2015年8月6日 07:00
今、男に求められるのは"普通"にしがみつく手を放す勇気 - 『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』
恥ずかしくていまだに人に言えないことも多い。数年前、激務に追われて教習所に行けなかったとき以来、車の免許を失効して持っていないのだが、実を言うともともと車の運転が苦手で、失効してホッとしたのも本音だった。「男なら、女の子を乗せてドライブくらいできなければ」と無理して免許を取ったが、本当は車に人を乗せて走るのが怖くてプレッシャーだったのだ。
さらには、20代後半まで交際経験がなく童貞だったことを、親しい友人にすら嘘をついてごまかしていたし、風俗に一度も行ったことがないのがなんか恥ずかしくて、聞かれてもあいまいに行ったことがあるようなフリをしていたことも、今ここに初めて告白したい。そもそも、フリーランスのライターという不安定な職を選んだのも、一般的な企業社会の勝負や競争からわざと降りることで、「"普通"の収入や地位を得られない自分」を見ないようにしていたのかもしれない。
"普通"になれない自分、男らしくない自分と向き合わずに、傷付かないで済むためなら、なんだってする。男……いや、主語を大きくするのはよくないから正確に言おう、「私」のアイデンティティやプライドは、そういう歪んだグラグラな自尊心の上に成り立ってしまっている。