2017年8月2日 21:15
すべてを「失った女」の悲しみ…|12星座連載小説#131~蠍座 11話~
独り言が“独り言でなくなる”から。
トクトクと、ウイスキーをダブルでグラスに注ぎストレートのまま一気に飲み干す。
『う……っ、ゲホッゲホ……』
身体の中の血液が、突然沸騰したかのように熱くなる。お酒はそこまで好きじゃないけど、今夜はもう飲まれてしまいたい……。
『チカ……もう、私、あんただけになっちゃった……』
銀座のママとしての技量は、私にはそこまでなかったかもしれない。でも、自分なりに一生懸命やってきた。
苦しいことも、悲しいこともあった。それでも、お店に来て下さるお客様と、一緒に働く仲間達がいてくれるから、続けてこられた。
私の半身とも言える、“雪月華”での時間は、無駄だったのだろうか。
何もかもを失い、夜の世界で生きることもできなくなった私は、まるで翼をもがれた鳥と同じね……もう二度と羽ばたけやしない。
二杯目のウイスキーをグラスに注ぐ。
ダメね、私って……。
今度はゆっくり口に含む。
私は会長を癒すこともできず、倫子を止めることもできなかった。なにもかも自分勝手に思い込んで、結局何もできなくて。
お酒が回ってきたのか、泣けてきた。
ポロポロ、ポロポロ……。