「4月から『診療報酬』が改定され、病院の窓口で支払う医療費が変わります。医療報酬とは、診察や検査、薬などの料金や、それに伴う手数料などを決めているもので、2年に1度見直されます」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。4月から改定される「診療報酬」。そのなかで家庭に影響が大きそうなポイントは、おもに2つだという。荻原さんが解説してくれた。 【1】「初診は大病院ではなく『かかりつけ医』で受ける」体制を、さらに推進 「2年前の改定で、500床以上の大病院では、紹介状なしの初診の患者に、5,000円以上の特別加算を行うことが義務化されました。これは、従来任意だったものが義務化されたことと、保険のきかない定額負担だったため、インパクトが大きかったと思います。今回は、この対策が500床以上の262病院から、400床以上の410病院へと拡大。背景には、大病院を重篤な患者の治療に専念させ、日々の診察は『かかりつけ医』へと役割分担を強化するねらいがあります」(荻原さん・以下同) かかりつけ医は必要に応じて、専門の病院を紹介する。また在宅患者の訪問診療や、病状の急変に24時間対応することなども求められる。 「ただ、町の病院単独でこの体制を維持するのはむずかしく、普及が進みませんでした。今回の見直しでは、地域の病院が連携して24時間対応を維持する体制を整えられれば、初診料が800円上乗せされます。これは保険がきくので、3割負担の方は240円プラス。多少の負担は、かかりつけ医制度を支えるための“応援料”だと私は思います」 【2】「看護・介護から看取りまでを在宅で行う」よう推進する見直し 「スマホやパソコンを利用した『遠隔診療』が認められ、『オンライン診療料』も新設されました。通常の訪問診療に加え、テレビ電話などを使って在宅で診療が受けられるようになると、患者も付き添う家族も助かるでしょう。いっぽう現在、死亡者の75%以上が病院で亡くなっています(’13年・厚生労働省)」 しかし今後、死亡者数は’40年にピークを迎え、’16年より約37万人増えて、約168万人になると予想されている(’17年・内閣府)。このままでは、病院はパンクしてしまう。 「そこで今回の改定では、介護福祉施設が病院と連携して看取りを行えば、介護福祉施設も病院も収益が得られるようになりました。とはいえ、医療と介護の連携は始まったばかり。今後、もっと密な連携を進めてほしいものです」
2018年02月23日「世界的に見ると、日本はキャッシュレス化が遅れています。キャッシュレス決済の割合は、日本では20%未満なのに対して、アメリカは41%、韓国は54%、中国は55%と、その差は歴然です(’15年・経済産業省)。そこで、政府は昨年、キャッシュレス決済の割合を、現在の約20%から、10年後には2倍の40%まで引き上げるという目標を立てました」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。実際、最近はアップルペイなどのスマホ決済を利用する人も増え、電子マネーが使える店も増えている。その一方で、小さな商店ではあまり導入が進んでいないように思えるのは、なぜなのか。 「お店にとって、キャッシュレス決済のメリットは、おつりの用意や現金チェック、銀行への入金作業などが不要になることです。手間が省ける分、人件費削減につながるかもしれません。また、訪日外国人が、もっとお金を使ってくれる可能性も広がります。とはいえ、導入には、カード用の支払い端末が必要で、そのための端末代金や月々のリース料などがかかります。また、カード利用には、店に2〜7%の手数料負担が生じます。小さなお店には金銭的負担が大きいといえます」(荻原さん・以下同) それでも政府は、’20年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、訪日外国人が訪れそうな観光地で「100%キャッシュレス対応を目指す」としている。 「支払い端末の導入補助も行うようですから、キャッシュレス化が一段と進むことが予想されます。こうした流れは、もう止められません。利用する私たちは管理方法に工夫が必要です」 そこで、荻原さんがキャッシュレス時代に備えるための家計管理術を解説してくれた。 【1】カードの一本化 「カードを複数枚持つと、使った総額の把握がむずかしくなります。また決済期間や引き落とし日もまちまちのため、いつ、いくら支払うのかが、わかりにくくなります。使うカードは、1つに決めるほうがシンプルです」 【2】デビットカードの利用 「使いすぎ防止には、デビットカードが効果的です。デビットカードは、使った金額が即座に銀行口座から引き落とされます。使えるのは銀行口座の残高までですから、払いきれないほど買い物をしてしまう心配はありません」 キャッシュレス化が進み、現金が要らなくなったら、銀行ATMの列に並ぶこともなく、時間外手数料などで預貯金が目減りすることはない。 「カードの利用履歴をうまく使って、家計管理に役立てることもできます。いずれ訪れるキャッシュレス時代に向けて、今から自分なりの家計管理法を身につけておきたいものです」
2018年02月16日「このたび、私は『老前破産ー年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)を出版しました。この本では“普通の人”が借金地獄に陥る現実に触れ、その対策を提示しました」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。結婚して子どもを産み、マイホームを手に入れる。子どもを大学まで進学させ、幸せな老後を送るーー。これまで“人並み”と思われていた人生から転落する人が増えているという。 「実は『自己破産』が最多なのは40代で27.02%。次が50代で21.05%。40代と50代で約半数を占めているのです(日本弁護士連合会’14年調査・以下同)。また、借金の理由は『生活苦・低所得』が最多で60.24%、次いで『病気・医療費』『失業・転職』など、“生活苦型破綻”が上位を占めます」(荻原さん・以下同) これに対し、「浪費・遊興費」「ギャンブル」などの“遊興型破綻”は少数だそう。 「しかも、自己破産した人の約半数は、負債額が500万円未満。さらに、100万円未満の人が6.61%もいて、’05年以降、増え続けています。この金額が返せないほど、余裕のない人が増えているのです」 【ケース】住宅ローンで老前破産! 会社員のAさん(53)は、35歳のとき、頭金ゼロで新築マンションを購入。当初10年間の金利は2%。11年目以降は4%という住宅ローンを組んだ。10年もたてば、給料も上がるだろうと楽観的だった。 だが実際は給料は上がらず、マンションの価値も下がるいっぽう。妻は、息子が通う塾の月謝の足しにとパートを始めたが、返済11年目からの家計は困窮を極めることに。 そのうえ、勤め先が業績不振に陥り、虎の子のボーナスはカット。貯金も底をつき、大学に進学した息子の進学費用は教育ローンでかき集めた。その結果、今はダブルローン地獄。 自宅マンションもすでに築20年が近いが、修繕積立金が不足し、老朽化が止められない。売るに売れないマンションとローンを抱え、悪夢にうなされる日々が続いている……。 「真面目に生きていても、何かのきっかけで、一気に借金地獄に転落してしまうーー。よく『老後破産』が問題だといわれますが、本当に怖いのは、40代、50代での『老前破産』なのです」
2018年02月09日「真面目に生きていても、何かのきっかけで、一気に借金地獄に転落してしまうーー。よく『老後破産』が問題だといわれますが、本当に怖いのは、40代、50代での『老前破産』なのです」 こう語るのは、『老前破産ー年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)を出版した、経済ジャーナリストの荻原博子さん。この本で、荻原さんは“普通の人”が借金地獄に陥る現実に触れ、その対策を提示している。 結婚して子どもを産み、マイホームを手に入れる。子どもを大学まで進学させ、幸せな老後を送るーー。これまで“人並み”と思われていた人生から転落する人が増えているという。 【ケース】教育ローンで老前破産! Bさん(55)は、共働きの妻と3人の子どもの5人家族。夫婦で力を合わせ、郊外にマイホームを購入した。しかしある日、妻が病気で倒れてしまう。妻の看病と子育て、住宅ローンも、Bさん1人で背負うことに。 幸い、妻の体調は回復したが、正社員の採用はなく、パート勤めでは以前ほど稼げない。生活費をいくら切り詰めても、3人の子どもが大学に進学するたび、教育ローンが増えていった。特に、末っ子は医学部に進学したため、消費者金融にも手を出してしまった。 膨れ上がった借金をどうすることもできず、Bさんは自己破産。取り立てに追われることはなくなったが、マイホームを手放し、家族はバラバラ、子どもたちには奨学金返済が残っている。 「もう一度、家族そろって暮らしたい」とBさんは力なく語った……。 そんな『老前破産』の対策ついて、荻原さんが解説してくれた。 「真っ先に取り掛かりたいのが『資産の棚卸し』です。商店などでは、定期的に在庫数を把握し管理する『商品の棚卸し』を行います。これと似たことを家計でも行い、現状を確認するのです」(荻原さん・以下同) 資産の棚卸し表には、「貯蓄・投資信託・株式など」、「保険」、「不動産」、「車・宝飾品など」、そして「負債」の項目を作り、金額を記入。このとき、大事なルールが、「現時点での金額、評価額」を記載することだそう。 「たとえば保険なら、死亡保障額ではなく、今、解約したら戻ってくる『解約返戻金』を記入。また不動産も、購入価格ではなく、今の評価額を記載します。表ができたら、資産の合計額と負債の合計額を比べてください」 ここで、目標を立てる。 「一般的なサラリーマンの方は、資産と負債を『50歳でプラスマイナスゼロ』にするのが目標です。これが達成できれば、ほぼ“勝ち組”です。というのも、住宅ローンを返済しつつ、子どもを大学に通わせると、両方で月15万〜20万円ほどかかっているはずです。この負債分をすべて貯蓄に回すと、定年までの10年間で1,800万〜2,400万円ためられるからです」 この貯蓄に退職金を加えて老後資金とし、厚生年金が夫婦2人で月20万円ほどあれば、老後はほぼ安心して暮らせる、と荻原さん。 「とはいえ50歳での住宅ローン完済は、あくまでも理想です。できない方は、これになるべく近付けるよう、自分なりの目標を立てましょう。たとえば、当初の目標として『55歳までに負債を1,000万円以下にする』、それがクリアできたら『50代のうちにプラスマイナスゼロにする』……などです。最終的に目標にしたいのは、退職金に手を付けることなく、すべての借金を完済することです」
2018年02月09日「これまで“人並み”と思われていた人生から転落する人が増えています。実は『自己破産』が最多なのは40代で27.02%。次が50代で21.05%。40代と50代で約半数を占めているのです(日本弁護士連合会’14年調査・以下同)。真面目に生きていても、何かのきっかけで、一気に借金地獄に転落してしまうーー。よく『老後破産』が問題だといわれますが、本当に怖いのは、40代、50代での『老前破産』なのです」 こう語るのは、『老前破産ー年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)を出版した、経済ジャーナリストの荻原博子さん。この本で、荻原さんは“普通の人”が借金地獄に陥る現実に触れ、その対策を提示している。 給料が上がらない、ローンが終わらない、残業カットに増税、そのうえ年金支給も先送り!?ーー。その結果、招きかねない「老前破産」という悲惨な結末を避けるため、荻原さんは家計のダウンサイジングをすすめている。まずは次の5つの方法から検討してみよう。 【1】生命保険の見直し 「サラリーマン家庭なら、万が一、夫が亡くなっても『遺族年金』として、本人が受け取るはずだった年金額のおよそ4分の3が支給されます。これをベースにして、妻がパートなどで働けば、生活費はまかなえると思います。ただ、遺族年金だけでは足りないのが、子どもの教育費です。それを補うものが生命保険だと考えると、子どもが社会人になったら、多額の保険金は不要、と割り切ってもいいのではないでしょうか。生命保険の見直しには、「払い済み保険」という方法もあります。今の保険を解約し、受け取った解約返戻金で、終身保険の保険料を一括で払い込むものです。死亡保障額は減りますが、その後の保険料負担はゼロ。これで、今まで払っていた保険料を貯蓄に回すことができます」(荻原さん・以下同) 【2】通信費などの見直し 「いわゆる大手の携帯会社から、格安スマホに乗り換えれば、通信費が抑えられます。平均月額料金を比べると、大手利用者が7,876円に対し、格安スマホは2,957円です(’17年3月・MMD研究所)。その差は4,919円。家族4人で乗り換えれば、月約2万円を貯蓄に回せます」 【3】自家用車の見直し 「自家用車は本当に必要ですか?車を持つと、車本体にかかる費用のほか、駐車場代や自動車保険、自動車税などもかかります。最近では便利なカーシェアリングも増えています。車は、必要なときだけ借りれば十分、という人も増えています。地方にお住まいで、どうしても車が必要な方には、やはり軽自動車がおすすめです。一般的な乗用車の自動車税が3万4,500円なのに対し、軽自動車では1万800円。年2万3,700円も『節税』できます。燃費もいいので、ガソリン代も安く抑えられます」 【4】投資より貯蓄で備えよう 「『投資信託なら安心』という宣伝をよく見かけます。でも、絶対安心な投資商品などはありません。それに、安心感をうたう投資商品は、利回りの低いものが多く、手数料などを差し引くと、本当に利益が出るのか疑わしいものも多いのです。40代、50代はもう失敗できません。投資より、コツコツ貯蓄で確実にためましょう」 【5】健康第一で長く働こう 「自営業の方が『退職金がない』『国民年金だけでは暮らせない』と嘆く気持ちはよくわかります。でも逆に、定年退職がなく、現役で長く働けることは大きなメリットだと思います。会社員の方も、健康に注意して長く働きましょう」 家計の見直しは、場合によってはライフスタイルを変える必要も。そのため、何より大切なことは家族で話し合うこと。皆で家計の健全化計画を立て、一致団結して“借金減らして現金増やせ”にまい進しよう!
