けます。自分のペースを崩さず時間に追われない、障害のあるスタッフとの会話を心待ちにしている高齢者も多いそう。おかずを分け合って食べたり、おしゃべりすることを楽しみにしているといいます。皆いきいきと活躍しています。一日の終わりには、ビールを飲みながら仲間と語らう姿も。ここで働くスタッフは、自宅から通うほか、近隣にある12カ所のグループホームから通う人も多くいます。皆、施設に入所するのではなく、地域で暮らしています。B’sでは、「人は、人の役に立っていると思うとき、幸せになれる」と考えています。だから、その人が望めば、やりたい役割を果たせるようにしています。自分が根づいている場所、必要とされている場所がしっかりとある。だから、ここで働く障害のある若者たちは、こんなにも誇らしげなのでしょう。施設の中を自由に行き来する、放課後等デイの子ども達。この地域に、あたり前に暮らし続けられるようにUpload By 発達ナビ施設インタビュー午後3時を過ぎると、放課後等デイサービス・B’s こどもLaboの部屋には、次々に子どもたちが。毎日約30人の子どもたちがやってきます。月間のべ1,000人ほどが利用しているそうです。小学生は、元気に走りまわっています。そこに、就労支援での作業を終えたOBの面々が加わり、おしゃべりに花が咲く。青春しているなぁ!人生楽しんでるなぁ!と、見ているこちら側まで、晴れやかな気持ちでいっぱいになります。Upload By 発達ナビ施設インタビュー子ども達はこどもLaboの部屋で遊んでもいいし、庭や施設内で自由に遊んでもいい。温泉に入ったり、リラクゼーションでマッサージを受けるのもOK。B’sでは、マッサージショップからテナント出店料を取らない分、福祉利用者が来店した場合には、無料でサービスを受けられるようにしているのです。最新の機器がそろうスポーツ施設の利用も、子どもであってももちろん可能です。スヌーズレンルームもあり、光を楽しみながらゆったりと寝転んでいたい子どもは、ここで過ごすこともできます。Upload By 発達ナビ施設インタビュー同じ施設の中に、就労継続や生活介護の事業所があることで、将来の見通しもつきやすいといいます。作業場での仕事、厨房の仕事、スポーツ施設のインストラクター、フラワーショップ、配食、保育園のスタッフ、清掃…放課後等デイサービスに通う子どもたちは、自然とさまざまな役割を知り、自分のやりたいことを見つけてくことができます。そしてまた、地域の子どもや大人と日々交わり、声を掛け合うことで「ここは自分の暮らす場所」であることを、しっかりと自分の中に根づかせることができるのです。障害のある「ある一人の人生」に寄り添おうと思ったら、支援を区切ることなんてできないUpload By 発達ナビ施設インタビューB’sを運営する社会福祉法人佛子園では、石川県内各地に、障害者施設・高齢者施設の機能を合わせもった施設を運営しています。そもそも、どうして社会的弱者と言われる人たちの施設をまるごと担おうと考えるようになったのでしょう?そして、縦割りともいわれる法制度のもと、どうしたらそんなことができたのでしょう?そう問うと、代表の速水さんは、少しきょとんとした表情を見せました。「障害のある”ある一人の人生”に寄り添おうと思ったら、子ども用、成人用、高齢者用、と支援を区切ることなんてできないでしょう?」例えば、以前は、障害のある人の福祉をある年齢になったら高齢者用の福祉に切り替えなくてはいけなかった。障害者向け施設は高齢者向け施設として運営することはできなかったので、住み慣れた施設を離れて高齢者向け施設に移らなければいけない。でもそれは負担が大きい。だから、障害者も高齢者も支えられる施設をつくったーー。こうして佛子園は、法律で障害者も高齢者も支援が可能となる「共生型の施設」が認められるより前から、さまざまな年齢の社会的弱者と言われる人たちのための施設を運営してきました。「福祉の制度は、使いやすいようにある程度ゆるみをもっている。それを現場が保守的に解釈して、あれもこれもできないって思いこんでることが多い。例えば、以前は障害者福祉と高齢者福祉の職員室は仕切られていなきゃいけなかった。でも何で仕切るべきかは書いていない。だからうちは”ふすま”で仕切っていた」今は、共生型が法律でも認められるようになり、施設のどの職員も、どの施設の利用者でも見守れるようになりました。スタッフは皆インカムをつけ、全員で見守りをしていると言います。平成30年度障害福祉サービス等報酬改定 における主な改定内容 | 厚生労働省Upload By 発達ナビ施設インタビュー自分が住む町の中に、だれもが安心でき、仲間と語り合うことができる場所があること。社会的に弱者と言われる人たちを弱者のままにしておかず、それぞれが役割を持ち、必要とされていると感じられること。言葉にするととてもシンプルだけれど、人が自分らしく幸せに生きていくために何より必要で大切なことなのではないか。「B’s」の中をいきいきと行きかう人たちの姿を目の当たりにして、そう思わずにはいられませんでした。撮影/吉田直哉(GARAN ASSOCIATES)、編集部
2018年07月25日障害がある人も、自分のことを自分で決められるーー啓発冊子との出合いUpload By 荒木まち子快諾したものの…Upload By 荒木まち子後日届いた4冊の冊子を見て、その内容の濃さにびっくり。そして、あっという間に付箋だらけに…。Upload By 荒木まち子障害がある人の、さまざまな権利に気づいたUpload By 荒木まち子「親が子の権利を侵害する可能性がある」知的障害者成人期権利擁護事例集日常にある確かな権利“気づいてほしいわたしのためのあなたのための26の権利”別冊より By 荒木まち子Upload By 荒木まち子「どんなに障害が重い方も権利に対する責任がある」知的障害者成人期権利擁護事例集日常にある確かな権利“気づいてほしいわたしのためのあなたのための26の権利”別冊より By 荒木まち子「知的障害のある人も結婚できるし子育てできるし幸せな人生を送ることができる」知的障害者成人期権利擁護事例集日常にある確かな権利“気づいて欲しいわたしのためのあなたのための26の権利”別冊より参考:自己決定支援ハンドブック・成人期権利擁護事例集 | 新宿区手をつなぐ親の会発達障害がある娘の反応は…!?Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子先回りして、親がすべて決めてしまうと…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子親はどうしても子どもを守ろうとする気持ちが強くなります。でも進路や就職、成人後の暮らし方など、すべてを親の考えで決めたり、親が子どもの「権利擁護」をしすぎると、結果的に本人の権利を侵害することになってしまいます。私自身、身に覚えがありすぎました…。冊子には・小さいうちから療育を受け、自分の思いや意思を伝える手段を身につけること・成長段階に合わせ「自分で選ぶ」経験を積むこと・自分の特性(障害)を理解すること・本人に権利と責任、人権について学ぶ機会を与えること・親以外の支援者(伴走者)の必要性・家族や後見人が専門家と連携を取ること・ときには「頑張らなくてもいい」というのも権利だということなどさまざまな“大切なこと”が書いてあります。障害当事者向けの啓発冊子を!出典 : 既刊のものは親や支援者向けの内容になっています。新宿区手をつなぐ親の会では、障害がある当事者向けの権利擁護の啓発冊子の作成に向け検討が行われているそうです。娘も私も発行を心待ちにしています。
2018年07月05日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。精神を患った兄につきっきりになってから、気づけば早10年。走り続けた両親に安堵を与えたのは、祖母や祖父の言葉でした。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 19“頑張る気持ち” は、どんどん首を締めるばかり兄の状態が変化し始めてから、気づけば10年近くが過ぎていました。母は仕事をやめて、平日は仕事の父も休日は病院に同行。薬の飲み忘れがないようにフォローしたり、病院や薬に頼ることなく模索したり……。それを、10年も続けたのです。「頑張れ」「精一杯行動すれば、なんとかなる」「道は開けるに違いない」——。それらの言葉は、時として本人たちの首を締める言葉にもなります。私は、両親の “頑張り” に誇りを持っていましたが、それ以上頑張り続けたら両親のほうが疲れ果ててしまうと感じたので、これらの励ましの言葉は一切口にすることはありませんでした。まだできる、もっとできる……。この10年の間、私はプライベートを優先する両親の姿を見たことがありません。旅行や遠出の移動は、兄を連れて行くと周囲に迷惑がかかるため極力避けていましたし、兄は当然自炊ができないので、母や父のどちらかがご飯と薬の用意をしなければならず、夫婦でのんびり過ごすということもしなかったのです。また、病院に行くときはオシャレな格好が似つかわしくないからと、地味な服装で医師や看護師に頭を下げる日々……。たまには、好きな服を着て息抜きに旅行をしたって、罰は当たらないのではないか? と思うほど、両親は自分たちの人生すべてを兄に注いでいました。兄のためにも、「前を向いて生活しなさい」そんな時に支えてくれたのは、祖母と祖父の存在です。祖父母の家には、兄を連れていくこともあり、彼らは実際に兄の様子を目の当たりにしていました。そして、両親が思い悩む気持ちを汲み取りながら、親身に相談に乗ってくれることも……。唯一、兄の状況を知っていた祖母や祖父から言われた助言。それは、「お兄ちゃんは、病気です。前を向いて生活すれば良い」という、励ましでもなく応援でもない言葉でした。兄の状況を過度に悲観するのではなく、受け入れてあげること。そして、両親は自分たちの人生を明るく生きなさいという指針だったのです。兄の状況がよくなることを願う気持ちはみんな同じでしたが、“良い意味” で兄を受け入れることが、両親にとって大切なターニングポイントになったと言います。本来なら、仕事をしてやりがいを得ているかもしれないし、最愛の人を見つけて家庭を持っているかもしれない。そんな期待を抱えていたから、大人になった兄の “今の姿” をちゃんと受け止めることができなかった。それが、両親の本音だったのかもしれません。現状をふまえ、少しずつ気持ちを楽にすることで、張り詰めていた “何か” がほぐれていったのがこの時期でした。おそらく、娘の私が同じ言葉を言っても、両親の心境を変えることは難しかったと思います。祖父母だから言える、“本物の助言”。苦しい時に染み入る言葉は、「何を言うか」ではなく「誰が言うか」が大切だと学びました。以前通っていた病院へ戻ることにそして、両親は高額な自費診療をやめて、2つめに訪れた一番兄が落ち着いていた病院へ兄を再び通わせることにしました。いろいろと問題はありましたが、薬の量や体との相性、処方の方向性などを総合し、最も兄に合っていると判断。毎日思いつめていた気持ちが少しずつ穏やかになっていったのです。母は、パートタイムで仕事に復帰。仕事をする意味は、「お金を稼ぐ」ことだけではありません。仕事をすることで、いろいろな人とコミュニケーションが取れ、たわいのない世間話や趣味の会話をする時間を持てるようになりました。植物が好きな母は、花いじりをしたり、休日はガーデニングのワークショップに出かけたり。父は仕事漬けの毎日を少しずつ改めて、休日は早く起きてゴルフをしたり、ピアノを習い始めたりとアクティブに行動し始めました。“自分の時間” が、両親の毎日にやりがいと楽しみを見出すきっかけに繋がったのです。そんな両親の姿をみて、私は嬉しさを感じていました。いっぽうの私は、進路だけでなく、恋愛に対しても悩みを抱えていました。——。明るく振舞うことは得意だけれど、弱さや悩みをさらけ出せる、深い関係を築くことがうまくできなかったのです。©Zinkevych/Gettyimages©CaoChunhai/Gettyimages©AH86/Gettyimages©Ulianna/Gettyimages
2018年06月23日小学校入学のタイミングで子どもの学習障害が明らかになることがあります。そもそも「学習障害」とひと言でいっても、その内容は様々です。学習障害とはどんなものなのか?改善するためにはどんな方法があるのかを探ります。学習障害を持っていても活躍をしている人は沢山います。子どもの将来を考え、子どのを育てる時なにが一番大事なことなのか、ママテナの記事から「学習障害」についてまとめました。●学習障害とは?学習障害とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害というおもな4種類の発達障害のひとつです。「聞く、話す、読む、書く、計算する」など、特定の「学習」の基礎的な能力に困難を示す状態で「ただの勉強不足」と誤解されてしまうことも多いようですが、本の朗読でどこを読んでいるのかわからなくなるなどの詳しい症状です。▼続きはこちら▼●日本語では気が付きにくい「ディスレクシア」では学習障害はどのような状況で発覚するのでしょうか?その一つとして「小1プロブレム」があります。これは保育園や幼稚園から小学校への環境が大きく変わったタイミングで、小学校への不適応が見れらた事をキッカケに知能テストなどを受け、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害などと診断されるケースがあると専門家は指摘しています。▼続きはこちら▼●学習障害の疑いがわかるキッカケ小1プロブレムでは学習障害はどのような状況で発覚するのでしょうか?その一つとして「小1プロブレム」があります。これは保育園や幼稚園から小学校への環境が大きく変わったタイミングで、小学校への不適応が見れらた事をキッカケに知能テストなどを受け、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害などと診断されるケースがあると専門家は指摘しています。▼続きはこちら▼●学習障害改善のための方法発達障害と診断された場合、「療育」という障害をもつ子どもが社会的に自立することを目的として行われる治療と保育があります。医師の診察後、検査などでお子さんの状態を把握し、診断が出てから、作業療法士や言語療法士などによる訓練を療育センターで受けることになります。学習障害の対応は早い対応が大切です、学校に行ってもわからないことだらけになってしまい、だんだんと学ぶ意欲をなくし、「どうせ自分なんか」と自己評価も低くなってしまいます。中には学校に行きたくなくなってしまう子もいます。気になる事がある場合は、早い段階で相談し、子供の能力を伸ばしてあげたり、関わりを変えてあげた方が絶対にお子さんのためになる、と専門家は指摘します。▼続きはこちら▼●道具の利用学習障害を抱える子どもにとって黒板に書かれた事をノートに書き写すのが苦手な場合があります。このような場合、授業終わりに黒板をデジカメで撮影し、家でプリントアウトしてノートに貼る、などによって問題を解消する方法もあります。「できない」事を、道具の力を借りて「できる」ようにする方法にです。▼続きはこちら▼●学習障害をもった子どもを育てる一番大事なことアインシュタイン、トム・クルーズ、スティーブン・スピルバーグ、ジョン・レノンはディスレクシアでした。ミッツ・マングローブさんが「暗記が苦手だった」と告白しています。大きな功績を残してる人や第一線で活躍している人でも学習障害を持っている人はいます。学習障害を持った子供を育てる上で一番大事な事はなんなのか?専門家の意見です。▼続きはこちら▼
2018年06月11日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。精神疾患の兄は薬の量も半分に減り、落ち着きを取り戻したかと思った矢先。両親は、新聞に大きく載っていた自費診療の病院を発見しました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 18両親は、誰よりも兄の回復を待っていた兄がお世話になった病院は、今まで2か所。両方とも、保険が適応される精神科でした。高校のある時期から激変した彼の状況に戸惑いながらも、やっと慣れてきた生活でしたが、両親は障害者手帳を発行された後も、兄の回復を諦めませんでした。「お兄ちゃんは、どこも悪くない」「また何かの拍子できっと、よくなる」と……。もちろん、自分の子どものことですから、両親が兄を良くしたいと思う気持ちは痛いほどわかります。しかし、妹の私からすると、当初に比べれば兄の状態はだいぶ落ち着いてきたように思えました。暴力的な言動や、過度の引きこもり生活を抜け、薬の量が半分に減り、入院ではなく通院に変わり病院に行く頻度もかなり落ちている。また、障害者手帳の申請や、障害者年金の受理までしているのだから、両親はもう少し気持ちを楽にしてはどうかと客観的に見ていました。世の中にあふれている「広告」そんなある日、「お兄ちゃんの病院を変えようと思う」と母から連絡がありました。なぜいきなりそんなことを言い出したのだろうか……?と考えていたのですが、よく聞けば新聞に大きく載っていた精神科に最後の望みをかけて診てもらいたいとのこと(当時は、藁をも掴む思いだったので深く考えていなかったけれど、その新聞掲載は記事ではなく広告だったそうです)。私は実家から離れて暮らしていたので、どんな状況だったかはわかりませんが、「都会に有名な精神科があるらしい」と田舎生まれの両親が言うのです。内容を詳しく聞いてみると、その病院は保険がきかない自費診療。実家から電車と新幹線、そして診察代や薬代を合わせたら1回行くだけでも約5万円くらいはかかります。正直、心の病気で悩んでいる人が一向に減らない現代で、自費診療を受けたから何かが急激に変わるとは思えず、私は半信半疑でした。しかし、基本的に、病院のことや薬については両親が決めていることなので、「興味があるなら、行ってみても良いんじゃない?」と反対はしませんでした。診断結果と処方薬が変化し、さらに悪化父が休みのときは一緒に行くこともありましたが、基本的に母と兄の2人で都会の病院へ通うようになりました。2年半近くそこの病院にお世話になりました。病名は、統合失調症ではなく「高次能機能障害」と診断があり、処方内容も異なりました。1回の診察で約5万円かかるので、総合的にみるとかなり高額な費用だったと言えます。結論からいうと、その病院に通って兄の病状は悪化してしまいました。高額な費用がかかったにも関わらず、兄はいつも興奮している状態で、当初の荒々しい兄に戻ってしまったかのよう……。両親が当時を振り返ると、「ビジネスとして成り立っている病院もあると思う」とのこと。もちろん、私たち以外の家族では成功した例もあるかもしれませんし、兄とは診察内容が合わず無念な結果になっただけ。そう思いたいのですが……。夢中になっている両親を救った言葉しかし、働くことができない状況の精神障害患者を対象に、自費診療を家族が長らく続けることは現実的に考えると難しい計画です。また、個人的な意見では、新聞に広告を出す予算があるならば、診察料をもっと良心的な値段に落としてもいいのではないでしょうか。とはいえ、「精神障害」患者を抱える家族にとっては、どんな手段でもいいから改善したい、社会復帰のためになんとかしたい、と辛抱強く頑張るケースは少なくありません。そんな藁をも掴む想いで頑張り続けた、両親を救った言葉。それは、祖母や祖父からの助言でした。©Geber86/Gettyimages©Daniela Jovanovska-Hristovska/Gettyimages©kieferpix/Gettyimages©AH86/Gettyimages
2018年06月07日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。大学を卒業したのち、私は初めてのひとり暮らしを経験。「自分の空間」を作ったことで、ストレスが軽減されていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol.17自分を高める時間が、心を強くしていった大学時代の私は、ほとんど家には寝るためだけに帰る生活でした。音大だったので日中の授業はもちろんのこと、放課後や夏休み、GWなどもすべて練習しているか演奏の本番が入っているハードなスケジュール。そして、空いた時間を利用してアルバイト。始発と終電の繰り返しの大学生活では、高校の頃ように、家族や兄について深く考えることも減っていきました。周りの友人は、個性があって自分の関心ごとを極めたい気持ちを持った人々ばかり。先輩や後輩または、外部から派遣されたレッスンの先生も、専門分野のことを中心に生活しています。地元で生活していた時に感じた、人の噂話で井戸端会議をする人たちも少ない。他人の生活を詮索したり比較したりする暇があるならば、自分の技量を高めるためにに時間を費やしていると表現したほうが正しいかもしれません。人は、何かにか夢中になっていたり、関心の高いことがあったりすると、他人に干渉しなくなるのかもしれません。自由な生き方を認めてくれる、両親理解ある両親のもと、大学卒業後の進路は……ずばり「未定」。とはいっても、音楽や芸術の大学を卒業した後に、私のようになるケースは少なくありません。薄々気づいてはいたけれど、楽器を仕事に結びつけることは現実的ではありませんでした。しかし、小学生の頃から身近だった音楽。形にならないからといって、すぐにきっぱりと切り捨てることもできない。また、“趣味” のようにたまに触れるだけというのは、少しずつ技量が落ちている自分を再確認するだけの虚しい時間でした。そして、私は大学卒業後も、生活費を稼ぎながら、細々とレッスンに通ったり演奏したりしていました。良く言えば、“夢見る音楽家”。悪く言えば、“ただのフリーター”。そんな状況でも、両親は「心音の人生だから、好きに生きなさい」「健康でいてくれるなら、それでいい」といつも認めてくれました。「うちは、お兄ちゃんがこんなふうだから、心音が頑張っていることが、お父さんとお母さんの支えだ」と言われたこともあります。実家を離れて、ひとり暮らしをスタートしかし、20歳を超えて、いつまでも甘えているわけにもいけない。大学時代はずっと実家にいましたが、特にあてもないまま大学卒業後にひとり暮らしを始めました。初めての家賃、初めての光熱費。今までは全部両親が支払っていてくれた生活費や、細かい生活用品なども “当たり前” ではなかったんだとひとり暮らしをしてから、やっと気づくことができたのです。ひとり暮らしは大変なこともありましたが、良いことも多くありました。それは、「自分の空間」ができたこと。小学校の時から、朝の目覚めは大抵が兄の騒ぎ声。学校から家に帰ってきても、「薬は飲み終わったのか」「洋服をちゃんと着替えなさい」「お風呂に入りなさい」……そんな、毎日繰り広げられる両親と兄のやり取りは、「自分の空間」をなくすばかりでした。学生時代の醍醐味であろう、友だち同士の “お泊まり会” を経験したこともなかったですし、「うちに遊びにきていいよ」と声をかけることすらできませんでした。高校時代の彼も、「なぜ心音の実家に行ってはいけないのか」と悩んでいたことが、頭をよぎります——。「自分の空間」は、心の負担を減らす私のひとり暮らしは、プライベートを充実させることができたのはもちろんのこと、心の負担がかなり減りました。借りた部屋は、実家から電車で20分程度離れた場所。両親はいつでも来られる距離でしたし、私も帰ろうと思えばいつでも帰れる距離。この “適度な距離” が、私にとって自分を見つめ直す良い機会になったのです。朝は自分の決めた時間に起きることができて、キッチンで料理をしていても危なっかしい兄の姿はない。夜中にお風呂に急に入ったり突然騒ぎ出したりすることもない……。兄から離れて自分の時間を大切にする、という選択をとった私の行動が、「逃げ」「現実逃避」だと感じる人もいるかもしれません。しかし、兄を客観的に見ることができてストレスが減ったのは事実です。両親に余計な心配をかけてはいけない。兄のことは、私から口出ししないほうが良い。そんな暗黙のルールが漂うなか、ひとり暮らしを始めたことで少しずつ自分の居場所を作ることできるようになっていきました。そんな、落ち着きを取り戻したある日、両親は新聞に大きく載っていた高額な自費診療の病院を発見。実家からは電車と新幹線を乗り継ぐ距離の、都心にある精神科でした。©cirano83/Gettyimages©ipopba/Gettyimages©Eva-Katalin/Gettyimages©monkeybusinessimages/Gettyimages
