金田朋子(44・以下金田)「おかげさまで6月20日に無事、3,096グラムの元気な女の子が生まれました!」 森渉(34・以下森)「スミマセン、赤ちゃんの世話もしなければいけないんで、今日は僕もついて来ました!」 44歳での高齢出産から2カ月、声優でタレントの金田朋子は、相変わらず声もテンションも高かった。本誌が前回彼女をインタビューしたのは今年2月、妊娠6カ月のころだった。今回は無事に母になった喜びを取材することにしたのだが、インタビュー現場には、生まれたばかりの千笑ちゃんや、俳優で10歳年下の夫・森渉もやってきた。 金田「まさかの帝王切開でした。予定日の4日前に定期健診のつもりで病院へ行ったら、先生が『頭が大きく育ちすぎているから自然分娩は難しい』と、おっしゃるのです。でもその先生はとても忙しくて、翌日しか空いていなかったので、急きょ『即日入院、翌日手術』となりました。私は心の準備が全くできてなくて、そのうえ、帝王切開が怖くて怖くて……」 森「朋ちゃんにとっては切腹が、いちばん苦痛を感じるつらい死に方らしいです」 金田「だっておなかを切るのは同じだし……」 森「帝王切開の可能性もあるとは先生から言われていたのですが、本人はすっかり自然分娩のつもりでいたので、パニックになったようです。入院した夜はずっと泣いていました」 金田「最初はとにかく帝王切開って聞いただけで動揺して『怖い、怖い』って泣いていたんですけれど、そのうちに“あの子”のことを思い出しました。そうしたら「あっ、あの子のためにも頑張らなくっちゃ」と考えられるようになったんです」 金田が“あの子”と呼ぶのは、彼女が初めておなかに宿した命のこと。彼女が、森と結婚したのは’13年。実はその3年後の’16年には1度妊娠していたのだ。 金田「私たちが子づくりを始めてすぐにできた子なんです。’16年11月22日の“いい夫婦の日”に生まれる予定の子だったのですが、妊娠2カ月くらいのときに流産をしてしまいました。実は、40歳を過ぎたら自然妊娠の確率が5%だってことを、このとき初めてお医者さんから聞かされたんです。本当に無知でしたね。それからは高齢出産のことや、不妊治療について勉強したのですが、不妊治療がいかに大変なことなのかが、よくわかって……」 森「僕も責任を感じました。彼女と出会ってからすぐに結婚を意識したものの、子どもをつくるのは、僕が仕事でもう少し成果を上げてからと、彼女を待たせていたんです。朋ちゃんは僕より10歳年上なので、出会った時点で高齢出産の可能性はすでに高かったのに……」 金田「(うなずきながら聞いている)」 森「僕のせいで彼女を巻き込んでしまって、申し訳なかったと思いました。朋ちゃんが寝ている横で神様に、『僕ができることだったら何でもするので、もう1人授けてください!』と、お願いしました。次のチャンスで自然妊娠ができなかったら、体外受精をしようと2人で考えていたときにできたのが千笑ちゃんなんです」 手術開始から2時間後、2人は初めてわが子と対面した。 金田「もう『わーわーわー』ってなっちゃいました。さっきまでおなかの中でポコポコと私を蹴っていた子が目の前にいることが信じられなくて、すぐには直視できませんでした。好きな人にやっと会えて照れるっていうか、何度も見直しちゃう感じでしたね」 森「僕は、もっと感動して泣いたりするのかと思っていたのですが、この子を見た途端、口角が上がったまま顔が固まってしまうくらいにニコニコしっぱなしでした」 金田「実は流産をしたころは私たち、けっこう頻繁にけんかをしていたんです。でもおなかの子が天国にいってしまって、いろいろ考えました。いい夫婦の日(11月22日)に誕生予定だった子が私たちの元を去ったのは、どうしてなんだろうって。もしかしたら『パパ、ママ、夫婦仲よくしてね』って、あの子が私たちに教えてくれたんじゃないかなと思いついて……。『けんかをしないようにしようね』って2人で話しました」 森「僕もそのころ“胎内記憶”に関する本を読んだんです。その本には、子どもが『パパとママを選んで生まれてきたんだよ』と言うくだりがありました。だから『自分たちのところに来たいと思ってもらえるような2人にならないと』と、思ったんです」 金田「だから、赤ちゃんが生まれてきてくれて本当にうれしかったし、せっかく来てくれたんだから、たくさん笑ってほしいなって思いました。それで赤ちゃんの名前にも“笑”の字を入れることにしたんです。いまでも、やっぱりけんかをしてしまうことはあるけれど、千笑ちゃんを見ると『あっ、いけないいけない、気をつけなくちゃ』と思います」 森「僕はそんなにけんかをしているつもりはないんですけれどね(笑)」
2017年08月26日星野源の『恋』からファンになったあなたも、デビューから追いかけているあなたも、お待たせしました。まもなく出ます、10枚目。誰もが心の奥に持つ、優しい気持ちを呼び覚ましてくれる新曲『Family Song』。家族をテーマにしたドラマの主題歌である。「改めて家族ってなんだろうと考えました。『恋』を作ったときも思いましたが、これからの家族は、様々な形があり得ます。両親が同性の場合もあるかもしれないし、いままでのみんなが共有していた家族像とは違ってくる。そうしたら、血のつながりや同居していることだけが家族じゃない。相手の幸せを心から祈れる関係をいうんじゃないかと思ったんです」胸を打つ、サビのフレーズは、まさに祈りそのもの。「言葉にすると少し恥ずかしいですが、家族の一番根っこにあるものはやっぱり<愛>だと思うんですね。奇をてらうことなく、素直にそれを歌詞にできたのは、書いていて気持ちがよかったです」一方、カップリング曲の「肌」は、匂い立つ大人の恋を連想させるうっとりソングだ。「こういう音がテレビから流れることはあまりないので、いいなと思いました。誰もが知るボディソープのCM曲なので、ファミリーなイメージにソウルミュージックの官能を重ねて……」曲を聴くかぎりは、男女の歌の装い。<ファミリーなイメージ>は想像すらしなかったけれど。「恋人とも夫婦とも、親子とも捉えられるように描いたんです。歌詞の『その胸に口づけを』は、官能的な意味も、赤ちゃん授乳の意味も込めました」なるほど、さすが策士、すっかり騙されましたと伝えると、「騙してないです!(笑)いろんな解釈ができる、幅のあるものにしたいと思ったんです。この曲に限らず、基本的に一人称で歌っていても、主人公は僕ではないんですよね。聴く人それぞれの想いや物語が載せられる曲になったらいいなと思っています」ご存じのとおり、前作「恋」は大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌。CDセールス35万枚、ダウンロード数も170万を超え、小学生からアメリカ大使まで踊りまくった「恋ダンス」は社会現象に。その次の新曲となれば、プレッシャーもあったのではないか。「そういうのはなかったです。『恋』はドラマ公開の1週間前にリリースしました。シングルが売れない時代にありがたいことに多数売れて評判もよかった。そのとき、純粋な<楽曲だけの力>を確認できたんですね。だから、その後の盛り上がりについては、僕の力を超えた、なんというかボーナスのようなものに感じています」ドラマの作品の力、俳優・星野源が出演したこと、ダンスの力。なにより、簡単な振付ではないにもかかわらず、大勢の人が「踊りたい!」と各所で挑戦してくれたことが要因と冷静に分析する。「だから、次の楽曲にこの現象を反映させちゃいけないと考えました。素直に好きなもの、自分が楽しいと思うものを作りました」シングル『Family Song』(日本テレビ系水曜ドラマ『過保護のカホコ』主題歌)花王ビオレuボディウォッシュCM曲「肌」を含め、全4曲収録初回限定盤(CD+DVD)¥1,800通常盤(CD)¥1,200 8/16発売。(SPEEDSTAR RECORDS)※『anan』2017年8月9日号より。写真・伊藤彰紀(aosora)スタイリスト・TEPPEIヘア&メイク・高草木 剛(VANITES)取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年08月13日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「難民と日本」です。日本ができる難民支援は大きい。問題は資金不足。世界中で紛争や迫害により家を追われた人の数は、2016年末で6560万人。この数は過去最多で、前年から30万人増えています。そのうち難民の数は2250万人。急増しているのは内戦の続くシリアと南スーダンです。難民の50%は子どもで、半数の子どもたちが学校に行けなくなっています。そこで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2018年9月の国連総会までに、難民問題解決を各国政府に要求する、500万人の署名を集める運動、「#難民とともに」キャンペーンを開始。「すべての難民の子どもたちが教育を受けられること」「難民の家族が身の安全を確保できること」「仕事や新しい技術を学ぶ機会を通して、社会に貢献できる環境を整えること」を訴えようとしています。署名は日本でも集めていますが、まだ4017名(6月30日時点)しか集まっていません。UNHCRがこのような運動をはじめたのも、トランプ現象やヨーロッパ各国での右派勢力台頭など、よそ者を排斥する流れが強くなっているからなんですね。