2018年02月09日「公的年金の受け取り開始年齢について、70歳を超えてからも可能とする案を、政府が検討しているようです。現行の制度では、年金は原則65歳からの支給です。しかし、前倒しして60歳から受け取ることも、最長で70歳からに遅らせることもできます」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。65歳より早くもらうのが「繰り上げ」で、1カ月早めるごとに、年金は0.5%減額される。反対に、65歳より遅くもらうのが『繰り下げ』で、1カ月遅らせるごとに0.7%上乗せになる。荻原さんが解説してくれた。 「今、政府が検討しているのは、受給開始が70歳を超えても可能となるよう、選択の幅を広げることです。しかし受け取る側としては、受給を遅らせると、もらえない期間が長くなる一方、上乗せ分で得するために、より長生きしなければなりません。ある意味では、自分の寿命をめぐっての“賭け”ですから、特典である上乗せ率を今より引き上げないと、繰り下げを選ぶ人は少ないでしょう」(荻原さん・以下同) 政府も、70歳を超えた年齢での受給を選択した場合、上乗せ率を引き上げる方針だ。ただし、まだ具体的な年齢は決まっていない。 「仮に75歳とし、上乗せ率を引き上げた場合を考えてみましょう。65~70歳は現行どおりの上乗せ率0.7%で、70~75歳の上乗せ率を0.8%に引き上げたとします(パターンA)。すると、75歳からに繰り下げた場合の年金は90%アップ。65歳からの受給で、月額10万円とした場合、75歳からに繰り下げると、月19万円になる計算です」 パターンAの場合、長生きすると得になり、早く亡くなると損になる「損益分岐点」は86.1歳。これを超えて長生きすると得になる。 「ただし、特に男性で86.1歳より長生きする自信のある方は、どれくらいいるでしょうか。パターンAを選ぶ方は少ないと思われます。ではさらに、上乗せ率を上げてみましょう。65~70歳までは同じ0.7%で、70~75歳を0.9%とします(パターンB)。この場合、75歳からの年金は96%アップです。ただ私は、そもそも75歳からを選択する人は、あまり多くないのではと思います」 高齢となっても健康上の問題がなく、日常生活を制限なく過ごせる期間を「健康寿命」という。男性が71.19歳で女性が74.21歳(’13年・厚生労働省)だ。 「つまり、受給年齢75歳とは、男女とも健康寿命を超えてから。たとえ多めに年金をもらっても、楽しく使えないのでは、意味が薄れてしまうのではないでしょうか。しかし、年金財政の悪化を食い止めたい政府としては、受給開始年齢自体を、現行の65歳から67、68歳へと引き上げたい思惑があるのでしょう。今回の選択制の検討は、その布石ではないかと思います。今後の政府の動きには、ますます注意が必要です」
2018年02月02日「公的年金の受け取り開始年齢について、70歳を超えてからも可能とする案を、政府が検討しているようです。現行の制度では、年金は原則65歳からの支給です。しかし、前倒しして60歳から受け取ることも、最長で70歳からに遅らせることもできます」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。65歳より早くもらうのが「繰り上げ」で、1カ月早めるごとに、年金は0.5%減額される。反対に、65歳より遅くもらうのが『繰り下げ』で、1カ月遅らせるごとに0.7%上乗せになる。荻原さんが解説してくれた。 「たとえば、現行制度で70歳からの受給に繰り下げたとします。すると、65歳から70歳の5年間は年金がもらえませんが、70歳からの受給額は、上乗せ0.7%×60カ月(5年)=42%アップになります。このように受給開始を繰り下げた場合、上乗せ金額と、もらえない期間の金額を比べて、何歳まで生きれば特になるのか、試算してみましょう」(荻原さん・以下同) Pさんの年金は、原則どおり65歳からの受給で、月額10万円とする。これを70歳からに繰り下げると、5年分の10万円×60カ月=600万円はもらえない。だが、70歳以降は10万円×42%=4万2,000円が上乗せされ、毎月14万2,000円を受け取れる」 「もらえなかった600万円を、上乗せ分で回収するには、600万円÷4万2,000円=142.9カ月=11.9年かかります。つまり70歳からの受給に繰り下げた場合、Pさんは81.9歳より長く生きると得、早く亡くなると損になります。この損得の分かれ目を『損益分岐点』といいます」 現在、平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳(厚生労働省)だ。 「これを参考に、先ほどの損益分岐点と、自分の健康状態から「私なら損益分岐点より長生きできるはず!」と思える方が、繰り下げを選ぶことになります」
2018年02月02日「高齢ドライバーによる事故が後を絶ちません。今月9日にも、前橋市で85歳男性の運転する車に、女子高生2人がはねられ重体になるという痛ましい事故がありました。実は、交通事故による死者数自体は減っています。昨年は3,694人と、統計データのある’48年以降で、最少記録を更新しました。しかし、昨年1月から11月までに死亡事故を起こしたドライバーを年齢別にみると、65歳以上が約3割を占めます。しかも、高齢ドライバーの割合は、年々増加傾向にあるのです(警察庁)」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。「うちの親は大丈夫かしら」と心配な人も多いのでは?家族が免許を自主返納するよう勧めても、それに応じない高齢者も多く、悩みの種だという声もよく聞く。そんな免許返納に抵抗のある人も、これなら受け入れやすいかも。荻原さんが高齢者の運転を見守る保険を解説してくれた。 「三井住友海上の『GK見守るクルマの保険』は、通信機能を持つ車載器と、スマホの専用アプリを用いて保険会社とデータをやりとりし、ドライバーの運転状況を見守るというものです。たとえば、急なハンドル操作や車のふらつき、また高速道路での逆走などがあれば、『逆走していませんか』などと警告します。事故の衝撃を感知したときは、保険会社からドライバーに電話が入り、安否確認と事故の初期対応などをサポートします。アラート情報や、運転を100点満点で評価した毎月のレポートは、本人だけでなく見守る側にも送られます。特に、親と離れて暮らす子ども世代には、親のふだんの運転状況がわかるので、安心できるのではないでしょうか。自動車保険の特約として付帯しますので、特約料は月300円。年払いだと、3,480円が保険料に上乗せされます」(荻原さん・以下同) ほかにも、同様の見守り自動車保険がある。 「損保ジャパン日本興亜の『DRIVING!』は、専用のドライブレコーダーを用います。ドライブレコーダーが運転データを記録し、車間距離が短くなるなど危険を察知すると、アラート音で警告します。事故の際は、自動的に保険会社に通報し、警備会社が駆け付けます。ドライブレコーダーには画像が記録されているので、証拠としても活用できます。特約料は、月850円。年払いだと9,720円です」 政府も、高齢ドライバーの交通事故削減に向けた取り組みを始めている。すでに昨年3月から、運転免許を更新する75歳以上の人への認知症テストを強化した。さらに「80歳以上のドライバーによる交通事故の死亡者数を、’20年には200人以下にする」という目標を立て、5年ごとに見直される「高齢社会対策大綱」のなかに盛り込む方針を固めた。’16年の死亡者数は266人。約25%の削減を目指す。 「交通事故は、被害者はもちろんですが、加害者とその家族の人生も変えてしまいます。心配だと思いますが、いきなり免許返納を勧めるより、今回紹介した保険への加入や、運転レポートなどをもとに、冷静に話し合うほうが賢明かもしれません」
2018年01月26日「昨年末、みずほ・三井住友・三菱東京UFJの3メガ銀行が『口座維持手数料』の導入を検討中、との報道がありました。口座維持手数料とは、預貯金口座を開設しお金を預けておくだけでかかる手数料です。今は超低金利のため、3メガ銀行の普通預金に100万円を1年預けても、利息はわずか10円(税引き前)です。口座維持手数料の金額によっては、『銀行に預けるほど、お金が目減りしてしまう』という事態にもなりかねません」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。そもそも銀行は、預金者からお金を集め、そのお金を企業などに融資して収益を得ている。 「しかし近年、企業は利益の一部を内部留保として蓄積しています。国内の企業全体の内部留保は、アベノミクスが始まってからの5年間で約100兆円増え、’16年度には400兆円を超えました(’17年9月・財務省)。それだけ企業に蓄財があれば、銀行から融資を受ける必要はないでしょう。こうして銀行は、貸出先がない状況に陥り、預金者から集めたお金を、日銀の当座預金に“ブタ積み”と揶揄されるほど預け続けてきました。その状況を変えるため、’16年に日銀は、銀行が日銀に預けている当座預金に『マイナス金利』を導入しました。しかし、それでも日銀への預金は増えていて、貸出先、運用先がない状況は深刻です」 窮地に立たされた銀行が収益を上げる手段として、3メガ銀行が検討する口座維持手数料は、海外では一般的だが、日本では、銀行は公共性が高いものとの認識が強く、導入には強い反発が予想される。 「’18年度中の結論を目指すようで、実際に導入されるかどうかはわかりません。ですが、私たちは導入を前提に、準備を始めておきましょう」 そこで、荻原さんが口座維持手数料導入前にすべきことを解説してくれた。 「まずは、今ある口座の整理です。子どもの学校関連で使っていたものや、引っ越して使わなくなった口座などはありませんか?すべての口座をリストアップしたら、使っていない口座は解約しましょう。また、使ってはいるが、解約しても困らない口座については、口座維持手数料の導入が決まったらどうするか、対策を考えておきましょう。こうして利用口座をシンプルにまとめると、家計も管理しやすくなります。手数料の引き上げは銀行の苦しい経営状況の表れです。厳しいところから統合・合併などの再編が進み、大幅なリストラがあるかもしれません。大手銀行は安泰という時代は過ぎました。今後も注意深く見守っていきたいものです」
