いくつになっても、時間を忘れて楽しんでしまうものといえばガールズトーク。そこで今回ご紹介するのは、女性たちが抱える恋愛や人生の悩みについてリアルに描いて注目を集めている北欧発の青春映画です。『ガール・ピクチャー』【映画、ときどき私】 vol. 567クールでシニカルなミンミと、素直でキュートなロンコ。2人は同じ学校に通う親友同士で、放課後はスムージースタンドで一緒にアルバイトをしながらおしゃべりを楽しんでいる。話題になるのは、恋愛やセックス、そして自分の将来についての不安と期待についてだった。そんななか「男の人と一緒にいても何も感じない自分はみんなと違うのでは?」と悩んでいたロンコは、理想の相手との出会いを求めて、パーティへと繰り出すことに。ミンミはロンコの付き添いでパーティに参加していただけだったが、大事な試合を前にプレッシャーに押しつぶされそうなフィギュアスケーターのエマと運命の出会いを果たすのだった…。第38回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門で観客賞を受賞したのをはじめ、第 95 回アカデミー賞国際長編映画賞部門のフィンランド代表に選出されるなど、国内外で高く評価されている本作。そこで、作品の裏側についてこちらの方にお話をうかがってきました。アッリ・ハーパサロ監督映画のみならず、ドラマやドキュメンタリーなど幅広い作品を手がけ、強い女性たちを描くことを得意とするハーパサロ監督。今回は、フィンランドの女性たちが置かれている状況や男女平等がもたらすメリット、そして不完全な自分の受け入れ方などについて語っていただきました。―本作では、どのようなところに魅力を感じて監督をしたいと思われたのですか?監督私が監督として参加した時点で脚本は未完成でしたが、斬新で共感を呼ぶキャラクターが3人も登場するというのがおもしろいと思いました。この作品には脚本を担当したイロナ・アハティとダニエラ・ハクリネンの個人的な経験も反映されていますが、具体的なエピソードではなく、あくまでも10代という多感な時期に抱いていた感情について描かれています。それは「交際相手と心のつながりを感じられていたのか」とか「相手といることに喜びはあったのか」といったことですが、私たちにとって10代の少女ならではの思いを描くことが非常に大事でした。なぜなら、自分たちがその年代の頃に、同じ悩みを抱えているキャラクターが出てくる映画があまりなかったからです。脚本を仕上げていく過程では、若いときに味わった感情をお互いに共有し合ったので、自分たちが共感できる部分だけでなく、監督として描きたいところもしっかりと反映してもらいました。2人の人間が恋に落ちる当たり前の姿を見せたかった―劇中ではあえて主人公たちのセクシャリティには触れていませんが、最初からそのような設定にしようと考えていましたか?それとも最近のフィンランドではそれが当たり前のようになっているのでしょうか。監督同性同士が付き合うことに対して、フィンランドのどこに行っても受け入れられている状況かというと、まだそこまでではないかもしれません。ただ、この物語の舞台となっている都心のエリアで、20歳前後の人たちの間ではかなりオープンにされていると思います。今回、私たちにとって大事だったのは、ミンミとエマのように女性同士で付き合うことを問題にしたり、カミングアウトしたりする姿を描かないことでした。それよりも、2人の人間がお互いに惹かれ合って、恋に落ちるという当たり前の恋愛として見せたかったのです。というのも、世の中にある映画では、女性キャラクターの描き方も決まりきったものが多いですし、同性愛者も型にハマった描かれ方ばかりですよね?特に、LGBTQの方々については、だいたい何かのトラウマや葛藤を抱えていて、周りから反対されているので、“被害者”のようにされがちです。―確かに、ミンミとエマはそういう典型的なキャラクターたちとは一線を画していますね。監督もちろん、彼女たちにも悩みはあります。でも、それは同性に惹かれていることが原因ではなく、ただ好きな人に対して抱えている感情です。そういった理由から、私は彼女たちをポジティブな人物として描きたいと考えました。男女平等が実現すれば、誰もが幸せになれる社会になる―また、ロンコは性やセックスに対してオープンで興味深いキャラクターでしたが、フィンランドの女性たちの間でもそういう会話はよくされますか?監督そうですね、少しずつオープンに話せるような状況になってきているとは感じています。実は、今回の映画でもう一つ大事にしたいと思っていたのは、きちんとした合意のもとで行為がされるべきであるということを描くことでした。ロンコが最初に参加するパーティで、ある男の子とそういう雰囲気になったとき、男の子が「触ってもいい?」と聞くシーンを入れましたが、そんなふうに男性が女性に了承を得る様子を見せたいと思ったのです。必ずしも全員がお互いの了承を得て行為にいたっているわけではないかもしれませんが、少しずつそういう意識がみんなのなかに芽生えてきているので、それはすごくいいことだなと。私の世代だと自分の気持ちやしてほしいことをなかなか言えないところがありましたが、いまの若い世代は言えるようになっているので、変わってきているように感じています。―フィンランドといえばジェンダー・ギャップ指数が世界第2位の国なので、先進国でも最下位となる116位(2022年時点)の日本と比べると、女性活躍が非常に進んでいます。そのことが社会にどのような影響を与えていると感じていますか?監督私は男女平等の社会に近づくことで、すべての人の生活や人生の質が上がると考えています。そもそも、人と人の間に不平等が生じること自体が正しくないので、フィンランドでは男女だけでなく、あらゆる人に対して社会的な地位を認める議論がされる段階にきました。とはいえ、フィンランドでもすべてが完璧なわけではありません。実際、30代の女性首相をはじめ、女性の大臣たちが受けた誹謗中傷は男性だったら受けないようなものばかりでした。女性蔑視をするミソジニーはまだまだあるのが現実です。ただ、誰もが幸せになれる社会になれば、女性に限らず男性にとっても利益は多くなるのではないでしょうか。そういう意味でも、男女平等を訴えるのが女性だけになるのではなく、男性からももっと声を上げてほしいと思っています。女性活躍の場が奪われれば、才能も無駄にしてしまう―おっしゃるように、これは女性だけの問題ではないですね。監督女性が活躍する場が奪われると、多くの才能を無駄にしてしまう可能性もありますが、それは人材の損失にもつながっているのです。これまでもさまざまな女性たちがいろんな素晴らしいものを発明し、創作しているので、芸術でも科学でも幅広い分野で女性が活躍できれば、より豊かな社会になると思っています。映画においても、もし女性の監督や脚本家が作品を世に出さなければ、映画界は多様性を失ってしまうのではないでしょうか。だからこそ、男女平等はすべての人の人生の質を上げるために大切なものなのです。―その通りですね。ところでまもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちですか?監督日本は「いつか行ってみたい場所リスト」のなかに入ってはいますが、まだ行ったことがありません。なので、日本については、『東京物語』から『ドライブ・マイ・カー』に至るまでさまざまな日本映画を通して見た印象ばかりです。ただ、おそらくそれは日本の方にとってのフィンランドと同じかなと思っています。というのも、フィンランド以外の国で観られているフィンランド映画といえば、ほとんどがアキ・カウリスマキ監督の作品なので、みなさんが思い描くフィンランドもきっと彼の映画を通して知ったものではないでしょうか(笑)。私の日本に対する印象も、そういった感じです。完全であるよりも、不完全のほうがおもしろい―それでは最後に、10代の頃に自分の不完全さを受け入れることに苦労した経験をした監督から、大人になっても同じように感じてしまう女性に向けてアドバイスをお願いします。監督私も100%達観できているわけではありませんし、45歳となったいまでも自分を責めてしまうことはもちろんあります。ただ、自分を受け入れることができれば、気持ちが楽になるのは確かなので、みなさんも自分に対して慈悲の心や愛情を持ってほしいです。この作品を観たあとに、彼女たちをハグしたくなるような気持ちになっていただきたいですが、同時にあなた自身も自分のことを少しでも好きになってもらえたらいいなと思っています。ちなみに、私が自分の悩みや不完全さを受け入れられるようになったのは年齢を重ねたこともありますが、「完全であることに価値がない」と感じられたというのも理由の一つ。不完全さこそが素晴らしいというか、不完全であるほうがおもしろいし、味があることに気がついたので、いまはそれを大事にしたいなと思いました。不完全さを受け入れられないとガチガチな状態になってしまいますが、受け入れられれば肩の力が抜けて前向きになれますし、愛情豊かな人間にもなれるはずです。日本の金継ぎがまさにそれを象徴していますが、不完全になってしまったものを新しく生まれ変わらせることでより美しくなるので、そういった考え方ができるといいなと思います。自分の手で自由をつかみとる!どんな壁にぶつかっても、悩んで失敗しても、自らの道を歩いていこうと立ち上がる女性たちの姿にパワーをもらえる本作。恋にも性にも人生にも素直であることの大切さ、そしてありのままの自分を愛することの素晴らしさを思い出させてくれるはずです。取材、文・志村昌美魅了される予告編はこちら!作品情報『ガール・ピクチャー』4月7日(金)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー!配給:アンプラグド️(C) 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
2023年04月05日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第136回は、恋愛にハマるつもりはなかったのに、気づくとドツボにハマりがちな女性の特徴をお届けします。1.プライドが邪魔して気づかないフリをする【結婚引き寄せ隊】vol. 136出会いを探しているときに、おたがいに惹かれ合って自然と付き合うことになったら楽なものですが、現実にはそううまくいくケースは多くありません。しかも、恋愛にハマるつもりがなかったのに、ひとりの男性のことばかり考えている自分に気づいて「もしかして好きなのかも?」と気づくことだってあるでしょう。そんなパターンを経験したある女性がいました。もともと恋愛にはあまり興味がなく、ちょうど仕事で責任あるポジションとなったこともあって、多忙でありながらも充実した毎日を送っていました。でも、最近やたらと話しかけてくる後輩男性がいて、たまに話しかけられない日があるとふと姿を探している自分に気づいたのだとか。何度かそんなことを繰り返すうちに、自分を慕う後輩男性のことが好きかもしれないと思いながらも、先輩としての立場や社内という環境を考えると、一歩踏み出すことができません。さらにプライドも邪魔をして、明らかに後輩男性から好意を寄せられているとわかればわかるほどそっけなくしてしまい、ドツボにハマってしまったそうです。それがツンデレの“ツン”だと理解してくれたらよかったのですが、自分に気がないと判断した後輩男性は話しかけてこなくなり、しばらくすると彼女ができていたのだとか…。ああ、切ない話だと思ったのでした。2.最初は向こうが夢中だったハズなのに逆転ある女性は、飲み会でいろいろな職業や世代の男女とわいわい飲むのが好きでした。あるとき、また飲み会を開いていたら、そのお店に飲みに来ていた男性と話す機会があり、意気投合。偶然知り合ったその男性から、「すごいタイプなんだけど」とストレートすぎるアピールをされた女性は、ちょうど彼氏もいなくてまんざらでもなかったそう。その日をきっかけに、毎日のように男性から連絡が入り、日が合うときはふたりで飲みに行くこともありました。会うたびに「今日もかわいいね」などと言われ、毎回、気分良く過ごせていたという女性。でも、付き合おう、というような決定的な言葉を男性から言われないため、どういうつもりなのか気になりながらもモヤモヤしていたのだとか。そのうち男性の仕事が忙しくなって、連絡も会う回数も減ってきたころ、気づいたら女性のほうから連絡を取る回数が増えて、まるで立場が逆転したような状態になってしまったそうです。時と場合によって、自分が追う立場になることもあれば、追われる立場になることもありますよね。追う恋も追われる恋も、どちらも経験しておけば、恋の醍醐味をより味わうことができそうだと思ったのでした。3.気づいたら母親役ある女性は、年上の男性にリードしてもらう恋に憧れていました。それはその女性が末っ子だったこともあるのか、甘えられる年上の存在がいてくれたほうが、安心できるからということでした。だからこそ、婚活していても、相手の条件は必ず「年上の男性」。10歳ぐらい年上の男性でもいいし、とにかく1歳でも年上がいい、というようなスタンスで探していたそうです。あるとき、婚活で5歳上の男性と出会い、おたがいに気に入ってそのまま付き合うことになりましたが…。わりと早い段階から同棲するようになって、その女性は気づけばすっかり“母親”のようになっていたそうです。その男性は着た服はそのまま、家事は一切やらないし、朝起こすのも彼女の役割。婚活で出会ったにも関わらず、具体的に結婚話が進まないわりに、どんどん母親のような扱いをされてきて、彼女はゲンナリ。次第に彼女の心が離れて、結局は別れてしまいました。同棲することや、母親代わりとされることが良いのか悪いのかではなく、要は、自分が望んでいる恋がちゃんとできているのかどうかが、問題なのかなと思いました。恋をしてしまうと、普段の自分ならしないようなことをしてしまったり、考えてしまったりすることもあるはず。自分の変化も楽しみながら、恋もうまくいくといいですよね!文・かわむらあみり©praetorianphoto/Getty Images©MixMedia/Getty Images©juanma hache/Getty Images
2023年03月31日1児のママでもあるライター・かわむらあみりがお届けするコラム【ママライフばんざい!】連載第50回は、ママになって大変になってくる美容の現実をご紹介します。1.ヘアケアが大変【ママライフばんざい!】vol. 50独身時代や夫婦ふたりだけの暮らしのときは、忙しくてもまだ自分のことに手をかけられる余裕があったという方は少なくありません。でも、お子さんが生まれると、じっくり自分の美容にまで手がまわらなくなるのは“ママあるある”といえるかもしれません。もちろんママになっても自分の時間を確保してケアに手を抜かない女性もいますが、それにはなかなかの気合が必要になる場合もあるようです。とくに年齢を重ねていくにつれて、ママたちが大変になることを探ってみると、まずはヘアケア。人によるところはありますが、「とくに外出予定がないから髪はのばしっぱなしがラク」という専業主婦のママがいたり、「メイクはしなきゃだから、髪はセットしなくていい髪型にしている」というワーキングママがいたり。確かに、家族の朝食の用意や自分の出勤の支度などがあると、朝の時間は限られているためヘアケアが後回しになってしまうでしょうし、実際に美容室に通う回数も限られてしまうかもしれませんね。人それぞれの家庭事情もありますし、無理にケアをする時間を作って逆に疲れてしまうのはおすすめできませんから、自分なりのペースでいきたいところです。2.産後の体型戻しが大変どんなにスタイルのいい女性でも、新しい命が宿って妊娠すると、赤ちゃんを守るために皮下脂肪がついてきます。出産したあとも、すぐに体型が戻るわけではないため、産後の体型戻しが大変だということも“ママあるある”のひとつでもあるでしょう。そういう筆者も、「産後太りだから」と言い続けて早うん年…。出産後何年か経っていますが、いっこうに痩せる気配がありません。ほかのママたちにしても、子どもが赤ちゃんのときは、ダイエットうんぬんよりも育児に集中。「産後ダイエットするような時間も体力もないよね」という声が多いです。ときどき、産後すぐに産前のスタイルに戻しているタレントさんがいますが、それはプロのトレーナーがついて体型を戻していることがほとんどのようですし、それは仕事の一貫でもあるため、同じように痩せなくちゃと焦る必要はありませんよね。ライフスタイルによって、ふくよかになることもあれば痩せることもあるので、そのときどきの体型も含めて自分を大事にしたいものです。3.けっこうどうでもよくなる最終的には、家事や育児に追われていると、自分の美容やケアをすることは「けっこうどうでもよくなる」というママの声が多かったです。とはいうものの、まったく自分のことに手をかけなくなるというわけではなく、美容の時間をわざわざ確保しないで、空き時間でチャチャっと済ませるようになったというママも。つまりは、ライフスタイルに合わせて、時短でやりくりするようになったママもいるということですね。ヘアケアやスタイルなど、自分の容姿を気にしすぎて手間ひまをかけることに夢中になるよりも、「子どもとの時間を充実させたい」「手間をかけるものの優先順位が変わった」ということ。外見をキレイに磨くママも素敵ですが、たとえケアがあまりできていなくても内面の充実度は自然とあふれでる魅力になりますし、何よりも、自分がいいならそれでいいですよね。他人の目を気にするよりも、自分自身の心のままにママライフを過ごしていきたいものです。年代によって、仕事との関わり方や、家庭との向き合い方は自然と変わってくるもの。そのときどきでベターな過ごし方ができれば何よりです。みなさんの家庭がうまくいきますように!文・かわむらあみり©Guido Mieth/Getty Images©Olga Rolenko/Getty Images©pixelfit/Getty Images
2023年03月31日名だたる刀剣が戦士へと姿を変えた“刀剣男士”の活躍を描き、原案のゲームや舞台など幅広いジャンルで絶大な人気を誇っている『刀剣乱舞』シリーズ。大ヒットを記録した初の実写映画『映画刀剣乱舞-継承-』から4年、『映画刀剣乱舞-黎明-』として再びスクリーンに帰ってきます。そこで、主演を務めたこちらの方々にお話をうかがってきました。鈴木拡樹さん & 荒牧慶彦さん【映画、ときどき私】 vol. 566長年にわたって、2.5次元界をけん引している鈴木さん(写真・左)と荒牧さん(右)。前作に引き続き、三日月宗近役を鈴木さん、山姥切国広役を荒牧さんが演じています。今回はおふたりに、撮影秘話やお互いの好きなところ、そして自身の運命が変わった瞬間などについて語っていただきました。―まずは、最初に脚本を読んだときに受けた印象から教えてください。荒牧さん僕は、「現代に出陣することもあるんだ!」という驚きが一番でした。いままでは戦国時代のように僕たちからするといわゆる“歴史上の場所”にしか出陣していませんでしたからね。なので、こんな僕たちにとって身近なところにも行くんだなと思いました。鈴木さん確かに、そうだよね。これまでは“時代劇”というコンテンツだと思っていたので、僕も「現代に出陣したらどう見えるのかな?」と不思議な気分でした。でも、妄想したことある世界観ではあったので、それが実現できたことはうれしかったです。映画では最初から作れる楽しさもあった―そのなかで、前作の経験が生かされたこともありましたか?荒牧さん前回とスタッフさんが同じだったこともあり、キャラクターの言葉づかいや刀さばきを理解している僕らからの提案を取り入れてくださったのは大きかったと思います。鈴木さん第1弾でチームワークが作れていたからこそ、第2弾につながったところもあったのではないかなと。実際、お互いの認識は前回に比べると断然早かったので、すごく円滑に進みました。設定的に、キャストもスタッフも迷うことはあったかもしれませんが、このチームでやれてよかったです。―舞台と映画で、意識を変えている部分はあるのでしょうか。荒牧さんそれぞれの性格などは一緒ですが、映画ではどうやってフラットにできるかを考えました。この作品では、山姥切国広がどういう成長を遂げるのか、ということを自分なりに考えて落とし込んでいます。鈴木さん僕たちからすると、いままで演じてきたなかで関係性が出来上がっていますが、映画ではそれを一度ゼロにしました。でも、同じことをまた最初から作れる楽しさは、映画ならではかなと思っています。憧れの人と一緒に歩けていることが幸せ―これまで長年にわたって共演されていますが、お互いにどんな存在ですか?荒牧さん僕は拡樹くんのことが大好きですし、すごく尊敬している先輩。『刀剣乱舞』シリーズだけでなく別の作品でもお仕事をさせていただいていますが、憧れの人の隣に立つことができてそれだけでもうれしいです。並んでいると言うのはおこがましいですけど、一緒に歩けていることが僕にとっては本当に幸せなことですね。鈴木さんずっと一緒にやってきた仲ですし、そのなかで積み上げてきた関係性もあるので、僕もその気持ちに近いところはあります。まっきーがいろんな分野で成長していく姿も見ているので、刺激し合えるというか、“良き共演者”ってこういうことなんでしょうね。友達の視点とはまた違いますが、そういうところも含めていい関係だと感じています。―そんななかでも、自分だけが知っている相手の意外な素顔や好きなところを教えてください。荒牧さん拡樹くんはいつもニコニコしているのが素敵だし、そこが好きなところです。撮影中は、時間がタイトになってきたりするとどうしても現場がピリピリする瞬間もありますが、そんなときでも拡樹くんはニコニコしていますから。それを見ると気持ちが落ち着くので、僕にとっては癒しの存在でもあります。鈴木さんみなさんにとって、まっきーの意外なところって何でしょうか…。「意外と見たことなさそう」という意味では、iPadに向かっている姿とかですかね(笑)。荒牧さん確かに、見せたことないと思います。今回、撮影中にどうしてもやらないといけないことがあって、現場では山姥切国広の格好のままiPadで作業していたことありました(笑)。鈴木さんそのときに、僕はまっきーがiPadに向かっているときの姿勢の良さがいいなと思ったんです。もし、会社員の役を演じることがあったら、ぜひ姿勢の良さに注目してみてください(笑)。現実離れしているような空気感があった―それは新しい視点ですね。また、本作ではアクションシーンも素晴らしかったですが、苦労したことや印象的だったことは?荒牧さん現代の街並みは、狭くて戦いづらかったです…。今回はそれをめちゃくちゃ感じました。特に刀は長いので、アパートの通路とかでは戦いにくくて仕方がなかったです。鈴木さん確かに、東京は戦いに向いていないよね。あと、エキストラの方々が大勢いる状況のなかで戦うことが舞台ではあり得ないことなので、それも映画の現場ならではだと思いました。実際、渋谷のスクランブル交差点のシーンでは、ワンカット撮るたびには拍手が起きてすごかったです。「僕たちは一体何をしているんだ?」と思うくらい(笑)。現実離れしているような空気感でしたね。でも、みなさんが楽しんでくれたのなら、映画化してよかったなと思える1つの要素です。荒牧さんもはやイベントですよね。―かなり盛り上がった現場だったんですね。ちなみに、キャスト同士は撮影の合間をどのように過ごされていたのでしょうか。荒牧さんコロナ禍の撮影だったこともあり、フェイスシールドを付けていましたし、お互いにどのくらい積極的に話していいのかわからない状況でしたよね…。鈴木さんそうだね。話すにしても、食事をするにもかなり距離を取っていましたから。荒牧さんなので、キャスト間で何かが流行っていたとか、共通の話題で盛り上がったとかもなかったような。撮影の前に、監督と芝居についてちょっと話をするくらいだった気がします。それくらい感染対策に気をつけながらの撮影でした。このシリーズは、本当に“モンスター”だと思う―では、前回の現場とはかなり様子も違ったんですね。鈴木さん第1弾のときはみんなでロケバスに乗って移動していたので、一緒にお菓子を食べたりしていました。荒牧さんあと、前回はみんなで火を囲んだりもしてましたよね。でも、そういうことも今回はできませんでした。鈴木さんただ、僕たちの場合は関係性のベースがある程度出来上がっているので、そこは救いだったかもしれません。これまで一緒に作ってきた信頼関係はもちろん、相手が何をしてくるのかも想像できましたから。特別な何かはなかったですが、その代わりにそういう部分を感じられた現場だったかなと改めて思います。―なるほど。『刀剣乱舞』シリーズは、多岐にわたってどんどん広がりを見せていますが、改めてこれまでを振り返ってみていかがですか?荒牧さんこれだけ長く愛される作品になったことは、感慨深いですね。僕たちもこの作品に携わって7年になりますが、いまなお勢いがとどまることを知らないコンテンツというのもすごいなと。鈴木さん僕たちは原案のゲーム開始から約1年後のときから関わっていますが、その時点ですでに“モンスターコンテンツ”と言ってもいいくらいでした。だからこそ、「どれくらい上まで行けるのか」とか「これを何年続けられるのか」といったことが当初の課題でしたが、そんな予想も遥かに超えていますからね。更新が早いゲームの世界でもこれだけ強く生き残っているのは相当なことですし、「本当にモンスターだったんだな」という言葉に尽きると思います。人生の岐路は、俳優に興味を持ったとき―また、本作ではそれぞれのキャラクターが自分の運命と向き合っている姿も描かれており、そのあたりも見どころですが、おふたりの運命が変わった瞬間といえば?荒牧さんそれは、俳優を目指したときです。そこで人生が大きく変わったので、人生の岐路だったなと思います。