現在500万人以上といわれるシリア難民のうち、トルコは300万人以上を受け入れ、街の空きアパートを開放したり、難民のための大学を作ったり。ただ、言語も文化も違うため、トルコ人とシリア人の間で不協和音が起こることもあります。そこで活躍するのが日本人です。NGO「難民を助ける会」は、トルコにコミュニティセンターを作り、シリア難民の子どもの言語教育をサポート。また、貧困で学校に行けないトルコ人の子どもたちにもセンターを開放しています。他国の支援団体もありますが、紛争を引き起こした根本原因は、欧米諸国が勝手に線引きしたことによる民族分断。ですから、日本のように中立な立場から支援することが、とても有効なんですね。ヨルダンでは、8万人が暮らすザータリ難民キャンプで、NPO「国境なき子どもたち」が、トラウマを抱えた子どもたちの心のケアをサポートしています。誇るべき日本のNGO、NPOですが、国の支援金が引き下げられてしまい、資金難に。十分な支援が難しくなっているのが現状なんです。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年8月2日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年07月27日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「発達障害」です。障害も個性。正しい対応を理解すれば、豊かな共存社会に。発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)など、脳機能の障害の総称で、「通常低年齢に発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。自閉症は、ある種のものに対して強いこだわりを持つ、相手の気持ちを察するのが困難、ADHDは落ち着きがなく気が散りやすい、衝動を抑えるのが苦手など、それぞれ特徴があります。ただ問題は、それらが障害なのか本人の気質によるものなのかわかりにくいこともあり、周囲の理解がないために集団生活でトラブルが生じるということです。子どもの場合、間違った対応により悪化することもあるので、早期発見・早期治療が大事といわれています。発達障害という概念が日本に入ってきたのは1970年代。2004年に発達障害者支援法ができ、具体的な法整備が始まり、市町村に支援センターが作られました。5年前の文科省の調査によると、知的発達の遅れはないものの、学習面、行動面で著しい困難を有する児童生徒の割合は6.5%。40人学級に2~3人なのだそうです。ただ、発達障害の子を持つお母さんに取材すると、法が整備されても、疎外される風潮がぬぐえないという声が聞かれます。カミングアウトしたとたん、子どもが学校でいじめられたり、近所付き合いが疎遠になったり。「発達障害もひとつの個性と認めてほしい」とその方は言っていました。たとえば、相手が自閉症ならば、「いま、私は怒っているんですよ」とか、はっきりと気持ちを言葉にして伝えるなど、対処の方法を知ればよいのではないでしょうか。エジソンやアインシュタインも発達障害だったといわれ、ある分野で突出した才能を発揮される方も少なくありません。まずは、発達障害に対する正しい知識を持ち、理解を示すことが大事なのではと思います。発達障害に関しては、文科省のHPにも詳しい情報が載っています。また、発達障害の子どものための療育型保育園を運営し、子どもとその親のサポートをしているNPO法人「発達わんぱく会」の活動なども、知識を深める参考になるかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年7月26日号より。イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年07月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「人口爆発」です。食糧不足も深刻化。昆虫食の時代に?7月11日は世界人口デー。30年前のこの日、世界人口が50億人を突破したことから、国際連合開発計画が記念日に定めました。現在の世界人口は約70億人。日本では少子高齢化による人口減少が問題になっていますが、世界人口は爆発的に増加中。1秒に2.47人。1日に20万人。年間7800万人増え続けています。これは、カナダ、オーストラリア、ギリシャ、ポルトガルの人口爆発人口合計とほぼ同じ。4か国分の人が毎年増えていると思うと、恐ろしい数です。このままいけば、2050年には98億人に達すると予測されています。人口増加による一番の問題は資源不足です。水不足はとくに深刻になっており、現時点で約7億4800万人の人が安全な飲み水を手にいれることができていないそうです。経済が発展すると工場などでも水を大量に使うため、2020年には世界は、いまより40%以上多くのきれいな水が必要になる計算に。日本では、北海道のきれいな水資源近くの山や森林が、密かに海外資本に買い占められているということも、実は問題視されているんです。世界の食糧不足も深刻です。国連の食糧農業機関(FAO)の調査によると、2050年までに世界で60%の食糧生産を増やさないと、人口に見合った供給ができなくなるとか。とはいえ、食糧を増やすには土地や水が必要。地球温暖化による世界的な異常気象で、農作物も不作がち。すると貴重になった小麦や大豆などが投資の対象になり、ますます値が上がり、貧しい国は買えなくなってしまうのです。2010年に北アフリカと中東で起きた「アラブの春」は、干ばつにより穀物が高騰して食糧が買えず、我慢の限界に至った若者たちが蜂起したという背景がありました。人口増加、食糧不足、飢餓や貧困が深刻化すると世界の治安はますます悪くなるでしょう。そこでFAOが推進しているのが昆虫食です。まずは家畜の飼料用に昆虫を養殖するというもの。養殖には作物ほど広大な土地はいらないし、温室効果ガスの発生も少なくて環境に優しい。将来性があると開発が進められているんです。日本でも、大学生がコオロギラーメンを開発して話題になりました。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年7月19日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年07月13日「稲沢朋子トークショー&ヘアショー」開催概要「髪STORY vol.4」及び「STORY」5月号の発売を記念して、2017年4月2日(日)14:30から、阪急西宮ガーデンズ4階ガーデンズホールにおいて、「稲沢朋子トークショー&ヘアショー」が開催される。同イベントには、3月27日に発売される「髪STORY vol.4」または、関西エリアにおいて3月31日に発売される「STORY」5月号を、ブックファースト 阪急西宮ガーデンズ店で購入した、先着100名が招待される。トークショーでは、STORY専属モデルとして活躍する稲沢朋子が、自身のヘアスタイルや、ファッション、美容などについて、熱く語る。さらに、神戸のヘアサロン「shiomi H」代表 潮海達矢によるヘアショーや、ヘアカット&スタイリング体験などのイベントも用意されている。MCは、STORYの読者モデルでもある、人気TVレポーター坂田陽子が務める。稲沢朋子のプロフィール1974年2月27日生まれの稲沢朋子は、現在43歳。血液型はA型。所属事務所はアミューズ。読者モデルとして活躍した後、2016年5月号から人気ファッション誌「STORY」のレギュラーモデルを務めている。趣味は、ドライブ、格闘技観戦、ゴルフ、マラソンなど。特技はマリンスポーツというアクティブ派だ。storyweb.jpで掲載中のブログ「どんなときもBIG SMILE!」も人気を集めている。(画像は稲沢朋子オフィシャルブログより)【参考】※storyweb.jp※稲沢朋子オフィシャルブログ※アミューズオフィシャルサイト稲沢朋子プロフィール