2018年06月01日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、これまでの経験から「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」。前回は、片づけやスケジュール管理が苦手なママのための“上手に暮らすコツやツール”をご紹介しました。著書の村上由美さんは、現在は言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんも、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもあるという村上さんが、三つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをおうかがいしました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■ママ友の世界は“究極の調整能力”が必要――今回は、ママの世界のコミュニケーションについておうかがいします。というのも、 前回 の片づけのお悩みと同様に、発達障害グレーなママからは、「ママ友とのおつき合いが苦手」という声もとても多かったのです。村上由美さん(以下、村上さん):ママ友の世界は、まさに究極の調整能力が求められますからね。そもそもおつき合いが得意でない人は、ママ友に関しては、自分ができる範囲の境界線を引くことが大切だと思います。ここまでは一生懸命やるけどこれ以上はやりません、などというふうに。もちろん断り方も大事です。「私には関係ないから」みたいな言い方をしたら、当然反感を買ってしまうので、誠意をもって対応すること。でも、それでも相手に伝わらなかったとしたら、それは仕方ないですね。相手によっては難癖をつけるのが目的な場合もありますから。自分には及ばない、できないことは、必要以上に悩んでも仕方ないので、ある程度のあきらめも必要だと思います。――ママ友の世界は、子ども同士が仲が良い、同じ園や学校といった“縛り”があるため、断りにくく感じてしまうお母さんも多いかもしれませんね。村上さん:子どものことを考えると、うまくつき合わざるを得ないのもよくわかりますよ。でも、自分の精神を病んだり、家族に悪影響を及ぼしてまでつき合う必要はないはず。「自分はどれくらいこの人たちと関わりたいのか?」ということを、きちんと見極めることが大切です。また、ママ友の世界しか頭に入らなくなってしまっていると、つい自分の居場所はそこしかないような気がしてしまいがちですが、一歩引いてみれば全然違う世界があるのです。実際、ママ友のことで悩んでいる方は、たいていほかのコミュニティーに入ったり、別の世界を見ることで、解決するケースが多いようです。物事に対する別の尺度が出てくると、気が楽になるんですね。――確かに。ただ、地域によっては、保育園・幼稚園から小学校、中学校まで1つしか選択肢がなくて逃げ場がないなんてケースもあるそうですが…。村上さん:そういう場合は、気が合えばものすごく心地良いんでしょうけど、何かあったら途端にいづらくなってしまいますよね。そうならないためにも、リスクは分散して、いろいろな逃げ場を作っておきましょう。趣味が合う友人や、独身時代の友だちなど、ママの世界とは違う世界のコミュニティーを意識して確保し、自分を一つの世界に閉じ込めないように心がけましょう。今は、SNSなども上手に利用して、自分の趣味や好きなことで仲間とつながって息抜きしているお母さんも多いようですよ。SNSはトラブルになるリスクを懸念する人もいるでしょうが、最初は特定メンバーだけフォローしたり、アプリ設定で制限を設けたりして段階的な導入でリスクを抑えられます。 ■「ほどよいおしゃべり」って、実はとっても難しい――男の人と比べて、「女の人は雑談が得意」などとよく言われますが、おしゃべりがすぎて「つい余計なことを言って相手を不快にさせてしまう」とお悩みのママもいました。村上さん:こういう方は、相手が会話の中で何を求めているのか、上手に察知できないのでしょう。例えば、食事中など第三者がいる場で、人が悩みや愚痴を打ち明ける時は、相手に共感を求めていることが多く、そういった場合に現実的なアドバイスや意見をするのはあまり歓迎されません。でも、ASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強い人は、相手が聞き入れる体制にあるかどうかをほとんど考えずに話してしまいがちですし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向が強い人の場合は、思いついたことをその場の状況を無視して口に出してしまうことが多いので、相手の感情を害してしまうことが多いです。その場の雰囲気を感覚的につかむことが苦手な場合、まず相手は自分から意見を聞きたいのか、それとも愚痴って気分転換したいのかを観察してから発言するようにしましょう。――具体的な方法としては?村上さん:まず、相手がこの会話で何を重視しているのかを観察しましょう。例えば、ちょっと愚痴りたいだけなのか、何かアドバイスを求めているのかなど。次に、相手の話を黙って聞いてみましょう。今まで見えてこなかった相手の悩みや感情が出てくることがあります。そして、相手が伝えたいことは何か? に焦点を絞って話を聞きましょう。最後に、相手がひと息ついたり、話に区切りをつけるような言葉(例えば「まあ、仕方ないんだけどね」など)が出てきてから、自分の意見を言うようにしましょう。そして、相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わないように心がけることが大切です。――お話をうかがっていると、上手なおしゃべりって、かなり頭をフル回転させねばならない感じですね(汗)。村上さん:言語聴覚士として、言語リハビリや療育支援の仕事をしていると、ご家族から「せめておしゃべりでもできるようになれば」と希望されることが多いのですが、でも、雑談するためには、実はとても高度な情報のやりとりをするスキルが必要なのです。なかでも特に、非言語のコミュニケーション情報を操作するスキルがとても重要になります。会話は突然、主語や時系列、話題が変わるため、文脈から状況を推測する力が必要となり、発達障害の人にとっては難しいことが多いのです。――たわいもないおしゃべりは、誰でも簡単にできると思われがちですが、必ずしもそうではないのですね…。村上さん:最近では、発達障害は広く世間に知られるようになりましたが、言葉がひとり歩きして、「困った人たち」というレッテルばかりが増えている印象もあります。でも、実は一番困っているのは本人ですし、周囲の人も「本人が何に困っているのかよくわからないから困る」という発想の転換が必要なのだと思います。発達障害の人たちが、このようなライフスキルを身につけるためには、幼少期からのトレーニングが必要で、大人になった今はもう手遅れではないか? と思われる方もいるかもしれません。でも、村上さんのお話によると、「本人がその気になった時こそが、実は一番良いタイミング」とのこと。「大人だからこそ、言葉だけで解釈したり、達成度を数字などの尺度で確認できる強みもある」そうです。実際、村上さんは当事者でもあり、発達障害を抱える旦那さまと一緒に試行錯誤を繰り返すなかで、言葉で確認し合える大人同士だからこそ話がわかる面も多かったといいます。何を始めるのにも、遅すぎることはないのかもしれません。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材/文:まちとこ出版社N
2018年05月31日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)。著書の村上由美さんは現在、言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんは、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもある村上さんが、3つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをうかがいました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■断捨離「モノが捨てられない」悩みを解決!――著書を読んで、「発達障害と長くつき合うのは、愛情じゃなくてスキルが必要」という言葉に「なるほど!」ととても納得しました。そのスキルをまとめたのが、本書というわけですね?村上由美さん(以下、村上さん):私は、かねてから、発達障害者の自立のカギは「時間、モノ、お金の管理ができること」と思っていて、最近ではそれに加えて「他人と協力できる場を持てること」「生き延びるための体力」も必要だと思っています。これらは、発達障害の人がこの三次元の世界で生きるための接着剤のようなもの。これらを介さないと、この世界の人やモノとは繋がれないので、それぞれの苦手項目を解決するためのスキルをまとめました。――今回はその中から、「モノの管理(片づけ)」についておうかがいします。というのも、発達障害グレー気味というママからは「片づけができない」というお悩みが圧倒的に多かったからです。村上さん:発達障害の人は、空間やモノへの捉え方が一般の人とは感覚的に異なるので、「片づけが苦手」という方がとても多いです。片づけについては、まず、自分にとってどういう状態が片づいているのかを明確にすることが大事です。例えば、ホテルのような整然とした部屋が良いのか、多少散らかっていても日常生活に支障がない状態なら良いのか、などというふうに。――確かに、人によって定義が全然違いますものね。でも、自分の片づけのイメージ通りに「モノを捨てられない(減らせない)」という悩みも多いようですが、これはどうしたら?村上さん:発達障害の人はモノの判断基準があいまいで、自分にとってのモノの役割を認識できていないため仕訳が苦手です。例えば、ADHDの傾向が強い人は、興味や関心に惹かれてつい使わないモノに手を伸ばしてしまいがちですし、ASD傾向が強い人は、そもそも片づけの意味や必要性を認識していないことや、人から押しつけられるとうまく断れず不要なモノが増えてしまうことも多いのです。発達障害の傾向が強い人は、自分の好みに合わないモノとつき合うのがそもそも苦手という特性を認識して、ある程度試してみて不要だとわかったら手放す覚悟が必要だと思います。――具体的な対処法としては?村上さん:まず、似たようなモノ同士をまとめます。集めたモノを比較すると、モノ本来の目的や自分の判断基準が明確になります。そこから不要なモノを間引きするのですが、判断に迷ったらいったん保留にし、モノ本来の評価と自分の感情を表などに書き出して整理しましょう。例えば、「使いにくいけど高価なモノ」は、モノ本来の評価は「使いにくい」、自分の感情は「高いから捨てるのがもったいない」になり、どちらが勝っているかがわかりやすくなるので決断しやすくなります。また、「〇〇したら使うかも」などと、条件つきで判断に迷うモノは、実際に使ってみることで結論がでます。例えば、「修理が必要なモノ」は「お金をかけて修理してまで使いたいのか?」「そこまでするのは面倒なのか?」で判断ができるはず。また、捨てるにはもったいないけど自分では使わないモノを処分するには、リサイクルショップや寄付などを利用するのが良いでしょう。 ■子どもの大量プリントやスケジュールはIT管理――家の片づけに加えて、子どもの片づけや学校の用意も加わって、お手上げ状態のお母さんもいたのですが、子どものモノの片づけはどうしたら良いでしょうか?村上さん:基本はどの片づけもだいたい同じなのですが、まず「この部屋で何をするか?」というルールを決めることが大事です。例えば、リビングは家族のパブリックスペースで、たくさんの個々人のモノが持ち込まれるので散らかりがちですが、「ごはんを食べる」「仕事をする」「勉強する」「遊ぶ」などと目的を決めると、だいたいの作業エリアが決まるので、そのために必要なモノを配置しやすくなります。子どもが勉強するなら、テーブル回りに筆記用具の引き出しや勉強本の棚を設置したり、それにまつわるモノが回る仕組みをつくります。また、子どもが片づけやすい状況になっているかも大事です。引き出しにラベルを貼って中身をわかりやすくしたり、きょうだい児がいる場合は棚を色分けするなど工夫しましょう。…とはいえ、子どもがいる場合は、そもそも整然としたホテルのような部屋を目指すのは難しいので、ある程度の妥協は必要だと思いますよ。――なるほど。また、子どもの片づけといえば、学校からの大量に配られるプリントの管理もありますが、こちらの対策は?村上さん:どんどんデジタル管理して、用済みの紙は捨てることです。紙情報は、処理して捨てるまでの流れを仕組みにしないと、どんどん積み重なって“地層化”になる一方ですよ。また、紙は検索できませんが、データなら検索できるのでとても便利。ちなみに、私はクラウド・サービス「 Evernote(エバーノート) 」を利用していますが、ほかにもプリント管理に便利なスマホのアプリなどたくさんあるのでぜひ検索してみてください。きょうだい児ごとにタグづけすれば簡単ですよ。また、IT管理は子どものスケジュール管理にも便利です。家族行事は、夫婦でGoogleカレンダーを共有し、子ども用には、プリントアウトしたモノを目につきやすいところに貼っておくことをおすすめします。子どもには、情報をITで理解するのはまだ難しいので、紙という具体化したモノで見せることが大事です。――スマホのアプリで管理するのは便利そうですね。村上さん:パソコンやスマホ、インターネットは、発達障害者にとっては三種の神器のようなもの。世の中のIT化により、社会の仕組みが発達障害の人たちが苦手とする三次元の世界から、得意な仮想空間の世界へとシフトしてきています。これらの情報機器をうまく活用すれば、生活の質を上げていくことができるでしょう。――ちなみに、ITオンチのお母さんはどうしたら良いでしょう…?(汗)村上さん:ITが苦手なお母さんは、トレイで管理することをおすすめします。目につきやすいところに「ママに渡すモノトレイ」を設置して、そこに子どもにプリントを入れてもらい、見たら即仕分けたり返事を書く、手帳やカレンダーに記入するというルールを決めましょう。また、子どもがちゃんとプリントを出せたら、たとえ内心、当たり前と思っていても、ちゃんと言葉に出してほめることが大事。できなかった時に叱るのではなく、できた時にほめることで、子どもにプリントを出す行動が定着します。■「お客様」意識のパパ、「私がやらなければ」意識のママ――なるほど。でも、いろいろお話をうかがって、これらを全部お母さんひとりでやるというのも大変ですよね…?村上さん:本当にその通りです。お母さんがやるのが大前提になってしまっていますが、これはお母さんだけの課題ではありません。協力して助け合うのが、家族の大事な役割なのですから。でも、日本の家庭は、たいてい奥さんが「プログラマー」になって細かくプログラムを組まないと、夫がうまく動いてくれないですよね(苦笑)。だから、「そんなの面倒くさくてやってられない!」と全部自分でやってしまうから、夫婦ケンカになってしまう。――おっしゃる通り(笑)。村上さん:私が思うに、多分、大半の夫は家庭に対して「お客様」感覚でいるのだと思いますよ。でも、夫は家族の一員なのだから、それは違いますよね? ですから、夫に家庭での「お客様」意識を改めてもらうことが必要です。そして同じように、お母さんも育ってきた環境や社会に求められて、家のことはすべて自分がやるものだと思いがちですが、そういう意識も変えていく必要があると思います。で、先ほどの、子どもができたらちゃんとほめるという話は、自分に対しても同じ。できて当たり前ではなく「できた私ってえらい!」と自分をきちんとほめてあげてくださいね。片づけや家事は「できて当たり前」と思われがちなうえに、消耗する行為が多いもの。でも、できて当たり前ではないこと、できたら自分をほめてあげる習慣をもつことで、自分自身にも片づけの習慣が定着するかもしれません。後編では、ママ友との「コミュニケーショントラブル」についておうかがいします。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材・文/まちとこ出版社N
2018年05月24日5/26 (土)「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャルの内容は?Upload By 発達ナビニュース2018年5月26日(土)にEテレで発達障害特別番組「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャルが放送されます。幼児の子育ての悩みや疑問に専門家が答える「すくすく子育て」と、小・中学生の保護者が教育について尾木ママと語り合う「ウワサの保護者会」が初コラボ。最近は、若い親世代の間で発達障害が知られてきています。それによって、「言葉がなかなか出ない」「他の子と比べて落ち着きがない」など少しでも気になる様子が子どもにあると、「もしかして発達障害かも…?」と心配をする親も増えているといいます。しかし、発達障害は社会性や人間関係に表れる特性のため、乳幼児の間は診断ができないことが多いとされています。「様子を見ましょう」という医師の言葉に不安と期待を抱きながら過ごす時期は、心も揺れ、どう対応するべきか分からずかえって苦しい思いをしている場合も…。今回の番組は、乳幼児期から就学にかけての年齢の子どもたちを育てている保護者にぴったりな内容です。 Eテレ「すくすく子育て」「ウワサの保護者会」乳幼児期から就学にかけて…成長の段階で変わっていく不安や悩みは?Upload By 発達ナビニュース番組の前半では、乳幼児期の「もしかして発達障害?」という悩みを専門家と一緒に考えます。■発達障害のある子もない子にも共通する子育ての基本■初めての集団生活である幼稚園や保育園でできる対応などを紹介しながら、発達障害とは何かを小児科医の榊原洋一先生が解説します。後半は、発達が気になる子の就学にはどんな支援があるのか、現在の特別支援教育についてを詳しく解説。■発達が気になる子の就学、どんな支援がある?現在の特別支援教育についてなどの疑問にも答えてくれます。また、「地域の中で、他の子どもたちと関わりながら一緒に育ってほしい」「将来の自立のために、手厚い支援を受けさせて能力をのばしてあげたい」という思いを当事者の親が語り合い、発達障害のある子どもにとって、必要な教育とは、学校とはどうあるべきなのか?を考えます。どちらを選んでも感じるジレンマ。その選択は悩ましいものです。そのどちらの思いも両立する「インクルーシブ教育」に向けて、親と行政と学校が手を組んで始まっている取り組みについても、番組内で取り上げられます!同じ悩みや不安を共有するだけでなく、先進的な事例も知ることができそうです。番組の詳細はこちら!Upload By 発達ナビニュース【番組名】Eテレ「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャル【放送日時】2018年5月26日(土) 21:00~21:54、2018年6月2日(土)12:00~12:54【出演者】司会:尾木 直樹(教育評論家)、高山 哲也(アナウンサー)、山根 良顕(お笑いコンビ「アンガールズ」、優木 まおみ(タレント)、専門家:汐見 稔幸(東京大学名誉教授)、榊原 洋一(お茶の水女子大学名誉教授)、ナレーター:笠間 淳、鈴木 麻里子発達障害プロジェクト
2018年05月22日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。お世話になっていた近所の病院へ勝手に出入りする兄は、気づけば迷惑行為をするようになっていました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 14「家からすぐそこ」が逆効果だった田舎だった私の実家は、スーパーに行くのもコンビニに行くのも、徒歩30分はかかりました。近くにあるものといえば、自動販売機と雑貨洋品店くらい。ですから、車がないと生活ができません。そんな環境ではありましたが、母は車を運転できなかったので、遠出をするときや買い物をするときは、いつも父が出向いていました。困ったのは兄の通院です。平日、父は仕事で朝から晩までいないため車を出すことはできません。すなわち、病院はなるべく近い場所が好ましかったのです。幸運にも、近所の精神科は徒歩10分程度。自動販売機の次に近い場所にあったと言ってもいいくらいの距離でした。つまり、兄の通院は「すぐそこ」に行くだけ。これが、母にとってメリットだったのですが、兄にとってはデメリットでもありました。ひとりで勝手に病院に行く兄骨折や切り傷は、「治療が終わればまた元の生活ができる」というゴールがありますが、兄の病気はそういうものではありません。ですから、正直なところ精神科病棟は患者もその家族も、どんよりとしています。私がこうして綴っているように、精神的な病気を持つ人が家族にいると、終わりのないマラソンを走り続けているようなもので、基本的に顔は曇り空。明るく病院内で過ごすのは、難しいことでもありました。さまざまなタイプの精神的な治療を受ける患者がいるなか、兄は必要以上に人に話しかける性格でした。もちろん、精神安定剤を飲んでいるため、本来の兄の性格や本望だったかと聞かれたら答えはわかりません。母が目を離した隙に勝手にひとりで病院へ行き、患者さんに声をかけたり、見ず知らずの女性に電話番号を聞いたり、「たばこをちょうだい」と言ったり。そうしたことが続き、ついに医師からの呼び出しを受け「診察中止と病院の出入り禁止」を言い渡されてしまったのです。飲み込むしかない医師の言葉実家の周りには、もちろん他に精神科はありませんでした。母は、バスや電車を使って兄の通院をサポートしなければならない。どんよりとした空気で居心地は決してよくないけれど、やっと通い慣れた病院。そんな頼みの綱から、まさかお断りをもらうとは……。もちろん、病院側の立場になれば無理もない話で、多くいる他の患者やその家族たちに迷惑がかかるのは好ましくありません。医師からの宣告に、反論する余地はありませんでした。一から病院を探し直すことにそこで長らく通った近所の精神科を横目に、バスや電車でなるべく通いやすくて兄に合うような精神科を紹介してもらうため、県内で有名な大学病院に相談しに行きました。そして、利便性、評判、入院施設の有無などトータルで好印象だった病院を紹介してもらい、切り替えることになったのです。兄と母はバスに揺られて初めての診察へ。新しい病院で緊張しながら状況を話すと、医師の口から思いがけない診察結果が返ってきましたーー。©jsmith/Gettyimages©Михаил Руденко/Gettyimages©tuaindeed/Gettyimages©Milos-Muller/Gettyimages