僕は大学生のときに俳優の世界へと飛び込みましたが、もし俳優業に興味を持たなかったら、いま頃は銀行員になっていたのかもしれません(笑)。鈴木さんそれはそれですごいことだけどね。荒牧さんとはいえ、銀行員になりたかったわけではなく、自分が通っていた大学では銀行に進む人が多かったので、なんとなく自分もそっちに行くのかなとぼんやり思っていたくらいです。いまは、あのときにこの決断をしてよかったなと思っています。鈴木さん僕の運命が変わったのは、俳優を始める前に初めて舞台を観に行ったときです。それまでは芝居とかも全然わかっていなかったんですが、毛利亘宏さん演出の舞台を観たときに「現実離れしているのになんて楽しい時間なんだろう」と衝撃を受けました。それが僕の原点でもあります。ただ、まさか自分も芝居を始めるとは思っていなかったので、何があるかわからないですね。推しの作品を通して、人生の幅を広げてほしい―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。荒牧さん僕たちから言ってもいいのかわかりませんが、最近よく言われていることでもあるので、「推しができると楽しいよ」ということは伝えたいですね。自分が応援している人がうまくいっているだけでもうれしいものですが、映画でも舞台でも小説でも漫画でも、僕はすべて“人生の疑似体験”だと思っているので、推しの作品を通して人生の幅をもっと広げていただけたらいいかなと。それによって、人生は華やかになると僕は考えています。まだ『刀剣乱舞』シリーズに触れたことがない方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ一度ご賞味ください。鈴木さんもし日常生活に充実感を得られないと感じている方がいれば、そこまで大げさではなくてもいいので、まず自分の発言を少し変えてみるというのは1つの方法だと思っています。実は、これは僕がインタビューを受けているときに感じていることです。たとえば、そこまで自信がないことでも、いつもの自分よりも少し強気な発言をすると、それが支えになることがあります。なので、普段の自分をちょっと超えてみるという作業を徐々にしてみるのはオススメです。それによって、自分だけでなく、周りからの見られ方も変わっていくので、それが人生に変化をもたらしてくれると思います。インタビューを終えてみて…。言葉や態度から、お互いのことを信頼し合っていることが伝わってくる鈴木さんと荒牧さん。撮影でポーズを取る際にも息の合った様子を見せており、そういうところにも長年積み上げてきた関係性を垣間見ることができました。本作でも、そんなおふたりのやりとりに注目してください。壮大な世界へと観る者を誘う!『アベンジャーズ/エンドゲーム』など数々の大ヒット作を手掛けてきたVFXチームを加えるなど、ハリウッド・クオリティの映像でさらなるスケールアップを見せている最新作。その世界観のなかで繰り広げられる刀剣男士たちの華麗でありながら圧倒的な迫力を誇る殺陣のパフォーマンスも、ぜひお見逃しなく!写真・幸喜ひかり(鈴木拡樹、荒牧慶彦)取材、文・志村昌美ストーリー西暦995年 京都。藤原道長と安倍晴明の密談によって、源頼光たちは大江山に住まう鬼・酒呑童子の討伐を命じられるが、歴史改変を目論む歴史修正主義者が放った時間遡行軍に道を阻まれる。そんな窮地を救ったのは、三日月宗近ら歴史を守るべく戦う刀剣男士たちであった。しかし、先に鬼の根城へと踏み込んだ山姥切国広は、酒呑童子の最期の呪いによって、光とともに姿を消してしまう。西暦2012年 東京。下校途中の高校生・琴音の耳に聞き慣れない音が届き、引き寄せられるように向かった先で禍々しい影と戦う一振りの太刀を目にする。その頃、日本各都市では市民が突如意識を失う事件が多発。この不可解な事態を解決すべく、山姥切長義が内閣官房国家安全保障局に出現する。事態との関与が疑われる山姥切国広の確保を始めとする “特命任務”の要請に応じ、各本丸より続々と刀剣男士が集結することに…。目が離せない予告編はこちら!作品情報『映画刀剣乱舞-黎明-』3月31日(金)全国ロードショー配給:東宝(C)2023 「映画刀剣乱舞」製作委員会/NITRO PLUS・EXNOA LLC写真・幸喜ひかり(鈴木拡樹、荒牧慶彦)
2023年03月30日春といえば、仲間との出会いと別れに心が動かされる季節。そんなときにオススメの映画は、人生の折り返し地点を迎えた男たちが青春時代に組んでいたパンクバンドを再結成するため、30年振りに集結する様子を描いた注目作『GOLDFISH』です。今回は、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。永瀬正敏さん【映画、ときどき私】 vol. 565劇中で、過去に社会現象を起こした元人気パンクバンドのメンバーであるイチを演じている永瀬さん。本作では、映画監督デビューを果たしたバンド「亜無亜危異(アナーキー)」の藤沼伸一さんと初タッグを組んでいます。そこで、現場での様子や自身がバンドを組んでいたころの思い出、そして分岐点となった恩人との出会いなどについて語っていただきました。―最初にお話があったときの印象や出演の決め手となったものから教えてください。永瀬さん亜無亜危異さんがデビューされたのは、ちょうど僕が中学生くらいのとき。いままで聴いたことのないような音楽とカリスマ性を持ったバンドということで、当時から話題沸騰でした。ただ、僕はどちらかというと海外のパンクバンドをよく聴いていたので、存在や漠然としたエピソード、数曲の楽曲は知っていましたが、そこまで詳細には知らなかったんです。なので、今回の脚本を読んだときに、これを映画にする監督はすごい覚悟が必要だったろうなと。100%リアルな物語ではないものの、いろんな事実も含まれているので、そこにちゃんと向き合われたんだなとその決心を感じてぜひ出演したいと思いました。―ちなみに、永瀬さんご自身もパンクバンドをされていた経験があったとか。永瀬さんいやぁ…(笑)。中学1年生の終わりぐらいからですが、同じ中学の先輩のなかにかっこいいバンドがいたので、その人たちに感化されて5人で組んでいました。しかも、当時の九州はバンド熱が高かった時代でもありましたから。あと、ベースとギターで楽器は違いますが、ストラップの付け方をシド・ヴィシャスみたいな感じで弾きたいと思って真似していたことも。でも、そうするとリズムがどんどんみんなとズレてしまうので、最終的にはギターをクビになりました(笑)。ライブシーンでは、一気に中学時代に戻ったような感じがして懐かしかったです。思いがあれば、何かをスタートするのに期限はない―監督の藤沼さんは今回が映画監督をするのは初ということで、映画作りに関する入門書を買いまくっていたそうですね。さまざまな監督とお仕事をされてきた永瀬さんから見て、監督ぶりはいかがでしたか?永瀬さん撮りたい画が見えていて、すごく落ち着きもあったので、申し分なかったと思います。特に、ご自身が経験されたことを反映されているからというのもありますが、事前にしっかりとシミュレーションができていたように感じました。俳優陣やスタッフへの指示出しや回し方も素晴らしかったので、不安要素というのは一切なかったです。あとは、やっぱりライブシーンに関してはお手のものだなと思って見ていました。ライブシーンは曲の途中で止めて撮影することもあるので普通だと大変なんですが、それがとてもスムーズでしたし、毎回同じ盛り上がりを演出されていたのもすごかったです。―60歳を過ぎてからの初挑戦で苦労もあったと思いますが、その姿に刺激を受けたところはありませんでしたか?永瀬さんおそらくこれは映画に限らず何にでも言えることですが、ちゃんと思いがあれば、みんな付いていくものなんだなと。何かをスタートするのに期限はない、みんなの協力があればいくつになっても始められるんだなと感じさせていただきました。―永瀬さんが演じられたイチは、藤沼さん自身を投影した役どころですが、ご本人の前で演じられてみていかがでしたか?永瀬さん自分のなかで迷いがあったときでも、監督から醸し出されるものをつねに浴びられるので、安心感があって助かりました。ただ、この作品は完全な実話ではないので、本人になりきって演じる必要がない役どころ。そういったこともあって、僕としては監督の“匂い”や仲間といるときの雰囲気、立ち姿といったところで通じるものを出せればいいかなと。撮影中は監督について回ったり、監督の細かい部分を観察したりしていました。映画に対する思いは、デビュー当時から変わらない―そんな永瀬さんの演技に監督は見とれてしまい、カットを掛け忘れそうになったこともあったそうですが、特にアドバイスなどはなかったのでしょうか。永瀬さん芝居についてはほとんどなかったですが、当時の背景やメンバーとの関係性みたいなことは雑談程度でお話いただきました。あと、大きかったのはギターを教えていただいたことですね。全然触っていなかったので、監督にはご迷惑をおかけしたと思います。そもそも僕は、ギターが下手でクビになったくらいのレベルですからね(笑)。「またバンドを組もう」とまではいかないですけど、やっぱり音楽はいいなと感じました。―そういう楽しさは、作品からも伝わってきました。永瀬さん現場では本番ギリギリまでいつもみんな笑っていましたし、「昔から仲間だったんじゃない?」と思うくらいあっという間にひとつになりました。僕としてはキーくん(渋川清彦)の芝居がおもしろくて、笑いをこらえるのが必死でしたけど、とにかく毎日が楽しかったです。―そのいっぽうで、劇中では「ミッドライフクライシス」についても描かれていますが、ご自身もそういう経験をされたことはありますか?永瀬さんあるような気もするけど、ないような気もするので、もしかしたら成長していないのかな、鈍いとか(笑)。もちろん、いろんなところにガタが来ているとか、無理がきかないとかはありますが、いまだにデビュー当時の感覚をずっと引きずっている部分があるんでしょうね。昔のインタビューを見返してみても、言っていることはあまり変わっていないですから…。でも、それだけ映画に対する思いが変化していないということだと思います。満足してしまったら、そこで止まってしまう―デビュー作といえば、相米慎二監督の『ションベン・ライダー』ですが、そこで得たもので、いまでも変わらない部分というのはどのあたりでしょうか。永瀬さん口に出したり、手を取って細かく演技指導してくださったりするタイプの監督ではなかったですが、そこで最初にもらったものは、あとで振り返ってみても、忘れちゃいけないものだなと感じています。それは「演じている本人がその人物のことを一番知っていなきゃいけない」ということですが、いろんな仕事を重ねていっても同じだと思う部分です。15歳で現場に入って、そこで救ってもらった感覚がすごく強かったので、いまも現場に対する愛情は変わりません。―そういう思いを貫き続け、今年の2月でデビューから40年周年を迎えられました。改めて、これまでを振り返ってみて実感はありますか?永瀬さんまあ、生きていれば誰にでもいずれそういうときは来るんでしょうけど、自分の理想とはちょっと違いましたね(笑)。もっと大人になっているはずで、もっと自分の芝居にも自信がついているはずだったので…。気持ち的には、毎回ゼロというか、マイナスくらいからのスタートで1つ1つ積み重ねて作っていく感じは、デビュー当時と同じです。自分の芝居を見ても、「よくやった!」と1回も思ったことはありません。もちろん、自分としてはいつも120%でやっているんですけど、客観的に見れないところはいまだにずっと続いています。―永瀬さんほどのキャリアと経験があっても、いまだに自信がないというのは驚きです。永瀬さんいやいや、全然ですよ。「違う方が演じたらもっとスムーズにいい芝居ができるんだろうな」とか考えることもあるくらいなので。でも、だから続けていられるのかもしれないですね。満足してしまったら、そこで止まってしまいますから。ジム・ジャームッシュ監督が違う景色を見せてくれた―つまり、そういう気持ちこそが原動力になっていると。永瀬さんまさにそうですね。かと言って、終わった作品がダメだということではないですよ。あくまでも、自分に対しての点数が厳しいだけですから。共演者の方々の演技は素晴らしくて感動しますが、自分にはそう思えないんですよね。なので、実はいまだにデビュー作がどうしても最後まで観れないんです。もちろん、特別な感情がたくさん入っているからというのもありますが、それくらい客観的に観ることができません。とはいえ、もうちょっと大人になってもよさそうなもんだなと自分でも思うんですけど…。そろそろもう少しラクしたいです(笑)。―それほどまでとは意外ですね。これまで本当にいろんな経験をされてきたと思いますが、そのなかでもご自身にとって分岐点だったなと思い浮かぶ出来事といえば?永瀬さんいっぱいありますが、デビューしたあと5、6年くらい映画に出られなかった時期に、映画の現場に引き戻してくれたのがジム・ジャームッシュ監督。僕にとっては恩人の1人ですし、いまでもその関係が続いているのがうれしいです。ジャームッシュ監督とプロデューサーが事務所にかけあってくれて、「自分たちが面倒を見るからアメリカに来させたい」と言って呼んでくれました。当時はとにかくお金もなくて大変でしたが、プロデューサーさんの家に4か月ほどルームシェアさせてもらったり、惜しみなく知り合いを紹介してもらったりしたので、あのときの世界の広がり方はすごかったですね。そこで、違う景色を1回見させてもらったおかげで確実に自分のなかで何かが広がっていくのを感じたので、いまでもすごく感謝しています。毎日笑顔で、楽しく生きてほしい―それらを踏まえたうえで、今後新たに挑戦したいこと、もしくは60代を迎えるまでの数年でしたいことなどがあれば教えてください。永瀬さん繰り返しになりますが、もっと大人になりたいですね(笑)。あとは、誰が主役とか脇役だとか関係なく、役者同士でもっとスクラムを組み、みんなで1つの作品に向かって戦っていきたいという気持ちが強くなっています。―ご自身が監督をされる可能性もあるのではないかなと期待してしまうのですが、いかがでしょうか。永瀬さんいろいろとお話はいただきますが、監督は絶対にしないですね(笑)。それよりも、脚本を作ったりとか、座組を考えたりとか、映画の土台づくりをするのは楽しそうだなと思っています。みんながいろんなところからアクションを起こしていけば、これからもっとおもしろくなる気がしているところです。―楽しみにしています。それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。永瀬さん僕が何かをアドバイスできるような立場ではありませんが、ここ数年でいろんなことが起き、当たり前だったことが当たり前にできなくなった経験をして、普通に暮らしていくことがどれほど貴重なのかを僕も痛感しました。だからこそ、毎日笑顔で楽しく生きてほしいです。そして、たまにはぜひ映画館にも足を運んでください。インタビューを終えてみて…。この連載には何度かご登場いただいていますが、約1年振りとなる永瀬さん。お会いするたびに、映画に対する愛の深さと真摯な姿勢には感動を覚えます。そして相変わらずのかっこよさは言うまでもありませんが、本作ではギターを弾く姿にもしびれますので、ぜひご注目ください。不条理な世の中に立ち向かえ!さまざまな苦悩を抱えつつも、戦うことを諦めないパンクな男たちの生きざまを描いた本作。居場所を見失い、葛藤に押しつぶされそうになったときこそ、過去ではなくいまの自分自身と向き合えば、その先に待ち受ける新たな希望と出会えるのだと教えてくれる1本です。写真・幸喜ひかり(永瀬正敏)取材、文・志村昌美スタイリスト・渡邉康裕ヘアメイク・勇見勝彦(THYMON Inc.)コート¥433,400、シャツ¥173,800、パンツ¥323,400YOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモトプレスルーム/03-5463-1500)、他スタイリスト私物ストーリー1979年、19歳の不良少年5人によって結成されたパンクバンド「ガンズ」。デビューするやいなや、社会現象を巻き起こす。しかし、人気絶頂のなか、メンバーのハルが傷害事件を起こして活動休止となってしまう。それから30数年が経ち、妻子と別れてひとり暮らしをするギタリストのイチ。そんな彼のもとに、リーダーだったアニマルから連絡が入る。そして、アニマルの不純な動機をきっかけに、イチが中心となって再結成へと動き出す。ところが、いざリハーサルを始めると、ハンドとしての思考や成長にズレが生じ、メンバーたちの間にも音にも不協和音が出始めるのだった……。ほとばしる熱を感じる予告編はこちら!作品情報『GOLDFISH』3月31日(金) シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開配給:太秦 、パイプライン(C)2023 GOLDFISH製作委員会
2023年03月30日いまやスマホやパソコンで映画を楽しむ人は増えていますが、それでも最高の映画体験に欠かせない場所といえば映画館。そこで、ミニシアターを舞台にした映画愛が詰まった注目作『銀平町シネマブルース』をご紹介します。今回は、現在公開中の本作に出演しているこちらの方にお話をうかがってきました。藤原さくらさん【映画、ときどき私】 vol. 564シンガーソングライターとして精力的に活動し、高い人気を誇っている藤原さん。劇中では、時代遅れの映画館「銀平スカラ座」でバイトとして働く足立エリカを演じています。映画初挑戦となった本作で感じたことや現場での思い出、そして自身を支えてくれている存在などについて語っていただきました。―まずは、オファーがきたときのお気持ちからお聞かせください。藤原さんいままで映画には出演させてもらう機会がなかったので、お話をいただいたときはとってもうれしかったです。主演の小出恵介さんはじめキャストのみなさんもスタッフのみなさんも、個性豊かな素敵な方たちばかりで楽しみでした。―今回が初めての映画出演となりましたが、これまで経験されていたドラマの現場と比べてみていかがでしたか?藤原さん監督によるかもしれませんが、時間が押したりすることもなく、すごくサクサクと撮影が進んでいった印象です。特に城定秀夫監督は、長回しで撮ることが多かったので、最初に何度かリハーサルをして、本番が決まったら1発で終わりというシーンもありましたね。自分のなかにある映画好きな部分を自然に出したかった―最初に脚本を読んだとき、ご自身の役どころはギャルだと思われたとか。役作りはどのようにして現場に挑まれましたか?藤原さんまず脚本からは、イマドキの女の子なのかなという印象を受けました。あとは、純粋にすごく映画が好きな子なんだと。私自身も映画が好きなので、今回は自分のなかにもあるそういう部分を自然に出せたらいいなと考えました。「事前にがっつり役作りしなきゃ」というよりは、演じやすい役どころでしたね。―本作には個性豊かなキャストの方々が集まっていますが、現場の様子はどんな感じだったのでしょうか。藤原さん最初は誰も知り合いがいなくて緊張していましたが、みなさん本当に気さくに話してくださる方ばっかりだったので、すごく居心地のいい現場でした。キネマ座では、常連メンバーが並んでおしゃべりしていましたね。なかでも、ミュージシャンの黒田卓也さんはすごくおもしろい方でした。ちなみに、実は黒田さんに関しては、最初に顔と名前が頭のなかでつながっていなくて、俳優さんかと思っていたんです。そしたら劇中で演奏しているトランペットがすごすぎて、「え!?どういうこと!?」って衝撃を受けました。日本人として初めてブルーノートと契約した方ですから、うまいに決まっていますよね(笑)。その後、音楽の仕事でもご一緒できて、すごくうれしかったです。現場では、ハプニングが起きたこともあった―ほかにも、印象的だったエピソードといえば?藤原さんハプニングと言ったら、撮影中に監督が骨折してしまったことでしょうか。あれはびっくりしましたね。ある日、監督が現場にいらっしゃらなくて、みんなで「どうしたんだろう?」と話しながら待っていたところに報告が入ったんですけど、吹越満さんとか宇野祥平さんとかが「やっぱり……。不吉なことが起こると思っていたんだ」と。聞いてみると、前日にホテルでお湯が出なかったとか、変な音がしたとか、そういったことがあったらしく、嫌な予感がしていたみたいです(笑)。―ある意味、映画みたいな出来事ですね。また、日高七海さんとは本作での共演がきっかけで、Podcastの番組も始められました。そういう意味でも、思い出深い作品になったのでは?藤原さんそうですね。七海ちゃんとは地元が同じ九州というのもありますし、波長やスピリットが合うんです。「学校でクラスが一緒だったら友達になっていただろうな」という空気感があったので、Podcastに誘いました。七海ちゃんと出会えて良かったです。出会った人や映画が蓄積されて、新しい言葉が生まれる―俳優としての経験が、音楽活動にも影響を与えていると感じることはありますか?藤原さんやっていることは違うものの、表現としては近いところもある気がしています。出会った人たちや役が与えてくれた気持ちが自分のなかに蓄積されて、新しい言葉が出てくることもあるのかなと思っています。そういう意味でも、『銀平町シネマブルース』は自分の創作活動にも影響を与えてくれた作品になりました。今後も、音楽活動と相談しつつ、ご縁があったらまた映画に出られたらいいなと思います。―実際、完成した作品をご覧になったときは、いかがでしたか?藤原さんはじめは客観的に観れなくて緊張しましたが、何回も観ていくうちに、映画愛に溢れた本当にいい作品だなと思いました。私の家族も地元の素敵な映画館へ観に行ってくれたのですが、泣いて笑ったと感想をくれたほどです。映画好きな人にとっては思わず合掌したくなるようなたまらない仕上がりになっているので、こういう映画に参加できてよかったなと改めて感じました。それから、撮影していたのは2021年でコロナ禍だったこともあり、ミュージシャンとしても時間が止まってしまったような時期を過ごしていたなと振り返った部分もあったかもしれません。無気力になってしまったり、どうしたらいいかわからなくなってしまったりしても、前に進めるのが人生だし、誰でもリスタートできるんだという気持ちになりました。映画館での体験は何ものにも代えがたい―劇中の登場人物たちにとっては映画館が心のよりどころにもなっていますが、藤原さんにとって心のよりどころは何ですか?藤原さん私にとっては、犬ですね。自分が実家に帰ってきただけで喜んでくれる姿を見ると愛を感じます。私は動物が好きなこともあって、牧場や水族館などで生き物と一緒にライブをすることもありますが、動物がいるとすごく気持ちが穏やかになるんですよね。無になれるというか、「かわいい」という感情しかなくなります(笑)。あとは、映画館もよりどころではあるかもしれませんね。映画館で映画を観ると、すごくリフレッシュできるので。いまはスマホでも映画が観れてしまう時代ですが、わざわざ映画館に行き、自分の五感を映画に捧げて作品の一部になるという体験は何ものにも代えがたいことですよね。―そうですね。もし映画館にまつわる思い出などもあれば、教えてください。藤原さん10代の頃には、時間がたくさんあったこともあって、ポイントカードを作るくらい映画を見に行っていました。―そのなかでも、ご自身の人生に影響を与えたような作品もありましたか?藤原さん昔の映画も観るほうではありますが、すごく好きな作品は『ブルース・ブラザース』(80)。やっぱり音楽が関わっている映画は好きですね。ほかにも、ザ・ビートルズとか、自分が好きなアーティストのドキュメンタリー映画はよく観ます。あとは、ミュージカル映画もいいですよね。ファンの方がいるだけで、大丈夫だと思える―本作では、人生に迷っている主人公の姿が描かれていますが、ご自身もどうしていいかわからなくなるような経験をされたことは?藤原さんもちろんあります。いまはツアーで各地を回れていますが、コロナ禍のときはライブができなかったり、曲を作っても聞いてもらう場所がなかったりして、私だけでなく多くのミュージシャンがそういうことを感じていたのではないでしょうか。でも、そのときに物事のとらえ方次第で気持ちが変わることを改めて実感しました。コロナ禍をただの悲しい出来事にするのではなく、そんななかでも自分に成長を与えてくれたいい機会にもなったと受け止めたほうがいいのかなとか。すごくいろんなことを考えさせられた時期で、私にとっては転機になったと思います。―つらい思いをしていたとき、藤原さんにとって支えとなっていたのは何ですか?藤原さんやっぱりそれは、ファンの方々の存在です。自分が落ち込んでいるときには一緒になって悲しんでくれますし、「大丈夫だよ」と声を掛けたりしてくれますので。すごく支えてもらっています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。藤原さん自分に余裕がなくなってしまうと、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。そういうときこそ映画を観に行ったり、好きな音楽を聴いたりして息抜きをしてください。これからも、一緒にがんばりましょう!インタビューを終えてみて……。透明感のある肌と柔らかい笑顔が印象的な藤原さん。そして、心地よい声はいつまでも聞いていたいと思ってしまったほどです。撮影中にはチャーミングな表情も見せていただき、現場では「かわいい」の声がわき上がりました。本作では、音楽活動のときとはまた違う藤原さんの魅力に注目してください。物語は、まだ始まったばかり!映画の素晴らしさと、どん底にいてもやり直せるチャンスは誰にでもあることを改めて思い出させてくれる本作。“人生”という名の映画は、自分次第でどんな物語にでも書き換えられると感じるはずです。写真・幸喜ひかり(藤原さくら)取材、文・志村昌美ヘアメイク・筒井リカスタイリスト・岡本さなみストーリーかつて青春時代を過ごした銀平町に帰ってきたのは、一文無しの青年・近藤。行く当てもないまま町で過ごしていると、ひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤と映画館「銀平スカラ座」の支配人・梶原と知り合う。映画館でバイトを始めることになった近藤は、同僚のスタッフや老練な映写技師、個性豊かな映画館の常連客との出会いを経て、かつての自分と向き合い始めるのだった。温かい気持ちになる予告編はこちら!作品情報『銀平町シネマブルース』3月31日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開中配給:SPOTTED PRODUCTIONS(C)2022「銀平町シネマブルース」製作委員会写真・幸喜ひかり(藤原さくら)