2018年01月19日’18年は、税や社会保険などの負担がさらに増す予定。あまりの負担増に、お先真っ暗な気分の人も多いのではないだろうか。実は、’19年以降にもすでに、いくつかの負担増が決まっている。’18年より大きな影響も与えるものもある。そこで、経済ジャーナリストの荻原博子さんといっしょに、それらを整理していこう。 「いちばん影響が大きいのは、’19年10月に予定される、消費税10%への引き上げです。’17年8月に安倍首相は『予定どおり、消費税増税を行う』と述べていますが、今後の経済状況を踏まえて、’18年中に判断すると思います。もし増税することになったら、家計的には相当厳しいといわざるをえません。なぜなら、給料がそれほど上がっていないからです。また消費税は、高所得者より低所得者にとって厳しい税金です。低所得者でも必ず支出する品目は、高所得者と大きく変わりません。収入が少ないほど負担率が高くなり、打撃が大きいのです」(荻原さん・以下同) 新しい税金も検討されている。 「1つ目は、国外に出る際にかかる『出国税』。名称は『国際観光旅客税』に変更することを検討中です。出国するたびに、1人1,000円徴収する予定です。観光資源の整備などに使うため、国は’19年1月からの実施を目指しています。2つ目は、『森林環境税』。個人住民税に上乗せする形で、年に1,000円を徴収する計画です。言葉どおり、森林環境の整備に使われます。ただ、同様の税金をすでに実施している市町村などもあるため、二重課税問題をどうクリアするのか、今後に注目しましょう」 また、次のような所得税改革が’20年から実施される見込みだ。 「まず、働く方全員が受けられる『基礎控除』を今の38万円から48万円に増やします。そのうえで、会社員の経費とされる『給与所得控除』を一律10万円減らします。また、給与所得控除の上限を、現在の年収1,000万円以上で最高200万円の控除から、引き上げる予定です。具体的には、年収850万円以上で最高195万円とする案が有力です」 さらに、年金収入の多い高齢者などの公的年金等控除も引き上げる。この結果、負担の増減は次のようになる。 【年収850万円以上の会社員・公務員】子育て・介護なし:増税子育て・介護あり:変わらず 【自営業者】所得2,400万円未満:減税所得2,400万円以上:増税 「高齢者については、年金収入1,000万円超の方と、年金収入が1,000万円以下でも年金以外の収入が1,000万円超の方は、増税となります。この所得税改革で、900億円の増税が見込まれるといいます。高所得者といっても、血税ですから、どんな使い方をするのか、今後も政府の動きに目を光らせましょう」
2018年01月01日「『高所得者の負担を増やす』というと大きな反発もなく、法律が成立することがよくあります。でも、法律は『小さく産んで大きく育てる』ものだと政治家たちは言います。つまり、抵抗の少ない高所得者から導入し、あとは少しずつ改正を重ねながら、中所得者へ、そして全体へと枠を広げていくのです。決して人ごとではないと、捉える目を持ちたいものです」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。最近の税や社会保険などの負担増の矛先は、高所得者に集中。特に’18年8月以降は、高所得者の高齢者の負担が一気に増える。しかし、これらの負担は、次第に国民全体に広がっていくのが通例だという。そんな、高所得者の負担増を荻原さんが解説。 「まずは介護保険です。’00年から始まった介護保険は、当初、一律1割負担で介護サービスを受けられるというものでした。国全体でかかった介護費用は、’00年には約3兆6,000億円でした。ところが、’14年には約10兆円を超えました。介護保険料も、当初は月2,911円でしたが、’14年には月5,000円を上回り、’25年には月8,000円を超えるとの予測もあります」 そこで’15年8月に介護サービスの2割負担が導入された。2割負担の対象は、年金収入等が280万円以上の人(単身で年金収入のみの場合・以下同)だった。 「それからわずか3年、’18年8月からは、3割負担が導入されます。年金収入等が344万円以上の方で、介護サービス受給者の約3%に当たります。ただ、3割負担になっても、高額介護サービス費制度で毎月の自己負担上限が決められています。今のところ、高所得者の方でも月4万4,400円を超える分は、申請すれば返金されますので、大きく負担が増えることはないでしょう」 8月には、医療費にかかる高額療養費制度も70歳以上の人の自己負担上限額の引き上げがある。 「医療費は、70~74歳までの方は原則2割負担、75歳以上の方は原則1割負担ですが、現役並みの所得があれば70歳を過ぎても3割負担です。高額療養費制度とは、病院などを受診して、負担割合に応じて支払った医療費の1カ月分の合計金額が一定水準を超えたと申請すれば、超えた分が返金される制度です。’18年8月以降は、病院の窓口で3割負担となっている現役並み所得の高齢者の負担上限が上がります。加えて、一般的な収入の高齢者が外来を利用する際にも負担が増えます」 また、現役世代の高所得者も負担が増えている。 「’18年1月から実施される配偶者控除・配偶者特別控除の引き上げでも、詳しく見ていくと、世帯主の年収が1,120万円を超えると控除額が減り、1,220万円を超えると控除がなくなります」 ’17年まで配偶者控除を受けていた世帯ではかなり負担が増える。 「8月には介護保険料の総報酬割が導入されます。これまで健康保険組合ごとに組合員の人数によって割り当てていた介護保険料を、組合員の給料も加味して介護保険料を決定する仕組み、つまり総報酬割に変えることです」 総報酬割が導入されると、給料が高い大企業の健康保険組合の負担が重くなる。すなわち、これも高所得者の負担増に当たる。 「また、6月にある給与所得控除の改正は、それまで年収1,200万円超で最高230万円控除されていたものが、’18年からは住民税で、年収1,000万円超で200万円の控除と、縮小されます。控除が縮小されると、それだけ税金が増えるので、高所得者にとっては負担増ということになります」 ’18年度の税制改正大綱には、会社員の給与所得控除のさらなる減額や、高所得の高齢者には公的年金等控除の減額も盛り込まれると、先日決まったばかり。高所得者への負担増については、「お金持ちだから、それくらい負担して」と、問題視しない人が多いが、注意深く見守らなければいけないようだ。
2018年01月01日「’18年から、つみたてNISAの運用が始まります。NISAとは、少額投資非課税制度のこと。株や投資信託などで運用して得た利益には、通常、20.315%の税金がかかりますが、NISAなら非課税になります」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。’14年に始まったNISA制度。当初の非課税枠は年100万円だったが、’16年から年120万円に広がった。非課税での運用は最長5年間。’18年1月からは「つみたてNISA」の運用が始まる。そこで荻原さんが、つみたてNISAについて解説してくれた。 「’16年からは『ジュニアNISA(未成年少額投資非課税制度)』も始まりました。利用対象が未成年で、非課税枠が年80万円であること以外は、一般のNISAとほとんど同じ制度設計です。しかし、ジュニアNISAには、利用者が18歳になるまでは非課税での引き出しが原則できないなど、使いづらい面があります。そのため、一般NISAは約1,090万口座開設されていますが、ジュニアNISAは約23万口座にとどまっています(’17年6月時点・金融庁調べ)」 確かに、一般NISAは国民の約1割の1,000万口座以上開設されており、快調に進んでいるように見える。 「しかし、金融庁の調査で、口座開設者の半数以上が60歳以上で、若い人はあまり活用していないことがわかりました。さらに、口座を開いたものの、運用はしていない未活用口座が半数以上を占めていると指摘されました(’16年6月末時点)。そこで新たに考えられたのが、’18年から始まるつみたてNISAです。若い人でも投資しやすい少額の積立て方式で、おもに投資信託を購入します。そのため、非課税枠は年40万円までですが、最長20年という長期間の非課税投資を可能にしました」 特筆すべきは、つみたてNISAの対象となる投資商品。 「投資信託か、あるいは上場投資信託(ETF)なのですが、金融庁が決めた要件を満たすものだけに限定されています。すなわち、1・投資による利益が増えにくい『毎月分配型』ではない。2・投資商品を買うときに必要な販売手数料が無料。3・投資商品を保有している期間にかかる信託報酬が一定水準以下の安いもの、などです」 現在は投資信託の128本と、ETFの3本が対象商品だ(’17年12月6日・金融庁)。 「ところが、金融庁の要件をクリアしたものを、『金融庁のお墨付き』などと宣伝する向きもあり、私は危惧しています。金融庁は手数料の安さなどは判定しましたが、リスクについては別問題です。また『投資信託なら安心』というのも間違いです。投資である以上、リスクはつきもの。つみたてNISAを始めるのなら、運用成績に十分注意を払うことが必要です。投資は自己責任と覚悟してください」
2017年12月28日「’18年から、値上げが予定されている商品はいくつかあります。3月、4月は仕事上での転勤や異動、お子さんの進学・進級などがあり、いつも以上に支出の増える時期です。財布のひもは固めに締めていきましょう」 こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。’18年に値上げが予定されている商品。理由はさまざまだが、いまから値上げ予定の商品を知っておくことで、何らかの対策を打てることも。そこで、荻原さんが値上げ商品について解説してくれた。 「まず、1月は家庭用小麦粉です。4日出荷分から、日清フーズが1~3%、日本製粉が1~4%の値上げです。これに先立って、業務用は’17年12月20日出荷分から価格が上がっています。業務用小麦の値上がりは、パンやパスタ、うどんなど幅広い製品の値段を押し上げる可能性があるので、注意が必要です」 すでに、テーブルマークの冷凍食品(冷凍うどんやお好み焼き、たこ焼きなど)は、3月1日納品分から値上げを発表している。こうした動きが広がると、家計はますます厳しくなる。 「3月には、ゆうパックが平均12%値上げします。これは、’17年に注目されたヤマト運輸の配達員の時間外労働問題に端を発しています。深刻な労働環境を改善するため、ヤマト運輸は’17年10月1日から、佐川急便は11月21日から値上げを断行。ゆうパックの値上げで、3社の料金はほぼ同じ水準になります。しかし佐川急便だけは、縦・横・奥行きの合計が80センチ未満の荷物の料金を据え置きました。このため、小さなサイズは、佐川急便がお得です」 また各社、値上げと同時に新しい割引制度を導入している。「よく荷物を送る方は研究してみるとよいでしょう」と荻原さん。 「さらに3月には、アサヒビールが業務用の瓶ビールや樽詰めビールを約10%値上げします。この動きに他社も追随して、サントリーをはじめ、キリンやサッポロビールも4月には値上げするようです。ビールは、’17年6月に施行された「改正酒税法」によって安売りが規制され、店頭価格が上がり、売り上げが落ち込みました。加えて、物流費の値上げなども、ビール価格に影響しています」 ビールは値上げに踏み切れば売り上げが落ちるとわかっていても、値上げせざるをえない厳しい局面のようだ。