2018年05月05日障害者雇用枠で再就職。時短勤務を利用して、無理のない就労に出典 : 私は就労移行施設を利用し、障害者雇用で再就職しました。発達障害の診断のショックなどもあり、前職を離職してから1年が過ぎていました。ASD(自閉症スペクトラム)の障害特性で環境の急な変化が苦手なこともあり、最初の1ヶ月の間は、時短勤務にしてもらいました。これにより、フルタイムで働くという感覚を取り戻しつつ、自分の体調を考慮した就労が可能になりました。ASDである私は、自分の疲れを自覚しにくいといった特性や、人混みや雑踏でのノイズといった過敏によって消耗しやすい特性もあります。そうした特性をあらかじめ想定した上で、時短勤務を希望したのです。ただし、定着支援の支援員から、時短勤務は本来、求人票とは異なる勤務体系であるため、求人票通りに働いて欲しいというのが企業側の本音であると間接的に聞きました。私にとって、1日8時間働くことは、それほど大きな問題には感じませんでした。しかし、時短勤務が終わったらフルタイムで週5日…連日となると少し辛いなと感じました。そこで人事に、週5日のうち1日を自宅などで勤務するリモートワークを認めてもらえないか相談しました。疲れに対して鈍感な私でも、流石に木曜日くらいになると身体がだるいと感じていたからです。その際にエナジードリンクや、滋養強壮剤を飲んで対処していたのですが、どうも身体的な疲労とは異なるような気がしていました。現状、成果に対する評価が難しいリモートワーク出典 : リモートワークができないか?と相談した背景には、会社に来て行う業務が、機密情報を扱うわけでもなく、インターネットに繋がったパソコンと専用のソフトが入っていれば、自宅でも支障なく業務ができると考えたからです。しかし、現状リモートワークには、その成果に対して何時間かけて行ったのか、そもそも8時間ちゃんと働いているのか?など、そうした労務管理の問題や情報漏洩の懸念などから、導入するつもりはないと言われてしまいました。障害者として働いているのは自分のみ。職場で困ることも出典 : この会社では、障害者雇用で就労しているのは私のみという環境でした。また私が入社したのは、去年の冬のことで、2018年春の障害者の法定雇用率の引き上げを視野に入れた採用だったのかなと思います。こうした採用は今後、増えてくると思いますが、周囲が発達障害などの障害者との接し方に慣れているとは限りません。理解が得られにくいとも言える環境で、私が実際に体験した困りごとと、どう対処したのかを振り返ってみたいと思います。出典 : 例えば、イベント会場のリストを作成する仕事では、いくつ項目をピックアップするのかが分からないことがありました。そのことを聞くと、「できるだけ、たくさん」といった指示が返ってきます。そんな時「どのくらい必要か?と具体的な数を聞いているのに、どうして返答がそんなに曖昧なんだ。質問の答えになっていないじゃないか」と苛立ちを感じることがありました。私がここから得た教訓は、定型の人にとって、そもそも曖昧な指示が何なのかが分からないらしいということです。私は、普段から曖昧な指示を具体的に変えてもらうために、次のような表現を使っています。■「〜という理解でよろしいでしょうか?」私は、相手の意図を汲み取ることが苦手で、勝手に判断して仕事を進め、怒られるということがありました。それからは分からないことを分からないまま進めることはせず、確認してから進めるようになりました。■「どうすれば、もっと良くなりますか?」上記のように、方向性が間違っていないことを確認できてから、仕事に取り組みます。進捗を2〜3時間くらいで伝えます。PowerPointなど資料の作成業務は、一通り終えたら、報告して確認してもらいます。そこで「どうすれば、もっと良くなりますか?」あるいは、「他に必要な項目はありますか?」と聞くことで、「この項目が欲しいな」と指示が明確になり、私自身も安心して業務に取り組めました。また、このように聞くことによって、例え仕事が上手くこなせなくても意欲はあるというアピールに繋がるような気がします。このことについては、「質問力」について書かれた書籍も参考にしました。出典 : 私は、ASDであると同時に衝動性が高いタイプのADHDです。「〜すべき」「こうあるべきなのに実際はなっていない」といったことに対して怒りを感じることが多く、つい衝動的に相手にぶつけてしまうことなどが多かったです。例えば、先輩社員のやり方より、自分のやり方の方が効率的だと感じた際には、「(先輩社員の)そのやり方は非効率だ、こうした方が間違いなく効率的だ」と言ってしまいました。入社早々、先輩社員のやり方を真っ向から否定するような表現を直接的かつ衝動的にしてしまったのです。その先輩社員とは、にらみ合いになり、喧嘩になりかねない状況に陥ってしまいました。私は昔から、こうした衝動性の強さから好戦的な部分があるなと感じています。加えて物事を白黒ハッキリさせないと気が済まない性格です。しかし、こうした特性は外見からはわかりません。そのこともあって常識がない、先輩に対する敬意がないなど、そういう風に捉えられてしまうのではないかと思っています。上述の先輩社員とは馬が合わないことが多く、周囲には、またやっているよと見られていました。見かねた別の先輩社員からは、「悪目立ちしているから、今は不満に思っても控えた方がいい。新入社員という立場なんだから」といった指摘を受けたこともあります。■感情をコントロールする練習を現在は、そうした点を反省し、アンガーマネジメントの本を読んだりしています。また主治医にも相談した所、漢方の抑肝散(ヨクカンサン)を勧めて頂き、服用を継続しています。出典 : 障害者雇用の担当者は1人で複数の業務を兼任しています。そのため、配属先に伝わっていない障害特性について、自分で説明する必要が生じました。例えば、ADHDによる不注意傾向について伝わっていなかったので、宅急便の伝票を書く際に、先輩社員にチェックして欲しいと自分でお願いしました。こうした説明は、いつ言えばいいかタイミングが分からないのに加えて、「そんなこともできないのか」と周囲に見られるのではないかと感じました。恥ずかしさと不安が同居するような気持ちになり、かなり負担に感じました。■人事や定着支援担当から間接的に伝えてもらう人事の支援体制に関して、相談できる環境があることで、不満や要求を間接的に伝えてもらえることが個人的に一番ありがたかったです。やはり、面と向かっては伝えづらいこともあったりするので、そうした制度の存在は、心強い味方でした。上述の件も、結局、自分自身で説明することになったのですが、最初に人事から伝わっていると良かったなぁと思います。時短勤務が無くなってから…出典 : 時短勤務を経て、2ヶ月目から通常勤務に移行しました。1時間半ぐらい伸びても、さほど影響がないだろうと思っていたのですが、人間関係の緊張や、過敏による疲労は思ったよりも大きかったようです。帰ってくるとごはんを食べて、すぐに就寝せざるを得ないほど、ぐったり疲れているという生活が続きました。時短勤務の際は、夜に洗い物などができていたのですが、それすらもできなくなってしまいました。■朝中心の生活にそこで生活の基盤を変えることにしました。例えば、朝起きてからのSNSを控え、必要な情報は電車内で確認することにしたり、朝食をコンビニで済ます代わりに、洗い物と洗濯物を干すところまでを全て終わらせるなど工夫することで、一度に全てこなすのは難しくても、何とか両立ができていると思います。疲れが溜まってくると、きちんと睡眠を取ったのに朝から眠いということがありましたが、エナジードリンクや、ブラックコーヒーを飲むことで、仕事をする上ではそれほど大きな支障なくできていると思います。使いたくても使えなかった、居宅介護の家事援助出典 : 私は大人になるにつれて、こだわりが少なくなってきたり、妥協できることも多くなりましたが、今でも自分の持ち物やインテリアに関しては強いこだわりがあります。そのため常日頃から室内を清潔に、きちんと整頓された状態を保ちたいと思っていました。そこで、居宅介護の項目の一つである家事援助を利用したいと考えていました。しかし、週5日で勤務している場合、ヘルパーさんとのマッチングが上手くいかず、利用が難しかったのです。担当のケアマネージャーから聞いた話では、土日に家事援助をしてくれるヘルパーさんの登録がほとんどなく、サービスを提供するのが事実上、難しいと言われてしまいました。働いてわかったこと。障害者が輝ける働きかたは?出典 : これまでを振り返ると、障害を抱える私のような人にとっては、ある程度、業務の範囲が定まっている仕事の方がやりやすいのではないかと思います。上述したように曖昧な指示を補完して取り組む仕事は苦手ですが、パソコン操作などのハードスキル面では、それほど大きな問題を抱えているようには思いません。イレギュラーや新しく取り組む業務に関しても、きちんとした指示があれば、仕事量の調節は必要ではあるものの、遜色なく取り組めるのではないかと考えています。しかし、対人関係の構築などのソフトスキル面での課題を抱えている…。このことを採用面接の段階で伝えることが出来たら楽だなぁと思います。やはり会社という場所は、みんなとの協業、団体行動が求められる場である以上、対人関係でうまく行かない障害特性は、事前に知らせておくべきなのかもしれません。しかし、本当に入社したい会社であれば内心、求職者としては伏せておきたい情報です。ここで上手く支援員の方が障害者と会社側の担当者とを結ぶ架け橋となってくれたなら、もっと働きやすくなるかなと思います。今の障害者雇用を巡る状況では、障害を明らかにしつつも一部分を隠して採用面接に臨み、入社後に隠していた特性が出てしまう人も少なからずいるのではないかと思います。私自身も就職活動で使用したナビゲーションブックでは、衝動性の部分は触れないままでした。やはり、怒りやすいとは書けなかったからです。また、リモートワークに関しても、今後、導入が進んで欲しいなと思います。やはり刺激を受け流すことが難しいからこそ、疲れやすいという特性があることは事実です。自宅で身体や脳を少し休ませながら働くことができれば、もっと障害者が輝ける働き方が実現できるのではないかと考えています。
2018年04月29日入学や進学など、年度切り替えのこの時期は、障害があるなしに関係なく、親がナーバスになる時期。でも、発達障害のある子を持つ親にとっては、さらに頭を悩ませる時期なのではないでしょうか?通常学級、通級、支援級、支援学校…わが子が安心して楽しく通える環境はどこなのか? 親は、就学問題に長い時間と労力を費やし、時には夫婦で揉め心をすり減らしながら、やっとの思いでわが子にベストと思える居場所を決めます。でも、そんな親の努力をすべてひっくり返すような、無理解な担任の先生に当たってしまったり…。そんな思い悩むことが多いこの時期、再びNHK総合テレビで発達障害をテーマにした特番 「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」 が放送がされます。番組では、寄せられた約4000通の体験談から「感覚過敏」「忘れ物・片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」という代表的な4つのテーマを取り上げ、発達障害の当事者はもちろん、家族やその周囲がすぐに実践できる「対処法」「周囲への助けの求め方」などをできるだけ具体的に伝えていく。さらに、「困りごと」「周囲の無理解」からどうやって人生を好転させたのか、その転機をとなった方法や出会いを描くほか、栗原類さんをはじめ一般の発達障害当事者8人をスタジオに招き、一人ひとり微妙に異なる困りごとに対する対処法をトーク。「どうすれば困りごとに対処できるか」「どうすれば人生楽しくなるか」「発達障害の人とそうでない人が共存するにはどうすればいい?」などを生放送で話し合う。■「発達障害」に対する社会の認知は高まってきたけれど…ここ数年で、発達障害に対する社会の認知は高まって、園や学校ではずいぶんと理解が進んだように思います。でも、当事者や家族の目線から見ると、依然としてサポート体制が不十分で必要な配慮が受けられなかったり、相談したはずの困り事が放置されたままだったり、個々人の対応はまちまちだったり……まだまだ難しいと感じることが多いのが現実です。今回の特番担当プロデューサーからも、「これまで発達障害については何度も放送してきましたが、無関心層へのリーチはまだまだだと感じています。しかし、そうした層に届かない限り当事者の困り事は解決しないため、繰り返しを恐れず伝えたいとも思っています」とメッセージをいただきました。これ、まさに、その通りだと思うのです(冒頭でお話した、すべてをひっくり返すような無理解な先生がいることもしかり)。でも、みなさん、日々自分の生活でいっぱいいっぱい…。当事者や家族でない限り、「大変そうだけどよくわからない」とか「障害を言い訳にしてない?」などとスルーされてしまうのも仕方ないことなのかもしれません。■自分が生きやすくなるためには「相手のことを知る」が一番の近道そんな私も、息子が自閉症スペクトラムと診断されるまでは、「大変そうだけど、結局よくわからない」の人でした。障害について理解する前は、「親子でがんばればなんとかなる!」などと、ワケのわからぬ根性論で発達障害を改善しようとしていた時期もありました。そして、息子に無理強いをさせては、それが自分に跳ね返って、ますます自分自身がイライラしてしまう、そんな悪循環に陥っていました。結局、無理解は相手だけでなく、まわりまわって自分自身をも辛い状況に追い込んでしまうのです。私は、息子を通して、「基本的に人(子ども)を変えることはできない」という当たり前のことを改めて思い知りました。相手(子ども)に自分の価値観を強いることは、トラブルと双方のストレスのもと。喜びや苦しみは現実と期待とのギャップで生まれ、相手(子ども)にできないことを求める行為は、結果、自分に対するストレスを生むことになります。■「発達障害の人のため」ではなく、「自分自身のため」にちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の放送、「発達障害の人がより生きやすくなるために」というような道徳的な視点よりは、むしろ、「自分自身がより生きやすくなるために」という自分視点で見た方が、より幅広い方々に響くのかもしれません。発達障害は、今や40人学級で2~3人の割合でいると言われているほど。子どものクラスメイト、親戚、会社、ママ友仲間にも、障害とまではいかなくても、グレーな方を含めれば「もしかして…?」と思われる方も少なくないでしょう。もはや避けては通れない問題です。「なんであの人は、いつもあんな嫌な言い方をするんだろう?」とか「どうしていくら説明しても、あの人には話が通じないんだろう?」など、あなたが苦手に思っている人との、上手な付き合い方のヒントが得られるかもしれません。また、番組で語られる、コミュニケーションが苦手な方や生きにくさを感じている方が、自身の人生を好転させるために編み出したノウハウには、私たちの生き方にも参考になるところがあるのではないでしょうか?今回、私は、息子のためではなく、自分のためという視点で、番組を見たいと思っています。文:まちとこ出版社N【NHK 発達障害プロジェクト】超実践! 発達障害 困りごととのつきあい方放送日時:2018年4月30日(月・祝)午前8:15~9:59 NHK総合テレビMC:中山秀征さん、近江友里恵アナウンサーゲスト:栗原類さん(「あさイチ」で自分が発達障害であることを告白)ほか、発達障害のご本人(一般の方)8人と専門家
2018年04月28日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。初めてできた彼氏に家のことを聞かれた私は、いつもの笑顔が消えて言葉が詰まってしまいました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 13彼と過ごす時間は特別同じバイト先で働く、4つほど歳の離れた定時制に通う彼。大きなバイクで学校まで迎えに来てくれて、そのまま彼の家で過ごしたり、バイト先のお店まで送ってもらったり。自宅からすぐの距離に住んでいたこともあり、私たちは毎日のように会っていました。彼は、校内の様子は知らないし、私の同級生とも特に接点はない。この距離感が、私にとっては気が楽だったので、普段学校の友人や家庭内では見せることのない、素直に甘えられる “本当の自分” に戻ることができていました。「家族について教えてよ」しかし、行く場所といえば常に彼の実家。私の実家は、友だちですらあがったことがありませんでした。兄が家にいるので、むやみに人を連れていって兄が安易に話しかけたりすることがイヤだったからです。高校生にもなれば、友だちと “お泊まり会” もよくあると思いますが、私の家には1回も呼んだことはありませんし、来て欲しくもありませんでした。とはいえ、1年以上も交際していれば、彼は「なぜ心音は自分を実家に招くことを嫌がるのか」、知りたがるようになったのです。「俺は実家に呼んでいるし、両親や兄弟にも心音のことを紹介してるのに……」と不満そうな顔を見せては、「まあ、いいけどさ」と半分諦めモード。「お父さんが厳しいから、彼氏がいるのは秘密にしたいんだ〜」と、適当に理由を言っては心の中で「お願い、触れないで」と叫んでいました。「俺の兄も、精神安定剤飲んでたよ」けれども、なんで私がそんなに実家がイヤなのか、ふとしたタイミングで言ったことがありました。「実は、私のお兄ちゃんずっと家にいるの」と。詳しくは告げず、「心の病気があって、家にいるんだ」とだけ説明したのです。彼の反応は、「そうなんだ、もっと早く話してよ〜。そんな気にすることじゃないよ。俺の兄も、前精神安定剤飲んでたし」という言葉。少しだけ安心したと同時に、「でも彼のお兄さんは、ちゃんと働いてるじゃん」。正直、精神安定剤を飲んでいたり、精神科にカウンセリングを受けたりという人は、表立って言わないだけで、多くいると思います。障害者手帳を持つまでは至らなくても、心のバランスを保つことが難しく、仕事をしながら精神科に通っている人は決して珍しい話ではありません。でも、私の兄は、働くなんて到底無理。会話でさえも成立させるのが難しいのですから。同じように心の病を抱えていても、彼の兄と私の兄では、雲泥の差がある……。彼との認識のズレに心がチクチク痛みました。……「やっぱり、実家に来ることはやめて欲しいな」という言葉しか出てきませんでした。通院していた病院先でその頃、近所の精神科に通院していた兄は、病院で開かれるデイサービスやイベントにも参加していました。病院に通っている患者はもちろん他にもいます。気さくに人とコミュニケーションしたがる人、自分の殻にこもって人とは接したくない人、家族とは話すけど医師には口を閉ざす人。さまざまな人々がいました。兄は、家から歩いてすぐだったその精神科に、診察やデイサービス以外にも勝手に足を運ぶようになっていきました。そこで、“ある問題”を起こしてしまいます。©petrenkod/Gettyimages©PeopleImages/Gettyimages©kitzcorner/Gettyimages©sudok1/Gettyimages
2018年04月25日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。精神障害者保健福祉手帳の2級を発行された、兄。両親でさえ、この状況を受け入れることに時間がかかりました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 12直視できないのは、私だけではなかったこの連載を読んで、兄の凄まじい変化に胸が痛んでいる方もいらっしゃると思います。その胸の痛みは、当時の私たち家族が感じていた紛れもない事実。妹である私ですら、この現実を直視することができずに心をかたく閉ざしていったことを今でも覚えています。そして、両親はさらに苦しい気持ちだったと私は想像しています。なぜなら、障害者手帳が発行された後も両親は、兄のことを周囲に言わなかったからです。この事実を隠していました。冷たく鋭い世間の目唯一両親がこの事実を話していたのは、祖父母と両親の兄弟のみ。本当に近い身内だけが知っていました。両親が仲良くしている古くからの友だちや知り合い、近所の人などは兄がこのような経緯を辿ったことは知りません。「世間体なんて気にしなくても良いじゃん」という意見もあると思いますが、この話をしたことで私たちが得るのは、多くの人からの「かわいそうだね」「大変だったね」と哀れみや同情の言葉だけ。兄が良くなるわけではありません。たとえ遠い身内だったとしても必要以上に兄の話をするのは、余計に私たちがストレスを抱える原因にもなったので、両親もなるべく内密にするようになったのだと察しています。また、よくある “親戚の集まり” のようなものも、兄が迷惑をかける可能性があるため、ほとんどうちにはありません。物心ついた時から結婚式やお葬式、法事などは両親のみが参加。兄は参加しないのが家族のなかでの暗黙の了解でした。“諦めと守り” の意味を理解する兄の回復を切に願っていた両親ですが、明るい兆しは一向に訪れる気配がなく、苦渋の決断をして、障害者保健福祉手帳を申請しました。これは、仕方のない選択でした。しかし、この決断は、デメリットだけではありませんでした。精神障害者保健福祉手帳の2級を発行された兄は、障害者年金として2か月に1回、国から13万円の援助金をもらえることになり、病院の診断や薬代の負担が軽くなったのです。また、交通機関が無料になるなど、地域によって異なるものの、待遇を受けられることに。こうして時間はかかったものの、「障害者」になることを選んだことで、兄を守ることができた。そう考えると、非常に前向きな選択だったと言えることでしょう。今となっては “生活の一部” となっているこの状況も、当時の両親からすると “ギリギリまで諦めたくなかった” というのが本心だと思います。なぜなら、もっと早い段階で障害者手帳を手にすることができたから。8年粘り続けてやっとの思いで申請した。これが、両親の決断だったと思うと、私は深い拍手を送りたいと心から感じています。その頃、私は初めて彼氏ができたこの頃、私は高校生。地元の飲食店でアルバイトを始めた私は、同じバイト先の年上男性と距離が近くなっていました。高校2年生から付き合い始めて、1年半か2年近く一緒にいました。第一希望の高校を落ちた私は、特に楽しみを見いだすことができずにただ通っていた高校生活と、冴えない家庭の間に挟まれて、バイトで元気に働くことが唯一楽しい時間でもありました。家も自転車ですぐ近くの彼。一緒にいる時間が長くなるにつれて、言葉が詰まる質問。それは、「心音の家族って、どんな感じなの?」という話題でした。好きな人に一番聞かれたくないことだったのです……。©laflor/Gettyimages©c11yg/Gettyimages©undefined undefined/Gettyimages©Toru-Sanogawa/Gettyimages