2023年03月29日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は突然パーティやイベントにお呼ばれされても困らない、参考になるファッションをいくつかピックアップしてみました。レースと革は使えるだけ使え!パーティといっても大小、どんなパーティかで服装は分かれますが、無難に着こなしたい場合は、革やレースタイプのドレスやトップスを使用すると、一気に上品でクラシックな雰囲気になるのでおすすめです。こちらの女性は、レースと革の両方を上手に使っていますね。さらに色のチョイスもさすが!難しい色も、上手に着こなすことで存在感抜群に!鮮やかカラーコンビで目を引く!季節によって色を選んでいいと思いますが、この時期には、写真のような鮮やかなイエローがおすすめ。さらに今回は、滅多にお目にかかれないエメラルドグリーンのパンプスを合わせているなんて、最高に素敵!珍しい透け感のあるボトムスがさらにトレンディ。しかし、インナーやサングラスにはブラックを選んでいるので、全体の明るい印象をトーンダウンさせ、バランスの取れたスタイリングに仕上がっています。絶対に持っていて損なし!ブラックワンピースデザインは違えど、やはり膝上ブラックワンピースは、1枚持っていると重宝します。海外でもけっこう人気なんですね。パーティだからと派手なカラーにするのではなく、いかに自分に似合ったスタイリッシュな服装を選ぶかが、重要なポイントのよう。思いっきり目立ちたい方に、スパンコールドレスもう、こちらはパーティにぴったりな完璧スパンコールドレス。どこから見ても目立つ存在感はさすが!なかなか真似ができなそうですが、思いっきり目立ちたい方にはいいかも!?透け感あるドレスは、いつでも魅力的なスタイル!部分的にレースを使用して、透け感のあるドレスは、上品な小花柄の可愛いデザイン。セクシー過ぎず堅苦しくなく、個性も忘れないバランスの良いドレスですよね。バッグやシューズはシンプルに落ち着かせ、ドレスに目がいくようにスタイリングされているようです。こんな組み合わせもありなの!?なんでもありなんです!2つの個性的な柄をあえて一緒に着こなしちゃうなんて、最高にクール!ドレス自体は一見シックで上品。ボトムスはカラーもデザインもキュート!そんな全く異なる存在の2つを自分らしく着こなせるなら、どんな服装も自己流スタイルで楽しめちゃいそう。いかがでしたか?せっかくのパーティなんだから、目立たなくちゃ!と思いながらも、やっぱり目立ち過ぎはちょっと…と悩んだりしますよね。そんな悩みも吹っ飛ばしてくれるような、インフルエンサーのパーティスタイルをご紹介しました。参考になるかな?なれば嬉しいです。写真 平野秀美
2023年03月26日東京・竹橋で、東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』が開かれています。本展では、重要文化財として指定された「明治以降」の美術作品をまとめて展示。価値あるアートを見られるだけでなく、名品に隠された意外な秘密など、アートの歴史も楽しむことができる展覧会です。オール重要文化財の貴重な展覧会!『重要文化財の秘密』会場入り口【女子的アートナビ】vol. 287『重要文化財の秘密』では、重要文化財として指定された明治以降の作品を展示。日本画や洋画、彫刻、さらに工芸も含めた51件を、会期中に展示替えをしながら紹介しています。そもそも重要文化財とは、なんでしょう?国宝とは、どう違うのでしょうか?重要文化財とは、日本にある有形文化財のうち、「製作優秀で我が国の文化史上貴重なもの等について文部科学大臣が定めたもの」。そのうち、特に優れたものが「国宝」に指定されます。現在、日本にある重要文化財は10,872件。いっぽうの国宝は、906件。1万以上もあるなら、あまり貴重な感じがしない…と思ってしまいそうです。ですが、実は明治以降の近代美術で重要文化財に指定されているのは、わずか68件のみ。そのうちの51件が本展で見られるので、かなり貴重な展覧会だといえそうです。どうしてこの作品が重要文化財に…?萬鉄五郎《裸体美人》1912(明治45)年重要文化財東京国立近代美術館蔵(通期展示)本展を担当された東京国立近代美術館副館長の大谷省吾さんは、「重要文化財だからすばらしい、という受け身の視点ではなく、どうしてこれが重要文化財に指定されたのだろう?という視点から作品を見ていただきたい」とコメント。さらに、重要文化財の指定に関する「秘密」のひとつを教えてくれました。大谷さん萬鉄五郎の《裸体美人》は現代になってから評価された作品です。萬は東京美術学校時代、最初は優等生でしたが、卒業制作で本作品を描いて指導教官たちを驚かせ、成績も19人のうち16番目になったと伝わっています。当時は斬新すぎた作品でしたが、時代を経て「新しい時代を切り開いた作品」として認められ、2000年に重要文化財として指定されました。最短で44年!横山大観《生々流転》1923年(大正12年)重要文化財東京国立近代美術館蔵(通期展示)本展の作品はオール重要文化財なので、すべてが見どころですが、なかでも目を引くのが会場に入ってすぐの細長い展示室で紹介されている横山大観の《生々流転》。長さ40メートルもある大作です。本作品に隠された「秘密」は、明治以降に指定された全68件の重要文化財のうち、「最も制作から短期間で認定された」という点。本作品が描かれたのは、大正時代の1923年。重要文化財に指定されたのは、1967年。つまり、最短でも認定に「44年」もかかるのですから、いかに大変なことかわかります。ちなみに、明治以降に制作された絵画などの美術作品のうち、国宝に指定されたものはゼロ、とのこと。でも、本展で展示されているのは、いつか国宝になるかもしれない作品ばかり。まとめて見られるこの機会をどうぞお見逃しなく!春まつりも開催中!なお、東京国立近代美術館では、4月9日まで「美術館の春まつり」も開催中。鮮やかな花を描いた屛風や現代の日本画が並ぶ展示室が設けられ、また桜が見える前庭には床几台も置かれています。千鳥ヶ淵など近隣の桜と一緒に、ぜひ美しいアートも楽しんでみてください。Information会期:~5月14日(日)※休館日は月曜日(ただし3月27日、5月1日、8日は開館)会場:東京国立近代美術館開館時間:9:30-17:00(金曜・土曜は9:30-20:00)*入館は閉館30分前まで*本展会期中に限り9:30開館(ただし「MOMATコレクション」は10:00開場)*入館は閉館30分前まで観覧料:一般 ¥1,800、大学生 ¥1,200、高校生 ¥700、中学生以下無料
2023年03月26日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日はこんなズボンが欲しかった!と思える最新パンツコーディネイトをご紹介。ワイドパンツで今っぽく着こなすワイドパンツはなかなか着こなせない…という話をたまに聞きますが、簡単な着こなし方としてのおすすめは、まさにこんな感じ!Tシャツにワイドパンツってシンプルだけど今っぽい。ワイドパンツの場合は、トップスをインする方がすっきり見えてスタイル良く見えますよ。その点を注意するだけで、さらっと着こなせるのがワイドパンツ。珍しい派手目のチェックセットスーツ一度見たら忘れられないド派手なセットスーツ。スーツとは言え、ズボンは細身でカジュアル感があり、堅苦しくないですよね。このようにズボンが細身になっている場合、足元もすっきりさせるとバランスよく見えます!柄パンツだけでお洒落度アップ!私の大好きな柄パンツ!おすすめポイントとしては、シンプルな服装に柄パンツを合わせるだけで、お洒落さんに見えてしまう魔法のアイテムなのです。ということで、かなり重宝しますよ。柄は数え切れないくらいあるので、自分の好きなデザインを選んでファッションを楽しんでください。トレンディなビーガンレザーでゴージャスに今年もかなり人気のビーガンレザー。以前オールインワンを着ている方がいたのですが、本物のレザーのようだし、さらには柔らかく高級に見えるんです。最近はお手頃価格のビーガンレザーも増え、これからどんどん人気になりそうな予感!難しいホワイトスーツだって実はスタイリッシュに着こなせる!インフルエンサーのYoyoが着こなすと、なんでもお洒落に見えちゃいます。特にこのホワイトスーツは難易度がかなり高そうですが、柄シャツと合わせてクールに決めています。思わず真似したくなっちゃいますよね。パジャマのようなテロンとした素材の上下セット北欧では以前から人気なのが、このような上下同じ柄のセットアップ。パジャマのようなテロンとした素材が、さらにお洒落感をアップしてくれます。こちらの方のスタイルも、ちょっとそこまでお出掛けするのにお洒落すぎず、でも気を遣っているスタイリッシュ感があります。小物を白で統一しているあたりも、清潔感があって素敵。春はどんなパンツスタイルを試してみたいですか?ファッショニスタたちのお洒落な着こなしをぜひ参考にしてみてください。写真 平野秀美
2023年03月25日三菱一号館美術館で『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』が開催中です。幕末から明治にかけて活躍した人気浮世絵師、落合芳幾(おちあいよしいく)と月岡芳年(つきおかよしとし)。「最後の浮世絵師」とも呼ばれた彼らのゾクゾクする作品をご紹介します!「最後の浮世絵師」たちのアートが集結!『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』展示風景【女子的アートナビ】vol. 286本展では、歌川国芳(1797-1861)の門下で腕を磨いた浮世絵師、落合芳幾(1833-1904)と月岡芳年(1839-1892)の浮世絵を中心に、さまざまな作品を展示。幕末~明治の浮世絵を多く所蔵する「浅井コレクション」をはじめ、貴重な個人コレクションをもとに、彼らの画業が紹介されています。芳幾と芳年は、ともに江戸生まれ。ほぼ同じ時期にともに10代で、国芳に入門して教えを受けました。二人は、残酷な血みどろ絵を共作し人気を博しますが、30代で明治維新を迎え、それぞれの道を歩んでいきます。浮世絵が衰退をはじめた明治時代に、二人の絵師がどう生き残ったのか。本展では、人気浮世絵師たちの新たな活躍の場も紹介されています。血みどろ絵でブレイク!『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』展示風景本展のプロローグで登場するのは、芳幾と芳年がブレイクするきっかけとなった共作の作品集《英名二十八衆句》。江戸後期の歌舞伎や講談で知られている殺戮シーンを集めた全28枚の作品で、会場ではそのうち8枚を展示しています。絵の上部には、戯作者による場面解説が記載され、芳幾と芳年がそれぞれ半数ずつ図版を手がけました。幕末の不穏な風潮も反映させ、血みどろの場面はかなりリアル。例えば、芳年の《英名二十八衆句高倉屋助七》は、歌舞伎『助六』の主人公「花川戸助六」を描いたもので、倒した駕籠に足を掛けて睨む姿の手足には生々しい血の跡が。血みどろ絵、無惨絵を代表する残酷な作品です。かっこいい!師匠、国芳の絵『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』展示風景続く第1章では、二人の師匠である国芳の作品を展示。彼らが入門したとき、国芳は50代前半で、武者絵や役者絵、美人画、風俗画などさまざまな作品を手がけていました。たびたび幕政批判を匂わす作品を描き、奉行所からにらまれていた国芳ですが、江戸の庶民たちからは大人気。また、面倒見もよかったため、弟子たちからも慕われていました。会場では、国芳の《甲越川中島大合戦》をはじめ、ダイナミックでかっこいい作品が並んでいます。ゾクゾクする肉筆画も!『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』展示風景第3章では、芳幾と芳年らの貴重な肉筆画を紹介。浮世絵版画とはまた異なる趣があり、絵の巧さ、筆さばきなど技法のすばらしさもダイレクトに伝わります。例えば、芳幾の《幽霊図》は、格子の間から顔を出している幽霊の姿を描写。こけた頬やくぼんだ目など、おどろおどろしい雰囲気で、脚も描かれていません。薄暗い展示室で見ていると、ゾクゾクします。いっぽう、芳年の《幽霊図うぶめ》(3月14日~26日展示)は赤子を抱く母親の後ろ姿を描いたもの。うぶめとは、妊娠中に亡くなった女性の妖怪で、血だらけの赤ん坊を人に抱かせようとする……と伝えられています。しかし本作からは、怖さというより母親の切なさ、悲しさが伝わってきます。新聞錦絵で生き残る!『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』展示風景第5章では、新聞錦絵を紹介。明治になると、さまざまな新聞が刊行されはじめ、芳幾は東京初の日刊紙「東京日日新聞」の発刊に携わります。さらに、庶民の好奇心を刺激するセンセーショナルな事件を錦絵にして刊行し、人気を獲得。需要がなくなりつつあった浮世絵師ですが、新聞や雑誌という新しいメディアに挿絵を描き、活躍を続けました。ライバルの芳年は、「郵便報知新聞」の新聞錦絵に起用され、こちらもブレイク。ただ、彼は浮世絵制作にもこだわり、晩年も版画を出版するなど最後まで浮世絵師として活動を続けました。休館前にぜひ!なお、三菱一号館美術館は、本展のあと設備入替および建物メンテナンスのため休館いたします。再開館は2024年秋頃を予定。休館前に、ぜひ足を運んでみてくださいね!Information会期:~4月9日(日)※展示替えあり※休館日は、3月20日(月)会場:三菱一号館美術館開館時間:10時~18時(金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は21時まで)※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般 ¥1,900、大学・高校生 ¥1,000、中学生以下無料
2023年03月23日時代や歴史を映し出す鏡のひとつとされ、さまざまな流行を生み出しているファッション。日々変化を求められる厳しい業界としても知られていますが、新たに誕生したのは、自らのスタイルを貫き続けているデザイナーの姿に迫った話題のドキュメンタリーです。『うつろいの時をまとう』【映画、ときどき私】 vol. 5632005年に、服飾ブランド『matohu』を立ち上げたデザイナーの堀畑裕之と関口真希子。コム デ ギャルソンやヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積んできた彼らは、着物の着心地や着方の自由さから着想を得た“長着”という独自のアイテムを考案していた。2020年1月、matohuは8年間にわたるコレクションをまとめた展覧会「日本の眼」を開催。2010年から2018年までの各シーズンで、日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマにしたコレクションを発表してきた。激しい議論を繰り返しながら、妥協することなくデザインを完成させていく堀畑と関口。いよいよ、ファッションショーの日を迎えることに…。第41回モントリオール国際芸術映画祭のオフィシャルセレクション作品に選出されるなど、海外でも注目を集めている本作。そこで、見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。三宅流監督これまでにさまざまなドキュメンタリー映画を手がけ、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを追求し続けてきた三宅監督。今回は、matohuの魅力やファッション業界の裏にある苦労、そして映画にかける思いなどについて語っていただきました。―matohuのおふたりと出会ったのは、2015年に発表した『躍る旅人−能楽師・津村禮次郎の肖像』の制作時ということですが、最初の印象はいかがでしたか?監督はじめは、驚きが大きかったと思います。能のような伝統的な古典の世界に現代のファッションデザイナーが作った衣装が一緒にスタイリングされることはほとんどありませんから。なので、「こういう人たちがいるんだな」ということと、彼らが創り出す服が能の衣装に負けていない強さに対して純粋な驚きがありました。―そこから映画にしたいと思ったのは、なぜでしょうか。監督最近は、ファッションのドキュメンタリーもけっこう作られていますが、そういう作品は人物にフォーカスしているものが多いように感じていました。ただ、僕としては、彼らのことを知るうえで、まず彼らがどんなことを思考しているのかを紐解きたいなと思いました。そこで、彼らが取り組んでいた「日本の眼」というテーマやホームページなどを調べ始めたところ、たくさんの言葉によって非常に緻密な言語空間が作られていることに気がつきました。そのなかには彼らの思いだけでなく、日本にある古くからの美意識やいま生きている私たちが新たに何をできるかというステートメントも込められていたので、彼らの言語が持つ世界観に関心を抱くようになっていったのです。活字を映像にする過程には、無限の可能性がある―なるほど。確かに、劇中でも印象的な言葉が多く見られました。監督しかも、活字を映像にしていく過程には、無限の可能性もありますからね。いろんなイメージを搔き立てられましたし、それをできるのが映画の魅力でもあるので、そういった部分を見せたいなと思いました。あと、彼らは自分たちをある種の媒体ととらえているところがあるので、彼ら自身を映してはいますが、その先にある大きなものを映画で描きたいと思って作りました。―ただ、実際にカメラを回し始めてからは、いろんな難しさを感じることも多かったとか。監督そもそも僕はファッションとは畑違いのところにいたので、わからないことがたくさんありました。たとえば、陶芸だったら同じ1年でも徐々に1つの作品ができあがっていくので、わかりやすいですよね?でも、ファッションの場合、コレクションごとに同時進行で何着も作っていて、撮影に行くたびに違うことをしているので、点と点が線としてつながらない。そういったこともあって捉えるのが難しかったというか、どういうふうに映画にすればいいのかという答えがすぐには見えませんでした。―そこで何か突破口になったような出来事があったのでしょうか。監督シーズンの制作過程とファッションショー当日の映像だけでも、それなりのものにはなったかもしれません。でも、それではドキュメンタリーとしてしっかりとしたものにできないと感じていたんです。そんなときに彼らの考えが可視化されている展覧会を目の前にして、どうしたらいいかわからなかったことも見えてきたので、そこから再解釈と再構築をしていきました。ファッション業界では、びっくりすることもあった―ちなみに、撮影を進めるなかで、matohuのおふたりから映画に関して要望を受けるようなこともありましたか?監督そういったことは、特にありませんでした。たとえば、本編にもあるちょっとケンカのように論争を繰り広げているシーン。そのときは「撮ってもいいのかな?」と気にしつつも、「目の前で起きている以上は撮ろう」と思って撮影を続けました。途中で行った試写のときに、「あのシーンは見せないでください」と言われるのかなと構えていましたが、彼らにとっては普通のことで、隠すようなことではなかったようです。むしろ、「普段はもっと激しいですよ」と言っていたくらいでした(笑)。―だからこそ、制作過程の臨場感も伝わってきましたが、監督にとって印象に残っているシーンといえば?監督彼らが言葉を構築しているところは、撮れてよかったなと感じた部分です。なかでも手で布を触りながらものづくりをしている最中にもれ出てきた言葉は、インタビューのときに出てくる言葉とは違う手触り感みたいなものがありました。そこは映画でも軸になっているところだと感じています。―今回、ファッション業界に入り込んでみて、驚いたことなどがあれば教えてください。監督コレクションは半年に1回のペースですが、その期間にこんなにもたくさんのことをしないといけないのかと思いました。しかも、あんなに演出やスタイリングにも手間暇かけて作っているのに、披露するファッションショーの時間がたった15分ほど。初めて見たときはあまりにも短くてびっくりしました(笑)。でも、同時にこのなかで全部を表現しなければいけないのは、非常に難しいことだなと。実際、彼らも自分たちの考えを伝えきれないと感じていたようなので、自分たちのやり方でやっていこうと考えたのだと思います。言語化することの大切さを教えてもらった―スピード感や流行を意識しているデザイナーが多いなか、時代に流されることのない服作りを続ける彼らはファッション業界においてどんな存在だと思われましたか?監督これは彼ら自身も言っていることですが、流行やモードに対するある種のアンチテーゼとなっているのではないでしょうか。表面的なものづくりをすることなく、時間をかけて取り組んでいますからね。ただおもしろいのは、じっくりと時間をかけているのにファッションのフォーマットを無視せずに毎シーズン新しいコレクションを出しているところです。そういう姿から「本当のものづくりに大切なものは何か」というのを業界に問いかけているようにも見えました。―監督自身も、同じアーティストとしてインスピレーションを受けた部分もあったのではないかなと。監督ファッションの世界というのは、センスやトレンドのように感覚を中心にものづくりをしているイメージがありましたが、1つ1つ丁寧に言葉にしているのがmatohuの2人。僕は仕事や生活をするうえで、なんとなく流してしまうこともありましたが、彼らを見て言語化することの大事さを改めて知りました。特に、日本だと「背中を見て学べ」とか「技は盗んで覚えろ」みたいに言葉にしないことを美徳とするところがありますよね。でも、そこで言葉にすると立ち止まれたり、見えていなかったものが見えたりするのだと思います。特に、曖昧なところは詰めが甘いところでもあったりするので。そこから逃げずにやっていくことの大切さと、相手に何かを伝えるときに言語化することを怠ってはいけないという気づきを彼らから得ることができました。伝統とは、革新の連続である―確かにそうですね。そして、おふたりの言葉からは日本語の持つ美しさや豊かさも、再認識させられました。監督しかも、彼らの言葉には、重みと軽み(かろみ)がありますよね。重さがあっても、眉間にシワが寄りそうな難しい言葉ではなく、軽やかさもあるので、それも大事だと思っています。これはものづくりにおいても言えることですが、いい作品に説得力や美しさを与えるため悩みは付き物です。ただ、その苦労が前面に見えてしまうと粋ではなくなってしまうので、そういう意味でも、重みと軽みは大切だと感じています。―監督自身も、これまで伝統と向き合うようなものづくりを続けていらっしゃいますが、失われつつある伝統を守る意義についてはどうお考えですか?監督“いかにも伝統”というものは、ちょっと古臭く見えたり、自分とは関係ないものに見えたりすることもあるかもしれません。でも、出演者のひとりがおっしゃっているように、伝統とは革新の連続です。先人たちの考えに敬意を持って触れていけば、結果的には良い形で伝統も魂も守られ、さらに新しいものを作り上げていくことができると考えています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督言葉を突き詰めているとか、日本の美意識がどうとか言うととっつきにくいと思われてしまうかもしれませんが、決して難しい映画ではありません。matohuの2人も自分たちの発見を多くの人たちとシェアしたいという思いで作っているので、それは知っていただけたらと。あとは、壁のシミを見ても、枯れた落ち葉を見ても美しいと感じるようになるので、日常生活の過ごし方や物の見え方が変わるはずです。映画館を出た帰り道からいままでとは世界が違って見えるようになり、生活も楽しくなると思うので、ぜひご覧ください。驚きと喜びを探す旅に出る!ファッション業界の裏側を垣間見れるだけでなく、ものづくりの真髄にも触れられる本作。目まぐるしい早さのなかで生きていると、いろんなものをつい見落としがちですが、日常に潜む美しさや忘れてはいけない大切なことにも気づかせてくれるはずです。取材、文・志村昌美引き込まれる予告編はこちら!作品情報『うつろいの時をまとう』3月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開配給:グループ現代️(C)GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.