2017年12月27日「環境省は今月から、省エネを進めるための実証実験を始めました。もとになっているのは、今年、ノーベル経済学賞を受賞した『ナッジ』と呼ばれる理論です。ナッジとは“軽くひじでつつく”“そっと後押しする”という意味で、心理学を利用した『行動経済学』の手法のひとつだといいます。たとえば、レストランのメニューに“店長のおすすめ”と書くのも、ナッジの一例です。書く前と値段や味は変わらなくても、“おすすめ”と後押しするだけで、売り上げが伸びるそうです」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。先の実証実験は、無作為に30万世帯を選び、月に1回、省エネレポートを送るというもの。家族構成がよく似た家庭と比較して「電気使用量が○%多い」などと記載する。ここにナッジが活用されているという。 「実験の目的は、こうした省エネレポートを見て、どれだけの方が実際に省エネ行動を起こすかを検証すること。実証実験は来年3月まで続きます。どんな結果が出るのか、注目したいと思います」 国は、おもに環境問題の観点から、省エネを推進している。私たちにとっては、家計を考えるうえでも、省エネは重要な課題だ。 「特に今季は、灯油が高騰しています。全国平均価格は1リットルあたり83.8円と12週連続で値上がり中です(’17年12月6日・資源エネルギー庁発表)。18リットルだと1,500円超になり、寒冷地など灯油をよく使う地域では、大きな痛手かもしれません」 そこで、荻原さんが冬こそ取り組みたい省エネ対策を紹介。 「まず、部屋全体を暖める暖房は、設定温度を少し下げることで、電気や灯油を節約することができます。たとえば外気温が6度の日に、エアコンの設定温度を21度から20度へと1度下げると、ひと冬で1,170円の節約になります(資源エネルギー庁による試算・以下同)。同様の条件で灯油のファンヒーターを使った場合は、ひと冬で10.22リットル、856円の節約になります。加えて、部屋全体を暖めることばかり考えず、必要な範囲だけ、個別に、できるだけ狭い範囲を暖めるとよいでしょう」 たとえば、床暖房やホットカーペットは座っている人がいる半分だけつける。ふだんは開け放している扉をできるだけ閉めて、狭い空間にする、などが効果的だそう。 「また、開放的なホットカーペットよりも、布団で閉鎖空間を作るコタツのほうが、消費電力も少なく、節電につながります。最近は、“おひとりさま用家電”が増えて『1人用コタツ』も人気です。1辺30センチほどの箱型にヒーターが入っていて、毛布などを掛けて使います。電気料金は1時間当たり約1.2円と、かなり安上がり。足元さえ温かくなれば、部屋の設定温度をもう1度下げることもできると思います」 ’16年4月に電力小売りが、翌’17年4月にはガス小売りが自由化された。当時は新電力の登場や、携帯電話料金などとのセットプランが大きな話題に。電気やガスを新会社や適切なプランへ切り替えれば、光熱費が10%程度安くなることに注目が集まった。 「しかし、実際に電力会社を見直したのは634万件、全体の10.1%にとどまります(’17年5月時点・経済産業省)。ガスはさらに少なく、約48万件(’17年10月末日の申込件数・資源エネルギー庁)でした。切り替えが進んでいるとは決して言えない状況です。お正月には、家族が集まる機会も多いでしょう。そんなときに、省エネや電気、ガスの切り替えについても話し合ってみてください」
2017年12月16日「今年10月の衆議院議員選挙で、自民党は公約として『教育の無償化』を掲げました。政策集で、無償化の対象を3〜5歳の『すべての子供たち』と明記しています。選挙では自民党が圧勝。その後、公約実現に向けて議論が続いていましたが、結局、さまざまな条件が付いた『一部無償化』に落ち着くようです」 こう語るのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。さまざまな条件が付いた、教育の「一部無償化」とはどんな制度なのか。荻原さんが解説してくれた。 「まず、公約の本命である3〜5歳は『全員無償化』ではなく、『原則無償化』という玉虫色の決着となりました。認可保育園は無償ですが、認可外保育園だと補助はあるものの自己負担が必要です。今のところ、認可外保育園に通っている家庭には、認可保育園の平均保育料(月3万5,000円)まで補助し、それを超える分を自己負担とする案が有力です」(荻原さん・以下同) しかし、認可外保育園にはベビーホテルなどさまざまな施設が含まれている。どの施設を補助対象とするかはまだ決まっていない。 「補助対象が増えれば、1件当たりの補助金が減り、自己負担が増えることも考えられます。結論は、来年夏まで先延ばしとなりました。注視しておきましょう。そもそもほとんどの親が、設備なども充実している認可保育園に入れたいと思っています。でも、認可保育園には空きがないため、仕方なく認可外保育園に通わせている。そういう方に、『認可外』を理由に自己負担を求めても納得できないと思います。また幼稚園も、公立なら全員無料ですが、私立幼稚園は公定価格(月2万5,700円)まで補助し、上回る分は自己負担となります。これらの施策が、『3〜5歳の原則無償化』と呼べるのでしょうか。詭弁と批判されても致し方ないと思います」 加えて、2歳以下と、大学など高等教育については、親の収入による線引きが。親の収入が低く住民税が非課税である家庭に限って、無償化が進められる。 「2歳以下の保育園は、住民税非課税世帯では無償化。ですが、ここでも認可か認可外かの違いがあり、認可外保育園に通わせている家庭には自己負担が必要です。大学の授業料は、住民税非課税世帯は免除し、生活費として返済不要の給付型奨学金を支給します。ただ中所得以上の大多数の家庭には、教育費が重くのしかかったまま、負担は減りません」 さらに、今、大学授業料の「出世払い方式」が検討されている。 「これは、学費を国が本人に貸し付け、本人が就職し、年収250万円など一定額を超える収入が稼げるようになったら返済させるというものです。無償化というスローガンだけ作って、内実は本人に返済させる方法を考えているのかと、憤りさえ覚えます。11月末になって、先の選挙公約は『全面無償化』ではなく、『真に必要な家庭の無償化』だったとの解釈も出てきました。これでは票集めのための“過大広告”ではないかと疑いたくなります」
2017年12月07日もうすぐ12月。ボーナスを心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。今回は、まとまった資金を上手に増やすための、お得な定期預金をご紹介します」 こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。待ちに待ったボーナスの季節。荻原さんは、ボーナスを預金するなら、0.1%でもお得な銀行に預けることを勧める。では、お得な定期預金にはどんなものがあるのか。荻原さんが解説してくれた。 「まずは静岡銀行インターネット支店の『ウルトラ金利』。10万円以上の預け入れで、6カ月ものの金利は0.3%、1年ものは0.22%です。一般的な定期預金金利0.01%と比べると、かなり高金利です。また、楽天銀行の円定期預金は今、『冬のボーナスキャンペーン』を行っています。来年1月15日までに1000円以上預けると、1年ものの金利が0.12%になります」(荻原さん・以下同) 高金利商品は、実店舗を持たないインターネット専業銀行や、地方銀行などのインターネット支店でよく実施されている。全国どこからでも口座開設できるメリットがあるが、一方で「インターネットは苦手」という人もいる。 「そんな方にも扱いやすいのは、大阪シティ信用金庫の『夢ふくらむ支店』です。すべての取引を電話で行い、引き出し金額などは電話のプッシュボタンで操作します。夢ふくらむ支店のプラス金利つき定期預金『夢プレミアム』は、1年ものの金利が、店頭金利(現在は0.01%)+0.35%です。預け入れは100万円~と少しハードルが高いのですが、1年を過ぎ継続更新しても、同じ優遇金利のままです。高金利が長く続くメリットは大きいと思います」 反対に、「注意してほしいのは、1%や0.5%といった高金利を打ち出す定期預金です」と荻原さん。 「よく見ると『3カ月もの』と書かれていませんか。たとえば、100万円預けて金利が1%なら、利息は1万円と考えがちですが、実はそうではありません。3カ月ものの場合、1%の金利が適用されるのは最初の3カ月だけ。3カ月間の利息は約2500円で、その後は通常の定期預金金利に戻ります。高金利でも短期間だとお得にならないことも。自分で電卓をたたいて、確かめてください」 また、飛びぬけた高金利商品には、「定期預金+外貨預金セット」などもある。 「定期預金の高金利に釣られると、手数料などがかさむ投資商品を買ってしまうことになりかねません。高金利商品には何か“からくり”がないか、見抜く目を持ちましょう」 いっぽうで、金利ではなくプレゼントをつけることで、お得感を演出する定期預金も。 「スルガ銀行の『ジャンボ宝くじ付き定期預金』は、たとえば100万円を預け入れると、5枚の宝くじが年2回送られてきます。’99年の取り扱い開始以来、1億円以上の当選者が11人。これまでに10万円以上当選した方は、約1,500人にのぼります。リスクなしで一攫千金の夢を見たいという方には最適だと思います」