2018年04月18日障害のある方の「働く」を応援する、LITALICO仕事ナビがオープン!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)働くことに障害のある方と、就労支援事業所(就労移行支援事業所・就労継続支援A型事業所・就労継続支援B型事業所)を繋ぐ情報サイト、「LITALICO仕事ナビ」が、2018年3月26日にサービスを開始しました。LITALICO仕事ナビでは、全国の就労支援事業所の情報を分かりやすく掲載するほか、障害のある方が受けられる支援の利用方法や就職に向けた実践的なノウハウを紹介する専門家監修記事や、就職者インタビュー・企業インタビューといったコンテンツを幅広く発信していきます。障害のある方一人ひとりが、自分のニーズに合った事業所を選ぶことができる情報プラットフォームをつくることで、誰もが自分らしく働くことのできる社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)障害がある方の「働く」を取り巻く社会の課題は?LITALICO仕事ナビ、サービス開始の背景そもそも、障害のある方の「働く」を取り巻く状況はどのような状況なのでしょうか。また、就労移行支援をはじめとした、障害のある方の「働く」を支援する事業所の運営状況は、現在どのような課題があるのでしょうか。この記事では、「LITALICO仕事ナビ」のサービス開始の背景となる社会課題や、運営スタッフの思いをご紹介します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)運営スタッフ プロフィール:鈴木悠平(写真左)2014年に新卒として株式会社LITALICOに入社。LITALICOジュニアの指導員として、発達が気になるお子さんや保護者の方々の学習・生活支援を経験したのち、LITALICO研究所の立ち上げ・事務局長を担当。現在は国内最大級の発達障害ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」編集長としてコンテンツ制作を統括するほか、LITALICO仕事ナビ創刊編集長としてコンテンツの企画・制作を推進。昆野祐太(写真中央)2012年に新卒として株式会社LITALICOに入社。「LIALICOワークス」支援員として、障害のある方一人ひとりの就労・定着の支援を経験したのち、延べ4センターでのセンター長・新規開設を担当する。現在は、LITALICO仕事ナビの地域連携担当として、全国各地の就労支援事業所を訪問。勝俣友紀子(写真右)2016年に新卒として株式会社LITALICOに入社。子育てメディアConobie(コノビー)の企画営業職を経て、2017年よりLITALICOワークスの新規センター開設チームへ。主にご利用検討者さまの初回相談面談(年間300名ほど)と地域連携(関係機関訪問、セミナー講師)等を担当。障害のある方の就職者数は年々増えており、昨年は47万人以上が民間企業に雇用され、13年連続で過去最高を更新しています※1。また、今年は4月に障害者雇用促進法が改正され、企業の障害者法定雇用率が現行の2.0%から2.2%に引き上げられるなど、障害のある方の雇用に対する企業の関心も、年を追うごとに高まっていると言えるでしょう。株式会社LITALICOは、就職を目指す障害のある方のための就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を全国で運営しており、これまでに5,000名以上が企業への就職を果たしています。こうした障害のある方の「働きたい」を支援するのが、障害者総合支援法に定められた就労系障害福祉サービス(就労移行支援事業・就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)です。これらの事業所は2016年10月時点で全国に17,000近くあり、3年前と比べて約 1.4 倍に増加しています※1。ところが、障害のある方の就労・雇用への関心の高まりや、障害のある方を支援する事業所数の増大にもかかわらず、実際に就職を目指す障害のある当事者にとっては、必要な情報が十分に届いていない、自分にあった支援にたどり着くことが難しい、という課題が残っています。※1 厚生労働省「平成28年 障害者雇用状況の集計結果」よりUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)LITALICO仕事ナビが昨年12月に就労支援事業所を探したことのある方(877 名)を対象に実施した調査では、就労支援事業所を探すにあたり困ったこととして、8割以上(81.4%)の方が、「自分にふさわしい事業所の探し方がわからなかった」の項目に「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答しました。※2また、就労支援事業所をどのように探したかという問いに対して、「パソコン(PC)で検索した」の項目に 「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答した方が最も多く、6割以上(64.5%)に上っています。※2しかし、就労支援事業所としては、インターネットでの情報発信には費用や手間がかかることや、現利用者への支援で手一杯になってしまうなど、新しい利用者を集めるための活動が難しい状況にある場合も少なくないようです。厚生労働省の調査によると、就労移行支援事業所の7割弱は定員に達していないというデータもあります。※3就労支援事業所は、それぞれが特色のあるサービスを提供しているものの、利用を希望する方にとって、どの事業所が自分に合った事業所かを探す手段に乏しいのが現状と言えるでしょう。※2 LITALICOプレスルーム掲載、LITALICO仕事ナビ実施の調査より※3 厚生労働省 「平成 28 年 社会福祉施設等調査の概況」よりプレスルーム: 働くことに障害のある方と就労支援事業所をマッチングする情報サイト「LITALICO仕事ナビ」を2018年3月開始Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)昆野「私はこれまで、LITALICOワークスの複数のセンターで就労支援に携わるなかで、さまざまな特色ある魅力的な事業所さんと繋がってきました。障害のある方の就労に向けたニーズや、必要とする情報や支援の性質は一人ひとり異なります。LITALICOワークスに限らず、お住まいの地域にあるさまざまな就労支援事業所を比較検討し、ご自分に合った支援に繋がってほしいという思いがありました。ですが、障害のある方も、そもそもどうやって就労支援事業所を探して良いのかわからなかったり、事業所の運営者さんたちも、日々の支援と、地域への情報発信をなかなか両立することが難しいという課題もあるようです。今回、LITALICO仕事ナビのオープンに先立ち、さまざまな事業所さんと意見交換をさせていただいていますが、インターネットでわかりやすく、多くの当事者に情報を届けていくことの重要性は、多くの方が実感しておられました。LITALICO仕事ナビを通して、多くの事業所さんに、事業所の特色や、支援に対する想い、プログラムの内容などを発信していただきたいと思っています。」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)勝俣「LITALICOワークスの新規拠点開設担当として、各地で障害のある方向けの就職相談会を行うなかで、忘れられない一言があります。精神障害のある当事者の方に、就労移行支援サービスについてご説明した際、「あと1年早く、こんな支援制度があることを知りたかった。そうすれば私の人生はもっと変わっていただろうに…」と言われたんです。その方は、精神障害によって以前の仕事を辞め、病院での治療を受けたのちにご自身で就職活動を始められたそうです。しかし、ご自分の障害について企業にどう説明すれば良いか、ご自分の症状や体調に合わせて働けるにはどのような仕事・企業を選べばよいかといった、障害のある方の就職活動におけるノウハウを持たれないなか、なかなか内定を得ることができませんでした。一年間、就職活動を続けるなかで、貯金もだんだんと減っていき、また一緒に暮らすご家族の健康状態にも変化があり…と、再就職に向けた"溜め"がなくなっていくなかで、就職に対して希望が持てない状態に陥ってしまっていたのです。障害のある方が就労に至る方法はさまざまですが、ご自分の環境や願いにあった選択をするためにも、適切な「情報」を得ることや、就職活動に伴走する「支援者」に繋がることは、とても重要だと感じています。あの日お会いした方のように、情報や支援に繋がることが出来ず困っている方は全国にもっとたくさんいるのではないか…こうした状況をなんとかしたいという思いから、LITALICO仕事ナビの立ち上げに携わっています。」LITALICO仕事ナビのサービス概要「LITALICO仕事ナビ」は、働くことに障害のある方と、障害のある方の「働きたい」を支援する就労支援事業所双方の課題を解決するプラットフォームです。障害があり、仕事を探しているユーザーの方々は、LITALICO仕事ナビ上で多くの事業所情報を閲覧・比較することができ、現利用者の障害種別や施設運営のこだわりポイント、就職者実績などを調べることで、ご自分の状況に最適な就労支援事業所を選んでいただきやすくなります。また、障害のある人の「働きたい」を支援する、就労支援事業所の方々は、LITALICO仕事ナビ上で自身の事業所紹介ページを設けることができます。ページ運営や問い合わせ管理をLITALICO仕事ナビ上で一括して対応することが可能となり、事業所を探す新規利用者の方々への情報発信に必要な時間や費用を減らし、現在の利用者の方々への支援に一層注力できる環境を提供します。LITALICO仕事ナビのサービスを通して、障害のある方、就労支援事業所双方のお悩みを解決し、一人ひとりが自分らしく働ける社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)撮影: Junichi Takahashi
2018年03月26日LD(学習障害)とは?LD(学習障害)は、全般的な知的発達に遅れは見られないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力の1つ以上の習得や使用に困難がある状態のことです。イラストや例でLDの全体像が分かる『LD 学習症(学習障害)の本』筑波大学教授で発達行動小児科学を専門とする宮本信也先生が監修している本です。裏表紙に ”きちんとした対応、サポートで、LDの子供たちの生きにくさは、ぐぐっと改善されるのです”とあるように、当事者だけでなく広くLDを知ってほしいという思いが込められています。内容は「LDとは」「ウチの子がLDだったら」「LD教育とは」という3章に分かれ、イラストと短い文で構成されています。第1章ではLDの特徴や具体例が挙げられています。鏡文字を書く、似た文字を判読することが苦手、数字の繰上りができないなど、子どもの行動と照らし合わせやすくなっています。また、その行動が引き起こすトラブルについても書かれているので、心当たりのある人もいるかもしれません。第2章ではLDのサインや相談先、接し方などが説明されています。LDは育児に問題があったのか、子供にLDについて聞かれたらどうすればいいかなど、さまざまなケースを想定して解説がされています。どのようにサポートしたらよいか悩む保護者に寄り添う内容です。第3章ではLD教育へと話は変わり、LDのある子どもを持つ親が不安に思う学校の体制などが分かります。特別支援学級など、聞いたことはあっても具体的なことは分からない……というサポートについて知ることができ、LDの子供の将来を考える希望となります。全体を通してフラットな語り口で、分かりやすく解説されています。1時間程度で読み終わるボリュームですが、一通りLDについて理解することができます。LDとの付き合い方が分かる『怠けてなんかない!ゼロシーズン』国際ディスレクシア協会会員で教育ジャーナリストでもある品川裕香さんの著書です。ディスレクシアとは「読み書きのLD」とも言われます。文字と音が結び付きにくく、読み書きに困難が生じるのが特徴です。この本ではディスレクシアの特徴やものの見え方感じ方、さらには苦手を緩和する訓練についても書かれています。前述の『LD学習症(学習障害)の本』よりも少し踏み込んだ内容です。日本語の音韻ルールや脳の情報処理システムなど、より専門的な解説が多いのが特徴です。言葉を聞く力が弱いなら音韻を意識して手を叩く遊び、見て覚えるのが苦手なら神経衰弱ゲームを取り入れるなど、子どもの苦手に合わせた数十の訓練も紹介。苦手、分からない、難しいで終わらず、それを緩和して生きやすくする方法がわかるため、安心につながります。子どもの苦手をサポートしたいのに何をすればいいのかわからない。苦手をイメージできずどう声をかけてよいかわからない。不安や焦りで感情的になってしまうときこそ読みたい一冊です。“どの子もみな、「できないこと、苦手なことが少しでもできるようになりたい」と願っています”ディスレクシアを個性だからと放置するのではなく、苦手を緩和し社会での不自由をなくしてあげたいと考える著者のメッセージに勇気づけられます。親の手記に共感『ぼく、字が書けないだけど、さぼってなんかいない』LDやディスレクシアの概要や特徴が分かる上記2冊と異なり、この本は親たちの手記を中心として編まれた本です。LDを含む読み書き困難を抱えた発達障害の子供たちの苦労、そしてそれを目の当たりにしている親たちのリアルな苦悩が伝わってきます。編集したのは窪島務先生をはじめとするNPO法人滋賀大キッズカレッジの手記編集委員会。ほかの先進国と比較すると、日本は読み書き障害のある子どもへの対応が遅れていると窪島先生は語ります。LDの子を持つ親が抱く思いや願いをまとめ、学校や行政の理解とサポートを訴える本です。本書の半分を占める親や本人の手記は、切実な思いであふれていました。子供の声を聞かない先生、こころない言葉を浴びせる周りの親たち、保護者とのかかわりを避ける学校…読むだけで心が張り裂けそうになります。でも、もちろんつらい話ばかりではありません。担任が代わったことがきっかけで学校へ行けるようになった子供もいますし、LDに理解を示す友達ができたことで学校生活が楽しくなった子供もいます。そしてキッズカレッジに救われた親たちも。「もしかしてLDかも」と思った段階で読むには少々苦しい内容かもしれません。LDをとりまく親子の現実に不安と戸惑いを覚えるかもしれません。ですが、そんな現実を知ることで漠然とした不安ではなく、子供とともに何をすべきなのかを考えることができます。本人や親の生の声は多くのことを教えてくれます。会ったことはなくとも、先輩として仲間として励ましてくれているように感じることができそうです。一通り知識を得た後に読むと心に響きます。LDを受け入れ、ともに生きていくことを考えるとき、味方になってくれる一冊です。まとめ「うちの子はLDかもしれない」と思ったときに手に取りたい3冊を紹介しました。どの本も専門的な内容ではあるものの、LDについての知識がなくても読みやすく、分かりやすい文章で書かれています。すらすらと頭に入ってくるので、読み終わったときには「子どもと話してみよう」「本に書いてあったアレをやってみよう」とポジティブになれるでしょう。いずれも、LDのある子どもとのつきあい方や、サポートのヒントが詰まった本です。
2018年03月25日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 兄のサポートに必死な両親を横目に、私は少しずつ家族と距離を置くようになっていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 7自分が悪いくせに、なぜそんなに……?前回のお話はこちらをどうぞ。今こうして振り返ってみると、将来がある兄のことを「なんとか更正させたかった」という親心がわかります。しかし、当時の私からすると、兄を一生懸命サポートする意味がまったくわかりませんでした。自分で人間関係を崩し、自分で学校で悪さをして、自分で崩壊させ、高校退学になった。「知り合いに会いたくない」と言い張り、自分の部屋から出ない。「そんなの、完全に自業自得でしょ?」と冷たく兄を見ていた私は、成長するにつれてさらにその想いは強くなっていくばかりでした。兄だけいろいろなところに連れて行ってもらって、好きなものも買ってもらえる。ちょっとワガママを言えば、両親は兄をそこに連れて行く。それをして何の得になるのか? 兄は調子に乗るだけじゃないの? と、なんだかバカらしいな〜なんて、子どもながらに思っていたことを記憶しています。家に帰らない日が続くようになった小学校から始めていた金管楽器。それは、私の心の支えでした。中学になっても私は吹奏楽部に入り同じ楽器を続けます。しかし、だんだん練習をサボり、帰宅も遅い時間に……。特に悪さをするわけではなかったけれど、単純に「荒れ果てた家」に帰りたくなかったのです。どうせ帰ったって、母は兄につきっきり。“自分の世界” に入る兄は、突然笑い出すし、いきなり話し出す。いっぽうで両親は、兄についてこれからどうしていくのか? という話題ばかりで、私のことなんてどうでもよさそうでした。気づけば、夜まで遊んでそのまま友人の家に泊まるというサイクルができていました。両親から夜電話がかかってきても、無視して干渉を避けていきます。そのほうが、気が楽だったから……。ある時、腕を掴まれて呼び止められるそれは、ある日のことでした。学校から帰宅する途中で、近所の人にいきなり腕を掴まれたことがありました。「ねえ、あそこのお家の娘さんだよね?」「最近、お兄さん昼間も家にいるけどなんでなの?」と。突然のことすぎてハッとしましたが、気づけば兄の行動は確かに “変” でした。普通なら、朝学校に行き、部活をして帰ってくるはずの年齢ですが、ずーっと家から出ないからです。そして、外出している姿を見かけても、母と一緒。昼間から公園に行ったり、ショッピングセンターで買い物をしたり。確かに周りからしたら、学校に行かずに遊んで暮らしているように見えたのでしょう。世間体を気にするのか? それとも…。その腕を掴まれた時、私はとっさに「え? 知りません。関係ないので」と言い放ちました。その頃から、私はくだらない “世間体” に嫌気がさしていました。わざわざ私を呼び止めてまで、人の家庭事情を詮索するなんて本当にいい迷惑だと思っていました。本人たちが一番パニックになっているのに、その様子がどのような状態なのか根掘り葉掘り聞こうとしてくるとは……。それをネタに今日も井戸端会議? 本当に、やめてほしい。また、兄の退学を知った近所の人たちのなかには、お世話を焼くつもりだったのか、ただの批判なのかわからないけれど、ヤジを飛ばしてくる人も。そんな不愉快な日々は日常茶飯事で、私はだんだん「家族とは関係ない」フリをし始めたのです。家族の話は、私にとってタブー。「兄弟いるっけ?」と聞かれても、「いないよ〜、ひとりっ子」と適当に言って、私は心をかたく閉ざしていました。もう誰も心の中に入ってくるな。しかも、私はこのあと、衝撃的な事実を知ることになるのです。(C)martin-dm/Gettyimages(C)finwal/Gettyimages(C)ColobusYeti/Gettyimages(C)max-kegfire/Gettyimages
2018年03月18日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 母はパートをやめて、兄につきっきりになっていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 6精神年齢は中学生のまま止まっていた一般常識や人間関係のルールを覚えるのに、効率が良い環境。それは「学校」です。当時、私が中学生だった頃はわかりませんでしたが、「学校」という小さな世界で揉まれることで、さまざまな学びがあることを大人になって深く感じています。多少、先輩後輩の煩わしさがあったり、部活が大変だったり、授業がつまらなかったりしても、「学校」にはとても大切な面があります。義務教育が終わっても、「学校」には行く意味があると、私は感じています。そのことを痛感したのは、兄が部屋から出なくなっていった頃からでした。同年代の友人たちは、月日と共に修学旅行やキャンプ、運動会、合唱祭など「学校」でしか味わうことができない集団生活を経験します。しかし、兄は自分の部屋から出ようとしませんでした。たまに外出しても、帽子を深く被り「知り合いには会いたくない」の一点張り。兄の人生は “中学生卒業” の思い出でストップしました。一般常識をこれから身につけていくであろう時期に、吸収する機会が極端に減ったのです。アルバイトをしてお金を稼ぐ同級生そして、高校生になれば「短期バイトOK」「高校生歓迎」の募集要項をみて、アルバイトをし始める同級生もいました。田舎だった地元では、高校生の時給は750円程度。それでも、1日5時間働けば、3750円になります。1万円稼ぐにも根気は入りますが、それでもアルバイトをしながらお小遣いを貯めて、休みの日に友だち同士で集まって花火大会に行ったり、彼女ができればデート代に回したりもできるでしょう。しかし、兄のアルバイト経験は、高校を退学させられる前に少しだけコンビニで働いていただけです。“数万円” を稼いだ経験が最後の兄は、そこから社会とかけ離れていくいっぽうでした。「お金がなくても、生きていることに意味がある」というのは、嘘だと思います。とても冷たい言い方かもしれませんが、キレイゴト抜きでお金がなければ何もできません。兄は働く場所もない。しかし、ご飯は通常の人間と同じように食べます。部屋から出なくなり、未来に何がやりたいかもわからない。そんな兄のお金はもちろん全て親まかせでした。母のサポートは「思い出づくり」だった私の両親は共働きでしたが、母は兄の引きこもりを心配して、ある日仕事をやめてきました。確かに働いていたほうがお金を稼ぐことができますが、母が仕事をやめた理由は「兄に思い出を作ってあげるため」だったのです。母に当時のことについて聞いてみたところ、「一般常識が作られる時期に、お兄ちゃんは家に引きこもっていたから、収入は減っても一緒に時間を過ごすことに注力した」と言います。動物園や映画、コンサートに行ったり、神社で兄が元気になるようにお参りしたり。季節の行事を楽しむために、ビニールシートを敷いてお花見をしたり、兄のために新しい洋服を買いに行ったり。兄が行きたいと興味を示した場所には、すべて連れて行ったと言います。しかし、兄は両親以外とは人間関係がまったくなかったため、「人と接すること」をどんどん忘れていきました。周りに気配りがまったくできず、大きな声で「あれが欲しいー!」と幼児のようにワガママを言ったり。ドタドタ歩いてズボンが下がってきても、兄は平気な様子でした。ヨダレが垂れて、独り言をブツブツ言い始める兄にとって自分を守る唯一の方法だったのかもしれませんが、「自分の世界」に入り込むようになっていったのです。まるで小さな幼児のように、ご飯を食べても全部口に入れずにボタボタと落としたり、洋服に平気でこぼしたり。ヨダレが垂れてもぼーっとしているだけで、母が拭いてあげる日々。気づけば独り言を言いながら笑い、誰と話しているかわからない。「お兄ちゃん、誰とお話してるの?」と母はいいながら、それでも思い出づくりをやめませんでした。あんなに「人気者だった兄」が、いつの間にか「見て見ぬ振りをされる人」に変わっていったのです。そんな兄と、さらに母は格闘します。ずっとあの人気者のお兄ちゃんに戻ると信じて。(C)maroke/Gettyimages(C)AzmanL/Gettyimages(C)fstop123/Gettyimages(C)sdominick/Gettyimages