2017年03月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「民主主義」です***日本は議会制民主主義の国。国民が選挙で代弁者となる政治家を選び、選ばれた議員が議会で政策を決めていきます。投票は、政治参加の大切な行動。ただし、政治への関心が高まり投票者が増えることはとても喜ばしいことですが、一方で、注意しておく問題もあります。それは以前にもとりあげた「ポピュリズム(大衆迎合主義)」の台頭です。無防備な有権者が、聞こえのいい政治家の言葉に踊らされるまま、安易に票を入れ、その候補者に票が集まると、思わぬ結果を招く。アメリカでトランプ氏がアメリカ大統領にまでなったのもその例です。そうならないためには、目先の利益にとらわれず、政治家の言葉の裏、その政策が本当によい結果を生むのかを見抜く力が必要。つまり、目覚めた有権者が増えていかないといけません。とはいえ、政策一つ一つの真偽を自分で調べるのは大変。そのためにニュースはあります。放送法のなかにも「健全な民主主義の発達に資するようにすること」という文言があります。つまり、民主主義は発展途上の、未完成なものなんですね。イギリス『エコノミスト』誌系列のシンクタンクは毎年、世界の民主主義のランキングを発表しています。選挙の行われ方や投票率、報道の自由などを指数にし、合計で判断します。日本は2014年までは20位「完全な民主主義」に入っていましたが、2015年は23位の「欠陥のある民主主義」にランクダウンしてしまいました。「独裁政治体制」を含む世界167か国中23位ですから、よいほうではあるのですが。ちなみに1位はノルウェーで、2位はアイスランド。北欧の国が上位にあります。北欧は社会保障が充実しているかわりに税金が高い。それは、国民が自発的に選んだ方針なんですね。自分たちの望む社会にするために、最低限、ルール作りに参加することが大切です。選挙で投票する以外にも、政治家の提案に、SNSなどを通して自分の意見を表明することも政治参加といえます。不満を抱きながらも、自分の意見を表さずに、ルール作りを他人任せにしてしまうのは民主主義に反した行為なのかもしれませんね。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月23日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年11月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「LGBT」です。***LGBTとは、「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉です。LGBは同性愛や両性愛の性的指向を指し、Tは性同一性障害を指すので、正確にはひとくくりにできないのですが、「セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)」を一般に知ってもらうため、まとめて呼ばれるようになりました。これまで、同性愛者というだけで、差別や偏見、人権が侵害されることが続いてきましたが、性的少数者への理解を示し、多様性を認める社会をと、LGBTが取り上げられる機会も増えてきました。誤解しないでいただきたいのは、LGBTを保護しよう、ということではありません。性的多数者と同様に、普通に生活ができる環境を整えようとしているだけなのです。たとえば、一般には結婚して家族と認められると、配偶者控除など税の優遇が受けられたり、家やお金を借りるときの保証人になることができますよね?ところが同性パートナーではこれらが認められません。そんななか、一昨年渋谷区では、同性でも結婚に相当する関係と認める「同性パートナーシップ証明書」を発行する条例が作られました。企業でも同様の動きがあり、パナソニックやソニーでは、同性でも結婚と認める社内制度を設け、結婚祝い金も出しているそうです。ANAやJALではマイレージを共有できるようになりましたし、携帯電話会社もソフトバンクを皮切りに、同性でも「家族割」が使えるようになりました。ライフネット生命では、同性でも死亡保険金が受け取れるようにしています。また、LGBTフレンドリーな会社を支援団体が認定する取り組みなども広がりつつあります。いま、日本のLGBT人口は約20人に1人といわれています。あなたの周りにも、LGBTであることを言い出せずにいる方が、いらっしゃるかもしれません。LGBTが特にマイノリティなのではなく、誰にでも他人と違う部分はあり、そのひとつが性の問題ということなのです。違いを「ないもの」と無視するのではなく、お互いに認め合った上で、共に生きる道を皆で作っていけたらと思います。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月16日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年11月13日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「経済波及効果」です。***「広島東洋カープ優勝による経済波及効果が331億円」だとか、映画『君の名は。』のヒットで聖地に多くの人が訪れ「モデルとなった飛騨市への経済波及効果が100億円を超える予想」など、経済波及効果という言葉をよく耳にしますね。これは、何かものごとが起きることにより商品が売れ、生産者や直接の関係者の所得が増える。周辺の関連業界への好影響、さらにその人たちの消費が伸びることで、無関係の産業でも利益を生む、二次的波及までを含めた予測を指します。総務省のホームページには、経済波及効果を算出する「産業連関表」が掲載されています。この産業連関表は1936年、アメリカの経済学者のレオンチェフ博士が最初に発表。第二次世界大戦後のアメリカの経済を予測し、高い精度を示したことから、活用されるようになりました。日本の産業連関表は1951年に、当時の通商産業省によって作成されました。経済波及効果があったと報じられれば、人々の投資意欲や消費意欲を高めますよね。そうやって景気を良い方に向かわせるのはよいことなのですが、国が経済波及効果という言葉を持ち出したときには、少し懐疑的になったほうがよいかもしれません。なぜなら、推し進めたい政策を通すための説得材料として、都合のいい情報だけを流している場合もあるからです。日本銀行の算出によると、2020年までの東京五輪開催の経済効果は、訪日観光者数が約3300万人に達し、1人当たりの消費額も増加、建設投資総額は10兆円に。実質GDP成長率も'18年まで毎年0.2~0.3ポイント押し上げると予想されています。しかし、あくまで試算ですから、そこまで楽観視してよいかはわかりません。TPPに関しても、政府は日本が参加すれば、貿易が盛んになり生産性が上がり、賃金も雇用も増え、貯蓄や投資にお金が回り…と、良い循環が生まれると言っています。しかし、良い面だけでなく、農林水産省のホームページでは、農林水産物の生産減少額が1300億~2100億円と予想されています。このマイナスの経済効果の報道は、あまり聞こえてこないんですね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月9日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年11月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アフリカ開発会議」です。***8月に第6回アフリカ開発会議(TICAD)がケニアで開かれました。アフリカの開発支援のために、日本が世界に呼びかけて1993年に始まった会議で、5年に一度開催され、今年初めてアフリカで行われました。アフリカは人類発祥の地といわれ、ナイル文明など、豊かな文化や歴史があります。ところが19世紀に欧州諸国が肥沃な土地を奪い合うようになり、アフリカを勝手に分割統治、植民地にしてしまいました。その後、アフリカ諸国は独立しはじめますが、欧州各国によって決められた国境は、先住民族の文化や生活を無視した線引き。その問題は現在の内戦や民族紛争にもつながっています。また、アフリカはほかにも、食糧不足や干ばつ、感染症、教育を受けられない子どもたちなど、多くの問題を抱えていますね。近年のボコ・ハラムやアルカイダなど、テロ組織の暗躍も、根底にあるのは貧困や教育問題。経済を好転させることで解消される問題は多い。今年のTICADではテロとの戦いと国際協調が訴えられ、安倍総理は日本から3兆円の支援をすることを約束しました。これに対して、中国は「国連の常任理事国入りをしたい日本が、アフリカ諸国を味方につけようとTICADを政治利用している」と批判しました。近年、中国は、アフリカに携帯電話を普及させ、携帯電話による送金システムを輸出するなど、ものすごい勢いでアフリカに進出してきているんですね。水道も電気も通ってない地域で、携帯電話だけは使われているという異様な光景も。ほかにも道路や港を作る支援をし、代わりにレア・メタルの採掘権を得ようとしています。発展途上のアフリカには、たくさんのビジネスチャンスが眠っています。日本も開発支援だけでなく、民間企業がもっとアフリカと密接につながるといいのですが、距離的な問題もあり少々及び腰です。それでも、日本で消費されるバニラビーンズやカカオ豆、蚊取り線香に使われる除虫菊はアフリカ産がほとんどなんですよ。今後、アフリカと日本は、ますます結びつきが深くなっていくことでしょう。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月2日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「IoT」です。***「IoT」とはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」という意味。あらゆるモノにセンサーをつけてインターネットにつなぎ、状態をチェックしたり、遠隔操作や情報収集ができるという仕組みを指します。たとえば、机をIoT化したとしましょう。すると、ロットナンバーごとに、生産工場から消費者に届くまでのルートが管理できるようになります。いつ出荷され、どこの倉庫で、どういう温度や湿度で保管されたか。小売店に引き取られるまでの日数、購入した人の属性、使われる状況も遠隔で知ることができます。購入からどのくらいの期間で脚にガタつきが出たか。そのサンプルデータが、次の製品改善に役立てられます。