2023年03月23日どんなドラマや映画でも、重要な役割を果たしている役どころの1人と言えば死体役。物語においては欠かせない人物にもかかわらずあまり注目されないことが多いですが、現在公開中の最新作『死体の人』では、死体役を演じ続ける男を主人公に描き、話題となっています。そこで、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。奥野瑛太さん【映画、ときどき私】 vol. 562ドラマ『最愛』や映画『グッバイ・クルエル・ワールド』など、数々の作品で圧倒的な存在感を放つ名バイプレイヤーとして注目の奥野さん。本作では、演じることへの思いは人一倍強いものの、死体役ばかりをあてがわれる吉田広志を好演しています。今回は、死体役を演じるときのこだわりや現場への思い、そして自身の死生観について語っていただきました。―最初に本作のオファーがあったとき、草苅勲監督に「僕はミスキャストです」と伝えたとか。なぜそう思われたのですか?奥野さん脚本を読ませていただいたとき、「草苅さんにとって一生に1本書けるかどうかの作品だな」と思いました。ご自身のパーソナルな部分を包み隠さずさらけだしている気概のようなものを感じたのと同時に、主人公の吉田広志は草苅さんなんだなと思いました。草苅さんは終始優しくて温かい視点で物事を眺めている方ですが、どちらかというと僕は撮影現場で何クソ根性みたいなエネルギーを燃やしてきてしまった。草苅さんの前で草苅さんを演じるには、いまの自分は下手に現場を重ねてきたことでホコリが付いているんじゃないかなと思ったんです。そういう意味でも「ミスキャストじゃないですか?」というお話をしました。―とはいえ、同じ役者という立場のキャラクターに通ずるところもあったのではないかなと。奥野さんもちろんそれはありました。僕も小劇場の出身ですし、画面のはじっこに映りながらもずっと俳優業を続けているという意味では、同じ状況ですから。現場のあるあるも含めて、シンパシーを感じながら演じていました。ただ、僕は草苅さんや吉田のように笑って過ごせるネアカな部分が少し弱いなと思いました。死に方によって、作品との関わり方を変えている―そんなふうに苦しさを感じるときは、どのようにして乗り越えていますか?奥野さんいや、苦しいといいますか、僕の場合はそれを楽しんでる節があるかもしれません。それは作品に対する向き合い方であり、エネルギーを湧かせる方法の違いなので、どんな向き合い方でも結局はそれでお芝居を楽しめて作品に良い作用になればいいと思います。これに関しては百人百様のやり方があるのではないでしょうか。―ちなみに、ご自身はこれまで死体役を演じられてきましたか?奥野さんたくさんあります(笑)。僕自身も、作品に関われば必ず死ぬみたいな時期がありました。画面に出てきた瞬間に「この人どうせ死ぬだろうフラグ」が立ち始めてしまったこともあったくらいです(笑)。その作品内ではできるだけ予定調和を消したいとは思ってましたけど、全く関係ない作品と照らし合わされてメタ的についた死体役のイメージまではなかなか払拭できないものですね(笑)。―実際、死体役は難しい役どころでもあると思いますが、奥野さんなりのこだわりなどがあれば、教えてください。奥野さん「台本に書いてあるように死ぬ」くらいしかないですね。特にこれといった自分のこだわりはありませんが、手癖が出ないようにその場に生きて、その場で死ぬっていうことは本当に難しいことだと思います。技術的に見ても死ぬシーンは、難しくておもしろいことが多いです。例えば、発砲によって死ぬときは現場に一発勝負の雰囲気が漂うことがあってとても緊張感が高まります。以前経験したなかでいうと、1発目の発砲で頭を撃ち抜かれて即死した後に、追い討ちで身体に数発撃たれるという死に方です。目を開けたまま頭から流れてくる血のりを受け止め、次の身体への着弾に反射しないように反応しなきゃいけないので…。考えるだけでもこんがらがりますね(笑)。ともかく、死ぬことで役柄を生かす瞬間にもなるので、生きるために死ぬことに必死になっています。どこでも練習してしまうので、やりすぎてしまうことも―劇中では、吉田が日常生活のなかで死ぬ練習をしている姿もおもしろかったですが、これは役者あるあるですか?奥野さんそうですね。僕もよく道を歩きながら人目も気にせずずっとセリフをブツブツしゃべっています。ふとした瞬間に「あそこをやっておこう!」と思ったら、ところかまわず練習してしまうことがありまして…。前にたまたま閑静な住宅街を歩いていたときにそのスイッチが入ってしまい、電信柱に向かって1時間くらいセリフの壁打ちをしてたんです。そしたら、近所の方が通報されたんでしょうね、警察の方に「何しているんですか?」と声をかけられてしまって(笑)。セリフの内容が怪しい雰囲気のある役どころだったので、妙に状況とマッチしてしまっていたのかもしれません。「迷惑をかけてごめんなさい」と反省しているつもりではいるんですが、未だに職質をよく受けます。―(笑)。そんなふうに、日常と役の線引きがあいまいになってしまうことはよくあることなのでしょうか。奥野さんあいまいと言いますか…、みなさんと同じですよ(笑)。たとえば、仕事の内容を覚えるために電車のなかで資料を読んだりされると思いますが、それと一緒です。ただ、僕の場合はセリフなので声に出てしまったり、テンションもその空間にあるものではないので突拍子もないものだったり、空気を読まずにやると大変なことになりがちではありますね。―それだけリアルな演技ということでもありますよね。いままで本当に幅広い役を演じられていますが、そのなかでも変わった役だったなと思ったものは?奥野さんこれまでに右翼、左翼、殺し屋、学生、兵士、ラッパー、チャラ男などいろんな役をやらせていただきましたが、僕としてはみんな“普通の人”だと思っています。現場では、どうしたらおもしろいかをつねに考えている―なるほど。奥野さんは作品ごとに別人かと思うほど印象が変わりますが、役作りで大事にしていることがあれば、教えてください。奥野さん当たり前のことですが、まずは台本に書かれていることを一生懸命覚えて、それをちゃんとできるように準備をしっかりしていきます。でも、現場はなまものですからね。そこで変わっていくことに対してどう能動的に動けるかが問われるので、準備してきたことも1回全部忘れてその場に立つことに集中しています。―以前共演された西島秀俊さんは、現場での奥野さんの姿に「これが自分の求めている俳優像だ」と感じたそうですが、ご自分でも意識されていることはあるのでしょうか。奥野さんいやぁ、僕は癖として意識した時点で、変な意図が働いてしまうので、なるべく意識しないように心がけています。ただ、周りの方からするとどう見えているかはわかりませんが、僕的にはひどく客観的な感覚はあるように思います。「あ、いま見られてるな」とか(笑)。そんなふうに遊んでいるというか、現場ではどうしたらおもしろいか、みたいなことばかりを考えています。―現場を楽しむことに重きを置いていらっしゃるんですね。奥野さんそうですね。現場では「どう楽しむ?」「やっぱり緊張する」みたいなことを自分のなかでずっと繰り返している感じです。それこそ、1つ息をするタイミングだけでも緊張するときがありますが、そういう小さなことから大きなことまでを楽しむようにしています。―今回の現場では、個性豊かなキャストの方も多かったですが、印象に残っていることはありますか?奥野さんみなさん本当に素晴らしかったです。なかでも父親役のきたろうさんがおもしろくて(笑)。現場でもおもしろく変容していくことに誰よりも能動的で「これぐらいのほうが笑える」ということにとても繊細に向き合ってる姿勢がめちゃくちゃ格好良かったです。きたろうさんが草苅監督にセリフの変更を提案された箇所があったんですが、断然そっちのほうがおもしろくてみな笑うのを必死に堪えていました(笑)。喜劇とその裏側の悲劇をちゃんと認識されているからなのか、その瞬間瞬間に軽くエネルギーをポンと出すだけで、周りはたちまち大爆発を起こしてしまう。いやぁ、本当に格好良かったです。あえて格言は持たずに、考え続けるようにしている―そのほかで、苦労されたシーンなどはありましたか?たとえば、今回は演技が下手な役者のキャラクターを演じられていたので、いつもとは真逆の作業で違和感もあったのではないかなと思うのですが。奥野さん確かに、あれは感覚的には変でしたね。今回はイマイチなお芝居をすることが良しとされていたので、カットのあと監督に「ちゃんとイマイチにできてました?」と確認したほどです(笑)。―また、劇中では吉田が母親とのやりとりのなかで、壁を1つ乗り越える姿も描かれていますが、ご自身も転機になった出来事はありましたか?奥野さんいまでもずっと悩んでいますよ。ただ、作品に出会うたびにそれが転機にはなっていると思いますが、毎回悩んでばっかりです。僕は主観的な感覚だけでするのはダメだと考えているので、客観的な視点も持つようにしていますが、自分の演技を見返すときは「ひどい芝居してるな」とものすごいダメ出しをすることが多いかもしれません。―今回、作品のなかで生と死に関する格言がいくつか紹介されますが、ご自身にも響いた格言はありましたか?奥野さん僕は考え続けることのほうが好きなので、正直これと言い切れる格言は思い浮かびません。というのも、格言は言葉としてそこに置いておけば自分の助けになるかもしれませんが、僕はどうしても言葉になってしまった時点でラクしようとしてしまうので。言葉の上澄みを覚えているだけで、そこに行きつくまでの過程やらその瞬間の感情を全部すっぽり忘れてしまうことが多くてがっかりするんです。それよりも言葉にはせずにずっと向き合っていたり、肌に感じていたりするほうが覚えていられる気がします。もちろん、衝撃的な言葉に出会ってその都度右往左往しますが、僕のなかでは格言という感覚ではないんじゃないかと思います。ちなみに、ラストシーンで吉田の格言も出てくるのですが、実はいまだに僕はあの言葉にピンときてないんです(笑)。それは僕のなかにない感覚。だからこそ「どういうことだろう?」といまでも考えています。僕はそういうほうが好きかもしれないですね。死体役を演じることで、どう生きるかと向き合えた―非常に深いですね。死ぬ役ばかりを演じたことで、ご自身の死生観に影響を与えた部分はあったのでしょうか。奥野さんおそらく草苅監督も吉田もネアカだから死について考えられるんだろうなと思いました。それに比べて、僕はネクラなので死への向き合い方が根本的に違う。そういうことにも、気づかせてもらったように感じています。あと、変な言い方になりますが、エロスとタナトスがあって、エロスが生きるエネルギーで、タナトスが死に向かうエネルギーだとしたら、僕にとって生きる力となっているのはタナトスが強い気がします。わかりやすく言うと、「死ね死ね!」と自らに言い聞かせて生を実感するタイプというか。なので逆にネアカな人たちへの憧れやうらやましさみたいなものはある気がしています。そういう意味でも今回は、人としても俳優としても死生観というものに改めて触れられるいい機会でしたし、死体役を演じることでどう生きるかと向き合えました。―そのうえで、この作品の見どころについても教えてください。奥野さん死体役ばかりをあてがわれる主人公を通して、死生観や明るく生きるエネルギーを感じていただけたら幸いです。何者でもない人の強さとおもしろさも観ていただけたらと思います。―今後の奥野さんにも注目ですが、ananweb読者に向けてもメッセージをお願いします。奥野さんもし少しでも興味を持っていただけましたら、映画館に足を運んでいただき、スクリーンで『死体の人」を観ていただけましたら、これ幸いです。僕というより、草苅監督と主人公の吉田広志に注目して、ぜひキュンとして下さい(笑)インタビューを終えてみて……。少しシャイな雰囲気もありますが、ひと言ひと言からまっすぐな思いが伝わってくる奥野さん。ずっと取材したかった俳優さんの1人だったのでようやく念願が叶いましたが、興味深い話が多く、もっと掘り下げていきたいという思いになりました。これからもどのような役どころで楽しませてくれるのか、ますます期待が高まるところです。生きることが下手でも、自分らしくあればいい思わず声を上げて笑ってしまうユーモアセンスと、胸がギュッとするような人間ドラマとが絶秒に織り交ぜられている本作。ときには空回りしてしまうこともあるけれど、不器用なりにも一生懸命な人たちの姿から必死に生きることも悪くないと感じるはずです。写真・園山友基(奥野瑛太)取材、文・志村昌美ヘアメイク・光野ひとみスタイリスト・ 清水奈緒美シャツ ¥41,800(AURALEE 03-6427-7141)他、スタイリスト私物ストーリー劇団を主宰して役者を志していたものの、要領よく振る舞えず、気がつくと“死体役”ばかりを演じるようになっていた吉田広志。開いたスケジュール帳は、さまざまな方法で“死ぬ予定”で埋まっていた。つねに死に方を探求する日々を送っていた吉田だったが、自宅に招いたデリヘル嬢の加奈と人生を変えるような運命的な出会いを果たす。そんななか、母が入院するという知らせに加え、新たな問題が発生。偶然見つけた妊娠検査薬を自分で試してみたところ、なんと陽性反応が出てしまう。一体これはどういうことなのか。そして、吉田は一世一代の大芝居を撃つことに……。釘付けになる予告編はこちら!作品情報『死体の人』渋谷シネクイント他、全国順次公開中配給:ラビットハウス(C)2022オフィスクレッシェンド写真・園山友基(奥野瑛太)
2023年03月22日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。一年中使えるデニムだけど、春先はよりカジュアルな着こなしが人気!それでは見てみましょう。シャツとブーツでシンプル、そしてクールに!こちらは定番の着こなしですが、ブーツだってシャツだってこだわり抜かれたデザインがポイント。このようにシンプルであり、至ってよく見かけるようなスタイリングだからこそ、1つ1つを自分好みのお洒落アイテムで着こなすことが重要なポイントになります。定番ジャケットは春にぴったり!こちらも、今すぐ真似できるジャケット&デニムスタイル。春は温度差が激しい日が続きます。朝晩はまだ寒かったり昼は暑かったりするので、こういった簡単に羽織れるジャケットにデニムスタイルは、大変重宝します。デニム+デニムは今年も注目度200%私のおすすめのデニム+デニム。色違いでも同じ色でも、デニム同士は実は相性抜群!カジュアル感強めですが、カッコカワイく決まります。デニムは小物やヘアスタイルなど細かく気にしなくていいので、本当に気軽でいい!スカートデニムもキュート!こちら一見ワンピースに見えますが、デニムトップスとスカートのコンビネーション。スタイリッシュに見えるショートスカートに、ニーハイのロングブーツがカッコよく決まってます。定番中の定番!Tシャツ&デニムシンプル is ベストと言えるTシャツとデニムスタイル。モデルの彼女は、ショートめ細身のデニムに長めTシャツを合わせてカジュアル感抜群!Tシャツと、デニムの色や形次第で自由自在に雰囲気を変えられるので、複数デニムを持っていてもいいですよね!いかがでしたか?本日は今すぐ真似できるデニムスタイルをご紹介しました。春はデニムを着用する際、とにかく軽めスタイルを心がけている方が多いようです。ぜひ参考にしてみてください。写真 平野秀美
2023年03月21日大人計画主宰とシアターコクーン芸術監督を務める松尾スズキさんと、豪華女優陣が本気でコントに挑む姿が人気を博している「松尾スズキと30分の女優」シリーズ。2021年からスタートしたオムニバスコントドラマも、いよいよ第3弾を迎えます。そこで、シリーズ初参戦となるこちらの方にお話をうかがってきました。長澤まさみさん【映画、ときどき私】 vol. 561さまざまな作品でコメディからシリアスまで、幅広い役どころを見事に演じわけている長澤さん。30分強という番組尺のなかで、カード支払いセンターの通信先で働く夫婦を描いた「センタア飯店」、野良のキャッツを捕まえた女が登場する「野良キャッツ、捕獲女」、恋人と結婚するためにペットを手放そうとする女性が主人公の「老紳士を捨てる」、恐竜喫茶を舞台にした「恐竜最後の日」、居心地のいい会社の様子を映し出した「居心地最高」という5つのコントに挑戦しています。今回は、撮影現場の様子やコントへかける思い、そして笑顔の裏に隠された意外な素顔について語っていただきました。―これまでもコメディ作品には出演されていますが、演じるうえでコントとの違いはありますか?長澤さん私にとってはコントでもドラマでも映画でも舞台でも、芝居をするときは基本的に同じです。ただ、過去にコントで演じたときに感じたのは、作家さんによって笑いの感覚が違うということ。そういう意味で、台本の解釈が難しいなと思うことはありました。しかも、その場で感じて出たものが大切なので、コントって深いですよね。あと、練習しすぎても新鮮味がなくなってしまうので、お笑いの現場では最初の感覚を大切にされる方が多いかなと。今回もリハは軽く合わせる程度で、だいたい1発目で「はい、オッケーです」みたいな感じでした。演じてみたらどれも本当におもしろかった―どのエピソードも独特な世界観でしたが、印象に残っているのはどの役ですか?長澤さん台本を読んでいるときは、「センタア飯店」が一番キャッチーで楽しそうだなと思いましたが、演じてみたらどれも本当におもしろくて。そのなかでも、「老紳士を捨てる」はお気に入りでゲラゲラ笑ってしまいました。あと、印象的という意味では、「恐竜最後の日」ですね。劇中で恐竜の真似をしていますが、撮影前に恐竜の動きを真面目に研究している方の動画が送られてきました。こんな人たちがいるんだという驚きもありましたが、それがおもしろかったです。とにかくアングラ感がすごくて(笑)。真似させていただきましたが、まったくもってふざけているわけではありません。―練習されただけあって、恐竜の動きは素晴らしかったです。また、コンテンポラリーダンスを披露されるシーンでは、ご自身で振付をされたとか。長澤さん「どうすればいいですか?」と聞くと、「それを考えるのが俳優の仕事でしょ」と言われてしまうので、自分で考えていきました。ただ、撮影のあとにSNSでいろんなコンテンポラリーダンスの動画が流れてきて「ああ、これもできたな」と思うものがあったので、もっと早く教えてほしかったですね(笑)。―また、「センタア飯店」では謎の言葉を叫んでいるのが強烈でした。これも事前に家で練習されていったそうですが、鏡の前で試したり、ひたすら声に出したりしたのでしょうか。長澤さんいやいや、そんな1人でラップバトルみたいなことはしていません(笑)。そもそも架空の言語なので、自分なりに解釈をしてこういうふうに読んだらおもしろいかなと思う音を探していった感じです。セリフに小さい「つ」が2つ並んで書かれていたりしたので、「どう読めばいいんだろう?」というところから始まりました。でも、自分としてはすごく好きな分野だと思います。安心して思いっきりできるのが松尾さんの現場―眉毛をつなげたりするコントのメイクに抵抗はなかったですか?長澤さん私、大好きなんです(笑)。かつらもいっぱい被りたいし、おもしろいメイクもたくさんしたいですね。―ぜひ見てみたいです。松尾さんとは舞台でもお仕事されていますが、演出家として、俳優としての魅力をそれぞれ教えてください。長澤さんまず演出家としては、当たり前ですけど、真面目で厳しい方です。本番までにちゃんと用意していかないとすぐに指摘されてしまいます。でも、これまでの関係性もあったので安心して現場に行けましたし、思いっきりできました。俳優としては、個性的でおもしろい方ですが、独特なキャラクターも松尾さんが演じるとその世界観になるので不思議ですよね。―松尾さん以外にも、非常に個性豊かなキャストが揃っていましたよね。長澤さん本当に好きな俳優さんばかりだったので、一緒にお芝居ができて楽しかったです。そのなかでも、村杉蝉之介さんは一番共演させていただいている方なので、いてくれるだけで安心感もありました。でも、今回は邪魔してくる箇所もたくさんあったので、本当に迷惑でしたね……。というのは冗談です(笑)。―アドリブみたいなことはありませんでしたか?長澤さんそれはほとんどなかった気がします。ただ、「老紳士を捨てる」で近藤公園さんが私のことを目隠しするシーンで、近藤さんも松尾さんに目隠しをされていたのですが、本番が始まったら後ろから「痛い、痛い、痛い」と本気で痛がっている声がしたんです。何が起きているかわからなかったのですが、出来上がった作品を観たら近藤さんが松尾さんに目つぶしされていて(笑)。それが本当におもしろかったです。お笑いは本当に難しい分野だと感じている―長澤さんから見た松尾スズキ作品の魅力についても、お聞かせください。長澤さんすごく独特で感覚的なところも多いので説明するのが難しいのですが、どれもベースにあるのは普遍的な物語だと思っています。影を背負っている人物もポップに描いていますが、噛めば噛むほど味が出るというか、ジーンとくるキャラクター設定が多いですよね。そういうところが魅力的だなと感じています。―本作への出演が決まった際、お笑いの動画を参考に見たことは?長澤さんそれはなかったですね。というのも、コントやお笑いは誰かのをなぞるとおもしろくなくなると思ったからです。特に、日本のお笑い芸人さんがされているようなことは、その方のキャラがあっておもしろいパターンが多いので。―長澤さんのなかにあるコメディセンスに影響を与えている人はいますか?長澤さん私が大好きなのは、大人計画のみなさんです。俳優でありながら、それぞれの世界観がきちんと確立されている方々なので、そういうところが魅力的だなと。あの感じがうらやましくて、いつも憧れています。―今回の出演を通して、改めて「笑い」とは何か考えたこともあったのではないかなと。長澤さんやっぱり難しいなと感じました。たとえば、ここで笑ってもらえたらうれしいなと考えるところがあっても、ほかの人は意外と違うところでおもしろいと思ってくれることも多いので。上手くハマるときもありますが、その感覚がつかめないときもあるので、本当に難しい分野だなと感じています。ほめられるようになって、笑顔でいられるようになった―ちなみに、最近一番笑った出来事は何ですか?長澤さんもうすぐ『ロストケア』という映画が公開になりますが、共演している松山ケンイチさんが突然私に向かって「やっぱりまーちゃんと呼ぼう」と言い出したことです(笑)。そこからお互いにあだ名で呼び合うことになって、私は「けんちゃん」と呼ぶことになったのですが、唐突に何かが変わったりするとおかしかったりしますよね。―確かにそうですね。そして、何といっても長澤さんの笑顔に癒されている人が多いと思うのですが、笑顔でいられる秘訣を教えてください。長澤さん本当ですか!?癒しになっていますでしょうか(笑)。実は、私はつねにみんなに笑顔をふりまこうとがんばれるタイプではなく、どちらかというと、恥ずかしさをごまかすために笑っちゃっている感じです。というのも、根が照れ屋で、前に出たがるのに注目されると恥ずかしいみたいなあまのじゃくな性格なので……。私としては、気持ちいい状態で笑顔になっているというよりも、笑いながらハラハラしたり、大汗かいたりしていることのほうが多いので、笑顔でいるのも大変だなと思っています(笑)。でも、恥ずかしくて笑っているだけでも、周りからは「笑顔がいいね」と言ってもらえるようになったので、ほめられるようになってから笑顔でいられるようになったところはあるかもしれません。―それは意外に思う方が多いのではないでしょうか。長澤さんいつも恥ずかしい思いでいますし、「今日もうまくいかなかったな」とか「人に対してちゃんと誠実にできていたかな」みたいな感じで、家に帰るとだいたい反省から入ってしまうほどです。悩みながらも、立ち止まらずにがんばってほしい―そんななかで、素の自分に戻れるのはいつですか?長澤さん最近も共演した方から「いつリラックスしているんですか?」と聞かれたんですが、ということはリラックスしているように見えていないんだなと思って考え込んでしまいました。でも、ゆっくりと家の片づけをしているときや家族や友達のように自分が好きな人たちと一緒にいるときは、一番楽でいられる時間です。私は友達に話を聞いてもらってなるべく発散していますが、そんなふうに人と関わることっていいなと感じています。―今年で30代も折り返しに入りますが、今後のためにいまから準備していることはありますか?長澤さんあまり先のことを考えてはいないですが、カラダは大事にしたいので、最近はもっぱら健康管理にハマっています。というのも、20代のときはいらない気を張りすぎてすごく疲れていましたが、30代になって力を抜けるようになったおかげで昔よりもうまくカラダを使えるようになりました。30代のほうが体力もあるように感じるので、それを続けられるようにがんばって健康を維持したいです。―では、これから挑戦したいことといえば?長澤さんプライベートでは習い事をいっぱいしたいなと思っています。なかでも、趣味として楽器を習いたいと考えているのですが、候補がいくつかあるのでいま精査しているところです。仕事では、今回久しぶりに松尾さんと仕事ができたので、また一緒に舞台をしたいですね。―ananweb読者の女性たちは、長澤さんのような女性になりたいと憧れている方も多いので、ぜひアドバイスがあればお願いします。長澤さん私でいいのでしょうか(笑)。でも、言えることがあるとすれば、悩むのもすごく大事だということですね。ただ、悩んでいる間に立ち止まってしまうと後から何もなくなってしまうこともあるので、悩みながらも何かに一生懸命がんばっておくのは大切かもしれません。それが仕事であったり、家族との関係であったり、人によっていろいろだと思いますが、打ち込めるものを持っていたほうがいいというのは伝えたいです。インタビューを終えてみて…。とにかく自然体で、いるだけでその場を明るくしてしまう長澤さん。素敵な笑顔には釘付けになりましたが、その裏にはいろんな思いがあったことを知って驚かされました。とはいえ、そういった部分も隠さないところが人として魅力的な部分。そして、共感を呼ぶところでもあると感じました。ぜひ、本作では長澤さんのコメディセンスと身体能力の高さを堪能してください。予測不能な笑いの波が押し寄せる!松尾スズキさんにしか描けない独特すぎる世界観と、ほかの作品では決して見ることができない女優たちの姿が病みつきになるコントシリーズ。一度踏み込んだら最後、余計なことを考える間もない至極の30分強に誰もが虜になってしまうはずです。写真・幸喜ひかり(長澤まさみ)取材、文・志村昌美スタイリスト・影山蓉子(eight peace)ヘアメイク・スズキミナコニットトップ ¥232,100、スカート ¥214,500、(以上メゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパン クライアントサービス 0120-934-779)ストーリー「バラエティ番組のコントじゃない、作品としてのコントが作りたい」との想いから、脚本・演出・出演を務める松尾スズキが女優と組んで繰り広げるオムニバスコントドラマ。第1弾には吉田羊、多部未華子、麻生久美子、黒木華、第2弾には生田絵梨花、松本穂香、松雪泰子、天海祐希が出演した。そして、第3弾となる最新シリーズは、30分から30分強に延長し、松たか子と長澤まさみの2人が登場する。思わず笑ってしまう予告編はこちら!作品情報『松尾スズキと30分強の女優』3月25日(土)より放送スタート午後9:30~ 「松たか子の乱」午後10:15~「長澤まさみの乱」[WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]※WOWOWオンデマンドでは無料トライアル実施中写真・幸喜ひかり(長澤まさみ)