2018年03月15日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 暴力的だった兄は、次第に家から出ない状態に変化していきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 5高校退学後、兄は急に内向的になった大声をあげながら夜中に帰ってきたり、学校では “ヤンキー系” でヤンチャをしたりしていた兄。しかし、高校を退学させられた後は、だんだん世の中のギャップに気づきだしたのか、家から出ない日々が続きました。もちろん、中卒扱いで働く場所もない。外に出れば、好奇の的。だからといって、新しい予備校に行くという意欲もない……。母は「中学生までは、自慢の子供だった」と言います。運動神経が良く、足も速くていつもリレーの選手。ルックスもよくてオシャレが好きだった兄は、ファンクラブができるほど人気だったからです。それだけに、急に高校からいなくなった “人気者で目立つ兄” の噂は、瞬く間に広がっていきました。そして、自分の悪事に対して後から反省し始めたのか、兄は知り合いに合うたびに引け目に感じるようになっていきました。2階にある兄の部屋は、孤立していた両親は、兄の将来を考えて進路を応援する取り組みをしていましたが、兄は乗り気ではありませんでした。それどころか、部屋から出なくなっていったのです。基本的に部屋のドアを開けるのは、トイレのみ。歯磨きもしない、顔も洗わない、お風呂も入らない。ご飯を用意しても、リビングには来ない。同じ服を何日も着て、布団から出ないんです。「ねえ、お兄ちゃん、お風呂入ってスッキリしたらどう?」と母は、怒ることなく自分の部屋に何日も引きこもる兄に声をかけていました。「ご飯ができたから、リビングにおいで」と呼んでも出てこなければ、母は兄の部屋の前に、お味噌汁やご飯、焼き魚をトレーに乗せて「ドアの前に置いとくから、食べてね」とひと言。数時間経って、そーっと2階の階段を上ってトレーのご飯が減っていれば、片付ける。その繰り返しの日々が続きました。両親は無理に部屋から連れ出そうとはしませんでした。自分が撒いた “種” は、荒れ果てていた正直、兄に関して父より母のほうが献身的だった気がします。自分がお腹を痛めて “産んだ子” だからなのか、母はいつも兄の味方でした。見ていて苦しくなるくらい……。父は仕事から帰ってくると、たまに「疲れて帰って来ても、家の中では休まらんわ」と愚痴をこぼすこともチラホラありました。「知り合いに会いたくない」と兄がいっても、「お前が撒いた “種” だろ?」と冷たく言い返すこともありました。まさに、私は父が言った通りだと思います。“撒かない種に、芽は出ない” とよくいいますが、自分が撒いた後の畑には、必ず何かしらの “芽” が出ます。兄の畑は、荒れ果てていました。まるで、水のない乾燥した状態を耕さずにそのまま放置し、雑草が生えてぐちゃぐちゃになった畑。それは、兄が撒いた “種” の結果だったのです。そんな状況をなんとか打破するべく動いたのは、やはり母でした。パートをやめ、次のステップに踏み出しますーー。(C)RyanKing999/Gettyimages(C)yigitdenizozdemir/Gettyimages(C)Xander_D/Gettyimages
2018年03月11日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。発達障害の当事者の声については、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:677名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては677名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、保護者約700人の声出典 : 「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、学齢期を中心とした発達障害の女の子の保護者677名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。小学生を中心に、幼児から中高生までの女の子の保護者が回答Upload By 発達ナビ編集部発達障害があることに気づいた年齢やきっかけは?Upload By 発達ナビ編集部お子さんの発達障害があることに気づいた時期は、就学前が約60%、小学校低学年が約20%となっています。気づいたきっかけは、1歳半健診など健診時(21件)や、幼稚園・保育園の先生(10件)からなど、専門家や先生からの指摘という回答がありました。他に目立ったのは、「言葉の発達の遅れ」(47件)によるものです。「発語が遅い」「単語のみで会話にならない」など、言葉の発達について保護者が疑問・不安を持ち、医療機関を受診したり専門家へ相談したという回答が寄せられました。就学後のきっかけとしては、学校でのトラブルのほか、不登校(23件)などがあげられました。また、癇癪や多動、こだわりの強さ、友人関係のトラブル、てんかん発作などがきっかけという声もありました。約40%が二次障害を発症しているUpload By 発達ナビ編集部発達障害特性を原因とした二次障害を発症している割合は約40%でした。二次障害で多くあげられたのが「不登校」(111件)です。続いて「うつ」(35件)、「不安障害」(17件)、「自傷」(13件)という回答でした。不登校とうつ、不登校と自傷など、複数の二次障害があるお子さんも多いようです。他に「反抗挑戦性障害」「ゲーム依存」「睡眠障害」「緘黙」などを発症した例もありました。また、特性である聴覚過敏などがひどくなった、ストレスでじんましんになった、クラスで孤立したという声も寄せられました。歳でアスペルガーと診断。二次障害で苦しむ娘を想い考えること90%以上の子どもが、不安や困難を感じているUpload By 発達ナビ編集部保護者から見て、日常生活に不安や困難を感じていると感じられたお子さんは、回答したご家庭90%以上に上りました。では、どのような場面で困難を感じているのでしょうか?Upload By 発達ナビ編集部保護者からみて、園・学校生活(76%)で不安や困難があると感じられることが一番多く、友人関係(72%)、学習面(53%)と続きます。具体的にどのような不安・困難を感じているのでしょうか?次に、具体的な回答内容を紹介していきます。女の子の発達障害、保護者から見た不安や困難の具体的な内容とは?出典 : 園・学校生活では、下記のような困難やトラブルがあるようです。■一斉指示に従えない■切り替えがうまくできない■トラブルがあっても大人に伝えられない■忘れ物が多いエピソードとしては、次のような例があげられています。「一斉指示が入りにくい」「高学年になると、先生も説明が簡単になり、理解出来ず泣いて固まる」「耳からの情報を捉えにくいため、先生からの指示を聞き逃して注意を受ける」など、一斉指示や口頭指示などが理解できない・気づかず、集団生活にうまくなじめない例。「給食、遊び、散歩など決まったスケジュールに沿った切り替えができない」という例。「何があったのか 誰が何を言ったのかを 明確に教えれないので発覚が遅れる」など、トラブルがあっても大人へうまく伝えることができない例。「ハンカチ、ティッシュの予備は登園するリュックの中にある事を知っているのに、(必要になった時に)どうしていいかわからず、スモックで拭いたり友達や先生に借りたりしている」など、忘れっぽいことや、場面に応じた対応が不得手なために困惑してしまう例。上記のような困難やトラブルから叱られることが増え、自己肯定感が下がってしまうお子さんもいるようです。中には、不登校や場面緘黙など二次障害を発症する場合もありました。「学校で声が出せない。後ろから誰か来ると動けなくなるためスイミングでも急に沈む。運動会で動けなくなる」「私立中学に通学していたが、コミュニケーションの取り方がうまくいかなかったり、誤解をされたりしたことで孤立ぎみになったため学校をやめて、本人が興味を示していた海外に留学させている。しかし現在、言葉の壁にぶち当たっている真っ只中で、閉鎖気味になってきた」不登校などの二次障害を発症する前に、対人関係や集団生活のフォローが必要になると考えられます。出典 : 友人関係では、女の子特有の交友関係でのトラブルについての回答が目立ちました。微妙なニュアンスが分からないためにガールズトークについていけず、ストレスを感じてパニックを起こしたり登校渋りにつながってしまうという声も。「ガールズトークについてけない、何となく浮いてるなど気になる部分がある。学校で頑張るせいか、家庭では未だにパニック起こしたり不注意が多い」「思春期では友人関係に苦しんでいました。女の子特有の集団発想など、気持ちがわからないためにしばしばトラブルに」いじめを受けてしまう場合もあるようです。「今まで話かけてくれていた子から、まったく話かけてもらえなかったり、声をかけるとみんな黙ってしまい、自分でどうしたらいいのか分からない為に辛い」「集団登校で、死んだらええのに、と言われたり、持ち物を捨てられる」反対に、中学校までは孤立していたものの、自分に合う学校を見つけられたことで転機となったお子さんもいました。「女の子が作りがちな派閥が嫌いで、中学までは孤立していた。通信制高校に入り、生徒会的な仕事をきちんとしていたら、派閥に入らなくても認められるようになってきた」出典 : 苦手教科がある、理解に時間がかかるという悩みを持つお子さんがいるようです。「算数が苦手」「文を読むのが苦手、+−=などの意味が全くわからなかった」「みんなと同じ宿題がこなせない」書字障害や注意欠如などが原因で、学習で必要な準備ができない場合もありました。「連絡帳が書けない」「忘れ物、連絡事項が記憶できない」感覚過敏が原因で、授業に集中できないお子さんもいました。「聴覚過敏があるため、授業中に隣のクラスの声も聞こえていたらしい」一方、「行けそうな時間割のところだけ行く。 教室には入れない。授業を受けていないので勉強が分からない」というように、不登校になったことで学習面で遅れてしまうケースもありました。出典 : 感覚過敏やこだわりによって、身だしなみに関わるトラブルが起こることもあるようです。「感覚過敏から特定の服ばかり着たがる」「服の色にこだわりがあり体操服が着られない」また、身だしなみをきちんとしていなくてはいけないという意識が低いお子さんも多いようです。「髪の毛がいつもボサボサ」「変な格好も平気で外に出る。上下がちぐはぐだったり、季節感がおかしかったり、年齢的に幼かったりする」「寒暖に合わせて服が選べない・ボタンの掛け違いや前後逆でも気づかず出かけてしまう」また、中にはこだわりすぎてしまうようになった例も。「中1までは、無頓着で、髪の毛ボサボサ・服もダサい。 中2からは、気にしすぎて、美容品や服にお金が掛かる」。衛生面で問題が出てしまう場合もあるようです。「洗髪しなくても気にならない」「時間に間に合わないので、毎日風呂やシャワーを浴びれない日がある。心身が落ちているときは何日も風呂に入らず不衛生」身体面で大きな影響が出ている場合があるようです。「本人が、体が疲労してても気がつかず、逆にテンションオーバーしてしまい、睡眠障害が出たり、こだわりが強いため、成長がどうしてもそこで止まってしまう」「起立性調整障害のため朝起き上がれず、眩暈・吐き気をもよおして登校・外出できない。PMS・生理痛がひどく月の半分は体調が悪い」出典 : 親子関係では、家庭内での暴言・暴力、嘘などについて悩んでいる保護者も多くいました。「母親への異常な反発」「かんしゃくから家庭内暴力になること」「自分の感情を抑える事ができない。パニックを起こす」「嘘をつく、兄弟をいじめる、お金を盗む」家庭内のトラブルから「普段の生活そのものを家族と共有することが大変」と感じてしまう保護者も多いようです。社会的な活動ができない状態について、どのように対応してよいか分からず困惑している様子もうかがえました。「人との距離感が近い。感覚過敏や体調不良、気が乗るときと全く動けないときの差が大きい」「友達が一人もいない、自己肯定、自尊心が低く、不安が強い。社会に出られない。働く勇気がない。何事も人のせいにする。いつもイライラしてる」その他、睡眠に関する困難について、多くの声が寄せられました。「ストレスから夢遊病、夜驚症」「不眠症、イライラ」「就寝前に家中の戸締りを確認しないと眠れない。死んだらどうしよう、といういう気持ちに襲われ不安で眠れない」睡眠のトラブルについても、本人はもちろん、一緒に暮らす家族への影響が大きく、悩む保護者が多いようです。女の子だからこそ心配なこと、悩むことはある?Upload By 発達ナビ編集部約80%の保護者が、お子さんの発達障害について、女の子ならではの悩みや心配を抱えています。寄せられた悩みの多くは、下記の4つに関連するものでした。■女の子特有の人間関係(41件)■第二次性徴による体の変化(14件)■異性関係・性のこと(47件)■将来のこと(14件)子どもの「生理」について悩む保護者が多いUpload By 発達ナビ編集部さらに、「思春期の心身の変化や生理などについて、不安や困っていることがある場合、どのようなことに困ったり、不安に思っていますか?」という質問を行ったところ、「異性関係・性被害」(15件)、ホルモンバランスの変化などの影響による「精神不安定」(10件)などがあげられましたが、一番多い回答は「生理」(44件)についてでした。特に、生理時に適切な処理ができない・できるのか不安という回答が多く寄せられました。「生理になったときの対応ができるかどうか(予期せぬ対応ができない為)」「自分で汚れ物の処理をちゃんとしてない。そこら辺にナプキン投げて恥じらいがない」「生理の始末が面倒で、たびたび衣服を汚すがまったく気にしていない」また、感覚過敏などの特性により、生理時に困難がある場合も。「感覚過敏があるので、下着がどれでも着られない。 生理用ショーツが履けない。ナプキンもつけていられない」「少しの傷で血を見ると大騒ぎなのに、生理の出血をどうとらえるか心配」また、生理前や生理中の気分の変調が大きいお子さんも多いようです。「生理中、生理前の気分の変調が激しく、仕事にいけない事がよくある」「生理の前は気分が沈むことが多く、悲観的になる」生理についての対応策については、後述する体験談も参考にしていただきたいと思います。女の子の発達障害不安や困難が少ない家庭は、どのような工夫をしているの?出典 : では、特に不安や困難を感じないで生活できている人は、どのような対策をとっているのでしょうか。下記の4つが、対策のポイントのようです。■事前に説明しておく(53件)■ツールを活用する(15件)■見守る・認める(23件)■第三者に頼る(4件)皆さんが行っている具体的な対策について、次に紹介していきます。出典 : 見通しが持てるように、事前に説明しているとスムーズだという意見が寄せられました。「何かをする前や出かける前は、説明したり事前に行く場所を見学する」「具体的になぜ気を付ける必要があるのか逐一説明している」「事前に『こんな時にはこう言おう』『相手の返事を聞いてから行動しよう』など伝えている」生理についても具体的な対策方法があげられました。「サラサーティなどで練習させている」「生理は、低学年の頃から母のトイレでのナプキンの付け方など見せて説明していた」「大きなナプキンにしたり、パンツ型のものを買っている」ナプキンの使い方を見せたり実際に使わせるなどして早いうちからロールプレイングする、処理が難しい場合はパンツ型のものを使うなどの例は、ぜひ取り入れてみたいものです。また、体の変化や異性関係などについては、下記のような声が寄せられました。隠すことなく、具体的に、分かりやすく伝える姿勢が大事なようです。「性教育の、かたくない本を複数わたしてある。興味がある分野なので、真剣に読んでいる」「知らない人と話さない。携帯電話を常に持っていることをアピールしながら歩く」「機会があるたび、性行為などについて教えている」具体的に話すほか、女の子の発達についての書籍も活用できそうです。参考:デビ・ブラウン著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』(東洋館出版社)参考:やまがたてるえ著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)出典 : また、混乱なく生活できるよう、ツールを活用している保護者もいます。視覚的に分かりやすいツールを取り入れている例としては、下記があげられました。「スケジュールはじめ、家庭内でホワイトボードなどを利用し視覚化。模擬時計、キッチンタイマーを利用」「時間割り、時系列がわかりやすいように色分け」自分の気持ちを伝える場合にもツール活用できます。「困った時に『困っています』とカードを見せられるようにしている」忘れ物が多い場合などは、必要なものを一カ所にまとめておくという工夫をしている家庭もありました。「お手伝いや、色んな出来たことに対してポイント制にしてモチベーションをあげてます。また、忘れ物が多かったり面倒くさがりな所があるので学校に必要なものは全て玄関に置いてあるボックスにて完結できるようにしている」子どもにあったツールを活用することで、スムーズに生活ができるようになりそうです。子どもが「初めて」に挑戦するときに最適!絵カードの使い方とは出典 : また、子どもの立場に立つことや、自主性を尊重することで、家庭生活がスムーズになったという声も寄せられました。「子どもの目線になり、親の独り善がりにならないように寄り添い傾聴した」「唯一の楽しみがスマホでアニメを見ること。その時間を作り出すためにお風呂の時間が短くなった。髪や身体を洗う順番や工夫があるみたいです」また、子どもを追い詰めないような接し方を心がけることで、二次障害を防ぐことも大切です。「緊張が高まりやすいことに対しては無理せずできなくてもいいんだよと話すようにしている。 苦手なことはなるべく先に慣れるように家でやってみたりしている(なわとびの練習やお当番さんの練習など)」「出来ない事を、出来るだけ怒らないようつとめている」出典 : 第三者の力を上手に借りている保護者の声も寄せられました。「困った時は、通級の先生や臨床心理士の先生のアドバイスなどを受け、子どもに適切に伝えていくようにしている」「生理の処理方法などは、母親の私が言っても全然耳に入らないので、学校の先生(女性)やデイサービスの指導員(女性)のかたにお任せしてたいぶ改善した」家庭の中だけで駆け込むのではなく、保護者が積極的に第三者にアドバイスをもらう姿勢が大切です。また、思春期は保護者の言うことは聞かないことも多いため、先生などの力を借りて対応したほうがうまくいく場合もあるようです。スクールカウンセラーに関するコラムを総まとめ!役割や相談の様子などをご紹介します85%は相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部約85%の保護者には、相談相手がいるという回答でした。具体的な相談先としては、次のような結果となりました。療育機関の先生(26件)カウンセラー(26件)医療機関・医師(22件)友人(18件)園・学校の先生(8件)夫(7件)通っている療育機関や、学校や行政などのカウンセラー、医療機関というように、専門家へ相談している人が多いようです。ただ、多くの保護者はさまざまな悩みを抱えている現状が見えてきました。不安や困難がある場合は、積極的に専門機関などを活用し、解決策を見つける必要がありそうです。今回の調査結果から今回の調査結果から、女の子ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩んでいる保護者や、発達障害を原因とした二次障害に苦しむお子さんがいることが分かりました。そこで、LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。家族だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容を取り入れて、少しずつでも生きやすくなる工夫を試していっていただきたいと思います。
2018年01月19日発達障害の子育てママの座談会で、よく話題にのぼるものの一つに、夫の無理解や無協力があります。「無」とまではいかなくても、子どもの障害をなかなか認めようとしなかったり、療育や児童精神科などに行くことに乗り気ではなかったり、というお父さんがどこにも一定数はいるようです。そんな時、知ったのが一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体です。代表理事の国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。また、本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものです。そんな国沢さんに、発達障害の子育てに協力的ではないお父さんや、育児に口出ししてくる祖父母への対策法をうかがいました。■発達障害はグレー診断な子ほど夫の理解が得られにくい――発達障害の子育てにおいて、ママの間でよく「夫が子どもの障害を認めてくれない」とか「夫が育児に協力的じゃない」という愚痴を聞くのですが、国沢さんの周囲でもこういった相談は多いですか?「今まで、保護者の相談を約500名ほど受けてきましたが、そのうち半数以上が、知的に遅れのない発達障害児(通常の学級に在籍して通級や校内特別支援教室などを利用しているようなお子さん)のお母さんからの相談です。その中で、夫の無理解や無協力という相談はとても多いですよ」――発達障害はグレー診断なほど、夫の理解が得られにくいというわけですね。「子どもとの会話が成り立たなかったり、説明しても理解できなかったりすれば、お父さんも『うちの子、何かある?』と思わざるを得ませんよね。でも、例えば、週末に家族の中だけで接していて、会話もほぼ成り立っている程度だと、たとえ外で問題行動があったとしてもお父さんにはなかなか、わかりません。『これくらい、男の子だったら当たり前じゃん?』とか『俺も昔そうだったよ』『個性だよ』という一言ですまされたり、ひどい時には『お前は、なんでそんなに障害児にしたがるんだよ!』なんてお母さんが怒られてしまうこともあるそうです」――障害と個性の線引きは、専門家でも判断が難しいと言われていますものね。では、知的に遅れがない発達障害のケースでは、ほとんどのお父さんは、わが子は問題ないと思っているのでしょうか?「いえ。私は、お父さんも本当は薄々わかっていると思いますよ。『なんでこんなに育てにくいんだろう?』とか『なんでこんなに癇癪がひどいんだろう?』という違和感は持っていると思います」――そうすると、わかっているのに認めたくないということ?「私がいろいろ相談を受けてきて思うに、男の人はとてもナイーブなんです。その点、女の人はとてもたくましいですね。もちろんお母さんだって、わが子の障害が判明した時はショックを受けて泣いたり悲観したりはします。でも、いろいろなところに相談して発散したり、専門家に助けを求めたりして、お母さんはさまざまなことを学びます。そうやって子どものことを苦しみながらも少しずつ受容し、子どもへの接し方もどんどん上手になり、プクプク…と浮上していくことが多いのです。一方、お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間が物理的にとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会を逃してしまいがちなんです」■子どもが大きくなった時こそ父親の出番――お母さんはどんどん学んでいく一方で、お父さんは置いてきぼりになりがちなのですね。「夫婦で子どもに対する意識もスキルもどんどん離れていき、お父さんは家族の中で孤立してしまう…といった悩みを、お父さん自身から聞くことも多いんですよ。さらに、追い打ちをかけるように、一緒に過ごす時間が多いきょうだい児も、お母さんと一緒にどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…って。でも、お父さんには、『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがあるんですよね(苦笑)」――そうなると、お母さんは「じゃあ、もういいわよ! 私が全部やるから!」となるか、「この人にはもう期待しない」とコミュニケーションをあきらめちゃいそうですね…。「ただでさえ、お母さんは子どものことでいっぱいいっぱいなのに、夫にまで配慮していられない! という気持ち、よくわかります。でも、子どもが大きくなった時のためにも、ここはなんとかお父さんを積極的に子育てに巻き込む機会を早期にどんどん作った方がいいと思います」――子どもが大きくなった時のため、というのは?「発達障害というのは、男の子の割合が非常に多いのです。男の子の場合でも、小学校低学年くらいまでなら、お母さんの力でも主導権をにぎることができます。そのため、この時期ならば、お母さんのペースで日々の暮らしを仕切っていくことも、なんとかできるのです(まぁ、子どものタイプにもよりますが…)。でも、高学年くらいになると、お母さんが主導で物事をやっていくには限界があります。だって、男の子のトイレやお風呂に、高学年になっても一緒について行くわけにはいかないでしょう? その他、進路の問題や、思春期特有の難しい問題も出てきます。そうした時に、お父さんの出番となるのです。でも、急にその年齢になって『お父さん! お願いします!』