2017年12月01日「最近、『宅配買取りサービス』によるトラブルが増えていると、国民生活センターが発表しました(’17年11月)。これは、不用品などを宅配便で買取り業者に送り、査定して、買い取ってもらうサービスです。買い取りの申込みや査定額の連絡などは、インターネットで行います。相談には、『“ゲーム機本体1万円まで”と宣伝されていたが、実際は数百円だった』など、買取り価格の目安と実際がかけ離れていて納得できないというものが多いです。また『不用品を送った後、連絡がつかない』という悪質なケースもあります」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。荻原さんによると、こうしたトラブルは’11年から年々増加。今年度の相談は、昨年度の同じ時期の約2倍となっているという。とはいえ、これから年末にかけて、不用品を整理したい人も多いのでは?そこで、悪質業者を避け、多少のお小遣いもゲットできる、安心でお得なサービスを荻原さんが教えてくれた。 整理したい不用品といえば、まずは洋服だ。 「『◯I◯I』のロゴでおなじみの『マルイ』では、『マルイの下取り』を行っています。洋服や靴など下取り1点につき200円の割引券がもらえ、2,000円以上の買い物に使えます。開催時期は店舗によりますが、今の時期は多くの店舗で実施中なので、要チェックです。マルイは他社商品でも下取りしてくれますが、新品か、新品に近い物が条件です」(荻原さん・以下同) 着古した洋服の場合は、ジーンズセレクトショップ「ライトオン」の「リユースプロジェクト」がおすすめ。 「汚れがない限り何でもOK。好きな袋に洋服を詰めて持って行けば、1袋につき1枚、500円クーポンがもらえ、5,000円以上の買い物で使えます」 また、「終活」を考えて、使わない宝飾品などを処分したい人も増えているようだ。しかし宝飾品は、人気のあるブランド品以外、中古品として売れるかの見極めが難しく、新品価格の1〜2割相当でしか買い取ってもらえないことも。 「そこで、東京のジュエリー専門店「ジュエリーアドバイザーアンドギャラリー」は宝飾品の「仲介」を始めました。鑑定後に1年間預かり、店舗やインターネットで、適正価格での販売を目指すようです。宝飾品が売れたら、手数料を引いた販売価格が持ち主のものです。買い取りより、高値が期待できるでしょう」 処分に困るものの1つに、古い携帯電話やパソコンなどがある。内部に残ったデータなどが心配で、簡単には捨てられない。 「そんな小型家電を集めて金属を抽出し、’20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、『都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト』が進行しています。データ消去ソフトの提供もあります。お小遣いにはなりませんが、オリンピックへの楽しみを作ってみては」 この時期は不用品を整理して、家も気分もスッキリ、そして小さなご褒美ももらえる、お得な処分法をぜひ!
2017年11月24日「来年から、配偶者控除・配偶者特別控除が改定されます。配偶者控除とは、夫婦どちらかの年収が103万円以下である場合、世帯主の年収から38万円が控除され、そのぶん税金が軽くなる制度です。改定後は『“103万円の壁”がなくなり、新たに“150万円の壁”が現れる』といわれることが多いですが、社会保険加入の問題もあり、それほど単純ではありません」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。来年から、満額控除が受けられる年収上限が103万円から150万円に。その変更点は、『最大控除は、妻の年収が105万円未満→150万円以下に』、『控除ゼロは、妻の年収が141万円以上→201万円超に』、『夫の年収が1,220万円超だと、配偶者控除がゼロに』の3つ。損をしないために、主婦がどのように働くべきかをタイプ別に荻原さんが解説してくれた。 【タイプA】夫の年収が1,120万円超の場合 「夫が高所得の場合、来年から配偶者控除がゼロになる家庭もあり、負担が増えます。たとえば控除額が38万円から、来年以降ゼロになる場合は、所得税と住民税を合わせて約16万円増税になります」(荻原さん・以下同) 【タイプB】夫の年収が1,120万円以下、自身が職場の社会保険に加入(第2号被保険者)の場合 「収入を増やせば、手取りも増えます。思い切り働きましょう。たとえば、妻の年収が150万円、夫の年収が600万円の場合、これまでは配偶者控除・配偶者特別控除の適用外でした。来年は38万円が控除され、夫は7万円の減税となります」 【タイプC】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以上の大企業と一部の中小企業(労使が合意した中小企業は職場の社会保険に加入可能)、長時間は働けない場合 「育児や介護などで長時間は働けないという方は、夫の社会保険に扶養のまま、働くのがいいでしょう。年収106万円を超えないようにご注意を。税制上”103万円の壁”はもうありませんが、家族手当を妻の年収103万円以下で支給する企業はあります。夫の勤め先に確認しましょう」 【タイプD】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以上の大企業と一部の中小企業(労使が合意した中小企業は職場の社会保険に加入可能)、もっと稼ぎたい場合 「社会保険に加入して、しっかり働きましょう。ただ、保険料や税金を考えて、年収125万円を目指すといいでしょう。来年以降は、妻の年収が201万円以下だと夫の配偶者特別控除が増えるので、夫の手取りも増えます」 【タイプE】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以下の企業、収入は控えめでいい場合 「夫の社会保険扶養のまま働き、年収130万円を超えないように注意しましょう。また、タイプCの方と同様、夫の勤め先の家族手当規定を確認してください。年収103万円以下の妻に家族手当を支給する企業だと、103万円を超えないほうが得になるケースも」 【タイプF】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以下の企業、ガンガン働きたい場合 「国民健康保険に加入し、年収の目標は160万円です(社会保険に加入できる企業もあります)。タイプDの方と同様、妻の年収が201万円以下だと、配偶者特別控除が増えるので、夫の手取りが増えます」 【タイプG】夫の年収が1,120万円以下、国民健康保険&国民年金に加入(第1号被保険者)の場合 「タイプGの方には”壁”はありません。もっと働いて収入を増やしましょう。できれば、社会保険を備えた企業に転職すると、保険料負担も減り、保障も手厚くなるのでおすすめです」 このように、今後の働き方は総合的な判断が必要となってくる。 「これらの改定に加え、今後はさらに納税者全員にかかる『基礎控除』や、会社員の経費といわれる『給与所得控除』を見直すようです。家計に直結する問題ですから、注視しておきましょう」
2017年11月17日「来年から、配偶者控除・配偶者特別控除が改定されます。配偶者控除とは、夫婦どちらかの年収が103万円以下である場合、世帯主の年収から38万円が控除され、そのぶん税金が軽くなる制度です。改定後は『“103万円の壁”がなくなり、新たに“150万円の壁”が現れる』といわれることが多いですが、社会保険加入の問題もあり、それほど単純ではありません」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。来年から、満額控除が受けられる年収上限が103万円から150万円に。その変更点を、荻原さんが解説してくれた(夫がおもな稼ぎ手で、妻がパートで働くことを想定し説明。男女が入れ替わっても同様)。 【1】最大控除は、妻の年収が105万円未満→150万円以下に 「配偶者控除・配偶者特別控除では、最大38万円が夫の収入から控除されます。これまでは、妻が年収103万円以下だと配偶者控除が適用され、103万円を超えても105万円未満なら、配偶者特別控除によって最大の38万円が控除されていました。来年からは、妻の年収が150万円以下なら、夫は38万円の控除が受けられます」(荻原さん・以下同) 【2】控除ゼロは、妻の年収が141万円以上→201万円超に 「これまでは、妻の年収が103万円を超えると控除額が段階的に引き下げられ、年収が141万円以上でゼロになりました。来年からは、妻の年収が150万円を超えると控除額の引き下げが始まり、201万円を超えるとゼロになります」 【3】夫の年収が1,220万円超だと、配偶者控除がゼロに 「これまでは夫の年収が1,220万円以上かつ妻が年収103万円を超えた場合、配偶者特別控除は適用外でした。来年からは、年収が1,220万円超の夫は、妻の収入がゼロでも配偶者控除を受けられなくなります。つまり、高所得者は負担が増えるということです。また、夫の年収が1,120万円を超えると、配偶者特別控除が減額されます」 これら配偶者控除・配偶者特別控除は、夫の税金を減らすものだが、妻の収入が103万円を超えると、妻自身にも税金がかかる。 「とはいえ、税金はそこまで負担になる額ではありません。問題は“103万円の壁”と呼ばれる社会保険です。以前から年収が130万円以上になると、国民健康保険(以下・国保)・国民年金から職場の社会保険への加入が義務だった。 さらに’16年10月からは、従業員501人以上の企業で働く年収106万円以上の方に、職場の社会保険加入が義務化。“106万円の壁”も現れたのです。特に会社員の妻は、夫の社会保険の扶養であれば、保険料負担がありません。年収が106万円を超え職場の社会保険に加入すると年約16万円〜、130万円を超え国保・国民年金加入なら年約27万円〜の保険料がかかり、多く働いても加入前より手取りが減る“働き損”が発生します」
2017年11月17日「政府は、『出国税』という新しい税金の導入を検討中です。出国税とは、日本を出て海外に行く際にかかる税金。日本を訪れた外国人や、日本人の海外旅行者なども含めた出国者全員から、1,000円ずつ徴収する案が有力です」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。昨年1年間の訪日外国人は約2,404万人(日本政府観光局調べ)。日本人の出国数、約1,712万人(法務省調べ)と合わせて、4,000万人以上の人から1,000円ずつ徴収すると、400億円を超える新たな税収が生まれる。 「今後、訪日客が増えれば、さらに大きな税収減になると期待する声があります。いっぽうで観光客誘致に水を差すとの反対意見もありますが、政府は来年度の税制改正大綱に盛り込み、’19年度からの実施を目指しています」(荻原さん・以下同) また、先の衆議院議員選挙では、希望の党が大企業の「内部留保に課税」する政策を掲げ、物議を醸した。 「内部留保とは、企業が得た利益のうち、企業外へ分配せずに企業内に留保した分です。政策自体には批判も多く、希望の党も惨敗したので、実現の見込みはほぼないでしょう。しかし、国としての借金が1,000兆円を超え(’17年6月末・財務省)、財政難が叫ばれるなかで、税金を新設するのは、『取りやすいところから取ろう』というもくろみが透けて見えるように思います」 ほかにも、政府は“取りやすいところ”の代表ともいえる「たばこ税」の引き上げを検討している。 「特に、最近人気が高まっている『加熱式たばこ』は、通常の『紙巻きたばこ』より税率が低いため、増税の標的になっています。これも来年度の税制改正大綱に盛り込み、早期に実施したい模様です」 さらに、’20年以降の導入を目指す「森林環境税」の新設も議論されている。 「目的は、地球温暖化対策として森林整備の財源にすることで、年間数百円を住民税に上乗せして徴収するといいます。しかし、すでに自治体独自の税金として、高知県など37府県と横浜市には、同様の税金が導入されています。このままでは二重課税になる恐れがあります。なにより、たとえ少額でも、国民が新税をきちんと理解しないまま、『いつの間にか、よくわからない税金が徴収されている』事態は避けねばなりません。活発な議論を重ね、国民にわかりやすく説明してほしいと思います」 これから年末にかけて、税制改正議論が始まる。 「私たちは、きびしい目で見守り、無茶な増税や突然の新税には、『断固、反対!』の声を上げたいものです」