2023年03月21日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第135回は、うっかり引っかかって悲しい気持ちにならないために、遊び慣れた男性がどんな手法で女性のキモチをもてあそぼうとするのかをご紹介します。1.大勢いるところで自分にだけ優しくする【結婚引き寄せ隊】vol. 135ちゃんと好意があってアプローチしてくる男性もいますが、なかには女性の心なんておかまいなしで恋の駆け引きを楽しむだけという、不届きな男性もいるようです。ある女性は、勤務先が和気あいあいとした雰囲気のところで、給料日などは、職場の人たちで食事や飲みに行ったりすることが多かったそうです。そんな大勢が集まる場では、おとなしいタイプのその女性はいつも聞き役になって、まわりの人たちの話を聞いていました。何度目かの食事の場で、イケメンで注目されている先輩男性から「いつもニコニコして話を聞いてるよね」と話しかけられ、その日以降は何かと集まりの場で、そっと親切にしてくれたそうです。他の女性も集まりの場にいるのに、自分にだけ優しくされることが多くなり、気づくと先輩男性のことを好きになってしまい、個人的にも呼ばれるがまま会うようになっていったそうで…。ある日、勇気を出して「私たち付き合ってますよね」とその女性が先輩男性に聞いたところ、「え? 一度も付き合おうと言ったことないよね?」と返されたのだとか。ひどく傷ついたその女性は先輩男性を忘れようと努力して、プライベートでは女友達と予定をたくさん入れ、仕事にも精を出し、時間はかかりましたがなんとか立ち直りました。一方、先輩男性は、本命がいながらも、相変わらずいろいろな女性にちょっかいをかけているんだそうです。こういう男性には、関わらないことが一番だと思ったのでした。2.突然キスしてくる仕事を通じて知り合った同世代の男女で、プライベートでも集まるようになったある女性は、いつものようにみんなで夜ご飯を食べに行くことになりました。わりあい陽気なタイプが多く、仕事のグチをこぼしても、「今度は絶対うまくいくから!」などと、前向きに励ましてもらうことが多かったそうです。だからこそ、安心してなんでも話せる仲間だと思っていたものの、ある日を境にそんな気持ちがなくなることに…。その日はたまたま帰り道で仲間の男性とふたりきりになり、終電間近だったこともあり、急いで駅まで向かっていたとき、突然その女性に男性がキスをしてきたそうです。一瞬、何が起こったのかわからなくなりながらも女性が男性を見ると、ニコッと笑って、またキスしてきたのだとか。混乱する女性をよそに、電車が来て先に帰ってしまった男性。あれは夢だったのか? と思いながらも、その日から、好意を持たれているのかどうなのかと男性のことを意識してしまうようになったのだとか。後日、他の仲間にキスのことを相談すると、「いろんなとこでキスしてるから!」と実は遊び人だったことが判明したのだそうです。キスして相手の女性から好きにさせることが楽しくて、彼女はいないものの「本命は作らない主義」と男同士では話していたんだとか。この手のタイプは、近づかないに越したことはないなと思ったのでした。3.初回デートから家に呼ぶある女性は、趣味を通じて知り合った年下男性と意気投合して、おたがいにシングルであることも確認できたということで、改めてデートをする約束をしたのだとか。その女性が行きたい場所を優先して、気になるお店で食事をして、ふたりで映画を観たのだそうです。けっこう遅い時間になっていたこともあって、その女性が帰ろうとすると「家に来る?」と年下男性に言われ、初回のデートからどうかなと迷い、その日は帰宅。すると、次のデートの帰りに「家においでよ」とまた誘ってきたのだそう。前回のこともあり、もしかしてと家に行くことも考えて心の準備をしていた女性は、その日は男性の家に行って、仲良く過ごしたのだとか。でも、その日以降、パッタリと年下男性からの連絡が途絶えてしまい…。結局のところ、一夜を共にすることだけが年下男性の目的だったようです。「年下は懲りた」と言って、その後は同年代の男性との恋がうまくいったのでした。思いがけないときに、ドキッとさせてくる男性っていますよね。でも、それが運命なのか遊びなのか、きちんと見分けて幸せな恋をしてくださいね。みなさんの恋がうまくいきますように!文・かわむらあみり©Petar Chernaev/Getty Images©Khosrork/Getty Images©Martin Dimitrov/Getty Images
2023年03月19日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回はプラハとコペンハーゲンで出会った、モダンカジュアルスタイルのストリートスナップをご紹介します。カップル揃ってクールな着こなし!男性も女性も色のトーンを全体的に合わせつつ、今時っぽいショート丈ジャケットだったり、オーバーサイズのトレーナーだったり、決めるとこをしっかり決めています。簡単に真似できそうな色合いとデザインですね。完璧!上から下まで個性100%全体的に個性的なスタイルの彼女。ヘアスタイルから鏡のようなサングラスに、メインカラーはブラックで統一させる一方、ポイントカラーは意外なピンクをチョイスするあたりが、センスがいいと感じさせます。足元をすっきりさせているので、暑苦しい印象にはなりません。ドキッとさせるオーバーサイズのニットワンピ目を引くライトグリーンのオーバーサイズのニットが、もうセクシーでかっこいい!必要最低限のものだけを使用した、ミニマムスタイル。二人とも強烈なかっこよさ!まさにファッションを楽しんでいると感じさせてくれるこちらの二人。難しいイエローカラーを、なんと上下で使ってしまうなんて大胆!色が大胆な場合、デニムジャケットは実は魔法のアイテム。どんな色にでもしっくりと合ってくれますよ。また、左の彼女のサングラスのカラーとヘアスタイルが、バッチリと似合っていて、どちらとも本当にかっこいいお洒落さん!メリハリあるカラーでアーバンカジュアルに二人ともはっきりとした色のチョイスがバッチリ決まってます。女性はモノトーンでクールに、男性はレッドが強烈な印象で魅力的。小物使いが今時っぽく、深めのハットや長めのサングラス、クラッチやアンクルブーツと1つ1つのアイテムがお洒落です。メンズのハットスタイルも今年は見逃せない!先ほどの男性もそうですが、海外では今、メンズのハットスタイルをよく見かけます。こちらは短めのTシャツ袖とショート丈のズボンとの相性も抜群で、惚れ惚れしてしまう。いかがでしたか?現在海外で人気のモダンカジュアルなスタイルをいくつかピックアップしてみましたが、日本とそれほど変わらない!?という印象です。色の使い方や小物の選び方はとても参考になりました。写真 平野秀美
2023年03月19日東京都現代美術館で、『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』が開かれています。フランスを代表するデザイナーのひとり、クリスチャン・ディオール(1905-1957)。日本を愛したデザイナーが手がけたドレスやスケッチなど、魅力的な作品と展示風景をご紹介します!ディオールと日本の絆が伝わる!『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)【女子的アートナビ】vol. 285『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』は、パリ、ロンドン、中国、ニューヨークなどで人気を博した世界巡回展。70年以上にわたるディオールの軌跡が、約1,100点以上もの作品とともに紹介されています。本展は、日本のために再考案されたもので、建築家の重松象平氏が会場をデザイン。キュレーションは、フロランス・ミュラー氏が手がけ、ディオールが影響を受けた芸術や、日本文化の魅力、庭園に対する愛などにもスポットがあてられています。さらに、東京都現代美術館が所蔵するアート作品や、日本人写真家・高木由利子氏の魅力的な写真作品もあわせて展示。ディオールと日本がコラボした夢のような空間になっています。子どものころから日本文化に憧れて…『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)ディオールは、フランス・ノルマンディー地方の裕福な家庭で誕生。両親が日本美術を愛好していたことから、家の中には北斎や歌麿などの絵が飾られ、子どものころから日本文化に憧れながら成長しました。芸術を愛する青年となったディオールは、2つのアートギャラリーを経営。ピカソやマティス、ダリ、ジャコメッティなどさまざまな芸術家たちの作品を展示していました。しかし、1929年からはじまった世界恐慌の影響を受けてディオールの実家が破産。また、彼自身も苦境に陥り、ギャラリーも閉鎖しました。その後、生活のために描いていたドレスのデザインが評判となり、デザイナーとしてデビュー。1946年に、パリのモンテーニュ通り30番地にメゾン「クリスチャン・ディオール」を創業しました。本展の会場を入ってすぐ、最初に見ることができる作品が、ムッシュ ディオールのデビュー作となった“Bar(バー)”ジャケットです。美智子さまのウエディングドレスも制作!『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)クリスチャン・ディオールは、日本で最初に進出した西洋のファッションブランドで、1953年には帝国ホテルでファッションショーを開催。そのとき発表された5着が、会場に展示されています。ドレスにつけられた名前にも、ぜひ注目してみてください。「サツマ-サン」や「コージ-サン」など日本を連想するような名前も見つけられます。また、「羅生門」と名づけられたコートには、京都の龍村美術織物の生地が用いられ、ディオールと日本の深い絆を感じることができます。ディオールは、1957年に心臓発作で急逝。まだ52歳という若さでした。しかし、その後もメゾンのクリエイティブ ディレクターたちは、引き続き日本の芸術や文化に関心を持ち続けました。1959年には、当時の明仁親王殿下(現・上皇陛下)と正田美智子さま(現・上皇后陛下)の結婚式用ドレス3着をメゾン・ディオールが制作。生前のディオールがデザインしたドレスを、弟子であるイヴ・サンローランが完成させました。会場デザインや写真にも注目!『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)また、本展では各展示室の空間演出や、写真やアートとのコラボも見どころのひとつ。例えば、歴代デザイナーのドレスが展示されている部屋の壁には、高木由利子氏の写真が一面にかかっています。ファッションの仕事に携わったあと写真家になった高木氏は、本展のためにディオールのドレスを撮影。園芸を愛したディオールに敬意を表し、花を手にしたモデルの姿なども見ることができます。『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)(右)牧野虎雄《朝顔》1945年頃東京都現代美術館蔵、(左)牧野虎雄《鹿の子百合》1925年頃東京都現代美術館蔵また、「ミス ディオールの庭」と題された展示室は、日本庭園をイメージした空間で、花や植物がデザインされたドレスが並んでいます。東京都現代美術館が所蔵する作品も一緒に展示され、ドレスとアートのコラボも大変美しいです。『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展示風景(筆者撮影)(左奥3点)アンディ・ウォーホール《マリリン・モンロー》1967年東京都現代美術館蔵ちなみに、本展は撮影OK。どの展示室もため息が出るほど美しい雰囲気で、間違いなく映える写真が撮れます。ただ、大変人気のある展覧会のため、4月までの日時指定チケットはすべて完売。当日券も、販売枚数に制限があります。5月以降のチケットについては、4月上旬に美術館の公式サイトでアナウンスされますので、観覧ご希望の方はそちらをご確認ください。会期は5月28日まで。Information『クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』ポスター(筆者撮影)会期:~5月28日(日)月曜休館会場:東京都現代美術館開場時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)観覧料:一般 ¥2,000、大学・専門学校生・65歳以上 ¥1,300、中高生以下無料
2023年03月19日六本木の国立新美術館で、『ルーヴル美術館展愛を描く』がはじまりました。本展のプレス内覧会と開会式に、展覧会の案内人を務める俳優の満島ひかりさんが登壇。開会式の模様を取材してきましたので、レポートします!満島ひかりさんが案内人!満島ひかりさんNTV【女子的アートナビ】vol. 284『ルーヴル美術館展愛を描く』では、フランスのルーヴル美術館が所蔵する絵画コレクションのなかから、「愛」をテーマにした名画73点を展示。西洋社会では、古代の神々やキリスト教の愛、恋人や家族、官能的な愛まで、さまざまな愛が表現されてきました。本展では、おもに16世紀から19世紀半ばに活躍したヨーロッパの巨匠たちによる傑作、名作の数々を堪能できます。プレス内覧会では、満島ひかりさんがフランソワ・ジェラールが描いた《アモルとプシュケ》の前に登場!春色のワンピース姿がとってもステキです!ロケでルーヴル美術館を体験!NTVまた、開会式では満島さんが本展の案内人として、ルーヴル美術館や作品の魅力について、語ってくれました。――本展のロケで、はじめてルーヴル美術館の中に入られたそうですが、いかがでしたか。満島さんとても良い絵を見る体験ができました。もともと王宮だった建物を補修しながら美しく保ち、そこにさまざまな時代の絵が並んでいました。特に感動したのは、ナポレオンの戴冠式を描いた作品です。絵の中に、私と同じぐらいの大きさの人間がたくさん描かれていて、思わず拍手をしてしまいました。自分もその戴冠式に参加しているかのような気分になれたので、驚きました。ルーヴルならではの鑑賞体験ができました。一枚の絵に30分以上は必要…?『ルーヴル美術館展愛を描く』展示風景――本展の展示はいかがでしたか。満島さん本展を担当された国立新美術館主任研究員の宮島綾子さんと一緒に、拝見させていただきました。解説を聴きながら見ていると、一枚の絵に対して、30分以上は必要ですね。絵の中に、「愛」にまつわるさまざまなヒントがあり、その絵が描かれた背景があり、知れば知るほど絵を鑑賞する時間が長くなります。別に宣伝ではないのですが、一度見るだけでは足りないですね(笑)。すごく良い展示です。――本展で音声ガイドの収録をされてみて、いかがでしたか。満島さんはじめて、音声ガイドを担当しました。先輩の森川智之さんと一緒に、愛にまつわる話や恥ずかしくなるような言葉、怒りなどをお芝居のようにして話してみたり、恥じらいをセリフにして話してみたり。森川さんと私だからこその音声ガイドになっていると思います。盟友である三浦大知くんと一緒に…NTV――本展のテーマソング『eden』も配信されました。満島さんが作詞をされたそうですね。満島さんありがたいことに、世界的なジャズバンドSOIL&“PIMP”SESSIONSのみなさんと、私の27年来の盟友である三浦大知くんと一緒に、今回のテーマソングをつくらせていただきました。美術の世界をあまり崩さないようにと思いながら、幻想的で神秘的な感じになればいいと思って詞を書きました。美術展とあわせて、聴いていただければうれしいです。――最後に、展覧会をご覧になる方にメッセージをお願いします。満島さんこの数年、たくさんの人がいろいろな環境になり、どんどん世界が変わるなかで、改めて見直したこと、愛を感じること、触れられないことのさみしさ、触れられるものへの愛おしさなど、日々感じている最中かと思います。「愛を描く」というこの展覧会にぜひ足を運んで、日常にもたくさん愛を描いてほしいなと思います。私も愛を描きたいです。音声ガイドで楽曲も聴けますなお、満島さんと森川さんが担当する音声ガイドは、650円で貸し出されています。作品解説のほか、テーマソング『eden』や、満島さんと森川さんの特別対談も収録。ぜひガイドを聴きながら、作品をご覧になってみてください。本展は、東京のあと京都に巡回予定です。Information会期:~6月12日(月)休館日:毎週火曜日※ただし3月21日(火・祝)・5月2日(火)は開館、3月22日(水)は休館会場:国立新美術館企画展示室1E開場時間:10:00-18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,100、大学生¥1,400、高校生¥1,000、中学生以下無料
2023年03月18日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日は海外のストリートスナップで見つけたお洒落なスカートをいくつかピックアップ。どんなデザインが人気か、どんな着こなし方をしているか見てみましょう。個性的!色と柄が印象深いスカートこちらはお洒落なプリーツスカート!なんですが、単なるプリーツスカートではなく、印象深い柄と強烈なインパクトを残すカラーの組み合わせ。個性が強すぎて合わせにくそうですが、柄次第でインパクトが残るということは学べますよね。そうです!柄次第でスカートの雰囲気はだいぶ変わるこちらはふんわりとしたロングスカートに、一風変わった柄とカラフルなカラーが、人と被ることがないお洒落感を出しています。どんな柄だって、お好みで自由自在に自分らしいファッションを楽しむことができるので、柄選びが1つのポイントと言っても過言ではないかも!?今年は膝丈スカートに注目したい!ヨーロッパでは比較的ロングスカートが人気ですが、今年の春は春らしく、膝丈のスカートはどうでしょう?ジャケットとの相性もよく、短過ぎず長過ぎないので、全体的なバランスが取れているように見えます。アシンメトリーなスカートも定番になりつつある?!アシンメトリーなスカートは最近よく海外のストリートで見かけるようになりましたよね。こちらのスカートは大胆な長さ違いで立体感を出していて素敵!難易度高!ベルベットの大胆なフィットスカートボディラインが強調されるので、個人的にはあまり好みではないのですが、やはりカラダにフィットするデザインはセクシーで魅惑的ですよね。さらにベルベット素材がよりゴージャスな雰囲気を演出してくれているよう。いろんなスカートが存在する中で、長さやデザイン、柄で本当に雰囲気がガラリと変わるんですね。ぜひこの春、思いっきり自分らしいスカートを探して、ファッションを楽しんでみてください。写真 平野秀美
2023年03月18日長年にわたってさまざまな問題点が取り上げられている、少年法。加害者の更生を重んじる理念を掲げていることなどから、事件が起こるたびに賛否両論が巻き起こっています。そんななか、注目を集めている最新作は、未成年が引き起こした殺人事件を題材にした『赦し』。そこで、本作に出演しているこちらの方にお話をうかがってきました。松浦りょうさん【映画、ときどき私】 vol. 560『渇き。』で映画デビューを果たしたのち、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」に出演するなど、唯一無二の存在感で今後が期待されている新進女優の松浦さん。劇中では、ある理由から17歳でクラスメートを殺害してしまう福田夏奈を演じています。今回は、現場での様子やこの役を演じたいと思った理由、そして理想としている方などについて語っていただきました。―出演にあたっては、本作を手掛けたアンシュル・チョウハン監督からオーディションを受けるように声を掛けられたそうですが、どんなお気持ちでしたか?松浦さんもともと監督の作品の大ファンだったので本当にうれしかったですし、「絶対にこの役をやりたい!」と思いました。特に、福田夏奈のバックボーンやどんなキャラクターなのかを聞いたときに、これは私が演じるべきだという気持ちになったのを覚えています。―実際、オーディションに参加されてみていかがでしたか?松浦さんセリフが飛んでしまうくらいものすごく緊張してしまって、本当にボロボロでした。でも、2回目に呼んでいただいたときに、私の過去の話をしてほしいと言われて、普段だったら強がって言わないことも、「この人になら話したい」と思って監督に赤裸々に話をしたんです。彼女のような強い感情ではないですが、私も少なからず、負の感情を持っていたので。後から聞いたら、「その話をしてくれたから君に決めたんだよ」と言っていただきました。最初は、ダメでもしょうがないという気持ちになるほど手ごたえがなかったですが、選んでいただけてありがたかったです。役作りが大変で、プレッシャーを感じる余裕がなかった―とはいえ、作品の出来を左右すると言っても過言ではないくらい重要な役どころで、しかも非常に難しいキャラクターでもあるので、そこに対するプレッシャーもあったのではないかなと。松浦さん実は、こんなにも福田夏奈にフィーチャーしていただけるとは考えてもいなかったんです。もしそれを最初に知っていたら、もっとプレッシャーになっていたかもしれません。でも、そもそも役作りが大変でそれを感じる余裕がなかったので、そういう意味ではほかのことに必死でよかったです。―ご自身の顔が大きく映し出されたビジュアルをご覧になったときは、どうでしたか?松浦さん最初は、「マジですか!?」となりました(笑)。それくらい本当に驚きましたが、すっごくうれしかったです。ただ、実はこのシーンは何度撮ってもオッケーが出なくて、何回もテイクを重ねました。みなさんに迷惑をかけてしまっていることに涙が止まらなくなり、正直に言うと最後のほうは覚えてもいないくらい。でも、泣き後の1発目でオッケーをもらったのが、このビジュアルのときです。―それだけ苦労されたこともあって、非常に素晴らしいシーンでした。そのほかにも、大変なシーンは多かったのではないかと思うのですが。松浦さんあとは、独房のなかで寝ながら泣くところやうずくまっているシーンでは本当に過呼吸になってしまいそうなくらいつらかったです。ただ、完成した映画を観たら、効果的な場面になっていたので、がんばったかいがあったなと思いました(笑)。―そこも監督の厳しい演出のもとで演じられていたのでしょうか。松浦さん監督からは「もっともっと感情を出して!りょういけるよ!」という感じでずっと言われていたので、スポーツのコーチみたいでしたね(笑)。監督の演出方法に運命を感じた―すごいですね。アンシュル・チョウハン監督は10年以上日本にいらっしゃる方ではありますが、インドのご出身なので、普段の日本の現場と違うところもあったのではないかなと。松浦さんそうですね。今回は、「法廷内のシーン以外のセリフは基本、覚えなくていい。台本は捨てろ」くらいの感じで言われましたが、そういう方はあまり日本にはいらっしゃらないと思うので最初はびっくりしました。