と言っても無理なので、早い段階からどんどん子育てに巻き込んだ方が後々のために良いと思うのです」――なるほど。確かに健常児だって、男の子の思春期対応法は、お母さんには難しいですものね。では、夫を積極的に育児に参加させるには、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?「大事な局面には必ず連れて行って、夫を頼る姿勢をみせてみてはどうでしょうか? 例えば、小児科や療育の面談など、ここぞ! という時は絶対に同席してもらうようにして、『あなたがいないと場がしまらない』とか『あなたがいないとちょっと心細い』とか頼ることで、男の人のやる気を引き出したり」――お母さんがお父さんのやる気をうまく引き出すということですね。「大事な局面に夫婦2人で参加した方がいいのには、別の理由もあります。例えば、一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなります。専門家の時間は限られているので、いろいろ言われてワーッと終わっちゃうと、家に帰ってきた時に『あれが言えなかった』『これが聞けなかった』と不完全燃焼で終わり、悶々としちゃうことも多いのですよね。その点、2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を客観的に見ることもできます。もちろん、直接先生と会って話すことで当事者意識が育つので、お父さんのためにもなると思います。そういう状況を作るのが、難しいご家庭もあると思いますが。可能なら…ということです」 ■疲れたり迷ったりしたら…心強いペアレント・メンターの存在――非協力的なお父さんを育児に巻き込むには、お父さんをわが子が集団にいるシーン(例えば、園や学校の普段の様子やイベントなど)に積極的に連れていくのが良いと聞いたことがありますが、どう思われますか?「お父さんは、集団の中にいるわが子の姿を見る機会が少ない方も多いので、理解をうながすには良い方法だと思いますよ。ただ一つ落とし穴があって、男の人って実はナイーブなので、集団の中で、わが子とほかの子どもとの違いを目の当たりにして、ガーンとショックを受けて落ち込んじゃうケースもあるんですよ。で、その後、お母さんがいくら誘っても、園や学校に行くのを避けるようになってしまった、そんな相談を受けたことも、たくさんあります」――すでにさまざまなことを乗り越えてきたお母さんとしては、「傷ついてる場合じゃないでしょう~!」と思ってしまいそうですが…。「お気持ち、よくわかりますよ(笑)。でも、男の人はそういう生き物と割り切って、『パパもショックだったよね。私も初めて見た時はショックだったんだよ』と寄り添いつつ、『うちの子みたいな子が落ち着けるように、こんな療育があるみたいだよ。一緒に見学行ってみない?』という感じに、だんだん専門領域の世界に引き込んでみてはどうでしょう?お母さん、大変ですね!(笑) たとえば、理論で入る男の人には、専門書をさりげなく渡してみるのもいいかもしれません。そういう方法で、実際に夫が協力的になったというご夫婦もいましたよ。――なるほど。専門書から理解を促すのは良い方法かもしれませんね。「お母さんは本当に大変だと思います。でも、これは大きくなった時に返ってくる「保険」だと思ってあきらめないで、早い段階から協力的な夫になってもらえるよう働きかけてほしいです。ここでガツンと切っちゃうと、夫婦関係が険悪になってしまったり、離婚という選択にもなりかねません。そういった例も、たくさん見てきました。逆に言うと、お父さん役も担っているシングルのお母さんは、大変な負担のなか、とても頑張っているんです。本当に、身体が心配です」――発達障害の子育てにおける、お母さんの負担はとても大きなものなのですね…。「そうですね。でも、しんどい時は、どんどん専門家に頼りましょう。もちろんママ友や先輩ママに頼るのも良いけれど、私は専門的な訓練を受けたペアレント・メンターをおすすめします」――ペアレント・メンターって何ですか? 「ペアレント・メンターとは、自分自身も発達障害の子育てを経験し、さらに相談支援に関する一定のトレーニングを受けた親のことです。私も資格を持っているんですよ。2010年から、厚生労働省もメンターの養成に力を入れています。発達障害の子育てに関する悩みや相談を抱えた親に対して、気持ちに寄り添い、その親にとって必要な情報(病院、療育、学校、福祉サービス、地域の情報など)を提供したりしています」――実際に発達障害の子育てをしている方だと、専門家とはまた違った安心感がありますね。「発達障害児の子育てでは、すべての情報が親に集中します。しかも、情報は多岐に渡ります。療育機関の専門家、医療機関のドクター、心理士、作業療法士、園や学校の先生、療育ママ友、家族、親せき、近所の人…いろいろな人から『ここが良いわよ』『これをしたら良くないわよ』という情報が、すごい勢いで入ってきます。そこから、親はわが子に必要なことを取捨選択するわけですが、そのプロセスは想像以上に大変です。ペアレント・メンターは親に寄り添い、一緒に情報を整理し、今後の道を一緒に考える役割を担うので、とても心強い存在になると思いますよ。同じ仲間として、先ほどお伝えしたような、お父さんへの上手な接し方などもアドバイスしてくれます。ストレスがたまったり、子育てに疲れてしまったら、こういった専門家に頼るのも手だと思います」■祖父母世代には、「専門家の意見では…」で対応――周囲には、義理両親(もしくは自分の両親)の子育てへの口出しに悩んでいるお母さんもいましたが、祖父母関係の相談は多いですか?「10年前くらいはとても多い相談でしたが、最近は少し減ってきたように思います。逆に、孫のことを理解しようと講習会に積極的に参加したり、自分も何とか役に立ちたいという祖父母の方も増えてきました。とはいえ、まだまだ『そんな子育てだから、子どもがワガママになるのよ』とか『もっと、こうしてみたら伸びるんじゃないの』とか、ひどい例では『うちの家系には、こんなことをする子はいない』といったことを言われてしまうことも残念ながらあります。そんな時は、大変つらいと思いますが、すべてキッチリ理解してもらおうと思わず、上手に受け流して、別のところでストレス解消をしましょうね。自分たちより長く生きて、自分のスタイルを確立している人たちの認識を変えることは、とても大変です。ただ、言われっぱなしも悔しいので『専門家に相談してすすめていますので見守ってください』などと、自分たちも自己流ではなく、ちゃんと考えて子育てしている、ということはアピールしておくといいかもしれません。で、ほかのところで毒を吐く(笑)。同じ思いをしている仲間は、意外にたくさんいますよ」――ちょっと極端な話ですが、お姑さんのちょっとした子どもへの体罰に悩んでいるお母さんもいました。良くないことをすると、手をつねって教えるという。「お嫁さんが『嫌だから止めてください』という言い方をすると角がたつから、専門家の名を借りてみてはいかがでしょう。たとえば、『専門家から、そういうことを続けるとほかの子に暴力をふるうようになるって聞いたんです』などと伝えてみるとか。もちろん、ただの『嘘』になってはいけないので、専門家にも、その件を相談してみる。『義理の母が、しつけと称して子どもの手をつねるんですけど、こういうことを続けていると、この子がほかの子をつねる可能性もありますよね?』と聞いて『可能性あるね』と言われたら、それを『お墨付きのアドバイス」』にする。専門家の意見と言えば説得力が増すので、さすがのお姑さんも自制するのではないでしょうか?『伝え方の工夫』、これは、発達障害児の子育てで、とても必要な力だと思います」――確かに、「専門家の意見では…」という言葉は効果ありそうですね。「私は、これを学校の先生対策にも利用していますよ。例えば、生徒を大きな声で叱る先生がいて、それが怖くて、指示されても全然動けなくなった子がいるとします。そんな時、『児童精神科の先生に相談してみたら、大きな声がすごく苦手みたいなので、席を後ろにしていただけませんか? もしくはイヤーマフをつけさせてもいいですか? このままだと学校に行けなくなって不登校になる可能性もあると言われたんです』というふうに。親が『大きな声で叱るのはやめてください』とだけ言うと、ただのクレームみたいに思われてしまうけど、専門家の指示であれば対応せざるを得ないでしょう。周囲を上手に説得したい時は、専門家の意見を上手に借りるのも一つの手だと思いますよ。『伝え方』を工夫をすれば、双方の関係は悪化せず、子どもの状況が改善される…そんなケースを、私はたくさん見てきました。こうして見てくると、お母さんには、たくさんの力が要求され、本当に大変ですが(涙)、一緒に励まし合って、乗り越えていきましょうね!国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月14日筆者の息子が発達障害の疑いをかけられた時、ネットにかじりついて情報収集する中で、たどり着いたのがABAという療法でした。ABAとは、アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系のことで、日本語では「応用行動分析学」と呼ばれます。人の行動の原因を内部(心)ではなく、人を取り巻く環境に求める考え方で、自閉症など発達障害の子どもに非常に有効なアプローチ法とされています。最近では、このABAを取り入れた療育療法が非常に多くなっています。でも、専門書を読んである程度の考え方は理解したものの、「具体的にどう子どもに接したらいいのか?」はわからずに困っていました。そんな中、とても役立ったのが、shizuさんの著書「発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ」(講談社)でした。発達に遅れがある子どもへの具体的なアプローチ方法が書かれており、日々の生活の中で、子どもとの関わり方にたくさんのヒントを得ることができました。しかも、その考え方は、発達障害だけでなく上の子(定型発達)の子育てにも同じように役立ったのです。著者のshizuさんの息子さんも、3歳の時に自閉症スペクトラムと診断されており、ちりばめられたご自身の体験エピソードには、とても重なるところがありました。「私だけじゃない」「やればできるかもしれない」ととても励まされたのです。そんなshizuさんに、「ABAを利用して発達障害の子どもを伸ばすにはどうしたらいいのか?」をテーマにお話をうかがいました。■3年間できなかった滑り台、ABAでたった30分で滑れるようになっちゃった!?――ABAは素人が専門書を読んで理解するにはなかなか難しい学問ですが、わかりやすく言うと、shizuさんはABAをどういうものだとお考えですか?「私は、ABAは親子の関係を笑顔に導く1つの学習方法だと思っています。子どもが生きやすく生きるために、「できないこと」を「できた」に導きやすくする有効な働きかけだと思います」――具体的には、どんな手法なのでしょうか?「ABAの醍醐味のひとつに、スモールステップというものがあります。これは、ひとつの課題をできるだけ細かいステップに分け、1回の目標達成レベルを低くして、そのステップを一つ一つ達成しながら成功体験を重ねていくというもの。それが子どもの自信となって大きな課題達成につながるというわけです。この手法で取り組んでいくと、まるで魔法みたいに、全然できなかったことがコロッとできるようになっちゃったりするんですよ」――著書の題名も「魔法の言葉かけ」ですものね。実際に、魔法のような出来事はありましたか?「私が関わった子で、滑り台がまったくできない子がいました。3歳の時に滑り台でひどい尻もちをついてしまって、以来3年間、滑り台を断固拒否していたんです。でも、身体的な原因ではないし、私はその子の様子を見ていてできる可能性は十分あると思い、スモールステップで取り組んでみました。そしたら、たった30分足らずで滑れるようになったんですよ!」――3年間できなかったことが30分で!? 具体的にはどうやったのですか?「目標値を滑り台の下の方から、70センチくらいに設定し、ちょっとずつ登って滑ることを繰り返しました。その都度「すごい! ここまでこられたね!」とほめて、だんだんと目標値を高くしました。下の方から登れば、手を離すだけでスーッと滑りますよね? だから少しずつ滑り台の感覚を楽しめると思ったのです。私も後ろからついて子どもの恐怖心を和らげました」――なるほど。逆から少しずつ滑らせて、恐怖心を取り除くというワケですね。「滑り台の上まで登れたお子さんを見て、ご両親は本当にうれしそうで、何度もほめていらっしゃいました。そしたら、その子はすごくうれしくなって、1つできたことから自信がどんどん広がったんです。大きく揺れることを拒否していたブランコも大きく揺らして乗れるようになり、ジャングルジムも2段目までが精いっぱいだったのに、一番上まで登れるようになったんです。これ、全部その日のうちにできるようになったんですよ。その後、市内の滑り台めぐりをして、児童デイサービスでの散歩の時間にも『滑り台のある公園はありますか』とリクエストしたそうです。それまで、その子はあまり自分のやりたいことを積極的に言うタイプじゃなかったそうで、ご両親は積極性が出てきたこともとても喜んでいました」――自分ができたことはもちろん、お父さんとお母さんにほめられたことが、ものすごくうれしかったんでしょうね。「子どもにとって、親のほめ言葉は何よりのご褒美です。どんなささいなことでも、できたことに対していっぱいほめてあげてほしいです」――スモールステップを成功させるコツはあるのですか?「まず、親が『できる』と信じること。子どもは親が思っていることを敏感に察知するので、信じて『できるオーラ』を送ることが大事です。だからと言って、親のエゴで『この歳で滑り台ができないなんて恥ずかしい』とか『みんなができるんだから』というのは違いますよね。それは、親が子どもを思い通りにコントロールしたいと思っているだけ。そうではなくて、滑り台って本来、子どもにとってとても楽しいモノ。その楽しさを味わえたらいいよね、というイメージをふくらませてほしいです」――親のエゴを押し付けるのは違う、ということですね。「言葉かけも大事です。親目線で『やってごらんなさい』と言うのではなく、子どもと同じ目線になって『ちょっとやってみようよ! 〇〇ちゃんならきっとできると思うな』という感じで。NHKの歌のお兄さんやお姉さんみたいに、思わず子どもの気分が乗っちゃうようなノリやテンションで盛り上げるのもコツですね」――子どもがチャレンジに不安を感じたら?「子どもが不安を感じていたら、まずは、不安に寄り添ってあげることが大切。いったんはスルーして、気分が戻ってきたら『ちょっとだけやってみる?』とうながしてみてはどうでしょうか? 時間を空けるとスルッとできちゃうこともあるので、1回であきらめずに何回かはトライしてほしいですね」――でも、もしそれでもダメだとしたら…?「たとえ滑り台の一番上まで登れなかったとしても、『ここまでできたんだね! すごいね!』と、必ず成功体験で終わりにしてあげることが大事です。『あとちょっとだったのに!』という捨てセリフは厳禁。どんなにわずかでも、自分で踏み出せてそこまでできたということを、まずは認めてあげてください。また、ちょっと難しそうだったら、子どもの苦手な動作を背後から補助するような形で、親が少しだけ手助けしてあげることも有効です」――他にうまくいかない課題に取り組むときに心がけた方がいいことはありますか?「子どもの興味あることに寄り添って、課題の設定を工夫することも大切だと思います。例えば、こんなお子さんがいました。その子は平仮名を覚えるのが苦手で、カードで『あ』『い』『う』…と教えても、上の空で全然頭に入らない。そこで、その子が大好きな戦隊モノを利用することにしました。戦隊キャラの写真と名前(平仮名)をゲーム感覚で一致させて、その子の興味を引き出す仕掛けを作り、平仮名を読む行為自体が楽しくなる方法で取り組んだのです。そうしたら、その子はどんどん平仮名を覚えて、後にお母さんから『文章も読めるようになりました!』と報告がありました」――「教える」というより、その子の「興味を引き出す」仕掛けを作る。そして、それが楽しいと思えれば、後は、自らどんどん吸収してくれるというわけですね。親もそんな子どもの成長がうれしい。子どもも笑顔&親も笑顔、親子の関係を笑顔にする、まさにウィン・ウィンの方法ですね。 ■ABAを行ううえで、親が気を付けるべきこと――スモールステップがとても有効なやり方だということはよくわかりました。では、課題を少しずつクリアしていけば、何でもできるようになるのでしょうか?「いいえ。一点注意しなければいけないのは、何でもかんでもスモールステップで繰り返しやれば身に付くわけではないということです。滑り台の例のように、ちょっとした勇気やきっかけ作りでクリアできそうな課題はスモールステップが有効です。でも、平仮名の読み書き、算数など、さまざまな工夫をしてもどうしてもうまくいかない場合、もしかしたら学習障害が絡んでいる場合もあるかもしれません。その場合は、『これは生まれ持った特性なのでは?』と考えを切り替えることも大切です。そのことも頭にとめておいてほしいです(文字の読み書きにはビジョントレーニングが有効な場合もあります)」――ほかに、ABAを行ううえで気をつけておくべきことはありますか?「よく、家で机に座って子どもにガッツリABAの課題をやらせる、という話も聞くのですが、体を動かすことや外に出て五感を生かすことも大切にしてほしいと思います。五感を働かせることは、視機能、脳機能を伸ばすのにも大切だと思いますよ。あと、ABAはちょっと間違えると、『指示して動かす』ということに終始しがちな危険性があるので、子どもに選択させることを常に意識してほしいと思います。例えば、どんなに障害が重いお子さんであっても、食べ物の好き嫌いはあるはずです。『はい、お菓子よ』とあげるだけではなくて、『どっちが食べたい?』と選ばせる。選ぶというのは楽しみでもあるので、どんなにささいなことでも自分の意思で選ぶという体験を重ねてほしいと思います」■客観的視点が大事! ABAは親子の笑顔を引き出すアプローチ――最近では、ABAの認知度が高くなって、家で実践している方も多くなってきたようです。でも逆に、それがうまくいかないと、自分と子どもの努力不足だと追い詰められてしまう方もいるようですが…。「確かに、向き不向きがあるかもしれません。そんな時は、そもそもABAは子どもの笑顔を引き出すアプローチということを思い出してください。そこを外れて『なんでできないの?』『どうしてあなたはいつもこうなの?』というふうになってしまったら本末転倒ですよね…」――私もそんな時期がありました(苦笑)。つい「あなたのためなのよ!」と力が入ってしまって…(苦笑)。「私もそうだったのでよくわかりますよ。でも、お母さんが『これができないと困る』と思って一生懸命やっていても、子どもは全然困っていなかったりするんですよね(笑)。困っているのは、子どもじゃなくて、実はお母さんの方。お母さんが、他人からどう見られるかを気にしてやっていることの方が多い気がします。そんな時は、ちょっと立ち止まって『今の私って人の目を気にしてる?』と自分のことを客観的にみることが大事です」――確かに(苦笑)。当時は、「普通に近づけたい」という私のエゴが、常に頭のどこかにあったように思います。「私も息子が自閉症と診断された当初は、とにかく『普通に近づけたい』と夢中になっていた時期がありました。でも、その結果、課題をなかなかクリアしない息子を追いつめ、見事に失敗しましたけどね(苦笑)。普通にこだわったり、周囲からどう思われるかにとらわれると、子どもの悪いところ・できないところばかりが目についてしまい、悪循環に陥っちゃうんですよ」――そういう時って、もはや自分のことが見えなくなっているはず(汗)。自分のヤバさに気づくサインはありますか?「常に子どもが教えてくれるはずです。子どもに笑顔があるかどうかです。子どもに笑顔がなかったら、きっとその時、お母さんにも笑顔がないと思いますよ。お互いに笑顔がないのなら、家庭でのABA(療育)はいったんお休みしましょう」――いろいろお話をうかがっていると、もちろんABAは子どもの力を伸ばす可能性に満ちているけれど、それ以前に、お母さんの心の健康の方が大事という気がしてきました。「そう。子どもうんぬんよりも、まずはお母さんが自分自身を大切にすることが何より大事。だって、同じことが起こっても、自分に余裕がある時は『あらま~』って笑えるけど、余裕がない時だと『何やってんのよ!』って怒っちゃったりするでしょう? 物事をどう受け取るかはすべて自分次第なんですよ。借りられる手は全部借りて、まずは、お母さん自身の心を満たすことを考えましょう。子どもが見たいのは親の笑顔ですから。あと、何もかも完璧を求めすぎず、『まぁ、いいか』というゆるい心を持つことも大事です」――確かに、発達障害の子育てで「ゆるさ」は大切ですね。発達障害児のお母さん(私?)って、常に、子どもの将来の心配をするのが癖のようになっちゃっているのですが、ここらへんはどうしたら?「みなさんが不安に感じているのは、まだ、実際には起きてない予期不安ですよね? だとしたら、起きてない不安を延々と考えて苦しむのはムダじゃないですか?まずは、不安を感じているという自分の気持ちを『~って思っちゃうんだね。わかるよ』と認めて受けとめ、『また出てきたあ! 私って本当に悲劇のヒロイン好きだわ~』って笑い飛ばしちゃうのもひとつの方法です。思考癖に気づくことが大切です」――先のことは誰にもわからないはずですものね。「もう、『なんか知らないけど、この子はきっと大丈夫!』と決めてしまいましょう(笑)。先のわからないことはプラスに考えた方が楽しいし、それに、人はみな、決めてから行動を起こすでしょう? だったら、『大きくなった子どもの笑顔を思い浮かべ、今、サポートできることは?』と応援団として行動を起こすのです。それでも不安に押しつぶされそうになった時は、どうか、この言葉を思い出してみてください。それは、『今の子どもの姿がすべてではない』ということ。これは、私がお守り代わりに心にとめている言葉です。親が信じて、コツコツ働きかけていれば、きっとうれしい成長があります。今の姿だけを見て将来を悲観せず、子どもの可能性を信じて、楽しく働きかけていきましょう!」「今の子どもの姿がすべてではない」――著書を読んで以来、私がずっと心にとめている言葉です。shizuさんのこの言葉は、いろいろな局面で私の心を楽にしてくれました。子どもの可能性を信じてコツコツ働き続けることの大切さ、そしてそれ以上に、子どもと自分が笑顔でいることの大切さを、改めて感じた取材でした。参考図書: 発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ 著者 shizu/監修 平岩 幹男11万部13刷のロングセラー。手を洗うときの言葉かけ、食事をしながらの言葉かけ、いっしょに料理をするときの言葉かけ、散歩のときの言葉かけ、遊びながらの言葉かけ―ABA(応用行動分析)を利用した「言葉かけ」をすれば、楽しみながら家庭で子どもの力を伸ばせることを紹介した一冊。shizu プロフィール自閉症療育アドバイザー。講演会などで、日常生活の中で子どもの力を伸ばす楽しい関わりや言葉かけを紹介。家族に笑顔を増やすため、親が心掛けたい子どもへの気持ちの持ち方も伝えている。無料メール講座『発達障害の子と楽しく生活する7つのコツ』配信中。講演会の詳細はブログ参照。ブログ: 「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」 取材・文 まちとこ出版社N