つまり、IoT化で、商品管理、マーケティング、商品開発、トラブル対策とあらゆることにデータを活用できるようになるんですね。カギをインターネットにつなぐ「スマートロック」もIoTの一つです。カギの開け閉めが管理され、遠隔からでも今の状態の確認と操作が可能になります。これは、これから増えていく独居老人宅で活用されるだろうといわれています。その部屋に住むお年寄りが外出したかどうかがわかれば安否を確認できますし、トラブル時の対応も速やかにできるようになるでしょう。インターネットを使って莫大な情報を集め、その「ビッグデータ」を詳細に解析し、次のサービスの開発をするという流れは、これからますます進んでいきます。これまでは生産者の職人的な勘で、何となく感覚的に作られてきたモノが、データを元に的確な根拠を得て、無駄なくモノやサービスを生み出すことができるようになります。ビッグデータによって、人工知能の学習能力は上がり、情報解析の精度も上がっていくんですね。冷蔵庫がIoT化されたら、冷蔵庫の中の食材が管理され、毎日どんな料理を作っているかの情報が集められる。するとその情報がスーパーの在庫管理に反映されて…、というような時代になるかもしれませんね。IoT化するには多額の投資が必要ですが、政府も経済成長のために、積極的に推進しようとしています。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年10月26日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「消費者物価指数」です***「消費者物価指数(CPI)」とは、全国の消費者が購入する商品やサービスの価格の変動を時系列で測るもので、5年に一度、基準年を定めて、それと比較して算出します。毎月、総務省統計局が発表しており、景気が良いかどうかの判断基準になるので、「経済の体温計」ともいわれています。消費者物価指数を見て、政府は経済政策や年金の改定などを行うのです。日本経済の最大課題は、デフレからの脱却ですよね。デフレとは、物の値段(物価)が下がると、企業の収益も下がることになるので、企業は賃金を上げられない。なので、懐の冷えた消費者は物を買うのを控えるという状態。物が売れないので企業はさらに商品を安くする…という連鎖が起きます。これがデフレスパイラルです。改善策として、政府は金融緩和を行います。日本銀行が市場にお金を多く流して、相対的に円の価値が下がる状態に誘導するのです。市場に円があふれれば、自然と円安になります。希少価値のものは値段が高くなるけれど、世の中にたくさんあるものは安くなる、というのと同じ原理ですね。日本の主要産業は輸出産業なので、円安になれば企業は儲かります。トヨタなどの輸出企業は利益を増やし、「景気は良くなった」「アベノミクスは成功した」ともいわれますが、多くの一般市民にはあまり良くなった実感がありません。そこで実態を知るのに有効なのが「消費者物価指数」です。消費者物価指数が下がっているということは、市民が前よりも物を買わなくなった(買えなくなった)ということ。2015年の基準年に対して、今年は総合的に消費者物価指数が毎月下がり続けています。これは、一部の企業が好調でも利益が社員に還元されていない(賃金が上がっていない)ということ。非正規雇用者にはもっと回ってきていませんね。政府はこの状態を認識しており、企業に対して賃金を上げるように働きかけ、消費税増税も先送りにしました。消費者物価指数が上がれば、本当に景気が良くなっているという証拠です。毎月ニュースで発表される消費者物価指数を見ながら、自分の体感景気とぜひ比べてみてください。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年10月19日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国民投票」です***国民投票とは、国の重要事項の決定に際し、国民の意見を投票を通して聞く制度のこと。日本で国民投票法が制定されたのは2007年、第一次安倍内閣時代。18歳以上の日本国民が国民投票の投票権を有します。日本で国民投票が行われるのは、日本国憲法を改正する時だけです。衆議院・参議院それぞれで、総議員の3分の2以上の賛成を得たのち、国民投票で過半数の賛成を得られれば、改憲案は可決されます。改憲問題は、近年急に盛り上がっているように感じるかもしれませんが、憲法改正は自由民主党の結党当時からの悲願で、60年越しのプロジェクトなんですね。7月の参議院選挙で与党が多くの議席を取ったので、おそらく近い将来、私たちは国民投票を経験することになるでしょう。国民投票は、イエスかノーかの2択になります。簡単に投票できてしまう危険もあるんですね。まさか通らないだろうと思いながら、軽い気持ちで入れて、予想外の結果になってしまったり。イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票がまさにそうでした。なので、慎重に投票する必要があります。国民投票に関わる宣伝は、基本は国費ですが、通常の選挙と違って、有料の広告を出すことに規制がありません。なので、お金を持っている巨大政党がバンバン広告を出して強く主張すれば、世論が流される可能性もあります。もう一つ問題なのは、日本の場合、「過半数の賛成」とは、投票率にかかわらず、投票総数の2分の1を超えればいいんですね。つまり、投票者数が少なければ、1票が重くなる。投票率が低いと、限られた人の手で決定がなされてしまうかもしれないんです。海外では国民投票の最低投票率を決め、ある程度の投票率がないと有効にはならないラインを決めています。日本にはそれがないので、極端な話、投票率が20%でも決まってしまう。日本弁護士連合会は「日本にも最低投票率制度を取り入れるべきだ」と提言しています。憲法は法律と違い、国民が国家権力を縛るためのもの。改憲条文が上がってきたらしっかり考え、国民一人一人が決めるものだということを認識しておきましょう。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年10月12日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月11日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アメリカ大統領選挙」です。***7月末に民主、共和両党の候補者が指名され、アメリカ大統領選挙はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの一騎打ちとなりました。民主党候補のヒラリーは、元大統領ビル・クリントンの奥さん。格差是正を謳っていて、富裕層の税の抜け穴を塞ぐことを公約。中間層以下の生活保障を拡大するといっています。ヒラリーの支持者はエリート層と黒人やヒスパニックなどのマイノリティで、オバマ支持層と重なるのですが、白人労働者層の支持が高くない。財界から多額の寄付を受け、権力欲がちらつくところが、その理由かもしれません。対する共和党候補のトランプは不動産王。筋金入りの保守主義者で、「偉大なアメリカを取り戻そう!」と過激な発言を繰り返しています。移民が流れ込まないよう、メキシコとの国境に高い壁を作る。1100万人の不法滞在者を強制送還。新たなアメリカ永住権の発給を中止。雇用主にはアメリカ人を優先的に雇用することを義務付けるなど、徹底したアメリカ至上主義。「中国や日本はアメリカから略奪している」と、高い関税をかけて国内産業を保護しようと、自由貿易を真っ向から否定しています。モノや人が自由に行き来し、協力し合って成長しようという世界の流れと逆行する姿勢です。また、駐留米軍の経費は、日本・韓国などそれぞれの自国が全額負担するべきで、払わなければ撤退すると公言。トランプが大統領になったら、日本に対する政策は大きく変わるので、日本政府も緊張感を抱いています。ただ、トランプの政策は国民の人気とりのポピュリズム(大衆迎合主義)と思われる節が多々あります。多くの予想を裏切り、トランプがここまで支持された背景に注目するべきですね。それほど目の前の生活に困窮する国民が大勢いるということなんですね。いよいよ11月8日の本選挙が迫ってきましたが、ここにきて、優勢と見られていたヒラリーが体調を崩してしまい、メディアで健康問題が大きく報じられる事態に発展。一方、70歳のトランプは自身の健康をアピール、追い込みをかけています。最後まで結果がどう転ぶのか目が離せない状況です。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年10月5日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ポピュリズム」です。***「ポピュリズム」とは、エリート主義の支配層が、一般大衆の不安や願望を掻き立てる政策を訴え、熱狂状態にして主義主張の後押しをさせる政治手法のこと。大衆迎合主義、扇動主義ともいい、発展途上国の独裁政権によく見られました。最近、それが先進国でも目立つようになってきています。顕著な例は、アメリカ大統領選挙に出馬中のドナルド・トランプ。「移民を排除し、強いアメリカを取り戻すのだ!」と、センセーショナルな発言を繰り返し、共和党の候補者に指名されるほどの支持を集めました。