でも、海外ではよくある方法だと聞いたことがあり、以前からそういう演出をしてほしいとずっと思っていたので、そう言われたとき「これは運命だ」と。なので、今回は監督にすべて身をゆだねようと思いましたた。―実際、ご自身が望む演出法を体験されてみてどうでしたか?松浦さんすごくハマりました。でも、そういう演出をしていただく場合、自分がしっかりと役作りをしていないと成り立たないので、そこは徹底していないとダメだなと。監督からも事前に「役作りだけはとにかくやり込むように」と言われていたので、自分なりにがんばりましたが、自分には合っていると感じました。今後もまたこういう演出のもとでぜひやりたいと思ったほどです。―役作りをするうえでは、どういったことに一番力を入れていたのでしょうか。松浦さんいくら福田夏奈の境遇を理解しようと思っても、もちろん、人を殺したり刑務所に入ったりするという経験はできないので、まずは殺人犯のインタビューを徹底的に読みました。そうすることで、どういう感情から事件を起こしてしまったのかを考えました。あとは、なるべく刑務所の生活に近い状況に身を置いてみたこともあります。刑務所の食べ物を再現してみたり、電子機器に触れないようにしたり、刑務所のタイムスケジュールで動いてみたりということですが、そうやって役を作り上げていきました。いろんなことを抱えている子は世の中にいっぱいいる―そこまでされていたとは驚きですが、この役を通してご自身の考え方や人生観などにも影響を与えた部分はありませんでしたか?松浦さん殺人をしてしまうほどではなくても、世の中にはいろいろなことを抱えている子はいっぱいいるんだろうなと思いました。私自身も社会性を少しずつ学ぶなかで人と同調できるようになりましたが、昔はそれが一切できず、人付き合いがとても苦手だったのでよくわかります。そういったこともあって、これは目を背けてはいけない問題だと改めて感じているところです。―確かにそうですね。そして、この作品では観客も「人は人を赦せるのか」という問いと向き合うことになりますが、松浦さんもご自分なりの答えは出ましたか?松浦さんまだそこにはたどり着けていないように思います。ただ、私は反抗期が激しかったほうで、人を傷つけてしまったこともあったので、まず周りの人たちに対して反省の気持ちが一番強いです。とはいえ、そういう経験があったからこそ、この役を演じられたと思いますし、誰にでも失敗はあると思うので、できるだけ人を赦してあげたいという気持ちにはなっているのかなと。でも、これは本当に難しい問題だと感じています。役作りをしすぎて、日常に支障が出てしまったことも―また、被害者の父親役である主演の尚玄さんと対峙するシーンも思わず息を飲むような緊迫感が素晴らしかったです。現場ではどのようなやりとりをされていたのかを教えてください。松浦さん今回の現場で、尚玄さんは私とまったく口を利いてくれませんでした。なので、最初は「ひどい」と内心思っていたんです(笑)。でも、実はそれもすべて役のためで、2人のシーンが終わった瞬間に「ごめんね!」といってハグをしてくれました。尚玄さんがそうしてくださったからこそ、私も心から反省して申し訳ない思いになりましたし、そのおかげでしっかりと向き合うこともできたかなと。演じやすくしていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。いまではとても優しく、仲良くしていただいています(笑)。―本作の現場では、精神的にきつかった部分も多かったと思いますが、そのときはどのようにして切り替えていましたか?松浦さん今回の撮影期間中は、まったくオンオフがない状態にしていました。というのも、一度オフにしてしまったら、オンにできなくなるのが怖かったからです。ただ、役作りとして刑務所の様子がわかる動画や記事ばかりを見て、同じような生活をしていたので、夢にまで出てきたり、眠れなくなったりしてしまったことも…。そんなふうに、いろんなところに支障が出るようになっていたので、最後のほうは夜だけでも自分の生活を取り戻そうと思い、松浦りょうとして見たいものを見る、食べたいものを食べる、という感じにしました。―そんななか、撮影が終わって最初にしたうれしかったことは?松浦さん撮影の間は好きなお酒を飲まないようにしていました。不健康な感じに痩せる必要もありましたし、刑務所ではもちろんお酒は飲めないので。撮影を終えて、ビールを飲めたときは幸せを感じたというか、いままでにないくらい本当に最高でしたね(笑)。苦しくても、好きなことができて幸せを感じている―劇中では寡黙でミステリアスな印象が強かっただけに、実際にお会いして真逆の印象を受けて驚いていますが、普段の松浦さんはどんな方ですか?松浦さんめちゃくちゃ笑い上戸ですし、すごくおしゃべりです!あとは、性格的にも幼いほうだと思います。なので、いつもの私を知っている友達は、本作のビジュアルを見たときに私じゃないみたいと言っていたほどです。―今後、ご自身が目指してる理想像などがあれば、教えてください。松浦さん先日まで放送されていた『ブラッシュアップライフ』というドラマが大好きなのですが、安藤サクラさんは本当に素敵な俳優さんだなと思います。あとは、共演されている木南晴夏さんのお芝居も大好きです。そして、染谷将太さんのお芝居の振り幅には本当に驚かされました。あのドラマに出演している俳優のみなさん、本当に素晴らしいお芝居をされるので毎週末の楽しみでした。私もいつかああいうドラマに出てみたいなと思います。―海外にもご興味あるのではないかなと思うのですが、いかがですか?松浦さんもちろんそれもあるので、いま英語を勉強しています。ただ、まだ全然上達してはいないのですが(笑)。私はシム・ウンギョンさんのお芝居がとても大好きですが、日本語でも本当に素晴らしいお芝居をされるので、とても憧れます。大変おこがましいですが、私もいつかあんなふうになれたらいいなと思っています。いろんな海外の作品にも出てみたいです。―期待しています!それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。松浦さん苦しい役作りと向き合うこともありますが、私はいま好きなことをさせていただいているので、トータルですごく幸せを感じています。なので、もしみなさんも本当にやりたいことがあるのであれば、後悔をする前にぜひやっていただきたいです。インタビューを終えてみて…。柔らかい癒し系のオーラと優しい笑顔が印象的な松浦さん。作品を観たときのインパクトが強すぎて、実は取材前に少し身構えていたのですが、別人のような明るさとかわいらしさにすっかり魅了されました。これからも松浦さんにしか演じられないような役どころで、幅広く活躍される姿が見れるのを楽しみにしています。全身全霊の演技に、魂まで揺さぶられる!「正義とは何か」「人はどんな人も赦すことができるのか」といったさまざまな問いを突き付けられる本作。正解がないからこそ、問題について考え続けること、そして人の痛みや葛藤を知ることの意味を痛感するはず。多くの議論が渦巻くいまの時代に、観るべき1本です。写真・幸喜ひかり(松浦りょう)取材、文・志村昌美ストーリー7年前に愛する娘をクラスメートに殺害されて以来、酒に依存して現実逃避を重ねていた樋口克。ある日、懲役20年の刑に服している加害者の福田夏奈に再審の機会が与えられたという通知が裁判所から届く。ひとり娘の命を奪った夏奈を憎み続けている克は、元妻の澄子とともに法廷へと向かう。しかし夏奈の釈放を阻止するために証言台に立つ克と、つらい過去に見切りをつけたい澄子の感情は徐々にすれ違っていくのだった。そして、法廷ではついに彼女が殺人に至った動機が明かされていくことに……。胸に突き刺さる予告編はこちら!作品情報『赦し』3月18日(土)よりユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開配給:彩プロ(C)2022 December Production Committee. All rights reserved写真・幸喜ひかり(松浦りょう)
2023年03月17日大ヒットシリーズ『シュレック』から誕生した人気キャラクターの1人と言えば、長ぐつをはいたネコのプス。主人公を務める最新作『長ぐつをはいたネコと9つの命』では、キレキレでモフモフなかわいらしさをふたたびスクリーンで堪能することができます。そこで、シリーズ初参加となるこちらの方にお話をうかがってきました。小関裕太さん【映画、ときどき私】 vol. 559日本語吹替版キャストに抜擢され、本格声優初挑戦となった小関さん。本作では、9つあった命が残り1つになって怖くなったプスと一緒に、どんな願いも叶う「願い星」を探す旅へと出るネコに変装したイヌのワンコの声を担当しています。そこで、声優の現場で驚いたことや役作りの苦労、そして恐怖を感じる瞬間などについて語っていただきました。―以前から声優には興味と憧れがあったそうですが、何かきっかけはありましたか?小関さん声優さんと一緒にお仕事をさせていただくことがあり、そのなかで刺激を受けていたというのが一番大きいかもしれません。特に、同じように役作りやお芝居をしているのに、どうしてこんなにも違うんだろうかと感じるので。そこに興味があったので、声優をすることで新しい自分を知ってみたいと思うようになりました。―今回、準備段階でどなたかに相談したこともあったのでしょうか。小関さん出演が決まってからブースに入るまであまり時間がなかったので、具体的な話はできませんでしたが、舞台『キングダム』で共演した声優の梶裕貴さんと石川由依さんにはアニメーションで声優に初挑戦することはお話しました。あとは、小さい頃からお付き合いのある戸田恵子さん。僕にとってはお姉さんのようなお母さんのような存在ですが、この作品を楽しみにしてくれています。今回のような日本語吹き替えとアンパンマンのようにゼロから作る場合とでは仕事の仕方も違うようなので、それぞれの大変さについても教えていただきました。まだ初心者ですが、この作品のおかげで声優の方と共通言語が生まれたように感じています。声優というジャンルで、違う自分を発見したい―声優の現場で、驚いたことなどはありましたか?小関さん録音しているときに、レコーディング現場にいる方々のテンポが早すぎてついていけないことはありました。たとえば、映像の現場だったら、「もう一度やり直したいです」と言ったとき、「わかりました。メイク入ります!衣装入ります!各所よろしいですか?それでは行きます、よーい!」くらい時間があるんです。でも、レコーディングでは「もう1回撮り直してもいいですか?」と聞くと、「わかりました。はい、どうぞ」くらい早くて(笑)。台本のページを戻すこともできなければ、心の準備も整っていないということがありました。―そういう勝手の違いもあるんですね。ただ、声優として得た経験は、俳優業にも影響を与えることになるのでは?小関さんワンコの声が完成したとき、「自分ってこういう声も持っているのか」と驚きがあったので、それは今後も生きてくると思っています。あと、僕は普段から山本耕史さんのミュージカルをよく拝見しているのですが、プス役の山本さんが歌っているシーンがめちゃくちゃカッコよかったので、僕も歌う声優にチャレンジしてみたいです。これを皮切りに、声優というジャンルにどんどん挑戦して、違う自分を発見したいなと考えています。―役作りでこだわったところや難しかったのはどのようなところですか?小関さんワンコはセラピードッグになることを目指しているだけあって、発するひと言ひと言がけっこう刺さるものが多い。それを理解するために、ワンコの育った環境だけでなく、親や友達との関係はどうだったのかということまで想像しました。あと、大変だったのはワンちゃんの息遣い。小さいワンちゃんの呼吸は早いので、もう少しで過呼吸になりそうでした(笑)。ワンちゃんにしていたのは、恋の相談―小関さんは実家でワンちゃんを2匹飼われていたこともあるそうなので、初の声優作品がワンちゃん役というのも運命的だったのでは?小関さん人間ではない役で大変でしたけど、ネコちゃんよりはワンちゃんでよかったですね。というのも、小さいころからワンちゃんらしさみたいなものは何かわかっていましたし、作らなくても自分から出る部分はあったので。昔はワンちゃんと一緒にひなたぼっこして庭に寝転んだり、人生相談したりしていたので、ワンちゃんは僕の心のよりどころになっていたと思います。―ちなみに、どのようなことを相談していたのですか?小関さん恋の相談ですね。「年上の女性になかなか話しかけられないんだけどどうしたらいい?」とか。といっても、小学生のときですが(笑)。あとは、学校の先生の理不尽さについても話したりしていました。―もし、いまワンコのようなセラピードッグがいたら相談したいことは?小関さん最近はあまり悩みがないですね。というか、「悩んでいてもしょうがないから、とりあえず前に進まなきゃ!」という日々なので、悩んでいる時間がないです(笑)。ただ、子どもの頃から悩んでいる時間がもったいないという意識はあったほうだと思います。それでも悔んだり悩んだりしてましたが、その切り替えが年々短くなってきて、いまではないに等しくなってきました。―そういうときの気分転換にしていることがあれば、教えてください。小関さんそれは、いいスピーカーを使うことです。いま音楽番組の司会をしているのですが、そのお仕事が決まったときに、ここにお金をかけてもいいのではないかと思って、自分が好きなアーティストさんが実際に使っているというスピーカーを買いました。最初はご本人と同じ感覚を味わえてうれしいだけでしたが、音楽や映画の時間がより良質なものになり、それがだんだんリラックス方法や癒しになっていったのかなと。いいものを使うと自分のテンションも上がって、アイデアもより膨らんでいくので、仕事の効率も上がったように感じています。刺さった言葉は、「君ならできる」―なるほど。先ほど、ワンコのセリフにはいい言葉もあるっておっしゃってましたが、小関さん自身に刺さった言葉はありましたか?小関さんシンプルな言葉ですけど、「君ならできる」です。突っぱねられているときに、そういう言葉が出てくるなんて「なんて純粋でまっすぐなんだろう」と感動しました。―ワンコはつらいことがあってもあまり表に出さない強いところがありますが、ご自身も顔に出さないタイプ?小関さん最近はがんばって頼るようになってきましたけど、もともとはあまり頼れないほうですね。―意識的に頼るようになったのは、そちらのほうがいいと経験で学んだからでしょうか。小関さんそうですね。以前は、「つらいとか苦しいと言わないほうがかっこいい」とか「がんばっていれば人に伝わるだろう」と思っていました。でも、やっぱり人のことは人のことなので、あまり伝わらないんだなと。それなら「これは嫌だ」と言ったほうが人間関係のためにはいいと考えるようになりました。自分のためでもありますが、他人と関わりを持つなかで弱音を吐くことも大事なんだと感じています。―ほかにも実はワンコと同じように毒舌な一面があるとか、似ているところがあれば、教えてください。小関さん僕は言葉が丁寧なほうなので、毒舌になろうとしていた時期はありました。たとえば、もともとの一人称は「僕」なのに「俺」にしてみたり、「めっちゃ」とか「ぶっちゃけ」みたいに抵抗感があった現代語を使ってみたり(笑)。その理由としては、役を演じるときに言い慣れてないと呂律が回らないですし、聞き手の方に違和感を与えてしまうと思ったからです。日常で使うことでカラダに馴染ませたいと考えて始めたことでしたが、いまではもともとの自分らしさに加えて、台本から得る他人らしさみたいなものを自分のなかで両立できるようになりました。生きていれば、楽しいこともつらいことも多い―役者魂ですね。本作には、どんな願いも叶えてくれる「願い星」が登場しますが、もし小関さんが1つだけ願いを叶えられるとしたら?小関さんカラダをぐにゃんぐにゃんにしたいです(笑)。というのも、舞台をするなかで筋肉について考えることが多いんですが、柔軟性が高いとできるジャンルの幅が広がるので、苦労せずに股関節周りをパッと柔らかくしたいですね。―また、タイトルにある9つの命についてですが、小関さんもプスのように9つ命があったらいいなと思いますか?小関さん僕は、1つで十分かな。生きていれば楽しいこともたくさんありますが、大変なことも多いですから。1つの命が100年だとして、900年も生きたらそれだけ苦労もするので、ちょっと嫌かもしれないです(笑)。―確かに、それなら1つの命を濃く生きるほうがいいかもしれないですね。とはいえ、もし9つ命があったらしてみたいことは?小関さんやっぱり危険なことはいろいろしてみたいですね。以前、ニューヨークに行ったときに、キレイな景色が見れるところにたまたま行ったんですが、帰国してからその話をしたら「そこは命の危険があるエリアだよ。よく生きてたね」と言われたんです。何も知らなかったとはいえ、けっこう怖い経験をしていたんだなと。でも僕は旅行が好きなので、命があればそういうこともできて、見れる景色も広がるのかなとは思います。ただ、スカイダイビングのように、高いところから落ちる系はなるべく避けたいですね(笑)。それ以外だったら、何でも飛び込んでいきたいです。みなさんにパワーを渡せるような人になりたい―本作では、命を失う恐怖についても描かれていますが、小関さんが恐怖を感じるのはどんなときですか?小関さん舞台上に出るときは、怖いですね。たとえば、「もしいま自分がここでセリフを止めたらどうなるんだろう」とか「歌えなくなったらどうしよう」みたいなことを考えてしまうことがあって、演じながら自分が分離してしまうような感覚になることがあるからです。そういうことを考えすぎて怖くなってしまった時期もありましたが、チャレンジを続けるなかで少しずつ自信を積み重ねてきたので、いまはだいぶ克服してきたかなと。ただ、これは役者だけでなく、どんな業界で働く方でも、失敗が怖くて職場に行きたくないみたいなことは感じていることだと思います。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。小関さん僕は何かにもがいてがんばっていたり、自分の殻を破ろうとしていたりする人の姿にいつも心を動かされて勇気づけられています。実際、僕の周りにはそういう方がたくさんいて、いつも活力をもらっているのですが、それが自分にとってはがんばる起爆剤です。僕自身もみなさんにパワーをお渡しできるようになりたいと思っていますが、逆に悩みを乗り越えたみなさんの姿に僕が力をもらえたりもするので、これからも一緒にがんばりましょう!インタビューを終えてみて……。この連載にご登場いただくのは、1年振り4回目となる小関さん。相変わらずお茶目でしたが、お会いするたびに凛々しさが増しているのは、さまざまな仕事をするなかでいろんな悩みを乗り越え、経験と自信を積み重ねているからだということが今回の取材でわかりました。声優としての才能も開花させている本作をきっかけに、今後さらなる活躍が楽しみです。“ネコ旋風”がふたたび巻き起こる!映像の美しさと没入感、そして圧倒的な迫力にドキドキとワクワクが止まらない本作。ユーモアを織り交ぜつつ命の重みや愛情についても描いており、誰もがその大切さについて考えさせられるはず。レジェンドネコたちと一緒に、大冒険に繰り出してみては?写真・幸喜ひかり(小関裕太)取材、文・志村昌美スタイリスト・吉本知嗣ヘアメイク・エミー(スリーゲート)ジャケット¥268,400、シャツ¥80,300、パンツ¥125,400(全て マルニ/マルニ ジャパン クライアントサービス 0800-080-4502)ストーリー数々の冒険を経験した長ぐつをはいたネコのプスは、今日もスリルを楽しんでいた。ところが、9つあった命は、気がつけばラスト1つに。急に怖くなったプスは、レジェンドの看板を下ろして家ネコになることにした。そんなとき、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を聞いて再奮起。命のストックを求める旅へと出る途中、ネコに変装したイヌ・ワンコと気まずい元カノ・キティと出会うのだった。お尋ね者のプスを狙う賞金稼ぎや「願い星」の噂を聞きつけた手強い奴らも追いかけてくるなか、プスを待ち受ける運命とは……。パワーアップした予告編はこちら!作品情報『長ぐつをはいたネコと9つの命』3月17日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー配給:東宝東和、ギャガ(C) 2023 DREAMWORKS ANIMATION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.写真・幸喜ひかり(小関裕太)
2023年03月16日いつの時代も家族関係における“永遠の課題”とも言えるのは、親と子の間に生まれる心の距離。そこで今回は、そんな難しいテーマに真正面から挑み、各国で高く評価されている注目作をご紹介します。『The Son/息子』【映画、ときどき私】 vol. 558高名な政治家にも頼りにされるほど、優秀な弁護士として知られるピーター。再婚した妻のベスと生まれたばかりの子どもとともに、充実した日々を送っていた。そんなとき、前妻のケイトと同居している17歳の息子ニコラスから、一緒に暮らしたいと懇願される。ニコラスは心に病を抱えており、絶望の淵にいたのだった。初めはベスも戸惑っていたが、ニコラスを加えた新生活が始まる。ところが、ニコラスが転校したはずの高校に登校していないことが発覚。父と息子は激しく言い争い、ピーターは「なぜ人生に向き合わないのか?」と問い詰めてしまう。父に対して、息子が出した答えとは……。脚本に惚れ込んだヒュー・ジャックマンが、逆オファーをしてまでも出演を熱望したという話題作。今回は、本作の裏側についてよく知るこちらの方にお話をうかがってきました。フロリアン・ゼレール監督長編映画監督デビュー作『ファーザー』でアカデミー賞脚色賞を受賞するなど、一躍世界的な注目を集めたフランス出身のゼレール監督。劇作家としても活躍している監督は、最新作で自身の戯曲を原作に選び、『ファーザー』に続く家族 3 部作の第 2 部を完成させています。そこで、作品に込めた思いや親子関係で大事にしていること、そして心の病と向き合ううえで重要なことなどについて語っていただきました。―今回は、自らの人生から着想を得た物語ではあるものの、参考にしたのは人物や状況ではなくご自身が体験した感情とのことですが、具体的にはどのような感情が基になっているのでしょうか。監督パーソナルなところから始まったのはその通りですが、脚本を書いているときに自分のなかにあったのは、主に父親として、そしてときには息子としての目線だったように思います。ただ、この作品が僕の物語であるかどうかより重要なのは、僕が経験した感情について描くこと。なぜなら、それが多くの方の共感を呼ぶものだとわかっていたからです。―そう感じていたのはなぜですか?監督ここでも描いているメンタルヘルスについては、もはや世界中に広がっている一般的な病気で、どこにでも見られるようになっているからです。周りを見渡してみても、実際に苦しんでいる人だけでなく、自分の子どもや友人を助けられなくて無力感を抱いているような人は増えているのではないでしょうか。そういったことは自分の経験としてもありましたし、たくさんの方々が同じ思いをしていると確信していました。そこで、多くの人が共有している難しい問題について掘り下げていきたいと思うようになったのです。「自分だけじゃないんだ」と教えてくれるのも、みんなで一緒に考えるきっかけを与えてくれるのも映画だと考えています。ヒュー・ジャックマンは、世界一ナイスで特別な人―そんな監督の思いに共感したのが、主演を務めたヒュー・ジャックマンさん。普段は自分からアプローチをすることはしないそうですが、今回は自ら監督に熱烈なラブコールを送られたとか。連絡を受けたときはどんなお気持ちでしたか?監督まずは、彼からのメールが迷惑フォルダに入らなくてよかったなとホッとしましたね(笑)。メールには、「もしほかの役者さんと話が進んでいるならこのことは忘れてください。でも、そうでないなら10分でいいから僕の話を聞いてほしい」という非常にパワフルな言葉が書かれていました。そのときは、彼のような大スターでも「自分がやりたい」と自分で訴えることもあるのかと驚きが大きかったです。さらに文章を読んでみると、彼の誠実さや謙虚さ、正直さに心を動かされましたし、それに加えて「演じなければいけないんだ」という緊急性のようなものも感じました。その後、オンラインで最初に会話をしたのですが、役者として何をしたいのかについて伝えるよりも、自分がどういう人間なのかがわかるように僕を彼自身にアクセスさせてくれたのです。そういったこともあって、彼には僕が演じてほしいキャラクターの感情をすべて持っている人だとわかりました。現場では、真実に迫る演技で表現をしてくれたので、僕自身が圧倒されてしまったほど。最高の選択だったと思っています。―本当に素晴らしかったです。ananwebでは以前ヒューさんが来日した際に取材したことがありますが、非常に優しくてステキな方という印象を受けました。現場でも彼の人柄がわかるようなエピソードがあれば教えてください。監督今回、彼と一緒に仕事をすると周りに伝えたら、みんなから「世界一ナイスな人だよ」と言われたのですが、あまりにもたくさんの方が同じことを言うので、驚いていたんです。でも、実際にお会いしてみたら、なるほどなと。