2018年01月07日難航する仕事選び。障害者雇用枠で、最も多い求人は事務職。けれども…出典 : 私は、26歳のときにアスペルガー症候群、ADHDの診断を受け、同時に退職も余儀なくされました。就職をするまでの学生生活では、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出し、行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてきました。そして発達障害の診断を受けた後、そのことを職場にカミングアウトしたのですが、残念ながら退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。それからは就労移行支援事業所に通うことになり、支援員の方の手を借りながら障害者雇用枠での就職活動を進め、内定を獲得することができました。就労移行支援事業所は障害がある人の就労をサポートする機関で、職業訓練や職場探し、職場への定着支援など、さまざまな支援を受けることができます。しかし、その道のりは一本道というわけではなく、壁に直面したり、どうすればいいかわからないことも少なくありませんでした。特に悩んだのは、自分の特性と仕事の性質の兼ね合いです。障害者雇用枠のおよそ半分以上は事務職と言われれており、一般事務や経理、総務、人事などの職種で就職する場合が多いそうです。しかし、私は何か目新しさがないと注意や集中力を持続することができません。例えばExcelなどで売上伝票などを作成する際に、売上金などのデータ入力が必須になってきますが、ミスしないよう慎重に作業しているとスピードが他の人に比べて明らかに遅くなってしまうのです。するとそれが焦りに繋がり悪循環に陥ります。結果として、雑な仕上がりとなってしまったり、思いもしないようなミスをしてしまうのです。「働く」という字は、人と一緒に動くと書く。でも自分はコミュニケーションが苦手…出典 : また、空気が読めない、他人の気持ちに配慮した言動が難しいなどの特徴から、仕事上での困難に直面することも少なくありませんでした。営業の仕事にかかわっていたときは、相手の意図を汲み取りつつも、相手に探りを入れる高度なコミュニケーション能力が求められましたが、どうやってもうまくこなすことができませんでした。また、営業職は電話応対が頻繁に発生するため、他の人が話している電話の声が気になってしまったり、聞こえてくる会話内容を意図せずメールに書いてしまう事もありました。1つの作業に没頭すると他のことを忘れてしまうことも少なくなかったため、報告・連絡・相談がおろそかになるのは日常茶飯事。こうした自分の特性を考えたうえで就職をしようとすると、どうしても選択肢は数少ないものになってしまい、愕然とせざるえませんでした。自分には一体、何が出来るんだ!?出典 : 次第に頭のなかには、「自分には一体何ができるのか?」という思いが込み上げてきました。考えても出てくるのは「できることなんて無い」という答えばかり。私はどうすればわからず、毎日落ち込んでばかりいました。このとき、前を向く光をくれたのが、前職を退職してから相談を続けてきたカウンセラーさんです。障害の診断を受けて薬が処方されてからというもの、見知らぬ地でひとりぼっちのような気持ちでしたが、どうしたら生きやすくなるかの相談を続けてゆくうちに、自分がたどるべき道を何となくイメージできるようになってきたのです。検査結果ではわからなかった自分の数少ない強みカウンセリングでは、WAIS-III(ウェクスラー式知能検査)の結果を紐解いて、苦手なことと、苦手ではないことを分類していくことを行いました。私のWAIS-IIIの結果は、言語理解の部分が苦手ではない。しかし、決してずば抜けている訳でもないと言えるくらいで、他の項目はすべて平均より低いと言わざるを得ない状況でした。カウンセリングに行く度に話す内容をA4、1枚の紙にまとめて、ときには参考になりそうな資料なども合わせて準備していました。相談したいことがいくつかあった場合でも、話しているうちに相談しようと思っていたことを忘れてしまい、相談室を出た後で、話し忘れたと後悔することが多かったからです。そんな中あるとき、私の作った資料を見たカウンセラーさんが、ひょっとしたら自分の考えをまとめることが得意なのかもしれないと指摘してくれたのです。言われてみれば、心当たりがありました。以前仕事をしていたときは毎日が失敗の連続だったので、なぜ怒られたのか?何がいけなかったのかを自分で分析するために、日記に書くようになりました。1日の終わりに静かな自宅の部屋で、時間をゆっくりとかけながら何が問題だったのかを洗い出し、それはそしてときには視覚的に情報をまとめます。それは私にとってはまったく苦にならない作業であったことに気づいたのです。Upload By ツーちゃんこのことから自分で企画を考え、図やイラストで分かりやすく説明するような仕事内容にチャレンジしたいと思うようになりました。不注意傾向があってもソフトのスペルチェック機能を使えば、ミスが未然に防げたり、取りこぼしが減らせたりすることはできます。なので、Webデザイナーや、ライター、企画職など、クリエイティブ寄りの職種を志望し、就職活動を進めることにしたのです。Upload By ツーちゃん出来ることと(障害特性上)難しいこと=配慮して欲しいことを整理する出典 : 私の場合、障害者雇用枠での就職を目指すということは比較的早い段階で決まっていました。というのも仕事量や、割り振りなどに関して、会社側の配慮がどうしても必要だと強く感じていたからです。そのため、検査の結果なども加味して考え、障害を隠して働くという選択肢は消えていました。次に私は、自分の特性を面接官に分かりやすく説明する、「ナビゲーションブック」の作成に取り掛かります。そこで難しかったことは、障害の程度をいい塩梅で面接官に伝えるということです。文字などでまとめることは苦にならない私ですが、ありのまますぎて、より強烈な印象を与えてしまうような文章を書いてしまいがちでした。あまり欠点のみを書き過ぎてしまうと、人事担当も評価ポイントを見出しにくくなってしまいます。なので、自分自身の障害特性をしっかりと自覚し、そうした過去の失敗を繰り返さないように気をつけていると明記し、加えて過去の自分からの成長をアピールしました。また作成した当初は、できることと、配慮して欲しいことの2つのみを書いていましたが、それだと配慮してもらって当たり前というような印象を受けると支援員の方から指摘して頂いて、障害特性はあるものの、自分自身の努力でカバーできることもあると書くようにしました。Upload By ツーちゃんナビゲーションブックは就職活動を進める上で、どう役に立ったのか?出典 : 障害者雇用枠での面接では、仕事に対する熱意や志望動機以上に、障害のことや、それに対して必要な配慮について質問されました。そういったときにナビゲーションブックが役立ちます。2部、印刷して持参しておいたナビゲーションブックを、面接官と一緒に見ながら、事細かに説明しました。ナビゲーションブックを見た感想を、面接まで進んだ企業の採用担当者に聞いたことがあります。「障害者雇用によく使われる履歴書には3行程度障害について記載する欄があるが、3行程度の説明では、障害の多様さを理解するのは難しい。こういったナビゲーションブック等で障害に関して、詳しく説明して頂けるのは、とても助かる。また人事としても、障害に関してどこまで聞いて良いのか非常に気を遣う。求職者の方からオープンにして頂けると採用担当者からしてもやりやすい」と言われました。また別の面接官は「伝言ゲームだと、聞いた内容があやふやになりやすいが、こうした資料があれば、次の面接官への引き継ぎがしやすい」といった声もありました。総じて、障害を隠すよりも、かえって包み隠さず話した方が好印象と受け止められるケースが多かったです。またナビゲーションブックを用意しておく事で、その内容に沿った質問が多くなり、予想外の質問を減らす事が出来るというメリットもありました。臨機応変力があまり高くない私にとっては嬉しい誤算でもありました。必ずしもナビゲーションブックの作成をしなければいけない訳ではありませんが、ナビゲーションブックを用意する事で、障害についての理解が深まり、企業の採用担当の方にとっても不安が少なくなるのかもしれないなと感じました。参考: LITALICOワークス合理的配慮ガイドブック障害者雇用枠での就職活動を振り返って出典 : こうして就職活動を進めているうちに、半年が過ぎ、やっと内定を手に入れることができました。内定した会社は、スマートフォン向けのゲームアプリを開発する会社です。パソコンなどの扱いに精通していたことや、ADHDで新しいもの好き、好奇心旺盛な部分が、結果的に良い方向に働いたと感じています。配慮の面では、「困っていることはないか?」と人事の担当者が相談する時間を設けてくれたり、上司には指示が曖昧で分かりにくいといった、言いづらいことを代わりに伝えてもらうといった配慮を受けています。ただ、人事部と現場レベルで障害への理解、業務指示などを含めた接し方に対して、温度差が多少あるようには感じられます。また、環境の変化や、刺激の多い環境に対して疲れやすい特性を持っているので、最初の1か月間は、時短勤務を許可してもらっており、とても大事にしてもらっていると感じています。内定を得るまでには、合同就職説明会などで大量エントリーした企業も含めると、30社から40社ほどは受けたと思います。そのうち、面接に進んだのは6社で、最終面接に進めたのは4社。内定はたった1社のみという結果です。正直なところ、綱渡りのような状態で、これに落ちたらまた振り出しのような状況だったので、内定が出て胸をなでおろしたような気持ちです。就職活動が長引いてしまった理由としては、書類選考で落ちることも多く、モチベーションを保つのが難しかったこと、企業が特に精神障害・発達障害のある人の採用に対して慎重な姿勢を貫いていることから、選考期間が長期化してしまうことが挙げられると思います。障害者雇用については、まだどこも手探りのような状態で、書類選考に1ヶ月かかることも少なくありませんでした。新しい仕事は、すべてが未経験で「初めてづくし」な部分は大きいのですが、1年ぶりに仕事が出来ること、就労移行支援を退所した後も、支援員の方が定着支援として、企業と私との連絡係としてサポートしてくださることなどが、前職の時には無かった安心感を生んでいます。今から新しい門出にワクワクしています。私の経験は1つの例でしかありません。他にもさまざまな歩き方があると思います。それでも、私の歩んだ道が、少しでも役に立てば、これほど嬉しいことはありません。
2018年01月03日「親なきあと」に関する不安とは?発達ナビに寄せられた、保護者500名の声出典 : 年10月30日から11月8日に、LITALICO発達ナビでは「親なきあとの暮らし・お金に関する実態・意識調査」を行いました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:529名の回答を集計しました。(調査期間:2017年10月30日~11月8日)※設問によっては529名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100にならない場合があります。「親なきあと」の子どもの暮らしについてUpload By 発達障害のキホン「親なきあとの子どもの暮らしについて、不安はありますか?」という質問に対し「はい」と答えた保護者は94.9%、「いいえ」と答えた保護者は5.1%と、親なきあとの子どもの暮らしについて不安に思っている保護者は9割を超えました。では、保護者の皆さんはどのようなことに不安を感じていられるのでしょうか?「就職できるのか、1人で暮らしていけるのか不安を感じる」「お金の管理。人にだまされないか。」「他人とうまくコミュニケーションをとって、上手に過ごせるか 」「1人で自立して生活していけるか?社会に適応できるか?」子どもが将来、経済面・生活面・精神面で自立できるのか、社会に適応して生活できるのかといった不安を持つ人が多くがみられました。また、「就職して生きていくためのお金を稼げるか、弟に負担もかけたくはないが、なるべく兄弟助け合って生きてほしい」「自立生活の維持、兄妹が背負うかもしれない養介護」などの意見にみられるように、誰が子どもの生活や精神面のサポートするのかなど、子どもを日常的にサポートする人やきょうだいについての声も目立ちました。「親なきあと」の住まいについてUpload By 発達障害のキホン「親なきあと、お子さんはどこで暮らすと考えられますか?」という質問に対し、回答が多い順に「一人暮らし(66%)」「グループホーム(29.3%)」「施設(27.6%)」「親族・きょうだい(20.6%)」となり、「一人暮らし」という回答が最も多く なりました。また、「その他」と回答の中には「結婚出来たら良いなあ。出来なくても、支え合えるパートナーと暮らしてほしい。」「私達の家が相続出来れば今の家ですが、固定資産税等払えず管理出来ないと思うので…気の合う方に巡り会えて、新しい家庭を持ち、その方と新居を持てれば…」と、幸せな結婚をし、パートナーとともに新たな家庭を築いてほしいという声もありました。「親なきあと」のお金への備え出典 : 次に、親なきあとのお金について、どのように考えているのか、どんな対策をしているかなどについて、皆さんの回答を紹介していきます。Upload By 発達障害のキホン「子どもの将来に向けて貯蓄・資金準備はしていますか?」という質問に対して「はい」と答えた保護者は64.8%、「いいえ」と答えた保護者は35.2%となり、子どものために貯蓄・資金準備をしている保護者は約6割でした。準備をしている場合、どのようなことをしていますか?という質問に対して多かった回答として、「学資保険(36)」「貯金(31)」「貯蓄(18)」といった意見があげられました。ほとんどの保護者は預貯金か保険で備えているようです。また、行政からの手当金は、今すぐ使わず子どもの将来のために貯蓄に回しているという風に、子どものためにもらえる手当は生活費とは切り分けて、子どもの将来のための備えに回しているという回答も複数ありました。手当=貯蓄に回す、と決めることで貯蓄しやすくなりそうです。Upload By 発達障害のキホン「子どもの将来に向けた貯蓄額は現時点どの程度ですか?」という質問に対して、回答が多い順に、「~49万円(19.7%)」「200~399万円(16.3%)」「100~149万円(15.3%)」という結果になりました。Upload By 発達障害のキホンでは、みなさんはどのような方法で貯蓄・資金準備しているのでしょうか?「資金準備の方法を教えてください」という質問に対して、回答の大半を占めたのが「銀行・郵便局の預貯金(82.9%)」と「保険商品(学資保険含む」(51%)」、その他には「投資信託(NISA含む)(5.8%)」、「外貨建て商品(3.6%)」、「不動産の運用(2%)」などがみられました。多くの方は、金融機関での預貯金や、学資保険・生命保険などの保険商品を用いて貯蓄しているようです。また、生命保険信託を活用している方も、少数ですが見受けられました。また全体の6%弱は、投資信託などでも資産を殖やしていました。Upload By 発達障害のキホン利用している金融機関は、多いものから「銀行・郵便局(63.1%)」、次に「保険会社(37.4%)」、以下順に「利用していない(21%)」、「証券会社(5.5%)」「信託銀行(2.5%)」「その他(0.9%)」という結果になりました。「障害年金」について障害年金は、障害の程度に応じて一定の金額が支給される、障害のある方の生活をサポートするための制度です。この制度について、どのくらい認知されているか伺いました。Upload By 発達障害のキホン障害年金について知っている保護者は41.6%と、4割強の認知がありました。「いいえ」と答えた保護者は10.6%、「聞いたことはあるがよく分からない」と答えた保護者は47.8%となり、障害年金について聞いたことはあることはあるものの、どのような制度なのかまでは分からないという保護者も半数近くいました。障害年金がいくらもらえるかについては、81.1%が知らないという回答でした。障害年金が具体的にいくらもらえるかなど、詳細までは知らない人が多いようです。Upload By 発達障害のキホン障害年金について知りたいこととして、「もらえる条件」「金額の他、受取方法などの仕組み全般が知りたい」「一生涯不十分なく年金受給されるのか」「発達障害では、障害年金もらえないと認識している」などの意見がありました。発達障害・知的障害の度合いが軽く、「障害年金が受給できないのでは?」と危惧している保護者の声も多くあげられました。なお、発達障害でも障害の度合いによっては障害年金を受給が可能です。また、同じように「等級」という言葉を使うため混同しがちですが、障害者手帳の等級と障害年金の等級や判定は別です。どちらの等級も、重いものから1級、2級という風に等級がありますが、制度が異なるので認定基準は異なります。概ねどちらの等級も重なる内容が多いとはいえ、それぞれ状況が異なるので、相談・申請してみないことにはどの等級にあたるのかなどは分かりません。まずは実際に年金事務所や、無料相談を行っている社会保険労務士(社労士)などの事務所に相談してみることをおすすめします。詳しくは以下の記事やリンクを参照ください。「親なきあと」相談室「親なきあと」、どのように子どもへお金を渡すのか出典 : 障害のある子どものために資産をつくったり、障害年金を受給できるように制度を理解したり申請をしたりすることに加えて、どのようにしたら適切に渡していけるのか考え、備えておくことも大切です。ここでは、皆さんの意識や、対策方法などについてみていきます。Upload By 発達障害のキホン「相続について、対策していますか?」という質問に対して、「いいえ」と答えた保護者は94.5%、「はい」と答えた保護者は5.5%でした。相続対策をしていない保護者が9割以上という結果でした。では、相続対策をしている保護者はどのような対策を取っているのでしょうか?「住むところに困らないよう、自宅の土地建物を相続するようにしている」「生命保険信託と、生前贈与の形での個人年金保険」「親の死亡保険」などの意見がみられました。また、「子どもの名義で通帳に預金しているくらいで、対策すべきかどうかわからない」「具体的な行動はしていないものの、行政書士に相談することができることなどを本、ネットで調べている。」など、具体的にどうしたらいいのか知りたいという意見や、相続対策の方法について詳しく知りたいという意見も寄せられました。障害のある子への適切に資産を引き継ぐ方法として活用できる制度に特定贈与信託があります。障害の程度に応じて贈与税が一定額まで非課税となる制度ですが、認知度は3%に留まりました。Upload By 発達障害のキホン特定贈与信託とは、特定障害者(重度の心身障害者、中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障害者等)の親なきあとの生活を支援するための信託制度です。この制度を利用すると、障害の程度に応じて6,000万円もしくは3,000万円まで贈与税が非課税ととなるとともに、障害のある子どもへ生活費などとして定期的にお金を渡していくことができ、生活を安定させることができます。信託制度については、下記の記事をご参照ください。特定贈与信託も含め、信託制度の紹介をしています。「親なきあと」の生活やお金について寄せられた、保護者からのさまざまな声出典 : その他、「親なきあとの子どもの生活・お金に関して、困っていること、知りたいこと、社会に向けて発信したい・知ってほしいことなど、思うところ」についても、多くの声が寄せられました。「障害者の親向けの税の優遇制度があると聞いてるが、それについてもっと発信してほしい、 施設に入所するにはどの程度の費用が必要なのかを知りたい、グループホームで生活する場合、障害年金だけでやっていけるのか、実際他の人たちはどのようにしているのか知りたい」「お金を管理する方法がわからない。誰に相談したら良いか。親なきあとは、どうやって、誰に相談したら良いか。」「今回の質問項目で知らないことも沢山ありました。それがどのように有効かわかりやすく教えていただければと思います。」障害年金や障害者控除、信託などの財産管理をする方法、グループホーム(共同生活援助)を利用する場合の実情、親なきあとについての相談先などについての疑問が寄せられました。そこで、既存の記事で役立ちそうなものを、いくつかご紹介します。また、寄せられたご意見をもとに、必要とされる記事を今後さらに充実させていきたいと考えています。「手帳の交付や明らかに支援が必要な場合は、何らかの手だてがあり支援や補助の安心があるが、グレーのまま成長し、グレーな大人になった場合はどのように過ごすことができるか、自立していられるのか、親としては不安です。」「40代で知的、発達障害の子を育て始め、残りの時間を考えると、どこまで責任を持って見守りができるか。また、将来、該当児を託したいがため、兄弟にも過度な期待、プレッシャーをかけがちで、反省しつつも、やはり、強い対応をしてしまう。また、兄弟にも希望する人生があるのに、将来の職業、結婚の選択が狭まったと感じ、常に申し訳なく感じている。」「日々の生活でいっぱいで先のことなんて考えられない。」グレーゾーンにあるお子さんが適切な支援を受けられるのかといった不安や、きょうだい児への負担についての葛藤などから、日々の生活での問題の対処で精一杯で先のことを考える余裕までないといった声もありました。「もっと発達障害者を理解し働きやすい企業が増えてほしい。」「障害があるからといって、特別な目で見ないでほしい。」「ちょっとした手助けや、理解してもらうことは必要かもしれないけど、周りの人の関わり方一つで、社会人として、ちゃんとやっていけることを知ってほしい。」障害に対する偏見や障壁がない未来を願う、切実な声が多く見受けられました。障害のある子やその家族が、生き生きと暮らしていける世の中になるよう、これからも発達ナビでは、さまざまな発信をしていきたいと思っています。今回の調査結果から出典 : 今回の調査結果から、「親なきあと」に不安を感じているものの、具体的にどのような対策を取ったらよいか分からないという保護者が多いことが分かりました。発達ナビでは12~1月に「親なきあと」特集を組み、親なきあとの暮らしやお金の問題についてコラム記事を掲載していくので、ぜひ読んでいただきたいと思います。また、ママ友や障害のある子の家族会などの自助グループでの情報共有も非常に役に立ちます。保護者の皆さんが元気なうちに、さまざまつながりをつくっていくことが、親なきあとのお子さんの生活を支えることにつながるかもしれません。もちろん、日常生活だけで手一杯ということもあるかもしれません。あせらず、まずはできそうなことから、少しずつ進めていきましょう。