2017年11月10日「最近はうつ病などで、やむなく休業する人も増加中です。そんな背景もあり、“働けない”リスクに備える『所得補償保険(就業不能保険ともいう)』が注目されています。所得補償保険とは、入院や自宅療法などで働けないとき、加入時に設定した保険金が毎月支払われるというものです」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。病気やケガなどで働けず収入が減っても、生活費や住宅ローン、子どもの教育費などは必要だ。ところが、これらの備えとなる保険商品は、これまで手薄だった。 また、以前より入院できる期間が短くなり、外来で治療を受けながら自宅療法する人が増えている。しかし自宅療法では、「医療保険」からの保険金給付はほとんど望めない。そのため、2年ほど前から、保険各社が所得補償保険を相次ぎ発売している。 ライフネット生命の就業不能保険「働く人への保険2」を例に、どんな保険かを荻原さんが解説してくれた。 「Aさん(40歳・男性)は、所得補償保険を検討しています。年収が約480万円。月収に換算すると約40万円なので、『保険金が毎月30万円あると安心だ』と思っていました。しかし、所得補償保険の保険金額には、月収の60%程度という上限があります。Aさんの場合、最大24万円ですが、5万円単位でしか設定できないため、20万円でした」(荻原さん・以下同) 保険期間は、定年退職する60歳までを選択した。 「Aさんが実際に働けなくなったとき、病気などの発症から一定期間は免責期間のため、保険金は受け取れません。免責期間を長くすると、保険料は安く抑えられます。Aさんは60日の免責期間を選んだため、月々の保険料は5,716円でした」 このように、加入時の年齢や保険金額、免責期間などによって、保険料は変わる。 「保険会社によって規定がさまざまで複雑ですが、総じて言えるのは“働けない”認定が厳しいこと。自宅で内職のような軽作業ができると『働けるから、保険金は打ち切り』となるものもあります」 保険の商品数や種類が増え、注目度が上がると不安があおられる。保険での備えは必要なのだろうか。そこで、荻原さんが公的支援や保険の上手な活用法を教えてくれた。 【1】まずは公的支援を確認 「会社員の場合、病気などで休業しても、『傷病手当金』が給料の約3分の2、最長1年半、支給されます。その後もまだ重篤な場合は、障害年金を申請できます。障害年金はがんや精神疾患なども、支給対象に含まれます。ただし、自営業など国民健康保険の方は、傷病手当金がありません。貯蓄や保険など、独自の対策が必要です」 【2】加入済みの保険内容を確認 「自分の保険の特約などを、きちんと覚えていない方が多いです。再度確認しましょう。たとえば病気になった際、医療保険から多額の一時金が出るなら、それで生活を支えることもできるでしょう」 【3】支払い要件を確認する 「所得補償保険では、精神疾患を保険対象外とするものが多いです。働けないと認定される基準も千差万別。いろいろ比較してください」 【4】ほかの選択肢を探す 「働けないリスクへの備えは、保険だけではありません。たとえば、自営業者の方なら『小規模企業共済』に加入し、自分の退職金を積み立てて準備することもできます。病気などで廃業したら、その退職金を受け取って、生活費に充てる方法もあります」
2017年11月03日「最近、病院や介護事業所など、医療・福祉事業の倒産が増加しています。今年1〜9月には186件が倒産。昨年の同時期から20%増えています。これは介護保険法が施行された’00年以降、最多のペースです」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。また、昨年の介護事業の倒産は、一昨年より約42%増の108件と、過去最多を記録していた。今年も高止まりが続いており、2年連続100件超えの可能性も(東京商工リサーチ調べ)。その原因には3つが考えられるという。荻原さんが解説してくれた。 【1】「デイサービス」の事業所が乱立していたこと 「『デイサービス(通所介護)』は、利用者が事業所に通って介護を受けるものです。利用者宅で介護を行う『訪問介護』や、利用者が短期的に宿泊する『ショートステイ』と並んで、在宅介護を支える中心的サービスの1つです。事業として考えると、訪問介護はヘルパーの確保や管理がむずかしく、ショートステイは施設などに大きな初期投資が必要です。デイサービスは、比較的参入しやすいため、’15年には全国で約4万3,000カ所ありました。競合が多いため、経営基盤の弱い事業所の倒産が、まだしばらく続くでしょう」(荻原さん・以下同) 【2】需要の少ない地域に介護施設を建設していたこと 「’14年、地方自治体などが運営する『特別養護老人ホーム(以下・特養)』は入所待ちが約52万4,000人と発表され、大きな反響を呼びました(厚生労働省調べ)。その結果、民間施設の『有料老人ホーム』が増加。また、要介護度の軽い高齢者向けの『サービス付き高齢者住宅』は、’11年の制度開始から6年余りで約22万戸と急増しました(高齢者住宅推進機構調べ)。ところが今年3月、特養の入居待ちは約36万6,000人と減少(厚生労働省調べ)。’15年から入所の条件を要介護3以上に引き上げたことに加え、需要の少ない地域にも特養を作っていたことが要因です。そうした地域の有料老人ホームなどの経営も、やはり厳しく、倒産が増加しています」 【3】介護報酬の引き下げ 「介護事業者の受け取る報酬は法律で決まっていて、3年ごとに改定されます。前回’15年の改定で、介護サービスの単価が4.48%引き下げられました。収入の減少が、倒産の一因といえるでしょう」 ’15年に、有識者でつくる「日本創成会議」が、首都圏では’25年に介護施設が約13万人分不足すると推計。荻原さんは将来の介護に備えるため、こう提案する。 「地方移住なども含めて、どんな介護を受けるのかは、元気なうちに、自分で決めておきたいものです。これから親を介護するという方は、ご本人の意見をよく聞いておきましょう。情報集めのためには、たとえば、高齢者の話し相手や特技を生かした『介護ボランティア』などを行い、実際にさまざまな施設に行ってみるといいと思います。そこで働く介護福祉士さんから、パンフレットや見学会だけではわからない生の情報が得られます」
2017年10月27日「今は“戦後2番目に長い景気拡大局面”だといわれます。景気の好不況を判断する指標のひとつ、『景気動向指数』(’17年8月)によると、’12年12月から57カ月間、景気拡大が続いています。’65年11月から57カ月続いた戦後2番目の『いざなぎ景気』と並ぶことが確実になりました」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。確かに、企業業績は好調だ。’16年度の企業全体の収益は約75兆円と、過去最高を更新(財務省)。給料もわずかながら増えている。’16年の平均月収は約31万円6,000円。前年より0.5%の上昇だ(厚生労働省)。 「こうしたニュースを見ると、『家計が厳しいのはわが家だけ?』と不安になる方もいるでしょう。しかし実際は、多くの方が『家計は厳しい』と感じており、好景気を実感している方は少数です。日銀の調査でも、暮らし向きに前年より『ゆとりが出てきた』と答えたのは、わずか7.3%でした(’17年9月)」 景気は本当によくなっているのか?荻原さんが解説してくれた。 「まず、給料ですが、前年より増えたのはボーナスがほとんどで、月給は0.2%しか増えていません。月給30万円のAさんは、毎月600円だけ増えた計算です。しかも、社会保険料が年々上がっています。先のAさんの厚生年金保険料は、’16年は’15年より月531円上がりました(10月分で比較)。健康保険料なども上がっていますので、給料が少し増えてもこれらで相殺されるか、マイナスになる場合もあるでしょう。’14年4月に消費税が上がりましたが、3%の増税分を補うほどの給料アップはありませんでした。そのため、世間には、『給料が上がっていない』感覚が広まっています」 冒頭で述べたように企業業績は好調だが、それでも、従業員の給料を大きく上げる企業は、あまりない。企業にとって、従業員はコストでしかないからだ。とすると、企業の利益はどうなっているのだろう? 「利益は、株主に還元されています。企業は、利益に応じた配当金などを、株主に分配しているのです。つまり、好景気の恩恵を受けているのは、株などの金融資産を大量に持つ、一部の富裕層だけです。ほか大多数の一般庶民には、厳しい状況が続いています。格差社会は現実のものであり、その格差はますます広がっています」
2017年10月20日来年からの「つみたてNISA」導入に向け、10月から専用口座の受付けが始まった。だが、「『つみたてNISA』って何?」という人も多いのでは?そこで、耳慣れない人のため、経済ジャーナリストの荻原博子さんがどんな制度なのか解説してくれた。 「まず、『NISA(少額投資非課税制度)』とは、’14年に始まった、投資での儲けが非課税になる制度です。株式や投資信託などの保有期間に受け取る配当金や分配金、また、売却した際の儲けなどに、通常20.315%の税金がかかるところ、NISAならゼロです」 20歳以上を対象とする現行のNISAは、年間最大120万円を、5年間投資できる。投資先は、株式や投資信託、リート(不動産投資信託)など、さまざまだ。 「これに対して、つみたてNISAの投資額は年間最大40万円。額は少なくても、非課税投資期間は20年と長期です。そもそも積立て投資とは、たとえば『毎月1日に1万円ずつ、A投資信託を買う』と決めると、あとは自動的に買い続けてくれる方法です。これをつみたてNISA口座で行うと、運用益が税金で減らされることなく次の運用に向かうので、利回りが向上しやすいといわれます。さらに、つみたてNISAは、投資先が金融庁の基準を満たした一部の投資信託などに限られていることも、特徴です。投資初心者向きだと国は推奨しています」 しかし、NISAで儲かったときのメリットはよく知られているが、損したときのデメリットはあまり語られない、と荻原さんは言う。NISAでは非課税投資期間が終わると、一般の口座に移すか、売却するか、選択しなければならない。このとき、損失が出ているケースを見てみよう。 「AさんがつみたてNISAで毎月2万円、20年で総額480万円を元手として、投資信託を買ったとします。しかし、投資信託の価値が400万円に暴落。売却すると80万円の赤字なので、値上がりを待とうと、一般口座に移しました。この際、一般口座での買付け額は時価、つまり400万円となるルールがあります。その後、450万円に持ち直した時点で、Aさんは売却しました。一般口座での買付け額が400万円のものを450万円で売れば、50万円の儲け。税金は約10万円かかりました。NISA口座を経ず、初めから一般口座だったら、30万円の損失ですから、税金はかかりませんでした」 金融庁によると、NISAは約1,077万件開設されている(’17年3月末時点)。しかし、実際に運用されているのは約60%(’17年7月末・日本証券業協会調べ)だ。 「国や金融機関は、NISAに興味はあるが躊躇している人に、一歩を踏み出してもらおうと躍起です。『よくわからないが、金融庁のお墨付きだから安心』はもってのほか。投資は自己責任が鉄則です」