また、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票で離脱派が勝利したのも、ポピュリズムの結果です。離脱派のリーダーだったボリス・ジョンソンは、失業や格差などのイギリス国内の諸問題は、EUを離脱すれば解決できると主張。言葉通りに信じて「離脱」に多くの人が投票しましたが、実際には離脱によるデメリットもたくさんありました。ヒトラーがドイツ国民をナチズムに導いたのもポピュリズムです。「成果がその偉大さを示す前に、群衆がその政策の理念を理解したことがかつて一度だってあるだろうか」と、ヒトラーは確信犯的な発言をしています。つまり、目の前の欲望を満たす言葉に乗せられてしまう人が大勢いるということ。古代ローマの詩人、ユウェナリスはそれを「パンとサーカス」という言葉で表現しています。大衆には、パン(食料)とサーカス(娯楽)を与えて熱狂させれば、政治家はその間に好きに統治できると指摘したのです。1900年以上前から変わらず、人は流されやすい存在なんですね。ポピュリズムに乗せられて、取り返しのつかない状況に追い込まれないために、聞こえのいい言葉、わかりやすいスローガンには注意が必要です。政治家は支持を得るために、巧みに言葉を操りますから、裏にどんな意図があるのか、見極める目を養いたいですね。今の日本でいえば、「消費税増税先送り」を手放しで喜んでいいのか?国の財源は変わらず足りないので、ツケを後に回すことになります。言葉の裏を想像し、論理的に考えることは生活の中でも大事なことかもしれません。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年9月28日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年09月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ドーピング」です。***リオ五輪の開催前、ロシアの国家ぐるみのドーピング隠蔽行為が発覚し、問題になりました。世界にドーピングの衝撃が走ったのは、1988年のソウルオリンピック。100m走で、ベン・ジョンソンがカール・ルイスに勝ち、人類初9・8秒台を切るタイムを叩き出しました。ところが、ドーピング検査で陽性になり、ジョンソン選手の金メダルは剥奪されてしまいました。ほかにも陽性の選手が後を絶たず、これをきっかけに1991年にジョンソンの祖国、カナダでアンチ・ドーピングの機関が誕生。1999年には世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が設立されたのです。ドーピングは必ずしも、選手が故意にしているとは限りません。たまたま飲んだ薬の中に禁止成分が入っていて、引っかかるケースも。テニスのマリア・シャラポワ選手が2年間の出場停止処分になりましたが「禁止薬物とは知らなかった」と提訴しています。禁止成分は随時更新されますから、ドーピングを避けるには、選手だけでなく、チームやコーチ、医師や薬剤師も正しい知識が必要。WADAやJADA(日本アンチ・ドーピング機構)はそれぞれの立場での注意を促しています。ドーピングは、製薬会社のビジネスとも密接な関わりがあると指摘する声もあります。合法的に運動能力が上がる薬となれば、ビッグビジネスになりますよね。最近はWADAと大手製薬会社が情報を共有してドーピングを未然に防ごうとしていますが、これも諸刃の剣。規制をすり抜ける新薬が開発され、後にその成分が規制されるというイタチごっこにもなってしまいます。今回のリオ五輪で、IOC(国際オリンピック委員会)が、ロシアの参加を全面禁止にしなかったことに対して、処分が甘いという意見もありました。しかし、五輪は平和の祭典。開催期間は休戦し、人種や国境を超えて皆が参加すること、五輪を続けることに意義があります。大国ロシアが抜けてしまったら、その秩序が崩れてしまう可能性も。そもそも、スポーツとは何を競い合うものなのか?原点に立ち戻り、清い戦いを見せてほしいですね。フェアな戦いこそが感動を与えてくれます。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年9月21日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年09月21日フリーアナウンサーの本田朋子が、9月23日に放送されるTBS系バラエティ特番『謝りたい人がいます。』(20:57~)に、これまで同番組でMCを務めてきた小林麻耶アナウンサーの"代打"として出演する。12日、都内で行われた収録に参加し、その後の囲み取材で収録の感想を語った。『謝りたい人がいます。』は、芸能人が本気で謝りたいと思っている人に謝罪するバラエティ番組。2013年の初回放送から4回にわたって放送されてきたが、このたび約2年ぶりに第5弾が放送される。これまでお笑いコンビ・ブラックマヨネーズとフリーアナウンサーの小林麻耶がMCを務めていたが、小林アナが休養中のため、今回は本田アナが務める。収録後、ブラックマヨネーズと共に囲み取材に応じた本田アナは、「この番組のファンだった」と明かし、「芸能人の方々の謝罪したいという気持ちの裏には、苦労や恩人への感謝、恩人からの愛情があり、温かいものをじんわり肌で感じることができる番組だなとあらためて思いました」と語った。そして、これまでMCを務めてきた小林アナについて、「ワイプの中の表情だけでも感情がすごく伝わってくる表現力の豊かさがすごい先輩だなと思っていた」と印象を述べ、「局を越えて尊敬できるアナウンサーや格が違うなと思う方の中でも、麻耶さんはピカイチ。いろんな面をお持ちで、人間的にも魅力的な方」と称賛した。さらに、「麻耶さんの代わりに務めるというのはかなりプレッシャーがありました」と打ち明け、「逆に麻耶さんの代わりはできないので、自分らしい等身大の進行として臨ませていただこうと思いました」と説明。「麻耶さんが元気になって戻ってきたときに安心して座れるように、椅子は温めておきました」と小林アナの復活も願った。なお、第5弾のテーマは「後悔」で、三遊亭円楽は故・立川談志、久本雅美は若かりし頃お世話になった"東京のお父さん"、生稲晃子は"命の恩人"である短大時代の友人に謝罪する。その中で、円楽と談志の知られざるエピソードや、久本の上京時の秘話が明らかになり、乳がんと戦う生稲は命の有限を知って感じた思いなどを語る。
2016年09月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「東京都知事」です。***新しい東京都知事が、初の女性知事・小池百合子さんに決まりましたね。東京がどれほどの大都市なのか、数字の面から見てみましょう。2016年度の東京都の年間予算は、13兆6560億円。日本の国家予算総額が96兆7218億円ですから、比較しても相当な額というのがわかります。また、この東京の予算額は、スウェーデンの国家予算に匹敵する(!)規模です。GDP(国内総生産)では、東京都は2015年度見込みで92兆9000億円=約1兆1326億ドルです。世界のGDP順位を見ると、1位はアメリカ約18兆ドル。2位中国、3位日本が4兆ドル台。数字上では東京は12位に匹敵し、スペインやメキシコのGDPより勝っているのです。都市別に見ると、2014年の1位は東京。2位NY、3位ロサンゼルスと続きます。東京は経済的には、国レベルといってもいい大きさなんですね。日本の総理大臣は議会が選びますが、都知事は直接民主制によって、私たちが直接選べます。つまり、東京都知事は東京という一つの国の大統領のようなもの。また、東京には、日本の全人口の約1割が集中。大企業の本社や外国企業の5割は東京にあり、日本の税収のうちの約4割は東京から集められています。これだけの人とお金が動いている少なくないんです。たとえば、石原慎太郎さんが都知事だったとき、東京の空気の浄化のために、ディーゼル車の走行を規制しました。これにより、自動車メーカーは、世界一基準の厳しい排気ガス規制に対応できるクリーンな自動車を開発。日本の技術力を上げるきっかけになりました。石原都知事はほかにも、日本史を都立高校の必須科目にしたり、横田基地の返還要請をし、航空管制の一部を返してもらうなど独自の政策を実行していきました。近年は任期が短くて、実績を残す機会は減っていますが、都知事は日本全体にも少なからぬ影響を与える存在ということに変わりはありません。予算が膨らむ東京五輪問題や土壌汚染を抱える築地市場移転問題など、小池流改革手腕でバッサリ切り込んでいってほしいなと期待しています。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年9月7日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年09月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イギリスのEU離脱」です。***6月にイギリスは、EU離脱の是非を問う国民投票を行い、離脱派が勝利。残留派のリーダーだったキャメロン首相は辞任し、テリーザ・メイが首相になりました。投票結果は残留派48%、離脱派52%の僅差。