2017年12月25日信託とは、財産の管理を第三者に信じて託すこと出典 : 信託とは、自身の財産を、自分または他人のために管理・処分してもらうよう、人や機関に託す制度です。信託と一口にいっても、目的やニーズによってさまざまな商品があります。運用の専門家にお金を託して、株式や債券などに投資・運用する投資信託のほか、財産の継承をスムーズに行うための相続信託などは、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。自分以外の誰かに財産の運用を任せることを信託と言いますが、この制度を活用することで、親なきあとの子どものために資産を適切に管理し、必要な生活費などを定期的に交付することができます。ここでは、障害のある子の資産管理に信託を活用する方法について紹介します。信託制度では、財産を託す人を委託者、託され管理する人を受託者、その財産から利益を受ける人を受益者と呼びます。信託契約の形は、委託者と受託者が話し合って契約を結び、その契約に基づいて受託者がお金を管理しながら受益者に定期的に金銭を交付します。信託制度は、受託者の性質によって大きく2つに分けられます。1. 商事信託信託業の資格を持っている人や機関が受託者となる信託制度のことを言います。商事信託は報酬が発生します。2. 民事信託受託者に信託業の免許が不要で、受託者は主に家族や知人になります。報酬は必ずしも払わなくてもよいことになっています。また、民事信託の中でも受託者が家族である信託契約を家族信託、受益者が障害者や老人である契約を福祉型信託と呼ぶこともあります。信託制度の特徴出典 : 財産の管理方法の中でも、信託にはいくつかの特徴があります。管理をするのが第三者であること、契約が柔軟であること、です。たとえば、障害がある子どもに財産を遺した場合、第三者が適切に管理・運用してくれるのかが心配だという方もおられるかもしれません。信託契約を結ぶと、託された財産の所有権は委託者から受託者に移ります。ですが、この財産は受益者(この場合は障害のある子ども)のものなので、受託者が勝手に使うことはできません。信託した財産は契約に基づいた使い方しかできないのです。また、仮に受託者が破産してしまったとしても、この財産は債権者から守られます。また委託者が死亡しても、契約が終了することはありません。信託契約は委託者と受託者の間で財産の管理方法などが決められます。財産委任契約などと違い、比較的一人ひとりのニーズに沿った管理方法を選択できるのです。例えば、「子どもが亡くなった後は、残った財産はお世話になった施設に寄付したい」など、受益者の死後のお金の行方までも、事前に決めることができます。「遺産は子どもに遺したいけど、その子が亡くなったら面倒を見てくれた知人に贈りたい」など、生前お世話になった人や施設に感謝の気持ちを伝えたい人にとっては嬉しい特徴だと言えるでしょう。障害のある子どもの家族が、信託制度を活用するメリット出典 : 障害がある子どもの保護者にとって、親なきあとの子どもの生活についての大きな心配事のひとつに「お金の管理の問題」があげられます。障害がある人の場合、収入が障害のない人よりも少なくなる場合が多く、できるだけ多くのお金を遺しておきたいと考える保護者の方も多いでしょう。親なきあとのお金の問題においては、どれだけ多くの財産を遺せるかだけでなく、子どものために遺したお金をどのように管理するのかも重要な要素となります。まとまったお金が手元にあったとしても、だまし取られたり、浪費してしまったりと、トラブルが生じる可能性があります。特に、ある程度認知能力があり、施設などで暮らさず一人で生活できる場合は、より財産管理におけるリスクが高くなるでしょう。そのため、本人を財産管理の面からサポートする仕組みを作っておく必要があるのです。契約の下に第三者が責任を持って管理する信託制度を利用することで、財産管理における心配事を解消することができます。信託にもさまざまな種類があります。次の章から、障害のある子どもを育てる家族に活用してほしい信託を紹介していきます。特定贈与信託出典 : 特定贈与信託は、特別障害者(重度の心身障害者)や、それ以外の特定障害者(中軽度の知的障害者および障害等級2級または3級の精神障害者など)の親なきあとの生活を支援するための信託制度です。信託銀行などの受託者が、親族などから信託された財産を管理・運用し、受益者へ定期的にお金を交付します。この信託制度の最大の特徴は、節税と財産の定期交付が同時に叶うことです。一定額まで贈与税が非課税になり、受託者である信託銀行などが、障害のある子へ生活費や医療費などを定期的に交付してくれます。特別障害者(重度の心身障害者)は6,000万円、特別障害者以外の特定障害者(中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障がい者等)は3,000万円を限度として贈与税が非課税になります。以前は、特別障害者だけがこの制度の対象でしたが、2013年の法改正によって特定障害者も利用できるようになり、利用できる人の幅が広がりました。通常、贈与税は年間110万円以上の贈与から課税されるため、節税という意味でもメリットがあります。出典:障害者と税|国税庁・金銭・有価証券・金銭債権・立木および立木の生立する土地(立木とともに信託されるものに限る)・継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産・受益者の居住の用に供する不動産(上記の財産のいずれかとともに信託されるものに限ります。)信託できる財産は、受託者の管理できる能力によって異なりますので、いくつかの機関や専門家に相談してみましょう。・ 委託者信託する財産、印鑑・受益者障害者非課税信託申告書、特定障害者の区分に応じた証明書、住民票、 印鑑等以上のほか、後見人等が選任されている場合には、後見人等の届出書、印鑑証明書等が必要となります。これらは一例であり、利用する信託銀行によって多少の違いがあります。利用を考えている信託銀行の相談窓口で聞いてみましょう。特定贈与信託│一般社団法人 信託協会特定贈与信託│三井住友信託銀行特定贈与信託│三菱UFJ信託銀行生命保険信託出典 : 生命保険信託とは、保険の受取人を信託銀行や信託会社にして、受託者である信託銀行などが受益者である障害のある子のために、学費や生活費を一括、または分割で交付する、という制度です。生命保険信託の一番の特徴は手続きが比較的簡単なことです。先の特別贈与信託や次の後見制度支援信託は、利用するための条件や手続きがいくつかある一方、生命保険信託は保険契約に信託契約を付加するだけなので、比較的取り入れやすいと言えます。保険金いくつかの費用が保険金から支払われます。主に契約金、委託者死亡時の保険金受領時報酬、信託中の管理手数料がかかります。これらの費用は商品によって数万円~十数万円と大きく変わり、また死亡保険金額の最低ラインを設けている場合もあるので、どの商品がご家庭の状況に合うのか、いくつかの商品を比較検討することをおすすめします。生命保険信託とは│プルデンシャル信託株式会社生命保険信託「想いの定期便」│第一生命生命保険信託型│三井住友信託銀行『生命保険信託(未来あんしんサポート型)』の取扱開始について│みずほ信託銀行株式会社、FWD富士生命保険株式会社、株式会社ジェイアイシー後見制度支援信託出典 : 後見制度支援信託は、後見人制度を財産面から支援する信託制度です。後見人とは、障害や加齢のため判断能力が十分でない人を支援する役割を持つ人のことです。生活費など日常使う分のお金は後見人が管理をし、その他の日常では使わない分のお金を信託銀行が管理をする仕組みを言います。後見制度支援信託を利用することで、財産の管理が後見人と家庭裁判所という2段階制になるため、より安全に財産を守れるようになります。そのため、被後見人に500万円を超える財産がある場合に、家庭裁判所がこの制度を利用すべきという判断をすることがあります。金銭のみ家庭裁判所からの指示書のほか、成年後見人や被後見人についての確認書類などが必要です。必要なものは取り扱う信託銀行などによって異なるので、各社の相談窓口にて詳細を確認する必要があります。後見制度において利用する信託の概要│家庭裁判所後見制度支援信託│信託協会後見制度支援信託│三井住友信託銀行後見制度支援信託のしくみ│三菱UFJ信託銀行まとめ出典 : 信託制度は、自分自身や大切な人のために、第三者に財産の管理を託す制度です。これは、障害がある子どもの親なきあとの生活をサポートする際にも有効な制度と言えるでしょう。委託者と受託者間の話し合いによって契約内容を決めることができるので、一人ひとりに合った財産管理方法を結ぶことができることも利点です。現在、こうした福祉型信託をめぐる法的な環境は、法制度が変わるなど過渡期にあり、今後より活用しやすい制度になっていくことが期待されています。今はまだ契約を結ぶ段階ではなくても、まずは信託制度について理解を深め、将来に向けて相談できる専門家や機関を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
2017年12月20日発達障害当事者による、発達障害当事者のための居場所「Necco」Upload By 発達ナビ編集部東京の高田馬場にある「Necco」は、大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所です。高田馬場にある雑居ビルの1室にあり、18時までは一般のカフェとして発達障害の当事者によって営業され、18時以降はフリースペースとして発達障害の当事者のために場が解放されます。スペースでは茶話会やゲーム大会といったイベントも頻繁に開催されており、発達障害の当事者が気軽に集まれる居場所づくりがなされています。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)取材に訪れた日もたくさんのお客さんで賑わっており、別フロアではフラワーアレンジメント講座が開かれていました。Upload By 発達ナビ編集部本棚には発達障害関連の本が多数並んでいます。Upload By 発達ナビ編集部Neccoは自由に集まれる居場所としては2010年、カフェとしては2011年に活動をスタートしており、大人の発達障害当事者のための常設の居場所としては、日本で最初に出来た場です。今回の記事では、このNeccoを立ち上げた方であり、ご自身も発達障害の当事者である金子磨矢子さんに、活動を始めたきっかけや、長年続けていく中での苦労、活動を続けるモチベーションや今後の展望についてお話をお聞きしました。金子さんは平成28年度厚生労働省より「発達障害者の当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を受託し、その報告会である「発達障害当事者会フォーラム2017」を開催された主催者のおひとりでもあります。この報告会は、1月にも「発達障害当事者会フォーラム2018」として大阪で開催する予定とのことです。金子さんのインタビューから見えてきたのは、当事者活動を続けることの大切さと、当事者活動としてどう外の社会と関わっていくかという問題意識でした。ずっと自分はちょっと変な子だと思っていたUpload By 発達ナビ編集部―金子さんがご自身の発達障害について知ったのは、どういったきっかけだったのでしょうか。金子さん: 子供のころからずっと、自分はちょっと変な子だとは思っていました。しかし本格的に自分のADHDを知るきっかけとなったのは、子育てに悩み、本屋で調べ物をしていたときですね。子どもが2才の時にプレイグループに参加させたんですけど、どうにもよその子と何かが違ったんです。なかなかうまく他の子どもと交わることが出来ず、自分のやり方で自分なりの遊びをつくるのを好む傾向があって。プレイグループには、参加している子供の他にその子たちの弟や妹にあたる赤ちゃんも何人かが場にいたのですが、赤ちゃんの泣き声を極端に嫌がるそぶりも見せました。うちの子はよその子となにか違うのかしら?という答えが知りたかったんですが、当時はインターネットも普及していなかったので、しょっちゅう本屋に入り浸っては答えを探し求めていました。その時に出会ったのが『のび太・ジャイアン症候群』という本です。落ち着きがない・忘れ物が多い・後先を考えずに行動する・いじめられる…この本を読んで、子どものことはひとまずそっちのけで「これは私だ!」って叫びそうになりましたね。その場で立ちつくし、購入して帰り、何度も何度も読みました。それまでも自分自身に対する違和感はずっと持っていたんですが、こんな変わった人は自分だけじゃない、特性というものなんだと知り、この本にとても励まされたんです。よその子とは何かが違うと感じていた子どもに関しては、その後、2004年ごろですかね…テレビ番組がきっかけで、アスペルガー症候群だということに気付きました。自分が発達障害だと気づいてから起こした私の行動Upload By 発達ナビ編集部―ご自身の発達障害特性に気付いた金子さんですが、当事者としてNeccoの活動をはじめるきっかけは何だったのでしょうか。金子さん: 最初は活動というまでのものではなかったんです。SNSが普及した頃に、そのSNSの発達障害コミュニティのメンバーでリアルでも会ってみようということになり、定期的にオフ会をするようになったのがはじまりです。そうやって集まるようになっていた中で結束が強くなったのは、リタリンの処方が制限されるようになったのがきっかけです。(編集部注:現在リタリンはナルコレプシーにのみ適応)メンバーの中にはリタリンなしではADHDの症状がしんどい人もいて、これはなんとか訴えないと!ということで、厚労省の会議に傍聴に行ったり、ネット上で活動を行ったりしました。結局私たちの訴えは聞き届けてはもらえなかったのですが、この活動がきっかけで2つの願いが強まりました。ひとつは、いつでも私たち発達障害の当事者が集まれる場所がほしいということ。当時は私の家のリビングに集まってミーティングをしていましたので。そしてもうひとつは、自分たちが集まる居場所を得るだけではなく、社会に対して働きかけを行い、当事者発信で発達障害を広く知ってもらうことです。リタリンの処方うんぬん以前に、当時の発達障害の認知度の低さを思い知らされましたね。私自身、自分の発達障害を知ることが出来てよかったと思っているんです。だから今度は私が、まだ自身の発達障害に気付かずひとりで悩んでいる人の気付くきっかけになったり、居場所になれたらいいなと思って、啓発や居場所づくりの活動を続けています。また、最近でこそ「発達障害」という名前だけは知られてきましたが、「それでは発達障害とはいったい何なのか」という本質的なことは、まだほとんどの人に理解されていないのではないでしょうか。発達障害の啓発活動の動機として、生きづらさを抱えながらも自分が発達障害だと気付かずに生きている方本人に、自分自身のことを気付いてもらいたいというのもありますが、本人だけじゃなくてもっと多くの人にも発達障害についてちゃんと知ってもらいたいと思っています。というのも、発達障害に対する無理解によって苦しんでいる当事者の人がたくさんいることを知っているからです。この人たちはこういう人たちなんだよっていうことを、目に見えないのでむつかしいとは思うのですが、発達障害じゃない人たちにも分かってもらいたい。学校の先生、役所の方、会社の上司…出来ないことは出来ないんだと分かってもらえないと、当事者の方はつらいばっかりです。わざとやらない、怠けたくて障害のせいにしている、そういう風にとられてしまいがちなんですが、本当にそんなことないんですよ。むしろ精一杯努力している真面目な方が多いと思います。必要としてくれている人がいる限り、続けていきたいと思ってるUpload By 発達ナビ編集部―Neccoを続けてきた中で、印象に残っていること、大変だったことはありますか。金子さん: もう、大変なことだらけです(笑)まずNeccoをはじめるにあたり、場所探しから大変でしたね。「借りた場所を発達障害の人の居場所にしますので物件を貸してください」と言って、理解してくれた上で快く貸して頂ける場所を探すのに1年ぐらいかかりました。現在Neccoの運営母体は一般社団法人としており、非営利で運営しています。カフェの店員はボランティアで、費用の持ち出しも発生しています。とはいえNeccoを必要としてくれている人がいる限り、なんとかして運営を続けていきたいと思っています。「Neccoという居場所があるから今、学校や会社に頑張って行けている」、そういう方がたくさんNeccoにいらしているんです。なかには毎週末、長野から夜行バスでNeccoに来ている方もいます。月から金までなんとかお仕事を頑張り、金曜の夜の夜行バスで東京に来て、日曜の夜の夜行バスで長野に帰っていくんですね。また以前は40才前後のいわゆる団塊ジュニアといわれる世代の方が多かったのですが、最近は高校生や大学生といった若い方も増えてきました。当事者としてどう社会と関わりを持つかUpload By 発達ナビ編集部―今後、Neccoの将来の展望はありますか。金子さん: Neccoに関していえば、"来たかったらいつでもここに来ていいんだよ"という居場所がある状態をこれからも維持していくだけだと思っています。発達障害の人は、かつての私がそうであったように、いろんな場所で苦労している方が多いと思います。そういった人たちの誰もが気軽に来れるような居場所を準備しておきたい。欲を言えばここだけじゃなくて、もっと日本中のいろいろなところにたくさんNeccoのような居場所ができたらいいなとは思いますね。また最近力を入れていたのは、大人の発達障害当事者会に関する調査報告書の作成ですね。これは厚生労働省から依頼を受けた調査事業で、私は事業責任者をしていました。長年Neccoに関わってきて、自分たちで自分たちの居場所をつくることももちろん大切だと思っていますが、当事者たちだけでやっていくのはなにかと限界があります。というのも、当事者の生きづらさは、自分の努力や行動で解消出来る部分もありますが、当事者の周りにいる発達障害ではない人や社会の理解、配慮や助けがとても重要です。また先ほどお話したように、私は私自身が発達障害だと分かったことですごく人生が楽になった経験から、まだ自分の特性に気付かず生きづらさを感じている人に発達障害というものを知ってもらいたい。ですから発達障害の啓蒙のため、まず私が出来ることとして、当事者や当事者会の情報を取りまとめ、私たちの生きる困難さや活動を社会に向けて発信し、知ってもらう必要があると考え行動しています。長年発達障害の当事者活動に関わってきましたが、課題はまだまだ山積みです。当事者同士の活動に関して言えば、とにかくいろんな特性を持った方が集まるので、運営のむつかしさがあります。こだわりの強い特性の人同士の意見が対立して分裂してしまったり、正直当事者同士での連携のむつかしさは感じています。なんとか意見をまとめてルールをつくってみると、今度は逆にそのルールを文字通りにとらえてしまって、ルールからちょっとずれる人がいるとこだわりから許せない人がいたり。たとえばNeccoでいうと、かつてはフリースペースのクローズ時間は22時だったのですが、スタッフが大変だということで21時に変更したんですね。たまに場が盛り上がってクローズが21時を過ぎてしまうことがあったのですが、そのことに対して「ずるい」と腹を立てる方がいたこともありました。同じ発達障害の当事者同士とはいえ、特性は本当に人によってさまざまなので、いろんな国の外国人同士が集まっていっしょに何かやろうとしているような困難さを感じています。当事者活動をどうしたらいいか、ずっとそればかり考えています。しんどいと思うことも多々あります。だけど続けている、それは、私は子供の頃からずっと自分のことをダメな人間で、人の役に立つことが出来る人間ではないと思っていたんですね。そんな私が今、活動を通して、目の前の人の支えになったり、社会に働きかけを行ったり出来ている。そのことが生きがいであり、生きるよろこびだからかもしれません。見えない障害とどう向き合うか「私は私が発達障害だと気付けて心から良かったと思っています」これは取材中に金子さんが繰り返しおっしゃっていた言葉です。この記事を掲載している発達ナビのユーザーさんからは、病院へ行き診断を受けることへの心理的抵抗感や、障害受容のむつかしさなど、日々さまざまなお悩みが寄せられています。自分や自分の子どもの生きづらさ・育てにくさをどうとらえるかについて、それぞれに多様な悩みを抱えられているのだと思います。「見えない障害」であり、また「ここからこっち側は障害です」と線を引くように切り分けることは難しいからこそ、その悩みは尽きないのかもしれません。いろんな考え方があって当然で、答えはないのかもしれません。金子さんの場合、彼女は子どもの頃からずっと「自分はちょっと変な子だ」「自分は努力不足でダメだ」と思い悩んでいたそうですが、一冊の本との出会いをきっかけとして発達障害を知ったことで、自分は努力不足でもなく、親の育て方のせいでもなかったということが分かり人生が前向きに進んだと語っています。今、人知れずしんどい思いをしている人、一人でつらい思いを抱えている方が、もしこの記事を読んでくださっていたら、こういった考えや経験をもとに活動をしている人がいることや、その人がつくった居場所があることを、選択肢のひとつとして心の片隅にとどめておいていただけるとうれしいです。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)
2017年12月01日平成30年度の「東京都立高等学校募集案内」が発表。障害への合理的配慮は?出典 : 東京都教育委員会から、「平成30年度東京都立高等学校募集案内」が発表されました。全日制高校の推薦入試の場合は2018年1月23日(火)が、学力検査の第一次募集の場合は2月6日(火)・7日(水)が入学願書の受付日となります。平成30年度東京都立高等学校募集案内入学試験が差し迫ってくる中、障害のあるお子さんや保護者の皆さんにとって、受験時に特性を踏まえた配慮をしてもらえるのかが気になるのではないでしょうか。今回の記事では、具体的にどのような合理的配慮が可能か、またその申請方法などについて、都立高校の場合を例にご紹介します。「障害者差別解消法」で、受験時の合理的配慮を義務付け2016年4月に施行された「障害者差別解消法」では、障害がある志願者が公立高校を受験する際、障害による不利益が生じないような配慮について申請があれば、過度に負担にならない範囲内で合理的配慮を提供することが義務付けられました。障害者差別解消法でも定められているように、都立高校での入学試験でも障害特性に応じた合理的配慮がされています。学力検査、小論文又は作文、面接等において、検査方法、検査時間、検査会場等についての特別な措置を申請することが可能です。志願者の障害の特性等を考慮した上で、問題用紙・解答用紙の拡大、英語リスニングテストでの座席の配慮、別室受検、検査時間の延長、記号選択式での受検、ICT機器の使用、介助者(代筆者や音読者などを含みます。)の同行などが認められます。また、現住所から通学至便な全日制又は定時制の高校を志願する場合、選考の特例を申請することが可能です。合理的配慮の例としては、書字に困難がある場合:・問題用紙を拡大して記入をしやすくする・試験時間を延長する・パソコンを使用して作文問題に解答できるようにする識字に困難がある場合:・問題用紙にルビをふる・介助者が検査問題を読み上げるといったことが考えられます。車椅子を使用する場合などは、検査会場となる教室の階数や机の位置、高さなどへの配慮も申請できるでしょう。ただし、志願者の特性や都立高校側の状況によって、可能となる配慮の内容は異なるので、中学校を通して早めに申請することが大切です。なお、合理的配慮を求めたからといって受験の合否判定で不利になることはありません。都立高校受験の合理的配慮、申請手続きの締切や方法は?出典 : 申請は、在学する中学校を通して行います。まず、担任の先生に相談し、中学校長を通じて志望する都立高校の学校長へ、所定の申請書を用いて申請します。申請後、中学校・都立高校・東京都教育委員会で、志願者の特性や、中学校での学習指導の状況などを考慮した対応を調整することになります。都立高校への申請締切は2017年12月22日(金)までですが、早めに申請ができると、その分余裕をもって都立高校とのやりとりをすることができます。中学校に在籍していない場合は、都立高校入試相談コーナー(電話 03-5320-6755)まで問い合わせます。高校入学後の学校生活での合理的配慮についても相談できる?出典 : 障害がある生徒の場合、入学試験だけでなく、入学後の生活でも合理的配慮が必要となることがあります。学校生活における合理的配慮についても、志願する都立高校に事前に相談することができます。入学試験での配慮の申請に合わせて相談してみましょう。東京都以外の公立高校受験での合理的配慮の対応は?各都道府県それぞれで対応の方法や基準は異なるため、すべての都道府県で都立高校と同様の配慮があるとは限りません。詳しくは、在籍する中学校の先生を通して確認をする必要があります。子どもたちが、未来への一歩を踏み出せるように出典 : 障害があっても、その特性や困り事に応じた合理的配慮を受けることによって、自分の力を発揮して入学試験に臨むことができるようになります。志望校に合格する。そのことで、子どもたちは未来へ向かう道へ踏み出していくことができます。そのためには、自分の力を発揮できる環境をつくることが大切です。これから高校受験を控える生徒さん・保護者の方々は、まずは中学校の先生に相談をしてみましょう。
2017年11月10日