2017年10月13日「最近、大手保険会社がターゲットにしていないようなニッチな分野で、『こんな保険が欲しい』という需要に応えた『少額短期保険』と呼ばれる保険が増えてきました。たとえば、ジャパン少額短期保険の『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』は、痴漢の被害を受けた際、あるいは、加害者だと疑われた際に、無料で弁護士に電話相談ができます。月々の保険料は590円で、事件直後の電話相談、交通費などの接見費用を含め、事件発生から48時間以内にかかった弁護士費用は、全額保険で補償してくれます」 こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今年3月以降、痴漢を疑われた男性が線路に降りて逃走する事件が相次ぎ、その後、『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』には、申し込みが殺到したという。 「また、アイアル少額短期保険がSOMPOホールディングスと共同で開発した『明日へのちから』は、介護度改善を目指すための保険です。対象は、介護認定を受けた要支援1〜要介護5までの方。1年間の保険期間中に、介護度が改善されると、祝い金が受け取れます。年間保険料が5,000円なら祝い金は2万5,000円と、どのプランでも、保険料の5倍の祝い金が用意されています。祝い金獲得が、リハビリに励む動機づけになればいいですね。今は、SOMPOホールディングスグループの介護施設利用者しか加入できませんが、今後はほかの介護施設利用者にも広げていくようです」(荻原さん・以下同) 注目が集まっている『少額短期保険』。その理由を荻原さんが解説してくれた。 「少額短期保険は、見込める収益が少ないため、大手の保険会社による開発がなかなか進みません。そこに活躍のチャンスを見いだしたのが、『少額短期保険会社』です。少額短期保険会社は、’06年に施行された『改正保険業法』によって誕生しました。扱えるのは、保険金額1000万円以下、保険期間も最長で2年で、掛け捨て保険のみです。実は、法改正以前は、無認可で保険商品を扱う悪質な業者もありました。そこで、資本金が10億円以上必要な一般の保険会社とは別に、資本金は1,000万円以上の少額短期保険会社の基準を設け、登録制にして、悪質業者の一掃を図ったのです」 法改正から10年以上たって、悪質な業者は減り、今年3月末の少額短期保険の契約件数は、前年より50万件増えて687万件に。保険料収入も89億円増えて815億円と、順調に推移している(日本少額短期保険協会調べ)。 そんな、契約件数を順調に伸ばしている少額短期保険だが、注意点が1つあると荻原さんは言う。 「少額短期保険には魅力的な商品もありますが、注意点が1つ。一般の保険とは違って、『保険契約者保護制度』の対象外なのです。万が一、保険会社が破たんすると、十分な補償が受けられないケースもあります。注意してください。なお、保険商品が増えてくると、玉石混交になりがちです。きちんと調べたうえで選ぶようにしましょう」
2017年09月29日「『貯金しても利息はほぼゼロですが、○○なら運用利回り3%以上ですよ』。そんな勧誘を受けたことはありませんか。銀行や郵便局は、今盛んに、投資を勧めています。政府が『貯蓄から投資へ』と言い始めてから、10年以上がたちました。私は常々『デフレの今は、現金が一番』と声を大にして言っていますが、『投資信託』の運用額は増加傾向です(’17年7月・投資信託協会調べ)」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。こうした風潮のなか、「老後の生活も考えると、やっぱり投資したほうがいいの?」と悩んでいる人に向けて荻原さんが書いたのが、『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)だ。その内容をぎゅっと濃縮して、荻原さんが「投資をやめたほうがいい理由」を解説してくれた。 【1】貯金と投資を比べるワナ 「冒頭のセールストークは、本当なのでしょうか。最近よく勧められる『外貨建て生命保険』(積立金を外貨で運用する生命保険)を例に、見ていきましょう。まず、貯金の利息ですが、今や多くの銀行の普通預金金利は0.001%です。10万円を1年預けても、利息はわずか1円。10万円未満なら利息はゼロです。いっぽう、『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』は、たとえば、利回り2.79%のアメリカ国債(30年もの・9月14日現在)と、6%超の利回りが続くインド国債などを組み合わせると、実現可能です。つまり『貯金しても利息はほぼゼロ』『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』はどちらも本当です。しかし、両者の比較は本来、できないのです。貯金と保険は、まったく違う商品設計だからです。 貯金は、毎月1万円ずつ積み立てると、1年後には12万円、2年後には24万円と確実に増えますが、大金にするには時間がかかります。ところが生命保険は、毎月1万円の保険料を、たとえ数カ月しか納めていなくても、被保険者が亡くなったら死亡保険金が満額支払われます。ただし、生きて受け取る満期金は、支払った保険料総額を下回ることが多く、高利回りをうたう商品でも得とは限りません。詳しくは2で説明します。それをあえて両者を比べるのは、超低金利で貯金が増えない不安感を利用して、保険が有利だと思わせるためでしょう。そんなイメージ戦略に、惑わされてはいけません」 【2】金融機関は手数料でもうけている 「『運用利回り3%』と聞くと、支払った金額が3%で運用されると思いがちですが、実際は、そうではありません。先の外貨建て生命保険なら、保障のための手数料が、支払った保険料から差し引かれ、残った金額が運用に回ります。手数料は保険の商品設計や年齢・性別によって異なります。なかには、初回保険料の1万円から、加入時手数料など4,000円が引かれて、運用に回るのは6,000円という商品もあります。運用利回りが高くても、お得とは言えません。金融機関にとっては、手数料がもうけになります。これを稼ぐために、私たちに投資を勧めているのです」 【3】外貨建て商品は損得がわかりにくい 「日本は超低金利なので、利回りのよい外国で、その国の通貨に両替して運用する『外貨建て』商品が人気です。外貨建て商品では、私たちが日本円を支払ったとき、また、満期金など日本円を受け取るときに、両替が必要です。そして両替には、為替の手数料がかかります。日本国内で運用する商品には必要のない為替手数料が、外貨建て商品には上乗せされ、手数料が高くなる傾向があります。いくら利回りがよくても、2と同様、運用に回る資金が減ればお得ではありません。金融機関は、手数料をより多く稼げる商品だからこそ、販売に力を入れているのです。 また、外貨建てだと、たとえ米ドルだとしても、損得がよくわからなくなる弊害もあります。日本円なら、本当に得をしているのか自分で計算できる人も、営業マンにすべてを委ねてしまいがちです」 荻原さんは、「投資に疎くて人のいい小金持ちを、彼らは狙っているのです」と言う。 「もし投資するなら、生活に支障のない余剰資金で、自己責任でやりましょう。『何に投資すればいいですか』は絶対にダメ。金融機関のカモになるだけです。『投資はコワイ』『難しい』と感じる方は、投資なんかおやめなさい。『投資しなくちゃいけない』呪縛から、早く解放されましょう」
2017年09月22日「今年は平年より涼しく過ごしやすい気候ですが、値上げの予定が目白押し。家計的には厳しい秋になりそうです。たとえば、鰹節。世界的な不漁などの影響で、9月出荷分から、はごろもフーズは5〜25%、マルトモは7〜11%、にんべんは10月から10〜25%、値上げします。はごろもフーズは、カツオを原料とするツナ缶も、9月から6〜7%値上げしました。日清オイリオは、10月からオリーブ油を10%以上値上げします」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今年の夏は関東や東北地方でも、記録的な日照不足に見舞われた。東京では21日連続、仙台では36日連続で降雨が観測され、農作物への影響が心配されている。 「野菜はすでに、値が上がり始めているものもあります。8月の最終週は、レタスが前の週より22%値上がり。平年と比べても18%高くなっています(農林水産省発表)。米は、’17年産の早場米は『平年並み』か、平年より『やや良い』収穫量(同省発表)ですが、9月下旬からの収穫しだいでは、高騰につながる可能性もあります」 ため息が漏れる状況だが、荻原さんは「家計は工夫して、やり繰りしていきましょう」と話す。秋の値上げラッシュに対抗する術を荻原さんが教えてくれた。 【1】ストック品のチェック 「値上げ目前だからといって、やみくもに“買いだめ”に走るのはよくありません。特に、鰹節やツナ缶、オリーブ油など、賞味期限の比較的長いものは、ストックのあるご家庭が多いと思います。まずストック品をチェックし、今あるものから、ムダなく使いましょう」 【2】買い物にはメモを持って 「『まだあるのに、買っちゃった』。そんなムダを防ぐためにも、買い物メモは大切です。買い物をしたら、レシートを冷蔵庫に貼りましょう。レシートには、買った商品が記載されていますから、使い切ったものには線を引きます。つまり、線が引かれていない商品は在庫あり。レシートを見れば、買った日もわかりますから、急いで消費するものも一目瞭然です。そして、このレシートが在庫リストになっています。これを見ながら買い物をすれば、ムダな重ね買いが防げます。レシートを持ち歩きたくない方は、携帯電話で写真を撮って出掛ければいいでしょう」 【3】ネットショッピングの利用 「アメリカのマサチューセッツ工科大学では、日米中など10カ国を対象に、ネットと実店舗との価格差を調査しました(’14〜’16年に実施)。その結果、日本はネット価格が実店舗より平均13%安いことがわかりました。価格差が10%以上あったのは、10カ国中、日本だけです。割安なネットショッピングの利用は、年々増えています。総務省の調査によると、ネットショッピングを利用した世帯は全体の34.9%。前年同月より6.8ポイント増えて過去最高です(’17年9月発表)。ネットショッピングは、家で在庫を確認しながら買い物ができることもメリットです。何より、自宅までの配送は、高齢になるほどありがたいサービスだと思います。買い物がつらくなる前に、一度試してみてはいかがでしょう。ただし、ネットショッピングには送料が必要です。送料を含めた料金を、必ず確認してください」 値上げはきびしいものだが、ストックの見直しや適正な買い物量を再検討するなど、買い物習慣を見直すチャンスにしたいものだ。