いまでは、僕も同じ表現を使って彼のことを語っています(笑)。あれほどまでにオープンで人間らしく、そして心が広くて他人に対して柔和な方は稀有ではないでしょうか。いままでいろんな方と仕事をしてきましたが、彼は本当に特別な人です。子どもに対して、すべての答えを持っていなくてもいい―そういう部分も、本作では生かされていたのではないかなと。監督この映画において大事だったのは、子育てにうまくいっていない親ではなく、ピーターのように子育てに失敗しているわけではない親の姿を見せること。さらに、息子を愛していて助けたいけれど理解する手がかりがない父親を描くためには、「この人はいい人なんだ」と観客に感じてもらう必要もありました。そういう意味でも彼は適任だったと思います。なぜなら、彼の魂を通してでもいい人であることが伝わってきますからね。ここはすごく重要なところでしたが、彼には感動するところが多いので、それが効果的に働いていたと感じています。―ヒューさんはこの作品に出演したことがきっかけで、実生活でお子さんへの接し方も変わったとか。監督も本作の最後にご自身の息子さんにメッセージを添えているので、親としての在り方に影響を与えた部分もあったのではないと思いますが、いかがですか?監督もしかしたらこの物語を他人とわかち合うことは、自分の深いところにある何かを癒す行為だったのかもしれません。実際、いまでは子どもたちの前で自分のもろさを見せることが以前よりも怖くなくなりました。親としては子どもの言うことに応じてあげたい気持ちはありますが、すべてのことに答えを持っていなくてもいいんだと思えるようになったのです。ここは非常に難しい感情でもありますが、答えがわからなくても、知っている振りをしなくてもいいというふうに考えられるようにはなりました。―なるほど。また、本作では心の病に関して描いていますが、アメリカの精神科医などさまざまな専門家と相談をしながら進めていかれたそうですね。その過程で、どのようなことを学ばれましたか?監督一番重要なのは、僕たちが脳や魂、そして心の働きに関してまだわからないことがあるという事実を知ることだと思っています。人がどうして痛みを感じ、つらくなってしまうのかということに答えなんてないのです。だからこそ、その“ミステリー”を受け入れることがすごく大事だと感じています。どんなに完璧に見える人でも、心の病に悩んでいる場合もたくさんありますから。罪悪感があると盲目になり、間違えてしまうこともある―そのうえで心の病についての理解を深めるために、私たちはどういった意識を持って接すればいいとお考えですか?監督たとえば、今回のキャラクターで言うと、両親は「自分たちはいい父親と母親じゃない」と思い込んでいますが、そこに罪悪感を抱く必要はないと思っています。なぜなら、彼らは心の病に対峙するスキルがないだけの場合もあるからです。だからこそ、そこで必要とされているのは愛だけではないというのも、描くことにしました。これは映画を通しても伝えたいことですが、我々は罪悪感があるとそれに引きずられて、やり方を間違えることがあります。ですが、本来はまず子どものために安全なスペースを作り、しっかりと対話することからはじめなければならないはずです。そういうときは、経験者やプロの人たちに助けを求めればいいわけで、そこに対して悩んだり、自分の失敗を責めたりしなくていいと考えています。―そのためにも、オープンに話し合うことが大切なんですね。それでは最後に、公開を楽しみにしている日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督実はまだ日本には行けていないのですが、僕にとっては日本に行くことが夢のひとつでもあります。これは本当です。以前、僕の舞台が日本で上演されたときに来日する予定だったのですが、映画の撮影と重なってしまって行くことができず、そのあともコロナ禍で行けませんでした。ただ、来年もまた舞台が上演されるので、今度こそ日本に行きたいです。僕は日本の文化や映画が好きですが、最近のなかで印象的だったのは『ドライブ・マイ・カー』。リハーサルのシーンでは異なる言語を話す人たちが、言語を超えてお互いを理解しようとしていた姿に心を打たれました。僕も日本語は話せませんが、そんなふうに日本の方々と触れ合いたいと思っています。完璧な人なんて誰もいない愛しているのに伝わらない親子の葛藤と、それぞれが抱える苦悩に共感せずにはいられない本作。そして、メンタルヘルスをケアすることの重要性が叫ばれているいまだからこそ、心の病との向かい方について話し合うきっかけを作るためにも観るべき作品です。取材、文・志村昌美心を揺さぶられる予告編はこちら!作品情報『The Son/息子』3月17日(金)TOHO シネマズ シャンテほか 全国ロードショー配給:キノフィルムズ️(C)THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
2023年03月16日映画や小説において、人気の高いジャンルといえばミステリー。そこで今回ご紹介するのは、生涯で400冊以上を執筆し、発行部数5億部以上を誇る世界的な推理作家ジョルジュ・シムノンの大ヒットシリーズを映画化した話題作です。『メグレと若い女の死』【映画、ときどき私】 vol. 5571953年のパリ。ある夜、シルクのイブニングドレスを着た若い女性の刺殺体が発見される。不釣り合いなほどの高級ドレスは血で真っ赤に染まり、5か所にも及ぶ執拗な刺し傷があった。この謎めいた事件を担当することになったのは、警視庁犯罪捜査部のジュール・メグレ警視。しかし、死体のそばに持ち物はなく、事件を目撃した人もいないため、彼女が誰なのかわからないままだった。わずかな手がかりをもとに、メグレは犯人を捜し始めることに……。これまでに、さまざまな国で何度も映像化されてきたメグレ警視シリーズ。日本では、アニメ『名探偵コナン』に登場する目暮警部のモデルとしても知られています。今回は、本国フランスで初登場1位を獲得した本作についてこちらの方にお話をうかがってきました。パトリス・ルコント監督(C) CLAIRE GARATEカンヌ、ベルリン、ヴェネチアという世界三大映画祭すべてでノミネート経験があり、フランスの名匠と呼ばれているルコント監督。日本では『髪結いの亭主』をはじめとする数々の作品をヒットさせ、90年代のミニシアターブームを牽引した監督の1人とされています。本作では、自身の代表作『仕立て屋の恋』の原作者であるシムノン作品に再び挑戦。そこで、物語の魅力や名優との現場で感銘を受けたこと、そして映画作りでのこだわりなどについて語っていただきました。―前作からは8年ほど間が空きましたが、本作の準備に時間がかかっていたのか、それともなかなか撮りたい題材と出会えなかったのか、新作が完成するまでの経緯についてお聞かせください。監督私にとってこの作品は30本目の作品ですが、実はそれ以外に30本ほどのプロジェクトが流れてしまった経験をこれまでしてきました。なので、この作品に出会うまでも、本当はたくさんのおもしろい企画があったんですよ。なかにはキャスティングまで進んだのに、まるでトランプで作ったタワーが突然崩れ落ちるようになくなってしまったこともありましたから。貴重な時間を無駄にしてしまった気持ちはありますが、映画界においてはよくあることですね。ただ、本作に関しては予算面で難しい時期があったくらいで、そのほかはスムーズにいったほうかなと。脚本の執筆は2か月ほどで、撮影も6か月で終えることができました。犯人探しよりも、犠牲者にスポットを当てていて感動した―メグレシリーズには75の長編と28の短編がありますが、そのなかから監督が選んだのは1954年に発行された小説「メグレと若い女の死」。理由のひとつは事件の舞台がパリだったからだそうですが、なぜですか?監督今回、パリであることは私にとって非常に大事な点であり、その思いは本作の脚本家であるジェローム・トネールとも共通していたことでした。なぜならメグレ警視がセーヌ川やパリの街のなかを歩いている姿を描きたかったからです。もちろんこのシリーズでは、地方を舞台にした作品もありますが、我々のメグレ像を作り上げるうえでは、パリであることが必要だと思ってこの作品を選びました。―そのほかにも、映画化したいと思うに至った要素があれば、教えてください。監督本作は、「名前も年齢もわからない若い女性が理由もなく血だらけで殺されてしまう」という珍しい設定で物語が始まります。そんななかで私が感動的だと思ったのは、メグレ警視が犯人捜しよりも犠牲者である女性にスポットを当てて調べていくところです。そういうところにも、魅力を感じました。―メグレ警視を演じたジェラール・ドパルデューさんの存在感と重厚な演技が素晴らしかったですが、現場での様子はいかがでしたか?監督以前からドパルデューの作品は観ていましたし、私にとっては大好きな俳優の1人でした。ただ、これまで一緒に仕事をする機会はなかったので、直接会ったのは今回が初めてです。まず感銘を受けたのは、彼の仕事に対する姿勢。現場ではほかの俳優たちと直前まで冗談を言い合ったり、その場の雰囲気をおもしろく盛り上げたりしてくれるのですが、いざ「スタート」の声がかかると1~2秒ほどで役に入り込み、完全に役になりきってしまうのです。その様子については、驚くしかありませんでしたね。そこで、あるとき「なぜそんなふうにすぐに役に入れるんですか?」と彼に聞いてみました。すると、彼は「自分が役に集中するための方法は直前に役から離れること」だと教えてくれたのです。そういう方法を取っていると知り、さらに感銘を受けたことを覚えています。ドパルデューとメグレ警視の共通点は、観察眼の鋭さ―それは非常に興味深いですね。メグレ警視の役はこれまでにいろんな国の俳優が演じていますが、ドパルデューさんだからこそ表現できたと感じた部分もありましたか?監督私が個人的に気づいたこととしては、メグレ警視とドパルデューは両者ともに自分の周りにいる人たちを非常によく見ているということでした。特にドパルデューは、現場でもすべての人々に注意を払っていましたから。そんなふうに観察眼が鋭いのが2人の共通点ですが、だからこそドパルデューはメグレ警視を見事に演じてくれたのだと思います。―ちなみに、日本では国民的アニメの重要なキャラクターのモデルにもなっていますが、世界中にメグレ警視が広がっていることについては、どう感じていますか?監督メグレという人物は、非常に普遍的な存在と言えるのではないでしょうか。国籍を問わずどんな人にでも感動を与えられますし、彼のなかに自分を見い出すこともできるので、私からするとユニバーサルな人物だと思います。なので、メグレがあらゆる国の人に受け入れられていることはうれしいです。―監督から見たシムノン作品の魅力は、どんなところでしょうか。監督私がシムノンの作品に出会ったのは、14歳か15歳のとき。旅行で不在にしていた両親の代わりに私の世話をしてくれた祖母が勧めてくれたのがきっかけでした。私がシムノン作品で一番好きなところは、無駄がないところ。短い作品でも本質的なことをすぐに教えてくれる文体なので、必要ないところをそぎ落として大切な部分を描くのが上手な作家だと思います。そして、その方法というのは私が映画を作るときのやり方とも非常に類似しているのではないかなと。おそらくそれがいまでも私が彼に惹かれている理由の1つです。実際、今回の映画も90分以内という長編のなかでは比較的短い尺の作品となっています。重要なシーンでも、何度も撮る必要はない―監督には「俳優たちが最高のパフォーマンスをするのは、最初の1回目か2回目」という持論があり、今回もその撮影方法を取り入れられたそうですね。監督私は撮影のときに何度も撮り直しをするのがもともと好きではないタイプの監督なので、今回もその考えは事前に伝えました。これまで出演してくれた俳優たちもその方法に賛同してくれる方々が多かったですが、ドパルデューも喜んでいてくれていたようです。たとえ重要なシーンであったとしても、10回以上とか何度も撮る必要はない。それよりも1回か2回くらいで終わるほうが感動的なことですし、仕事のクオリティとしてもそのほうが高いと考えています。―本作でも、その方法が功を奏したと感じたシーンなどもあったのでしょうか。監督それはすべてのシーンにおいて言えることでもありますが、そのなかから1つを挙げるとすれば、メグレ警視がある人物に「自分の子どもが死んだときには、すべてを失い何も残らない」と言われるところです。彼は「知っている」と返事をしますが、ドパルデュー自身も実の息子を亡くしているので、ここは観客にとっても心に刺さるのではないかなと。この場面では何度も撮ることはあえてせず、ワンテイクで撮ったので非常に印象深く残っています。―長年、映画づくりと向き合うなかで創作意欲の源となっているものとは?監督私が描く映画ではキャラクターに焦点を当てているものがほとんどですが、新しいストーリーを考えるとき、私の場合は人物第一主義。まずは自分の周りにいる人たちを観察し、それをストーリーに落とし込むことが多いです。なので、私にとっては人物を掘り下げることがインスピレーションの源であり、またモチベーションの源でもあります。もっと身の周りに目を向けて、大事にしてほしい―また、これまで日本には何度かいらっしゃったことがあると思いますが、日本に関する思い出があれば、お聞かせください。監督日本での思い出はたくさんありますが、これまでは自身の作品をプロモーションするための来日だったので、ホテルの部屋でジャーナリストたちと会っている時間のほうが長かったかもしれません(笑)。そんななかでも、東京の街を散歩することがありましたが、驚いたのはパチンコに興じている人たちを見たとき。私にとってはうるさくてわけがわからなかったですが、パチンコ玉を耳栓にしてまでやっている彼らの熱量がすごくて私にとってはおもしろい体験でしたね。―確かに、見慣れない方にとっては珍しい光景かも知れませんね。監督あと、個人的に日本の習慣でいいなと思うのは、距離を取りながらお辞儀をして挨拶をしているところ。フランスでは握手やキスをするのが普通ですが、コロナ禍でそれができなかったときに「日本人のようにすればいいんだよ」と冗談で言ったこともあったくらいです。素敵な習慣なのでフランスでも広まったらいいなと思いましたが、いまだにそれは難しそうですね。それから、日本では若者たちが着ている服に対してこだわりを持ってオシャレをしている姿にも感動しています。―ありがとうございます。それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督私はあまりメッセージを送るのが得意なほうではないのですが、日本の方だけでなく、地球上すべての人に対して言えることがあるとすれば、「人生ではあまり先を急がないでください」ということでしょうか。自分の近くにいる人たちや身の周りで起きていることに目を向け、そしてそれを大事にしてほしいということは伝えておきたいと思います。難事件の裏に隠された謎解きと人間心理に迫る!事件の真相を暴くだけでなく、被害者女性の生涯とメグレ警視が抱える闇にも迫っているヒューマンミステリー。ルコント監督ならではの鋭い洞察力と繊細な心理描写によって、深い余韻と感動が味わえる珠玉の1本です。取材、文・志村昌美心がざわつく予告編はこちら!作品情報『メグレと若い女の死』3 月 17日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか 全国順次公開配給:アンプラグド️(C)2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.
2023年03月16日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日は春にぴったりな、トレンドを意識した雰囲気をお好みの方にお勧めのヘアスタイルをご紹介します。長めショートヘアがナチュラルな雰囲気緩く流れるようなスタイリングがかっこいい長めのショートヘア。分け目を変えるだけで雰囲気も変わりそうなので、ショートっぽいヘアスタイルにしたい方にはおすすめ!ミディアムブラウンカラーがまた優しい色合い。一度はやってみたい!?くるくるパーマ海外でたまに見かける大胆なパーマスタイル、可愛いと思ってもなかなか真似は難しいですよね。それでもこうしてみると、誰にも真似できないお洒落スタイルが確立されて魅力的!もしチャレンジしてみたいと思うなら、思いっきり大胆にやってみてはいかが!?ベリーショートですっきり美人!すっきりとしたヘアスタイルに挑戦してみたいなら、こちらのベリーショートを参考にしたらいかがでしょう?この方は真っ赤なリップに真っ赤なビーニーがより印象的。ベリーショートだってキュートに見せることができるんですね。韓国のインフルエンサー、アイリーンのパープルヘアーこちらはアイリーンの強烈なパープルヘア。色がしっかり入っていてとってもキレイ!パープルヘアはちょっと…と今まで敬遠してきたのですが、こうして見るとなんとも素敵ですよね。色をしっかりと入れることで、魅力的なカラーに!あまり被ることのないヘアカラーです。やっぱりブロンドヘアは一度はやってみたい!海外の方にとってはナチュラルなヘアカラーなのかもしれませんが、やはり私たちアジア人がここまで色を抜くとなると、ブリーチを何度しても難しいですよね。それでもやはりブロンドヘアに憧れる方は多く、一度はここまでやってみたい気持ちもあります。長いヘアをまとめるには上めでお団子に!やっぱりお団子ヘアは世界中で人気。上の写真のように、しっかりとまとめても良し、下の写真のようにルーズめにまとめても可愛い!どちらも同じお団子ヘアですが、雰囲気は変わります。こちらは、長い髪の方にお勧めのヘアスタイルです。いかがでしたか?どんなヘアスタイルにしても、カットやカラーリング、まとめ方で雰囲気は大きく変わるので、ぜひ春先にはいろんな方法でイメージチェンジしてみて!写真 平野秀美
2023年03月12日定番ながらも毎シーズン、コレクションでトレンド入りしているのがデニム。なかでも今年2023年はとくにストリートファッションがトレンドを席巻しており、その影響でデニム熱もいっそう高まっている模様です。そこで今回は、着こなしを今年流にアップデート!2023年春のデニムコーディネイトのポイントをご紹介します。ツイード素材のジレ+デニム近年、メガヒットと言っても過言ではないのが「ツイードアイテム」です。ツイード素材は秋冬物の定番素材として昔から存在していましたが、ファッショントレンドがクラシカル&フェミニン傾向に移行してからは春ものの薄手のツイードジャケットやツイードジレが登場。ノーブルな印象を持つツイードをデニムで上手にカジュアルダウンさせる着こなしはまさに今っぽいデニムコーデと言っても良いでしょう。ただしツイードジレを合わせる場合、デニムのシルエットは太すぎても細すぎてもバランスがとりにくいので注意が必要。裾が緩やかに広がるフレアデニムなら、上半身と下半身のボリュームバランスが取れます。着こなしに迷ったらツイードジレ+フレアデニムの組み合わせにトライしてみて。また、小物のどこかに差し色となるトレンドカラーを加えると着こなしの完成度が一気にグレードアップします。コンパクトシャツ+バギーパンツ2023年春は昨年に引き続きコンパクト丈のトップスが主流に。とくにこれまで定番とされていたオーバーサイズの白シャツは少しずつ影を潜め、いよいよ着丈の短い襟付きシャツが台頭していく予感です。対するボトムスはローライズにルーズなバギーシルエットが注目されていきます。いわば昔流行した“腰パン”なるものが今年春に流行っているのですが、これまでハイライズデニムを愛用していた方からするとウエスト位置の急な方向転換は戸惑いますよね。ローライズに抵抗がある場合は、無理に取り入れなくてもOK。ですが、トップスは必ずミニマルなデザインのものを選びましょう。そうするとボリュームのあるワイドデニムやバギーパンツを履いても着膨れを起こさずスタイルアップした着こなしが実現します。白シャツor白T×デニムコーデをアップデートデニムコーディネイトのなかで最も定番なのが、白シャツor白Tと組み合わせたデニムコーデ。組み合わせるアイテムがシンプルだからこそ、今トレンドのシルエットを意識しないとただの無難コーディネイトで終わってしまいます。2023年の春夏はトップスがコンパクトでボトムスがワイドなシルエット。もしくは、トップスはボリューム大きめ・太ももあたりはスッキリ・足先はボリュームありのシルエットバランスが今っぽい着こなしを作るカギです。ぜひ、今回ご紹介したポイントを参考に今っぽいデニムコーディネイトを取り入れてみてくださいね。イラスト 角 佑宇子
2023年03月12日日本橋髙島屋S.C.の本館8階ホールで、北欧家具やインテリア、食器などを集めた展覧会『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』が開かれています。会場では、北欧の部屋をリアルに再現した美しい展示空間も登場。プレス内覧会と開会式を取材してきましたので、レポートします!北欧デザイン300点以上が集結!『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』展示風景【女子的アートナビ】vol. 283日本橋髙島屋開店90年記念『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』では、椅子研究家の織田憲嗣さんが長年かけて収集・研究してきた、世界的にもかなり貴重な「織田コレクション」が集結。北欧デザインの椅子やテーブルなどの家具から、照明やインテリアアクセサリー、さらに食器などの日用品まで、総勢70名以上のデザイナーによる300点以上の作品が紹介されています。洗練された作品だけでなく、展示空間も見どころのひとつ。北欧の建材メーカーによる窓枠や床材を使い、リアルなリビングルームやダイニングルームが再現されています。照明も北欧のもので演出され、現行商品の名作椅子には座ることもできます。美が人生を豊かに…!『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』日本だけでなく、世界でも北欧デザインは人気があります。なぜ、これほど魅力を感じるのでしょう?北欧家具やインテリアなどの有機的で美しいデザインには、日常の暮らしや思想が強く影響しているそうです。開会式に登壇された織田さんは、北欧デザインができた背景について、次のように語りました。織田さん北欧では、19世紀末にスウェーデンの社会思想家、エレン・ケイが「美が人生を豊かにする」という思想をとなえ、さらに美術史家のグレゴール・パウルソンが、「暮らしの中にもっと美しいものを取り入れていこう」と提唱し、今日の高い生活文化が築かれていきました。現在、日本はジェンダーや環境などさまざまな問題を抱えています。北欧では、1960年代からそれらの問題に取り組み、解決してきた実績があります。モノだけをご覧になるのではなく、美しいモノたちが生まれてきた背景や歴史にも思いをはせていただければうれしいです。人生の節目に椅子を買う!『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』では、会場の見どころをいくつかご紹介していきます。まず、第1章「椅子と生きる」では、北欧各国の名作椅子を展示。北欧の人たちは、長い人生をともにする椅子の存在をとても大切にし、美しいフォルムだけでなく、座り心地も徹底的に追求しています。また、初任給をもらったときや結婚したときなど人生の節目に椅子を買うこともあるそうです。椅子が人生のパートナーって、ステキですね。『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』第2章「デザインの源泉」では、北欧を代表するデザイナー10名による多くの作品を展示。イッタラのデザイナーとして知られるフィンランドの巨匠、タピオ・ヴィルカラのガラス作品をはじめ、アルヴァ・アアルトやカイ・フランク、デンマークのフィン・ユールなどの作品とともに、デザイナーについても紹介されています。織田さんは、「北欧デザイナーの多くは、自然界からインスピレーションを受けてデザインに生かしている」と解説。例えば、タピオのガラス作品《ウルティマツーレ》は、最北のラップランドでのとけゆく氷をイメージしたデザインになっています。世界で唯一現存する椅子!『ていねいに美しく暮らす北欧デザイン展』また、第3章「心の居場所」では、北欧建材でつくられた部屋に家具や食器などを展示。照明も、北欧の光の変化を考えて演出されています。本展で展示されているダイニングセットは、ふだん織田さんが自宅で使っているものを運んできたそうです。「良いモノほど、よく使うべき」と語る織田さんは、現在北海道の森の中にある自宅で、美しいデザイン家具や日用品に囲まれて過ごされています。また、リビングルームに展示されているベント・ヴィンゲ《イージーチェア》は、スツールとセットになったもので、世界で唯一現存する貴重な作品。本展には、ほかにも「世界に2点しかない」ハンス J・ウェグナーの《ザ・チェアプロトタイプ》や、アルヴァ・アアルトの最初期モデルなど希少な作品があり、近代デザイン史に残る学術的にも重要な名作を見ることができます。織田さんが語った「美しい暮らしは人を幸せにする」という言葉を、まさに実感・体感できる展覧会です。ぜひ、現地でご覧になってみてください。本展はこの後、ジェイアール名古屋タカシマヤと大阪髙島屋に巡回予定です。Information会期:~3月21日(火・祝)会場:日本橋髙島屋S.C.本館8階ホール入場時間:午前10時30分〜午後7時(午後7時30分閉場) ※最終日3月21日(火・祝)は午後5時30分まで(午後6時閉場)観覧料:一般 ¥1,000、大学・高校生 ¥800、中学生以下無料