EU離脱の選択は、世界に衝撃を与えましたが、実はイギリス国内でも「まさか本当に離脱になるとは!」と驚きの結果だったのです。離脱に傾いた大きな理由は、難民問題。離脱派の元ロンドン市長ボリス・ジョンソンは、「難民が流れ込んだせいで国内の失業率が上がり、テロの脅威にさらされている。EUを離脱し、イギリスは主権を取り戻すべきだ」と主張しました。EU(欧州連合)とは一つの大きな国のようなものです。第一次、第二次世界大戦で大きな犠牲を払ったヨーロッパは、資源争いによる敵対をやめ、まとまる必要に迫られました。EUを立ち上げ、資源を分かち合い、関税を取り払って、人・もの・お金が自由に行き来できるようにしました。ヨーロッパ全体で協力し合うことで、安全保障と大きな経済成長を得たのです。しかし、EU加盟の恩恵は国ごとに差があります。イギリスやフランスは借金の多い国々を助ける役回りになり、経済的負担は少なくありません。また、EU内には法律があるので、国内で勝手に物事を決められない不自由さも出てきました。ジョンソンが「主権を取り戻す」と言ったのはそういう理由です。ジョンソンは有力な次期首相候補でしたが、離脱が決まると立候補を取り下げてしまいました。他にも、国民投票後に現場を退いた離脱派の政治家もいました。つまり、覇権争いのために、離脱の主張をしていた議員が少なからずいたということ。それだけ、国民の不満は募っており、支持を得るには格好のテーマだったのです。首相のなり手はなかなか見つからず、残留派だったメイが名乗りをあげます。メイ首相は22人の閣僚のうち7人に、ジョンソンを含む離脱派の閣僚を据えました。離脱のニュースの後、ポンドは下落、円高ドル高の流れに。世界経済にも影響を及ぼしています。イギリスがEUを離れ、どんな政策で問題解決していくのか世界が注目しています。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年8月31日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年08月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核なき社会」です。***みなさんは、8月6日、9日が何の日かわかりますか?71年前のこの日、世界で初めて、原子爆弾が投下されました。8月6日は広島に、9日は長崎に。一瞬にして街は焼け焦げ、その年の12月までに広島では約14万人、長崎では約7万人の方が亡くなりました。数年後に白血病やガンを発症したり、子供に原爆症が出るケースもあり、総被害は数知れません。日本は原爆の恐ろしさを知る、唯一の被爆国なんです。現在、核保有国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9か国。これほど恐ろしい兵器を、なぜ皆持ちたがるのか?悲しいことですが、核を保有することで、敵対する国同士の抑止力になっている、というのも現実なんです。とはいえ、核兵器がこのまま増え続けたら、地球規模の危機に晒されます。2009年、オバマ大統領はプラハで、核保有国として初めて「核なき社会を目指そう」と国際社会に訴えかけました。その後、アメリカ・ロシア間では核軍縮の合意が取れ、処分後もテロリストに核兵器が渡らないよう、注意を払っています。一昨年、国連総会で「核兵器使用禁止条約」がオーストリアから提案されました。化学兵器や生物兵器は国際条約で、使用したら戦争犯罪として裁かれることになっています。それに核兵器も加えようという提案。賛成125か国、反対50か国、棄権7か国で可決されましたが、実は日本はこのとき棄権しました。日本は自国では核兵器を持ちませんが、同盟を結ぶアメリカに、中国や北朝鮮の脅威から守ってもらっている立場。その手前、賛成することができなかったと言われています。今年5月、アメリカの現職の大統領としては初めて、オバマ大統領が被爆地の広島を訪れ、平和を訴えましたね。これが実現したのも、毎年、原爆記念日に世界に向けて平和のメッセージを発信し、核保有国の首脳に手紙を送り続けた広島市の不断の努力の賜物です。原爆の惨劇を伝えられるのは、世界で日本だけです。戦争体験者が次々いなくなる今後、二度と悲劇が起こらないよう、8月6日、9日のことを私たちは忘れてはいけないと思います。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年8月10日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年08月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「パラリンピック」です。***いよいよ8月5日より、リオデジャネイロオリンピックが開催されますね。南米で初めての五輪。僕は実はリオパラリンピックにも注目しているんです。パラリンピックのルーツは、1948年。イギリスの、第二次世界大戦で脊髄を負傷した傷痍軍人のリハビリ施設で始まった、車椅子患者によるアーチェリー大会だといわれています。第1回パラリンピックは、1960年にローマで開催されました。かつては福祉政策の一環のように思われていたところがあったと思いますが、義手や義足のテクノロジーの進化もあり、いまやもう別モノ。障害があるにもかかわらず、ものすごい速さで走る、高く跳ぶ、絶妙なバランスでカヌーを漕ぐなど、まさに「超人」の技を次々に見せてくれる感動の場になっています。人によっては健常者よりも速いタイムを叩き出しているケースも。パラリンピックの盛り上がりは年々増しており、ロンドンパラリンピックは史上最大規模、164の国と地域から、4310人の選手が出場しました。開会式にはコールドプレイがライブをするなど、盛大なパフォーマンスが繰り広げられました。開会式の模様はインターネット配信で中継され、770万人が視聴したそうです。もう、オリンピックと対等な扱いですよね。広告宣伝対象としても注目されています。パラリンピックを支援していると企業イメージもアップしますし、そこには大きな市場が広がっています。ただ、パラリンピック選手はエージェントに所属していない選手も少なくなく、個人で動いてる場合が多いので、いきなり巨大資本が動き始めて戸惑うところもあるようです。ただのブームに終わらず、リオパラリンピックが成功して、2020年の東京パラリンピックまでつないでいきたいですね。車椅子バスケや車椅子ラグビー、ブラインドサッカーなどは、健常者も車椅子に乗れば、目隠しをすれば、参加できます。将来、同じ土俵で戦いあう、ユニバーサルデザインを描けたらよいなと思います。リオパラリンピックは9月7日~18日。スカパー!とNHKの地上波で放映されますので、ぜひチェックしてみてくださいね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年8月3日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年08月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ふるさと納税」です。***ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付をする制度です。寄付をすると、その額から2000円を引いた額が、所得税と住民税から控除されます。日本は東京が中心となり、大都市ばかりに人もお金も集まってしまっています。地方にお金が回るようにと、ふるさと納税制度は2008年に公布されました。寄付した人には地方の特産品などのお礼の品が送られます。理念は素晴らしいのですが、年々、自治体ごとの寄付金獲得競争が加速、返礼品がエスカレートして豪華になってきてしまいました。自治体の方でも返礼品が重荷になったり、返礼で受け取った金券を転売する寄付者が出てくるなど、本末転倒な事例も。公布から8年たち、そろそろ制度の見直しが必要なのかもしれません。また、ふるさと納税を使って、高額所得者が高額の寄付をし、寄付額がほとんど還付される、節税対策に使われていることを問題視する人もいます。いわば、日本のタックスヘイブンです。ただ、都市と地方の格差は広がる一方。地方は財源を得るのが本当に大変です。ですから、たとえタックスヘイブンになったとしても、地方にお金が回るのは良いことなんじゃないかと思います。最近では被災地にふるさと納税する人も増えていますね。熊本への寄付金も増えて、復興に役立っています。問題は、寄付をする側の姿勢ですね。ただの節税対策や、返礼品目当てのショッピングモールになってしまうのは残念。集まった寄付金の使い道は各自治体で公開していますので、寄付をしたら、ぜひチェックしてください。また、一度その土地に足を運んで、実際に見てきてほしいですね。都市部はどうしても消費が中心。地方が生産を支えています。農業、林業、水産業の「生産者を守る」という意識で地方を応援していきたいですね。実際に生産の現場の大変さを知ると、無駄な消費をしなくなります。日本はレストランでもコンビニでもたくさん食品を捨てていて、食品ロスが多いんです。過剰な消費から生まれる社会問題は少なくありません。