2017年09月15日「10月から、改正育児・介護休業法が施行され、育児休業の期間が延長されます。これまで、育児休業は原則子どもが1歳になるまでで、保育所に入れないなどの理由があれば、最長1年半まで取得できました。10月以降も原則は変わりませんが、最長期間を2年までに延長します」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。現在、女性の育児休業取得率は81.8%と、比較的浸透しているといえる(’17年7月・厚生労働省発表)。とはいえ、あいかわらず保育所は不足している。今年の待機児童数は4月時点で2万6,081人。昨年より2,528人増加した。3年連続の増加だ(’17年9月・厚生労働省発表)。 「保育所探しに苦しんでいるママたちにとって、育児休業期間の延長は、選択肢を広げるメリットがあります。保育所は4月入所がほとんどです。これまでは4月に入所するために、1歳未満で育児休業を切り上げ、復職する人も多かったと思います。たとえば8月生まれの子は、翌年4月にはまだ生後8カ月です。ここで復帰せず最長の1年半休んだとすると、2月に育休期間が終わり、まだ保育所に入所できない3月に復職しなければなりませんでした」(荻原さん・以下同) 会社によっては休暇を延長できるが、育児休業給付金はもらえない。生後8カ月でも入所しか選択肢はないと考える人もいただろう。 「育児休業期間を2年に延長すると、子育てに専念できる期間が長く持てます。さらに、生まれ月にかかわらず、休業中に4月が2回ありますから、保育所に入所できるチャンスも増えるでしょう。待機児童の減少も期待されています。育児休業は、正社員だけのものではありません。1年以上雇用されているなどの要件を満たせば、パートや契約社員でも取得できます。『非正規だから』と遠慮せず、会社と交渉してみてください」 また、育児休業中は育児休業給付金が支給される。 「給付金は、最初の6カ月間が給料の67%。それ以降は50%です。10月以降は、育児休業の延長に伴って、給付金も最長2年間支給されます。育児休業給付金は、雇用保険からの給付です。昨年10月から、従業員501人以上の会社で働く年収106万円以上のパートなどは、健康保険と厚生年金、雇用保険の3つの社会保険に加入することが義務になりました。あとは雇用期間などの条件をクリアすれば、パートでも派遣社員でも育児休業給付金の対象です。忘れずに申請しましょう」 一方、介護休業は、介護される人1人につき、93日間取得できる。今年1月からは、期間を3分割して、取得できるようになった。 「休業中は介護休業給付金が支給されます。以前は給料の40%でしたが、昨年8月からは、給料の67%に引き上げられています。今年からは分割して介護休業を取得しても、その都度、給付金を受け取れます」 確かに、制度自体は利用しやすく改正されてきた。しかし、荻原さんはこう続ける。 「しかし、介護休業は認知度の低さが問題です。介護休業を『知らない』『聞いたことはあるが内容まではわからない』を合わせると、82.5%の方が『よくわからない』と回答しています(’16年11月・オリックス・リビング調べ)。政府は、『介護離職ゼロ』や『待機児童ゼロ』を掲げています。そのためには、地道な制度の周知・宣伝活動と合わせて、利用しやすい企業風土をつくるよう、企業への指導も徹底してほしいものです」
2017年09月08日「がん治療に明るい光が見えています。がんと診断されてから5年後に生存する人の割合を示す『5年生存率』が、昨年より0.9%上昇。65.2%になりました(’17年8月・国立がん研究センター発表)。そのいっぽうで、がん患者へのアンケートから『働くがん患者の年収は、平均2割減少した』ことがわかりました。減少の理由は、休職、業務量のセーブ、退職がトップ3です。なかには『収入ゼロになった』人が18%もいて、『半分以下になった』人が47%に上ります(’17年8月・ライフネット生命保険調べ)。小林麻央さんなど、がんで命を落とす方もいて、がんへの恐怖はなかなかぬぐえません。しかし、経済的なことに限定すれば、制度を知って賢く利用することで、不安を軽減することができます」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ただし、それらの制度は自己申告制。知らなかったために生活が困窮することのないよう、荻原さんが“がんの不安を軽減することができる”制度を解説してくれた。 【1】高額療養費制度 「医療費は収入や年齢によって、月々の負担上限が決まっています。たとえば、70歳未満の年収370万〜770万円の方なら、自己負担は月約9万円。それを超えて支払った医療費は、申請すれば返金されます。入院の場合は『限度額適用認定証』を受けておくと、医療機関への支払い自体が限度額になるよう計算してくれ、大金の支払いや返金手続きは不要です。詳しくは、病院窓口にお問い合わせください」 【2】医療費控除 「1の高額療養費制度での返金や民間保険の給付金などを差し引いても、年間の医療費が10万円を超える場合は、確定申告して医療費控除を受けましょう。医療費控除は、5年間さかのぼって申告することができます。体調が落ち着いてからでも間に合いますから、領収証はきちんと保管しておきましょう。先のアンケート調査でも、1の高額療養費制度は病院からの指導もあるようで、利用率が92%ですが、2の医療費控除の利用率は58%。忘れずに申告したいものです」 【3】傷病手当金 「会社員の方なら仕事を休んでも、給料の約3分の2が、最長1年半の間、傷病手当金として支給されます。パートの方なども、社会保険に加入していれば支給対象です。また、1年半を超えても病状が思わしくなく働けない場合は、障害年金が受給できることもあります」 これら公的支援を利用すると、医療費の自己負担はかなり抑えられる。東北大学・濃沼信夫氏の’10年の調査では、がん患者の医療費は平均101万円かかるが、公的支援や民間保険などの給付が平均62万5,000円あった。これを差し引くと、実質負担の平均は約40万円。思ったより負担が少ないと感じる人も多いのでは。 「昨年12月に、改正がん対策基本法が成立し、がん患者が働き続けられるよう配慮することが、事業主の責務として盛り込まれました。がんになったからといって、すぐに辞めないことが大切です。身近にも、がん治療をしながら働いている方が増えてきたように思います。制度などは企業の方針を待たねばなりませんが、私たちはできるだけの応援をしていきたいものです。日本人の2人に1人はがんになるといわれている時代です。お互いさまの精神で、助け合っていきましょう」
2017年09月01日今月3日、今年上半期の特殊詐欺による被害状況を警察庁が発表した。それによると、「振込め詐欺」などの特殊詐欺は、この半年間で8,863件(未遂を含む)。昨年の同じ時期と比べると、2,421件も増加しており、約1.4倍になった。被害額は186億8,000万円で、’14年をピークに減少傾向ではあるが、依然として莫大な金額だ。 「こうした詐欺の被害は、高齢者に集中しています。特殊詐欺被害者の71.9%が、65歳以上の高齢者です」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。特に、発生数のもっとも多い「オレオレ詐欺」では、被害者の95.9%が高齢者。発生数第3位の「還付金詐欺」でも、95.0%が高齢者だ。 「つまり、高齢者を特殊詐欺から守ることが、全体の被害減少にもつながるのです。警察と金融機関は連携して、高齢者への声かけや、注意アナウンスを流すなどの対策をとっています。なかでも、最近ではATMの振込み制限を行う金融機関が増えてきました。これらの取り組みが功を奏し、今期は、8,833件の詐欺を未然に阻止しています。実際にお金をだまし取られた8,338件を上回り、年々、阻止できるケースが増えています。とはいえ、まだ8,000件以上が被害を受けていますし、昨年より、被害件数は増えています。私は、最近のタンス預金の増加が、一因ではないかと思っています」(荻原さん・以下同) 第一生命経済研究所によると、今年2月時点のタンス預金は43兆円。3年間で約3割も増加している。 「超低金利時代で、銀行に預けても利息はすずめの涙ほど。それなら手元にあるほうが安心、便利と考える方も多いのでしょう。しかし、多額の現金が手元にあると、詐欺電話がかかってきた場合でも、金融機関に出向く必要がありません。誰とも会わず、自分一人の判断でお金を渡せるので、被害防止がむずかしくなります。多額の現金は、金融機関に預けましょう。盗難や悪質な訪問販売などのリスクもあります。ご高齢の親御さんがいる場合は、話し合ってみてください」 また、内閣府の調査(’17年3月発表)では、「自分は詐欺被害にあわない」と回答した人が39.6%。「どちらかといえば、被害にあわない」を含めると80.7%の人が、自信を持っているという結果が。 「年代別に見ると、30代以上では高齢になるほど自信のある方が増えていき、70歳以上では50.7%が『被害にあわない』と回答。どの年代よりも多くの方が、詐欺被害は人ごとだと思っています。子ども世代は高齢者のこうした実態をよく知って、マメな連絡を心がけたいものです。なにより大切なことは、高齢者が一人で判断しないこと。何かあったら、信頼できる人に必ず相談してください」
2017年08月25日私の愛すべき家族
右手に指輪をする夫
兄の連れてきた婚約者は…