2023年03月12日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は今注目のカラー、春に着たいピンク&パープルファッションをご紹介します。ピンクが引き立つパーフェクトな美しさ!お洒落な変形スカートはブーツと全く同じパープルで統一させ、トップスのカラフルなピンクがよりいっそう際立つようになっています。決してオーバーサイズではないけど、余裕のある雰囲気がなんともゴージャスですよね。春にぴったりのニットコーデです。色違いのピンクで可愛いさが一層増す!ピンクと言っても濃さや素材で、見え方は全く異なりますよね。こちらも色の濃淡が異なるピンクを上手にコーディネイトしています。薄いピンクは可愛いく見えすぎる傾向があるので、スカートの色の濃さで上手に調整しながら凛とした女性を演出しています。パーティにもおすすめのピンク上下セット軽やかなピンクとアイボリーのシャツがセンスの良さを引き立てているこちらのスタイル、上級者向けのスタイリング。小物やサングラスで引き締めている完璧なスタイル。これならパーティやイベントでも目を引きますよね。カジュアルファッションにも欠かせないショッキングピンク!人気ブランドも注目しているショッキングピンク。どんなスタイルにも合わせやすそう。最近は多くのブランドでショッキングカラーが人気のようですが、なかでもショッキングピンクは人気!トップスなど1点だけでも目立つので、他の部分は比較的落ち着いた色で調整を。今回は、春に注目したいピンクやパープルカラーのファッションをご紹介しました。色次第で雰囲気は変わりますが、色の濃さでもこんなに印象が変わるんですね!ピンク好きにはたまらない、春のピンクファッションをご紹介しました。写真・文 平野秀美
2023年03月11日Bunkamura ザ・ミュージアムで、『マリー・ローランサンとモード』展が開催中です。本展で音声ガイドナビゲーターを務めるのは、俳優の浦井健治さん。内覧会で展示をご覧になった浦井さんに、本展の見どころやアートについてお聞きしてみました!浦井健治さんがナビゲート!『マリー・ローランサンとモード』展浦井健治さん【女子的アートナビ】vol. 282本展では、ともに1883年に生まれたマリー・ローランサンとココ・シャネル、そして時代を彩った人々に注目し、美術とファッションを軸に、1920年代のパリの芸術界を紹介。女性的な美を追求したローランサンの優美な絵画を中心に、活動的でモダンな女性服を創作したシャネルのファッションなども展示され、約90点の多彩な作品を楽しめます。本展で音声ガイドを担当した浦井健治さんは、ミュージカルや映像などで活躍。これまで、さまざまな王子や伯爵などの役を演じ、最近までミュージカル『キングアーサー』で主演のアーサー王役を務められ、注目を集めています。そんな貴公子の風格が漂う浦井さんに、展覧会の感想やお好きな作品などをお聞きしてみました。二人の女性に魅せられて…――はじめて音声ガイドを担当されて、いかがでしたか?浦井さん光栄でうれしかったです。美術館は、自分自身や当時の時代とも向き合えて、「学びのある場所」と個人的に思っています。ですから、見ている方の邪魔にならないよう、抑揚などを考えて、優しく包むようなイメージで収録しました。また、今回はナレーションをしながら、自分自身もローランサンとシャネルという二人の女性のすばらしい志や芸術、生きざまに魅せられていきました。こんな贅沢な経験をさせていただき、うれしいです。――二人の女性について、特にどんな点に魅力を感じられましたか?浦井さん社会的に新しい感じがお二人にはあると思います。ローランサンの絵画は、淡い色彩で描かれていて女性らしさがあり、ステキだと思います。彼女の絵には、犬や周りにいる大切な人たちが描かれていて、優しさに包まれています。絆や人間を大切にしていることが絵から伝わります。シャネルは、女性たちが活躍できるよう、いろいろなことにトライされています。今は当たり前のことですが、当時の女性が権利を勝ち取っていくのは大変だったと思います。風潮や常識にあらがい立ち向かう様子は、まるで騎士のように見えます。二人とも、美術やファッションという枠を超えて、これから女性がどうやったら活躍できるのかを呈示しているような方々。だからこそ、みなさんに支持されて、今の時代も憧れの存在になっているのだと思います。美への探究心を感じる――会場をご覧になって、特にどの作品に興味をもたれましたか?浦井さんローランサンの作品に、恋人とのツーショットを描いた絵画があるのですが、二人の色味がグレーと色鮮やかな色で対照的に表されていて、印象的でした。また、自画像もよかったです。身につけている装飾品も工夫されていて、こう見せたいという彼女の思い、美への探求心を感じました。また、シャネルの衣装も興味深く思いました。自分は役者なので、いつも衣装を着させていただくのですが、衣装担当の方が凝った素材をパリから選んで持ってきてくれたり、役者の動きに合わせて制作してくれたり、工夫してくださるのです。いつも衣装担当の方から聞く言葉が、そのまま今回の展示物にリンクしている部分もありました。例えば、お腹を圧迫しないけどスレンダーに見えるファッションなど、今は当たり前のことですが、まさに当時、本展で見たところが始まりだったというのがわかり、すごいなと思いました。――本展は、美術とファッションを一緒に見られますが、その点はいかがですか。浦井さんとても豊かな展示構成だと思いました。説明がひとつひとつ書かれていて、見やすくなっているので、二人の女性の生きた証がよくわかります。まるで進行形のように、今でも彼女たちが生きているような感触があるくらい、見ていて清々しく生命力がありました。何度見ても、きっと発見があると思います。アートは学びの連続――浦井さんにとって、アートはどんな存在ですか?浦井さん情報の宝庫で、学びの連続です。描かれた当時のことを知ることができ、例えば戦争や疫病、生活スタイルなど時代の移り変わりをアートで見て知ることができます。また、自分の職業にも生かされています。実在の人物を演じるとき、書物や写真集などで学ばせていただくのですが、そこに必ずアートが入っています。例えばパリが舞台のとき、パリには行けないけれど美術作品を見ると、そこから服装や装飾品、人々の距離感などアートで語られていて勉強になります。また、知識だけでなく、インスピレーションも得られます。演じるのは、その場で生きて反応していくこと。アートは視覚で見て体感できるので、例えば教会の中の空気感とかが作品から伝わると、演じるときの助けになります。――よく美術館に行かれるとのことですが、印象に残る展覧会や作品はありますか。浦井さんいろいろありますが、以前、一部屋すべてモネの作品が飾られているのを見たときはすごいと思いました。やはり、本物はすごいですね。本物に触れると、自分の感性も変わっていき、研ぎ澄まされたインスピレーションが得られます。その空間に身を置くことでリセットでき、自分自身とも向き合えます。こんな贅沢な時間をリーズナブルなお値段で買えるのですから、美術館はもっとみんな行っていい場所だと思います。どんな方でも楽しめます!――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。浦井さん二人の女性の心意気や志、生きた証に触れることができる展覧会で、見ると世界が広がります。男性も学ぶことが多く、渋谷の真ん中にあるのでカップルで来ていただいてもいいと思います。ぜひ、この贅沢な空間を体感していただきたいです。音声ガイドも、みなさんと一緒に街を歩いているような雰囲気になれるよう心がけました。どんな方が来ても楽しめるすごくステキな芸術空間で、心に潤いをもたらしてくれます。ぜひ一度といわず、何度も足を運んでいただければと思います。インタビューを終えて…終始穏やかなトーンで、とても丁寧にお話をしてくださった浦井さん。アートから知識やインスピレーションを得て、役作りにも生かされているなど、言葉の端々から演劇に対する真摯な思いが伝わってきました。ぜひ、浦井さんの優しく寄り添うような声で収録された音声ガイドを聴きながら、展覧会を楽しんでみてください。Information会期:~4月9日(日)休館日:3月7日(火)会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開場時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)※金・土の夜間開館は、状況により変更になる場合があります。観覧料:一般¥1,900、大学・高校生¥1,000、中学生・小学生¥700撮影・松本理加
2023年03月11日インターネットやコンピューターといえばいまや誰の生活にも欠かせないものですが、日本のIT史を語るうえで外せないのは2002年に起きたWinny事件。今回ご紹介するのは、その一部始終といかにして天才開発者の技術が国家権力によって潰されてしまったのかを描いた話題作です。『Winny』【映画、ときどき私】 vol. 5562002年、ユーザー同士で直接データのやり取りができ、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発したプログラマーの金子勇は、試用版を「2ちゃんねる」に公開。彗星のごとく現れた「Winny」は、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などの違法なアップロードとダウンロードが続出し、社会問題へと発展していくのだった。違法コピーした者たちが次々と逮捕されていくなか、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕。サイバー犯罪に詳しい弁護士の壇俊光は、弁護を引き受けることになる。裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう。しかし、いつしか世界をも揺るがす事件へと発展することに……。“夭折の天才プログラマー”と呼ばれる金子勇と弁護団の長きにわたる戦いと、知られざる真実に迫った本作。そこで、その裏側についてこちらの方にお話をうかがってきました。松本優作監督2022年に『ぜんぶ、ボクのせい』で商業映画デビューを飾り、高く評価されている松本監督。今回は、企画から約 4 年の歳月をかけて完成させた本作の見どころや現場の様子、そして自身の映画にかける思いなどについて語っていただきました。―まずは、本作の監督をやりたいと思ったきっかけから教えてください。監督事件当時はまだ小学生だったので、Winnyのことをまったく知りませんでした。ただ、いろいろと調べていくなかで、これはどうしても映画にしなければいけないという思いがどんどん強くなっていった感じです。―「映画にしなければ」と思ったのは、金子さんの生き方に興味を持たれたからか、それとも日本の警察や裁判の在り方に対して思うところがあったからでしょうか。監督その両方ですが、特に日本における刑事裁判の問題点はいまにも通じる部分があると考えています。金子さんは第一審で有罪になったときに罰金を払っていれば自分の好きなプログラム作りをそのまま続けることもできたのに、そうせずに戦ったところに未来へ残そうとしたメッセージがあると感じました。あとは、金子さんに対して有罪のままの印象を持っている方もたくさんいますし、無罪になるまでの7年間をお姉さんがどんな思いで生きてきたのかについても映画として表現したいなと。外には出ていないさまざまな情報を知るなかで、金子さんがどんな人かも徐々にわかってきたので、そういった思いがすべて組み合わさっていきました。東出さんはとにかく役に対してストイックな人―今回、金子さんを演じた東出昌大さんも、体重を18キロ増量するなどしてかなり作り込んで挑まれたそうですが、間近でご覧になってどのように感じましたか?監督東出さんは、とにかく役に対してストイックな方ですね。撮影の初日から金子さんが乗り移っているような感じがしたので、すごくびっくりしました。東出さんも「誰よりも金子さんのことを理解しているのは自分だ」と自信を持っているくらい入り込んでいたと思います。―そんな東出さんの様子に、撮影現場では金子さんのご家族も涙されたことがあったとか。監督僕は金子さんにお会いしたことがないので、正直わからない部分もたくさんありました。でも、東出さんを見たお姉さんが泣きながら「似ている」とおっしゃっていたので、それが1番の信頼できるお言葉だなと。そのおかげで自信が持てましたし、このまま映画を撮ってもいいんだと思うこともできました。あと、これは弁護士の壇さんがおっしゃっていたことですが、金子さんと東出さんはどちらも純粋で疑いもなく人と接するところがあって、そこが似ているそうです。外見がどんどん似てきて驚くこともありましたが、根本的な部分で2人がリンクしていると感じることはありました。―また、弁護団を演じられたみなさんも本当に素晴らしかったですが、演出するうえで意識されていたことはありましたか?監督今回は、壇弁護士に裁判や弁護士の在り方について監修していただきました。いい環境で映画が撮れたと思います。裁判シーンでは、とにかく緊張感がすごかったですね。キャストのみなさんだけでなく、僕も緊張しました。吹越満さんや渡辺いっけいさんといったベテラン俳優さん同士のぶつかり合いも見られたので、そういう部分も面白かったです。裁判のシーンでは、とにかくリアリティを追求した―壇さんは「これまでの日本の映画のなかで、法廷シーンのリアリティはこの映画がナンバーワン」とおっしゃっていますが、今回は映画的な見え方よりも、リアルに近づけたいという気持ちのほうが強かったのでしょうか。監督僕もそこは一番に考えていたことです。というのも、壇さんとお話をした際に、「いろんな裁判映画を観てきたけど、間違っていることがたくさんある。リアルな裁判劇が日本にはない」とおっしゃっていたので、僕がリアリティを追求したものにしたいと思いました。―具体的には、どういったところにこだわりましたか?監督壇さんには、特に目線や動きなどを細かく監修していただきました。たとえば、相手を尋問しているとき、「決まったな」と確定したときは裁判官のほうを見て合図を送るとか、嫌なことを言われたときのカラダの動きとか、裁判ではお決まりのことがあるそうです。知らないことばかりでしたが、実際の裁判を傍聴したときにもそういうところを見れたのは面白かったです。そのほかには、生の臨場感や緊迫感を映像に収めたかったので、なるべく何回もテストをせずに進めました。たとえ言葉に詰まったとしてもそれもリアルなので、今回は1発オッケーのシーンが多かったと思います。―完成までは制作が止まってしまったこともあったそうですが、心が折れそうになったこともあったのでは?それとも逆に燃えるタイプですか?監督うまく進まないことが何度もあって、「もしかしたらできないかも」と思ったことはありました。でも、どうしても成立させたいという気持ちが強かったので、どちらかというと燃えていたと思います。「これは映画にならざるを得ないくらいのテーマなんだ」という自信もずっとありましたから。それと、天国にいる金子さんが世に出るように仕向けてくれているんだろうなと感じてもいたので、そういう意味でもあまり心配していなかった気がします。金子さんは人生を捨てても未来に何かを残そうとした―日本には技術者を大切にしないところや出る杭は打たれるという風潮がいまだにありますが、本作を制作する過程で思うこともあったのでは?監督そうですね。やっぱり怖いものには蓋をするような文化はいまでも残っていると感じました。ただ、その怖さは無知や正義感からくるものだと思うので、メディアも情報を受け取る側もきちんとリテラシーを持っていないとまた同じようなことが起きてしまうのではないかと懸念しています。というか、すでにいまも似たような出来事は起きているので、この映画をきっかけに少しでも状況がよくなってほしいなと。1本の映画によって日本の刑事裁判が抱える問題や日本のよくない部分について知ってもらい、考えてほしいです。―ちなみに、ご自身もそういった経験をされたこともありますか?監督僕の場合は、出会ってきた方々が本当にいい人たちばかりだったので、逆に引き上げていただいたと思っています。まあ、まだ杭が出てないから打たれていないだけかもしれないですが(笑)。でも、そのおかげで、いろんな作品を撮ることができているので、いつか自分が上に行ったら、若い人たちを引き上げたいという気持ちは強いです。そうしないと文化は発展しないですし、映画界も廃れていくだけですから。―もし金子さんの周りにもそういう方々がもっとたくさんいたら、違う形で技術が広がっていた可能性もあったかもしれないですね。監督それはあると思います。金子さんのことを理解しようという気持ちが日本にはなかったのが、アメリカと大きな差がついてしまった原因ではないかなと。「この裁判には勝者はいない。結局どちらも敗者でしかない」と壇さんがおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。―同じクリエイターとして、金子さんから影響を受けたことはありますか?監督金子さん自身は、出る杭を打とうとする人たちとは真逆で、自分のプログラム人生を捨ててでも未来に何かを残したいという思いが強い人だと感じました。形は違いますが、僕もそういう作り手になりたいと考えています。映画の文化を広げて、変化を与えられる人になりたい―日本では技術のみならず、芸術に対しても支援が足りない部分が多いと思います。映画監督として今後変えていきたいことはありますか?監督たとえば、韓国を見ると作り手たちが自ら動いて政界やシステムを変えていますが、日本も同じように根本的なところから取り組まないと難しいのではないでしょうか。いまの日本映画界をよくするにはどうしたらいいかということはよく話題になることですが、僕たちの世代にはそれをする責任があると感じています。そのために、まずは1本1本いい作品を作っていかないといけないなと。長年かけてやっていくしかないですが、変化を与えられる人になりたいですし、映画という文化を広げていけるようにがんばりたいです。―本作が20代最後の監督作品となりましたが、30代に入ったいま、どんなことにチャレンジしたいですか?監督基本的には最初に映画を作りたいと思ったときの気持ちと変わっていませんが、とにかくこれからも真剣に向き合っていくしかないですね。20代の頃は失敗しても挑戦と捉えてもらえる部分はありましたが、僕のなかで30歳を越えると失敗は失敗と見なされてしまうと思っているので、責任はより重くなるのかなと。ただ、それを怖がっていても仕方がないので、いままで以上に突き進みたいです。不条理や理不尽があるなかでどう生きていくべきなのかということはずっと考えていることですが、この作品のように絶望的な場所に行ったからこそ見えた光はあると思っています。これからもそういう部分は表現していきたいですし、映画で世界や社会を動かしたいと思っています。―最後に、ananweb読者に向けて見どころをお願いします。監督おそらくほとんどの方がこの事件を知らないと思うので、まずは知っていただく機会にしていただきたいです。それと同時に、映画を通していまを見つめていただけると、よりよい社会になると信じています。すべてが地続きだと思うので、自分たちとは関係ない出来事ではないということも伝わったらうれしいです。諦めずに戦い続ける姿に心が動かされる決して過去の話ではなく、現在にも通じている問題について突きつけられる本作。金子勇という一人の天才の生きざまから多くのことを学ぶだけでなく、時を越えて届くメッセージを受け止めた私たちがこの先の未来をどう変えていけるのかについても考えさせられる1本です。取材、文・志村昌美引き込まれる予告編はこちら!作品情報『Winny』3月10日(金) TOHOシネマズほか全国公開配給:KDDI ナカチカ️(C)2023映画「Winny」製作委員会
2023年03月09日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第134回は、婚活していると出会う“男性”についてのエピソードです。なかでも、いまでも印象に残っている「婚活男性3選」その46をお届けします。1.さっきと聞いた話が違う男【結婚引き寄せ隊】vol. 134それは30代の男女が集まる婚活パーティに参加したときのこと。最初の自己紹介タイムでは、女性は着席のままで男性だけ順番にとなりの席へと移動していく、いわゆる回転寿司タイプのスタイルでパーティがスタート。このスタイルだとひとりの持ち時間が3分ぐらいしかなく、なかなかじっくりアピールすることが難しいなか、前のめりで話を聞くスーツ姿の男性のことが強く印象に残りました。それは、おたがいに名前を言って挨拶したあと、交換したプロフィールカードの「趣味」の部分を見て、その男性は即座に反応したからです。趣味欄に、そのとき私は映画鑑賞・アート鑑賞と書いたところ、男性も「僕もものすごく映画が好きで、展覧会に行くのも好きなんですよね!」と言ってきました。趣味が同じだと話も合うと思い、男性のプロフィールカードの趣味欄を見ると、あれれ? 「スポーツ観戦」と書いてあります。「スポーツがお好きなのでは?」とたずねると、「なんか気恥ずかしくてスポーツって書いちゃったんですが、本当は映画とアートが好きです」という返事。時間もないため、その場ではその回答を流して、次々訪れる男性と自己紹介をしていきました。その後、フリータイムになって、偶然その男性と他の女性の会話が耳に入ってきたのですが……「趣味が料理なんですね、僕も料理が趣味なんです!」とその男性が女性にアピール。その女性は私と同じようにプロフィールカードに目を落とし、一文字も料理と書いていないことを確認したのか、「書いてないじゃないですか」と怪訝そうな顔をして、その場を去りました。心の中で「さっきと聞いた話が違うなあ」と思いましたが、たぶんその男性は相手に気に入られたいから、とりあえず趣味に着目して同調しているのだろうと推測。それだけ婚活に意気込んでいるのかもしれないけれど、すぐバレるウソは命取りになるなあと思ったのでした。2.“普通”のハードルが高い男それは婚活サイトで出会った40代前半の男性とふたりで会うことになったときのこと。こちらの理想とする条件とも合い、向こうも私で良いと思ってくれて、何度かメールのやりとりをしたあと、実際に合う約束をしました。待ち合わせ時間の5分前にカフェに到着すると、すでに待っていたその男性は、笑顔で迎えてくれました。たわいもない話をしながらも、いよいよ本題といえる「将来はどんな家庭を持ちたいか」という話題に。「僕は“普通”の家庭を持てればそれで十分なんです」と言う男性に、「たとえば、具体的に奥さんに望むことって何なんですか?」とたずねると、「やっぱり毎朝“普通”に和食を用意してくれるとか、家に帰ったら“普通”にお風呂を沸かして待っててくれるとか……」という話が。いろいろ話をつっこんで聞いていくと、なんだか昭和の家庭のようなイメージを理想としていることがわかりました。ライフスタイルは人それぞれですし、人によって思う“普通”がどういうことなのかは異なるはずなのですが、この男性が考える「普通の奥さん像」には私はなれそうにないな、と思い、理想が固まっている場合はなかなか難しいなと実感。私にはハードルが高い“普通”の条件だったので、その日以降、男性とは会わなくなったのでした。3.なぜか前カノの話ばかりする男それは30代後半から40代前半の大人の男女が集まる婚活飲み会に参加したときのこと。参加したメンバーはみんな職業も年齢も異なるものの、それなりに恋愛も経験して、「あとは結婚するだけ」という人たちでした。そこでは妙にマウントを取ってくるような人物もおらず、落ち着いてじっくり会話しながら飲むという、マイペースで過ごせるような飲み会で、思わず参加者もお酒が進んで飲みすぎてしまうことも…。すると、向かいに座っていたトレーナー姿の男性が、涙ぐみ始めました。まわりは「どうしたの?」となぐさめていると、「実は別れた彼女のことがまだ好きで…」と言う男性。どうやら同棲していた彼女に振られたばかりで、泣き上戸になってしまった男性は、そこからえんえんと前カノのことばかり話し始めます。がんばって新しい出会いを探そうと婚活飲み会に参加したものの、やっぱり心の奥底では未練たらたらだったその男性に、なんと言っていいかわからず、とりあえず「復縁できるといいね」と応援して終わりました。いったい、何の時間だったんだろう…と思いながらも、生きていればいろいろあるよね、と納得できたのでした。婚活していると、いろいろな男性や場所に遭遇することもありますよね。そのうちきっと、いい恋がつかめるはず。みなさんの恋もうまくいきますように。文・かわむらあみり©Yellow Dog Productions/Getty Images©DjelicS/Getty Images©Allen Simon/Getty Images文・かわむらあみり
2023年03月08日