生産と消費、都市と地方のいいバランスを目指していきたいですね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年7月20日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年07月17日声優でタレントの金田朋子が、11日に放送されるテレビ東京系バラエティ番組『妻と夫のネホリハホリ~完璧な夫婦はありえない!?~』(11・18日24:12~)に、夫の俳優・森渉とともに出演する。同番組は、スタジオに招いた芸能人夫婦の不満や秘密、絆の強さを分析し、専門家と番組MC・若林正恭(オードリー)&渡辺直美が夫婦の間をトークで掘り下げていく。11日の放送では、第二子の妊娠を発表したばかりの元野球選手・マック鈴木&お笑い芸人・小原正子(クワバタオハラ)夫妻、歳の差が10歳の森&金田夫妻、お笑い芸人・川島章良(はんにゃ)&川島菜月夫妻が登場。独特の高音ボイスが話題となり、バラエティで活躍する金田は、10歳下のイケメン夫との「とんでもない珍ルール」「夜の営み」について告白する。MCを務めた若林は「全体的には、どの夫婦も男が先に折れている事で、上手くいっていたな~という印象でしたね」と3組の夫妻について感想。さらに「マック鈴木さんだけは、器が大きく、芯があります。僕が彼みたいになるには、何十回か生まれ変わらないと無理でしょう。なので早めに折れるのが一番なんだなと思いました(笑)」と番組から得た教訓に触れた。渡辺は「金田朋子さんが1番やばい方と思っていましたが、旦那の森渉さんもかなりやばい人でした(笑)」と驚きの様子。「金田さんだけでなく、森さんも金田さん以外の女性には受け入れられないなと思いました(笑)」と森&金田夫妻に受けた衝撃を語った。
2016年07月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新幹線」です。***今年の3月に北海道新幹線が開業。東京-新函館北斗間が、4時間2分で行けるようになりました。日本に初めて新幹線が走ったのは、1964年、東京-新大阪間でした。新幹線は踏切なしに高速で走るため、専用のレールが必要で、建設には莫大な費用がかかります。'64年の東海道新幹線の総工事費は当時のお金で3800億円。東京オリンピックの開催に合わせて、東名高速道路とともに建設が進められ、世界銀行が8000万ドル貸し付けてくれました。これらは日本の戦後の復興の象徴だったんです。1973年には「整備新幹線」として、北海道、東北、北陸、九州(鹿児島ルートと長崎ルート)の5つの路線を通す計画が立てられました。でも、まだ全ては完成していません。速い列車がそれほど必要なのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、新幹線建設による経済効果は大きいんですね。やはり人とモノの移動が活発になると経済も活性化します。新幹線が開通する前、東京-大阪間は特急列車で6時間50分かかりました。それが4時間で移動できるように。この時短によって年間2500億円の効果があったといわれています。ちなみにGDPは1973年に100兆円を超え、現在は500兆円規模なので、経済規模は40年で5倍に増えました。昨年、金沢まで北陸新幹線が開通しましたが、日本政策投資銀行の試算によると、首都圏から石川県への人の流入数は観光で3割増し。ビジネスで27.8%増。消費など直接的な経済効果は、年間61億円。ビジネスで20億円。二次的な波及効果を含めると124億円にのぼるそうです。日本の新幹線は、脱線や衝突を防ぐ技術に優れていて、50年間ほぼ無事故。地震検知警報システムも完備され、安全面は保証済みです。ただ、導入コストが高いので、インドへの輸出は決まりましたが、アメリカやインドネシアへの輸出はかないませんでした。安倍総理は2020年までにGDP600兆円を目指しています。クリアするためにも重要な産業です。今後も新幹線が延びて利用者が増え、日本経済の活性化につながると良いですね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年7月6日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年07月04日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「18歳からの選挙権」です。***公職選挙法が一部改正され、70年ぶりに選挙権の年齢が引き下げられました。いよいよ、満18歳から投票できるようになります。少子化が進むなか、未来を担う若い世代が政治に参画できるようになるというのは、喜ばしいことですね。ただ、今年18歳、19歳になる人の数は約240万人で、有権者全体の2%にすぎません。ですから、これを機に政策がいきなり若い人向けにシフトするということはないでしょう。10代の有権者が生まれるということは、政党にしてみれば新たな支持者を囲い込めるチャンス。高校生や大学生を対象にボランティアを募ったり青年部を作るなど、どの政党も積極的にアプローチをかけています。世界的に見ると、191か国・地域のうち9割以上の国で、選挙権の年齢を18歳以上にしています。日本の有権者の年齢が20歳以上だったのは、成人年齢が20歳だからです。選挙年齢の引き下げは、国民投票の年齢が満18歳以上に定められたことがきっかけになっていますが、政府は将来的に、日本の成人年齢を18歳にすることも検討中。そうなれば、少年法も改正されますし、国民年金保険料を納める義務も18歳から課せられます。少子高齢化対策として、国は、働ける人、税金を払える成人の数を増やしたいんですね。18歳選挙は夏の参議院議員選挙から始まります。本番を前に「模擬選挙」を実施している学校もあります。議題に合わせて、生徒同士で議論を戦わせ、多角的な視点から、どこに投票するか考えをまとめる力を養うというもの。日本人はディベート下手ですよね。自分の意見が否定されると人格まで否定されたように感じて、人間関係に支障が出てきたり。感情と切り離して議論することは大切です。皆さんも、今日のランチをどこにするかというような身近なテーマでも、お友達とディベートをしてみてはいかがでしょう?汚職問題などを機に政治不信が募り、若者の政治離れに拍車がかかって、今、20代30代の投票率の低さが問題になっています。10代の政治参加に刺激されて、20代30代の政治意識が高まることも期待されているんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月29日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「待機児童」です。***条件を満たし、入所申請をしているにもかかわらず、保育所に入れない「待機児童」の数は2015年4月の段階で約4万5000人。キャンセル待ちの多さに諦めて、最初から申請していない家庭もあるので、潜在的な待機児童数を含めるとその数はもっと多くなるでしょう。待機児童問題は、保育所の数を増やすだけでは解決にはなりません。というのも、保育士さんの数が足りないんですね。保育士の資格を持ちながら現場を離れた「潜在保育士」の数は全国で約80万人。離職した大きな理由は、賃金の低さと言われています。保育士の賃金は、35歳平均で月額21.9万円。全産業の平均は33.3万円ですから、かなり下回っています。安倍総理は4月に一億総活躍社会の一環として、保育士の賃金を2%、月額約6000円アップを宣言。潜在保育士をなんとか呼び戻そうと対策を立てています。保育所が足りないのは、近隣の反対により建てられないというケースもあります。「子供の声がうるさい」といったクレームも聞きますが、それだけではなく、道が狭くて、子供の送り迎えの車や自転車が来ると住民の移動ができないという切実な理由も。街づくりやインフラ面から抜本的に変えなければいけません。また、保育所開設の規制緩和も必要でしょうね。企業内に保育施設がもっと開設できれば助かりますよね。待機児童問題は、すぐには解決しないでしょう。これから就職や転職を考えている方は、育児休業のあるなしだけでなく、バリエーションをチェックしてみてください。1年フルに休めなくても、時短で働ける時期を長く取れる方がありがたい場合もあります。今から約100年前に母性保護論争が起きました。女性解放運動家の平塚らいてうは「子供を産み育てることは国のためでもあるから、国が保護するべき」と主張。対して歌人の与謝野晶子は「女性は男性にも国にもよりかかるべきじゃない。自立して稼ぎなさい」と意見しました。子育てのお金は、国か個人、どちらが出すべきなのか。子供は誰のものなのか?100年前の論争の答えはまだ出ていないんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月22日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月19日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「タックスヘイブン」についてです。***タックスヘイブンとは日本語で「租税回避地」。税金を免除、またはとても低い税率にして、海外資本を獲得している国や地域のことを指します。ヨーロッパの小国、モナコ公国やサンマリノ共和国、カリブ海の英領ヴァージン諸島やケイマン諸島などが有名です。それらの国や地域が税率を下げるのは、もともと産業や鉱物資源がなく、税金をとる先がないからなんですね。海外企業を誘致できれば、雇用が生まれ、富裕層が集まれば消費が活発になり、その地域の利益につながります。企業にとってみれば、世界に展開するのに、本拠地をタックスヘイブンに登記し、収益を集約できれば、国によって税率が異なることを気にせず、円滑に取引が進められます。必ずしも誰しもが税金逃れのために使っているわけではないんです。ただ、麻薬や人身売買、テロ、政治家の汚職などのマネーロンダリング(資金洗浄。口座を転々とさせて、資金の出所を不明確にする)の温床になりやすいのも事実。北朝鮮やロシアなど、欧米諸国から経済制裁を受けている国のお金のやり取りに使われているともいわれています。4月に「パナマ文書」がニュースになりました。パナマの法律事務所から、タックスヘイブンを利用する企業の、過去40年分の膨大なデータが流出。それによると、約21万の企業の関係者リストのなかに、プーチンや習近平、アイスランドの首相など、国の要人も含まれていました。文書はドイツの新聞社と国際調査報道ジャーナリスト連合に送られ、現在詳しく調べている最中ですが、リストのデータベースは誰でも見られるよう5月にネット上で公開されました。タックスヘイブンに集められた企業の税逃れ額は、約500兆円あるとか。それらが国税として支払われれば、社会保障に使えますよね。日本では早い時期からタックスヘイブン対策税制を設け、法人税率20%以下の国に登記している会社は、国税庁に届け出ることになっており、国内の子会社から、相応の税がとられています。世界の格差問題につながるテーマ。今後、各国がどう対策をとるのか、要注目です。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月15日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月14日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「重力波」についてです。***今年2月、全米科学財団と国際研究チームは、重力波天文台「LIGO(ライゴ)」が、世界で初めて、重力波の観測に成功したと発表しました。各新聞の一面を飾ったので、印象深く覚えている方も多いでしょう。そのくらい、歴史的な快挙なんですね。質量のあるものが動くとき、「時空の歪み」がさざ波のように伝わる現象、この波が重力波なのですが、歪みの伸び縮みはとても微細。太陽と地球ほど離れた距離で水素原子1個ぶんほどと、気が遠くなる小ささなので、塵や振動によっても観測は制限されてしまいます。ですから、実際に検出するのは不可能だろうと言われてきました。それがこのたび、地球から13億光年離れた場所で、2つのブラックホールが衝突、合体したことにより、大きな歪みが生じて初めて観測ができたのです。ブラックホールが合体した瞬間は、太陽の全質量の3倍くらいのエネルギーが放出されたのだとか。どれだけ大きなものだったか、想像を超えますね。重力波は、1916年にアインシュタインが一般相対性理論でその存在を予言していました。ですから、100年かかって、アインシュタインの宿題を解いたようなものなんですね。この成功は宇宙の解明に大きく貢献するでしょう。重力波はあらゆるものを貫通し、何を通過してもほとんど影響を受けないのだそうです。これまで光や電磁波で調べていた宇宙も、重力波を使えるようになれば、もっと深く正確に調査することができます。ブラックホールの解明や、宇宙の起源、ビッグバンの謎を解き明かすこともできるようになるだろうと言われています。ちなみに電磁波の存在が理論的に証明されたのは1864年。1888年にハインリヒ・ヘルツさんによって、放射する電磁波の観測が可能になりました。周波数を示す単位「ヘルツ」は彼の名前に因んでいます。その後、電磁波が通信や医療、電子レンジなどで家庭でも使われるようになったのが約100年後。重力波も今から100年後には身近になっているかもしれませんね。ドラえもんが生まれたのが2112年。その頃には「どこでもドア」も実現可能になっているのかも?◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月8日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月07日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「サミット」についてです。***5月26~27日に第42回先進国首脳会議、いわゆる「伊勢志摩サミット」が開かれます。日本で開催されるのはこれで6度目。サミットが始まったのは1975年でした。’70年代はオイルショックが起こり、世界経済が不安定になりました。そこで当時のフランスのジスカール・デスタン大統領の声がけのもと、先進国の首脳が集まり、世界経済や国際情勢の問題に対して、協調して政策を打ち出す話し合いの場として始まったのがサミットです。参加国はフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、日本。その後、カナダ、民主化されたロシアも’98年から参加し、G8(Group of eight)と呼ばれていました。ところが、ウクライナ問題にロシアが介入したことから、西欧諸国と対立。2014年に参加停止となり、現在はG7に戻っています。議題のメインは経済問題ですが、他にも安全保障や環境に関することなども話し合われます。議長国は1年間議長を務め、その間に各専門分野の関連会議がいくつも開かれるんです。つい先月も広島でG7の外相会合があり、テロ対策や中東情勢、北朝鮮情勢、核軍縮について話し合いがなされましたよね。他にも、新潟で農業大臣会合、仙台で財務大臣・中央銀行総裁会議などが開かれます。サミットの会期に合わせて、民間のNPO、NGOの関連会議も開催されるので、開催地には世界中から人が集まり、注目されるようになります。由緒ある日本文化を伝えようと、伊勢神宮のあるこの地が選ばれました。サミットで取り上げられるテーマを見れば、いま世界でどんなことが問題になっているのかがわかります。ただ、最近はアジアやアフリカの経済力も上がってきて、先進国だけの問題ではなくなってきました。新興国11か国を含めたG20の方が、G7より影響力を持ってきているとも言われています。いずれにせよ、原油価格の下落、エネルギー問題、中国経済の問題、マネー・ロンダリングなど、世界経済が大きく揺れ動いている今、日本がどんなふうにイニシアティブをとるのか、注意してみておきましょう。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年5月25日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年05月22日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「一億総活躍社会」についてです。***去年の10月に第3次安倍改造内閣が発足したときに内閣は「一億総活躍社会」というプランを掲げました。安倍政権の経済目標の一番大きい規模のものって、何だかわかりますか?それは2020年までに日本のGDPを600兆円に引き上げるというものです。現在、日本のGDPは500兆円前後。‘80年代の後半に400兆円の大台を突破し、約15年かけてやっと500兆円になりました。バブル期を含んだ成長ですから、今から4年で約100兆円を上げるというのは、簡単ではない数字なんですね。GDPを上げるには方法は2つ。移民に積極的に働いてもらうか、国内に眠っている労働力を掘り起こすか。安倍さんは保守派ですから、移民の受け入れにはあまり積極的ではありません。そこで、女性やお年寄り、障害のある方、難病の方などでも、働ける人を総動員して、国の経済成長を促したいと考えているんです。バブル崩壊後、リーマンショックの起きた2008年頃までは、働きたくても働き口がない、という状況でした。けれども今、日本は人手不足です。サービス産業、製造業、介護や医療の現場で働き手を求めています。「一億総活躍社会」は言い換えてみれば「一億総労働社会」。少子高齢化で、働く年代の人口が減っているのに歯止めをかけたいんですね。今後は定年も延び、年金の受給開始年齢も引き上げられるでしょう。ただ、見方を変えれば悪いことばかりではありません。家庭、地域、職場で個性を生かした多様な働き方を社会全体で支援する。男性女性、障害のあるなし、年齢に関係なく、皆がいきいきと働ける社会を目指すということ。これから日本の労働環境が大きく変わるのかもしれませんね。政府は緊急政策として、「希望出生率を1.8」「介護離職ゼロ」を掲げ、保育や介護のサービスの拡大を目指しています。今、日本では、働いても生活が楽にならないという貧困の問題がありますね。一億総動員はするものの、市場原理にのまれて、ただ安い賃金で働かされ、ちっとも暮らしが豊かにならない、というふうにならないことを祈りたいですね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年5月18日より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年05月15日